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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】高分子フィルムチューブ
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B29C65/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541626
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 IB2021050063
(87)【国際公開番号】W WO2021140444
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】2000114.5
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399763
【氏名又は名称】デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】デン フェンフア
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA03
4F211AA10
4F211AA24
4F211AA29
4F211AC03
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH43
4F211AH54
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR11
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TN02
(57)【要約】
第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含むチューブであって、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成される、チューブ。前記高分子フィルムAおよびBは各々、第1の表面(A1、B1)および第2のヒートシール可能な表面(A2、B2)をそれぞれ有する。高分子フィルムAおよびBは、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、配置される。チューブを作製する方法、チューブを形成するための複数の高分子フィルムを含むキット、注入用化学物質の送達にチューブを使用するための方法もまた記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含むチューブであって、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、
(i)前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定し、
(vii)高分子フィルムAが、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間の第3のヒートシール結合(HSB3)によって高分子フィルムBにさらに接着され、その結果、前記第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定する、チューブ。
【請求項2】
前記第2のチャンネルが、フィルムAのヒートシール可能な表面に隣接する端部A-aと、端部B-aおよびB-b間のヒートシール可能な表面B2の一部分との間の前記第3のヒートシール結合(HSB3)によって、ならびにフィルムBのヒートシール可能な表面に隣接する端部B-bと、端部A-aおよびA-b間のヒートシール可能な表面A2の一部分との間の前記第2のヒートシール結合(HSB2)によって画定される、請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
高分子フィルムAの前記第1の表面A1および高分子フィルムBの前記第1の表面B1が、ヒートシール可能ではない、請求項1または2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記高分子フィルムAおよび前記高分子Bが、独立して、ベース層およびヒートシール可能な層を含むフィルムから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項5】
前記ベース層が、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオールを含むポリエステルであり、好ましくは、前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1~4のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記ヒートシール可能な層が、少なくとも3種のモノマー反復ユニットに由来し、そのうちの少なくとも1種は芳香族ジカルボン酸であり、そのうちの少なくとも1種は脂肪族ジオールであるコポリエステルである、請求項1~5のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項7】
前記コポリエステルが、テレフタル酸、第2の芳香族ジカルボン酸およびエチレングリコールに由来し、好ましくは、前記第2の芳香族ジカルボン酸がイソフタル酸である、請求項6に記載のチューブ。
【請求項8】
前記コポリエステルが、テレフタル酸、エチレングリコールおよび第2のジオールに由来し、好ましくは、前記第2のジオールが、脂環式ジオール、好ましくは1,4-シクロヘキサンジメタノールから選択される、請求項6に記載のチューブ。
【請求項9】
前記コポリエステルが、テレフタル酸、エチレングリコールおよび第2のジカルボン酸に由来し、好ましくは、前記第2のジカルボン酸が、脂肪族ジカルボン酸、好ましくはアゼライン酸から選択される、請求項6に記載のチューブ。
【請求項10】
前記ヒートシール可能な層が、エチレン酢酸ビニル(EVA)、好ましくは、9%~40%、より好ましくは15%~30%の範囲の酢酸ビニル含有量を有するエチレン酢酸ビニル(EVA)から形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項11】
前記高分子フィルムAおよび前記高分子Bが、独立して、二軸配向高分子フィルムから選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項12】
前記高分子フィルムAおよび前記高分子Bが、独立して、共押出高分子フィルムから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項13】
前記チューブが、約1cm~約500cmの断面幅を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項14】
前記高分子フィルムAおよび前記高分子フィルムBが、少なくとも1mm重なって、前記オーバーラップヒートシール結合を形成する、請求項1~13のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項15】
前記高分子フィルムAおよび前記高分子フィルムBが、独立して、10~500μmの厚さを有するフィルムから選択され、好ましくは、前記高分子フィルムBが、20~300、好ましくは20~100μmの厚さを有し、好ましくは、前記高分子フィルムAが、10~約20μmの厚さを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項16】
前記高分子フィルムBの幅が、前記高分子フィルムAの幅よりも大きい、請求項1~15のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項17】
前記高分子フィルムBの前記第1の表面B1が、前記チューブの外側表面の少なくとも主要部分を構成する、請求項1~16のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項18】
前記高分子フィルムBの前記ヒートシール可能な表面B2が、前記チューブの前記第1のチャンネルの内側表面の少なくとも主要部分を構成する、請求項1~17のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項19】
高分子フィルムAの前記第2のヒートシール可能な表面A2の一部分および前記高分子フィルムBの前記第2のヒートシール可能な表面B2の一部分が、前記チューブの前記第2のチャンネルの内側表面を構成する、請求項1~18のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項20】
第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを含むキットであって、前記キットが、第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含むチューブを形成するのに好適であり、前記第1および第2のチャンネルの各々が、請求項1および請求項1に従属する請求項2~19のいずれか1項に記載の通り、前記チューブの縦軸に沿って延び、
(i)前記チューブが、前記第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび前記第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定し、
(vii)高分子フィルムAが、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間の第3のヒートシール結合(HSB3)によって高分子フィルムBにさらに接着され、その結果、前記第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定する、キット。
【請求項21】
請求項1および請求項1に従属する請求項2~19のいずれか1項に記載の高分子フィルムのチューブを形成する方法であって、前記チューブが、第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含み、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、前記方法が、
