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特表2023-509518安定なシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】安定なシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/06 20060101AFI20230301BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230301BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K38/06
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/16
A61K47/14
A61K47/10
A61K9/19
A61K9/06
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/12
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541821
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 US2021012824
(87)【国際公開番号】W WO2021142359
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,833
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムナイム,カヘラ
(72)【発明者】
【氏名】カラハン,ウィリアム・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】テラン,アロナ
(72)【発明者】
【氏名】カクー,サバハ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD49
4C076DD51
4C076DD52
4C076DD55
4C076DD57
4C076DD60
4C076DD66
4C076EE16
4C076EE23
4C076FF15
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA15
4C084CA59
4C084DC32
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA02
4C084ZB26
4C084ZC75
(57)【要約】
本開示は、注射に適した水溶液中の安定なシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物と、上記シクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を含むキットと、上記シクロデキストリン非含有カルフィルゾミブの調製方法と、を提供する。かかる配合物、キット、及び方法は、水溶液中のカルフィルゾミブの溶解度及び安定性を実質的に増加させ、その製造及び投与の両方を容易にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)
【化1】
の化学構造を有するカルフィルゾミブ
;又はその薬学的に許容される塩;
(ii)ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、又は乳酸エチルからなる群から選択される、注射に適する薬学的に許容される溶媒を含む溶媒系;任意選択的に第1の共可溶化剤の存在下での、C1~4アルキルアルコール、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせから選択される共溶媒系;及び任意選択的に第2の共可溶化剤の存在下での、2.5~4.5のpHを有する水溶液;を含む、シクロデキストリン非含有医薬組成物であって、
前記組成物はすぐ使用できる注射剤であるか、又は凍結乾燥粉末若しくはケークとして得られ;前記注射剤は静脈内又は皮下投与される、組成物。
【請求項2】
前記溶媒系は、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、又はジメチルアセトアミドである、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項3】
前記共溶媒系は、任意選択的に前記第1の共可溶化剤の存在下での、エタノールとポリエチレングリコールとの混合物、又はtert-ブチルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物である、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項4】
前記共溶媒系は、前記第1の共可溶化剤の不在下で75%~92%PEG400:エタノール(1:1、w/w)である、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項5】
前記共溶媒系は、酸、エステル、有機塩、有機塩基、又はC1~4アルキルアルコールから選択される前記第1の共可溶化剤の存在下での、エタノールとPEG400との混合物である、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項6】
前記第1の共可溶化剤は、乳酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、又はヤシ脂肪酸スクロースから選択される酸又はエステルである、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項7】
前記共溶媒系は、塩化ベンザルコニウム又は硫酸プロタミンから選択される有機塩である、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項8】
前記第1の共可溶化剤はエタノールアミン又はイソプロピルアルコールである、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項9】
前記共溶媒系は、75%~92%PEG400:エタノール(1:1、w/w);PEG400:エタノール中の1.2%~5%乳酸;PEG400:エタノール中の1.2%~5%マレイン酸;PEG400:エタノール中の4.6%塩化ベンザルコニウム;PEG400:エタノール中の1%~3.3%硫酸プロタミン;PEG400:エタノール中の28~30%HS Solutol 15;32%ヤシ脂肪酸スクロース、PEG400:エタノール;5%安息香酸、PEG400:エタノール;5%ベンゼンスルホン酸、PEG400:エタノール;10%イソプロピルアルコール、PEG400:エタノール;PEG400:エタノール中の1%~5%クエン酸;PEG400:エタノール中の1.2%~5%酢酸;又はPEG400:エタノール中の5%エタノールアミンからなる群から選択される、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項10】
前記共溶媒系は、PEG400:エタノール中の1.2%~5%乳酸である、請求項3に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項11】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、請求項6に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項12】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、請求項6に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項13】
最終最大乳酸濃度は0.15%である、請求項10に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項14】
前記水溶液が、前記第2の共可溶化剤の不在下で3.0~3.5のpHを有する、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項15】
前記水溶液が3.0~3.5のpHを有する、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項16】
前記水溶液が3.0~3.5のpHを有し、前記第2の共可溶化剤が、有機糖、水溶性ポリマー、酸、若しくはアミノ酸、又はこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項17】
前記第2の共可溶化剤が、デキストロース、マンニトール、グリシン、N-ビニルピロリドンポリマー、酪酸、アジピン酸、フェニルアラニン、アルギニンHCl、トリプトファン、若しくはN-アセチルトリプトファン、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の共可溶化剤は、N-ビニルピロリドンポリマー、マンニトール、若しくはグリシン、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項19】
前記第2の共可溶化剤は、1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)、マンニトール、若しくはグリシン、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項20】
前記PVPは3,000MW~40,000MWの分子量範囲を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項21】
前記PVPは10,000MW~17,000MWの分子量範囲を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項22】
前記PVPは10,000MW~の分子量範囲を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項23】
前記PVPが、24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWからなる群から選択される、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項24】
0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項25】
0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項26】
0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項27】
約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項31】
前記組成物が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項16に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物がすぐ使用できる注射剤である、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が凍結乾燥粉末又はケークとして得られる、請求項1に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項34】
前記凍結乾燥粉末又はケークが5分間未満で再構成され得る、請求項33に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物。
【請求項35】
(i)
(a)前記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド、C1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物、及び乳酸中に溶解して溶液を形成し、ここで前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、工程と、
(b)前記カルフィルゾミブ溶液を、2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマー及び糖混合物の酸性水溶液で希釈して溶液を形成する工程であって、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、
(c)工程(b)で得られた前記溶液をフリーズドライする工程と、
を含むプロセスによって調製される安定な凍結乾燥粉末又はケークを含む生成物バイアル医薬組成物、並びに
(ii)滅菌水を含む再構成バイアル組成物を含むカルフィルゾミブ注射剤キットであって、
前記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、前記注射剤が静脈内又は皮下投与される、キット。
【請求項36】
前記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)であり、前記糖がマンニトール若しくはグリシン又はこれらの組み合わせである、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPであり、前記糖がマンニトール又はグリシンである、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項36に記載のキット。
【請求項40】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項36に記載のキット。
【請求項41】
工程(b)において前記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、請求項36に記載のキット。
【請求項42】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項36に記載のキット。
【請求項43】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項36に記載のキット。
【請求項44】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項36に記載のキット。
【請求項45】
工程(b)で形成された前記溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項36に記載のキット。
【請求項46】
工程(b)で形成された前記溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項36に記載のキット。
【請求項47】
工程(b)で形成された前記溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項36に記載のキット。
【請求項48】
工程(b)で形成された前記溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項36に記載のキット。
【請求項49】
