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特表2023-509325受動的熱除去キャスクおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】受動的熱除去キャスクおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/10 20060101AFI20230301BHJP
   G21F 5/008 20060101ALI20230301BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20230301BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20230301BHJP
   G21C 19/06 20060101ALI20230301BHJP
   G21C 19/08 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G21F5/10 N
G21F5/008
G21F9/36 501J
G21C19/32 110
G21C19/06
G21C19/08 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535235
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 US2020064713
(87)【国際公開番号】W WO2021119557
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,901
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/120,097
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】クミーク,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サイトー,アール
(72)【発明者】
【氏名】ローウェン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】メイジャー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ロハス,シャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ケルヒャー,ケネス
(57)【要約】
キャスク(100)は、材料を遮蔽し、キャスクの深部から外部への熱輸送路(150)を介して受動的に熱を除去する。輸送路は、放射線を常にキャスクで遮蔽するように、非直線的なヒートパイプおよび伝導性ロッドであってもよい。ダンパー(160)は、キャスクからの熱損失を制御するために、熱輸送路の端部を包囲してもよい。対流によって熱を伝導する流体または溶融性材料のジャケット(110)は、貯蔵物を包囲するとともにキャスク内の温度を確実に一様に保持してもよく、熱輸送路はジャケットから熱を吸収してもよい。キャスクは、任意の発熱性物質や敏感な物質を安全に保管、輸送、および廃棄するために使用可能である。キャスクの開閉により、キャスク内の加熱器による一定の作動温度で、材料の装填および取り出しを同時に行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱キャスク(10)であって、
内部空洞(160)を形成し、電離放射線が前記空洞から前記伝熱キャスクの周囲の環境へ通過するのを制限する遮蔽体(11,12)と、
前記遮蔽体の内部から前記遮蔽体の外部への熱輸送路(150)と、
を備える、伝熱キャスク(10)。
【請求項2】
前記輸送路は、ヒートパイプおよび中実伝導性ロッドのうちの少なくとも一方である、請求項1に記載のキャスク。
【請求項3】
前記熱輸送路は、前記電離放射線を遮断するために前記遮蔽体を介した方向転換を含む、請求項1に記載のキャスク。
【請求項4】
前記空洞内に収容された核物質(1)であって、前記核物質は、新核燃料、使用済み核燃料、放射線源、照射済み廃棄物、および放射能汚染廃棄物のうちの少なくとも1つであり、前記熱輸送路は、前記空洞が650℃を超えないように前記キャスク外に熱輸送するように構成されており、前記熱輸送路は、少なくとも20の1kWのヒートパイプを含む、核物質(1)をさらに備える、請求項1に記載のキャスク。
【請求項5】
前記キャスクの端部に設けられたダンパー筐体(160)であって、前記熱輸送路が前記ダンパー筐体の中に延び、前記ダンパー筐体が、前記熱輸送路の周囲に流体対流を高めるために開放可能であり、また、前記熱輸送路の周囲の流体対流を制限するために閉鎖可能である、ダンパー筐体(160)をさらに備える、請求項1に記載のキャスク。
【請求項6】
前記空洞を包囲する対流ジャケット(110)であって、前記対流ジャケットは、前記空洞内に熱を一様に分布させるように構成されている、対流ジャケット(110)をさらに備える、請求項1に記載のキャスク。
【請求項7】
