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特表2023-509356壁上の音響波の伝播を制御するための方法および装置
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  • 特表-壁上の音響波の伝播を制御するための方法および装置 図1
  • 特表-壁上の音響波の伝播を制御するための方法および装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】壁上の音響波の伝播を制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
G10K11/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536926
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020085832
(87)【国際公開番号】W WO2021122394
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1914484
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】514086363
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・スーペリウール・ドゥ・メカニーク・エ・デ・ミクロテクニーク
(71)【出願人】
【識別番号】513288470
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・フランシュ・コンテ
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】オシュ,モルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】コレ,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】マッテン,ガエル
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF05
(57)【要約】
本発明は、壁の近傍における音響波の伝播を制御するための方法および装置に関し、方法および装置は、音響波の一部が各スピーカ(11)の膜によって吸収されるように、各スピーカの目標決定された一般化音響インピーダンスを取得するように各スピーカ(11)に送られなければならない電気信号の強度を決定する制御則によって、主にスピーカ(11)、スピーカに接続されたNm個のマイクロフォン(10)のセット、および制御ユニット(12)で構成されたセル(1)のセットNcを制御するためのマスタ装置を実装する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(2)の近傍における音響波の伝播を制御するための方法であって、前記方法は、
Nm個のマイクロフォン(10)のセットに連結されたスピーカ(11)によって主に構成されたNc個のセル(1)が前記壁に取り付けられる、ステップa)と、ここで、前記マイクロフォンおよびスピーカは、制御ユニット(12)、電源によって駆動されるように設けられており、
各セル(1)の各マイクロフォン(10)が音響波の音圧を測定する、ステップb)と、ここで、各測定値は前記セル制御ユニット(12)に戻されるものであり、
前記制御ユニット(12)が、前記スピーカのレベルにおける前記音圧および/またはその空間微分を推定し、次いで、前記スピーカの決定された一般化音響インピーダンスZdetを取得するために前記スピーカ(11)に送られなければならない電気信号のアンペア数を設定する制御則を適用する、ステップc)と、
前記音響波の一部が前記スピーカ(11)の膜によって吸収されるように、前記制御ユニット(12)が前記電気信号を前記スピーカ(11)に送信する、ステップd)と、ここで、主制御装置(C)は、各セルの前記決定された一般化音響インピーダンスZdetを調整するように、学習ループを使用して、前記制御ユニット(12)のすべてを駆動するものである、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ループは、
BEGIN:開始ステップと、
A1:汎用音響モデルをロードするステップと、
A2:前記セルのうちの少なくとも1つに制御則を割り当てるステップと、
A3:前記制御則に関連付けられたパラメータを計算するステップと、
A4:前記制御則を前記セルに適用するステップと、
A5:参照信号を生成するステップと、
A6:前記マイクロフォンによって前記信号を取得するステップと、