工程(b)で形成された前記溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項36に記載のキット。
【請求項50】
工程(b)において、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が2mg/mlである、請求項36に記載のキット。
【請求項51】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、請求項36に記載のキット。
【請求項52】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、請求項36に記載のキット。
【請求項53】
前記注射剤は静脈内投与される、請求項36に記載のキット。
【請求項54】
前記注射剤は皮下投与される、請求項36に記載のキット。
【請求項55】
再構成すると注射に適するシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセスであって、
(a)前記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド、C1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物、及び乳酸中に溶解して溶液を形成し、ここで前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、工程と、
(b)前記カルフィルゾミブ溶液を、2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマー及び糖混合物の酸性水溶液で希釈して溶液を形成する工程であって、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、
(c)工程(b)で得られた前記溶液をフリーズドライする工程と、を含む、プロセス。
【請求項56】
前記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)であり、前記糖がマンニトール若しくはグリシン又はこれらの組み合わせである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項57】
前記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPであり、前記糖がマンニトール又はグリシンである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項58】
前記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項59】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項60】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWであり、前記糖がマンニトールである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項61】
工程(b)において前記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項62】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項63】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.2%%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項64】
工程(b)で形成された前記溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項65】
工程(b)で形成された前記溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項66】
工程(b)で形成された前記溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項67】
工程(b)で形成された前記溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項68】
工程(b)で形成された前記溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項69】
工程(b)で形成された前記溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項70】
工程(b)において、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が2mg/mlである、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項71】
工程(b)において、前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項72】
工程(b)において、前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項73】
前記注射剤は静脈内投与される、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項74】
前記注射剤は皮下投与される、請求項55に記載のシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセス。
【請求項75】
治療的有効量の請求項1~34のいずれか一項に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物、又は請求項35~54のいずれか一項に記載のキットを投与することを含む、処置を必要とする対象における多発性骨髄腫を処置する方法。
【請求項76】
治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
治療的有効量の請求項1~34のいずれか一項に記載のシクロデキストリン非含有医薬組成物、又は請求項35~54のいずれか一項に記載のキットを投与することを含む、処置を必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法。
【請求項78】
治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
(a)安定な凍結カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩、医薬組成物、及び(b)溶解医薬組成物を含むカルフィルゾミブ注射剤キットであって、前記キットは、
(i)前記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してDMSO溶液を形成する工程であって、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が200mg/ml~250mg/mlの範囲である、工程と、
(ii)前記DMSO溶液を2℃~8℃で冷凍して前記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を形成し、任意選択的に前記凍結組成物を2℃~8℃で貯蔵する工程と、
(iii)前記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を少なくとも18℃の温度で解凍して、解凍カルフィルゾミブ組成物を形成し、前記液体カルフィルゾミブ組成物を前記溶解医薬組成物と混合して溶液を形成し、前記カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、を含むプロセスによって調製され、
前記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、前記注射剤が静脈内又は皮下投与される、キット。
【請求項80】
前記溶解医薬組成物が、前記解凍されたカルフィルゾミブ医薬組成物を溶解して溶液を形成することができる共溶媒バイアルであって、前記カルフィルゾミブの濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、共溶媒バイアルと、前記解凍されたカルフィルゾミブ医薬組成物を溶解して溶液を形成することができる追加の賦形剤バイアルであって、前記カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、追加の賦形剤バイアルと、を含む、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
前記凍結カルフィルゾミブ組成物が2℃~8℃で貯蔵され、前記希釈工程(iii)が、クリニック施設で実施される、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
前記凍結カルフィルゾミブ組成物が水分不含有貯蔵容器又は装置に貯蔵される、請求項81に記載のキット。
【請求項83】
前記水分不含有容器が、0.5mLの微小遠心エッペンドルフ管、並びに凍結乾燥ストッパ及びクリンプシールを備えた3ccのガラス製Schott 1Aバイアルである、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
前記共溶媒バイアルが、任意選択的に前記第1の共可溶化剤の存在下で、C1~4アルキルアルコール、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせから選択される共溶媒系を含有する、請求項80に記載のキット。
【請求項85】
前記共溶媒バイアルが、乳酸である第1の共可溶化剤の存在下で、エタノール及びPEGの組み合わせから選択される共溶媒系を含有する、請求項80に記載のキット。
【請求項86】
前記追加の賦形剤バイアルが、任意選択的に、水溶性ポリマーである第2の共可溶化剤の存在下で、2.5~4.5のpHを有する水溶液を含有する、請求項80に記載のキット。
【請求項87】
前記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)である、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
前記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPである、請求項87に記載のキット。
【請求項89】
前記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWである、請求項87に記載のキット。
【請求項90】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWである、請求項87に記載のキット。
【請求項91】
前記水溶性ポリマーは20%PVP 12,000MWである、請求項87に記載のキット。
【請求項92】
前記水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、請求項86に記載のキット。
【請求項93】
工程(iii)で形成された前記溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項87に記載のキット。
【請求項94】
工程(iii)で形成された前記溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項87に記載のキット。
【請求項95】
工程(iii)で形成された前記溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項87に記載のキット。
【請求項96】
工程(iii)で形成された前記溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項87に記載のキット。
【請求項97】
工程(iii)で形成された前記溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項87に記載のキット。
【請求項98】
工程(iii)で形成された前記溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項87に記載のキット。
【請求項99】
工程(iii)で形成された前記溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項87に記載のキット。
【請求項100】
工程(iii)で形成された前記溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項87に記載のキット。
【請求項101】
工程(iii)で形成された前記溶液において、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が2mg/mlである、請求項87に記載のキット。
【請求項102】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、請求項87に記載のキット。
【請求項103】
前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、請求項87に記載のキット。
【請求項104】
前記注射剤は静脈内投与される、請求項87に記載のキット。
【請求項105】
前記注射剤は皮下投与される、請求項87に記載のキット。
【請求項106】
シクロデキストリン非含有凍結カルフィルゾミブ組成物の調製プロセスであって、
(i)前記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してDMSO溶液を形成する工程であって、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が200mg/ml~250mg/mlの範囲である、工程と、
(ii)前記DMSO溶液を2℃~8℃で冷凍して前記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を形成し、任意選択的に前記凍結組成物を2℃~8℃で貯蔵する工程と、を含む、プロセス。
【請求項107】
前記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を少なくとも18℃の温度で解凍して、解凍カルフィルゾミブ組成物を形成し、前記液体カルフィルゾミブ組成物を溶解医薬組成物と混合して溶液を形成し、前記カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程であって、前記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、注射に適している、工程を更に含む、請求項106に記載のプロセス。
【請求項108】
前記溶解医薬組成物は、乳酸の存在下でC1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物を含んで溶液を形成し、ここで前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、請求項107に記載のプロセス。