前記対流ジャケットは、前記空洞内に熱を一様に分散させるために溶融および循環するように構成された金属ナトリウムのみを含み、前記熱輸送路は、前記対流ジャケット内に端部を有する、請求項6に記載のキャスク。
【請求項8】
前記空洞を加温するための加熱器(120)と、
前記空洞を包囲する対流ジャケット(110)であって、同対流ジャケットは、前記空洞内に熱を一様に分配するように構成されており、前記加熱器は前記対流ジャケット内に延びている、対流ジャケット(110)と、
前記キャスクの端部に設けられたダンパー筐体(160)であって、前記熱輸送路が前記対流ジャケットから前記ダンパー筐体に延び、前記加熱器が前記対流ジャケットを加熱しているときに前記熱輸送路の周囲の流体対流を制限するために前記ダンパー筐体が閉鎖可能である、ダンパー筐体(160)と、
をさらに備える、請求項1に記載のキャスク。
【請求項9】
内部空洞(160)を形成し、電離放射線が前記空洞から伝熱キャスク(100)の周囲の環境に通過するのを制限する遮蔽体(11,12)と、前記遮蔽体の内側から前記遮蔽体の外側への熱輸送路(150)と、を備える伝熱キャスク(100)に核燃料を貯蔵する方法であって、
前記キャスクから原子炉に新燃料(1)を装填するステップと、
前記原子炉から前記キャスクに使用済み燃料または核物質を取り出すステップと、
を含む、伝熱キャスク(100)に核燃料を貯蔵する方法。
【請求項10】
前記キャスクが、前記装填中または前記取り出し中に、または前記装填と前記取り出しとの間に、閉鎖されず、また前記方法は、
前記新燃料を少なくとも200℃に加温するために、前記キャスク内の加熱器(120)を作動させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
図1Aは、使用済み核燃料および照射済み廃棄物のような放射性物質を含む発熱性廃棄物を貯蔵するために使用される関連技術による移送キャスク10を示す断面図である。図1に示すように、キャスク10は、燃料アセンブリ1および取扱バスケット2が挿入および格納され得る中央の開放空間を形成する内側遮蔽体11および外側遮蔽体12を備える。内側遮蔽体11は、構造的格納物を維持するとともにキャスク10の内容物から放出される放射線を遮断する劣化ウランであってもよい。外側遮蔽体12は、さらに衝撃の遮蔽、特に中性子照射の遮蔽を行うより厚みのある炭化ホウ素ジャケットであってもよい。この遮蔽体内の空洞の頂部にある保持スリーブ14は、挿入および保管中に燃料アセンブリ1を整列させるとともに位置決めした状態を保持する他、その指標付けおよび除去を可能にすることができる。内側遮蔽体11の内側の空洞は、キャスク10全体の大きな圧力差を回避するとともに、発熱する内容物を化学的に静止させた状態を維持するために、ヘリウムで埋め戻すことができる。ドリップパン16は、格納された内容物から落下する液体や固体の破片を受け止めることができる。図1Cは、関連技術によるキャスク10の立面線h1における断面図であり、内側遮蔽体11を外側遮蔽体12で被覆したリングとして示している。高強度ステンレス鋼であってもよい複数の補強用仕切り15A、15B、および15Cは、遮蔽体を分割するとともに補強し、キャスク10の外面を形成している。
【0002】
キャスク10の頂部の空所13は、キャスク10の頂端部のバイステムアセンブリ20まで接続してもよい。動的ポンプおよび流体再循環装置は、バイステムアセンブリ20を介して空所13に接続し、キャスク10の内容物を能動的に冷却して熱を移動させることができる。図1Bの立面線h2での断面図に示すように、バイステムアセンブリ20により、アセンブリ20へのクレーンなどの接続部を介するなどして、キャスク10を取り扱うことができる。適切な環境条件およびキャスク10の積極的な冷却により、放射線によって大量の熱を発生する高エネルギーな内容物は、キャスク10の損傷や環境への放射線照射を伴うことなく、長期間保管および輸送が可能である。2014年6月26日に公開されたLoewen等による特許文献1は、キャスクの熱を同様に放散するための能動的冷却装置を有する使用済み核燃料用の別の関連技術によるキャスクを記載しており、その全体が本明細書に開示されたものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0177775号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な実施形態によるキャスクは、その内容物から発生し得る熱を受動的に取り除く。キャスクは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、または中性子線の照射が周囲の環境に漏れるのを阻止するために内容物の周囲に設けられる遮蔽体と、キャスクおよび遮蔽体の内部からキャスクの外部、最終的には環境または外部のヒートシンクに熱を容易に移動させる1つ以上の熱輸送路と、を備える。輸送路は、ヒートパイプおよび伝導性ロッドなど、内部温度が有害な温度に達するのを防ぐのに十分な、高い熱対流、熱伝導、および/または放射を備える任意の構造体であってもよい。熱輸送路が屈曲していたり、キャスクの内側から外側まで直線でない部分があってもよく、これによりそのような経路を通る放射線は必ず遮蔽体に当たる。開閉可能なダンパーは、熱輸送路の端部を包囲し、熱輸送路の周囲の流体対流を制御し、最終的にキャスクからの熱損失を抑制してもよい。対流によって熱を伝導する流体または溶融性材料のジャケットは、貯蔵物を包囲するとともにキャスク内の温度を確実に一様に保持してもよい。熱輸送路および/または加熱要素は、ジャケットと連通していてもよく、所望に応じてジャケットを冷却および/または加熱してもよい。