(a)第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを用意するステップであって、前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを有し、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを有する、ステップ、
(b)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の各々の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって、高分子フィルムAを高分子フィルムBに接着するように、前記高分子フィルムAおよびBを配置し、その結果、
(i)第1および第2のオーバーラップヒートシール結合が、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定するように形成され、
(ii)第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定するように、前記第3のヒートシール結合が前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間で形成される、ステップ
を含み、前記高分子フィルムAおよびBが、端部A-a、A-b、B-aおよびB-bがチューブの縦軸に沿って延びるように配置される、方法。
【請求項22】
前記ヒートシール結合が、温度および圧力の適用によって形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
高分子フィルムBのヒートシール可能な表面と高分子フィルムAの第1の表面との間でのヒートシール結合の形成を回避するために、除去可能な剥離シートが、熱および圧力の適用前に高分子フィルムBのヒートシール可能な表面と高分子フィルムAの第1の表面との間に配置される、請求項21~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の注入用化学物質を構造内の所定の位置に送達する方法であって、
(a)チューブの縦軸に沿って延びる第1のチャンネルを有する前記チューブを用意するステップであって、
(i)前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2のうちの少なくとも一方の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定する、ステップ;
(b)前記注入用化学物質を含む第1の流体ストリームを、前記第1のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ
を含む、方法。
【請求項25】
前記チューブが、請求項1~19のいずれか1項に記載の通りである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数の注入用化学物質を構造内の所定の位置に送達するための請求項24に記載の方法であって、
a)前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2のチャンネルを有するチューブを用意するステップであって、請求項1および請求項1に従属する請求項2~19のいずれか1項に記載の通り、前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成される、ステップ、
(b)第1の注入用化学物質を含む第1の流体ストリームを、前記第1のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ、
(c)第2の記注入用化学物質を含む第2の流体ストリームを、前記第2のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ、
(d)前記第1および第2のストリームを前記所定の位置で混合するステップ
を含む、方法。
【請求項27】
前記第2のチャンネル中の前記第2の流体ストリームが、前記第1のチャンネル中の前記第1の流体ストリームと混合し、それによって、前記第1および第2の注入用化学物質間で化学反応が引き起こされるように、前記第1のヒートシール可能な高分子フィルムAを前記所定の位置で破壊するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
採掘および建設用途における注入用化学物質の送達のための請求項24~27のいずれか1項に記載の方法であって、特に、ボーリング孔、パイプライン、シャフトまたはトンネルの壁を強化するための注入用化学物質の送達、割れた地層を強化する、および/または浸水を防ぐことを含む、地下の位置でガス、水および地層を固定、強化または制御するための注入用化学物質の送達、ならびに構造物の穴または裂け目を修理または充填することを含む、整備および建設事業における注入用化学物質の送達から選択される用途のための方法。
【請求項29】
前記注入用化学物質が、採掘作業のボーリング孔中の所定の位置に送達される、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記チューブが、二成分注入用化学系の送達に好適であり、2種の成分が、それらの適用時点まで分離されたままである必要があり、適用時点で、成分が接触して、化学反応を受けて所定の位置で所望の化合物をもたらす、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法、または請求項1もしくは請求項1に従属する請求項2~19のいずれか1項に記載のチューブ、または請求項20に記載のキット。
【請求項31】
前記注入用化学系が、二成分ポリウレタンまたはシリケート樹脂系を含むか、またはそれからなる、請求項30に記載の方法、チューブまたはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルムチューブおよびこれを作製する方法を対象とする。本発明は、高分子フィルムチューブを形成するための複数の高分子フィルムを含むキットにさらに関する。高分子フィルムチューブは、注入用化学物質の送達、例えば、採掘および建設用途における注入用化学物質の送達に特に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムから作製されたチューブは、多くの産業用途において使用される。例えば、高分子フィルムチューブは、採掘作業におけるボーリング孔などのボーリング孔の壁、またはパイプライン、シャフトもしくはトンネルの壁を強化するための化学物質を注入され得る。注入用化学物質を送達するためのそのような高分子チューブの使用は、地下の位置でガス、水および地層を固定、強化および制御するため、例えば、割れた地層を強化するため、および/または浸水を防ぐために使用できる。地盤の安定化のほか、この技術は、整備および建設事業において、例えば、構造物の穴または裂け目を修理または充填するために使用され得る。ポリウレタン、シリケートおよびフェノールベースの樹脂系を含む種々の注入用化学物質が、この目的のために使用される。
【0003】
その両方の表面でヒートシール可能な高分子フィルムは、チューブの継目に沿ったオーバーラップシール配置構成で第1のヒートシール可能な表面を第2のヒートシール可能な表面にヒートシーリングすることによって、環状構造を形成するために使用され得る。しかしながら、2つのヒートシール可能な表面を有する高分子フィルムは、製造するのが技術的により困難であり、費用がかかり、ジョーのスティッキングの可能性に起因してチューブの製造におけるプロセスの難しさを示し得る。代替構造は、1つのヒートシール可能な表面および1つの非ヒートシール可能な表面を有し、溶媒を使用した予備膨潤を介して非ヒートシール可能な表面を変性し、比較的高温でフィルムを一緒にシーリングまたは溶接すること(典型的には、高温溶媒溶接と呼ばれる)によってオーバーラップシールを形成する高分子フィルムを使用する。さらなる代替構造は、ヒートシール可能な表面を有さず、溶媒を使用して予備膨潤し、高温でフィルムを一緒に溶接することによってオーバーラップシールを形成する高分子フィルムを使用する。しかしながら、これらの代替構造の不都合は、継目の長さに沿ったシールの一貫した完全性を欠くことのほか、より高いシーリング温度の結果としてプラスチックフィルムが変形すること、およびチューブの生産がより遅くかつより費用かかることである。
これらの問題のうちの1つまたは複数に対処し、製造および使用に効果的かつ経済的であり、シールの長さに沿って優れたシール完全性、および好ましくはまた変形の回避を示す高分子フィルムチューブを提供することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、チューブの縦軸に沿って延びる第1のチャンネルを含むチューブであって、
(i)前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の少なくとも一方の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され(好ましくは、前記少なくとも一方のヒートシール可能な表面は、少なくともヒートシール可能な表面B2である)、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定する、チューブが提供される。
【0005】
本発明の第2の態様によると、第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含む第1の態様によるチューブであって、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、
(i)前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定し、
(vii)高分子フィルムAが、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間の第3のヒートシール結合(HSB3)によって高分子フィルムBにさらに接着され、その結果、前記第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定する、チューブが提供される。