【請求項109】
前記溶解医薬組成物が、前記溶液を更に希釈してより希釈された溶液を形成することのできる2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマーの酸性水溶液を含む第2のバイアルを更に含み、ここで前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、請求項107に記載のプロセス。
【請求項110】
前記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)である、請求項109に記載のプロセス。
【請求項111】
前記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項112】
前記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項113】
前記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項114】
前記水溶性ポリマーは20%PVP 12,000MWである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項115】
前記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、請求項109に記載のプロセス。
【請求項116】
前記より希釈された溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項117】
前記より希釈された溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項118】
前記より希釈された溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項119】
前記より希釈された溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、前記カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項120】
前記より希釈された溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項109に記載のプロセス。
【請求項121】
前記より希釈された溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項109に記載のプロセス。
【請求項122】
前記より希釈された溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項109に記載のプロセス。
【請求項123】
前記より希釈された溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、請求項109に記載のプロセス。
【請求項124】
前記より希釈された溶液中で、前記カルフィルゾミブ又は前記その塩の濃度は2mg/mlである、請求項109に記載のプロセス。
【請求項125】
前記より希釈された溶液中で、前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、請求項109に記載のプロセス。
【請求項126】
前記より希釈された溶液中で、前記カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、請求項109に記載のプロセス。
【請求項127】
前記注射剤は静脈内投与される、請求項109に記載のプロセス。
【請求項128】
前記注射剤は皮下投与される、請求項109に記載のプロセス。
【請求項129】
請求項79~105のいずれか一項に記載の注射剤キットから得られた治療的有効量の前記カルフィルゾミブ溶液を投与することを含む、処置を必要とする対象における多発性骨髄腫を処置する方法。
【請求項130】
治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
請求項79~105のいずれか一項に記載の注射剤キットから得られた治療的有効量の前記カルフィルゾミブ溶液を投与することを含む、処置を必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法。
【請求項132】
治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、請求項131に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により組み込まれる2020年1月10日出願の米国仮特許出願第62/959,833号明細書の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、注射に適した水溶液中の安定なシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物と、上記シクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を含むキットと、上記シクロデキストリン非含有カルフィルゾミブの調製方法と、を提供する。かかる配合物、キット、及び方法は、水溶液中のカルフィルゾミブの溶解度及び安定性を実質的に増加させ、その製造及び投与の両方を容易にする。
【背景技術】
【0003】
カルフィルゾミブは、多発性骨髄腫の処置に承認された選択的プロテアソーム阻害剤である。カルフィルゾミブは、以下の化学構造を有するテトラペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤であり:
【化1】
これは、26Sプロテアソーム内のタンパク質分解コア粒子である20SプロテアソームのN末端スレオニン含有活性部位と不可逆的に結合する。カルフィルゾミブは、固形及び血液系腫瘍細胞中でインビトロの抗増殖及びアポトーシス促進活性を有する。動物において、カルフィルゾミブは血液及び組織中のプロテアソーム活性を阻害し、多発性骨髄腫、血液、及び固形腫瘍のモデルにおける腫瘍成長を遅延させた。
【0004】
カルフィルゾミブは、Kyprolis(登録商標)の名称で、10mg、30mg、又は60mgの活性成分を含有する単回投与バイアルで市販されている。各バイアルは、凍結乾燥カルフィルゾミブに加えて、pH調整のためのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、クエン酸、及び水酸化ナトリウム(目標pH3.5)も含有する。
【0005】
改善されたカルフィルゾミブ組成物を得るための努力がなされてきた。例えば、活性成分の溶解度を強化するための置換シクロデキストリン添加物が研究されてきた。しかしながら、置換シクロデキストリンは高価であり入手可能性が限定されているため、医薬組成物におけるその使用は限定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
カルフィルゾミブは、水溶解度が極めて低く、pH及び濃度に敏感であり、求核攻撃に対する抵抗力が弱いエポキシド環を有し、これらの全てがシクロデキストリンを使用しないカルフィルゾミブの安定した配合物を調製することに対する多くの課題を呈する。製造の容易さ、投与の手段、及び経時的安定性が改善された、改善されたカルフィルゾミブの配合物に対する必要性が依然として存在する。ヘルスケア提供者にとって調製及び投与が容易な配合物に対する必要性が依然として存在する。特に周囲条件下で貯蔵される場合の経時的安定性が改善されたシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物に対する必要性が依然として存在する。
【0007】
本発明の目的は、安定した、すぐ使用できるか又はすぐ希釈できるシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、安定した、凍結乾燥粉末又はケークなどのすぐ使用できるか又はすぐ希釈できるシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を含むキットを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、安定した、すぐ使用できるか又はすぐ希釈できるシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物の調製プロセスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、静脈内又は皮下投与注射に適する、安定した、すぐ使用できるか又はすぐ希釈できるシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、安定した、すぐ使用できるか又はすぐ希釈できるシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物を投与することによって、多発性骨髄腫を患う患者を処置するための方法を提供することである。
【0012】
一実施形態では、本発明は、
(i)
【化2】
の化学構造を有するカルフィルゾミブ
;又はその薬学的に許容される塩;
(ii)ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、又は乳酸エチルからなる群から選択される、注射に適する薬学的に許容される溶媒を含む溶媒系;任意選択的に第1の共可溶化剤の存在下での、C1~4アルキルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)から選択される共溶媒系;及び任意選択的に第2の共可溶化剤の存在下での、2.5~4.5のpHを有する水溶液を含むシクロデキストリン非含有医薬組成物であって、
上記組成物はすぐ使用できる注射剤であるか、又は凍結乾燥粉末若しくはケークとして得られ;上記注射剤は静脈内又は皮下投与される、組成物を提供する。
【0013】
実施形態2では、本発明は、溶媒系が、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、又はジメチルアセトアミドである、実施形態1のシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0014】
実施形態3では、本発明は、共溶媒系が、任意選択的に第1の共可溶化剤の存在下での、エタノールとポリエチレングリコールとの混合物、又はtert-ブチルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物である、実施形態1又は2のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0015】
実施形態4では、本発明は、共溶媒系が、75%~92%PEG400:エタノール(1:1、w/w)であり、第1の共可溶化剤の不在下である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0016】
実施形態5では、本発明は、共溶媒系が、酸、エステル、有機塩、有機塩基、又はC1~4アルキルアルコールから選択される第1の共可溶化剤の存在下での、エタノールとPEG400との混合物である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0017】
実施形態6では、本発明は、第1の共可溶化剤が、乳酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、又はヤシ脂肪酸スクロースから選択される酸又はエステルである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0018】
実施形態7では、本発明は、共溶媒系が、塩化ベンザルコニウム又は硫酸プロタミンから選択される有機塩である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0019】
実施形態8では、本発明は、第1の共可溶化剤がエタノールアミン又はイソプロピルアルコールである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0020】
実施形態9では、本発明は、共溶媒系が、75%~92%PEG400:エタノール(1:1、w/w);PEG400:エタノール中の1.2%~5%乳酸;PEG400:エタノール中の1.2%~5%マレイン酸;PEG400:エタノール中の4.6%塩化ベンザルコニウム;PEG400:エタノール中の1%~3.3%硫酸プロタミン;PEG400:エタノール中の28~30%HS Solutol 15;32%ヤシ脂肪酸スクロース、PEG400:エタノール;5%安息香酸、PEG400:エタノール;5%ベンゼンスルホン酸、PEG400:エタノール;10%イソプロピルアルコール、PEG400:エタノール;PEG400:エタノール中の1%~5%クエン酸;PEG400:エタノール中の1.2%~5%酢酸;又はPEG400:エタノール中の5%エタノールアミンからなる群から選択される、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0021】
実施形態10では、本発明は、共溶媒系が、PEG400:エタノール中の1.2%~5%乳酸である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0022】
実施形態11では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で1.5:2である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0023】
実施形態12では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で0.4:2である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0024】
実施形態13では、本発明は、最終最大乳酸濃度が0.15%である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0025】
実施形態14では、本発明は、水溶液が第2の共可溶化剤の不在下で3.0~3.5のpHを有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0026】
実施形態15では、本発明は、水溶液が3.0~3.5のpHを有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0027】
実施形態16では、本発明は、水溶液が3.0~3.5のpHを有し、第2の共可溶化剤が、有機糖、水溶性ポリマー、酸、若しくはアミノ酸、又はこれらの任意の組み合わせから選択される、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0028】