A7:ILで示される挿入損失を計算するステップと、
A8:ILで示される計算された前記挿入損失を、前記決定された一般化音響インピーダンスZdetの取得に対応する所定の挿入損失値IL0と比較するステップと、
A9:ILがIL0より小さい場合に、測定されたインピーダンスの誤差を最小限に抑えるために、前記制御則の前記パラメータの適合のためにA3に戻り、そうでなければプロセスがENDで終了するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の音響波の伝播を制御するための方法。
【請求項3】
各セルは、3から5個、好ましくは4個のマイクロフォン(10)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の音響波の伝播を制御するための方法。
【請求項4】
前記スピーカ(11)の前記膜によって吸収された前記音響波の一部は、前記セルの各々への供給に特化された電気エネルギーに変換されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の音響波の伝播を制御するための方法。
【請求項5】
前記音響インピーダンスは、以下のように定義される前記制御則によって修正されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の音響波の伝播を制御するための方法
電流アンペア数(i)の所望のダイナミクスが、IIRで示される無限インパルス応答フィルタの総和の形態で、音圧(p)およびその勾配(grad(p))に対して表され、そのダイナミクスが2つの伝達関数HlocおよびHdis
[数1]
【数1】

によって具体化され、
locおよびHdisは、zの多項式分数:
[数2]
【数2】

として離散時間で記載され、
(a、b)を式の実係数とし、(m、n)をフィルタ次数に対応する整数とし、
-1がサンプリング周期の純粋遅延である特性は、瞬間k(y)における出力と瞬間k(x)における入力との間の反復制御式:
[数3]
【数3】

を生成すると仮定し、
前記スピーカの前記コイル内の電流駆動信号が圧力およびその勾配に依存すると仮定すると、完全な制御式は、先行する形式の2つの反復式の総和:ytot=yloc+ydisとして記述され、ylocは測定圧力に依存し、ydisは推定圧力勾配に依存する。
【請求項6】
前記制御ユニット(12)は、好ましくはARMタイプのマイクロコントローラであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の音響波の伝播を制御するための方法。
【請求項7】
前記制御則は、50から150kHzの間に含まれる周波数で定義されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の音響波の伝播を制御するための方法。
【請求項8】
壁(2)の近傍における音響波の伝播を制御するための装置であって、これは、主にスピーカ(11)、前記スピーカに連結されたNm個のマイクロフォン(10)のセット、制御ユニット(12)、および電源で各々が構成されたセル(1)のセットNcを備え、前記マイクロフォンおよびスピーカは前記制御ユニットによって駆動されるように設けられ、前記スピーカ(11)の前記膜によって吸収された前記音響波の一部は、前記セルのセットNcに供給するための電気エネルギーに変換され、各セルの各マイクロフォンは、前記音響波の音圧を測定することができ、各測定値は前記セル制御ユニットに戻され、前記制御ユニットは、前記スピーカのレベルにおける前記音圧および/またはその接線空間微分を推定し、前記スピーカの決定された一般化音響インピーダンスZdetを取得するように前記スピーカに送られなければならない電気信号のアンペア数を設定する制御則を適用することができ、前記装置はまた、
BEGIN:開始ステップと、
A1:汎用音響モデルをロードするステップと、
A2:前記セルのうちの少なくとも1つに制御則を割り当てるステップと、
A3:前記制御則に関連付けられたパラメータを計算するステップと、
A4:前記制御則を前記セルに適用するステップと、
A5:参照信号を生成するステップと、
A6:前記マイクロフォンによって前記信号を取得するステップと、
A7:ILで示される挿入損失を計算するステップと、
A8:ILで示される前記挿入損失を、所望の前記一般化音響インピーダンスZdetの取得に対応する所定の挿入損失値IL0と比較するステップと、
A9:ILがIL0より小さい場合に、測定されたインピーダンスの誤差を最小限に抑えるために、前記制御則のパラメータの適合のためにA3に戻るステップと
を含むループで前記制御ユニット(12)のセットを駆動するための主制御装置(C)も含むことを特徴とする、装置。
【請求項9】
