(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20230301BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20230301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/4155
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539158
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2020137963
(87)【国際公開番号】W WO2021129565
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg.8,No.8 Life Park Rd.,ZGC Life Science Park,Changping Dist.,Beijing,PRC,102206
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンヤン
(72)【発明者】
【氏名】フェン、ジン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC22
4C063DD03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドのさまざまな結晶形に関する。また、本発明は、これらの結晶形を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
22.1±0.2、17.4±0.2、28.3±0.2、17.8±0.2、14.0±0.2°(2θ)にX線回折ピークを有し、最強ピークが22.1±0.2°(2θ)である(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形。
【請求項2】
12.7±0.2、16.4±0.2、8.7±0.2、9.3±0.2、19.3±0.2°(2θ)にX線回折ピークを有し、最強ピークが12.7±0.2°(2θ)である(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形。
【請求項3】
9.0±0.2、12.4±0.2、19.3±0.2、15.3±0.2、11.5±0.2、10.0±0.2°(2θ)にX線回折ピークを有し、最強ピークが9.0±0.2°(2θ)である(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの結晶形。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドのいくつかの結晶形に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)は、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)の強力な阻害剤である。化合物Iの製造及びがんの治療におけるその使用は、全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/049781号に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1はA型の粉末X線回折(XRPD)の図を示す。
【
図2】
図2はA型の示差走査熱量測定(DCS)の図を示す。
【
図3】
図3はA型の熱重量分析(TGA)の図を示す。
【
図8】
図8は、80℃で1日保管する前(下)と後(上)のA型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図9】
図9は、25℃/60%RHで1週間保管する前(下)と後(上)のA型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図10】
図10は、40℃/75%RHで1週間保管する前(下)と後(上)のA型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図11】
図11はA型の動的水蒸気吸着(DVS)の図を示す。
【
図12】
図12は、DVS分析の前(下)と後(上)のA型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図13】
図13は、25℃/60%RHで1週間保管する前(下)と後(上)のC型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図14】
図14は、40℃/75%RHで1週間保管する前(下)と後(上)のC型のXRPDの重ね合わせを示す。
【
図16】
図16は、DVS分析の前(下)と後(上)のC型のXRPDの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)のいくつかの結晶形及びその製造方法を提供する。化合物Iの結晶形は、医薬の研究及び製剤の製造に適している。
【0005】
【0006】
A型結晶
化合物IのA型結晶は、出発物質である化合物Iをアセトンと水の溶媒混合物から結晶化することによって製造できる。出発物質である化合物Iの合成は、国際公開第2018/049781号に記載されている。