【0005】
例示的な実施形態によるキャスクは、熱や放射線による損傷を与えることなく、任意の敏感な物質や発熱する物質を保管、輸送、および廃棄するために使用することができる。これには、放射性廃棄物、照射済み要素、使用済み核燃料や、新燃料などが含まれてもよい。キャスクの開閉により、キャスク内の加熱器による一定の作動温度で、材料の装填および取り出しを同時に行うことができる。キャスクからの受動的な熱除去により、溶融や格納容器喪失を伴うことなく複数の燃料アセンブリおよびその他の高放射性構造体をキャスクに設置および保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、関連技術による燃料輸送用キャスクを示す断面図である。
図1B図1Bは、図1Aのキャスクを示す断面図である。
図1C図1Cは、図1Aのキャスクを示す別の断面図である。
図2A図2Aは、例示的な実施形態による輸送用キャスクの外形を示す断面図である。
図2B図2Bは、図2Aのキャスクの熱輸送路の詳細を示す図である。
図2C図2Cは、図2Aのキャスクを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例示的な実施形態は、添付の図面を詳細に説明することでより明らかになるであろう。ここでは、同様の要素は同様の参照符号で表されているが、これらの参照符号は例示のためにのみ与えられたものであり、したがって、本明細書の例示的な実施形態を限定するものではない。
【0008】
これは特許文書であるため、これを読む際には一般的で幅広い解釈のルールを適用すべきである。この文書に記載されているすべてのものは、以下に添付されている特許請求の範囲に含まれる主題の一例である。本明細書に開示されている具体的な構造および機能の詳細は、単に実施例の形成方法および使用方法を説明するためのものである。本明細書で具体的に開示されていないいくつかの異なる実施形態および方法が特許請求の範囲に含まれる可能性がある。したがって、請求項は多くの代替的形態で具現化される可能性があり、本明細書に記載された例のみに限定して解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書書では、様々な項目を説明するために「第1」、「第2」、「別の」等の修飾語を用いることがあるが、修飾語の順序や関係で修飾される項目が限定されるものではない。これらの用語は、1つの要素を他の要素から区別するためにのみ使用される。「第2」以上の序数がある場合、単にその数の要素が存在しなければならず、必ずしも差や要素間の他の関係があるわけではない。例えば、順序や差が別途記述されていない限り、第1の要素を第2の要素と呼び、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。項目を列挙する場合、接続詞「および/または」は、関連付けられる列挙項目のうちの1つ以上のすべての組合せを含む。「etc.」の使用は、「et cetera」と定義され、前の項目の同じ群に属する他のすべての要素を、任意の「および/または」の1つ以上の組み合わせで含むことを示す。
【0010】
ある要素が他の要素に「接続されている」、「結合されている」、「嵌合されている」、「取り付けられている」、「固定されている」などと関連する場合、その要素は他の要素に直接接続されていてもよいし、介在する要素が存在していてもよい。一方、ある要素が他の要素に「直接接続されている」、「直接結合されている」などと表現される場合、そこには介在する要素は存在しない。要素間の関係を表すその他の用語も同様に解釈されるべきである(例えば、「between」と「direct between」、および「adjacent」と「direct adjacent」など)。同様に、「通信可能に接続されている」などの用語は、無線で接続されているか否かにかかわらず、仲介装置やネットワークなどを含む2つの装置間の情報交換およびルーティングのあらゆる変形例を含む。
【0011】
本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、言語が明示的に別のことを示していない限り、単数形および複数形の両者を含むことを意図している。「a」および「an」などの不定冠詞は、以前に導入されたものであってもなくても、修飾されたあらゆる用語を導入または参照し、「the」などの定冠詞は、同じ以前に導入された用語を参照する。本明細書で使用される際「comprises」、「includes」、「has」、または「with」という所有する語は、記載された特徴、特性、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、特性、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加をそれら自体排除するものではない。むしろ、「のみ」や「単数の」などの排他的修飾語は、修飾される語における複数または他の主題の存在や追加を排除する場合がある。ここでいう「熱輸送路」とは、外部の動力や駆動する中実部品なしに、周囲の材料よりも高速で熱を輸送する中実構造体のことであり、伝導性ロッドおよびヒートパイプなどが含まれる。