各セルは、3から5個、好ましくは4個のマイクロフォン(10)を含むことを特徴とする、請求項8に記載の壁(2)の近傍における音響波の伝播を制御するための装置。
【請求項10】
請求項8から9のいずれか一項に記載の装置、より具体的には、主にスピーカ(11)、前記スピーカ(11)に連結されたNm個のマイクロフォン(10)のセット、および制御ユニット(12)によって構成されたセル(1)のセットNcで覆われた音響パネルであって、前記マイクロフォンおよびスピーカは、前記制御ユニットによって駆動されるように設けられ、前記スピーカ(11)の前記膜によって吸収された前記音響波の一部は、前記セルのセットNcに供給するための電気エネルギーに変換され、各スピーカ(11)の一般化音響インピーダンスは、前記パネルの表面で局所的に吸収または反射挙動を定義するように、制御則を受け、前記パネルは、前記制御ユニットのセットを駆動するための主制御装置(C)に接続されている、音響パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の近傍における音響波の伝播を制御するための方法および装置に関する。
輸送および人間の活動に起因するノイズ障害を低減することは、大きな課題となっている。建物または車両内の不動態被膜の使用により、航空機の音響シグネチャを制限することが可能になったが、飛行条件への適合は可能ではなく、広い周波数帯域にわたって著しい効果はない。
【0002】
音響処理に使用される技術は、一般に、発泡タイプの吸収材料または設計されたハニカム材料の使用に基づいている。
【0003】
したがって、建築または輸送の特定の用途では、分散されたヘルムホルツ共鳴器を有する音響ライナは低周波数で使用され、高周波数で発泡する。
得られた低減は、低周波数で数デシベル未満のままである。
【0004】
従来の吸収剤処理の有効性は、材料の厚さに関連しており、したがって、これらの多孔質材料への水および汚染物質の吸収の問題は言うまでもなく、容積および重量の増加によって制約される。
【0005】
これらの技術はすべて受動的であり、適合またはノイズの選択的処理の能力を有していない。
【0006】
これらはまた排出物を誘導することもできない。
【0007】
これらの技術的課題に応えて1980年代以降に能動的なノイズ制御技術が開発されており、その用途は、消費者向けオーディオまたは輸送のように様々な分野に関連しているが、非分散型の戦略に依存している。
【0008】
音響処理システムの容積および低周波数での有効性の問題の結果、多くの潜在的な用途に対するその有効性が制限される。
【0009】
このため、特に広い周波数帯域の問題を処理することができる新しい解決策を開発する必要があることがわかった。
【0010】
展開された技術は、数センチメートルまで減少した厚さの範囲内で、複合波(例えば斜波または拡散波)、および受動的処理が有効ではない場合には低周波数を含む広範囲の周波数で、音響擾乱の効率的な吸収を確実にすることを可能にする。
【0011】
この目的のために、本発明は、壁の一般化音響インピーダンスを局所的または非局所的に、適応的に制御することを可能にする方法および装置を実装することを提案する。
【0012】
音響インピーダンスは、音圧と音速との間の比に対応する習慣的な既知の物理的変数であることに留意されたい。
【0013】
装置は、各々がマイクロフォンおよびスピーカによって構成された、音響トランスデューサの第1の階層によって構成される。第2の階層は、信号調整およびリアルタイムコマンド/制御のための電子部品によって形成される。
装置はセルラ方式であり、各セルは、スピーカ、マイクロフォン、ならびに計算および信号管理のための電子機器を組み込んでいる。
【0014】
方法に関して、各セルは独立しており、そのパラメータが統合インターフェースによって決定および更新され得る制御則を実行する。これにより、セルの行列を管理し、システム全体の入力および出力にアクセスすることが可能になる。
【0015】
同様に、装置に電力を供給することは、要素のすべてを介して包含される。本発明は、より具体的には、システムの分散された変調可能な特性に関する。
【0016】
本発明は、特に、壁の近傍における音響波の伝播を制御するための方法に関し、方法は、
Nm個のマイクロフォンのセットに連結されたスピーカによって主に構成されたNc個のセルが壁に取り付けられるステップa)と、ここで、前記マイクロフォンおよびスピーカは制御ユニットによって駆動されるように設けられており、
各セルの各マイクロフォンが音響波の音圧を測定するステップb)と、ここで、各測定値はセル制御ユニットに戻されるものであり、
制御ユニットが、スピーカのレベルにおける音圧および/またはその空間微分を推定し、次いで、スピーカの決定された一般化音響インピーダンスZdetを取得するようにスピーカに送られなければならない電流のアンペア数を設定する制御則を定義する、ステップc)と、
