(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】高熱安定性潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C10M 107/38 20060101AFI20230301BHJP
G11B 5/725 20060101ALI20230301BHJP
G11B 5/70 20060101ALI20230301BHJP
G11B 5/82 20060101ALI20230301BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20230301BHJP
C10M 107/48 20060101ALI20230301BHJP
C10M 107/50 20060101ALI20230301BHJP
C10M 107/52 20060101ALI20230301BHJP
C10M 107/46 20060101ALI20230301BHJP
C10M 107/54 20060101ALI20230301BHJP
C10N 40/18 20060101ALN20230301BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C10M107/38
G11B5/725
G11B5/70
G11B5/82
G11B5/84 B
C10M107/48
C10M107/50
C10M107/52
C10M107/46
C10M107/54
C10N40:18
C10N30:08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529875
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2021041499
(87)【国際公開番号】W WO2022108629
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パテム、バラ クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトマン、ロバート ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4H104
5D006
5D112
【Fターム(参考)】
4H104BD05A
4H104CD04A
4H104CG09A
4H104CH09A
4H104CJ13A
4H104CJ15A
4H104CJ19A
4H104LA04
4H104PA16
5D006AA03
5D006AA05
5D006DA03
5D006FA02
5D006FA04
5D112AA07
5D112AA24
5D112BC08
5D112JJ08
(57)【要約】
多座配位潤滑剤は、一般式Ra-(Rb-Re)
xに従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを含み;式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり、各側鎖は、ペルフルオロエチルエーテル部分を含む。潤滑剤は、磁気記録媒体及び/又は磁気データ記憶システムと併せて使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤であって、
以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(R
b-R
e)に取り付けられた固定部分Raを含む多座配位潤滑剤を含み:
R
a-(R
b-R
e)
x;
式中、R
aは、価数xの多価ラジカルであり、
式中、各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化1】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して、1~10であり、
式中、xは、2以上であり、かつ
式中、各R
eは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である、潤滑剤。
【請求項2】
各官能基は、飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合わせを含み、式中、qが、1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20ラジカルであり、2つ以上のR
*が一緒に結合して環構造を形成し得、少なくとも1つの官能基が、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
各R
eが、ヒドロキシルである、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項4】
前記側鎖-(R
b-R
e)のうちの2つ以上の重量平均分子量は等しい、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項5】
前記側鎖-(R
b-R
e)の各々が、化学的に同一である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項6】
R
aはC
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
2~C
20ラジカル、芳香族C
6~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、又はそれらの組み合わせであり、xは、3以上である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項7】
以下の一般式を含む:
【化2】
式中、各bは、独立して、1~10であり、かつ、xは、3以上である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項8】
以下の一般式を含む:
【化3】
式中、各bは、独立して、1~10であり、かつ、xは、3以上である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項9】
R
aが、以下の式で表される:
【化4】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、独立して、式-(R
b-R
e)を含む側鎖である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項10】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、以下を含む官能基を含む:飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合わせ、式中、qが1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20ラジカルであり、2つ以上のR
*、及び/又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合して、環構造を形成し得、少なくとも1つの官能基は、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される、請求項9に記載の潤滑剤。
【請求項11】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合してC
5~C
20芳香環構造、C
5~C
20ヘテロ芳香環構造、又はそれらの組み合わせを形成する、請求項9に記載の潤滑剤。
【請求項12】
前記側鎖の各々が独立して、以下の式を有する:
【化5】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して、1~10である、請求項9に記載の潤滑剤。
【請求項13】
各R
#が、水素である、請求項12に記載の潤滑剤。
【請求項14】
R
aが、以下の式で表される:
【化6】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの3つ以上は、独立して、式-(R
b-R
e)を含む側鎖である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項15】
前記側鎖の各々が独立して、以下の式を有する:
【化7】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して1~10である、請求項14に記載の潤滑剤。
【請求項16】