【0006】
本発明の第2の態様のチューブは、二成分注入用化学系の送達に特に有用なものであり、2種の成分は、それらの適用時点まで分離されたままである必要があり、適用時点で、成分は接触して、化学反応を受けて所定の位置で所望の化合物をもたらす。そのような注入用化学系としては、例えば、二成分ポリウレタンまたはシリケート樹脂系が挙げられる。
有利には、高分子フィルムAの第1の表面A1および高分子フィルムBの第1の表面B1は、ヒートシール可能ではない。
好ましくは、高分子フィルムAおよび高分子Bは、高分子ベース層および高分子ヒートシール可能層を含む複合フィルムから選択される。前記ベース層は、好適には、高分子フィルムの前記非ヒートシール可能な表面を構成する。好ましくは、ヒートシール可能な層は、ベース層に直接、すなわち、介在層なしに配置される。
【0007】
本明細書で使用される場合、「ヒートシール可能な表面」という用語は、200℃以下(好ましくは、100~200℃の範囲内)の温度および100psi以下(好ましくは、10~60psiの範囲内)の圧力で、1分以下(好ましくは、0.5~30秒の範囲内)の時間、2つの表面を接触させることによってヒートシール結合を形成する能力を指し、得られたヒートシール結合強度は、少なくとも10g/mm(好ましくは、少なくとも20g/mm、好ましくは、少なくとも30g/mm)である。本明細書で使用される場合、「非ヒートシール可能な表面」という用語は、その能力を有さない表面を指す。
【0008】
高分子フィルムAおよびB各々は、自立フィルムまたはシートであり、これは、支持基材なしに独立して存在することが可能なフィルムまたはシートを意味する。
前記ベース層は、任意の好適なフィルム形成高分子材料から形成されてもよい。熱可塑性高分子材料が好ましい。そのような材料としては、1-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレンおよびブタ-1-エンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、PVC、PVA、ポリアクリレート、セルロースならびにポリエステルが挙げられる。ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステル、特にポリエステルが好ましい。ベース層は、自立フィルムまたはシートであるべきである。
ベース層は、好ましくは、一軸または二軸配向、好ましくは二軸配向である。
ベース層は、半結晶性として記載され得ることが、本明細書の以下の本開示から認識されるであろう。本明細書で使用される場合、「半結晶性」という用語は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、かつ典型的には、50%または45%または40%以下の結晶化度を示すフィルムを指す。
【0009】
したがって、ベース層は、好ましくは、フィルム形成熱可塑性ポリエステル材料から形成される。合成直鎖状ポリエステルが好ましい。ベース層ポリエステルは、結晶化可能であることが認識されるであろう。好適なポリエステルとしては、1つまたは複数のカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5-、2,6-または2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロ-テレフタル酸、1,10-デカンジカルボン酸、および特に、一般式CnH2n(COOH)2(式中、nは、2~8である)のものを含む脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸またはピメリン酸;ならびに1つまたは複数のグリコール、特に脂肪族または脂環式グリコール、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)に由来するものが挙げられる。
【0010】
ベース層ポリエステルのジカルボン酸成分は、好ましくは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸(好ましくは、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸から選択され、好ましくはテレフタル酸である)を含み、好ましくは、上記のジカルボン酸から、好ましくは上記の芳香族ジカルボン酸(特にイソフタル酸)および脂肪族二酸から選択される第2の異なるジカルボン酸をさらに含んでもよい。したがって、ポリエステルは、好ましくは、芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸に由来する。好ましくは、ベース層ポリエステルのジカルボン酸成分は、1種の芳香族ジカルボン酸のみを含有し、これは、好ましくはテレフタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸である。
ベース層ポリエステルのグリコール成分は、好ましくは、少なくとも1種の脂肪族ジオールを含み、そのうちの少なくとも1種はエチレングリコールである。好ましくは、ベース層ポリエステルのグリコール成分は、脂肪族ジオール、好ましくはエチレングリコールである。
【0011】
好ましいベース層ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、またはPETベースもしくはPENベースコポリエステルから選択される。ポリエチレンテレフタレート(PET)またはそのコポリエステルが特に好ましい。好ましくは、ベース層ポリエステルはPETである。
フィルム形成高分子樹脂は、ベース層の主成分であり、ベース層の総重量の少なくとも70質量%、好ましくは、ベース層の総質量の少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、好ましくは少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より典型的には少なくとも98質量%、より典型的には少なくとも99質量%を構成する。
【0012】
ベース層が製造されるポリエステルの固有粘度は、好ましくは少なくとも約0.60、好ましくは少なくとも約0.61、好ましくは少なくとも0.62、好ましくは少なくとも0.63、好ましくは少なくとも0.64、好ましくは少なくとも0.65、好ましくは少なくとも約0.70、好ましくは少なくとも約0.75である。好ましくは、ベース層ポリエステルの固有粘度は、0.85以下、好ましくは0.83以下である。粘度の高過ぎるポリエステルの使用は、フィルム製造の難しさにつながり得、および/または特化したより頑強な膜形成装置を必要とし得る。例えば、粘度を高く増加させ過ぎるとは、安定な膜生成を実現するためには、アウトプットを低減する(つまり、単位時間当たりに押出されるポリエステルの量が減少し、あまり経済的ではないプロセスにつながる)、または押出温度を上昇させて溶融物の粘度を低下させる(これは次に、ポリマーの熱分解および関連する特性の損失につながり得る)ことが適切であることを意味し得る。
【0013】
ポリエステルの形成は、一般に、最大約295℃の温度での縮合またはエステル交換による公知の方法で好都合に行われる。好ましい実施形態では、固体状態の重合は、当技術分野で周知の従来技術を使用して、例えば、窒素流動層または回転真空乾燥機を使用した真空流動層などの流動層を使用して、ポリエステルの固有粘度を所望の値に増加させるために使用され得る。
ベース層は、高分子フィルム、特にポリエステルフィルムの製造に従来用いられる任意の他の添加剤をさらに含んでもよい。したがって、粒子状フィラー、加水分解安定剤、抗酸化剤、UV安定剤、架橋剤、染料、滑沢剤、ラジカルスカベンジャー、熱安定剤、表面活性剤、光沢向上剤、プロデグラデント(prodegradent)、粘度調整剤および分散安定剤などの薬剤が、適宜組み込まれてもよい。特に有用なものは、粒子状フィラー、加水分解安定剤(例えば、分枝状モノカルボン酸のグリシジルエステル)および抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール、第2級芳香族アミンおよびヒンダードアミン)であり、この点に関して好適な添加剤は、国際公開第2012/120260号に開示されており、その添加剤の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。UV安定剤もまた、特に有用である。
【0014】
粒子状フィラーは、当技術分野で周知の通り、製造中の取り扱いおよび巻線性を改善し得る、ならびに/または光学的性質を調節し得る。粒子状フィラーは、典型的には、粒子状無機フィラー(例えば、金属または半金属酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、タルクおよびシリカ(とりわけ、沈降または珪藻土シリカおよびシリカゲル)、焼成白土およびアルカリ金属塩、例えば、カルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩)である。粒子状無機フィラーは、好ましくは、微細化され、および体積分布メジアン粒子直径(すべての粒子の体積の50%に対応する球相当径、多くの場合「D(v,0.5)」値と呼ばれる粒子の直径に対する体積%に関する累積度数分布曲線での読取り)は、好ましくは、0.01~5μm、より好ましくは0.05~1.5μm、特に0.15~1.2μmの範囲である。好ましくは、無機フィラー粒子の少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%は、体積分布メジアン粒子直径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内である。フィラー粒子の粒径は、電子顕微鏡、コールターカウンター、沈降分析および静的または動的光散乱によって測定され得る。レーザー光回折に基づく技術が好ましい。上述の従来用いられている添加剤は、従来の方法でポリマーに導入されてもよい。例えば、フィルム形成ポリマーが誘導されるモノマー反応物質と混合することによって、または成分は、タンブルもしくは乾式ブレンドによって、または押出機においてコンパウンディングすることによってポリマーと混合されてもよく、続いて、冷却、および通常顆粒またはチップに粉砕される。マスターバッチシステムも用いられてもよい。
