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特表2023-509354抗体ニモツズマブの安定で高濃度の製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】抗体ニモツズマブの安定で高濃度の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536924
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 CU2020050007
(87)【国際公開番号】W WO2021121444
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】CU-2019-0104
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500185689
【氏名又は名称】セントロ ド インムノロジア モレキュラー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス テレーロ、ヤイコ サッダン
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス サエス オルガ リデア
(72)【発明者】
【氏名】サント トマス ポムパ、フリオ フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】セデーニョ アリアス、メルセデス
(72)【発明者】
【氏名】ラシダ デ ラ ルス ヘルナンデス、カティヤ
(72)【発明者】
【氏名】ボッジアーノ アヨ、タミー
(72)【発明者】
【氏名】レオン モンソン、カレット
(72)【発明者】
【氏名】カスティージョ ヴィトロク、アドルフォ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA30
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD09E
4C076DD09F
4C076DD26Z
4C076DD51
4C076DD60Q
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23E
4C076EE23F
4C076FF11
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジー及び医学の分野に関し、50~200mg/mLの濃度範囲のヒト化モノクローナル抗体ニモツズマブを含む高濃度医薬製剤を記載する。これらの溶液の低い粘度値は、がん治療において皮下又は筋肉内に使用することを可能にする。これらの製剤は、液体形態及び凍結乾燥形態の両方で安定である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体(mAb)ニモツズマブの高濃度で安定な医薬製剤であって、
a)100~210mg/mLの範囲内の濃度のニモツズマブmAb、
b)6.5±0.5のpH範囲で、5~30mMの範囲内の濃度の緩衝物質、
c)0.02~0.06%の範囲内の界面活性剤、
d)30~150mMの範囲内のアミノ酸又はその混合物、及び
e)任意選択的に2~6%の範囲内の安定化剤としての炭水化物
を含むことを特徴とする、上記医薬製剤。
【請求項2】
緩衝物質が、
ヒスチジン緩衝液、及び
リン酸ナトリウム
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
界面活性剤が、
ポリソルベート20、及び
ポリソルベート80
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
アミノ酸が、
L-メチオニン、及び
グリシン
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
炭水化物がスクロースである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
液体形態の、請求項1~5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
凍結乾燥形態の、請求項1~5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
150mg/mlの濃度で5cP以下の粘度を有することを特徴とする、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項9】
がんを治療するための、請求項1~8のいずれかに記載の医薬製剤の使用。
【請求項10】
それを必要とする患者を治療する方法であって、請求項1~8のいずれかに記載の医薬製剤を、200mg/70kg~400mg/70kgの用量レベルで、1.3~2mLの注射量を用いて皮下投与することを含み、医薬製剤の用量を分割して2つ以上の別個の注射部位に投与することができる、上記方法。
