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特表2023-509284硬化性組成物およびその基材を接着するための方法
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  • 特表-硬化性組成物およびその基材を接着するための方法 図1
  • 特表-硬化性組成物およびその基材を接着するための方法 図2
  • 特表-硬化性組成物およびその基材を接着するための方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】硬化性組成物およびその基材を接着するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20230301BHJP
   C08G 18/82 20060101ALI20230301BHJP
   C08G 18/58 20060101ALI20230301BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G18/82
C08G18/58
C08G18/28 090
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528107
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2019118720
(87)【国際公開番号】W WO2021092879
(87)【国際公開日】2021-05-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タン、チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヨンチュン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、シウチン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、シウメイ
(72)【発明者】
【氏名】シー、コー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ナン
(72)【発明者】
【氏名】モン、チンウェイ
【テーマコード(参考)】
4J034
4J036
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC12
4J034DC35
4J034DC37
4J034DC43
4J034DC50
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG14
4J034DG24
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB06
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
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4J034QA03
4J034QB13
4J034RA08
4J036AA01
4J036AA04
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB07
4J036AB09
4J036AD08
4J036AF06
4J036AF07
4J036AJ05
4J036AJ08
4J036AJ09
4J036AJ11
4J036AJ21
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036FB10
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA08
(57)【要約】
【解決手段】 硬化性組成物、特に、シラン変性ポリマー、エポキシ末端基で終端されたエポキシ樹脂を含む二成分型組成物が記載されており、組成物は、硬化剤、ならびに少なくとも1つのシラン基および少なくとも1つのエポキシ末端基を有する相溶化剤をさらに含む。硬化性組成物は、強化された接着強度および良好な破断点伸びを呈する。基材の表面上に硬化性組成物を適用するための方法も提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
少なくとも1つのシラン変性ポリマー、
エポキシ基で終端された少なくとも1つのエポキシ樹脂、を含み、
前記組成物が、硬化剤、ならびに少なくとも1つのシラン基および少なくとも1つのエポキシ末端基を有する相溶化剤をさらに含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化性組成物が、成分Aおよび成分Bを含む二成分型硬化性組成物であり、前記シラン変性ポリマーおよび前記硬化剤が、前記成分Aに含有され、前記エポキシ樹脂および前記相溶化剤が、前記成分Bに含有されている、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記シラン変性ポリマーが、式Iによって表され、
(RO)(3-m)Si-R7-(高分子主鎖)-R-SiR (RO)(3-n)式I
前記高分子主鎖が、ポリオールに由来するか、または少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールに由来し、任意選択的に、少なくとも1つの-R-SiR (RO)(3-s)で官能化され、R、R、R、R、R、およびRの各々が、独立して水素原子またはC-Cアルキル基を表し、m、n、およびsの各々が、0、1、または2の積分を表し、R、RおよびRの各々が、独立して、直接結合、-O-、二価(C~Cアルキレン)基、-O-(C~Cアルキレン)基、(C~Cアルキレン)-O-基、-O-(C~Cアルキレン)-O-基、-N(R)-(C~Cアルキレン)基または-C(=O)-N(R)-(C~Cアルキレン)基を表し、Rが、水素原子またはC-Cアルキル基を表す、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記高分子主鎖が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはそれらのコポリマーに由来する、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記相溶化剤が、式IIによって表される化合物、またはその縮合オリゴマー/ポリマーであり、
【化1】
10が、
【化2】
からなる群が選択され、ここで、*は結合部位を表し、
11が、C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-[O-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、および-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)2-[O-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレンからなる群から選択され、
12およびR13の各々が、独立して、水素原子またはC-Cアルキル基で任意選択的に置換されたC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、ハロゲン原子、C-Cアルケニ(alkeny)基、C-Cアルキニル基、-Si(C-Cアルキル)、-Si(C-Cアルコキシ)、-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルコキシ)または-(C-C)アルキレン-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)を表し、
tが0、1、または2の整数を表し、xが1~100の整数を表す、請求項1または2に記載の硬化性組成物。。
【請求項6】
前記相溶化剤が、式IIIによって表される縮合オリゴマー/縮合ポリマーであり、
【化3】
10が、
【化4】
