(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】肺静脈シールドおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/187 20210101AFI20230301BHJP
A61M 60/295 20210101ALI20230301BHJP
A61M 60/427 20210101ALI20230301BHJP
A61M 60/841 20210101ALI20230301BHJP
A61M 60/869 20210101ALI20230301BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20230301BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20230301BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61M60/187
A61M60/295
A61M60/427
A61M60/841
A61M60/869
A61B17/00 500
A61B17/12
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540902
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 US2020067580
(87)【国際公開番号】W WO2021138502
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521348096
【氏名又は名称】インキュベート メディカル テクノロジーズ、 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INQB8 MEDICAL TECHNOLOGIES, LLC
【住所又は居所原語表記】123 Church Street, Winchester, Massachusetts 01890 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】クアドリ、 アルシャド
(72)【発明者】
【氏名】ラッツ、 ジェイ. ブレント
(72)【発明者】
【氏名】スティヴァーズ、 クリストファー ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C077
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD09
4C077EE01
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD11
4C160DD03
4C160DD55
4C160DD65
4C160DD66
(57)【要約】
左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するためのシステムまたは装置。装置は、血管内シールドを備えた植込型心臓装置であってもよい。システムは、血管内シールドおよび経中隔送達シースを備えてもよい。血管内シールドは、左心房から1つまたは複数の肺静脈を通って肺に至る流体の流れを制限する一方で、肺から1つまたは複数の肺静脈を通って左心房に至る流体の流れを可能にするために、肺静脈または左心房内に配置されるようにサイズ決めおよび構成され得る。経中隔送達シースは、折り畳み構成で血管内シールドを収容し、血管内シールドを左心房へ送達するように構成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するためのシステムであって、
左心房から1つまたは複数の肺静脈を通って肺に至る流体の流れを制限する一方で、前記肺から前記1つまたは複数の肺静脈を通って前記左心房に至る流体の流れを可能にするために、前記肺静脈または前記左心房内に配置されるようにサイズ決めおよび構成された血管内シールドと、
前記血管内シールドを折り畳み構成で収容し、前記血管内シールドを前記左心房に送達するように構成された経中隔送達シースと
を備える、システム。
【請求項2】
前記左心房に配置されるように構成された加圧要素をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加圧要素は、前記経中隔送達シースを介して前記左心房に送達されるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記血管内シールドは、前記経中隔送達シース内で前記加圧要素の遠位に配置される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記加圧要素がバルーンである、請求項2~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記血管内シールドが、前記1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆って配置されるようにサイズ決めおよび構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記血管内シールドは、前記肺静脈の上または内部に配置されるようにサイズ決めおよび構成された一方向弁を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記血管内シールドが、前記1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆って前記左心房内で拡張するように構成された拡張可能フレームを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記血管内シールドが、前記左心房の表面に係合するようにサイズ決めおよび構成された2次元または3次元形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記血管内シールドが、前記血管内シールドの周辺部を画定する拡張可能な構造要素を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記周辺部は、円形、楕円形、クローバ、チョウ、単一ローブ、四つ葉、ハート、2ローブ、3ローブおよび4ローブからなる群から選択された形状を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記血管内シールドは、中央部分の非多孔質層と、流体の流れを調整するように構成された周辺部の周りに配置された少なくとも1つの血液調整フラップとを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記血管内シールドの周辺部は、カテーテル内への圧縮および再拡張に適した型形状固定ワイヤ、レーザカットシート、または成形材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記血管内シールドが複数の層を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の層が、多孔質層および非多孔質層を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記非多孔質層は、前記多孔質層から離れて開くように構成された複数のフラップを有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記多孔質層が、前記非多孔質層の前記複数のフラップと整列する複数の開口部を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の開口部は、内側の複数の開口部と、前記内側の複数の開口部から半径方向外側に配置された外側の複数の開口部とを含み、弁である前記層の前記複数のフラップは、内側の複数のフラップと、前記内側の複数のフラップから半径方向外側に配置された外側の複数のフラップとを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の開口部は、前記複数のフラップと同様の形状を有する、請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数の開口部は、前記複数のフラップよりも小さな寸法を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記非多孔質層は、前記複数のフラップが前記多孔質層に当接するときの閉鎖構成と、前記複数のフラップが多孔質バッキング層から離れて移動するときの開放構成とを備える、請求項17~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記多孔質層が、縫合糸を受容し、組織の内部成長を促進し、かつ/または前記多孔質層を前記非多孔質層に固定するように構成された複数の穴を備える、請求項16~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記複数の層が、織布もしくは編布、複数のポリマー膜、金属メッシュ、および/またはそれらの組み合わせを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
近位端部および遠位端部を有する細長い送達装置をさらに備え、前記血管内シールドは、前記送達装置の前記遠位端部に配置されている、請求項1~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するための植込型心臓装置であって、
左心房から1つまたは複数の肺静脈を通って肺に至る流体の流れを制限する一方で、前記肺から前記1つまたは複数の肺静脈を通って前記左心房に至る流体の流れを可能にするために、前記肺静脈または前記左心房内に配置されるようにサイズ決めおよび構成された血管内シールドを備える、植込型心臓装置。
【請求項26】
前記血管内シールドが、前記1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆って配置されるようにサイズ決めおよび構成されている、請求項25に記載の植込型心臓装置。
【請求項27】
前記血管内シールドは、前記肺静脈の上または内部に配置されるようにサイズ決めおよび構成された一方向弁を備える、請求項25または26に記載の植込型心臓装置。
【請求項28】
前記血管内シールドが、前記1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆って前記左心房内で拡張するように構成された拡張可能フレームを備える、請求項25~27のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項29】
前記血管内シールドが、前記左心房の表面に係合するようにサイズ決めおよび構成された2次元または3次元形状を有する、請求項25~28のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項30】
前記血管内シールドが、前記血管内シールドの周辺部を画定する拡張可能な構造要素を備える、請求項25~29のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項31】
前記周辺部は、円形、楕円形、クローバ、チョウ、単一ローブ、四つ葉、ハート、2ローブ、3ローブおよび4ローブからなる群から選択された形状を有する、請求項30に記載の植込型心臓装置。
【請求項32】
前記血管内シールドは、中央部分の非多孔質層と、流体の流れを調整するように構成された周辺部の周りに配置された少なくとも1つの血液調整フラップとを備える、請求項25~31のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項33】
前記血管内シールドの周辺部は、カテーテル内への圧縮および再拡張に適した型形状固定ワイヤ、レーザカットシート、または成形材料を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項34】
前記血管内シールドが複数の層を備える、請求項25~33のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項35】
前記複数の層が、多孔質層および非多孔質層を含む、請求項34に記載の植込型心臓装置。
【請求項36】
前記非多孔質層は、前記多孔質層から離れて開くように構成された複数のフラップを有する、請求項35に記載の植込型心臓装置。
【請求項37】
前記多孔質層が、前記非多孔質層の前記複数のフラップと整列する複数の開口部を備える、請求項36に記載の植込型心臓装置。
【請求項38】
前記複数の開口部は、内側の複数の開口部と、前記内側の複数の開口部から半径方向外側に配置された外側の複数の開口部とを含み、弁である前記層の前記複数のフラップは、内側の複数のフラップと、前記内側の複数のフラップから半径方向外側に配置された外側の複数のフラップとを含む、請求項37に記載の植込型心臓装置。
【請求項39】
前記複数の開口部は、前記複数のフラップと同様の形状を有する、請求項37または38に記載の植込型心臓装置。
【請求項40】
前記複数の開口部は、前記複数のフラップよりも小さな寸法を有する、請求項37~39のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項41】
前記非多孔質層は、前記複数のフラップが前記多孔質層に当接するときの閉鎖構成と、前記複数のフラップが多孔質バッキング層から離れて移動するときの開放構成とを含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項42】
前記多孔質層が、縫合糸を受容し、組織の内部成長を促進し、かつ/または前記多孔質層を前記非多孔質層に固定するように構成された複数の穴を備える、請求項36~41のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項43】
前記複数の層が、織布もしくは編布、複数のポリマー膜、金属メッシュ、および/またはそれらの組み合わせを含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項44】
近位端部および遠位端部を有する細長い送達装置をさらに備え、前記血管内シールドは、前記送達装置の前記遠位端部に配置されている、請求項35~43のいずれか一項に記載の植込型心臓装置。
【請求項45】
左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するための方法であって、請求項1~24のいずれか一項に記載のシステムまたは請求項25~44のいずれか一項に記載の植込型心臓装置を使用することを含む、方法。
【請求項46】
前記記載の1つまたは複数の特徴を備えた血管内シールド。
【請求項47】
前記記載の1つまたは複数の特徴を備えた植込型心臓装置。
【請求項48】
前記記載の1つまたは複数の特徴を備えた、左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するためのシステム。
【請求項49】
前記記載の1つまたは複数の特徴を備えた、左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
すべての優先権出願の参照による組み込み
本出願は、2020年1月3日に出願された米国仮出願番号第62/957,089号の利益を主張するものであり、この全文は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、植込型心臓装置に関し、より詳細には、左心房から肺静脈への流れをカバーまたは制限する植込型装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全(HF)は世界中で共通の問題であり、米国だけで650万人を超える人が罹患しているが、この数は2030年までに850万人近くに増加すると予想されている。これらの患者の多くは、慢性HFを罹患しながらも無症状で過ごすことができるが、毎年180万人の患者が急性心不全(AHF)を経験する。これは、主に呼吸困難および疲労感などの心不全症状が急激に悪化するもので、緊急処置および緊急入院を必要とする。これらの患者の生活の質への影響に加え、HFの治療および入院により、米国の医療制度に年間300億ドルを超えるコストがかかっている。AHFは、一般に、駆出率低下型心不全(HFrEF、収縮性HFとも呼ばれる)および駆出率保持型心不全(HFpEF、拡張性HFとも呼ばれる)の2つの分類に分けられる。HFrEFおよびHFpEFはともに、罹患率および死亡率に大きな影響を伴うが、HFpEFの対処はより困難であることが分かっており、この疾患の治療法を開発するために多くの努力がなされてきたが、利尿剤が、依然としてHFpEFの影響を緩和する唯一の科学的根拠に基づく治療法である。このように、HFrEFおよび心房細動(AF)の解決法を改善する機会に加えて、HFpEFに苦しむ患者にとって意味のある治療法を開発することが、満たされていない重要な臨床的ニーズである。
