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特表2023-509477神経障害の処置のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】神経障害の処置のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20230301BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230301BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/12
A61P25/16
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/198
A61K48/00
A61K9/12
A61K9/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541617
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 US2021012208
(87)【国際公開番号】W WO2021141917
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/957,636
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】521126335
【氏名又は名称】オーム ライフテック インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アイシュワリヤ ヴィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カプト アナ
(72)【発明者】
【氏名】ルク ケルビン チェク ワイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB16
4C076BB29
4C076BB31
4C076BB40
4C076CC01
4C076FF70
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA56
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZC75
(57)【要約】
パーキンソン病(PD)は、2番目に多い神経変性障害である。本質的に全てのPD患者においてそのニューロンにはアルファシヌクレイン(α-Syn)のミスフォールド型が蓄積しており、さらにαシヌクレイン遺伝子(SNCA)の変異は、家族性PDを引き起こすことから、異常αシヌクレインがPDにおいて中心的な役割を果たすことが示唆されている。本発明は、αシヌクレインを標的とするFANAアンチセンスオリゴヌクレオチドが、パーキンソン病の処置および/または防止において有効であるという独創的な発見に基づく。具体的には、αシヌクレインを標的とするFANAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ニューロンにおけるαシヌクレインの発現を減少させ、レビー小体およびレビー神経突起の病態を減少させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項2】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドが、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項6】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASO分子が、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを含む、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項8】
少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドが、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体が、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、アスコルビン酸、メチオニン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノールアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、m-クレゾール、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン、ポリビニルピロリドン グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、単糖、二糖、グルコース、マンノース、デキストリン、EDTA、ショ糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、ナトリウム、生理食塩水、金属界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、ステアリン酸マグネシウム、水、アルコール、生理食塩水溶液、グリコール、鉱物油、およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選択される、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項10】
以下の工程を含む、αシヌクレイン発現を減少させる方法:
その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与する工程であって、それによって、αシヌクレイン発現を低減させる、工程。
【請求項11】
αシヌクレイン発現が、ニューロン、オリゴデンドロサイト、およびアストロサイトにおいて減少する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドが、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:525またはSEQ ID NO:527の核酸配列を有する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、注入、吸入、または噴霧投与によって投与される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
以下の工程を含む、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を低減させる方法:
その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与する工程であって、それによって、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を減少させる、工程。
【請求項18】
レビー小体および/またはレビー神経突起の病態の低減がニューロンにおいて起こる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも、2'FANA修飾型ヌクレオチドが、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている、請求項19記載の方法。
【請求項21】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する、請求項17記載の方法。
【請求項22】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:525またはSEQ ID NO:527の核酸配列を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
以下の工程を含む、パーキンソン病またはその症状を防止および/または処置する方法:
その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与する工程であって、それによって、パーキンソン病を防止および/または処置する、工程。
【請求項24】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与が、細胞におけるαシヌクレインの発現を減少させる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、または噴霧投与によって投与される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記対象がヒトである、請求項23記載の方法。
【請求項28】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドが、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている、請求項28記載の方法。
【請求項30】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する、請求項23記載の方法。
【請求項31】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドが、SEQ ID NO:525またはSEQ ID NO:527の核酸配列を有する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
レビー小体および/またはレビー神経突起の病態が低減する、請求項23記載の方法。
【請求項33】
治療剤を投与する工程をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項34】
αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与の前に、該投与と同時に、または該投与の後に、前記治療剤が投与される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記治療剤がレボドパである、請求項33記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年1月6日に出願された米国出願第62/957,636号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権の恩典を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の組み入れ
添付の配列表のデータは、参照により本願に組み入れられる。AUM1230_1WO_Sequence_Listing.txtというファイル名の添付の配列表テキストファイルは、2020年12月29日に作成されたものであり、126kbである。このファイルは、Windows OSを使用するコンピュータで、Microsoft Wordを使用してアクセスされ得る。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、神経疾患の防止および処置に関し、より具体的には、細胞内αシヌクレインを標的とするためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景情報
パーキンソン病(PD)は、60歳超の人口の約1%に影響を与えており、疾患修飾治療が存在しない、2番目に多い神経変性障害である。PDは、主に黒質緻密部(SNpc)ドーパミン作動性(DA)ニューロンの変性のために起こる運動症状(徐脈、振戦、硬直、および姿勢不安定性)を主な特徴とするが、その他のCNS領域(例えば、青斑核、背側縫線核、迷走神経背側運動核)においても、選択的な細胞喪失が起こり、多様な非運動症状(例えば、嗅覚鈍麻、自律神経機能障害、抑うつ、幻覚、および睡眠障害)を生ずる。40%ものPD患者が認知障害を発症し、後期疾患を有する患者は、(PDDと名付けられた)認知症の高い有病率(80%超)を示すが、これは、症例の約3分の1において、併存症アルツハイマー病(AD)とも関連している。しかしながら、この不均一な細胞喪失パターンおよび特徴的な症候群をもたらす機序は、十分に理解されていない。
【0005】