実施形態17では、本発明は、第2の共可溶化剤が、デキストロース、マンニトール、グリシン、N-ビニルピロリドンポリマー、酪酸、アジピン酸、フェニルアラニン、アルギニンHCl、トリプトファン、若しくはN-アセチルトリプトファン、又はこれらの任意の組み合わせである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0029】
実施形態18では、本発明は、第2の共可溶化剤が、N-ビニルピロリドンポリマー、マンニトール、若しくはグリシン、又はこれらの任意の組み合わせである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0030】
実施形態19では、本発明は、第2の共可溶化剤が、1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP、別名ポリビニルピロリドン)、マンニトール、若しくはグリシン、又はこれらの任意の組み合わせである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。様々なPVPが当業者に既知であり、例えばhttps://www.brenntag.com/media/documents/bsi/product_data_sheets/material_science/ashland_polymers/pvp_polymers_brochure.pdfを参照されたい。PVPは、PVP K-12、K-15、K17、K-30、K-60、K-90、又はK-120などの数種類の等級の分子量及びK値(1%溶液の粘度)で入手可能である。
【0031】
実施形態20では、本発明は、上記PVPが3,000MW~40,000MWの分子量範囲を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0032】
実施形態21では、本発明は、上記PVPが10,000MW~17,000MWの分子量範囲を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0033】
実施形態22では、本発明は、上記PVPが10,000MWの分子量範囲を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0034】
実施形態23では、本発明は、上記PVPが、24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWからなる群から選択される、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0035】
実施形態24では、本発明は、上記組成物が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0036】
実施形態25では、本発明は、上記組成物が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0037】
実施形態26では、本発明は、上記組成物が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0038】
実施形態27では、本発明は、上記組成物が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0039】
実施形態28では、本発明は、上記組成物が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0040】
実施形態29では、本発明は、上記組成物が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0041】
実施形態30では、本発明は、上記組成物が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0042】
実施形態31では、本発明は、上記組成物が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0043】
実施形態32では、本発明は、上記組成物がすぐ使用できる注射剤である、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0044】
実施形態33では、本発明は、上記組成物が凍結乾燥粉末又はケークとして得られる、前述の実施形態のうちいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0045】
実施形態34では、本発明は、上記凍結乾燥粉末又はケークが、5分間未満で再構成され得る、実施形態33のシクロデキストリン非含有医薬組成物を提供する。
【0046】
実施形態35では、本発明は、
(i)
(a)上記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド、C1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物、及び乳酸中に溶解して溶液を形成し、ここでカルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、工程と、
(b)上記カルフィルゾミブ溶液を、2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマー及び糖混合物の酸性水溶液で希釈して溶液を形成する工程であって、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、
(c)工程(b)で得られた溶液をフリーズドライする工程と、
を含むプロセスによって調製される安定な凍結乾燥粉末又はケークを含む生成物バイアル医薬組成物、並びに
(ii)滅菌水を含む再構成バイアル組成物を含むカルフィルゾミブ注射剤キットであって、
上記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、注射剤が静脈内又は皮下投与される、キットを提供する。
【0047】
実施形態36では、本発明は、上記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)であり、上記糖がマンニトール若しくはグリシン又はこれらの組み合わせである、実施形態35のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0048】
実施形態37では、本発明は、上記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPであり、上記糖がマンニトール又はグリシンである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0049】
実施形態38では、本発明は、上記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0050】
実施形態39では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0051】
実施形態40では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0052】
実施形態41では、本発明は、工程(b)において上記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0053】
実施形態42では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0054】
実施形態43では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0055】
実施形態44では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0056】
実施形態45では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0057】
実施形態46では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0058】
実施形態47では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0059】
実施形態48では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0060】
実施形態49では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0061】
実施形態50では、本発明は、工程(b)において、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が2mg/mlである、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0062】
実施形態51では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で1.5:2である、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0063】
実施形態52では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で0.4:2である、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0064】
実施形態53では、本発明は、注射剤が静脈内投与される、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0065】
実施形態54では、本発明は、注射剤が皮下投与される、実施形態36のカルフィルゾミブ注射剤キットを提供する。
【0066】
実施形態55では、本発明は、再構成すると注射に適するシクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ凍結乾燥粉末又はケークの調製プロセスであって、
(a)カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド、C1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物、及び乳酸中に溶解して溶液を形成し、ここでカルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、工程と、
(b)カルフィルゾミブ溶液を、2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマー及び糖混合物の酸性水溶液で希釈して溶液を形成する工程であって、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、
(c)工程(b)で得られた溶液をフリーズドライする工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0067】
実施形態56では、本発明は、上記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)であり、上記糖がマンニトール若しくはグリシン又はこれらの組み合わせである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0068】
実施形態57では、本発明は、上記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPであり、上記糖がマンニトール又はグリシンである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0069】
実施形態58では、本発明は、上記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0070】
実施形態59では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0071】
実施形態60では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWであり、上記糖がマンニトールである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0072】
実施形態61では、本発明は、工程(b)において上記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、実施形態55のプロセスを提供する。
【0073】
実施形態62では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0074】
実施形態63では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0075】
実施形態64では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0076】
実施形態65では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0077】
実施形態66では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態55のプロセスを提供する。
【0078】
実施形態67では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態55のプロセスを提供する。
【0079】
実施形態68では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態55のプロセスを提供する。
【0080】
実施形態69では、本発明は、工程(b)で形成された溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態55のプロセスを提供する。
【0081】
実施形態70では、本発明は、工程(b)において、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が2mg/mlである、実施形態55のプロセスを提供する。
【0082】
実施形態71では、本発明は、工程(b)において、カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で1.5:2である、実施形態55のプロセスを提供する。
【0083】
実施形態72では、本発明は、工程(b)において、カルフィルゾミブに対する乳酸の比は、重量基準で0.4:2である、実施形態55のプロセスを提供する。
【0084】
実施形態73では、本発明は、注射剤が静脈内投与される、実施形態55のプロセスを提供する。
【0085】
実施形態74では、本発明は、注射剤が皮下投与される、実施形態55のプロセスを提供する。
【0086】
実施形態75では、本発明は、治療的有効量の実施形態1~34のいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物、又は実施形態35~54のいずれか1つのキットを投与することを含む、処置を必要とする対象における多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。
【0087】