【0004】
HFの機構的および生理的進行のある時点で左心房の機能不全が起こり始める。左心房(LA)の壁が硬くなって、コンプライアンスが低下することにより、左心房のリザーバストレイン(充満時の拡張)およびアクティブストレイン(駆出時の圧縮)が低下する。このストレインの減少により、LA内の圧力が上昇し、これが肺に伝わり(肺動脈楔入圧(PCWP)の上昇により測定される)、肺ガスの拡散(一酸化炭素肺拡散能(DLCO)、ならびに動脈および混合血液ガスの拡散によって測定される)を低下させ、これが肺のうっ血および呼吸困難の根本的な原因となり、AHFおよび入院につながる。
【0005】
HFrEFの治療では、左心室(LV)の収縮機能の低下が問題となる。その結果、心拍出量を維持するために、左心室が全身の圧力および収縮期血流を作り出すのを補助するいくつかの治療法が開発されている(LVADなど)。しかし、HFpEFでは収縮機能および駆出率が維持されているため、HFrEFの治療法の移行はあまり適しておらず、また効果的ではない。
【0006】
過去数年間に行われた研究では、HFpEFにおけるLAおよび左心房圧の役割が強調されている。より具体的には、研究により、左心房機能不全(例えば、左心房のリザーバストレインおよびアクティブストレインの低下)がHFpEFの死亡率に関連する独立した危険因子であることが確認されている。
【0007】
図1Aは、LAの圧力および容積の波形を示しており、これらの波形を組み合わせることで、圧力:容積の関係を「8の字」で表している(
図1B)。
【0008】
心房拡張期(心室収縮を介する)のLAの拡張は、リザーバ機能として知られており、
図1Aおよび
図1Bの(1)と標識付けられたセグメントで表されている。僧帽弁が拡張早期に開くと、LAおよびLVの圧力が等しくなり、血液はLVに受動的に駆出される。これは、導管機能として知られており、
図1Aおよび
図1Bのセグメント(2)で表されている。次に、拡張期の終わりに、僧帽弁が閉じる直前に、心房が収縮し、
図1Aおよび
図1Bのセグメント(4)および(5)で表される能動的なポンプ機能を果たす。
【0009】
うっ血性心不全(CHF)の存在下では、LAの拡張および容積の増加がスティッフネスの増加および高い圧力と結びつくため、
図1Bに示されている通常の「8の字」が右上に移動する。スティッフネスの増加により、曲線の形状も変化し、リザーバストレイン(充満時の拡張の減少)およびポンプのストレイン(心房収縮期の圧縮)が低下する。
【0010】
HFpEFは、最初はLV拡張期の充満圧の上昇およびLAを十分に駆出できないことに関連しているが、結果として流体がうっ滞してしばしば肺うっ血を引き起こし、肺高血圧症、RV-to-PC(右心室-肺循環)のアンカップリング、および右心室の過負荷または機能不全になり得る。その結果、左心不全から始まったものはしばしば右心不全へと進行し得る。右心への影響は、肺血管抵抗(PVR)、肺動脈(PA)収縮期圧(これはRV収縮期圧に相当する)の上昇、RVの仕事量および非効率性の増加、ならびに心拍出量の減少として観察されることがある。LA圧の上昇は、肺動脈楔入圧の上昇およびPVRの増加につながる。この結果、PA収縮期圧が上昇し、圧力差が小さくなるため、PA拡張期の間は心拍出量が減少する。PA収縮期圧の上昇は、収縮期のRVの仕事量を増加させ、時間の経過とともに効率を低下させることにつながる。
【0011】
肺高血圧症は、心房機能不全によって引き起こされることに加えて、他の多くの原因によっても発生する可能性があり、それらはすべて入院につながる呼吸困難および疲労の症状の一因となる。僧帽弁逆流(MR)は、血液がLVから僧帽弁(MV)を介してLAに逆流する病態である。この病態は心拍出量を減少させ、LA圧を上昇させる可能性があり、最終的に肺高血圧症を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
HFpEFの症状を悪化させるLA圧の上昇の役割に対応して、LAから右心房(RA)に血液をシャントしてLA圧およびPCWPを低下させることを試みる心房内装置を提供することができる。初期の臨床研究では有望な結果が示されているが、LAのシャントは肺のうっ血を完全に解消するものではなく、心臓の右側の負担を軽減するのに役立つものでもない。むしろ、ここではRAは左側からの血液のシャントにより増加した容積に対処しなければならない。さらに、LAの圧力を低下させるだけでは、根本的な心房スティッフネスに対処せず、心周期のすべての段階でLAの機能を完全に回復させるのに役立たない。例えば、心房収縮の活性段階にLA圧を低下させてもLAとLVとの間の圧力差は大きくならない。その結果、LVの拡張終期の充満は最適化されず、むしろ、右側へと容積がシャントされているため、心拍出量は低下しやすくなる。さらに、LAシャントは、HFpEF患者に共通の状態である心房細動(AF)に苦しむ患者には効果的でないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示のいくつかの態様は、左心房圧から肺圧を分離し、かつ/または心拍出量を改善するための植込型心臓装置に関する。植込型心臓装置は、左心房から1つまたは複数の肺静脈を通って肺に至る流体の流れを制限する一方で、肺から1つまたは複数の肺静脈を通って左心房に至る流体の流れを可能にするために、肺静脈または左心房内に、例えば1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆って配置されるようにサイズ決めおよび構成された血管内シールドを備えることができる。本明細書に記載の植込型心臓装置は、肺静脈口への逆流を最小化して肺うっ血を減少させ、左心室への前方流を最大化して心拍出量を改善するために、左心房および/または左心室拡張終期圧から肺圧、すなわち肺静脈、肺動脈楔入圧(PCWP)を分離するのに適していてもよい。HFrEF、HFpEF、およびAFに罹患している患者に加えて、他の病態を患う患者は、本明細書に記載される技術の実施形態から利益を得ることができる。特に、特定の実施形態の平均PCWPを低下させる能力は、肺高血圧症および/または僧帽弁逆流(MR)に罹患している患者を助けるために有益であり得る。さらに、HFpEFおよび肺高血圧症またはMRのいずれかの両方を有する患者は、本明細書に記載される血管内シールドおよび他の装置を備えることから特に利益を得てもよい。
【0014】
いくつかの態様において、前段落の植込型心臓装置または本明細書に記載された植込型心臓装置のいずれかは、以下のさらなる特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。植込型心臓装置の血管内シールドは、肺静脈の上または内部に配置されるようにサイズ決めおよび構成された一方向弁を備えることができる。植込型心臓装置の血管内シールドは、1つまたは複数の肺静脈の1つまたは複数の口を覆うように左心房内で拡張するように構成された拡張可能フレームを備えることができる。植込型心臓装置の血管内シールドは、左心房の表面に係合するようにサイズ決めおよび構成された2次元または3次元形状を有することができる。
【0015】
植込型心臓装置の血管内シールドは、血管内シールドの周辺部を画定する拡張可能な構造要素を備えることができる。血管内シールドの周辺部は、円形、楕円形、クローバ、チョウ、単一ローブ、四つ葉、ハート、2ローブ、3ローブおよび4ローブからなる群から選択された形状を有することができる。血管内心臓装置の血管内シールドは、中央部分の非多孔質層と、流体の流れを調整するように構成された周辺部の周りに配置された少なくとも1つの血液調整フラップとを備えることができる。血管内シールドの周辺部は、カテーテル内への圧縮および再拡張に適した型形状固定ワイヤ、レーザカットシート、または成形材料を含むことができる。
【0016】
植込型心臓装置の血管内シールドは、複数の層を備えることができる。複数の層は、多孔質層および非多孔質層を含むことができる。非多孔質層は、多孔質層から離れて開くように構成された複数のフラップを有することができる。複数の層は、織布もしくは編布、複数のポリマー膜、金属メッシュ、および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。多孔質層は、非多孔質層の複数のフラップと整列できる複数の開口部を備えることができる。複数の開口部は、内側の複数の開口部と、内側の複数の開口部から半径方向外側に配置された外側の複数の開口部とを含むことができる。弁である層の複数のフラップは、内側の複数のフラップと、内側の複数のフラップから半径方向外側に配置された外側の複数のフラップとを含むことができる。複数の開口部は、複数のフラップと同様の形状を有することができる。複数の開口部は、複数のフラップよりも小さな寸法を有することができる。非多孔質層は、複数のフラップが多孔質層に当接するときの閉鎖構成と、複数のフラップが多孔質バッキング層から離れて移動するときの開放構成とを備えることができる。多孔質層は、縫合糸を受容し、組織の内部成長を促進し、かつ/または多孔質層を非多孔質層に固定するように構成された複数の穴を備えることができる。
【0017】
植込型心臓装置は、近位端部および遠位端部を有することができる細長い送達装置をさらに備えることができる。植込型心臓装置の血管内シールドは、送達装置の遠位端部に配置されてもよい。
【0018】
別の態様では、心拍出量を改善するためのシステムが開示される。システムは、前段落のいずれか1つに記載の植込型心臓装置または本明細書に記載された植込型心臓装置のいずれかと、折り畳み構成で血管内シールドを収容し、血管内シールドを左心房に送達するように構成された経中隔送達シースとを備えることができる。システムは、左心房に配置されるように構成された加圧要素をさらに備えることができる。加圧要素は経中隔送達シースを介して左心房に送達されるように構成されてもよい。血管内シールドは経中隔送達シース内の加圧要素の遠位に配置されてもよい。加圧要素はバルーンであってもよい。
【0019】
別の態様では、心拍出量を改善する方法が開示される。本方法は、前段落のいずれか1つに記載された、または本明細書に記載された植込型心臓装置またはシステムを使用することを含むことができる。
【0020】
さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、開示された実施形態を図示し、説明と一緒に、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】心房圧と容積の関係を5段階で示す図である。
【
図1B】心房圧と容積の関係を5段階で示す図である。
【
図2】本開示の特定の態様による左心房心臓補助システムを示す図である。
【
図3】本開示の特定の態様による心周期の様々な部分に関するバルーン拡張および収縮の時系列を示す図である。
【
図4】心周期の様々な部分に関する左心房バルーンを使用した左心房圧の変化を示す図である。
【
図5】主題技術の様々な態様による様々な状態における左心房バルーンの斜視図である。
【
図6】主題技術の様々な態様による様々な状態における左心房バルーンの部分断面図である。
【
図7A】主題技術の様々な態様による、経中隔シャフトおよび中央ルーメンを有する左心房バルーンの斜視図である。
【
図7B】主題技術の様々な態様による、経中隔シャフトおよび中央ルーメンを有する左心房バルーンの部分断面図である。
【
図8】主題技術の様々な態様による植え込まれた経中隔左心房位置決め構造およびバルーンを示す図である。
【
図9】主題技術の様々な態様による植え込まれた左心耳用左心房位置決め構造およびバルーンを示す図である。
【
図10A】主題技術の様々な態様による左心房バルーンの図である。
【
図10B】主題技術の様々な態様による左心房バルーンの図である。
【
図10C】主題技術の様々な態様による左心房バルーンの図である。
【
図10D】主題技術の様々な態様による左心房バルーンの図である。
【
図12】主題技術の1つまたは複数の実施態様が実施され得るシステムを示す図である。
【
図13A】本開示のある態様による、拡張状態および収縮状態の両側心臓補助システムを示す図である。
【
図13B】本開示のある態様による、拡張状態および収縮状態の両側心臓補助システムを示す図である。
【
図14】主題技術の様々な態様による肺動脈位置決め構造の拡張状態を示す図である。
【
図15】主題技術の様々な態様による肺動脈位置決め構造の拡張状態を示す図である。
【
図16】主題技術の様々な態様による肺動脈位置決め構造の拡張状態を示す図である。
【
図17】主題技術の様々な態様による植え込まれた肺動脈位置決め構造を示す図である。
【
図18】主題技術の様々な態様による、らせん状の右心室バルーンを有するシステムを示す図である。
【
図19】左心房および肺静脈の切欠図を含む心臓の図である。
【
図20】ヒト心臓の左心房および肺静脈の概略図である。
【
図21A】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示し、例えば、
図21Aは、患者の心臓に植え込まれた個々の一方向弁アセンブリの実施形態を示す図である。
【
図21B】主題技術の様々な態様による
図21Aに示された個々の一方向弁の実施形態の斜視図である。
【
図21C】主題技術の様々な態様による
図21Aに示された個々の一方向弁の実施形態の断面図である。
【
図21D】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図21E】主題技術の様々な態様による
図21Aに示された個々の一方向弁の実施形態の断面図である。
【
図21F】主題技術の様々な態様による
図21Aに示された個々の一方向弁の実施形態の閉鎖構成の底面図である。
【
図21G】主題技術の様々な態様による
図21Aに示された個々の一方向弁の実施形態の開放構成の底面図である。
【
図22】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図23A】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図23B】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図24】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図25A】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態の底面図である。
【
図25B】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態の断面図である。
【
図26】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図27】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図28A】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図28B】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図28C】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図28D】主題技術の様々な態様によるシールドまたは血液調整弁の実施形態を示す図である。
【
図29B】左心耳および心臓の僧帽弁側を除去した、
図29Aに示すブタ心臓の斜視図である。
【
図30A】
図29Cに示すブタ心臓に植え込まれた表面シールドの実施形態を示す図である。
【
図30B】
図29Cに示すブタ心臓に植え込まれた表面シールドの実施形態を示す図である。
【
図31A】
図30A~
図30Bに示す表面シールドの実施形態と、主題技術の様々な態様によるブタ心臓に植え込まれた左心房バルーンの実施形態とを示す図である。
【
図31B】
図30A~
図30Bに示す表面シールドの実施形態と、主題技術の様々な態様によるブタ心臓に植え込まれた左心房バルーンの実施形態とを示す図である。