からなる群が選択され、ここで、*は結合部位を表し、
11が、C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)2--Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)2-[O-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、および-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)2-[O-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレンからなる群から選択され、
13が、水素原子またはC-Cアルキル基で任意選択的に置換されたC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、ハロゲン原子、C-Cアルケニ基、C-Cアルキニル基、-Si(C-Cアルキル)、-Si(C-Cアルコキシ)、-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルコキシ)または-(C-C)アルキレン-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)を表し、
rが、1~50の整数を表し、xが、1~100の整数を表す、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記相溶化剤が、
【化5】
(ここで、xは1~100の整数を表す)
【化6】
からなる群から選択され、R’が、C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(CH-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-[O-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、および-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-[O-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレンからなる群から選択され、Rが、水素原子、またはC-Cアルキル基で任意選択的に置換されたC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、ハロゲン原子、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニル基、-Si(C-Cアルキル)、-Si(C-Cアルコキシ)、-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルコキシ)または-(C-C)アルキレン-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)を表し、yが1~50の整数を表す、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記高分子主鎖が、ポリオールに由来するか、または少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールに由来し、
前記ポリイソシアネートが、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C12脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15脂環式または芳香族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15アラリファティック(araliphatic)ポリイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記ポリオールが、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C16脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C15脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C15アラリファティック多価アルコール、100~5,000の分子量および1.5~5.0の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール、100~5,000の分子量および1.5~5.0の平均ヒドロキシル官能基を有するポリエーテルポリオール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化剤が、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミノアミド、イミダゾール、ジシアンジアミド、エポキシ変性アミン、マンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミンおよびケチミンからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂が、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはグリセロール、またはアルコキシル化グリセロールまたはアルコキシル化トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル、
水素化ビスフェノールA、FもしくはA/F、または環水素化液体ビスフェノールA、FもしくはA/F樹脂のグリシジルエーテル、
ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールAP樹脂、ビスフェノールF樹脂、ビスフェノールK樹脂、フェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂、およびそれらの組み合わせのグリシジルエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記シラン変性ポリマーが、前記硬化性組成物の10~90重量%を構成し、前記エポキシ樹脂が、前記硬化性組成物の5~70重量%を構成し、前記硬化剤が、前記硬化性組成物の1~8重量%を構成し、前記相溶化剤が、前記硬化性組成物の1~20重量%を構成する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物を基材の表面上に適用するための方法であって、
(1)前記シラン変性ポリマー、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤、および前記相溶化剤を組み合わせて、前駆体ブレンドを形成するステップと、
(2)前記前駆体ブレンドを基材の表面に適用するステップと、
(3)前記前駆体ブレンドを硬化させる、または前記前駆体ブレンドが硬化することを許容するステップと、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性組成物、特に二成分型硬化性組成物、およびそれを基材の表面に適用するための方法に関する。硬化性組成物は、強化された接着強度および良好な破断点伸びを呈する。
【背景技術】
【0002】
シラン変性ポリマー(SMP)は、シリル化ポリマーとしても知られ、様々な用途で広く受け入れられている用途の広い高価値の工業用樹脂である。シラン変性ポリマー(SMP)ベースの接着剤/シーラントは、低VOC、無イソ(iso-free)および無気泡、性能特性と耐久性とのバランスの良さなどの多くの利点により、ますます人気が高まっている。特に、SMPベースの接着剤はシリコーンベースの接着剤に比べ、高い接着強度を呈し、追加の塗料またはコーティング剤による上塗りが可能な点で優れている。さらに、SMPベースの接着剤は、ポリウレタンプレポリマーを配合した接着剤よりも耐久性に優れている。
【0003】