約1~20キロダルトン(kDa)の重量平均分子量及び約1~2の多分散性を含む、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項17】
磁気記録媒体であって、
基板上の磁気記録層と、
前記磁気記録層上の保護オーバーコートと、
前記保護オーバーコート上の潤滑剤層であって、請求項1に記載の潤滑剤を含む潤滑剤層と、を含む、磁気記録媒体。
【請求項18】
前記潤滑剤層が、約3ナノメートル未満の平均厚さを含む、請求項17に記載の磁気記録媒体。
【請求項19】
前記潤滑剤が、前記保護オーバーコートの上面の総面積に対する前記潤滑剤の結合度に対応する、少なくとも70%の結合パーセンテージを含む、請求項17に記載の磁気記録媒体。
【請求項20】
データ記憶システムであって、
少なくとも1つの磁気ヘッドと、
請求項1に記載の潤滑剤を含む磁気記録媒体と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドを前記磁気記録媒体上に位置決めするための駆動機構と、
前記少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するために、前記少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、を含む、データ記憶システム。
【請求項21】
データ記憶システムであって、
少なくとも1つの磁気ヘッド及び空気ベアリング表面(ABS)を含むスライダであって、請求項1に記載の潤滑剤が、前記ABS上に配置されている、スライダと、
磁気記録層を含む磁気記録媒体と、を含み、
前記スライダが、熱アシスト磁気記録(HAMR)を使用して、前記磁気記録層に情報を書き込むように構成されている、データ記憶システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「HIGH THERMAL STABILITY LUBRICANTS」という名称の2020年11月18日に出願された米国仮特許出願第63/115,586号の優先権及び利益を主張する、「HIGH THERMAL STABILITY LUBRICANTS」という名称の2021年4月1日に出願された米国特許出願第17/220,836号の優先権及び利益を主張し、それらのそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、潤滑剤、より具体的には、磁気記録、例えば、熱アシスト磁気記録(Heat Assisted Magnetic Recording、HAMR)磁気媒体に使用され得る高熱安定性潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0003】
ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)などの磁気記憶システムは、静止及びモバイルコンピューティング環境の両方における多種多様なデバイスにおいて利用される。磁気記憶システムを組み込むデバイスの例は、データセンターストレージシステム、デスクトップコンピュータ、携帯型ノートブックコンピュータ、携帯型ハードディスクドライブ、ネットワーク記憶システム、高精細度テレビ(high definition television、HDTV)受信機、車両制御システム、セルラー若しくは携帯電話、テレビセットトップボックス、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ビデオゲームコンソール、及び携帯型メディアプレーヤを含む。
【0004】
典型的なディスクドライブは、1つ以上のフラットディスク又はプラッタの形態の磁気記憶媒体を含む。ディスクは、一般に、2つの主要な構成要素、すなわち、それに構造及び剛性を与える基板材料、及びコーティング内の記録層内のデータを表す磁気インパルス又はモーメントを記憶する磁気媒体コーティングを含む。典型的なディスクドライブはまた、一般に、ディスクの記録層に記憶された磁場を感知及び/又は変更することができる磁気変換器の形態の読み取りヘッド及び書き込みヘッドを含む。HAMRは、媒体に情報を書き込むために高い記録温度を使用する高い保磁力を有する磁気記憶媒体上の書き込まれたデータの面密度(areal density、AD)を増加させることができる記録技術である。しかしながら、媒体に適用される高い記録温度は、課題を提示し得る。磁気記憶媒体の他の例は、磁気テープ記録に使用可能な可撓性テープ媒体を含む。HAMRに関連する高温の結果として、HAMRドライブにおいて使用するのに好適な潤滑剤は、比較的高い熱安定性が有益であり得る。したがって、当該技術分野では、HAMRドライブにおいて使用するための高い熱安定性及び他の特性を有する潤滑剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを含む多座配位の潤滑剤を含む潤滑剤を提供する:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;
式中、各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化1】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して、1~10であり、
式中、xは、2以上であり、かつ
式中、各Reは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である。
【0006】
一態様では、本開示は、非磁性基板上の磁気記録層と、磁気記録層上の保護オーバーコートと、保護オーバーコート上の潤滑剤層とを含む磁気記録媒体を提供し、潤滑剤が、以下の一般式に従って、複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを含む多座潤滑剤を含む:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;
式中、各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化2】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して、1~10であり、
式中、xは、2以上であり、かつ
式中、各Reは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である。
【0007】
一態様では、本開示はまた、磁気ヘッドと、本明細書に開示される任意の1つ以上の態様による磁気記録媒体と、磁気ヘッドを磁気記録媒体上に位置決めするための駆動機構と、磁気ヘッドの動作を制御するために磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、を含むデータ記憶システムを提供する。
【0008】
本開示の他の態様及び利点は、図面と併せて考慮される場合、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様による、スライダ及び磁気記録媒体を含むデータ記憶デバイスを概略的に示す図である。
【0010】
【
図2】本開示の一態様による、
図1のスライダ及び磁気記録媒体の側面概略図である。
【0011】
【
図3】本開示の一態様による、ヘッドアシスト磁気記録(HAMR)媒体の側面概略図である。
【0012】
【
図4】本明細書に開示される態様による潤滑剤を示す概略図である。
【0013】
【
図5】本明細書に開示される態様による、その上に潤滑剤層を含む磁気記録媒体を形成するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
熱アシスト磁気記録(HAMR)システムは、従来の磁気記録システムよりも実質的に高い温度で動作する。HAMRは、エネルギーアシスト磁気記録(Energy Assisted Magnetic Recording、EAMR)技術のクラス内の磁気記録の例であり、従来の磁気記録は、システムにおいて使用される他のエネルギーによって補足される。EAMRの他の例は、マイクロ波アシスト磁気記録(Microwave Assisted Magnetic Recording、MAMR)及び主極近くの様々な導電性及び/又は磁気構造への電流の適用を含み得る。本開示は、概して、HAMR、又はより一般的にはEAMR磁気記録媒体又は記憶システムを含む磁気記録媒体及び/又は磁気データ記憶システムと組み合わせて使用することができる、高い熱安定性を有する潤滑剤に関する。一態様では、潤滑剤は、複数の側鎖部分が取り付けられ得る多価固定部分を含む多座潤滑剤を含み得る。本開示のいくつかの態様では、側鎖の各々は、ペルフルオロエチルエーテル部分を含む。潤滑剤は、当技術分野で知られている潤滑剤と比較して、改善されたレベルのヘッド摩耗、潤滑ピックアップ、及び改善された汚染堅牢性を提供する。