音響波の一部がスピーカの膜によって吸収されるように、制御ユニットが電気信号をスピーカに送信する、ステップd)と
を含む。
【0017】
本発明によれば、ステップc)において、制御ユニットは、スピーカのレベルにおける音圧、またはその空間微分、または両方を推定する。
【0018】
圧力の空間微分の使用により、有利には、音響処理壁上の圧力場の変化率を考慮すること、および壁を通じたノイズの実効伝播速度を考慮することが可能になる。
【0019】
主制御装置は、各セルの決定された一般化音響インピーダンスZdetを調整するように、学習ループを使用して、制御ユニットのすべてを駆動する。
【0020】
したがって、各セルの反復プロセスに続いて、挿入損失の値が所定の閾値未満である間に制御則のパラメータが適合され、次いで閾値に到達すると、請求項1のステップc)が実行され、これは、スピーカの決定された(すなわち目標とされる)一般化音響インピーダンスZdetを取得する目的で、(パラメータの適合によって定義された)適切な制御則を適用する。
【0021】
当然ながら、各セルの反復プロセスに続いて、挿入損失(例えば、伝送損失、吸収係数、または目標インピーダンス)以外の参照物理的変数の値が所定の値に十分に近い間に制御則のパラメータを適合することも可能である。
【0022】
本発明の任意選択的な特徴は、追加であれ代替であれ、以下に与えられる。
特定の特徴によれば、ループは以下のステップを含む。
【0023】
BEGIN:開始ステップ
A1:汎用音響モデルをロードするステップ
A2:セルのうちの少なくとも1つに制御則を割り当てるステップ
A3:制御則に関連付けられたパラメータを計算するステップ
A4:制御則をセルに適用するステップ
A5:較正信号(例えば、ホワイトノイズまたは正弦波掃引)を生成するステップ
A6:マイクロフォンによって信号を取得するステップ
A7:挿入損失(IL)を計算するステップ
A8:挿入損失(IL)を、所望の一般化音響インピーダンスZdetの取得に対応する所定の挿入損失値IL0と比較するステップ
A9:IL<IL0の場合に、測定されたインピーダンスの誤差を最小限に抑えるために、制御則のパラメータの適合のためにA3に戻るステップ。
【0024】
他の特徴によれば、各セルは、3から5個、好ましくは4個のマイクロフォンを含む。
【0025】
さらなる特徴によれば、スピーカの膜によって吸収された音響波の一部は、セルのすべてに供給するために、電気エネルギーに変換される。
【0026】
他の特徴によれば、一般化音響インピーダンスは、以下のように定義された制御則によって修正される。
【0027】
電流アンペア数(i)の所望のダイナミクスは、無限インパルス応答(IIR)フィルタの総和の形態で、音圧(p)およびその勾配(grad(p))に対して表され、そのダイナミクスは、2つの伝達関数HlocおよびHdisによって具体化される。
【0028】
[数1]
【数1】
【0029】
locおよびHdisは、zの多項式分数として離散時間で記載されている。
【0030】
[数2]
【数2】
【0031】
(a、b)を式の実係数とし、(m、n)をフィルタ次数に対応する整数とする。
【0032】
-1がサンプリング周期の純粋遅延である特性は、瞬間k(y)における出力と瞬間k(x)における入力との間の反復制御式を生成すると仮定する。
【0033】
[数3]
【数3】
【0034】
スピーカのコイル内の電流駆動信号が圧力およびその勾配に依存すると仮定すると、完全な制御式は、先行する形式の2つの反復式の総和:ytot=yloc+ydisとして記述される。
【0035】
locは測定圧力に依存し、ydisは推定圧力勾配に依存する。
【0036】
したがって、方法は、システムの物理的状態の測定値(スピーカの膜の近傍における圧力、および/または圧力勾配)のみがわかっているときに、システムに物理的な動力を課すことからなる。
【0037】
したがって、方法は、技術的構成要素(例えば、スピーカ)の挙動の理論的モデルの使用を必要としない。
【0038】
さらに別の特徴によれば、制御ユニットは、好ましくはARMタイプのマイクロコントローラである。このタイプのマイクロコントローラは、1983年からARM Ltdによって開発され、Acorn Computersによって1990年から導入された、32ビット(ARMv1からARMv7)および64ビット(ARMv8)RISCタイプの外部アーキテクチャに基づいている。
【0039】
さらに別の特徴によれば、制御則は、25から150kHzの間に含まれる周波数で定義される。
【0040】
