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特表2023-509516がん治療のための改良型ヒトメチルチオアデノシン/アデノシン枯渇酵素変種
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】がん治療のための改良型ヒトメチルチオアデノシン/アデノシン枯渇酵素変種
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20230301BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230301BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230301BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230301BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230301BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230301BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230301BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20230301BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230301BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/12
A61K38/43
A61K47/60
A61K47/56
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K35/76
A61K35/741
A61K35/74
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541785
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021012291
(87)【国際公開番号】W WO2021141977
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/958,161
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ストーン エヴェレット
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD11
4B050GG05
4B050LL01
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA22
4C084CA18
4C084DC01
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA21
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BC01
4C087BC34
4C087BC83
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
MTA/ADO分解酵素活性を有するコンジュゲートされたポリペプチドに関連する組成物が、本明細書において開示される。コンジュゲートされたポリペプチドは、触媒活性を維持しながら最大限のコンジュゲーションを可能にするように操作されている。コンジュゲートされたポリペプチドに関連する核酸、発現ベクター、および宿主細胞も開示される。がんを処置するために上記を含む薬学的製剤を使用する方法がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む組成物であって、該ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基が、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている、前記組成物。
【請求項2】
ポリペプチドが、SEQ ID NO: 1の少なくとも100個の連続するアミノ酸と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、SEQ ID NO: 1のトレオニン18、トレオニン197、セリン178、バリン233およびメチオニン196に対応するアミノ酸を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリペプチドの前記少なくとも1つのアミノ酸残基が、第1のリジンまたは第1のシステインを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
SEQ ID NO: 1のリジン225に対応するアミノ酸が、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている、請求項2のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
SEQ ID NO: 1のリジン238に対応するアミノ酸が、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている、請求項2のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
リジン225に対応するアミノ酸またはリジン238に対応するアミノ酸が、アルギニンで置換されている、請求項4または5記載の組成物。
【請求項7】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、少なくとも1.5×105 M-1s-1である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、約1.5×105 M-1s-1~3.0×105 M-1s-1である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのVmaxが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKmが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのKmの2倍以下である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチドにコンジュゲートされた少なくとも1つの重合体を含む組成物であって、該重合体が、該ポリペプチドの血清中半減期を、コンジュゲートされていないポリペプチドと比較して増加させる、前記組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの重合体が、ポリエチレングリコールである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ポリエチレングリコールが、約5000 kDaの平均分子量を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ポリエチレングリコールが、約500 kDa~約1000 kDa、約800 kDa~約1600 kDa、約1500 kDa~約3000 kDa、約2000 kDa~約4000 kDa、約2500 kDa~約5000 kDa、約3000 kDa~約6000 kDa、約4,000 kDa~約8,000 kDa、約6,000 kDa~約12,000 kDa、約10,000 kDa~約20,000 kDa、または約15,000 kDa~約30,000 kDaの平均分子量を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの重合体が、ポリペプチドの第2のリジンまたは第2のシステインにコンジュゲートされている、請求項14または15記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項記載のポリペプチドの集団を含む組成物であって、該集団が該ポリペプチドの三量体を含む、前記組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項記載のポリペプチドの集団を含む組成物であって、該ポリペプチドの少なくとも80%が前記少なくとも1つの重合体を含む、前記組成物。
【請求項19】
ポリペプチドの少なくとも80%が、前記少なくとも1つの重合体の少なくとも3つを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
ポリペプチドの少なくとも80%が、前記少なくとも1つの重合体の少なくとも6つを含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリペプチド当たりの重合体の数が、ガウス分布を含む、請求項18~20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
ガウス分布が、ポリペプチド当たり2±1、3±1、4±1、または6±1個の重合体の最頻値(mode)を有する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
ガウス分布が、ポリペプチド当たり8±3個の重合体の最頻値を有する、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、少なくとも1.5×105 M-1s-1である、請求項12~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、約1.5×105 M-1s-1~3.0×105 M-1s-1である、請求項12~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKcat/Kmが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である、請求項12~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
ポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のVmaxが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のVmaxの少なくとも50%である、請求項12~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
ポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のKmが、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のKmの2倍以下である、請求項12~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
異種ペプチドセグメントをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
異種ペプチドセグメントが、ターゲティング部分を含む、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
ターゲティング部分が、抗体もしくはその断片、またはペプチドを含む、請求項27記載の組成物。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項33】
細菌、真菌、昆虫、または哺乳動物における発現のためにコドン最適化されている、請求項32記載の核酸。
【請求項34】
細菌における発現のためにコドン最適化されている、請求項33記載の核酸。
【請求項35】
細菌が大腸菌(E. coli)である、請求項34記載の核酸。
【請求項36】
SEQ ID NO: 4および6のうちの1つに記載の配列を含む、請求項32記載の核酸。
【請求項37】
請求項32~35のいずれか一項記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項38】
請求項32~36のいずれか一項記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項39】
細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である、請求項38記載の宿主細胞。
【請求項40】
細菌細胞が大腸菌細胞である、請求項39記載の宿主細胞。
【請求項41】
薬学的に許容される担体中に請求項1~40のいずれか一項記載の組成物を含む、薬学的製剤。
【請求項42】
以下の段階を含む、腫瘍を有する患者を処置する方法:
メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む組成物の有効量を該患者に投与する段階であって、該ポリペプチドが、少なくとも36時間の血清中半減期を有する、段階。
【請求項43】
組成物が請求項41記載の薬学的製剤である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
患者が以前、腫瘍と診断された、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
患者が固形腫瘍を有する、請求項42または43記載の方法。
【請求項46】
腫瘍が血液学的腫瘍を含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項47】
腫瘍が黒色腫を含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項48】
腫瘍が乳がんを含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項49】
腫瘍が結腸がんを含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項50】
腫瘍が骨肉腫、膵臓がん、脊索腫、中皮腫、T細胞ALL、神経膠腫、腎細胞がん、黒色腫、扁平上皮がん、胆嚢がん、胃がん、または肝細胞がんを含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項51】
腫瘍がMTAP欠失を有する、請求項42記載の方法。
【請求項52】
腫瘍が、参照レベルと比べて減少したレベルのメチルチオアデノシンホスホリラーゼポリペプチドを有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
腫瘍が、参照レベルと比べて減少したレベルのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
腫瘍が、参照レベルと比べて増加したレベルのCD73を有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
腫瘍が、参照レベルと比べて増加したレベルのCD39を有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
腫瘍が、参照レベルと比べて増加したレベルのMTAを有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
腫瘍が、参照レベルと比べて増加したレベルのADOを有する、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
参照レベルが、健常対象におけるレベルである、請求項52~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
参照レベルが、患者の健常組織におけるレベルである、請求項52~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
患者がヒト患者である、請求項42~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
製剤が、腫瘍内に、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、眼内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、経口的に、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルによって、または洗浄によって投与される、請求項42~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
薬学的組成物が、免疫療法に対する感受性を増加させる、請求項42~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
患者が以前、免疫チェックポイント阻害剤の投与に応答することができなかった、請求項62記載の方法。
【請求項64】
対象に少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む、請求項42~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
第2の抗がん療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
第2の抗がん療法が、免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1抗体を含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-036559、またはCK-301を含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD1抗体を含む、請求項66記載の方法。
【請求項70】
抗PD1抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-223、AMP-514、セミプリマブ、またはPDR-001を含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体を含む、請求項66記載の方法。
【請求項72】
抗CTLA-4療法が、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む、請求項71記載の方法。
【請求項73】
第2の抗がん療法が、養子T細胞療法を含む、請求項66記載の方法。
【請求項74】
養子T細胞療法が、MTAP酵素の投与に続いて施される、請求項74記載の方法。
【請求項75】
以下の段階を含む、腫瘍を有する患者を処置する方法:
MTAP酵素を発現するように操作されているT細胞を含む養子T細胞療法を該患者に施す段階。
【請求項76】
がんの転移が遅延、低減、または抑止される、請求項42~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
腫瘍を有する患者への治療適用のための医薬の製造のための、請求項1~31のいずれか一項記載のMTAP酵素、請求項32~36のいずれか一項記載の核酸、または請求項41記載の薬学的組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年1月7日付で出願された米国特許仮出願第62/958,161号の恩典を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国立衛生研究所から授与された許可番号R01 CA189623およびR01 CA240700の下で政府支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。2021年1月6日に作成されたASCIIコピーは、UTFBP1227WO_ST25という名称であり、サイズが84722バイトである。
【0004】
分野
本発明は広くは、医学および生物学の分野に関する。より詳細には、本発明は、がんの処置のためにメチルチオアデノシン(MTA)および/またはアデノシン(ADO)を枯渇させる酵素に関する。さらにより詳細には、本発明は、ヒト治療に適したMTAおよび/またはADO分解活性を有するヒト酵素の操作、薬理学的最適化、およびプロセス開発に関する。
【背景技術】
【0005】
関連技術の説明
メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)の染色体9p21.3の位置でのホモ接合性遺伝子欠失は、骨肉腫、膵臓がん、および脊索腫のおよそ30~40%において観察される共通の事象であり、中皮腫、T 細胞急性リンパ芽球性白血病、および神経膠腫ではさらに高い損失(60~75%)が認められる(Bertino et al., 2011)。MTAPは、ポリアミン合成の副産物であるメチルチオアデノシン(MTA)をメチルチオリボース-1'-リン酸(MTR-1'-P)およびアデニンに異化し、これらはメチオニンおよびプリンサルベージ経路に再利用される。MTAP喪失は、侵攻性疾患および転帰の悪化と相関している。固形腫瘍およびリンパ腫における MTAP 欠失は、その基質であるMTAの蓄積および分泌増加をもたらす(Stevens et al., 2008; Stevens et al., 2009; Stevens et al., 2010)。黒色腫細胞での研究から、正常組織と対比して腫瘍における有意に高いMTA濃度は、より顕著な浸潤性および悪性度の特徴と相関していることが報告されている(Stevens et al., 2009)。同様に、肝細胞がん(HCC)におけるMTAP欠損も、HCC増殖およびMTAレベルの増加と強い相関を示し、肝星細胞における腫瘍形成促進遺伝子発現プロファイルを増加させた(Kirovski et al., 2011)。
【0006】
MTAP遺伝子の喪失は、染色体9p21上で近接していることから、細胞周期調節因子であるCDKN2Aとともに単純なバイスタンダ共欠失であると一般に考えられていた。しかしながら、胃がんおよび皮膚T細胞リンパ腫の研究において、MTAP欠失はCDKN2A喪失とは独立して起こり、転帰の悪化と相関することが分かった(Kim et al., 2011; Woollard et al., 2016)。マウスノックアウトモデルでは、ホモ接合性MTAP-/-ヌルマウスは胚性致死の表現型を有するものの、MTAP+/-ヘテロ接合体は正常に発育するが、T細胞リンパ腫で早死にすることが分かった(Kadariya et al., 2009)。これらの知見と一致して、常染色体優性遺伝性悪性腫瘍である悪性線維性組織球腫を伴う骨幹部骨髄腔狭窄症(DMSMFH)は、エクソンスキッピング、選択的スプライシング、および最終的には機能不全MTAP遺伝子産物につながるMTAP遺伝子内の変異に起因しており、CDKN2Aとは独立した腫瘍抑制的な役割を示している(Camacho-Vanegas et al., 2012)。
【0007】
MTAPの欠失または抑制はMTAの蓄積および排出をもたらし、これは強力な免疫抑制特性を有することが示されている。MTAとのインキュベーションは、ナイーブリンパ球の増殖および分化を停止させ、活性化されたヒトT細胞に対して細胞傷害性である。特に、MTAは抗原特異的CD8+ T細胞の拡張を停止し、CD25およびCD69などの活性化マーカーの上方制御を抑止し、予め刺激された細胞傷害性Tリンパ球のアポトーシスを誘導する(Henrich et al., 2016)。以前の報告では、外因性MTAが、抗原または同種異系細胞で刺激したヒトリンパ球培養物のDNA合成、タンパク質合成、および増殖を阻害し、その効果は、MTAを含まないように細胞を洗浄することによって反転されうる(Vandenbark et al., 1980)。機構的には、ヒストンのメチル化によってクロマチンリモデリングおよび遺伝子発現を調節するSAM依存性タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMT)が、MTAの免疫抑制効果を促進する上で重要な役割を果たすことが、最近の報告で示されている。特に、PRMT5発現は、記憶T細胞の活性化および拡張において必須の役割を果たすことが示された(Webb, Amici et al. 2017)。MTAはほとんどのメチルトランスフェラーゼの有意な阻害剤ではないが、0.26μMのKIを有しかなり強力なPRMT5阻害剤であり(Marjon, Cameron et al. 2016)、したがってMTAの免疫抑制作用機構に寄与している可能性が高いことが報告されている。例えば、MTAとPRMT5阻害剤の両方とも、T細胞の増殖、生存性、および機能性を低減することが示されている(Strobl, Schaffer et al. 2020)。
【0008】
また、MTAはアデノシン受容体A2aおよびA2bのアゴニストとして作用し、マクロファージにおいて免疫寛容原性表現型を創出しうる(Keyel et al., 2014)。同様に、悪性黒色腫を用いた実験において、MTAは、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ3 (MMP3)の誘導により線維芽細胞において腫瘍促進性の役割を引き起こすことが観察された(Stevens et al., 2009)。MTAP欠失の結果が免疫エフェクタ細胞を抑制し、MTAの蓄積を通じて寛容原性間質細胞の表現型を促進するように作用するという証拠は、これが、がんにおいて最も一般的な遺伝子欠失の1つである理由の明確な機構であることを示唆している。腫瘍から排出されたMTAは、腫瘍細胞が免疫学的監視および排除を回避するのに役立つ免疫チェックポイントと考えられうる。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様において、組成物が本明細書において提供される。1つの局面において、組成物は、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基は、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている。
【0010】
いくつかの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の少なくとも100個の連続するアミノ酸と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、SEQ ID NO: 1のトレオニン18、トレオニン197、セリン178、バリン233およびメチオニン196に対応するアミノ酸を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドの前記少なくとも1つのアミノ酸残基は、第1のリジンまたは第1のシステインを含む。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のリジン225に対応するアミノ酸は、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1のリジン238に対応するアミノ酸は、コンジュゲーション部位を排除するように操作されている。いくつかの態様において、リジン225に対応するアミノ酸またはリジン238に対応するアミノ酸は、アルギニンで置換されている。
【0011】
いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、少なくとも1.5×105 M-1s-1である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、約1.5×105 M-1s-1~3.0×105 M-1s-1である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのVmaxは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対するポリペプチドのKmは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのKmの2倍以下である。
【0012】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書におよびそれに記述されるポリペプチドにコンジュゲートされた少なくとも1つの重合体を含み、該重合体は、該ポリペプチドの血清中半減期を、コンジュゲートされていないポリペプチドと比較して増加させる。いくつかの態様において、少なくとも1つの重合体は、ポリエチレングリコールである。いくつかの態様において、ポリエチレングリコールは、約5000 kDaの平均分子量を有する。いくつかの態様において、ポリエチレングリコールは、約500 kDa~約1000 kDa、約800 kDa~約1600 kDa、約1500 kDa~約3000 kDa、約2000 kDa~約4000 kDa、約2500 kDa~約5000 kDa、約3000 kDa~約6000 kDa、約4,000 kDa~約8,000 kDa、約6,000 kDa~約12,000 kDa、約10,000 kDa~約20,000 kDa、または約15,000 kDa~約30,000 kDaの平均分子量を有する。いくつかの態様において、少なくとも1つの重合体は、ポリペプチドの第2のリジンまたは第2のシステインにコンジュゲートされている。
【0013】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書におよびそれに記述されるポリペプチドの集団を含み、該集団は、該ポリペプチドの三量体を含む。いくつかの態様において、組成物は、本明細書におよびそれに記述されるポリペプチドの集団を含み、ここでポリペプチドの少なくとも80%が少なくとも1つの重合体を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドの少なくとも80%が、少なくとも1つの重合体の少なくとも3つを含む。いくつかの態様において、ポリペプチドの少なくとも80%が、少なくとも1つの重合体の少なくとも6つを含む。いくつかの態様において、ポリペプチド当たりの重合体の数は、ガウス分布を含む。いくつかの態様において、ガウス分布は、ポリペプチド当たり2±1、3±1、4±1、または6±1個の重合体の最頻値(mode)を有する。いくつかの態様において、ガウス分布は、ポリペプチド当たり8±3個の重合体の最頻値を有する。
【0014】
いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、少なくとも1.5×105 M-1s-1である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、約1.5×105 M-1s-1~3.0×105 M-1s-1である。いくつかの態様において、メチルチオアデノシンのメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解に対する前記ポリペプチドのKcat/Kmは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのVmaxの少なくとも50%である。いくつかの態様において、ポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のVmaxは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のVmaxの少なくとも50%である。いくつかの態様において、ポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のKmは、SEQ ID NO: 1を含むメチルチオアデノシンホスホリラーゼのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性のKmの2倍以下である。
【0015】
いくつかの態様において、組成物は、異種ペプチドセグメントをさらに含む。いくつかの態様において、異種ペプチドセグメントは、ターゲティング部分を含む。いくつかの態様において、ターゲティング部分は、抗体もしくはその断片、またはペプチドを含む。
【0016】
いくつかの態様において、核酸が本明細書において提供される。1つの局面において、核酸は、本明細書におよびそれに記述されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0017】
いくつかの態様において、核酸は、細菌、真菌、昆虫、または哺乳動物における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの態様において、核酸は、細菌における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの態様において、細菌は大腸菌(E. coli)である。いくつかの態様において、核酸は、SEQ ID NO: 4および6のうちの1つに記載の配列を含む。
【0018】
いくつかの態様において、発現ベクターが本明細書において提供される。1つの局面において、発現ベクターは、本明細書におよびそれに記述される核酸を含むことができる。
【0019】
いくつかの態様において、宿主細胞が本明細書において提供される。1つの局面において、宿主細胞は、本明細書におよびそれに記述される核酸を含む。
【0020】
いくつかの態様において、宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、細菌細胞は大腸菌細胞である。
【0021】
いくつかの態様において、薬学的製剤が本明細書において提供される。いくつかの態様において、薬学的製剤は、薬学的に許容される担体中に本明細書におよびそれに記述される組成物を含む。
【0022】
いくつかの態様において、腫瘍を有する患者を処置する方法が本明細書において提供される。1つの局面において、腫瘍を有する患者を処置する方法は、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む組成物の有効量を患者に投与する段階を含み、該ポリペプチドは、少なくとも36時間の血清中半減期(serum-half)を有する。
【0023】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書におよびそれに記述される薬学的製剤である。いくつかの態様において、患者は以前、腫瘍と診断された。いくつかの態様において、患者は固形腫瘍を有する。いくつかの態様において、腫瘍は血液学的腫瘍を含む。いくつかの態様において、腫瘍は黒色腫を含む。いくつかの態様において、腫瘍は乳がんを含む。いくつかの態様において、腫瘍は結腸がんを含む。いくつかの態様において、腫瘍は骨肉腫、膵臓がん、脊索腫、中皮腫、T細胞ALL、神経膠腫、腎細胞がん、黒色腫、扁平上皮がん、胆嚢がん、胃がん、または肝細胞がんを含む。いくつかの態様において、腫瘍はMTAP欠失を有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて減少したレベルのメチルチオアデノシンホスホリラーゼポリペプチドを有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて減少したレベルのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて増加したレベルのCD73を有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて増加したレベルのCD39を有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて増加したレベルのMTAを有する。いくつかの態様において、腫瘍は、参照レベルと比べて増加したレベルのADOを有する。いくつかの態様において、参照レベルは健常対象におけるレベルである。いくつかの態様において、参照レベルは患者の健常組織におけるレベルである。
【0024】
いくつかの態様において、患者はヒト患者である。いくつかの態様において、製剤は、腫瘍内に、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、眼内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、経口的に、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルによって、または洗浄によって投与される。いくつかの態様において、薬学的組成物は、免疫療法に対する感受性を増加させる。いくつかの態様において、患者は以前、免疫チェックポイント阻害剤の投与に応答することができなかった。
【0025】
いくつかの態様において、本方法は、対象に少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗がん療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法を含む。いくつかの態様において、第2の抗がん療法は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。
【0026】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-036559、またはCK-301を含む。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体を含む。いくつかの態様において、抗PD1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-223、AMP-514、セミプリマブ、またはPDR-001を含む。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体を含む。いくつかの態様において、抗CTLA-4療法は、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む。いくつかの態様において、第2の抗がん療法は、養子T細胞療法を含む。いくつかの態様において、養子T細胞療法は、MTAP酵素の投与に続いて施される。
【0027】
いくつかの態様において、腫瘍を有する患者を処置する方法が、本明細書において提供される。1つの局面において、腫瘍を有する患者を処置する方法は、MTAP酵素を発現するように操作されているT細胞を含む養子T細胞療法を患者に施す段階を含む。いくつかの態様において、がんの転移が遅延、低減、または抑止される。
【0028】
いくつかの態様において、腫瘍を有する患者への治療適用のための医薬の製造のための、本明細書におよびそれに記述されるMTAP酵素、本明細書におよびそれに記述される核酸、または本明細書におよびそれに記述される薬学的組成物の使用が、本明細書において提供される。
【0029】
血清および腫瘍微小環境中のMTAおよび/またはADOを効率的に分解することができるような、操作された哺乳動物MTAP酵素(すなわち、MTase酵素)が、本明細書において提供される。本明細書において記述されるように修飾されたMTase酵素および/またはADO分解酵素は、ネイティブ酵素と比較してMTAおよび/またはADO分解触媒活性を有するヒト、霊長類、哺乳動物、または原核生物のポリペプチド配列を含む新規酵素を提供する。したがって、これらの修飾酵素は、がん治療に適し、低い免疫原性および改善された血清中安定性を有しうる。理論によって束縛されるわけではないが、任意の所与のMTase酵素は、MTAのみを効率的に分解し、またはMTAおよびADOの両方を効率的に分解しうる。