定義
【0015】
本明細書の目的及びその特許請求の範囲について、周期表グループの新しい番号付けスキームは、Chemical and Engineering News、63(5)、第27頁(1985)に記載されているように使用される。したがって、「4族金属」は、周期表の4族の元素、例えばHf、Ti、又はZrである。
【0016】
本明細書において使用される場合、特に指定されない限り、「Cn」という用語は、1分子当たりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味し、nは正の整数である。同様に、「Cm~Cy」基又は化合物は、m~yの範囲内のその総数で炭素原子を含む基又は化合物を指す。したがって、C1~C4アルキル基は、1~4の範囲、例えば、1、2、3及び4のそれらの総数で炭素原子を含むアルキル基を指す。
【0017】
「部分」は、分子の一部を形成する1つ以上の共有結合した原子を指す。「基」、「ラジカル」、「部分」、及び「置換基」という用語は、互換的に使用され得る。
【0018】
「ヒドロカルビルラジカル」、「ヒドロカルビル基」、又は「ヒドロカルビル」という用語は、互換的に使用され得、水素及び炭素原子のみからなる基を意味するように定義される。好ましいヒドロカルビルは、直鎖、分岐鎖、又は環状であり得、及び環状である場合に、芳香族又は非芳香族であり得るC1~C20ラジカルである。そのようなラジカルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、オクチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのアルキル基、例えば、フェニル、ベンジルナフチルなどのアリール基を含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書の目的のために、ヘテロ原子は、元素の周期表の13~17族から選択される任意の非炭素原子である。1つ以上の態様では、ヘテロ原子は、B、N、O、Si、P、S、As、Se、Te、及びハロゲンF、Cl、Br、I、及びAtから選択される非金属原子である。
【0020】
特に指示がない限り、「置換された」という用語は、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つの非水素原子又は官能基で置き換えられていることを意味する。
【0021】
本明細書の目的のために、官能基は、ヒドロカルビル基、ヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基、例えばハロゲン(Br、Cl、F又はIなど)、又は少なくとも1つの官能基、例えば-NR*
2、-NR*-CO-R*、-OR*、*-O-CO-R*、-CO-O-R*、-SeR*、-TeR*、-PR*
2、-PO-(OR*)2、-O-PO-(OR*)2、-AsR*
2、-SbR*
2、-SR*、-SO2-(OR*)2、-BR*
2、-SiR*
3、-(CH2)q-SiR*
3又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み、式中、qが1~10であり、各R*が独立して、水素、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のR*が一緒に結合して、置換若しくは非置換の、完全に飽和した、部分的に不飽和の又は芳香族環状又は多環式リング構造を形成してもよく、又は少なくとも1つのヘテロ原子がヒドロカルビル環内に挿入されている。
【0022】
1つ以上の態様では、官能基は、飽和C1~C20ラジカル、不飽和C1~C20ラジカル、脂環式C3~C20ラジカル、複素環式C3~C20ラジカル、芳香族C5~C20ラジカル、ヘテロ芳香族C5~C20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR*
2、-NR*-CO-R*、-OR*、-O-CO-R*、-CO-O-R*、-SeR*、-TeR*、-PR*
2、-PO-(OR*)2、-O-PO-(OR*)2、-N=P(NR*
2)3、-AsR*
2、-SR*、-SO2-(OR*)2、-BR*
2、-SiR*
3、-(CH2)q-SiR*
3、-(CF2)q-SiR*
3、又はそれらの組み合わせを含み得、式中、qが1~10であり、各R*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式のC1~C20ラジカルである。
【0023】
本明細書に記載される目的のために、磁気記録媒体の表面に取り付け可能な官能基は、その同じ表面へのペルフルオロアルキルエーテルの親和性と比較して、その表面に対して増加した親和性を有する官能基を指し得る。増大した親和性は、ファン・デル・ワールス力、弱いロンドン分散力、双極子-双極子力、及び/又は同様のもの、及び/又は磁気記録媒体の表面、好ましくは記録媒体の保護オーバーコーティングとの1つ以上のタイプの結合及び/又は配位結合を含み得る。1つ以上の態様では、磁気記録媒体の表面に取り付け可能な官能基は、その同じ表面へのペルフルオロアルキルエーテルの親和性と比較して、記録媒体の炭素オーバーコーティング(carbon overcoat、COC)層に対して増大した親和性を有する1つ以上の官能基を指す。
【0024】
本明細書で複素環式ラジカルとも称される複素環は、環原子上の水素がヘテロ原子で置き換えられているヘテロ原子置換環とは対照的に、環構造中にヘテロ原子を有する環である。例えば、テトラヒドロフランは、複素環であり、4-N,N-ジメチルアミノ-フェニルは、ヘテロ原子置換環である。置換複素環は、環原子のうちの1つの水素が、ヒドロカルビル又はヘテロ原子含有基で置換されている、例えば置き換えられている、複素環である。
【0025】
「化合物」は、複数の化学元素の化学結合によって形成される物質を指す。「誘導体」は、前駆体化合物の原子又は官能基のうちの1つ以上が、一般に1つ以上のステップを有する化学反応によって、別の原子又は官能基によって置き換えられている化合物を指す。
【0026】
「固定部分」は、本潤滑剤分子を形成するために、側鎖部分が結合している構造(化学部分)を指す。
【0027】
「側鎖」とは、固定部分に化学的に結合しており、終結又は末端部分Reによって終結された中間部分Rbを含む化学部分を指す。
【0028】
Reと略される「末端基」とは、鎖状分子又は部分の末端に配置された原子又は官能基の形式の1価のラジカルを指す。
【0029】
「ペルフルオロポリエーテル」は、1つ以上の水素原子がフッ素で置換されているアルキルエーテルを指す。一態様では、アルキル水素原子のすべて又は大部分は、PFPE分子におけるフッ素で置換されている。PFPE分子はまた、ペルフルオロアルキルエーテル(perfluoroalkylether、PFAE)又はペルフルオロポリアルキルエーテル(perfluoropolyalkylether、PFPAE)分子と呼ばれることもある。
【0030】
「ペルフルオロポリエーテル部分」は、ペルフルオロポリエーテル(perfluoropolyether、PFPE)分子Rbを含む部分を指す。ペルフルオロポリエーテル部分は、本分子中の側鎖の一部として固定部分Raに結合している。
【0031】
本明細書に開示される任意の特定の化合物について、提示される任意の一般的又は特定の構造はまた、特に明記しない限り、特定の置換基のセットから生じ得るすべての立体配座異性体、位置異性体、及び立体異性体を包含する。同様に、特に明記しない限り、一般的又は特定の構造はまた、当業者によって認識されるように、エナンチオマー又はラセミ形態、並びに立体異性体の混合物にかかわらず、すべてのエナンチオマー、ジアステレオマー、及び他の光学異性体を包含する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「芳香族」という用語はまた、芳香族複素環式配位子に対して同様の特性及び構造(ほぼ平面)を有するが、定義によって芳香族ではない複素環式置換基である偽芳香族複素環を指す。同様に、芳香族という用語は、置換芳香族も指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、別の部分と化学的に同一である部分は、同位体存在量及び/又は分布を除く全組成物において同一であると定義され、及び/又は光学異性体、確認異性体、空間異性体などの立体化学配列を排除するものとして定義される。