本発明はさらに、壁の近傍における音響波の伝播を制御するための装置に関し、これは、主にスピーカ、前記スピーカに連結されたNm個のマイクロフォンのセット、制御ユニット、および電源で構成されたNc個のセルを備え、前記マイクロフォンおよびスピーカは前記制御ユニットによって駆動されるように設けられ、スピーカの膜によって吸収された音響波の一部は、セルのセットNcに供給するための電気エネルギーに変換され、各セルの各マイクロフォンは、音響波の音圧を測定することができ、各測定値はセル制御ユニットに戻され、制御ユニットは、スピーカのレベルにおける音圧および/またはその接線空間微分を推定し、スピーカの決定された一般化音響インピーダンスZdetを取得するようにスピーカに送られなければならない電気信号のアンペア数を設定する制御則を適用することができ、装置はまた、以下のステップを含むループで制御ユニットのセットを駆動するための主制御装置も含むことを特徴とする。
【0041】
BEGIN:開始ステップ
A1:汎用音響モデルをロードするステップ
A2:セルのうちの少なくとも1つに制御則を割り当てるステップ
A3:制御則に関連付けられたパラメータを計算するステップ
A4:制御則をセルに適用するステップ
A5:較正信号(例えば、ホワイトノイズまたは正弦波掃引)を生成するステップ
A6:マイクロフォンによって信号を取得するステップ
A7:挿入損失(IL)を計算するステップ
A8:挿入損失(IL)を、所望の一般化音響インピーダンスZdetの取得に対応する所定の挿入損失値IL0と比較するステップ
A9:IL<IL0の場合に、測定されたインピーダンスの誤差を最小限に抑えるために、制御則のパラメータの適合のためにA3に戻るステップ。
【0042】
本発明の任意選択的な特徴は、追加であれ代替であれ、以下に与えられている。
【0043】
特定の特徴によれば、装置の各セルは、3から5個、好ましくは4個のマイクロフォンを含む。
【0044】
同様に、装置に電力を供給することは、要素のすべてを介して包含される。本発明は、より具体的には、分散システムの分散された変調可能な特性に関する。
【0045】
マイクロフォンの分散特性は、空間微分を再構成し、圧力場をリアルタイムで測定することを可能にする。
【0046】
アクチュエータの分散特性は、空間的に可変である制御則を有することを可能にする。
【0047】
制御ユニットの分散特性は、高いレベルの堅牢性を有することを可能にする(いくつかの誤動作要素があっても、システムは低下モードで機能することができる)。
【0048】
すべての制御ユニットは独立しているが、新しい環境条件に適合するための自己学習を可能にする主制御装置によって、リアルタイムで再構成されることが可能である。
【0049】
最後に、アセンブリは、壁に直接、または支持メッシュの形態で埋め込まれて取り付けられることが可能であり、これにより、様々な形状に適合するためのモジュール性が可能になる。
【0050】
本発明はさらに、主にスピーカ、前記スピーカに連結されたNm個のマイクロフォンのセット、および制御ユニットによって構成されたセルのセットNcで覆われた音響パネルに関し、前記マイクロフォンおよびスピーカは、前記制御ユニットによって駆動されるように設けられ、スピーカの膜によって吸収された音響波の一部は、セルのセットNcに供給するための電気エネルギーに変換され、各スピーカの一般化音響インピーダンスは、前記パネルの表面で局所的に吸収または反射挙動を定義するように、制御則を受け、パネルは、上記で詳述されたループで制御ユニットのセットを駆動するための主制御装置にさらに接続されている。
【0051】
本発明の他の利点および特徴は、決して限定的ではない実施および実施形態の詳細な説明を読むことで、および以下の添付図面から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明による音響制御装置の概略図である。
図2】本発明による音響セルの詳細を示す図である。
【0053】
以下に説明される実施形態は決して限定的ではないので、この特性の選択が従来技術に対する本発明の技術的利点を付与するかまたは本発明を差別化するのに十分である場合、本発明の変形例は、(この選択がこれら他の特性を含む文中で分離していたとしても)説明される他の特性から分離して、説明される特性の選択のみを含むと見なされることが可能である。この選択は、構造的詳細を伴わずに、またはその部分のみが従来技術の水準に対する本発明の技術的利点を付与するかまたは本発明を差別化するのに十分である場合は構造的詳細の一部のみを伴う、少なくとも1つの、好ましくは機能的な特性を含む。
【0054】
本発明による装置は、電気音響トランスデューサを多価電気音響共振器に変換し、所望のノイズ低減を達成するために検出素子を使用することなく、空間内の音エネルギーを吸収すること、または2つの隣り合う空間の間にこのエネルギーを収容することさえ可能にするように意図している。