【0012】
以下で説明する構造体および操作は、図に記載された順序とは異なる場合がある。例えば、連続して表示されている2つの操作および図のうちの少なくともいずれか一方は、実際には同時に実行されることもあれば、関係する機能/行為に応じて逆の順序で実行されることもある。同様に、以下で説明する例示的な方法の中の個別の操作は、個別にまたは連続的に繰り返し実行され、以下で説明する単一の操作とは別に、ループまたは他の一連の操作を提供することができる。以下に説明する特徴および機能を有する任意の実施形態または方法は、任意の実行可能な組み合わせで、例示の実施形態の範囲内にあるものと推定されるべきである。
【0013】
本発明者らは、そのことを認識している。本発明者らは、これらの課題および本発明者らが認識した他の課題を、例示的な実施形態によって可能となる独自の解決策で解決するために、以下に説明する例示的な実施形態および方法を開発した。
【0014】
本発明とは対照的に、以下で説明するいくつかの例示的な実施形態および例示的な方法は、本発明として、かつ/または本発明に関連して使用することができる様々な異なる構成の単なるサブセットを示している。
【0015】
図2Aは、キャスクの内容物から受動的に熱を除去する熱輸送路を使用した例示的な実施形態による伝熱キャスク100の外形を示す断面図である。キャスク100は、以下に説明するように追加された熱輸送要素、および強度の高い非反応性材料で形成された構造要素および遮蔽要素を有する、上述または図1A乃至1Cに示す関連技術によるキャスクといくつかの同様の構成を有することができる。例示的な実施形態による伝熱キャスク100は、堅牢であり、格納容器の完全性をシールし、そのため、力または厳しい環境に暴露されたときに漏れ、反応、または損傷のリスクなしに、放射性成分および核物質を含む危険または敏感な物質を保管、輸送、および処分するために使用可能である。
【0016】
図2Aに示すように、例示的な実施形態による伝熱キャスク100では、熱輸送路150がキャスク100の内側と外側または外側付近とを直接接続し、中実可動部なしでキャスク100から直接熱を運び出す。例えば、熱輸送路150の第1の端部は、内側遮蔽体11、さらには使用済み核燃料1などの発熱性貯蔵物を保持する空洞を含む遮蔽体の奥深くまで延びてもよい。熱輸送路150の反対側の端部は、環境と直接連通するように、外側ダンパー160などの外側部分、またはキャスク10の外部にまで通過してもよい。
【0017】
図2Bは、図1Aの熱輸送路150を詳細に示す図であり、例示的な実施形態による伝熱キャスク100の内部から周辺環境への直接的な直線的経路を回避するために経路150の方向転換を示すものである。経路150は、完全遮蔽、異なる遮蔽、または必ずしも全く遮蔽でなくてもよいので、使用済み燃料1などの放射線生成貯蔵要素から外部キャスク100への直線は、危険なまたは不要な放射線が逃げる暴露経路を提供してもよい。キャスク10の外側でのこのような照射を防止または低減するために、経路150は、周囲の外側遮蔽体12を通る図2Bの横方向のジョグなどを介して方向を変え、キャスク100の放射線遮蔽体を通る任意の直線経路を取り払ってもよい。流路150は、キャスク100の内部から同外部への逃げ道を防ぐために、任意の数の異なる方向に湾曲し、角度をなし、屈曲するなどしてもよい。加えて、またはこれに代えて、流路150は、放射線が逃げるのをさらに防ぐために、遮蔽材料を組み込んだり、両端部を遮蔽したりしてもよい。
【0018】
熱輸送路150は、そのキャスク100の内部付近の部分とキャスク100の外部との間で熱を容易に伝達する。例えば、図2Cに示すように、熱輸送路150は、銅、鉄、タングステン、アルミニウム、および/または窒化アルミニウムや炭化ケイ素などの伝導性合金などの中実で熱伝導性を備える棒であってもよい。図2Aに示すように、熱輸送路150は、蒸発および凝縮する冷却剤を介して対流および伝導により熱を伝導する内部輸送路を備えるヒートパイプであってもよい。予想される熱負荷を除去するためにのみ必要な、任意の数の熱輸送路150を例示的な実施形態で使用することができる。例えば、20の1kWのヒートパイプのような十分な大きさおよび数を有する熱輸送路150を使用して、キャスク100に入れられた物体の放射能に基づいて、温度が確実に650℃を超えないように、あるいはそれに近づくようにしてもよい。熱輸送路150は、キャスク100の他の構造要素と同様に、放射線に暴露されたときに実質的な強度または材料の変化または劣化を受けない一方でキャスク100の構造的完全性を維持するために十分に強度のある材料で形成されており、ステンレス鋼、アルミニウム合金、ニッケル合金、ジルコニウム合金、カーバイド等を含む。このように、熱輸送路150は、キャスク100が堅牢であり、外部の動力または移動構造体なしに、内部の放射性元素に対する封じ込めを確実に維持しながら、熱をキャスク100から受動的に逃がすことを容易に可能にし得る。