【請求項11】
それを必要とする患者を治療する方法であって、請求項1~8のいずれかに記載の医薬製剤を、150mg/70kg~1000mg/70kgの用量レベルで、1.3~5mLの注射量を用いて、筋肉内投与することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及び医学の分野に関し、特に、がん治療としての皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与を意図したヒト化モノクローナル抗体ニモツズマブの高濃度で安定な製剤を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
ニモツズマブは、ヒト上皮成長因子受容体Her1を認識するヒト化IgG1アイソタイプモノクローナル抗体(mAb)である。これは、マウス起源mAb ior egf/r3の超可変領域のDNA、ならびにヒト起源(それぞれREI及びNEWM)の重鎖及び軽鎖の可変領域及び定常領域のフレームをクローニングすることによって得られた(Mateo,C.et al.(1997),Immunotechnology 3:71-81)。ニモツズマブの有効性は、頭頸部腫瘍(Crombet,T.et al.(2004)J Clin Oncol.22:1646-1654)、神経膠腫(Ramos,T.et al.(2006)Cancer Biol Ther.5:375-379、MacDonald,T.et al.(2011)Neuro Oncol.13:1049-1058)及び食道腫瘍(Ramos-Suzarte,M.et al.(2012)Cancer Biology&Therapy 13:600-605)を有する患者における臨床試験において実証されている。この抗体(Ab)は、現在、鼻咽頭がん、局所進行食道がん、及び食道扁平上皮がん(Galluzzi,L.et al.(2012)OncoImmunology.1:28-37)における第III相臨床試験で試験されている。
【0003】
mAbニモツズマブの投与は、該mAbが5mg/mLの濃度である液体製剤を使用して、注入として静脈内(IV)経路によって行われる(https://www.cecmed.cu/registro/rcp/cimaher-nimotuzumab)。この投与は、0.9% NaCl溶液のバッグに5mg/mLの濃度のニモツズマブのバイアル4本を溶解することによって行われる。ニモツズマブの市販製剤の組成はまた、約7のpHで15mMの濃度のリン酸ナトリウム緩衝液、150mMの塩化ナトリウム及び0.02%のポリソルベート80を含む(Revista Cubana de Farmacia.2012;46(3):379-380)。臨床環境でのニモツズマブは、放射線療法及び化学療法と組み合わせて、200mg(膵臓がんでは400mg)の用量で週に1回、6週間投与される。次いで、患者の臨床状態が許容するまで、200mgの維持用量を15日ごとに投与する。したがって、病院環境外の患者におけるニモツズマブのこの連用を容易にする投与経路を有することが重要である。
【0004】
知られているように、IV投与には、投与を行うのに必要な長期間、投与手順を訓練された資格のある人員の必要性、感染のリスク及び重度の有害反応などのいくつかの欠点がある(Michael F.Haller(2007)Pharmaceutical Technology,31(10):118-132)。
【0005】
このため、mAbのSC投与に対する世界的な傾向が増加している(Viola M、Sequeira Jら(2018)J Control Release;286:301-314)。なぜなら、この経路は、単一バイアルを必要な量で操作及び投与することがより容易であるので(Haller MF(2007)Pharmaceutical Technology,31(10):118-132)、投与を行うのに必要な時間及び投与される体積の減少、感染リスクの減少、ならびにさらには患者による薬剤の自己投与の可能性などの利点を提供するからである。IM投与も、IV投与と比較して、より低い治療コスト及び必要とされる集中治療が少ないなどの利点を有する。一方、IM経路は、IV経路よりも感染のリスクが低く、投与時間が短い。また、IM経路で薬剤を投与する場合、有害作用や過量投与が生じる可能性が低いことが知られている。IM投与後の薬剤の吸収及びバイオアベイラビリティは非常に高く、IV経路を使用した場合に報告された値とほぼ同じくらい高い値であることにも留意すべきである。(Jing-fen Jin et al.,Patient Preference and Adherence,2015,9:923-942)。
【0006】