レビー小体(LB)およびレビー神経突起(LN)は、PD、PDD、および古典的なパーキンソニズム以前の認知症の発症によって区別される関連障害であるレビー小体型認知症(DLB)の神経病理学的特徴である。これらのニューロン内封入体は、ニューロンおよび赤血球を含む多様な組織において遍在性に発現される熱安定140アミノ酸長タンパク質、αシヌクレインの凝集物から構成される。重要なことに、αシヌクレインをコードする遺伝子(SNCA)の点変異または増幅は、常染色体優性型の家族性PDを引き起こす。さらに、αシヌクレインは、多系統萎縮症(MSA)を有する患者のオリゴデンドロサイトにおいてもグリア細胞封入体を形成する。従って、組織学的証拠および遺伝学的証拠は、異常αシヌクレインの蓄積が、これらの神経変性障害(NDD)の病原における中心的なステップであることを総合的に指摘している。実際、LB/LNは、孤発性PDおよび/または家族性PDを有する患者のほぼ全ての脳に存在する。αシヌクレインの機能は、未だ完全には公知でないが、シナプス前終末における濃縮は、シナプス小胞形成および神経伝達物質放出の制御における役割を指摘している。健常脳における高度に可溶性の状態とは対照的に、LB/LN内のαシヌクレインは、いくつかの他の主要なNDD、例えば、AD、ポリグルタミン伸長疾患、および伝達性海綿状脳症(即ち、プリオン病)において蓄積するタンパク質に共通の超微細構造的配置、βシートリッチなアミロイドフィブリルとして存在する。ネイティブな二次構造を有しない組換えαシヌクレインも、マイクロモル濃度でフィブリルへと組み立てられる。PD脳から回収されたαシヌクレインは、さらに、界面活性剤への不溶性、ならびに様々な翻訳後修飾、例えば、タンパク質分解、過剰リン酸化(例えば、Ser129)、ユビキチン化、ニトロ化、および酸化を特徴とする。従って、組織学的証拠および遺伝学的証拠は、異常αシヌクレインの蓄積が、複数の障害(PD、PDD、DLB、MSA、およびAD)の病原における中心的なステップであることを強く指摘し、αシヌクレインが、新規の疾患修飾治療のための可能性のある標的であることを指摘している。
【0006】
PDのための臨床試験中の現在の治療には、αシヌクレインの毒性型および非毒性型の両方を標的とする、抗体および低分子によるアプローチが含まれる。そのようなアプローチは、主に、細胞外レベルでこれらのタンパク質を標的とし、従って、限定された治療的利益を有し得る。αシヌクレイン発現の低減は、PDの複数の実験モデルにおいて、神経保護的であり、そのことは、疾患修飾治療としての可能性を示している。遺伝子サイレンシングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)治療は、細胞内αシヌクレインを直接標的とし、従って、病理学的なαシヌクレイン種の形成を低減させることによって、これらの限界を克服し得る。インビボで効果的に送達され得、SNCA遺伝子をノックダウンすることによってαシヌクレインの産生を選択的に阻害することができる、自己送達可能な2'-デオキシ-2'-フルオロ-D-アラビノ核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド(FANA-ASO)を利用する遺伝子サイレンシング治療が開発された。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、αシヌクレインを標的とする2'-デオキシ-2'-フルオロ-D-アラビノ核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド(FANA-ASO)が、αシヌクレインの発現を減少させるために有効であるという独創的な発見に基づく。具体的には、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、ニューロンにおけるαシヌクレインの発現を減少させ、レビー小体(LB)およびレビー神経突起(LN)の病態を減少させ、パーキンソン病などのαシヌクレイン病を処置するために有効であり得る。
【0008】
本明細書に記載されるように、FANA-ASOは、ニューロンにおけるαシヌクレインの発現を減少させ、レビー小体(LB)およびレビー神経突起(LN)の病態を減少させることによる、パーキンソン病の防止および/または処置のために有用であり得る。αシヌクレインのレベルを効果的に低減させることによって、αシヌクレイン病態形成の低減およびニューロン機能の改善;ドーパミン作動性細胞の喪失および機能不全の防止;グルタミン酸作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、およびコリン作動性ニューロンの生存の改善;ならびに、例えば、確立された凝集物の病態を低減させ、ドーパミンニューロン喪失を防止するための、SNCAの拡張的な阻害が起こると予想される。
【0009】
1つの態様において、本発明は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせより選択される核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。ある特定の局面において、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝液;クエン酸緩衝液;アスコルビン酸;メチオニン;オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール;ブチルアルコール;ベンジルアルコール;メチルパラベン;プロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン;ゼラチン;免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン グリシン;グルタミン;アスパラギン;ヒスチジン;アルギニン;リジン;単糖;二糖;グルコース;マンノース;デキストリン;EDTA;ショ糖;マンニトール;トレハロース;ソルビトール;ナトリウム;生理食塩水;金属界面活性剤;非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール(PEG);ステアリン酸マグネシウム;水;アルコール;生理食塩水溶液;グリコール;鉱物油、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、αシヌクレイン発現を減少させる方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、αシヌクレイン発現を低減させることによる、該方法を提供する。1つの局面において、αシヌクレイン発現は、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトにおいて減少する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。ある特定の局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。ある特定の局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、吸入、または噴霧によって投与される。
【0012】
別の態様において、本発明は、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を低減させる方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を減少させることによる、該方法を提供する。1つの局面において、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態の低減は、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトにおいて起こる。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。ある特定の局面において、少なくとも、2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、パーキンソン病またはその症状を防止および/または処置する方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、パーキンソン病を防止および/または処置することによる、該方法を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与は、細胞におけるαシヌクレインの発現を減少させる。ある特定の局面において、細胞は、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトである。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、注入、吸入、または噴霧によって投与される。1つの局面において、対象はヒトである。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。ある特定の局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。別の局面において、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態が低減する。さらなる局面において、治療剤が投与される。さらなる局面において、治療剤は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与の前に、該投与と同時に、または該投与の後に投与される。具体的な局面において、治療剤はレボドパである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1A~1Cは、マウスニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPのFANA-ASOによって媒介されるノックダウンを示す。図1A.FANA-ASO配列によって処置されたニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPレベルの蛍光画像。図1B.異なるFANA-ASO配列によって処置されたニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPの蛍光レベルの定量化。図1C.示されたFANA-ASO配列によって処置されたニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPレベルのウェスタンブロット定量化。
図2図2A~2Eは、脳室内注射(i.c.v.)後のマウス脳におけるFANA-ASOの分布を示す。図2Aおよび2B.マウス脳におけるFANA-ASO配列の分布の蛍光画像。図2C.注射されていないマウス脳におけるシグナルの欠如。図2D.パネルBにおいて白いボックスで強調された、注射されたマウスの大脳皮質および線条体におけるFANA-ASOの分布。図2E.大脳皮質におけるNeuNによって標識されたニューロンの細胞体および非ニューロン細胞の内部のFANA-ASOを示す強拡大顕微鏡写真。
図3図3A~3Bは、FANA-ASOによって媒介されるαシヌクレインのノックダウンが、ニューロンにおけるフィブリルによって誘導されるレビー様病態を低減させることを示す。図3A.フィブリルによって誘導されるレビー様病態の低減を示す、FANA-ASO配列によって処置された細胞の蛍光画像。図3B.PFFおよびSyn3またはスクランブルFANA-ASOのいずれかによって同時処置されたニューロンにおけるαシヌクレインレベルの定量化。
図4】αシヌクレインを標的とするFANA-ASO(syn3)の投与後のマウスにおけるαシヌクレインレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、αシヌクレインを標的とする2'-デオキシ-2'-フルオロ-D-アラビノ核酸アンチセンスオリゴヌクレオチド(FANA-ASO)が、αシヌクレインの発現を減少させるために有効であるという独創的な発見に基づく。具体的には、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、ニューロンにおけるαシヌクレインの発現を減少させ、レビー小体(LB)およびレビー神経突起(LN)の病態を減少させ、パーキンソン病などのαシヌクレイン病態を処置するために有効であり得る。
【0016】
本発明の組成物および方法を説明する前に、本発明は、記載された具体的な組成物、方法、および実験条件に限定されず、そのような組成物、方法、および条件は変動し得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるため、本明細書において使用される用語法は、具体的な態様を説明するためのものに過ぎず、限定するためのものではないことも理解されたい。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、前後関係が明確に他のことを指示しない限り、複数形を含む。従って、例えば、「方法」との言及は、本開示等を読めば当業者に明らかになるであろう、本明細書に記載された型の1つまたは複数の方法および/または工程を含む。
