(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】改善されたAAV-ABCD1コンストラクトならびに副腎白質ジストロフィー(ALD)および/または副腎脊髄ニューロパチー(AMN)の処置または予防のための使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230301BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230301BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20230301BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230301BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230301BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230301BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230301BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230301BHJP
C12N 5/079 20100101ALN20230301BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
A61K31/711
A61K48/00
A61K35/76
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P25/02
A61P3/00
A61P25/00
C12N5/079
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540917
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 US2020067664
(87)【国際公開番号】W WO2021138559
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522263415
【氏名又は名称】スワンバイオ セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SWANBIO THERAPEUTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】8 Bloomsbury Street, 2nd Floor, London Middlesex WCIB 3SR, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コザルスキー,カレン
(72)【発明者】
【氏名】グウェン-オズカン,ツグバ
(72)【発明者】
【氏名】トレチャコフ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,サーン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA201
4C084ZB211
4C084ZC211
4C084ZC411
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC41
4C087AA01
4C087BC83
4C087MA17
4C087MA56
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA20
4C087ZB21
4C087ZC21
4C087ZC41
(57)【要約】
本開示は、一般に、それを必要とする対象に投与された場合に標的(例えば、ニューロンまたはグリア)細胞におけるALDタンパク質の発現を提供する、ポリヌクレオチドおよびAAVベクターに関する。本開示は、さらに、かかるポリヌクレオチドまたはベクターを含む組成物に関する。これらのポリヌクレオチド、ベクターおよび組成物は、それを必要とする対象において、ALDまたはAMNの処置および予防のために用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
rAAVビリオンからのウイルスキャプシド中にパッケージングされていてもよい組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムを含む、単離されたポリヌクレオチドであって、
ここで、前記rAAVベクターゲノムは:
(a)5’AAV逆位末端反復配列(ITR);
(b)発現カセット、ここで、発現カセットは、少なくとも、(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、(ii)ポリATP結合カセット、サブファミリーD、メンバー1(ABCD1)ポリペプチドをコードするヌクレオチド、(iii)1つ以上のターミネーター、および(iv)前記ABCD1をコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナルを含む;ならびに
(c)3’ITR、
を含むか、またはこれらからなり、
およびここで、rAAVベクターゲノムは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含まないか、またはそれは、Xタンパク質が発現されないか、またはこれが不活性な形態において発現されることをもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたWPREを含み、
任意にここで、5’および3’ITRは、AAV2、AAV9、またはAAV AAVrh10の5’および3’ITRから誘導される、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
WPREを含まない、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、ここで:
(i)5’ITRは、AAV2の5’ITRから誘導されるか;および/または
(ii)3’ITRは、AAV2の3’ITRから誘導され、
任意にここで:
(i)5’ITRは、配列番号301、401、601、611、10001、10101もしくは10201の核酸配列を含む;および/または
(ii)3’ITRは、配列番号302、402、602、612、10018、10118もしくは10218の核酸配列を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1または2に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、ここで:
(i)5’ITRが、AAV2の5’ITRの切断型形態である:および/または
(ii)3’ITRが、AAV2の3’ITRの切断型形態である、
任意にここで:
(i)5’ITRの切断型形態は、配列番号2、10501、11001、11101、11201、11301、11501もしくは11701の核酸配列を含む;および/または
(ii)3’ITRの切断型形態は、配列番号28、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718の核酸配列を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
標的細胞が、ニューロンまたはグリア細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルスからのH5、P7.5およびPI 1プロモーター、伸長因子1-アルファ(EFla)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、ヒートショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、ヒートショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、ヒートショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26遺伝子座、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター、任意に、ニワトリβ-アクチンプロモーター;組織特異的プロモーター、B29プロモーター、runt転写因子(CBFa2)プロモーター、CD14プロモーター、CD43プロモーター、CD45プロモーター、CD68プロモーター、CYP450 3A4プロモーター、デスミンプロモーター、エラスターゼ1プロモーター、エンドグリンプロモーター、線維芽細胞特異的タンパク質1プロモーター(FSP1)プロモーター、フィブロネクチンプロモーター、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1)プロモーター、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、インスリンプロモーター、インテグリンアルファ2b(ITGA2B)プロモーター、細胞間接着分子2(ICAM-2)プロモーター、インターフェロンベータ(IFN-β)プロモーター、ケラチン5プロモーター(ケラチノサイト発現)、ミオグロビン(MB)プロモーター、筋分化1(MYOD1)プロモーター、ネフリンプロモーター、骨ガンマカルボキシグルタミン酸タンパク質2(OG-2)プロモーター、3-オキソ酸CoAトランスフェラーゼ2B(Oxct2B)プロモーター、サーファクタントタンパク質B(SP-B)プロモーター、シナプシンプロモーター、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(WASP)プロモーター、Jetプロモーター、グルクロニダーゼベータ(GUSB)プロモーターまたはMNDプロモーターから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
プロモーターが、ニワトリβ-アクチンプロモーターを含み、任意にここで、ニワトリβ-アクチンプロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
プロモーターが、エンハンサーに対して作動可能に連結されており、ここで、エンハンサーは、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、LSPエンハンサー、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、en34エンハンサー、ApoEエンハンサー、アルファフェトタンパク質エンハンサー、TTRエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサーまたは骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
プロモーターが、CMVエンハンサーに対して作動可能に連結されており、任意にここで、CMVエンハンサーは、配列番号7、10005、10105、10205、10505、11005、11105、11205、11305、11505もしくは11705の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、
任意に5’末端から3’末端への方向において、CMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、β-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、およびウサギβ-グロビンエクソンを含み、ここで、プロモーターが、ニワトリβ-アクチンプロモーターであり、
任意にここで:
(i)CMVエンハンサーは、配列番号7、10005、10105、10205、10505、11005、11105、11205、11305、11505もしくは11705の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;
(ii)ニワトリβ-アクチンプロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;
(iii)β-アクチンエクソンは、配列番号11、10008、10108、10208、10508、11008、11108、11208、11308、11508もしくは11708の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;および/または
(iv)キメラ性イントロンは、配列番号12、10009、10109、10209、10509、11009、11109、11209、11309、11509もしくは11709の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;
(v)ウサギβ-グロビンエクソンは、配列番号10085、10185、10285、10585、11085、11185、11285、11385、11585もしくは11785の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
ABCD1ポリペプチドが、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512もしくは11712の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
ABCD1コード配列が、配列番号204の核酸配列と比較して減少した数の代替的オープンリーディングフレームを含むか、または、任意の代替的オープンリーディングフレームを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
ABCD1コード配列が、主に(50、60、70、80、90もしくは95%を超える)または全体が、ヒト優先コドンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
ABCD1をコードするポリヌクレオチドが、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512もしくは11712の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
ABCD1をコードするポリヌクレオチドのすぐ上流にKozak配列をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、任意にここで、Kozak配列は、配列番号10511、11211もしくは11311の核酸配列、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化1】
へのアプローチを表す任意の配列を含む、前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
ターミネーターが、UAG、UAAおよび/またはUGAから選択され、任意にここで、ターミネーターは、配列番号10071、10171、10271、10571、11071、11171、11271、11371、11571もしくは11771の核酸配列を含み、さらに任意にここで、ターミネーターは、配列番号10572、11272もしくは11372の核酸配列をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
ポリAシグナルが、SV40ポリAシグナルを含み、任意にここで、SV40ポリAシグナルは、配列番号27、10014、10114、10214、10514、11014、11214もしくは11714の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
ポリAシグナルが、bGHポリAシグナルを含み、任意にここで、bGHポリAシグナルは、配列番号10016、10116、10216、11016、11116、11216、11316、11516もしくは11716の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
ポリAシグナルが、配列番号206、306、405、10035、10135、10235、11035、11235もしくは11735の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、ここで:
(a)において、5’ITRは、配列番号301、401、601、611、10001、10101、10201、2、10501、11001、11101、11201、11301、1501もしくは11701の核酸配列を含み;
(b)において、
(i)プロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707の核酸配列を含み、
(ii)ABCD1をコードするポリヌクレオチドは、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512もしくは11712の核酸配列を含み、および
(iii)ポリAシグナルは、配列番号27、10014、10114、10214、10514、11014、11214、11714、10016、10116、10216、11016、11116、11216、11316、11516、11716、206、306、405、10035、10135、10235、11035、11235もしくは11735の核酸配列を含み;および
(c)において、3’ITRは、配列番号302、402、602、612、10018、10118、10218、28、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718核酸配列を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項21】
rAAVベクターゲノムが、配列番号300、400、10050、10150、10250、10550、11050、11150、11250、11350、11550、11750、10060、10160、10260、10560、11060、11160、11260、11360、11560もしくは11760の核酸配列、または配列番号100の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列のヌクレオチド1~3713を含むか、またはこれからなる、請求項1~20のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項2または3~19のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、rAAVベクターゲノムが、Xタンパク質の発現を排除するか、または不活化された、または非機能的なXタンパク質の発現をもたらす少なくとも1つの変異を含む、修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含み、
任意にここで、不活化された、または非機能的なXタンパク質は、切断型Xタンパク質であり、
さらに任意にここで、修飾されたWPREは、配列番号305または10075の核酸配列を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
rAAVベクターゲノムは、配列番号300、10050、または10060の核酸配列を含むか、またはこれからなる、請求項22に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、これは、任意に抗生物質耐性遺伝子をコードするプラスミドであり、任意にここで、抗生物質耐性遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子であり、
さらに任意にここで、プラスミドは、pUC57またはpUC118骨格を含む、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項25】
プラスミドpSBT101(配列番号10100)、pOB1005(配列番号10500)、pOB1010(配列番号11000)、pOB1011(配列番号11100)、pOB1012(配列番号11200)、pOB1013(配列番号11300)、pOB1015(配列番号11500)、またはpOB1017(配列番号11700)を含むか、これからなるか、またはこれから誘導される、請求項1~24のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列番号100、10000、10100、10200、10500、11000、11100、11200、11300、11500もしくは11700の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含むか、またはこれからなる、請求項1~25のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項27】
以下:
(A)請求項1~27のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド、
これは、任意に、
(B)トランスフェクション試薬;
(C)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(D)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(E)E1、E2、E4およびVA RNAからなる群より選択されるアデノウィルスヘルパー遺伝子を含む、ポリヌクレオチド;または
(F)薬学的に許容し得る担体または賦形剤、
のうちのいずれか1つ以上をさらに含み、
さらに任意にここで:
(i)AAV cap遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh10のcap遺伝子、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導される;および/または
(ii)AAV rep遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh10のrep遺伝子、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10のrep遺伝子であるか、またはこれから誘導される、
を含む、組成物。
【請求項28】
AAV cap遺伝子が:
(I)AAV9のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され、任意にここで、cap遺伝子は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質、AAV9 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAV9 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(I-1)AAV9 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号731のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(I-2)AAV9 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(I-3)AAV9 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号733のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(II)AAV2のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され。任意にここで、cap遺伝子は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質、AAV2 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAV2 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(II-1)AAV2 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号831のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(II-2)AAV2 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(II-3)AAV2 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号833のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;または、
(II)AAVrh10のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され。任意にここで、cap遺伝子は、AAVrh10 VP1キャプシドタンパク質、AAVrh10 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAVrh10 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(II-1)AAVrh10 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号931のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(II-2)AAVrh10 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(II-3)AAVrh10 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号933のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
AAV rep遺伝子が:
(i)AAV p5プロモーターおよび/もしくはAAV p19プロモーター下においてコードされている;ならびに/または
(ii)AAV REP78複製タンパク質、AAV REP68複製タンパク質、AAV REP52複製タンパク質、および/またはAAV REP40複製タンパク質のうちの1つ以上をコードし、
任意にここで:
(i)AAV REP78の転写は、AAVp5プロモーターにより制御される;
(ii)AAV REP68の転写は、AAVp5プロモーターにより制御される;
(iii)AAV REP52の転写は、AAVp19プロモーターにより制御される;および/または
(iv)AAV REP40の転写は、AAVp19プロモーターにより制御される、
請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
AAV rep遺伝子が、AAV2のrep遺伝子であるか、またはこれから誘導される、請求項27~29のいずれか一項に記載の組成物であって、
任意にここで:
(I)rep遺伝子の転写は、AAV2 p5プロモーターおよび/またはAAV2 p19プロモーターにより制御され;および/または
(II)rep遺伝子は、以下をコードする:
(i)AAV2 REP78、任意にここで、転写は、AAV2 p5プロモーターにより制御される;
(ii)AAV2 REP68、任意にここで、転写は、AAV2 p5プロモーターにより制御される;
(iii)AAV2 REP52、任意にここで、転写は、AAV2 p19プロモーターにより制御される;および/または
(iv)AAV2 REP40、任意にここで、転写は、AAV2 p19プロモーターにより制御される、
さらに任意にここで:
(I)AAV2 p5プロモーターは、配列番号710の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み、および/またはAAV2 p19プロモーターは、配列番号720の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む;ならびに/あるいは
(II)(i)AAV2 REP78は、配列番号711のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、(ii)AAV2 REP68は、配列番号712のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、(iii)AAV2 REP52は、配列番号721のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または(iv)AAV2 REP40は、配列番号722のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
前記組成物。
【請求項31】
cap遺伝子およびrep遺伝子が、プラスミドによりコードされ、任意にここで、プラスミドは、AAV2/9プラスミドであり、これはさらに任意に、配列番号700の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
アデノウィルスヘルパー遺伝子が、以下:
(I)任意に(i)VA-RNA領域Iおよび/または(ii)VA-RNA領域IIを含む、領域VA-RNA;
(II)任意に以下:(i)Hexon、(ii)23Kエンドプロテアーゼ、(iii)E2A/DBP、(iv)Hexonアセンブリー(100K)、(v)Hexonアセンブリー(33K)、(vi)Hexonアセンブリー(22K)、および/もしくは(vii)Hexonに関連する前駆体をコードする、領域E2;ならびに/または
(III)任意に以下:(i)Fiber、(ii)E4 ORF1、(iii)E4 ORF2、(iv)E4 ORF3、(v)E4 ORF4、(vi)E4 ORF6、および/もしくは(vii)E4 ORF6/7をコードする、領域E4、
を含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
アデノウィルスヘルパー遺伝子が、アデノウィルス5(Ad5)の遺伝子であるか、またはこれから誘導され、これは、任意に以下を含む:
(I)Ad5領域VA-RNA、任意にここで、Ad5領域VA-RNAは、配列番号2010の核酸配列を含み、ならびに/または(i)任意に配列番号2011の核酸配列を含む、VA-RNA領域I、および/もしくは(ii)任意に配列番号2012の核酸配列を含む、VA-RNA領域IIを含み;
(II)Ad5領域E2、任意にここで、Ad5領域E2は、配列番号2020の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号2021のアミノ酸配列を含む、Hexon、(ii)任意に配列番号2022のアミノ酸配列を含む、23Kエンドプロテアーゼ、(iii)任意に配列番号2023のアミノ酸配列を含む、E2A/DBP、(iv)任意に配列番号2024のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(100K)、(v)任意に配列番号2025のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(33K)、(vi)任意に配列番号2026のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(22K)、および/もしくは(vii)任意に配列番号2027のアミノ酸配列を含む、Hexonに関連する前駆体;ならびに/あるいは
(III)Ad5領域E4、任意にここで、Ad5領域E4は、配列番号2030の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号2031のアミノ酸配列を含む、Fiber、(ii)任意に配列番号2032のアミノ酸配列を含む、E4 ORF1、(iii)任意に配列番号2033のアミノ酸配列を含む、E4 ORF2、(iv)任意に配列番号2034のアミノ酸配列を含む、E4 ORF3、(v)任意に配列番号2035のアミノ酸配列を含む、E4 ORF4、(vi)任意に配列番号2036のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6、および/もしくは(vii)任意に配列番号2037のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6/7、
請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
アデノウィルスヘルパー遺伝子が、アデノウィルス2(Ad2)であるか、またはこれから誘導され、これは、任意に以下を含む:
(I)Ad2領域VA-RNA、任意にここで、Ad2領域VA-RNAは、配列番号3010の核酸配列を含み、ならびに/または、(i)任意に配列番号3011の核酸配列を含む、VA-RNA領域I、および/もしくは(ii)任意に配列番号3012の核酸配列を含む、VA-RN領域IIを含む;
(II)Ad2領域E2、任意にここで、Ad2領域E2は、配列番号3020の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)23Kエンドプロテアーゼ、任意に配列番号3022のアミノ酸配列を含む、(ii)E2A/DBP、任意に配列番号3023のアミノ酸配列を含む、(iii)Hexonアセンブリー(100K)、任意に配列番号3024のアミノ酸配列を含む、(iv)Hexonアセンブリー(33K)、任意に配列番号3025のアミノ酸配列を含む、(v)任意に配列番号3026のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(22K)、および/または(vi)任意に配列番号3027のアミノ酸配列を含む、Hexonに関連する前駆体;および/または
(III)Ad2領域E4、任意にここで、Ad2領域E4は、配列番号3030の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号3032のアミノ酸配列を含む、E4 ORF1、(ii)任意に配列番号3033のアミノ酸配列を含む、E4 ORF2、(iii)任意に配列番号3034のアミノ酸配列を含む、E4 ORF3、(iv)任意に配列番号3035のアミノ酸配列を含む、E4 ORF4、(v)任意に配列番号3036のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6、および/または(vi)任意に配列番号3037のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6/7、
請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
アデノウィルスヘルパー遺伝子が、pALD-X80および/またはpHELP_KanV4nによりコードされる、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
以下:
(I)AAVキャプシド;および
(II)請求項1~23のいずれか一項に記載のrAAVベクターゲノムによるrAAVベクターゲノム
を含むか、またはこれらからなる、組み換えAAV(rAAV)ベクターであって、
任意にここで、rAAVベクターゲノムの核酸配列は、配列番号10050、10150、10550、11050、11150、11250、11350、11550、11750、10060、10160、10560、11060、11160、11260、11360、11560もしくは11760核酸配列を含むか、またはこれからなり、
さらに任意にここで、AAVキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh10キャプシド、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10キャプシド、またはそのバリアントであるか、またはこれから誘導される、
前記組み換えAAV(rAAV)ベクター。
【請求項37】
以下:
(i)AAV9キャプシドまたはAAV9キャプシドから誘導されるAAVキャプシドであって、これは、任意にAAV9 VP1、AAV9 VP2および/またはAAV9 VP3であり、さらに任意にここで:
(a)AAV9 VP1は、配列番号731のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;
(b)AAV9 VP2は、配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;および/または
(c)AAV9 VP3は、配列番号733のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;
(ii)AAV2キャプシドまたはAAV2キャプシドから誘導されるAAVキャプシドであって、これは、任意に、AAV2 VP1、AAV2 VP2および/またはAAV2 VP3であり、さらに任意にここで:
(a)AAV2 VP1は、配列番号831のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;
(b)AAV2 VP2は、配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;および/または
(c)AAV2 VP3は、配列番号833のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;
(iii)AAVrh10キャプシドまたはAAVrh10キャプシドから誘導されるAAVキャプシドであって、これは、任意に、AAVrh10 VP1、AAVrh10 VP2および/またはAAVrh10 VP3であり、さらに任意にここで:
(a)AAVrh10 VP1は、配列番号931のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;
(b)AAVrh10 VP2は、配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり;および/または
(c)AAVrh10 VP3は、配列番号933のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる、
を含む、請求項36に記載のrAAVベクター。
【請求項38】
以下:
(A)請求項36または37に記載のrAAVベクターの予防または治療有効量;および
(B)薬学的に許容し得る担体;
を含む、in vivoでの投与のために好適な組成物。
【請求項39】
約1×10
13GC~約1×10
15GCのrAAVベクターの用量を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
凝集体において、合計約1×10
13GC~約1×10
15GCのrAAVベクターの用量を含む、請求項38に記載のいくつかの組成物。
【請求項41】
rAAVベクターの用量が、約10mL~約150mLの容積中に含まれる、請求項38~40のいずれか一項に記載の組成物(単数)または組成物(複数)。
【請求項42】
rAAVベクターの用量が、約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約110mL、約120mL、約130mL、約140mL、または約150mLの容積中に含まれる、請求項38~41のいずれか一項に記載の組成物(単数)または組成物(複数)。
【請求項43】
髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与のために好適である、請求項38~42のいずれか一項に記載の組成物(単数)または組成物(複数)。
【請求項44】
髄腔内投与のために好適である、請求項38~42のいずれか一項に記載の組成物(単数)または組成物(複数)。
【請求項45】
ポンプによる髄腔内投与のために好適である、請求項44に記載の組成物(単数)または組成物(複数)。
【請求項46】
それを必要とする対象において、副腎白質ジストロフィー(ALD)および/または副腎脊髄ニューロパチー(AMN)を処置もしくは予防する、および/またはALDおよび/またはAMNに関連する症状を寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、請求項36または37に記載の少なくとも1つのrAAVベクターの予防もしくは治療有効量、または請求項39~45のいずれか一項に記載の組成物(単数)または組成物(複数)を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
対象が、ヒトである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
対象において、脳、脊髄および副腎皮質の血漿および組織における高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)、または罹患した後根神経節ニューロンに起因する末梢性ニューロパチーなどの1つ以上の症状を緩和するか、軽減するか、またはこれを安定化させる、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
rAAVベクターまたはrAAVベクターを含む組成物(単数)または組成物(複数)が、対象に投与される、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)が、髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与により送達される、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
送達が、髄腔内投与によるものである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
髄腔内投与が、ポンプにより媒介される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
合計の投与されたrAAVベクターの用量が、約1×10
13GC~約1×10
15GCである、請求項46~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)が、約10mL~約150mLの容積において投与される、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)が、約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約110mL、約120mL、約130mL、約140mL、または約150mL、好ましくは約100mLの容積において投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)が、単一用量または複数用量において投与される、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
rAAVベクターが、AAV9、AAV2、またはAAVrh10キャプシドを含む、請求項46~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
単離されたポリヌクレオチドの投与が、ニューロン、神経膠細胞、またはニューロンおよび神経膠細胞において、ABCD1導入遺伝子の発現をもたらす、請求項46~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