SMPベースの接着剤/シーラントは、プレハブ建築(PC)、住宅装飾、輸送[車両、船舶、自動車、航空機、高速鉄道(HSR)]、工業組立、家電など、様々な用途で使用されている。しかし、これらの用途では、特に輸送、工業組立、家電などでは、高い接着強度が通常要求される。例えば、かなりの数の顧客が、接着強度が5.0MPaを超え、破断点伸びが100~150%を超えるSMPベースの接着剤を求めている。一般に、市場で市販されているSMPベースの接着剤の多くは3.0~4.0MPa程度の低い接着強度しか得られないため、機械的強度へのこのように高い要件は、一般に、SMPベースの接着剤にとって大きな課題であると考えられている。充填剤、樹脂比率、接着促進剤、触媒などの要因を変更するために、多くの研究者によって数多くの努力がなされてきたが、これら先行技術の研究のいずれも、5.0MPaという高い接着強度を達成することはできない。
【0004】
特定の理論に限定されることなく、既存のSMPベース接着剤の劣った接着強度は、SMP相とこれと組み合わせて使用される他の相との間に化学的結合がないことが少なくとも部分的に原因であると疑われている。先行技術の二成分型(2K)接着剤組成物は、図1に示されており、様々な添加剤(硬化剤、触媒、反応促進剤、界面活性剤など)および相溶化剤の組み込みは、SMP相とエポキシ相との間にほとんどまたは全く化学的結合を確立しないため、得られるブレンドは化学的に単離したSMP相およびエポキシ相を含み、したがって劣った凝集性および接着強度を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、継続的な探索の後、驚くべきことに、上記目標の1つ以上を達成しうる二成分型組成物を開発した。特に、特定の相溶化剤が本出願の2K硬化性組成物に含まれる場合、接着強度を所望のレベルまでさらに高めることができることが見出された。
【0006】
本開示は、独特の硬化性組成物、特に硬化性二成分型組成物および硬化性組成物を基材の表面に適用するための方法を提供する。
【0007】
本開示の第1の態様では、本開示は、硬化性組成物、特に
少なくとも1つのシラン変性ポリマー、
エポキシ末端基で終端された少なくとも1つのエポキシ樹脂、
硬化剤、ならびに少なくとも1つのシラン/シロキサン基および少なくとも1つのエポキシ末端基を有する相溶化剤と、を含む二成分型硬化性組成物を提供する。
【0008】
本開示の第2の態様において、本開示は、前述の硬化性組成物を基材の表面上に適用するための方法を提供し、(1)シラン変性ポリマー、エポキシ樹脂、硬化剤および相溶化剤を組み合わせて、前駆体ブレンドを形成するステップと、(2)前駆体ブレンドを基材の表面上に適用するステップと、(3)前駆体ブレンドを硬化させる、または前駆体ブレンドが硬化することを許容するステップと、を含む。
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求されるように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、先行技術の2K硬化性組成物の概略図である。
図2図2は、本明細書に記載の2K硬化性組成物の実施形態の概略図である。
図3図3は、本開示の一実施形態による、SMPを調製するためのヒドロシリル化反応の反応機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0012】
本明細書で開示されるように、「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。特に記載がない限り、すべての範囲はエンドポイントを含む。特に記載がない限り、すべてのパーセンテージおよび比率は重量に基づいて計算され、すべての分子量は数平均分子量である。
【0013】
本開示の様々な実施形態によれば、本開示の硬化性組成物は、シラン変性ポリマーを含む成分(A)およびエポキシ樹脂を有する成分(B)を含む「二成分」、「二部分」または「二パッケージ」型の組成物である。本開示の文脈において、「部分(A)」、「成分(A)」、「シラン変性ポリマー成分(A)」および「シラン変性ポリマー部分A)」という用語は、互換的に用いることができ、シラン変性ポリマーが含有される成分を指し、「部分(B)」、「成分(B)」、「エポキシ樹脂部分(B)」および「エポキシ樹脂成分(B)」という用語は、互換的に用いることができ、エポキシ樹脂が含有される成分を指す。成分(A)および成分(B)は、別々に輸送および保管され、基材の表面に適用される少し前または直前に組み合わされる。本開示の一実施形態によれば、硬化剤および相溶化剤は、成分(A)および成分(B)のいずれか一方に含まれる。好ましい実施形態によれば、硬化剤は成分(A)に含まれ、相溶化剤は成分(B)に含まれる。一旦組み合わされると、エポキシ樹脂中のエポキシ末端基、SMP中のシラン/シロキサン基、硬化剤中のアミンおよびイミン基、相溶化剤に含有されるエポキシ末端基/シラン/シロキサン基、その他の添加剤または反応剤に含有される任意のその他の反応基など、各成分の反応基が、互いに反応してSMP-エポキシ樹脂の化学的に一体化した組み合わせを確立する。本開示の様々な実施形態によれば、一度組み合わされると、SMP相は、硬化剤および相溶化剤を介してエポキシ樹脂と化学的に結合される。特定の理論に限定されることなく、本開示の例示的な実施形態が図2に示されている。なお、図2において、SMP相およびエポキシ樹脂相がエポキシ-SMP相に統合されていることが示されているが、SMP分子およびエポキシ樹脂分子が直接共有結合で結合していることを意味するものではなく、硬化剤および相溶化剤の作用(例えば、相乗作用)によって2つの相の統合を実現できると仮定していることに留意しなければならない。図1図2との比較は、本出願の化学的に統合された組み合わせと従来技術の化学的に分離された系との違いを明確に示している。特定の理論に限定されることなく、本開示の組成物における特に設計された相溶化剤の組み込みは、SMP-エポキシ樹脂の化学的に統合された組み合わせを有効に実現することができるため、その良好な伸長特性を保持する一方で、得られる組成物の接着強度を5.0MPaという高いレベルまでうまく高めることができると思われる。
【0014】
本開示の様々な実施形態によれば、本開示の硬化性組成物は、接着剤、シーラント、コーティングまたはコンクリートであり得る二成分型組成物であり、好ましくは2K接着剤または2Kシーラントである。本開示の硬化性組成物を基材の表面に適用して、そのコーティングフィルム、コンクリート層またはシーラント層を形成し、物理的/化学的保護、音/熱/照射バリア、充填材料、支持/運搬/建設構造、装飾層またはシーリング/密閉/防水層の機能を実現することができる。さらに、本開示の硬化性組成物が接着剤として使用される場合、それは、2つ以上の同一または異なる基材を共に接着するために使用することができる。本開示の実施形態によれば、基材は、金属、石積み、コンクリート、紙、綿、繊維板、板紙、木材、織布または不織布、エラストマー、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエチレンカーボネート、合成および天然ゴム、シリコーンおよびシリコーンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの部材である。本開示の別の実施形態によれば、基材は、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリブテンカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミドおよびこれらのコポリマーからなる群から選ばれるポリマー基材である。本開示の別の実施形態によれば、基材は、木材、ポリスチレン、ナイロン、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンからなる群から選択される。
【0015】
シラン変性ポリマー(SMP)
本開示の様々な実施形態によれば、成分(A)は、シラン変性ポリマーを含む成分である。SMPは、シラン基を有するポリマーであり得る。例えば、SMPは式Iで表すことができ、
