IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボマテック マネジメント アーゲーの特許一覧

特表2023-509486電気機械に使用され、1つ以上の溝を有する永久磁石
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電気機械に使用され、1つ以上の溝を有する永久磁石
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20230301BHJP
【FI】
H02K1/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541639
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2020050194
(87)【国際公開番号】W WO2021139877
(87)【国際公開日】2021-07-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522048834
【氏名又は名称】ボマテック マネジメント アーゲー
【氏名又は名称原語表記】BOMATEC MANAGEMENT AG
【住所又は居所原語表記】Hofstrasse 1, 8181 Hoeri Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, クルト
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CB04
5H622DD02
(57)【要約】
電気機械に使用される一体型永久磁石は、この永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝(10)を有する。溝(10)は、S字またはZ字の形状を有するサブセクション(14)を含む蛇行コースまたは螺旋状コースを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械に使用される一体型永久磁石であって、
前記永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝(10)を有し、
前記溝(10)は、S字またはZ字の形状を有するサブセクション(14)を含む蛇行コースを有する、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項2】
請求項1に記載の一体型永久磁石であって、
前記蛇行コースは、規則的な蛇行部(11~13)の連続を含み、
前記サブセクション(14)は、前記連続するうちの1つの蛇行部(11~13)の一部、特に、前記連続するうちの前記最初の蛇行部の又は前記最後の蛇行部の一部である、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の一体型永久磁石であって、
前記サブセクション(14)の長さは、前記サブセクション(14)がその一部となっている前記蛇行部(11~13)の全長の少なくとも2倍、特に3倍、特に5倍、特に7倍、特に10倍短い、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の一体型永久磁石であって、
複数の前記蛇行部(11~13)は、同等の長さを有し、および/または、前記サブセクション(14)は、前記蛇行コースの前記規則性を破る、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の一体型永久磁石であって、
前記溝(10)、特に、全ての蛇行部(11~13)は、少なくとも30mm、特に少なくとも50mm、特に少なくとも70mm、特に少なくとも100mmの長さの直線を含む、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項6】
電気機械に使用される一体型永久磁石であって、
前記永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝(20)を有し、
前記溝(20)は、S字またはZ字の形状を有するサブセクション(25)を含む螺旋状コースを有する、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項7】
請求項6に記載の一体型永久磁石であって、
前記螺旋状コースは、連続する規則的な螺旋ターン部(21~24)を含み、
前記サブセクション(25)は、前記連続するうちの1つの螺旋ターン部(21~24)の一部、特に前記連続するうちの前記最初の螺旋ターン部の又は前記最後の螺旋ターン部の一部である、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の一体型永久磁石であって、
前記サブセクション(25)の前記長さは、前記サブセクション(25)がその一部となっている前記螺旋ターン部(21~24)の前記全長の少なくとも2倍、特に3倍、特に5倍、特に7倍、特に10倍短い、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項9】
請求項6~請求項8の何れか一項に記載の一体型永久磁石であって、
複数の前記螺旋ターン部(21~24)は、同等の長さを有し、および/または、前記サブセクション(25)は、前記螺旋状コースの前記規則性を破る、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか一項に記載の一体型永久磁石であって、
前記溝(10、20)は、複数のサブセクション(14、25)を含む、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れか一項に記載の一体型永久磁石であって、
前記サブセクション(14、25)は、円弧部を含み、
前記円弧部は、6mm未満、特に3mm未満、特に2mm未満、特に1mm未満、特に0.75mm未満の半径を有し、および/または、90°を超える少なくとも1つ、特に少なくとも2つの弧角を有し、および/または、90°を超える少なくとも1つ、特に少なくとも2つの方向転換部を有する、