単離されたポリヌクレオチドが、アデノウィルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを介して送達される、請求項46~58のいずれか一項に記載の方法
【請求項60】
少なくとも1つのrAAVベクターまたはそれを含む組成物の複数用量が、対象に投与され、ここで、投与は、同時に、または異なる時間に、および/または長期間にわたり、投与される、請求項46~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
ウイルスベクターを作製する方法であって、請求項1~26のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを、パッケージング細胞中に導入することを含み、ここで、任意に、ウイルスベクターは、請求項36または37に記載のrAAVベクターであり、
パッケージング細胞中に:
(a)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(b)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、任意にE1、E2、E4および/またはVA RNAを含む、ポリヌクレオチド;
を導入することをさらに含む、
前記方法。
【請求項62】
ウイルスベクターを作製する方法であって、請求項1~26のいずれか一項に記載のrAAVベクターゲノムを含むパッケージング細胞を培養することを含む、任意にここで、ウイルスベクターは、請求項36または37に記載のrAAVベクターであり、さらに任意にここで、パッケージング細胞は:(a)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(b)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、任意にE1、E2、E4および/またはVA RNAを含む、ポリヌクレオチド;
を含む、
前記方法。
【請求項63】
AAV cap遺伝子が:
(I)AAV9のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され、任意にここで、cap遺伝子は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質、AAV9 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAV9 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(I-1)AAV9 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号731のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(I-2)AAV9 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(I-3)AAV9 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号733のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(II)AAV2のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され、任意にここで、cap遺伝子は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質、AAV2 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAV2 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(II-1)AAV2 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号831のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(II-2)AAV2 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(II-3)AAV2 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号833のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;あるいは、
(II)AAVrh10のcap遺伝子であるか、またはこれから誘導され、任意にここで、cap遺伝子は、AAVrh10 VP1キャプシドタンパク質、AAVrh10 VP2キャプシドタンパク質および/またはAAVrh10 VP3キャプシドタンパク質をコードし、さらに任意にここで:
(II-1)AAVrh10 VP1キャプシドタンパク質は、配列番号931のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(II-2)AAVrh10 VP2キャプシドタンパク質は、配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含みは、および/または
(II-3)AAVrh10 VP3キャプシドタンパク質は、配列番号933アミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
請求項61~63のいずれか一項に記載の方法であって、ここで:
(i)AAV rep遺伝子の転写は、AAV p5プロモーターおよび/もしくはAAV p19プロモーターにより制御され;ならびに/または
(ii)AAV rep遺伝子は、AAV REP78複製タンパク質、AAV REP68複製タンパク質、AAV REP52複製タンパク質、および/またはAAV REP40複製タンパク質のうちの1つ以上をコードし、
任意にここで:
(i)AAV REP78の転写は、AAVp5プロモーターにより制御される;
(ii)AAV REP68の転写は、AAVp5プロモーターにより制御される;
(iii)AAV REP52の転写は、AAVp19プロモーターにより制御される;および/または
(iv)AAV REP40の転写は、AAVp19プロモーターにより制御される、
前記方法。
【請求項65】
AAV rep遺伝子が、AAV2のrep遺伝子であるか、またはこれから誘導され、
任意にここで:
(I)rep遺伝子の転写は、AAV2 p5プロモーターおよび/またはAAV2 p19プロモーターにより制御され;および/または
(II)rep遺伝子は:
(i)AAV2 REP78、任意にここで、転写は、AAV2 p5プロモーターにより制御される;
(ii)AAV2 REP68、任意にここで、転写は、AAV2 p5プロモーターにより制御される;
(iii)AAV2 REP52、任意にここで、転写は、AAV2 p19プロモーターにより制御される;および/または
(iv)AAV2 REP40、任意にここで、転写は、AAV2 p19プロモーターにより制御される、
をコードし、
さらに任意にここで:
(I)AAV2 p5プロモーターは、配列番号710の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み、および/またはAAV2 p19プロモーターは、配列番号720の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む;ならびに/あるいは
(II)(i)AAV2 REP78は、配列番号711のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、(ii)AAV2 REP68は、配列番号712のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、(iii)AAV2 REP52は、配列番号721のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または(iv)AAV2 REP40は、配列番号722のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
請求項61~65のいずれか一項に記載の方法であって、cap遺伝子およびrep遺伝子は、プラスミドによりコードされ、任意にここで、プラスミドは、AAV2/9プラスミドであり、これはさらに任意に、配列番号700の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む、前記方法。
【請求項67】
1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が、以下:
(I)任意に(i)VA-RNA領域Iおよび/または(ii)VA-RNA領域IIを含む、領域VA-RNA;
(II)任意に以下をコードする、領域E2:(i)Hexon、(ii)23Kエンドプロテアーゼ、(iii)E2A/DBP、(iv)Hexonアセンブリー(100K)、(v)Hexonアセンブリー(33K)、(vi)Hexonアセンブリー(22K)、および/または(vii)Hexonに関連する前駆体;および/または
(III)任意に以下をコードする、領域E4:(i)Fiber、(ii)E4 ORF1、(iii)E4 ORF2、(iv)E4 ORF3、(v)E4 ORF4、(vi)E4 ORF6、および/または(vii)E4 ORF6/7、
を含む、
請求項61~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が、アデノウィルス5(Ad5)であるか、またはこれから誘導され、これは、任意に、以下:
(I)Ad5領域VA-RNA、任意にここで、Ad5領域VA-RNAは、配列番号2010の核酸配列を含み、ならびに/または、(i)任意に配列番号2011の核酸配列を含む、VA-RNA領域I、および/もしくは(ii)任意に配列番号2012の核酸配列を含む、VA-RNA領域IIを含み;
(II)Ad5領域E2、任意にここで、Ad5領域E2は、配列番号2020の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号2021のアミノ酸配列を含む、Hexon、(ii)任意に配列番号2022のアミノ酸配列を含む、23Kエンドプロテアーゼ、(iii)任意に配列番号2023のアミノ酸配列を含む、E2A/DBP、(iv)任意に配列番号2024のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(100K)、(v)任意に配列番号2025のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(33K)、(vi)任意に配列番号2026のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(22K)、および/または(vii)任意に配列番号2027のアミノ酸配列を含む、Hexonに関連する前駆体;および/または
(III)Ad5領域E4、任意にここで、Ad5領域E4は、配列番号2030の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号2031のアミノ酸配列を含む、Fiber、(ii)任意に配列番号2032のアミノ酸配列を含む、E4 ORF1、(iii)任意に配列番号2033のアミノ酸配列を含む、E4 ORF2、(iv)任意に配列番号2034のアミノ酸配列を含む、E4 ORF3、(v)任意に配列番号2035のアミノ酸配列を含む、E4 ORF4、(vi)任意に配列番号2036のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6、および/または(vii)任意に配列番号2037のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6/7、
を含む、
請求項61~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が、アデノウィルス2(Ad2)であるか、またはこれから誘導され、これは、任意に、以下:
(I)Ad2領域VA-RNA、任意にここで、Ad2領域VA-RNAは、配列番号3010の核酸配列を含み、ならびに/または(i)任意に配列番号3011の核酸配列を含む、VA-RNA領域I、および/もしくは(ii)任意に配列番号3012の核酸配列を含む、VA-RN領域II、を含み;
(II)Ad2領域E2、任意にここで、Ad2領域E2は、配列番号3020の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号3022のアミノ酸配列を含む、23Kエンドプロテアーゼ、(ii)任意に配列番号3023のアミノ酸配列を含む、E2A/DBP、(iii)任意に配列番号3024のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(100K)、(iv)任意に配列番号3025のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(33K)、(v)任意に配列番号3026のアミノ酸配列を含む、Hexonアセンブリー(22K)、および/または(vi)任意に配列番号3027のアミノ酸配列を含む、Hexonに関連する前駆体;および/または
(III)Ad2領域E4、任意にここで、Ad2領域E4は、配列番号3030の核酸配列を含み、および/または、以下をコードする:(i)任意に配列番号3032のアミノ酸配列を含む、E4 ORF1、(ii)任意に配列番号3033のアミノ酸配列を含む、E4 ORF2、(iii)任意に配列番号3034のアミノ酸配列を含む、E4 ORF3、(iv)任意に配列番号3035のアミノ酸配列を含む、E4 ORF4、(v)任意に配列番号3036のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6、および/または(vi)任意に配列番号3037のアミノ酸配列を含む、E4 ORF6/7、
を含む、
請求項61~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が、pALD-X80および/またはpHELO_KanV4によりコードされる、請求項61~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
請求項1~26のいずれか一項に記載のrAAVベクターゲノムを含む、細胞であって、任意にここで、以下:
(a)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(b)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、任意にE1、E2、E4および/またはVA RNAを含む、ポリヌクレオチド
を含む、前記細胞。
【請求項72】
請求項71に記載の細胞であって、ここで:
(a)AAV cap遺伝子は、請求項63に記載のAAV cap遺伝子によるものであり;
(b)AAV rep遺伝子は、請求項64または65に記載のAAV rep遺伝子によるものであり;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、請求項67~69のいずれか一項に記載の1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子であり、
任意にここで:
(i)cap遺伝子およびrep遺伝子は、プラスミドによりコードされ、任意にここで、プラスミドは、AAV2/9プラスミドであり、これはさらに任意に、配列番号700の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;および/または
(ii)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、pALD-X80および/またはpHELO_KanV4によりコードされる、
前記細胞。
【請求項73】
配列番号2、10501、11001、11101、11201、11301、11501もしくは11701の核酸配列を含むか、またはこれからなる、AAV 5’ITRバリアント。
【請求項74】
配列番号28、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718の核酸配列を含むか、またはこれからなる、AAV 3’ITRバリアント。
【請求項75】
rAAVベクターゲノムを含む、単離されたポリヌクレオチドであって、rAAVベクターゲノムが、以下:
(a)請求項73に記載のAAV 5’ITRバリアント;
(b)発現カセット、ここで、発現カセットは、少なくとも(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、(iii)1つ以上のターミネーター、および(iv)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナルを含む;ならびに
(c)請求項74に記載のAAVの3’ITRバリアント、
を含むか、またはこれらからなる、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項76】
請求項75に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、これは、プラスミドであり、任意にここで、プラスミドは、pUC118骨格を含む、前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項77】
以下:
(A)請求項75または76に記載の単離されたポリヌクレオチド;
を含む、組成物であって、
任意に、以下:
(B)トランスフェクション試薬;
(C)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(D)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(E)E1、E2、E4および/またはVA RNAからなる群より選択される、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子を含む、ポリヌクレオチド;または
(F)薬学的に許容し得る担体または賦形剤、
のうちのいずれか1つ以上をさらに含み、
さらに任意にここで:
(i)AAV cap遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh10、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10のcap遺伝子から誘導される;および/または
(ii)AAV rep遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh10、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10のrep遺伝子から誘導される、
前記組成物。
【請求項78】
請求項77に記載の組成物であって、ここで:
(a)AAV cap遺伝子は、請求項63に記載のAAV cap遺伝子であり;
(b)AAV rep遺伝子は、請求項64または65に記載のAAV rep遺伝子であり;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、請求項67~69のいずれか一項に記載の1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝であり、
任意にここで:
(i)cap遺伝子およびrep遺伝子は、プラスミドによりコードされ、任意にここで、プラスミドは、AAV2/9プラスミドであり、これはさらに任意に、配列番号700の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;および/または
(ii)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、pALD-X80および/またはpHELO_KanV4によりコードされる、
前記組成物。
【請求項79】
請求項75または76に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む細胞、任意にパッケージング細胞であって、さらに任意にここで、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを含む、前記細胞。
【請求項80】
以下:
(I)AAVキャプシド;および
(II)請求項75または76のいずれか一項に記載のrAAVベクターゲノム;
を含むか、またはこれからなる、rAAVベクターであって、
任意にここで、AAVキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh10キャプシド、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh10キャプシド、またはそのバリアントである、
前記rAAVベクター。
【請求項81】
AAVキャプシドが、請求項36または37に記載のAAVキャプシドである、rAAVベクター。
【請求項82】
in vivoでの投与のために好適な組成物(単数)または組成物(複数)であって、以下:
(A)請求項80または81に記載のrAAVベクターの予防または治療有効量;および
(B)薬学的に許容し得る担体;
を含む、前記組成物。
【請求項83】
それを必要とする対象における遺伝子治療の方法であって、それを必要とする対象に、請求項80または81に記載の少なくとも1つのrAAVベクターまたは請求項82に記載の組成物(単数)もしくは組成物(複数)の予防または治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項84】
ウイルスベクターを作製する方法であって、請求項75または76に記載の単離されたポリヌクレオチドをパッケージング細胞中に導入することを含み、
任意にここで、ウイルスベクターは、請求項80または81に記載のrAAVであり、
および任意に、以下:
(a)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(b)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、任意にE1、E2、E4および/またはVA RNAを含む、ポリヌクレオチド;
をパッケージング細胞中に導入することをさらに含む、
前記方法。
【請求項85】
ウイルスベクターを作製する方法であって、請求項75または76に記載のrAAVベクターゲノムを含むパッケージング細胞を培養することを含み、
任意にここで、ウイルスベクターは、請求項80または81に記載のrAAVベクターであり、
さらに任意にここで、パッケージング細胞は、以下:
(a)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;
(b)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、任意にE1、E2、E4および/またはVA RNAを含む、ポリヌクレオチド;
を含む、
前記方法。
【請求項86】
請求項84または85に記載の方法であって、ここで:
(a)AAV cap遺伝子は、請求項63に記載のAAV cap遺伝子であり;
(b)AAV rep遺伝子は、請求項64または65に記載のAAV rep遺伝子であり;および/または
(c)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、請求項67~69のいずれか一項に記載の1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子であり;
任意にここで:
(i)cap遺伝子およびrep遺伝子は、プラスミドによりコードされ、任意にここで、プラスミドは、AAV2/9プラスミドであり、これはさらに任意に、配列番号700の核酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含み;および/または
(ii)1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、pALD-X80および/またはpHELO_KanV4によりコードされる、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2019年12月31日に出願された米国仮出願番号:62/955,667、表題「IMPROVED AAV-ABCD1 CONSTRUCTS AND USE FOR TREATMENT OR PREVENTION OF ADRENOLEUKODYSTROPHY (ALD) AND/OR ADRENOMYELONEUROPATHY (AMN)」、に対する優先権を主張し、該仮出願の内容は、その全体において本明細書において参考として援用される。
【0002】
配列表の開示
本願は、2020年12月31日に作成された1,124,235バイトのサイズを有する「1160547o001000.txt」と名付けられたファイルにおいて配列表を含み、これは、その全体において本明細書により参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
本発明は、CoA活性化型極長鎖脂肪酸(VLCFA)の分解のためのペルオキシソーム中への輸送を担当する副腎白質ジストロフィータンパク質(ALDP)をコードする、ペルオキシソーム膜ATP結合カセットトランスポーター(ABCD1)遺伝子における変異により引き起こされる、進行性の一遺伝子性神経変性疾患である、X連鎖型副腎白質ジストロフィー(X-ALD)を処置するための遺伝子治療を記載する。ヒトALDPは、例えば、NCBI参照配列:NM_000033またはNM_000033.4により同定される核酸配列によりコードされる。
【0004】
ALDPは、ペルオキシソーム膜内在性のタンパク質であり、ATP結合ドメインがペルオキシソーム膜の細胞質側表面に向かって位置し、ペルオキシソーム膜を越えてペルオキシソームマトリックス中へVLCFA-CoAを輸送することを担当している。ALDPの欠損は、VLCFAの分解の障害をもたらす。結果として、X-ALD患者は、血液(これは、血漿または血清のいずれからも検出され得る)、および脳、脊髄、副腎皮質の組織、および他の組織において、高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)、例えば、炭素数20より長い鎖長を有する(すなわち、C>20、例えば「C24:0」および「C26:0」)飽和VLCFAの蓄積を示す。
【0005】
X-ALDの臨床表現型として、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)および大脳型副腎白質ジストロフィー(CCALD)が挙げられる。症状は、小児期または成人期において開始し得る。成人ALD患者は、典型的には、20代において、衰弱性の神経障害である副腎脊髄ニューロパチー(AMN)を発症する(Engelen et al., Orphanet J Rare Dis. 2012; 7: 51)。Abcd1ノックアウトマウスは、AMNと類似の表現型を生じ、脊髄の軸索変性、ならびに後根神経節ニューロン(DRG)の罹患に起因する末梢性ニューロパチーを示す(Pujol et al., Hum Mol Genet. 2002; 11:499-505)。
【0006】
小児期大脳型副腎白質ジストロフィー(CCALD)は、非常に希少であり、ときには迅速に進行する、男児(発症年齢の年齢中位数7;範囲3~15歳)におけるX連鎖型遺伝性神経障害であって、処置されない場合、診断後中央値で5年以内に、植物状態、最終的には死亡に至る。CCALDは、しばしば、初期にはアジソン病様を呈するが、診断は、通常、注意力、思考、集中、および他の大脳の機能の「突然」の低下に基づいて行われ、これは、磁気共鳴イメージング(MRI)における大脳の脱髄の確証的知見を伴う。脱髄の前は、患者の脳のMRIは正常であり、神経発生的な異常は存在しない。臨床経過は、初めは「ゆっくり」であり得るが、迅速に進行性となり得、脳内のミエリンの広範な消失により、不可逆性となり得る。用語「ゆっくり」および「突然」は、脱髄の期間は本当にはわからないが、認知および運動機能の迅速な低下は、いつでも、未知の理由のために起こり得るという点において、相対的である。実際に、疾患の臨床症状が非常に少ない場合において、MRIでの変化が、症状に先行し、広範な脱髄を伴って甚だしく異常である場合がある。米国におけるX連鎖のALDの発生率は、約1:21,000人(男性出生数)であり、約35%がCCALDを発症する;約35~40人の男児が、毎年CCALDを診断される。疾患の原因は、副腎白質ジストロフィータンパク質(ALDP)遺伝子生成物の機能不全または不在をもたらす、ATP結合カセット、サブファミリーD、メンバー1(ABCD1)遺伝子の変異である。ALDPは、細胞ペルオキシソームに局在し、ここで、それは、細胞の構造および機能を維持するために用いられるより短い脂肪酸へのベータ酸化を介して、極長鎖脂肪酸(VLCFA)(鎖長>炭素数20)の分解に関与する。
【0007】
現在、ALDは、機能的なALDPを生成する細胞を供給する同種造血幹細胞移植(HCT)により処置され、機能的なALDPを生成する細胞を用いる完全に一致する血縁ドナーのヒト幹細胞移植は、潜在的には、脱髄の進行を寛解させるかまたはこれを停止させることができる。しかし、同種HCTが疾患を安定させるには12~18か月間を必要とし、疾患の進行性の性質のために、移植は、診断後可能な限り早く行うべきである。このことは、ときに、血縁または非血縁の一致する骨髄幹細胞ドナーを見つけるために必要とされるリードタイムのために問題となる。同種幹細胞の使用はまた、移植不全、ならびに急性および慢性の移植片対宿主病(GvHD)の発症のリスクを示す。これらの合併症は、死をもたらし得、非血縁ドナーが同種造血幹細胞のソースとして利用される場合に発生率が増加する。
【0008】
ALDP置換の別のソースは、一致するか、より典型的には、部分的に一致する臍帯血細胞移植の使用である。しかし、臍帯血幹細胞(CBSC)の使用は、移植不全のリスク、および輸血によるサポートの延長を必要とする生着までの時間の延長を伴い、問題がある。実際に、全ての形態の同種HCTが、10~15%の移植関連死亡率のリスク、および30%までの慢性移植変態宿主病のリスクを伴う。
【0009】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、不完全な非病原性のヒトパルボウイルスであり、それらの温和な免疫応答および病原性の欠落のために、遺伝子送達のために一般的に用いられる。AAVウイルスは、長期の導入遺伝子発現を指揮することができるが、一般に、宿主ゲノム中に永続的には組み込まれない。かかる能力により、AAVは、安全かつ効果的な遺伝子治療のための実行可能な選択肢を提供する。ヒトABCD1遺伝子の送達のための、組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)ベクターを用いるin vitroおよびin vivoでの中枢神経系細胞の形質導入は、先に報告されているが、より安全でありより効果的な副腎白質ジストロフィー治療のために、当該分野においてまだ対処されていない必要性が存在する。異なるAAV血清型は異なる細胞向性を示すことから、トランスフェクション系を確立するために、最適な血清型を選択することが重要である。本発明は、安全かつ効果的な、すなわち、X-ALDまたはAMNを罹患する患者において非毒性のレベルのABCD1を送達するために用いることができる、改善されたアデノ随伴ウイルスベクターおよび送達系を提供することにより、これらの問題および他の問題に対する解答を提供する。
【発明の概要】
【0010】
発明の簡単な要旨
新規の、および改善されたAAV DNAコンストラクトの投与を含む、ALDまたはAMNを処置または予防するための安全および効果的な方法および材料を提供することは、本発明の特定の目的である。
【0011】
本発明は、改善されたアデノ随伴ウイルス(AAV)コンストラクトを提供する。本発明はまた、ATP結合カセット、サブファミリーD、メンバー1(ABCD1)遺伝子をコードするrAAVベクターゲノムを含むプラスミド(「rAAVゲノムベクター」)、およびAAV RepおよびCapタンパク質をコードする第2のプラスミド(「Rep/Capプラスミド」)、および1つ以上のウイルスヘルパープラスミドのコトランスフェクションを通して、改善された組み換えAAV(rAAV)ベクターを生成するための方法を提供する。本発明はまた、これらのAAVコンストラクトを含む細胞および組成物を提供し、これらは、それを必要とする対象における副腎白質ジストロフィーおよび/または副腎脊髄ニューロパチーの処置および/または予防において用いることができる。
【0012】
本発明はさらに、ALDタンパク質(「ALDP」、本明細書においてまた「ABCD1」タンパク質としても言及される)を発現するABCD1遺伝子をコードする、かかる改善されたAAVコンストラクトを作製するための方法を提供する。また、本発明は、それを必要とする対象における副腎白質ジストロフィーおよび/または副腎脊髄ニューロパチーの処置および/または予防のために、対象においてALDタンパク質を発現する改善されたAAVコンストラクトならびにそれを含む細胞および組成物を用いる方法、例えば、かかる改善されたAAVコンストラクトが、例えば、髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与により投与される方法を提供する。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;(c)修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント、ここで、Xタンパク質は、不活化されている(WPRE x-inact);(d)少なくとも1つのターミネーター;(e)少なくとも1つのポリAシグナル;および(f)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0014】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)(c)に作動可能に連結されたエンハンサー;(c)その3’末端においてイントロンをさらに含み、(d)に作動可能に連結された、プロモーター;(d)ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチド;(e)修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント、ここで、Xタンパク質は、不活化されている(WPRE x-inact);(f)少なくとも1つのターミネーター;(g)少なくとも1つのポリAシグナル;および(h)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)その5’末端においてエンハンサーをまたはその3’末端においてイントロンをさらに含む、ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、プロモーター;(c)修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント、ここで、Xタンパク質は、不活化されている(WPRE x-inact);(d)少なくとも1つのターミネーター;(e)少なくとも1つのポリAシグナル;および(f)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0016】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;(c)少なくとも1つのターミネーター;(d)少なくとも1つのポリAシグナル;および(e)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0017】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)(c)に作動可能に連結されたエンハンサー;(c)その3’末端においてイントロンをさらに含む、プロモーター;(d)ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている;(e)少なくとも1つのターミネーター;(f)少なくとも1つのポリAシグナル;および(g)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0018】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)その5’末端においてエンハンサーをまたはその3’末端においてイントロンをさらに含む、ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、プロモーター;(c)少なくとも1つのターミネーター;(d)少なくとも1つのポリAシグナル;および(e)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0019】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)その5’末端において、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化1】
へのアプローチを表す任意の配列)をさらに含む、ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;(c)少なくとも1つのターミネーター;(d)少なくとも1つのポリAシグナル;および(e)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)(c)に作動可能に連結されたエンハンサー;(c)その3’末端においてイントロンをさらに含み、(d)に作動可能に連結された、プロモーター;(d)その5’末端において、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化2】
へのアプローチを表す任意の配列)をさらに含む、ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチド;(e)少なくとも1つのターミネーター;(f)少なくとも1つのポリAシグナル;および(g)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)その5’末端において、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化3】
へのアプローチを表す任意の配列)をさらに含む、ヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター;(c)任意に、Kozak配列の5’末端におけるエンハンサー、またはプロモーターの3’末端におけるイントロン;(d)少なくとも1つのターミネーター;(e)少なくとも1つのポリAシグナル;および(f)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0022】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)ABCD1コード配列中に3、6または9個のヌクレオチドの変化を含むヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドの上流で、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化4】
へのアプローチを表す任意の配列)に作動可能に連結されたプロモーター;(c)少なくとも1つのターミネーター;(d)少なくとも1つのポリAシグナル;および(e)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)(c)に作動可能に連結されたエンハンサー;(c)その3’末端(d)においてイントロンを含むプロモーターであって、ABCD1コード配列中に3、6または9個のヌクレオチドの変化を含むヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドの上流で、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化5】
へのアプローチを表す任意の配列)を含むもの;(e)少なくとも1つのターミネーター;(f)少なくとも1つのポリAシグナル;および(g)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0024】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を含むrAAVゲノムベクターを企図する:(a)5’逆位末端反復配列(5’ITR);(b)ABCD1コード配列中に3、6または9個のヌクレオチドの変化を含むヒトABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドの上流で、Kozakコンセンサス配列(「CCACC」または「GCCACC」、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化6】
へのアプローチを表す任意の配列)に作動可能に連結されたプロモーター;(c)任意に、Kozak配列の5’末端におけるエンハンサー、またはプロモーターの3’末端におけるイントロン;(d)少なくとも1つのターミネーター;(e)少なくとも1つのポリAシグナル;および(f)3’逆位末端反復配列(3’ITR)。
【0025】
態様のうちのいずれかにおいて、少なくとも1つのターミネーターが、ABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドにおいて含まれていてもよい。
【0026】
いくつかの態様において、rAAVゲノムは、エンハンサー、プロモーター、β-アクチンエクソン、イントロン、および/またはβ-グロビンエクソンを、任意に5’末端から3’末端への方向において含む。
【0027】
態様のうちのいくつかにおいて、エンハンサーは、CMVエンハンサーである。
【0028】
態様のうちのいくつかにおいて、プロモーターは、ニワトリベータアクチンプロモーターである。
【0029】
態様のうちのいくつかにおいて、β-アクチンエクソンは、ニワトリベータアクチンの選択的転写物のうちの一方から誘導され、キメラ性イントロンは、ニワトリベータアクチンの第1イントロンからのドナーおよびウサギベータ-グロビン第2イントロンからのアクセプターからなる。
【0030】
態様のうちのいくつかにおいて、イントロンは、キメラ性イントロンである。
【0031】
態様のうちのいくつかにおいて、β-グロビンエクソンは、ウサギβ-グロビンエクソン、例えば、ウサギβ-グロビン第3エクソンである。
【0032】
態様のうちのいずれかにおいて、ポリAシグナルは、SV40ポリAシグナル、bGHポリAシグナル、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。ポリAシグナルはまた、本明細書において、「pA」としても言及される。
【0033】
他の態様において、本発明は、部分的に、(a)プロモーター(b)複製遺伝子;(c)キャプシド遺伝子を含む、AAV Rep/Capプラスミドを企図する。
【0034】