【
図32】主題技術の様々な態様によるシールドのフレームの実施形態を示す図である。
【
図33】主題技術の様々な態様による、多孔質バッキング層およびメッシュ層を有するフレームを有するシールドの実施形態を示す図である。
【
図34】主題技術の様々な態様による、複数のフラップを含んだ非多孔質層を有するシールドの実施形態を示す図である。
【
図35】主題技術の様々な態様による、複数のフラップを含んだ非多孔質層を有するシールドの実施形態を示す図である。
【
図36】主題技術の様々な態様による、複数のフラップを含んだ非多孔質層を有するシールドの実施形態を示す図である。
【
図37】主題技術の様々な態様による、複数のフラップを含んだ非多孔質層を有するシールドの実施形態を示す図である。
【
図38】主題技術の様々な態様によるブタ心臓に植え込まれた3次元シールドの実施形態を示す図である。
【
図39A】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の側面図である。
【
図39B】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の上面図である。
【
図39C】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の側面図である。
【
図39D】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の上面図である。
【
図40A】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の底面図である。
【
図40B】主題技術の様々な態様による3次元シールドおよび左心房バルーンの実施形態の斜視図である。
【
図41A】主題技術の様々な態様によるシールド用支持構造の実施形態の側面図である。
【
図41B】主題技術の様々な態様によるシールド用支持構造の実施形態の斜視図である。
【
図42A】主題技術の様々な態様によるシールド用支持構造の実施形態の展開構成を示す図である。
【
図42B】主題技術の様々な態様によるシールド用支持構造の実施形態の部分展開構成を示す図である。
【
図43A】主題技術の様々な態様による、支持構造に取り付けられたシールドの実施形態を示す図である。
【
図43B】主題技術の様々な態様による、支持構造に取り付けられたシールドの実施形態を示す図である。
【
図43C】主題技術の様々な態様による、支持構造に取り付けられたシールドの実施形態を示す図である。
【
図44A】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の上面図である。
【
図44B】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の分解図である。
【
図44C】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の斜視図である。
【
図44D】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の上面図である。
【
図44E】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の側面図である。
【
図44F】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の上面図である。
【
図44G】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の斜視図である。
【
図44H】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の断面図である。
【
図44I】主題技術の様々な態様によるシールドの実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に記述する発明を実施するための形態は、主題技術の様々な構成を説明するものであって、主題技術が実施され得る唯一の構成を示すことを意図したものではない。発明を実施するための形態は、主題技術の完全な理解をもたらすために具体的な詳細を含む。したがって、特定の態様に関して、非限定的例として寸法が提供されてもよい。しかし、当業者であれば、これらの具体的な詳細がなくても主題技術を実施できることは明らかであろう。場合によっては、周知の構造および構成部品は、主題技術の概念を不明瞭にすることを回避するためにブロック図形式で示されている。
【0023】
本開示は、主題技術の実施例を含み、添付の特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。ここで、主題技術の様々な態様が、特定の、しかし非限定的な実施例に従って開示される。本開示に記載される様々な実施形態は、異なる方法および変形で、所望の用途または実施態様に応じて実行することができる。
【0024】
以下の発明を実施するための形態では、本開示の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、当業者には本開示の実施形態が一部の具体的詳細なしで実施できることが明らかになるであろう。他の場合には、本開示を不明瞭にしないために、周知の構造および技術は詳細に示されていない。
【0025】
本開示の態様は、心不全および/または心房細動を含む心房機能不全のためのシステムおよび方法に関する。システム100、600などのシステムの使用をHF用途について以下に記述するが、システムは、LAの本来の機能および拍動を回復させる能力に基づいて、非HFのAF患者の治療にも適していることを理解すべきである。今日、多くの場合メイズ手術と呼ばれるアブレーション手術を介してAFを治療することが一般的であり、それより、医師は、細動をなくすために、小切開、ラジオ波、凍結、マイクロ波または超音波エネルギーを用いて、LA内の電気回路を破壊する瘢痕組織を形成する。これは、手術でも効果があるが、現在使用されているインターベンション技術を用いた場合はそれほど効果的ではない。アブレーションが不十分だと持続性AFにつながる可能性があるが、アブレーションが過剰だとLAの壁を硬くする瘢痕化を引き起こし得、最終的にはHFにつながり得る。対照的に、後述のLAバルーン102を用いてLAの機能(拡張および収縮)を回復させることにより、電気的変動があっても、また過剰な瘢痕化を引き起こし得るアブレーションを必要とせずに、AFの症状を解消することができる。心房機能不全を治療するためのこれらの心臓内補助システムおよび方法は、2020年2月5日に出願され、米国特許出願公開第2020/0246523号A1として公開された「心臓内左心房およびデュアル補助システム」と題する米国特許出願番号第16/782,997号にさらに記載され、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0026】
本開示の態様は、所定の方向への血流を防止または減少させるように設計された血管内シールドにさらに関する。いくつかの実施形態では、シールドは、自然弁が存在しない場合など、ある方向への流れを可能にする一方で、別の方向への流れを防止するための一方向弁として機能してもよい。他の実施形態では、シールドは、所定の方向への血流の量および圧力を減少させる一方で、別の方向への無制限の流れを可能にしてもよい。
【0027】
左心不全、または肺動脈楔入圧の上昇および肺うっ血を伴う他の病態の特殊な場合には、このようなシールドまたは一方向弁は、LAの主要心腔と1つまたは複数の肺静脈PVの口との間に配置されるときに有用であることができる。左心不全の進行は、収縮期(駆出率の低下)または拡張期(駆出率の保持)にかかわらず、左心房圧の上昇をもたらし、その結果、肺毛細管楔入圧の上昇、肺うっ血、肺動脈圧の上昇、および右心不全への持続的な逆行性の進行を引き起こす可能性がある。肺静脈PVとLAとの間にシールドを配置することにより、平均左心房圧の上昇および左心房圧の急上昇(心房収縮期中など)から肺系を隔離することができる。シールドは、肺動脈楔入圧(PCWP)を左心房圧(LAP)から分離し、PCWPを相対的に減少させることを目的として、一時的またはより長い期間の長期設定で使用されてもよく、これにより肺うっ血が減少し、心房収縮期中に前方流が増加し、その結果、心拍出量がかなり増加するはずである。
【0028】
シールドは、単独で、またはさらに以下に後述するように、心臓補助システムと一緒に、または他のシステムと一緒に使用されてもよい。例えば、シールドは、さらに後述するように、LAに配置されたカウンターパルゼーションバルーンまたは他の加圧要素の存在下で使用されてもよい。このような場合、シールドの存在は、LAと肺静脈PVとの間にバリアを作ることによって心臓補助システムの利点を強化することができる。カウンターパルゼーションシステムによって引き起こされるLAの圧力上昇は全体として左心室に向けられ得、さらに心拍出量を増加させながらPCWPを低下させることができる。
【0029】
左心房心臓補助システム
図2は、植込型加圧要素が患者に植え込まれた例示的システム100を示す。
図2の実施例では、システム100は、例示のためにバルーンとして実装された加圧要素102を備える。図示されているように、心房位置決め構造106は、加圧要素102に結合され、患者の心臓101のLAに加圧要素102を位置決めするように構成されている。
図2では見えていないが、システム100は、左心房リザーバストレインの増加およびLAの容積の相対的増加をシミュレートしてLA内の充満圧を低下させることにより、心房拡張期にLAの圧力を低下させて、患者の肺から酸素化された血液を引き出すように加圧要素102を操作するように構成された制御回路も備える。また、制御回路は、LAの相対容積を減少させて心房収縮期の左心房圧を上昇させることにより、心房収縮期にLAの圧力を上昇させて、左心房のアクティブストレインの増加をシミュレートするように加圧要素102を操作する。心房収縮期の左心房圧の上昇は、LAと左心室との間の圧力差を増加させ、左心室の拡張期充満を改善する。
【0030】
供給ライン110が示されており、これらを介して、流体または気体が、加圧要素102のバルーン実施態様の拡張または収縮のために供給または除去され得、またはこれらによって、制御信号が加圧要素102の他の実施態様の操作のために提供され得る。供給ライン110は、加圧要素102をLAに送達するために使用される細長いカテーテル本体に組み込まれても、またはその一部であってもよい。例えば、バルーンおよび非バルーンの両方の実施形態において、いくつかの態様では、カテーテルまたはシースが、大腿静脈を介して経皮的アプローチで送達され、下大静脈を通って右心房RAに進み、心房中隔を越えてLAに進んでもよい。加圧要素102は、細長い本体の遠位端部に配置され、LA内で拡張することができる。
図2でバルーンの近位に示されている拡張可能な心房位置決め構造106は、LA内でバルーンを固定するのを助けるために、中隔の左側および/または右側で拡張してもよい。いくつかの実施形態では、バルーンを運ぶカテーテル本体は、RAとLAとの間に配置された別個の経中隔シースを介して送達されてもよい。
【0031】
システム100は、患者の心周期の一部に対応する信号を生成する心電図(ECG)センサおよび/または圧力センサなどの1つまたは複数のセンサも備えてもよい。加圧要素102は、センサからの信号に基づいて、心周期の様々な部分に合わせて、LA内に圧力変化(例えば、圧力上昇および/または圧力低下)を引き起こすように操作することができる。
【0032】
本開示の態様によれば、
図2の左心房補助システム100は、潜在的に右側に問題が発生する前に、心臓の左側の潜在的な機能不全に対処するために、かつ/または肺動脈楔入圧(肺うっ血の代わり)の低下および左心室の充満の改善を介して心臓の両側の機能不全を緩和するために提供される。
【0033】
心臓の右側の負担を増加させ、心拍出量を減少させるという代償を払ってLA圧のみを低下させる装置を用いたHFpEF治療とは対照的に、本明細書に記載のシステム100は、右心房に負担を加えることなく心臓の左側の負担を減少させることによって心臓を補助し、それによって潜在的に、うっ血および肺動脈楔入圧も減少させ、LV拡張期の充満を改善し、これによって心拍出量の正味の増加をもたらすことができる。これは、心臓の左側に流体/容積変位システム(例えば、LA内の加圧要素102)を配置することによって達成される。加圧要素102がバルーンとして実装されている本明細書に記述される実施例では、バルーンの拡張および収縮は、各患者に対する補助を最適化し、心周期の間、常に血液を適切な方向に移動させ続けるような方法でタイミングがとられる。
【0034】
心房拡張期にLA内でバルーン102を収縮させると、LAリザーバストレインの増加(例えば、充満時の容積の増加)をシミュレートして、LAの相対容積を増加させ、充満圧を低下させることによって、肺から酸素化された血液を引き出すことを助けることができる。次に、拡張期周期の活性部分(例えば、心房収縮中)にバルーン102を拡張させることにより、バルーンは、周期の活性段階の間にLAの相対容積を減少させてLA圧を上昇させ、それにより、LA対LVの圧力差を増加させ、左心室の拡張期充満を改善することによって、ポンプ/アクティブストレインの増加をシミュレートすることができる。LAバルーン102のこの操作は、スティッフネスおよび壁応力が増加しつつある心臓の領域(例えば、LAおよびLV)のコンプライアンスを回復するのに役立つ。
【0035】
様々な動作シナリオにおいて、バルーン102(または、LAにおける流体/容積変位のための加圧要素の他の実施態様)は、バルーンの配置および各患者の特定のニーズに応じて操作することができる。
【0036】
バルーン102の拡張および収縮は、初期(例えば、固定)のタイミングに基づくことができ、または、心電図(例えば、EKGまたはECG)センサ、圧力センサ(例えば、LA内またはその近傍の圧力センサ)、またはそれらの組み合わせからのセンサ信号によってトリガすることができる。
【0037】
図3は、ECG信号200のタイミングに対する、LAバルーン102のバルーン拡張および収縮の可能なシーケンスを示す波形202を示す。
【0038】
図3の波形を生成できるバルーン102のタイミングの例示的な一実施態様では、LAバルーン102は、Rピークの検出時に時間遅延(例えば、Rピーク後100ミリ秒の遅延)を加えて収縮するようにトリガされる。このようにして、システムは、LAバルーンの収縮が、僧帽弁が閉じているときの心室収縮中に生じるLA圧/容積周期の自然な拡張/リザーバ機能段階と一致するように、LAバルーン102の収縮を開始する。LAバルーン102の拡張が、僧帽弁が閉じる直前の心室拡張期の終わりの心房収縮(例えば、a波のピークが発生したときの心房の圧力/容積周期の活発な収縮部分)と一致して、心房と心室の圧力差を高め、心室充満(例えば、左心室拡張末期容積、LVEDV)を増加させるように、LAバルーンの拡張は、ECGのP波ピークまたはRピークに基づき、追加の時間遅延(例えば、Rピーク後600ミリ秒の時間遅延)を加えて開始するようにトリガされてもよい。
【0039】
図4は、ECG信号のタイミングに対する、2つのLA圧波形300、312を示す。また、この図は、心周期のある時点も示す。例えば、LA収縮302、僧帽弁閉鎖304、LAの弛緩および充満306、LA満杯308、LA駆出310などである。修正されていない波形312は、LAバルーンを使用していない心臓の左心房圧波形を示し、修正された波形300は、LAバルーンを使用している心臓の左心房圧波形を示す。示されているように、修正された波形300のa波ピーク(302に相当)は、バルーンの拡張によりLAが収縮したときに、修正されていない波形312の302よりも高く、この波のブーストは、心不全および/または心房細動に関連する心房機能不全の結果として低下し得るLAの自然な収縮性を増幅し、左心室の充満を改善して心拍出量を支えるのに役立つ。逆に、Rピーク直後にバルーンを収縮させると、修正されていない波形312と比較して、心房の充満中の圧力が低下し(306に相当)、v波のピークが低くなる(308に相当)。この充満圧の低下により、肺動脈楔入圧が低下し、肺のうっ血が減少するはずである。
【0040】
図5~
図9は、LAバルーン102および心房位置決め構造106の例示的実施形態を示す。
【0041】
一般に、バルーン102は、その関連する位置決め構造から分離されていても、または位置決め構造に組み込まれていてもよい。いずれの実施態様においても、心周期を通して心臓内でその関連するバルーンの位置を維持する位置決め構造が提供される。