実施形態76では、本発明は、治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、実施形態75の方法を提供する。
【0088】
実施形態77では、本発明は、治療的有効量の実施形態1~34のいずれか1つのシクロデキストリン非含有医薬組成物、又は実施形態35~54のいずれか1つのキットを投与することを含む、処置を必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法を提供する。
【0089】
実施形態78では、本発明は、治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、実施形態77の方法を提供する。
【0090】
実施形態79では、本発明は、(a)安定な凍結カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩、医薬組成物、及び(b)溶解医薬組成物を含むカルフィルゾミブ注射剤キットであって、上記キットは、
(i)上記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してDMSO溶液を形成する工程であって、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が200mg/ml~250mg/mlの範囲である、工程と、
(ii)上記DMSO溶液を2℃~8℃で冷凍して上記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を形成し、任意選択的に凍結組成物を2℃~8℃で貯蔵する工程と、
(iii)上記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物をDMSO融点、好ましくは少なくとも18℃の温度で解凍して、解凍カルフィルゾミブ組成物を形成し、上記液体カルフィルゾミブ組成物を溶解医薬組成物と混合して溶液を形成し、カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程と、を含むプロセスによって調製され、
上記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、注射剤が静脈内又は皮下投与される、キットを提供する。
【0091】
実施形態80では、本発明は、上記溶解医薬組成物が、上記解凍されたカルフィルゾミブ医薬組成物を溶解して溶液を形成することができる共溶媒バイアルであって、カルフィルゾミブの濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、共溶媒バイアルと、上記解凍されたカルフィルゾミブ医薬組成物を溶解して溶液を形成することができる追加の賦形剤バイアルであって、カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、追加の賦形剤バイアルと、を含む、実施形態79のキットを提供する。
【0092】
実施形態81では、本発明は、凍結カルフィルゾミブ組成物が2℃~8℃で貯蔵され、上記希釈工程(iii)が、クリニック施設で実施される、実施形態80のキットを提供する。
【0093】
実施形態82では、本発明は、凍結カルフィルゾミブ組成物が水分不含有貯蔵容器又は装置に貯蔵される、実施形態81のキットを提供する。
【0094】
実施形態83では、本発明は、上記水分不含有容器が、0.5mLの微小遠心エッペンドルフ管、並びに凍結乾燥ストッパ及びクリンプシールを備えた3ccのガラス製Schott 1Aバイアルである、実施形態82のキットを提供する。
【0095】
実施形態84では、本発明は、上記共溶媒バイアルが、任意選択的に第1の共可溶化剤の存在下での、C1~4アルキルアルコール、ポリエチレングリコール、又はこれらの組み合わせから選択される共溶媒系を含む、実施形態80のキットを提供する。
【0096】
実施形態85では、本発明は、上記共溶媒バイアルが、乳酸である第1の共可溶化剤の存在下で、エタノール及びPEGの組み合わせから選択される共溶媒系を含有する、実施形態80のキットを提供する。
【0097】
実施形態86では、本発明は、上記追加の賦形剤バイアルが、任意選択的に、水溶性ポリマーである第2の共可溶化剤の存在下で、2.5~4.5のpHを有する水溶液を含有する、実施形態80のキットを提供する。
【0098】
実施形態87では、本発明は、上記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)である、実施形態86のキットを提供する。
【0099】
実施形態88では、本発明は、上記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPである、実施形態87のキットを提供する。
【0100】
実施形態89では、本発明は、上記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWである、実施形態87のキットを提供する。
【0101】
実施形態90では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWである、実施形態87のキットを提供する。
【0102】
実施形態91では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWである、実施形態87のキットを提供する。
【0103】
実施形態92では、本発明は、上記水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、実施形態86のキットを提供する。
【0104】
実施形態93では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態87のキットを提供する。
【0105】
実施形態94では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態87のキットを提供する。
【0106】
実施形態95では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態87のキットを提供する。
【0107】
実施形態96では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態87のキットを提供する。
【0108】
実施形態97では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態87のキットを提供する。
【0109】
実施形態98では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態87のキットを提供する。
【0110】
実施形態99では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態87のキットを提供する。
【0111】
実施形態100では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態87のキットを提供する。
【0112】
実施形態101では、本発明は、工程(iii)で形成された溶液において、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が2mg/mlである、実施形態87のキットを提供する。
【0113】
実施形態102では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で1.5:2である、実施形態87のキットを提供する。
【0114】
実施形態103では、本発明は、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で0.4:2である、実施形態87のキットを提供する。
【0115】
実施形態104では、本発明は、注射剤が静脈内投与される、実施形態87のキットを提供する。
【0116】
実施形態105では、本発明は、注射剤が皮下投与される、実施形態87のキットを提供する。
【0117】
実施形態106では、本発明は、シクロデキストリン非含有凍結カルフィルゾミブ組成物の調製プロセスであって、
(i)上記カルフィルゾミブ又はその薬学的に許容される塩をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してDMSO溶液を形成する工程であって、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が200mg/ml~250mg/mlの範囲である、工程と、
(ii)上記DMSO溶液を2℃~8℃で冷凍して上記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物を形成し、任意選択的に凍結組成物を2℃~8℃で貯蔵する工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0118】
実施形態107では、本発明は、上記凍結カルフィルゾミブ医薬組成物をDMSO融点、好ましくは少なくとも18℃の温度で解凍して、解凍カルフィルゾミブ組成物を形成し、上記液体カルフィルゾミブ組成物を溶解医薬組成物と混合して溶液を形成し、カルフィルゾミブの濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、工程であって、上記医薬組成物がシクロデキストリン非含有であり、注射に適している、工程を更に含む、実施形態106のプロセスを提供する。
【0119】
実施形態108では、本発明は、上記溶解医薬組成物が、乳酸の存在下でC1~4アルキルアルコールとポリエチレングリコールとの混合物を含んで溶液を形成し、ここでカルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が20mg/ml~50mg/mlの範囲である、実施形態107のプロセスを提供する。
【0120】
実施形態109では、本発明は、上記溶解医薬組成物が、上記溶液を更に希釈してより希釈された溶液を形成することのできる2.5~4.5のpHを有する水溶性ポリマーの酸性水溶液を含む第2のバイアルを更に含み、ここでカルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が1mg/ml~3mg/mlの範囲である、実施形態107のプロセスを提供する。
【0121】
実施形態110では、本発明は、上記水溶性ポリマーが1-エテニルピロリジン-2-オン(PVP)である、実施形態107のプロセスを提供する。
【0122】
実施形態111では、本発明は、上記水溶性ポリマーが、3,000MW~40,000MW、10,000MW~17,000MW、又は10,000MWの範囲の分子量を有するPVPである、実施形態107のプロセスを提供する。
【0123】
実施形態112では、本発明は、上記水溶性ポリマーが24%PVP 10,000MW、29%PVP 10,000MW、10%PVP 12,000MW、20%PVP 12,000MW、24%PVP 12,000MW、又は24%PVP 17,000MWである、実施形態107のプロセスを提供する。
【0124】
実施形態113では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MW又は24%PVP 12,000MWである、実施形態107のプロセスを提供する。
【0125】
実施形態114では、本発明は、上記水溶性ポリマーが20%PVP 12,000MWである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0126】
実施形態115では、本発明は、上記酸性水溶液のpHが3.0~3.5の範囲である、実施形態109のプロセスを提供する。
【0127】
実施形態116では、本発明は、より希釈された溶液が、0.75%~1%のジメチルスルホキシド、1.0%~1.8%のPEG400、1.0%~1.8%のエタノール、0.10%~0.25%の乳酸、20%~30%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0128】
実施形態117では、本発明は、より希釈された溶液が、0.2%~2%のジメチルスルホキシド、0.5%~2.5%のPEG400、0.5%~2.5%のエタノール、0.05%~0.5%の乳酸、10%~40%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0129】
実施形態118では、本発明は、より希釈された溶液が、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.05%、1.1%、1.15%、又は1.2%のジメチルスルホキシド;1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のPEG400;1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、及び1.6%のエタノール;0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、及び0.35%の乳酸;約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、及び33%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0130】
実施形態119では、本発明は、より希釈された溶液が、約0.85%のジメチルスルホキシド、約1.4%のPEG400、約1.4%のエタノール、約0.15%の乳酸、約28.8%のPVP 10,000MWを含み、カルフィルゾミブの濃度が2mg/mlである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0131】
実施形態120では、本発明は、より希釈された溶液が、200mOsmo~600mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態109のプロセスを提供する。
【0132】
実施形態121では、本発明は、より希釈された溶液が、250mOsmo~400mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態109のプロセスを提供する。
【0133】
実施形態122では、本発明は、より希釈された溶液が、280mOsmo~320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態109のプロセスを提供する。
【0134】
実施形態123では、本発明は、より希釈された溶液が、280、290、300、310、又は320mOsmoの溶液オスモル濃度を有する、実施形態109のプロセスを提供する。
【0135】
実施形態124では、本発明は、上記より希釈された溶液において、カルフィルゾミブ又は上記その塩の濃度が2mg/mlである、実施形態109のプロセスを提供する。
【0136】
実施形態125では、本発明は、上記より希釈された溶液において、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で1.5:2である、実施形態109のプロセスを提供する。
【0137】