潤滑剤を採用するためのHAMRシステム
【0034】
図1は、スライダ108と、本開示の1つ以上の態様による潤滑剤を有する磁気記録媒体102とを含む、熱アシスト磁気記録(HAMR)のために構成されたデータ記憶デバイス100(例えば、ディスクドライブ又は磁気記録デバイス)の上面概略図である。レーザ(
図1では見えていないが、
図2の114を参照)は、ヘッド/スライダ108によって位置決めされる。ディスクドライブ100は、データを記憶するための1つ以上のディスク/媒体102を含み得る。ディスク/媒体102は、ドライブハウジングに取り付けられたスピンドルアセンブリ104上に存在する。データは、ディスク102の磁気記録層内のトラックに沿って記憶され得る。データの読み取り及び書き込みは、読み取り及び書き込み要素(108a及び108b)の両方を有し得るヘッド108(スライダ)によって達成される。書き込み要素108aは、ディスク102の磁気記録層の特性を変更し、それによって、そこに情報を書き込むために使用される。一態様では、ヘッド108は、磁気抵抗(magneto-resistive、MR)、巨大磁気抵抗(giant magneto-resistive、GMR)、又はトンネル磁気抵抗(tunnel magneto-resistive、TMR)要素を有し得る。代替的な態様では、ヘッド108は、別のタイプのヘッド、例えばホール効果ヘッドであり得る。動作中、スピンドルモータ(図示せず)は、スピンドルアセンブリ104を回転させ、それによってディスク102を回転させて、所望のディスクトラック107に沿った特定の場所にヘッド108を位置決めする。ディスク102に対するヘッド108の位置は、制御回路110(例えば、マイクロコントローラ)によって制御され得る。例示的なHAMRシステムが示されているが、記載された様々な実施形態は、垂直磁気記録(perpendicular magnetic recording、PMR)ディスクドライブ又は磁気テープドライブを含む他のEAMR又は非EAMR磁気データ記録システムにおいて使用され得ることに留意されたい。
【0035】
図2は、
図1のスライダ108及び磁気記録媒体102の側面概略図である。磁気記録媒体102は、本開示の1つ以上の態様による潤滑剤層を含む(
図3参照)。スライダ108は、スライダ108の上面に取り付けられたサブマウント112を含み得る。レーザ114は、サブマウント112に、及び場合によってはスライダ108に取り付けられ得る。スライダ108は、それぞれ媒体102に情報を書き込み、かつ媒体102から情報を読み取るために、スライダの空気ベアリング表面(air bearing surface、ABS)108cに沿って位置決めされた書き込み要素(例えば、ライタ)108a及び読み取り要素(例えば、リーダ)108bを含む。他の態様では、スライダはまた、潤滑剤の層(図示せず)を含み得る。
【0036】
動作中、レーザ114は、スライダ108の空気軸受面(例えば、底面)108cの近くの近接場トランスデューサ(near field transducer、NFT)に光を方向付けるスライダ内の導波管に(おそらく破線に沿って)光エネルギーを発生させかつ方向付けるように構成されている。導波管を介してレーザ114から光を受信すると、NFTは、書き込み要素108a及び読み取り要素108bの近くの媒体102の一部を加熱する局所的な熱エネルギーを生成する。予想される記録温度は、約350℃~400℃の範囲内である。
図2に示す態様では、レーザ指向光は、ライタ108a内に、かつスライダの後縁の近くに配置されている。他の態様では、レーザ指向光は、代わりに、ライタ108aとリーダ108bとの間に位置決めされ得る。
図1及び
図2は、HAMRシステムの特定の態様を示す。他の態様では、本開示の態様による潤滑剤層を有する磁気記録媒体102は、他の好適なHAMRシステム(例えば、HAMR用に構成された他のスライダを有する)において使用することができる。
【0037】
図3は、本開示の1つ以上の態様による潤滑剤層を有する磁気記録媒体200の側面概略図である。一態様では、磁気記録媒体200は、HAMRシステム(例えば、ディスクドライブ100)において使用され得る。磁気記録媒体200は、底部/基層における基板202と、基板202上の接着層204と、接着層204上のヒートシンク層206と、ヒートシンク層206上の中間層208と、中間層208上の磁気記録層(MRL)210と、MRL210上のキャッピング層212と、キャッピング層212上のオーバーコーティング層214と、オーバーコーティング層214上の潤滑剤層216とを有する積層構造を有する。一態様では、磁気記録媒体200は、接着層204とヒートシンク層206との間に軟磁性下層(soft magnetic underlayer、SUL)を有し得る。一態様では、磁気記録媒体200は、中間層208とヒートシンク層206との間に耐熱層(thermal resistance layer、TRL)を有し得る。一態様では、ディスク駆動用途において、基板202は、Al合金、NiPめっきAl、ガラス、ガラスセラミック、及び/又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の材料で作製することができる。磁気テープ記録用途の一態様では、基板202は、様々な種類の樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなど、又はそれらの組み合わせのうちの1つで作製されたフィルムなどの、可撓性材料を含むことができる。基板は、非磁性材料を含み得、積層され得る。いくつかの態様では、磁気記録媒体200は、
図3に示される層のいくつか又はすべて、及び/又は様々な積層順序の追加の層を有し得る。
図3に示される各層は、1つ以上の副層を含み得ることにも留意されたい。例えば、磁気記録層は、特定の実施形態では、複数の層を含み得る。
【0038】
本明細書に開示される態様による使用に好適な潤滑剤は、磁気ハードディスクドライブ又はテープドライブ並びに他の超小型電子機械システムを含む、様々な機械デバイスにおいて使用され得る境界潤滑剤として機能し得る。境界潤滑剤は、潤滑剤の1つ以上の官能基が、潤滑される表面と付着するか、そうでなければ係合するときに潤滑剤層を形成し得る。例えば、1つ以上の境界潤滑剤は、機械的デバイス内の他の部分に対して移動する磁気記録媒体200(例えば、磁気記録層210を含むディスク)上に潤滑剤層216を形成し得る。この潤滑剤層216は、磁気記録媒体と機械デバイス内の他の部品との間の相互作用(例えば、スライダと磁気記録媒体との間の相互作用)によって引き起こされる摩擦摩耗及び/又は損傷から磁気記録媒体を保護するのに役立ち得る。言い換えれば、この境界層は、固体と固体との接触を制限するのに役立ち得る。
潤滑剤特性
【0039】
図4は、本開示の一態様による、境界潤滑剤300を示す。
図4に示すように、境界潤滑剤300は、固定部分Ra302を含み、これは、一態様では、多価環状部分であり、複数の側鎖の各々が、固定部分302と結合され、かつ固定部分302と、連結セグメント304の末端に位置決めされた取り付けセグメント306との間に位置する中間セグメント304又は連結セグメント304を含む。全体が307として示される側鎖は、連結セグメント304と取り付けセグメント306との組み合わせを含む。一態様では、取り付けセグメント306は、連結セグメント304よりも基板、例えば保護オーバーコート層に対してより高い親和性を有する。
【0040】
いくつかの態様では、連結セグメント304の各々は、ペルフルオロエチルエーテル部分-(CF2CF2O)bを含み、式中、bは1~10である。アンカーセグメントRa302はまた、取り付けセグメントであり得、例えば、好ましくは潤滑される表面に取り付けられるように選択された又は構成された末端基Re(306)とともに、官能基を含む。
【0041】
一態様では、潤滑剤は、以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを含む多座配位の潤滑剤を含む:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;各Rbは、以下の一般式を有するペルフルオロエチルエーテルを含む:
【化3】
式中、各bは、独立して、1~10であり、xは2以上であり、好ましくはxは3以上である。
【0042】