図5の例示的斜視図では、LAバルーン102は、心房中隔を通って延びる部分700で経中隔的に位置決めされるように構成された心房位置決め構造106に取り付けられているドーム形の拡張可能な構造である。部分700は、心房位置決め構造とみなしてもよく、心臓内に一時的に配置される上述のカテーテル本体、またはより長期的に心臓内に配置され得るより短い経中隔シャフトを備えてもよい。心房位置決め構造106は、
図6により詳細に示される2つのディスク800および802の形態を実質的にとり得る拡張可能なワイヤメッシュ(例えば、自己拡張型、型形状固定(shape-set)ニチノール製ワイヤメッシュ)を含むドーナツ状構造を構成する。システムは、経中隔的に送達されるときに、位置決め構造106およびドーム形の拡張可能構造102の直径を制限できるシース内から展開されてもよい。遠位端部がLA内に進入したら、バルーン102が取り付けられた遠位ディスクがLA内で拡張できるように、シースを後退させてもよい(または、バルーンカテーテルおよび位置決め構造をシースに対して前進させてもよい)。次いで、システムを右心房に向かって引き戻し、遠位ディスクの近位面を中隔壁の左心房に面した面に接触させることができる。シースを後退させ続けると、近位ディスクは、近位ディスクの遠位面が中隔壁の右心房に面する面に接触してシステムを中隔に対して固定するように、露出し、拡張する。
図5の矢印は、どのようにバルーン102が交互に拡張および収縮され得るかを示す。
【0042】
図6は、バルーン102が位置決め構造106のLA側に組み込まれた状態で、心房中隔809の両側に拡張可能部材800および802で固定された、
図5の心房位置決め構造106およびLAバルーン102の部分側面断面図を示す。拡張可能部材800および802は、患者の心臓に(部材802については心房中隔を通って)挿入するために折り畳まれ、その後、位置決め構造106を中隔に固定するために拡張され得る。バルーン102は、抗血栓材料を含むことができる。
図6の矢印は、中隔809に固定されたバルーン102がどのようにして交互に拡張および収縮できるかを示す。ドーム形のバルーン106が
図6および
図7に示されているが、LAバルーン102は、バルーン102を通る中央ルーメンを介してLAへの経中隔アクセスを可能にするドーナツ状ループまたは他の形態として成形され得ることを理解すべきである。LAへの導管を提供する中央ルーメンは、初期送達、カテーテルの外部部分のハブからの直接圧力測定、圧力センサ(例えば、光ファイバ圧力センサ)、静脈系へのシャント経路、またはLAへのアクセスが望まれ得る任意の他の目的を容易にするガイドワイヤルーメンとして使用することができる。例えば、
図7A~
図7Bは、左心房室へのアクセスを維持するための開口した中央ルーメン900を含むマルチルーメンカテーテル902を備えたLAバルーン102の実施態様を示す。カテーテル902は、バルーン102を拡張および収縮させるために使用できる別のルーメン904を備える。
図7Aの断面図が
図7Bに示される。図示されているように、中央ルーメン900は、両矢印901によって示されるように、左心房室へのアクセスを提供する。さらに、流体ルーメン904は、第2の両矢印903で描かれているように、バルーン102へ、またバルーン102から流体を送達できる。
【0043】
いくつかの操作シナリオでは、患者のHFを一時的に治療した後、経中隔LAバルーンおよび心房固定構造は除去でき、経中隔開口部は閉鎖されても、または開いたままであってもよい。
図8は、右心房に配置された第1の固定部材800および左心房に配置された第2の固定部材802を有する経中隔アンカーとして実装されたLA位置決め構造106によってLA内に位置決めされたLAバルーン102と、左側の部材802に取り付けられたLAバルーン102とを示す。
図9は、LAバルーン102が、左心耳(LAA)に遠位端部で固定される構造106により固定される代替的実装態様を示す。LAAに(例えば、
図9に示すような拡張可能ケージを用いて)固定することは、構造106が、LAの全体的な容積を減少させ、塞栓症のリスクおよび/またはAFの影響を最小化するのに役立つように、同時にLAAの一部を閉鎖するように実施することもできる。LA固定構造106は、LAバルーン102をLAに位置決めするために他の場所に固定することができることも理解されるべきである。一実施例では、LA固定構造106は、1つまたは複数の肺静脈のオリフィスに固定するように構成された固定部材であってもよい。さらに、本明細書に記載されている実施形態のいずれかにおいて、また
図8~
図9に示されているように、供給ライン110は、点線114で図示されている上大静脈(SVC)、または実線110で図示されているように下大静脈(IVC)から、右心房を介してLAにアクセスすることができる。
【0044】
LAバルーンの別の実施態様を
図10A~
図10Dに示す。LAバルーン502の遠位端部504は、LAバルーン502内に凹んでいる。陥入している先端により、ガイドワイヤが存在しない場合を含むがこれに限定されず、バルーン502の遠位端部504を非外傷性にすることができる。バルーン502は、
図10Dに示すように、上述した同様の固定機構によって心臓に固定することができるが、
図10Cに示すように、それを必要としない。
図10Cは、LAバルーン502が、心房位置決め構造としてシャフト506を用いてLA内に位置決めされ得ることを示す。一実施態様では、シャフト506は、マルチルーメンポリマーシャフトであってもよい。シャフト506は、送達中の適切な配置および操作中の安定化を容易にするのを助けるように、約60°または様々な異なる角度の曲がりまたはカーブを有して予備成形され得る。シャフト506は、複数のルーメンを構えることができる。例えば、シャフト506は、ガイドワイヤ用の別個のルーメン、バルーン502を拡張および収縮させるための別個のフロールーメン、および光ファイバ圧力センサ用の別個のルーメンを有することができる。また、シャフト506は、カテーテルの遠位先端を安定させ、操作時にバルーンの位置を維持するための補強用スタイレットを収容するルーメンを含んでいてもよい。補強用スタイレットは、遠位先端が所望の位置まで進む前または後に挿入することができる。補強用スタイレットは、シャフト506に所望の曲がりまたはカーブを付与するために、曲がりまたはカーブを有して予備成形されていてもよい。
【0045】
様々な実施態様において、LAバルーン102、502は、球形、楕円形、円筒形、平面、ドーム形、ドーナツ状、またはLAを加圧する(例えば、制御可能な方法で圧力を上昇または低下させる)のに適した任意の他の幾何学的構成である形状を有することができる。様々な形状は、患者における配置を改善することができる。他の実施態様では、LAバルーン102、502は、患者の心臓により適した、ならびに/または拡張および/もしくは収縮時に優先的なフローパターンを提供するために、様々なサイズを有することができる。
【0046】
LAバルーン102のようなLAバルーンは、1つまたは複数の他の植込型要素と組み合わせて提供できることをさらに理解すべきである。
【0047】
図11は、
図2では見えない上述のシステム100に組み込まれてもよく、本明細書に記載されるようにLAバルーン102を操作するように構成された様々な構成部品を示す。
図11は、上述した単一のバルーンシステム、またはさらに後述するデュアルバルーンシステムで使用可能であってもよい構成部品を示す。したがって、
図11に図示された構成部品のすべてが、単一のバルーンシステムに必要とされるかまたは利用されるとは限らなくてもよい。システム100の構成部品に関するさらなる詳細は、
図14および段落[0046]を含むがこれらに限定されない、2019年2月6日に出願された米国仮出願第62/801,819号にも記載されており、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。
図11の実施例では、システム100は、制御回路(図示せず)、電源(図示せず)、圧力チャンバまたはリザーバ1900、真空チャンバまたはリザーバ1902、およびポンプ1907を備えることができる。図示されているように、ソレノイド1908は、圧力チャンバ1900および真空チャンバ1902を流体ライン(例えば、
図2の流体ライン110の実施態様)に流体的に結合する管類に配置されてもよく、マイクロコントローラ1927の制御回路によって制御され、バルーン102の拡張および収縮を制御することができる。一実施形態では、ECGセンサ1903が患者1901に接続され、患者のECG信号はデータ収集ユニット1905に送信され、このデータ収集ユニット1905は、ECG信号のR波に相関する設定閾値を検索するようにソフトウェア1915によってプログラムされている。閾値が検出されると、データ収集ユニット1905は、マイクロコントローラ1927にパルス(例えば、方形波)を送信する。ソフトウェア1915は、データ収集ユニット1905によって送信されたパルスについてマイクロコントローラ1927を監視し、その情報を用いてECG信号のR波の間隔(R-R間隔)を連続的に計算する。LAバルーンの拡張は、計算されたR-R間隔およびパラメータ1919(拡張時間の長さ、ECG特徴1917の検出後のオフセット/遅延時間、および充満量を含む)を使用してタイミングが取られ、これらのパラメータ1919は、ユーザ入力/コントローラ1921を用いて調整され得る。次に、R-R間隔のタイミングおよびユーザ入力1921に基づいて、ソフトウェア1915は、マイクロコントローラ1927と通信してソレノイド1908を作動させ、バルーンのルーメンを、拡張のために圧力チャンバ1900へ、または収縮のために真空チャンバ1902へと、いずれかに開放する。
【0048】
システム100は、固定型の外部システム(例えば、ベッドサイド補助用)として描かれているが、
図11および上述の他の図面の構成部品は、歩行使用のために、または患者に植え込むために配置することもできる(例えば、バルーン102の駆動システムは、外部コンソール、ウェアラブルな外付けポータブルユニット内にあることができ、または完全植込型であってもよい)。システム100は、一時的な使用、短期的な使用、中期的な使用、長期的な使用、または永久的な使用のために提供され得る。一時的な場合には、LA位置決め構造106は、外傷がないように患者から取り外されるように構成される。
【0049】
所望であれば、バルーン102は、対応する空洞内の圧力データを収集する圧力センサ/モニタ1923、例えば、光ファイバ圧力センサまたは他の同様の方法を備えることができる。この圧力センサからの圧力データは、バルーンの拡張および/もしくは収縮を駆動もしくはトリガするために使用することができ、ならびに/または、出力ディスプレイ1925を介して、もしくは別個にアップロードされたときに、リアルタイムで患者、医師、もしくは他の人に情報を提供するために収集することができる。いくつかの実施形態では、センサ1923は、様々な目的でバルーン内の圧力を監視するために使用することもできる。
【0050】
本明細書では、LA加圧要素102がバルーンとして実装されている様々な実施例が説明されているが、LA補助システム100は、アクティブポンプ、軸流ポンプ、タービン、または容積および流体を変位させる他の機構など、他の加圧要素を用いて実施されてもよいことを理解すべきである。より一般的には、要素102は、患者の心臓の左側の1つまたは複数の部分と流体連通するように配置するための、生体適合性があり植込可能な加圧(例えば、圧力制御)、流体変位、および/または容積変位機構の任意の適切な組み合わせとして実装することができる。例えば、LA加圧要素102は、操作されると、LAの容積変位を引き起こすことができる。
【0051】
図12は、主題技術の1つまたは複数の態様が実装され得る電子システムを概念的に示す。電子システムは、例えば、スタンドアロンデバイス、ポータブル電子デバイス、例えば、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、電話、ウェアラブルデバイスもしくはパーソナルデジタルアシスタント(PDA)、または一般に、患者の心臓および/もしくは肺血管系に植え込まれた加圧装置に通信可能に接続できる任意の電子デバイスに実装された左心房補助システムのための制御回路1913であってもよく、またはその一部であってもよい。このような電子システムは、様々な種類のコンピュータ可読媒体と、他の様々な種類のコンピュータ可読媒体用のインタフェースとを備える。電子システムは、バス1008、処理ユニット1012、システムメモリ1004、読み取り専用メモリ(ROM)1010、永久記憶デバイス1002、入力デバイスインタフェース1014、出力デバイスインタフェース1006、およびネットワークインタフェース1016、またはそれらのサブセットおよび変形を備える。
【0052】
バス1008は、電子システムの多数の内部デバイスを通信可能に接続するすべてのシステムバス、周辺バスおよびチップセットバスを総称する。1つまたは複数の実施形態では、バス1008は、処理ユニット1012を、ROM1010、システムメモリ1004および永久記憶デバイス1002と通信可能に接続する。これらの様々なメモリユニットから、処理ユニット1012は、主題開示のプロセスを実行するために、実行する命令および処理するデータを取得する。処理ユニットは、異なる実施形態において、単一のプロセッサまたはマルチコアプロセッサであり得る。
【0053】
ROM1010は、電子システムの処理ユニット1012および他のモジュールが必要とする静的なデータおよび命令を格納する。一方、永久記憶デバイス1002は、読み書きメモリデバイスである。このデバイスは、電子システムがオフのときでも命令およびデータを格納する不揮発性メモリユニットである。主題開示の1つまたは複数の実施形態は、永久記憶デバイス1002として大容量記憶デバイス(例えば、磁気ディスクまたは光ディスクおよびその対応するディスクドライブ)を使用する。
【0054】
他の実施形態は、永久記憶デバイス1002として、取り外し可能な記憶デバイス(例えば、フロッピーディスク、フラッシュドライブ、およびその対応するディスクドライブ)を使用する。永久記憶デバイス1002と同様に、システムメモリ1004は、読み書きメモリデバイスである。しかし、記憶デバイス1002とは異なり、システムメモリ1004は、ランダムアクセスメモリのような揮発性の読み書き可能なメモリである。システムメモリ1004は、処理ユニット1012が実行時に必要とする命令およびデータのいずれかを格納する。1つまたは複数の実施形態では、主題開示の処理は、システムメモリ1004、永久記憶デバイス1002、および/またはROM1010に格納される。これらの様々なメモリユニットから、処理ユニット1012は、1つまたは複数の実施形態のプロセスを実行するために、実行する命令および処理するデータを取得する。
【0055】
バス1008は、入力デバイスインタフェース1014および出力デバイスインタフェース1006にも接続する。入力デバイスインタフェース1014によって、ユーザが情報および選択コマンドを電子システムに伝達すること、ならびに/またはセンサがセンサデータをプロセッサ1012に伝達することを可能にする。入力デバイスインタフェース1014と共に使用される入力デバイスとしては、例えば、英数字キーボード、ポインティングデバイス(「カーソル制御デバイス」とも呼ばれる)、カメラもしくは他のイメージングセンサ、心電センサ、圧力センサ、または一般に入力を受信できる任意のデバイスが挙げられる。出力デバイスインタフェース1006は、例えば、電子システムによって生成された画像の表示を可能にする。出力デバイスインタフェース1006と共に使用される出力デバイスとしては、例えば、プリンタ、および表示デバイス、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、ソリッドステートディスプレイ、プロジェクタ、または情報を出力する他の任意のデバイスが挙げられる。1つまたは複数の実施形態は、タッチスクリーンなど、入力デバイスおよび出力デバイスの両方として機能するデバイスを含んでいてもよい。これらの実施形態では、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックであってもよく、ユーザからの入力は、聴覚、音声、または触覚入力を含む任意の形態で受信され得る。出力デバイスインタフェース1006は、本明細書に記載されているように、加圧構成部品を操作する(例えば、加圧要素102を制御する)制御コマンドを出力するためにも使用することができる。
【0056】
最後に、