SC製剤において現在臨床で使用されているmAbの中には、トラスツズマブ(米国特許第9,345,661号明細書)及びリツキシマブ(米国特許第10,280,227号明細書)があり、両方の製剤において、ヒアルロニダーゼ酵素が、注射量を1.5mL超まで増加させ、mAbの良好な体内分布を達成するために使用され、したがって、療法効果を発揮するのに必要な用量に確実に到達する(Shpilberg,O.and C.Jackisch.(2013)British Journal of Cancer.109:1556-1561)。
【0007】
ヒアルロニダーゼ酵素を使用する別の高濃度製剤は、特許出願CN 107898756A号明細書に記載されている製剤である。この特許では、SC又はIM使用のための高濃度のニモツズマブmAbの製剤が特許請求されている。特許に報告されているように、この製剤中のヒアルロニダーゼの存在は、必要な透過性が達成されることを確実にするために必要である。
【0008】
抗EGFR mAbを含む限外濾過によって得られる高濃度液体製剤が特許請求されている国際公開第2011080209号パンフレットに記載されている製剤のような、上皮成長因子に対するmAbの高濃度製剤の以前の報告がある。この特許では、特許請求されている製剤をニモツズマブmAbに使用することができると述べられているが、この特許請求の範囲を裏付ける実際的な証拠は提供されていない。この特許出願では、1mg/ml~200mg/mlの範囲のmAbの濃度が特許請求されているが、最大50mg/mlのmAb hu-ICR 62の濃度にのみ到達する。さらに、この特許出願で特許請求されている賦形剤及び濃度の範囲は、最新技術で最も一般的に使用される賦形剤及び濃度のほとんど全てを含むため、広すぎる。本発明では、国際公開第2011080209号パンフレットで特許請求されている範囲に含まれる賦形剤及び濃度のいくつかの組み合わせは、ニモツズマブmAbにとって最も安定な、又は最良の製剤選択肢ではないことが実証された。
【0009】
IM経路によって投与されるmAbの主な例として、パリビズマブ(palivuzumab)mAbがある。このmAbは、水中で再構成された後、ヒスチジン、グリシン及びマンニトールなどの賦形剤に加えて100mg/mLの濃度のパリビズマブ(palivuzumab)mAbを有し、呼吸器合胞体ウイルスの治療のために15mg/kg用量で使用される凍結乾燥製剤として提示される。
【0010】
安定性、低濁度及び粘度を維持するmAbの製剤を達成することは、適切なスクリーニング方法論を必要とする課題である。高濃度で上記の要件を満たすためにmAbに必要とされる賦形剤及び条件の正しい組み合わせを見出すという課題は些末なことではない。各々の組み合わせが異なり、それらの主要な分解機序に関して異なる挙動をするため、これまでのところ、どの組み合わせが特定のmAbにとって最も効果的であるかを事前に予測することは可能ではないからだ(Manning MC et al.(2018)タンパク質化学及び構造生物学の進歩(Advances in Protein Chemistry and Structural Biology),112:1-59、Viola M,Sequeira J,et al.(2018)J Control Release;286:301-314)。
【0011】
本発明の発明者らは、mAbの安定性、低濁度及び低粘度を保証する賦形剤の特定の組み合わせを有する、これまでに報告されたものとは異なるニモツズマブmAbのための製剤を見出した。これらの製剤はまた、SC製剤の安定性及び透過性を保証するためにヒアルロニダーゼ酵素を使用する必要がないので、より複雑ではない。これらの特定の製剤では、100~180mg/mLの濃度のニモツズマブも達成され、したがって、投与体積を増加させることなくmAb用量を増加させることが可能になる。SC又はIM経路によるこれらの製剤の投与は、慢性投与が必要な場合、SC経路の場合には200mg~360mgの用量で、IM経路の場合には200~720mgの用量で、これらの使用を容易にし、患者によって自己投与することができるというさらなる利点を有する。
【発明の概要】
【0012】
一実施形態では、本発明の目的は、100~210mg/mLの濃度範囲のニモツズマブmAb、5~30mMの範囲の緩衝物質、6.5±0.5のpH値、0.02~0.06%の範囲の界面活性剤、30~150mMの範囲のアミノ酸又はその混合物、及び任意選択的に2~6%の範囲の安定剤としての炭水化物を含む、ニモツズマブモノクローナルAbの高濃度で安定な医薬製剤である。
【0013】
特に、上記製剤の緩衝物質は、ヒスチジン緩衝液及びリン酸ナトリウムから選択される。界面活性剤は、ポリソルベート20及びポリソルベート80から選択される。アミノ酸は、L-メチオニン及びグリシンから選択される。製剤に使用される炭水化物はスクロースである。
【0014】