【0030】
したがって、1つの態様において、MTAおよび/またはADO分解活性を有する修飾されたポリペプチド、特にMTAP酵素変種が提供される。例えば、変種はヒトMTAPなどの、ヒト酵素に由来しうる。例えば、酵素変種は、ネイティブMTAP配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有しうる。ネイティブポリペプチドは、SEQ ID NO: 1および7~35のいずれか1つによるMTAP配列を有しうる。例えば、酵素変種は、SEQ ID NO: 1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有しうる。ある種の局面において、MTAおよび/またはADOを分解することができる修飾されたMTaseを含むポリペプチドが存在しうる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、生理学的条件下でMTAおよび/またはADOを分解することが可能でありうる。例えば、ポリペプチドは、少なくともまたは約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、104、105、106 s-1M-1またはその中で導出可能な任意の範囲のMTAおよび/またはADOに対する触媒効率(kcat/KM)を有しうる。
【0031】
血清中安定性を高めるために、修飾されたMTaseは1つまたは複数のポリエーテル分子に連結されうる。特定の態様において、ポリエーテルはポリエチレングリコール(PEG)でありうる。修飾されたポリペプチドは、リジンまたはシステインなどの、特定のアミノ酸残基を介してPEGに連結されうる。
【0032】
いくつかの態様において、ネイティブMTaseは、化学修飾、置換、挿入、欠失、および/または切断などの、1つまたは複数の他の修飾によって修飾されうる。特定の態様において、ネイティブMTaseは、置換によって修飾されうる。例えば、置換の数は1、2、3、4、またはそれ以上でありうる。
【0033】
いくつかの場合において、PEG化ネイティブヒトメチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)酵素の集団を含む組成物が提供され、ここでPEG化MTAP酵素はそれぞれ、SEQ ID NO: 1と少なくとも95%同一の配列をそれぞれが含むポリペプチドのホモ三量体を含み、ここでPEG化MTAP酵素の少なくとも約80%がサブユニット当たり1、2、3、4、または5個のポリエチレングリコール(PEG)分子を含む。いくつかの局面において、サブユニット当たり1、2、3、4、または5個のPEG分子を含むPEG化MTAP酵素の少なくとも約80%は、サブユニット当たりのPEG分子のガウス分布を有する。いくつかの局面において、サブユニット当たり1、2、3、4、または5個のPEG分子を含むPEG化MTAP酵素の少なくとも約80%は、サブユニット当たり3±1個のPEG分子の最頻値を有する。いくつかの局面において、PEG化MTAP酵素の20%以下は、サブユニット当たり0、6、7、8個、またはそれ以上のPEG分子を含む。いくつかの局面において、PEG分子は、約5000の分子量を有する。
【0034】
いくつかの場合において、ネイティブヒトメチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)酵素の変種を含むポリペプチドが提供され、ここで変種MTAPはSEQ ID NO: 1と少なくとも95%同一の配列を含み、SEQ ID NO: 1と比べてK225R (例えば、SEQ ID NO: 3参照)またはK238R (例えば、SEQ ID NO: 5参照)置換を含む。この場合、ポリペプチドは、望ましい任意の程度までPEG化されうる。
【0035】
いくつかの局面において、本発明は同様に、異種アミノ酸配列に連結された修飾MTaseを含むポリペプチドを企図する。例えば、修飾MTaseは、融合タンパク質として異種アミノ酸配列に連結されうる。特定の態様において、修飾MTaseは、インビボ半減期を増加させるために、IgG Fc、アルブミン、アルブミン結合ペプチド、またはXTENポリペプチドなどの、アミノ酸配列に連結されうる。
【0036】
いくつかの局面において、そのような修飾MTaseをコードする核酸が企図される。1つの局面において、核酸は、細菌における発現のためにコドン最適化されている。特定の態様において、細菌は大腸菌である。他の局面において、核酸は、真菌(例えば、酵母)、昆虫細胞、または哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。本発明はさらに、そのような核酸を含む、発現ベクターなどの、ベクターを企図する。特定の態様において、修飾MTaseをコードする核酸は、異種プロモーターを含むがこれに限定されない、プロモーターに機能的に連結される。1つの態様において、修飾MTaseは、ベクター(例えば、遺伝子治療ベクター)によって標的細胞に送達されうる。そのようなウイルスは、標的細胞における修飾MTaseをコードする核酸の発現を可能にするために、組換えDNA技術によって修飾されていてもよい。これらのベクターは、非ウイルス(例えば、プラスミド)またはウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスもしくはワクシニアウイルス)起源のベクターに由来しうる。非ウイルスベクターは、好ましくは、細胞膜前後のDNA侵入を促進するための薬剤と複合体化される。そのような非ウイルスベクター複合体の例としては、DNAの凝縮を促進するポリカチオン剤および脂質に基づく送達システムとの製剤が挙げられる。脂質に基づく送達システムの例としては、リポソームに基づく核酸送達が挙げられるであろう。
【0037】
さらなる局面において、本発明はさらに、そのようなベクターを含む宿主細胞を企図する。宿主細胞は細菌(例えば、大腸菌)、真菌細胞(例えば、酵母)、昆虫細胞、または哺乳動物細胞でありうる。
【0038】
いくつかの態様において、ベクターは、修飾MTaseを発現させるために宿主細胞に導入される。タンパク質は任意の適当な方法で発現されうる。1つの態様において、タンパク質は、タンパク質がグリコシル化されるように宿主細胞において発現される。別の態様において、タンパク質は、タンパク質がアグリコシル化されるように宿主細胞において発現される。
【0039】
いくつかの態様において、ポリペプチドまたは核酸は、薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤中にある。ポリペプチドは、ネイティブPEG化MTaseポリペプチドまたは修飾MTaseポリペプチドでありうる。核酸は、ネイティブPEG化MTaseポリペプチドまたは修飾MTaseポリペプチドをコードしうる。
【0040】
1つの態様において、上記のMTaseを含む製剤の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、がんを有するまたはがんを発症するリスクのある患者を処置するための方法が提供される。患者はマウスなどの、任意の動物でありうる。例えば、患者は哺乳動物、詳細には霊長類、より詳細にはヒト患者でありうる。
【0041】
いくつかの局面において、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの局面において、腫瘍は血液学的腫瘍である。いくつかの局面において、腫瘍は骨肉腫、膵臓がん、脊索腫、中皮腫、T細胞ALL、神経膠腫、腎細胞がん、黒色腫、扁平上皮がん、胆嚢がん、胃がん、または肝細胞がんである。
【0042】
いくつかの局面において、腫瘍は低下したレベルのMTAPを有する。ある種の局面において、腫瘍はMTAP欠失を有する。いくつかの局面において、腫瘍は参照サンプルと比べて増加したレベルのCD73を有する。いくつかの局面において、腫瘍は参照レベルと比べて増加したレベルのCD73および、任意で、低下したレベルのMTAPを有する。いくつかの局面において、腫瘍は参照サンプルと比べて増加したレベルのCD39を有する。いくつかの局面において、腫瘍は参照レベルと比べて増加したレベルのMTAを有する。いくつかの局面において、腫瘍は参照レベルと比べて増加したレベルのADOを有する。いくつかの局面において、参照レベルは、患者の健常組織におけるレベルである。いくつかの局面において、参照レベルは、健常対象におけるレベルである。
【0043】
いくつかの局面において、患者はがんの処置を以前に受けたことがあり、酵素はがんの再発を予防するために投与される。いくつかの局面において、本方法は、転移を予防する方法である。いくつかの局面において、本方法は、免疫療法に対する感受性を増加させるための方法である。いくつかの局面において、患者は以前、免疫チェックポイント阻害剤の投与に応答することができなかった。いくつかの局面において、本方法は、対象に少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む。いくつかの局面において、第2の抗がん療法は、免疫チェックポイント阻害剤、養子T細胞療法、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法またはサイトカイン療法である。いくつかの局面において、第2の抗がん療法は、養子T細胞療法、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、および/または抗PD-L1抗体を含む。ある種の局面において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-036559、またはCK-301を含む。ある種の局面において、抗PD1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-223、AMP-514、セミプリマブ、またはPDR-001を含む。ある種の局面において、抗CTLA-4療法は、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む。いくつかの局面において、養子T細胞療法は、変種MTAP酵素の投与後に投与される。いくつかの局面において、養子T細胞療法は、変種MTAP酵素を発現するように操作されている細胞を含む。
【0044】
いくつかの態様において、がんは、MTA枯渇に感受性がある任意のがんである。1つの態様において、本発明は、そのようなポリペプチドを含む製剤を投与する段階を含む、腫瘍細胞またはがん患者を処置する方法を企図する。いくつかの態様において、投与は、がん細胞の少なくとも一部分が死滅化されるような条件の下で行われる。別の態様において、製剤は、生理学的条件でMTA分解活性を有し、付着されたポリエチレングリコール鎖をさらに含むそのような修飾MTaseを含む。いくつかの態様において、製剤は、上記のMTase変種のいずれかおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤である。そのような薬学的に許容される賦形剤は、当業者に周知である。上記のMTase変種の全てが、ヒト治療に有用であると企図されうる。
【0045】
インビボでの適用において、腫瘍細胞を処置することは、腫瘍細胞の集団のための栄養媒質をMTaseと接触させることを含む。本態様において、媒質は、MTA枯渇が望まれる血液、リンパ液、髄液などの体液であることができる。
【0046】
本発明のある種の局面にしたがって、修飾MTaseを含むそのような製剤は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、関節滑液嚢内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、腫瘍内に、筋肉内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、経口的に、局部に、吸入、注入、持続注入、局所灌流により、カテーテルによって、洗浄によって、脂質組成物(例えば、リポソーム)中で、または当業者に公知であるような他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって投与することができる。
【0047】
1つの態様において、対象における腫瘍の処置で用いるために、修飾MTaseまたは修飾MTaseをコードする核酸を含む組成物が提供される。別の態様において、腫瘍の処置のための医薬の製造における、修飾MTaseまたは修飾MTaseをコードする核酸の使用が提供される。修飾MTaseは、態様の任意の修飾MTaseでありうる。
【0048】
本発明の方法および/または組成物の文脈において論じられた態様は、本明細書において記述される任意の他の方法または組成物に関して利用されうる。したがって、1つの方法または組成物に関する態様は、同様に本発明の他の方法および組成物にも適用されうる。
【0049】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解すべきである。というのは、本発明の趣旨および範囲内のさまざまな変更および修飾がこの詳細な説明から当業者には明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な態様を記載している以下の詳細な説明、および以下の、添付の図面(本明細書では「図(FIGURE)」または「図(FIGUREs)」)を参照することによって得られるであろう。
【0051】
図1図1A~E. ホモ・サピエンス(Homo sapiens)由来MTAPポリペプチドの規定されたPEG化および薬理学的動態に及ぼすその影響。図1A: 0、10、20、50、または100倍モル過剰(×)のPEGと反応させたホモ・サピエンスMTAP (hs-MTAP)ポリペプチドのSDS-PAGEゲルを提供する。図1B~E: モックPEG化hs-MTAPポリペプチド、ならびに10×PEG (図1B)、20×PEG (図1C)、50×PEG (図1D)および100×PEG (図1E)で修飾したhs-MTAPポリペプチドの反応速度論を比較している。
図2図2A~C. 5個超のPEG部分にコンジュゲートされた場合に高い触媒活性を保持するホモ・サピエンスMTAPポリペプチドの2つの変種の規定されたPEG化および酵素反応速度論に及ぼすその影響。図2A: K225RおよびK238R置換を有するhs-MTAPポリペプチドを0×または100×PEGと反応させたSDS-PAGEゲルを提供する。0×および100×PEGを有するhs-MTAP-K225Rポリペプチド(図2B)と0×および100×PEGを有するhs-MTAP-K238Rポリペプチド(図2C)との間の反応速度論の比較が示されている。
図3図3A~B. がんおよび免疫抑制におけるMTAPおよびCDKN2Aの役割。図3A: 抗PD-L1抗体で処置された場合、CDKN2Aホモ接合性(CDKN2A -/-)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者が、野生型CDKN2Aまたはヘテロ接合性CDKN2A変異体を有するNSCLC患者の無増悪生存期間と比較して短い無増悪生存期間を有していたことを示す。図3B: MTAPの一方または両方のコピーの欠失が、頭頸部がんにおける免疫抑制に寄与することを示す。統計的に有意なCD8Aの低減は、MTAP遺伝子座の欠失でのみ観察された。
図4図4A~B. MTAPポリペプチドを用いたがん治療。図4A: PEG化MTAPポリペプチドが、腫瘍微小環境においてMTAを分解してT細胞浸潤を増強しうる方法を例証している。図4B: 50 mg/kg hs-MTAPの添加後0、4、または24時間の白血病同種移植片腫瘍(L1210)の微小環境におけるMTAレベルの棒グラフを示す。
図5図5A~C. 標的指向型がん治療におけるPEG化MTAPポリペプチドの治療的可能性。図5A~5B: PEG化MTAPポリペプチド(PEG-MTAP)で処置したまたは処置しなかったマウスにおけるMTAP +/+ (図5A)およびMTAP -/- (図5B) B6-F10黒色腫細胞同種移植片腫瘍の成長を示す折れ線グラフである。PEG-MTAP処置はMTAP +/+腫瘍の成長を、対照のそれと比較して変化させなかった。対照的に、PEG-MTAP処置はMTAP -/-腫瘍の成長を、対照のそれと比較して有意に低減する。さらに、MTAP -/-腫瘍を有するマウス7匹中の3匹において完全寛解(CR)が観察された。図5C: 図5Bにおけるマウスの生存のカプランマイヤープロットを示す。PEG-MTAPで処置したマウスの平均生存期間は約32日であり、対照のそれ(21日)よりも11日多かった。
図6図6A~D. CD8+ T細胞は、MTAPによるB6-F10黒色腫細胞同種移植片腫瘍成長の阻害に必要である。MTAP処置は未処置対照(図6A)と比較した場合、腫瘍の成長を有意に低減する(図6C)。また、マウス6匹中2匹が完全寛解(CR)を達成した。抗CD8抗体は、腫瘍成長を増加させ(図6B)、MTAP処置の有効性を遮断する(図6D)。
図7図7A~D. PEG-MTAP処置は、B6-F10黒色腫同種移植片腫瘍の腫瘍微小環境におけるCD8+/K167+ (図7A)、CD4+/K167+ (図7B)およびCD8+/グランザイムB+ (図7C)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数、ならびに腫瘍流入領域リンパ節における総リンパ球の数(図7D)を増加させることができる。
図8図8A~C. B16- MTAP-/-黒色腫腫瘍モデルにおけるリンパ球集団に及ぼすPEG化hs-MTAPポリペプチド(PEG-hs-MTAP)の効果。図8A: PEG-hs-MTAP投与が、TCR3β+細胞におけるCD4+細胞の割合を増加させたことを示す。図8B: PEG-hs-MTAP投与が、CD45+細胞におけるTCRβ-, NK1.1+細胞の割合を増加させたことを示す。図8C: PEG-hs-MTAP投与が、Ki67+であるCD8+/グランザイムB+細胞の割合を増加させたことを示す。
図9図9A~B. MTANポリペプチドを用いたがん治療。図9A: サルモネラ菌(Salmonella enterica)由来MTANポリペプチド(PEG-se-MTAN)またはPBSビヒクル対照で処置後のマウスにおけるL1210白血病細胞同種移植片腫瘍の成長を示す。PEG-se-MTANは、L1210腫瘍の成長を有意に遅延させた。図9B: 図9Aの処置マウスおよび未処置マウスの生存のカプランマイヤープロットを示す(p < 0.0035)。PEG-se-MTANを用いた処置は、L1210マウス白血病同種移植片腫瘍を有するマウスの生存期間を増加させた。
図10図10A~F. PEG-se-MTANポリペプチドで処置したL1210白血病細胞同種移植片の腫瘍および腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)におけるリンパ球サブタイプの評価。腫瘍において、PEG-se-MTAN投与は、TCRβ+細胞をCD45+生存細胞の割合として(図10A)、ならびにCD4+ Ki67+細胞(図10B)およびCD8+ Ki67+細胞(図10C)を全ての生存細胞の割合として増加させた。TDLNにおいて、PEG-MTANの投与は、TCRβ+細胞(図10D)、CD11b+細胞(図10E)、およびF4/80+細胞(図10F)を全ての生存細胞の割合として増加させた。
図11図11A~B. マウス4T1乳がん同種移植片のPEG-MTANポリペプチドと抗CTLA4抗体との併用処置の効力。図11A: ビヒクル(左上)、PEG-MTANポリペプチド(右上)、抗CTLA4抗体(左下)、またはPEG-MTANポリペプチドと抗CTLA4抗体との組み合わせ(右下)による処置後の腫瘍体積(mm3)および時間(経過日数)の関係を示す。PEG-MTANポリペプチド(50 mg/kg)または抗CTLA4抗体(10mg/kg, クローンUC10- 4F10-11, Bio X Cell)の単独投与は、腫瘍の成長を抑制したが、それらの組み合わせは、いずれかの処置単独の阻害よりも強い阻害を提供した。図11B: ビヒクル、PEG-MTANポリペプチド、抗CTLA4、またはPEG-MTANポリペプチドと抗CTLA4抗体との組み合わせによる処置後の肺転移の数を示す。PEG-MTANポリペプチド(50 mg/kg)、抗CTLA4抗体(10mg/kg, クローンUC10- 4F10-11, Bio X Cell)、またはそれらの組み合わせは、肺転移の数を有意に低減した。
図12図12A~D. マウスCT26結腸がん同種移植片(MTAP CD73+)のPEG-MTANポリペプチドと抗PD-l抗体との併用処置の効力。ビヒクル対照(図12A)、抗PD-1抗体(クローンRMP1-14, BioXCell # BE0146, 10 mg/kg 2×週) (図12B)、PEG-MTAN (50 mg/kg 3×週) (図12C)、または組み合わせでPEG-MTANおよび抗PD-l抗体(図12D)を、CT26がん同種移植片の移植後15日目および25日目に投与した。PEG-MTANポリペプチドまたは抗PD-1抗体の単独投与は、腫瘍の成長を抑制したが、それらの組み合わせは、いずれかの処置単独よりも強い阻害を提供した。さらに、併用処置を受けたマウス3匹において完全寛解(CR)が観察されたのに対し、いずれかの処置単独ではマウス1匹のみがCRを達成した。
図13】PEG化MTAP K238Rポリペプチド(MTAP K238R)で処置したまたは処置しなかったマウスにおけるCT26細胞同種移植片腫瘍の成長を示す。PEG化MTAP K238R処置はCT26腫瘍の成長を、PBS対照のそれと比較して低減した。さらに、PEG化MTAP K238Rポリペプチドで処置したマウス6匹中2匹において完全寛解(CR)が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
がん治療のためのPEG化MTAPポリペプチドを提供するためのポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、方法、薬学的組成物、およびキットが、本明細書において提供される。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、血清を含む細胞外環境において、より高い触媒活性またはタンパク質安定性を有しうる。
【0053】
本発明の好ましい態様を本明細書において示し記述してきたが、そのような態様は例としてのみ提供されていることが当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が、当業者には想到されるであろう。本明細書において記述される本発明の態様のさまざまな代替が、本発明の実践において採用されてもよいことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの特許請求の範囲内の方法かつ構造およびそれらの均等物がそれによって網羅されることが意図される。
【0054】
定義
本明細書において用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は1つまたは複数を意味しうる。本明細書において特許請求の範囲で用いられる「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語は、「含む(comprising)」という単語と一緒に用いられる場合、1つまたは2つ以上を意味しうる。
【0055】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみまたは相互に排他的な選択肢をいうように明示的に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみと「および/または」をいう定義を支持する。本明細書において用いられる場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味しうる。
【0056】
本出願を通して、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために利用されている装置、方法の固有の誤差変動、研究対象の間に存在する変動、または記載値の10%以内である値を含むことを示すために用いられる。
【0057】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)の任意の形態)という単語は、包括的または非制限的であり、さらなる、引用していない要素または方法の段階を除外しない。
【0058】
「対象」、「宿主」、「患者」および「個体」という用語は、診断または治療が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトをいうように本明細書において互換的に用いられる。他の対象はウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどを含みうる。
【0059】
「接触される」および「曝露される」という用語は、細胞に適用される場合、治療用コンストラクトが標的器官に送達される、または標的細胞と直接並置されるプロセスを記述するために本明細書において用いられる。
【0060】
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、2つのペプチド間の、または2つの核酸分子間の配列類似性をいうことができる。相同性は、比較の目的のために一列に並べられうる各配列中の位置を比較することによって判定することができる。比較される配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸により占められうる場合には、分子はその位置で相同であることができる。配列間の相同性の程度は、配列により共有される一致または相同の位置の数の関数とすることができる。「非関連」または「非相同」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性、あるいは25%未満の同一性を共有する。配列相同性は、参照配列に対する配列の%同一性をいうことができる。任意の特定の配列が本明細書において記述される任意の配列(これは本明細書において記述される特定の核酸配列に対応しうる)と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうるかどうかという、実際問題として、そのような特定のポリペプチド配列は、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)のような公知のコンピュータプログラムを用いて従来のように判定することができる。Bestfitまたは任意の他の配列アライメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば、参照配列と95%同一であるかどうかを判定する場合、パラメータは、同一性の割合が参照配列の全長にわたって計算されうるように、および参照配列全体の5%までの配列相同性のギャップが許容されうるように設定することができる。
【0061】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」または「核酸」という用語は、互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはその類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの重合体をいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たしうる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である: 遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、遺伝子間DNA (非限定的に、異質染色質DNAを含む)、メッセンジャーRNA (mRNA)、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、配列の単離DNA、配列の単離RNA。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの、修飾ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前または後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは重合後、例えば標識化成分とのコンジュゲーションによって、さらに修飾することができる。また、この用語は、二本鎖および一本鎖の両方の分子をいう。例えば、ホスホチオエート骨格を有する核酸を含む、核酸は、1つまたは複数の反応性部分を含むことができる。本明細書において用いられる場合、反応性部分という用語は、共有結合、非共有結合または他の相互作用を通じて別の分子、例えば、核酸またはポリペプチドと反応することができる任意の基を含む。例として、核酸は、共有結合、非共有結合、または他の相互作用を通じてタンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸と反応するアミノ酸反応性部分を含むことができる。他に指定または要求されない限り、ポリヌクレオチドである本開示の任意の態様は、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られているかまたは予測されている2つの相補的一本鎖形態の各々との両方を包含する。
【0062】
本開示の方法において有用なポリヌクレオチドは、天然の核酸配列およびその変種、人工核酸配列、またはそのような配列の組み合わせを含むことができる。いくつかの態様において、本開示のポリヌクレオチドはDNA配列をいう。いくつかの態様において、DNA配列は類似のRNA配列と交換可能である。いくつかの態様において、本開示のポリヌクレオチドはRNA配列をいう。いくつかの態様において、RNA配列は類似のDNA配列と交換可能である。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドのUおよびTは、本明細書において提供される配列において入れ替わってもよい。
【0063】
「標準アミノ酸」とは、ヒト体内で天然に見出される20種類のアミノ酸をいう。置換、変異、または置換変種は、通常、タンパク質内の1つまたは複数の部位で、あるアミノ酸の別のアミノ酸への交換を含み、ポリペプチドの1つまたは複数の特性、特にそのエフェクタ機能および/または生物学的利用能を調整するためにデザインされうる。
【0064】
置換は保存的であってもなくてもよく、つまり、あるアミノ酸が類似の形状および電荷のアミノ酸と置き換えられる。保存的置換は当技術分野において周知であり、例えば、以下: アラニンからセリン; アルギニンからリジン; アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジン; アスパラギン酸からグルタミン酸; システインからセリン; グルタミンからアスパラギン; グルタミン酸からアスパラギン酸; グリシンからプロリン; ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン; イソロイシンからロイシンまたはバリン; ロイシンからバリンまたはイソロイシン; リジンからアルギニン; メチオニンからロイシンまたはイソロイシン; フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニン; セリンからトレオニン; トレオニンからセリン; トリプトファンからチロシン; チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン; およびバリンからイソロイシンまたはロイシンの変化を含む。
【0065】
「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、互換的にかつその最も広い意味で用いられ、2つまたはそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣体の化合物をいう。これらの用語は、修飾されている、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの、他の任意の操作がされている、アミノ酸重合体も包含する。
【0066】
治療用組成物に関連して用いられる場合の「単位用量」という用語は、対象の単位投与量として適した物理的に別個の単位をいい、各単位は、必要な希釈剤、すなわち担体、またはビヒクルと関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性物質を含有する。
【0067】
互換的に用いられる「細胞(cell)」、「細胞(cells)」および「細胞集団」という用語は、1つまたは複数の哺乳動物細胞を意図する。この用語は、細胞または細胞集団の後代を含む。当業者は、「細胞」が単一細胞の後代を含み、自然的、偶発的または意図的な変異または変化により、後代とその元の親細胞との間に変動があることを認識するであろう。
【0068】
「免疫療法」という用語は、疾患抗原に対する免疫応答を調整することによる疾患(例えば、がん)の処置をいう。
【0069】
本明細書において用いられる「がん細胞」という用語は、新生物細胞表現型を示す細胞をいい、これは、例えば、異常な細胞成長、異常な細胞増殖、密度依存性成長阻害の喪失、足場非依存性成長能、免疫不全非ヒト動物モデルにおける腫瘍成長もしくは発生を促進する能力、または細胞形質転換の任意の適切な指標の1つまたは複数によって特徴付けられうる。「がん細胞」は「腫瘍細胞」または「がん性細胞」と本明細書において互換的に用いられてもよく、固形腫瘍および液性腫瘍のがん細胞を包含する。「がん」は「腫瘍」と本明細書において互換的に用いられてもよい。
【0070】
本明細書において用いられる「固形腫瘍」または「固形がん」という用語は、通常、嚢胞または液状部を含まない腫瘍をいう。固形腫瘍は、脳および他の中枢神経系腫瘍(髄膜、脳、脊髄、脳神経および中枢神経系の他の部分の腫瘍、例えば膠芽細胞腫または髄芽腫を含むがこれらに限定されない); 頭頸部がん; 乳房腫瘍; 循環器系腫瘍(心臓、縦隔および胸膜、ならびに他の胸腔内臓器、血管腫瘍および腫瘍関連血管組織を含むがこれらに限定されない); 排泄系腫瘍(腎臓、腎盂、尿管、膀胱、その他および特定不能の泌尿器の腫瘍を含むがこれらに限定されない); 消化管腫瘍(食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門および肛門管の腫瘍、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆道のその他および特定不能の部分、膵臓、他のおよび消化器官に関わる腫瘍を含むがこれらに限定されない); 口腔腫瘍(口唇、舌、歯肉、口腔底、口蓋、および口の他の部分、耳下腺、および唾液腺の他の部分、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、梨状陥凹、下咽頭、ならびに口唇、口腔および咽頭内の他の部位の腫瘍を含むがこれらに限定されない); 生殖器系腫瘍(外陰部、膣、子宮頸部、子宮体部、子宮、卵巣、および女性生殖器に関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器に関連する他の部位の腫瘍を含むがこれらに限定されない); 気道腫瘍(鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、気管、気管支および肺の腫瘍、例えば小細胞肺がんまたは非小細胞肺がんを含むがこれらに限定されない); 骨格系腫瘍(四肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨および他の部位の腫瘍を含むがこれらに限定されない); 皮膚腫瘍(皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚がん、皮膚の基底細胞がん、皮膚の扁平上皮細胞がん、中皮腫、カポジ肉腫を含むがこれらに限定されない); ならびに末梢神経および自律神経系、結合組織および軟部組織、後腹膜および腹膜、眼球および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含む他の組織に関わる腫瘍、リンパ節の二次および不特定の悪性新生物、呼吸器および消化器系の二次悪性新生物、および他の部位の二次悪性新生物を含むことができる。
【0071】
本明細書において用いられる「液性がん」または「液性腫瘍」という用語は、血液、リンパ液および骨髄などの、体液中に存在するがん細胞をいう。液性がんは、白血病、骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、および液性リンパ腫を含む。液性リンパ腫は、嚢胞または液状部を含んだリンパ腫を含む。本明細書において用いられる液性がんは、肉腫およびがん腫などの固形腫瘍、または嚢胞もしくは液状部を含まない固形リンパ腫を含まない。
【0072】
本明細書において用いられる場合、「コンジュゲート」という用語は、少なくとも2つの分子または分子部分が共有結合によって一緒に連結されていることをいう。分子または分子部分は、それらが結合によって連結されると、別の分子または分子部分に「コンジュゲート」されているとみなされる。ゆえに、「非コンジュゲート」分子または分子部分は、共有結合によって連結されていない。
【0073】
「PEG化」という用語は、タンパク質または薬物を含むがこれらに限定されない、別の分子へのポリエチレングリコール(PEG)分子の共有結合のプロセスをいう。PEG化を受けたタンパク質は、「PEG化」されているということができる。PEG化されたポリペプチドは、PEG化を有しない同等のポリペプチドまたはPEG化されていないポリペプチドと質的または量的に異なる特性を有しうる。
【0074】
「有効量」という用語は、有益なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与で投与することができる。本出願の目的のために、抗体またはポリペプチドの有効量は、疾患状態の進行を診断する、緩和する、改善する、安定化する、反転する、緩徐化するまたは遅延させるのに十分な量である。
【0075】
本明細書において用いられる場合、「融合タンパク質」という用語は、非天然の方法で機能的に連結されたタンパク質またはタンパク質断片を含むキメラタンパク質をいう。融合タンパク質は、2つ以上の天然に存在するタンパク質または組換えにより産生されたタンパク質からのドメインで構成されるタンパク質を含んでよく、ここで一般に各ドメインは異なる機能を供給する。この点で、「リンカー」という用語は、これらのドメインを一緒に連結するために、任意で、融合タンパク質ドメインのコンフォメーションを保持するためにおよび/またはそれぞれの機能を損なう可能性のある融合タンパク質ドメイン間の好ましくない相互作用を抑止するために、用いられるタンパク質断片をいう。
【0076】
本明細書において用いられる場合、「半減期(half-life)」(1/2-life; T 1/2)という用語は、そのポリペプチドの濃度がインビトロでまたはインビボで、例えば、哺乳動物における注射後、半分に低下するために必要とされるものと考えられる時間をいう。
【0077】