図12に示すように、バス1008は、ネットワークインタフェース1016を介して電子システムをネットワーク(図示せず)にも接続する。このようにして、コンピュータは、コンピュータのネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、もしくはイントラネットなどのネットワーク、またはインターネットのようなネットワークのネットワーク)の一部であってもよい。電子システムの任意のまたはすべてのコンポーネントは、主題開示と組み合わせて使用することができる。
【0057】
デュアル心臓補助システム
図13A~
図13Bは、2つの植込型加圧要素が患者に植え込まれた別の例示的システム600を示す。
図13A~
図13Bの実施例では、システム600は、例示のためにバルーンとして実装された第1の加圧要素102を備える。図示されているように、心房位置決め構造106は、第1の加圧要素102に結合され、患者の心臓101のLAに第1の加圧要素102を位置決めするように構成されている。上述した心房位置決め構造のいずれも、本明細書に記載のシステム600で利用することができる。図示されているように、システム600は、第2の加圧要素104と、第2の加圧要素104に結合され、患者の肺動脈PA内に第2の加圧要素104を位置決めするように構成された肺動脈位置決め構造108とをさらに備える。
図13A~
図13Bでは見えないが、システム600は、第1の加圧要素102および第2の加圧要素104を操作して、LAおよび肺動脈に協調された圧力変更および/または容積変位を引き起こすように構成された制御回路をさらに備える。供給ライン110および112が示されており、これらを介して、流体または気体が、加圧要素102および104のバルーン実施態様の拡張または収縮のために供給または除去され得、またはこれらによって、制御信号が加圧要素102および104の他の実施態様の操作のために提供され得る。上述したように、供給ライン110は、加圧要素102をLAに送達するために使用される細長いカテーテル本体に組み込まれても、またはその一部であってもよい。供給ライン112は、加圧要素104および肺動脈位置決め構造108を心臓の右側へと送達するために使用される細長いカテーテルに組み込まれても、またはその一部であってもよい。例えば、バルーンおよび非バルーンの両方の実施形態において、いくつかの態様では、カテーテルまたはシースが、大腿静脈を介して経皮的アプローチで送達され、下大静脈を通って、右心房RA、右心室RV、それから肺動脈PA内へと進められてもよい。加圧要素104は、細長い本体の遠位端部またはその付近に配置され、PA内で拡張することができる。
図13Aおよび
図13Bでバルーンの遠位に示されている拡張可能な肺動脈位置決め構造108は、PA内でバルーンを固定するのを助けるために、肺動脈(または他の場所)で拡張してもよい。いくつかの実施形態では、肺動脈位置決め構造108は、PAの分岐部で固定されてもよい拡張可能なケージを備える。
【0058】
システム600は、患者の心周期の一部に対応する信号を生成する心電図(ECG)センサおよび/または圧力センサなどの1つまたは複数のセンサも備えてもよい。加圧要素102および104は、センサからの信号に基づいて、心周期の様々な部分に合わせて、LAおよび肺動脈にそれぞれ協調された圧力変化(例えば、圧力上昇および/または圧力低下)を引き起こすように操作することができる。
【0059】
本開示の態様によれば、
図13A~
図13Bの両側システム600は、心臓の両側の潜在的な機能不全に対処するために提供される。心臓の右側の負担を増加させ、心拍出量を減少させるという代償を払ってLA圧のみを単に低下させる装置を用いたHFpEF治療とは対照的に、本明細書に記載のシステム600は、肺の両側への負担をなくすことによって心臓を補助し、それによって、うっ血および肺動脈楔入圧を減少させ、LV拡張期の充満を改善し、心拍出量を支える。これは、心臓の左側に流体/容積変位システム(例えば、LA内の加圧要素102)を1つ配置し、心臓の右側に流体/容積変位システム(例えば、肺動脈内の加圧要素104)をもう1つ配置することによって達成される。加圧要素102および加圧要素104がバルーンとして実装されている本明細書に記述される実施例では、バルーンの協調された拡張(
図13A参照)および収縮(
図13B参照)は、各患者に対する補助を最適化し、心周期の間、常に血液を適切な方向に移動させ続けるような方法でタイミングがとられる。
図13Aは、バルーン102、104が拡張したときを示し、
図13Bは、バルーン102、104が収縮したときを示す。
【0060】
右側では、バルーンの収縮は、
図13Bに示すように、右心室に必要な後負荷および仕事を減少させ、拡張中の肺の充満効率を改善する役割を果たすことができる。例えば、PA収縮期にPAバルーン104を能動的に収縮させると、PA収縮期圧およびRVの作業負荷が低下する。次に、肺動脈弁が閉じた後のPA拡張期に、
図13Aに示すようにPAバルーン104を拡張させることにより、PA拡張期圧が上昇し、肺血管抵抗に打ち勝ってより大きな心拍出量がもたらされるようにする。左側では、心房拡張期にLA内でバルーン102を収縮させると、LAリザーバストレインの増加(例えば、充満時の容積の増加)をシミュレートして、LAの相対容積を増加させ、充満圧を低下させることによって、肺から酸素化された血液を引き出すことを助けることができる。次に、拡張期周期の活性部分の間(例えば、心房収縮中)にバルーン102を拡張させることにより、バルーンは、周期の活性段階の間にLAの相対容積を減少させ、LA圧を上昇させ、それにより、LA対LVの圧力差を増加させ、左心室の拡張期充満を改善することによって、LAポンプ/アクティブストレインの増加をシミュレートすることができる。LAバルーン102およびPAバルーン104のこの協調された動作は、スティッフネスおよび壁応力が増加しつつある心臓の領域(例えば、LAおよびPA)のコンプライアンスを回復するのに役立つ。
【0061】
様々な操作シナリオにおいて、バルーン102および104(または、LAおよびPAにおける流体/容積変位のための加圧要素の他の実施態様)は、バルーンの配置および各患者の特定のニーズに応じて独立して、または協調して(例えば、直接同期して、真逆の機能を以て、または心周期を通して拡張および収縮を異なる遅延タイミングを用いた重複するシーケンスで)操作することができる。
【0062】
バルーン102および104の拡張および収縮は、初期(例えば、固定)のタイミングに基づくことができ、または、心電図(例えば、EKGまたはECG)センサ、圧力センサ(例えば、LA内もしくはその近傍の圧力センサ、およびPA内またはその近傍の圧力センサ)、またはそれらの組み合わせからのセンサ信号によってトリガすることができる。
【0063】
上述したように、
図3は、ECG信号200のタイミングに対する、LAバルーン102のバルーン拡張および収縮の可能なシーケンスを示す波形202を示す。
図3は、PAバルーン104のバルーン拡張および収縮の可能なシーケンスを示す波形204も示す。
【0064】
図3の波形を生成できるバルーン102および104のタイミングの例示的な一実施態様では、PAバルーン104は、収縮および拡張がそれぞれ、肺動脈弁の開閉と、収縮期および拡張期の開始に一致するように、ECG信号のRピークの検出時に収縮し、ECG信号のTピークの検出時(またはT波と一致するRピークからずらされた特定のタイミング)に拡張するようにトリガされる。本実施例では、LAバルーン102は、Rピークの検出時に時間遅延(例えば、Rピーク後100ミリ秒の遅延)を加えて収縮するようにトリガされる。このようにして、システムは、LAバルーン102の収縮が、僧帽弁が閉じているときの心室収縮中に生じるLA圧/容積周期の自然な拡張/リザーバ機能段階と一致するように、PAバルーン104の収縮を開始した直後にLAバルーン102の収縮を開始する。LAバルーン102の拡張が、僧帽弁が閉じる直前の心室拡張期の終わりで、心房収縮期(例えば、a波のピークが発生したときの心房の圧力/容積周期の活発な収縮部分)と一致して、心房と心室の圧力差を高め、心室充満(例えば、左心室拡張末期容積、LVEDV)を増加させるように、LAバルーン102の拡張は、ECGのP波ピークまたはRピークの検出に基づき、追加の時間遅延(例えば、Rピーク後600ミリ秒の時間遅延)を加えて開始するようにトリガされてもよい。
【0065】
その全文が本明細書に参考として組み込まれる、2019年2月6日出願の米国仮出願番号第62/801,917号の
図7は、ECG信号1604のタイミングに対して、2つの心周期にわたる大動脈圧、PA圧、心房圧、および心室圧を示す一連の波形を示す。さらに、LAバルーン102のバルーン拡張および収縮の可能なシーケンスを例示する波形1600、およびPAバルーン104のバルーン拡張および収縮の可能なシーケンスを例示する波形1602も示されている。さらに、波形1600および1602のバルーン拡張の結果としてのLAおよびPA圧力波への影響は、増強されたLA圧力波形1606および増強されたPA圧力波形1608に図示されている。
【0066】
図14~
図17に示されるように、PAバルーン104について、PA位置決め構造108は、バルーン104の遠位にあることができ、
図14に示す(例えば、血管系を通ってPAに通過する)細長い構成から、
図15に示す中間的な拡張構成を経て、
図16に示す完全に拡張された構成(例えば、結合されたトルクシャフトを反時計回りに回転させると、内部ねじに沿って遠位部から近位部を延ばし、固定構造を圧縮することができ、一方、トルクシャフトを時計回りに回転させると、固定構造の遠位端部および近位端部を接近させ、その直径を拡大することができる)へと拡張した後に、PAの壁に対して固定する拡張可能なケージとして実装することができる。また、
図16は、拡張された構成のPAバルーン104を示す。さらに
図14~
図16に示されているのは、バルーンカテーテルおよび固定システムをガイドワイヤ上の所定の位置に追跡することができるように、バルーンカテーテルおよび固定システムが導入される前に、解剖学的構造(この場合はPA)内の所望の位置に独立して挿入および前進され得るガイドワイヤ120である。その後、治療過程の間にガイドワイヤは取り外れても、または所定の位置に置かれたままでもよい。
【0067】
図14~
図17は、PAバルーン104に対して遠位に配置されたPA位置決め構造108を示しているが、PA位置決め構造108は、PAバルーン104の近位に配置されても、またはバルーンと一直線に(例えば、バルーンの周りのケージとして)組み込まれてもよいことを理解すべきである。
図16に示されるように、PA位置決め構造108は、そこを通る血流を可能にする。
【0068】
図17は、PAの上部に拡張されるケージとして実装されたPA位置決め構造108によってPA内に位置決めされたPAバルーン104を示す。
図17に示すように、供給ライン112は、実線112で示されるように、SVCまたはIVCから、右心房および右心室を経由してPAにアクセスすることができる。
【0069】
様々な実施態様において、LAバルーン102およびPAバルーン104は、同じ形状または異なる形状を有することができ、バルーンの形状は、球形、楕円形、円筒形、平面、ドーム形、ドーナツ状、またはLAおよび/もしくはPAを加圧する(例えば、制御可能な方法で圧力を上昇または低下させる)のに適した任意の他の幾何学的構成である。
【0070】
LA加圧要素102およびPA加圧要素104を有するシステム100を用いたHFpEF治療が本明細書に記載されているが、
図2に関連して説明される心周期の特徴に応じて両側の問題に対処するHFpEFおよび/またはAFの治療のための他のシステムが本明細書で企図されている。別の実施例として、
図18は、前方流ブーストを強化するためにらせん状に成形されたバルーン1702Aを示す。バルーン1702Aは、上述のようにPA内に位置決めするように構成されてもよい。他の実施形態では、PAにおいて本明細書に記載のバルーンまたは加圧要素のいずれかが、右心室RVにおける位置決めのために構成されてもよい。
【0071】
図11は、
図13A~
図13Bでは見えない上述のシステム600に組み込まれてもよく、本明細書に記載されるようにLAバルーン102およびPAバルーン104を操作するように構成された様々な構成部品を示す。システム100の構成部品に関するさらなる詳細は、
図21および段落[0057]を含むがこれらに限定されない、2019年2月6日に出願された米国仮出願第62/801,917号にも記載されており、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。
図11の実施例では、システム600は、制御回路(図示せず)、電源(図示せず)、圧力チャンバまたはリザーバ1900、真空チャンバまたはリザーバ1902、およびポンプ1907を備えることができる。図示されているように、ソレノイド1908、1909は、圧力チャンバ1900および真空チャンバ1902を流体ライン(例えば、
図13A~
図13Bの流体ライン110および112の実施態様)に流体的に結合する管類に配置されてもよく、マイクロコントローラ1927の制御回路によって制御され、バルーン102および104の拡張および収縮を制御することができる。一実施形態では、ECGセンサ1903が患者1901に接続され、患者のECG信号はデータ収集ユニット1905(Power Lab)に送信され、このデータ収集ユニット1905は、ECG信号のR波に相関する設定閾値を検索するようにプログラムされている。閾値が検出されると、データ収集ユニット1905は、マイクロコントローラ1927にパルス(方形波)を送信する。ソフトウェア1915は、データ収集ユニット1905によって送信されたパルスについてマイクロコントローラ1927を監視し、その情報を用いてECG信号のR波の間隔(R-R間隔)を連続的に計算する。PAおよびLAバルーンの拡張は、計算されたR-R間隔およびパラメータ1919、1929(拡張時間の長さ、ECG特徴1917の検出後のオフセット/遅延時間、および充満量を含む)を使用してタイミングが取られ、これらのパラメータ1919、1929は、ユーザ入力/コントローラ1921を用いて調整される。次に、R-R間隔のタイミングおよびユーザ入力1921に基づいて、ソフトウェアは、マイクロコントローラ1927と通信してソレノイド1908、1909を作動させ、バルーンのルーメンを、拡張のために圧力チャンバ1900へ、または収縮のために真空チャンバ1902へと、いずれかに開放する。
【0072】
システム600は、固定型の外部システム(例えば、ベッドサイド補助用)として描かれているが、
図11および上述の他の図面の構成部品は、歩行使用のために、または患者に植え込むために配置することもできる(例えば、バルーン102および104の駆動システムは、外部コンソール、ウェアラブルな外付けポータブルユニット内にあることができ、または完全植込型であってもよい)。システム600は、一時的な使用、短期的な使用、中期的な使用、長期的な使用、または永久的な使用のために提供され得る。一時的な場合には、LA位置決め構造106およびPA位置決め構造108は、外傷がないように患者から取り外されるように構成される。
【0073】
所望であれば、バルーン102および/または104は、対応する空洞内の圧力データを収集する圧力センサ/モニタ1923、1931を備えることができる。これらの圧力センサからの圧力データは、バルーンの拡張および/もしくは収縮を駆動もしくはトリガするために使用することができ、ならびに/または、出力ディスプレイ1925を介して、もしくは別個にアップロードされたときに、リアルタイムで患者、医師、もしくは他の人に情報を提供するために収集することができる。いくつかの実施形態では、センサ1923、1931は、様々な目的でバルーン内の圧力を監視するために使用することもできる。
【0074】
本明細書では、LA加圧要素102およびPA加圧要素104がバルーンとして実装されている様々な実施例が説明されているが、両側補助システム600は、アクティブポンプ、軸流ポンプ、タービン、または容積および流体を変位させる他の機構など、他の加圧要素を用いて実装されてもよいことを理解すべきである。より一般的には、要素102および104はそれぞれ、患者の心臓の左側または右側の1つまたは複数の部分と流体連通するように配置するための、生体適合性があり植込可能な圧力制御、流体変位、および/または容積変位機構の任意の適切な組み合わせとして実施することができる。例えば、LA加圧要素102は、操作されると、LAの容積変位を引き起こすことができ、PA加圧要素104は、操作されると、肺動脈の容積変位を引き起こすことができる。当業者であれば理解されるように、心臓の左側は、LAおよび左心室を含み、肺から酸素に富んだ血液を受け取り、酸素に富んだ血液を身体に送り出す。当業者であれば理解できるように、心臓の右側は、右心房および右心室を含み、身体から血液を受け取り、酸素を供給するために肺に血液を送り出す。