(RO)(3-m)Si-R7-(高分子主鎖)-R-SiR (RO)(3-n)式I
ここで、高分子主鎖は、ポリオールに由来するか、または少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールに由来し、任意選択的に、少なくとも1つの-R-SiR (RO)(3-s)で官能化され、R、R、R、R、R、およびRの各々は、独立して水素原子またはC-Cアルキル基を表し、m、n、およびsの各々は、0、1、または2の積分を表し、R、RおよびRの各々は、独立して、直接結合、-O-、二価(C~Cアルキレン)基、-O-(C~Cアルキレン)基、(C~Cアルキレン)-O-基、-O-(C~Cアルキレン)-O-基、-N(R)-(C~Cアルキレン)基または-C(=O)-N(R)-(C~Cアルキレン)基を表し、Rは、水素原子またはC-Cアルキル基を表す。
【0016】
本開示の実施形態によれば、高分子主鎖は、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに由来し得る。
【0017】
本開示の文脈において、「シラン変性」は、基「R (RO)(3-m)Si-R-」、「-R-SiR (RO)(3-n)」および「-R-SiR (RO)(3-s)」がSMP中の高分子主鎖に結合することを指し、および上記のすべてのシリコーン含有置換基(基R-、RO-、R-、RO-、R-およびRO-が実際に水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基を指すかは問わない)を実際には総称して「シラン基」と呼ばれる。上記の「R (RO)(3-m)Si-R-」および「-R-SiR (RO)(3-n)」は、SMPの末端に結合した末端基を表し、一方で、-R-SiR (RO)(3-s)は、高分子主鎖の中間繰り返し単位に結合した少なくとも1つの側基を表している。
【0018】
本開示の文脈において、C-Cアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキシルを含み、C-Cアルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレンおよびヘキサメチレンを含む。
【0019】
本開示の実施形態によれば、高分子主鎖はポリオールに由来し、式Iで表されるSMPは、ポリオール(すなわち、高分子主鎖)に付着した少なくとも1つの反応性キャッピング基(例えばアリル基等)をヒドロシリル化反応を通してトリアルコキシシラン基と反応させることによって、またはポリイソシアネートをポリオールと反応させてポリウレタン中間体、すなわち高分子主鎖を形成し、これをシラン化剤で官能化することによって調製され得る。
【0020】
本開示の好ましい実施形態によれば、ポリウレタン中間体は、イソシアネート末端基を有するポリウレタン鎖であり、シラン化剤は、一端にシラン基を含み、他端にイソシアネート反応性基(ヒドロキシルまたはアミン基など)を含む。本開示の文脈において、アミン基は、一級または二級アミン基であり得る。
【0021】
本開示の別の好ましい実施形態によれば、ポリウレタン中間体は、ヒドロキシル末端基を有するポリウレタン鎖であり、シラン化剤は、一端にシラン基を、他端にイソシアネート基を含む。
【0022】
様々な実施形態において、高分子主鎖(ポリウレタン鎖)を調製するためのポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族またはヘテロアリール化合物である。好ましい実施形態では、ポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C12脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15脂環式または芳香族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15アラリファティック(araliphatic)ポリイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。別の好ましい実施形態では、好適なポリイソシアネート化合物には、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートおよび/もしくは2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の様々な異性体、カルボジイミド修飾MDI生成物、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはそれらの混合物が含まれる。一般に、ポリイソシアネート化合物の量は、SMPおよび得られる硬化性組成物の実際の要件に基づいて変化し得る。例えば、1つの例示的な実施形態として、ポリイソシアネート化合物の含有量は、SMPの総重量を基準にして、15重量%~60重量%、または20重量%~50重量%、または23重量%~40重量%、または25重量%~38重量%であり得る。
【0023】
本開示の一実施形態によれば、高分子主鎖のための、またはポリウレタン主鎖を調製するためのポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C16脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C15脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシル基を含むC-C15アラリファティック多価アルコール、100~5,000の分子量および1.5~5.0の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール、100~5,000の分子量を有するポリ(C-C10)アルキレングリコールまたは複数の(C-C10)アルキレングリコールのコポリマーであるポリエーテルポリオール、100~5,000の分子量を有するポリカーボネートジオール、およびそれらの組み合わせ、および少なくとも2つのアミノ基を含むC-C10ポリアミン、少なくとも2つのチオール基を含むC-C10ポリチオール、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を含むC~C10アルカノールアミンからなる群から選択されるさらなるコモノマーからなる群から選択され得る。好ましい実施形態によれば、ポリオールは、ポリエーテルポリオールである。様々な実施形態では、ポリオールとして使用されるポリエーテルポリオールは、100~5,000g/molの分子量を有し、終点値120、150、180、200、250、300、350、400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、および5000g/molのうちのいずれか2つの組み合わせによって得られる数値範囲の分子量を有し得る。様々な実施形態において、ポリエーテルポリオールは、1.5~5.0の平均ヒドロキシル官能基を有し、終点値1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、および5.0のうちの任意の2つを組み合わせて得られる数値範囲内の平均ヒドロキシル官能基を有し得る。1つの好ましい実施形態によれば、ポリオールは、5001,200cSt、または600~1,100cSt、または700~1,000cSt、または800~950cSt、または850~920cStの平均動粘度を有し、10~100mgKOH/g、または12~90mgKOH/g、または15~80mgKOH/g、または16~70mgKOH/g、または17~60mgKOH/g、または18~50mgKOH/g、または19~40mgKOH/g、または20~30mgKOH/g、または25~28mgKOH/gのOH数を有している。