「機能的な組み合わせで」、「機能的な順序で」および「機能的に連結された」という用語は、そのように記述された成分が、その意図した方法で機能することを可能にする関係にある連結、例えば、核酸分子が所定の遺伝子の転写もしくは望まれるタンパク質分子の合成を指令することができるような方法での核酸配列の連結、または融合タンパク質が産生されるような方法でのアミノ酸配列の連結をいう。
【0078】
本明細書において用いられる「KM」という用語は、酵素に対するミカエリス・メンテン定数をいい、酵素触媒反応において所定の酵素がその最大速度の2分の1をもたらす特異的基質の濃度と定義される。KMは、酵素の基質結合親和性を測定するために用いられうる。
【0079】
本明細書において用いられる「kcat」という用語は、代謝回転数、すなわち、各酵素部位が単位時間当たりで生成物に転換し、酵素が最大効率で作用する、基質分子の数をいう。kcatは、酵素の触媒反応速度を測定するために用いられうる。
【0080】
本明細書において用いられる「kcat/KM」という用語は、酵素が基質を生成物にどれだけ効率的に変換するかの尺度である特異性定数である。kcat/KMは、酵素の触媒効率を測定するために用いられうる。
【0081】
本明細書において用いられる「Vmax」という用語は、酵素反応の最大速度をいう。酵素反応は、酵素が基質で飽和した時点で最大速度に達しうる。Vmaxは、kcatと酵素濃度との積でありうる。Vmaxは、酵素の触媒反応速度を測定するために用いられうる。
【0082】
本明細書において用いられる「触媒活性」という用語は、酵素の基質変換または生成の酵素反応速度論の任意の定性的または定量的特性をいう。触媒活性は、KM, kcat, Vmax、または本明細書のおよびそれらの任意の派生物を用いて測定されうる。また、他の酵素反応速度論の尺度が用いられうる。
【0083】
「MTase」という用語は、MTAのメチルチオリボース-1-リン酸(MTR-1-R)またはメチルチオリボース(MTR)およびアデニンへの加リン酸分解または加水分解、ならびにアデノシンのリボース-1-リン酸またはリボースおよびアデニンへの加リン酸分解または加水分解を触媒する任意の酵素をいう。MTaseは、ポリアミンの代謝、ならびにアデニンおよびメチオニンのサルベージ経路に関与しうる。MTaseは、霊長類型の、もしくは特に、ヒト型のMTAP、または原核生物型のMTANを含むことができる。
【0084】
「MTAP」という用語は、メチルチオアデノシンホスホリラーゼをいう。MTAPは、MTAのメチルチオリボース-1-リン酸(MTR-1-R)およびアデニンへの加リン酸分解、ならびにアデノシンのリボース-1-リン酸およびアデニンへの加リン酸分解を触媒することができる。ヒト型のMTAPは、ホモ・サピエンスMTAPまたはhs-MTAPともいわれうる。特に指定されない限り、MTAPは、該ポリペプチド、またはMTAPポリペプチドをコードする遺伝子もしくは核酸を意味しうる。特に指定されない限り、MTAPは、PEG化MTAPポリペプチドまたはPEGコンジュゲートMTAPポリペプチドを意味することもある。
【0085】
「MTAN」という用語は、メチルチオアデノシンヌクレオシダーゼをいう。MTANは、MTAのメチルチオリボース(MTR)およびアデニンへの加水分解、ならびにアデノシンのリボースおよびアデニンへの加水分解を触媒することができる。MTANの原核生物形態は、細菌性MTAN、例えば、サルモネラ菌MTANまたはse-MTANを含むことができる。特に指定されない限り、MTANは、該ポリペプチド、またはMTANポリペプチドをコードする遺伝子もしくは核酸を意味しうる。特に指定されない限り、MTANはまた、PEG化MTANポリペプチドまたはPEGコンジュゲートMTANポリペプチドを意味しうる。
【0086】
「ヒト」という用語は、ホモ・サピエンスをいう。
【0087】
ポリペプチドの「コンジュゲーション部位」という用語は、別の実体への共有結合、付着、コンジュゲーション、または連結のための部位として働くアミノ酸残基または化学基をいう。1つの例示的な実体は、PEG重合体である。
【0088】
がんを処置するためのPEG化メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)ポリペプチド
MTaseは、いくつかの例において、疾患を処置するために用いることができる。いくつかの例において、疾患はがんを含むことができる。他の場合において、疾患は、免疫系に関連する疾患を含むことができる。いくつかの場合において、疾患は、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の欠損に関連する状態を含むことができる。メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の欠損は、いくつかの場合において、MTAPの遺伝的もしくは非遺伝的喪失、阻害、変異、または下方制御から生じうる。
【0089】
MTaseは、いくつかの例において、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を有することができる。いくつかの場合において、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、メチルチオアデノシン(MTA)のメチルチオリボースリン酸およびアデニンへの加リン酸分解を実行しうる酵素活性を含むことができる。いくつかの場合において、MTaseは、MTAPポリペプチドを含むことができる。いくつかの場合において、MTaseは、ヒトMTAPポリペプチドを含むことができる。他の場合において、MTaseは、MTAのメチルチオリボースおよびアデニンへの加水分解を実行しうる酵素活性を含むことができる。いくつかの場合において、MTaseは、サルモネラ菌MTANなどの細菌性MTANを含むことができる。いくつかの例において、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、リン酸およびS-メチル-5'チオアデノシンをアデニンおよびS-メチル-5-チオ-α-D-リボース1-リン酸に変換することができる。いくつかの例において、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、5'-メチルチオツベルシンまたは5'-クロロホルマイシンによって阻害されうる。いくつかの場合において、MTAPの活性は、細菌、酵母、マウス、ウシ、ヒト、または他の生物において見出すことができる。
【0090】
いくつかの場合おいて、MTaseは、MTAまたはアデノシン(ADO)を異化することができるポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、MTaseは、細胞外または細胞内MTAまたはADOを分解することができる。いくつかの場合において、細胞外MTAまたはADOは、腫瘍微小環境(TME)中に存在することができる。他の態様において、細胞外MTAまたはADOは、血清中に存在することができる。いくつかの態様において、MTaseは、血清中のMTAまたはADOを分解することができる。他の態様において、MTaseは、TME中のMTAまたはADOを分解することができる。
【0091】
いくつかの態様において、MTaseは、MTAまたはADO分解活性を有する細菌ポリペプチド、真菌ポリペプチド、植物ポリペプチド、または動物ポリペプチドを含むことができる。いくつかの場合において、MTaseポリペプチド配列は、MTAまたはADOを分解することができる哺乳動物MTAPポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、MTAPポリペプチド配列は、MTAまたはADOを分解することができるヒトポリペプチドを含むことができる。他の局面において、MTaseは、ADOまたはMTAを分解することができる天然MTAPポリペプチドまたは修飾MTAPポリペプチドのいずれかを含むことができる。さらに他の局面において、MTaseは、ADOまたはMTAを分解することができる天然MTANもしくは修飾MTANまたは原核生物MTANのいずれかを含むことができる。いくつかの局面において、MTaseポリペプチドは、生理学的条件下でADOまたはMTAを分解することが可能でありうる。他の場合において、MTaseポリペプチドは、インビトロ条件下でADOまたはMTAを分解することが可能でありうる。
【0092】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、天然MTAPポリペプチドまたは非天然MTAPポリペプチドを含むことができる。天然MTAPポリペプチドは、野生型配列を有するMTAPポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、天然MTAPポリペプチドは、化学修飾、置換、挿入、欠失、融合、または切断などの、1つまたは複数の他の修飾によって修飾されうる。いくつかの態様において、天然MTAPポリペプチドは、置換によって修飾することができる。いくつかの態様において、天然MTAPポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個、またはそれ以上の置換によって修飾することができる。いくつかの態様において、天然MTAPポリペプチドは、その活性部位、塩基結合部位、またはメチルチオリボース結合部位の外側にある部位で保存的置換、非保存的置換、欠失または挿入によって修飾することができ、それでもその触媒活性を維持することができる。他の場合において、天然MTAPポリペプチドは、タンパク質結合活性、タンパク質安定性、タンパク質局在化、非基質結合活性、化学修飾活性、化学修飾されるタンパク質能力、タンパク質折り畳み、タンパク質輸送、本明細書のおよびそれらの任意の派生物、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを調整できる位置において修飾することができる。本明細書におよびそれに記述される調整は、増加または減少を含むことができる。
【0093】
いくつかの態様において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の配列またはその一部分を含むことができる。
【0094】
いくつかの場合において、MTAP活性を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1またはその一部分と約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、MTAP活性を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基または最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAP活性を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の1~10、5~15、10~20、15~25、20~30、25~35、30~40、35~45、40~50、45~55、50~60、55~65、60~70、65~75、70~80、75~85、80~90、85~95、90~100、95~105、100~110、105~115、110~120、115~125、120~130、125~135、130~140、135~145、140~150、145~155、150~160、155~165、160~170、165~175、170~180、175~185、180~190、185~195、190~200、195~205、200~210、205~215、210~220、215~225、220~230、225~235、230~240、235~245、240~250、245~255、250~260、255~265、260~270、265~275、270~280、または275~284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAP活性を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの場合において、MTAP活性を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のThr18、Thr197、Ser178、Val233およびMet196ならびにSEQ ID NO: 1の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0095】
いくつかの場合において、3つのMTAPポリペプチドは、約32 kDaの3つの同一のサブユニット(submits)を有するホモ三量体として結合することができる。他の場合において、2つのMTAPポリペプチドは、ホモ二量体として結合することができる(Appleby et al., 1999)。いくつかの例において、MTAPポリペプチドホモ三量体は、C3対称性によって関連する3つの同一または類似のサブユニットを含むことができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドホモ三量体における各MTAPポリペプチドの活性部位は、各MTAPポリペプチド間の界面近くに位置することができる。いくつかの場合において、SEQ ID NO: 1の配列を有するMTAPポリペプチドの活性部位は、MTAPポリペプチドのT18、R60、H61、T93、A94、F177、S178、M196、T197、T219、D220、D222、V233、V236、またはL237を含むことができる。いくつかの場合において、SEQ ID NO: 1の配列を有する第1のMTAPポリペプチドの活性部位は、ホモ三量体における第1のMTAPポリペプチドの界面を作り出すSEQ ID NO:1の配列を有する第2のMTAPポリペプチドのH137またはL279を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドの活性部位(active)は、SEQ ID NO: 1のT18、R60、H61、T93、A94、F177、S178、H137、M196、T197、T219、D220、D222、V233、V236、L237、またはL279の構造的に等価な残基を含むことができる。そのような構造的に等価な残基は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるApplebyらによって記述されたMTAPポリペプチドの3次元構造に基づいて同定することができる。
【0096】
PEG化MTAPポリペプチド
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドと比較して、修飾され、排除され、または付加された特性を有することができる。いくつかの例において、PEG化されたMTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドと比較して、調整された特性を有することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、調整されたサイズ、溶解性、タンパク質分解酵素に対するアクセス性、免疫原性および抗原性、体内滞留性、安定性、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを有することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、サイズの増加、溶解性の増加、タンパク質分解酵素に対するアクセス性の低下、免疫原性および抗原性の低下、体内滞留時間および安定性の増加、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを有することができる。
【0097】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、リジン残基の位置でPEG化することができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドを操作してリジン残基を除去し、リジン残基がPEG化されるのを防ぐことができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドを操作して、リジン残基を別のアミノ酸に置き換えて、リジン残基がPEG化されるのを防ぐことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにおいて別のアミノ酸で置換されるリジン残基は、活性部位または結合部位の近くに位置することができる。いくつかの場合において、活性部位または結合部位の近くのリジン残基を置換することで、そのリジン残基でのPEG化を防ぐことができる。いくつかの場合において、活性部位または結合部位の近くのリジン残基を置換することで、PEG分子またはPEG化反応がMTAPポリペプチドの触媒活性または基質特異性に影響を与えるのを防ぐことができる。いくつかの態様において、置換または欠失されるMTAPポリペプチドのリジン残基は、SEQ ID NO: 1のリジン(またはK) 11、32、40、49、51、71、82、147、157、158、166、206、225、238、241、246、248、271、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの場合において、置換または欠失されるMTAPポリペプチドのリジン残基は、SEQ ID NO: 1のK225もしくはK238またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのリジン残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、または本明細書のおよびそれらの誘導体を含む標準的なアミノ酸のいずれか1つで置換することができる。他の場合において、MTAPポリペプチドのリジンは、任意の天然もしくは非天然アミノ酸残基または本明細書のおよびそれらの任意の誘導体で置換することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのリジンは、アルギニンで置換することができる。
【0098】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、システイン残基の位置でPEG化することができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドを操作してシステイン残基を除去し、システイン残基がPEG化されるのを防ぐことができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドを操作して、システイン残基を別のアミノ酸に置き換えて、システイン残基がPEG化されるのを防ぐことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにおいて別のアミノ酸で置換されるシステイン残基は、活性部位または結合部位の近くに位置することができる。いくつかの場合において、活性部位または結合部位の近くのシステイン残基を置換することで、そのシステイン残基でのPEG化を防ぐことができる。いくつかの場合において、活性部位または結合部位の近くのシステイン残基を置換することで、PEG分子またはPEG化反応がMTAPポリペプチドの触媒活性または基質特異性に影響を与えるのを防ぐことができる。いくつかの例において、置換または欠失されるMTAPポリペプチドのシステイン残基は、SEQ ID NO: 1のシステイン(またはC) 55、86、95、131、136、145、163、211、223、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの場合において、置換または欠失されるMTAPポリペプチドのリジン残基は、SEQ ID NO: 1のC96、C136、もしくはC223またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのシステイン残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、または本明細書のおよびそれらの誘導体を含む標準的なアミノ酸のいずれか1つで置換することができる。他の場合において、MTAPポリペプチドのシステインは、任意の天然もしくは非天然アミノ酸残基または本明細書のおよびそれらの任意の誘導体で置換することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのシステインは、アルギニンで置換することができる。
【0099】
いくつかの態様において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のK225R変異に対応する変異を含むことができる。いくつかの例において、K225R変異を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3の配列またはその一部分を含むことができる。
【0100】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3またはその一部分と約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3の少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基または最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3の1~10、5~15、10~20、15~25、20~30、25~35、30~40、35~45、40~50、45~55、50~60、55~65、60~70、65~75、70~80、75~85、80~90、85~95、90~100、95~105、100~110、105~115、110~120、115~125、120~130、125~135、130~140、135~145、140~150、145~155、150~160、155~165、160~170、165~175、170~180、175~185、180~190、185~195、190~200、195~205、200~210、205~215、210~220、215~225、220~230、225~235、230~240、235~245、240~250、245~255、250~260、255~265、260~270、265~275、270~280、または275~284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 3のThr18、Thr197、Ser178、Val233およびMet196ならびにSEQ ID NO: 3の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0101】
いくつかの態様において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のK238R変異に対応する変異を含むことができる。いくつかの例において、K238R変異を有するMTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5の配列またはその一部分を含むことができる。
【0102】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5またはその一部分と約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性(またはその中で導出可能な任意の範囲)を有する配列を含むことができる。いくつかの態様において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5の少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基または最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、もしくは284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5の1~10、5~15、10~20、15~25、20~30、25~35、30~40、35~45、40~50、45~55、50~60、55~65、60~70、65~75、70~80、75~85、80~90、85~95、90~100、95~105、100~110、105~115、110~120、115~125、120~130、125~135、130~140、135~145、140~150、145~155、150~160、155~165、160~170、165~175、170~180、175~185、180~190、185~195、190~200、195~205、200~210、205~215、210~220、215~225、220~230、225~235、230~240、235~245、240~250、245~255、250~260、255~265、260~270、265~275、270~280、または275~284個の残基を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、SEQ ID NO: 5のThr18、Thr197、Ser178、Val233およびMet196ならびにSEQ ID NO: 5の少なくとも200個のアミノ酸と約少なくとも80%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0103】
いくつかの例において、本明細書において記述される任意のMTAPまたはMTANポリペプチドおよびそれらのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の測定は、MTAPポリペプチドのV0、Vmax、KM、kcat、またはそれらの組み合わせの測定を含むことができる。いくつかの場合において、測定はインビトロでの反応を含むことができる。他の場合において、測定はインビボでの反応を含むことができる。
【0104】
いくつかの例において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、少なくとも約1×104 M-1s-1 2×104 M-1s-1、3×104 M-1s-1、4×104 M-1s-1、5×104 M-1s-1、6×104 M-1s-1、7×104 M-1s-1、8×104 M-1s-1、9×104 M-1s-1、1×105 M-1s-1、1.1×105 M-1s-1、1.2×105 M-1s-1、1.3×105 M-1s-1、1.4×105 M-1s-1、1.5×105 M-1s-1、1.6×105 M-1s-1、1.7×105 M-1s-1、1.8×105 M-1s-1、1.9×105 M-1s-1、2×105 M-1s-1、2.1×105 M-1s-1、2.2×105 M-1s-1、2.3×105 M-1s-1、2.4×105 M-1s-1、2.5×105 M-1s-1、2.6×105 M-1s-1、2.7×105 M-1s-1、2.8×105 M-1s-1、2.9×105 M-1s-1、3×105 M-1s-1、3.1×105 M-1s-1、3.2×105 M-1s-1、3.3×105 M-1s-1、3.4×105 M-1s-1、3.5×105 M-1s-1、3.6×105 M-1s-1、3.7×105 M-1s-1、3.8×105 M-1s-1、3.9×105 M-1s-1、4×105 M-1s-1、4.1×105 M-1s-1、4.2×105 M-1s-1、4.3×105 M-1s-1、4.4×105 M-1s-1、4.5×105 M-1s-1、4.6×105 M-1s-1、4.7×105 M-1s-1、4.8×105 M-1s-1、4.9×105 M-1s-1、5×105 M-1s-1、6×105 M-1s-1、7×105 M-1s-1、8×105 M-1s-1、9×105 M-1s-1、1×106 M-1s-1、2×106 M-1s-1、3×106 M-1s-1、4×106 M-1s-1、または5×106 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの場合において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、1×104~2×104 M-1s-1、1.5×104~2.5×104 M-1s-1、2×104~3×104 M-1s-1、2.5×104~3.5×104 M-1s-1、3×104~4×104 M-1s-1、3.5×104~4.5×104 M-1s-1、4×104~5×104 M-1s-1、4.5×104~5.5×104 M-1s-1、5×104~6×104 M-1s-1、5.5×104~6.5×104 M-1s-1、6×104~7×104 M-1s-1、6.5×104~7.5×104 M-1s-1、7×104~8×104 M-1s-1、7.5×104~8.5×104 M-1s-1、8×104~9×104 M-1s-1、8.5×104~1×105 M-1s-1、9×105~1.1×105 M-1s-1、1×105~1.2×105 M-1s-1、1.1×105~1.3×105 M-1s-1、1.2×105~1.4×105 M-1s-1、1.3×105~1.5×105 M-1s-1、1.4×105~1.6×105 M-1s-1、1.5×105~1.7×105 M-1s-1、1.6×105~1.8×105 M-1s-1、1.7×105~1.9×105 M-1s-1、1.8×105~2×105 M-1s-1、1.9×105~2.1×105 M-1s-1、2×105~2.2×105 M-1s-1、2.1×105~2.3×105 M-1s-1、2.2×105~2.4×105 M-1s-1、2.3×105~2.5×105 M-1s-1、2.4×105~2.6×105 M-1s-1、2.5×105~2.7×105 M-1s-1、2.6×105~2.8×105 M-1s-1、2.7×105~2.9×105 M-1s-1、2.8×105~3×105 M-1s-1、2.9×105~3.1×105 M-1s-1、3×105~3.2×105 M-1s-1、3.1×105~3.3×105 M-1s-1、3.2×105~3.4×105 M-1s-1、3.3×105~3.5×105 M-1s-1、3.4×105~3.6×105 M-1s-1、3.5×105~3.7×105 M-1s-1、3.6×105~3.8×105 M-1s-1、3.7×105~3.9×105 M-1s-1、3.8×105~4×105 M-1s-1、3.9×105~4.1×105 M-1s-1、4×105~4.2×105 M-1s-1、4.1×105~4.3×105 M-1s-1、4.2×105~4.4×105 M-1s-1、4.3×105~4.5×105 M-1s-1、4.4×105~4.6×105 M-1s-1、4.5×105~4.7×105 M-1s-1、4.6×105~4.8×105 M-1s-1、4.7×105~4.9×105 M-1s-1、4.8×105~5×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、約1.9×105~約2.3×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの場合において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、約1.9×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、約2.3×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、約1.5×105~約3×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの場合において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、少なくとも約1.5×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、PEG化もしくは非PEG化野生型もしくは変種MTAPポリペプチド、またはK225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドは、約3×105 M-1s-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。
【0105】
いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のVmaxを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、または80~100%のVmaxを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の少なくとも50%でのVmaxを有することができる。
【0106】
いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、または200%のkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~110%、100~150%、120~180%、150~200%、170~220%,200~250%、220~270%、250~350%、300~400%、350~450%、または400~500%のKMを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の、2倍以下、または200%以下のKMを有することができる。
【0107】
いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300%、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、610%、620%、630%、640%、650%、660%、670%、680%、690%、700%、710%、720%、730%、740%、750%、760%、770%、780%、790%、800%、810%、820%、830%、840%、850%、860%、870%、880%、890%、900%、910%、920%、930%、940%、950%、960%、970%、980%、990%、または1000%のkcatを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~110%、100~150%、120~180%、150~200%、170~220%,200~250%、220~270%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、または900~1,000%のkcatを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の少なくとも50%でのkcatを有することができる。
【0108】
いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300%、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、610%、620%、630%、640%、650%、660%、670%、680%、690%、700%、710%、720%、730%、740%、750%、760%、770%、780%、790%、800%、810%、820%、830%、840%、850%、860%、870%、880%、890%、900%、910%、920%、930%、940%、950%、960%、970%、980%、990%、または1000%のkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~110%、100~150%、120~180%、150~200%、170~220%,200~250%、220~270%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、または900~1,000%のkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、K225R変異もしくはK238R変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチド、またはリジンもしくはシステイン変異を有するPEG化もしくは非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性は、SEQ ID NO: 1を含むPEG化または非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の少なくとも50%でのkcat/KMを有することができる。
【0109】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの二次構造または三次構造を変化させない。他の場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAP活性に影響を与えずに、MTAPポリペプチドの二次構造または三次構造を変化させることができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの分子サイズ、電荷、または受容体結合能力を変化させうる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、細網内皮系(RES)、腎臓、脾臓、または肝臓によるMTAPポリペプチドのクリアランスを低減させることができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの循環時間を増加させることができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、酵素またはタンパク質によるそのアクセスを妨げるMTAPポリペプチドの立体障害、マスク、またはシールドを作製することができる。いくつかの場合において、立体障害、マスク、またはシールドは、MTAPポリペプチドの免疫原性または抗原性を低下させることもできる。他の場合において、MTAPポリペプチドのPEG化のためのPEG分子は、親水性、可動性、および生体適合性スペーサーを含むことができる。他の例において、MTAPポリペプチドのPEG化のためのPEG分子は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、またはNHSエステルを含むこともできる。
【0110】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの血清中半減期を調整することができる。他の場合において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの血清中半減期を増加させることができる。
【0111】
MTaseのPEG化は、いくつかの場合において、酵素の流体力学的半径を増加させ、それゆえ、血清中持続性を増加させることができる。ある種の局面において、開示されるポリペプチドは、標的細胞上の外部受容体または結合部位に特異的かつ安定的に結合する能力を有するリガンドなどの、任意のターゲティング剤にコンジュゲートされうる(例えば、米国特許出願公開第2009/0304666号)。
【0112】