【0075】
上述した単一バルーンシステムと同様に、
図12は、主題技術の1つまたは複数の態様が実装され得る電子システムを概念的に示す。電子システムは、例えば、スタンドアロンデバイス、ポータブル電子デバイス、例えば、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、電話、ウェアラブルデバイスもしくはパーソナルデジタルアシスタント(PDA)、または一般に、患者の心臓および/もしくは肺血管系に植え込まれた加圧装置に通信可能に接続できる任意の電子デバイスに実装された両側心臓-肺補助システムのための制御回路1913であってもよく、またはその一部であってもよい。このような電子システムは、様々な種類のコンピュータ可読媒体と、他の様々な種類のコンピュータ可読媒体用のインタフェースとを備える。電子システムは、バス1008、処理ユニット1012、システムメモリ1004、読み取り専用メモリ(ROM)1010、永久記憶デバイス1002、入力デバイスインタフェース1014、出力デバイスインタフェース1006、およびネットワークインタフェース1016、またはそれらのサブセットおよび変形を備える。
【0076】
バス1008は、電子システムの多数の内部デバイスを通信可能に接続するすべてのシステムバス、周辺バスおよびチップセットバスを総称する。1つまたは複数の実施形態では、バス1008は、処理ユニット1012を、ROM1010、システムメモリ1004および永久記憶デバイス1002と通信可能に接続する。これらの様々なメモリユニットから、処理ユニット1012は、主題開示のプロセスを実行するために、実行する命令および処理するデータを取得する。処理ユニットは、異なる実施形態において、単一のプロセッサまたはマルチコアプロセッサであり得る。
【0077】
ROM1010は、電子システムの処理ユニット1012および他のモジュールが必要とする静的なデータおよび命令を格納する。一方、永久記憶デバイス1002は、読み書きメモリデバイスである。このデバイスは、電子システムがオフのときでも命令およびデータを記憶する不揮発性メモリユニットである。主題開示の1つまたは複数の実施形態は、永久記憶デバイス1002として大容量記憶デバイス(例えば、磁気ディスクまたは光ディスクおよびその対応するディスクドライブ)を使用する。
【0078】
他の実施形態は、永久記憶デバイス1002として、取り外し可能な記憶デバイス(例えば、フロッピーディスク、フラッシュドライブ、およびその対応するディスクドライブ)を使用する。永久記憶デバイス1002と同様に、システムメモリ1004は、読み書きメモリデバイスである。しかし、記憶デバイス1002とは異なり、システムメモリ1004は、ランダムアクセスメモリのような揮発性の読み書き可能なメモリである。システムメモリ1004は、処理ユニット1012が実行時に必要とする命令およびデータのいずれかを格納する。1つまたは複数の実施形態では、主題開示の処理は、システムメモリ1004、永久記憶デバイス1002、および/またはROM1010に格納される。これらの様々なメモリユニットから、処理ユニット1012は、1つまたは複数の実施形態のプロセスを実行するために、実行する命令および処理するデータを取得する。
【0079】
バス1008は、入力デバイスインタフェース1014および出力デバイスインタフェース1006にも接続する。入力デバイスインタフェース1014によって、ユーザは情報および選択コマンドを電子システムに伝達すること、および/またはセンサがセンサデータをプロセッサ1012に伝達することを可能にする。入力デバイスインタフェース1014と共に使用される入力デバイスとしては、例えば、英数字キーボード、ポインティングデバイス(「カーソル制御デバイス」とも呼ばれる)、カメラもしくは他のイメージングセンサ、心電センサ、圧力センサ、または一般に入力を受信できる任意のデバイスが挙げられる。出力デバイスインタフェース1006は、例えば、電子システムによって生成された画像の表示を可能にする。出力デバイスインタフェース1006と共に使用される出力デバイスとしては、例えば、プリンタ、および表示デバイス、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、ソリッドステートディスプレイ、プロジェクタ、または情報を出力する他の任意のデバイスが挙げられる。1つまたは複数の実施形態は、タッチスクリーンなど、入力デバイスおよび出力デバイスの両方として機能するデバイスを含んでいてもよい。これらの実施形態では、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバックであってもよく、ユーザからの入力は、聴覚、音声、または触覚入力を含む任意の形態で受信され得る。出力デバイスインタフェース1006は、本明細書に記載されているように、加圧構成部品を操作する(例えば、加圧要素102および104を制御する)制御コマンドを出力するためにも使用することができる。
【0080】
最後に、
図12に示すように、バス1008は、ネットワークインタフェース1016を介して電子システムをネットワーク(図示せず)にも接続する。このようにして、コンピュータは、コンピュータのネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、もしくはイントラネットなどのネットワーク、またはインターネットのようなネットワークのネットワーク)の一部であってもよい。電子システムの任意のまたはすべてのコンポーネントは、主題開示と組み合わせて使用することができる。
【0081】
肺静脈シールド
ここで、独立して、または上述したシステムのいずれかと共に使用できる肺シールドまたは血液調整弁について説明する。肺シールドが上述した心臓補助システムと共に使用される場合、肺シールドは、心房収縮の補助によりa波のLA圧が上昇した場合の肺静脈PVへの血液の逆流、およびPCWPの急上昇を防止することができる。
図19に示すように、シールドまたは血液調整弁は、心臓101のLAに配置することができる。さらに後述するように、シールドは、
図20に示す右上肺静脈RS-PV、左上肺静脈LS-PV、右下肺静脈RI-PV、および左下肺静脈LI-PVなどの異なる肺静脈PVのうちのいずれか1つまたは複数の口POへの流れに交わり、これを覆い、かつ/またはこれを遮断することができる。
【0082】
シールドまたは血液調整弁は、肺口POそれぞれの内部に配置され得る個々の一方向弁アセンブリ2000(
図21A~
図21Gに示す)、流れを遮断または迂回させることができる単一の層を備えた2次元または3次元の非多孔質表面2100(
図22に示す)、中央の非多孔質層2202、ならびに流れを調整することができる血液調整フラップ2204、または非多孔質層2202の周辺および/もしくは中央に類似構成(
図23Aではフラップ2204を閉じた状態で、
図23Bではフラップ2204を開いた状態で示す)を有する2次元または3次元表面2200、肺静脈PVからLAまでの流れを可能にするが、LAから肺静脈PVへの流れを制限または減少させることができる選択的多孔性を有する2次元または3次元表面2300(例えば、
図24に示す四つ葉形状)、あるいは前述の代替物の任意の組み合わせを含む種々の形態をとることができる。これらまたは他の実施形態では、シールドまたは血液調整弁は、肺からLAへの血液の流れを可能にし、LAから肺への血液の流れを部分的または完全に制限するように構成することができる。さらに、シールドまたは血液調整弁のこれらまたは他の実施形態は、シールドまたは血液調整弁がPV口POの表面から離して配置されたときに、LA圧の上昇がシールドまたは血液調整弁を駆動してPV口POを少なくとも部分的に閉鎖でき、LA圧が低下したときに、シールドまたは血液調整弁は、PV口POが再び開くように移動できるように構成することができる。シールドまたは血液調整弁は、所望の心臓位置への送達のために折り畳み可能であり、次いで所望の形状および構成に拡張可能であってもよい。
図21A~
図24および
図25A~
図28Dならびに本明細書の他の実施形態に示されるようないくつかの実施形態では、シールドまたは血液調整弁は、所望の位置(例えばLA)への血管内送達のために、ワイヤ、カテーテルまたはシースなどの送達装置の遠位端部に配置されてもよい。
【0083】
図21A~
図21Gは、
図21Aに示すように、肺口POのそれぞれの内部に配置することができる個々の一方向弁アセンブリ2000を示す。一方向弁アセンブリ2000は、拡張可能フレーム2002および一方向弁2004(例えば、ダックビルバルブまたは任意の適切な一方向弁)を備えることができる。拡張可能フレーム2002は、一方向弁アセンブリ2000が肺静脈PV内に固定されるように肺静脈PV内で拡張するように構成することができる。いくつかの構成において、拡張可能フレーム2002は、肺静脈PVに送達されたときにカテーテル内へと圧縮して再拡張するための型形状固定ワイヤ、レーザカットシートもしくはチューブ、成形材料、または他の材料を含むことができる。いくつかの構成において、一方向弁2004は、拡張可能フレーム2002から半径方向内側に配置することができる。いくつかの構成において、一方向弁2004は、血液が肺静脈PVからLAへ流れることを可能にし、血液がLAから肺静脈PVへ流れることを防止するように構成することができる。
【0084】
図21B~
図21Eに示すように、一方向弁2004の形状は、圧力差によって肺静脈PVからLAへの血流を駆動するときに弁2004を開くことができるように構成することができる。さらに、LAから肺静脈PVへの血流を駆動する圧力差は、弁2004を閉鎖させることができる。
図21Fおよび
図21Gは、それぞれ、閉鎖構成および開放構成における一方向弁アセンブリ2000の底面図を示す。いくつかの構成では、一方向弁2004は、膜、布、または拡張可能フレーム2002に貼り付けることができる他の薄い非多孔質材料で作ることができる。
図21B~
図21Eに示すように、一方向弁2004の第1の端部(例えば、植え込まれたときに肺静脈PVに最も近い端部)は、一方向弁2004を拡張可能フレーム2002に固定するために拡張可能フレーム2002の外面を覆うように半径方向外側に折り畳むことができる。いくつかの実施形態では、一方向弁2004は、拡張可能フレーム2002に少なくとも部分的に適合するように構成された可撓性材料を含むことができる。
【0085】
図25A~
図25Bは、多孔質調整表面を提供できる複数の層2402、2404を備えたシールド2400の一実施形態を示す。複数の層2402、2404は、少なくとも部分的に多孔性であり得る後部PV対向層またはバッキング層2402と、非多孔性であり得る前部LA対向層2404とを備えることができる。非多孔質層2404は、フラップ2406を備えることができる膜を備えることができる。フラップ2406は、膜に切り込まれても、または任意の適切な方法によって切り込まれてもよい。フラップ2406は、適切な圧力差があるときに肺静脈PVからLAへの流れを可能にするために、多孔性バッキング層2402から離れてLAに向かって開くように構成することができる。LA圧が上昇してPV圧力を超えると、フラップ2406は、バッキング層2404に対して閉じ、それによって肺静脈PVへの流れを制限し、圧力の急上昇を回避して平均PCWPを低下させることができる。織布もしくは編布、ポリマー膜、金属メッシュ、および/またはその他を含む様々な材料が、各層2402、2404に使用され得る。シールド2400は、複数の層2402、2404を支持するように構成され得るワイヤフレームなどの構造支持体2408をさらに含んでいてもよい。シールド2400は、送達カテーテルまたはシース内などの血管内送達のために折り畳み可能であってもよく、肺静脈PVの1つまたは複数の口POを覆うようにLA内で拡張可能であってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、PV口POおよびLAに対向しているシールド2400の表面は、2次元(例えば、実質的に平面)であっても、または拡張したときに3次元形状を有していてもよい。例えば、シールド2400の表面は、より良い封止のためにLAの内表面の少なくとも一部に概ね適合するように成形されてもよい。いくつかの実施形態では、シールド2400の表面は、4つのPV口POすべてを覆うように成形することができるが、他の実施形態では、シールド2400の表面は、1つ、2つ、または3つのPV口POのみを覆うように成形されてもよい。いくつかの実施形態では、シールド2400は、僧帽弁を通る流れの制限を回避するように構成できる。シールド2400の外周は、PV口POのうちの1つまたは複数を覆うように、例えば、円形、楕円形、クローバ、チョウ、および四つ葉を含むが、これらに限定されない様々な異なる形状を有することができる。いくつかの実施形態では、シールド2400の表面は、口PO内により良く収まるためにLA領域からPV口PO内により深く延び、一方向弁が閉じているときでさえも肺静脈PVへの望ましくない圧力伝達を引き起こし得るダイヤフラム効果のリスクを低減するように個々の凹状領域を備えることができる。
【0087】
図26~
図28Dは、カテーテルへの圧縮および再拡張に適した型形状固定ワイヤ、レーザカットシート、成形材料、または任意の他の構造的支持要素から形成された周辺部を備えることができる表面型シールドの複数の実施形態を示す。本明細書に記載されたこれらまたは任意の他の実施形態のこのシステムは、静脈系から挿入されたカテーテルから導入され(例えば、経大腿動脈または経頸静脈)、LA内に展開するために右心房RAとLAとの間で経中隔的に配置されてもよい。単一のシールドまたは複数のシールドが、4つの肺静脈口POのすべてまたはそのサブセットを覆うことができるように、様々な形状が利用され得る。
図26に示すように、シールド2500は、4つの肺静脈口POすべてを覆う単一のローブを備えてもよい。
図27に示すように、シールド2600は、2つのローブ2602、2604を備えてもよい。2つのローブ2602、2604は、右上肺静脈口および左上肺静脈口を覆うように構成され得る第1のローブ2602と、右下肺静脈口および左下肺静脈口を覆うように構成され得る第2のローブ2604とを含むことができる。
【0088】
図28A~
図28Dに示すように、シールド2700は、4つのローブ2702、2704、2706、2708を備えることができる。4つのローブ2702、2704、2706、2708は、右上肺静脈口を覆うように構成された第1のローブ2702と、左上肺静脈口を覆うように構成された第2のローブ2704と、右下肺静脈口を覆うように構成された第3のローブ2706と、左下肺静脈口を覆うように構成された第4のローブ2708とを含むことができる。いくつかの実施形態では、表面型シールド2700は、
図21B~
図21Gに関連して記載した一方向弁アセンブリ2000のような、シールド2700のローブ2702、2704、2706、2708の少なくとも1つにある、取り付けられた、または別様に結合された1つまたは複数の一方向弁をさらに備えることができる。例えば、図示されている構成は、シールド2700の第2のローブ2704に取り付けられた一方向弁アセンブリ2000と同一または類似であり得る一方向弁アセンブリ2710を示す。1つまたは複数の一方向弁アセンブリ2710を表面型シールド2700の1つまたは複数のローブ2702、2704、2706、2708に取り付けることの利点は、肺静脈PVへの一方向弁アセンブリ2710の送達を容易にすることと、肺静脈PVからLAへの一方向弁アセンブリ2710の移動の可能性を低減することと、肺静脈PVから一方向弁アセンブリ2710の取り外しを可能にすることとを含む。
【0089】
図26~
図28Dに示すシールド2500、2600、2700は、各ローブの形状および/またはサイズが患者の解剖学的構造に最も適合するように処置前に、またはその場のいずれかで独立して変更できるように、単一のワイヤ、複数のワイヤ、または上述した任意の他の構造的支持要素から形成されてもよい。シールド2500、2600、2700は、
図25A~
図25Bに関して記載した複数の層を備えても、または本明細書の他の箇所で記載した血流を調整するための他の構造を備えてもよい。
【0090】
図29A~
図29Cは、様々なポートがラベル付けされたブタ心臓PHのモデルを示す。例えば、