より具体的には、上記製剤は、液体形態又は凍結乾燥形態であり得る。150mg/mLの濃度の液体製剤は、5cP以下の粘度を有する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、がんの治療における上記の医薬製剤の使用である。特に、それを必要とする患者を治療する方法であって、本発明に記載の医薬製剤を、200mg/70kg~750mg/70kgの用量で、SC又はIM経路によって投与することを含む方法が記載される。このmAbのSC投与は、1.3~2mLの注射量、及び150~200mg/mLの濃度を用いて行われる。さらに、mAbは、より高い用量のmAbが必要とされる場合、1つ以上の注射部位に投与することができる。IM経路の場合、150mg/mL濃度で1.3~5mLの注射量で、200~750mg/70kgの用量が達成される。200mg/mLの濃度及び1.3~5mLの筋肉内体積を使用する場合、260~1000mg/70kgの用量が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ニモツズマブmAbの安定な高濃度製剤の取得
本発明は、本明細書においてhR3とも呼ばれる高濃度のmAbニモツズマブの製剤に関する。本発明に記載される製剤中のニモツズマブの濃度は、100~210mg/mlの範囲、好ましくは100~180mg/mlの範囲である。本特許出願に開示されるニモツズマブ製剤は、緩衝物質、界面活性剤、アミノ酸、及び任意選択的に炭水化物を含む。緩衝物質は、製剤のpHを6.5±0.5のpH範囲に維持することを可能にする5~30mMの範囲のヒスチジン又はリン酸ナトリウムであり得る。本発明の製剤は、界面活性剤としてポリソルベート20又はポリソルベート80を0.02~0.06%の濃度範囲で含み得る。炭水化物は、2~6%の濃度範囲のスクロース及びトレハロースであり得る。さらに、アミノ酸は、30~150mMの濃度範囲のL-メチオニンもしくはグリシン又はその両方から選択される。
【0017】
これらの製剤を得るために、30~50kDの孔径を有するセルロース膜を有するAmicon Ultra限外濾過-ダイアフィルトレーション(UF/DF)システムを使用することができる。試料をダイアフィルトレーション又は濃縮するために、2~8℃の温度で900×g~1100×gの範囲の遠心分離速度を使用することができる。試料は滅菌濾過に供し、試料の体積に応じて使用するフィルターの種類を選択する。本発明に記載の製剤を調製する別の方式は、実験室規模又はパイロット規模の接線流濾過システムによるものである。この目的のために、30及び50kDの孔径の膜を使用することができる。緩衝液を変更するための試料のダイアフィルトレーションは、10~15ダイアボリューム(diavolume)の最終緩衝液を使用して行われる。試料を濃縮するために、初期体積は、所望の濃度に対応する計算体積よりも小さい体積に減少させなければならない。
【0018】
これらの製剤は、最良の緩衝液及びpH値が選択される第1の段階からなる段階的スクリーニング戦略によって得ることができる。第2の段階では、最も適切な塩、界面活性剤及び炭水化物が選択され、続いて第3の段階では、製剤にとって最良のアミノ酸が選択される。使用することができる別の方法は、要因計画に従った異なる種類の賦形剤又はそれらの組み合わせの使用からなる同時スクリーニングである。この方法を使用した場合、同じ製剤中の2つ又は3つを超える賦形剤間に相互作用が起こる可能性がある。
【0019】
別の態様では、本発明は、上記の製剤を凍結乾燥及び再構成する方法、ならびに安定な等張再構成製剤を調製する方法を提供する。上記方法は、再構成製剤中のmAb濃度が少なくとも100mg/mL~210mg/mL、すなわち、凍結乾燥前の混合物中のmAb濃度より3~5倍高くなるように、上記緩衝液中のmAbと安定剤との凍結乾燥混合物を再構成することを含む。
【0020】
ニモツズマブの高濃度製剤の安定性の決定
最も安定した製剤変形例及び安定性に対する各賦形剤の影響を検証するために、安定性を予測するパラメータの研究を動的光散乱(DLS)によって行う。上述のこれらのパラメータは、拡散相互作用パラメータ(kD)、ゼータ電位及び凝集温度(Tagg)である。kDの測定は、12mg/ml~2mg/mlの濃度のニモツズマブの拡散係数を測定することによって行う。Taggは、25~76℃の温度傾斜で初期試料から決定され、ゼータ電位は、初期濃度で試料を測定することによって決定される。
【0021】
最良の製剤を決定するために使用される別の方法は、ストレス試験であり、この場合、試料は、10~20日間、恒温槽内で50℃の温度に供され、次いで、物理化学的及び生物学的決定によって異なる時間間隔で分析される。
【0022】
これらの決定の中には濁度があり、濁度は、340~450nmのUVスペクトルにおける試料の吸光度で測定され、大きな凝集体の検出を可能にする。別の例は、溶液中の凝集体又は粒子の形成を検出するために、無傷の未希釈試料の初期濃度を測定することによって行われるDLSによる粒径の決定である。粘度測定は、100~500nmの公称径範囲、好ましくは200nmの公称径のDLS径標準を使用して、高濃度試料の場合に行う。