いくつかの態様において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの流体力学的半径を少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、250%、300%、350%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%だけ増加させることができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドの流体力学的半径を30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~110%、100~150%、120~180%、150~200%、170~220%、200~250%、220~270%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、または900~1,000%の量だけ増加させることができる。
【0113】
いくつかの態様において、PEG化MTAPポリペプチドは、少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、49時間、50時間、51時間、52時間、53時間、54時間、55時間、56時間、57時間、58時間、59時間、60時間、61時間、62時間、63時間、64時間、65時間、66時間、67時間、68時間、69時間、70時間、71時間、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間、132時間、144時間、156時間、168時間、180時間、190時間、または200時間の血清中半減期を有することができる。他の場合において、いくつかの態様において、PEG化MTAPポリペプチドは、1~5時間、2~6時間、3~7時間、4~8時間、5~9時間、6~10時間、7~11時間、8~12時間、9~13時間、10~14時間、11~15時間、12~16時間、13~17時間、14~18時間、12~24時間、18~30時間、24~36時間、30~42時間、36~48時間、42~46時間、43~47時間、44~48時間、45~49時間、46~50時間、47~51時間、48~52時間、49~53時間、50~54時間、51~55時間、52~56時間、53~57時間、54~58時間、55~59時間、56~60時間、57~61時間、58~62時間、59~63時間、60~64時間、61~65時間、62~66時間、63~67時間、64~68時間、65~69時間、66~70時間、67~71時間、68~72時間、66~78時間、72~84時間、78~90時間、84~96時間、90~102時間、96~108時間、102~114時間、108~120時間、114~126時間、120~132時間、126~138時間、132~144時間、138~150時間、144~156時間、150~162時間、156~168時間、162~174時間、168~180時間、174~186時間、180~192時間、186~198時間、または192~204時間の血清中半減期を有することができる。他の場合において、PEG化ポリペプチドは、少なくとも57時間または約57時間の血清中半減期を有することができる。他の場合において、PEG化ポリペプチドは、少なくとも36時間または約36時間の血清中半減期を有することができる。
【0114】
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドの血清中半減期よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、または1000%長い血清半減期を有することができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドの血清中半減期よりも10~100%、50~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、または900~1000%長い血清半減期を有することができる。
【0115】
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドの細胞外半減期よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%長い細胞外半減期を有することができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、PEG化されていないMTAPポリペプチドの細胞外半減期よりも10~100%、50~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、または900~1000%長い細胞外半減期を有することができる。
【0116】
いくつかの場合において、リジン置換または欠失を含むMTAPポリペプチドは、MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を10%、20%、30%、40%または50%超だけ低下させることなくMTAPを最大限にPEG化することを可能にすることができる。いくつかの場合において、K225R置換、K238R置換、それらの構造的同等体、またはそれらの組み合わせを含むMTAPポリペプチドは、非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性レベルと比較してそのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性レベルを10%、20%、30%、40%または50%超だけ低下させることなくMTAPを最大限にPEG化することを可能にすることができる。いくつかの場合において、K225R置換、K238R置換、それらの構造的同等体、またはそれらの組み合わせを含むMTAPポリペプチドは、MTAPを最大限にPEG化することを可能にし、MTAPポリペプチドが非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性と比較してそのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を低下させるのを防ぐことができる。いくつかの場合において、K225R置換、K238R置換、それらの構造的同等体、またはそれらの組み合わせを含むMTAPポリペプチドは、非PEG化MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性と比較してそのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を増加させることができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を測定することは、MTAまたはADO分解活性を測定することを含むことができる。いくつかの場合において、MTAまたはADO分解活性は、アデニンの検出などの、MTAまたはADOの分解から生じる生成物を検出する任意のアッセイによって測定することができる。いくつかの場合において、MTAまたはADO分解活性は、アデニン、メチルチオリボースリン酸、メチルチオリボース、またはS-メチル-5-チオ-α-D-リボース1-リン酸の検出などの、MTAまたはADOの分解から生じる生成物の量を検出する任意のアッセイによって測定することができる。いくつかの場合において、MTAまたはADO分解活性は、MTA、ADO、またはS-メチル-5'チオアデノシンを含むMTAまたはADOの分解における基質の量を検出する任意のアッセイによって測定することができる。他の場合において、MTAまたはADO分解活性は、メチルチオツベルシンまたは5'-クロロホルマイシンを含む阻害剤によるMTAPポリペプチドの阻害レベルを検出する任意のアッセイによって測定することができる。
【0117】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドの修飾は、MTAPポリペプチドの所望の特性を生じさせるかまたは含むように、作製するか、誘導するか、または修飾することができる。いくつかの場合において、所望の特性は、MTAPポリペプチドの酵素活性またはポリペプチド存在量の増加を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、そのメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性を調整するための修飾を有することができる。そのような調整は、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の増加または減少を含むことができる。いくつかの場合において、修飾は、MTAPポリペプチドの発現または安定性の増加を含むことができる。いくつかの場合において、修飾は、MTAPポリペプチドに対する免疫応答を誘発しうる配列または構造を除去することを含むことができる。他の場合において、修飾は、MTAPポリペプチドのアミノ酸残基の付加、欠失、または置換を含むことができる。
【0118】
いくつかの例において、修飾は、MTAPポリペプチドのアミノ酸に影響を与えることなく、MTAPポリペプチドをコードする核酸におけるヌクレオチドの欠失、挿入、または置換を含みうる。そのような修飾は、MTAPポリペプチドをコードする核酸の転写産物の5'または3' UTRにおける修飾を含むことができる。いくつかの場合において、修飾は、例えばイントロン配列などの、MTAPポリペプチドをコードする核酸の転写産物の任意の非コード配列を含むこともできる。他の場合において、修飾は、MTAPポリペプチドをコードする核酸の転写産物のコード領域における修飾を含むこともできる。
【0119】
いくつかの場合において、そのようなアミノ酸残基は、本明細書にまたはそれに記述される活性部位を含むことができる。他の場合において、他の残基は、構造分析、相同性分析、または計算予測に基づき同定することもできる。他の場合において、異なる修飾部位を有するポリペプチドの集団が作製されうる。いくつかの例において、変異体集団から、増加したMTAおよび/またはADO分解活性を有する変異体ポリペプチドが選択されうる。所望の変異体の選択は、本明細書におよびそれに記述されるメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の測定のための方法を含みうる。いくつかの例において、本明細書におよびそれに記述される任意の所望の特性を有する変異体ポリペプチドを、選択することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、異種ペプチドまたは化学修飾を含むことができる。異種ポリペプチドは、本明細書におよびそれに記述される任意のそのようなポリペプチドを含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、本明細書におよびそれに記述される化学反応を含むことができる。
【0120】
PEG化MTAPポリペプチドは、いくつかの場合において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35個、またはそれ以上のPEG分子を含むことができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、1~10、2~11、3~12、4~13、5~14、6~15、7~16、8~17、9~18、10~19、11~20、12~21、13~22、14~23、15~24、16~25、17~26、18~27、19~28、20~29、21~30、22~31、23~32、24~33、25~34、26~35個のPEG分子を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにコンジュゲートされるPEG分子の数は、ガウス分布に従うことができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、1、2、3、4、または5個のPEG分子にコンジュゲートされる約80%の確率を有することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、0、6、7、または8個のPEG分子にコンジュゲートされる約20%の確率を有することができる。他の場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、0、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35個またはそれ以上のPEG分子にコンジュゲートされる約20%の確率を有することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、8個超のPEG分子にコンジュゲートされる約1%の確率を有することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにコンジュゲートされるPEG分子の数の最頻値は、1±1、2±1、3±1、4±1、5±1、6±1、7±1、8±1、9±1、10±1、1±2、2±2、3±2、4±2、5±2、6±2、7±2、8±2、9±2、10±2、1±3、2±3、3±3、4±3、5±3、6±3、7±3、8±3、9±3、または10±3を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにコンジュゲートされるPEG分子の数の最頻値は、2±1、3±1、4±1、または6±1を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドにコンジュゲートされるPEG分子の数の最頻値は、8±3を含むことができる。
【0121】
いくつかの場合において、前記ポリエチレングリコールは、約500 kDa~約1000 kDa、約800 kDa~約1600 kDa、約1500 kDa~約3000 kDa、約2000 kDa~約4000 kDa、約2500 kDa~約5000 kDa、約3000 kDa~約6000 kDa、約4,000 kDa~約8,000 kDa、約6,000 kDa~約12,000 kDa、約10,000 kDa~約20,000 kDa、または約15,000 kDa~約30,000 kDaの平均分子量を有する。
【0122】
いくつかの例において、PEGは、SEQ ID NO: 1のLys11、Lys32、Lys40、Lys49、Lys51、Lys71、Lys82、Lys147、Lys158、Lys158、Lys166、Lys206、Lys225、Lys238、Lys241、Lys246、Lys248、もしくはLys271またはMTAP酵素活性を有する相同MTAPポリペプチドの対応する位置、あるいはそれらの任意の組み合わせにコンジュゲートされうる。いくつかの例において、PEGは、SEQ ID NO: 1のCys55、Cys86、Cys95、Cys131、Cys136、Cys145、Cys211、もしくはCys223またはMTAP酵素活性を有する相同MTAPポリペプチドの対応する位置、あるいはそれらの任意の組み合わせにコンジュゲートされうる。
【0123】
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、少なくとも1×103、2×103、3×103、4×103、5×103、6×103、7×103、8×103、9×103、1×104、2×104、3×104、4×104、5×104、6×104、7×104、8×104、9×104、1×105、2×105、3×105、4×105、5×105、6×105、7×105、8×105、9×105、1×106、2×106、3×106、4×106、5×106、6×106、7×106、8×106、9×106、1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、6×107、7×107、8×107、9×107、1×108、2×108、3×108、4×108、5×108、6×108、7×108、8×108、もしくは9×108 s-1M-1または約1×103、2×103、3×103、4×103、5×103、6×103、7×103、8×103、9×103、1×104、2×104、3×104、4×104、5×104、6×104、7×104、8×104、9×104、1×105、2×105、3×105、4×105、5×105、6×105、7×105、8×105、9×105、1×106、2×106、3×106、4×106、5×106、6×106、7×106、8×106、9×106、1×107、2×107、3×107、4×107、5×107、6×107、7×107、8×107、9×107、1×108、2×108、3×108、4×108、5×108、6×108、7×108、8×108、もしくは9×108 s-1M-1の、MTAまたはADOに対する触媒効率(kcat/KM)を有することができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドは、0.5×103~2×103、1.5×103~3×103、2.5×103~4×103、3.5×103~5×103、4.5×103~6×103、5.5×103~7×103、6.5×103~8×103、7.5×103~9×103、8.5×103~1×104、0.5×104~2×104、1.5×104~3×104、2.5×104~4×104、3.5×104~5×104、4.5×104~6×104、5.5×104~7×104、6.5×104~8×104、7.5×104~9×104、8.5×104~1×105、0.5×105~2×105、1.5×105~3×105、2.5×105~4×105、3.5×105~5×105、4.5×105~6×105、5.5×105~7×105、6.5×105~8×105、7.5×105~9×105、8.5×105~1×106、0.5×106~2×106、1.5×106~3×106、2.5×106~4×106、3.5×106~5×106、4.5×106~6×106、5.5×106~7×106、6.5×106~8×106、7.5×106~9×106、8.5×106~1×107、0.5×107~2×107、1.5×107~3×107、2.5×107~4×107、3.5×107~5×107、4.5×107~6×107、5.5×107~7×107、6.5×107~8×107、7.5×107~9×107、8.5×107~1×108、0.5×108~2×108、1.5×108~3×108、2.5×108~4×108、3.5×108~5×108、4.5×108~6×108、5.5×108~7×108、6.5×108~8×108、または7.5×108~9×108 s-1M-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチドは、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、1×104、1×105、1×106 s-1M-1もしくはその中で導出可能な任意の範囲または約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、1×104、1×105、1×106 s-1M-1もしくはその中で導出可能な任意の範囲の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドは、少なくとも1×105 s-1M-1または約1×105 s-1M-1の、MTAまたはADOに対するkcat/KMを有することができる。
【0124】
いくつかの態様において、PEG化MTAPまたはMTANは、腫瘍を担持する対象において投与される場合、腫瘍微小環境(TME)に浸潤するT細胞の数を、投与なしにまたは投与前にTMEに浸潤するT細胞の数の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、または20000だけ増加させることができる。いくつかの態様において、PEG化MTAPは、腫瘍を担持する対象において投与される場合、TMEに浸潤するT細胞の数を、投与なしにまたは投与前にTMEに浸潤するT細胞の数の10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、900~1000%、950~2000%、1500~2500%、2000~3000%、2500~3500%、3000~4000%、3500~4500%、4000~5000%、4500~5500%、5000~6000%、5500~6500%、6000~7000%、6500~7500%、7000~8000%、7500~8500%、8000~9000%、8500~9500%、9000~10000%、または9500~20000%だけ増加させることができる。
【0125】
がんおよび免疫抑制におけるMTAP
いくつかの場合において、MTAPはがんのマーカーである。いくつかの場合において、MTAPの機能喪失変異は、がんを引き起し、または促進しうる。他の場合において、MTAPのホモ接合性遺伝子欠失は、がんを引き起し、または促進しうる。他の場合において、MTAPのホモ接合性遺伝子欠失または機能喪失変異は、不良治療転帰に関連しうる。いくつかの場合において、MTAPの欠失または機能喪失に関連するがんは、骨肉腫、膵臓がん、脊索腫、中皮腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、または神経膠腫を含むことができる。いくつかの例において、MTAPまたはMTAPの活性の遺伝的または非遺伝的喪失または抑制は、がん細胞増殖を増加させうる。いくつかの例において、MTAPまたはMTAPの活性の遺伝的または非遺伝的喪失または抑制は、がんまたは非がん細胞における腫瘍形成促進遺伝子の発現を増加させうる。いくつかの例において、MTAPまたはMTAPの活性の遺伝的または非遺伝的喪失または抑制は、肝細胞がん増殖を増加させうる。いくつかの例において、MTAPまたはMTAPの活性の遺伝的または非遺伝的喪失または抑制は、肝星細胞における腫瘍形成促進遺伝子の発現を増加させうる。
【0126】
いくつかの例において、MTAPの遺伝的喪失は、MTAの分泌の増加およびMTAの蓄積をもたらしうる。いくつかの例において、MTAP活性の喪失は、MTAの分泌の増加およびMTAの蓄積をもたらしうる。他の例において、MTAP発現の抑制も、MTAの分泌の増加およびMTAの蓄積をもたらしうる。いくつかの場合において、MTAの蓄積は細胞外でありうる。他の場合において、MTAの蓄積は細胞内でありうる。他の例において、がんにおけるMTAPの喪失または抑制は、TMEにおけるMTAの蓄積を引き起こしうる。いくつかの例において、TMEは、非腫瘍細胞、血管、免疫細胞、線維芽細胞、シグナル伝達分子または細胞外マトリックス(ECM)を含む腫瘍周囲の環境または周辺組織を含むことができる。いくつかの場合において、正常組織よりもMTAの蓄積を有するがんは、MTAの蓄積がないがんと比較して、より高度の浸潤性および悪性度を有することができる。
【0127】
いくつかの場合において、染色体9q21.3の遺伝子欠失に関連するがんのリスクは、MTAPの欠失または機能喪失を含むことができる。いくつかの例において、染色体9q21.3におけるMTAPの欠失およびCDKN2Aの欠失は、がんの発生に独立的に寄与することができる。いくつかの場合において、MTAPのヘテロ接合性遺伝子欠失がT細胞リンパ腫に関連している。いくつかの場合において、エクソンスキッピング、選択的スプライシング、または機能不全MTAPポリペプチドにつながるMTAP遺伝子内の変異は、CDKN2A変異とは独立してがんに関連している。いくつかの場合において、がんは、悪性線維性組織球腫を伴う骨幹部骨髄腔狭窄症(DMSMFH)を含むことができる。
【0128】
いくつかの場合において、MTAの蓄積は免疫抑制を引き起こしうる。いくつかの場合において、MTAPの遺伝的もしくは非遺伝的喪失もしくは抑制、MTAの蓄積、または両者の組み合わせによって引き起こされる免疫抑制は、T細胞の増殖または分化の阻害を含むことができる。いくつかの例において、免疫抑制は、抗原特異的CD8+ T細胞の拡張の阻害を含むことができる。他の場合において、免疫抑制は、T細胞におけるCD25またはCD69の上方制御された発現の阻害を含むことができる。いくつかの場合において、免疫抑制は、予め刺激された細胞傷害性Tリンパ球におけるアポトーシスの誘導を含むことができる。いくつかの場合において、MTAの蓄積(例えば、外因性MTAの添加)は、抗原または同種異系細胞で刺激されたヒトリンパ球培養物のDNA合成、タンパク質合成、および増殖も阻害することができる。いくつかの例において、MTA蓄積の効果は、MTAの除去(例えば、外因性MTAの洗浄)により反転させることができる。いくつかの場合において、MTAは、アデノシン受容体A2aおよびA2bのアゴニストとして作用し、マクロファージにおいて免疫寛容原性表現型を創出することができる。他の場合において、MTAは、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ3 (MMP3)の誘導により線維芽細胞において腫瘍を引き起こすこともできる。いくつかの場合において、腫瘍により排出されたMTAによって、腫瘍細胞は免疫系による監視および排除を回避することができる。いくつかの場合において、MTAは、T細胞上のPRMT5受容体を阻害することにより、免疫抑制を引き起こすことができる。いくつかの場合において、MTAはPRMT5を阻害することができる。いくつかの例において、MTAはインビトロでPRMT5を阻害することができる。他の場合において、MTAはインビボでPRMT5を阻害することができる。いくつかの例において、MTAは約0.26μMの阻害剤定数でPRMT5を阻害することができる。いくつかの場合において、MTAによるPRMT5の阻害は、T細胞の増殖、生存性、または機能性を低減させることができる。
【0129】
いくつかの場合において、MTAPまたはMTAPの活性の遺伝的または非遺伝的喪失または抑制による細胞外ADOの蓄積も、免疫抑制を引き起こしうる。いくつかの場合において、TMEにおけるADOの蓄積も、抗PD/LI抗体または抗CTLA4抗体に対する耐性を引き起こしうる。いくつかの場合において、ADOは瀕死細胞(dying cell)によって放出されうる。いくつかの例において、ADOはアデノシン受容体に結合することができる。いくつかの例において、ADOは、A1R、A2A3、A2BR、またはA3Rを含むGタンパク質共役型ADO受容体に結合することができる。いくつかの場合において、ADOは、CD73によってAMPから変換されることができる。他の場合において、AMPは、CD39によってADPまたはATPから変換されることができる。
【0130】
PEG化MTAPポリペプチドによるがんの処置
いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチドは、がんを処置するために用いることができる。いくつかの例において、がんは、MTAP遺伝子の遺伝子欠失を含むことができる。他の場合において、がんは、MTAP遺伝子の機能喪失変異を含むことができる。いくつかの例において、がんは、MTAPポリペプチドの活性の喪失を含むことができる。いくつかの例において、がんは、MTAPポリペプチドをコードする遺伝子の遺伝子変異を有しないMTAPポリペプチドの活性の喪失または低減を含むことができる。いくつかの例において、がんは、MTAPポリペプチドをコードする遺伝子の遺伝子変異を有しないMTAPポリペプチドの活性の喪失または低減を含むことができる。いくつかの例において、がんは、メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の喪失または低減を含むことができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドの活性の喪失もしくは低減、またはメチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の喪失は、参照レベルとの比較に基づいて同定することができる。
【0131】
いくつかの場合において、活性の参照レベルは、正常または健常な組織または対象の活性のレベルを含むことができる。いくつかの場合において、正常または健常な対象は、MTAPポリペプチドまたはメチルチオアデノシンホスホリラーゼの活性を増加または減少させる疾患または状態を含みえない。正常または健常な対象は、健常でありうる。他の場合において、正常または健常な対象は、がんを有しえない。いくつかの例において、正常または健常な対象は、集団における平均的な対象と比較した場合に、高いがん発症リスクを有しえない。他の場合において、対象における活性の参照レベルは、対象における正常または健常な組織の活性のレベルを含むことができる。他の場合において、対象における活性の参照レベルは、別の対象における正常または健常な組織の活性のレベルを含むことができる。いくつかの場合において、組織における活性の参照レベルは、健常な状態にある同等の組織における活性のレベルを含むことができる。他の場合において、対象における活性の参照レベルは、別の正常または健常な対象における正常または健常な組織の活性のレベルを含むことができる。いくつかの場合において、参照レベルは、インビトロで規定することもできる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドまたはメチルチオアデノシンホスホリラーゼの活性の参照レベルは、MTAPポリペプチドの野生型配列、発現レベル、または存在量レベルを有する細胞のMTAPポリペプチドまたはメチルチオアデノシンホスホリラーゼの活性のレベルを含むことができる。
【0132】
いくつかの場合において、がんまたはがん細胞におけるMTAP発現または活性は、参照レベルと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%だけ低減される。
【0133】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドまたはPEG-MTAPによる処置は、腫瘍微小環境におけるMTAの細胞外濃度を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%だけ低減する。MTAP欠失を含むがんまたはがん細胞は、膀胱、脳、乳房、ヘム、結腸、肺、膵臓または皮膚がん細胞を含むことができる。
【0134】
いくつかの場合において、参照レベルは、健常な対象におけるレベルを含むことができる。他の場合において、参照レベルは、健常な対象における組織内のレベルを含むことができる。いくつかの場合において、参照レベルは、本明細書におよびそれに記述される薬学的組成物を投与されている対象(subjected)における健常組織内のレベルを含むことができる。
【0135】
いくつかの態様において、PEG化MTAPポリペプチドは、低い免疫原性リスクを有しうる。他の場合において、MTAPポリペプチドは、低い免疫原性リスクを有しえない。
【0136】
がんは、いくつかの例において、固形腫瘍または血液学的腫瘍において見い出されるものなどの、悪性の細胞型を含むことができる。いくつかの場合において、がんは、膵臓、結腸、盲腸、胃、胆嚢、皮膚、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺および乳房からなる群より選択される器官の腫瘍を含むことができる。いくつかの場合において、がんは血液学的腫瘍を含むことができ、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などを含む。いくつかの場合において、がんは、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がんおよび肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃(gastric)または胃(stomach)がん(消化管がんおよび消化管間質腫瘍を含む)、膵臓がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、胆嚢がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)または腎臓(renal)がん、腎細胞がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、さまざまなタイプの頭頚部がん、頭頸部扁平上皮がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL); 小リンパ球性(SL)NHL; 中悪性度/濾胞性NHL; 中悪性度びまん性NHL; 高悪性度免疫芽球性NHL; 高悪性度リンパ芽球性NHL; 高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL; 巨大病変性NHL; マントル細胞リンパ腫; AIDS関連リンパ腫; およびワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄芽球性白血病を含むこともできる。
【0137】
いくつかの場合において、がんは、新生物、悪性; がん; がん、未分化; 巨細胞および紡錘細胞がん; 小細胞がん; 乳頭がん; 扁平上皮がん; リンパ上皮がん; 基底細胞がん; 石灰化上皮がん; 移行上皮細胞がん; 乳頭移行上皮細胞がん; 腺がん; ガストリノーマ、悪性; 胆管がん; 肝細胞がん; 肝細胞がん・胆管がん合併型; 索状腺がん; 腺様嚢胞がん; 腺腫様ポリープの腺がん; 腺がん、家族性大腸ポリポーシス; 固形がん; カルチノイド腫瘍、悪性; 細気管支肺胞腺がん; 乳頭腺がん; 色素嫌性がん; 好酸性がん; 好酸性腺がん; 塩基好性がん; 明細胞腺がん; 顆粒細胞がん; 濾胞状腺がん; 乳頭・濾胞状腺がん; 非被包性硬化性がん; 副腎皮質がん; 類内膜がん; 皮膚付属器がん; アポクリン腺がん; 皮脂腺がん; 耳垢腺がん; 粘表皮がん; 嚢胞腺がん; 乳頭状嚢胞腺がん; 乳頭状漿液嚢胞腺がん; 粘液性嚢胞腺がん; 粘液性腺がん; 印環細胞がん; 浸潤性導管がん; 髄様がん; 小葉がん; 炎症性がん; ページェット病、乳房; 腺房細胞がん; 腺扁平上皮がん; 扁平上皮化生随伴腺がん; 胸腺腫、悪性; 卵巣間質腫、悪性; 卵胞膜細胞腫、悪性; 顆粒膜細胞腫、悪性; 男性ホルモン産生細胞腫、悪性; セルトリ細胞がん; ライジッヒ細胞腫瘍、悪性; 脂質細胞腫瘍、悪性; 傍神経節腫、悪性; 乳房外傍神経節腫、悪性; 褐色細胞腫; 血管球血管肉腫; 悪性黒色腫; メラニン欠乏性黒色腫; 表在拡大型黒色腫; 巨大色素性母斑の悪性黒色腫; 類上皮細胞型黒色腫; 青色母斑、悪性; 肉腫; 線維肉腫; 線維性組織球腫、悪性; 粘液肉腫; 脂肪肉腫; 平滑筋肉腫; 横紋筋肉腫; 胎児性横紋筋肉腫; 胞巣状横紋筋肉腫; 間質性肉腫; 混合腫瘍、悪性; ミュラー管混合腫瘍; 腎芽腫; 肝芽腫; がん肉腫; 間葉細胞腫、悪性; ブレンナー腫瘍、悪性; 葉状腫瘍、悪性; 滑膜肉腫; 中皮腫、悪性; 未分化胚細胞腫; 胚性がん腫; 奇形腫、悪性; 卵巣甲状腺腫、悪性; 絨毛がん; 中腎腫、悪性; 血管肉腫; 血管内皮腫、悪性; カポジ肉腫; 血管周囲細胞腫、悪性; リンパ管肉腫; 骨肉腫; 傍骨性骨肉腫; 軟骨肉腫; 軟骨芽細胞腫、悪性; 間葉性軟骨肉腫; 骨の巨細胞腫瘍; ユーイング肉腫; 歯原性腫瘍、悪性; エナメル上皮歯牙肉腫; エナメル上皮腫、悪性; エナメル上皮線維肉腫; 松果体腫、悪性; 脊索腫; 神経膠腫、悪性; 上衣腫; 星細胞腫; 原形質性星細胞腫; 線維性星細胞腫; 星芽細胞腫; 膠芽腫; 乏突起細胞腫; 乏突起膠芽細胞腫; 原始神経外胚葉性; 小脳肉腫; 神経節芽腫; 神経芽腫; 網膜芽腫; 嗅神経腫瘍; 髄膜腫、悪性; 神経線維肉腫; 神経鞘腫、悪性; 顆粒細胞腫瘍、悪性; 悪性リンパ腫; ホジキン病; ホジキン; 側肉芽腫; 悪性リンパ腫、小リンパ球性; 悪性リンパ腫、大細胞、びまん性; 悪性リンパ腫、濾胞性; 菌状息肉腫; 他の特定非ホジキンリンパ腫; 悪性組織球症; 多発性骨髄腫; マスト細胞肉腫; 免疫増殖性小腸疾患; 白血病; リンパ性白血病; 形質細胞性白血病; 赤白血病; リンパ肉腫細胞性白血病; 骨髄性白血病; 好塩基球性白血病; 好酸球性白血病; 単球性白血病; マスト細胞白血病; 巨核芽球性白血病; 骨髄性肉腫; ならびに有毛細胞白血病を含むことができる。
【0138】
核酸
いくつかの例において、MTAPポリペプチドをコードする核酸は、MTAPポリペプチドをコードすることができるDNA、RNA、LNA、PNA、または本明細書のおよびそれらの任意の誘導体を含むことができる。いくつかの場合において、SEQ ID NO: 2を含む核酸は、SEQ ID NO: 1を含むMTAPポリペプチドをコードする。いくつかの場合において、SEQ ID NO: 4を含む核酸は、SEQ ID NO: 3を含むMTAPポリペプチドをコードする。いくつかの場合において、SEQ ID NO: 6を含む核酸は、SEQ ID NO: 5を含むMTAPポリペプチドをコードする。
【0139】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドをコードする核酸は、ポリペプチドを発現させるために使用される生物に基づいてコドン最適化することもできる。
【0140】
MTAPポリペプチドのPEG化
いくつかの例において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドとのPEGの反応性誘導体のインキュベーションによって達成することができる。いくつかの場合において、PEG化は共有結合であることができる。他の場合において、PEG化は非共有結合であることができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドのPEG化は、MTAPポリペプチドがPEGにコンジュゲートされていることを意味しうる。他の場合において、PEG化は、PEG分子を、ネイティブまたは組み換えMTAPポリペプチド、本明細書のおよびそれらの断片、または本明細書のおよびそれらの部分に連結することを含むことができる。
【0141】
いくつかの例において、PEG分子は、MTAPポリペプチドのリジン、セリン、ヒスチジン、チロシン、システイン、N末端アミン、フェニルアラニン、C末端システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、N末端、C末端、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせの位置でMTAPポリペプチドに付着され、コンジュゲートされ、または連結されることができる。いくつかの場合において、PEG分子は、MTAPポリペプチドのリジンまたはシステインの位置でMTAPポリペプチドに付着され、コンジュゲートされ、または連結されることができる。いくつかの例において、C末端カルボン酸をMTAPポリペプチドのPEG化において用いることもできる。いくつかの場合において、PEG分子は、MTAPポリペプチドのリジンおよびシステインの位置でMTAPポリペプチドに付着され、コンジュゲートされ、または連結されることができる。
【0142】
いくつかの例において、PEG分子は、同じ反応性部分を用いて各末端の位置で活性化することができ、すなわち、PEG分子は「ホモ二官能性」である。他の場合において、PEG分子は、異なる反応性部分を用いて各末端の位置で活性化することができ、すなわち、その場合、PEG分子は「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」である。いくつかの場合において、PEG分子をMTAPポリペプチドに付着させるために、PEG分子の化学的に活性な誘導体または活性化された誘導体を調製することができる。