図29Aは、ブタ心臓PHの右肺静脈RPV、左肺静脈LPV、LA、中隔S、僧帽弁面MVPおよび左心房付属器LAAを示す。
図29Bは、特定の部分(例えば、左心房付属器LAAを含むブタ心臓PHの僧帽弁およびその下のすべての部分)を除去したブタ心臓PHを示す。
図29Cは、
図29Bに示すブタ心臓PHの底面図を示し、経中隔的穿刺TPがブタ心臓PHに行われている。ヒト心臓101は4つの肺静脈PVを有するが、ブタ心臓PHは2つの肺静脈PVを有する。それにもかかわらず、ブタ心臓PHは、潜在的な設計の有用性を評価するための適切なモデルであることができる。すると、ブタ心臓PHにおいて良好に機能する設計は、ヒト心臓101に適合するようにさらに変更されてもよい。さらに、本明細書に記載のシールドの実施形態は、動物試験における使用に好適であり得る。
【0091】
図30A~
図30Bは、左ローブ2802および右ローブ2804を含む2つのワイヤから形成されたローブ2802、2804を有する表面シールド2800の構成の一実施形態を示す。ローブ2802、2804はそれぞれ、肺静脈PVの口POを覆うように構成された膜2806、2808と、各膜2806、2808を取り囲むワイヤフォーム(wire-form)2810、2812とを備えることができる。膜2806、2808は、肺静脈PVの口POを通る流れを調整するように構成できる。2つのワイヤから形成されたローブ2802、2804は、右心房RAと左心房LAとの間の経中隔開口部TPを通して送達され得る送達シャフトなどの送達装置の遠位端部から延び得る。ワイヤから形成されたローブ2802、2804はそれぞれ、ローブ2802、2804が位置決めされた肺静脈PVの特定の口POに適合するように形成されてもよく、したがって、異なる形状を有してもよい。上述のように、異なるローブ2802、2804は、最適な封止のために周辺の解剖学的構造に最も適合するように、処置前に、またはその場で独立して形成され得る。
【0092】
上述した肺静脈シールドは、
図2~
図18に関連して記述したシステムなど、心不全を治療するために用いられる心臓内補助システムと組み合わせて利用することができる。
図31A~
図31Bは、
図10A~
図10Bに示すLAバルーン502と合わせた
図30に示すシールドの構成を示す。心房収縮期中のLAカウンターパルゼーションバルーン502の拡張は、自然な心房収縮を補完し、僧帽弁が閉じる前の拡張終期中に心室の追加の前方流および充満を導くことができる。この場合の肺動脈弁シールド2800の存在は、補助された心房収縮がより高いa波(ピーク)LA圧をもたらす場合に、PCWPの急上昇を防止し得る。いくつかの実施形態では、バルーン502および肺静脈シールド2800は両方とも、バルーン502の拡張およびシールド2800の拡張の後、バルーン502およびシールド2800が互いに干渉しないように構成することができる。
【0093】
いくつかの構成では、単一の経中隔シースが、肺動脈弁シールド2800およびLAバルーン502の両方を備えることができる。いくつかの構成では、シールド2800は、同じ展開シース内でLAカウンターパルゼーションバルーン502に対して遠位に装填され得る。いくつかの構成では、LAカウンターパルゼーションバルーン502は、肺動脈弁シールド2800の上の同じカテーテルに装填することができ、またはLAカウンターパルゼーションバルーン502は、肺動脈弁シールド2800とは異なるカテーテルに装填されて、同じ経中隔シースを通してまたは同じ経中隔ワイヤを介して交換することができる。いくつかの構成では、LAカウンターパルゼーションバルーン502および肺動脈弁シールド2800は、別個の経中隔シースを通して送達することができる。
【0094】
図32は、送達シースを出た後の拡張構成における1つの可能なワイヤにより形成されたシールド2900の形状を示す。シールド2900は、第1の大きいローブ2902および第2の小さいローブ2904を備えることができる。いくつかの構成では、ローブ2902、2904は同じサイズであってもよく、ローブの数はより少なくても多くてもよい(例えば、1つ、3つ、または4つ)。各ローブ2902、2904は、本来の解剖学的構造に適合するように複数の湾曲または曲線を備えることができる2次元または3次元の周辺形状を有してもよい。いくつかの構成では、1つまたは複数のローブは、本来の解剖学的構造に適合するために様々な形状を有することができるが、他の構成では、複数のローブは、製造および展開の容易さを促すために同じ形状を有することができる。
【0095】
図33~
図34は、多孔質バッキング層を有するシールド3000、3100の異なる実施形態を示す。
図33は、多孔質バッキング層3006、3008と、
図32のワイヤフレーム2902、2904によって支持されたメッシュ層3010、3012とを備えることができるシールド3000の可能な構成を示す。
図34は、穿孔3110、3112を有する膜3106、3108がワイヤフレーム2902、2904によって支持されているシールド3100の実施形態を示す。多孔質バッキング層は、前方流(すなわち、肺静脈PVからLA)勾配の最小化対シールド3000、3100の弁の機能性(例えば、バッキング層2402に対して開閉するフラップ2406を備えた
図25A~
図25Bに関連して記載される非孔質層2404)と、弁(例えばフラップ2406)のバッキング層に対する封止能力との間のトレードオフを説明するよう設計することができる。例えば、
図33に示すワイヤメッシュ3010、3012は、
図34の膜3106、3108よりも大きな前方流を提供し得るが、ワイヤメッシュ3010、3012に対する弁の完全な封止を得ることはより困難になり得る。
図34に示す多孔質膜3106、3108により、より大きな表面積故に弁が封止を形成することがより容易になり得るが、前方流は最小化され得る。これらの実施形態におけるバッキング層のレベルまたは多孔性は、前方流(すなわち、肺静脈PVからLA)勾配の最小化と逆流封止の最大化との間の所望のバランスを得るために変更されてもよい。
【0096】
図34~
図37は、多孔性バッキング材料の前部(すなわち、LA側)の血流を調整するために、ワイヤにより形成されたシールド2900(
図32に示す)における非多孔性カット膜3206、3208、3306、3308、3406、3408についての種々の可能な構成3200、3300、3400を示す。シールド3200、3300、3400はそれぞれ、第1のローブ3202、3302、3402および第2のローブ3204、3304、3404を備えることができる。これらの図に示すように、最小の勾配で一方向の流れを最適化し、反対方向の流れを最小化するために、切れ目およびヒンジ点の方向および向きを変化させることができる。
【0097】
いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400および本明細書の他の箇所に記載される他のシールドのフラップは、より良い封止を得るために、フラップがより重なり合って接触した状態で表面に対して閉じることができるように、穴の上に開くように構成することができる。いくつかの構成では、フラップは、フラップが膜材料の壁面3206、3208、3306、3308、3406、3408に対して閉じることができ、より良い封止のためにより多くの重なりを得ることができる膜3206、3208、3306、3308、3406、3408の壁を通る傾斜した切り込みにより作成することができる。いくつかの構成では、フラップは、レーザカットまたは任意の他の適切な方法によって膜3206、3208、3306、3308、3406、3408に形成することができる。いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400は、例えば、前述した技術(例えば、傾斜した切り込みまたはヒンジ)のうちの1つを使用して、一方向にのみ開くように構成されたフラップを有する単一の多孔質層のみを備えることができる。
【0098】
いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400および本明細書の他の箇所に記載された他のシールドは、シールドの中央のくびれた部分がその場で拡張して周辺の解剖学的構造に並ぶことができるように制御可能に解放することができる非円形形状を有することができる。この構成では、シールド3200、3300、3400は、中央のくびれた位置(すなわち、ピーナッツ殻形状)に保持することができる単一のワイヤから作られた2つのローブ形状を有することができ、その後、ピーナッツ殻形状が円形または楕円状の形状に拡張できるように拡張され得る。いくつかの実施形態において、シールドは、平坦、凹状であることができ、かつ/または他方に対して平面から外れた一端を有することができる。
【0099】
いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400および本明細書の他の箇所に記載された他のシールドは、周辺部に隙間がないことと、キャビティの所定の円周断面の周りの並びが維持されることとを保証しながら、システムを折り畳んでカテーテルに装填することを容易にするためにシールド3200、3300、3400の周辺部を形成するために使用できる複数の重なり合うワイヤを備えることができる。いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400は、ローブ形状を制御できる2つの重なり合うワイヤを備えることができる。2つのワイヤを重ね合わせることによって、ローブ形状は、ハート形状になるような窪みを上部に有することを回避しながら個別に制御でき、これによって、シールド3200、3300、3400の周辺部が、所望であれば上部に沿って連続的により接触するようにする。
【0100】
いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400および本明細書の他の箇所に記載された他のシールドは、形状の中央のくびれた部分がその場で拡張して周辺の解剖学的構造と並ぶように制御可能に解放できる非円形の形状を有することができる。いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400は、ワイヤがそこから延びてローブ3202、3204、3302、3304、3402、3404を形成し得る予備成形支持チューブを備えることができる。予備成形支持チューブは、2つの側部ローブ間の所望の角度を維持するために優先的に配向され得る1つまたは複数のオフセット穴を備えることができる。予備成形支持チューブのオフセット穴は、チューブを介したより多くの制御と、システムに対するより多くのトルク制御とを提供することができる。
【0101】
いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400および本明細書の他の箇所に記載されている他のシールドは、異なる表面構成を有することができる。いくつかの構成では、表面の側部(例えば、2つの隣接するローブ3202、3204、3302、3304、3402、3404)は、シールド3200、3300、3400の装填および展開を容易にするために巻物のように巻き上げるように構成することができる。いくつかの構成では、シールド3200、3300、3400は、(例えば、単一のチューブのように)巻き上げ、(例えば、紙扇子のように)閉じ、ローブ3202、3204、3302、3304、3402、3404を中心軸基準から側方に引き下げ、かつ/またはローブ3202、3204、3302、3304、3402、3404を中心軸から側方に押し上げることによってカテーテルから装填および/または展開され得る。
【0102】
図37に示すように、表面3406、3408に沿った高歪み領域における装填および解放中にさらなる支持を提供するために、補強要素3410、3412が表面3406、3408に追加されてもよい。補強要素3410、3412は、張力方向に沿ってより大きな構造的支持を維持するために、ワイヤ、縫合糸、ポリマー、または任意の他の構造的支持材料から、または前面および/もしくは裏面の切断されていない領域もしくはより厚い領域を維持することによって作ることができる。
【0103】
図38は、シールドの表面を肺静脈PVの口POに向けて付勢するための肺静脈シールド用の支持足場3500の可能な3次元形状を示す。支持足場3500は、楕円形状であることができ、またはより良い封止のためにLAの内面に概ね適合するように、少なくとも部分的に椀形であることができる。椀状部分などの支持足場3500の表面の一部は、上述した多孔質層および/または非多孔質層によって覆われてもよい。このようなアプローチは、血液調整面が閉じたときに、肺静脈PVに向かう表面のさらなる反りを最小化し得る。言い換えれば、このアプローチは、シールドの閉じた表面が隔壁またはトランポリンとして機能することを防止でき、閉じた表面を肺静脈PVに向かって変位させると、肺静脈PVにおける容積の圧縮をもたらし、圧力を上昇させる可能性がある。シールド3500の椀形状はまた、シールド3500に接触することなく、LA加圧要素のLA内部への配置を容易にし得る。
【0104】
図39A~
図40Bは、LAの少なくとも一部を囲い込むように構成されたフレーム3602、3702を備えた肺静脈シールド3600、3700の3次元の実施形態を示す。シールド3600、3700の血液調整面3604、3704は、フレームまたはケージ3602、3702の上に延びてもよい。いくつかの構成では、LAバルーン502は、フレーム/ケージ3602、3702の内部に配置されてもよい。いくつかの構成では、LAバルーン502(例えば、LAバルーン502の遠位端部)は、安定性のためにケージ3602、3702(例えば、ケージ3602、3702の右側)に固定されてもよい。LAバルーン502は、固定を補助するために、中を通るガイドワイヤを有することができる。いくつかの構成では、フレーム/ケージ3602、3702がLA内に配備されると、LAバルーン502がフレーム/ケージ3602、3702の内部にあることができ、またはフレーム/ケージ3602、3702が所定の位置に配備された後にLAバルーン502がフレーム/ケージ3602、3702内に進められてもよい。
【0105】
いくつかの構成では、フレーム/ケージ3602、3702は、LAバルーン502と共に圧縮構成で配備されてもよい。例えば、
図39A~
図39Dは、LAバルーン502と共にシールド3600を配備する2段階の方法を示す。
図39A~
図39Bに示すように、シールド3600の圧縮構成は、LAバルーン502によって送達されてもよい。シールド3600およびLAバルーン502がLA内にあると、シールド3600は、
図39C~
図39Dに示すように、LAバルーン502を少なくとも部分的に覆うように拡張構成へと拡張することができる。いくつかの構成では、シールド3600は、
図39Aおよび
図39Bに示す圧縮構成(例えば、送達カテーテル内から)から
図39Cおよび
図39Dに示す拡張構成へと拡張する複数の長手方向リブから作られたフレーム3602を備えることができる。拡張されたフレーム3602は、LAに向けられた凹面および肺静脈PVに向けられた凸面を形成することができる。いくつかの構成では、フレーム3602は、半球形状に似ていてもよいが、他の構成では、形状は、おおよそ半球体であってもよく、非球形(例えば、楕円体)であってもよく、非均一であってもよく、かつ/またはLAの解剖学的構造に適合してもよい。
【0106】
いくつかの構成では、シールド3600は、フレーム3602の凹側に、血液が肺静脈PVからLAに流れることを可能にし、LAから肺静脈PVへの血流を防止するように構成できる第2の層をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、第2の層は、本明細書に記載されるフラップの実施形態のいずれかなどの一方向弁フラップを備える。フレーム3602の長手方向リブの数および間隔、ならびにフラップのサイズおよび間隔は、血液がLAから肺静脈PVの方向に流れるときにフラップがリブに対して閉じ、第2の層が非多孔性となるように、第2の層のフラップがフレームの少なくとも1つのリブに対して閉じることができるように調整することができる。
【0107】
3次元肺静脈シールド3600、3700は、異なる構成を備えることができる。例えば、3次元肺静脈シールド3600、3700は、LAバルーン502を取り囲む完全なケージまたはLAバルーン502を取り囲む漏斗形状のケージを備えることができる。いくつかの構成では、3次元シールド表面3604、3704は、LAバルーン502がLAの表面3604、3704の前方に位置し、バルーン502が拡張するときにシールド3600、3700との相互作用を回避できるように、LAバルーン502の背後に(すなわち、肺静脈PV寄りに)配置されるよう構成することができる。いくつかの構成では、シールドの表面3604、3704は、シールドの表面3604、3704がバルーン502の拡張を妨害しないように、バルーン502に向かって凹むことができる。