【0055】
技術革新は、特に、使用される電気音響トランスデューサならびに音響分散条件および所望の音響性能に適合された、その端子に接続された負荷電気インピーダンスを介した、電気音響トランスデューサの内部ダイナミクスの修正を含む。
【0056】
このインピーダンスの役割は、音響要件を満たす性能を発揮させることを意図して、損失を調整すること、およびトランスデューサの反応部分を補償することである。
【0057】
したがって、電気音響トランスデューサの膜によって周囲の音場に示される音響インピーダンスは、負荷電気インピーダンスによって実行される伝達関数にしたがって、入射音波に対して透過性、吸収性、または絶縁性となることができる。
【0058】
合成された電気インピーダンスは、外因性圧力場を受けた電気音響トランスデューサによって誘発された電圧と、入射音エネルギーを吸収または収容する必要がある電流との間の機能的なリンクを構成する。
【0059】
本発明は、とりわけ、自己調整閉ループで永久に制御される電気音響システムに関し、その制御則は、内部モデル、すなわちエンクロージャまたはバッフルに取り付けられたトランスデューサに内在する、伝達機構ならびに散逸および反応機構の事前知識に依存する。
【0060】
動作原理に関して、スピーカの可動部分(例えば膜、ダストキャップ、およびコイル)は、外因性音圧場に曝されたときに動かされ、トランスデューサの対称軸に沿って前後に振動し、スパイダおよび周辺懸架要素の作用の下で平衡位置に戻される。永久磁石によって生成された磁場にそれ自体浸漬されたコイルの動きは、トランスデューサの電気端子において誘起された電圧によって表される、起電力を生成する。
【0061】
この誘起電圧は、可動部分の動きの起点における音響擾乱の画像であるが、スピーカシステムの内部ダイナミクスおよび音響分散の条件(エンクロージャ、室内の位置など)にも依存する。これは、所望の音響効果、すなわち空間内の吸音または2つの隣り合う空間の間の遮音に適合した膜における機械力に対抗するために計算された補償電流を送る役割を有するレギュレータの入力を構成する。
【0062】
一般化音響インピーダンスの制御、すなわち制御された表面のレベルにおける圧力、圧力勾配、および速度の間の関係のダイナミクスは、処理された表面に沿って伝達されるエネルギーの著しい減少をもたらす。
この制御は、速度場に作用するスピーカの分布、ならびに音圧場およびその勾配の測定を可能にするマイクロフォンの分布によって実行される。
【0063】
したがって、スピーカのコイル内を流れる電流を印加できる必要があり、アンペア数値は好ましくは、測定音圧およびその勾配の関数として、無限インパルス応答フィルタ(IIR)によって計算される。
【0064】
開発された装置は、スピーカのN個のアクティブセルを同時に制御することを可能にする。
【0065】
装置のアーキテクチャは、利用される各フィルタのダイナミクスをリアルタイムで修正することも可能にする。
【0066】
したがって、壁に取り付けられた活性表面に局所的に印加された一般化音響インピーダンスをプログラムすることにより、異なる制御戦略の容易な実装が可能になる。
【0067】
壁に一般化音響インピーダンスを印加することは、この壁のレベルにおける音圧、音圧勾配、および空気の速度の間のダイナミクスを課すことになる。
【0068】
すると、このような制御方法およびこのような制御装置の開発により、スピーカのコイルに印加されなければならない電流の設定点における入力および出力としてマイクロフォンの信号を有する制御ループを生成することができる。
【0069】
対象の通過帯域は、20から20000ヘルツ、具体的には土木用途の文脈内で、20から1500ヘルツに及ぶ。
【0070】
容積の減少を保証し、想定される周波数帯域内で効果的な制御を可能にするために、壁は、各辺5センチメートルの局所制御ゾーンに細分化されることが可能である。
【0071】
図1および図2に示されるように、装置は、スピーカ11、Nm個のマイクロフォン10、電子信号調整カード、デジタル計算カード、および電源で構成され、全体で制御ユニット12を表す、Nc=12個の同一の独立したセル1によって構成される。
【0072】
各セルは、3から5個、好ましくは4個のマイクロフォン10を含む。
【0073】
各スピーカ11は、特別に開発されたデジタル計算カードによって駆動される電源によって制御される。各セル1の4つのマイクロフォン10は、各スピーカの膜の中心における平均圧力を推定することを可能にする。セルの左右の境界間の圧力差は、ダクト内の波の伝播軸に沿った空間的圧力勾配を評価することを可能にする。
【0074】
動作に関して、図2を参照すると、装置は、マイクロフォン10によって音圧を取得する。
【0075】