【0023】
試料はまた、SDS-PAGEによって分析し、ストレス試験中に断片形成があったかどうかを判定する。7.5%のポリアクリルアミドゲル及びクーマシーブルー又は硝酸銀染色を用いて、非還元条件下で試験を行った。サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によるモノマー純度の決定も行う。
【0024】
mAbの生物学的活性は、ニモツズマブの参照物質に対する相対効力によって決定され、フローサイトメトリーによって、又はヒトHer1を発現する細胞系統における細胞増殖の阻害によって測定することができる。
【0025】
治療方法
本発明の製剤目的は、頭頸部、神経膠腫、食道、肺及び膵臓腫瘍を有する患者を治療するために使用することができる。療法的使用に関して、上記製剤は、療法作用を増強するために、単独療法として、又は放射線療法もしくは化学療法などの腫瘍の治療に使用される従来の療法と組み合わせて、疾患を有する対象に投与されなければならない。
【0026】
これらの製剤の投与は、SC又はIM経路によって行われる。SC経路の場合、200mg/70kg用量のために、1.33mLの最小試料体積が使用されるべきである。より大きい用量の場合、注射量は、300/70kgの最大用量に達するまで、2mLまで増加させることができる。300mg/70kgを超える用量の投与が必要な場合、150mg/mLを超える濃度のmAbを使用することができ、又は用量を分割して2つの別個の注射部位に投与することができる。上記投与に使用することができる注射部位は、限定されるものではないが、三角筋領域、腹部領域及び大腿の前面領域である。診療所で使用される用量が週に200mgである場合、134mg/mLの濃度のニモツズマブが、治療を施すのに十分であろう。より高い用量が必要とされる場合、210mg/mLまでのより高い濃度のニモツズマブを使用することができる。例えば、400mgの用量を必要とする膵臓がんの治療には、2つの別個の注射部位が使用されるべきである。
【0027】
文献中の報告によれば、許容される最大IM投与体積は5mLであり、したがって、この投与経路を使用する場合、注射量は1.3~5mLであり得、mAbの濃度が150mg/mLの場合、200~750mg/70kgの用量となる。200mg/mLの濃度を使用する場合、用量は1000mg/70kgまでであり得る。
【0028】
本発明を、以下の例及び図面を用いてさらに詳述する。しかしながら、これらの例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】DLSによって決定されたhR3 mAb製剤変形例のkD値を示す図である。
図2】DLSによって決定されたhR3 mAb含有アミノ酸の異なる製剤のkD値を示す図である。
図3】アミノ酸を含有するhR3 mAb製剤のDLSによって測定した粒径を示す図である。
図4】4℃で3ヶ月間保存した150mg/mLの濃度のhR3 mAb製剤のDLSによって測定した粒径を示す図である。
図5】4℃で3ヶ月間保存した150mg/mLの濃度のhR3 mAb製剤のDLSによって測定した粘度を示す図である。
図6】4℃で3ヶ月間保存した150mg/mLの濃度のhR3 mAb製剤のSEC-HPLCによって測定したモノマー純度を示す図である。
図7】無胸腺Balb/cマウスに50mg/kgの用量でIV及びSC経路投与したニモツズマブmAbの抗腫瘍効果を示す図である。
【実施例
【0030】
例1.ニモツズマブmAbのための製剤賦形剤のスクリーニング。
表1に示すように、4因子及び1/2画分の要因計画から9つの製剤変形例を調製した。hR3sol9変形例は、hR3 mAbの元の製剤に対応する。溶液を調製した後、孔径0.2μmの膜フィルターに通して濾過し、4℃で保存した。
【表1】
【0031】
溶液が調製されると、50kDの孔径、再生セルロース膜、15mLの試料体積のAmicon Ultra Centrifugal Filter Unitにおいて、UF/DFによって緩衝液交換を行った。試料を4℃の温度で936×gで遠心分離した。mAb hR3を、15mMリン酸ナトリウム緩衝液、150mM塩化ナトリウム及び0.2mg/mL Tween 80、pH7溶液中の出発生成物として使用した。10mg/mLのAb濃度で製剤を調製した後、拡散相互作用パラメータ(kD)の測定をDLSによって行った。
【0032】
図1に見られるように、より高いkD値を有する変形例、したがって、より安定なタンパク質-タンパク質相互作用を有し、凝集する傾向がより少ない変形例は、hR3sol8及びhR3sol3変形例であり、続いてhR3sol4変形例であり、これは製剤中の炭水化物の安定化効果を示す。この試験の過程で、hR3sol8変形例のkD値がhR3sol3変形例のkD値よりもはるかに高いことも観察され、これはヒスチジンとスクロースとの組み合わせがホスファートとトレハロースとの組み合わせよりも高い安定性を有することを示唆している。最良の変形例のいずれにおいてもNaClは存在せず、これはNaClがhR3mAbの安定性を損なうことを示す。