実施形態126では、本発明は、上記より希釈された溶液において、カルフィルゾミブに対する乳酸の比が、重量基準で0.4:2である、実施形態109のプロセスを提供する。
【0138】
実施形態127では、本発明は、注射剤が静脈内投与される、実施形態109のプロセスを提供する。
【0139】
実施形態128では、本発明は、注射剤が皮下投与される、実施形態109のプロセスを提供する。
【0140】
実施形態129では、本発明は、実施形態79~105のいずれか1つの注射剤キットから得られた治療的有効量のカルフィルゾミブ溶液を投与することを含む、処置を必要とする対象における多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。
【0141】
実施形態130では、本発明は、治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、実施形態129の方法を提供する。
【0142】
実施形態131では、本発明は、実施形態79~105のいずれか1つの注射剤キットから得られた治療的有効量のカルフィルゾミブ溶液を投与することを含む、処置を必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法を提供する。
【0143】
実施形態132では、本発明は、治療的有効量の化学療法剤の同時、逐次、又は個別投与を更に含む、実施形態131の方法を提供する。
【0144】
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。方法及び材料は、本開示での使用のために本明細書に記載されており;当該技術分野で公知の、他の好適な方法及び材料も使用することができる。材料、方法及び実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースへの登録及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先されるであろう。
【0145】
本開示のその他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1】(a)水、(b)シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標))、及び本発明のシクロデキストリン非含有配合物における、カルフィルゾミブ活性成分の視覚的比較を示す。
図2】CFZ-APIを可溶化するための溶媒球体の3D溶解度プロットを示す。
図3】CFZ-APIを可溶化するための各溶解度パラメータを比較する2D溶解度プロットを示す。
図4-1】δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図4-2】δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図4-3】δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図4-4】δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図4-5】δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図5】δD=16~24;δP=8~14;及びδH=17~24を有するHansen Solubility Parameterソフトウェアによって生成された溶媒のリストを示す。
図6A】2~8℃(A)及び25℃(B)の温度で、液状のCAPTISOL(登録商標)非含有配合物のRP-HPLCによって測定して有意なパーセント主ピーク喪失がないことを示す。
図6B】2~8℃(A)及び25℃(B)の温度で、液状のCAPTISOL(登録商標)非含有配合物のRP-HPLCによって測定して有意なパーセント主ピーク喪失がないことを示す。
図7】2℃~8℃で4週間貯蔵時のクリンプシールを有する容器及びクリンプシールを有さない容器中の凍結カルフィルゾミブ製剤の間の視覚的差異を示す。
図8】2~8℃における凍結CFZ-APIを示す。DMSO中の高濃度のCFZ-APIは、RP-HPLCで測定して、4週間目におけるパーセント主ピークの有意な喪失がなかった。
図9】マウスに皮下投与されたCAPTISOL(登録商標)非含有カルフィルゾミブ配合物のプロテアソーム活性を示す。
図10】マウスに静脈内投与されたCAPTISOL(登録商標)非含有カルフィルゾミブ配合物のプロテアソーム活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0147】
定義
用語「Cx~yアルキル」は、鎖中にx~y個の炭素を含有する直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基を含む非置換の飽和炭化水素基を指す。
【0148】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当該技術分野で認知されており、非置換及び置換アミン及びその塩の両方を指し、これは例えば、以下の一般式によって表され得る部分であり:
【化3】
式中、R、R10、及びR10’は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、-(CH-Rを表し、又は、R及びR10は、これらが結合するN原子と共に取られて、環式構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させ;Rはアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、又はポリシクリル(polycyclyl)を表し、mは0又は1~8の整数である。いくつかの実施形態では、R又はR10の1つのみがカルボニルであり、例えば、R、R10、及び窒素は共にイミドを形成しない。いくつかの実施形態では、R及びR10(並びに任意選択的にR10’)は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、又は-(CH-Rを表す。特定の実施形態では、アミノ基は塩基性であり、つまり、そのプロトン化形態は7.00超のpKaを有する。
【0149】
用語「緩衝剤」は、溶液中のその存在によって、pHの単位変化を生じさせるために添加する必要がある酸又はアルカリの量を増加させる物質である。したがって、緩衝剤は、組成物のpHを調整することを助ける物質である。典型的には、緩衝剤は、所望のpH、及び組成物のその他の成分との相溶性に基づいて選択される。一般には、緩衝剤は、組成物の所望のpHから1単位以下だけ少ないか又は1単位以下だけ多いpKa(又はその組成物が溶解時に生成するpKa)を有する。
【0150】
本明細書で使用するとき、用語「水」とは、pHが約7.0のHOの溶液を指す。
【0151】
用語「Cx~yアルキルアルコール」は、ヒドロキシ基で置換されたCx~yアルキル基を指す。
【0152】
用語「置換された」は、分子の1つ以上の水素でない原子上の水素を置換した置換基を有する部分を指す。「置換」又は「~で置換された」は、そのような置換が、置換される原子及び置換基の許容された原子価に従い、及び置換が、例えば、転位、環化、脱離などによるような変化を自然に受けない安定な化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むものとする。広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環状及び環状置換基、分岐及び非分岐置換基、炭素環及び複素環置換基、芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。許容可能な置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物について同じであるか又は異なり得る。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載した有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート又はチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。当業者は、炭化水素鎖上で置換された部分が、適切な場合、それ自体置換され得ることを理解するであろう。
【0153】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」とは、約2~約10アミノ酸長のアミノ酸の鎖を指す。
【0154】
本明細書で使用するとき、用語「天然の」又は「天然発生の」アミノ酸とは、20種の最も一般的な発生アミノ酸のうちの1つを指す。天然アミノ酸は、その標準の1又は3文字の略称によって参照される。
【0155】
用語「予防的又は治療的」処置は、当該技術分野で認知されており、宿主に1種以上の本組成物を投与することが含まれる。それが望ましくない病態(例えば、宿主動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床兆候の前に投与される場合、処置は予防的であり(すなわち、それは宿主を望ましくない病態の発症から保護する)、一方、それが望ましくない病態の兆候の後に投与される場合、処置は治療的である(すなわち、それは、既存の望ましくない病態又はその副作用を減少させるか、改善するか、又は安定化することが意図される)。
【0156】
本明細書で使用するとき、用語「プロテアソーム」は、免疫プロテアソーム及び構成型プロテアソームを含むことが意図される。
【0157】
本明細書で使用するとき、用語「阻害剤」は、酵素、又は酵素、受容体、若しくはその他の薬理学的標的の系の活性を遮断するか又は低減させる化合物を説明することを意図する(例えば、suc-LLVY-AMC、Box-LLR-AMC、及びZ-LLE-AMCなどの標準の蛍光ペプチド基質のタンパク質分解開裂の阻害、20Sプロテアソームの様々な触媒活性の阻害)。阻害剤は、競合的(competitive)、不競合的(uncompetitive)、又は非競合的(noncompetitive)阻害で作用することができる。阻害剤は、可逆的にも不可逆的にも結合することができるため、本用語は、酵素の自殺基質である化合物を含む。阻害剤は、酵素の活性部位上又はその付近の1つ以上の部位を修飾することもでき、或いは酵素の他の位置で立体構造変化を生じさせることもできる。本明細書では、用語「阻害剤」は科学文献よりも広義で用いられて、アゴニスト、アンタゴニスト、刺激物質、補因子などといった薬理学的又は治療的に有用な剤のその他の分類も包含する。
【0158】
本明細書で使用するとき、「低溶解度」とは、例えば水又は別の溶液(例えば第1の組み合わせ)中で、やや溶けにくい、溶けにくい、極めて溶けにくい、ほとんど溶けない、又は溶けないことを指す。用語「やや溶けにくい、溶けにくい、極めて溶けにくい、ほとんど溶けない、又は溶けない」は、米国薬局方(United States Pharmacopeia、USP)の近似溶解度表現の一般用語の意味に対応する。例えば、DeLuca and Boylan in Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,vol.1,Avis,K.E.,Lackman,L.and Lieberman,H.A.,eds;Marcel Dekkar:1084,pages 141-142を参照されたい。
【0159】
【表1】
【0160】
本明細書で使用するとき、「不均一」とは、均質でない(多相)組成物を有する溶液を指す。例えば、不均一溶液としては、液体中の固形粒子の懸濁液(例えばスラリー)が挙げられ得る。
【0161】
本明細書で使用するとき、「均一」とは、その体積全体にわたって一定又は均質である溶液(単相、透明な溶液として観測される)を指す。
【0162】
本処置方法に関する化合物の「治療的有効量」とは、所望の投薬レジメン(患者、例えばヒトに対する)の一部として投与されると、例えば、あらゆる医療処置に適用可能である妥当な利益/リスク比で、処置対象の疾患若しくは状態、又は美容目的の臨床的に許容可能な基準に基づいて症状を緩和する、状態を改善する、又は病状の発病を遅延させる、調製物中の化合物の量を指す。
【0163】
本明細書で使用するとき、用語「処置する」又は「処置」とは、患者の状態を改善又は安定化させる方法で、状態の症状、臨床的徴候、及び基礎病理を逆転、低減、又は停止させることを含む。
【0164】
多くの小分子有機化合物薬剤が、pHに依存する溶解度を有する。薬剤の投与に適したpH範囲(静脈内投与の場合でpH3~pH10.5の耐容pH範囲が一般的に検討される、注射によるものなどの)は、水溶液中で薬剤の十分な溶解度が見られるものと同じpH(例えばpH2以下での)ではないことは多い。投与(例えば注射による)を許容且つ耐容できるpH範囲で溶液中の薬剤の薬学的に有用な濃度レベルを実現するため、水溶液を導入する際の溶媒の添加及びpH調節の順序は、本明細書で特許請求される本発明の配合物に対する有用な検討事項である。
【0165】
塩基性薬剤分子の場合では、通常は低いpHで溶解度は強化されるが、これは、シクロデキストリンなしで用いられると、場合によっては安定性及び貯蔵寿命の課題ももたらす。例えば、十分な溶解度は、酸で溶液のpHを低下させることによって達成され得るが、こうしたpHの減少は、酸性条件からくる分解反応をもたらす場合がある。表1で、pHを低下させることで溶解度のいくらか穏やかな増加を示す、カルフィルゾミブの固有の水溶解度データを参照されたい。
【0166】
【表2】
【0167】
小分子薬剤及び生体分子には、小さな不活性ペプチド断片におけるアミドの加水分解、又は官能性エポキシド部分の加水分解開環など、数多くの酸媒介性の分解反応経路が存在する。酸媒介性分解の生成物は、薬理学的活性を欠く場合があり、また、微量なレベルであったとしても毒性又は遺伝毒性の化合物である場合がある。したがって、適切なpHを有する水溶液を導入する前に、CFZ-APIが、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒及び本発明の共溶媒混合物に完全に溶解していることが有益である。
【0168】
低pHで発生する酸媒介性分解の副反応を避けるという相反する必要性のバランスを取るために、本発明者らは、可溶性ポリマー共可溶化剤の添加と組み合わせた固有のpH条件を発見した。驚くべきことに、可溶性ポリマー共可溶化剤、90%以上のCFZ-APIを可溶化する、好ましくはピロリドン環、又はポリビニルピロリドン(PVP)環、好ましくは10,000MWのPVPなどの類似の構造を含むポリマーの存在下で、特定の濃度の酸、例えばメタンスルホン酸(pH3.0~3.5前後)を添加することによって、水溶液のpHは達成した。ピロリドン環を含むその他の共可溶化剤もCFZを可溶化及び安定化するように作用し得る。CFZの可溶化に有用となるピロリドン剤のいくつかの例としては、溶媒、モノマー、又はポリマーとしてのメチルピロリドン(例えばn-ビニル3-メチル2-ピロリドン、n-ビニル4-メチル2-ピロリドン、及びn-ビニル5-メチルピロリドン)が挙げられる。
【0169】