【0019】
例示的な実施形態による熱輸送キャスク100は、熱輸送路150の冷却部または周囲部に複数のダンパー160を備えてもよい。例えば、ダンパーは、キャスク100の端部の外周部の周囲にスカートまたはリングを形成してもよく、または熱輸送路150の周囲の他の任意の箇所に配置されてもよい。ダンパー160は、熱輸送路150上の空気の流れおよび対流を可能にし、キャスク100からの伝熱を最大化するために手動または自動的に開かれてもよく、またはキャスク100の加熱を可能にするために部分的に開閉されてもよい。
【0020】
例示的な実施形態の伝熱キャスク100は、伝熱性蓄熱器として機能する対流ジャケットまたはリング110を備えてもよい。例えば、リング110は、キャスク100の典型的な内部温度にて溶融して対流する液体となる2インチ(約5.08センチメートル)のナトリウムリングであってもよい。リング110は、熱輸送路150の加熱された部分またはもっとも内側の部分と直接またはその付近で接続して、経路150に熱を伝達し、続いて経路150を通って、ダンパー160付近などの外側部分に伝達してもよい。リング110は、内側遮蔽体11と外側遮蔽体12との間に設けられてもよく、同じ外径を達成するために関連技術によるキャスクのものよりも肉薄であってもよく、あるいは異なる外径で同じまたはより大きなサイズであってもよい。
【0021】
例示的な実施形態によるキャスク100の遮蔽体および内部構造的仕切りによって形成される内部空洞160は、液体金属原子炉、軽水炉または重水炉、黒鉛減速炉等のための6つの燃料アセンブリ1等、任意の数の熱生成物質を収容するための大きさとすることができる。内部空洞はヘリウムで充填する必要はなく、キャスク100の伝熱能力を考慮し、アルゴンや窒素を含む任意の不活性充填材を使用できる。中央ロッド105は、空洞160を詰めるため、放射線を吸収するために使用され、かつ/または取り扱いを可能にするためにキャスク100の頂部から延びてもよい。例えば、中央ロッド105は、中性子吸収体であると同時に、キャスク100の残部と構造的に一体的であり、端部を通過する箇所で同じように取り扱うことを可能にする強度の炭化ホウ素であってもよい。このため、複数の核燃料アセンブリ1を充填しても、空洞160での核分裂の可能性が制限されてもよい。図2Cに示すように、空洞160は、遮蔽体11/12およびリング110と同様に、複数の熱輸送路150の外周部により、構造的仕切りを用いて任意の順序または厚みで包囲することができる。このようにして、空洞160は、輸送路150およびリング110によって一様にかつ十分に冷却/加熱され得る。
【0022】
例示的な実施形態による伝熱キャスク100は、リング110および空洞160の内容物を所望の温度に加熱するための浸漬型加熱ロッド120を備えてもよい。浸漬型加熱ロッド120は、熱輸送路150に対して同様に配置され、大きく逆の方法で作動し、キャスク100に熱を供給し、またはキャスク100に熱を発生させることができる。例えば、浸漬型加熱ロッド120は、ロッド120を加熱し、リング110および/または空洞160に熱を伝導するために、キャスク100の頂端部付近に電力接続部121を備える電気抵抗加熱器であってもよい。ロッド120は、図2Cに示すように、熱輸送路150とともにリング110への外周部の周囲に千鳥状に配置され、これにより一様に加熱および冷却を行うことができる。例えば、キャスク100が液体金属原子炉に挿入するための新しい燃料アセンブリ1を貯蔵し輸送するために使用される場合、浸漬型加熱ロッド120を作動させることによって、貯蔵された構成要素を200℃を超える作動温度付近にすることが望ましい。そのような作動の間、ダンパー160は、熱輸送路150の冷たい端部への対流を防止または低減するために閉じられてよく、そのため、熱はキャスク100から失われない。例示的な実施形態による伝熱キャスク100は、この時間の間に空洞160の内容物の挿入または除去を可能にする端部の蓋または継ぎ目を含んでもよく、キャスク100は、浸漬型加熱ロッド120によって作動温度に維持されるので、すべての装填および取り出しの間に開放状態および作動温度に維持され得る。
【0023】
このようにいくつかの例示的な実施形態および方法が説明されたが、当業者には、日常的な実験を通して、さらに発明的な活動をすることなく、実施例を変化させることができることが理解されよう。例えば、いくつかの例示によるシステムでは、いくつかの環状遮蔽体を備えるキャスクが使用されているが、他のキャスクの構成が例示のものと組み合わせて使用可能であることが理解される。変形は、例示的な実施形態の趣旨および範囲から逸脱するものとはみなされず、当業者には明らかであろうすべてのこのような変更は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
【国際調査報告】