【0143】
いくつかの場合において、PEG分子は、スクシンイミジルエステル、アルデヒド、マレイミド、p-ニトロフェニル炭酸エステル、本明細書のおよびそれらの任意の誘導体、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせでMTAPポリペプチドに付着され、コンジュゲートされ、または連結されることができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのPEG化のためのPEG分子の作製は、無水物、酸塩化物、クロロギ酸エステル、または炭酸塩を含めてヒドロキシル基と反応性である基とPEG分子を反応させることを含むことができる。他の場合において、MTAPポリペプチドのPEG化のためのPEG分子の作製は、アルデヒド、エステル、またはアミドを含めて官能基と反応性である基とPEG分子を反応させることを含むことができる。いくつかの場合において、メトキシPEG分子を、MTAPポリペプチドのPEG化のために用いることができる。いくつかの場合において、ポリエチレングリコール(PEGジオール)を、MTAPポリペプチドのPEG化のために用いることもできる。いくつかの場合において、ジオール基は、ヘテロまたはホモ二量体PEG化MTAPポリペプチドを作製するために両末端で修飾することができる。
【0144】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、求核部位でPEG化することができる。他の場合において、求核部位は、非プロトン化チオール基またはアミノ基もしくはアミン基を含むことができる。いくつかの例において、リジンの側鎖またはタンパク質のN末端上のアミノ基またはアミン基を、MTAPポリペプチドのPEG化のために用いることができる。いくつかの場合において、タンパク質は、リジンの側鎖またはタンパク質のN末端上のアミン基またはアミノ基のアルキル化を通じて、PEG分子にコンジュゲートさせることができる。いくつかの場合において、PEG-アルデヒド、NHS-PEG、PEGトレシレート、PEGイソチオシアネートまたはスクシンイミドPEG分子を用いて、MTAPポリペプチドのリジンの側鎖上のアミノ基をコンジュゲートさせることができる。他の場合において、スクシンイミジルカーボネート(PEG-SC)、ベンゾトリアゾールカーボネート(PEG-BTC)、フェニルカーボネート、カルボニルイミダゾール、またはチアゾリジン-2-チオンをMTAPポリペプチドのPEG化のために用いることもできる。いくつかの場合において、塩化シアヌル活性化PEG分子を用いて、MTAPポリペプチドのリジンの第一級アミン基と反応させることができる。いくつかの場合において、PEGアルデヒド誘導体(例えば、メトキシPEGプロピオンアルデヒドまたはmPEG-プロピオンアルデヒド)を用いて、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元的アルキル化により、MTAPポリペプチドのリジンのアミノ基との安定的な第二級アミン結合を形成することができる。いくつかの場合において、低pHでの反応を用いて、PEG化を特定のアミノ基群に誘導することができる。そのような特定のアミノ基群は、低いpKaを有するアミノ基を含むことができる。
【0145】
いくつかの場合において、非プロトン化チオール基は、システインの側鎖を含むことができる。いくつかの場合において、PEGマレイミド、PEGヨードアセテート、PEGチオール、またはPEGビニルスルホンを用いて、システインの位置でMTAPポリペプチドをPEG化することができる。いくつかの場合において、PEG化のためにネイティブなシステインを用いることができる。他の場合において、PEG化のためにMTAPポリペプチドにシステイン残基を操作して組み込むことができる。そのような操作は、MTAPポリペプチドにシステインを付加することを含むことができる。他の場合において、システインは、MTAPポリペプチドの任意のアミノ酸残基を置換することができる。いくつかの例において、システインに基づくPEG化は、PEGに付着されたマレイミド基を遊離システインと反応させることを含むことができる。遊離システインは、いくつかの場合において、ジスルフィド結合に関与していないこともある。
【0146】
いくつかの例において、PEGをMTAPポリペプチドのジスルフィド結合でMTAPポリペプチドにコンジュゲートさせることができる。いくつかの場合において、ジスルフィド結合に基づくPEG化は、温和な条件下でジスルフィドを還元すること、およびビス(チオール)特異的試薬でジスルフィドに関与するシステインを標識することを含むことができる。そのような場合において、ジチオマレイミドを用いて、ジスルフィド結合に基づくPEG化を行うことができる。
【0147】
いくつかの場合において、PEGをチロシン残基の位置でMTAPポリペプチドにコンジュゲートさせることができる。いくつかの例において、MTAPポリペプチドのチロシンを4-フェニル-3H-1,2,4-トリアゾリン-3,5(4H)-ジオン(PTAD)と反応させて、MTAPとPEGとの間の共有結合を作製することができる。いくつかの場合において、PEG-PTADコンジュゲートを最初に作製し、MTAPポリペプチドのチロシンと反応させることができる。
【0148】
いくつかの場合において、PEG化物(a PEGylated)はMTAPポリペプチドの直接化学合成によって調製することができ、ここでMTAPポリペプチドが固相ペプチド合成物(SPPS)に付着され、PEGがカップリング段階の1つにおいてまたはMTAPポリペプチドのネイティブな化学的特徴の直接の化学的付着によって組み入れられる。いくつかの場合において、ネイティブな化学的特徴は、本明細書におよびそれに記述されるPEG化コンジュゲーション部位に存在する化学的特徴を含むことができる。いくつかの場合において、ネイティブな化学的特徴は、アルキル化含有残基を含むこともできる。他の場合において、アジド-PEGコンジュゲートを、ヒュスゲン(Huisgen) 1,3-双極子付加環化を用いてアルキル化含有残基に付着させることができる。他の場合において、PEGはFmoc-アスパラギンを用いてMTAPポリペプチドにコンジュゲートさせることができ、ここでFmoc-アスパラギンはSPPS中にMTAPポリペプチドに組み入れられる。
【0149】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのアミンに基づくPEG化のためには、PEG化反応において最適化されるパラメータは、ポリペプチド濃度、モル基準のPEGとポリペプチドとの比率、温度、またはpH、反応時間を含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドのチオールに基づくPEG化のためには、PEG化反応において最適化されるパラメータは、ポリペプチド濃度、モル基準のPEGとポリペプチドとの比率、温度、pH、反応時間、または酸素の排除を含むことができる。いくつかの例において、PEG化反応は、MTAPポリペプチドの安定性に影響を与えることができる。PEG化反応を開始する前に、PEG分子の反応性を知っておく必要がある。いくつかの場合において、例えば、PEG分子がMTAPポリペプチドのPEG化反応において70%しか活性がない場合、使用するPEG分子の量は、活性PEG分子のみがMTAP対PEG反応の化学量論でカウントされうることを確実にする必要がある。
【0150】
ポリエチレングリコール(PEG)
いくつかの例において、PEG分子は重合体を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子はエチレングリコールまたはエチレンオキシドのホモ重合体を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子はポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子は式I:
を含むことができる。
【0151】
式中でnは単位の数である。いくつかの場合において、PEG分子は分子量44.05n + 18.02 g/molを有することができ、ここでnは式Iと同様に単位の数である。いくつかの例において、PEG分子種の分子量を式Iまたは本明細書のおよびそれらの誘導体のものなどの、単位の数を計算するために用いることができ、その逆の場合も同じである。いくつかの場合において、PEG分子は式H-(O-CH2-CH2)n-OHまたはC2nH4n+2On+1を有することもでき、ここでnは単位の数である。
【0152】
いくつかの場合において、PEG分子はPEG-Nとして表すことができ、ここでNは式I中のnのような、単位の数を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子は式H-(O-CH2-CH2)n-OHまたはC2nH4n+2On+1を有することもでき、ここでnは単位の数である。いくつかの場合において、単位の数が異なるPEG分子は異なる特性を有することができる。いくつかの場合において、低分子量を有するPEG分子は、粘性または無色の液体であることができる。他の場合において、高分子量を有するPEG分子は、高融点で結晶化することができる。高融点は70℃より高温であることができる。
【0153】
いくつかの場合において、PEG分子は約100 kDa、150 kDa、200 kDa、250 kDa、300 kDa、350 kDa、400 kDa、450 kDa、500 kDa、550 kDa、600 kDa、650 kDa、700 kDa、750 kDa、800 kDa、850 kDa、900 kDa、950 kDa、1000 kDa、1050 kDa、1100 kDa、1150 kDa、1200 kDa、1250 kDa、1300 kDa、1350 kDa、1400 kDa、1450 kDa、1500 kDa、1550 kDa、1600 kDa、1650 kDa、1700 kDa、1750 kDa、1800 kDa、1850 kDa、1900 kDa、1950 kDa、2000 kDa、2050 kDa、2100 kDa、2150 kDa、2200 kDa、2250 kDa、2300 kDa、2350 kDa、2400 kDa、2450 kDa、2500 kDa、2550 kDa、2600 kDa、2650 kDa、2700 kDa、2750 kDa、2800 kDa、2850 kDa、2900 kDa、2950 kDa、3000 kDa、3050 kDa、3100 kDa、3150 kDa、3200 kDa、3250 kDa、3300 kDa、3350 kDa、3400 kDa、3450 kDa、3500 kDa、4000 kDa、5000 kDa、6000 kDa、7000 kDa、8000 kDa、9000 kDa、10000 kDa、11000 kDa、12000 kDa、13000 kDa、14000 kDa、15000 kDa、16000 kDa、17000 kDa、18000 kDa、19000 kDa、20000 kDa、21000 kDa、22000 kDa、23000 kDa、24000 kDa、25000 kDa、26000 kDa、27000 kDa、28000 kDa、29000 kDa、30000 kDa、31000 kDa、32000 kDa、33000 kDa、34000 kDa、35000 kDaの平均分子量または35000 kDa超の平均分子量を有することができる。いくつかの場合において、PEG分子は約100~約1000 kDa、約500~約1500 kDa、約1000~約2000 kDa、約1500~約2500 kDa、約2000~約3000 kDa、約2500~約3500 kDa、約3000~約4000 kDa、約3500~約4500 kDa、約4000~約5000 kDa、約4500~約5500 kDa、約5000~約6000 kDa、約5500~約6500 kDa、約6000~約7000 kDa、約6500~約7500 kDa、約7000~約8000 kDa、約7500~約8500 kDa、約8000~約9000 kDa、約8500~約9500 kDa、約9000~約10000 kDa、約9500~約10500 kDa、約10000~約11000 kDa、約10500~約11500 kDa、約11000~約12000 kDa、約11500~約12500 kDa、約12000~約13000 kDa、約12500~約13500 kDa、約13000~約14000 kDa、約13500~約14500 kDa、約14000~約15000 kDa、約14500~約15500 kDa、約15000~約16000 kDa、約15500~約16500 kDa、約16000~約17000 kDa、約16500~約17500 kDa、約17000~約18000 kDa、約17500~約18500 kDa、約18000~約19000 kDa、約18500~約19500 kDa、約19000~約20000 kDa、約19500~約20500 kDa、約20000~約21000 kDa、約20500~約21500 kDa、約21000~約22000 kDa、約21500~約22500 kDa、約22000~約23000 kDa、約22500~約23500 kDa、約23000~約24000 kDa、約23500~約24500 kDa、約24000~約25000 kDa、約24500~約25500 kDa、約25000~約26000 kDa、約25500~約26500 kDa、約26000~約27000 kDa、約26500~約27500 kDa、約27000~約28000 kDa、約27500~約28500 kDa、約28000~約29000 kDa、約28500~約29500 kDa、約29000~約30000 kDa、約29500~約30500 kDa、約30000~約31000 kDa、約30500~約31500 kDa、約31000~約32000 kDa、約31500~約32500 kDa、約32000~約33000 kDa、約32500~約33500 kDa、約33000~約34000 kDa、約33500~約34500 kDa、または約34000~約 35000 kDaの平均分子量を有することができる。いくつかの例において、PEG分子は約5000 kDaの平均分子量を有することができる。他の場合において、PEG分子は約500 kDa~約1000 kDa、約800 kDa~約1600 kDa、約1500 kDa~約3000 kDa、約2000 kDa~約4000 kDa、約2500 kDa~約5000 kDa、約3000 kDa~約6000 kDa、約4,000 kDa~約8,000 kDa、約6,000 kDa~約12,000 kDa、約10,000 kDa~約20,000 kDa、または約15,000 kDa~約30,000 kDaの平均分子量を有することができる。
【0154】
いくつかの例において、PEG分子は、-40℃から-70℃のガラス転移温度(Tg)を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子は、極性または非極性溶媒に溶解させることができる。いくつかの例において、PEG分子は、親水性溶媒に溶解させることができる。いくつかの例において、PEG分子は有機溶媒に溶解することができる。そのような有機溶媒の1つは、アルコール、塩化メチレン、アセトン、トルエン、アセトニトリル、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、本明細書のおよびそれらの誘導体、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを含むことができる。他の場合において、PEG分子は両親媒性であることもできる。
【0155】
いくつかの例において、PEG分子は、分枝構造、星型構造、線形構造、櫛状構造、本明細書のおよびそれらの誘導体、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを有することができる。いくつかの例において、PEG分子は末端ヒドロキシル基を含むことができる。他の場合において、PEG分子は末端ヒドロキシル基を対称または非対称の官能基に変換することができる。いくつかの場合において、PEG分子またはPEG分子を含む任意の製造物は、生体不活性であることができる。生体不活性であることは、生物学的反応に対する耐性を含みうる。そのような生物学的反応の1つは、PEG分子またはPEGを含む任意の製造物の分解を含むことができる。他の場合において、生体不活性であることは、最小限の固有の生物学的活性を有することを意味することができる。いくつかの場合において、PEG分子は、低い免疫原性を有することができる。いくつかの場合において、PEG分子は、免疫原性を有しえない。実体の免疫原性は、実体が免疫系に提示もしくは投与される場合に、または免疫系によって検出される場合に、実体に対する免疫応答を誘発または活性化する実体の能力を含むことができる。いくつかの場合において、PEG分子は、免疫系に投与または提示される場合に、PEG分子に向けられた免疫応答を惹起しえない。他の場合において、PEG分子は毒性でありえない。いくつかの例において、PEG分子は高い浸透圧を生じさせうる。いくつかの場合において、PEG分子はハイドロゲルに架橋されることができる。他の場合において、PEG分子は電荷を帯びえない。
【0156】
いくつかの場合において、PEOまたはPOEは、少なくとも約1×105 g/mol、2×105 g/mol、3×105 g/mol、4×105 g/mol、5×105 g/mol、6×105 g/mol、7×105 g、8×105 g/mol、9×105 g/mol、1×106 g/mol、2×106 g/mol、3×106 g/mol、4×106 g/mol、5×106 g/mol、6×106 g/mol、7×106 g/mol、8×106 g/mol、9×106 g/mol、1×107 g/mol、またはそれ以上の分子量を有することができる。
【0157】
融合タンパク質
いくつかの例において、MTAPポリペプチドは異種物体を含むことができる。いくつかの場合において、異種物体は異種ペプチドを含むことができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドおよび異種ペプチドは、融合タンパク質として連結することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドおよび異種ペプチドを含む融合タンパク質は、同じ翻訳単位において構成されることができ、ここでMTAPポリペプチドおよび異種ペプチドは、同じATG開始コドンを共有することができる。他の場合において、MTAPポリペプチドおよび異種ペプチドは、共有結合により連結されることができる。そのような共有結合は、ペプチド結合を含むことができる。他の場合において、MTAPポリペプチドおよび異種ペプチドは、非共有結合を有することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドと異種ペプチドは、同じ翻訳単位において構成されなくてもよい。
【0158】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、抗体、成長因子、ホルモン、ペプチド、アプタマー、化学物質、薬物、核酸、サイトカイン、本明細書のおよびそれらの任意の誘導体、本明細書のおよびそれらの任意の生物学的等価物、または本明細書のおよびそれらの任意の組み合わせを含む細胞ターゲティング部分を含むことができる。例えば、態様による細胞ターゲティング部分は、黒色腫細胞などの皮膚がん細胞に結合しうる。gp240抗原は種々の黒色腫において発現されるが、正常組織においては発現されないことが実証されている。したがって、態様のある種の局面において、MTAPポリペプチド、およびgp240に結合する細胞ターゲティング部分を含む細胞ターゲティングコンストラクトが提供される。いくつかの例において、gp240結合分子は、ZME-018 (225.28S)抗体または9.2.27抗体などの抗体でありうる。さらにより好ましい態様において、gp240結合分子は、scFvMEL抗体などの単鎖抗体でありうる。それゆえ、本発明の非常に具体的な態様において、scFvMELにコンジュゲートされたMTaseを含む細胞ターゲティングコンストラクトが提供される。
【0159】
いくつかの例において、細胞ターゲティング部分を含むMTAPポリペプチドは、乳がん細胞に向けられることができる。いくつかの場合において、細胞ターゲティング部分は、Her-2/neuに結合することができる。他の場合において、MTAPポリペプチドは、抗Her-2/neu抗体を含みうる。いくつかの例においては、MTAPポリペプチド、および単鎖抗Her-2/neu抗体scFv23を含むターゲティング部分を含む融合タンパク質。他の例において、MTAPポリペプチド、およびHer-2/neuに結合するscFv(FRP5)を含むターゲティング部分を含む融合タンパク質も、本態様の組成物および方法において用いられうる(von Minckwitz et al., 2005)。
【0160】
いくつかの場合において、細胞ターゲティング部分は、複数のタイプのがん細胞に結合することができる。いくつかの例において、乳がん、肉腫および神経芽腫に発現される糖タンパク質に結合する8H9モノクローナル抗体およびそれに由来する単鎖抗体(Onda et al., 2004)を、ターゲティング部分として用いることができる。他の場合において、細胞ターゲティング部分は、さまざまながん種に発現される抗原MUC-1に結合する、米国特許出願第2004/005647号およびWinthrop et al., 2003に記述されている細胞ターゲティング剤を含むことができる。いくつかの場合において、ある種の態様において、態様による細胞ターゲティングコンストラクトは、複数のがんまたは腫瘍の種類に対して標的指向させうるものと理解される。
【0161】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン受容体およびゴナドトロピン放出ホルモン受容体などのホルモン受容体を含めて、ある種の細胞表面分子が腫瘍細胞において高度に発現される(Nechushtan et al., 1997)。いくつかの場合において、がん細胞により発現されるホルモン受容体に結合するホルモンペプチドは、がん治療においてがんを特異的にターゲティングする細胞ターゲティング部分として用いることができる。
【0162】
いくつかの場合において、免疫チェックポイント遮断阻害剤を、細胞ターゲティング部分として用いることができる。いくつかの例において、免疫チェックポイント遮断阻害剤は、MTAPポリペプチドとの融合タンパク質を形成するために用いることができる。他の場合において、PD-1、PDL-1、またはPDL-2に拮抗する抗体、またはその断片(例えば、scFv) (例えば、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号; PCT出願番号WO2009/101611およびWO2009/114335に記述されている抗体)をMTAPポリペプチドに融合させることができる。別の例において、CTLA-4を認識する抗体、またはその断片(例えば、scFc) (例えば、米国特許第8,119,129号ならびにPCT出願番号WO 01/14424、WO 98/42752、およびWO 00/37504)がMTAPポリペプチドに融合されうる。いくつかの例において、本明細書におよびそれに記述される任意のチェックポイント遮断分子を細胞ターゲティング部分として用いることができる。
【0163】
リンカー
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、二官能性架橋試薬によって異種物体に化学的にコンジュゲートさせることができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、ペプチドリンカーによって異種物体に化学的にコンジュゲートさせることができる。
【0164】
いくつかの場合において、適当なペプチドリンカーは、Gly-Serリンカーを含む。
【0165】
二官能性架橋試薬は、アフィニティマトリックスの調製、多様な構造の修飾および安定化、リガンドおよび受容体の結合部位の同定、ならびに構造研究を含めて、種々の目的で広く使用されており、当技術分野において周知である。
【0166】
いくつかの場合において、二官能性架橋試薬は、ホモ二官能性試薬を含むことができる。いくつかの例において、2つの同一の官能基を保有するホモ二官能性試薬は、同一のおよび異なる高分子または高分子のサブユニット間の架橋の誘導、ならびにポリペプチドリガンドのそれらの特異的結合部位への連結において非常に効率的であることができる。いくつかの場合において、二官能性架橋試薬は、2つの異なる官能基を含むヘテロ二官能性試薬を含むことができる。いくつかの場合において、ヘテロ二官能性試薬は、2つの異なる官能基の差次的反応性で選択的かつ連続的に架橋結合を制御することができる。いくつかの例において、二官能性架橋試薬は、それらの官能基、例えば、アミノ-、スルフヒドリル-、グアニジン-、インドール-、カルボキシル-特異的基の特異性にしたがって分割することができる。いくつかの例において、遊離アミノに向けられる架橋試薬は、その商業的な入手可能性、合成の容易さ、および適用できる穏やかな反応条件に基づいて用いることができる。
【0167】
いくつかの場合において、ヘテロ二官能性架橋試薬は、第一級アミン反応性基およびチオール反応性基を含むことができる。別の例において、ヘテロ二官能性架橋試薬および架橋試薬を使用する方法が記述されている(参照により全体が本明細書に具体的に組み入れられる米国特許第5,889,155号)。架橋試薬は、求核性ヒドラジド残基を求電子性マレイミド残基と組み合わせ、一例として、アルデヒドと遊離チオールとのカップリングを可能にする。架橋試薬は、さまざまな官能基を架橋するように修飾することができる。
【0168】
さらに、抗体-抗原相互作用、アビジンビオチン結合、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、リン酸エステル結合、ホスホルアミド結合、無水物結合、ジスルフィド結合、イオン性および疎水性相互作用、二重特異性抗体および抗体断片、またはそれらの組み合わせを含めて、MTAPポリペプチドを結合するのに当業者に公知の任意の他の連結/カップリング剤および/または機構が用いられうる。
【0169】
いくつかの場合において、血中で適正な安定性を有する架橋剤を利用することができる。ターゲティング剤および治療/予防剤をコンジュゲートさせるために成功裏に利用することができる、多数のタイプのジスルフィド結合を含んだリンカーが知られている。いくつかの場合において、立体的に障害になるジスルフィド結合を含むリンカーは、リンカーにコンジュゲートされている分子のインビボでのさらに高い安定性を付与することができる。このように、これらのリンカーは連結剤の一群である。
【0170】
いくつかの場合において、非障害リンカーを本明細書にしたがって利用することもできる。保護されたジスルフィドを含むまたは生成するとは考えられない他の有用な架橋剤は、SATA、SPDP、および2-イミノチオランを含む(Wawrzynczak and Thorpe, 1987)。そのような架橋剤の使用は、当技術分野においてよく理解されている。いくつかの場合において、可動性リンカーを使用することができる。
【0171】
いくつかの場合において、化学的にコンジュゲートされたら、ペプチドを精製して、コンジュゲートを非コンジュゲート剤からおよび他の混入物質から分離することができる。いくつかの例において、臨床的に有用とするのに十分な純度のコンジュゲートを提供するうえで用いるために、多数の精製技法が利用可能である。いくつかの場合において、精製方法は、ゲルろ過、ゲル浸透、または高性能液体クロマトグラフィーなどの、サイズ分離に基づく方法を含むことができ、一般に最も有用であろう。ブルーセファロース(Blue-Sepharose)分離などの、他のクロマトグラフィー技法も使用されうる。N-ラウロイル-サルコシンナトリウム(SLS)などの、弱い界面活性剤を使用するような、封入体から融合タンパク質を精製する従来の方法が有用でありうる。
【0172】
ベクター
本明細書において提供される核酸は、任意の適当な手段によって送達することができる。いくつかの場合において、適当な手段はベクターを含む。プラスミドベクター、ミニサークルベクター、線状DNAベクター、ドギーボーン(doggy bone)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター; ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム、細胞外小胞、ナノメッシュ、それらの改変型、それらの適正製造基準型、それらのキメラ、ならびにそれらの任意の組合せを含むが、それらに限定されない、任意のベクターシステムを利用することができる。いくつかの場合において、ベクターは、本明細書において提供されるポリヌクレオチドを導入するために用いることができる。いくつかの場合において、ポリヌクレオチドは、本明細書において提供されるRNAの領域にハイブリダイズするターゲティング配列を含む。いくつかの態様において、ナノ粒子ベクターは、重合体に基づくナノ粒子、アミノ脂質に基づくナノ粒子、金属ナノ粒子(金に基づくナノ粒子などの)、これらのいずれかの一部分、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0173】
いくつかの場合において、ベクターはウイルスベクターでなくてもよい。非ウイルス方法は、ポリヌクレオチドなどを含む組成物の裸の送達を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書において提供される修飾をポリヌクレオチドに組み入れて、裸のポリヌクレオチドとして送達されるときの安定性を高め、分解に対抗することができる。他の場合において、非ウイルス性アプローチでは、ナノ粒子、リポソームなどの使用を利用することができる。
【0174】
宿主細胞
いくつかの場合において、宿主細胞は、MTAPポリペプチドおよびそのコンジュゲートの発現および分泌を可能にするように形質転換されうる任意のものでありうる。いくつかの例において、宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、酵母、または糸状菌を含みうる。いくつかの例において、細菌はエシェリキア属(Escherichia)およびバシラス属(Bacillus)を含むことができる。いくつかの例において、細菌は大腸菌(Escherichia coli (E.coli))またはサルモネラ菌を含むことができる。他の場合において、サッカロミセス(Saccharomyces)属、キウイベロミセス(Kiuyveromyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、またはピキア(Pichia)属に属する酵母を宿主細胞として用いることができる。いくつかの例において、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、アクリア(Achlya)、ポドスポラ(Podospora)、エンドシア(Endothia)、ムコール(Mucor)、コクリオボルス(Cochliobolus)、またはピリキュラリア(Pyricularia)を含む、糸状菌が発現宿主として用いられうる。
【0175】
いくつかの場合において、宿主細胞細菌または酵母株は、大腸菌MC1061、枯草菌(Bacillus subtilis) BRB1の派生株(Sibakov et al., 1984)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) SAI123 (Iordanescu, 1975)もしくはストレプトコッカス・リビダンス(Streptococcus lividans) (Hopwood et al., 1985)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae) AH 22 (Mellor et al., 1983)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori) (Ward, 1989)、またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei) (Penttila et al., 1987; Harkki et al., 1989)を含むことができる。
【0176】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドは、哺乳動物宿主細胞において発現させることができる。いくつかの場合において、哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1; ATCC CCL61)、ラット下垂体細胞(GH1; ATCC CCL82)、HeLa S3細胞(ATCC CCL2.2)、ラット肝がん細胞(H-4-II-E; ATCCCRL 1548)、SV40形質転換サル腎細胞(COS-1; ATCC CRL 1650)、およびマウス胚細胞(NIH-3T3; ATCC CRL 1658)を含むことができる。
【0177】
いくつかの場合において、MTAPポリペプチドを発現する哺乳動物宿主細胞は、親細胞株を培養するために通常利用される条件の下で培養することができる。いくつかの場合において、MTAPポリペプチドを発現する哺乳動物宿主細胞は、5%~10%の血清、例えばウシ胎児血清を通常補充した、標準RPMI、MEM、IMEM、またはDMEMなどの、生理的塩類および栄養素を含有する標準培地の中で培養することができる。他の場合において、培養条件は培養物を、タンパク質の所望のレベルが達成されるまで静置培養またはローラー培養において37℃でインキュベートすることを含むことができる。
【0178】
いくつかの場合において、昆虫宿主細胞を用いて、MTAPポリペプチドを発現させることができる。いくつかの場合において、昆虫宿主細胞は、Sf9、Sf21、High Five、またはS2細胞を含むことができる。他の場合において、昆虫発現宿主細胞は、バキュロウイルス発現系を含むことができる。
【0179】
投与
いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物を、対象における送達または投与のために組成物または製剤の中にパッキングすることを含むことができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の、生物学的作用の望ましい部位への送達を可能にするために用いることができる方法をいうことができる。送達は、身体の罹患組織または領域への直接適用を含むことができる。送達は、頭蓋内注射を含むことができる。送達は、実質注射、髄腔内注射、脳室内注射、または大槽内注射を含むことができる。PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよび本明細書のそれらの薬学的組成物は、任意の方法によって投与することができる。投与の方法は、吸入、動脈内注射、脳室内注射、大槽内注射、筋肉内注射、眼窩下注射、実質内注射、腹腔内注射、脊髄内注射、髄腔内注射、静脈内注射、脳室内注射、定位注射、皮下注射、またはそれらの任意の組み合わせによるものであることができる。送達は、非経口投与(静脈内、皮下、髄腔内、腹腔内、筋肉内、血管内または漸増注入を含む)、経口投与、吸入投与、十二指腸内投与、直腸投与を含むことができる。送達は皮膚などの、表面の外面への局所投与(ローション、クリーム、軟膏などの)を含むことができる。いくつかの場合において、投与は、実質注射、髄腔内注射、脳室内注射、大槽内注射、静脈内注射もしくは鼻腔内投与、またはそれらの任意の組み合わせによるものである。いくつかの例において、対象は、監督の不在下で組成物を投与することができる。いくつかの例において、対象は、医療専門家(例えば、医師、看護師、医師助手、看護助手、ホスピス労働者など)の監督下で組成物を投与することができる。医療専門家は組成物を投与することができる。いくつかの場合において、美容専門家は組成物を投与することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、蠕動手段によって送達することもでき、尿路に直接注射することもでき、またはMTAもしくはADOのための潜在的バイオセンサを含みうるカテーテルに接続したポンプによって投与することもできる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、腫瘍内に、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、眼内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、経口的に、吸入により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルによって、または洗浄によって投与することもできる。
【0180】
本明細書において記述されるがんを有する個体を処置する方法は、がんを有する個体またはがんの疑いのある個体における、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与を含むことができる。本明細書において記述されるがんを有する個体を処置する方法は、がんを有しない個体またはがんの疑いのある個体における、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与も含むことができる。
【0181】
PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与または適用は、少なくとも約(at least about at least about) 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100日の連続日または非連続日の処置期間中、実施することができる。処置期間は、約1~約30日、約2~約30日、約3~約30日、約4~約30日、約5~約30日、約6~約30日、約7~約30日、約8~約30日、約9~約30日、約10~約30日、約11~約30日、約12~約30日、約13~約30日、約14~約30日、約15~約30日、約16~約30日、約17~約30日、約18~約30日、約19~約30日、約20~約30日、約21~約30日、約22~約30日、約23~約30日、約24~約30日、約25~約30日、約26~約30日、約27~約30日、約28~約30日、または約29~約30日であることができる。
【0182】
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与または適用は、少なくとも約1週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、少なくとも約6年、少なくとも約7年、少なくとも約8年、少なくとも約9年、少なくとも約10年、少なくとも約15年、少なくとも約20年、またはそれ以上の処置期間中、実施することができる。投与は対象の生涯にわたって、例えば対象の生涯にわたって月1回または年1回繰り返し実施することができる。投与は対象の生涯のかなりの部分にわたって、例えば少なくとも約1年、5年、10年、15年、20年、25年、30年、またはそれ以上にわたって月1回または年1回繰り返し実施することができる。