本開示の好ましい実施形態によれば、ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2-メチル-1,3-プロパングリコール)、およびポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)グリコールなどのそれらの任意のコポリマーからなる群から選択される。本開示の別の好ましい実施形態によれば、ポリエーテルポリオールは、少なくとも1つのポリ(C-C10)アルキレングリコールまたはそのコポリマーを含んでよく、例えば、ポリエーテルポリオールは、(メトキシ)ポリエチレングリコール(MPEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2-メチル-1,3-プロパングリコール)または一級水酸末端基または二級水酸末端基を有するエチレンエポキシドおよびプロピレンエポキシドのコポリマー(ポリエチレングリコール-プロピレングリコール)からなる群から選択され得る。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、ポリエーテルポリオールは、触媒の存在下での、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、2-メチル-1,3-プロパングリコールおよびこれらの混合物から選択される1種以上の直鎖状または環式のアルキレンオキシドの、適切なスターター分子との重合によって調製される。典型的なスターター分子には、分子内に少なくとも1つ、好ましくは1.5~3.0のヒドロキシル基を有するか、または1つ以上の一級アミン基を有する化合物が含まれる。分子中に少なくとも1つ、好ましくは1.5~3.0のヒドロキシル基を有する好適なスターター分子は、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ヒマシ油、例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトールおよびスクロースなどの糖化合物、多価フェノール、フェノールおよびホルムアルデヒドのオリゴマー縮合生成物などのレゾール、およびフェノール、ホルムアルデヒドおよびジアルカノールアミンのマンニッヒ縮合物、ならびにメラミンを含む群から選択される。分子中に1つ以上の一級アミン基を有する出発分子は、例えば、アニリン、EDA、TDA、MDA、およびPMDAからなる群から、より好ましくはTDAおよびPMDAを含む群から選択され得、最も好ましくはTDAであり得る。TDAを使用する場合、すべての異性体を、単独で、または任意の所望の混合物において使用することができる。例えば、2,4-TDA、2,6-TDA、2,4-TDAと2,6-TDAの混合物、2,3-TDA、3,4-TDA、3,4-TDAと2,3-TDAの混合物、および上記のすべての異性体の混合物も使用することができる。ポリエーテルポリオールを調製するための触媒には、アニオン重合用の水酸化カリウムなどのアルカリ触媒、またはカチオン重合用の三フッ化ホウ素などのルイス酸触媒が含まれ得る。好適な重合触媒には、水酸化カリウム、水酸化セシウム、三フッ化ホウ素、またはヘキサシアノコバルト酸亜鉛または四ホスファゼニウム化合物などの二重シアン化物錯体(DMC)触媒が含まれ得る。本開示の好ましい実施形態では、出発物質ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレン、(メトキシ)ポリエチレングリコール(MPEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2-メチル-1,3-プロパングリコール)または一級ヒドロキシル末端基もしくは二級ヒドロキシル末端基を有するエチレンエポキシドおよびプロピレンエポキシドのコポリマー(ポリエチレングリコール-プロピレングリコール)が挙げられる。
【0025】
本開示の好ましい実施形態によれば、ポリイソシアネートの量は、ポリオールに含まれるヒドロキシル基の合計モル量および任意の追加の添加剤または調整剤に対して、イソシアネート基が化学量論的モル量で存在するように適切に選択される。本開示の実施形態によれば、ポリウレタン中間体(PU主鎖)は、2~50重量%、好ましくは6~49重量%、好ましくは8~25重量%、好ましくは10~20重量%、より好ましくは11~15重量%、最も好ましくは12~13重量%のNCO含有量を有する。
【0026】
ポリイソシアネートとポリオールとの反応は、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応を促進することができる1つ以上の触媒の存在下で起こってもよい。理論に束縛されないが、触媒には、例えば、グリシン塩;三級アミン;トリアルキルホスフィンおよびジアルキルベンジルホスフィンなどの三級ホスフィン;モルホリン誘導体;ピペラジン誘導体;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、エチルアセトセテートなどとBe、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、およびNiなどの金属とから得られるものなどの様々な金属のキレート;塩化第二鉄および塩化第二スズなどの強酸の酸性金属塩;有機酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Pb、Mn、Co、Ni、およびCuなどの様々な金属との塩;有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、スズ(II)ジアセテート、スズ(II)ジオクタノエート、スズ(II)ジエチルヘキサノエート、およびスズ(II)ジラウレートなどの有機スズ化合物、ならびに有機カルボン酸ジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、およびジオクチルスズジアセテート;有機カルボン酸のビスマス塩、例えば、ビスマスオクタノエート、3価および5価のAs、Sb、およびBiの有機金属誘導体、ならびに鉄およびコバルトの金属カルボニル、またはそれらの混合物が含まれ得る。一般に、本明細書で使用される触媒の含有量は、ゼロ超であり、成分(A)の総重量に基づいて、最大3.0重量%、好ましくは最大2.5重量%、より好ましくは最大2.0重量%である。
【0027】
SMPにシラン基を導入するために使用されるシラン化剤(特に、「R (RO)(3-m)Si-R-」、「-R-SiR (RO)(3-n)」および「-R-SiR (RO)(3-s)」)は、シラン-Xの式で表すことができ、X基は塩素、ヒドロキシル、アミン基、イミン基、イソシアナート基、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)、ケトキシマト、アミノ、アミド、酸アミド、アミノキシ、メルカプトまたはアルケニルオキシ基であり得る。好適なシラン化剤の例には、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、N-((β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N-((β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-((β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-((β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0028】
本開示の好ましい実施形態によれば、高分子主鎖は、ポリオールのみに由来し、好ましくは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールである。高分子主鎖は、ヒドロキシル基、グリシジル基、アリル基、またはそれらの組み合わせなどの2つ以上の末端基で包接され得る。ヒドロシリル化反応は、ポリオール鎖の上記の末端基とシラン化剤のX基との間で起こり、SMPを形成し得る。ヒドロシリル化反応の機械的スキームを図3に示すが、ここで、シラン化剤はSiH(OCである。
【0029】