処理ユニット13内で調整した後、アナログ-デジタル変換器(ADC)によって信号がデジタル化される。
【0076】
マイクロフォンの測定に基づいて、膜の中心における平均圧力および/または膜のレベルにおける圧力の空間微分が推定される。次いで、計算ユニット12によって制御則が計算される。
【0077】
計算に由来する電流設定点は、デジタル-アナログ変換器(DAC)によって生成される。
【0078】
最後に、電流源が、スピーカ11を流れる電流を駆動する。
【0079】
より詳細には、本発明による制御方法は、以下のステップを含む。
【0080】
Nm個のマイクロフォン10のセットに連結されたスピーカ11によって主に構成されたNc個のセル1が壁に取り付けられ、前記マイクロフォンおよびスピーカは制御ユニット12によって駆動されるように設けられている、ステップと、
【0081】
各セル1の各マイクロフォン10が音響波の音圧を測定し、各測定値はセル制御ユニット12に戻される、ステップと、
【0082】
制御ユニット12が、スピーカのレベルにおける音圧および/またはその空間微分を推定し、次いで、スピーカの決定された音響インピーダンスZdetを取得するようにスピーカ11に送られなければならない電気信号のアンペア数を設定する制御則を決定するステップ。
【0083】
本発明によれば、このステップにおいて、制御ユニットは、スピーカのレベルにおける音圧、またはその空間微分、または両方を推定する。
【0084】
圧力の空間微分の使用により、有利には、音響処理壁上の圧力場の変化率を考慮すること、および壁を通じたノイズの実効伝播速度を考慮することが可能になる。
【0085】
音響波の一部がスピーカの膜によって吸収され、残りの第2の部分が反射されるように、制御ユニット12が電気信号をスピーカ11に送信するステップ。
【0086】
特定の用途では、制御則の計算は、好ましくはARMタイプのマイクロコントローラによって、50kHzの周波数で局所的に実行される。
【0087】
有利には、スピーカ11の膜によって吸収された音響波の一部は、セルの各々に供給するために、電気エネルギーに変換される。
【0088】
インターフェースカードを備えた主制御装置Cは、有利には、グラフィカルユーザインターフェースから各単位セルの制御ユニット12と通信することを可能にする。
【0089】
すると、式の計数をリアルタイムで決定および更新することができ、セルを個別に起動または停止することができる。
【0090】
このタイプのアーキテクチャは、セルごとに異なるダイナミクスを必要とする局所制御則を実装することを可能にする。
【0091】
加えて、主制御装置Cは、学習ループを使用して、制御ユニット12のすべてを駆動することができる。
【0092】
例として、ループは、プロセスを開始するための第1のステップ「BEGIN」を含むことができる。
【0093】
次に、いずれの音響モデルも適切であり得るという意味で、汎用音響モデルが開始され、この場合には実際に式[数3]によって定義される、ステップA1が続く。
【0094】
次に、A2において、セルのうちの少なくとも1つに制御則が割り当てられる。
【0095】
A3では、制御則に関連付けられたパラメータが計算される。
【0096】
A4では、セルに制御則が適用される。
【0097】
一般化インピーダンスに関してセルのセットによって構成された装置の適合性を検証するために、A5において参照信号が生成される。この参照信号は、実際には、制御ループを開始するためにマイクロフォンによってステップA6の間に収集される、スピーカまたは外部要素によって開始された「ノイズ」である。
【0098】
ステップA6は、マイクロフォンが信号を収集することを可能にする。
【0099】
次に、A7において、挿入損失(IL)を計算しなければならない。
【0100】
挿入損失は、剛性壁を有するダクトのセクションの代わりにダクト内に音響制御装置を挿入することによって生じる、音圧のレベルの低下に対応する習慣的な既知の物理的変数であることに留意されたい。
【0101】
A8では、挿入損失が所望の一般化インピーダンスZdetに対応する最小IL0値より大きいか否かを検証するために、挿入損失(IL)を所定の挿入損失値IL0と比較する。
【0102】
A9では、IL<IL0の場合に、測定インピーダンスの誤差を最小限に抑えるために、主制御装置Cは、制御則のパラメータに適合するためにA3にループバックする。
【0103】
そうでなければ、ループはコマンドENDで終了する。
【0104】
したがって、挿入損失ILが最小値未満である場合、主制御装置Cは、制御則を精緻化するためにループを再開する。
【0105】
このプロセスは、所望の一般化インピーダンスZdetが取得されるまで繰り返される。
【0106】
セルを反復的に、すなわち次々と較正することが可能であるのと同様に、セルの各々を同時に較正することが可能である。