【0183】
いくつかの場合においては、疾患もしくは状態の症状を低減するための、および/または疾患もしくは状態を低減するための、任意のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与。いくつかの例において、有効量は、所望の効果を達成するのに十分であることができる。治療的または予防的な適用という文脈において、有効量は、問題になっている状態のタイプおよび重症度、ならびに個々の対象の特徴、例えば健康全般、年齢、性別、体重、ならびにPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物に対する耐性に依るであろう。
【0184】
投薬
PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与または適用は、1日に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24回実施することができる。いくつかの場合において、本明細書において開示される個別化された腫瘍ワクチンまたは薬学的組成物の投与または適用は、1週間に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21回実施することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物の投与または適用は、1ヶ月に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90回実施することができる。
【0185】
PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、単一用量としてまたは分割用量として投与/適用することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、第1の時点および第2の時点で投与することができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、第1の投与が1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、20時間、1日、2日、4日、7日、2週間、4週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年またはそれ以上の投与時間の差で他よりも前に投与されるように投与することができる。
【0186】
いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書におよびそれに記述されるPEG化MTAPポリペプチドを含む薬学的組成物は、腫瘍のサイズを低減することができる。他の場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は腫瘍のサイズを、PEG化MTAPポリペプチドの投与前の腫瘍のサイズの0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけ減少させることができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は腫瘍のサイズを、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物の投与前の腫瘍のサイズの1~10%、5~15%、10~20%、15~25%、20~30%、25~35%、30~40%、35~45%、40~50%、45~55%、50~60%、55~65%、60~70%、65~75%、70~80%、75~85%、80~90%、85~95%、または90~100%だけ減少させることができる。
【0187】
いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は、がん細胞の数を低減させることができる。いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書におよびそれに記述される薬学的組成物はがん細胞の数を、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物の投与前のがん細胞の数の0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけ低減させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物はがん細胞の数を、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物の投与前のがん細胞の数の1~10%、5~15%、10~20%、15~25%、20~30%、25~35%、30~40%、35~45%、40~50%、45~55%、50~60%、55~65%、60~70%、65~75%、70~80%、75~85%、80~90%、85~95%、または90~100%だけ減少させることができる。
【0188】
いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書におよびそれに記述されるPEG化MTAPポリペプチドを含む薬学的組成物は、腫瘍の転移を減らすまたは防ぐことができる。他の場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は腫瘍の転移を、PEG化MTAPポリペプチドの投与なしの腫瘍の転移の0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%だけ減らすまたは防ぐことができる。いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は腫瘍の転移を、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物の投与なしの腫瘍の転移の1~10%、5~15%、10~20%、15~25%、20~30%、25~35%、30~40%、35~45%、40~50%、45~55%、50~60%、55~65%、60~70%、65~75%、70~80%、75~85%、80~90%、85~95%、または90~100%だけ減らすまたは防ぐことができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は腫瘍の転移を、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、または50年超だけ遅延させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は腫瘍の転移を、1日~1ヶ月、25日~6ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、10ヶ月~2年、1年~5年、4年~10年、9年~15年、14年~20年、19年~25年、24年~30年、29年~35年、34年~40年、39年~45年、または44年~50年の時間量だけ遅延させることができる。
【0189】
いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象の寿命を延長させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象の寿命を1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、または50年超だけ延長させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象の寿命を1日~1ヶ月、25日~6ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、10ヶ月~2年、1年~5年、4年~10年、9年~15年、14年~20年、19年~25年、24年~30年、29年~35年、34年~40年、39年~45年、または44年~50年の時間量だけ延長させることができる。
【0190】
いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象のがんの発症を遅延させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象のがんの発症を1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、または50年超だけ遅延させることができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物を投与された対象のがんの発症を1日~1ヶ月、25日~6ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、10ヶ月~2年、1年~5年、4年~10年、9年~15年、14年~20年、19年~25年、24年~30年、29年~35年、34年~40年、39年~45年、または44年~50年の時間量だけ遅延させることができる。
【0191】
いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物はMTAレベルを、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%だけ減少させることができる。いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物はMTAレベルを、10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、900~1000%、950~2000%、1500~2500%、2000~3000%、2500~3500%、3000~4000%、3500~4500%、4000~5000%、4500~5500%、5000~6000%、5500~6500%、6000~7000%、6500~7500%、7000~8000%、7500~8500%、8000~9000%、8500~9500%、9000~10000%、9500~20000%、15000~25000%、20000~30000%、25000~35000%、30000~40000%、35000~45000%、40000~50000%、45000~55000%、50000~60000%、55000~65000%、60000~70000%、65000~75000%、70000~80000%、75000~85000%、80000~90000%、85000~95000%、または90000~100000%減少させることができる。
【0192】
いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物はADOレベルを、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%だけ減少させることができる。いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物はADOレベルを、10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、900~1000%、950~2000%、1500~2500%、2000~3000%、2500~3500%、3000~4000%、3500~4500%、4000~5000%、4500~5500%、5000~6000%、5500~6500%、6000~7000%、6500~7500%、7000~8000%、7500~8500%、8000~9000%、8500~9500%、9000~10000%、9500~20000%、15000~25000%、20000~30000%、25000~35000%、30000~40000%、35000~45000%、40000~50000%、45000~55000%、50000~60000%、55000~65000%、60000~70000%、65000~75000%、70000~80000%、75000~85000%、80000~90000%、85000~95000%、または90000~100000%減少させることができる。
【0193】
いくつかの場合において、MTAまたはADOレベルの低減は、哺乳動物の血液循環においてインビボで、組織培養液または他の生体媒質におけるMTAまたはADOの低減が望まれる場合にはインビトロで、および生体液、細胞または組織が体外で操作され、続いて患者哺乳動物の体内に戻される場合にはエクスビボの手順で行うことができる。いくつかの場合において、血液循環、培地、生体液、または細胞からのMTAまたはADOの低減は、処理される材料にアクセス可能なMTAまたはADOの量を低減するために行うことができ、それゆえ、接触される材料における環境MTAまたはADOを分解するようにMTAまたはADO分解条件の下でMTAまたはADO分解量のMTAPポリペプチドと、枯渇させたい材料を接触させることを含む。
【0194】
いくつかの例において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物のMTAまたはADO分解効率は、用途に応じて大きく異なることができ; 材料中に存在するMTAおよび/またはADOの量、望ましい枯渇速度、ならびに投与材料への曝露に対する材料の耐性に依存することができる。いくつかの場合において、材料中のMTAまたはADOレベル、それゆえ材料からのMTAまたはADO枯渇の速度は、当技術分野において周知の種々の化学的および生化学的方法によって容易にモニタリングすることができる。いくつかの例において、MTA分解量またはADO分解量は、本明細書においてさらに記述され、処理される材料1ミリリットル (mL)当たり0.001~100単位(U)のMTase、好ましくは約0.01~10 U、より好ましくは約0.1~5 U MTaseの範囲であることができる。
【0195】
いくつかの場合において、MTAまたはADO分解のための条件は、MTAPポリペプチドの生物学的活性に適合する緩衝液および温度条件を含むことができ、酵素に適合する適度な温度、塩、およびpH条件、例えば、生理学的条件を含むことができる。例示的な条件には、生理学的条件が含まれるが、約4~40℃、約0.05~0.2 M NaClに相当するイオン強度、および約5~9のpHを含めることができる。
【0196】
いくつかの場合において、PEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または本明細書のおよびそれらの薬学的組成物は、単位用量の注射によるように、従来通り静脈内に投与することができる。
【0197】
いくつかの場合において、投与される量は、処置される対象、酵素を利用する対象の身体の能力、および望まれる治療効果の程度に依存する。いくつかの例において、投与されるために必要な酵素の正確な量は、実践者の判断に依存することができ、各個体に特有である。いくつかの場合において、全身適用に適した投与量範囲は、本明細書において開示されており、投与経路に依存することができる。いくつかの例において、初期投与および追加接種に適したレジームも企図することができ、初期投与に続いてその後の注射または他の投与により1時間またはそれ以上の時間間隔で繰り返し投薬することによって典型化することができる。いくつかの例において、投与は本明細書において記述されており、継続的に高いMTAPポリペプチド血清レベルおよび組織レベル、ならびに逆に低いMTAまたはADO血清レベルおよび組織レベルを維持することが特に好ましい。いくつかの場合において、血中濃度をインビボ療法に指定された範囲に維持するのに十分な持続性の静脈内注入を企図することができる。
【0198】
いくつかの場合において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は、投与される材料に基づいて調整することができる。いくつかの例において、有効量のPEG化MTAPポリペプチド、PEG化MTAPポリペプチドをコードする核酸、または薬学的組成物は、本明細書において記述され、その求められている治療上の望ましい結果に基づいて異なることができる。
【0199】
いくつかの場合において、治療的有効量のMTAPポリペプチドは、患者の血液循環におけるMTAまたはADOの低減を含む所望の効果を達成するために計算された所定の量を含むことができる。したがって、MTAPポリペプチドの投与のための投与量範囲は、所望の効果をもたらすのに十分な大きさのものである。投与量は、過粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全などのような、有害な副作用を引き起こすほど大きくはないはずである。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、性別、および疾患の程度によって異なり、当業者によって決定されることができる。投与量は、何らかの合併症が発生した場合、個々の医師によって調整されることができる。
【0200】
他の場合において、治療的有効量のMTAPポリペプチドは、生理学的に許容される組成物において投与される場合に1 mL当たり約0.001~約100単位(U)、好ましくは1 mL当たり約0.1 U超、より好ましくは1 U超のMTaseの血管内(血漿)または局所濃度を達成するのに十分であるような量でありうる。典型的な投与量は、体重に基づいて投与することができ、約5~1000 U/キログラム(kg)/日、好ましくは約5~100 U/kg/日、より好ましくは約10~50 U/kg/日、およびより好ましくは約20~40 U/kg/日の範囲内である。
【0201】
いくつかの態様において、用量はまた、約1×101マイクログラム/kg/体重、約2×101マイクログラム/kg/体重、約3×101マイクログラム/kg/体重、約4×101マイクログラム/kg/体重、約5×101マイクログラム/kg/体重、約6×101マイクログラム/kg/体重、約7×101マイクログラム/kg/体重、約8×101マイクログラム/kg/体重、約9×101マイクログラム/kg/体重、約1×102マイクログラム/kg/体重、約2×102マイクログラム/kg/体重、約3×102マイクログラム/kg/体重、約4×102マイクログラム/kg/体重、約5×102マイクログラム/kg/体重、約6×102マイクログラム/kg/体重、約7×102マイクログラム/kg/体重、約8×102マイクログラム/kg/体重、約9×102マイクログラム/kg/体重、約1×103マイクログラム/kg/体重、約2×103マイクログラム/kg/体重、約3×103マイクログラム/kg/体重、約4×103マイクログラム/kg/体重、約5×103マイクログラム/kg/体重、約6×103マイクログラム/kg/体重、約7×103マイクログラム/kg/体重、約8×103マイクログラム/kg/体重、約9×103マイクログラム/kg/体重、約1×104マイクログラム/kg/体重、約2×104マイクログラム/kg/体重、約3×104マイクログラム/kg/体重、約4×104マイクログラム/kg/体重、約5×104マイクログラム/kg/体重、約6×104マイクログラム/kg/体重、約7×104マイクログラム/kg/体重、約8×104マイクログラム/kg/体重、約9×104マイクログラム/kg/体重、約1×105マイクログラム/kg/体重、約2×105マイクログラム/kg/体重、約3×105マイクログラム/kg/体重、約4×105マイクログラム/kg/体重、約5×105マイクログラム/kg/体重、約6×105マイクログラム/kg/体重、約7×105マイクログラム/kg/体重、約8×105マイクログラム/kg/体重、約9×105マイクログラム/kg/体重、約1×106マイクログラム/kg/体重、約2×106マイクログラム/kg/体重、約3×106マイクログラム/kg/体重、約4×106マイクログラム/kg/体重、約5×106マイクログラム/kg/体重、約6×106マイクログラム/kg/体重、約7×106マイクログラム/kg/体重、約8×106マイクログラム/kg/体重、約9×106マイクログラム/kg/体重、約1×107マイクログラム/kg/体重、約2×107マイクログラム/kg/体重、約3×107マイクログラム/kg/体重、約4×107マイクログラム/kg/体重、約5×107マイクログラム/kg/体重、約6×107マイクログラム/kg/体重、約7×107マイクログラム/kg/体重、約8×107マイクログラム/kg/体重、約9×107マイクログラム/kg/体重、約1×108マイクログラム/kg/体重、約2×108マイクログラム/kg/体重、約3×108マイクログラム/kg/体重、約4×108マイクログラム/kg/体重、約5×108マイクログラム/kg/体重、約6×108マイクログラム/kg/体重、約7×108マイクログラム/kg/体重、約8×108マイクログラム/kg/体重、約9×108マイクログラム/kg/体重、約1×109マイクログラム/kg/体重、約2×109マイクログラム/kg/体重、約3×109マイクログラム/kg/体重、約4×109マイクログラム/kg/体重、約5×109マイクログラム/kg/体重、約6×109マイクログラム/kg/体重、約7×109マイクログラム/kg/体重、約8×109マイクログラム/kg/体重、約9×109マイクログラム/kg/体重、約1×1010マイクログラム/kg/体重、約2×1010マイクログラム/kg/体重、約3×1010マイクログラム/kg/体重、約4×1010マイクログラム/kg/体重、約5×1010マイクログラム/kg/体重、約6×1010マイクログラム/kg/体重、約7×1010マイクログラム/kg/体重、約8×1010マイクログラム/kg/体重、または約9×1010マイクログラム/kg/体重を含みうる。いくつかの態様において、用量はまた、0.5×101~2×101マイクログラム/kg/体重、1.5×101~3×101マイクログラム/kg/体重、2.5×101~4×101マイクログラム/kg/体重、3.5×101~5×101マイクログラム/kg/体重、4.5×101~6×101マイクログラム/kg/体重、5.5×101~7×101マイクログラム/kg/体重、6.5×101~8×101マイクログラム/kg/体重、7.5×101~9×101マイクログラム/kg/体重、8.5×101~1×101マイクログラム/kg/体重、0.5×102~2×102マイクログラム/kg/体重、1.5×102~3×102マイクログラム/kg/体重、2.5×102~4×102マイクログラム/kg/体重、3.5×102~5×102マイクログラム/kg/体重、4.5×102~6×102マイクログラム/kg/体重、5.5×102~7×102マイクログラム/kg/体重、6.5×102~8×102マイクログラム/kg/体重、7.5×102~9×102マイクログラム/kg/体重、8.5×102~1×103マイクログラム/kg/体重、0.5×103~2×103マイクログラム/kg/体重、1.5×103~3×103マイクログラム/kg/体重、2.5×103~4×103マイクログラム/kg/体重、3.5×103~5×103マイクログラム/kg/体重、4.5×103~6×103マイクログラム/kg/体重、5.5×103~7×103マイクログラム/kg/体重、6.5×103~8×103マイクログラム/kg/体重、7.5×103~9×103マイクログラム/kg/体重、8.5×103~1×104マイクログラム/kg/体重、0.5×104~2×104マイクログラム/kg/体重、1.5×104~3×104マイクログラム/kg/体重、2.5×104~4×104マイクログラム/kg/体重、3.5×104~5×104マイクログラム/kg/体重、4.5×104~6×104マイクログラム/kg/体重、5.5×104~7×104マイクログラム/kg/体重、6.5×104~8×104マイクログラム/kg/体重、7.5×104~9×104マイクログラム/kg/体重、8.5×104~1×105マイクログラム/kg/体重、0.5×105~2×105マイクログラム/kg/体重、1.5×105~3×105マイクログラム/kg/体重、2.5×105~4×105マイクログラム/kg/体重、3.5×105~5×105マイクログラム/kg/体重、4.5×105~6×105マイクログラム/kg/体重、5.5×105~7×105マイクログラム/kg/体重、6.5×105~8×105マイクログラム/kg/体重、7.5×105~9×105マイクログラム/kg/体重、8.5×105~1×106マイクログラム/kg/体重、0.5×106~2×106マイクログラム/kg/体重、1.5×106~3×106マイクログラム/kg/体重、2.5×106~4×106マイクログラム/kg/体重、3.5×106~5×106マイクログラム/kg/体重、4.5×106~6×106マイクログラム/kg/体重、5.5×106~7×106マイクログラム/kg/体重、6.5×106~8×106マイクログラム/kg/体重、7.5×106~9×106マイクログラム/kg/体重、8.5×106~1×107マイクログラム/kg/体重、0.5×107~2×107マイクログラム/kg/体重、1.5×107~3×107マイクログラム/kg/体重、2.5×107~4×107マイクログラム/kg/体重、3.5×107~5×107マイクログラム/kg/体重、4.5×107~6×107マイクログラム/kg/体重、5.5×107~7×107マイクログラム/kg/体重、6.5×107~8×107マイクログラム/kg/体重、7.5×107~9×107マイクログラム/kg/体重、8.5×107~1×108マイクログラム/kg/体重、0.5×108~2×108マイクログラム/kg/体重、1.5×108~3×108マイクログラム/kg/体重、2.5×108~4×108マイクログラム/kg/体重、3.5×108~5×108マイクログラム/kg/体重、4.5×108~6×108マイクログラム/kg/体重、5.5×108~7×108マイクログラム/kg/体重、6.5×108~8×108マイクログラム/kg/体重、7.5×108~9×108マイクログラム/kg/体重、8.5×108~1×109マイクログラム/kg/体重、0.5×109~2×109マイクログラム/kg/体重、1.5×109~3×109マイクログラム/kg/体重、2.5×109~4×109マイクログラム/kg/体重、3.5×109~5×109マイクログラム/kg/体重、4.5×109~6×109マイクログラム/kg/体重、5.5×109~7×109マイクログラム/kg/体重、6.5×109~8×109マイクログラム/kg/体重、7.5×109~9×109マイクログラム/kg/体重、8.5×109~1×1010マイクログラム/kg/体重、0.5×1010~2×1010マイクログラム/kg/体重、1.5×1010~3×1010マイクログラム/kg/体重、2.5×1010~4×1010マイクログラム/kg/体重、3.5×1010~5×1010マイクログラム/kg/体重、4.5×1010~6×1010マイクログラム/kg/体重、5.5×1010~7×1010マイクログラム/kg/体重、6.5×1010~8×1010マイクログラム/kg/体重、7.5×1010~9×1010マイクログラム/kg/体重、または8.5×1010~1×1010マイクログラム/kg/体重を含みうる。
【0202】
動物患者に投与される組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、処置される疾患のタイプ、以前のまたは同時の治療的介入、患者の特発性疾患、および投与経路などの、物理的および生理学的要因によって決定することができる。投与量および投与経路に応じて、好ましい投与量および/または有効量の投与の回数は、対象の応答によって変化しうる。投与の責任を負う実践者が、いずれにしても、組成物中の有効成分の濃度および個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0203】
ある種の態様において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含みうる。他の態様において、活性化合物は、例えば、単位重量の約2%~約75%、または約25%~約60%、およびその中で導出可能な任意の範囲を含みうる。当然のことながら、各治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の所与の単位用量において適当な投与量が得られるように調製されうる。溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の保存可能期間、および他の薬理学的考察などの要因が、そのような薬学的製剤を調製する当業者により企図され、したがって種々の投与量および処置レジメンが所望でありうる。
【0204】
他の非限定的な例において、用量はまた、1投与当たり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重~約1000ミリグラム/kg/体重またはそれ以上、およびその中で導出可能な任意の範囲を含みうる。本明細書において記載される数値から導出可能な範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づき、約5ミリグラム/kg/体重~約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を投与することができる。
【0205】
タンパク質精製
タンパク質精製技法は、いくつかの例において、1つのレベルで、細胞、組織、または器官のホモジナイゼーションならびにポリペプチド画分および非ポリペプチド画分への粗分画を伴う技法を含むことができる。いくつかの例において、関心対象のタンパク質またはポリペプチドは、特に指定されない限り、部分的もしくは完全な精製(または均質性への精製)を達成するために、クロマトグラフィー技法および電気泳動技法を用いてさらに精製されうる。いくつかの場合において、純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、イムノアフィニティクロマトグラフィーであり、等電点電気泳動も用いることができる。いくつかの場合において、ペプチドを精製する方法は、高速液体クロマトグラフィー(FPLC)、さらには高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)であることができる。
【0206】
いくつかの場合において、精製タンパク質またはペプチドは、他の成分から単離可能な組成物を含むことができ、ここでタンパク質またはペプチドは、その天然に得られる状態と比べて任意の程度まで精製される。他の場合において、単離または精製されたタンパク質またはペプチドは、それが天然に存在しうる環境から解放されたタンパク質またはペプチドを含むこともできる。いくつかの場合において、精製タンパク質は、さまざまな他の成分を除去するために分画に供されたタンパク質またはペプチド組成物を含むことができ、この組成物は、発現されたその生物学的活性を実質的に保持している。他の場合において、精製されるタンパク質は、組成物の主成分を形成するタンパク質またはペプチドを含むことができる。いくつかの場合において、組成物の主成分は、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を含むことができる。
【0207】
タンパク質精製は、いくつかの場合において、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などによる沈殿、または熱変性、次いで遠心分離; イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー段階; 等電点電気泳動; ゲル電気泳動; ならびにこれらのおよびその他の技法の組み合わせを含むことができる。当技術分野において一般に公知であるように、さまざまな精製段階を実施する順序は変えられてもよいものと、またはある種の段階は省かれてもよく、それでもなお、実質的に精製されたタンパク質もしくはペプチドの調製のために適した方法をもたらすものと考えられる。
【0208】
タンパク質またはペプチドの精製度を定量化するためのさまざまな方法が、本開示に照らして当業者に公知である。これらの方法は、いくつかの場合において、活性画分の特異活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって画分内のポリペプチドの量を評価することを含むことができる。いくつかの場合において、方法は、画分の純度を評価することを含むことができ、画分の特異活性を計算すること、それを最初の抽出物の特異活性と比較すること、したがって「倍精製数」によって評価される、その中での純度の程度を計算することである。活性の量を表すために用いられる実際の単位は、いくつかの場合において、精製を追跡するために選択された特定のアッセイ技法、および発現したタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存することができる。
【0209】
いくつかの場合において、タンパク質またはペプチドは、必ずしも最も精製された状態で提供されるとは限らない可能性がある。いくつかの場合において、最大精製に満たない生成物が、ある種の態様においては有用性を有することがある。いくつかの場合において、より少ない精製段階を組み合わせて使用することにより、または同じ一般的な精製スキームの異なる形態を利用することにより、部分精製が達成されてもよい。例えば、HPLC装置を利用して実施される陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技法よりも高い「倍」精製を一般にもたらすことが理解される。より低い相対精製度を示す方法は、タンパク質産物の全回収において、または発現されたタンパク質の活性の維持において有利である場合がある。
【0210】
ある種の態様において、タンパク質またはペプチド、例えばMTAPまたはPEG化MTAPポリペプチドは、単離または精製されうる。例えば、Hisタグまたはアフィニティエピトープが、精製を容易にするために、そのようなMTAPまたはPEG化MTAPポリペプチドに含まれうる。アフィニティクロマトグラフィーは、単離される基質と、その基質が特異的に結合可能な分子との特異的親和性に依存するクロマトグラフ手順である。これは受容体-リガンドタイプの相互作用である。カラム材料は、結合パートナーの1つを、不溶性マトリックスに共有結合的にカップリングさせることにより合成される。次に、カラム材料は溶液から物質を特異的に吸着することができる。条件を、結合が生じないものに変更すること(例えば、pH、イオン強度、温度などの変更)により、溶出が生じる。マトリックスは、分子を著しい程度まで吸着することはなく、かつ広範囲の化学安定性、物理安定性、および熱安定性を有する物質でなければならない。リガンドは、結合特性に影響を与えないような方法でカップリングされなければならない。リガンドは、比較的強固な結合もまたもたらさなければならない。サンプルまたはリガンドを破壊することなく、物質を溶出可能でなければならない。
【0211】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子が、サイズ、またはより専門的な用語では、流体力学体積に応じて分離されるクロマトグラフ法である。この方法は通常、大型分子または巨大分子複合体、例えばタンパク質および工業用重合体に適用される。通常、水溶液を使用してサンプルをカラム内で輸送する場合、この技法は、有機溶媒を移動相として使用する場合に用いられるゲル透過クロマトグラフィーという名称に対して、ゲルろ過クロマトグラフィーとして知られている。
【0212】
SECの基本原理は、異なるサイズの粒子が、異なる速度で固定相を通って溶出(ろ過)するというものである。これにより、サイズに基づいた粒子溶液の分離がもたらされる。全ての粒子が同時、またはほぼ同時に装入された場合、同じサイズの粒子はともに溶出するはずである。各サイズ排除カラムは、分離可能な、さまざまな分子量を有する。排除限界は、この範囲の上限における分子量を定義し、これは、分子が大きすぎて固定相にトラップできない点である。透過限界は、分離範囲の下端における分子量を定義し、これは、十分小さいサイズの分子が、固定相の孔を完全に貫通することができる点であり、この分子量を下回る分子全ては、単一のバンドとして溶出するほど小さい。
【0213】
高性能液体クロマトグラフィー(または、高圧液体クロマトグラフィー、HPLC)は、化合物を分離、同定、および定量化するために、生化学および分析化学にて頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの形態である。HPLCは、クロマトグラフ充填材料を保持するカラム(固定相)、カラムを通して移動相(複数可)を移動させるポンプ、および、分子の保持時間を示す検出器を利用する。保持時間は、固定相と、分析する分子と、使用する溶媒(複数可)との相互作用に応じて変化する。
【0214】
いくつかの場合において、本明細書におよびそれに記述されていない当業者に周知の任意のタンパク質精製技法も利用することができる。
【0215】
薬学的組成物
いくつかの例において、薬学的組成物は、免疫療法に対する感受性を増加させることができる。いくつかの例において、薬学的組成物によって増加する免疫療法に対する感受性は、対象に対する免疫療法の有効量、用量、または治療的もしくは生物学的効果を含むことができる。いくつかの例において、薬学的組成物によって増加する免疫療法に対する感受性は、対象に対する免疫療法の有効量、用量、または治療的もしくは生物学的効果を、薬学的組成物を受けていない別の対象に対する免疫療法のそれと対比して測定することを含むことができる。いくつかの例において、薬学的組成物によって増加する免疫療法に対する感受性は、対象に対する免疫療法の有効量、用量、または治療的もしくは生物学的効果を、薬学的組成物を受ける前の対象に対する免疫療法のそれと対比して測定することを含むことができる。いくつかの場合において、薬学的組成物は免疫療法に対する感受性を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%だけ増加させることができる。いくつかの場合において、薬学的組成物は免疫療法に対する感受性を、10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、80~100%、90~150%、100~200%、150~250%、200~300%、250~350%、300~400%、350~450%、400~500%、450~550%、500~600%、550~650%、600~700%、650~750%、700~800%、750~850%、800~900%、850~950%、900~1000%、950~2000%、1500~2500%、2000~3000%、2500~3500%、3000~4000%、3500~4500%、4000~5000%、4500~5500%、5000~6000%、5500~6500%、6000~7000%、6500~7500%、7000~8000%、7500~8500%、8000~9000%、8500~9500%、9000~10000%、9500~20000%、15000~25000%、20000~30000%、25000~35000%、30000~40000%、35000~45000%、40000~50000%、45000~55000%、50000~60000%、55000~65000%、60000~70000%、65000~75000%、70000~80000%、75000~85000%、80000~90000%、85000~95000%、または90000~100000%増加させることができる。