CFZ-APIを溶液に溶解する工程の数を最小限にすることは、製造及びクリニックでの取り扱いの容易さの助けとなる。多工程手順を簡略化するために、水混和性溶媒、共溶媒、酸、及び含水溶液の様々な組み合わせを混合した。上記で論じた配合物試験試料番号1~3から、水混和性溶媒と共溶媒との組み合わせが、≧20mg/mlでCFZ-APIの類似の溶解度をもたらすことができた。更なるスクリーニングから、CFZ-APIが溶解しないために、CFZ-APIを≧2mg/mlへと更に希釈するための水性溶媒工程の導入は、水混和性溶媒及び/又は共溶媒工程と組み合わせることができないことが判明した。CFZ-APIの溶解度を最大化するために、すぐ使用できる製剤又は凍結乾燥製剤となり得る製剤提示の最後の選択肢の前に、溶媒混合物のそれぞれが、多工程パターンで添加されなければならないことが判明した。シクロデキストリン非含有凍結乾燥製剤の多工程調製のためのフロースキームを以下に記載する。
【数1】
【0170】
フロースキーム調製の工程1では、その非常に低い水溶解度のために、CFZ-API固体を溶解するため、最初に水混和性有機溶媒と共溶媒系とからなる非水溶媒を添加する。フロースキーム調製の工程2では、非水CFZ-API溶液を、続いて最終pH3.0~3.5の酸性の水性環境に導入して、最大CFZ-API溶解度を得る。続いて、NORMJECT(登録商標)(シリコーンフリー)シリンジ上に装備された0.22μm PESシリンジフィルタを用いることによって、溶液を濾過した。続いて、得られた濾液を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)上でCFZ-API溶解度の回復及び安定性に関して点検した。RP-HPLCを使用して、3~5ポイント参照標準曲線を用いてピーク分解及びCFZ-APIの回復を判定した。標準緩衝液(水中50%アセトニトリル)に対しては標準のピーク積分を取り、一方で配合物の緩衝液に対して配合物試料のピーク積分を取った。図の工程3では、濾液上で凍結乾燥工程を実施した。注射用水(WFI)で凍結乾燥生成物を再構成すると、本発明の好ましい配合物中で約1.5mg/ml~5mg/mlのCFZ-API溶解度が得られた。
【0171】
CFZ-API溶解度を最大化するために、溶液を酸性化してCFZ-APIの目標の濃度及びpHを得る個別工程を含む多工程の溶媒添加を用いた。シクロデキストリン非含有CFZ-API配合物は、以下に示す2工程又は3工程スキームで作製することができる。
【数2】
【0172】
第1の工程は、CFZ-API APIを有機混合物に溶解して約20~50mg/mlにすることからなり得る。この有機混合物は、DMSO、PEG400、エタノール、及び乳酸からなり得る。第2の工程は、水に含まれた酸性の可溶化剤含有溶液を添加して、最終CFZ-API濃度を2mg/mlにすることであり得る。この混合物は、ポビドン、水、及びMSAからなり、約2.9のpHになり得る。この混合物を、CFZ-APIを含有する第1の工程に添加した結果、約pH3で透明溶液に部分的に沈殿するはずである。工程2が標的pHを達成しなかった場合、最小のMSA又はMEAで3の標的pHを達成するための追加工程が必要となる場合がある。一旦pHが達成されたら、可溶化しなかった過剰なCFZ-APIを濾過するための濾過が必要となる。これらの実験からの研究結果は、最大のCFZ-API溶解度を得るためには、これらの賦形剤をCFZ-APIに導入する順番が重要であることを示唆する。例えば、ポビドンを含む水性混合物は、CFZ-API APIに溶解しないため、有機混合物より先にCFZ-APIに添加することはできない。
【0173】
凍結乾燥及び注射可能エマルジョンは別として、シクロデキストリン非含有CFZ製剤提示の別の実施形態は、2℃~8℃で凍結形態である。この選択肢は、CFZの高い溶解度及び安定性を維持するのに凍結乾燥機又は冷凍庫が不要となるため、有利である。組成物は、CFZ APIをDMSOで≧200mg/mlに溶解し、2℃~8℃で貯蔵して凍結生成物を得ることによって作製することができる。高温でのこの凍結状態は、19℃であるDMSOの高い融解温度に起因する。凍結したシクロデキストリン非含有CFZ-API製剤の調製のための作製前及び作製後のフロースキームを以下で説明する。第1の工程は、作製することによって実施される。2℃~8℃での貯蔵及び輸送は、製剤の凍結状態を維持する。クリニックは、工程2及び3の配合物溶液、又はこれらの組み合わせを受領して、臨床投与時に解凍製剤に添加する。
【数3】
【0174】
使用方法
プロテアソーム阻害の生物学的適用例は非常に多い。プロテアソーム阻害は、増殖性疾患、神経毒性/変性疾患、アルツハイマー病、虚血症、炎症、自己免疫疾患、HIV、癌、臓器移植片拒絶反応、敗血性ショック、抗原提示阻害、ウイルス遺伝子発現の減少、寄生虫感染症、アシドーシスに関連する症状、黄斑変性症、肺疾患症、筋肉消耗性疾患、線維症、骨及び毛髪成長疾患が挙げられるがこれらに限定されない多数の疾患の予防及び/又は処置法として提案されてきている。したがって、エポキシケトンクラスの分子などの非常に効力の高いプロテアソーム特異性化合物のための薬学的配合物は、患者に薬物を投与し、これらの症状を処置する手段を提供する。
【0175】
細胞レベルにおいて、様々なプロテアソーム阻害剤による細胞の処置の際に、ポリユビキチン化タンパク質の蓄積、細胞形態の変化、及びアポトーシスが報告されている。プロテアソーム阻害は、可能な抗腫瘍治療戦略としても提案されている。抗腫瘍化合物に対する検査においてエポキソマイシンが最初に特定されたという事実は、プロテアソームを抗腫瘍化学療法標的として実証する。したがって、これらの組成物は癌の処置に有用である。
【0176】
インビトロ及びインビボモデルの両方で、悪性細胞が一般にプロテアソーム阻害の影響を受けやすいことが示されている。実際に、プロテアソーム阻害は、多発性骨髄腫の処置のための治療戦略として既に実証されている。これは、増殖性の高い悪性細胞が、急速なタンパク質除去をプロテアソーム系に依存していること一部起因し得る(Rolfe et al.,J.Mol.Med.(1997)75:5-17;Adams,Nature(2004)4:349-360)。したがって、治療的有効量の本明細書で提供されるペプチドプロテアソーム阻害剤を、こうした処置を必要とする患者に投与することを含む、癌の処置法が本明細書で提供される。
【0177】
本明細書で使用するとき、用語「癌」としては、血液、骨、及び固形腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。癌とは、膀胱、血液、骨、脳、乳房、頚部、胸部、結腸、子宮内膜、食道、眼、頭部、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、口、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、皮膚、胃、精巣、喉、及び子宮の癌が挙げられるがこれらに限定されない、血液、骨、臓器、皮膚組織、及び血管系の疾患を指す。具体的な癌としては、白血病(急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリー細胞白血病)、成熟B細胞新生物(小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えばワルデンストローム大グロブリン血症)、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、モノクローナル免疫グロブリン沈着疾患、重鎖病、結節外周辺帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節性周辺帯B細胞リンパ腫(NMZL)、濾胞性リンパ腫、外套細胞リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫及びバーキットリンパ腫/白血病)、成熟T細胞及びナチュラル・キラー(NK)細胞新生物(T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大型顆粒リンパ球性白血病、進行性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、結節外NK/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾臓T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫(セザリー症候群)、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、不特定の末梢T細胞リンパ腫及び未分化大細胞リンパ腫)、ホジキンリンパ腫(結節性硬化症、混合細胞充実性、リンパ球豊富、リンパ球枯渇型又は非枯渇型、結節性リンパ球優勢型)、骨髄腫(多発性骨髄腫、無痛性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫)、慢性骨髄増殖性疾患、脊髄形成異常/骨髄増殖性疾患、脊髄形成異常症候群、免疫不全関連リンパ球増殖性障害、組織球性及び樹状細胞新生物、肥満細胞症、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、悪性巨細胞腫、骨髄腫骨疾患、骨肉腫、乳癌(ホルモン依存型、ホルモン非依存型)、婦人科癌(子宮頚部、子宮内膜、卵管、妊娠性絨毛性疾患、卵巣、腹膜、子宮、膣及び外陰部)、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、悪性黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌腫、カポジ肉腫、星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、乏突起膠腫、上衣細胞腫、多形性グリア芽細胞腫、混合膠腫、乏星状細胞腫、髄芽腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞種、胚細胞腫、奇形腫、悪性中皮腫(腹膜中皮腫、心膜中皮腫、胸膜中皮腫)、胃腸管膵臓又は胃腸膵臓の神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド、膵臓内分泌腫瘍(PET)、結腸直腸腺癌、結腸直腸癌腫、進行性神経内分泌腺腫瘍、平滑筋肉腫膠様腺癌、印環細胞腺癌、肝細胞癌腫、胆管癌、肝芽細胞腫、血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成(結節性再生過形成、過誤腫)、非小細胞肺癌(NSCLC)(扁平細胞肺癌、腺癌、大細胞肺癌)、小細胞肺癌腫、甲状腺癌、前立腺癌(ホルモン抵抗性、アンドロゲン非依存性、アンドロゲン依存性、ホルモン非感受性)、並びに軟組織肉腫(線維肉腫、悪性線維性組織球腫、皮膚線維肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫平滑筋肉腫、血管内皮腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍/神経線維肉腫、骨外性骨肉腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるペプチドプロテアソーム阻害剤、又はこれを含む医薬組成物は、患者における多発性骨髄腫を処置するために投与され得る。例えば、多発性骨髄腫は、難治性及び/若しくは難治性多発性骨髄腫、又は新規に診断された多発性骨髄腫を含み得る。
【0179】
多くの造血組織及びリンパ組織の腫瘍が、細胞増殖、又は特定の種類の細胞の増加を特徴とする。慢性骨髄増殖性疾患(CMPD)は、骨髄細胞系列の1つ以上の骨髄の増殖を特徴とするクローン性造血幹細胞障害であり、末梢血中の顆粒球、赤血球、及び/又は血小板の数の増加をもたらす。そのため、こうした疾患の処置のためのプロテアソーム阻害剤の使用は魅力的であり、試験されている(Cilloni et al.,Haematologica(2007)92:1124-1229)。CMPDとしては、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、真性赤血球増加症、慢性特発性骨髄線維症、本態性血小板血症、及び分類不可能な慢性骨髄増殖性疾患が挙げられ得る。CMPDを処置する方法であって、こうした処置を必要とする患者に、有効量の本明細書で開示されるプロテアソーム阻害剤化合物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0180】
脊髄形成異常/骨髄増殖性疾患、例えば慢性骨髄単球性白血病、異型慢性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、及び分類不可能な脊髄形成異常/骨髄増殖性疾患は、骨髄細胞系列の1つ以上の増殖に起因する骨髄の細胞過多を特徴とする。本明細書に記載の組成物でプロテアソームを阻害することは、こうした処置を必要とする患者に有効量の本組成物を提供することにより、これらの脊髄形成異常/骨髄増殖性疾患の処置に役立ち得る。
【0181】
脊髄形成異常症候群(MDS)とは、主要な骨髄性細胞株の1つ以上における異形成及び無効造血を特徴とする造血幹細胞障害の群を指す。これらの血液悪性腫瘍におけるプロテアソーム阻害剤によるNF-kBの標的化は、アポトーシスを誘発し、それにより悪性細胞を死滅させる(Braun et al.Cell Death and Differentiation(2006)13:748-758)。MDSを処置するための方法であって、こうした処置を必要とする患者に、有効量の本明細書で提供される化合物を投与することを含む、方法が本明細書で更に提供される。MDSとしては、難治性貧血、環状鉄芽球を伴う難治性貧血、多分化異形成を伴う難治性血球減少、過剰芽細胞を伴う難治性貧血、分類不可能な脊髄形成異常症候群、及び単離された欠失(5q)染色体異常を伴う脊髄形成異常症候群が挙げられる。
【0182】
肥満細胞症は、1つ以上の器官系における肥満細胞の増殖及びその後の蓄積である。肥満細胞症としては、皮膚肥満細胞症、無痛性全身性肥満細胞症(ISM)、関連したクローン性血液学的非肥満細胞系統疾患を伴う全身性肥満細胞症(SM-AHNMD)、進行性全身性肥満細胞症(ASM)、肥満細胞白血病(MCL)、肥満細胞肉腫(MCS)、及び皮膚外肥満細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本明細書では、肥満細胞症を処置するための方法であって、肥満細胞症と診断された患者に、有効量の本明細書で開示される化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0183】
プロテアソームはNF-κBを調節し、それによりNF-κBは免疫及び炎症反応に関与する遺伝子を調節する。例えば、NF-κBは、免疫グロブリン軽鎖κ遺伝子、IL-2受容体α鎖遺伝子、クラスI主要組織適合性複合体遺伝子、並びに、例えばIL-2、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子、及びIFN-βをコードする複数のサイトカイン遺伝子の発現に必要である(Palombella et al.,Cell(1994)78:773-785)。したがって、IL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、IFN-β、又は他の以前に言及されたタンパク質のいずれかの発現のレベルに影響を与える方法が本明細書で提供され、各方法は、患者に、有効量の本明細書で開示されるプロテアソーム阻害剤組成物を投与することを含む。