【0033】
どの変形例が最も安定であるかを検証することを目的とした別の実験は、50℃で14日間行われたストレス試験であった。ストレスに供した後の試料をSEC-HPLCによって分析して、モノマーの純度を決定した。表2は、最も高いモノマー純度を有する変形例がhR3sol8及びhR3sol3であったことを示し、これはkD値測定の結果と一致する。最も低いモノマー純度を有する変形例はhR3sol9及びhR3sol2、すなわち、それらの組成物中に塩化ナトリウムを有する変形例であり、これは、使用される緩衝液の種類にかかわらず、安定性に対するこの賦形剤の負の効果を示した以前の結果をさらに裏付けている。
【表2】
【0034】
以前に得られた結果に基づいて、最も安定なhR3 mAb製剤変形例は、塩化ナトリウムの非存在下でスクロース及びトレハロースなどのいくつかの炭水化物を有するものであると結論付けられた。さらに、スクロースとヒスチジンとの組み合わせは、ホスファートとトレハロースとの組み合わせよりもかなり安定である。
【0035】
例2.hR3 mAbの製剤化のためのアミノ酸のスクリーニング。
賦形剤のスクリーニング後に得られた2つの最良の変形例から異なる溶液を調製し、アミノ酸(L-アルギニン、L-メチオニン、グリシン)をそれぞれに添加した。調製方法は、賦形剤のスクリーニングについて例1に記載したものと同様であった。表3は、異なるアミノ酸を含有するhR3 mAbの製剤変形例を示す。
【表3】
【0036】
DLSによって行ったkD測定の結果を図2に示す。観察され得るように、最も高いkD値を有する変形例は、hR3sol80、hR3sol81、hR3sol82及びhR3sol32であり、これらの中で最も安定な変形例は、ヒスチジン緩衝液を有するものであった。両方の緩衝液において、メチオニンの存在は、他のアミノ酸では生じない高いkD値をもたらすことにも留意すべきである。
【0037】
異なる製剤を恒温槽内で50℃で15日間ストレスに供し、0、5、12及び15日目にDLSによって粒径を測定した。図3は、これらの測定の結果を示す。見られるように、粒径がより小さい変形例、したがって凝集がより少ない変形例は、hR3sol80、hR3sol82及びhR3sol83変形例であった。これにより、ヒスチジン緩衝液を有する製剤がリン酸緩衝液を有する製剤よりも安定であること、及びL-メチオニン又はグリシンを含有する変形例がL-アルギニンを含有する変形例よりも安定であることが見出されたことが確認される。
【0038】
さらに、表4は、50℃でストレスに供した製剤のモノマー純度値を示す。
【表4】
【0039】
表4は、ストレスに供した後の最も高いモノマー純度を有する変形例はhR3sol82及びhR3sol80であることを示す。この結果は、ヒスチジン緩衝液を有する変形例が、リン酸緩衝液を有する変形例よりも安定であることを示す。メチオニンを含む製剤は、アミノ酸を含まない製剤よりも安定性が高いことも示唆される。最も低い純度を有する製剤は、hR3sol81及びhR3sol90であった。これは、L-アルギニン及び塩化ナトリウムの両方がhR3 mAb製剤に対して不安定化効果を有することを示唆する。以前の結果によれば、pH6のヒスチジン緩衝液、スクロース、ポリソルベート80及びL-メチオニンを有するhR3 mAb製剤が最も安定である。
【0040】
これらの結果は、特許国際公開第2011080209号パンフレットの特許請求されている組み合わせの範囲内にあるhR3sol2、hR3sol6、hR3sol31、hR3sol81及びhR3sol90変形例は、それらの低い安定性がそれらの有効性及び患者へのそれらの投与の安全性に悪影響を及ぼすので、ニモツズマブmAbに推奨されないことを実証している。上記は、タンパク質間の構造的差異のために、あるタンパク質に対して安定な製剤が別のタンパク質に対して必ずしも安定ではないという文献に報告された概念を支持する。
【0041】
例3.4℃で保存した高濃度のhR3 mAbの貯蔵寿命安定性研究
4℃で保存した150mg/mLのmAb濃度のhR3sol80、hR3sol82及びhR3sol90変形例の安定性の特性評価を行った。試料は、0ヶ月及び3ヶ月で、DLSによる粒径及び粘度の物理化学的分析、ならびにHPLCによるモノマー純度分析を受けた。
【0042】
図4は、異なる変形例のDLSによって測定した粒径の結果を示す。図で観察され得るように、製剤の各々において、直径は3ヶ月間一定のままであり、これは、高濃度の試料における凝集の非発生を示す。しかしながら、hR3sol90変形例の粒径は初期で約25nmであり、他の製剤の粒径よりも大きいことに留意すべきである。これは、この変形例が、hR3sol80及びhR3sol82変形例と比較して分子間で自己会合する傾向が大きいことを示唆している。
【0043】