【0216】
MTAPポリペプチドは、全身的または局所的に投与されうることが企図される。それらは、本明細書におよびそれに記述される任意の経路を用いて投与することができる。
【0217】
本発明は、治療用調製物の特定の性質によって限定されることが意図されるものではない。例えば、そのような組成物は、生理学的に許容される液体、ゲル、または固体担体、希釈剤、および賦形剤とともに製剤として提供することができる。これらの治療用調製物は他の治療剤と同様の方法で、獣医学的使用で、例えば飼育動物で、およびヒトにおける臨床使用で哺乳動物に投与することができる。一般に、治療効力に必要な投与量は、使用のタイプおよび投与の形式、ならびに個々の対象の特定化された要求に応じて異なるであろう。
【0218】
そのような組成物は、典型的には、注射剤として、液体溶液または懸濁液として調製される。適当な希釈剤および賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望により、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、安定化剤、またはpH緩衝剤などの補助物質を少量含有してもよい。
【0219】
一般に、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散された1つまたは複数のMTaseまたはさらなる薬剤の有効量を含みうる。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、必要に応じて、例えば、ヒトなどの、動物に投与された場合に有害反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物をいう。本明細書において開示される方法によって単離された少なくとも1つのMTase、またはさらなる有効成分を含有する薬学的組成物の調製は、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990によって例示されるように、本開示に照らして当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、FDAの生物製剤部の基準(FDA Office of Biological Standards)に求められるように無菌性、発熱性、一般安全性、および純度の基準を満たさなければならないことが理解されよう。
【0220】
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、当業者には公知であるように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存料(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存料、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、そのような類似の材料およびそれらの組み合わせを含む(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990を参照のこと)。任意の従来の担体が有効成分と不適合であるような場合を除き、薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0221】
本発明のある種の態様は、固体、液体、またはエアロゾルの形で投与されるかどうかに応じて、注射などの投与経路のために滅菌する必要があるかどうかに応じて異なるタイプの担体を含んでもよい。組成物は、静脈内に、皮内に、経皮的に、髄腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、粘膜に、経口的に、局部に、局所に投与されてもよく、吸入(例えば、エアロゾル吸入)により、注射により、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルによって、洗浄によって、脂質組成物(例えば、リポソーム)の中に入れて、または当業者に公知であるような他の方法もしくは前述の任意の組み合わせ(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990を参照のこと)によって投与されてもよい。
【0222】
修飾されたポリペプチドは、遊離塩基、中性もしくは塩の形態で組成物中に製剤化されうる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質様組成物の遊離アミノ基で形成される塩、あるいは例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などの有機酸で形成される塩が含まれる。遊離カルボキシル基で形成された塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基; またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基に由来することもできる。製剤化時に、溶液が、投与製剤と適合性のある方法で、かつ治療的に有効であるような量で投与されよう。製剤は、注射可能な溶液などの非経口投与用に製剤化されたもの、もしくは肺への送達用のエアロゾル、もしくは薬物放出カプセルなどのような食事性投与用に製剤化されたものなどの、種々の剤形で容易に投与される。
【0223】
さらに本発明のある種の局面によって、投与に適した組成物は、不活性希釈剤ありもしくはなしで薬学的に許容される担体中で提供されうる。担体は同化可能でなければならず、液体、半固体、すなわちペースト、もしくは固体担体を含む。いかなる慣用の媒体、剤、希釈剤、もしくは担体もレシピエントもしくはその中に含まれる組成物の治療的有効性に対して有害である場合を除き、本方法の実践で用いるための投与可能な組成物におけるその使用が適切である。担体もしくは希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤など、もしくはそれらの組み合わせが挙げられる。組成物は、1つもしくは複数の成分の酸化を遅らせるためのさまざまな抗酸化剤を含んでもよい。さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールもしくはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤のような保存料によってもたらすことができる。
【0224】
本発明のある種の局面によれば、組成物は、任意の好都合かつ実用的な方法で、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混合、カプセル化、吸収などによって担体と組み合わされる。そのような手順は当業者にとって日常的である。
【0225】
本発明の特定の態様において、組成物は、半固体もしくは固体の担体と完全に組み合わされるかもしくは混合される。混合は、粉砕などの任意の好都合な方法で実行することができる。治療活性の喪失、すなわち胃内での変性から組成物を保護するために、安定化剤を混合プロセスに加えることもできる。組成物で用いるための安定剤の例としては、緩衝液、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどのような炭水化物が挙げられる。
【0226】
さらなる態様において、本発明は、MTAPポリペプチド、1つもしくは複数の脂質、および水性溶媒を含む薬学的脂質媒体組成物の使用に関しうる。本明細書において用いられる場合、「脂質」という用語は、特徴的に水に不溶性で、有機溶媒によって抽出可能である任意の広範囲の物質を含めるように定義される。この広いクラスの化合物は当業者に周知であり、「脂質」という用語が本明細書において用いられる場合、これはいかなる特定の構造にも限定されない。例としては、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含有する化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在していてもよく、もしくは合成であってもよい(すなわち、ヒトによってデザインもしくは作製されていてもよい)。しかしながら、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル・エステル結合脂肪酸を有する脂質、重合性脂質、およびそれらの組み合わせを含む。当然ながら、当業者により脂質として理解される、本明細書において具体的に記述されるもの以外の化合物も、組成物および方法に包含される。
【0227】
当業者は、脂質媒体中に組成物を分散させるために利用できる一連の技法に精通しているであろう。例えば、MTaseまたはその融合タンパク質は、脂質を含有する溶液に分散されても、脂質で溶解されても、脂質で乳化されても、脂質と混合されても、脂質と組み合わされても、脂質に共有結合されても、脂質の懸濁液として含有されても、ミセルもしくはリポソームとともに含まれもしくは複合体化されても、または当業者に知られている任意の手段によって脂質もしくは脂質構造にそれ以外の方法で結び付けられてもよい。分散液はリポソームの形成を起こしても、起こさなくてもよい。
【0228】
併用処置
ある種の態様において、本態様の組成物および方法は、第2のまたは追加の療法と組み合わせたMTAPポリペプチドの投与を伴う。併用療法を含む、方法および組成物は、治療効果もしくは保護効果を増強し、および/または別の療法の治療効果を増大する。治療的および予防的方法および組成物は、所望の効果を達成するのに有効な組み合わせた量で提供することができる。このプロセスは、MTAPポリペプチドと第2の療法の両方を投与することを伴いうる。組織、器官、または細胞を、1つもしくは複数の薬剤(すなわち、MTAPポリペプチドもしくは第2の薬剤)を含む1つもしくは複数の組成物または薬理学的製剤に曝露することができ、または組織、器官、および/もしくは細胞を、1つの組成物が1) MTAPポリペプチド、2) 第2の薬剤、もしくは3) MTAPポリペプチドと第2の薬剤の両方を提供する、2つもしくはそれ以上の異なる組成物もしくは製剤と接触させることにより曝露することができる。また、そのような併用療法は、外科的療法と組み合わせて使用することができると考えられる。
【0229】
MTAPポリペプチドは、第2の処置に対して、その前、その間、その後に、またはさまざまな組み合わせで投与されうる。そうした投与は、同時から数分、数日、数週間までの範囲の間隔でありうる。MTAPポリペプチドが第2の薬剤とは別に患者に提供される態様では、一般に、2つの処置が依然として患者に有利な複合効果を発揮することができるように、各送達時間の間に著しい時間が経過しないことを確実にするであろう。そのような例では、MTAPポリペプチドと第2療法を互いに約12~24または72時間以内、特に互いに約6~12時間以内に、患者に提供することが考えられる。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週)が経過する場合、処置期間を大幅に延長することが望ましい場合もある。
【0230】
ある種の態様において、処置過程は1~90日またはそれ以上続く(このような範囲は、その間の日数を含む)。MTAPポリペプチドは、1日目から90日目までの任意の日に(このような範囲は、その間の日数を含む)またはそれらの任意の組み合わせで与えられてもよく、別の処置は、1日目から90日目までの任意の日に(このような範囲は、その間の日数を含む)またはそれらの任意の組み合わせで与えられることが企図される。1日(24時間)以内に、患者は、処置の1回または複数回の投与を与えられうる。さらに、処置過程の後に、処置が投与されない期間があることが企図される。この期間は、患者の予後、体力、健康などのような、患者の状態に応じて、1~7日、および/もしくは1~5週間、および/もしくは1~12ヶ月またはそれ以上(このような範囲は、その間の日数を含む)続きうる。必要に応じて処置サイクルが繰り返されることが予想される。
【0231】
さまざまな組み合わせが利用されうる。以下の例では、MTAPポリペプチドが「A」であり、第2の療法が「B」である:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0232】
本態様の任意の化合物または療法の患者への投与は、薬剤の、もしあれば、毒性を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従うであろう。したがって、いくつかの態様では、併用療法に起因する毒性をモニタリングする段階が存在する。
【0233】
化学療法
本態様に従って、多種多様な化学療法剤を用いることができる。用語「化学療法」は、がんを処置するための薬物の使用をいう。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を意味するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内でのそれらの活性の様式、例えばそれらが細胞周期に影響を与えるかどうか、またどの段階で影響を与えるか、によって分類される。あるいは、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体および有糸分裂の異常を誘発する能力に基づいて、特徴付けることができる。
【0234】
化学療法剤の例としては、以下が挙げられる: アルキル化剤、例えば、チオテパ、シクロホスファミド; アルキルスルホネート類、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン; アジリジン類、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、ウレドーパ; エチレンイミン類およびメチルメラミン類、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロールメラミン; アセトゲニン類(特に、ブラタシンおよびブラタシノン); カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む); ブリオスタチン; カリスタチン; CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む); クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8); ドラスタチン; デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む); エリュテロビン; パンクラチスタチン; サルコディクチン; スポンジスタチン; ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード; ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン; 抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマlIおよびカリケアマイシンオメガI1); ダイネミシン、例えばダイネミシンA; ビスホスホネート類、例えばクロドロネート; エスペラミシン; ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン; 代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU); 葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート; プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン; ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン; アンドロゲン類、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン; 抗副腎薬、例えば、ミトタン、トリロスタン; 葉酸補充剤、例えばフォリン酸; アセグラトン; アルドホスファミド配糖体; アミノレブリン酸; エニルウラシル; アムサクリン; ベストラブシル; ビサントレン; エダトレキサート ; デホファミン; デメコルシン; ジアジクオン; エルホルミチン; 酢酸エリプチニウムア; エポチロン; エトグルシド; 硝酸ガリウム; ヒドロキシウレア; レンチナン; ロニダミン; メイタンシノイド類、例えば、メイタンシン、アンサマイトシン類; ミトグアゾン; ミトキサントロン; モピダンモール(mopidanmol); ニトラエリン(nitraerine); ペントスタチン; フェナメット; ピラルビシン; ロソキサントロン; ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド; プロカルバジン; PSK多糖複合体; ラゾキサン; リゾキシン; シゾフィラン; スピロゲルマニウム; テヌアゾン酸; トリアジクオン; 2,2',2”-トリクロロトリエチルアミン; トリコテセン類(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン); ウレタン; ビンデシン; ダカルバジン; マンノムスチン; ミトブロニトール; ミトラクトール; ピポブロマン; ガシトシン; アラビノシド(「Ara-C」); シクロホスファミド; タキソイド類、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン; 6-チオグアニン; メルカプトプリン; 白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン; ビンブラスチン; 白金; エトポシド(VP-16); イホスファミド; ミトキサントロン; ビンクリスチン; ビノレルビン; ノバントロン; テニポシド; エダトレキサート; ダウノマイシン; アミノプテリン; ゼローダ; イバンドロネート; イリノテカン(例えばCPT-11); トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000; ジフルオロメチルオルニチン(DMFO); レチノイド類、例えばレチノイン酸; カペシタビン; カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス-白金、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体。
【0235】
放射線療法
DNA損傷を引き起こしかつ広く使用されてきた他の要因には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の定方向送達として一般に知られているものが含まれる。DNA損傷因子の他の形態も考えられ、例えば、マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および同第4,870,287号)、およびUV照射などである。これらの要因の全ては、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、および染色体のアセンブリと維持に広範囲の損傷を与える可能性がきわめて高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)にわたる50~200レントゲンの1日線量から2000~6000レントゲンの単回線量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく異なり、同位体の半減期、放出される放射線の強度と種類、および腫瘍性細胞による取り込みに依存する。
【0236】
免疫療法
当業者であれば、免疫療法を前記態様の方法と組み合わせてまたは併せて使用できることを理解するであろう。がん処置との関連において、免疫療法は一般に、がん細胞を標的として破壊するための免疫エフェクタ細胞と分子の使用に依存している。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))がそのような例である。免疫エフェクタは、例えば、腫瘍細胞の表面上の何らかのマーカーに特異的な抗体でありうる。抗体は、単独で治療のエフェクタとしての役割を果たすか、または他の細胞を動員して実際に細胞殺傷に影響を及ぼすことができる。また、抗体を薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートして、ターゲティング剤として使用することもできる。あるいは、該エフェクタは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球でありうる。さまざまなエフェクタ細胞には細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0237】
免疫療法の1つの局面において、腫瘍細胞は、ターゲティングに適した、すなわち大部分の他の細胞には存在しない、何らかのマーカーを保有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、それらのいずれも本態様との関係においてターゲティングに適当でありうる。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス(Sialyl Lewis)抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が挙げられる。免疫療法の別の局面は、抗がん効果と免疫刺激効果とを組み合わせることである。免疫刺激分子もまた存在しており、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの増殖因子が存在する。
【0238】
現在研究中であるか、または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号; Hui and Hashimoto, 1998; Christodoulides et al., 1998); サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、γ、IL-1、GM-CSF、およびTNF (Bukowski et al., 1998; Davidson et al., 1998; Hellstrand et al., 1998); 遺伝子治療、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53 (Qin et al., 1998; Austin-Ward and Villaseca, 1998; 米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号); ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185 (Hollander, 2012; Hanibuchi et al., 1998; 米国特許第5,824,311号)である。1つまたは複数の抗がん療法が本明細書において記述される抗体療法とともに利用されうることが企図される。
【0239】
いくつかの態様において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤でありうる。免疫チェックポイントはシグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、シグナルを下げるかのいずれかである。免疫チェックポイントはシグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、シグナルを下げるかのいずれかである。免疫チェックポイント遮断により標的とされうる免疫チェックポイントタンパク質は、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3 (CD276としても知られる)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CCL5、CD27、CD38、CD8A、CMKLR1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4、CD152としても知られる)、CXCL9、CXCR5、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)、HLA-DRB1、ICOS (CD278としても知られる)、HLA-DQA1、HLA-E、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1 (IDO1)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3 (CD223としても知られる、LAG-3)、Merチロシンキナーゼ(MerTK)、NKG7、OX40 (CD134としても知られる)、プログラム死1 (PD-1)、プログラム死-リガンド1 (CD274としても知られる、PD-L1)、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリンドメイン・ムチンドメイン3 (TIM-3)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(C10orf54としても知られる、VISTA)、ならびに4-1BB (CD137)を含む。特に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1軸および/またはCTLA-4をターゲティングする。
【0240】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子などの薬物、組み換え型のリガンドもしくは受容体、またはヒト抗体などの抗体でありうる(例えば、国際特許公開WO2015/016718; Pardoll, Nat Rev Cancer, 12(4): 252-264, 2012; 両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。免疫チェックポイントタンパク質またはその類似体の公知の阻害剤を使用することができ、特にキメラ化、ヒト化またはヒト型抗体が使用される。当業者は理解しているように、本開示で言及される特定の抗体については、代替名および/または同等名が使用されている可能性がある。そのような代替名および/または同等名は、本開示の文脈においては交換可能である。例えば、ランブロリズマブがMK-3475およびペムブロリズマブの代替名および同等名でも知られていることは公知である。
【0241】
いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-1リガンド結合パートナーはPD-L1および/またはPD-L2である。別の態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-L1結合パートナーはPD-1および/またはB7-1である。別の態様において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-L2結合パートナーはPD-1である。該アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドでありうる。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法において使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0294898号、同第2014/022021号、および同第2011/0008369号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0242】
いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびCT-011からなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストはイムノアドヘシン(例えば、定常領域(例:免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様において、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびオプジーボ(OPDIVO(登録商標))の別名でも知られており、WO2006/121168に記述される抗PD-1抗体である。ペムブロリズマブは、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、キイトルーダ(KEYTRUDA(登録商標))、およびSCH-900475の別名でも知られており、WO2009/114335に記述される抗PD-1抗体である。CT-011は、hBATまたはhBAT-1の別名でも知られており、WO2009/101611に記述される抗PD-1抗体である。AMP-224は、別名をB7-DCIgといい、WO2010/027827およびWO2011/066342に記述されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0243】
本明細書に記述の方法で標的とされうる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4はT細胞の表面に存在し、抗原提示細胞の表面上のCD80またはCD86に結合すると「オフ」スイッチとして機能する。CTLA-4は、T細胞共刺激タンパク質CD28に類似しており、両方の分子は、抗原提示細胞上の、それぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれる、CD80およびCD86に結合する。CTLA-4は抑制シグナルをT細胞に伝達し、一方CD28は刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4は制御性T細胞にも見られ、それらの機能にとって重要でありうる。T細胞受容体とCD28を介するT細胞活性化は、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現増加をもたらす。
【0244】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法で使用するのに適した抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれに由来するVHおよび/またはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗CTLA-4抗体を用いることができる。例えば、抗CTLA-4抗体は、米国特許第8,119,129号; PCT公開番号WO 01/14424、WO 98/42752、WO 00/37504 (CP675,206、別名をトレメリムマブという; 以前はチシリムマブ); 米国特許第6,207,156号; Hurwitz et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA, 95(17): 10067-10071; Camacho et al. (2004) J Clin Oncology, 22(145): Abstract No. 2505 (antibody CP-675206); およびMokyr et al. (1998) Cancer Res, 58:5301-5304に開示されており、本明細書において開示される方法において用いることができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4への結合についてこれらの当技術分野において承認されている抗体のいずれかと競合する抗体も用いることができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願番号WO2001/014424、WO2000/037504、および米国特許第8,017,114号に記述されており、これらの全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0245】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX- 101、およびヤーボイ(Yervoy(登録商標))としても知られる)またはその抗原結合断片および変種である(例えば、WO 01/14424参照)。別の態様において、該抗体は、イピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、1つの態様において、該抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、イピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。他の態様において、該抗体は、上述の抗体と結合について競合し、かつ/または上述の抗体と同じCTLA-4のエピトープに結合する。別の態様において、該抗体は、上述の抗体に対して少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブに対して少なくとも約90%、95%、または99%の可変領域同一性)を有する。CTLA-4を調整するための他の分子には、例えば、全てが参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5844905号、同第5885796号、および国際特許出願番号WO1995001994、WO1998042752に記述されるようなCTLA-4リガンドおよび受容体、ならびに参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8329867号に記述されるようなイムノアドヘシンが含まれる。
【0246】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD223としても知られるリンパ球活性化遺伝子3 (LAG-3)である。ヒトLAG-3の完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP-002277を有する。LAG-3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞の表面に見出される。LAG-3は、抗原提示細胞の表面にあるMHCクラスIIに結合すると「オフ」スイッチとして働く。LAG-3を阻害するとエフェクタT細胞と抑制性調節性T細胞が両方とも活性化される。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗LAG-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-LAG-3抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗LAG-3抗体を用いることができる。例示的な抗LAG-3抗体はレラトリマブ(relatlimab) (BMS-986016としても知られる)またはその抗原結合断片および変種(例えば、WO2015/116539を参照されたい)である。他の例示的な抗LAG-3抗体には、TSR-033 (例えば、WO2018/201096を参照されたい)、MK-4280、およびREGN3767が含まれる。MGD013は、WO2017/019846に記述されている抗LAG-3/PD-1二重特異性抗体である。FS118は、WO2017/220569に記述されている抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体である。
【0247】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、C10orf54としても知られるT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)である。ヒトVISTAの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_071436を有する。VISTAは白血球上に見出され、T細胞エフェクタ機能を阻害する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗VISTA3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-VISTA抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗VISTA抗体を用いることができる。例示的な抗VISTA抗体は、JNJ-61610588 (オンバチリマブ(onvatilimab)としても知られる) (例えば、WO2015/097536、WO2016/207717、WO2017/137830、WO2017/175058を参照されたい)である。VISTAはまた、PD-L1とVISTAを両方とも選択的にターゲティングする低分子CA-170によって阻害することもできる(例えば、WO2015/033299、WO2015/033301を参照されたい)。
【0248】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質はインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)である。ヒトIDOの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_002155を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は低分子IDO阻害剤である。例示的な低分子には、BMS-986205、エパカドスタット(INCB24360)、およびナボキシモド(navoximod) (GDC-0919)が含まれる。
【0249】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質はCD38である。ヒトCD38の完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_001766を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CD38抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒトCD38抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗CD38抗体を用いることができる。例示的な抗CD38抗体はダラツムマブ(例えば、米国特許第7,829,673号を参照されたい)である。