本開示の別の好ましい実施形態によれば、高分子主鎖は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応に由来するポリウレタン主鎖である。高分子主鎖は、ヒドロキシル基またはイソシアネート基などの2つ以上の末端基で包接され得る。シリル化反応は、ポリウレタン鎖の上記の末端基とシラン化剤のX基との間で起こり、SMPを形成し得る。
【0030】
本開示の一実施形態によれば、シラン化剤のモル含有量は、SMPが1.2~4.0、好ましくは1.5~3.0、より好ましくは1.8~2.5、より好ましくは2.0~2.2のシラン官能基を有するように選択される。
【0031】
一般に、SMPの量は、得られる硬化性組成物の実際の要件に基づいて変化し得る。例えば、1つの例示的な実施形態として、SMPの含有量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、10重量%90重量%、または10重量%~85重量%、または10重量%~80重量%、または10重量%~75重量%、または10重量%~70重量%、または10重量%~65重量%、または20重量%~65重量%、または20重量%~60重量%、または12重量%~50重量%、または14重量%~40重量%、または15重量%~30重量%、または17重量%~25重量%、または18重量%~22重量%であり得る。
【0032】
エポキシ樹脂
本開示の様々な実施形態において、成分(B)は、少なくとも1つ、好ましくは2つのエポキシ末端基を有するエポキシ樹脂を含む。
【0033】
エポキシ樹脂は、エポキシ官能基を含有する任意の高分子材料であり得る。反応性エポキシ官能基を含有する化合物は大きく異なり得、エポキシ官能基を含有するポリマーまたは2つ以上のエポキシ樹脂のブレンドが含まれる。エポキシ樹脂は、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であり得、置換され得る。いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、ポリエポキシドを含み得る。ポリエポキシドとは、2つ以上のエポキシ部分を含有する化合物または化合物の混合物を指す。ポリエポキシドは、ポリエポキシドと鎖延長剤との反応生成物である部分的に先進型エポキシ樹脂を含み、反応生成物は1分子当たり平均2つ以上の未反応エポキシド単位を有する。脂肪族ポリエポキシドは、エピハロヒドリンとポリグリコールの反応から調製され得る。脂肪族エポキシドの他の特定の例には、トリメチロールプロパンエポキシド、およびジグリシジル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレートが含まれる。他の化合物には、例えば、多価フェノールのグリシジルエーテル(すなわち、1分子当たり平均2つ以上の芳香族ヒドロキシル基を有する化合物)などのエポキシ樹脂が含まれる。
【0034】
一実施形態では、本開示の硬化性組成物に利用されるエポキシ樹脂には、エピハロヒドリンとフェノールまたはフェノールタイプの化合物から生成された樹脂が含まれる。フェノールタイプの化合物は、1分子当たり平均2つ以上の芳香族ヒドロキシル基を有する化合物を含む。フェノールタイプの化合物の例としては、ジヒドロキシフェノール、ビフェノール、ビスフェノール、ハロゲン化ビフェノール、ハロゲン化ビスフェノール、水素化ビスフェノール、アルキル化ビフェノール、アルキル化ビスフェノール、トリスフェノール、フェノールアルデヒド樹脂、ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドなど、フェノールと単純アルデヒドの反応生成物である)、ハロゲン化フェノール-アルデヒドノボラック樹脂、置換フェノール-アルデヒドノボラック樹脂、フェノール-炭化水素樹脂、置換フェノール-炭化水素樹脂、フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、アルキル化フェノール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、炭化水素-フェノール樹脂、炭化水素-ハロゲン化フェノール樹脂、炭化水素アルキル化フェノール樹脂、またはそれらの組み合わせが挙げられる。具体的には、フェノールタイプの化合物としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール-ホルムアルデヒドノボラク樹脂、アルキル置換フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂、テトラメチルビフェノール、テトラメチル-テトラブロモビスフェノール、テトラメチルトリブロモビスフェノール、およびテトラクロロビスフェノールAが挙げられる。いくつかの実施形態では、本組成物のエポキシ樹脂は、少なくとも1.5、少なくとも3、または少なくとも6の官能性を有することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、エポキシ成分(B)で利用されるエポキシ樹脂は、エピハロヒドリンおよびアミンから生成されるそれらの樹脂を含む。好適なアミンには、ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン、アニリン、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態において、エポキシ成分に利用されるエポキシ樹脂は、エピハロヒドリンおよびカルボン酸から生成されるそれらの樹脂を含む。好適なカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸および/もしくはヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂は、上記のように、1つ以上のエポキシ樹脂と、1つ以上のフェノールタイプの化合物および/または1分子当たり平均して2つ以上の脂肪族ヒドロキシル基を有する1つ以上の化合物との反応生成物である先進型エポキシ樹脂である。あるいは、エポキシ樹脂は、炭化水素骨格、好ましくはC-C40炭化水素骨格、および1つ以上のカルボキシル部分、好ましくは2つ以上、最も好ましくは2つを有する化合物であるカルボキシル置換炭化水素と反応し得る。C-C40炭化水素骨格は、直鎖または分岐鎖のアルカンまたはアルケンであり得、任意選択的に酸素を含有する。脂肪酸および脂肪酸二量体は、有用なカルボン酸置換炭化水素に数えられる。脂肪酸には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルシン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、アラキジン酸、およびそれらの二量体が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂は、ポリエポキシドと、2つ以上のイソシアネート部分またはポリイソシアネートを含有する化合物との反応生成物である。例えば、そのような反応で生成されるエポキシ樹脂は、エポキシ末端ポリオキサゾリドンであり得る。
【0039】
1つの特定の実施形態では、エポキシ樹脂成分は、臭素化エポキシ樹脂とフェノール性ノボラックエポキシ樹脂とのブレンドである。
【0040】
本出願の様々な実施形態によれば、エポキシ樹脂は、100~20,000グラム/モル(g/mol)、または500~15,000g/mol、または800~12,000g/mol、または1,000~10,000g/mol、または2,000~9,000g/mol、または3,000~8,000g/mol、または4,000~7,000g/mol、または5,000~6,000g/molの分子量を有する。本出願の様々な実施形態によれば、エポキシ樹脂は、1.2~10、または2~9、または3~8、または4~7、または5~6のエポキシ官能基を有する。一般に、エポキシ樹脂の量は、得られる硬化性組成物の実際の要件に基づいて変化し得る。例えば、1つの例示的な実施形態として、エポキシ樹脂の含有量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、5重量%~70重量%、または7重量%~68重量%、または5重量%~65重量%、または10重量%~65重量%、または11重量%~60重量%、または12重量%~50重量%、または14重量%~40重量%、または15重量%~30重量%、または17重量%~25重量%、または18重量%~22重量%であり得る。