いくつかの態様において、Rep/Capプラスミドは、p5、p19、またはp40プロモーターのうちの1つ以上を含む。
【0035】
いくつかの態様において、複製遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10の、Rep78、Rep68、Rep52またはRep40タンパク質をコードする複製遺伝子またはそのバリアントから選択される。
【0036】
いくつかの態様において、複製遺伝子は、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10の複製遺伝子であるか、またはこれから誘導される。
【0037】
いくつかの態様において、複製遺伝子(Rep遺伝子)が、AAV2のものから誘導される場合、2つの複製遺伝子生成物、REP78およびREP68は、p5プロモーターにより転写されてもよく、2つの複製遺伝子生成物、REP52およびREP40は、p19プロモーターにより転写されてもよい。いくつかの態様において、キャプシド遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10の、VP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をコードするキャプシド遺伝子またはそのバリアントから選択される。
【0038】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子は、AAV2、AAV9またはAAVrh.10(本明細書においてまたAAVrh10としても言及される)のキャプシド遺伝子であるか、またはこれから誘導される。
【0039】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAV9のものから誘導される場合、AAV9の3つの複製遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3は、p40プロモーターにより(すなわち、その制御下において)転写されてもよい。
【0040】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAV2のものから誘導される場合、AAV2の3つの複製遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3が、生成され得る。
1本発明者らがここで「第1」、「第2」または「第3」のエクソンに言及する場合、これは、5’末端からの転写物における「第1」、「第2」または「第3」のエクソンを指す。
【0041】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAVrh.10のものから誘導される場合、AAVrh.10の3つの複製遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3が、生成され得る。
【0042】
いくつかの態様において、Rep/Capプラスミドは、全体的に、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10から誘導されてもよいが、一方、いくつかの態様において、Rep/Capプラスミドは、AAV2からの1つ以上のエレメント/遺伝子、およびAAV9からの1つ以上のエレメント/遺伝子を含むAAV2/9などの、ハイブリッド血清型のものであってもよい。ある態様において、Rep/CapプラスミドがAAV2/9血清型のものである場合、Rep遺伝子は、AAV2のものであってもよく、Cap遺伝子は、AAV9のものであってもよい。
【0043】
いくつかの態様において、5’および3’逆位末端反復配列(ITRS)は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10から天然に生じる。
【0044】
いくつかの態様において、5’および3’逆位末端反復配列(ITRS)は、AAV2である。
【0045】
いくつかの態様において、5’および3’逆位末端反復配列(ITRS)は、天然のAAV2 ITRと比較して、5’末端において15ヌクレオチド(「TTGGCCACTCCCTCT」)、および3’末端において最後の15ヌクレオチド(「AGAGGGAGTGGCCAA」)、短縮される。この(2つの取り除かれた15ヌクレオチドの配列のセット)は、A領域をほぼ全て含む。
【0046】
他の態様において、本発明は、部分的に、rAAV生成において役立つヘルパーウイルスまたはウイルスヘルパープラスミドを企図する。いくつかの態様において、ヘルパーウイルスは、アデノウィルス、単純ヘルペスウイルスまたはパピローマウイルスである。いくつかの態様において、ウイルスヘルパープラスミドは、アデノウィルス、単純ヘルペスウイルスまたはパピローマウイルス1つ以上の遺伝子を含む。いくつかの態様において、ヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドは、野生型(WT)、またはバリアントアデノウィルス、例えばアデノウィルス5(Ad5)(例えば、アクセッション番号AC_000008.1または配列番号2000)またはアデノウィルス2(Ad2)(例えば、アクセッション番号J01917.1または配列番号3000)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、例えば、ヒトHSV I型(例えば、アクセッション番号NC_001806)、パピローマウイルス、またはワクシニアウイルス(例えば、アクセッション番号NC_006998)から誘導されるか、またはその1つ以上の遺伝子を含む。
【0047】
いくつかの態様において、ヘルパーウイルスまたはウイルスヘルパープラスミドは、アデノウィルスからのE1、E2A、E4および/またはVA RNA領域配列を含む。
【0048】
いくつかの態様において、かかるヘルパーウイルスまたはウイルスヘルパープラスミドは、rAAVベクターのパッケージング、生成および/または機能を促進する、1つ以上の遺伝子または遺伝子生成物(またはエレメントもしくは因子)を提供する。
【0049】
いくつかの態様において、ヘルパーウイルスまたはウイルスヘルパープラスミドがAd5から誘導される場合(例えば、本明細書において「pALD-X80」として言及されるプラスミド)、ヘルパーウイルスまたはプラスミドは、Ad5領域VA-RNA、Ad5領域E2、および/またはAd5領域E4を含んでもよい。ある態様において、Ad5領域VA-RNAは、VA-RNA領域(VA RNA I)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)を含んでもよい。ある態様において、Ad5領域E2は、Hexon(C末端フラグメント)、23Kエンドプロテアーゼ、E2A/DBP、Hexonアセンブリー(100K)、Hexonアセンブリー(33K)、Hexonアセンブリー(22K)、および/またはHexonに関連する前駆体を含んでもよい。ある態様において、Ad5領域E4は、Fiber、E4 ORF1、E4 ORF2、E4 ORF3、E4 ORF4、E4 ORF6、および/またはE4 ORF6/7をコードしていてもよい。
【0050】
いくつかの態様において、ヘルパーウイルスまたはプラスミドがAd2から誘導される場合(例えば、本明細書において「pHELP_KanV4」として言及されるプラスミド)、ヘルパーウイルスまたはプラスミドは、Ad2領域VA-RNA、Ad2領域E2、および/またはAd2領域E4を含んでもよい。ある態様において、Ad2領域VA-RNAは、VA-RNA領域(VA RNA I)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)を含んでもよい。ある態様において、Ad2領域E2は、Hexonをコードしなくともよく、23Kエンドプロテアーゼ(C末端フラグメント)、E2A/DBP、Hexonアセンブリー(100K)、Hexonアセンブリー(33K)、Hexonアセンブリー(22K)、および/またはHexonに関連する前駆体をコードしていてもよい。ある態様において、Ad2領域E4は、Fiberをコードしなくともよく、E4 ORF1、E4 ORF2、E4 ORF3、E4 ORF4、E4 ORF6および/またはE4 ORF6/7をコードしていてもよい。
【0051】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、以下を企図する:
rAAVビリオンからのウイルスキャプシド中にパッケージングされていてもよい組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムを含む、単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、前記rAAVベクターゲノムは、以下を含むか、またはこれらからなる:
(a)5’AAV逆位末端反復配列(ITR);
(b)発現カセット、ここで、発現カセットは、少なくとも以下を含む:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)ポリATP結合カセット、サブファミリーD、メンバー1(ABCD1)ポリペプチドをコードするヌクレオチド、
(iii)1つ以上のターミネーター、および
(iv)前記ABCD1をコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)3’ITR。
rAAVベクターゲノムは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含まなくともよく、あるいは、Xタンパク質が発現されないか、またはこれが不活性な形態において発現されることをもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたWPRE(WPREx-inact)を含んでもよい。
【0052】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、前述のAAVゲノムベクターのうちのいずれかを前述のRep/Capプラスミドのうちのいずれかおよび前述のウイルスヘルパープラスミドのうちのいずれかと共に用いて作製することができる、rAAVベクターを企図する。
【0053】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、(I)前述のAAVキャプシドのうちのいずれか、および(II)前述のAAVゲノムのうちのいずれかを含む、rAAVベクターを企図する。
【0054】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、(A)rAAVゲノムベクターのうちのいずれか、および任意に以下のうちの1つ以上を含む、組成物を企図する:(B)前述のAAV cap遺伝子のうちのいずれかを含むポリヌクレオチド;(C)前述のAAV rep遺伝子のうちのいずれかを含むポリヌクレオチド;(D)前述のアデノウィルスヘルパー遺伝子のうちのいずれかを含むポリヌクレオチド;および/または(E)薬学的に許容し得る担体または賦形剤。いくつかの場合において、かかる組成物は、前述のrAAVベクターのうちのいずれかを生成するために用いることができる。
【0055】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、(I)前述のrAAVベクターのうちのいずれか、および(II)薬学的に許容し得る担体を含む、組成物を企図する。いくつかの場合において、かかる組成物は、本明細書において開示される疾患状態、例えば副腎白質ジストロフィー(ALD)または副腎脊髄ニューロパチー(AMN)を処置および予防する方法のうちのいずれかにおいて、用いることができる。
【0056】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、前述のAAVコンストラクトのうちのいずれかを作製する方法を企図する。
【0057】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、それを必要とする対象における副腎白質ジストロフィー(ALD)または副腎脊髄ニューロパチー(AMN)の処置のために、前述のAAVコンストラクトのうちのいずれかを用いるかまたは投与する方法を企図する。
【0058】
いくつかの態様において、本発明は、部分的に、前述のAAVコンストラクトのうちのいずれかを、薬学的に許容し得る担体と組み合わせて用いるかまたは投与する方法を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1A~Bは、それぞれWPRE、修飾されたWPRE(Xタンパク質の不活化をもたらす変異を含む)、またはWPREを欠失するAAV9-CBA-ABCD1ビリオンを含む様々なAAV9-CBA-ABCD1ビリオン(AAV9キャプシドの使用に起因して「AAV9」として言及される)を投与されたABCD1ノックアウト(KO)マウスにおける、脊髄試料におけるABCD1発現を比較するin vivoでの実験の結果を含み、ここで、ABCD1発現は、脊髄試料において、ウェスタンブロット法を用いて検出した。
【0060】
【
図2】
図2A~Cは、さらなるin vivoでの実験のウェスタンブロットデータを含み、ここで、ABCD1ノックアウトマウスは、それぞれ、異なる投与量の、WPRE(「オリジナル」として同定される)、修飾されたWPRE(Xタンパク質の不活化をもたらす変異を含む、「X-不活化されたもの」として同定される)を含むAAV9-CBA-ABCD1ビリオン、またはWPREを欠失するAAV9-CBA-ABCD1ビリオンを投与され、ここで、ABCD1発現は、処置されたABCD1ノックアウトマウスから得られた脊髄試料において、ウェスタンブロット法を用いて検出した。
【0061】
【
図3】
図3A~3Cは、異なる投与量(3×10
11または1×10
11ゲノムコピー/マウス)の、それぞれ、WPREを含む(「オリジナル」として同定される)か、修飾されたWPREを含む(Xタンパク質の不活化をもたらす変異を含み、「X-不活化されたもの」として同定される)AAV9-CBA-ABCD1ビリオン、またはWPREを欠失するAAV9-CBA-ABCD1ビリオンを投与された、ABCD1ノックアウトマウスの脊髄試料における、ABCD1発現の用量応答を比較する;ここで、ABCD1発現は、やはり、異なる用量を投与されたABCD1ノックアウトマウスから得られた脊髄試料において、ウェスタンブロット法を用いて検出された。ABCD1発現は、WPREを欠失するビリオンにおいて、より低かった。
【0062】
【
図4】
図4A~4Bは、WPREを含む(「オリジナル」)、または修飾されたWPREを含む(Xタンパク質の不活化をもたらす変異を含む、「x-inact」)異なるAAV9-ABCD1ビリオンで形質導入された混合グリア培養物中のVLCFAレベルを比較し、ここで、VLCFAレベルは、VLCFA分析のために採取された細胞から、形質導入の4日後に検出された。示されるとおり、VLCFAレベルは、異なるAAV9.ABCD1ビリオンで形質導入された混合グリア培養物におけるものとほぼ同じ程度まで低下している。全てのAAVベクターは、用量依存的な様式において、VLCFAを低下させた。
【0063】
【
図5】
図5は、pSBT101の模式的地図を含み、これは、他の配列の中でも、5’AAV2 ITR、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、ベータ-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソン、hABCD1 5’UTR、ヒトABCD1コード配列、hABCD1 3’UTR、SV40ポリ(A)シグナル配列、bGHポリ(A)シグナル配列、3’AAV2 ITR、およびAmpRプロモーターに作動可能に連結されたKanRマーカーを含み;ここで、かかる配列が、pUC57骨格上に含まれる。
【0064】
【
図6】
図6は、pOB1005の模式的地図を含み、これは、他の配列の中でも、AAV2 5’ITRバリアント(野生型5’ITRまたはpSBT101の5’ITRより短い)、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、ベータ-アクチンエクソン、ベータ-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソン、その5’末端においてKOZAK配列をさらに含むヒトABCD1コード配列、SV40ポリ(A)シグナル配列、AAV2 3’ITRバリアント(野生型3’ITRまたはpSBT101の3’ITRより短い)、およびAmpRプロモーターに作動可能に連結されたKanRマーカーを含み;ここで、かかる配列が、pUC118骨格上に含まれる。
【0065】
【
図7】
図7は、pOB1010の模式的地図を含み、これは、他の配列の中でも、AAV2 5’ITRバリアント(野生型5’ITRまたはpSBT101の5’ITRより短い)、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、ベータ-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソン、hABCD1 5’UTR、ヒトABCD1コード配列、hABCD1 3’UTR、SV40ポリ(A)シグナル配列、bGHポリ(A)シグナル配列、3’AAV2 ITR、およびAmpRプロモーターに作動可能に連結されたKanRマーカーを含み;ここで、かかる配列が、pUC118骨格上に含まれる。
【0066】
【
図8】
図8A~Bは、pSBT101またはpOB1005でトランスフェクトされたHEK293細胞(およびトランスフェクトされていないHEK293対照細胞)において行われた一過性トランスフェクション実験における、ABCD1発現レベルを比較し、ここで、プラスミドは、並んでトランスフェクトされ、発現は、細胞ライセート中でウェスタンブロッティングにより評価され、ブロットは、濃度測定を用いて定量された。ウェスタンブロット分析においては、抗ALDタンパク質抗体クローンOTI4C2(OriGene)を用いた。結果は、pOB1005プラスミドが、より良好なABCD1発現をもたらしたことを示す。
【0067】
【
図9】
図9は、pSBT101およびpOB1005のAAV中へのパッケージング能力(packageability)を、力価(gc/ml)、生産性(gc/細胞)および収量(gc)に基づいて比較する。
【0068】
【
図10A】
図10Aは、5’ITRから3’ITRへのコンストラクトの模式図を、オリジナルのAAV-CBA-hABCD1-WPREウイルス粒子、AAV-CBA-hABCD1-WPREXinactウイルス粒子、およびAAV-CBA-hABCD1(WPREなし)ウイルス粒子(本明細書においてまた「AAV-CBA-hABCD1」としても言及される)、5’ITRから3’ITRへのものと比較する。「CMV-e」、「CBA-p」、「BA-ex」、「Chm-int」および「RBG-ex」は、5’ITR-3’ITR中に含まれるエレメントであり、それぞれ、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ベータアクチンエクソン、キメラ性イントロン、およびウサギベータ-グロビンエクソンを意味する。「ABCD1」は、ABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドである。「SV40pA」および「bGHpA」は、それぞれ、SV40ポリAシグナルおよびベータ増殖ホルモンポリAシグナルを意味する。
【0069】
【
図10B】
図10Bは、以下に割り当てられた配列番号をまとめる表を提供する:対応するrAAVゲノムベクター(示されたrAAVウイルス粒子を生成するために用いることができるプラスミド)の5’ITR-3’ITR中に含まれる異なるエレメントの配列;対応するrAAVゲノムベクター中に含まれる5’ITR-3’ITR配列;対応するrAAVゲノムベクター中に含まれるrAAVベクターゲノム配列(すなわち、示されたrAAVウイルス粒子中にパッケージングされた配列);および対応するrAAVゲノムベクターの全長プラスミド配列。例えばAAV-CBA-hABCD1-XinactのためのrAAVゲノムベクターは、配列番号10000の核酸配列を有し、これは、配列番号10050の5’ITR-3’ITR配列を含み、これは、5’ITR(配列番号10001)、CMVエンハンサー(配列番号10005)、ベータアクチンエクソン(配列番号10008)、その他などの様々なエレメントを含む。「総ポリAシグナル」とは、SV40ポリAシグナルの開始からbGHポリAシグナルの終了までに広がる領域を指す。rAAVウイルスAAV-CBA-hABCD1-Xinactのベクターゲノムは、配列番号10060の核酸配列を有する。ベクターAAV-CBA-hABCD1-XinactおよびAAV-CBA-hABCD1[WPREなし]についての配列番号の割り当ては、
図11A~11Bにおいてさらに可視的に表す。
【0070】
【
図11A】
図11Aは、AAV-CBA-hABCD1-WPRE Xinactコンストラクトの模式図を、5’ITR、CMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、β-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソン、ABCD15’UTR、ABCD1遺伝子、ABCD13’UTR、WPRE X inact(これは、不活化されたXタンパク質の部分的なオープンリーディングフレームを発現するように修飾されたWPREである)、SV40ポリA、bGHポリA、3’ITR、ABCD1遺伝子中に含まれるターミネーター1、総ポリA(すなわち、SV40pA~bGHpA)の核酸配列、および5’ITR~3’ITR配列に割り当てられた配列番号と共に提供する。
【0071】
【
図11B】
図11Bは、AAV-CBA-hABCD1コンストラクト(WPREなし)の5’ITRから3’ITRまでの模式図、ならびに5’ITR、CMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、β-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソン、ABCD15’UTR、hABCD1 cDNA、ABCD1遺伝子中に含まれるターミネーター1、ABCD13’UTR、SV40ポリA、bGHポリA、総ポリA(すなわち、SV40pA~bGHpA)、3’ITRの核酸配列、および5’ITR~3’ITR全体の配列に割り当てられた配列番号を含む。
【
図12A】
図12Aは、様々なウイルス粒子SBT101、OB1005、OB1010、OB1011、OB1012、OB1013、OB1015、OB10107およびOB1008の5’ITR~3’ITRコンストラクトの、5’ITRから3’ITRまでの模式図を比較する。「CMV-e」、「CBA-p」、「BA-ex」、「Chm-int」、および「RBG-ex」は、5’ITR-3’ITR中に含まれるエレメントであり、それぞれ、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ベータアクチンエクソン、キメラ性イントロン、およびウサギベータ-グロビンエクソンを意味する。「SV40pA」および「bGHpA」は、それぞれ、SV40ポリAシグナルおよびベータ増殖ホルモンポリAシグナルを意味する。「ABCD1」は、ABCD1遺伝子をコードするポリヌクレオチドである。「ABCD1/3nt」および「ABCD1/9nt」は、「ABCD1」と比較して、それぞれ3か所および9か所において頃なる核酸を含む。示されたrAAVウイルス粒子およびプラスミド骨格のベクターゲノムをコードするプラスミド(rAAVゲノムベクター)の名称もまた、示される。
【
図12B】
図12Bは、以下に対して割り当てられた配列番号をまとめる表を提供する:対応するrAAVゲノムベクター(示されたrAAVウイルス粒子を生成するために用いることができるプラスミド)の5’ITR-3’ITR中に含まれる様々なエレメントの配列;対応するrAAVゲノムベクター中に含まれる5’ITR-3’ITR配列;対応するrAAVゲノムベクター中に含まれるrAAVベクターゲノム配列(すなわち、示されたrAAVウイルス粒子中にパッケージングされる配列);および対応するrAAVゲノムベクターの全長プラスミド配列。例えば、OB1010のためのrAAVゲノムベクター、すなわちプラスミドpOB1010は、配列番号11000の核酸配列を有し、これは、配列番号11050の5’ITR-3’ITR配列を含み、これは、5’ITR(配列番号11001)、CMVエンハンサー(配列番号11005)、ベータアクチンエクソン(配列番号11008)、その他などの多様なエレメントを含む。「総ポリAシグナル」とは、SV40ポリAシグナルの開始からbGHポリAシグナルの終了まで広がる領域を指す。pOB1010により生成されるrAAVウイルスベクターのベクターゲノムは、配列番号11060の核酸配列を有する。
【
図12C】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12D】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12E】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12F】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12G】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12H】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12I】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【
図12J】対応するベクターについてのこれらの配列番号の割り当てを、
図12C~12Jにおいてさらに可視化し、これらは、様々なウイルス粒子、SBT101(
図12C)、OB1005(
図12D)、OB1010(
図12E)、OB1011(
図12F)、OB1012(
図12G)、OB1013(
図12H)、OB1015(
図12I)およびOB10107(
図12J)のゲノムのエレメントに割り当てられた配列番号を可視的に説明する。
【0072】
【
図13A】
図13A~13Eは、例8において本開示による様々なrAAVを用いて得られた例示的なABCD1タンパク質発現レベルを提供する。
図13A~13Dは、MOIに対してプロットされたABCD1タンパク質レベルを、各々のAAVベクターについての、各々の図において記載されるようにフィットさせた用量-発現曲線、概算された相対的な潜在能力(
図13A~13CにおけるpOB1008に対して相対的、および
図13DにおけるSBT101に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値と共に提供する。試験rAAVを生成するために用いられたプラスミドを、下のボックスにおいて示す。
【
図13B】
図13A~13Eは、例8において本開示による様々なrAAVを用いて得られた例示的なABCD1タンパク質発現レベルを提供する。
図13A~13Dは、MOIに対してプロットされたABCD1タンパク質レベルを、各々のAAVベクターについての、各々の図において記載されるようにフィットさせた用量-発現曲線、概算された相対的な潜在能力(
図13A~13CにおけるpOB1008に対して相対的、および
図13DにおけるSBT101に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値と共に提供する。
【
図13C】
図13A~13Eは、例8において本開示による様々なrAAVを用いて得られた例示的なABCD1タンパク質発現レベルを提供する。
図13A~13Dは、MOIに対してプロットされたABCD1タンパク質レベルを、各々のAAVベクターについての、各々の図において記載されるようにフィットさせた用量-発現曲線、概算された相対的な潜在能力(
図13A~13CにおけるpOB1008に対して相対的、および
図13DにおけるSBT101に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値と共に提供する。
【
図13D】
図13A~13Eは、例8において本開示による様々なrAAVを用いて得られた例示的なABCD1タンパク質発現レベルを提供する。
図13A~13Dは、MOIに対してプロットされたABCD1タンパク質レベルを、各々のAAVベクターについての、各々の図において記載されるようにフィットさせた用量-発現曲線、概算された相対的な潜在能力(
図13A~13CにおけるpOB1008に対して相対的、および
図13DにおけるSBT101に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値と共に提供する。
【
図13E】
図13A~13Eは、例8において本開示による様々なrAAVを用いて得られた例示的なABCD1タンパク質発現レベルを提供する。
図13Eは、例示的なウェスタンブロットウェルおよび相対的強度のデータを示す。
【0073】
【
図14】
図14は、例9において観察されたrAAVベクターpOB1010、pOB1015、およびpOB1017による例示的なVLCFAの減少を比較する。MOIに対してプロットされたLyso-PC C26/C22比を、各々のAAVベクターについての、各々の図において記載されるようにフィットさせた用量-発現曲線、概算された相対的な潜在能力(OB1010に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値と共に提供する。試験rAAVを生成するために用いられたプラスミドを、下のボックスにおいて示す。
【0074】
【
図15A】
図15A~15Cは、例10において観察された、ABCD1 KO混合グリア細胞におけるVLCFAの減少における、例示的な用量依存性を提供する。
図15Aは、低用量、中用量、および高用量(それぞれ、3.3×10
4、1.0x10
5、および5×10
5ウイルスゲノム/細胞)のOB1010が、rAAV生成のベンダー(異なる精製方法)にかかわらず、rAAV用量依存的なC26:0/C22:0比の減少およびC26:0の量の減少を提供したことを示す。
【
図15B】
図15A~15Cは、例10において観察された、ABCD1 KO混合グリア細胞におけるVLCFAの減少における、例示的な用量依存性を提供する。
図15Bは、VLCFA低下効果、C26:0/C22:0比の減少およびC24:0/C22:0比の減少が、ABCD1タンパク質発現レベルに依存することを示す。
【
図15C】
図15A~15Cは、例10において観察された、ABCD1 KO混合グリア細胞におけるVLCFAの減少における、例示的な用量依存性を提供する。
図15Cは、多様なVLCFA低下効果、C26:0およびC24:0の量の減少、ならびにC26:0/C22:0およびC24:0/C22:0比の減少が、ABCD1タンパク質発現レベルに依存することをさらに示す。
図15Cはまた、ABCD1タンパク質レベルは、一方で、C22:0の量に影響を及ぼさず、C16:0量を増加させることを示す。
【0075】
【
図16】
図16は、例11において観察されたSBT101により誘発される例示的なin vivoでの効果を提供する。提供されるのは、脊髄におけるrAAV用量依存的ベクターゲノムレベル(左)、脊髄における用量依存的ABCD1タンパク質発現(中央)、および脊髄におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)レベルの用量依存的回復(右)である。mtRNAレベルの回復は、VLCLAのベータ酸化の回復についての代替マーカーである。
【0076】
【
図17】
図17は、例12におけるrAAVのパッケージング能力の比較からの例示的な結果を提供する。同じ生成スケールにより、pOB1010、pSBT101、およびpOB1008プラスミドを用いて得られたウイルス力価を、示された方法(ddPCRおよびqPCR)により決定して提供する。
【発明を実施するための形態】
【0077】
発明の詳細な説明
定義
別段に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が存在する場合、定義を含む本願が支配するであろう。
【0078】
本明細書において用いられる場合、用語「アデノウィルス随伴ウイルスベクター」、「アデノウィルス随伴ウイルス性ベクター」、または「AAVベクター」は、(i)AAVから誘導される少なくとも1つのキャプシドタンパク質、および(ii)目的の遺伝子をコードする組み換えベクターゲノムを含む、組み換えウイルス粒子を包含する。AAVベクターにおいて、組み換えゲノムは、典型的には、キャプシド中にパッケージングまたは封入されて、組み換えAAVビリオンを形成する。「AAVベクター」はまた、本明細書において、「AAV粒子」、「組み換えAAV」、「rAAV」、「組み換えAAVベクター」、「rAAVベクター」、「組み換えAAV粒子」、または「rAAV粒子」としても言及され得る。rAAVベクターの組み換えベクターゲノムは、本明細書において、「AAVベクターゲノム」、「組み換えAAVゲノム」、「rAAVゲノム」、「組み換えAAVベクターゲノム」、「rAAVベクターゲノム」、または単に「ベクターゲノム」または「組み換えベクターゲノム」として言及され得る。
【0079】
本明細書において用いられる場合、「発現カセット」とは、ヒトABCD1タンパク質についてのコード配列、プロモーターを含む核酸分子を指し、これは、それに対する他の調節配列を含んでもよく、このカセットは、ウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)のキャプシド中にパッケージングされてもよい。典型的には、AAVベクターを作製するためのかかる発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルまたはITRに隣接した、本明細書において記載される配列、および本明細書において記載されるもののような他の発現制御配列を含む。例えば、AAVウイルスベクターについて、パッケージングシグナルは、5’逆位末端反復配列(ITR)および3’ITRである。AAVキャプシド中にパッケージングされる場合、ITRは、発現カセットと組み合わされて、本明細書において、「組み換えAAV(rAAV)ゲノム」または「ベクターゲノム」として言及され得る。
【0080】
本明細書において用いられる場合、用語「調節配列」、「転写制御配列」または「発現制御配列」とは、イニシエーター配列、エンハンサー配列およびプロモーター配列などのDNA配列であって、それが作動可能に連結されるタンパク質をコードする核酸配列の転写を引き起こすか、抑制するか、または別段にこれを制御するものを指す。
【0081】
本明細書において用いられる場合、用語「作動可能に連結される」または「動作可能に(operatively)関連する」とは、ヒトABCD1をコードする核酸配列と連続した発現制御配列、ならびに/または、トランスで、または離れて、その転写および発現を制御するように作用する発現制御配列の両方を指す。
【0082】
一側面において、本明細書において記載される発現カセットのうちのいずれかを含むベクターが提供される。本明細書において記載される場合、かかるベクターは、多様な起源のプラスミドであってよく、本明細書においてさらに記載されるように、組み換え複製欠損ウイルスのためのある態様において有用である。
【0083】
「ベクター」とは、本明細書において用いられる場合、外来または異種の、または操作された核酸導入遺伝子を挿入することができる核酸分子であった、これは、次いで適切な宿主細胞中に導入することができる。ベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点、および組み換えDNAを挿入することができる1つ以上の部位を有する。ベクターは、しばしば、ベクターを伴う細胞をベクターを伴わない細胞から選択することができる手段を有し、例えば、それらは、薬物耐性遺伝子をコードする。一般的なベクターとして、プラスミド、ウイルスゲノム、および(主に酵母および細菌において)「人工染色体」が挙げられる。特定のプラスミドは、本明細書において記載される。
【0084】
一態様において、ベクターは、その記載される発現カセットを含む、非ウイルス性プラスミド、例えば、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質核酸組成物、ポリグルカン組成物および他のポリマー、脂質および/またはコレステロールベースの核酸抱合体、ならびに本明細書において記載されるような他のコンストラクトを含む、多様な組成物およびナノ粒子とカップリングされた、「ネイキッドDNA」、「ネイキッドプラスミドDNA」、RNAおよびmRNAである。例えば、X. Su et al, Mol. Pharmaceutics, 2011, 8 (3), pp 774-787;ウェブ公開:2011年3月21日;WO2013/182683、WO2010/053572およびWO2012/170930を参照:これらの全ては、本明細書において参考として援用される。かかる非ウイルス性ヒトABCD1ベクターは、本明細書において記載される経路により投与することができる。本明細書において用いられる場合、用語「対象」とは、本明細書において用いられる場合、ヒト、獣医学または農場の動物、飼育動物またはペット、および臨床研究のために通常用いられる動物を含む、哺乳動物を意味する。好ましい態様において、これらの方法および組成物の対象は、ヒトである。なお他の好適な対象として、限定することなく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類およびその他が挙げられる。本明細書において用いられる場合、用語「対象」は、「患者」と交換可能に用いられる。
【0085】
処置される対象は、副腎白質ジストロフィーおよび/もしくは副腎脊髄ニューロパチーを診断された個体を含んでもよく、血漿中の高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積などのALDもしくはAMNの発症に関連する症状を示すものであってもよく、または、家族歴に起因してALDもしくはAMNを発症するリスクがあるものであってもよく、または、個体は、遺伝子検査の間に、ABCD1遺伝子において1つ以上の変異、例えば、ALDもしくはAMNの発症と相関することが見出されている変異を含むことが決定されたものであってもよい。
【0086】
述べられたように、AAVの構築におけるABCD1コード配列は、任意に、コドンのうちのより多くの数またはパーセンテージがヒト優先コドンを含むように、コドン最適化されていてもよい。核酸配列の文脈における「パーセント(%)同一性」、「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、または「パーセント同一」という用語は、一致についてアラインメントされた場合に、2つの配列中の同じである残基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長にわたるものであってよく、または少なくとも約500~5000ヌクレオチドのフラグメントが所望される。しかし、より小さなフラグメントの間、例えば少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36ヌクレオチドまたはそれより多くのヌクレオチドの同一性もまた、所望される場合がある。
【0087】
パーセント同一性は、タンパク質の全長にわたるアミノ酸配列、ポリペプチド、約32アミノ酸、約330アミノ酸、またはそれらのペプチドフラグメント、または対応する核酸配列コード配列について、容易に決定することができる。好適なアミノ酸フラグメントは、少なくとも約8アミノ酸の長さであってよく、約700アミノ酸までであってよい。一般に、2つの異なる配列の間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」に言及する場合、「同一性」、「相同性」または「類似性」は、「アラインメントされた」配列に対する参照において決定される。「アラインメントされた」配列または「アラインメント」とは、参照配列と比較して失われたまたは付加的な塩基またはアミノ酸についての補正をしばしば含む、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0088】
同一性は、配列のアラインメントを準備することにより、ならびに当該分野において公知のまたは市販の多様なアルゴリズムおよび/またはコンピュータープログラムの使用を通して、決定することができる[例えば、BLAST、ExPASy;Clustal;FASTA;例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを用いて]。アラインメントは、多様な公共で利用可能または市販の多重配列アラインメントプログラムのうちのいずれかを用いて行われる。配列アラインメントプログラムは、アミノ酸配列について利用可能である:例えば、「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BloCKMAKER」、「MEME」および「Match-Box」プログラム。一般に、これらのプロセスのうちのいずれかをデフォルトのセッティングにおいて用いるが、当業者は、これらのセッティングを、必要に応じて変更することができる。あるいは、当業者は、少なくとも参照されたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののようなレベルの同一性またはアラインメントを提供する、別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、J. D. Thomson et al,「A comprehensive comparison of multiple sequence alignments」、Nucl. Acids. Res.,27(l3):2682-2690 (1999)を参照。
【0089】
多重配列アラインメントプログラムはまた、核酸配列についても利用可能である。かかるプログラムの例として、「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」および「MEME」が挙げられ、これらは、インターネット上のウェブサーバーを通してアクセス可能である。かかるプログラムのための他のソースは、当業者に公知である。あるいは、SnapGeneを用いることができる。また、ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いることができる当該分野において公知の多数のアルゴリズムが存在し、これは、上記のプログラムにおいて含まれるものを含む。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1におけるFasta(商標)プログラムを用いて比較することができる。Fasta(商標)は、クエリーとサーチの配列の間の最良の重複の領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する。例えば、核酸配列の間のパーセント配列同一性は、Fasta(商標)を、GCGバージョン6.1において提供されるそのデフォルトのパラメーター(ワードサイズ=6、スコア付けマトリックスのためのおよびNOPAMファクター)により用いて決定することができ、これは、本明細書において参考として援用される。