【0018】
本明細書において言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、各々、参照により組み入れられると具体的に個々に示されたのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試行において使用され得るが、修飾および変動が、本開示の本旨および範囲に包含されることが理解されるであろう。好ましい方法および材料が、以下に説明される。
【0020】
1つの態様において、本発明は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせより選択される核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。
【0021】
アルファシヌクレイン(αシヌクレイン)は、ヒトにおいては、脳に豊富に存在する、SNCA遺伝子によってコードされるタンパク質であり、心臓、筋肉、およびその他の組織にも少量が見出される。脳において、αシヌクレインは、主に、ニューロンのシナプス前終末に見出される。アルファシヌクレインの機能は十分に理解されていないが、シナプス小胞の可動性を制限し、その結果、シナプス小胞の再利用および神経伝達物質放出を減弱させる役割を果たすことが、研究によって示唆されている。ヒトαシヌクレインタンパク質は、140アミノ酸からなる。
【0022】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、細胞RNA標的とのワトソン・クリック結合によって、特定の遺伝子の発現を阻害するか、またはモジュレートする、短い合成オリゴヌクレオチドである。ASOは、多数の異なるメカニズムを通して作用する。いくつかのASOは、関心対象の遺伝子のmRNAに結合し、細胞翻訳機構のアクセスの遮断(立体的遮断剤)、または酵素的分解(RNAse-H、RNAse-P)の誘導のいずれかによって、発現を阻害する。あるいは、ASOは、典型的には、機能不全タンパク質を修正するために、特定のプレmRNAの相補領域を標的とし、スプライシングをモジュレートすることができる。
【0023】
FANA(2'-デオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノ核酸)アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格と、リボース糖の2'-OH基がフッ素原子に置換された、修飾された隣接(flanking)ヌクレオチドとを含む核酸である。側面(flank)修飾は、分解に対するASOの抵抗性を増加させ、標的mRNAとの結合を増強する。FANA/RNA二重鎖は、二重鎖mRNAの分解を触媒する酵素、リボヌクレアーゼH(RNase H)によって認識される。
【0024】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的とされたmRNAまたはDNAに相補的な一本鎖デオキシリボヌクレオチドである。ASOの、ワトソン・クリック塩基対形成を介した、標的mRNAとのハイブリダイゼーションは、ASOの化学的構成およびハイブリダイゼーションの位置に応じて、様々なメカニズムによって、遺伝子発現の特異的な阻害をもたらし、標的転写物の翻訳レベルの低減をもたらすことができる(Crooke 2004)。本発明のASOは、典型的には、少なくとも1個の糖修飾型ヌクレオシド(例えば、2'FANA)ならびに天然に存在する2'-デオキシヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを包含する(例えば、参照により具体的に組み入れられる米国特許第8,278,103号を参照すること)。ASOによって誘導されるタンパク質ノックダウンは、一般的には、RNase Hエンドヌクレアーゼ活性の誘導によって達成される。活性化された時、RNAse Hは、RNA-DNAヘテロ二重鎖を切断して、標的mRNAの分解をもたらす。これはASOを無傷のままにし、従って、ASOは再び機能することができる。
【0025】
ASOには多くの型があるが、ASO開発における主な発見には、2つの主要な化学的修飾が含まれた。これらの修飾には、2'-フルオロ(2'-F)置換およびホスホロチオエート化学が含まれる。これらの2つの修飾は、より大きい安定性および活性を有する、天然に存在する核酸の合成類似体を構成する。従って、本発明のいくつかの態様は、「FANAアンチセンスオリゴヌクレオチド」(FANA-ASO)と呼ばれる、2'-デオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノ核酸(2'F-ANA)を含有するASOを作製するために、2'-F置換、およびホスホロチオエート化学による糖骨格の修飾を使用する。
【0026】
FANA-ASOは、ホスホロチオエート(PS)骨格を含み、リボース糖上の水酸基が2'-フッ素に置換されている、化学的に修飾された一本鎖合成核酸である。FANA-ASO上の化学的修飾は、ヌクレアーゼに対する抵抗性を提供し、標的結合親和性を増加させ、ASOの薬物動態特性を増強し、インビボでの免疫応答を低減させる。PS修飾は、疎水性の増加および血漿タンパク質に対する高い親和性によって細胞取り込みを促進した。これは、修飾型ASOが、エンドソームを逃避しながら、徐々に脂質二重層を通過し、細胞質および核に入ることを可能にする。さらに、この特色は、FANA-ASOが自己送達可能であるという重要な利点を与える。
【0027】
自己送達は、毒性および製造コストを増加させ得る付加的な製剤化または送達剤の必要性を回避するため、治療剤にとって重要な特徴である。FANA-ASOは、付加的な送達剤を必要とすることなく、複数の投与様式によって動物へ送達され得る。FANA-ASOは、広範囲の生物学的モデルにおいて、遺伝子を標的とするために使用され得ることが示されている。例えば、FANAは、毒性または免疫応答を誘発することなく、インビトロおよびインビボの両方で、T細胞、ニューロン、および幹細胞へ送達されている。FANA-ASOの自己送達能力に加えて、これらの研究は、一連のRNA標的、例えば、mRNA、マイクロRNA、および長鎖ノンコーディングRNAの強力かつ効果的なノックダウンを示している。
【0028】
FANA-ASOは、FANAセグメントが隣接するDNAセグメントを含んでいてもよい。RNAを標的とする時、これらのセグメントは、「ギャップマー(gapmer)」(F-DNA-F)構成または「アルティマー(altimer)」(F-DNA-F-DNA-F)構成のいずれかとして配置される。その設計に応じて、FANA-ASOは、RNA標的に相補的であって、直接的なRNAとの強固な結合(立体的遮断剤)、またはRNAを切断するためのエンドヌクレアーゼ(RNase H)との会合のいずれかによって、RNA機能をモジュレートするよう、作製される。FANA一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RISC複合体を含むRNAi経路とは対照的に、RNA切断を媒介するために、RNase Hを誘発することができる。FANA-ASOは、まず、高度に特異的なワトソン・クリック塩基対形成を使用してRNA標的と結合する。次いで、RNase Hが、RNA/DNAハイブリッドを認識し、ハイブリッド内のRNAを切断する。切断後、断片化されたRNAが、ヌクレアーゼによってさらに分解され、FANA-ASOは再利用される。1つのFANA-ASOが、多コピーのRNAを分解することができ;それによって、効率が増加し、必要投薬量が低減する。FANA-ASOの二重修飾系は、非特異的ハイブリダイゼーションがないことを確実にする。二重修飾系は、(1)骨格修飾および(2)糖上のFANA修飾を含む。これは、FANA-ASOと標的とのワトソン・クリック塩基対形成が、高度に配列特異的になることを可能にする。この目的のために、FANA-ASOは、非特異的細胞に入ったとしても、ヒト内在性遺伝子のいずれともハイブリダイズせず、最終的には分解されるため、これらの細胞への害を引き起こさない。
【0029】
FANAアンチセンスオリゴヌクレオチド
(FANAまたはFANA-ASOとも呼ばれる)2'F-ANAオリゴヌクレオチドの化学および構築は、他の場所に詳細に記載されている(例えば、米国特許第8,278,103号および第9,902,953号を参照すること)。本明細書に開示されるFANA-ASOおよびそれらを使用する方法は、当技術分野において公知の任意のFANA化学を企図する。いくつかの態様において、FANA-ASOは、リン酸を含むヌクレオシド間結合を含み、従って、オリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、糖修飾型ヌクレオシドおよび/または2'-デオキシヌクレオシドは、リン酸を含み、従って、糖修飾型ヌクレオチドおよび/または2'-デオキシヌクレオチドである。いくつかの態様において、FANA-ASOは、ホスホロチオエートを含むヌクレオシド間結合を含む。いくつかの態様において、ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホロチオエート、Rp-ホスホロチオエート、Sp-ホスホロチオエートより選択される。いくつかの態様において、FANA-ASOは、(a)ホスホジエステル;(b)ホスホトリエステル;(c)ホスホロチオエート;(d)ホスホロジチオエート;(e)Rp-ホスホロチオエート;(f)Sp-ホスホロチオエート;(g)ボラノホスフェート;(h)メチレン(メチルイミノ)(3'CH2-N(CH3)-O5');(i)3'-チオホルムアセタール(3'S-CH2-O5');(j)アミド(3'CH2-C(O)NH-5');(k)メチルホスホネート;(l)ホスホロアミデート(3'-OP(O2)-N5');および(m)(a)~(1)の任意の組み合わせより選択される1つまたは複数のヌクレオチド間結合を含む。
【0030】
ある特定の態様において、FANA-ASOは、オリゴヌクレオチド内の任意の位置に2'FANA修飾型ヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様において、糖修飾型ヌクレオチド(例えば、アラビノヌクレオチド類似体[例えば、2'F-ANA])および2'-デオキシリボヌクレオチド(DNA)のセグメントまたは単位を交互に含むFANA-ASOが利用される。いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、糖修飾型ヌクレオチドセグメントおよび2'-デオキシヌクレオチドセグメントの各々を少なくとも2個含み、従って、全体で少なくとも4個のセグメントを交互に有する。交互のセグメントまたは単位は、各々独立に、1個または複数個のヌクレオチドを含有してよい。いくつかの態様において、交互のセグメントまたは単位は、各々独立に、1個または2個のヌクレオチドを含有してよい。いくつかの態様において、セグメントは、各々1個のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、セグメントは、各々2個のヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、複数のヌクレオチドは、2個、3個、4個、5個、または6個のヌクレオチドからなり得る。FANA-ASOは、奇数または偶数のセグメントまたは単位を交互に含有してよく、糖修飾型ヌクレオチド残基またはDNA残基を含有するセグメントで開始してよく、かつ/または終了してよい。従って、FANA-ASOは、以下の通りに表され得る:
A1-D1-A2-D2-A3-D3...Az-Dz
【0031】
ここで、A1、A2等は、各々、1個または複数個(例えば、1個または2個)の糖修飾型ヌクレオチド残基(例えば、2'F-ANA)の単位を表し、D1、D2等は、各々、1個または複数個(例えば、1個または2個)のDNA残基の単位を表す。各単位内の残基の数は、単位間で同じであってもよいし、または可変であってもよい。オリゴヌクレオチドは、奇数または偶数の単位を有し得る。オリゴヌクレオチドは、糖修飾型ヌクレオチド含有単位(例えば、2'F-ANA含有単位)またはDNA含有単位のいずれかで(即ち、5'末端で)開始してよい。オリゴヌクレオチドは、糖修飾型ヌクレオチド含有単位またはDNA含有単位のいずれかで(即ち、3'末端で)終結してよい。単位の総数は、わずか4個(即ち、各型少なくとも2個)であってもよい。