図5は、200nm粒径標準を用いてDLSによって測定した粘度値を示す。全ての場合において、粘度は非常に小さな変動しか有さず、これは分子間の凝集効果又は自己会合がないことを示している。さらに、全ての値が5cP未満であり、これは適切な注射可能性(injectability)及び製造性を達成するために確立された限界をはるかに下回る(Li Li,Sandeep Kumar et al.Pharm Res(2014)31:3161-3178)ことを強調することは非常に重要である。また、粘度値は、150mg/mLの濃度の他のAbについて報告された粘度値よりも低い。
【0044】
図6は、SEC-HPLCによって測定したモノマー純度のグラフを示す。観察され得るように、モノマーの純度は相当の変化を示さず、これは、4℃で保存した150mg/mLの濃度のhR3 mAbの製剤が安定であることを示唆している。
【0045】
さらに、hR3 mAb製剤の生物学的活性を、時間0及び3ヶ月でストレスに曝露することなく150mg/mLの濃度で決定した。生物学的活性を、フローサイトメトリーアッセイによるhR3 mAbによるヒト上皮成長因子受容体(Her1)の認識及び細胞増殖アッセイの阻害によって測定した。フローサイトメトリーアッセイを行うために、ウェルあたり2×105個のH292細胞を使用し、1/3希釈で81μg/mLから濃度曲線を作成し、次いで平均蛍光強度(MFI)を決定した。半数効果濃度(EC50)をMFI値から決定し、市販のhR3参照物質と比較して相対効力を得た。H292細胞を用い、細胞増殖試薬WST-1溶液を色素として使用して、細胞増殖アッセイを行った。得られた吸光度を市販のhR3参照物質と比較して、相対効力を決定した。時間0での両方の測定からの結果を表5に示し、研究開始後3ヶ月で実施した結果を表6に示す。
【表5】
【0046】
表5は、hR3sol80、hR3sol82及びhR3sol90変形例の相対効力が、フローサイトメトリーアッセイによって測定して79~83%であったことを示し、これは、それらが高濃度でさえそれらの生物学的活性を維持することを示す。一方、細胞増殖アッセイの阻害で得られた相対効力値は、93~104%であり、これは、サイトメトリーからの結果を確認し、高濃度の試料がそれらの生物学的活性を保持していることを実証する。各値は、各アッセイにおける固有の変動性に起因して、異なる信頼区間内にあることを考慮に入れるべきである。それにもかかわらず、値は各アッセイに許容可能な範囲内である。
【表6】
【0047】
表6は、4℃で3ヶ月保存した、150mg/mLの濃度のhR3製剤の生物学的活性の結果を示す。注目され得るように、最も高い相対効力値を有する試料はhR3sol80及びhR3sol90であり、その値は、サイトメトリーアッセイによる認識において78~81%、増殖アッセイの阻害において77~86%であった。
【0048】
例4.150mg/mLの濃度のhR3 mAbの最良の製剤変形例の50℃でのストレス試験。
製剤変形例hR3sol80、hR3sol82及びhR3sol90において、hR3は、50kD孔径、再生セルロース膜、15mL試料体積のAmicon Ultra Centrifugal Filters Unitsにおいて、UF/DFによって150mg/mLまで濃縮した。試料を4℃の温度で936gで遠心分離した。150mg/mLの濃度に達したら、試料を0.2μm孔径フィルターで濾過し、50℃の恒温槽に入れた。異なる製剤のサンプリングを0、4、10及び15日目に行って、物理化学的パラメータを測定した。表7は、異なるサンプリング日に行ったモノマー純度測定の結果を示す。
【表7】
【0049】
表7に見られるように、4日間のストレス後、hR3sol90変形例は完全に沈殿して白色固体を形成し、一方、hR3sol80変形例は45.3%のモノマー純度を有し、hR3sol82変形例は58.9%のモノマー純度を有した。この結果から結論付けることができるように、高濃度で最も安定な製剤はhR3sol82であり、一方、最も安定性が低い製剤はhR3sol90である。この結果は、低濃度で得られた結果と一致する。10日間のストレスで、hR3sol80変形例は黄色のゲルを形成し、一方、hR3sol82変形例は43.9%のモノマー純度で溶液状態で継続する。15日目に行われたサンプリングでは、hR3sol82変形例も黄色のゲルを形成する。以前の結果は、組成物中にL-メチオニンを有するhR3sol82製剤が、このアミノ酸を欠く変形例よりも高濃度でより安定であることを実証している。これらの結果は、長期的に最も安定な製剤がhR3sol80及びhR3sol82であり、一方、hR3sol90製剤が最も安定性が低い製剤であることを示唆している。
【0050】
表8は、ストレス曝露なしの150mg/mLの濃度の試料中のモノマー及びダイマーの割合を示す。
【表8】
【0051】