【0090】
用語「外来」とは、核酸配列またはタンパク質を記載するために用いられる場合、当該核酸またはタンパク質が、染色体または宿主細胞上のそれが存在する位置において、天然では存在しないことを意味する。外来核酸配列はまた、同じ宿主細胞または対象から誘導されるか、またはこれに挿入される配列であるが、非天然の状態、例えば異なるコピー数において、または異なる調節エレメントの制御下において存在するものを指す。
【0091】
用語「異種」とは、核酸配列またはタンパク質を記載するために用いられる場合、当該核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞または対象とは異なる生物か、または同じ生物の異なる種から誘導されたことを意味する。用語「異種」は、プラスミド、発現カセットまたはベクター中のタンパク質または核酸に対する言及により用いられる場合、当該タンパク質または核酸が、問題のタンパク質または核酸が天然においては互いに同じ関係においては見出されない、別の配列または部分配列と共に存在することを示す。
【0092】
用語「単離された」とは、材料が、そのオリジナルの環境(例えば、それが天然に存在するものである場合は、天然の環境)から取り除かれることを意味する。例えば、生きた動物において存在する、天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系において共在する材料のうちの一部または全てから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その後に天然の系に再導入されたとしても、単離されている。かかるポリヌクレオチドは、ベクターの部分であり得るか、および/またはかかるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物の部分であり得るが、かかるベクターまたは組成物が、その天然の環境の部分ではないという点において、なお単離されている。
【0093】
用語「ターミネーター」とは、本明細書において用いられる場合、翻訳を終結させる核酸配列を包含する。例えば、ターミネーターは、それぞれ、DNA配列「TAG」、「TGA」、または「TAA」に対応するRNA配列「UAG」、「UGA」、または「UAA」であってよい。
【0094】
本明細書において用いられる場合、用語「代替的オープンリーディングフレーム(alternative open reading frame)」、「代替的リーディングフレーム」、または「代替的フレーム」は、各々、目的の遺伝子(例えばABCD1)のコード配列中に存在する潜在的なタンパク質コード配列を指す。代替的オープンリーディングフレームは、典型的には、センス(またはアンチセンス)方向において、ABCD1遺伝子とは異なるリーディングフレームにおける、例えば+1または+2フレームにおける、開始コドン(ATG)から始まる。ABCD1と同じ方向における代替的リーディングフレームは、潜在的に免疫原性である代替的生成物の転写をもたらし得るか、および/またはABCD1遺伝子の翻訳の減少をもたらし得る。代替的オープンリーディングフレームは、代替的フレーム中に存在するATG配列を取り除く1つ以上の変異を導入することにより、除去することができ、これらの変異は、好ましくは、ABCD1遺伝子コード配列に関してサイレントである(あるいは、ABCD1配列中に保存的変異などの変異を導入してもよい)。あるいは、または加えて、コードされるポリペプチドが、好ましくは1アミノ酸のみ、または数アミノ酸、短縮されるように、代替的リーディングフレームにおいて、例えば、代替的オープンリーディングフレームにおいて存在するATGの下流数コドン以内に、停止コドン(TAA、TGAまたはTAG)を導入してもよい。さらに、ABCD1コード配列に関して導入される変異は、好ましくは、翻訳の遅延または減少をもたらし得る希少コドンの導入を回避する。
【0095】
例示的な態様において、ABCD1コード配列は、1つ以上のコドン最適化された領域を含む。コドン最適化されたコード領域は、多様な異なる方法により設計することができる。この最適化は、オンラインで入手可能な方法(例えば、GeneArt)、公開された方法、またはコドンを最適化するサービスを提供する会社、例えば、ATUM(Newark, CA)を用いて行うことができる。1つのコドン最適化の方法は、例えば、米国国際特許公開番号WO2015/012924において記載され、これは、その全体において本明細書において参考として援用される。また、例えば、米国特許公開番号2014/0032186および米国特許公開番号2006/0136184を参照。好適には、生成物についてのオープンリーディングフレーム(ORF)の長さ全体を修飾する。しかし、いくつかの態様においては、ORFのフラグメントのみを改変してもよい。これらの方法のうちの1つを用いることにより、任意の所与のポリペプチド配列に対して度数(frequency)を適用することができ、コドン最適化されたコード領域の核酸フラグメントであってポリペプチドをコードするものを生成することができる。
【0096】
多数のデノボおよび組み換えの選択肢が、コドンに対して実際の変更を行うために、またはコドン最適化されたコード領域を合成するために、利用可能である。かかる修飾または合成は、当業者に周知の標準的および慣用的な分子生物学的操作を用いて行うことができる。1つのアプローチにおいて、各々80~90ヌクレオチドの長さの、および所望される配列の長さにわたる、一連の相補的オリゴヌクレオチドペアを、標準的な方法により合成する。これらのオリゴヌクレオチドペアは、それらがアニーリングにより付着末端を含む80~90塩基対の二本鎖のフラグメントを形成するように合成され、例えば、ペアにおける各々のオリゴヌクレオチドは、ペアにおけるもう一方のオリゴヌクレオチドに対して相補的な領域を3、4、5、6、7、8、9、10塩基またはそれより多くの塩基超えて伸長するように、合成される。オリゴヌクレオチドの各々のペアの一本鎖末端は、オリゴヌクレオチドの別のペアの一本鎖末端とアニーリングするように設計される。オリゴヌクレオチドペアをアニーリングさせ、これらの二本鎖フラグメントのうちの約5~6を、次いで、付着性の一本鎖末端を介して一緒にアニーリングさせ、次いで、それらを一緒にライゲーションして、標準的な細菌のクローニングベクター、例えば、Invitrogen Corporation(Carlsbad, Calif)から入手可能なTOPO(登録商標)ベクター中にクローニングする。コンストラクトを、次いで、標準的な方法により配列決定する。80~90塩基対のフラグメントを一緒にライゲーションした5~6のフラグメント、すなわち、約500塩基対のフラグメントからなる、これらのコンストラクトのうちのいくつかを、所望される配列全体が、一連のプラスミドコンストラクト中に表されるように調製する。これらのプラスミドのインサートを、次いで、適切な制限酵素により切断し、一緒にライゲーションして、最終コンストラクトを形成する。最終コンストラクトを、次いで、標準的な細菌のクローニングベクター中にクローニングし、配列決定する。かかる方法はまた、1つ以上の代替的オープンリーディングフレームが除去されているコード配列を構築するために用いてもよい。さらなる方法は、当業者にはすぐ明らかとなるであろう。加えて、遺伝子合成が、商業的に容易に利用可能である。
【0097】
「操作された」により、本明細書において記載されるABCD1タンパク質をコードする核酸配列が、組み立てられて、例えば、非ウイルス性送達系(例えば、RNAベースの系、ネイキッドDNAなど)を作製するために、または、パッケージング宿主細胞中のウイルスベクターを作製するために、および/または対象中の宿主細胞への送達のために、その上で担持されるABCD1配列を宿主細胞に輸送する、任意の好適な遺伝子エレメント、例えば、ネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどの中に配置されることを意味する。一態様において、遺伝子エレメントは、プラスミドである。かかる操作されたコンストラクトを作製するために用いられる方法は、核酸操作の分野における当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学、および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2012)を参照。
【0098】
本明細書において用いられる場合、用語「宿主細胞」とは、その中で生成プラスミドから組み換えAAVが生成される、パッケージング細胞株を指し得る。代替において、用語「宿主細胞」とは、その中でコード配列の発現が所望される、任意の標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」とは、原核生物または真核生物の細胞であって、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコート(high velocity DNA-coated)ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合により、細胞中に導入された外来または異種DNAを含むものを指す。ある態様において、本明細書において、用語「宿主細胞」とは、ウイルスベクターまたは組み換えウイルスを作製してパッケージングするために使用される細胞を指す。他の態様において、本明細書において、用語「宿主細胞」とは、本明細書において記載される組成物のin vitro評価のための、多様な哺乳動物種のCNS細胞の培養物を指す。なお他の態様において、用語「宿主細胞」は、ALDまたはAMN疾患のためにin vivoで処置されている対象の神経系の細胞への参照を意図する。
【0099】
かかる宿主細胞は、上衣、脳室系の上皮の裏層を含む、CNSの上皮細胞を含む。他の宿主細胞として、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞、後根神経節およびミクログリアが挙げられる。
【0100】
本明細書において用いられる場合、用語「処置」または「処置すること」とは、ALDまたはAMNの1つ以上の症状の寛解を目的として、対象に、本明細書において記載される1つ以上のDNAコンストラクトまたは組成物を投与することを包含することを定義される。「処置」は、したがって、ALDまたはAMNの発症または進行を軽減すること、疾患を予防すること、脳、脊髄および副腎皮質の血漿および組織における高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積;副腎脊髄ニューロパチー(AMN);罹患した後根神経節ニューロン(DRG)に起因する末梢性ニューロパチー;アジソン病の発症;注意、思考、集中および他の大脳機能の「突然」の低下;大脳脱髄;その他を含む、疾患の症状の重篤度を低下させること、またはそれらの進行を遅らせることのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0101】
用語「発現」は、本明細書において、その最も広い意味において用いられ、RNAの生成、またはRNAおよびタンパク質の生成を含む。RNAに関して、用語「発現」または「翻訳」とは、特に、ペプチドまたはタンパク質の生成に関する。発現は、一過性であっても、安定であってもよい。
【0102】
用語「翻訳」は、本発明の文脈において、mRNA鎖がアミノ酸配列の組み立てを制御してタンパク質またはペプチドを生じる、リボソームにおけるプロセスを指す。
【0103】
本明細書において用いられる場合、「疾患」、「障害」および「状態」は、対象における異常な状態を示すために、交換可能に用いられる。
【0104】
本明細書において用いられる場合、用語「約」または「約(~)」は、別段に特定されない限り、示される参照物からの10%の可変性を意味する。
【0105】
用語「調節(regulation)」またはそのバリエーションは、本明細書において用いられる場合、生体経路の1つ以上の構成成分を阻害する能力を指す。
【0106】
「投与すること」により、方法において用いられる場合、組成物を、ABCD1遺伝子の欠損により特徴づけられる標的の選択された細胞に送達することを意味する。一態様において、方法は、髄腔内注射により組成物を送達することを含む。別の態様において、対象への脳室内(ICV)注射が使用される。別の態様において、対象への腰部髄腔内(IT-L)注射が使用される。なお別の方法において、血管内注射を使用してもよい。別の態様において、筋肉内注射が使用される。一般に、髄腔内投与が用いられる。投与のなお他の方法は、本開示を示された当業者により選択され得る。
【0107】
「投与すること」または「投与の経路」により、薬学的担体または賦形剤を伴う、またはこれを伴わない、本明細書において記載される組成物の対象への送達である。所望される場合、投与の経路は、組み合わせてもよい。いくつかの態様において、投与は、周期的に繰り返される。本明細書において記載される医薬組成物は、それを必要とする対象への、任意の好適な経路または異なる経路の組み合わせによる送達のために設計される。いくつかの態様において、脳への直接送達(任意に髄腔内、ICVまたはIT-L注射を介して)、または全身経路、例えば、血管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および他の非経口の投与の経路を介する送達が使用される。本明細書において記載される核酸分子、発現カセットおよび/またはベクターは、単一の組成物または複数の組成物中で送達することができる。任意に、2つ以上の異なるAAV、または複数のウイルスを送達してもよい[例えば、WO2011/126808およびWO2013/049493を参照]。別の態様において、複数のウイルスは、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAVおよびアデノウィルス)を、単独で、またはタンパク質と組み合わせて含んでもよい。
【0108】
本明細書において用いられる場合、用語「髄腔内送達」または「髄腔内投与」とは、脊柱管中への、より具体的には、脳脊髄液(CSF)に到達するように、くも膜下腔中への注射を介した、薬物のための投与の経路を指す。髄腔内送達は、腰椎穿刺、脳室内(intraventricular)(脳室内(intracerebroventricular:ICV)を含む)、後頭下/大槽内、および/またはC1-2穿刺を含み得る。例えば、材料は、腰椎穿刺により、くも膜下腔全体にわたる拡散のために導入してもよい。別の例において、注射は、大槽中へのものであってよい。
【0109】
本明細書において用いられる場合、用語「大槽内送達」または「大槽内投与」とは、大槽樟脳髄質(cisterna magna cerebellomedularis)の脳脊髄液中へ直接的に、より具体的には、後頭下穿刺を介する、または大槽中への直接注射による、または恒久的に配置された管を介する、薬物のための投与の経路を指す。本明細書において記載される組成物を脳脊髄液中に送達するために有用であるデバイスは、PCT/US2017/16133において記載され、これは、本明細書において参考として援用される。
【0110】
他の定義は、本開示全体を通して文脈において現れる。
【0111】
組成物および方法
本発明は、改善されたAAVコンストラクト(rAAVベクターおよびrAAVゲノムベクターなど)ならびにそれを含む細胞および組成物を提供し、ここで、かかるAAVコンストラクトは、ヒトABCD1タンパク質をコードする核酸配列を含み(AAV-ABCD1コンストラクトまたはAAV-hABCD1コンストラクト)、ここで、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、以下の利点のうちの1つ以上を有していてもよい:改善された安全性、改善されたパッケージング能力、増強されたABCD1発現レベル、改善された効力、改善された安定性、または低下した非自己抗原を発現する能力。
【0112】
本発明の組成物および方法は、ABCD1遺伝子における変異により引き起こされたX連鎖型副腎白質ジストロフィー(X-ALD)のための処置を提供する。CNSへのターゲティングされた特異的なABCD1遺伝子の送達は、副腎白質ジストロフィーおよび/または副腎脊髄ニューロパチーの症状に取り組むことが期待される。このことは、ABCD1をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与することにより達成することができる。本明細書において記載されるのは、例示的なAAV-hABCD1ベクターであり、これは、時に、本明細書においてAAV-ABCD1として言及される。これらの用語の使用は、交換可能である。加えて、本明細書において記載されるような構成成分を利用する代替的な態様が企図される。
【0113】
本発明のある態様において、対象DNAコンストラクトを含む組成物、またはこれを含む組成物は、それを必要とする対象における、副腎白質ジストロフィーおよび/または副腎脊髄ニューロパチーならびにそれらに関連する症状の処置および/または予防のために用いられ、ここにおいて、症状は、脳、脊髄および副腎皮質の血漿および組織における高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)、および罹患した後根神経節ニューロンに起因する末梢性ニューロパチーを含む。
【0114】
本発明はまた、ヒトABCD1タンパク質(AAV-ABCD1コンストラクト)をコードする核酸配列を含む、かかる改善されたAAVコンストラクトを作製する方法を提供し、このコンストラクトは、以下の利点:改善された安全性、改善されたパッケージング能力、増強されたABCD1発現レベル、改善された安定性、または、低下した非自己抗原を発現する能力のうちの1つ以上を有していてもよく、これは、それを必要とする対象において、副腎白質ジストロフィー(ALD)および/または副腎脊髄ニューロパチー(AMN)の処置および/または予防のために使用することができる。
【0115】
本発明はまた、例えば、髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与により、ヒトABCD1タンパク質(AAV-ABCD1コンストラクト)をコードする核酸配列を含む、かかる改善されたAAVコンストラクトを送達する方法を提供し、このコンストラクトは、以下の利点のうちの1つ以上を有していてもよい:それを必要とする対象における、副腎白質ジストロフィーおよび/または副腎脊髄ニューロパチーの処置および/または予防のための、改善された安全性、改善されたパッケージング能力、増強されたABCD1発現レベル、改善された安定性、または低下した非自己抗原を発現する能力。
【0116】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるように、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を欠失しているであろう。
【0117】
他の態様において、本明細書において記載されるように、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、Xタンパク質の発現を排除するか、または不活化された、または非機能的なXタンパク質、例えば切断型Xタンパク質の発現をもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含むであろう。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるように、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を欠失しているであろう。
【0119】
他の態様において、本明細書において記載されるように、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、Xタンパク質の発現を排除するか、または不活化された、または非機能的なXタンパク質、例えば切断型Xタンパク質の発現をもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含むであろう。
【0120】
以下を提供することは、本発明の特定の目的である:rAAVウイルスベクターを、rAAVウイルスベクターゲノムをコードするポリヌクレオチドと共に包含すると理解される、新規の組み換えAAV DNAコンストラクトであって、治療的に十分な量のALDタンパク質をin vivoで発現し、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)などの潜在的に発癌性の導入遺伝子発現エンハンサーを欠失するか、またはXタンパク質発現を低下させるかもしくはこれを除去する、またはXタンパク質のバリアントであって不活性(非発癌性)であるものの発現をもたらすように修飾されたWPREを含む、前記組み換えAAV DNAコンストラクト。
【0121】
以下を提供することは、本発明の特定の目的である:
rAAVビリオンからのウイルスキャプシド中にパッケージングされていてもよい組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムを含む、単離されたポリヌクレオチドであって、ここで、前記rAAVベクターゲノムは、以下を含むか、またはこれらからなる:
(a)5’AAV逆位末端反復配列(ITR);
(b)発現カセット、ここで、発現カセットは、少なくとも以下を含む:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)ポリATP結合カセット、サブファミリーD、メンバー1(ABCD1)ポリペプチドをコードするヌクレオチド、
(iii)1つ以上のターミネーター、および
(iv)前記ABCD1をコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)3’ITR。
rAAVベクターゲノムは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含まなくともよく、あるいは、Xタンパク質が発現されないか、またはこれが不活性な形態において発現されることをもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたWPRE(WPREx-inact)を含んでもよい。
【0122】
いくつかの場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドにおいて、5’および3’ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.10(本明細書においてまたAAVrh.10としても言及される)血清型のうちのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせの5’および3’ITRから誘導されてもよい。
【0123】
いくつかの場合において、5’および3’ITRは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10の5’および3’ITRから誘導されてもよい。
【0124】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチドは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含まない。
【0125】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチドは、Xタンパク質が発現されないか、またはこれが不活性な形態において発現されることをもたらす、少なくとも1つの変異を含む、修飾されたWPRE(WPREx-inact)を含む。
【0126】
いくつかの場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドにおいて、(i)5’ITRは、AAV2の5’ITRから誘導される;および/または(ii)3’ITRは、AAV2の3’ITRから誘導される。例示的なAAV2の5’ITRおよび3’ITR配列として、これらに限定されないが、それぞれ、配列番号601および602の参照5’ITRおよび3’ITR配列が挙げられ、これらは、例示的なAAV2において、アクセッション番号:NC_001401.2により提供されるゲノム参照配列を完成させる。いくつかの場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドにおいて、(i)5’ITRは、配列番号301、401、601、611、10001、10101もしくは10201の核酸配列を含んでもよく;および/または(ii)3’ITRは、配列番号302、402、602、612、10018、10118もしくは10218の核酸配列を含む。
【0127】
いくつかの場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドにおいて、(i)5’ITRは、AAV2の5’ITRの切断型形態であってよく;および/または(ii)3’ITRは、AAV2の3’ITRの切断型形態であってよい。例えば、(i)5’ITRの切断型形態は、配列番号2、10501、11001、11101、11201、11301、11501もしくは11701の核酸配列を含んでもよく;および/または(ii)3’ITRの切断型形態は、配列番号28、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718の核酸配列を含んでもよい。
【0128】
いくつかの場合において、ベクターゲノムを含むrAAVベクターの標的細胞は、ニューロンまたはグリア細胞であってよい。
【0129】
いくつかの場合において、ベクターゲノム中に含まれるプロモーターは、以下から選択されてもよい:サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルスからのH5、P7.5およびPI 1プロモーター、伸長因子1-アルファ(EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、ヒートショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、ヒートショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、ヒートショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA26遺伝子座、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、β-グルクロニダーゼ(GUSB)プロモーター、JeTプロモーター、β-アクチンプロモーター、任意に、ニワトリβ-アクチンプロモーター;組織特異的プロモーター、B29プロモーター、runt転写因子(CBFa2)プロモーター、CD14プロモーター、CD43プロモーター、CD45プロモーター、CD68プロモーター、CYP450 3A4プロモーター、デスミンプロモーター、エラスターゼ1プロモーター、エンドグリンプロモーター、線維芽細胞特異的タンパク質1プロモーター(FSP1)プロモーター、フィブロネクチンプロモーター、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1)プロモーター、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、インスリンプロモーター、インテグリンアルファ2b(ITGA2B)プロモーター、細胞間接着分子2(ICAM-2)プロモーター、インターフェロンベータ(IFN-β)プロモーター、ケラチン5プロモーター(ケラチノサイト発現)、ミオグロビン(MB)プロモーター、筋分化1(MYOD1)プロモーター、ネフリンプロモーター、骨ガンマカルボキシグルタミン酸タンパク質2(OG-2)プロモーター、3-オキソ酸CoAトランスフェラーゼ2B(Oxct2B)プロモーター、サーファクタントタンパク質B(SP-B)プロモーター、シナプシンプロモーター、ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(WASP)プロモーター、またはMNDプロモーター。EF1プロモーターの例示的な配列は、例えば、アクセッション番号:J04617により提供され得る。UBCプロモーターの例示的な配列は、例えば、アクセッション番号:NG_027722.2により提供され得る。サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチンプロモーターの例示的な配列は、例えば、アクセッション番号:NC_006273/X00182により提供され得る。JeTプロモーターの例示的な配列は、例えば、Tornoee J, Kusk P, Johansen TE, Jensen PR.「Generation of a synthetic mammalian promoter library by modification of 配列spacing transcription factor binding sites」、Gene. 2002 Sep 4;297(1-2):21-32(doi: 10.1016/s0378-1119(02)00878-8; PMID: 12384282)により提供され得る。GUSBプロモーターは、例えば、アクセッション番号:M65002により提供され得る。
【0130】
いくつかの場合において、ウイルスゲノム中に含まれるプロモーターは、ニワトリβ-アクチンプロモーター(本明細書においてまたCBAプロモーターとしても言及される)を含んでもよく、任意にここで、ニワトリβ-アクチンプロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0131】
いくつかの場合において、ウイルスゲノム中に含まれるプロモーターは、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトタンパク質エンハンサー、TTRミニマルプロモーター/エンハンサー、LSPエンハンサー、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34エンハンサー、またはApoEエンハンサーから選択されるエンハンサーに作動可能に連結されていてもよい。
【0132】
いくつかの場合において、ウイルスゲノム中に含まれるプロモーターは、エンハンサーに作動可能に連結されていてもよく、任意にここで、エンハンサーは、CMVエンハンサーまたは骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーである。
【0133】
いくつかの場合において、ウイルスゲノム中に含まれるプロモーターは、CMVエンハンサーに作動可能に連結されており、任意にここで、CMVエンハンサーは、配列番号7、10005、10105、10205、10505、11005、11105、11205、11305、11505もしくは11705の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0134】
いくつかの場合において、ウイルスゲノム中に含まれるプロモーターは、CMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、β-アクチンエクソン、キメラ性イントロン、ウサギベータ-グロビンエクソンを、任意に5’末端から3’末端への方向において含む。
【0135】
ある場合において、(i)CMVエンハンサーは、配列番号7、10005、10105、10205、10505、11005、11105、11205、11305、11505もしくは11705の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい;(ii)ニワトリβ-アクチンプロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい;(iii)β-アクチンエクソンは、配列番号11、10008、10108、10208、10508、11008、11108、11208、11308、11508もしくは11708の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい;(iv)キメラ性イントロンは、配列番号12、10009、10109、10209、10509、11009、11109、11209、11309、11509もしくは11709の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい;および/または、ウサギベータ-グロビンエクソンは、配列番号10085、10185、10285、10585、11085、11185、11285、11385、11585もしくは11785の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい。
【0136】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノムによりコードされるABCD1ポリペプチドは、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、5010、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512もしくは11712の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0137】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるABCD1コード配列は、配列番号204の核酸配列と比較して減少した数の代替的オープンリーディングフレームを含んでもよく、または、任意の代替的オープンリーディングフレームを含まない。
【0138】
いくつかの場合において、ABCD1コード配列は、主に(50、60、70、80、90もしくは95%を超える)または全体が、ヒト優先コドンを含んでもよい。
【0139】
いくつかの場合において、ABCD1をコードするポリヌクレオチドは、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、5010、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512もしくは11712の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0140】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノムは、ABCD1をコードするポリヌクレオチドのすぐ上流にKozak配列をさらに含み、および任意にKozak配列は、配列番号10511、11211もしくは11311の核酸配列または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化7】
へのアプローチを表す任意の配列を含んでもよい。
【0141】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノムは、UAG、UAAおよび/またはUGAから個々に選択される1つ以上のターミネーターを含む。ある場合において、rAAVベクターゲノムは、配列番号10071、10171、10271、10571、11071、11171、11271、11371、11571もしくは11771の核酸配列を含むターミネーターを含んでもよい。ある場合において、rAAVベクターゲノムは、配列番号10572、11272もしくは11372の核酸配列を含む別のターミネーターをさらに含んでもよい。
【0142】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるポリAシグナルは、bGH、hGH、SV40、RGB、mRGB、または合成ポリAシグナルからなる少なくとも1つのポリAシグナルを含んでもよい。いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるポリAシグナルは、下流でABCD1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される2つ以上のポリAシグナルを含んでもよい。
【0143】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるポリAシグナルは、SV40ポリAシグナルを含んでもよく、および任意にSV40ポリAシグナルは、配列番号27、10014、10114、10214、10514、11014、11214もしくは11714の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい。
【0144】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるポリAシグナルは、bGHポリAシグナルを含んでもよく、および任意にbGHポリAシグナルは、配列番号10016、10116、10216、11016、11116、11216、11316、11516もしくは101716の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい。
【0145】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノム中に含まれるポリAシグナルは、配列番号206、306、405、10035、10135、10235、10535、11035、11135、11235、11335、11535もしくは11735の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでもよい。
【0146】
いくつかの場合において、rAAVベクターゲノムにおいて、(a)5’ITRは、配列番号301、401、10001、10101、10201、2、10501、11001、11101、11201、11301、11501もしくは101701の核酸配列を含んでもよい;(b)、発現カセットにおいて、(i)プロモーターは、配列番号10、10007、10107、10207、10507、11007、11107、11207、11307、11507もしくは11707、303、403の核酸配列を含んでもよい、(ii)ABCD1をコードするポリヌクレオチドは、配列番号14、204、304、404、501、502、503、504、505、506、507、508、509、5010、10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、1512もしくは11712の核酸配列を含んでもよい、および(iii)ポリAシグナルは、配列番号27、10014、10114、10214、10514、11014、11214、11714、10016、10116、10216、11016、11116、11216、11316、11516、11716、306、405、10035、10135、10235、11035、11235もしくは11735の核酸配列を含んでもよい;ならびに(c)3’ITRは、配列番号302、402、602、612、28、10018、10118、10218、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718の核酸配列を含んでもよい。
【0147】
ある場合において、rAAVベクターゲノムは、配列番号300、400、10050、10150、10250、10550、11050、11150、11250、11350、11550もしくは11750の核酸配列、配列番号100、もしくは配列番号10060、10160、10260、10560、11060、11160、11260、11360、11560もしくは101760の核酸配列のヌクレオチド1~3713、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0148】
ある場合において、rAAVベクターゲノムは、Xタンパク質の発現を排除するか、または不活化された、または非機能的なXタンパク質(WPRE x-inact)の発現をもたらす少なくとも1つの変異を含む、修飾されたウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。例えば不活化された、または非機能的なXタンパク質は、切断型Xタンパク質である。特定の例において、修飾されたWPREは、配列番号305または10075の核酸配列を含む。
【0149】
ある場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドは、配列番号300、10050、または10060の核酸配列を含むか、またはこれからなるrAAVベクターゲノムを含んでもよい。
【0150】
ある場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドは、特定の増殖条件下において、宿主細胞中で、プラスミド、好ましくは高コピープラスミド(500~1000コピー/細胞)(例えば、pUC18、pUC19、pUC57またはpUC118)であってよい。プラスミドは、任意に、抗生物質耐性遺伝子をコードしてもよく、これは、任意に、カナマイシン耐性遺伝子であってもよい。特定の例において、プラスミドは、pUC57またはpUC118骨格を含んでもよい。ある場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドは、プラスミドpSBT101、pOB1005、pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015またはpOB1017、またはAAV-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)のゲノムをコードするプラスミドを含むか、これからなるか、またはこれから誘導される、プラスミドであってよい。
【0151】
ある場合において、本発明により提供される単離されたポリヌクレオチドは、配列番号100、10000、10100、10500、11000、11100、11200、11300、11500もしくは11700の核酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含むか、またはこれからなるプラスミドであってよい。
【0152】
(A)上記のポリヌクレオチドのうちのいずれかによる単離されたポリヌクレオチドを含む組成物を提供することは、本発明の特定の目的であり、これは、任意に、以下のうちの1つ以上をさらに含む:(B)トランスフェクション試薬;(C)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;(D)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;(E)E1領域、E2領域、E4領域およびVA RNA領域からなる群より選択されるアデノウィルスヘルパー遺伝子を含むポリヌクレオチド;および/または(F)薬学的に許容し得る担体または賦形剤。
【0153】
いくつかの場合において、トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミン(PEI)またはPEIpro(登録商標)などのPEI誘導体である。いくつかの他の場合において、トランスフェクション試薬は、リポフェクタミン(商標)、FuGENE(登録商標)、またはTransIT(登録商標)であってもよい。いくつかの場合において、(i)AAV cap遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10、好ましくは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のcap遺伝子から誘導されてもよい;および/または(ii)AAV rep遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10、好ましくは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のrep遺伝子から誘導されてもよい。