ことを特徴とする一体型永久磁石。
【請求項12】
請求項1~請求項11の何れか一項に記載の永久磁石であって、
前記溝(10、20)は、絶縁材料、特にポリマープラスチック、特にアクリル系プラスチックで充填される、
ことを特徴とする永久磁石。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか一項に記載の永久磁石であって、
前記永久磁石は、材料、特に焼結材料から成る又はそれを含み、焼結材料は、ネオジム、鉄およびボロンの合金またはサマリウムおよびコバルトの合金から成る又はそれを含む、
ことを特徴とする永久磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械に使用される一体型永久磁石であって、この永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝を有する永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石式機械、特に単一歯巻線の永久磁石式機械では、永久磁石内に誘起される渦電流による損失が度々生じる。渦電流は熱の発生を引き起こし、熱的過負荷や電気機械の故障の原因となる。一方、渦電流は、電気機械のエアギャップ内の磁場の変化/脈動によって発生し、エアギャップ領域の脈動は、電気機械の固定子の溝加工および電流供給に依存する。他方、渦電流は、電気機械の単一歯巻線に電流を流すことで生じる磁気の流れの変化によって発生する。
【0003】
渦電流損失を低減するために、一方では、永久磁石を互いに分離した複数の永久磁石セグメントに分割し、その複数の永久磁石セグメントを互いに絶縁して接合することが知られている(例えば特許文献1を参照)。分離した永久磁石のセグメントの数は、電気機械の個々の形状に依存する。
他方、ワイヤ放電加工(wire erosion cutting)によって溝を永久磁石に刻むものがある。溝が永久磁石に形成された後、そこには絶縁材料、例えばポリマープラスチック、特にアクリル系プラスチックを充填することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1976096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製造が容易で、渦電流損失特性および機械的安定性に優れた電気機械用の永久磁石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項によって解決される。それによれば、電気機械に使用される一体型永久磁石は、永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝を有する。溝は、S字状またはZ字状の形をしたサブセクションを含む蛇行コース(a meandering course)を有する。
S字またはZ字の形状は、溝のコースが、第1の回転方向、すなわち時計回りまたは反時計回りに90°を超える少なくとも1つの方向転換部を有し、そして、反対の回転方向に任意の角度、特に少なくとも10°、特に少なくとも20°、特に少なくとも45°、特に少なくとも90°の角度の別の方向転換部を有することを意味する。
溝は、永久磁石の渦電流損失を低減させる。S字またはZ字の形状に従った溝のサブセクションは、永久磁石の安定性を向上させる。
【0007】
有利には、蛇行コースは、規則的な曲がりくねり(蛇行部)の連続を含む。サブセクションは、連続するうちの1つの蛇行部の一部、特に連続するうちの最初の蛇行部または最後の蛇行部の一部である。機械的に最もストレスのかかる部分にサブセクションを配置すると、安定性が最も望ましく向上する。
特に、サブセクションの長さは、サブセクションがその一部となっている蛇行部の全長の少なくとも2倍、特に3倍、特に5倍、特に7倍、特に10倍短いものである。つまり、サブセクションは、全体の一部であり、溝のコース全体に影響を与えるものではない。
有利には、複数の蛇行部は同等の長さを有し、および/または、サブセクションは蛇行コースの規則性を破る。
さらに、溝、特に全ての蛇行部は、少なくとも30mm、特に少なくとも50mm、特に少なくとも70mm、特に少なくとも100mmの長さの直線を含むことができる。
【0008】
さらに、本発明のこの目的は、電気機械に使用される一体型永久磁石であって、この永久磁石の厚さに等しい深さdを持つ溝を有する一体型永久磁石によって解決される。溝は、螺旋状コースを有する。溝は、S字またはZ字の形状を有するサブセクションを含む。このようなサブセクションを含む螺旋形状は、中空円筒の機械的安定性を向上させる。
中空円筒の永久磁石の場合、厚さは、中空円筒の壁の厚さに相当する。
有利には、螺旋状コースは、連続する規則的な螺旋ターン部(helix turns)を含む。サブセクションは、連続するうちの1つの螺旋ターン部の一部、特に連続するうちの最初の螺旋ターン部の一部または最後の螺旋ターン部の一部である。
さらに、サブセクションの長さは、サブセクションがその一部となっている螺旋ターン部の全長の少なくとも2倍、特に3倍、特に5倍、特に7倍、特に10倍短いものとすることができる。
有利には、複数の螺旋ターン部は同等の長さを有し、および/または、サブセクションは螺旋状コースの規則性を破る。
【0009】
好ましい実施形態では、一体型永久磁石は、複数のサブセクションを含む。これらのサブセクションは、異なる蛇行部の一部、または、異なる螺旋ターン部の一部であり得る。
有利には、サブセクションは、6mm未満、特に3mm未満、特に2mm未満、特に1mm未満、特に0.75mm未満の半径を有する円弧部を含む。さらに、サブセクションは、90°を超える少なくとも1つ、特に少なくとも2つの弧角を有することができ、および/または、90°を超える少なくとも1つ、特に少なくとも2つの方向転換部を有することができる。
【0010】
好ましい実施形態では、溝は、絶縁材料、特にポリマープラスチック、特にアクリル系プラスチックで充填され、永久磁石は、材料、特に焼結材料から成る又はそれを含み、焼結材料は、ネオジム、鉄およびボロンの合金またはサマリウムおよびコバルトの合金から成る又はそれを含む。