【0015】
ヒートシール可能な層は、ベース層へのヒートシール結合を形成することが可能である。ヒートシール可能な層の高分子材料は、加熱時、その粘度が、それが結合している表面に接着するのに適切な湿潤を可能にするのに十分低くなるのに十分な程度に軟化することが可能である。
ヒートシール可能な層は、任意の好適なフィルム形成高分子材料から形成されてもよい。熱可塑性高分子材料が好ましく、熱可塑性高分子材料としては、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステルが挙げられる。ポリエステル、特に1つまたは複数のジカルボン酸またはそれらの低級アルキルジエステルと、本明細書の上記で言及した1つまたは複数のグリコールとに由来するコポリエステルが好ましい。
好ましくは、前記ヒートシール可能な層は、少なくとも3種のモノマー反復ユニットに由来するコポリエステルから形成され、そのうちの少なくとも1種は芳香族ジカルボン酸であり、そのうちの少なくとも1種は脂肪族ジオールである。
【0016】
本明細書の以下で実施形態B1と呼ばれる第1の好ましい実施形態では、ヒートシール可能な層は、脂肪族グリコール、および少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸および第2の芳香族ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸に由来するコポリエステルから形成される。好ましいコポリエステルは、エチレングリコール、テレフタル酸およびイソフタル酸に由来する。テレフタル酸成分対イソフタル酸成分の好ましいモル比は、50:50~90:10の範囲、好ましくは65:35~85:15の範囲である。特に好ましい実施形態では、このコポリエステルは、約82モル%のテレフタレートおよび約18モル%のイソフタレートを含むエチレングリコールのコポリエステルである。
本明細書の以下で実施形態B2と呼ばれる第2の好ましい実施形態では、ヒートシール可能な層は、脂肪族ジオールおよび脂環式ジオールと、1つまたは複数、好ましくは1種のジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸とに由来するコポリエステルから形成される。例としては、脂肪族ジオールおよび脂環式ジオール、とりわけ、エチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールとのテレフタル酸のコポリエステルが挙げられる。脂環式ジオール対脂肪族ジオールの好ましいモル比は、10:90~60:40の範囲、好ましくは20:80~40:60の範囲、より好ましくは30:70~35:65の範囲である。好ましい実施形態では、このコポリエステルは、約33モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび約67モル%のエチレングリコールを含むテレフタル酸のコポリエステルである。そのようなポリマーの一例は、テレフタル酸のコポリエステル、約33%の1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび約67%のエチレングリコールを含み、通常非晶質であるPETG(商標)6763(Eastman)である。
【0017】
本明細書の以下で実施形態B3と呼ばれる第3の好ましい実施形態では、ヒートシール可能な層は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、特に、一般式Cn2n(COOH)2(式中、nは、2~8である)のものに由来するコポリエステルから形成される。好ましい芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸である。好ましい脂肪族ジカルボン酸は、セバシン酸、アジピン酸およびアゼライン酸から選択される。コポリエステル中に存在する芳香族ジカルボン酸の濃度は、コポリエステルのジカルボン酸成分に対して、好ましくは、45~80、より好ましくは50~70、特に55~65モル%の範囲である。コポリエステル中に存在する脂肪族ジカルボン酸の濃度は、好ましくは、コポリエステルのジカルボン酸成分に対して、20~55、より好ましくは30~50、特に35~45モル%の範囲である。そのようなコポリエステルの特に好ましい例は、(i)脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのアゼライン酸およびテレフタル酸のコポリエステル;(ii)脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのアジピン酸およびテレフタル酸のコポリエステル;ならびに(iii)脂肪族グリコール、好ましくはブチレングリコールとのセバシン酸およびテレフタル酸のコポリエステルである。好ましいポリマーとしては、-40℃のガラス転移温度(Tg)および117℃)の融点(Tm)を有するセバシン酸/テレフタル酸/ブチレングリコールの(好ましくは45~55/55~45/100、より好ましくは50/50/100の相対モル比で成分を有する)コポリエステル、ならびに-15℃のTgおよび150℃のTmを有するアゼライン酸/テレフタル酸/エチレングリコールの(好ましくは40~50/60~50/100、より好ましくは45/55/100の相対モル比で成分を有する)コポリエステルが挙げられる。
【0018】
本明細書の以下で実施形態B4と呼ばれる第4の好ましい実施形態では、追加のヒートシール可能な層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)から形成される。好適なEVAポリマーは、Elvax(商標)樹脂としてDuPontから得ることができる。典型的には、これらの樹脂は、9%~40%、典型的には、15%~30%の範囲の酢酸ビニル含有量を有する。
実施形態B1は、ヒートシール可能な層について特に好ましい実施形態である。
【0019】
フィルム形成高分子樹脂は、ヒートシール可能な層の主成分であり、ベース層の総質量の少なくとも70質量%、好ましくは、ヒートシール可能な層の総質量の少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、好ましくは少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より典型的には少なくとも98質量%、より典型的には少なくとも99質量%を構成する。ヒートシール可能な層は、本明細書に上記の通り、高分子フィルム、特にポリエステルフィルムの製造に従来用いられる任意の他の添加剤をさらに含んでもよい。特に、ヒートシール可能な層は、好ましくは、スリップエイドまたはブロッキング防止剤、例えば、粒子状フィラーなどを含み、これは、シーラントコーティングの分野において慣例である通り、フィルムの取り扱いを改善する。そのような成分は、比較的少量、典型的には5.0質量%未満、典型的には2.0質量%未満、典型的には1.0質量%未満で存在する。
複合フィルムの形成は、当技術分野で周知の従来技術によって行われてもよい。好都合には、基材の形成は、以下に記載される手順に従って、押出によって行われる。
【0020】
概括的に述べると、このプロセスは、溶融ポリマーの層を、約275~約300℃、好ましくは約290~295℃の範囲内の温度で押出するステップ、押出物をクエンチするステップ、およびクエンチした押出物を、少なくとも一方向に配向するステップを含む。フィルムは、一軸配向されてもよいが、好ましくは、フィルム平面において2つの互いに垂直な方向に延伸することによって二軸配向されて、機械および物理特性の満足のいく組合せが実現される。配向は、配向フィルムを生成するための当技術分野で公知の任意のプロセス、例えば、管状またはフラットフィルムプロセスによって行われてもよい。二軸配向は、フィルム平面において2つの互いに垂直な方向に延伸することによって行われて、機械および物理特性の満足のいく組合せが実現される。管状プロセスでは、同時二軸配向は、熱可塑性プラスチックポリマーチューブを押出し、続いてこれをクエンチし、再加熱し、次いで、内部気圧によって膨張させて横方向配向を誘導し、縦方向配向を誘導する速度で引くことによって行われ得る。好適な同時二軸配向プロセスは、欧州特許第2108673号および米国特許第2009/0117362号に開示されており、これらのプロセスの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、フィルム形成ポリマーは、スロットダイを通して押出され、ポリマーが確実に非晶質状態でクエンチされるように、チルキャストドラムで急速にクエンチされる。次いで、配向が、クエンチされた押出物を少なくとも一方向に、ポリエステルのガラス転移温度を超える温度で延伸することによって行われる。順次配向は、クエンチされたフラット押出物をまず一方向、通常縦方向、すなわち、フィルム延伸機を通る順方向に、次いで、横方向に延伸することによって行われ得る。押出物の順方向延伸は、一組の回転ロールで、または2対のニップロール間で、好都合に行われ、次いで、横方向延伸が、テンター装置で行われる。
【0022】
延伸は、一般に、配向フィルムの寸法が、延伸の方向または延伸の各方向におけるその元々の寸法の2~5倍、より好ましくは2.5~4.5倍になるように行われる。より好ましくは、延伸は、配向フィルムの寸法が、順方向延伸でその元々の寸法の3.0~3.3倍、および横向き延伸でその元々寸法の3.3~3.9倍になるように行われる。一方向にのみ配向が必要な場合、より大きな延伸比(例えば、最大約8倍)が、使用されてもよい。延伸は、従来、ポリマー組成物のTgよりも高い温度、好ましくは、Tgよりも少なくとも約5℃高い、好ましくは少なくとも約15℃高い、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+75℃、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+30℃の範囲の温度で行われる。したがって、ポリエステル材料の場合、典型的には、延伸は、約5~約155℃、好ましくは約5~約110℃の範囲の温度で行われる。機械方向と横方向とで均等に延伸する必要はないが、バランスのとれた特性が望ましい場合は、これが好ましい。