【0007】
図1にA型のXRPDの図を示し、22.1°±0.2°、17.4°±0.2°、28.3°±0.2°(2θ)に特徴的なピークがある。
【0008】
その上、A型のXRPDは、17.8°±0.2°、14.0°±0.2°、11.0°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0009】
加えて、A型のXRPDは、24.1°±0.2°,24.9°±0.2°、6.7°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0010】
A型のXRPDのデータを表1に示す。
【0011】
【0012】
化合物IのA型は無水物である。
【0013】
化合物IのA型は、DSCで加熱した場合、178℃(ピーク温度)に吸熱ピークを示す。
図2にDSCの図を示す。
【0014】
化合物IのA型は、熱重量分析で180℃に加熱した場合、重量が約0.02%減少する。
図3にTGAの図を示す。TGAは、温度変化に対する試料の質量を経時的に測定する熱分析法である。TGAは材料の熱安定性を評価する。
図3は、A型が熱に対して安定で、180℃に加熱した場合の質量の変化は無視できることを示す。
【0015】
A型は、80℃(密封)で1日、又は25℃/60%RH若しくは40℃/75%RH(開放)で1週間保管した後も安定で、XRPDの図の特徴的なピークが変化しない。
【0016】
化合物IのA型を室温で24時間水に平衡化した後の溶解度は6.4μg/mLで、水にほとんど不溶又は不溶である。
【0017】
A型の80%RHの吸水率は0.14%で、吸湿性ではない。
【0018】
B型結晶
化合物IのB型結晶は、最初にA型をアモルファス型に変換し、次いで、気液透過、揮発及び結晶化といった別の製造方法で製造できる。
【0019】
図4にB型のXRPDの図を示し、9.0°±0.2°、12.4°±0.2°、19.3°±0.2°(2θ)に特徴的なピークがある。
【0020】
その上、B型のXRPDは、15.3°±0.2°、11.5°±0.2°、10.0°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0021】
加えて、B型のXRPDは、6.1°±0.2°、16.2°±0.2°、3.8°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0022】
B型のXRPDのデータを表2に示す。
【0023】
【0024】
B型は化学的に安定である。B型は物理的には安定ではなく、A型又はC型に変換できる。
【0025】
B型の平衡溶解度は15.14μg/mL、TGAによる重量損失は約2.42%で、DSCでは70℃、101℃、174℃に3つの吸熱ピークがある。
【0026】
化合物IのB型は水和物である。
【0027】
C型結晶
化合物IのC型結晶は、例えば、加熱によりB型から製造できる。
【0028】
図5にC型のXRPDの図を示し、12.7°±0.2°、16.4°±0.2°、8.7°±0.2°(2θ)に特徴的なピークがある。
【0029】
その上、C型のXRPDは、9.3°±0.2°、19.3°±0.2°、24.8°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0030】
加えて、C型のXRPDは、17.5°±0.2°、5.8°±0.2°、15.7°±0.2°(2θ)で1つ以上の特徴的なピークを更に示す。
【0031】
C型のXRPDのデータを表3に示す。
【0032】
【0033】
化合物IのC型は水和物である。
【0034】
化合物IのC型は、示差走査熱量計で加熱した場合、104℃及び178℃(ピーク温度)に2つの吸熱ピークを示す。
図6にDSCの図を示す。
【0035】
化合物IのC型は、熱重量分析で180℃に加熱した場合、重量が約2.40%減少する。
図7にTGAの図を示す。
【0036】
C型は、25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保管した後も安定で、XRPDの図の特徴的なピークはさまざまな湿度条件で変化しない。
【0037】
化合物IのC型を室温で24時間水に平衡化した後の溶解度は15.93μg/mLで、水にほとんど不溶又は不溶である。
【0038】
C型は適度に吸湿性である。
【0039】
医薬組成物
本発明は、また、治療有効量のA型、B型若しくはC型又はそれらの任意の比率の混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0040】
結晶型A、B及びCは、医薬組成物の原薬(API)として有用であり、A型及びC型が好ましく、A型がより好ましい。
【0041】
以下の実施例は、この発明を更に例示する。これらの実施例は、単に本発明を例示することを意図しており、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0042】
この開示における粉末X線回折(XRPD)は、Bruker D8 ADVANCE粉末X線回折計を使用して行った。化合物IのXRPDのパラメーターは以下のとおり:
X線源:Cu、Kα
Kα1(Å):1.540598;Kα2(Å):1.544426