表に観察され得るように、hR3sol82製剤は、最も高いモノマー割合(94.1%)を有する製剤及び最も低いダイマー割合(5.2%)を有する製剤であり、これは、この製剤が、安定性を促進する、製剤に含まれる分子間の会合数の減少に向かう傾向を有することを実証している。hR3sol80及びhR3sol90変形例は、それぞれ93.0%及び92.0%のモノマー割合を有する。
【0052】
150mg/mLの濃度のhR3 mAb製剤の生物学的活性も、50℃でストレスに供する前にフローサイトメトリーによって、及び細胞増殖アッセイの阻害によって決定した。両方の決定を行うために、例3に記載されたものと同じ方法を使用した。
【0053】
例5 Balb/cマウスに異なる用量レベルでSC経路によって投与されたニモツズマブmAbのバイオアベイラビリティ。
同じAb及び投与経路が使用され、製剤成分の変化がAbの薬物動態挙動に有意に影響しないことを考慮して、hR3sol90変形例を用いてバイオアベイラビリティ研究を行った。このアッセイを行うために、約20gの体重の雌Balb/cマウスを使用した。動物を、SCによってhR3sol90製剤の4つの異なる用量レベル(25、50、100及び200mg/kg体重)を受けた4つの群に分けた。その投与前に、mAbを同位体ヨウ素125(125I)で標識した。次いで、各個々のマウスの血液を抽出し、血液中のAb濃度に比例する放射能を測定した。表9は、25mg/kgのIV用量と比較して異なる用量レベルで得られたバイオアベイラビリティ値を示す。バイオアベイラビリティ(F)の計算には以下の式を使用する:
F=(SC-AUC/IV-AUC)*(IVd/SCd)、式中、
SC-AUCは、SC経路のAUC(曲線下面積)、
IV-AUCは、IV経路のAUC(曲線下面積)、
IVdは、IV用量、
SCdは、SC用量を表す。
IV経路の場合、親薬物の100%が全身循環に入るので、バイオアベイラビリティは1である。
【表9】
【0054】
表9の結果は、全ての場合において、バイオアベイラビリティがこの種類の投与経路に許容される75%を超えたことを示している。用量が増加するにつれてバイオアベイラビリティが実際には増加しないとしても、mAbの総質量及びAUC(曲線下面積)は増加することに留意すべきである。これらの結果をヒトに外挿すると、例えば、100mg/kgのSC用量の場合、これは、バイオアベイラビリティが78.7%であっても、血流に到達するであろうmAbの総質量が630mgであり、診療所で使用される用量(200mg)の3倍を超えることを意味する。
【0055】
例6.無胸腺Balb/cマウスにおいて50mg/kgの用量レベルでIV及びSC経路によって投与されたニモツズマブmAbの抗腫瘍効果。
体重約20gの雌の無胸腺Balb/cマウスを各5匹の動物の3つの群に分けた。全ての群が2×106個のA431細胞を0日目ならびに10、12、14及び16日目に受け、群1には1mgの総hR3sol90製剤質量をSC経路で投与し、群2は1mgの総ニモツズマブmAb質量をIV経路で受け、対照群である群3はリン酸緩衝生理食塩水を受けた。
【0056】
図7は、SC経路及びIV経路によってニモツズマブを投与されたマウスにおける腫瘍体積が類似していたことを示す。これは、各経路の吸収速度及び薬物動態特性が異なるという事実にもかかわらず、これらの2つの経路を使用した場合に治療の有効性に差がなかったことを実証している。一方、対照群ははるかに高い腫瘍成長速度を有し、これは他の2つの群の成長速度とはさらに有意に異なっていた。これは、SC経路によるニモツズマブmAbの投与の有効性を実証する。
【0057】
例7.150mg/mLの濃度の凍結乾燥ニモツズマブmAbの純度。
hR3sol80、hR3sol82及びhR3sol90製剤を150mg/mLの濃度及び500μLの体積で凍結乾燥した。このために、-30℃の温度の実験室凍結乾燥機を使用し、乾燥粉末が得られるまで30時間真空にした。次いで、初期濃度に達するまで製剤を500μlの超純水中で再構成し、透明な、粒子を含まない溶液を得た。
【0058】
表10は、凍結乾燥し、続いて再構成した後の異なるニモツズマブmAb製剤から得られた純度データを示す。
【表10】
【0059】
観察され得るように、凍結乾燥及び再構成された後のhR3sol82製剤は、98%を超えるモノマー純度に達し、一方、hR3sol80変形例は約94%のモノマー純度、hR3sol90変形例は93%を超えるモノマー純度に達した。ダイマーの割合は製剤の種類に応じて変化することにも留意すべきである。さらに、表は、これらの凍結乾燥及び再構成製剤のモノマー+ダイマーの純度が全ての場合で99%超であったことを示しており、これは、ニモツズマブmAbが凍結乾燥工程中にストレスを受けてもその安定性を失わないことを示している。ニモツズマブmAbは、このmAbの特徴に起因してモノマーとダイマーとの間にバランスを有し、このバランスは、溶液中で生じる相互作用の種類に応じて変化し得ることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】