【0011】
本発明は、以下の詳細な説明を考慮すれば、より良く理解され、そして上記以外の目的も明らかとなるであろう。そのような説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】蛇行溝を有する一体型永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す図。
図1b】蛇行溝を有する一体型永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す図。
図1c】蛇行溝を有する一体型永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す図。
図2a】螺旋状溝を有する一体型永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す図。
図2b】螺旋状溝を有する一体型永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す図。
図2c】螺旋状溝を有する一体型永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す図。
図3】第3の例示的な実施形態を示す図。
図4】第4の例示的な実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1a~1cは、立方体形状を有する一体型永久磁石の第1の例示的な実施形態を示す図である。この永久磁石は、座標軸xとyとによって広げられた平面に沿って延び、厚さdを有する。
永久磁石は、永久磁石の厚さdに等しい深さを有する溝10を含む。すなわち溝10は、永久磁石の厚さを貫通して延在する。溝10は、連続する3つの規則的な蛇行部11、12及び13を含む蛇行コースを有する。第1の蛇行部11は第1の端部10aから点10bまで、第2の蛇行部12は点10bから点10cまで、そして、第3の蛇行部は点10cから第2の端部10dまで続く。全ての蛇行部11、12、及び13は、同等の長さと同等の形状とを有し、これが蛇行コースの規則性を与える。溝は、距離Lと略同じ長さの4本の直線を有する。
【0014】
第3の蛇行部13は、S字の形状を有するサブセクション14を含む。サブセクション14は、点15から点16までの蛇行コースの規則性を破るものであり、そして、一つの、すなわち第3の、蛇行部の一部に過ぎない。第3の蛇行部は、見方によっては、連続するうちの最初の蛇行部であり、最後の蛇行部でもある。サブセクション14は、反対方向の2つの方向転換部を含む。溝1を矢印17で示す方向に辿ると、矢印18で示す角度αを持つ反時計回りの円弧部と、矢印19で示す角度βを持つ時計回りの円弧部とで、すなわち反対方向に、向きが変化する。角度αは約170°、角度βは約130°、つまり170°と130°とで1回ずつ向きが変わる。これは、90°を超える少なくとも1回の方向転換があることを意味する。角度αとβとを持つ円弧部は、いずれも約0.5mmの半径を有する。
サブセクション14の長さは、サブセクション14がその一部となっている第3の蛇行部13の全長よりもずっと短い。サブセクション14は、第3の蛇行部13全体の約8倍小さいもの(約8分の1)である。
【0015】
説明したサブセクションは、永久磁石の機械的安定性を向上させる。電気機械に永久磁石を使用する際、または製造工程で磁化する際には、機械的ストレスが発生する。例えば、図1cの破線で囲んだ永久磁石の最前部を、機械的な力で図1cの矢印で示す方向に移動させようとする。そうすると、Mの位置で極端な機械的ストレスが発生する。しかし、サブセクション14は、そのコースによって機械的な力を吸収するため、このストレスを低減することができる。
【0016】
図2a~2cは、中空円筒の形状を有する一体型永久磁石の第2の例示的な実施形態を示す図である。中空円筒は、溝20の深さに等しい壁厚dを有する。すなわち、溝20は、永久磁石の厚さを貫通して延在する。溝20は、連続する4つの螺旋ターン部21、22、23、及び24を含む螺旋状コースを有する。第1の螺旋ターン部21は点20aから点20bまで、第2の螺旋ターン部22は点20bから点20cまで、第3の螺旋ターン部23は点20cから点20dまで、そして、第4の螺旋ターン部24は点20dから点20eまで続く。全ての螺旋ターン部21、22、23、及び24は、同等の長さと同等の形状とを有し、これが螺旋状コースの規則性を与える。
【0017】
第4の螺旋ターン部24は、Z字の形状を有するサブセクション25を含む。サブセクション25は、点26から点27までの螺旋状コースの規則性を破るものであり、そして、一つの、すなわち第4の、螺旋ターン部の一部に過ぎない。第4の螺旋ターン部は、見方によっては、連続するうちの最初の螺旋ターン部であり、最後の螺旋ターン部でもある。溝20を矢印28で示す方向に辿ると、矢印29で示す角度αを持つ時計回りの円弧部と、矢印30で示す角度βを持つ反時計回りの円弧部とで、すなわち反対方向に、向きが変化する。角度αは約60°、角度βは約160°、つまり60°と160°とで1回ずつ向きが変わる。これは、90°を超える少なくとも1回の方向転換があることを意味する。
サブセクション25の長さは、第4の螺旋ターン部24の全長よりもずっと短い。
【0018】
図3および図4は、代替の実施形態を示す。図3は、2つのサブセクションを含む実施形態を示し、図4は、1つのサブセクションが、互いに直接続くS字とZ字との両方を含む実施形態を示す。
【0019】
本発明の現在の好ましい実施形態が示され、説明されているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、以下の請求項の範囲内で、その他にも様々に具体化することができ、そして実施することができることを明確に理解されたい。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3-4】
【国際調査報告】