Kα2/Kα1強度比:0.50
電圧:40kV
電流:40mA
スキャン範囲:3.0~40.0°
この開示における示差走査熱量測定(DSC)のデータは、TA DSC250で取得した。化合物IのDSCのパラメーターは以下のとおり:
加熱速度:10℃/分
パージガス:窒素
この開示における熱重量分析(TGA)のデータは、TA TGA550で取得した。化合物IのTGAのパラメーターは以下のとおり:
加熱速度:10℃/分
パージガス:窒素
本開示における動的水蒸気吸着(DVS)のデータは、SMS Intrinsic DVSで取得した。化合物IのDVSのパラメーターは以下のとおり:
温度:25℃
ガス及び流速:窒素、200mL/分
dm/dt:0.002%/分
相対湿度(RH)範囲:0%RH~95%RH
【0043】
実施例1 A型の製造
出発物質である化合物I(7.5g)を50℃でアセトン(59.6mL)と脱イオン水(15.6mL)の混合溶媒に溶解し、得られた溶液を30℃に冷却し、5時間撹拌した。次いで、20mLの脱イオン水をゆっくりと加えて2時間撹拌した後、45mLの脱イオン水をゆっくりと加えた。さらに2時間撹拌した後、温度を20~25℃に下げ、結晶を沈殿させてろ過した。固体を15mLの25%アセトン水で2回洗浄し、45℃、真空下で18時間乾燥して、6.65gのA型を得た。
【0044】
回折ピークを含むA型のXRPDのデータを表1に示す。XRPDのグラフを
図1に示す。DSC曲線を
図2に示す。TGA曲線を
図3に示す。
【0045】
実施例2 B型の製造
化合物IのA型を200℃に加熱し、室温まで冷却してアモルファス状の試料を得た。THF/水(4:1v/v)中のアモルファス試料約25mgを2時間撹拌し、ろ過した。次いで、ろ液を0.1℃/分で5℃に冷却した。結晶を10000rmpで2分間遠心分離し、室温、真空下で一晩乾燥してB型を得た。
【0046】
回折ピークを含むB型のXRPDのデータを表2に示す。XRPDのグラフを
図4に示す。
【0047】
実施例3 C型の製造
約30mgの化合物IのB型をDVSアナライザーに入れ、相対湿度を50%RHから90%RHに10%RHずつ増加させ、さらに5%RH増加させて95%RHとし、次いで0%RHとし、その後、同じ方法で95%RHとしてC型を得た。C型は、化合物IのB型を70℃に加熱した後、5~30℃/分で室温まで冷却することでも製造できる。
【0048】
回折ピークを含むC型のXRPDのデータを表3に示す。XRPDのグラフを
図5に示す。DSC曲線を
図6に示す。TGA曲線を
図7に示す。
【0049】
実施例4 A型の安定性の検討
約10mgの化合物IのA型を1.5mLガラスバイアルに添加し、(i)80℃(密閉)で1日、又は(ii)25℃/60%RH及び40℃/75%RH(開放)で1週間保管し、XRPD及びHPLC純度を分析した。
図8、9及び10に示されたXRPDには、ほとんど又はまったく変化がみられない。表4に安定性の結果を示すが、純度の変化も見られない。
【0050】
【0051】
実施例5 A型の吸湿性の検討
約30mgの化合物IのA型について、DVSアナライザーを使用して吸湿性を検討し、DVS分析の前後にXRPDを測定した。DVSは、試料が吸収する溶媒の速度と量を測定する重量測定技術である。A型の80%RHにおける吸水率は0.14%であり、A型は吸湿性ではないことを示す(
図11)。A型のXRPDは、DVS分析の前後で変化しなかった(
図12)。
【0052】
実施例6 C型の安定性の検討
約10mgの化合物IのC型を1.5mLガラスバイアルに添加し、25℃/60%RH(
図13)及び40℃/75%RH(開放、
図14)で1週間保管し、XRPD及びHPLC純度を分析した。
図13及び14に示された1週間後のXRPDでは、特徴的なピークの位置は、ほとんど又はまったく変化していない。表5に安定性の結果を示すが、純度の大幅な変化も見られない。
【0053】
【0054】
実施例7 C型の吸湿性の検討
約30mgの化合物IのC型について、DVSアナライザーを使用して吸湿性を検討し、DVS分析の前後にXRPDを測定した。C型の80%RHにおける吸水率は5.44%であり、C型は適度に吸湿性である(
図15)。C型のXRPDは、DVS分析の前後で変化しなかった(
図16)。
【0055】
実施例8 A型~C型の相互変換
A~C型間の関係は、加熱及びスラリー競合試験で調査した。C型は、145℃に加熱後、室温に冷却するとA型に変換した。室温、さまざまな水活性(aw=0~1)で、イソプロピルアルコール/水の溶媒系にA型とB型の等量混合物をスラリー化すると、A型が得られた。室温での熱力学的安定性は、概して、B型及びC型よりもA型の方が優れている。相互変換の関係を
図17に示す。
【0056】
本発明、並びに、それを製造し、使用する方法及び工程は、現在、それが関係する技術分野の当業者が同じものを製造し、使用できるように、完全、明確、簡潔かつ正確な用語で説明されている。この明細書は、本発明の好ましい態様を説明するもので、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、その中で修正できることを理解されたい。発明とみなされる主題を特に指摘し、明確に特許請求するために、以下の特許請求の範囲はこの明細書を完結する。
【国際調査報告】