【0154】
いくつかの態様において、rep遺伝子とcap遺伝子とは、別個のプラスミドにより、パッケージング細胞に提供されてもよい。いくつかの態様において、パッケージング細胞は、cap遺伝子および/またはrep遺伝子を発現するように操作される。ある場合において、rep遺伝子は、p5および/またはp40プロモーターにより転写され(すなわち、これにより転写が制御され)てもよく、cap遺伝子は、p40プロモーターにより転写されてもよい。
【0155】
いくつかの態様において、rep遺伝子およびcap遺伝子は、Rep/Capプラスミドにより提供されてもよい。ある態様において、Rep/Capプラスミドは、p5プロモーター、p19プロモーター、およびp40プロモーターを含む。ある場合において、rep遺伝子は、p5および/またはp40プロモーターにより転写されてもよく、cap遺伝子は、p40プロモーターにより転写されてもよい。
【0156】
いくつかの態様において、Rep/Capプラスミドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10から全体的に誘導されてもよいが、一方、いくつかの態様においては、Rep/Capプラスミドは、AAV2からのエレメントおよびAAV9からのエレメントを含むAAV2/9などのハイブリッド血清型のものであってもよい。
【0157】
ある態様において、Rep/Capプラスミドが、AAV2/9血清型のものである場合、Rep遺伝子は、AAV2のものであってもよく、Cap遺伝子は、AAV9のものであってもよい。
【0158】
かかる態様において、Rep/Capプラスミドは、AAV2 p5プロモーター(これは、配列番号710の核酸配列を含んでもよい)、AAV2 p19プロモーター(これは、配列番号720の核酸配列を含んでもよい)、およびAAV p40プロモーター(これは、配列番号730の核酸配列を含んでもよい)を含んでもよい。
【0159】
いくつかの態様において、キャプシド(cap)遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10の、VP1、VP2、および/またはVP3キャプシドタンパク質をコードする、キャプシド遺伝子またはそのバリアントであってよい。
【0160】
いくつかの態様において、cap遺伝子生成物は、AAV p40プロモーターにより転写される。ある態様において、AAV p40プロモーターは、配列番号730の核酸配列を含んでもよい。
【0161】
ある態様において、キャプシド遺伝子は、AAV2、AAV9またはAAV10rh.10のキャプシド遺伝子であっても、またはこれから誘導されてもよい。
【0162】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAV9から誘導される場合、AAV9の3つのキャプシド遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3が生成され得る。ある場合において、AAV9のVP1、VP2およびVP3は、p40プロモーターにより転写され得る。ある場合において、AAV9のVP1は、配列番号731のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV9のVP2は、配列番号732のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV9のVP3は、配列番号733のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0163】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAV2のものであるか、またはこれから誘導される場合、AAV2の3つのキャプシド遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3が、生成され得る。ある場合において、AAV2のVP1は、配列番号831のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV2のVP2は、配列番号832のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV2のVP3は、配列番号833のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0164】
いくつかの態様において、キャプシド遺伝子(Cap遺伝子)が、AAVrh.10のものから誘導される場合、AAVrh.10の3つのキャプシド遺伝子生成物VP1、VP2およびVP3が、生成され得る。ある場合において、AAVrh.10のVP1は、配列番号931のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAVrh.10のVP2は、配列番号932のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAVrh.10のVP3は、配列番号933のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0165】
いくつかの場合において、例示的なAAVrh.10キャプシド配列は、例えば、GeneBank#AY243015(核酸配列)および/もしくはアクセッション番号AA088201.1(アミノ酸配列)により、ならびに/または、例えば、Gao G. et al., J Virol. 2004 Jun;78(12):6381-8により、提供され得る。
【0166】
いくつかの態様において、複製遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10の、Rep 78、Rep 68、Rep 52および/またはRep 40タンパク質をコードする複製遺伝子またはそのバリアントであってよい。いくつかの態様において、レプリコン遺伝子は、p5プロモーターおよび/またはp19プロモーターにより転写されてもよい。
【0167】
いくつかの態様において、複製遺伝子は、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10の複製遺伝子またはそのバリアントであってよい。
【0168】
ある態様において、2つの複製遺伝子生成物、REP78およびREP68は、p5プロモーターにより転写されてもよい。ある態様において、2つの複製遺伝子生成物、REP52およびREP40は、p19プロモーターにより転写されてもよい。
【0169】
いくつかの態様において、複製遺伝子(rep遺伝子)が、AAV2のものであるか、またはこれから誘導される場合、AAV2の複製遺伝子生成物Rep78、Rep68、Rep52および/またはRep40が生成され得る。ある場合において、AAV2のRep78および/またはRep68は、AAV2 p5プロモーターにより転写されてもよく、Rep52および/またはRep40は、AAV2 p19プロモーターにより転写されてもよい。
【0170】
ある態様において、AAV2 p5プロモーターは、配列番号710の核酸配列を含んでもよく、および/またはAAV2 p19プロモーターは、配列番号720の核酸配列を含んでもよい。
【0171】
ある態様において、AAV2の遺伝子生成物Rep78は、配列番号711のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV2の遺伝子生成物Rep68は、配列番号712のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV2の遺伝子生成物Rep52は、配列番号721のアミノ酸配列を含んでもよい。ある場合において、AAV2の遺伝子生成物Rep40は、配列番号722のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0172】
特定の態様において、Rep/Capプラスミドが、AAV2/9プラスミド、例えば本明細書において「pAAV2/9」として言及されるプラスミドである場合、プラスミドは、以下を含んでもよい:AAV2 p5プロモーター(配列番号710)(これからAAV2 REP78(配列番号711)およびAAV2 REP68(配列番号712)が生成され得る);AAV2 p19プロモーター(配列番号720)(これからAAV2 REP52(配列番号721)およびAAV2 REP40(配列番号722)が生成され得る);ならびにAAV p40プロモーター(配列番号730)(これからAAV9 VP1(配列番号731)、AAV9 VP2(配列番号732)およびAAV9 VP3(配列番号733)が生成され得る)。いくつかの特定の場合において、かかるpAAV2/9プラスミドの完全なコンストラクト配列は、配列番号700の核酸配列を有していてもよい。
【0173】
ある場合において、pAAV2/9 Rep/Capプラスミドにおいて、REP40およびREP68の遺伝子は、CAP VP1配列中に存在する第2のエクソンを共有してもよい。ある場合において、REP40およびREP68小さな第2のエクソンによりコードされる最後の数個のアミノ酸(例えば、3個のアミノ酸)のバリエーションが存在してもよい。例えばREP40およびREP68が、それぞれ配列番号722および712のアミノ酸配列を含む場合、REP40およびREP68の生成物はいずれも、アミノ酸配列LARGQPで終了する。これは、いずれもアミノ酸配列LARGHSLで終了する天然のAAV2のREP40およびREP68配列とは異なる。
【0174】
いくつかの場合において、AAV cap遺伝子は、配列番号731、732および/または733のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよい。
【0175】
いくつかの場合において、AAV cap遺伝子は、配列番号831、832および/または833のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよい。
【0176】
いくつかの場合において、AAV cap遺伝子は、配列番号931、932および/または933のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよい。
【0177】
いくつかの場合において、AAV rep遺伝子は、配列番号711、712、721および/または722のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよい。
【0178】
いくつかの態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子、1つ以上の単純ヘルペスウイルスヘルパー遺伝子、1つ以上のパピローマウイルスヘルパー遺伝子、および/または1つ以上のワクシニアウイルスヘルパー遺伝子などの1つ以上のヘルパー遺伝子を含むポリヌクレオチドが、組成物中に含まれていてもよく、これは、本発明によるrAAVウイルスベクターを生成するために用いることができる。
【0179】
いくつかの態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が含まれる場合、アデノウィルスヘルパー遺伝子は、アデノウィルス5(Ad5)および/またはアデノウィルス2(Ad2)から誘導されてもよい。いくつかの場合において、アデノウィルスヘルパー遺伝子は、野生型(WT)Ad5から誘導されてもよく、ある場合においては、WT Ad5は、配列番号2000の核酸配列を含むゲノムを含んでもよい。いくつかの場合において、アデノウィルスヘルパー遺伝子は、野生型(WT)Ad2から誘導されてもよく、ある場合においては、WT Ad2は、配列番号3000の核酸配列を含むゲノムを含んでもよい。
【0180】
いくつかの態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が含まれる場合、アデノウィルスヘルパー遺伝子は、E1領域、E2領域、E4領域および/またはVA RNA領域を含んでもよい。いくつかの態様において、アデノウィルスヘルパー遺伝子は、VA RNA領域、E2領域およびE4領域を含んでもよい。
【0181】
いくつかの態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子が、AAVヘルパーウイルスにより提供されてもよく、これは、AAVウイルスヘルパープラスミド(または本明細書においては単純に「ウイルスヘルパープラスミド」として言及される)により提供されてもよい。
【0182】
いくつかの態様において、1つ以上のAd5ヘルパー遺伝子が、Ad5ヘルパーウイルスにより提供されてもよく、これは、Ad5ウイルスヘルパープラスミドにより提供されてもよい。かかるAd5ウイルスヘルパープラスミドの非限定的な例として、本明細書においてpALD-X80として言及されるプラスミドが挙げられる。
【0183】
いくつかの態様において、Ad5ウイルスヘルパープラスミドは、Ad5 VA RNA領域、Ad5 E2領域、および/またはAd5 E4領域を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad5 VA RNA領域は、配列番号2010の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad5 E2領域は、配列番号2020の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad5 E4領域は、配列番号2030の核酸配列を含んでもよい。例えば、例示的なプラスミドであるpALD-X80は、これらの配列を含む。
【0184】
いくつかの態様において、Ad5 VA RNA領域は、Ad5 VA-RNA領域I(VA RNA I)およびAd5 VA-RNA領域II(VA RNA II)を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad5 VA-RNA領域I(VA RNA I)は、配列番号2011の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad5 VA-RNA領域II(VA RNA II)は、配列番号2012の核酸配列を含んでもよい。
【0185】
いくつかの態様において、Ad5 E2領域は、Hexon(C末端フラグメント);23Kエンドプロテアーゼ;E2A/DBP;Hexonアセンブリー(100K);Hexonアセンブリー(33K);Hexonアセンブリー(22K);および/またはHexonに関連する前駆体をコードしていてもよい。いくつかの場合において、かかるHexon(C末端フラグメント)は、配列番号2021のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかる23Kエンドプロテアーゼは、配列番号2022のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE2A/DBPは、配列番号2023のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(100K)は、配列番号2024のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(33K)は、配列番号2025のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(22K)は、配列番号2026のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonに関連する前駆体は、配列番号2027のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0186】
いくつかの態様において、Ad5 E4領域は、Fiber;E4 ORF1;E4 ORF2;E4 ORF3;E4 ORF4;E4 ORF6;および/またはE4 ORF6/7をコードしていてもよい。いくつかの場合において、Fiberは、配列番号2031のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF1は、配列番号2032のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF2は、配列番号2033のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF3は、配列番号2034のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF4は、配列番号2035のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF6は、配列番号2036のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、E4 ORF6/7は、配列番号2037のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0187】
いくつかの特定の態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、pALD-X80プラスミドまたはAd5ウイルスヘルパープラスミドにより提供されてもよい。
【0188】
いくつかの特定の態様において、Ad5ウイルスヘルパープラスミドは、以下を含んでもよい:VA-RNA領域(VA RNA I)(配列番号2011)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)(配列番号2012)を含むAd5領域VA-RNA(配列番号2010);Hexon(C末端フラグメント)(配列番号2021)、23Kエンドプロテアーゼ(配列番号2022)、E2A/DBP(配列番号2023)、Hexonアセンブリー(100K)(配列番号2024)、Hexonアセンブリー(33K)(配列番号2025)、Hexonアセンブリー(22K)(配列番号2026)、およびHexonに関連する前駆体(配列番号2027)をコードするAd5領域E2(配列番号2020);ならびにFiber(配列番号2031)、E4 ORF1(配列番号2032)、E4 ORF2(配列番号2033)、E4 ORF3(配列番号2034)、E4 ORF4(配列番号2035)、E4 ORF6(配列番号2036)、および/またはE4 ORF6/7(配列番号2037)をコードするAd5領域E4(配列番号2030)。
【0189】
pALD-X80は、以下を含む:VA-RNA領域(VA RNA I)(配列番号2011)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)(配列番号2012)を含むAd5領域VA-RNA(配列番号2010);Hexon(C末端フラグメント)(配列番号2021)、23Kエンドプロテアーゼ(配列番号2022)、E2A/DBP(配列番号2023)、Hexonアセンブリー(100K)(配列番号2024)、Hexonアセンブリー(33K)(配列番号2025)、Hexonアセンブリー(22K)(配列番号2026)、およびHexonに関連する前駆体(配列番号2027)をコードするAd5領域E2(配列番号2020);ならびにFiber(配列番号2031)、E4 ORF1(配列番号2032)、E4 ORF2(配列番号2033)、E4 ORF3(配列番号2034)、E4 ORF4(配列番号2035)、E4 ORF6(配列番号2036)、および/またはE4 ORF6/7(配列番号2037)をコードするAd5領域E4(配列番号2030)。
【0190】
いくつかの態様において、1つ以上のAd2ヘルパー遺伝子は、Ad2ヘルパーウイルスにより提供されてもよく、これは、Ad2ウイルスヘルパープラスミドにより転写されてもよい。かかるAd2ウイルスヘルパープラスミドの非限定的な例として、本明細書においてpHELP-KanV4として言及されるプラスミドを挙げることができる。
【0191】
いくつかの態様において、Ad2ウイルスヘルパープラスミドは、Ad2VA RNA領域、Ad2 E2領域および/またはAd2 E4領域を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad2 VA RNA領域は、配列番号3010の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad2 E2領域は、配列番号3020の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad2 E4領域は、配列番号3030の核酸配列を含んでもよい。例えば、例示的なプラスミドであるpHELP-KanV4は、これらの配列を含む。
【0192】
いくつかの態様において、Ad2 VA RNA領域は、Ad2 VA-RNA領域I(VA RNA I)およびAd2 VA-RNA領域II(VA RNA II)を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad2 VA-RNA領域I(VA RNA I)は、配列番号3011の核酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、Ad2 VA-RNA領域II(VA RNA II)は、配列番号3012の核酸配列を含んでもよい。
【0193】
いくつかの態様において、Ad2 E2領域は、23Kエンドプロテアーゼ(C末端フラグメント);E2A/DBP;Hexonアセンブリー(100K);Hexonアセンブリー(33K);Hexonアセンブリー(22K);および/またはHexonに関連する前駆体をコードしていてもよい。いくつかの場合において、かかる23Kエンドプロテアーゼ(C末端フラグメント)は、配列番号3022のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE2A/DBPは、配列番号3023のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(100K)は、配列番号3024のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(33K)は、配列番号3025のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonアセンブリー(22K)は、配列番号3026のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるHexonに関連する前駆体は、配列番号3027のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0194】
いくつかの態様において、Ad2 E4領域は、E4 ORF1;E4 ORF2;E4 ORF3;E4 ORF4;E4 ORF6;および/またはE4 ORF6/7をコードしていてもよい。いくつかの場合において、いくつかの場合において、かかるE4 ORF1は、配列番号3032のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE4 ORF2は、配列番号3033のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE4 ORF3は、配列番号3034のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE4 ORF4は、配列番号3035のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE4 ORF6は、配列番号3036のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、かかるE4 ORF6/7は、配列番号3037のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0195】
いくつかの特定の態様において、1つ以上のアデノウィルスヘルパー遺伝子は、pHELP_KanV4プラスミド、およびAd2ウイルスヘルパープラスミドにより転写されてもよい。
【0196】
いくつかの特定の態様において、Ad2ウイルスヘルパープラスミドは、以下を含んでもよい:VA-RNA領域(VA RNA I)(配列番号3011)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)(配列番号3012)を含むAd2領域VA-RNA(配列番号3010);23Kエンドプロテアーゼ(C末端フラグメント)(配列番号3022)、E2A/DBP(配列番号3023)、Hexonアセンブリー(100K)(配列番号3024)、Hexonアセンブリー(33K)(配列番号3025)、Hexonアセンブリー(22K)(配列番号3026)、およびHexonに関連する前駆体(配列番号3027)をコードするAd2領域E2(配列番号3020);ならびにE4 ORF1(配列番号3032)、E4 ORF2(配列番号3033)、E4 ORF3(配列番号3034)、E4 ORF4(配列番号3035)、E4 ORF6(配列番号3036)、および/またはE4 ORF6/7(配列番号3037)をコードするAd2領域E4(配列番号3030)。
【0197】
pHELP_KanV4は、以下を含む:VA-RNA領域(VA RNA I)(配列番号3011)および/またはVA-RNA領域(VA RNA II)(配列番号3012)を含むAd2領域VA-RNA(配列番号3010);23Kエンドプロテアーゼ(C末端フラグメント)(配列番号3022)、E2A/DBP(配列番号3023)、Hexonアセンブリー(100K)(配列番号3024)、Hexonアセンブリー(33K)(配列番号3025)、Hexonアセンブリー(22K)(配列番号3026)、およびHexonに関連する前駆体(配列番号3027)をコードするAd2領域E2(配列番号3020);ならびにE4 ORF1(配列番号3032)、E4 ORF2(配列番号3033)、E4 ORF3(配列番号3034)、E4 ORF4(配列番号3035)、E4 ORF6(配列番号3036)、および/またはE4 ORF6/7(配列番号3037)をコードするAd2領域E4(配列番号3030)。
【0198】
さらなる態様において、ヘルパーウイルス遺伝子のうちのいずれか、例えばアデノウィルスヘルパー遺伝子のうちのいずれかは、かかる遺伝子のうちのいずれかを発現するように操作されたパッケージング細胞により提供されてもよい。
【0199】
(I)AAVキャプシド;および(II)上記のrAAVベクターゲノムのうちのいずれかによるrAAVベクターゲノムを含むか、またはこれらからなる、組み換えAAV(rAAV)ベクターを提供することは、本発明の特定の目的である。
【0200】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシド、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシド、またはそのバリアントであってよい。
【0201】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号731のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0202】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0203】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号733のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0204】
ある場合において、rAAVベクター(すなわち、rAAVウイルス粒子)は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質、AAV9 VP2キャプシドタンパク質、およびAAV9 VP3キャプシドタンパク質を含んでもよい。いくつかの特定の場合において、rAAVベクターは、以下を含んでもよい:(a)配列番号731のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むAAV9 VP1キャプシドタンパク質;(b)配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むAAV9 VP2キャプシドタンパク質;および(c)配列番号732のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むAAV9 VP3キャプシドタンパク質。
【0205】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号831のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0206】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0207】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号833のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0208】
ある場合において、rAAVベクター(すなわち、rAAVウイルス粒子)は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質、AAV2 VP2キャプシドタンパク質、およびAAV2 VP3キャプシドタンパク質を含んでもよい。いくつかの特定の場合において、rAAVベクターは、以下を含んでもよい:(a)配列番号831のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAV2 VP1キャプシドタンパク質;(b)配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAV2 VP2キャプシドタンパク質;および(c)配列番号832のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAV2 VP3キャプシドタンパク質。
【0209】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号931のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0210】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0211】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、配列番号933のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、またはこれからなってもよい。
【0212】
ある場合において、rAAVベクター(すなわち、rAAVウイルス粒子)は、AAVrh.10 VP1キャプシドタンパク質、AAVrh10 VP2キャプシドタンパク質、およびAAVrh.10 VP3キャプシドタンパク質を含んでもよい。いくつかの特定の場合において、rAAVベクターは、以下を含んでもよい:(a)配列番号931のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAVrh.10 VP1キャプシドタンパク質;(b)配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAVrh.10 VP2キャプシドタンパク質;および(c)配列番号932のアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、AAVrh.10 VP3キャプシドタンパク質。
【0213】
(A)本明細書において記載されるrAAVベクターのうちのいずれかの予防または治療有効量;および(B)薬学的に許容し得る担体を含む、in vivoでの投与のために好適な組成物を提供することもまた、本発明の特定の目的である。
【0214】
いくつかの場合において、組成物は、約1×1013ゲノムコピー(GC)~約1×1015GCのrAAVベクターの用量を含んでもよい。
【0215】
各々の組成物が上記の組成物による、いくつかの組成物を提供することもまた、本発明の特定の目的であり、これは、凝集体において、合計約1×1013GC~約1×1015GCのrAAVベクターの用量を含んでもよい。
【0216】
いくつかの場合において、上記のような組成物(単数)または組成物(複数)のうちのいずれかにおいて、rAAVベクターの用量は、約10mL~約150mLの容積中に含まれていてもよい。
【0217】
いくつかの場合において、上記のような組成物(単数)または組成物(複数)のうちのいずれかにおいて、rAAVベクターの用量は、約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約110mL、約120mL、約130mL、約140mL、または約150mLの容積中に含まれていてもよい。
【0218】
いくつかの場合において、上記のような組成物(単数)もしくは組成物(複数)のうちのいずれかは、髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与のために好適であってよい。
【0219】
いくつかの場合において、上記のような組成物(単数)もしくは組成物(複数)のうちのいずれかは、髄腔内投与のために好適であってよい。
【0220】
いくつかの場合において、上記のような組成物(単数)もしくは組成物(複数)のうちのいずれかは、ポンプによる髄腔内投与のために好適であってよい。それを必要とする対象において、ALDもしくはAMNを処置および/または予防する、ならびに/またはALDおよび/もしくはAMNに関連する症状を寛解させる方法を提供することは、本発明の別の特定の目的であり、これは、それを必要とする対象に、上記のような任意のポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つ、上記のような任意のrAAVベクターのうちの少なくとも1つ、および/または上記のような組成物のうちのいずれかのうちの少なくとも1つ以上の、予防または治療有効量を投与することを含む。
【0221】
いくつかの場合において、対象は、ヒトである。
【0222】
いくつかの場合において、方法は、対象において、脳、脊髄および副腎皮質の血漿および組織における高レベルの極長鎖脂肪酸(VLCFA)の蓄積、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)、または罹患した後根神経節ニューロンに起因する末梢性ニューロパチーなどの1つ以上の症状を緩和するか、軽減するか、またはこれを安定化させる。
【0223】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)は、髄腔内、脳室内(ICV)、腰部髄腔内(IT-L)、血管内、筋肉内、または大槽内投与により送達される。
【0224】
いくつかの場合において、送達は、髄腔内投与によるものである。
【0225】
いくつかの場合において、髄腔内投与は、ポンプにより媒介される。
【0226】
いくつかの場合において、rAAVベクターまたはrAAVを含む組成物が投与される場合、合計の投与されたrAAVベクターの用量は、約1×1013GC~約1×1015GCであってもよい。
【0227】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)は、約10mL~約150mLの容積において投与されてもよい。
【0228】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)は、約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約110mL、約120mL、約130mL、約140mL、または約150mL、好ましくは約100mLの容積において投与されてもよい。
【0229】
いくつかの場合において、単離されたポリヌクレオチド、rAAVベクター、または組成物(単数)もしくは組成物(複数)は、単一用量または複数用量において投与されてもよい。
【0230】
いくつかの場合において、rAAVベクターは、AAV9、AAV2もしくはAAVrh.10キャプシドを含んでもよい。
【0231】
ウイルスベクターを作製する方法を提供することは、本発明の別の特定の目的である。
【0232】
いくつかの場合において、方法は、上記の単離されたポリヌクレオチドのうちのいずれかをパッケージング宿主細胞中に導入することを含んでもよい。任意に、ポリヌクレオチド中に含まれるベクターゲノムをパッケージングすることができるウイルスベクターは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシドを含むrAAVベクターであってよい。
【0233】
いくつかの場合において、方法は、上記のようなrAAVベクターゲノムのうちのいずれかを含むパッケージング細胞を培養することを含んでもよい。任意に、ウイルスベクターは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシドを含むrAAVベクターであってよい。さらに任意に、パッケージング細胞は、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0234】
上記のようなrAAVベクターゲノムのうちのいずれかを含む細胞を提供することは、本発明の別の特定の目的である。かかる細胞は、本明細書において記載されるrAAVベクターのうちのいずれかを生成するために有用であり得る。任意に、細胞は、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを含む。あるいは、細胞が、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを含まない場合、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを、本明細書において記載されるrAAVベクターのうちのいずれかの生成の間に、細胞に導入してもよい。
【0235】
短縮型A領域配列を含む、AAV 5’ITRバリアントおよび/またはAAV 3’ITRバリアントを提供することもまた、本発明の目的である。かかるAAV 5’ITRおよび/またはAAV 3’ITRバリアントが、AAVゲノム中で目的の遺伝子(GOI)を含む発現カセットに隣接する場合、かかるAAV 5’ITRおよび/またはAAV 3’ITRバリアントは、GOIの発現を増強するために有用であり得る。
【0236】
いくつかの場合において、AAV 5’ITRバリアントは、配列番号2、10501、11001、11101、11201、11301、11501もしくは11701の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0237】
いくつかの場合において、AAVの3’ITRバリアントは、配列番号28、10518、11018、11118、11218、11318、11518もしくは11718の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0238】
さらに、以下:
(a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
を含むかまたはこれらからなるrAAVベクターゲノム
を含む、単離されたポリヌクレオチド
を提供することは、本発明の目的である。
【0239】
いくつかの場合において、ポリヌクレオチドは、任意にcpUC57またはpUC118骨格を含む、プラスミドであってよい。
【0240】
さらに、以下を提供することは、本発明の目的である:
(A)rAAVベクターゲノムを含む単離されたポリヌクレオチド
を含む組成物であって、該rAAVベクターゲノムは、以下:
(A-a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(A-b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(A-c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
を含むかまたはこれらからなる、
前記組成物。
【0241】
いくつかの場合において、組成物は、以下のうちのいずれか1つ以上をさらに含んでもよい:
(B)トランスフェクション試薬;(C)AAVキャプシド(cap)遺伝子を含むポリヌクレオチド;(D)AAV複製(rep)遺伝子を含むポリヌクレオチド;(E)AAV cap遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む細胞;(F)AAV rep遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む細胞;および/または(G)薬学的に許容し得る担体または賦形剤。
【0242】
ある場合において、ポリヌクレオチド中に含まれるAAVベクターゲノムにおいて、(i)AAV cap遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のcap遺伝子から誘導されてもよく;および/または(ii)AAV rep遺伝子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のrep遺伝子から誘導されてもよい。
【0243】
以下を提供することもまた、本発明の目的である:
rAAVベクターゲノムであって、以下:
(a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
を含むかまたはこれらからなる前記rAAVベクターゲノム
を含む単離されたポリヌクレオチドのうちのいずれかを含む、細胞。
【0244】
いくつかの場合において、細胞は、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでもよい。
【0245】
以下を提供することもまた、本発明の目的である:
以下:
(I)AAVキャプシド;および
(II)以下を含むか、またはこれらからなるrAAVベクターゲノムによる、rAAVベクターゲノム:
(a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
を含むかまたはこれらからなる、rAAVベクター。
【0246】
いくつかの場合において、AAVキャプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシド、好ましくはAAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシド、またはそのバリアントである。
【0247】
以下を提供することもまた、本発明の目的である:
以下:
(I)AAVキャプシド;および
(II)以下を含むかまたはこれらからなるrAAVベクターゲノムによるrAAVベクターゲノム:
(II-a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(II-b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(II-c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
を含むかまたはこれらからなるrAAVベクターの予防または治療有効量を含む、in vivoでの投与のために好適な組成物(単数)または組成物(複数)。
【0248】
いくつかの場合において、組成物(単数)または組成物(複数)は、薬学的に許容し得る担体をさらに含んでもよい。
【0249】
以下を提供することもまた、本発明の目的である:
それを必要とする対象における遺伝子治療の方法であって、それを必要とする対象に、以下:
(A)以下を含むかまたはこれらからなる少なくとも1つのrAAVベクター:
(I)AAVキャプシド、および
(II)以下を含むか、またはこれらからなるrAAVベクターゲノムによるrAAVベクターゲノム:
(II-a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか、
(II-b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル、ならびに
(II-c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか;
あるいは
(B)かかるrAAVベクターを含む、組成物(単数)または組成物(複数)
の予防または治療有効量を投与することを含む。
【0250】
以下を提供することもまた、本発明の目的である:
ウイルスベクターを作製する方法であって、パッケージング細胞中に、rAAVベクターゲノムを含む単離されたポリヌクレオチドを導入することを含み、該rAAVベクターゲノムは、以下を含むか、またはこれらからなる:
(a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか。
【0251】
いくつかの場合において、ウイルスベクターは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシドを含む、rAAVベクターである。
【0252】
以下を提供することは、さらに本発明の目的である:
ウイルスベクターを作製する方法であって、rAAVベクターゲノムを含むパッケージング細胞を培養することを含み、該rAAVベクターゲノムは、以下を含むか、またはこれらからなる:
(a)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの5’ITRバリアントのいずれか;
(b)少なくとも以下を含む発現カセット:
(i)(ii)に作動可能に連結する標的細胞において活性なプロモーター、
(ii)目的の遺伝子(GOI)をコードするポリヌクレオチド、および
(iii)前記GOIをコードするポリヌクレオチドの下流の1つ以上のポリAシグナル;
ならびに
(c)上記のような短縮型A領域配列を含むAAVの3’ITRバリアントのいずれか。
【0253】
いくつかの場合において、ウイルスベクターは、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のキャプシドを含む、rAAVベクターである。
【0254】
ある場合において、パッケージング細胞は、AAV capおよび/またはAAV repをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0255】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、配列番号200において含まれるABCD1コード配列と比較してより少ない代替的オープンリーディングフレームを含むように修飾された、ABCD1コード配列を含むか、または、任意の代替的オープンリーディングフレームを含まないであろう。あるいは、または加えて、ABCD1コード配列は、好ましくは、ABCD1コード配列に関してサイレントである変異の導入により、内部のKozakまたはKozak様配列を取り除くように修飾されていてもよい。あるいは、または加えて、ABCD1コード配列は、好ましくはサイレント変異の導入により、以下のうちの1つ以上を取り除くように修飾されるであろう:(i)TATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iv)ARE配列エレメント、(v)INS配列エレメント、(vi)CRS配列エレメント、および/または(vii)潜在性のスプライシングのドナーおよびアクセプター部位。かかる修飾は、非自己抗原を発現する任意の潜在能力を回避し、および/またはABCD1の発現を改善することが期待される。
【0256】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、「CCACC」もしくは「GCCACC」などのKozak配列、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列
【化8】
へのアプローチを表す任意の配列を、ABCD1開始部位の上流に含むであろう。
【0257】
いくつかの態様において、ABCD1導入遺伝子カセットのサイズを減少させるために、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ABCD1遺伝子の下流に、単一のポリA部位のみ(例えば、SV40ポリA配列および/またはBGHポリA配列、または合成ポリAを含む他の好適なポリA配列)を含むであろう。
【0258】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ABCD1遺伝子の下流に、複数のポリA部位(例えば、SV40ポリA配列およびBGHポリA配列、または合成ポリAを含む他の好適なポリA配列)を含んでもよい。
【0259】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、短縮型または切断型AAV 3’ITRを含むであろう。
【0260】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、pUC57またはpUC118骨格上に含まれるであろう。
【0261】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、主に(50、60、70、80、90もしくは95%を超える)または全体がヒト優先コドンを含む、ヒトABCD1コード配列を含むであろう。
【0262】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、配列番号204、配列番号304、配列番号404、配列番号501~510、配列番号14、および配列番号10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512および11712のものから選択される、ヒトABCD1コード配列を含むであろう。
【0263】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、pSBT101を含んでも、またはこれから誘導されてもよい。
【0264】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1005、pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015またはpOB1017を含んでも、またはこれから誘導されてもよい。
【0265】
いくつかの好ましい態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、pSBT101、pOB1010、pOB1015またはpOB1017を含んでも、またはこれから誘導されてもよい。
【0266】
いくつかの好ましい態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1ベクターゲノムは、プラスミドpSBT101、pOB1010、pOB1015またはpOB1017においてコードされるベクターゲノムであってもよい。
【0267】
いくつかの好ましい態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1ベクターゲノムをコードするポリヌクレオチドは、pSBT101、pOB1010、pOB1015またはpOB1017を含んでも、またはこれから誘導されてもよい。
【0268】
いくつかの好ましい態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1ベクターゲノムは、pSBT101、pOB1010、pOB1015またはpOB1017から生成されてもよい。
【0269】
いくつかの好ましい態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1ベクターゲノムは、SBT101、OB1010、OB1015またはOB1017のベクターゲノムであってもよい。
【0270】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、AAV-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)のゲノムを含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号10050もしくは10060の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0271】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、AAV-CBA-ABCD1[WPREなし]のゲノムを含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、かかるベクターゲノムは、配列番号10250もしくは10260の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0272】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pSBT101を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号10150もしくは10160の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0273】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1005を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号10550もしくは10560の核酸配列、またはpOB1005(配列番号100)を含むヌクレオチド1~3713を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0274】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1010を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11050もしくは11060の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0275】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1011を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11150もしくは11160の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0276】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1012を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11250もしくは11260の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0277】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1013を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11350もしくは11360の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0278】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1015を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11550もしくは11560の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0279】
他の態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクト(AAVベクター、AAVベクターゲノム、またはベクターゲノムをコードするポリヌクレオチド)は、pOB1017を含んでも、またはこれから誘導されてもよく、例えば、AAV-ABCD1ベクターゲノムは、配列番号11750もしくは11760の核酸配列を含んでも、またはこれからなってもよい。
【0280】
いくつかの態様において、ABCD1導入遺伝子カセットのサイズを減少させるために、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ABCD1遺伝子の下流に、単一のポリA部位(例えば、SV40ポリA配列および/またはBGHポリA配列、または合成ポリAを含む他の好適なポリA配列)のみを含むであろう。
【0281】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、ABCD1遺伝子の下流に、複数のポリA部位(例えば、SV40ポリA配列およびBGHポリA配列、または合成ポリAを含む他の好適なポリA配列)を含んでもよい。
【0282】
いくつかの態様において、かかる改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、短縮型または切断型AAV 3’ITRを含むであろう。
【0283】
特定の態様において、改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、(i)任意のAAV血清型、例えば、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のITR配列からの、5’および3’AAV ITR配列を含んでもよく、このITR配列は、以下の配列に隣接していてもよい:(ii)ハイブリッドプロモーターなどの中枢神経系の細胞(ニューロンまたはグリア細胞など)において作動可能なプロモーター、これは、例えば、CMV最初期エンハンサー(本明細書においてまたCMVエンハンサーとしても言及される)を、ニワトリベータアクチンプロモーター、ベータアクチンエクソン、キメラ性イントロン、およびウサギベータ-グロビンエクソンの上流に含み、これは、(iii)の上流である;(iii)ヒトABCD1コード配列であって、このABCD1コード配列は、任意に、例えば、開始または停止コドンを取り除くように、ヒト優先コドンを含むように、および/または、その5’末端における「CCACC」などのKOZAK配列の付加により、修飾されていてもよく、配列番号204、配列番号304、配列番号404、配列番号501~510、配列番号14、および配列番号10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512および11712のものから選択されるヒトABCD1コード配列を含んでもよい;(iv)任意に、修飾されたWPRE配列であって、このWPREは、存在する場合には、Xタンパク質発現を除去するように修飾されているか、または、それがXタンパク質の不活性な形態をコードするように変異している;ならびに(v)ABCD1コード配列および存在する場合には修飾されたWPRE配列の下流の、少なくとも1つのポリA配列、例えばSV40ポリA配列および/またはBGHポリA配列、または合成ポリAを含む他の好適なポリA配列。
【0284】
特定の態様において、改善されたAAV-ABCD1コンストラクトは、pOB1005(配列番号100もしくは10500)またはpOB1005を含むヌクレオチド1~3713、AAV-CBA-hABCD1-WPRE Xinact(配列番号300もしくは10000)またはAAV-CBA-hABCD1(配列番号400もしくは10200)、pSBT101(配列番号10100)、pOB1010(配列番号11000)、pOB1011(配列番号11100)、pOB1012(配列番号11200)、pOB1013(配列番号11300)、pOB1015(配列番号11500)、またはpOB1017(配列番号11700)を含んでもよく、あるいは、前述のもののいずれかのバリアントであって、例えば、配列番号204、配列番号304、配列番号404、配列番号501~510、配列番号14、および配列番号10012、10112、10212、10512、11012、11112、11212、11312、11512および11712のものから選択されるヒトABCD1コード配列を含むように修飾されているものを含んでもよく、あるいは、ABCD1発現を調節するために用いられるプロモーターは、中枢神経系の細胞(ニューロンまたはグリア細胞など)において作動可能な別のプロモーター、例えば、上述のものから選択されるもので置換されていてもよく、あるいは、WPREは、除去されているか、またはXタンパク質発現を除去するように変異しているかまたは不活性な(例えば短縮型もしくは別段に修飾された不活性なXタンパク質)を発現するように修飾された、異なる変異したWPRE(配列番号305または10075における修飾されたWPREなど)が挿入されていてもよく、あるいは、ABCD1コード配列の前に、「CCACC」などのKOZAK配列、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列
【化9】
へのアプローチを表す任意の配列の挿入により修飾されているか、あるいは、前述のコンストラクトのうちのいずれかにおいて含まれるポリAシグナル配列の、別のポリA配列による置き換えにより、またはAAV2 ITR配列の、他のAAVなどから誘導されるITR配列による置き換えにより修飾されているか、あるいは、前述のいずれかの組み合わせである。
【0285】
一態様において、コンストラクト中のヒトABCD1をコードする核酸配列は、それに共有結合により連結したタグポリペプチドをコードする核酸を、さらに含んでもよい。タグポリペプチドは、限定することなく、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルスヘマグルチニンタグポリペプチド、flagタグポリペプチド、およびマルトース結合タンパク質タグポリペプチドを含む、公知の「エピトープタグ」から選択してもよい。
【0286】
別の側面において、ヒトABCD1をコードする核酸配列を含む発現カセットが提供される。一態様において、配列は、上記のとおり、コドン最適化されているか、別段に最適化された配列である。
【0287】
別の態様において、AAVベクターにおける使用のための発現カセットが提供される。その態様において、AAV発現カセットは、少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)配列を含む。別の態様において、発現カセットは、5’ITR配列および3’ITR配列を含む。一態様において、5’および3’ITRは、ヒトABCD1および任意に修飾されたWPREをコードする核酸配列に隣接し、これは、任意に宿主細胞においてヒトABCD1をコードする配列の発現を指揮するさらなる配列を伴う。したがって、本明細書において記載される場合、AAV発現カセットとは、その5’末端において5’AAV逆位末端反復配列配列(ITR)に、およびその3’末端において3’AAV ITRに隣接する、上記のような発現カセットを記載することを意図する。したがって、このrAAVゲノムは、発現カセットをAAVウイルス粒子中にパッケージングするために必要とされる最少配列、すなわち、AAV 5’および3’ITRを含む。AAV ITRは、本明細書において記載されるような任意のAAVのITR配列から得ることができる。これらのITRは、結果として生じる組み換えAAVにおいて使用されるキャプシドと同じAAV起源のものであっても、異なるAAV起源のものであってもよい(AAVシュードタイプを生成するために)。一態様において、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10からのITR配列、またはその欠失型、短縮型または切断型バージョンが、便宜上、および規制当局の承認を促進するために用いられる。しかし、他のAAVソースからのITRを選択してもよい。ITRのソースがAAV2からのものであり、AAVキャプシドが別のAAVソースからのものである場合、結果として生じるベクターは、シュードタイプ化されていると称される場合がある。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV 5’ITR、ヒトABCD1コード配列および好適な調節配列、およびAAV 3’ITRを含む。しかし、これらのエレメントの他の立体配置が好適な場合もある。各々のrAAVゲノムを、次いで、生成プラスミド中に導入することができる。例示的な短縮型5’ITR配列として、これらに限定されないが、配列番号10501、11001、11101、11201、11301、11501および11701の核酸配列が挙げられる。例示的な短縮型3’ITR配列として、これらに限定されないが、配列番号10518、11018、11118、11218、11318、11518および11718の核酸配列が挙げられる。
【0288】
一側面において、本明細書において記載される発現カセットのうちのいずれかを含むベクターが提供される。本明細書において記載される場合、かかるベクターは、多様な起源のプラスミドであってよく、本明細書においてさらに記載されるように、組み換え複製欠損ウイルスのためのある態様において有用である。
【0289】
別の態様において、ベクターは、本明細書において記載される発現カセットを含むウイルスベクターである。一態様において、本明細書において記載されるような発現カセットを、薬物送達のため、またはウイルスベクターの生成のために用いられるプラスミドの上に操作してもよい。好適なウイルスベクターは、好ましくは複製欠損であり、脳細胞を標的とするものから選択される。ウイルスベクターは、遺伝子治療のために好適な任意のウイルスを含んでもよく、これは、これらに限定されないが、アデノウィルス;ヘルペスウイルスウイルス;レンチウイルス;レトロウイルス;パブロウイルスなどを含む。しかし、本明細書において、アデノ随伴ウイルスとは、具体化されたウイルスベクターである。ウイルスベクター、または非ウイルスベクターは、遺伝子導入および遺伝子治療適用における使用のために、生理学的に許容し得る担体を用いて処方することができる。
【0290】
別の態様において、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターが提供される。rAAVは、AAVキャプシド、およびその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む。
【0291】
ベクターゲノムは、一態様において、(a)AAV 5’逆位末端反復配列(ITR)配列;(b)プロモーター;(c)ヒトABCD1をコードするコード配列;および(d)AAV 3’ITRを含む。
【0292】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルスファミリーのメンバーであり、4.7キロベース(kb)~5kbの一本鎖の直鎖DNAゲノムを有する、小さな無エンベロープの正二十面体ウイルスである。既知のAAV血清型として、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.10、およびその他がある。ITRおよび他のAAVの構成成分は、AAVから当業者に利用可能な技術を用いて、容易に単離または操作することができる。かかるAAVは、学術的、商業的、または公共のソースから、単離するか、操作するか、または得ることができる(例えば、American Type Culture Collection, Manassas, VA)。あるいは、AAV配列は、公開された配列、例えば文献において、または例えばGenBank、PubMedなどのデータベースにおいて利用可能であるものへの参照により、合成または他の好適な手段を通して操作してもよい。AAVウイルスは、慣用的な分子生物学の技術により操作して、細胞特異的な核酸配列の送達のために、免疫原性を最小化するために、安定性および粒子の寿命を調整するために、効率的な分解のために、核への正確な送達などのために、これらの粒子を最適化することができるようにしてもよい。
【0293】
AAVのフラグメントは、多様なベクター系および宿主細胞において容易に利用することができる。望ましいAAVフラグメントとしては、vp1、vp2、vp3および高頻度可変性領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52およびrep40を含むrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列がある。かかるフラグメントは、単独で用いても、他のAAV血清型の配列もしくはフラグメントと組み合わせて用いても、または他のAAVもしくは非AAVウイルスの配列からのエレメントと組み合わせて用いてもよい。本明細書において用いられる場合、人工AAV血清型として、限定することなく、天然には存在しないキャプシドタンパク質を有するAAVが挙げられる。かかる人工キャプシドは、任意の好適な技術により、本発明の新規のAAV配列(例えば、vp1キャプシドタンパク質のフラグメント)を、別のAAV血清型(既知または新規)、同じAAV血清型の非隣接部分から、非AAVウイルスのソースから、または非ウイルス性のソースから得ることができる異種配列と組み合わせて用いて、作製することができる。人工AAV血清型は、限定することなく、キメラAAVキャプシド、組み換えAAVキャプシド、または「ヒト化された」AAVキャプシドであってよい。一態様において、ベクターは、AAV9のcapおよび/またはrep配列を含む。米国特許第7,906,111を参照;これは、本明細書において参考として援用される。
【0294】
一態様において、AAVベクターは、AAV9キャプシドを含んでもよい。本明細書において用いられる場合、「AAV9キャプシド」は、約60のウイルスタンパク質(vp)の数号体であるDNAse耐性粒子により特徴づけられ、これは、典型的には、異なる長さのタンパク質をもたらす選択的スプライスバリアントとして発現される。また、Genbankアクセッション番号AAS99264.1を参照;これは、本明細書において参考として援用される。また、US7906111およびWO2005/033321を参照。本明細書において用いられる場合、「AAV9バリアント」とは、例えば、WO2016/049230、US8,927,514、US2015/0344911およびUS8,734,809において記載されるもの、または、それらと少なくとも約90%、95%、95%、98%または99%の同一性を共有する配列を含む。
【0295】
例示的なAAV9キャプシドは、配列番号731のアミノ酸配列(AAV9 VP1)、配列番号732(AAV9 VP2)、または配列番号733(AAV9 VP3)またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、AAVベクターは、AAV9 VP1キャプシド、AAV9 VP2キャプシド、およびAAV9 VP3キャプシドのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0296】
一態様において、AAVベクターは、AAV2キャプシドを含んでもよい。
【0297】
例示的なAAV2キャプシドは、配列番号831のアミノ酸配列(AAV2 VP1)、配列番号832(AAV2 VP2)、または配列番号833(AAV2 VP3)またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、AAVベクターは、AAV2 VP1キャプシド、AAV2 VP2キャプシド、およびAAV2 VP3キャプシドのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0298】
一態様において、AAVベクターは、AAVrh.10キャプシドを含んでもよい。
【0299】
例示的なAAVrh.10キャプシドは、配列番号931のアミノ酸配列(AAVrh.10 VP1)、配列番号932(AAVrh.10 VP2)、または配列番号933(AAVrh.10 VP3)またはそれに対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの場合において、AAVベクターは、AAVrh.10 VP1 キャプシド、AAVrh.10 VP2キャプシド、およびAAVrh.10 VP3キャプシドのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0300】
本明細書において用いられる場合、用語「クレード」とは、それがAAVのグループと関連する場合、AAV vp1アミノ酸配列のアラインメントに基づいて、(少なくとも1000回の複製の)少なくとも75%のブートストラップ値、および0.05以下のポアソン補正距離測定により、近隣結合(Neighbor-Joining)アルゴリズムを用いて決定された場合に、互いに系統学的に関連するAAVのグループを指す。近隣結合アルゴリズムは、文献において記載されている。例えば、M. Nei and S. Kumar, Molecular Evolution and Phylogenetics, Oxford University Press, New York (2000)を参照。このアルゴリズムを実行するために用いることができるコンピュータープログラムが利用可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、改変Nei-Gojobori法を実行する。これらの技術およびコンピュータープログラム、ならびにAAV vp1キャプシドタンパク質の配列を用いて、当業者は、選択されたAAVが、本明細書において同定されたクレードのうちの1つにおいて、別のクレードにおいて、含まれるか否か、またはこれらのクレードの外側にあるかを、容易に決定することができる。例えば、G Gao, et al, J Virol, 2004 Jun; 78(10): 6381-6388を参照;これは、クレードA、B、C、D、EおよびFを同定し、新規のAAVの核酸配列、GenBankアクセッション番号AY530553~AY530629を提供する。また、WO 2005/033321を参照。AAV9は、クレードF中にあることにより、さらに特徴づけられる。他のクレードFのAAVとして、AAVhu31およびAAVhu32が挙げられる。
【0301】
本明細書においてAAVに関して用いられる場合、バリアントという用語は、既知のAAV配列から誘導される任意のAAV配列を意味し、これは、アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%またはそれより大きな配列同一性を共有するものを含む。別の態様において、AAVキャプシドは、任意の記載されたまたは既知のAAVキャプシド配列からの約10%までのバリエーションを含んでもよいバリアントを含む。すなわち、AAVキャプシドは、本明細書において提供されるか、および/または当該分野において公知のAAVキャプシド上で、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性または約97%~約98%の同一性を共有する。一態様において、AAVキャプシドは、AAV9キャプシドと、少なくとも95%の同一性を共有する。AAVキャプシドのパーセント同一性を決定する場合、可変性タンパク質(例えば、vp1、vp2、またはvp3)のうちのいずれの上で比較を行ってもよい。一態様において、AAVキャプシドは、AAV9と、vp1、vp2またはvp3上で、少なくとも95%の同一性を共有する。
【0302】
本明細書において用いられる場合、「人工AAV」とは、限定することなく、天然には存在しないキャプシドタンパク質を有するAAVを意味する。かかる人工キャプシドは、任意の好適な技術により、選択されたAAV配列(例えば、vp1キャプシドタンパク質のフラグメント)を、異なる選択されたAAV、同じAAVの非隣接部分から、非AAVウイルスのソースから、または非ウイルス性のソースから得ることができる異種配列と組み合わせて用いて、作製することができる。人工AAVは、限定することなく、シュードタイプ化されたAAV、キメラAAVキャプシド、組み換えAAVキャプシド、または「ヒト化された」AAVキャプシドであってよい。1つのAAVのキャプシドが異種のキャプシドタンパク質で置き換えられているシュードタイプ化ベクターは、本発明において有用である。一態様において、AAV2/9およびAAV2/rh.10は、例示的なシュードタイプ化ベクターである。
【0303】
別の態様において、自己相補的AAVが用いられる。「自己相補的AAV」とは、組み換えAAV核酸配列により担持されるコード領域が、分子内の二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている発現カセットを有する、プラスミドまたはベクターを指す。感染すると、細胞により媒介される第2鎖の合成を待つよりも、scAAVの2つの相補的な半分が会合して、1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成し、これは、すぐに複製および転写される準備ができている。例えば、D M McCartyら、「Self-complementary recombinant adeno- associated virus (scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis」、Gene Therapy(2001年8月)、第8巻、第16号、1248~1254頁を参照。自己相補的AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号;同第7,125,717号;および同第7,456,683号において記載され、これらの各々は、その全体において、本明細書において参考として援用される。
【0304】
なお別の態様において、本明細書において記載されるもののいずれかを含む発現カセットは、組み換えAAVゲノムを作製するために使用される。
【0305】
一態様において、本明細書において記載される発現カセットは、ウイルスベクターを作製するために、および/または宿主細胞への送達のために有用な、その上に担持されたヒトABCD1配列を導入する、好適な遺伝子エレメント(ベクター)、例えば、ネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどへと操作される。選択されたベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコートペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を含む、任意の好適な方法により、送達することができる。かかるコンストラクトを作製するために用いられる方法は、核酸操作における技術を有する当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学、および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYを参照。
【0306】
発現カセットまたはrAAVゲノムまたは生成プラスミドを、ビリオン中にパッケージングするために、ITRは、発現カセットとして同じコンストラクト中でシスにおいて必要とされる、唯一のAAV構成成分である。一態様において、複製(rep)および/またはキャプシド(cap)のためのコード配列を、AAVゲノムから取り除き、AAVベクターを作製するために、パッケージング細胞株によりトランスにおいて供給する。
【0307】
対象への送達のために好適なAAVウイルスベクターを作製および単離するための方法は、当該分野において公知である。例えば、米国特許7790449;米国特許7282199;WO2003/042397;WO2005/033321、WO2006/110689;およびUS7588772B2を参照。1つの系においては、生産者細胞株に、ITRが隣接する導入遺伝子をコードするコンストラクトならびにrepおよびcapをコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトする。第2の系においては、repおよびcapを安定して供給するパッケージング細胞株に、ITRが隣接する導入遺伝子をコードするコンストラクトで一過性にトランスフェクトする。これらの系の各々において、ヘルパーアデノウィルスまたはヘルペスウイルスによる感染に応答して、AAVビリオンが生成され、これは、混入するウイルスからのrAAVの分離を要求する。
【0308】
本開示によるAAVウイルスベクターを作製するための1つの例示的な方法は、以下のステップを含んでもよい:(i)HEK293細胞などの細胞を、(1)目的のrAAVゲノムベクタープラスミド(例えばpSBT101、pOB1005、pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015もしくはpOB1017、またはAAV.ABCD1.WPRE-XinactのAAVゲノムをコードするプラスミド)、(2)AAV RepおよびCapタンパク質をコードするプラスミド(「Rep/Capプラスミド」)(例えばpAAV2/9)ならびに(3)1つ以上のウイルスヘルパー遺伝子をコードするプラスミド(「ウイルスヘルパープラスミド」)(例えばpALD-X80またはpHELP_KanV4)でトランスフェクトすること;(ii)上清または細胞ライセートに対してカラム精製またはCsCl勾配遠心分離などの精製を行うこと;ならびに(iii)遠心分離生成物を脱塩および濃縮すること。
【0309】
あるいは、AAVを回収するためにヘルパーウイルスによる感染を必要としない系が、開発されてきた。必要とされるヘルパー機能(すなわち、アデノウィルスEl、E2a、VAおよびE4、またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52およびUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)はまた、系によりトランスにおいて供給される。これらのより新しい系においては、ヘルパー機能は、要求されるヘルパー機能をコードするコンストラクトによる細胞の一過性トランスフェクションにより供給することができ、または、細胞を、その発現を転写または転写後のレベルにおいて制御することができるヘルパー機能をコードする遺伝子を安定して含むように、操作してもよい。
【0310】
さらに別の系においては、バキュロウイルスベースのベクターによる感染により、ITRおよびrep/cap遺伝子が隣接した発現カセットを、昆虫細胞中に導入する。これらの生産系についての総説については、一般に、例えば、Zhang et al, 2009,「Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production」、Human Gene Therapy 20:922-929を参照;その内容は、その全体において、本明細書において参考として援用される。これらのおよび他のAAV生産系を作製して用いる方法はまた、以下の米国特許において記載され、これらの各々の内容は、その全体において、本明細書において参考として援用される:5,139,941;5,741,683;6,057,152;6,204,059;6,268,213;6,491,907;6,660,514;6,951,753;7,094,604;7,172,893;7,201,898;7,229,823;および7,439,065。一般に、例えば、Grieger&Samulski、2005年、「Adeno-associated virus as a gene therapy vector: Vector development, production and clinical applications」、Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 99: 119-145;Buningら、2008年、「Recent developments in adeno-associated virus vector technology」、J. Gene Med. 10:717-733;および下に引用される参考文献を参照これらの各々は、その全体において、本明細書において参考として援用される。
【0311】
本発明の任意の態様を構築するために用いられる方法は、核酸操作における技術を有する当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2012)を参照。同様に、rAAVビリオンを作製する方法は周知であり、好適な方法の選択は、本発明の限定要因ではない。例えば、K. Fisher et al, (1993) J. Virol., 70:520-532および米国特許第5,478,745号を参照。
【0312】
「プラスミド」は、一般に、本明細書において、当業者になじみ深い標準的な命名の慣習に従って、小文字のpが、文字および/または数により先行および/または追従されることにより命名される。本発明により用いることができる多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは、周知であり、当業者にとって容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明における使用のために好適な他のプラスミドを、いくらでも容易に構築することができる。本発明における、かかるプラスミド、ならびに他のベクターの特性、構築および使用は、本開示から、当業者にとって容易に明らかであろう。
【0313】
一態様において、生成プラスミドは、本明細書において記載されるもの、または、WO2012/158757において記載されるものであり、これは、本明細書において参考として援用される。rAAVベクターを生成することにおける使用のための多様なプラスミドが、当該分野において公知であり、本明細書において用いられる。生成プラスミドは、AAV capおよび/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞中で培養される。宿主細胞において、各々のrAAVゲノムは、キャプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質中にパッケージングされて、感染性のウイルス粒子を形成する。
【0314】
一側面において、上記の発現カセットを含む生成プラスミドが提供される。一態様において、生成プラスミドは、