【0023】
延伸フィルムは、ポリマーのガラス転移温度超だが、その融点未満である温度で、寸法支持下で熱硬化してポリマーの所望の結晶化を誘導することによって、寸法安定化されてもよく、好ましくは寸法安定化される。熱硬化中、「トーイン」として公知の手順によって横方向(TD)に少量の寸法緩和が実施されてもよい。トーインは、2~4%程度の寸法緩和を含み得る。一方、当技術分野で公知のように、加工または機械方向(MD)の寸法緩和も、可能である。実際の熱硬化温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終熱収縮率に依存するが、フィルムの引裂き抵抗などの靭性特性を実質的に劣化させないように選択されるべきである。これらの制限内で、好ましいフィルムは、フィルムの融点より約80℃低い温度(すなわち、TM-80℃)~TMより約10℃低い温度(すなわち、TM-10℃)、好ましくは約TM-70℃~約TM-20℃の温度で熱硬化する。したがって、ポリエステルフィルムの場合、熱硬化温度は、好適には、約130~約245℃、好ましくは約150~約245℃の範囲、好ましくは少なくとも180℃、好ましくは190~230℃の範囲である。熱硬化後、フィルムは、典型的には、ポリマーの所望の結晶化度を誘導するために急速にクエンチされる。
【0024】
好ましくは、フィルムは、インライン緩和段階の使用を通してさらに安定化される。あるいは、緩和処理は、オフラインで実施できる。この追加ステップでは、フィルムは、熱硬化段階の温度よりも低い温度で、はるかに低いMDおよびTD張力により加熱される。フィルムにかかる張力は、低張力であり、典型的には、フィルム幅の5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満、好ましくは2.5kg/m未満、典型的には、1.0~2.0kg/mの範囲である。フィルム速度を制御する緩和プロセスについて、フィルム速度の低減(したがって、歪み緩和)は、典型的には、0~2.5%、好ましくは0.5~2.0%の範囲である。熱安定化ステップ中、フィルムの横方向寸法は増加しない。熱安定化ステップに使用される温度は、最終フィルムからの特性の所望の組合せに依存して様々であり得、温度が高いほど良好な、すなわちより低い残留収縮率特性が得られる。135~250℃、好ましくは150~230℃、より好ましくは170~200℃の温度が一般に望ましい。加熱の継続時間は、使用される温度に依存するが、典型的には、10~40秒の範囲であり、20~30秒の継続時間が好ましい。この熱安定化プロセスは、フラットおよび垂直構成、ならびに別々のプロセスステップとして「オフライン」でまたはフィルム製造プロセスに連続して「インライン」でのいずれかを含む種々の方法によって実施できる。このように処理されたフィルムは、そのような熱硬化後緩和なしで生成されたフィルムよりも小さい熱収縮率を示す。
【0025】
ヒートシール可能な層を含む複合フィルムの形成は、従来技術によって行われてもよい。ヒートシール可能な層の形成方法およびベース層へのその適用は、典型的には、ヒートシール可能な層のアイデンティティに依存する。従来技術としては、ヒートシール可能な層を予備形成したベース層上にキャストすることが挙げられる。好都合には、ヒートシール可能な層およびベース層の形成は、共押出によって行われ、これは、本明細書の上記の実施形態B1およびB2について特に好適であると考えられる。ヒートシール可能な層を形成する他の方法としては、ヒートシール可能なポリマーをベース層上にコーティングすることが挙げられ、この技術は、上記の実施形態B3およびB4について特に好適であると考えられる。コーティングは、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、ビーズコーティング、押出コーティング、溶融コーティングまたは静電スプレーコーティングを含む任意の好適なコーティング技術を使用して行われてもよい。好ましいコーティング方法は、グラビアロールコーティングおよびリバースロールコーティングを含むロールコーティングである。コーティングは、「オフライン」で、すなわち、ベース層の製造中に用いられる延伸および後続の熱硬化後に、またはコーティングステップが用いられる延伸操作の前、操作中または操作間に行われる「インライン」で実行されてもよい。好ましくは、コーティングは、インラインで、好ましくは二軸延伸操作の順方向延伸と横向き延伸との間に実施される(「延伸間」コーティング)。ヒートシール可能な層のコーティングの例としては、それぞれポリオレフィンおよびポリエステルの基材上へのポリオレフィンの延伸間押出コーティングを開示する英国特許出願公開第2024715号および英国特許出願公開第1077813号、ポリプロピレン基材上へのエチレン-酢酸ビニルコポリマーの延伸間押出コーティングを開示する米国特許出願公開第4333968号、ならびにコポリエステルのコーティングを開示する国際公開第02/59186号が挙げられ、これらの文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
好ましい実施形態では、高分子フィルムAおよびBは、共押出高分子フィルムから選択される。
高分子フィルムAおよびBは、好ましくは、フィルムの縦方向および横方向の各々において、少なくとも約15、好ましくは少なくとも約18、好ましくは少なくとも約19、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約21kg/mm2の極限引張強さ(UTS)を示す。
【0027】
高分子フィルムAおよびBは、好ましくは、フィルムの縦方向および横方向の各々において、少なくとも110%、好ましくは少なくとも130%、好ましくは少なくとも150%、好ましくは少なくとも160%、好ましくは少なくとも170%、好ましくは少なくとも180%、好ましくは少なくとも190%、好ましくは少なくとも200%の破断伸び(ETB)を示す。
高分子フィルムAおよびBは、好ましくは、特にフィルムの機械(縦方向寸法)において、150℃、30分間で、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満の低い収縮率を示す。好ましくは、そのような収縮率の値が、フィルムの両方の寸法(すなわち、縦方向および横方向寸法)において示される。
フィルムの「縦方向」および「横方向」という用語は、フィルムがその製造中に延伸された方向を指すことが認識されるであろう。「機械方向」という用語もまた、縦方向を指すために本明細書で使用される。
【0028】
本発明の高分子フィルムチューブにおいて、フィルムの前記縦方向は、好ましくは、チューブの縦軸と揃えられる、または実質的に揃えられる。
高分子フィルムAの化学組成および/または物理特性(例えば、総厚さおよび層厚さなどの寸法を含む)は、高分子フィルムBの化学組成および/または物理特性と同じであっても、または異なってもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、高分子フィルムAおよびBは、互いに同じ化学組成を有する。好ましい実施形態では、高分子フィルムAおよびBは、本明細書の以下に記載されるように、互いに異なる寸法を有する。
好ましくは、前記高分子フィルムAおよび前記高分子フィルムBは、独立して、約10~約500μm、好ましくは約10~300μmの総厚さを有するフィルムから選択される。
【0029】
好ましくは、高分子フィルムAの厚さは、高分子フィルムBの厚さ未満、高分子フィルムBの厚さの好ましくは75%以下、好ましくは50%以下、好ましくは30%以下である。好ましくは、高分子フィルムAの厚さは、高分子フィルムBの少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%である。好ましくは、高分子フィルムAの厚さは、高分子フィルムBの厚さの10~75%、好ましくは20~50%、好ましくは20~30%の範囲である。好ましくは、前記高分子フィルムBは、20~300、好ましくは20~100μmの厚さを有し、好ましくは、前記高分子フィルムAは、10~約20μmの厚さを有する。
【0030】
ヒートシール可能な層の厚さは、高分子フィルムの総厚さの好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、好ましくは少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも5%、好ましくは約10%~約20%である。典型的には、ヒートシール可能な層は、最大約25μm、より好ましくは最大約15μm、より好ましくは最大約10μm、好ましくは少なくとも2μm、好ましくは、約0.5~約10μm、より好ましくは約2~約10μmの範囲の厚さを有する。
高分子フィルムAおよびBの各々の平面寸法は、長さおよび幅によって記載され、ここで、高分子フィルムの長さ寸法は、高分子チューブの長さに対応する。高分子フィルムAおよびBの長さは、同じであるか、または実質的に同じである。高分子フィルムAおよびBの各々の幅寸法は、高分子チューブの横方向または横断面寸法である。好ましくは、高分子フィルムBの幅は、高分子フィルムAの幅よりも大きい。
本発明のチューブにおいて、高分子フィルムAおよびBは、好ましくは、前記高分子フィルムBの第1の表面B1が前記チューブの外側表面の少なくとも主要部分を構成するように配置される。この文脈において、「少なくとも主要部分」という用語は、前記高分子フィルムBの第1の表面B1が、前記チューブの外側表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、好ましくは実質的にすべてを構成することを意味する。
【0031】
本発明のチューブにおいて、特に本発明の第1の態様において、前記高分子フィルムBの前記ヒートシール可能な表面B2は、前記チューブの前記第1のチャンネルの内側表面の少なくとも主要部分を構成する。