【0032】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、アラビノヌクレオチドおよび2'-デオキシヌクレオチドのセグメントまたは単位を交互に含み、ここで、セグメントまたは単位は、各々独立に、少なくとも1個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドをそれぞれ含む。いくつかの態様において、セグメントは、各々独立に、1~2個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、セグメントは、各々独立に、2~5個または3~4個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、アラビノヌクレオチドおよび2'-デオキシヌクレオチドのセグメントまたは単位を交互に含み、ここで、セグメントまたは単位は、各々1個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドをそれぞれ含む。いくつかの態様において、セグメントは、各々独立に、約3個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、アラビノヌクレオチドおよび2'-デオキシヌクレオチドのセグメントまたは単位を交互に含み、ここで、セグメントまたは単位は、各々1個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドをそれぞれ含む。いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、アラビノヌクレオチドおよび2'-デオキシヌクレオチドのセグメントまたは単位を交互に含み、ここで、セグメントまたは単位は、各々2個のアラビノヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドをそれぞれ含む。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、以下より選択される構造を有する:
a)(Ax-Dy)n I
b)(Dy-Ax)n II
c)(Ax-Dy)m-Ax-Dy-Ax III
d)(Dy-Ax)m-Dy-Ax-Dy IV
ここで、m、x、およびyは、各々独立に、1以上の整数であり、nは、2以上の整数であり、Aは、糖修飾型ヌクレオチドであり、Dは、2'-デオキシリボヌクレオチドである。例えば、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=1、y=1、かつn=10の構造Iを有し、従って、以下の構造:
A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D
を有する。
【0034】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=1、y=1、かつn=10の構造IIを有し、従って、以下の構造:
D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A
を有する。
【0035】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=1、y=1、かつn=9の構造IIIを有し、従って、以下の構造:
A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A
を有する。
【0036】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=1、y=1、かつn=9の構造IVを有し、従って、以下の構造:
D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D-A-D
を有する。
【0037】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=2、y=2、かつn=5の構造Iを有し、従って、以下の構造:
A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D
を有する。
【0038】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=2、y=2、かつn=5の構造IIを有し、従って、以下の構造:
D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A
を有する。
【0039】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=2、y=2、かつm=4の構造IIIを有し、従って、以下の構造:
A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A
を有する。
【0040】
別の例において、本明細書に開示されるFANA-ASOは、x=2、y=2、かつm=4の構造IVを有し、従って、以下の構造:
D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D-A-A-D-D
を有する。
【0041】
表1に示される式は、任意の配列またはその一部分に適用され得、ここで、Xはヌクレオチド(A、C、G、T、またはU)を表し、太字および下線付きのヌクレオチドは、骨格ホスホロチオエート結合を有する糖修飾型または2'F-ANA修飾型のヌクレオチドを表す。
【0042】
(表1)21塩基長FANA-ASO内の例示的な2'FANAヌクレオシドの位置付け
【0043】
FANA-ASO分子および配列の具体例を、表2のSEQ ID NO:1~536に示す。
【0044】
(表2)
【0045】
1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2、30、31、32、33、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、4、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、492、493、493、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。
【0046】
FANA-ASO組成物
いくつかの局面において、オリゴヌクレオチド配列は、RNAの配列に対する相補鎖であり、オリゴヌクレオチド配列は、標的RNAの相補配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0047】
本明細書において使用されるように、「相補的」または「相補性」という用語は、ポリヌクレオチド(即ち、ヌクレオチドの配列)に関して使用され、塩基対形成規則に関連している。例えば、配列5'-A-G-T-3'は、配列「'-T-C-A-5'」に相補的である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対形成規則に従ってマッチする「部分的」なものであり得る。または、核酸間の「完全な」または「全体的な」相補性が存在する場合もある。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して有意な効果を及ぼす。従って、「相補」配列とは、本明細書において使用されるように、オリゴヌクレオチド配列が標的RNAまたは標的DNAの配列に対していくらかの相補性を有することをさす。標的RNAまたは標的DNAとオリゴヌクレオチドとの間の相補性は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であり得る。ある特定の局面において、標的RNAまたは標的DNAは、αシヌクレインをコードするRNAまたはDNAである。
【0048】
本発明の目的のために、「ヌクレオチド配列Xの相補鎖」とは、表されたヌクレオチド配列と二本鎖のDNA分子またはRNA分子を形成することができるヌクレオチド配列であって、シャルガフの規則(A<>T;G<>C;A<>U)に従ってヌクレオチドを相補的なヌクレオチドに置換し、5'から3'への方向に、即ち、表わされたヌクレオチド配列の反対方向に読むことによって、表されたヌクレオチド配列から導出され得るヌクレオチド配列である。本開示に関して、この用語には、DNA/RNAの合成類似体(例えば、2'F-ANAオリゴ)も含まれる。
【0049】
「相同性」または「同一性」という用語は、相補性の程度をさす。オリゴヌクレオチド配列と標的RNAまたは標的DNAの相補配列との間には、部分的な相同性または完全な配列同一性が存在し得る。部分的に同一の配列は、標的RNAまたは標的DNAに少なくとも部分的にハイブリダイズし、部分的なヘテロ二重鎖の形成、および標的RNAまたは標的DNAの部分的または全体的な分解をもたらすオリゴヌクレオチドである。完全に同一の配列は、標的RNAまたは標的DNAに完全にハイブリダイズし、完全なヘテロ二重鎖の形成、および標的RNAまたは標的DNAの部分的または全体的な分解をもたらすオリゴヌクレオチドである。
【0050】
様々な局面において、標的のRNAまたはDNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉(siRNA)、アンチセンスRNA(aRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ロックド核酸(LNA)、転移メッセンジャーRNA(tmRNA)、ウイルスRNA、ウイルスDNA、ポリ核酸環状ssDNA、および環状DNAからなる群より選択される。
【0051】
本明細書において使用されるように、「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドをさし、RNAは、DNA鋳型の転写によって調製されるか、または得られる。本発明によると、核酸は、一本鎖または二本鎖の、直鎖状であるか、または共有結合によって環状に閉鎖された分子として存在し得る。
【0052】
他の局面において、オリゴヌクレオチド配列は、αシヌクレインをコードするRNA配列またはDNA配列などの相補的なRNA配列またはDNA配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせからなる群より選択される核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。ある特定の局面において、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝液;クエン酸緩衝液;アスコルビン酸;メチオニン;オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール;ブチルアルコール;ベンジルアルコール;メチルパラベン;プロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン;ゼラチン;免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン グリシン;グルタミン;アスパラギン;ヒスチジン;アルギニン;リジン;単糖;二糖;グルコース;マンノース;デキストリン;EDTA;ショ糖;マンニトール;トレハロース;ソルビトール;ナトリウム;生理食塩水;金属界面活性剤;非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール(PEG);ステアリン酸マグネシウム;水;アルコール;生理食塩水溶液;グリコール;鉱物油、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0054】