【0041】
硬化剤
本開示の様々な実施形態によれば、本開示の実施に使用できる硬化剤には、とりわけ、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミノアミド、イミダゾール、ジシアンジアミド、エポキシ変性アミン、マンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、ケチミン、酸無水物、アルコール、およびフェノールが含まれる。本出願の最も好ましい実施形態によれば、硬化剤はトリエチレンテトラミン(TETA)である。1つの例示的な実施形態として、硬化剤の含有量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、1重量%~8重量%、または1重量%~5重量%、または1.5重量%~4重量%、または1.8重量%~3重量%、または1.9重量%~2.5重量%、または2重量%~2.2重量%である。硬化剤は、成分AおよびBから独立した成分として供給され、送られるか、または成分AまたはBに含有されるかのいずれかであり得る。本開示の好ましい実施形態によれば、硬化剤は、成分Aに、すなわち、SMPとのブレンドとして含有される。
【0042】
相溶化剤
本開示の硬化性組成物に有用な相溶化剤は、それが上記のようなシラン基とエポキシ基の両方を含有するという点で特に特徴づけられる。
【0043】
本開示の実施形態によれば、相溶化剤は、式IIによって表されるか、またはその縮合オリゴマーまたは縮合ポリマーであり得、
【化1】
ここで、R10は、
【化2】
からなる群が選択され、ここで、*は、R10が相溶化剤の他の部分に結合している結合部位を表す。
11は、C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)2--Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)2-[O-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、および-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)2-[O-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレンからなる群から選択され、
ここで、R12およびR13の各々は、独立して、水素原子またはC-Cアルキル基で任意選択的に置換されたC-C、C-Cアルコキシ基、ハロゲン原子、C-Cアルケニ(alkeny)基、C-Cアルキニル基、-Si(C-Cアルキル)、-Si(C-Cアルコキシ)、-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルコキシ)または-(C-C)アルキレン-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)を表し、
tは0、1、または2の整数を表し、xは1~100の整数を表す。例えば、xは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100の整数であり得る。
【0044】
本明細書に示されるように、「縮合オリゴマー」および「縮合ポリマー」という用語は、式IIによって表される2つ以上の化合物を縮合することによって、特にシラン基の縮合を介して得られるオリゴマーまたはポリマー化合物を指す。例えば、相溶化剤は、式IIIで表される縮合オリゴマーまたは縮合ポリマーであり得、
【化3】
ここで、R10、R11およびR13は上記の通りであり、rは1~50の整数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50の整数を表す。
【0045】
本開示の最も好ましい実施形態によれば、相溶化剤は、以下の化合物のいずれか1つから選択され、
【化4】
ここで、xは1~100の整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100を表し、
【化5】
ここで、R’は、C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-(CH-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン、-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルキル)-[O-Si(C-Cアルキル)-C-Cアルキレン-(O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレン、-(CH-O)-C-Cアルキレン-Si(C-Cアルコキシ)-[O-Si(C-Cアルコキシ)-C-Cアルキレン-O-CH)-CH(OH)-CH-NH-C-Cアルキレンからなる群から選択され、Rは、水素原子またはC-Cアルキル基で任意選択的に置換されたC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、ハロゲン原子、C-Cアルケニ基、C-Cアルキニル基、-Si(C-Cアルキル)、-Si(C-Cアルコキシ)、-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルキル)、-(C-C)アルキレン-Si(C-Cアルコキシ)または-(C-C)アルキレン-Si-{O-[Si(C-Cアルコキシ)を表し、yは1~50の整数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50の整数を表す。
【0046】
1つの例示的な実施形態として、相溶化剤の含有量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、または1.5重量%~14重量%、または1.8重量%~13重量%、または2重量%~12重量%、または3重量%~11重量%、または4重量%~10重量%、または5重量%~9重量%、または6重量%~8重量%、または6.5重量%~7重量%である。相溶化剤は、成分AおよびBから独立した成分として供給され、送られ得るか、または成分AまたはBに含有され得る。本開示の好ましい実施形態によれば、硬化剤は、成分Bに、すなわちエポキシ樹脂とのブレンドとして含有される。
【0047】
本開示の好ましい実施形態によれば、SMP、エポキシ樹脂、硬化剤および相溶化剤の量は、特に、全アミン官能基に対する全エポキシ官能基のモル比が1:0.95~0.95:1の範囲になり得るように選択され、エポキシ樹脂に対するエポキシシラン相溶化剤のモル比は1:10~1:1であり、全SMP樹脂に対する全エポキシ基(エポキシ樹脂および相溶化剤中のエポキシ基を含む)のモル比は1:100~5:1となり得る。
【0048】
添加剤
本開示の様々な実施形態において、硬化性組成物は、触媒、ビニル-Si[O-(C-C)アルキル]などの脱湿剤、鎖延長剤、架橋剤、粘着付与剤、フタル酸エステル、非芳香族二塩基酸エステルおよびリン酸エステル、二価アルコールを有する二塩基酸のポリエステル、ポリプロピレングリコールおよびその誘導体、ポリスチレンなどの可塑剤、レオロジー調整剤、抗酸化剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛およびカーボンブラックなどの充填剤、着色剤、顔料、界面活性剤、炭化水素、酢酸エステル、アルコール、エーテルおよびケトンなどの溶媒、希釈剤、難燃剤、滑り止め剤、帯電防止剤、防腐剤、殺生物剤、UV安定剤、チキソトロープ剤、硬化ヒマシ油、有機ベントナイト、ステアリン酸カルシウムなどの垂れ防止剤、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤は、既知の方法および量で使用される。これらの添加剤は、独立した成分として送られ、貯蔵され得、成分(A)および(B)の組み合わせの少し前または直前にポリウレタン組成物に組み込まれ得る。あるいは、これらの添加剤は、エポキシ基、アミノ基、およびシラン基などの反応性基に対して化学的に不活性である場合、成分(A)および(B)のいずれかに含有され得る。