したがって、好ましい実施形態では、本発明の高分子フィルムチューブは、チューブの外周を構成する高分子フィルムBによって主に形成され、高分子フィルムAは、チューブの内側表面に配置され、内側高分子フィルムAは、高分子フィルムBの端部(B-aおよびB-b)を橋かけまたは接続してチューブを形成する補助フィルムとして機能する。高分子フィルムAおよびBは、ヒートシール可能な表面A2がヒートシール可能な表面B2と接触して、高分子フィルムBの各端部(B-aおよびB-b)においてヒートシール結合を形成するように配置される。したがって、高分子フィルムAは、高分子フィルムAの第1の幅部が高分子フィルムBの端部B-aを越えて延び、高分子フィルムAの第2の幅部が高分子フィルムBの端部B-bを越えて延びて、2つのオーバーラップヒートシール結合によってチューブを形成するように、高分子フィルムBにヒートシーリングされる。高分子フィルムAの前記第1および第2の幅部の各々は、高分子フィルムAの一方の終端部において反対側の端部によって結合されることが認識されるであろう。少なくとも本発明の第1の態様では、前記第1および第2の幅部は、高分子フィルムAの幅の相対する終端部にあることもまた認識されるであろう。したがって、第1のヒートシール結合が、ヒートシール可能な表面に隣接するフィルムBの端部B-aおよびフィルムAの端部A-b間で形成され、第2のヒートシール結合が、フィルムBのヒートシール可能な表面に隣接する端部B-bとフィルムAのヒートシール可能な表面の一部との間で形成される。本発明の第1の態様では、前記第2のヒートシール結合は、ヒートシール可能な表面に隣接するフィルムBの端部B-bおよびフィルムAの端部A-a間で好適に形成される。
【0032】
したがって、本発明の第1の態様では、各ヒートシール結合がフィルムの縦方向、およびチューブの縦軸の方向に延びるように、好ましくは高分子フィルムBの各端部(B-aおよびB-b)において1つずつ、2つのヒートシール結合が形成される(HSB1およびHSB2)。端部B-aのヒートシール結合は、本明細書においてヒートシール結合HSB1と呼ばれ、端部B-bのヒートシール結合は、本明細書においてヒートシール結合HSB2と呼ばれる。
本発明の第2の態様では、第3のヒートシール結合(HSB3)が形成される。最初の2つのヒートシール結合(HSB1およびHSB2)は、本発明の第1の態様のヒートシール結合、すなわち、好ましくは、高分子フィルムBの各端部(B-aおよびB-b)のものに対応し、各ヒートシール結合は、フィルムの縦方向、およびチューブの縦軸の方向に延びる。本発明の第2の態様では、高分子フィルムAおよびB間の重なりは、第1の態様におけるよりも大きく、やはりチューブの縦方向に延びる第3のヒートシール結合の形成によって前記第2のチャンネルの形成を可能にするのに十分である。
【0033】
したがって、第2の態様では、高分子フィルムAの前記第2のヒートシール可能な表面A2の一部分および前記高分子フィルムBの前記第2のヒートシール可能な表面B2の一部分は、好ましくは、前記第2のチャンネルの内側表面を構成する。
第2の態様では、前記第2のチャンネルの境界は、フィルムAのヒートシール可能な表面に隣接する端部と、端部B-aおよびB-b間のヒートシール可能な表面B2の一部分との間の前記第3のヒートシール結合(HSB3)によって、ならびにフィルムBのヒートシール可能な表面に隣接する端部B-bと、端部A-aおよびA-b間のヒートシール可能な表面A2の一部分との間の前記第2のヒートシール結合(HSB2)によって画定される。
高分子フィルムAおよびBの相対サイズ、ならびに前記第2および第3のヒートシール結合間の間隔は、第2のチャンネルのサイズ(すなわち、断面積)を画定する。第1および第2のチャンネルの相対サイズは、本発明において限定されない。第1および第2のチャンネルのサイズは、同じであっても、または異なっていてもよい。第1および第2のチャンネルの相対サイズは、二成分注入用化学系の所望の化学反応に必要な注入用化学物質の相対量および/または流量によって決定され得る。
【0034】
本明細書で上述されるように、高分子フィルムAの厚さは、好ましくは、高分子フィルムB未満である。高分子フィルムBは、チューブをその所望の位置に配置するのを可能にするのに十分な硬度をチューブに付与するために主に機能し、したがって、本明細書に記載の比較的大きな厚さを示す。高分子フィルムAは、高分子フィルムBの端部を接合してチューブを形成するために主に機能し、したがって、本明細書に記載の比較的小さな厚さを示し得、基本的な考えとして、ヒートシール可能な層は、強力なヒートシール結合を行うのに十分な厚さであるべきである。有利には、高分子フィルムAは、その比較的小さな厚さのさらなる機能として、高分子フィルムBよりも容易に破壊され、その結果、高分子フィルムAは、構造内の所定の位置に注入用化学物質を送達する、または所定の位置でそれを混合するために、前記所定の位置で破壊され得る。本発明のこの態様は、第1および第2の態様の各々に適用可能であるが、第2の態様について特に有用であり、それによって、前記第1のチャンネル中の第1の注入用化学物質および前記第2のチャンネル中の第2の注入用化学物質を、チューブに沿って所定の距離で混合することが可能になる。高分子フィルムの破壊は、任意の好適な方法、例えば、ドリルビットによって行われてもよい。
【0035】
本明細書に開示の高分子フィルムチューブの寸法および断面積は、特に限定されず、チューブが供される最終用途に依存する。しかしながら、好ましくは、チューブは、断面の幅が約1cm~約500cmであるか、または断面積が0.5cm2~20m2であるような寸法を有する。
オーバーラップヒートシール結合の幅、すなわち、チューブを形成するためのヒートシール結合の作製中に高分子フィルムAが高分子フィルムBと重なる度合いは、主にチューブの断面寸法、ならびにまたそれぞれの高分子フィルムおよびそのヒートシール層の厚さに依存する。オーバーラップヒートシール結合の幅は、ヒートシール結合の強度を調節する因子であることが認識されるであろう。好ましくは、前記高分子フィルムAおよび前記高分子フィルムBは、少なくとも1mm重なって、オーバーラップヒートシール結合を形成する。例えば、最大約10cmの断面幅を有するチューブでは、オーバーラップヒートシール結合は、好適には、約1mm~約10mmの範囲の幅を有する。オーバーラップヒートシール結合の幅は、典型的には、チューブの断面幅の増加に伴って増加する。
【0036】
チューブの長さは、注入用化学物質を所望の位置に送達するのに必要な任意の適切な長さであり得る。したがって、チューブの長さは、10cm程度の小ささまたは最大数メートル、例えば2mであってもよい。
本発明は、1または2つのチャンネルを有するチューブに限定されず、第3のチャンネルまたはさらに後続のチャンネルがまた、例えば、上記の通りの2フィルムシステムにおいて追加のヒートシール結合を使用することによって、または3つ以上のフィルムを使用することによって、設けられてもよいことが認識されるであろう。したがって、追加のチャンネルは、前記第2および第3のヒートシール結合間で追加のヒートシール結合を形成することによって、前記第2および第3のヒートシール結合間を離間するチャンネル内で形成されてもよい。しかしながら、典型的には、チューブは、2つ以下のチャンネルを含有し、2つの高分子フィルムから形成される。
【0037】
チューブを形成するための高分子フィルムAおよびB間のヒートシール結合の形成は、本明細書の以下に記載される。
高分子フィルムAおよびBのヒートシール可能な表面間のヒートシール結合強度は、好ましくは、本明細書に記載の通りに測定して、少なくとも50g/mm(好ましくは、少なくとも70g/mm)である。
本発明の第3の態様によると、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを含むキットであって、前記キットが、チューブの縦軸に沿って延びる第1のチャンネルを含む前記チューブを形成するのに好適であり、
(i)前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2のうちの少なくとも一方の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定する、キットが提供される。
【0038】
本発明の第4の態様によると、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを含むキットであって、前記キットが、第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含むチューブを形成するのに好適であり、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、
(i)前記チューブが、前記第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび前記第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成され、
(ii)前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、
(iii)前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、
(iv)前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを含み、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを含み、前記端部A-a、A-b、B-aおよびB-bが、チューブの縦軸に沿って延び、
(v)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって互いに接着されるように、前記高分子フィルムAおよびBが配置され、
(vi)高分子フィルムAが、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合(HSB1およびHSB2)によって高分子フィルムBに接着されて、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定し、