本明細書において使用されるように、「薬学的組成物」とは、活性成分を含み、任意で、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む製剤をさす。「活性成分」という用語は、交換可能に「有効成分」をさすことができ、投与時に所望の効果を誘導することができる任意の薬剤をさすものである。活性成分の例には、化学的化合物、薬物、治療剤、低分子等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、または賦形剤が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、受容者に対しても、製剤の活性成分の活性に対しても無害でなければならないことを意味する。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、当技術分野において周知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、利用される投薬量および濃度で受容者に対して非毒性のものであり、緩衝剤、例えば、リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコール、もしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、およびその他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、もしくはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。担体の例には、リポソーム、ナノ粒子、軟膏、ミセル、マイクロスフェア、微粒子、クリーム、乳濁液、およびゲルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。賦形剤の例には、抗接着剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、結合剤、例えば、糖およびそれらの誘導体(ショ糖、乳糖、デンプン、セルロース、糖アルコール等)、タンパク質、例えば、ゼラチン、および合成ポリマー、滑沢剤、例えば、タルクおよびシリカ、ならびに保存剤、例えば、抗酸化剤、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セレン、システイン、メチオニン、クエン酸、硫酸ナトリウム、およびパラベンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。希釈剤の例には、水、アルコール、生理食塩水、グリコール、鉱物油、およびジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2、30、31、32、33、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、4、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、492、493、493、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、αシヌクレイン発現を減少させる方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、αシヌクレイン発現を低減させることによる、該方法を提供する。1つの局面において、αシヌクレイン発現は、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトにおいて減少する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。ある特定の局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。ある特定の局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、吸入、または噴霧によって投与される。
【0058】
1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2、30、31、32、33、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、4、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、492、493、493、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。
【0059】
アルファシヌクレイン発現レベルは、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、ウェスタンブロットアッセイ、ELISAアッセイ、フローサイトメトリー、またはその他の蛍光ベースのアッセイによって決定され得る。
【0060】
別の態様において、本発明は、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を低減させる方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態を減少させることによる、該方法を提供する。1つの局面において、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態の低減は、ニューロン、オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトにおいて起こる。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。ある特定の局面において、少なくとも、2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。
【0061】
1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2、30、31、32、33、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、4、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、492、493、493、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。
【0062】
本明細書において使用されるように、「αシヌクレイン病」および「αシヌクレイン病態」という用語は、交換可能に使用され、ニューロン、神経線維、またはグリア細胞におけるアルファシヌクレインタンパク質の凝集物の異常な蓄積を特徴とする神経変性疾患をさす。αシヌクレイン病態には、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー病、および多系統萎縮症(MSA)という3つの主要な型がある。
【0063】
パーキンソン病は、αシヌクレイン病態を特徴とし、レビー小体(LB)およびレビー神経突起(LN)は、PD、PDD、および古典的なパーキンソニズム以前の認知症の発症によって区別される関連疾患、DLBの神経病理学的特徴である。これらのニューロン内封入体は、ニューロンおよび赤血球を含む多様な組織において遍在性に発現される熱安定140アミノ酸長タンパク質、αシヌクレインの凝集物から構成される。重要なことに、SNCA遺伝子座の点変異または増幅は、常染色体優性型の家族性PDを引き起こす。
【0064】
LB/LNがシヌクレイン病において果たす役割は、未だ不明である。しかしながら、PD/PDD/DLBにおけるLB/LNの神経解剖学的分布に関する拡張的な死後研究は、いくつかの重要な概念を明らかにした。第1に、LB/LNは、相当のオーバーラップは存在するが、異なるシヌクレイン病態によって変動し、PDのような1つの障害内でさえ変動する、複数のCNS領域に影響を与える。第2に、運動症状および非運動症状は、αシヌクレイン病態の程度およびこれらの影響を受けた区域の機能と強く相関する。第3に、αシヌクレイン病態は、時間の経過と共に、次第に蓄積し、新しいCNS領域に影響を与え、以前に影響を受けた区域においては、病態の重症度が増加する。例えば、PDにおいて、LB/LNは、下部脳幹核、嗅覚核、ならびに皮膚および腸の末梢ニューロンにおいて最初に発生するが、これは、前駆症状が主に胃腸、感覚、および睡眠に関係していることと一致する。中側頭(midtemporal)皮質のLB/LNは、幻覚に関連しており、中脳LBの出現は、古典的な運動症状の開始と一致し、その後、新皮質の関与が典型的には最後に起こる。一部の患者はこのパターンから逸脱するが、患者の大部分が、このステレオタイプのαシヌクレイン病態の進行を示すようである。
【0065】
アルファシヌクレイン病態は、PDにおいて進展する。影響を受けたCNS領域から影響を受けていないCNS領域への経時的な進行的かつ連続的なLB/LNの拡散は、患部ニューロンから健常ニューロンへの病原体または病原過程の伝達と一致する。実際、LB/LNは、PDの初期に、胃腸ニューロン、心臓ニューロン、および嗅覚ニューロンにおいて高頻度に検出され、このことは、拡散が長距離に起こり得ること、開始病原イベントが環境に由来し得ることを示唆している。次いで、迷走神経の背側運動核(DMV)などの脳幹核が、この病原過程およびLB/LNが中脳および新皮質などの高次領域に進行するための中間部位として機能する可能性がある。実際、迷走神経切除術は、ヒトにおいてPDに対して保護的であるようである。PDにおける伝達性病原体がαシヌクレイン自体であり得ることを示す最初の手がかりのうちの1つは、PD患者に移植された中脳ニューロンにおけるLBの時間依存的な形成を示す死後研究から来ている。より最近、合成αシヌクレインPFFが、αシヌクレイン発現細胞、例えば、培養ニューロンにおいて不溶性PD様LB/LNの形成をシーディング(seed)することが証明された。LB/LNが有害であることと合致して、このPD様αシヌクレイン病態は、培養海馬ニューロンにおいて、シナプス機能障害を誘導し、最終的には細胞死を誘導する。多様な遺伝的背景の野生型マウスへのマウス(Mse)αシヌクレインPFFの脳内注射は、複数の接続されている領域、例えば、SNpcにおいて多量のLB/LNの形成を誘導し、それらの領域は、LB/LNが蓄積するにつれて次第に変性し、線条体DAの喪失および運動機能の障害をもたらすことが示されている。αシヌクレインPFFは、宿主によって発現されたαシヌクレインの病理学的変換を誘発するが、Snca-/-マウスにおいて、αシヌクレイン発現の非存在下では、PFFは非毒性であり、病態を誘導しないことが、生化学的分析によって示されている。
【0066】
細胞表面タンパク質または分泌型タンパク質とは対照的に、軸索に沿っての進展が、αシヌクレインおよびタウなどの細胞内タンパク質についての論理的候補である。αシヌクレインPFF注射後のマウスに由来する脳の調査は、LB/LN形成が、最初は注射の部位において起こるが、注射部位に接続された付加的な求心性ニューロンおよび遠心性ニューロンへ迅速に伝播することを示した。A53Tヒトαシヌクレインを過剰発現するトランスジェニックマウス(M83系統)において、線条体および皮質に注射されたPFFは、視床、脳幹のみならず、前頭皮質領域においても、相当の病態を発生させるが、注射されていない症候性M83動物においては、病態が乏しいか、または存在しない。これらの動物は、注射部位から相当離れた反対側に位置する複数の核、例えば、直接入出力投射を欠くもの(例えば、脊髄および深部小脳核)にもLB/LNを示し、このことは、病理学的αシヌクレインの細胞間拡散と一致する。多量のαシヌクレイン沈着物が、中間白質路に沿っても発生し、このことは、軸索路に沿って、おそらくシナプスを介して、病態が進展したことを示唆している。注射部位の内外に投射するニューロンにおいて優先的に病態が形成されるという観察は、野生型マウスにも当てはまる。例えば、背側線条体PFF注射は、確立されている黒質線条体路、皮質線条体路、および扁桃線条体路と一致して、SNpc(片側)、皮質層4/5(両側)、および扁桃体(両側)において顕著な病態を生じた。封入体は、注射部位との直接の接続を欠くいくつかのニューロン(例えば、嗅覚僧帽弁細胞)においても検出され、このことは、複数のシナプスを介したαシヌクレイン病態の拡散を示唆する。さらに、海馬へのPFF注射は、皮質下、中脳、および脳幹の構造の大部分を温存しながら、複数の皮質領域および扁桃体においてLB/LN形成をもたらした。従って、αシヌクレインPFFは、LB/LN形成を通して毒性を誘導する伝達性自己進展病原体の全ての重要な特色を示す。実際、ミスフォールド型αシヌクレインは、感染性の顕著な例外を除き、プリオンに特徴的な要素を示す。
【0067】
「治療的に有効な量」、「有効用量」、「治療的に有効な用量」、「有効量」等の用語は、研究者、獣医師、医師、またはその他の臨床家によって求められている、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的な応答を誘発するであろう本発明の化合物の量をさす。一般に、応答は、患者における症状の寛解または所望の生物学的転帰のいずれかである。
【0068】