図5、6、7、10~12において示すものである。これらのプラスミドは、例において例証される。かかるプラスミドは、5’AAV ITR配列;選択されたプロモーター;ポリAシグナル;および3’ITRを含む;加えて、それはまた、ニワトリベータ-アクチンイントロンなどのイントロン配列を含む。その例示的な模式図および関連する配列番号を、
図5、6、7、および10~12において示す。いくつかの態様において、選択されたイントロン配列は、rAAVベクターゲノムを、約3キロベース(kb)~約6kb、約4.7kb~約5kb、約3kb~約5.5kb、または約4.7kb~5.5kbのサイズに保つ。ヒトABCD1をコードする配列を含む生成プラスミドの一例は、配列番号100、または配列番号10000、10100、10200、10500、11000、11100、11200、11300、11500および11700のうちのいずれかにおいて、見出すことができる。別の態様において、生成プラスミドは、ベクタープラスミド生成効率を最適化するために修飾される。かかる修飾は、他の中性の配列の付加、またはベクタープラスミドのスーパーコイルのレベルを調節するために、ラムダスタッファー(lambda stuffer)配列の包含を含む。かかる修飾は、本明細書において企図される。他の態様において、ターミネーターおよび他の配列は、プラスミド中に含まれる。
【0315】
ある態様において、rAAV発現カセット、ベクター(rAAVベクターなど)、ウイルス(rAAVなど)、および/または生成プラスミドは、AAV逆位末端反復配列、ヒトABCD1をコードするコドン最適化された核酸配列、および宿主細胞におけるコードされるタンパク質の発現を指揮する発現制御配列を含む。他の態様において、rAAV発現カセット、ウイルス、ベクター(rAAVベクターなど)、および/または生成プラスミドは、イントロン、Kozak配列、ポリA、転写後調節エレメント、およびその他のうちの1つ以上をさらに含む。一態様において、転写後調節エレメントは、Xタンパク質が発現されないかまたは不活性な形態において発現される、改変ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0316】
発現カセット、ベクターおよびプラスミドは、他の構成成分を含み、これは、例えば本明細書において記載されるようなコドン最適化を含む当該分野において公知の技術を用いて、特定の種について最適化することができる。カセット、ベクター、プラスミドおよびウイルスまたは本明細書において記載される他の組成物の構成成分は、発現制御配列の一部として、プロモーター配列を含む。別の態様において、プロモーターは、細胞特異的である。用語「細胞特異的」とは、組み換えベクターのために選択された特定のプロモーターが、ニューロンまたはグリア細胞などの特定の細胞または組織の型における、ヒトABCD1コード配列の発現を指揮することができることを意味する。一態様において、プロモーターは、上衣、脳室系の上皮の裏層における、導入遺伝子の発現について特異的である。別の態様において、プロモーターは、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞、後根神経節、およびミクログリアから選択される脳細胞における発現について特異的である。一態様において、プロモーターは、クローニングを促進するために、1つ以上の制限酵素切断部位を付加するように修飾される。
【0317】
別の態様において、プロモーターは、偏在性の、または構成的プロモーターである。好適なプロモーターの例は、ハイブリッドプロモーターであり、これは、いくつかの場合において、ニワトリベータアクチンプロモーターを、CMVエンハンサー配列などのサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントと共に含む。かかるハイブリッドプロモーターは、例えば、
図5、6、7、および10~12において開示されるコンストラクトにおいて含まれる。別の態様において、プロモーターは、CB7プロモーターである。他の好適なプロモーターとして、ヒトb-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、サルウイルス40プロモーター、および単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。例えば、Damdindorjら(2014年8月)「A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors」、PLOS ONE 9(8): e106472を参照。さらに他の好適なプロモーターとして、ウイルスのプロモーター、構成的プロモーター、調節可能プロモーターが挙げられる[例えば、WO2011/126808およびWO2013/04943を参照]。あるいは、生理学的なキューに応答するプロモーターを、本明細書において記載される発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミドおよびウイルスにおいて利用してもよい。一態様において、プロモーターは、AAVベクターのサイズの限界に起因して、1000bp未満の小さなサイズのものである。別の態様において、プロモーターは、400bp未満である。他のプロモーターは、当業者により選択され得る。
【0318】
さらなる態様において、プロモーターは、以下から選択される:SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ファージラムダ(PL)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、テトラサイクリンにより制御されるトランスアクチベーター応答性プロモーター(tet)系、RSV LTR、MoMLV LTR、BIV LTRまたはHIV LTRなどの長い末端反復(long terminal repeat:LTR)プロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルスのU3領域プロモーター、グランザイムAプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列、CD34プロモーター、CD8プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、B19パルボウイルスプロモーター、PGKプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、HSP65およびHSP70プロモーターなどのヒートショックタンパク質(HSP)プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、MMTVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、lacプロモーター、CaMV 35Sプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター、MNDプロモーター、またはMNCプロモーター。
それらのプロモーター配列は、当業者に公知であるか、例えば学術文献において、またはデータベース、例えば、GenBank、PubMedなどにおいて、公共に利用可能である。
【0319】
別の態様において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターは、ラパマイシン/ラパログプロモーター、エクジソンプロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、およびテトラサイクリン応答性プロモーター、またはヘテロ二量体リプレッサースイッチ(heterodimeric repressor switch)を含む既知のプロモーターから選択してもよい。Sochorら、「An Autogenously Regulated Expression System for Gene Therapeutic Ocular Applications」、Scientific Reports, 2015 Nov 24;5: 17105およびDaber R, Lewis M.,「A novel molecular switch」、J Mol Biol. 2009 Aug 28;39l(4):661-70, Epub 2009 Jun 21を参照;これらはいずれも、それらの全体において本明細書において参考として援用される。
【0320】
他の態様において、本明細書において記載される発現カセット、ベクター、プラスミドおよびウイルスは、他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、効率的なRNAプロセッシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル;TATA配列;細胞質のmRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);イントロン;タンパク質の安定性を増強する配列;ならびに、所望される場合には、コードされる生成物の分泌を増強する配列を含む。発現カセットまたはベクターは、本明細書において記載されるエレメントを全く含まなくとも、そのうちのいずれかのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0321】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるようなrAAVウイルスゲノムをコードするrAAVウイルスゲノムおよびプラスミドは、コードされるABCD1遺伝子またはABCD1遺伝子バリアントの翻訳の終結を促進する、1つのターミネーターを含んでもよ。いくつかの場合において、かかるターミネーターは、本明細書において「ターミネーター1」として言及される場合がある。いくつかの態様において、本明細書において開示されるようなrAAVウイルスゲノムをコードするrAAVウイルスゲノムおよびプラスミドは、これもまたコードされるABCD1遺伝子またはABCD1遺伝子バリアントの翻訳の終結を促進する、別のターミネーターを含んでもよい。いくつかの場合において、かかるターミネーターは、として言及される場合がある。「ターミネーター2」として言及される場合があり、「ターミネーター1」と同じであっても、異なっていてもよい。いくつかの態様において、本明細書において開示されるようなrAAVウイルスゲノムをコードするrAAVウイルスゲノムおよびプラスミドは、2つより多くのターミネーターを含んでもよい。いくつかの態様において、ターミネーター1は、配列番号10071、10171、10271、10571、11071、11171、11271、11371、11571もしくは11771の核酸配列によりコードされていてもよい。いくつかの態様において、ターミネーター2は、配列番号10572、11272もしくは11372の核酸配列によりコードされていてもよい。
【0322】
好適なポリA(本明細書においてまた「pA」としても言及される)シグナルの例として、例えば、ウシ増殖ホルモン(bGH)、ヒト増殖ホルモン(hGH)、SV40、ウサギb-グロビン(RGB)、または修飾されたRGB(mRGB)からの合成ポリAが挙げられる。例示的なbGH pA配列は、例えば、アクセッション番号M57764により提供される配列を含んでもよい。例示的なhGH pA配列は、例えば、アクセッション番号NG_011676により提供される配列を含んでもよい。例示的なSV40 pA配列は、例えば、アクセッション番号NC_001669により提供される配列を含んでもよい。例示的なRBG pA配列は、例えば、アクセッション番号V00882により提供される配列を含んでもよい。例示的な態様において、ポリAは、本明細書において記載されるAAVコンストラクト、例えば
図5、6、7、および10~12において開示されるものにおいて示されるような核酸配列を含む、SV40またはBGHポリA配列である。いくつかの態様において、SV40ポリAシグナルは、配列番号27、10014、10114、10214、10514、11014、11214もしくは11714の核酸配列を含んでもよい。いくつかの態様において、bGHポリAシグナルは、配列番号10016、10116、10216、11016、11116、11216、11316、11516もしくは11714の核酸配列を含んでもよい。いくつかの態様において、SV40ポリAおよびbGHポリAシグナルの両方を、直列に用いてもよい。かかる場合において、ポリAシグナルは、配列番号306、405、10035、10135、10235、11035、11235もしくは11735の核酸配列を含んでもよい。
【0323】
好適なエンハンサーの例として、例えば、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTRミニマルプロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/アルファl-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoE、その他が挙げられる。いくつかの態様において、CMVエンハンサーは、アクセッション番号:NC_006273により提供される参照CMV配列を含んでもよい。いくつかの態様において、CMVエンハンサーは、配列番号7、10005、10105、10205、10505、11005、11105、11205、11305、11505もしくは11705の核酸配列を含んでもよい。
【0324】
一態様において、「CCACC」などのKozak配列、または最適なタンパク質翻訳開始のためのコンセンサス配列:
【化10】
へのアプローチを表す配列は、正確な開始コドンからの翻訳を増強するために、ヒトABCD1コード配列の上流に含まれる。別の態様において、CBAエクソン1およびイントロンは、発現カセット中に含まれる。一態様において、ヒトABCD1コード配列は、ハイブリッドプロモーターの制御下に置かれる。いくつかの場合において、ハイブリッドプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー、近位ニワトリベータアクチンプロモーター、およびイントロン1配列に隣接するCBAエクソン1を含む。
【0325】
別の態様において、イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、卵白アルブミン、p53、ウサギベータグロビン、またはそのフラグメントから選択される。例示的なCBAイントロンは、例えば、アクセッション番号X00182により提供される配列を含んでもよい。例示的なウサギベータグロビンイントロンは、例えば、アクセッション番号V00882により提供される配列を含んでもよい。例示的なイントロンは、配列番号12、10009、10109、10209、10509、11009、11109、11209、11309、11509もしくは11709の核酸配列を含んでもよい。
【0326】
一態様において、発現カセット、ベクター、プラスミドおよびウイルスは、ニワトリベータ-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー、ニワトリベータ-アクチンエクソン1およびイントロン、ヒトABCD1配列、ならびにSV40および/またはBGHのポリAを含む。さらなる態様において、発現カセットは、配列番号100のnt1~3713を含む。
【0327】
さらなる態様において、生成プラスミドは、配列番号100、または配列番号10000、10100、10200、10500、11000、11100、11200、11300、11500もしくは11700のうちのいずれか、またはその任意のバリアントであって、機能的に等価であるものの配列を有する。
【0328】
いくつかの好ましい態様において、生成プラスミドは、配列番号10000、10100、10200、10500、11000、11100、11200、11300、11500もしくは11700の配列を有する。
【0329】
さらなる好ましい態様において、生成プラスミドは、配列番号10100、11000、11500もしくは11700の配列を有する。
【0330】
別の側面において、ABCD1遺伝子の欠損により越されたALDまたはAMN疾患を処置するための方法は、それを必要とする対象に、本明細書において記載されるようなヒトABCD1をコードするベクター(rAAVなど)を送達することを含む。一態様において、ALDまたはAMN疾患を有する対象を本明細書において記載されるrAAVで処置する方法が提供される。
【0331】
また本明細書において提供されるのは、医薬組成物である。本明細書において記載される医薬組成物は、任意の好適な経路または異なる経路の組み合わせによる、それを必要とする対象への送達のために設計される。
【0332】
さらに他の側面において、これらの核酸配列、ベクター、発現カセットおよびrAAVウイルスベクターは、医薬組成物において有用であり、これはまた、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、バッファー、希釈剤、界面活性剤、保存剤および/またはアジュバントなどを含む。かかる医薬組成物は、かかる組み換えにより操作されたAAVまたは人工AAVによる送達を通して、rAAVウイルスを安定化させ、送達の間のrAAVウイルスの損失を予防し、および/または宿主細胞においてヒトABCD1タンパク質を首尾よく発現させることを補助するために用いられる。
【0333】
核酸配列、ベクター、発現カセットおよびrAAVウイルスベクターを含むこれらの医薬組成物を調製するために、配列またはベクターもしくはウイルスベクターは、好ましくは、慣用的な方法により、混入について評価され、次いで、患者への投与のために好適な医薬組成物中に処方される。かかる処方物は、薬学的におよび/または生理学的に許容し得るビヒクルまたは担体、例えばpHを適切な生理学的レベルに維持するために緩衝化食塩水または他のバッファー、例えばHEPES、および任意に、他の薬用の剤、医薬用の剤、安定化剤、バッファー、担体、アジュバント、希釈剤、界面活性剤または賦形剤などの使用を含む。注射のために、担体は、典型的には、液体であろう。例示的な生理学的に許容し得る担体として、無菌のパイロジェンフリー水、および無菌のパイロジェンフリーのリン酸緩衝化食塩水が挙げられる。多様なかかる既知の担体は、本明細書において参考として援用される米国特許第7,629,322号において提供される。一態様において、担体は、等張性の塩化ナトリウム溶液である。別の態様において、担体は、平衡化塩溶液である。一態様において、担体は、tweenを含む。ウイルスを長期間保存する場合、それを、グリセロールまたはTween20の存在下において凍結してもよい。
【0334】
1つの例示的な特定の態様において、担体または賦形剤の組成物は、180mMのNaCl、10mMのNaPi(pH7.3)を、0.0001%~0.01%のPluronic F68(PF68)と共に含んでもよい。バッファーの食塩水構成成分の正確な組成は、160mM~180mMのNaClの範囲であってよい。任意に、具体的に記載されるバッファーの代わりに、様々なpHバッファー(潜在的に、HEPES、炭酸水素ナトリウム、TRIS)を用いることができる。
【0335】
本明細書において用いられる場合、用語「投与量」とは、処置の経過において対象に送達される総投与量、単一の単位(または複数の単位もしくは分割投与量)の投与において送達される量を指し得る。薬学的なウイルス組成物は、投与量単位において、本明細書において記載されるようなヒトABCD1をコードするコドン最適化された核酸配列を担持する複製欠損ウイルスを、約1.0×109GC~約1.0×1016GC/用量の範囲(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)の量で含むように、処方することができる。一態様において、組成物は、少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109または9×109GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010または9×1010GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1011、2×10v、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011または9×1011GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012または9×1012GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013または9×1013GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014または9×1014GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015または9×1015GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。一態様において、ヒトでの適用のために、用量は、1×1010~約1×1012GC/用量の範囲(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)であってよい。全ての投与量は、任意の既知の方法により測定することができ、これは、例えば、M. Lock et al, Hum Gene Ther Methods. 2014 Apr;25(2): l 15-25. doi: 10. 1089/hgtb.20l3.131において記載されるようなqPCRまたはデジタルドロップレット(digital droplet)PCR(ddPCR)により測定されるものを含み、これは、本明細書において参考として援用される。
【0336】
一態様において、ALDまたはAMN患者への投与のために好適な水性懸濁液が提供される。懸濁液は、水性の懸濁液、および脳1グラムあたり約7.5×109GCのウイルス粒子~約1×1012GCのウイルス粒子の、ALDまたはAMN疾患のための治療剤として有用な本明細書において記載される組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を含む。
【0337】
また、本発明の医薬組成物の複数の「ブースター」投与量を投与することが望ましい場合もある。例えば、CNS中の導入遺伝子の持続時間に依存して、第1の投与の後、6か月間の間隔で、または毎年、ブースター投与量を送達してもよい。rAAVベクターの投与により、AAVを中和する抗体が生成されなかったという事実は、さらなるブースター投与を可能にすべきである。
【0338】
かかるブースター投与量およびその必要性は、例えばヒトABCD1活性および/または神経性の試験を用いて、主治医によりモニタリングすることができる。他の類似の試験を用いて、処置される対象の状態を経時的に決定もよい。適切な試験の選択は、主治医により行われてよい。なお代替的には、本発明の方法はまた、正常な対象において見いだされるものに近いABCD1活性レベルを可能にするために、単一または複数回の感染において、より大きな容積のウイルス含有溶液の注射を含んでもよい。
【0339】
これらの上の用量は、患者のサイズ、用いられるウイルス力価、投与の経路、および方法の所望される効果に依存して、約100マイクロリットル~約150mLの範囲(当該範囲内の全ての数を含む)の、多様な容積の担体、賦形剤またはバッファー処方物において投与することができる。一態様において、担体、賦形剤またはバッファーの容積は、少なくとも約500μLである。一態様において、容積は、約750μLである。別の態様において、容積は、約1mLである。別の態様において、容積は、約2mLである。別の態様において、容積は、約3mLである。別の態様において、容積は、約4mLである。別の態様において、容積は、約5mLである。別の態様において、容積は、約6mLである。別の態様において、容積は、約7mLである。別の態様において、容積は、約8mLである。別の態様において、容積は、約9mLである。別の態様において、容積は、約10mLである。別の態様において、容積は、約11mLである。別の態様において、容積は、約12mLである。別の態様において、容積は、約13mLである。別の態様において、容積は、約14mLである。別の態様において、容積は、約15mLである。別の態様において、容積は、約16mLである。別の態様において、容積は、約17mLである。別の態様において、容積は、約18mLである。別の態様において、容積は、約19mLである。別の態様において、容積は、約20mLである。別の態様において、容積は、約21mLである。別の態様において、容積は、約22mLである。別の態様において、容積は、約23mLである。別の態様において、容積は、約24mLである。別の態様において、容積は、約25mL以上である。一態様において、最大注射容積は、総脳脊髄液容積の約10%である。別の態様において、容積は、約50mL~約150mLである。別の態様において、容積は、約50mLである。別の態様において、容積は、約60mLである。別の態様において、容積は、約70mLである。別の態様において、容積は、約80mLである。別の態様において、容積は、約90mLである。別の態様において、容積は、約100mLである。別の態様において、容積は、約110mLである。別の態様において、容積は、約120mLである。別の態様において、容積は、約130mLである。別の態様において、容積は、約140mLである。別の態様において、容積は、約150mLである。好ましい態様において、容積は、約100mLである。
【0340】
一態様において、ウイルスコンストラクトは、マウスなどの小さな動物対象について、約100マイクロリットル~約1mLの容積中で、少なくとも1×109~約少なくとも1×1013GCの用量において、送達することができる。より大きな獣医学的対象については、上で記述されるよりおおきなヒト用の投与量および容積が有用である。多様な獣医学的動物への物質の投与のための良好な実施の考察については、例えば、Diehl et al, J. Applied Toxicology, 21: 15-23 (2001)を参照。この文書は、本明細書において参考として援用される。
【0341】
毒性などの望ましくない効果のリスクを減少させるために、ウイルスまたは他の送達ビヒクルの最低有効濃度が利用されることが、望ましい。これらの範囲におけるなお他の投与量は、処置されている対象、好ましくはヒトの身体的状態、対象の年齢、および障害が発達している程度を考慮して、主治医により選択されてよい。
【0342】
本明細書において記載されるさらに別の側面は、哺乳動物対象において、副腎白質ジストロフィー(ALD)および/もしくは副腎脊髄ニューロパチー(AMN)を処置もしくは予防する、ならびに/またはそれに関連する症状を寛解させる方法である。一態様において、好ましくは生理学的に適合可能な担体、希釈座、賦形剤および/またはアジュバント中で懸濁された、ABCD1のネイティブな、修飾された、またはコドン最適化された配列を担持するrAAVを、治療有効量において、ヒト対象を含む、所望される対象に投与してもよい。この方法は、それを必要とする対象に、核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム、プラスミド、ベクターもしくはrAAVベクター、またはこれらを含む組成物のうちのいずれかを投与することを含む。
【0343】
一態様において、組成物は、髄腔内で送達される。別の態様において、組成物は、ICVを介して送達される。別の態様において、組成物は、大槽内投与により送達される。なお別の態様において、組成物は、ALDまたはAMN疾患の処置のために好適な投与経路の組み合わせを用いて送達され、静脈内投与または他の慣用的な投与経路を含んでもよい。
【0344】
これらの方法における使用のために、各々の投与量の容積およびウイルス力価は、本明細書においてさらに記載されるように、個々に決定される。投与量、投与およびレジメンは、本明細書の教示を考慮して、主治医により決定されてよい。別の態様において、方法は、組成物を、2つ以上の投与量(例えば分割投与量)において投与することを含む。別の態様において、選択された発現カセット(例えば、ABCD1含有カセット)を含むrAAVの第2の投与は、より後の時点において行われる。かかる時点は、第1の投与の後、数週間、数カ月間または数年間であってよい。かかる第2の投与は、一態様において、第1の投与からのrAAVとは異なるキャプシドを有するrAAVにより行われる。別の態様において、第1および第2の投与からのrAAVは、同じキャプシドを有する。
【0345】
なお他の態様において、本明細書において記載される組成物を、単一の組成物または複数の組成物において送達してもよい。任意に、2つ以上の異なるAAVまたは複数のウイルスを送達してもよく(例えば、WO 2011/126808およびWO 2013/049493を参照)。別の態様において、複数のウイルスは、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAVおよびアデノウィルス)を含んでもよい。
【0346】
本発明により、ヒトABCD1ベクターの「治療有効量」が、本明細書において記載されるように、所望される結果、すなわちALDまたはAMN疾患またはその1つ以上の症状の処置を達成するために、送達される。一態様において、処置のゴールは、疾患の進行を限定することである。このことは、先に記載されているような、症状の定量的および定性的な評価により評価することができる。
【0347】
別の態様において、方法は、さらなる試験、例えば、処置の効力を決定するためのアッセイおよび神経学的試験を行うことを含む。かかる試験は、UBDRSの一部として行われるものを含み、限定することなく、以下の評価を含む:発生の明瞭さ、舌の突出、視力、緊張(腕、脚、頸)、強度(腕、脚)、ハンドタッピング(hand tapping)、踵踏み鳴らし(heel stomping)、自発運動(無動症)、常同症、ジストニア、ミオクローヌス、振戦、舞踏病、測定異常、歩調、姿勢安定性、てんかん発作、行動および気分、ならびに全体的な健康状態。
【0348】
本明細書において記載される方法の一態様において、本明細書において記載されるような組成物のワンタイム(one-time)送達、例えば最適化されたヒトABCD1カセットのAAV送達が、対象においてALDまたはAMN疾患を処置することにおいて有用である。本明細書において記載される方法の別の態様において、本明細書において記載されるような組成物のワンタイム送達、例えば最適化されたヒトABCD1カセットのAAV送達は、ABDC1遺伝子において欠損を有する対象においてALDまたはAMN疾患を予防するために有用である。
【0349】
したがって、一態様において、組成物は、疾患の発症の前に投与される。別の態様において、組成物は、神経機能障害の開始の前に投与される。別の態様において、組成物は、神経機能障害の開始の後で投与される。一態様において、新生児期の処置は、出産の8時間以内、初めの12時間、初めの24時間、または初めの48時間に、本明細書において記載されるようなABCD1コード配列、発現カセットまたはベクターがを投与されることとして定義される。別の態様において、特に霊長類(ヒトまたは非ヒト)について、新生児期の送達とは、約12時間~約1週間、2週間、3週間または約1か月間の期間内、または約24時間~約48時間後である。別の態様において、組成物は、症状の発症の後で送達される。一態様において、患者の処置(例えば、第1の注射)は、人生の第1年目より前に開始される。別の態様において、処置は、最初の1年の後で、または最初の2~3歳の後で、5歳の後で、11歳の後で、またはより後の年齢において開始される。一態様において、処置は、約4歳~約12歳に開始される。一態様において、処置は、約4歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約5歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約6歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約7歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約8歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約9歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約10歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約11歳の時、またはその後で開始される。一態様において、処置は、約12歳の時、またはその後で開始される。しかし、処置は、約15、約20、約25、約30、約35または約40歳の時に、またはその後で開始されてもよい。一態様において、子宮における処置は、本明細書において記載されるような組成物を、胎児において投与することとして定義される。例えば、David et al, Recombinant adeno-associated virus-mediated in utero gene transfer gives therapeutic transgene expression in the sheep, Hum Gene Ther. 2011 Apr;22(4):4l9-26. doi: 10. 1089/hum.2010.007. Epub 2011 Feb 2を参照;これは、本明細書において参考として援用される。
【0350】
別の態様において、組成物は、より後の日付において再投与される。任意に、1回より多くの再投与が許容される。かかる再投与は、同じ型のベクター、異なるウイルスベクターによるものであっても、または本明細書において記載されるような非ウイルス性送達を介するものであってもよい。
【0351】
本明細書において記載される処置のゴールとして、ALDまたはAMN疾患の進行を限定するかまたは停止させることが挙げられる。処置の望ましい結果として、限定することなく、UBDRSの評価スコアのいずれかの増加、ABCD1活性または発現のレベルの増大、対象におけるVLCFAの量の減少またはVLCFAの増大の安定化もしくは遅延、神経学的試験により決定される運動機能の増大(またはその障害の進行の軽減)、およびMRIによる皮質容積の増大(またはまたはその障害の進行の軽減)が挙げられる。所望される結果として、筋力低下を軽減すること、筋力および筋緊張を増大させること、または呼吸器の健康を維持するかもしくはこれを増大させること、または振戦もしくは攣縮を軽減することが挙げられる。他の所望されるエンドポイントは、医師により決定され得る。
【0352】
さらに別の態様において、上記の方法のうちのいずれかを、別の、または第2の治療と組み合わせて行う。第2の治療は、任意の現在公知のもの、またはまだ知られていないもの、これらの変異または欠損を予防するか、停止させるか、または寛解させることを補助する治療、またはそれらに関連する効果のうちのいずれかであってよい。第2の治療は、上記の組成物の投与の前に投与されても、これと同時に投与されても、またはこれの後に投与されてもよい。一態様において、組み換えrAAVを作製する方法は、上記のようなAAV発現カセットを含むプラスミドを得ること、およびプラスミドを担持するパッケージング細胞を、十分なウイルスの配列の存在下において培養して、AAVウイルスゲノムの感染性AAVエンベロープまたはキャプシド中へのパッケージングを可能にすることを含む。rAAVベクターの作製の具体的な方法は、上で記載され、発現カセットおよび本明細書において記載されるゲノム中のABCD1遺伝子を送達することができるrAAVベクターを作製することにおいて使用することができる。
【0353】
本発明のある態様において、対象は、ALDまたはAMN疾患を有し、本発明の構成成分、組成物および方法は、それを処置するように設計される。本明細書において用いられる場合、用語「対象」とは、本明細書において用いられる場合、ヒト、獣医学または農場の動物、飼育動物またはペット、および臨床研究のために通常用いられる動物を含む、哺乳動物を意味する。一態様において、これらの方法および組成物の対象は、ヒトである。なお他の好適な対象として、限定することなく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類およびその他が挙げられる。本明細書において用いられる場合、用語「対象」は、「患者」と交換可能に用いられる。
【0354】
本明細書において用いられる場合、用語「処置」または「処置すること」とは、ALDまたはAMN疾患の1つ以上の症状の寛解を目的として、対象に、本明細書において記載される1つ以上の化合物または組成物を投与することを包含することを定義される。「処置」は、したがって、ALDまたはAMN疾患の発症または進行を軽減すること、疾患を予防すること、疾患の症状の重篤度を軽減すること、または神経機能障害の進行を含むそれらの進行を遅延させること、疾患の症状を取り除くこと、疾患の発症を遅延させること、または所与の対象において疾患の進行もしくは治療の効力をモニタリングすることのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0355】
一側面において、機能的ヒトABCD1タンパク質をコードするAAVベクターが提供される。「機能的hABCD1」により、疾患と関連しないネイティブなABCD1タンパク質、またはその天然のバリアントもしくは多型の生体活性レベルの、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはほぼ同じ、または100%よりも多くを提供する、ABCD1タンパク質をコードする遺伝子が意味される。
【0356】
in vitroでのABCD1の発現および活性レベルを測定するための、多様なアッセイが存在する。本明細書において記載される方法はまた、ALDまたはAMN疾患またはその症状の処置のための任意の他の治療と組み合わせることができる。
【0357】
ある態様において、AAV-ABCD1ウイルスベクターが提供される。多数の好適な精製方法を選択することができる。好適な精製方法の例は、例えば、2016年12月9日に出願された国際特許出願番号PCT/US2016/065970およびその優先権文書である2016年4月13日に出願された米国特許出願番号.62/322,071、および2015年12月11日に出願された62/226,357、表題「Scalable Purification Method for AAV9」において記載され、これは、本明細書において参考として援用される。
【0358】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量は、処方物中に含まれる用量の尺度として用いることができる。本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定するために、当該分野において公知の任意の方法を用いることができる。AAVのGC数タイトレーションを行うための1つの方法は、以下のとおりである:精製されたAAVベクター試料を、初めにDNaseで処置して、生成プロセスから混入している宿主DNAを除去する。DNase耐性粒子を、次いで熱処置に供して、キャプシドからゲノムを放出させる。放出されたゲノムを、次いで、ウイルスゲノムの特異的領域(例えばポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブのセットを用いて、リアルタイムPCRにより定量する。ゲノムコピーを決定するための別の好適な方法は、定量PCR(qPCR)、特に最適化qPCRまたはデジタルドロップレットPCRである[Lock Martin, et al, Human Gene Therapy Methods. April 2014, 25(2): 115-125. doi: 10.1089/hgtb.2013.131;2013年12月13日に編集に先立ちオンラインで公開された]。あるいは、粒子定量またはフローサイトメトリーのためにViroCyt3100を用いることができる。別の方法において、ABCD1コード配列をコードする核酸配列を担持する組み換えアデノ随伴ウイルスの有効用量は、S.K. McLaughlin et al, 1988, J. Virol., 62: 1963において記載されるように測定され、これは、その全体において参考として援用される。
【0359】
複製欠損ウイルス組成物は、ヒト患者について、複製欠損ウイルスを、約1.0×109GC~約9×1015GCの範囲の量(体重70kgの平均的な対象を処置するために)(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1015GCで含むように、投与量単位において処方することができる。一態様において、組成物は、少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109または9×109GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010または9×1010GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011または9×1011GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012または9×1012GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013または9×1013GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014または9×1014GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。別の態様において、組成物は、少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015または9×1015GC/用量(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)を含むように処方される。ヒトでの適用のための一態様において、用量は、1×1010~約1×1015GC/用量の範囲(当該範囲内の全ての整数または分数の量を含む)であってよい。
【0360】
一態様において、ウイルスコンストラクトは、少なくとも約1×109GC~約1×1015GC、または約1×1011GC~1×1015GCの用量において送達することができる。これらの用量および濃度の送達のための好適な容積は、当業者により決定され得る。例えば、約1μL~150mLの容積を選択することができ、より高い容積が、成人のために選択される。典型的には、新生児については、好適な容積は、約0.5mL~約10mLであり、より大きな乳児については、約0.5mL~約15mLを選択することができる。幼児については、約0.5mL~約20mLの容積を選択することができる。小児については、約30mLまでの容積を選択することができる。13歳未満(pre-teen)または10代については、約50mLまでの容積を選択することができる。患者が髄腔内投与を受けてもよいなお他の態様において、約5mL~約15mL、または約7.5mL~約10mLの容積が選択される。他の態様において、患者は、10~150mL、50mL~150mL、75mL~125mL、または約100mLの髄腔内投与を受けてもよい。他の好適な容積および投与量を決定してもよい。投与量は、任意の副作用に対する治療上の利益のバランスをとるために調整され、かかる投与量は、組み換えベクターが使用される治療的適用に依存して変化し得る。
【0361】