【0108】
図41A~
図41Bに示すように、シールド4700(
図43A~
図43Cに示す)は、支持体4500を備えることができる。いくつかの構成では、複数の支持特徴またはポスト4502は、支持体4500の本体4504に組み込むことができる。いくつかの構成では、本体4504は、拡張可能なステント(例えば、ワイヤフォームまたはレーザカット部材)または円周形状を有する中実チューブを備えることができる。本体4504は、イントロデューサシース4600(例えば、
図43A~
図43C)内の位置を維持するために、直接的な同心性のため、または所望の半径方向もしくは円周方向のオフセットを維持するために、シールド4700の表面に取り付けることができる。いくつかの構成では、複数の支持ポスト4502は、第1の支持ポスト4502a、第2の支持ポスト4502bおよび第3の支持ポスト4502cを含むことができる。図示された構成は、3つの支持ポスト4502a、4502b、4502cを示すが、複数の支持ポスト4502は、3つよりも多いまたは少ない支持ポスト(例えば、2つ、4つ、5つ、6つなど)を含むことができ、または単一の支持ポストがあってもよい。
【0109】
図41Bに示すように、複数の支持ポスト4502a、4502b、4502cはそれぞれ、支持ポスト4502a、4502b、4502cの近位部分(すなわち、支持ポスト4502a、4502b、4502cの本体4504に取り付けられた部分)と支持ポスト4502a、4502b、4502cの遠位部分との間に湾曲を備えることができる。いくつかの構成では、支持ポスト4502a、4502b、4502cの各々の湾曲は、支持ポスト4502a、4502b、4502cの基部に対して異なる高さh1、h2、h3であることができ、かつ/またはシールド4700の拡張の速度および/または順序を制御するために異なる角度Θ1、Θ2、Θ3を有することができる。例えば、第1の支持ポスト4502aは、本体4504から第1の高さh1で第1の角度Θ1を有する湾曲を備えることができ、第2の支持ポスト4502bは、本体4504から第2の高さh2で第2の角度Θ2を有する湾曲を備えることができ、第3の支持ポスト4502cは、本体4504から第3の高さh3で第3の角度Θ3を有する湾曲を備えることができる。いくつかの構成では、第1の高さh1は、第2の高さh2よりも大きく、第3の高さh3よりも小さくてもよい。この構成では、展開中(例えば、
図42B)、第2の支持ポスト4502bは第1の支持ポスト4502aおよび第3の支持ポスト4502cの前に半径方向外側に延びることができ、第1の支持ポスト4502aは、第3の支持ポスト4502cの前に半径方向外側に延びることができる。いくつかの構成では、支持ポスト4502a、4502b、4502cの湾曲は、すべて同じ高さh1、h2、h3であってもよく、かつ/または同じ角度Θ1、Θ2、Θ3を有してもよい。いくつかの構成では、少なくとも1つの支持ポスト4502a、4502b、4502の湾曲は、他の支持ポスト4502a、4502b、4502cと異なる高さh1、h2、h3であってもよく、かつ/または異なる角度Θ1、Θ2、Θ3を有してもよい。
【0110】
いくつかの構成では、支持ポスト4502a、4502b、4502cの湾曲の任意の2つの高さh1、h2、h3間の差は、約2mm、または約1mm~約10mmとの間であることができる。いくつかの構成では、支持ポスト4502a、4502b、4502cの湾曲の角度Θ1、Θ2、Θ3は、約150°、または約90°~約180°であることができる。
【0111】
図42A~
図42Bは、カテーテル4600または他の送達装置から展開される支持体4500を示す。
図42Bに示すように、支持体4500は、カテーテル4600内で圧縮され得る。
図42Aに示すように、複数の支持ポスト4502がカテーテル4600から完全に展開されると、複数の支持ポスト4502は、拡張して、異なる高さh1、h2、h3で異なる角度Θ1、Θ2、Θ3を有する異なる湾曲を形成することができる。
【0112】
図43A~
図43Cは、
図41A~42Bに示される支持体4500に取り付けることができるシールド4700、4700’の異なる実施形態を展開する方法を示す。
図43B~
図43Cは、支持ポスト4502a、4502b、4502cに取り付けることができる2つのローブ4702、4704を備えたシールド4700を示す。
図43Cに示すように、第1の支持ポスト4502aおよび第3の支持ポスト4502cは、ローブ4702、4704の各々に取り付けることができ、第2の支持ポスト4502bは、2つのローブ4702、4704間のヒンジ点に取り付けられることができる。いくつかの構成では、支持ポスト4502は、シールド4700がカテーテル4600から展開されると、シールド4700の2つのローブ4703、4704の拡張を補助することができる。例えば、
図43Bに示すように、シールド4700は、カテーテル4600から展開され、第1の平面において(例えば、カテーテル4600の長手方向軸に沿って)拡張することができる。
図43Cに示すように、複数の支持ポスト4502は、シールド4700を第2の平面(例えば、第1の平面から90°)においてさらに展開させることができる。シールド4700は、2つのローブ4702、4704と共に示されているが、シールド4700は、1つのローブまたは3つ以上のローブを備えることができる(例えば、
図43Aは、単一の支持ポスト4502に取り付けることができる単一のローブを備えたシールド4700’を示す)。さらに、上述したように、シールド4700の支持体4500は、単一の支持ポスト4502(例えば、
図43A)または4つ以上の支持ポスト4502を備えることができる。ローブおよび支持ポストはそれぞれ、所望のその場での最終状態において、それらの間の、または支持体4500の本体4504の長手方向軸に対して異なる好ましい分離角度を有することができる。
【0113】
いくつかの構成では、シールド4700は、シールドの上部もしくは遠位側を横切って連続するか、または下部もしくは近位側を横切って連続することができる単一のワイヤフォーム支持体を備えることができる。いくつかの構成では、形状固定管を使用して、位置の制御を助け、シールド4700の各ローブ内に前進するワイヤの相対的長さの調整を可能にして、組織への適切な付着を確実にすることができる。いくつかの構成では、形状固定管は、一方のローブ表面の平面の他方に対する所望の角度オフセットを確立することができるレーザカット穴を含むことができる。
【0114】
図44A~
図44Iは、シールド3800の別の構成を示す。シールド3800は、複数の開口部3808を備えた多孔質バッキングプレートまたは層3806(例えば、
図44B)と、複数のフラップ3804を備えた弁プレートまたは層3802とを備えることができる。複数の開口部3808は、多孔質バッキングプレート3806の中心またはその近くに配置することができ、複数のフラップ3804は、弁プレート3802の中心またはその近くに配置することができる。複数の開口部3808は、外側開口部が内側開口部から半径方向外側にあるように内側開口部および外側開口部3808を構成することができる。さらに、複数のフラップ3804は、外側フラップが内側フラップから半径方向外側にあるように内側フラップおよび外側フラップ3804を構成することができる。シールド3800が組み立てられるとき、バッキングプレート3806の複数の開口部3808は、弁プレート3802の複数のフラップ3804と整列することができる。複数の開口部3808は、複数のフラップ3804と同様の形状を有することができる。さらに、複数の開口部3808のサイズは、複数のフラップ3804が一方向に開くことができるように(すなわち、血液がバッキングプレート3806から弁プレート3804の方向に流れるとき)、複数のフラップ3804より小さくてもよい。
【0115】
図44D~
図44Iに示すように、シールド3800は、開放構成(例えば、
図44E~
図44Gおよび
図44I)および閉鎖構成(例えば、
図44Dおよび
図44H)を含むことができる。開放構成では、複数のフラップ3804は、多孔質バッキングプレート3806から離れるように移動し、血液が複数の開口部3808および複数の開いたフラップ3804を通って流れることを可能にすることができる。閉鎖構成では、複数のフラップ3804は、血液が複数の閉じたフラップ3804または複数の開口部3808を通って流れることを防止するように、バッキングプレート3806に当接することができる。
【0116】
多孔質バッキングプレート3806および弁プレート3802の図示された構成は円形であるように示されているが、バッキングプレート3806および弁プレート3802は、任意の他の適切な形状(例えば、
図22~
図28Dおよび
図32~
図37に示すシールド構成と同様の形状)を備えることができる。いくつかの構成では、複数の開口部3808は、血液が開口部3808および複数の開いたフラップ3804を通って一方向に(例えば、血液がバッキングプレート3806から弁プレート3804の方向に流れるとき)流れることができ、シールド3800を通って反対方向に(例えば、血液が弁プレート3804からバッキングプレート3806の方向に流れるとき)流れることが防止されるように複数のフラップ3804からオフセットされ得る。いくつかの構成では、複数の開口部3808は、複数のフラップ3804とは異なる形状を有することができる。いくつかの構成では、バッキングプレート3806は、将来の外科的介入のために縫合糸を受容し、かつ/または組織の内部成長を促進するように構成された複数の小さな穴を備えることができる。いくつかの構成では、複数の小さな穴は、バッキングプレート3806を弁プレート3802に(例えば、縫合糸を用いて)貼り付けるために使用できる。
【0117】
その他の変形および用語
特定の態様、実施形態、または実施例と関連して記載された特徴、材料、特性または群は、それと互換性がない場合を除いて、本明細書に記載された任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解すべきである。本明細書(添付の請求項、要約書および図面を含む)に開示された特徴のすべて、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップのすべては、かかる特徴またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。保護は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の請求項、要約書および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なものもしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なものもしくは任意の新規な組み合わせにまで及ぶ。
【0118】
特定の実施形態が説明されたが、これらの実施形態は、例としてのみ提示され、保護範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載された新規な方法およびシステムは、他の様々な形態で具現化されてもよい。さらに、本明細書に記載された方法およびシステムの形態における様々な省略、置換および変更がなされてもよい。当業者は、いくつかの実施形態において、図示または開示されたプロセスにおいてとられる実際のステップは、図中に示したものと異なっていてもよいことを理解するであろう。実施形態によっては、上述したステップのうちのあるものが削除されてもよく、他のものが追加されてもよい。例えば、開示されたプロセスでとられる実際のステップまたはステップの順序は、図中に示したものと異なっていてもよい。実施形態に応じて、上述したステップのうちのあるものが削除されてもよく、他のものが追加されてもよい。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴および属性は、異なるように組み合わされて追加の実施形態を形成してもよく、これらはすべて本開示の範囲に含まれる。
【0119】
本開示は、特定の実施形態、実施例および用途を含むが、本開示は、具体的に開示された実施形態を越えて、本明細書に記述される特徴および利点のすべてを提供しない実施形態を含む他の代替的実施形態または使用ならびにその明白な変更および等価物に及ぶことは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本開示の範囲は、記載された実施形態によって限定されることを意図しておらず、本明細書に提示される、または将来提示される請求項によって定義されてもよい。
【0120】
「~ことができる、~得る(can、could)」、「~ことができる、~得る、~てもよい(mightまたはmay)」などの条件付き言語は、特に断りがない限り、または使用される文脈内で他の意味に理解される場合を除き、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素またはステップを含み、他の実施形態はそれらを含まないことを伝えることが意図されている。したがって、このような条件付き言語は、特徴、要素またはステップが1つもしくは複数の実施形態に何らかの形で必要であること、または1つもしくは複数の実施形態が、これらの特徴、要素もしくはステップが任意の特定の実施形態に含まれるかもしくは実行されるべきかを、ユーザ入力もしくはプロンプティングの有無にかかわらず決定するロジックを必ず含むことを意味することが一般に意図されていない。用語「備える、含む(comprising、including)」、「有する」などは同義語であり、包括的に、オープンエンドで使用され、追加の要素、特徴、行為、操作などを除外することはない。また、用語「または」は、その包括的な意味で使用され(排他的な意味ではない)、例えば、要素のリストをつなぐために使用されるとき、用語「または」は、リスト内の要素の1つ、いくつか、またはすべてを意味する。同様に、2つ以上の項目のリストを参照する「および/または」という用語は、リスト内の項目のいずれか1つ、リスト内の項目のすべて、およびリスト内の項目の任意の組み合わせという、この語の解釈のすべてを網羅する。さらに、本明細書で使用される用語「各、それぞれ」は、その通常の意味を有することに加えて、用語「各、それぞれ」が適用される要素の集合の任意のサブセットを意味し得る。さらに、「本明細書」、「上」、「下」という語および類似の重要性を持つ語は、本出願で使用される場合、本出願を全体として指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではない。
【0121】
フレーズ「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」のような連言的な言葉は、特に断りのない限り、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであってもよいことを伝えるために一般に使用されるものとして文脈と共に理解される。したがって、このような連言的な言葉は一般に、特定の実施形態が少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、および少なくとも1つのZの存在を必要とすることを暗示することを意図していない。
【0122】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般に」および「実質的に」という用語などの程度を表す言葉は、本明細書で使用される場合、依然として所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する記載された値、量または特性に近い値、量または特性を表す。例えば、用語「およそ」、「約」、「一般に」および「実質的に」は、記載された量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、および0.01%未満の量を指してもよい。別の例として、特定の実施形態において、用語「概ね平行」および「実質的に平行」は、正確に平行から15°、10°、5°、3°、1°、または0.1°以下だけ逸脱した値、量または特性を指す。
【国際調査報告】