「の投与」およびまたは「を投与すること」という用語は、治療的に有効な量の薬学的組成物を、処置を必要とする対象へ提供することを意味すると理解されるべきである。投与経路は、経腸、局所、または非経口であり得る。従って、投与経路には、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、吸入、または噴霧が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、本明細書において使用されるように、経腸投与および局所投与以外の投与様式を意味する。
【0069】
1つの態様において、本発明は、パーキンソン病またはその症状を防止および/または処置する方法であって、その必要がある対象に、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドを投与し、それによって、パーキンソン病を防止および/または処置することによる、該方法を提供する。1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与は、細胞におけるαシヌクレインの発現を減少させる。ある特定の局面において、細胞は、ニューロン;オリゴデンドロサイト、および/またはアストロサイトである。様々な局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、皮内(intracutaneous)、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradermal)、経皮、経気管、表皮下、関節内、脳室内、被膜下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下、頬側、直腸内、膣内、眼内、注入、吸入、または噴霧によって投与される。1つの局面において、対象はヒトである。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドを有する。さらなる局面において、少なくとも1個の2'FANA修飾型ヌクレオチドは、式1~16のいずれかに従うオリゴヌクレオチドの中に位置付けられている。ある特定の局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1~536の核酸配列を有する。さらなる局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:525または527の核酸配列を有する。別の局面において、レビー小体および/またはレビー神経突起の病態が低減する。さらなる局面において、治療剤が投与される。さらなる局面において、治療剤は、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドの投与の前に、該投与と同時に、または該投与の後に投与される。ある特定の局面において、治療剤はレボドパである。
【0070】
1つの局面において、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、2、30、31、32、33、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、4、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、492、493、493、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、またはそれらの組み合わせの核酸配列を有する。
【0071】
本明細書に提供される組成物の「有効量」という用語は、有効量が表される、指定された機能を果たすことができる組成物の量をさす。正確な必要量は、含まれる組成物および過程などの認識されている変数に応じて、組成物によって、機能によって変動し得る。有効量は、1回または複数回の適用で送達され得る。従って、正確な量を指定することはできないが、適切な「有効量」は、ルーチンの実験を介して当業者によって決定され得る。
【0072】
本明細書において使用されるように、疾患を「防止すること」とは、疾患の完全な発症を阻害することをさす。
【0073】
「処置」という用語は、「治療法」という用語と交換可能に本明細書において使用され、1)診断された病理学的状態または障害を治癒させ、緩徐化し、その症状を軽減し、かつ/またはその進行を止める治療的な処置または措置、および2)予防的/防止的措置の両方をさす。処置を必要とする者には、特定の医学的障害を既に有する個体、および最終的に障害に罹患する可能性のある個体(即ち、防止措置を必要とする個体)が含まれ得る。
【0074】
いくつかの局面において、投与は、1つまたは複数の付加的な治療剤と組み合わせられてもよい。「組み合わせ治療」、「と組み合わせる」等の語句は、応答を増加させるための、複数の薬物治療または処置の同時使用をさす。本発明の組成物は、例えば、パーキンソン病を処置するために使用されている他の薬物または処置と組み合わせて使用され得る。
【0075】
以下の実施例は、本発明の態様をさらに例示するために提供されるが、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【実施例
【0076】
実施例1
マウスニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPの、FANA-ASOによって媒介されるノックダウン
最も強力なFANA-ASOを同定するために、SNCA遺伝子に対してFANA-ASOをスクリーニングした。初代皮質ニューロン培養物を、生後1日目のαシヌクレイン-GFPノックイン(SncaGFP/GFP)マウスから調製し、ポリD-リジンによってコーティングされた96穴プレートに60,000細胞cm-2で播種した。インビトロ7日目(DIV)に、最終濃度1μMで、αシヌクレインを標的とするFANA-ASO(Syn1/AUM)またはスクランブル配列によって、培養物を処置した。FANA-ASOによる処置後14日目にニューロンを画像化し、20倍の倍率でGFPチャンネルにおいて蛍光顕微鏡法を使用してαシヌクレイン-GFPレベルを可視化した(図1A)。異なるFANA-ASO配列によって処置されたニューロンにおけるαシヌクレイン-GFPの蛍光レベルを定量化した。データは個々のウェルからの値(+/- SD、各条件n=3)を表す(図1B)。その分析との相関があるか否かを決定し、類似のパターンを観察するために、タンパク質レベルを評価した。2種のFANA-ASOによって、SNCAの90%超のノックダウンが観察され、それらをリード化合物として同定した(図1C)。
【0077】
実施例2
インビボでのFANA-ASOの体内分布
治療モダリティについての最も重要な局面のうちの1つは、効率的なインビボ送達である。FANA-ASOは、送達製剤またはコンジュゲートなしに、いくつかの型の細胞に入ることができる。さらに、FANA-ASOは、複数の投与様式を介してインビボで使用され得る。予備的研究において、FANA-ASOを、動物の大脳皮質においてニューロンおよび非ニューロン細胞へ自己送達する能力について評価した。脳室内注射によって、FANA-ASOの広範かつ効率的な分布が、マウス脳において観察された(図2)。スクランブル配列を含有するFANA-ASOを、蛍光色素Cy5によって標識し、成体C57Bl6/C3Hマウスに注射した。注射は、Neurostarデジタル注射ユニットに接続された32ゲージのハミルトンシリンジを使用して、右室への単回脳室内(i.c.v.)注射を介して行われた(10μL PBS中100μgの全FANA-ASO)。マウス(n=2)を48時間後に屠殺し、脳内の分布を可視化するために、Cy5フィルターセットを使用した蛍光顕微鏡法によってFANA-ASOを検出した(図2A~B)。ニューロンを明らかにするために、NeuNに対する免疫染色を実施し、細胞核を標識するために、DAPIを使用した。FANA-ASOは、注射されたマウスの大脳皮質および線条体において検出された(図2Bの強調されたパネル)。強拡大顕微鏡写真は、大脳皮質におけるNeuNによって標識されたニューロンの細胞体および非ニューロン細胞の内部のFANA-ASOを示す。
【0078】
実施例3
FANA-ASOによって媒介されるαシヌクレインのノックダウンは、ニューロンにおけるフィブリルによって誘導されるレビー様病態を低減させる
SNCAのノックダウンがニューロンにおけるフィブリルによって誘導されるレビー様病態を低減させるか否かを決定するための実験を実施した。胎齢16~18日の野生型(CD-1)マウスから調製された初代海馬ニューロンを、ポリD-リジンによってコーティングされた96穴プレートに播種した。αシヌクレインを標的とするFANA-ASO(Syn3/AUM;最終濃度1μM)またはスクランブル配列を、DIV8に、培養物に添加した。組換えαシヌクレインの事前形成フィブリル(PFF;70nM最終濃度)を、レビー様病態を誘導するために、4時間後に添加した。PFF/FANA-ASOによる処置の12日後に、ニューロンを4%PFAで固定した。病理学的αシヌクレイン封入体を、Ser129でリン酸化されたαシヌクレインについての蛍光免疫細胞化学(pSyn;mAbクローン81A)を使用して可視化した。ニューロンの細胞体および突起を明らかにするために、微小管関連タンパク質2(MAP2)に対する抗体によって培養物を同時染色した(図3A)。さらに、培養物の20倍画像から、PFFおよびSyn3またはスクランブルFANA-ASOのいずれかによって同時処置されたニューロンにおいて、ホスホSer129αシヌクレインレベルを定量化した(図3B)。データは、MAP2に対してノーマライズされたホスホSer129αシヌクレインレベルの平均値+/-SD(各条件n=5)を表す。** p<0.01 両側t検定。
【0079】
実施例4
次世代自己送達可能FANA配列の最適化
上記の研究は、FANA-ASOが、SNCA遺伝子を効果的に阻害し、αシヌクレインの産生を選択的に阻害することができることを示した。これは、ニューロンにおけるフィブリルによって誘導されるレビー様病態を低減させた。SNCA遺伝子発現を90%超減少させる2種のFANA-ASO配列が同定されており、他のリード化合物が同定され、最適化されるであろう。各FANA-ASOは、配列および設計という2つの因子を含む。配列は、オリゴを構成するヌクレオチド塩基対の実際の順序である。専有アルゴリズムは、免疫応答を最小限に抑えながら、安定的かつ効率的である可能性が最も高いDNA配列を決定する。設計には、RNase Hに対して活性であるか不活性であるかのみならず、オリゴ上の各ヌクレオチドがDNAヌクレオチドであるか修飾型FANAヌクレオチドであるかも包含される。1塩基対の変化でさえ、大幅に異なる結果をもたらし得るため、多様な可能な配列を試験する価値がある。現世代のFANAテクノロジーの化学、具体的には、FANAのフッ素に関連する立体電子効果は、これらのオリゴヌクレオチドに、RNA標的との高度に配列特異的な増強されたハイブリダイゼーションを提供する。研究は、FANA-ASOが、1ヌクレオチドのワトソン・クリック塩基対分解能で、標的特異性を有するように設計され得ることを証明している。この特異性は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の研究においてさらに証明され;標的配列に対する1塩基対ミスマッチを含んで設計されたFANA-ASOは、完全な機能喪失をもたらした。インビトロアッセイが、将来の化合物を同定するために実施されるであろう。SNCA mRNAの異なる領域を標的とする新たなFANA-ASO配列が設計されるであろう。さらに、αシヌクレインを天然に発現するヒト細胞株およびiPSC由来ニューロンにおいて、FANA-ASOの有効性が評価されるであろう。現世代のFANAテクノロジーの化学、具体的には、FANAのフッ素に関連する立体電子効果は、これらのオリゴヌクレオチドに、RNA標的との高度に配列特異的な増強されたハイブリダイゼーションを提供する。
【0080】
予備的研究は、およそ10の配列を含んでいたが、より最適な配列が存在する可能性は極めて高い。SNCAに対する、およそ20の新たなFANA-ASOを開発し、キーコントロール(key control)としてAUM-PD-001およびAUM-PD-003を使用して、SNCAのノックダウンにおける有用性を比較する。ニューロンにおけるフィブリルによって誘導されるレビー様病態を低減させる能力と共に、SNCAのmRNAおよびタンパク質のレベルを、それぞれ、qPCRおよびウェスタンブロットによって定量化する。さらに、リード化合物AUM-PD-001およびAUM-PD-003(SEQ ID NO:7および9)ならびに新たな研究から選択された1~2種のバックアップASOを含む、異なるFANAのギャップマー設計およびアルティマー設計の効果を試験することによって、FANAの安定性および機能を増加させるための研究を実施する。FANA修飾型塩基の長さおよび順序を容易に変化させることができ、それによって、サイレンシングプロファイルを劇的に変更することができる。