【0049】
上記の触媒は、エポキシ基、アミノ基およびシラン基などの反応性基間の相互作用をさらに加速または増強し得る触媒物質を指す。それは硬化触媒としても知られており、各々独立して、または2種以上の組み合わせで使用することができる。代表的な触媒には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズアセトアセテート、チタンアセトアセテート、チタンエチルアセトアセテート錯体およびテトライソプロピルチタネート、カルボン酸ビスマス、オクト酸亜鉛、ブロック化三級アミン、ジルコニウム錯体、スズ組成物とケイ酸のアミンおよびルイス酸触媒の付加物の組合せが含まれる。
【0050】
本開示の好ましい実施形態によれば、本開示の硬化性組成物は、上記のようなアミノシラン化合物を含まない。本開示の別の好ましい実施形態によれば、本開示の硬化性組成物は、ヒドロキシルシラン化合物を含まない。本出願の様々な態様によれば、伸長比を保持しつつ、接着強度の向上を図ることに成功した。
【0051】
一度組み合わせると、シラン変性ポリマー、エポキシ樹脂、硬化剤、相溶化剤が互いに反応し、徐々に硬化してターゲット層または構造が形成される。硬化プロセスは、例えば、0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上、同時に300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、最も好ましくは180℃以下の温度で実施することができる。硬化プロセスは、例えば、望ましくは0.01バール以上、好ましくは0.1バール以上、より好ましくは0.5バール以上において、同時に望ましくは1000バール以下、好ましくは100バール以下、より好ましくは10バール以下の圧力で実施することができる。硬化プロセスは、SMP-エポキシ組成物を硬化させるのに十分な所定の期間実施することができる。例えば、硬化時間は、望ましくは1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは100分以上であってもよく、同時に、望ましくは24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは8時間以下であってもよい。
【0052】
成分Aと成分Bの未硬化ブレンドは、バッチプロセスまたは連続プロセスによって1つ以上の基材に適用することができる。未硬化ブレンドは、重力鋳造、真空鋳造、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、注入、フィラメントワインディング、注入(例えば、レイアップ注入)、トランスファー成形、プレプレジング、ディッピング、コーティング、ポッティング、カプセル化、噴霧、ブラッシングなどの技術によって適用され得る。
【実施例
【0053】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例に詳細に説明する。ただし、本開示の範囲は、当然ながら、これらの実施例に記載される配合物に限定されない。むしろ、実施例は本開示の単なる例示である。
【0054】
実施例で使用された原料の情報を以下の表1に列挙する。
【表1】
【0055】
調製例:SMPの調製
Voranol(商標)4000LM(4000g)を、室温でN防護した三つ口フラスコに加え、窒素流下で110℃で4時間加熱した。フラスコ内の物質を80℃に冷却した後、T12(2.0g)とIPDI(296.4g)を加え、さらにフラスコを80℃で4時間加熱した。次に、SCA-3303(156.93)をフラスコに加え、混合物を80℃で4時間加熱した。反応後、得られたSMPを密封ボトルに移し、さらなる特性評価、配合、および試験を行なった。
【0056】
比較例1および2、ならびに本発明実施例3~8
表2に記載の配合に従って、異なる二成分型硬化性組成物を調製し、ここで、実施例1および2は、本開示によって特に選択された相溶化剤を含まない比較例であり、SMP樹脂は、上記の調製例において調製された。
【0057】
表2からわかるように、部分Aは、SMP樹脂、硬化剤、脱湿剤を含有しており、任意選択的に可塑剤および充填剤をさらに含んでおり、部分Bは、エポキシ樹脂、エポキシシラン相溶化剤、スズ触媒を含有している。部分Aおよび部分Bは、2,000rpm/minの攪拌速度で、その含有物を別々のスピードミキサで混合することによって別々に調製された。部分Aと部分Bを組み合わせ、スピードミキサにおいて、1,000rpm/minの撹拌速度で20秒、1,500rpm/minで20秒で十分に混合し、次いで、さらに圧力0.2KPaの真空ミキサにおいて1,000rpm/minで2分混合し、最後にスピードミキサにおいて2,000rpm/minで20秒混合した。上記の混合ステップの後、得られたブレンドを直接特性評価するか、基材の表面に適用してフィルムサンプルを生成した。
【0058】
実施例で調製されたサンプルは、以下の技術で特性評価された。
【0059】
A.上記の調製例で調製したSMPは、以下の条件とパラメータを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で特性評価され、GPCは、2つの混合Dカラム(7.8×300mm)とAgilent屈折率検出器を備えたAgilent1200モデルクロマトグラフを使用して実施され、カラム温度は35℃、検出器の温度は35℃、流速は1.0mL/min、移動相はテトラヒドロフラン、注入量は50μLであり、分子量316,500~316,580g/molのPLポリスチレンナロー標準(部品番号:2010-0101)を用いて得た検量線に基づいて、Agilent GPCソフトウェアを用いて検出データを収集し、解析した。
【0060】
SMPのMnが21,662で、Mwが41,081であると測定されたため、PDIが1.90であると計算できる。
【0061】
B.ASTM D1708-06Aに従って、実施例1~8で調製されたサンプルの機械的特性。ASTM D1708-06Aで導入された手順に従って、任意の実施例の硬化フィルムを犬の骨の形をした試験片にダイカットした。試験片をInstron 5566機器に固定し、50mm/minの一定速度で延伸した。降伏点における荷重(ある場合)、試験中に試験片が担った最大荷重、破断時の荷重、および破断時の伸び(グリップ間の伸び)を記録した。試験片のせん断強度は、接着面積が2.5cm×2.5cmの接着面で、Instron 5566機器でも測定された。測定結果も、表2にまとめられている。
【表2】
【0062】
比較例2は、相溶化剤を含んでおらず、2.7MPaの接着強度を呈し、これは、市場で市販されているほとんどのSMPベースの接着剤と非常に類似しており、このような劣った接着は、家電製品における多くの顧客の要求を十分に満たすことができない。前の段落で紹介したように、家電用接着剤は、より薄いフレーム領域を実現できるように、約100%の破断点伸びを保ちつつ、5.0MPaを超える接着強度を有することが必要である。一部の工業組立の顧客は、ガイバナイズ(gaivanized)鋼およびステンレス鋼などの代表的な基材に対して、より高い接着強度を有するSMP接着剤も頻繁に求められていた。
【0063】
本発明実施例と比較例とを比較すると、エポキシシラン相溶化剤の導入により、破断点伸びを100%程度に保ちつつ、引張強度(5.0MPaを超えるレベルまで)、せん断強度を大幅に上昇させることができるため、本開示のSMPベースの製品を、市場においてより競争力を高め差別化できることが明らかである。

図1
図2
図3
【国際調査報告】