(vii)高分子フィルムAが、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間の第3のヒートシール結合(HSB3)によって高分子フィルムBにさらに接着され、その結果、前記第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定する、キットが提供される。
【0039】
本発明の第5の態様によると、高分子フィルムのチューブを形成する方法であって、前記チューブが、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1のチャンネルを含み、前記方法が、
(a)第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを用意するステップであって、前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを有し、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを有する、ステップ、
(b)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が、互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の少なくとも一方の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって高分子フィルムAを高分子フィルムBに接着するように、前記高分子フィルムAおよびBを配置し、その結果、第1および第2のオーバーラップヒートシール結合が前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定するように形成されるステップ
を含み、前記高分子フィルムAおよびBが、端部A-a、A-b、B-aおよびB-bがチューブの縦軸に沿って延びるように配置される、方法が提供される。
【0040】
本発明の第6の態様によると、高分子フィルムのチューブを形成する方法であって、前記チューブが、第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを含み、前記第1および第2のチャンネルの各々が、前記チューブの縦軸に沿って延び、前記方法が、
(a)第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBを用意するステップであって、前記高分子フィルムAが、第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2を有し、前記高分子フィルムBが、第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2を有し、前記高分子フィルムAが、端部A-aおよびA-bを有し、前記高分子フィルムBが、端部B-aおよびB-bを有する、ステップ、
(b)前記ヒートシール可能な表面A2およびB2が互いに接触し、前記ヒートシール可能な表面A2およびB2の各々の全表面積にわたっては拡がらないヒートシール結合によって高分子フィルムAを高分子フィルムBに接着するように、前記高分子フィルムAおよびBを配置し、その結果、
(i)第1および第2のオーバーラップヒートシール結合が、前記チューブおよびその前記第1のチャンネルを画定するように形成され、
(ii)第3のヒートシール結合が、前記チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2の壁を含む第2のチャンネルを画定するように、第3のヒートシール結合が前記ヒートシール可能な表面A2およびB2間で形成される、ステップ
を含み、前記高分子フィルムAおよびBが、端部A-a、A-b、B-aおよびB-bがチューブの縦軸に沿って延びるように配置される、方法が提供される。
【0041】
本発明の第5および第6の態様では、前記ヒートシール結合は、好ましくは、温度および圧力、好ましくは、200℃以下(好ましくは100~200℃の範囲内)の温度および100psi以下(好ましくは10~60psiの範囲内)の圧力を、1分以下(好ましくは0.5~30秒の範囲内)の時間、適用することによって形成される。ヒートシール結合は、チューブの周囲周りのある特定の所定の位置でのみ必要とされることが認識されるであろう。好適なヒートシーリング装置は、例えば、Sentinelから容易に購入できる。アセンブリは、ヒートシーリング機に入れられ、熱および圧力が、複数の別個の位置で適用されて、上述のヒートシール結合が形成される。
【0042】
第1のチャンネル内での高分子フィルムBのヒートシール可能な表面と高分子フィルムAの第1の表面との間のヒートシール結合の形成を回避するために、除去可能な剥離シートが、好ましくは、熱および圧力の適用前に高分子フィルムBのヒートシール可能な表面と高分子Aの第1の表面フィルムとの間にチャンネル内で配置される。剥離シートは、ヒートシーリング操作後にチューブから除去される。本発明は、前記ヒートシール結合を形成するために使用される熱および圧力の条件下で本明細書に記載の高分子フィルムのヒートシール可能な表面および第1の表面にヒートシール可能ではない任意の好適な剥離シートを利用できる。例えば、当技術分野で周知の好適なワックスまたはシリコーン剥離紙またはフィルムを使用してもよい。
【0043】
本発明の第7の態様によると、1つまたは複数の注入用化学物質を構造内の所定の位置に送達する方法であって、
(a)チューブの縦軸に沿って延びる第1のチャンネルを有する前記チューブを用意するステップであって、本明細書に記載の通り、前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成される、ステップ、
(b)前記注入用化学物質を含む第1の流体ストリームを、前記第1のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ
を含む、方法が提供される。
【0044】
本発明の第8の態様によると、複数の注入用化学物質を構造内の所定の位置に送達する方法であって、
a)チューブの縦軸に沿って延びる第1および第2のチャンネルを有する前記チューブを用意するステップであって、本明細書に記載の通り、前記チューブが、第1のヒートシール可能な高分子フィルムAおよび第2のヒートシール可能な高分子フィルムBによって構成される、ステップ、
(b)第1の注入用化学物質を含む第1の流体ストリームを、前記第1のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ、
(c)第2の注入用化学物質を含む第2の流体ストリームを、前記第2のチャンネルに沿って前記所定の位置に方向付けるステップ、
(d)前記第1および第2のストリームを前記所定の位置で混合するステップ
を含む、方法が提供される。
【0045】
第8の態様の方法は、好ましくは、前記第2のチャンネル中の前記第2の流体ストリームが、前記第1のチャンネル中の前記第1の流体ストリームと混合し、それによって、前記第1および第2の注入用化学物質間で化学反応が引き起こされるように、前記第1のヒートシール可能な高分子フィルムAを前記所定の位置で破壊するステップをさらに含む。
本開示および本発明の第1および第2の態様について記載される選好は、当然のことながら、本発明の第3~第8の態様にも適用可能であることが認識されるであろう。本発明の第2の態様は、特に、本発明の第4、第6および第8の態様に対応することが認識されるであろう。
【0046】
本発明は、採掘および建設事業における注入用化学物質の送達に特に有用である。本発明の高分子チューブは、注入用化学物質を送達してボーリング孔(例えば、採掘作業におけるボーリング孔)、パイプライン、シャフトもしくはトンネルの壁を強化するため、または地下の位置でガス、水および地層を固定、強化および制御するため、例えば、割れた地層を強化する、および/もしくは浸水を防ぐために使用され得る。本発明の高分子チューブはまた、整備および建設事業において注入用化学物質を送達するため、例えば構造物の穴または裂け目を修理または充填するために使用され得る。本明細書の上記に記述されるように、ポリウレタン、シリケートおよびフェノールベースの樹脂系を含む種々の注入用化学物質が、この目的のために使用される。
本発明は、本明細書の以下に記載されるように、図面を参照してさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2ならびに端部A-aおよびA-bを有する高分子フィルムA、ならびに第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2ならびに端部B-aおよびB-bを有する高分子フィルムBを示す断面図であり、ここで、高分子フィルムAは、オーバーラップヒートシール結合HSB2によって高分子フィルムBに接着している。ヒートシーリングは、フィルムアセンブリを点線Xに沿って巻くことによって行い、その結果、さらなるヒートシール結合(HSB1;図示せず)を、点線Xの矢じりの位置で高分子フィルムAおよびBのヒートシール可能な表面間で行い、それによって第1のチャンネルを有するチューブが形成される。ヒートシール結合HSB1およびHSB2は、フィルムAおよびBの長さに沿って(すなわち、断面に垂直な方向に)行われる。
図2】第1のチャンネル(2)を有するチューブ(1)を形成するためのヒートシール結合HSB1の形成後の図1のフィルムアセンブリを示す図である。
図3】第1の表面A1および第2のヒートシール可能な表面A2ならびに端部A-aおよびA-bを有する高分子フィルムA、ならびに第1の表面B1および第2のヒートシール可能な表面B2ならびに端部B-aおよびB-bを有する高分子フィルムBを示す断面図であり、ここで、高分子フィルムAは、オーバーラップヒートシール結合HSB2およびさらなるヒートシール結合HSB3によって高分子フィルムBに接着している。ヒートシール結合HSB2およびHSB3は、フィルムAおよびBの長さに沿って(すなわち、断面に垂直な方向に)延び、前記チューブの縦方向に延びる第2のチャンネル(3)を画定する。ヒートシーリングは、フィルムアセンブリを点線Xに沿って巻くことによって行い、その結果、さらなるヒートシール結合(HSB1;図示せず)を、点線Xの矢じりの位置で高分子フィルムAおよびBのヒートシール可能な表面間で行い、それによってその中に第1のチャンネルを有するチューブが形成される。ヒートシール結合HSB1、HSB2およびHSB3は、フィルムAおよびBの長さに沿って(すなわち、断面に垂直な方向に)行われる。