【0081】
前記のような単回処置の3日後、7日後、および10日後に、αシヌクレイン-GFPニューロンに対してFANA ASOをスクリーニングする。各FANA ASOを、7つの濃度(5、25、100、500、および5,000nM)で試験する。スクランブルFANA ASOを陰性対照として使用する。AUM-PD-001およびAUM-PD-003と等しいか、またはそれを超えるノックダウン効率またはIC50値を示すものとして、活性FANA ASOを定義する。全ての細胞ベースの実験を、96穴プレートフォーマットで実行し、各条件を1ラン当たり3ウェル以上で試験する、3回以上の独立した試験を行う。次いで、SNCAのmRNAおよびタンパク質のレベルを測定するために、それぞれ、qPCRおよびウェスタンブロットを使用して、ノックダウンを確認する。確認されたFANA ASOを、前記のように、野生型ニューロンにおける組換えマウスPFFによって誘導される病態を低減させる能力についても試験する。別の目的は、リード化合物AUM-PD-001およびAUM-PD-003ならびに新たな研究から選択された1~2種のバックアップASOを含む、異なるFANAのギャップマー設計およびアルティマー設計の効果を試験することによって、FANAの安定性および機能を増加させることである。FANA修飾型塩基の長さおよび順序を容易に変化させることができ、それによって、サイレンシングプロファイルを劇的に変更することができる。
【0082】
試験された全てのFANA ASOが、インシリコでヒトSNCAを標的とすると予想されるが、それらの配列がヒトSK-MEL30メラノーマ細胞およびiPSCから分化したグルタミン酸作動性皮質第5層ニューロン(BrainXell,Madison,WI)においてαシヌクレインを効果的にノックダウンすることを確実にするために、新たに同定された候補を評価する。両細胞型は、αシヌクレインを天然に発現することが示されている。同定されたFANA ASOの大部分が、マウス細胞およびヒト細胞の両方においてαシヌクレインをノックダウンするであろう。ニューロンへの自己送達が選択の基準であるため、ヒト細胞におけるダウンレギュレーションを確認するために、qPCRおよびウェスタンブロッティングが使用されるであろう。ヒトαシヌクレインはマウスαシヌクレインよりおよそ10倍遅く凝集することが示されており、従って、PFFシーディングはiPSCニューロンにおいて示されているが、ここで、この状況においては、FANA ASOを試験しない。
【0083】
実施例5
PDのインビボモデルにおけるリードFANA-ASO化合物の評価
PD患者におけるレビー病態の分布は、症状の性質および重症度と密接に相関する。LB/LNは、時間の経過と共に、影響を受けたCNS領域から影響を受けていないCNS領域への病理学的αシヌクレインの連続的な拡散と一致する、不均一なステレオタイプのパターンで発達する。非トランスジェニックマウスの背側線条体へのマウスαシヌクレインPFFの定位注射は、相互に接続された領域、例えば、黒質において、多量のレビー病態の形成を誘導し、それらは漸進的に変性し、線条体ドーパミンの喪失および運動機能の障害をもたらすことが示されている。αシヌクレインPFFは、宿主によって発現されたαシヌクレインの病理学的変換を誘発するが、Snca-/-マウスにおいて、αシヌクレイン発現の非存在下では、PFFは、非毒性であり、病態を誘導しないことが、生化学的分析によって示されている7。重要なことに、これらのモデルは、ラット、マーモセット、およびマカクザルにおいても複製されている。変更されたαシヌクレイン種が、PD患者の脳脊髄液中で上昇すること、PD患者およびDLB患者の脳から単離されたホモジネートが、げっ歯類および非ヒト霊長類においてレビー病態をシーディングすることを示す研究は、シーディング可能なαシヌクレイン種がヒトPDにおいて存在することを示している。候補FANA ASOが、インビボでαシヌクレインレベルをノックダウンし、かつ、レビー病態の形成を低減させることによって、αシヌクレインによって媒介される神経変性に対する保護を提供するか否かのバリデーション。
【0084】
αシヌクレインノックダウンのための投薬を決定するために、2~3ヶ月齢のwtマウス(C57BL6/C3H F1;Jackson Laboratories)を、リードFANA ASOまたはスクランブルFANA ASOの単回投与(100μg、300μg、または700μg、i.c.v.)によって一方の半球において処置する。コホート(各性別n=3)を、処置の1ヶ月後に屠殺する。次いで、各半球を解剖し、Snca mRNAおよびαシヌクレインタンパク質についてアッセイする。FANA ASOによる神経保護を査定するために、組換えマウスαシヌクレインPFF(2μL PBS中の5μg αシヌクレイン)の単回片側注射を、若齢wtマウスの背側線条体を標的として行う。高いαシヌクレインシーディング能力を有し、タウなどの他のタンパク質をクロスシーディング(cross-seed)しないPFFを生成するために、以前にバリデートされた条件を使用する。定位法が確立されている。PBSを注射された動物を、陰性病態対照として使用する。PFF接種の2週間前に、コホートは、病態によってシーディングされる予定の半球に、リードFANA ASOまたはスクランブルFANA ASOのいずれかの単回投与を受ける。コホートは、注射の3ヶ月後または6ヶ月後のいずれかに運動行動分析(ロータロッド試験およびワイヤーハング試験)を受け、次いで、脳の組織学的査定のために屠殺される。これらの時点は、以前に決定されたように、ピークのαシヌクレイン病態および最大の黒質ニューロン喪失を表す。(0.05のレベルおよび0.8の検出力で)病態またはニューロン数の20%超の差を検出する必要に基づき、そして以前の研究において観察された約15%というCVを仮定して、各コホート12匹の動物を使用する。PFA(4%)で固定された脳を、コンプレストーム(compresstome)を使用して40μmに切片化する。αシヌクレイン抗体のパネル、例えば、ヒト脳において正常シナプスαシヌクレインよりレビー病態を優先的に染色することが以前に証明された抗ホスホαシヌクレイン(ホスホSer129αシヌクレイン)およびSyn506によって、1:6系列の切片を免疫染色する。汎αシヌクレイン抗体(SNL4)による染色を、初期投薬研究と一致するノックダウンを確認するために使用する。黒質ドーパミンニューロン喪失を決定するために、立体学的定量化のためのニッスル対比染色と共に、ドーパミンニューロンを標識するように、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)について隣接切片系列を染色する。画像をデジタル化し(Laminaスキャナー、Perlin-Elmer)、αシヌクレイン+封入体の分布/数などの組織学的データを抽出するために、使用する。
【0085】
実施例6
リード化合物の遺伝毒性学、薬物動態、およびADME研究
いくつかの研究において、毒性または自己免疫の誘導と一致する、肝臓トランスアミナーゼ、腎機能(BUN、Cr)、血液学的パラメータ、大腸炎、高血糖、または組織学的特色に対するFANA投与の有意な効果は見られていない。しかしながら、リード化合物は、薬物代謝、薬理学、および毒性パラメータについて査定される必要がある。いくつかの小規模のPK/PD研究およびADME研究を、治療域を定義し、さらなる最適化を知らせるために実施する。代謝的安定性および代謝産物同定も、血漿タンパク質結合アッセイと共に実施する。最小数の動物を使用し、リード化合物の特徴決定を開始するために、標準的なインビボPK/PD試験を実行する。
【0086】
安全性薬理学および毒性学研究における用量および投与頻度を設定するための基礎として、げっ歯類と比較した時の高等種におけるADMEの違いを特徴決定するために、そしてアロメトリックスケーリングを使用したヒトにおけるクリアランスおよび分布体積などの薬物動態パラメータの予測において、6~8週齢ラットから得られたPKデータを使用する。血液試料を、投与前、ならびに投与の0.083時間後、0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および24時間後に収集し、24時間後に尿も収集し、血漿タンパク質結合に関するデータと共に、LCMSMSによってFANAレベルを決定する。肝細胞における異種間代謝を、インビトロで査定する。細菌逆変異(エイムス)試験、インビトロ小核試験、およびげっ歯類骨髄小核試験を含む(が、これらに限定されるわけではない)インビトロ遺伝毒性試験を実施する。このモデルにおける遺伝毒性効果の欠如は、後の開発段階での分子の失敗のリスクを減少させると考えられる。
【0087】
実施例7
αシヌクレインを天然に発現するヒト細胞株およびIPSC由来ニューロンにおける、自己送達型FANA-ASOによるSNCAの低減
FANA-ASOは、他のRNAサイレンシングテクノロジーと比べて、自己送達を含む独特の利点を提供する。さらに、FANA-ASOは、細胞毒性または免疫応答を引き起こさない。RNAiアプローチまたはCRISPRアプローチとは異なり、FANA-ASOは、インビトロ研究および動物研究の両方において、送達剤が細胞(例えば、標的とすることが困難な免疫細胞)によって取り込まれることを必要としない。さらに、FANA-ASOは、細胞毒性を引き起こさず、明らかな免疫応答を有しない。この目的のために、αシヌクレインを天然に発現するヒト細胞株およびiPSC由来ニューロンにおけるSNCA遺伝子の配列特異的阻害を達成するFANA-ASOの能力を評価する。
【0088】
実施例8
SNCAのノックダウンは、PDのモデルにおいてαシヌクレイン産生の阻害およびレビー様病態の阻害を引き起こす
FANA-ASOは、多様なRNA標的を配列特異的にサイレンシングするために、インビボで使用され得る。第3世代ASO化学によるSNCAのノックダウンは、既存のASO化学よりはるかに優れた有効性を有することが示されるであろう。SNCAのノックダウンは、αシヌクレイン産生の阻害およびαシヌクレイン病態の低減によって、疾患の防止をもたらす可能性がある。αシヌクレイン産生の阻害は、αシヌクレイン凝集物形成の低減を助け、ニューロン機能を改善する。これは、ドーパミン作動性細胞の喪失および/または機能不全の防止ももたらす。さらに、SNCAの拡張的な阻害は、確立された凝集物の病態を低減させ、ドーパミンニューロン喪失を防止する。
【0089】
実施例9
FANA-ASOはSNCAを一過性にサイレンシングする
SNCAの一過性ノックダウンは、永久ノックダウンによってもたらされる可能性のある永久的な欠陥の危険性を回避し、従って、遺伝子ノックアウト戦略に共通する別の問題を回避する。
【0090】
実施例10
脳室内投与後の脳内αシヌクレインレベルの、FANA-ASOによって媒介されるノックダウン
C57Bl6/C3Hマウスを、単回i.c.v.注射を介して、αシヌクレインを標的とするFANA-ASO(syn3)によって処置した。マウスは、Neurostarデジタル注射単位に接続された32ゲージのハミルトンシリンジを使用して、5μL PBS中の94μgまたは190μgのいずれかの全FANA-ASOを受容した。未処置マウスを対照として使用した。マウス(各アームn=4~6)を4週間後に屠殺した。脳を採集し、注射された半球を、プロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液中でホモジナイズした。(4.8mg湿組織重量を表す)等量の各ホモジネートを、SDS-PAGE(4~20%)によって分離し、ニトロセルロース膜に転写し、(αシヌクレインを認識する)mAb Syn9027を使用してイムノブロットした。αシヌクレインの相対量をグラフに示す(丸=未処置;四角=94μg FANA-ASO;三角=190μg FANA-ASO)。
【0091】
記載されたFANA-ASOを使用したノックダウンの後に達成された脳内αシヌクレイン濃度は、ヘミ接合性αシヌクレインノックアウトマウスに存在するαシヌクレイン濃度に匹敵する。マウスにおける以前の研究は、遺伝学的手段による脳内αシヌクレインレベルのこのレベルの低減が、脳におけるαシヌクレイン病の蓄積に対する有意な保護を提供し、その結果としての行動的効果を提供することを示した。以前のインビトロおよびインビボの研究は、αシヌクレインレベルのASOによって媒介される低減が、培養されたニューロンおよびインビボにおいて、αシヌクレイン病の蓄積も低減させることも示している。本明細書に記載されたFANA-ASOは、約750ug/匹という他の研究において使用された用量より低い投薬量、94~190ug/匹のFANA-ASOで、類似のノックダウンを達成した。