上記の組み換えベクターは、公開される方法に従って宿主細胞に送達することができる。ある態様において、ヒト患者への投与のために、rAAVは、食塩水、界面活性剤および生理学的に適合可能な塩または塩の混合物を含む水溶液中に、好適に懸濁される。好適には、処方物は、生理学的に許容し得るpH、例えば、pH6~9、またはpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、またはpH7.2~7.8の範囲において調整される。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であるため、髄腔内送達のために、この範囲内のpHが所望される場合があるが、一方、静脈内送達のためには、6.8~約7.2のpHが所望される場合がある。しかし、より広い範囲およびこれらの部分範囲の内の他のpHが、他の送達の経路のために選択されてもよい。
【0362】
好適な界面活性剤、または界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択することができる。一態様において、例えば、中性のpHを有し、8400の平均分子量を有する、Pluronic(登録商標)F68 (BASF)、別名Poloxamer 188などの、1級ヒドロキシル基において末端を有する二官能性のブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤および他のポロキサマー、すなわち、中心のポリオキシプロピレン(ポリプロピレンオキシド)の疎水性鎖およびこれを挟む2本のポリオキシエチレン(ポリエチレンオキシド)の親水性鎖からなる非イオン性の3ブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-l5ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノールおよびポリエチレングリコールを選択してもよい。一態様において、処方物は、ポロキサマーを含む。これらのコポリマーは、一般に、文字「P」(ポロキサマーについて)とその後に続く3つの数字により命名される:初めの2つの数字×100は、ポリオキシプロピレンコアのおよその分子質量を示し、最後の数字×10は、ポリオキシエチレン内容物のパーセンテージを示す。一態様において、Poloxamer 188が選択される。
【0363】
界面活性剤は、懸濁液の約0.0005%~約0.001%までの量において存在してもよい。
【0364】
一例において、処方物は、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、デキストロース、硫酸マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム-7H20)、塩化カリウム、塩化カルシウム(例えば、塩化カルシウム-2H2O)、二塩基性リン酸ナトリウム、およびこれらの混合物のうちの1つ以上を、水中に含む、緩衝化食塩水溶液を含んでもよい。好適には、髄腔内送達のために、浸透圧は、脳脊髄液に適合可能な範囲内である(例えば、約275~約290Osm/L)。任意に、髄腔内送達のために、懸濁剤として、または別の懸濁剤および他の任意の賦形剤と組み合わせて、市販の希釈剤を用いてもよい。例えば、Elliotts B(登録商標)溶液(Lukare Medical)を参照。他の態様において、処方物は、1つ以上の浸透増強剤を含んでもよい。好適な浸透増強剤の例として、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、またはEDTAが挙げられ得る。
【0365】
別の態様において、組成物は、担体、希釈剤、賦形剤および/またはアジュバントを含む。好適な担体は、当業者により、導入(transfer)ウイルスが配向される適応症を考慮して、容易に選択され得る。例えば1つの好適な担体として、食塩水が挙げられ、これは、多様な緩衝化溶液により処方してもよい(例えば、リン酸緩衝化食塩水)。他の例示的な担体として、無菌の食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、および水が挙げられる。バッファー/担体は、rAAVが注入管に固着することを予防するが、vivoでのrAAVの結合活性を妨げない構成成分を含むべきである。
【0366】
任意に、本発明の組成物は、rAAVおよび担体に加えて、他の慣用的な薬学的な材料、例えば保存剤、または化学的安定化剤を含んでもよい。好適な例示的な保存剤として、クロロブタノール、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学的安定化剤として、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
【0367】
本発明による組成物は、上で定義されるような薬学的に許容し得る担体を含んでもよい。好適には、本明細書において記載される組成物は、薬学的に好適な担体中に懸濁され、および/または注射、ポンプ、髄腔内カテーテルを介する対象への送達のために、または別のデバイスまたは経路による送達のために設計された、好適な賦形剤と混合された、1つ以上のAAVの有効量を含む。一例において、組成物は、髄腔内送達のために処方される。一態様において、髄腔内送達は、脊柱管、例えば、くも膜下腔中への注射を包含する。一態様において、送達の経路は、脳室内注射(ICV)である。別の態様において、送達の経路は、腰部髄腔内(IT-L)送達である。別の態様において、送達の経路は、大槽内投与である。
【0368】
本明細書において記載されるウイルスベクターは、機能的ABCD1を対象に供給するため、および/またはALDまたはAMN疾患を処置するために、ABCD1タンパク質を、それを必要とする対象(例えば、ヒト患者)に送達するための医薬を調製することにおいて、用いることができる。処置の経過は、任意に、同じウイルスベクター(例えば、AAV2、AAV9もしくはAAVrh.10のベクター)または異なるウイルスベクター(例えば、異なるAAV2、AAV9およびAAVrh.10)の、繰り返しの投与を含んでもよい。ウイルスベクターおよび本明細書において記載される非ウイルス性送達系を用いる、なお他の組み合わせを選択してもよい。
【0369】
本明細書において記載されるABCD1cDNA配列は、当該分野において周知の技術を用いて、in vitroで、および合成により作製することができる。例えば、Xiong et al, PCR-based accurate synthesis of long DNA sequences, Nature Protocols 1, 791 - 797 (2006)において記載されるように、長いDNA配列のPCRベースの正確な合成(PCR-based accurate synthesis:PAS)法を利用してもよい。二重非対称PCR(dual asymmetrical PCR)法とオーバーラップ伸長PCR(overlap extension PCR)法とを組み合わせる方法は、Young and Dong, Two-step total gene synthesis method, Nucleic Acids Res. 2004; 32(7): e59により記載される。また、Improved PCR-based gene synthesis method and its application to the Citrobacter freundii phytase gene codon modification. 2010 May;8l(2): 147-52. Epub 2010 Mar 10を参照;また、オリゴヌクレオチド合成および遺伝子合成についての以下の特許、Gene Seq. 2012 Apr;6(l): 10-21;US8008005;およびUS7985565を参照。これらの文書の各々は、本明細書において参考として援用される。加えて、PCRを介してDNAを作製するためのキットおよびプロトコルは、商業的に利用可能である。これらは、限定することなく、Taqポリメラーゼ;OneTaq(登録商標)(New England Biolabs);Q5(登録商標)高フィデリティーDNAポリメラーゼ(New England Biolabs);およびGoTaq(登録商標)G2ポリメラーゼ(Promega)を含むポリメラーゼの使用を含む。DNAはまた、本明細書において記載されるhOTC配列を含むプラスミドでトランスフェクトされた細胞から生成されてもよい。
【0370】
キットおよびプロトコルは、公知かつ商業的に利用可能であり、限定することなく、QIAGENプラスミドキット;Chargeswitch(登録商標)Pro Filterプラスミドキット(Invitrogen);およぶGenElute(商標)プラスミドキット(Sigma Aldrich)を含む。本明細書において有用な他の技術として、熱サイクリングの必要性を除去する配列特異的等温増幅法が挙げられる。熱の代わりに、これらの方法は、典型的には、Bst DNAポリメラーゼ、ラージフラグメント(New England Biolabs)などの鎖置換(strand-displacing)DNAポリメラーゼを使用して、二本鎖DNAを分離する。DNAはまた、RNA依存的DNAポリメラーゼである逆転写酵素(RT)の使用を介する増幅を通して、RNA分子から作製してもよい。RTは、オリジナルのRNA鋳型に対して相補的な、cDNAとして言及されるDNAの鎖を重合する。このcDNAは、次いで、上で概略されるようにPCRまたは等温法を通して、さらに増幅することができる。カスタムDNAもまた、限定することなく、GenScript;GENEWIZ(登録商標);GeneArt(登録商標)(Life Technologies);およびIntegrated DNA Technologiesを含む企業から、商業的に作成することができる。
【0371】
用語「a」または「an」は、1つ以上を指すことに、留意すべきである。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に用いられる。
【0372】
語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」は、排他的であるよりもむしろ包括的に解釈されるべきである。語「からなる(consist)」、「からなること(consisting)」、およびそのバリアントは、包括的であるよりもむしろ排他的に解釈されるべきである。本明細書における多様な態様は、他の状況下において「含むこと(comprising)」の語法を用いて表される一方で、関連する態様はまた、「~からなること(consisting of)」または「~から本質的になること(consisting essentially of)」の語法を用いて解釈および記載されるべきであることを意図される
【0373】
本明細書において用いられる場合、「疾患」、「障害」および「状態」は、対象における異常な状態を示すために、交換可能に用いられる。
【0374】
本明細書において用いられる場合、別段に特定されない限り、用語「約(about)」または「約(~)」は、示される参照物からの10%の変動性を意味する。
【0375】
用語「調節」またはそのバリエーションは、本明細書において用いられる場合、組成物が生体経路の1つ以上の構成成分を阻害する能力を指す。
【0376】
本明細書において別段に定義されない限り、本明細書において用いられる技術用語および科学用語は、当業者により、および本願において用いられる用語の多くについての一般的なガイドを当業者に供給する公開されたテキストへの参照により、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0377】
例
以下の例は、本発明を説明するために提供されるが、決して請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書において例において用いられるプラスミド配列は、
図10~12において、および配列表において、配列番号により同定されるとおりである。
【0378】
材料および方法
以下の例は、別段に示されない限り、AAV-hABCD1コンストラクトを用いて成される。これらのAAV-hABCD1コンストラクトは、例示的であることを意図され、本発明は、そのバリアントの構築および使用を包含する。
【0379】
例1:ABCD1ノックアウトマウスにおけるAAV9ベクターの髄腔内投与
この例において、脊髄およびCNSにおけるABCD1発現レベルに対する様々なAAV9の効果、ならびに顕性の毒性を比較するために、短期のin vivo研究を行った。これらの実験の目的は、ALDまたはAMNを処置するための好適な候補の同定であった。
【0380】
AAV9キャプシドを含むAAVベクターを、簡単に述べるとGong Y .et al., 2015 May; Mol Ther. 23(5):824-834およびGong Y. et al., 2019 May; Hum Gene Ther. 30(5):544-555において記載されるように、生成した。簡単に述べると、ヒト293T細胞を、初めに、ABCD1に対するsiRNAのプールを用いて、DharmaFECT試薬を用いてトランスフェクトし、24時間後に、細胞を目的のrAAVゲノムベクタープラスミド(AAV-CBA-ABCD1-WPRE(オリジナル)、AAV-CBA-ABCD1-WPRE X inactiv.、またはAAV-CBA-ABCD1(WPREなし)のためのプラスミド)、Rep/CapプラスミドpAAV2/9、およびAdヘルパープラスミドpFd6でトランスフェクトした。rAAVベクターを、CsCl勾配遠心分離を介して精製し、その後、脱塩および濃縮した。rAAV力価を、qPCRにより決定した。siRNAは、生成プロセスの間のABCD1の発現を低下させるために含められた。
【0381】
用いられたpAAV2/9プラスミドは、以下を含む配列番号700の全長コンストラクト配列を含んだ:AAV2 p5プロモーター(配列番号710)(これからAAV2 REP78(配列番号711)およびAAV2 REP68(配列番号712)が生成され得る);AAV2 p19プロモーター(配列番号720)(これからAAV2 REP52(配列番号721)およびAAV2 REP40(配列番号722)が生成され得る);ならびにAAV2 p40プロモーター(配列番号730)(これからAAV9 VP1(配列番号731)、AAV9 VP2(配列番号732)、およびAAV9 VP3(配列番号733))。
【0382】
これらの実験において、候補選択基準は、CNSにおいて、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)を含むベクターと同等またはそれより強く、顕性の毒性の不在下において、VLCFAを減少させるベクターを同定すること、および、生体分布を最適化させる一方で、個々の細胞においてWTとほぼ同等のABCD1発現レベルを達成するコンストラクトを同定することを含んだ。
【0383】
その結果が
図1において含まれるこの実験において、異なる群の、約3か月齢であった5個体のマウス(ABCD1ノックアウト(KO)マウスに、各々、リン酸緩衝化食塩水(PBS)ビヒクル中に含まれる1.2×10
11ゲノムコピー(GC)の異なるAAVベクター(
図10~11を参照)、すなわち、「AAV.ABCD1.WPRE」または「AAV-CBA-hABCD1-WPRE」(ABCD1およびWPREのコード配列を含むAAVベクター、
図10において表される);「AAV.ABCD1.WPRE-Xinact」または「AAV-CBA-hABCD1-WPRE-Xinact」(不活化されたXタンパク質をコードする修飾されたWPREを含むように修飾されたAAVベクター、
図10および11Aにおいて表される);ならびに「AAV.ABCD1」または「AAV-CBA-hABCD1」(オリジナルのAAVベクター(AAV-CBA-hABCD1-WPRE)をWPREを取り除くように修飾したもの、
図10および11Bにおいて表される)のボーラス注射を髄腔内投与するか、またはPBSビヒクル担体のみを髄腔内投与した。投与の様式としてボーラス投与を選択したのは、それが、ポンプ注入よりも効率的であることが見出されたからである。また、5個体の野生型(WT)マウスの対照群を、処置しなかった。
【0384】
3週間後、異なる群のマウスを安楽死させ、脳、脊髄、後根神経節(DRG)、心臓および肝臓を採取した(肝臓は、後の分析のために凍結した)。ABCD1発現レベル、ならびにベータアクチン発現レベル(正規化のため)を、採取された組織中でウェスタンブロット法により検出した。これらの結果は、
図1において含まれる。それらから示され得るとおり、ABCD1発現は、全ての群において検出されたが、WPREを欠失しているAAV9ウイルスを投与された群において、より低かった(
図1A)。予測されたとおり、陰性対照のヌルマウスにおいて、ABCD1シグナルは検出されなかった。タンパク質発現の結果の定量は、オリジナルのWPRE配列を含むベクター(「WPRE-オリジナル」)と修飾されたX-タンパク質配列を含むベクター(「X-不活化」)で処置されたマウスの間で、類似のレベルのABCD1タンパク質発現を示したが、一方で、WPRE配列を含まないベクター(「WPREなし」)からのタンパク質発現は、低下した。
【0385】
例2:様々なAAV9コンストラクトの髄腔内投与
第2のより長い期間のin vivo研究を行い、ここで、異なる群のABCD1 KOマウス(各群n=5)に、
図10~11において示される同じ例示的なAAV9コンストラクトを、異なる投与量、すなわち、1×10
11gc/マウスまたは3×10
11gc/マウスを髄腔内注射した。例1におけるもののように、AAVウイルスベクターを作製し、ウイルス力価を決定した。例1におけるもののように、約3か月齢であったABCD1 KOマウスに、各々、AAV9のボーラス、すなわち、1×10
11ゲノムコピー(GC)または3×10
11GCの「AAV9.ABCD1.WPRE」(ABCD1コード配列を含むオリジナルのAAV9ベクター、
図10において表される);「AAV9.ABCD1.WPRE-Xinact」(オリジナルのAAV9ベクターを不活化されたXタンパク質をコードする修飾されたWPREを含むように修飾したもの、
図10および11Aにおいて表される);または「AAV9.ABCD1」(オリジナルのAAV9ベクターをWPREを取り除くように修飾したもの、
図10および11Bにおいて表される)のボーラス注射を髄腔内投与するか、またはPBSビヒクル担体のみを髄腔内投与した。先の実験におけるもののように、5個体の野生型(WT)マウスの対照群は、処置しなかった。
【0386】
これらのマウスを、注射の5週間後に安楽死させ、脊髄におけるABCD1レベルの検出のために、組織を再び回収した。これらの実験において、各々の群から2個体ずつのマウスにおいて、ウェスタンブロット技術を用いて、再びABCD1発現レベルを検出した。これらの結果は、
図2において見出すことができる。
【0387】
図において、1×1011gc/マウスおよび3×1011gcの用量を投与されたマウスについてのABCD1発現レベルは、別々のブロット上にある。図における2秒間および5秒間の暴露時間は、ABCD1のブロットを指す。ブロット上のベータアクチンレベルは、1011gc/用量についての10秒間の暴露および3×1011gcの投与量についての5秒間の暴露時間についてのものである。ABCD1発現は、ABCD1遺伝子を含むAAV9コンストラクトで処置された全ての群について検出されたが、WPREを欠失するAAV9コンストラクトを投与された群においては、より低かった。
【0388】
ABCD1発現の用量-応答もまた、評価した。
図3において示されるとおり、1×10
11gc/マウスまたは3×1011gcの用量の、WPREもしくはX-不活化されたWPREを含むAAV9コンストラクトまたはWPREを欠失するAAV9コンストラクトを投与されたマウスにおける、ABCD1ウェスタンブロットデータの用量-応答を比較した。ウェスタンブロットの結果は、ABCD1発現レベルが、3×1011gcの用量のWPREもしくはX-不活化されたWPREを含むAAV9コンストラクトを投与されたマウスにおいて、1×1011gcの用量のWPREもしくはX-不活化されたWPREを含むAAV9コンストラクトを投与されたものと比較して、より高いことを明らかにした。結果は、WPREを欠失するAAV9コンストラクトを投与されたマウスは、著しくより低下したABCD1発現レベルを有することを、さらに示した。
【0389】
例3:in vitroでのVLCFA低下効果に対するコンストラクトの差異の効果
例1および2において、AAV9-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)が、AAV9-CBA-ABCD1-WPREにより誘導されるレベルと同等のABCD1タンパク質発現を誘導することが示されたことから、VLCFA低下に対するAAV9-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)の効果を調べた。この実験において、ABCD1 KOマウスから、混合型グリア培養物を生成した。AAVウイルスベクターAAV9-CBA-ABCD1-WPRE(オリジナル)およびAAV9-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)を、例1におけるもののように作製した。培養後第12日において、混合グリア培養物からの細胞に、AAV9-CBA-ABCD1ベクターで、様々なMOI(1×105、2.5×105、5×105および1×106遺伝子コピー/細胞)において形質導入した。形質導入の4日後に、細胞を、VLCFA分析のために採取した。ウェルのサブセットをまた、ウェスタンブロット分析のために用いて、細胞が首尾よく形質導入されていることを確認した。
【0390】
VLCFA分析の結果を、
図4A(C26:0レベル)および
図4B(C22:0に対するC26:0の比)において示す。結果は、いずれのAAV9ベクターも、用量依存的な様式においてVLCFAレベルを低下させること、およびAAV9-CBA-ABCD1-WPRE(Xinact)によるVLCFA低下は、AAV9-CBA-ABCD1-WPRE(オリジナル)によるものと同等であることを示した。結果はまた、最も高い用量は、野生型VLCFAレベルと同等であることを示した。
【0391】
例4:AAV-hABCD1ベクターの修飾
別の潜在的な候補AAV-hABCD1コンストラクトを、WPREを用いることなくABCD1発現を増強する、および製造および臨床的使用のために所望される他の特性を改善する試みにおいて操作した。特に修飾されたAAV-hABCD1ベクターSBT101およびOB1005は、多数の修飾により、親AAVコンストラクトAAV-CBA-ABCD1[WPREなし]から誘導された。
【0392】
AAV-CBA-ABCD1[WPREなし]からSBT101を設計する上で、5’ITRの下流の配列を修飾した;ならびに、hABCD1 5’UTRおよびhABCD1 3’UTR配列を、それぞれhABCD1 cDNA配列の上流および下流に付加した。
【0393】
AAV-CBA-ABCD1[WPREなし]からOB1005を設計する上で、5’ITRおよび3’ITR配列を短縮化した;ABCD1コード配列を、非自己抗原を発現するその潜在能力を取り除くために、代替的オープンリーディングフレームを除去するように修飾した;ABCD1の翻訳を潜在的に改善するために、開始部位の上流にKozak配列(ccacc)を付加した;導入遺伝子カセットのサイズを減少させるために、第2のポリAシグナル(bGHポリA)を除去した;ならびに、スケールアップの間のITR安定性を改善するために、AAV2ベクターを含む骨格を、pUC57からpUC118に変更した。
【0394】
AAV-CBA-ABCD1[WPREなし]からOB1010を設計する上で、5’ITRおよび3’ITR配列を短縮化した;hABCD1 5’UTRおよびhABCD1 3’UTR配列を、それぞれhABCD1 cDNA配列の上流および下流に付加した;ならびに、スケールアップの間のITR安定性を改善するために、AAV2ベクターを含む骨格を、pUC57からpUC118に変更した。
【0395】
生じたAAVベクターゲノムプラスミドpSBT101、pOB1005およびpOB1010を、それぞれ、
図5、
図6および
図7においてそれぞれ模式的に表す。これらのコンストラクトの模式図および配列の詳細もまた、
図12A~Eにおいて提供される。
【0396】
例5:ABCD1発現の比較(pSTB101対pOB1005)
次いで、HEK293細胞における一過性トランスフェクション実験において、pSBT101およびpOB1005コンストラクトの性能を比較するために、実験を行った。これらの結果を、
図8においてまとめる。ウェスタンブロットにより測定されたABCD1発現レベルを、
図8Aにおいて示す。
図8Bにおいて、測定されたABCD1発現レベルを、棒グラフにおいて、バー2(WPREを含まないpSBT101)およびバー3(pOB1005)において比較する。バー1は、トランスフェクトされていない対照である。全てのバーは、同じ数字のラベルを有するゲル上のレーンに対応する。相対的化学発光は、ABCD1値を表し、これは、やはりベータ-アクチンに対して正規化されている。
【0397】
これらの実験において、HEK293細胞を、並行してプラスミドでトランスフェクトし、トランスフェクションの3日後の発現を、細胞ライセート中でウェスタンブロッティングにより評価し、濃度測定を用いてウェスタンブロットを定量した。図における結果から示され得るとおり、修飾されたコンストラクトpOB1005でトランスフェクトされたHEK293細胞は、pSBT101でトランスフェクトされたHEK293細胞よりも、明らかにより高いABCD1発現を示した。
【0398】
例6:接着細胞におけるパイロットスケールでのpSBT101およびpOB1005コンストラクトからのAAV中へのパッケージング能力の評価
HEK293細胞において成された三重トランスフェクション実験において、WPREを欠失するpSBT101の性能を、pOB1005と比較する、さらなる実験を行った。これらの実験において、HEK293細胞を、rep/capプラスミド(pAAV2/9(配列番号700))およびAdヘルパープラスミドと一緒に、pSBT101またはpOB1005プラスミドで並行してトランスフェクトし、rAAVベクターを、CsCl勾配遠心分離を介して収集し、その後、脱塩および濃縮した。次いで、細胞ライセートおよび上清中で、DNase処置の後で、ddPCRおよび導入遺伝子カセットに対して特異的なプライマーを用いてベクターゲノムコピーの定量により、パッケージング能力を評価した。期待されたとおり、pOB1005は、これらの小規模な三重トランスフェクション試験において、明らかにより良好な生産性を示した(1プレップあたり5.66×10
9ベクターgcから、1プレップあたり1.48×10
10ベクターgcへの、2.5倍を少し超える増加)。
図9は、これらのパッケージング能力実験の結果を含む。pSBT101およびpOB1005はいずれも、申し分ないパッケージング能力を示した。
【0399】
例7:短縮型AAV2 ITRを有するさらなるコンストラクトの構築
WPREを含まず、AAV-CBA-ABCD1[WPREなし]において、WPREを含むオリジナルのコンストラクトと比較して低下したABCD1の発現および/または収量を回復させることができる候補コンストラクトをさらに探索する試みにおいて、pOB1005におけるもののような短縮型の5’ITRおよび短縮型の3’ITRのセットを含む多様なコンストラクトを設計した:pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015、およびpOB1017、これらの全てが、pUC118骨格を利用する。pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015、およびpOB1017から作製されたAAVベクターは、それぞれ、OB1010、OB1011、OB1012、OB1013、OB1015、およびOB1017と命名され、代替的には、それぞれ、v1、v2、v3、v4、v5、v6、v7およびv8として言及される。
【0400】
各々のコンストラクト中に含まれる(AAV粒子中にパッケージングされるべき)AAVゲノムの模式図を、
図12Aにおいて示す。pOB1005、pOB1012およびpOB1013は、それぞれ、ABCD1の開始コドンの直前にKozak配列を、およびABCD1をコードする配列中に、pSBT101において含まれる野生型ABCD1をコードする配列と比較して9個の変異を含む。pOB1015およびpOB1017は、それぞれ、ABCD1をコードする配列中に、pSBT101において含まれる野生型ABCD1をコードする配列と比較して、3個の変異を含む。pOB1011、pOB1013およびpOB1015は、SV40ポリAシグナルを有さないが、なお一方で、bGHポリAシグナルを含む。全長プラスミドに対して割り当てられた配列番号を、
図12Bにおいて示す。全ての全長プラスミド配列を、さらにセグメントへと分け、それらの全てを、
図12Bにおいて示すとおり命名し、配列番号を割り当てた。SV40およびbGHポリA配列の両方が存在する場合、SV40pAの開始からbGHpAの終了までの配列を、「総ポリAシグナル」と命名し、さらなる配列番号を割り当てた。個々のコンストラクトの模式図もまた、
図12C~12Jにおける配列番号を参照して表す。
図12Bおよび12C~12Jにおいて参照される配列は、全て、配列表中に含まれる。
【0401】
例8:ABCD1タンパク質発現比較
AAVベクターは、例7において記載される新たなプラスミドコンストラクトを用いて生成した。簡単に述べると、HEK293細胞に、以下によりトランスフェクションした:(1)目的のrAAVゲノムベクタープラスミド(pSBT101、pOB1005、pOB1010、pOB1011、pOB1012、pOB1013、pOB1015またはpOB1017)、(2)AAV RepおよびCapタンパク質(pAAV2/9(配列番号700))をコードするプラスミド、および(3)アデノウィルスヘルパープラスミド(pALD-X80)。rAAVベクターを、CsCl勾配遠心分離を介して収集し、その後、脱塩および濃縮した。rAAV力価を、ddPCRにより決定した。
【0402】
ABCD1タンパク質発現に対する異なるプラスミドコンストラクトの効果を評価した。簡単に述べると、ABCD1ノックアウトLec2細胞を、異なるAAV9-CBA-ABCD1ベクター(AAVベクターSBT101、OB1005、OB1010、OB1011、OB1012、OB1013、OB1015、およびOB1017)または対照ベクター(pOB1008プラスミドを用いて作製されたAAV9-CBA-emptyベクター「OB1008」)を、1×10
3、1×10
4、1×10
5、1×10
6および5×10
6の遺伝子コピー/細胞のMOIにおいて用いて、形質導入した。形質導入の3日後に、ABCD1タンパク質発現レベルは、インセル(in-cell)ウェスタンブロット(ICWB)により測定した。ABCD1タンパク質レベルを、MOIに対してプロットし、用量-発現曲線を、
図13A~13Dにおいて記載されるようにフィットさせた。各々のAAVベクターについての概算された相対的な潜在能力(
図13A~13CにおいてはpOB1008に対して相対的、および
図13DにおいてはpSBT101に対して相対的)、標準誤差、95%信頼区間、およびEC50値を計算した。。
図13Eは、例示的なウェスタンブロットウェルおよび相対的強度のデータを示す。
【0403】
図13A~13Dにおいて示されるとおり、例7において記載される新たなコンストラクトの全て(v1~v8)は、首尾よく、対照コンストラクト(pOB1008)から生じるレベルよりも高いABCD1タンパク質発現をもたらす。さらに、OB1010、OB1015、およびOB1017は、pSBT101(
図13Aおよび13D)と比較して、著しくより高いABCD1発現をもたらし、このことは、pOB1010、pOB1015、およびpOB1017が、pSBT101において低下したABCD1発現を回復させるというゴールを、WPREを用いることなく達成したことを意味する。このことは、WPREの代わりに別のエンハンサーを導入することなく発現が回復したことを考えると、特に驚異的かつ予想外である。
【0404】
例9:VLCFA低下の比較
高いABCD1発現をもたらすAAVベクター(OB1010、OB1015、およびOB1017)が、VLCFAの低下を引き起こすか否かを試験するために、ABCD1 KO Lec2細胞を、例8において記載されるように生成されたAAVベクターOB1010、OB1015、およびOB1017で、1×10
3、1×10
4、1×10
5、1×10
6および5×10
6遺伝子コピー/細胞のMOIにおいて、形質導入し、VLCFAレベルを定量した。
図14において示されるとおり、OB1010、OB1015、およびOB1017の全てが、低下したC26:0/C22:0比により示されるとおり、VLCFAを首尾よく低下させた。興味深いことに、VLCFA低下の傾向は、ABCD1発現の傾向と一致し(
図13Dを参照)、すなわち、より高いABCD1発現は、より顕著なVLCFA低下をもたらした。
【0405】
例10:VLCFA低下における用量依存性
VLCFA低下効果とAAV9-CBA-ABCD1(OBシリーズ)の用量またはABCD1発現レベルとの間の関係をより緊密に理解するために、一例としてrAAVベクターOB1010を用いた。異なるベンダー(「STC」および「VBL」)により生成された2つの異なるセットのOB1010ベクターを、並行して試験した。2つのベンダーによるrAAVベクターは、本質的に、例8において記載されるように生成されたが、VBLがrAAVの精製のために超遠心を用いた一方で、STCは、AAV9アフィニティーに基づく精製を用いた。簡単に述べると、WTまたはABCD1 KOのマウスから混合グリア培養物を生成した。培養後第12日において、ABCD1 KO混合グリア培養物からの細胞を、3つの異なる用量(低い、中程度および高い)のOB1010ベクターで形質導入した。低い、中程度および高い用量とは、それぞれ、3.3×104、1.0×105および5×105のウイルスゲノム/細胞であった。WTの混合グリア細胞は、処置しなかった。形質導入の5日後に、VLCFA分析およびウェスタンブロットによるABCD1タンパク質定量のために、細胞を収集した。
【0406】
図15Aにおいて示されるとおり、ベンダーにかかわらず、OB1010は、ベクター用量に依存的な様式において、C26:0/C22:0比およびC26:0の量の両方を低下させた。
図15Bにおいて示されるとおり、C26:0/C22:0比またはC24:0/C22:0比を、ABCD1タンパク質発現レベルに対してプロットした場合、C26:0/C22:0比の低下およびC24:0/C22:0比の低下はいずれも、ABCD1タンパク質レベルの増大と相関した。
【0407】
同じ実験を、異なるベンダーにより生成されたpOB101011などのいくつかの他のAAV-CBA-ABCD1ベクターを用いて行い、類似の用量依存的および/またはタンパク質レベル依存的VLCFA低下を観察した。異なるベンダーからの全ての試験されたAAV-CBA-ABCD1ベクターからのデータを比較した、ABCD1発現と多様なVLCFAパラメーターとの間の関係(絶対量および比)を、
図15Cにおいてまとめる。
図15Cにおける上の4つのグラフにおいて示されるとおり、増大したABCD1レベルは、より低いVLCFA(C26:0およびC24:0)およびより高い短鎖脂肪酸(C16:0)と関連したが、一方で、C22:0は、ABCD1発現によっては影響を受けないように見えた。
図15Cにおける下の2つのグラフにおいて示されるとおり、脂肪酸の比をABCD1タンパク質発現に対してプロットした場合、増大したABCD1レベルは、より低いC26:0/C22:0およびC24:0/C22:0比と関連した。
【0408】
例11:SBT101により誘発されるin vivoでの効果
AAV9-CBA-ABCD1ベクターが、in vivoでABCD1発現を回復させてVLCFAを低下させることができるか否かを試験するために、ABCD1 KOマウスに、多様な量の例8において記載されるように生成されたrAAV SBT101を髄腔内投与した。低い、中程度、高い投与用量は、ddPCRにより決定されるとおり、それぞれ、6.1×108ベクターゲノムコピー(vg)、1.8×109vg、および6.1×109vgであった。未処置のWT対照もまた含まれた。投与の8週間後に、脊髄を回収した。ベクターおよび二倍体ゲノムおよびミトコンドリアDNA(mtDNA)を、ddPCRにより定量し、ABCD1タンパク質レベルは、JESS(Protein Simple(商標))を用いて、キャピラリー電気泳動(immuno-CE)とカップリングしたイムノアッセイにより定量した。
【0409】
結果を、
図16においてまとめる。左および中央のグラフにおいて示されるとおり、用量依存的なベクターゲノムレベルおよび用量依存的なABCD1タンパク質発現が確認された。mtDNAに関しては、mtDNAは、ミトコンドリアの数の代理であり、右のグラフにおいて示されるとおり、mtDNAは、ABCD1ノックアウトマウスにおいて、野生型マウスと比較して低下する。理論により拘束されることは望まないが、ABCD1 KOにおいて低下したmtDNAは、ペルオキシソームにおいて低下したVLCFAのベータ酸化と関連付けられることが示唆され、したがって、mtDNAレベルの増大または回復は、VLCFAのベータ酸化の増大または回復の代替マーカーである。右のグラフにおいて示されるとおり、mtDNAレベルは、ベクターの用量に依存的な様式において回復し、特に、最も高い用量は、未処置と比較して顕著なmtDNAの増大を提供し、ABCD1遺伝子ノックアウトにより失われたmtDNAのほぼ半分を補充した。したがって、WPREを伴わずにABCD1をコードするAAVベクターは、in vivoで、グリア細胞において、ベータ酸化のためのVLCFAのペルオキシソーム中への輸送を回復するために十分に、ABCD1を首尾よく発現したことが結論付けられる。
【0410】
例12:rAAVベクターパッケージング能力比較
pOB1010が効率的なrAAVベクターパッケージングを提供するか否かを試験するために、pOB1010、pSBT101、およびpOB1008プラスミドを比較した。
【0411】
HEK293細胞に、以下によりトランスフェクションした:(1)目的のrAAVゲノムベクタープラスミド(pSBT101、pOB1010、またはpOB1008)、(2)AAV Rep/Capプラスミド(pAAV2/9(配列番号700)、および(3)アデノウィルスヘルパープラスミド(pALD-X80)。rAAVベクターを、CsCl勾配遠心分離を介して収集し、その後、脱塩および濃縮した。各々のAAVベクターについて、同じ量(コピー数)のゲノムベクタープラスミドを用い、各々のAAVベクターについて、同じ量(コピー数)のRep/Capプラスミドおよびアデノウィルスヘルパープラスミドを用いた。得られたウイルスの力価を、hABCD1遺伝子に対する(またはpOB1008の場合においてはSV40ポリAに対する)ddPCRにより、およびCMVエンハンサー遺伝子に対するqPCRにより比較した。これらの結果を、
図17においてまとめる。
【0412】
先行する手順において、多様な方法および材料が記載されてきた。しかし、以下の請求の範囲において記載されるような例示的な手順のより広い範囲から逸脱することなく、それらに対する多様な修飾および変更を行ってもよいこと、およびさらなる手順を実行してもよいことは、明らかであろう。
【0413】
均等物および範囲
請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、逆であることが示されるか、または文脈から別段に明らかでない限り、1つまたは1つより多くを意味し得る。グループの1つ以上のメンバーの間に「or」を含む請求項または記載は、逆であることが示されるか、または文脈から別段に明らかでない限り、グループのメンバーの1つ、1つより多く、または全てが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、または別段に関係する場合に、満たされるとみなされる。本発明は、グループの正確に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、または別段に関係する態様を含む。本発明は、グループのメンバーの1つより多く、または全てが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、または別段に関係する態様を含む。
【0414】
さらに、本発明は、列記される請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節および説明的用語が、別の請求項中に導入される、全てのバリエーション、組み合わせおよび順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属する任意の他の請求項において見出される1つ以上の限定を含むように修飾することができる。要素がリストとして、例えばマーカッシュ群形式において提示される場合、要素の各々のサブグループもまた開示され、任意の要素をグループから取り除くことができる。一般に、発明、または発明の側面が、特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、発明または発明の側面のある態様は、かかる要素および/または特徴からなるか、またはこれから本質的になることが、理解されるべきである。単純化を目的として、これらの態様は、本明細書において文言としては特には記載されていない。
【0415】
また、用語「含むこと(comprising)」および「含むこと(containing)」は、オープンエンドであることが意図され、さらなる要素またはステップの包含を許容することに留意する。範囲が示される場合、端点が含まれる。さらに、別段に示されるかまたは文脈および当業者の理解から別段に明らかでない限り、範囲として表される値は、発明の異なる態様における記述される範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、文脈が明らかに別段に指示しない限り、当該範囲の下限の10分の1まで、想定することができる。
【0416】
本願は、多様な発行された特許、公開された特許出願、学術文献の記事、および他の刊行物を指し、これらの全ては、本明細書において参考として援用される。援用される参考文献のうちのいずれかと本明細書との間に矛盾が存在する場合、本明細書が支配すべきである。加えて、本発明の任意の特定の態様であって、先行技術に該当するものは、請求項のうちの任意の1つ以上から、明示的に除外することができる。かかる態様は、当業者に公知であるものとみなされるので、それらは、除外が本明細書において明示的に記載されない場合であっても、除外することができる。本発明の任意の特定の態様は、先行技術の存在に関係するか否かにかかわらず、任意の請求項から、任意の理由のために、除外することができる。
【0417】
当業者は、本明細書において記載される特定の態様に対する多くの均等物を理解するか、慣用的な実験のみを用いて確認することができるであろう。本明細書において記載される本態様の範囲は、上の説明に限定されることを意図されず、むしろ、添付の請求の範囲において記載される。当業者は、以下の請求の範囲において定義されるような本発明の精神または範囲から逸脱することなく、この記載に対する多様な変更および修飾が行われてもよいことを、理解するであろう。
【配列表】
【国際調査報告】