いくつかの態様では、潤滑剤は、以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを含む多座配位の潤滑剤を含む:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化4】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、各bが、独立して1~10であり、xは、2以上であり、各Reは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である。他の態様では、xは3以上、又はxは4以上、又はxは5以上、又はxは6以上、又はxは7以上であるか、又はxは8以上である。
【0043】
いくつかの態様では、各官能基は、飽和C1~C20ラジカル、不飽和C1~C20ラジカル、脂環式C3~C20ラジカル、複素環式C3~C20ラジカル、芳香族C5~C20ラジカル、ヘテロ芳香族C5~C20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR*
2、-NR*-CO-R*、-OR*、-O-CO-R*、-CO-O-R*、-SeR*、-TeR*、-PR*
2、-PO-(OR*)2、-O-PO-(OR*)2、-N=P(NR*
2)3、-AsR*
2、-SR*、-SO2-(OR*)2、-BR*
2、-SiR*
3、-(CH2)q-SiR*
3、-(CF2)q-SiR*
3、又はそれらの組み合わせを含み得、式中、qが1~10であり、各R*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式のC1~C20ラジカルであり、2つ以上のR*が結合して環状構造を形成し得、各官能基は、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される。
【0044】
一態様では、少なくとも1つの末端基Reは、ヒドロキシルである。他の態様では、存在する末端基Reの各々は、ヒドロキシルである。更に他の態様では、末端基Reの各々は、少なくとも1つの酸素原子を含む。
【0045】
いくつかの態様では、側鎖のうちの2つ以上の重量平均分子量-(Rb-Re)は等しい。したがって、いくつかの態様では、ペルフルオロ部分の数は、側鎖の各々において同じであり、末端基Reのうちの少なくとも1つは、互いに異なる。他の態様では、少なくとも1つの側鎖におけるペルフルオロ部分の数は、別の側鎖とは異なるが、末端基の組成の結果、側鎖のうちの2つ以上の重量平均分子量は等しい。他の態様では、側鎖-(Rb-Re)の各々は、化学的に同一である。
【0046】
1つ以上の態様では、側鎖の各々における部分「b」の数は、1~10、又は2~8、又は3~7、又は4~6である。1つ以上の態様では、末端基Reは、記録媒体の保護オーバーコート(例えば、炭素オーバーコーティング又はCOC層)に取り付け可能であるように選択される。いくつかの態様では、末端基はアルコールである(例えば、ヒドロキシル-OH)。
【0047】
1つ以上の態様では、RaはC1~C20ラジカル、不飽和C1~C20ラジカル、脂環式C3~C20ラジカル、複素環式C2~C20ラジカル、芳香族C6~C20ラジカル、ヘテロ芳香族C5~C20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、又はそれらの組み合わせである。一態様では、Raは多価環状ラジカルである。いくつかの態様では、xは、2以上である。他の態様では、xは3以上、又はxは4以上、又はxは5以上、又はxは6以上である。1つ以上の態様では、Raは、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択され、かつ/又はRaは、官能基で置換され、そのうちの少なくとも1つは、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される。1つ以上の態様では、Raは少なくとも三価ラジカルであり、1つ以上の態様では、少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族環系を含む。したがって、固定部分Raは、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択され得、例えば、それは、それ自体において及びそれ自体の、一座又は多座であり得る。
【0048】
好適な固定基Raの例は、ボリレン、シクロプロペノン、フラン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、ホスホール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ペンタゾール、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン、ペンタジン、ヘキサジン、ボレピン、トロポン、アゾニン、シクロオクタデカノナエン、ジアザペンタレン、チエノチオフェン、トリチアペンタレン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾチオフェン、ベンゾ(c)チオフェン、ベンゾホスホール、ベンジミダゾール、プリン、インダゾール、ベンゾキサゾール、ベンジソキサゾール、ベンゾジアゾール、5-アザ-7-デアザプリン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、アズレン、それらの組み合わせ、及び/又は同様のものの置換された及び置換されていない疑似物質を含む。
【0049】
1つ以上の態様では、潤滑剤は、以下の一般式を有する:
【化5】
式中、各bは、独立して1~10であり、xは2以上、又はxは3以上である。
【0050】
他の態様では、潤滑剤は、以下の一般式を有する:
【化6】
式中、各bは、独立して、1~10であり、xは2以上、又はxは3以上である。
【0051】
一態様では、Raは、環状多価ラジカルである。1つ以上の態様では、Raは、以下の式で表される:
【化7】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、独立して、以下の式を有する側鎖である:
-(Rb-Re)
上記で定義した通りである。そのような態様のうちのいくつかでは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、以下を含む官能基を含む:飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合わせ、式中、qが1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20ラジカルであり、2つ以上のR
*、及び/又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合して、環構造を形成し得る。1つ以上の態様では、少なくとも1つの官能基は、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される。そのような態様のうちのいくつかでは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合してC
5~C
20芳香環構造、C
5~C
20ヘテロ芳香環構造、又はそれらの組み合わせを形成する。一態様では、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合してC
5~C
20芳香環構造、C
5~C
20ヘテロ芳香環構造、又はそれらの組み合せ形成し、これらは更に上記で定義されたような式:-(Rb-Re)を有する1つ以上の側鎖部分によって置換される。
【0052】
好適な例は、以下を含む:
【化8】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、式中、R
1、R
3、及びR
5は水素であり得るか、又はそれぞれが、以下を含む1つ以上の官能基を含み得る:飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合せ、式中、qが1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20ラジカルであり、2つ以上のR
*、及び/又はR
1、R
3、及びR
5のうちの2つ以上が一緒に結合して、環構造を形成することができ、少なくとも1つの官能基は、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される。1つ以上の態様では、潤滑剤は、三座、四座、五座、六座、七座、八座、又はそれ以上である。
【0053】
1つ以上の態様では、側鎖(Rb-Re)の各々は、独立して、以下の式を有する:
【化9】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、各bは、独立して1~10である。そのような態様のいくつかでは、各R
#は水素である。そのような態様の他の場合、各R
#はフッ素である。
【0054】
潤滑剤のいくつかの態様では、R
aは、以下の式で表される:
【化10】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、独立して、以下の式を有する側鎖である:
-(Rb-Re)。
【0055】
1つ以上の態様では、側鎖の各々は独立して、以下の式を有する:
【化11】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、各bは、独立して1~10である。好適な例は、以下を含む:
【化12】
式中、各R#は、独立して、水素又はフッ素原子である。
【0056】
1つ以上の態様では、潤滑剤は、約1キロダルトン(kDa)以上、又は約1~約20kDa、又は約2~約10kDa、又は約3~約7kDa、又は約1~約5kDa、又は2~約4kDaの重量平均分子量を有する。1つ以上の態様では、潤滑剤は、本質的に純粋な化合物であり、数平均分子量Mnを、約1~2、又は約1~約1.5の重量平均分子量Mw(Mn/Mw)で割ったものとして定義される多分散性を有する。
【0057】
出願人は、比較的高い分子量、例えば、約1000原子質量単位(amu)以上、又は好ましくは約3000amu以上が、蒸発する傾向が低く、これは、HAMRドライブの比較的高温の条件下で特に重要であることを発見した。個々の取り付けセグメントによって両端の表面にテザーされた長い高MWの主鎖セグメントを有する従来の潤滑剤は、主鎖セグメントの一部分(例えば、中間部分)が表面から上昇し、上方に位置決めされた磁気ヘッドと相互作用することを可能にし得る複数の自由度を有する。しかしながら、改善されたヘッドディスククリアランスマージンを達成するために単一の主鎖セグメントの分子量を減少させることにより、蒸発の問題が生じ、分子量は蒸気圧力に対して反比例し、指数関数的に変化する。
【0058】
同様に、単一の主鎖セグメントの分子量を単に減少させることにより、潤滑剤の有効粘度も減少し得、これは分子量と直線的で逆の関係を有し、スピンオフの問題が可能になる。対照的に、本開示の態様は、そのような問題を伴わずに比較的高分子量の潤滑剤を提示する。
【0059】
図3に戻ると、1つ以上の態様において、磁気記録媒体200は、オーバーコーティング層214上に潤滑剤層216を含む積層構造を有する。潤滑剤層は、以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを有する多座配位潤滑剤を含む:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;
各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化13】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、各bが、独立して、1~10であり、xは、2以上であり、又はxが、3以上であり、各Reは、独立して、本明細書に開示される1つ以上の態様による元素周期表の第13族~第17族からの元素を含むヒドロキシル基(-OH)又は官能基である。
【0060】
1つ以上の態様では、磁気記録媒体の潤滑剤層の平均厚さは、約3ナノメートル未満、又は約2nm未満、又は約1nm未満、又は約0.8nm以下である。いくつかの態様では、磁気記録媒体の潤滑剤は、約0.3nm~約3nm、又は約0.3nm~約1nmの平均厚さを有する。
【0061】
磁気記録媒体の1つ以上の態様では、潤滑剤は、保護オーバーコーティングの上面の総面積への潤滑剤の結合度に対応する、少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%の結合パーセンテージを有する。
【0062】
一態様では、磁気データ記憶システムは、磁気ヘッドと、本明細書に開示される1つ以上の態様による潤滑剤を含む、本明細書に開示される態様のいずれか1つ又は組み合わせによる磁気記録媒体と、磁気ヘッドを磁気記録媒体上に通すための駆動機構と、磁気ヘッドの動作を制御するために磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、を含む。
媒体の製造
【0063】
図5を参照すると、本開示の一態様による、境界潤滑剤を有する磁気記録媒体を形成するための方法400が示されている。
図5に示すように、方法400は、非磁性基板の上に磁気記録層を形成することを含む。動作402を参照のこと。様々なアプローチでは、方法400はまた、非磁性基板と磁気記録層との間に位置決めされた他の層を形成することを含み得る。これらの他の層は、例えば、1つ以上の下層、ソフト下層、接着層など(例えば、
図3に示される層のうちのいずれか)を含み得る。
【0064】
図5にも示されるように、方法400は、磁気記録層の上に保護オーバーコートを形成すること、及び/又は磁気層上にキャッピング層を形成し、キャッピング層上に保護オーバーコーティング層を形成することを更に含む。動作404を参照のこと。方法400は、保護オーバーコート層上に潤滑剤層を形成することを更に含む。動作406を参照のこと。この潤滑剤層は、本明細書に開示される1つ以上の態様による多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤を含み得、以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを有する:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化14】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、各bが、独立して1~10であり、xは、2以上であり、各Reは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である。
【0065】
代替的なアプローチでは、保護オーバーコートの上に形成された潤滑剤層は、本明細書に記載の多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤のうちのいずれかを、単独及び/又は任意の組み合わせで含み得ることに留意することが重要である。
【0066】
様々な態様では、潤滑剤層は、ディップコーティング法を介して、磁気記録媒体、具体的には保護オーバーコート上に形成することができる。例えば、一態様では、磁気記録媒体は、本開示の1つ以上の態様による多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤及びHFE7100若しくはVertrel-XFなどのフルオロカーボン溶媒を含む潤滑剤浴に浸漬され得る。所定の時間の後、磁気記録媒体は、制御された速度で潤滑剤浴から除去され得る。次いで、溶媒は蒸発し、多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤を含む潤滑剤層を残し得る。潤滑後の磁気記録媒体の表面上に残っている多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤のパーセンテージは、結合パーセンテージと称され得る。結合パーセンテージは、潤滑された磁気記録媒体を潤滑剤浴に使用される溶媒に曝露することによって、様々な期間定量化され得る。
【0067】
潤滑剤層の厚さは、潤滑剤浴中の磁気記録媒体の浸漬持続時間、磁気記録媒体がコーティング溶液から除去される速度、及び/又は潤滑剤浴中の境界潤滑剤(例えば、本開示の1つ以上の態様による多座ペルフルオロポリエーテル境界潤滑剤)の濃度を制御することによって、調整され得る。
【0068】
1つ以上の態様では、潤滑剤浴中の潤滑剤の濃度は、約0.1g/L~約0.2g/Lの範囲であり得る。更に他の態様では、潤滑剤浴中の潤滑剤の濃度は、約3ナノメートル(nm)以下、又は約2nm以下、又は約1nm以下、又は0.3nm~約1nm未満の範囲の厚さの得られた潤滑剤層を達成するように選択され得る。
【0069】
磁気記録媒体の表面、具体的には保護オーバーコーティングの表面上の潤滑剤層の形成は、ディップコーティングに限定されず、本開示を読むと当業者によって理解されるように、スピンコーティング、スプレーコーティング、蒸着、それらの組み合わせ、又は任意の他の好適なコーティングプロセスも含み得ることに留意することが重要である。