【0107】
実装される制御則は、無限インパルス応答フィルタ(IIR)である。
【0108】
フィルタの出力は、フィルタ次数の関数として、瞬間tおよび先行する瞬間における入力(圧力および圧力勾配)ならびに出力(電流設定点)の状態の両方に依存する。
【0109】
装置のダイナミクスの計算は、マイクロコントローラによって実行される。この計算は、反復式の形態で、サンプリング間隔ごとに、離散時間で行われる。
【0110】
したがって、目標ダイナミクスを表す伝達関数の式に基づいてこの反復式を確立する必要がある。
【0111】
以下の同値関係d/dt=jω=pが使用され、これにより、時間表現から高調波周波数およびラプラス表現にすることができる。
したがって、制御則を以下のように定義することができる。
【0112】
電流アンペア数(i)の所望のダイナミクスは、無限インパルス応答フィルタ(IIR)の総和の形態で、音圧(p)およびその勾配(grad(p))に対して表され、そのダイナミクスは、2つの伝達関数HlocおよびHdisによって具体化される。
【0113】
[数1]
【数4】

locおよびHdisは、zの多項式分数として離散時間で記載されている。
【0114】
[数2]
【数5】
【0115】
(a、b)を式の実係数とし、(m、n)をフィルタ次数に対応する整数とする。
【0116】
-1がサンプリング周期の純粋遅延である特性は、瞬間k(y)における出力と瞬間k(x)における入力との間の反復制御式を生成する。
[数3]
【0117】
[数3]
【数6】
【0118】
スピーカのコイル内の電流駆動信号が圧力およびその勾配に依存するので、完全な制御式は、先行する形式の2つの反復式の総和:ytot=yloc+ydisとして記述される。
locは測定圧力に依存し、ydisは推定圧力勾配に依存する。
【0119】
スピーカは、150mAの演算増幅器に基づく電流源によって制御される。利用される形態は、スピーカなどの誘導負荷の場合に安定している強化型ハウランド電源である。
【0120】
したがって、各セル(1)の各マイクロフォン(10)は、音響波の音圧を測定する。これに基づいて、この圧力測定値およびこの圧力測定値の勾配は、式ytot=yloc+ydisに存在し、
locは測定圧力に依存し、ydisは推定圧力勾配に依存する。
locは通常、出力における電流の局所値に対応し、ydisは出力における電流の分散値に対応する。
【0121】
同様に、xlocは通常、入力における電流の局所値に対応し、xdisは入力における電流の分散値に対応する。
【0122】
圧力勾配は、流体(ここでは空気)中の圧力変化を表すために力学において使用される量である。
【0123】
式[数2]および[数3]は、無限インパルス応答フィルタの総和の形態で、音圧(p)およびその勾配(grad(p))に対する電流アンペア数(i)の所望のダイナミクスを式[数1]によって表すことを可能にするフィルタリング技術の従来の一般的な定義である式である。
【0124】
したがって、電気音響制御のための方法および装置は、管内の斜め音響波の減衰に関する移流方程式に基づく分散制御則の実装を可能にする。
【0125】
したがって、各セルの反復手順に続いて、挿入損失の値が所定の閾値未満である間に制御則のパラメータが適合され、次いで閾値に到達すると、請求項1のステップc)が実行され、これは、スピーカの決定された(すなわち目標とされる)一般化音響インピーダンスZdetを取得する目的で、(パラメータの適合によって定義された)適切な制御則を適用する。
【0126】
本発明の利点は、以下の通りである。
【0127】
装置をプログラムすることができ、処理の優先方向を修正することができ、
最適な音響挙動を局所的にリアルタイムで定義するように、「自己学習」モードで装置をプログラムすることができ、
装置は変調可能であり、いくつかの形状をとることができ、
装置は、音響ダイオード(非可逆波伝播)とその2D拡張との合成を可能にし、
装置は、リアルタイムで壁の圧力羽の測定を可能にし、したがってソース分析能力を提供し、
装置は、制御ユニットの分散特性の結果として、従来の制御手法よりも堅牢であり、
装置は、純粋な効率およびエネルギー消費に関して、他の能動的システムよりも高い性能を有する。
【0128】
本発明の異なる特性、形態、変形例、および実施形態は、両立不可能かまたは相互排他的でない程度に、様々な組み合わせで互いに組み合わせられることが可能であることに、留意すべきである。
【0129】
当然ながら、各セルの反復プロセスに続いて、挿入損失(例えば、伝送損失、吸収係数、または目標インピーダンス)以外の参照物理的変数の値が所定の値に十分に近い間に制御則のパラメータを適合することも可能である。
図1
図2
【国際調査報告】