【0250】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD278としても知られるICOSである。ヒトICOSの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_036224を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗ICOS抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-ICOS抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗ICOS抗体を用いることができる。例示的な抗ICOS抗体には、JTX-2011(例えば、WO2016/154177、WO2018/187191を参照されたい)およびGSK3359609(例えば、WO2016/059602を参照されたい)が含まれる。
【0251】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)である。ヒトTIGITの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_776160を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIGIT抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒトTIGIT抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗TIGIT抗体を用いることができる。例示的な抗TIGIT抗体はMK-7684(例えば、WO2017/030823、WO2016/028656を参照されたい)である。
【0252】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD134としても知られるOX40である。ヒトOX40の完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_003318を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗OX40抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-OX40抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗OX40抗体を用いることができる。例示的な抗OX40抗体はPF-04518600(例えば、WO2017/130076を参照されたい)である。ATOR-1015は、CTLA4とOX40を標的とする二重特異性抗体である(例えば、WO2017/182672、WO2018/091740、WO2018/202649、WO2018/002339を参照されたい)。
【0253】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、TNFRSF18およびAITRとしても知られるグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)である。ヒトGITRの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_004186を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗GITR抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-GITR抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗GITR抗体を用いることができる。例示的な抗GITR抗体はTRX518(例えば、WO2006/105021を参照されたい)である。
【0254】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、HAVCR2としても知られるT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有-3 (TIM3)である。ヒトTIM3の完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_116171を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIM3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-TIM3抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗TIM3抗体を用いることができる。例示的な抗TIM3抗体には、LY3321367(例えば、WO2018/039020を参照されたい)、MBG453(例えば、WO2015/117002を参照されたい)、およびTSR-022(例えば、WO2018/085469を参照されたい)が含まれる。
【0255】
本明細書において提供される方法において標的とすることができる別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD137、TNFRSF9、およびILAとしても知られる4-1BBである。ヒト4-1BBの完全タンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_001552を有する。いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗4-1BB抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本発明の方法において用いるのに適した抗ヒト-4-1BB抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗4-1BB抗体を用いることができる。例示的な抗4-1BB抗体はPF-05082566(ウトミルマブ(utomilumab);例えば、WO2012/032433を参照されたい)である。
【0256】
いくつかの態様において、免疫療法は、エクスビボで作製した自己抗原特異的T細胞の移入を伴う養子免疫療法でありうる。養子免疫療法に用いられるT細胞は、抗原特異的T細胞を拡大するか、または遺伝子操作によってT細胞をリダイレクション(redirection)することによって作製することができる(Park, Rosenberg et al. 2011)。腫瘍特異的T細胞の単離および移入は黒色腫の処置に成功したことが示されている。T細胞における新規特異性は、形質導入T細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子移入することによって首尾良く発生した(Jena, Dotti et al. 2010)。CARは、1つの融合分子の形で1つまたは複数のシグナル伝達ドメインと結合したターゲティング部分からなる合成受容体である。一般的に、CARの結合部分は、モノクローナル抗体の軽鎖断片および可変断片が可動性リンカーによってつながった単鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインに基づく結合部分も首尾良く用いられてきた。第1世代CARのシグナル伝達ドメインはCD3ζの細胞質領域またはFc受容体γ鎖に由来する。CARを用いることで、リンパ腫および固形腫瘍を含むさまざまな新生物に由来する腫瘍細胞の表面に発現している抗原にT細胞は首尾良くリダイレクションされた(Jena, Dotti et al. 2010)。
【0257】
1つの態様において、本出願は、養子T細胞療法およびチェックポイント阻害剤を含むがんの処置のための併用療法を提供する。1つの局面において、養子T細胞療法は、自己および/または同種異系T細胞を含む。別の局面において、自己および/または同種異系T細胞は、腫瘍抗原に対して標的指向される。MTAPポリペプチドは養子T細胞療法の、投与の前におよび/または投与と同時に患者に投与されうる。別の局面において、自己および/または同種異系T細胞は、MTAPポリペプチドを発現するように操作されうる。
【0258】
外科手術
がん患者のおよそ60%は、予防的、診断的または病期分類的、根治的、および緩和的手術を含む何らかのタイプの手術を受けている。根治目的の手術は、がん性組織の全部または一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する切除術を含み、本態様の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法と併用することができる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去をいう。腫瘍切除に加えて、外科手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気外科療法、および顕微鏡下外科手術(モース術)が含まれる。
【0259】
がん性細胞、組織、または腫瘍の一部または全部を切除すると、体に空洞が形成されることがある。処置は、追加の抗がん療法を用いた該エリアの灌流、直接注入、または局所適用によって達成されうる。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごとに、または1、2、3、4、もしくは5週ごとに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月ごとに繰り返すことができる。こうした処置は、同様にさまざまな投与量のものでありうる。
【0260】
他の薬剤
処置の治療効果を改善するために、本態様のある種の局面と組み合わせて他の薬剤を使用できると考えられる。こうした追加の薬剤には、細胞表面受容体およびギャップ結合の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。ギャップ結合の数を増やすことによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の態様において、細胞増殖抑制剤または分化剤を本態様のある種の局面と組み合わせて使用して、処置の抗過剰増殖効果を改善することができる。細胞接着阻害剤は本態様の有効性を改善すると考えられる。細胞接着阻害剤の例は、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(focal adhesion kinase: FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を高める他の薬剤、例えば抗体c225を、本態様のある種の局面と組み合わせて使用して、処置の有効性を向上させることができると考えられる。
【0261】
キット
本発明のある種の局面は、治療用キットなどの、キットを提供しうる。例えば、キットは、本明細書において記述される1つまたは複数の薬学的組成物および任意でその使用のための説明書を含みうる。キットはまた、そのような組成物の投与を達成するための1つまたは複数の装置を含みうる。例えば、対象キットは、がん性腫瘍への組成物の直接静脈内注射を達成するためのカテーテルおよび薬学的組成物を含みうる。他の態様において、対象キットは、送達装置とともに用いるために、任意で医薬として製剤化され、または凍結乾燥されてもよい、MTAPポリペプチドの予め充填されたアンプルを含みうる。
【0262】
キットは、ラベルを有する容器を含みうる。適当な容器は、例えば、ボトル、バイアル、および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの、種々の材料から形成されうる。容器は、上記のような、治療的または非治療的な用途に有効なMTAPポリペプチドを含む組成物を保持しうる。容器上のラベルは、組成物が特定の治療または非治療用途に使用されることを示してもよく、また、上記のような、インビボまたはインビトロのいずれかの使用に関する指示を示してもよい。本発明のキットは、典型的には、上記の容器、ならびに緩衝液、希釈液、フィルタ、針、注射器、および使用説明書付きの添付文書を含む、商業上のおよび使用者の観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器を含むであろう。
【実施例
【0263】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために提供される。当業者には理解されるように、以下の実施例に開示される技術は、本発明の実践において十分に機能することが本発明者らによって発見された技術を表しており、したがってその実施のための好ましい形態を構成しているとみなすことができる。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された具体的な態様に多くの変更を加えることができ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られることを理解するであろう。
【0264】
実施例1: ホモ・サピエンス由来MTAPポリペプチドの規定されたPEG化および薬理学的動態に及ぼすその影響
MTAPポリペプチドおよびPEGにコンジュゲートされたMTAPポリペプチドが、本明細書において提供される。
【0265】
ホモ・サピエンスMTAP (hs-MTAP)酵素(SEQ ID NO: 1)を精製した。ホモ・サピエンスMTAP由来のMTAP酵素をコードする読み取り枠を含むDNAコンストラクトを、IDTソフトウェアを用いてデザインした大腸菌コドン最適化遺伝子ブロックの重複伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって構築した。全長遺伝子は、N末端Ncol制限酵素切断部位、N末端His6タグ、大腸菌コドン最適化hs-MTAP遺伝子、停止コドン、およびC末端EcoRI制限酵素切断部位を含む。前記の制限部位を用いて、アセンブルされたDNAコンストラクトをpET-28a+ベクター(Novagen)にクローニングした。次に、このコンストラクトを用いて、発現のためにBL21 (DE3)大腸菌を形質転換した。50 mg/Lのカナマイシンを有するTerrific Broth (TB)培地中210 rpmで振盪しながら37℃で細胞を増殖させた。OD600およそ1.0に達した時点でIPTG (終濃度0.5 mM)を添加し、37℃で終夜振盪を続けることにより発現を誘導した。その後、細胞を遠心分離によって回収し、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.4)、300 mM NaCl、1 mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、および1μg/mL DNaseを含有する溶解緩衝液に再懸濁した。溶解をフレンチプレスによって達成し、4℃で1時間20,000×gで遠心分離することにより溶解物から微粒子を除去した。次に、上清を5μmシリンジフィルタによってろ過し、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.4)、300 mM NaCl緩衝液中で予め平衡化したNi-NTA/アガロースカラム(Qiagen)にアプライした。溶解物をカラムにロードした後、樹脂を5カラム体積(CV)の50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.4), 300 mM NaCl、20 mMイミダゾール緩衝液で洗浄した。次に、細菌発現系の典型的な混入物質であるリポ多糖類(LPSまたはエンドトキシン)を除去するために、1% v/v Triton-Xll4を含有するエンドトキシン不含PBS (Coming) 100 CVでカラムをゆっくり洗浄するように流速を設定した。洗浄した酵素を次に、250 mM イミダゾールを有するエンドトキシン不含PBS 5 CV中に溶出し、樹脂を2回目の5 CV分のエンドトキシン不含PBSでリンスした。この時点で、酵素を新しいPBSに緩衝液交換してイミダゾールを除去し、10%グリセロールを添加した。アリコートを-80℃での貯蔵のため液体窒素中で瞬間凍結した。あるいは、酵素を、新たに作製した滅菌100 mMリン酸ナトリウム(pH 8.4)に直ちに緩衝液交換して、イミダゾールを除去し、PEG化に向けて調製した。酵素の純度はSDS-PAGE分析に基づき通常95%超であり、典型的な収量は平均しておよそ65 mg/L培養物であった。タンパク質量は、Abs280nmを測定し、29,950 M-1cm-1の酵素消衰係数の計算値を用いて評価した。
【0266】
精製されたエンドトキシン不含hs-MTAPポリペプチドを、新たに調製した100 mMリン酸ナトリウム(pH 8.4)に十分に緩衝液交換し、5 mg/mLに濃縮した。得られた溶液を10倍、20倍、50倍、または100倍モル過剰の固体メトキシルPEGスクシンイミジルカーボネート5000 MW (NOF Corporation)と混合し、室温で1時間反応させた。未反応のPEGを100 kDaカットオフ遠心ろ過装置(Amicon)中で新たなエンドトキシン不含PBSに十分に緩衝液交換して溶液から除去した。エンドトキシンレベルは、Chromo- LAL動的発色性エンドトキシン試験キット(Associates of Cape Cod, Inc.)を用いて定量化した。上記の方法で洗浄された酵素は、通常、10 EU/mg精製hs-MTAP未満のエンドトキシンレベルという結果となった。
【0267】
図1Aに示されるように、PEG化された材料をSDS-PAGEおよびゲルデンシトメトリーにより調べて、各反応条件のPEG化の程度を決定した。これらの条件下で、PEGとhs-MTAPとの比は、ガウス分布に従うことが分かった。10倍プレップ(prep)はサブユニット当たりおよそ2個のPEG分子の最頻値を示し、20倍プレップはサブユニット当たりおよそ4個のPEG分子の最頻値を示し、50倍プレップはサブユニット当たりおよそ6個のPEG分子の最頻値を示し、100倍プレップはサブユニット当たりおよそ8個のPEG分子の最頻値を示した。
【0268】
モル倍PEG過剰(すなわち0倍、10倍、20倍、50倍、および100倍)によって定義される、ネイティブhs-MTAPおよび各差次的にPEG化されたhs-MTAP調製物の動態は、他所(Singh, Shi et al. 2004)に記述のように、時間と基質濃度の関数として分光光度法アッセイにより定量化された。得られたデータは、より高濃度の基質で観察される二相性線形速度を記述するために、2次の速度定数を追加してミカエリス・メンテン式に適合させた。これらの条件下で、10倍および20倍プレップは、図1Bおよび1Cに示されるように、試験した全ての基質濃度で、十分に保存された動力学的活性を示した。50倍および100倍プレップは、図1Dおよび1Eに示されるように、0倍プレップと比較した場合、より低い基質濃度で活性の低下を示す。
【0269】
PEG化の動態は、緩衝液の組成およびpH、ならびにPEGおよびタンパク質反応物の濃度によって制御される。第一級アミン結合PEG試薬は非酵素的に容易に加水分解される; したがって、リジン修飾を可能にするためには、モル大過剰のPEGが必要である。PEG化の動態は、タンパク質内に見られるリジン残基の数と、表面に露出したリジン残基が埋もれた残基よりも容易に反応するそれらの局所環境にもいくらか依存するであろう。それゆえ、PEG化される所与のタンパク質について、所望のPEG分布が確実に達成されるように、規定されたタンパク質およびPEG濃度を用い、規定されたpHで規定された緩衝液組成を用いた反応条件が使用される、単純な経験的プロセスが開発される。
【0270】
検討中のこれら全てのデータを考慮すると、0~25μMの基質濃度範囲で高い触媒反応速度を維持する野生型hs-MTAP (SEQ ID NO: 1)のPEG化の好ましい態様は、ガウス分布に従う規定された数のPEG化事象を有する製剤であり、ここでタンパク質の80%以上が3±1個のPEG分子の最頻値でサブユニット当たり1、2、3、4、または5個のPEG分子からなり、タンパク質の約20%が0、6、7、8個またはそれ以上のPEG分子を有する。
【0271】
実施例2: ホモ・サピエンス由来の2つのMTAPポリペプチド変種の規定されたPEG化およびその薬理学的動態への影響
hs-MTAPポリペプチド(SEQ ID NO: 1)をコードする遺伝子を出発点として用い、高いPEG:タンパク質比で酵素活性が改善された変種を作製した。PEG化はhs-MTAPのリジン残基を共有結合的に修飾し、広範囲のPEG化は酵素反応動力学にマイナスの影響を与えることから、活性部位近くの特定のリジン残基のPEGコンジュゲーションが、触媒作用に重要なドメインの動きに影響を与える可能性があることが示唆される。活性部位付近のループにあるいくつかのリジン残基を、重複伸長PCRによってアルギニン残基に単独で変異させた。最終的にアセンブルされたPCR産物をNcoIおよびEcoRIで消化し、T4 DNAリガーゼを用いてpET28aベクターにライゲーションした。続いて、各変種を発現させ、精製し、既述のように100倍モル過剰の固体メトキシルPEGスクシンイミジルカーボネート5000 MW (NOF Corporation)にコンジュゲートさせた。これらの変種の反応動力学を、酵素のネイティブ型と100倍PEG化型の両方について決定した。広範囲にPEG化された場合でも(図2A)、全ての基質濃度で高いkcat/Kmを保持した(図2Bおよび2C) 2つの変種(K225R, SEQ ID NO: 3; およびK238R, SEQ ID NO: 5)が同定された。MTAP-K225Rのkcat/Kmは1.9×105 M-1s-1である。MTAP-K238Rのkcat/Kmは2.3×105 M-1s-1である。100倍PEG化MTAP-K225Rのkcat/Kmは1.9×105 M-1s-1である。100倍PEG化MTAP-K238Rのkcat/Kmは2.3x105 M-1s-1である。
【0272】
それゆえ、hs-MTAP-K225Rおよびhs-MTAP-K238R変種は、触媒活性を損なうことなく任意の所望の量のPEGコンジュゲーションで、インビボ安定性を改善するためのリジンPEG化による製剤化を実施できるという点で野生型酵素に対しての改善を表す。
【0273】
実施例3: がんにおけるMTAP変異は、T細胞浸潤の低減および免疫療法への耐性に関連している
メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)は、メチオニンおよびプリンサルベージにメチルチオアデノシン(MTA)を用いるハウスキーピング酵素である。9p21でのMTAP遺伝子の染色体欠失は、全ヒトがんのおよそ15%において生じ、腫瘍免疫細胞浸潤レベルの低減および全生存期間の短縮を伴う。MTAP遺伝子座は、CDKN2A細胞周期阻害因子遺伝子に隣接している。CDKN2Aの欠失は、抗PD-L1で処置した非小細胞肺がん患者における無増悪生存期間の低減と関連している。図3A。Rizvi et al. J Clin Oncol 2018を参照されたい。CDKN2A欠失は、進行性尿路上皮がんを有する患者における抗PDL-1処置への耐性(Nassar et al, Br. J. Cancer, 2020)および黒色腫患者における抗CTLA4療法(イピリムマブ)への耐性(Gao et al, Cell, 2016)とも関連している。当初、CDKN2A変異は9p21.3欠失に関連するがん表現型の原因であり、MTAPはバイスタンダ共欠失であると考えられていた。しかしながら、MTAP欠失は、腫瘍の形成または促進においてCDKN2とは独立して作用しうることを示唆する証拠が増えている。図3Bに示されるように、MTAPのホモ接合性またはヘテロ接合性欠失は、CD8Aのカウントによって測定した場合、免疫系の活性化を有意に減少させ、CDKN2欠失とは無関係に作用する。MTAP欠失はまた、細胞外MTAレベルの増加をもたらす。実際、MTAP欠失を有するがん細胞株は、欠失を有しないものと比較した場合に、培地中に多量のMTAを産生した。Marjon et al. Cell Report 2016を参照されたい。これらの結果を説明する一つの仮説は、MTAP -/-がん細胞によって放出された細胞外MTAが、T細胞におけるPRMT5アルギニンメチルトランスフェラーゼを阻害し、免疫抑制につながるというものである(Henrich et al, Oncoimmunology. 2016; Strobl et al, Molecular Cancer Therapeutics, 2020)。
【0274】
これらのデータに基づいて、MTAP欠損がんを、組換えPEGコンジュゲートMTAPで処置することを提案した。図4Aに示されるように、PEG化MTAPは、MTAP欠損を有するがん細胞によって放出される細胞外MTAを代謝し、メチルチオリボース-1リン酸(MTR-1-P)およびアデニンを生じる。結果として生じる細胞外MTA低減は、T細胞におけるPRMT5の阻害を排除し、T細胞を活性化して、がんをターゲティングすることを可能にする。実際、図4Bに示されるように、腫瘍担持マウスへの組換えMTAPポリペプチドの添加により、細胞外MTAレベルが24時間にわたって約80%だけ減少した。これらの結果は、外因性MTAPの投与が、9p23.1でのMTAP欠失またはMTAP活性の他の低減に起因するMTAレベルの上昇を有するがんを処置するのに有効な標的指向型治療となりうることを示唆している。
【0275】
実施例4: PEG化MTAPによるがん治療
B16-F10黒色腫細胞を用いてMTAP -/-細胞株モデルを作製し、MTAPの生物学的機能、ならびに腫瘍へ代謝的におよび宿主免疫系に及ぼすMTA蓄積の結果を調べた。リポフェクタミン(Lipofectamine(商標) CRISPRMAX(商標) Cas9トランスフェクション試薬)を用いて、Cas9タンパク質(TrueCut(商標) Cas9 Protein v2)およびThermoFisher社から購入した合成シングルガイドRNAを野生型B16-F10細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、限定希釈法を用いて96ウェルプレート10枚に細胞をプレーティングした。プレートを単細胞クローンについて毎日調べた。集密に達した後(トランスフェクション後10~14日)、同定された単細胞クローンを拡張し、ウエスタンブロッティングまたはQ-PCRによってMTAP発現について分析した。MTAPの発現を欠くクローンを、クローニングおよび配列決定により、遺伝子破壊について検証した。MTAP欠失細胞株は、本明細書におよびそれに記述されるMTAP遺伝子の生化学的活性または生物学的活性を分析するための任意の方法またはアッセイ法において用いることができる。
【0276】
PEG化MTAPポリペプチドによる処置は、MTAP欠失を有する腫瘍に対して有効である。C57/BL6マウスの各2コホートに5×104個の、野生型B16-F10黒色腫細胞またはMTAP欠失を有するB16-F10黒色腫細胞のいずれかを皮下接種した。腫瘍が55 mm3の平均サイズに達したら、マウスをビヒクル(PBS)または50 mg/kgのPEG-MTAPポリペプチドのいずれかで3回/週、腫瘍周囲の注射により2週間処置した。PEG-MTAPは、図5Aおよび5Bに示されるように、対照MTAP +/+腫瘍にほとんど効果を及ぼさなかったが、MTAP -/-腫瘍の成長を有意に阻害した。実際、MTAP -/-腫瘍を有するマウス7匹中の3匹において完全寛解(CR)が観察された。この知見と一致して、PEG-MTAPは、図5Cに示されるように、B16-F10 MTAP -/-腫瘍を有するマウスの生存性を増加させた。
【0277】
CD8+ T細胞は、図6に示されるように、PEG-MTAPによる効果的な処置に必要とされる。C57/BL6マウスに、MTAP欠失を有するB16-F10黒色腫細胞5×104個を皮下接種した。腫瘍が55 mm3の平均サイズに達したら、マウスを対照アイソタイプ抗体または抗CD8抗体のいずれかで、50 mg/kgのMTAP有りまたは無しで、3回/週、腫瘍周囲の注射により2週間処置した。前述同様に、MTAP処置は腫瘍成長を遅延させ、マウス6匹中の2匹が完全寛解(CR)を達成した(図6Aおよび6C)。抗CD8抗体を用いたCD8+ T細胞の枯渇は、対照マウスにおける腫瘍成長を増強し(図6B)、MTAPポリペプチドの有益な効果を遮断した(図6D)。これらの結果は、MTAPを投与することにより腫瘍微小環境からMTAを枯渇させた場合、CD8+ T細胞が腫瘍成長を低減できることを示唆している。同様の結果が、実施例2において記述されたPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0278】
PEG-MTAP処置は、図7に示されるように、CD8+/K167+、CD4+/K167+、およびCD8+/グランザイムB+ T細胞を含めて、腫瘍微小環境における腫瘍浸潤リンパ球の数をより高くさせる。T細胞増殖状態も、PEG-MTAPによるインビボ処置により救済される。同様の結果が、実施例2のPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0279】
PEG-MTAPによる処置はまた、B16-F10黒色腫同種移植片の免疫細胞浸潤を増加させる。B16-F10 MTAP -/-腫瘍サンプルを担持するC57/BL6マウスからFACS分析によって観察されたリンパ球パネルを、2用量のPEG-MTAPまたはビヒクルでの処置後に評価した(投薬後24時間で分析した)。処置はビヒクル処置対照と比較して、CD4+ T細胞およびNKl.l+ナチュラルキラー細胞の割合の大きな増加、ならびに増殖CD8+グランザイムB+ T細胞の割合の大きな増加を示した(図8A~C)を示した。同様の結果が、実施例2において記述されたPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0280】
実施例5: MTAを分解することによるL1210マウス白血病同種移植片の処置
サルモネラ菌酵素であるメチルチオアデノシンヌクレオシダーゼ(MTAN)もMTAを代謝する。DBA/2マウス(n = 17)に、皮下側腹部注射により、非常に侵攻性のL1210マウス白血病細胞株の細胞5×104個をそれぞれ接種した。腫瘍をさらに8日間定着させた後(腫瘍平均 = 90 mm3)、マウスを2群に分けた。対照群(n = 8)は、腫瘍のサイズが2500 mm3超に達するまで、3日ごとに腫瘍周囲の注射によりPBSビヒクル対照で処置した。実験群(n= 9)は、腫瘍のサイズが2500 mm3超のエンドポイントに達するまで、3日ごとに腫瘍周囲の注射により50 mg/kgの活性PEG-se-MTANを用いることを除いて同一の方法で処置した。L1210白血病腫瘍の成長率はビヒクル対照群と比較して、PEG-se-MTANを投与した処置群において有意に(3.5倍)低減され(図9A)、統計的に有意な寿命延長をもたらした, p< 0.0035 (図9B)。同様の結果が、実施例2に記述されているPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0281】
PEG-se-MTANは、L1210マウス白血病同種移植片へのリンパ球浸潤も増加させた。PEG-MTANまたはビヒクル対照の3回の処置後にL1210同種移植片を担持するDBA/2マウスの腫瘍および腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)からのFACS分析によって観察されたリンパ球パネルを評価した。PEG-MTAN投与は、インビトロの所見と一致してCD4+および特にCD8+ T細胞において増殖が大幅に増強された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団の大きな増加をもたらした(図10A~C)。非常に重要なことに、処置されたTDLNは、T細胞の大幅な増加および骨髄系由来細胞の集団の低減も示し(図10D~F)、T細胞の活性化が増強されたことを示していた。同様の結果が、実施例2のPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0282】
実施例6: マウス4T1乳がん同種移植片のPEG-MTAN/抗CTLA4処置の効力
ADOの枯渇によっておよび抗CTLA4抗体免疫チェックポイント阻害との組み合わせで腫瘍成長の制御の効力を評価するために、BALB/Cマウスの4つのコホートに、乳腺脂肪パッドに50,000個の4T1細胞を接種し、腫瘍を樹立させた。4T1はMTAP CD73+腫瘍モデルであり、このモデルでは、腫瘍微小環境においてMTAではなくADOを有するものと予想される。マウスをビヒクル、PEG-MTAN (50 mg/kg)、抗CTLA4抗体(10 mg/kg, クローンUC10-4F10-11, Bio X Cell)、またはPEG-MTAN/抗CTLA4抗体の組み合わせのいずれかで処置した。PEG-MTANも抗CTLA4単剤治療群もともに、原発腫瘍の成長を遅らせ、その組み合わせはより効果的であり、少なくとも治療上の相加性を示していた(図11A)。4T1は肺転移を形成するため、腫瘍のコロニー形成を定量化するために肺組織を調べた。全ての処置群は、ビヒクル対照群と比較して有意に少ない転移性腫瘍肺結節を呈し(図11B)、転移時のADOの役割を例示するものであった。同様の結果が、実施例2のPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。
【0283】
実施例7: マウスCT26結腸がん同種移植片(MTAP CD73+)のPEG-MTANポリペプチド/抗PD-l抗体処置の効力
CT26細胞株は、CDKN2ホモ接合性ヌルであることが知られており(Castle et al, 2014)、これは一般にMTAPと同時欠失されている; しかしながら、MTAPは欠失されていないが、その発現は大幅に損なわれていることが分かった。さらに、この細胞株はCD73を発現し(Sun et al, 2017)、したがって腫瘍微小環境においてアデノシンを産生すると予想される。単剤としてまたは抗PD-l抗体免疫チェックポイント阻害剤療法との組み合わせでMTAP CD73+腫瘍モデルにおけるADOおよび/またはMTA枯渇の潜在的効力を調べるために、CT26腫瘍を担持するBalb/cマウス4群を、アイソタイプ対照抗体、PEG-MTANポリペプチド(50 mg/kg 3×週)、抗PD-l抗体(クローンRMP1-14, BioXCell # BE0146, 10 mg/kg 2×週)、または組み合わせでのPEG-MTANおよび抗PD-lのいずれかにより計2週間処置した。対照と比較して、抗PD-1抗体とPEG-MTANポリペプチドの両方が不均一分散効果を誘発したが、重要なことに、両方の単剤治療群において完全寛解(CR)をもたらした。驚くべきことに、抗PD-l/PEG-MTANコンボは、群全体で腫瘍成長阻害を示し、相加的または相乗的効力を示唆する3つの完全寛解(図12A~D)をもたらした。
【0284】
同様の結果が、実施例2のPEG化MTAP変種でも予想されるであろう。メチルチオアデノシンホスホリラーゼ活性の欠損が、がんまたは疾患に寄与する場合、他のがんまたは疾患も、本明細書において記述される処置によってターゲティングすることができる。
【0285】
実施例8: CT26同種移植片腫瘍に対する高度にPEG化されたPEG-MTAPポリペプチドの効力
CT26腫瘍を担持するBalb/cマウス2群を、PBSでまたは実施例2の高度PEG化MTAP K238変種ポリペプチドの50 mg/kg 3×週で処置した。高度にPEG化されたMTAP K238変種は、腫瘍成長を低減し、処置マウス6匹中の2匹において完全寛解を引き起こした(図13)。
【0286】
実施例9: MTAPポリペプチドの速度論的パラメータを測定するためのアッセイ
MTAPポリペプチドによるMTA分解およびアデニン生成の速度論的パラメータを測定する方法が、本明細書において提供される。
【0287】
MTAPポリペプチドまたはPEG化MTAPポリペプチドの速度論的パラメータは、他所(Singh et al, 2004)に記述されているように酵素基質MTAの最大吸光度の減衰を時間の関数としてモニタリングした、分光光度法アッセイによって定量化された。MTA溶液をPBS (pH 7.4)中で調製して、6 mMから200 pMに及ぶ終濃度を得る。MTAは、275 nmのλmaxでその分解生成物アデニンとは1,600 M-1cm-1の減衰係数の差を有するが、反応の他の生成物であるメチルチオリボース-l'-リン酸/メチルチオリボース(methylthioribiose)は275 nmに感知できるほど吸収を認めない。酵素溶液(終濃度: -10 nM)を基質溶液に添加し、急速に混合することで反応を開始し、275 nmの吸光度を経時的に測定することにより37℃で基質MTAの喪失をモニタリングする。得られたデータを処理し、速度定数を決定するためにミカエリス・メンテン式に適合させる。Vmax、V0、kcat、KM、その派生物、またはその他などの、速度論的パラメータが算出される。
【0288】
実施例10: MTaseポリペプチドの速度論的安定性
実施例1および2のPEG化hs-MTAPポリペプチドならびに実施例5のPEG化se-MTANの速度論的安定性は、酵素を100 mMリン酸緩衝液(pH 7.4)中37℃でインキュベートすることにより決定された。4日間にわたって、MTAPポリペプチドのアリコートをインキュベーションから取り出し、実施例9において記述されるようにMTAを分解するその能力について評価した。得られたデータを処理し、指数方程式に適合させて、減衰率を決定した。これらの条件下で、実施例2のPEG化hs-MTAPポリペプチドは57時間の半減期(T1/2)を有することが分かり、実施例5におけるse-MTANは56時間の類似のT1/2を有することが分かった。
【0289】
実施例11: MTaseポリペプチドのインビボ安定性
MTAPポリペプチドまたはPEG-MTAPポリペプチドのインビボ安定性は、哺乳動物またはヒト対象へのポリペプチドの静脈内注射によって決定される。血液サンプルをさまざまな時点で収集する。ELISAアッセイを用いて、血漿または血清中のポリペプチドの量を定量化する。血清中半減期は、対象への注射後にポリペプチドの濃度が半分に低下する時間として決定される。
【0290】
本明細書において開示され、主張される方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく構成および実施することが可能である。本発明の組成物および方法は好ましい態様に関して記述されているが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記述された方法および該方法の段階または段階の順序にさまざまな変形を適用しうることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、本明細書において記述された薬剤の代わりに、化学的にも生理学的にも関連するある種の薬剤を用いることができるが、同じまたは同様の結果が達成されうることは明らかであろう。当業者に明らかな、そのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念内にあると見なされる。
【0291】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書において記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲内で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023509516000001.app
【国際調査報告】