図4】第1のチャンネル(2)および第2のチャンネル(3)を含むチューブ(1)を形成するためのヒートシール結合HSB1の形成後の図2のフィルムアセンブリを示す図である。
図5】本明細書に記載の単一のチャンネルを有するチューブを製造するための配置構成を示す断面図である。高分子フィルムAは、前記第1の表面A1を提供するベース層(10)および前記ヒートシール可能な表面A2を提供するヒートシール可能な層(11)を有する。高分子フィルムBは、前記第1の表面B1を提供するベース層(12)および前記ヒートシール可能な表面B2を提供するヒートシール可能な層(13)を有する。除去可能な剥離シート(14)は、チャンネル(2)に配置されて、高分子フィルムBヒートシール可能な層(13)と高分子フィルムAのベース層(10)との間でのヒートシール結合の形成を回避する。アセンブリはヒートシーリング機に入れられ、熱および圧力が、複数の別個の位置(15)で適用される。剥離シートは、ヒートシーリング操作後にチューブから除去される。
図6】2つのチャンネルを有するチューブの製造のための対応する配置構成を示し図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
特性測定
高分子フィルムを特徴決定するために、以下の試験方法が使用され得る。
(i)ポリエステルおよびポリエステル基材の固有粘度(単位dL/g)は、ASTM D5225-98(2003)に従う溶液粘度法によって、Viscotek(商標)Y-501C相対粘度計(例えば、Hitchcock, Hammons & Yau in American Laboratory (August 1994) “The dual-capillary method for modern-day viscometry”を参照されたい)で、o-クロロフェノール中のポリエステル溶液0.5質量%を25℃で使用し、固有粘度を計算するためのBillmeyer一点法:
η=0.25ηred+0.75(ln ηrel)/c
(式中、
η=固有粘度(dL/g)、
ηrel=相対粘度、
c=濃度(g/dL)、および
ηred=低減粘度(dL/g)、これは(ηrel-1)/c(ηsp/cとしても表される、ηspは、比粘度である)と等価である)
を使用して、測定する。
(ii)極限引張強さ(UTS)、破断伸び(ETB)およびF5値(5%伸びにおける応力)は、試験法ASTM D882-18に従って測定する。直定規および較正サンプルカッター(10mm+/-0.5mm)を使用して、フィルムの5つのストリップ(長さ100mm)を機械方向に沿って切断する。各サンプルを、Instronモデル3111材料試験機を使用し、ゴム製のジョー面を有する空圧式グリップを使用して試験する。温度(23℃)および相対湿度(50%)を制御する。クロスヘッド速度(分離の速度)は、25mm/分である。変形率は50%である。破断伸び(εB(%))は、
εB(%)=(破断点伸張/L0)×100
(式中、L0は、グリップ間のサンプルの元々の長さである)
として定義される。
(iii)熱収縮率は、フィルムの機械方向および横方向に対して特定の方向に切断し、視覚測定のために印を付けた200mm×10mmの寸法のフィルムサンプルについて評価する。サンプルの長い方の寸法(すなわち、200mm寸法)が、収縮率が試験されるフィルム方向に対応する、すなわち、機械方向の収縮率の評価のために、200mm寸法の試験サンプルが、フィルムの機械方向に沿って配向される。試験片を150℃の所定温度に加熱し(この温度の加熱オーブンに入れることによって)、30分のインターバルにわたって保持した後、試験片を室温に冷却し、その寸法を手動で再測定した。熱収縮率を計算し、元々の長さのパーセンテージとして表した。
(iv)ガラス転移温度(Tg)および結晶融点(Tm)は、PerkinElmer HyperDSC 8500を使用して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。別途述べない限り、測定は、以下の標準試験法に従って行い、ASTM E1356-98に記載の方法に基づいた。サンプルは、走査の継続時間中、乾燥窒素雰囲気下で維持した。20ml・分-1の流量およびAlパンを使用した。サンプル(5mg)を20℃/分で20℃から350℃に加熱した。
gの値は、ASTM E1356-98に記載の通り、DSC走査(温度(℃)に対する熱流(W/g))で観察されたガラス転移の外挿開始温度として決定した。Tmの値は、転移のピーク吸熱としてDSC走査から決定した。
(v)結晶化度は、等式:
c=ΔHm/ΔHm°
(式中、
ΔHm=融解吸熱の積分から計算した融解エンタルピー実験値;
ΔHm°=100%結晶化度における対応するポリ(アルキレン-カルボキシレート)ホモポリマーの融解エンタルピー理論値)
に従って計算した結晶化の度合い(Xc)として、本明細書の上記に記載のDSC分析から測定した。したがって、文献(B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Academic Press, New York, (1976))において定義される通り、PET(またはPETベースの)ポリエステルの場合、ΔHm°は、100%結晶PETポリマーの融解エンタルピー理論値(140J/g)であり、PEN(またはPENベースの)ポリエステルの場合、ΔHm°は、100%結晶PENポリマーの融解エンタルピー理論値(103J/g)である。
(vi)高分子フィルムBに対する高分子フィルムAのヒートシール強度は、以下の手順によって周囲温度(23℃±2℃)で測定する。2種のフィルムのサンプルを一緒に、それらのヒートシール可能な表面が接触するように配置し、60psiの圧力下で1秒間、150℃の温度にかける。シーリングフィルムアセンブリを室温に冷却し、シーリング複合体を25mm幅のストリップに切断する。ヒートシール強度は、シールの単位幅当たり線形張力下でフィルムの層を4.23mm/秒の一定速度で剥離するのに必要な力を測定することによって、Instronモデル4301を使用して決定する。手順を繰り返し、5回の結果の平均値を計算した。
【0049】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。実施例は、例示のみを目的とし、上記の通りの本発明を限定することは意図されないことが認識されるであろう。詳細の変更は、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得る。
【実施例
【0050】
(実施例1)(単一内部チャンネル)
ポリマー組成物(PET)をテレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコール(TA/IPA/EGのモル比は82/18/100である)に由来するヒートシール可能なコポリエステルと共押出し、水冷回転クエンチドラム上にキャストして、非晶質キャスト押出物を得た。キャスト押出物を、約50~80℃の範囲の温度に加熱し、押出方向にその元々の寸法のおよそ3倍に延伸した。フィルムを、100℃の温度のテンターオーブンに通し、フィルムを横向き方向にその元々も寸法のおよそ3倍に延伸した。二軸延伸フィルムを、従来の方法によって3段階晶析装置で210℃~230℃の温度で熱硬化させた。最終フィルムの総フィルム厚は50μmであり、ヒートシール可能な層は、およそ10μm厚であった。これを、高分子フィルムBとした。
【0051】
共押出二軸配向高分子フィルムAを、総フィルム厚が30μmであり、ヒートシール可能な層が5μm厚であったことを除き、上記手順に本質的に従い、同じ材料を使用して調製した。
寸法30cm(長さ)×3cm(幅)のシートを、長さ方向がフィルムの縦(機械)軸に揃うようにして高分子フィルムAから切断した。寸法30cm(長さ)×25cm(幅)のシートを、長さ方向がフィルムの縦(機械)軸に揃うようにして高分子フィルムBから切断した。
【0052】
高分子シートAおよびBを実質的に平行に、各シートの第1の長端部(A-aおよびB-b)に沿って約1cm重ねて揃え、ヒートシール結合は、重なりの領域を60psiの圧力下で1秒間、150℃の温度にかけることによって行い、それによって、本明細書においてHSB2と呼ばれるヒートシール結合を形成した。フィルムアセンブリを、各シートの第2の長端部(A-bおよびB-a)が約1cm重なるようにしてそれ自体に巻きつけ、それによって、本明細書においてHSB1と呼ばれるヒートシール結合を形成した。チューブは、約8cmの内径を有し、単一の内部チャンネルを示した。
【0053】
(実施例2)(2つの内部チャンネル)
高分子シートAおよびBを、高分子シートAの幅が12cmであったことを除いて実施例1に記載の通りに調製した。
シートAおよびBを実質的に平行に、各フィルムの第1の長端部に沿って約10cm重ねて揃え、ヒートシール結合を、シートBの第1の長端部(B-b)近傍の領域を上述のヒートシール条件にかけることによって行い、それによって、本明細書においてHSB2と呼ばれるヒートシール結合を形成した。さらなるヒートシール結合を、シートAの第1の長端部(A-a)の近傍の領域を同じヒートシール条件にかけることによって行い、端部B-bおよびB-a間の位置でヒートシール可能な表面B2へのヒートシール結合を形成し、それによって、本明細書においてHSB3と呼ばれるヒートシール結合を形成した。フィルムアセンブリを、シートAおよびBの第2の長端部(A-bおよびB-a)の各々が約1cm重なるようにしてそれ自体に巻きつけ、それによって、本明細書においてHSB1と呼ばれるヒートシール結合を形成した。チューブは、約8cmの内径を有し、2つの内部チャンネルを示した。
上記の実施例におけるヒートシール結合は、本明細書に記載の通りに測定して、71g/mmのヒートシール結合強度を示した。
実施例の各々において、ヒートシーリングステップは、150℃、60psiおよび1秒で動作するSentinelヒートシーリング機において、図5および6に例示される通り、内部チャンネルに配置されたワックス剥離紙を使用して行った。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】