【0092】
αシヌクレイン低減のこの大きさは、αシヌクレインのミスフォールド型および/または毒性型の蓄積を遅らせ、それによって、ニューロン機能障害および毒性を減弱させることによって、αシヌクレイン病(即ち、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)の処置において有益であると予測される。脳内αシヌクレインレベルの低減は、神経系の未だ影響を受けていない区域へのαシヌクレイン病の細胞間伝達の効率を減少させることによって、これらの障害の進行(例えば、新たな運動症状、認知症状、または自律神経症状の発症)を遅らせることも予想される。アルツハイマー病患者のおよそ半数が検出可能なレビー病態を有し、そのような病態はより重度の症状と相関するため、FANA-ASOによるαシヌクレインレベルの低減は、この状態においても利益を提供すると予想される。
【0093】
実施例11
動物モデルにおける、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOの効果
FANA-ASOによって媒介されるαシヌクレインノックダウンがシヌクレイン病における神経保護を提供することをさらに証明する目的で、αシヌクレイン病の確立された動物モデル、例えば、レビー様病態をシーディングするために、組換えフィブリルが野生型マウスの脳に定位接種される、αシヌクレイン事前形成フィブリルモデルにおいて、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOを試験する。
【0094】
病態を開始させるために、野生型(Charles River Laboratoriesから調達されたC57Bl6/C3H)マウスに、野生型マウスαシヌクレインから組み立てられた事前形成フィブリル(PFF)を定位注射する。PFF(5mg/mL)を、1.5mLエッペンドルフチューブにおいて無菌PBSで2mg/mLに希釈し、10℃に設定されたハイパワーのBioruptor Plusを使用して、10サイクル(30秒オン、30秒オフ)の超音波処理を行う。全部で2.5μLの超音波処理されたPFFを、(ケタミン/キシラジン/アセプロマジン(60~100mg/kg;8~12mg/kg;0.5~2mg/kg)をi.p.投与された)麻酔下の2~3ヶ月齢マウスの背側線条体に定位注射する。電動定位装置(Kopf Instruments)およびマイクロインジェクター(NeuroStar)を、接種物が充填された32ゲージの10μLハミルトンシリンジに接続し、0.4μL/分の速度で、以下の座標(ブレグマに対して前/後:10.2mm、横:2.0mm、深さ:2.6mm)を標的とする。注射後、頭皮をナイロン縫合糸で閉じ、1mLの温生理食塩水のボーラス(s.c.)をマウスに与え、ケージに戻す前に加温ランプ下で回復させる。全てのマウスが、単回片側PFF注射を受容する。
【0095】
PFF注射の1週間後、FANA-ASO(αシヌクレインまたはスクランブル対照配列のいずれかを標的とするもの)によってマウスを処置する。前記のようにマウスに麻酔をかけ、FANA-ASO(5μL PBSで希釈された0μg、94μg、190μg、380μg、または750μg、各アームn<6)を、0.5μL/分の速度で、電動定位装置およびマイクロインジェクターを使用して、脳室内(i.c.v.)注射によって投与する。i.c.v.注射のために使用される座標(ブレグマに対して前/後:+0.3mm、横1.0mm、深さ:3.0mm)。注射後、頭皮を外科用接着剤(Vetbond)で閉じ、1mLの温生理食塩水のボーラス(s.c.)をマウスに与え、加温ランプ下で回復させる。処置されたマウスをケージに戻し、飼料および水を自由摂取させ、12時間暗/明サイクルで維持する。マウスのサブセットに、PFF注射の3ヶ月後にFANA-ASOの2回目を投与する。
【0096】
αシヌクレイン病の低減および中脳ドーパミン作動性ニューロンの保護における、αシヌクレインを標的とするFANA-ASOの効果を決定するために、PFF注射の3ヶ月後または6ヶ月後のいずれかに、屠殺前に、運動能力についてマウスを査定する。マウスの全肢の握力を、動物用握力試験(IITC 2200)を使用して測定する。この試験のために、グリッドをデジタル力変換器に取り付ける。マウスを静かな行動試験スイートに移動させ、1時間順応させる。各マウスを尾の付け根で保持し、全肢でグリッドに掴まらせる。5回の試験の最大握力を記録し、5回全ての測定値の平均値を報告する。加速ロータロッド(MED-Associates)を、運動協調を査定するために使用する。マウスは2回の訓練セッションおよび2回の試験セッションを受ける。訓練セッションにおいては、マウスを、静止したロッドの上に置く。次いで、ロッドが、5分で毎分4回転(rpm)から40rpmまで加速し始める。訓練セッションと試験セッションとの間に少なくとも1時間、マウスを休息させる。試験セッションにおいては、マウスを上記と同じように扱い、落下までの時間を記録する。マウスが、歩行するのではなく、ロッドを掴み、ロッドと共に回転した場合にも、試験を終了させる。マウスは、最大10分間、ロッドの上に置かれる。
【0097】
マウスを、生理食塩水、続いて、PBS中の4%パラホルムアルデヒドによる経心腔的灌流によって屠殺する。開頭術後に脳を摘出し、4℃で一晩、後固定し、切片化のためにパラフィンで包埋する。灌流および固定の後、脳をパラフィンブロックで包埋し、6μmの切片に切断し、スライドガラス上に乗せる。次いで、スライドを、下記のように、標準的な免疫組織化学を使用して染色する。スライドを、キシレンで、連続的に2回、5分間洗浄することによって脱パラフィンし、続いて、エタノール下降系列:100%、100%、95%、80%、70%で1分間洗浄する。次いで、スライドを脱イオン水中で1分間インキュベートした後、前述のように抗原賦活化する。抗原賦活化後、内在性ペルオキシダーゼ活性をクエンチングするために、スライドをメタノール中の5%過酸化水素中でインキュベートする。スライドを、水道水の流水で10分間、0.1Mトリスで5分間洗浄し、次いで、0.1Mトリス/2%ウシ胎児血清(FBS)でブロッキングする。スライドを一次抗体中で一晩インキュベートする。以下の一次抗体を使用する。ミスフォールド型αシヌクレインのために、mAb Syn506を、マイクロ波抗原賦活化(クエン酸ベースの抗原アンマスキング溶液(Vector H-3300)で95℃、15分間)によって、0.4μg/mLの最終濃度で使用する。中脳ドーパミン作動性ニューロンを染色するために、チロシンヒドロキシラーゼ(TH-16)を、ギ酸抗原賦活化によって、1:5000で使用する。一次抗体を0.1M Trisで5分間洗い流し、次いで、0.1M Tris/2%FBS中の1:1000のヤギ抗ウサギ(Vectorカタログ番号BA1000、RRID:AB_2313606)またはウマ抗マウス(Vectorカタログ番号BA2000、RRID:AB_2313581)ビオチン化IgGと共に1時間インキュベートする。ビオチン化抗体を0.1M Trisで5分間洗い流し、次いで、アビジン-ビオチン溶液(Vectorカタログ番号PK-6100、RRID:AB_2336819)と共に1時間インキュベートする。次いで、スライドを0.1Mトリスで5分間洗い流し、ImmPACT DABペルオキシダーゼ基質(Vectorカタログ番号SK-4105、RRID:AB_2336520)で現像し、ハリスヘマトキシリン(Fisherカタログ番号67-650-01)で短時間対比染色する。スライドを水道水の流水で5分間洗浄し、上昇するエタノール:70%、80%、95%、100%、100%で各々1分間脱水し、次いで、キシレンで5分間2回洗浄し、Cytoseal Mounting Media(Fisherカタログ番号23-244-256)にてカバーガラスで覆う。次いで、スライドを、Perkin-Elmer Laminaを使用した定量的病理学のためにデジタル化した。
【0098】
分析のために、切片の選択、注釈付け、および定量化は、処置群に関して盲検的に行われる。全ての定量化を、HALO定量的病理学ソフトウェア(Indica Labs)において実施する。中脳を通る10枚目毎のスライドを、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)によって染色する。THによって染色された切片を、黒質(SN)を注釈付けするために使用し、細胞計数を、全ての切片について盲検的に手動で実施する。全切片を計数することによって得られる総数を推定するために、全ての切片の合計に10を掛ける。次いで、THによって染色された切片に付けられたSN注釈を、ミスフォールド型αシヌクレイン(mAb Syn506)について染色された連続切片に移す。扁桃体領域も、扁桃体の縦方向の10枚目毎の切片において注釈付けする。次いで、Syn506染色が占める面積の割合を定量化するために、単一の分析アルゴリズムを、全ての染色された切片に等しく適用する。具体的には、バックグラウンドシグナルを含まないことが経験的に決定された閾値を超える全てのDABシグナルを、分析に含める。次いで、このシグナルを全組織面積に対してノーマライズする。
【0099】
i.c.v.注射を介して投与されたαシヌクレインFANA-ASOによって処置されたマウスは、用量依存性である脳内αシヌクレインレベルの低減を示すことが示された。対照的に、スクランブル配列を含有するFANA-ASO(陰性対照)は、不変のαシヌクレインレベルを示すであろう。注射の3ヶ月後に、スクランブルFANA-ASOによって処置された、PFFを注射されたマウスは、PFFを注射されていない同齢対照動物と比較して、握力試験およびロータロッド試験において能力の悪化を示すことが予想される。この運動障害は、PFFの注射後に6ヶ月間生存させられたコホートにおいて、脳内のさらなる病態蓄積および神経変性と相関して、さらに増強される。しかしながら、αシヌクレインFANA-ASOによる処置は、これらの運動欠陥を用量依存的に改善し、従って、最も高い用量のαシヌクレインFANA-ASOによる動物は、最も大きい改善を示すと予想される。注射の6ヶ月後のコホートにおいて、2回のFANA-ASO注射を受容したマウスは、1回の注射のみを受容したマウスより良好な能力を示すことも予想される。
【0100】
組織学的レベルでは、PFFを注射されたマウスは、注射の3ヶ月後の時点で、SNおよびその他の脳領域(例えば、扁桃体、前頭皮質)においてαシヌクレイン病(即ち、ミスフォールド型αシヌクレインを含有するニューロン内封入体)を示すと予想される。スクランブルFANA-ASOによるマウスの処置と比較して、αシヌクレインFANA-ASOによる処置は、両方の脳半球において、mAb Syn506免疫反応性が占める組織面積の割合によって測定される病態を低減させると予想される。病態のこの低減は、投与されるαシヌクレインFANA-ASOの用量に比例し、従って、最も高いαシヌクレインFANA-ASO投薬量は、最小量の病態の検出に対応する。
【0101】
注射の6ヶ月後に、対照FANA-ASOによって処置されたマウスは、細胞内のαシヌクレイン病の蓄積が原因で、同側SNにおいて、TH陽性(即ち、ドーパミン作動性)ニューロンの約30~45%の喪失を示すことが予想される。αシヌクレインFANA-ASOによって処置されたコホートにおいては、SNにおけるTH陽性細胞の喪失が、用量依存的に減弱する。さらに、αシヌクレインFANA-ASOの2回の投与を受容したマウスは、より多数のTH陽性ニューロンを保存すると予想される。同様に、PFF注射と同側の半球内の線条体におけるTH免疫反応性は、スクランブルFANA-ASOによって処置されたマウスにおいては減少するが、αシヌクレインFANA-ASOによって処置されたマウスにおいては用量依存的に保存されると予想される。
【0102】
総合すると、これらの結果は、αシヌクレインFANA-ASOによって達成されるαシヌクレインレベルの低減が、PDのインビボモデルにおけるαシヌクレイン病の減少をもたらし、これが、結果として、SNドーパミン作動性ニューロンなどのPD関連細胞集団の保護をもたらすことを示している。
【0103】
前記の実施例を参照しながら本発明を説明したが、修飾および変形が、本発明の本旨および範囲に包含されることが理解されるであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023509477000001.app
【国際調査報告】