【0070】
様々な態様の少なくともいくつかについて本明細書に提示される方法は、全体的に又は部分的に、コンピュータハードウェアにおいて実装され得る、手動で実装され得る、専門機器を使用して実装され得るなど、及びそれらの組み合わせで実装され得ることに留意されたい。
【0071】
更に、本明細書を読むことで当業者に明らかになるように、構造及び/又はステップのいずれかは、既知の材料及び/又は技術を使用して実装され得る。
【0072】
いくつかの態様では、本明細書のプロセスは、
図5に示されるようなアクションのシーケンスを異なる順序で実行することができる。他の態様では、プロセスは、1つ以上のアクションをスキップすることができる。更に他の態様では、1つ以上のアクションが同時に実行される。いくつかの態様では、追加のアクションを実行することができる。例えば、一態様では、プロセスは、磁気記録層構造を製造するために必要な任意の追加のアクションを含み得る。
【0073】
いくつかの態様では、そのような層の形成又は堆積は、物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、直流(direct current、DC)スパッタ堆積、イオンビーム堆積、無線周波数スパッタ堆積、又はプラズマ強化化学蒸着(plasma enhanced chemical vapor deposition、PECVD)、低圧化学蒸着(low pressure chemical vapor deposition、LPCVD)、及び原子層化学蒸着(atomic layer chemical vapor deposition、ALCVD)を含む化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)を含むが、それらに限定されない、様々な堆積サブプロセスを使用して行うことができる。他の実施形態では、当該技術分野で公知の他の好適な堆積技術も使用され得る。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「上」、「上方」、「下方」及び「間」という用語は、他の層に対する1つの層の相対位置を指す。このように、例えば、別の層の上/上方又は下方に堆積又は配置された1つの層は、他の層と直接接触し得、又は1つ以上の介在層を有し得る。更に、層の間に堆積又は配置された1つの層は、それらの層と直接接触し得、又は1つ以上の介在層を有し得る。
追加の態様
【0075】
本明細書において開示の様々な態様を説明してきたが、さらなる特定の態様は、以下の段落に記載の実施例を含む。
A1.潤滑剤であって、
以下の一般式に従って複数の側鎖部分-(Rb-Re)に取り付けられた固定部分Raを有する多座配位潤滑剤を含む:
Ra-(Rb-Re)
x;
式中、Raは、価数xの多価ラジカルであり;
式中、各Rbは、独立して、以下の一般式を含む二価部分であり:
【化15】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
式中、各bは、独立して、1~10であり、
式中、xは、2以上であり、かつ
式中、各Reは、独立して、元素の周期表の13~17族の元素を含むヒドロキシル(-OH)又は官能基である。
A2.xが、3以上である、態様A1に記載の潤滑剤。
A3.xが、4以上である、態様A1に記載の潤滑剤。
A4.xが、5以上である、態様A1に記載の潤滑剤。
A6.xが、6以上である、態様A1に記載の潤滑剤。
A7.各官能基は、飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合わせを含み、式中、qが、1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20であり、2つ以上のR
*が一緒に結合して環構造を形成し得、少なくとも1つの官能基が、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される、態様A1~A6のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A8.各Reが、ヒドロキシルである、態様A1~A7のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A9.側鎖-(Rb-Re)のうちの2つ以上の重量平均分子量が等しい、態様A1~A8のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A10.側鎖(Rb-Re)の各々が、化学的に同一である、態様A1~A9のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A11.RaはC
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
2~C
20ラジカル、芳香族C
6~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、又はそれらの組み合わせであり、xは、3以上である、態様A1~A10のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A12.以下の一般式を有する:
【化16】
式中、各bは、独立して、1~10でありかつxは3以上である、態様A1~A11のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A13.以下の一般式を有する:
【化17】
式中、各bは、独立して、1~10でありかつxは3以上である、態様A1~A11のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A14.R
aは、以下の式で表される:
【化18】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、独立して、式-(Rb-Re)を有する側鎖である、態様A1~A13のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A15.R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、以下を含む官能基を含む:飽和C
1~C
20ラジカル、不飽和C
1~C
20ラジカル、脂環式C
3~C
20ラジカル、複素環式C
3~C
20ラジカル、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、シクロトリホスファゼンラジカル、ハロゲン、-NR
*
2、-NR
*-CO-R
*、-OR
*、-O-CO-R
*、-CO-O-R
*、-SeR
*、-TeR
*、-PR
*
2、-PO-(OR
*)
2、-O-PO-(OR
*)
2、-N=P(NR
*
2)
3、-AsR
*
2、-SR
*、-SO
2-(OR
*)
2、-BR
*
2、-SiR
*
3、-(CH
2)q-SiR
*
3、-(CF
2)q-SiR
*
3、又はそれらの組み合わせ、式中、qが1~10であり、各R
*が、独立して、水素、ハロゲン、飽和、不飽和、芳香族、及び/又は複素環式C
1~C
20ラジカルであり、2つ以上のR
*、及び/又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上は、一緒に結合して、環構造を形成し得、少なくとも1つの官能基は、磁気記録媒体の表面に取り付け可能であるように選択される、態様A14に記載の潤滑剤。
A16.R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上が、一緒に接合して脂環式C
3~C
20環構造、複素環式C
3~C
20環構造、C
5~C
20芳香環構造、C
5~C
20ヘテロ芳香環構造、又はそれらの組み合わせを形成する、態様A14又はA15に記載の潤滑剤。
A17.R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの2つ以上が、一緒に接合して脂環式C
3~C
20環構造、複素環式C
3~C
20環構造、芳香族C
5~C
20ラジカル、ヘテロ芳香族C
5~C
20ラジカル、又はそれらの組み合わせを形成し、それらは更に、式-(Rb-Re)を有する1つ以上の側鎖で置換されている、態様A14又はA15に記載の潤滑剤。
A18.側鎖の各々が独立して、以下の式を有する:
【化19】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
各bは、独立して、1~10である、態様A14~A17のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A19.各R
#が、水素である、態様A14~A18のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A20.R
aは、以下の式で表される:
【化20】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、水素又は元素周期表の第13族~第17族からの元素を含む官能基であり、但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6のうちの3つ以上は、独立して、式-(Rb-Re)を有する側鎖である、態様A1~A13のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A21.側鎖の各々が独立して、以下の式を有する:
【化21】
式中、各R
#は、独立して、水素又はフッ素原子であり、
各bは、独立して1~10である、態様A20に記載の潤滑剤。
A22.約1~20キロダルトン(kDa)の重量平均分子量及び約1~2の多分散性を有する、態様A1~A21のいずれか1つに記載の潤滑剤。
A23.磁気記録媒体であって、
非磁性基板上に位置決めされた磁気記録層と、
磁気記録層上に位置決めされた保護オーバーコートと、
態様A1~A22のいずれか1つに記載の潤滑剤を含む保護オーバーコート上の潤滑剤層と、を含む、磁気記録媒体。
A24.潤滑剤層が、約3ナノメートル未満の平均厚さを含む、態様A23に記載の磁気記録媒体。
A25.潤滑剤が、保護オーバーコートの上面の総面積に基づいて、少なくとも70%の結合パーセンテージを含む、態様A23又はA24に記載の磁気記録媒体。
A26.データ記憶システムであって、
少なくとも1つの磁気ヘッドと、
態様A23~A25のいずれか1つに記載の磁気記録媒体と、
少なくとも1つの磁気ヘッドを磁気記録媒体上に位置決めするための駆動機構と、
少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するために、少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合されたコントローラと、を含む、データ記憶システム。
【0076】
上記の説明は、本開示の一般原理を例示する目的で行われ、本明細書で特許請求される発明概念を限定することを意味するものではない。更に、本明細書に記載の特定の特徴は、様々な可能な組み合わせ及び配列の各々において、他の記載された特徴と組み合わせて使用することができる。
【0077】
いかなるそのような実際の態様の開発においても、開発者の特定の目標を達成するために、例えば、システム関連及び事業関連の制約によるコンプライアンスなどの多数の実装固有の決定が行われなければならず、これは、一実装ごとに変化することに留意されたい。更に、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって日常的仕事である。加えて、本明細書において使用/開示されるデバイス、システム、及び/又は方法はまた、引用されたもの以外のいくつかの構成要素を含むことができる。
【0078】
本明細書で別途具体的に定義されない限り、すべての用語は、明細書から暗示される意味並びに当業者によって理解される意味及び/又は辞書、論文などで定義される意味を含む可能な限り広い解釈を与えられるべきである。
【0079】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に指定がない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されたい。
【0080】
本明細書でも使用される場合、「約」という用語は、問題の特徴の技術的効果を確実にする精度の区間を示す。様々なアプローチでは、値と組み合わせたときの「約」という用語は、基準値の±10%を指す。例えば、約10オングストローム(Å)の厚さは、この実施例では、10ű1Å、例えば、0.9Å~1.1Åの厚さを指す。
【0081】
要約及びこの詳細な説明では、各数値は、「約」という用語によって修飾されたものとして1回読み取られるべきであり(既に明示的に修飾されていない限り)、文脈において別段の指示がない限り、そのように修飾されていないものとして再び読み取られる。また、要約及びこの詳細な説明では、有用、好適などとして列挙又は説明される物理的範囲が、終点を含む範囲内の任意及びすべての値が記載されていると見なされることを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10の範囲」は、約1~約10の連続体に沿ったそれぞれのかつすべての可能な数を示すように読み取られるべきである。したがって、範囲内の特定のデータポイントが、明示的に識別されるか、又はほんのいくつかの特定を指す場合、又はそうでない場合でさえ、本発明者らは、範囲内のいずれか及びすべてのデータポイントが指定されていると見なされるべきであり、本発明者らは、範囲全体及び範囲内のすべての点の知識を有することを理解することを理解されたい。
【0082】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「近く」は、「そこ」を含む。「及び/又は」という用語は、包括的な「及び」ケース及び排他的な「又は」の両方を指し、そのような用語は、簡潔にするために本明細書で使用される。例えば、「A及び/又はB」を含む組成物は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方を含み得る。
【0083】
本明細書に記載される様々な構成要素は、特定の材料又は材料の組成物を「含んでいる」か、又はそれらから作製されるとして記載され得る。一態様では、これは、構成要素が特定の材料からなることを意味し得る。別の態様では、これは、構成要素が特定の材料を含むことを意味し得る。
【0084】
「例示的な」という語は、本明細書では、「例、事例、又は例示として機能すること」を意味するために使用される。本明細書において「例示的な」として記載されたいかなる実装形態又は態様も、本開示の他の態様よりも必ず好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。同様に、「態様」という用語は、本開示のすべての態様が、論じられる特徴、利点、又は動作モードを含むことを要求しない。「結合された」という用語は、本明細書では、2つのオブジェクト間の直接的又は間接的結合を指すために使用される。例えば、オブジェクトAがオブジェクトBに物理的に接触し、オブジェクトBがオブジェクトCに接触する場合、オブジェクトA及びCは、それらが互いに物理的に直接接触しない場合であっても、互いに結合されているとやはり見なされ得る。更に、1つの構成要素が別の構成要素上に位置する文脈において、本出願において使用される「上に」という用語は、直接別の構成要素上にあり及び/又は別の構成要素内にある(例えば、直接構成要素の表面上にあるか若しくは構成要素内に埋め込まれた)構成要素を意味するために使用され得ることに留意されたい。したがって、例えば、第2の構成要素上にある第1の構成要素は、(1)第1の構成要素が第2の構成要素上にあるが、第2の構成要素に直接接触していないこと、(2)第1の構成要素が直接第2の構成要素上に(例えば、直接その表面上に)あること、及び/又は(3)第1の構成要素が第2の構成要素内にある(例えば、その中に埋め込まれている)ことを意味し得る。本開示において使用するとき、「約『値X』」、又は「およそ値X」という用語は、「値X」の10パーセント以内を意味するものとする。例えば、約1又はおよそ1の値は、0.9~1.1の範囲内の値を意味する。本開示では、様々な値範囲が指定、記載、及び/又は特許請求され得る。本明細書及び/又は請求項では、範囲が指定、記載、及び/又は特許請求されているときはいつでも、(少なくとも一実施形態では)端点を含むことが意図されていることに留意されたい。別の実施形態では、範囲は、範囲の端点を含まなくてもよい。本開示では、様々な値(例えば、値X)が指定、記載、及び/又は特許請求され得る。一実施形態では、値Xは、Xに正確に等しくてもよいことを理解されたい。一実施形態では、値Xは、上記の意味で「約X」であり得ることを理解されたい。
【0085】
様々な態様が上述されてきたが、それらは例としてのみ提示されており、限定ではないことを理解されたい。したがって、本発明の態様の幅及び範囲は、上記の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【国際調査報告】