【0184】
患者における自己免疫疾患を処置する方法であって、治療的有効量の本明細書に記載の化合物を投与することを含む、方法も本明細書で提供される。本明細書で「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織から生じ、またこれに対する疾患又は障害である。自己免疫疾患又は障害の例としては、乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症反応;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患に関連した反応(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎);呼吸困難症候群(成人呼吸困難症候群(ARDS)を含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹及び喘息などのアレルギー状態、並びにT細胞の浸潤及び慢性炎症反応を伴う他の状態;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病(例えば、I型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症性糖尿病;並びに結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、及び脈管炎で典型的に見られるサイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅延型過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球の血管外遊出が関与する疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症又はクームス陽性貧血が挙げられるがこれらに限定されない);重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート-イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体腎炎;IgA腎症;IgM多発ニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP);又は自己免疫性血小板減少症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
免疫系は、ウイルス感染している、発癌性形質転換を生じている、又はその表面に未知のペプチドを提示している自己細胞をスクリーニングする。細胞内タンパク質分解は、Tリンパ球に対する提示のための小ペプチドを生成し、MHCクラスI媒介免疫応答を誘引する。したがって、細胞における抗原提示を阻害又は改変するための免疫調節剤としての本明細書で提供されるプロテアソーム阻害剤の使用方法であって、細胞を本明細書に記載の化合物に曝露する(又は患者に投与する)ことを含む、方法が本明細書で提供される。特定の実施形態は、患者における移植片対宿主病又は宿主対移植片病などの移植片又は移植関連疾患を処置する方法であって、治療的有効量の本明細書に記載の化合物を投与することを含む、方法を含む。本明細書で使用するとき、用語「移植片」とは、レシピエントに移植するためにドナーから誘導された生物材料を指す。移植片としては、例えば、膵島細胞などの単離された細胞;新生児の羊膜、骨髄、造血前駆細胞、及び眼組織、例えば角膜組織などの組織;並びに、皮膚、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺葉、肺、腎臓、管状臓器(例えば、腸、血管、又は食道)などの器官などの広範な材料が挙げられる。管状臓器は、食道、血管、又は胆管の損傷した部分を置き換えるために使用され得る。皮膚移植片は、火傷だけでなく、損傷した腸に対する包帯材として、又は横隔膜ヘルニアなどの特定の欠損を閉鎖するために使用され得る。移植片は、死体からであるか又は生体ドナーからであるかに関係なく、ヒトを含む任意の哺乳動物供給源から得られる。場合によっては、ドナー及びレシピエントは同じ患者である。いくつかの実施形態では、移植片は骨髄又は臓器、例えば心臓であり、移植片のドナー者及び宿主はHLAクラスII抗原が一致する。
【0186】
組織球性細胞及び樹状細胞新生物は、リンパ球に対する抗原の処理及び提示において大きな役割を担う食細胞及び補助細胞から誘導される。樹状細胞におけるプロテアソーム含有量を枯渇させると、これらの抗原誘導性応答が改変されることが示されている(Chapatte,et al.Cancer Res.(2006)66:5461-5468)。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットが、組織球性細胞及び樹状細胞新生物を有する患者に投与され得る。組織球性細胞及び樹状細胞新生物としては、組織球肉腫、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、ランゲルハンス細胞肉腫、指状嵌入性樹状細胞肉腫/腫瘍、濾胞樹状細胞肉腫/腫瘍、及び不特定の樹状細胞肉腫が挙げられる。
【0188】
プロテアソームの阻害は、細胞型が増殖する疾患及び免疫不全障害の処置に有益であることが示されており、そのため、いくつかの実施形態では、有効量の本開示の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、原発性免疫不全障害(PID)に関連したリンパ増殖性疾患(LPD)の処置が提供される。B細胞及びT細胞新生物並びにリンパ腫を含むリンパ増殖性疾患の発生の増加に関連した免疫不全の最も一般的な臨床背景は、原発性免疫不全症候群及び他の原発性免疫疾患、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染、固形臓器又は骨髄同種移植を受けた患者における医原性免疫抑制、並びにメトトレキサート処置に関連した医原性免疫抑制である。LPDに一般的に関連した他のPIDは、限定されないが、毛細血管拡張性運動失調症(AT)、ウィスコット-アルドリッチ症候群(WAS)、分類不能型免疫不全症(CVID)、重症複合型免疫不全症(SCID)、X連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)、ナイミーヘン染色体不安定症候群(NBS)、高IgM症候群、及び自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)である。
【0189】
プロテアソーム阻害はまた、NF-κB活性化の阻害及びp53レベルの安定化に関連している。したがって、本明細書で提供される組成物は、細胞培養物中でNF-κB活性化を阻害し、p53レベルを安定化するためにも使用され得る。NF-κBは、炎症の主要調節因子であるため、抗炎症治療介入の魅力的な標的である。したがって、本明細書で提供される組成物は、COPD、乾癬、喘息、気管支炎、気腫、及び嚢胞性線維症が挙げられるがこれらに限定されない、炎症に関連した状態の処置に有用となり得る。
【0190】
開示される組成物は、筋肉消耗などの、プロテアソームのタンパク質分解機能により直接媒介される状態、又はNF-κBなどの、プロテアソームにより処理されるタンパク質を介して間接的に媒介される状態を処置するために使用され得る。プロテアソームは、細胞制御(例えば、細胞周期、遺伝子転写、及び代謝経路)、細胞間通信、及び免疫応答(例えば、抗原提示)に関与するタンパク質(例えば、酵素)の急速な排除及び翻訳後処理に関与する。以下で論じられる具体例は、β-アミロイドタンパク質及び調節タンパク質、例えばサイクリン及び転写因子NF-κBを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、卒中、神経系に対する虚血性損傷、神経外傷(例えば、衝撃による脳損傷、脊髄損傷、及び神経系に対する外傷性損傷)、多発性硬化症及びその他の免疫媒介型ニューロパチー(例えば、ギラン-バレー症候群及びその異型、急性運動軸索性ニューロパチー、急性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、及びフィッシャー症候群)、HIV/AIDS認知症症候群、アクソノミー(axonomy)、糖尿病性ニューロパチー、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、細菌性、寄生虫性、真菌性、及びウイルス性髄膜炎、脳炎、血管性認知症、多発梗塞性認知症、レヴィー小体性認知症、ピックス病などの前頭葉認知症、皮質下認知症(例えばハンチントン又は進行性核上麻痺)、局所性皮質萎縮症候群(例えば原発性失語症)、代謝毒性認知症(例えば慢性甲状腺機能低下症又はB12欠損症)、並びに感染(例えば梅毒又は慢性髄膜炎)によって引き起こされる認知症が挙げられるがこれらに限定されない神経変性疾患及び状態を処置するのに有用である。
【0192】
アルツハイマー病は、老人斑及び脳血管におけるβ-アミロイドタンパク質(β-AP)の細胞外沈着物を特徴とする。β-APは、アミロイドタンパク質前駆体(APP)から誘導される39~42アミノ酸のペプチド断片である。APPの少なくとも3つのアイソフォームが知られている(695、751、及び770アミノ酸)。mRNAの選択的スプライシングがアイソフォームを生成し、正常処理はβ-AP配列の一部分に影響し、それによりβ-APの生成を防止する。プロテアソームによる異常タンパク質処理は、アルツハイマー脳における多量のβ-APに寄与すると考えられている。ラット中のAPP処理酵素は、約10種類の異なるサブユニット(22kDa~32kDa)を含有する。25kDaのサブユニットは、X-Gln-Asn-Pro-Met-X-Thr-Gly-Thr-SerのN末端配列を有し、これは、ヒトマクロパインのβ-サブユニットと同一である(Kojima,S.et al.,Fed.Eur.Biochem.Soc.,(1992)304:57-60)。APP処理酵素は、Gln15--Lys16結合で開裂し、酵素はまた、カルシウムイオンの存在下において、Met-1--Asp1結合及びAsp1--Ala2結合で開裂して、β-APの細胞外ドメインを放出する。
【0193】
したがって、一実施形態は、有効量の本明細書で提供される組成物を患者に投与することを含む、アルツハイマー病を処置する方法である。こうした処置は、β-AP処理速度を低減すること、β-APプラーク形成速度を低減すること、β-AP生成速度を低減すること、及びアルツハイマー病の臨床兆候を低減することを含む。
【0194】
悪液質及び筋肉消耗疾患を処置する方法も本明細書で提供される。プロテアソームは、網状赤血球の成熟化及び線維芽細胞の成長において多くのタンパク質を分解させる。インスリン又は血清が欠乏した細胞中では、タンパク質分解の速度はほぼ倍増する。プロテアソームの阻害は、タンパク質分解を低減し、それにより、筋肉タンパク質の損失及び腎臓又は肝臓への窒素負荷の両方を低減する。本明細書で提供されるペプチドプロテアソーム阻害剤は、癌、慢性感染性疾患、熱病、筋肉の不使用(萎縮)及び脱神経、神経損傷、絶食、アシドーシスに付随する腎不全、並びに肝不全などの状態の処置に有用である。例えば、Goldbergの米国特許第5,340,736号明細書を参照されたい。処置方法は、細胞における筋肉タンパク質分解の速度を低減することと、細胞内タンパク質分解の速度を低減することと、細胞内のp53タンパク質分解の速度を低減することと、p53関連癌の成長を阻害することと、を含む。これらの方法はそれぞれ、細胞(インビボ又はインビトロ、例えば患者における筋肉)を、有効量の本明細書で開示される医薬組成物に接触させることを含む。
【0195】
線維症は、線維芽細胞の過剰増殖性成長から生じる瘢痕組織の過剰な且つ持続性の形成であり、TGF-βシグナル伝達経路の活性化に関連する。線維症は、細胞外基質の広範囲な堆積を伴い、実質的に任意の組織内で、又はいくつかの異なる組織にわたって生じ得る。通常、TGF-β刺激時に標的遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナル伝達タンパク質(Smad)のレベルは、プロテアソーム活性により調節される。しかしながら、TGF-βシグナル伝達成分の分解の促進が、癌及び他の過剰増殖状態において観察されている。したがって、特定の実施形態では、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、IgA腎症、肝硬変、胆管閉鎖、鬱血性心不全、強皮症、放射線誘導線維症、並びに肺線維症(特発性肺線維症、膠原血管病、サルコイドーシス、間質性肺疾患、及び外因性肺障害)などの過剰増殖状態を処置するための方法が提供される。火傷被害者の処置は、線維症によって妨げられる場合が多いため、いくつかの実施形態では、火傷の処置のために本明細書で提供される阻害剤が局所又は全身投与によって投与され得る。手術後の創傷縫合は、多くの場合、外観を損なう瘢痕を伴うが、これは線維症の阻害により予防され得る。したがって、特定の実施形態では、瘢痕化を予防又は低減するための方法が本明細書で提供される。
【0196】
プロテアソームにより処理される別のタンパク質は、Relタンパク質ファミリーのメンバーであるNF-κBである。転写活性化因子タンパク質のRelファミリーは、2つの群に分けることができる。第1の群は、タンパク質分解処理を必要とし、p50(NF-κB1、105kDa)及びp52(NF-κ2、100kDa)を含む。第2の群は、タンパク質分解処理を必要とせず、p65(RelA、Rel(c-Rel)、及びRelB)を含む。ホモ二量体及びヘテロ二量体の両方が、Relファミリーメンバーにより形成され得、例えば、NF-κBは、p50-p65ヘテロ二量体である。IκB及びp105のリン酸化及びユビキチン化の後、2つのタンパク質がそれぞれ分解及び処理され、細胞質から核に移行する活性NF-κBを生成する。ユビキチン化したp105はまた、精製プロテアソームにより処理される(Palombella et al.,Cell(1994)78:773-785)。活性NF-κBは、他の転写活性化因子、及び例えばHMG I(Y)と立体特異的エンハンサー複合体を形成し、特定遺伝子の選択的発現を誘起する。
【0197】
NF-κBは、免疫及び炎症応答、並びに分裂事象に関与する遺伝子を調節する。例えば、NF-κBは、免疫グロブリン軽鎖κ遺伝子、IL-2受容体α鎖遺伝子、クラスI主要組織適合性複合体遺伝子、並びに、例えばIL-2、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子、及びIFN-βをコードする複数のサイトカイン遺伝子の発現に必要である(Palombella et al.,Cell(1994)78:773-785)。いくつかの実施形態は、IL-2、MHC-I、IL-6、TNFα、IFN-β、又は他の以前に言及されたタンパク質のいずれかの発現のレベルに影響を与える方法を含み、各方法は、患者に、有効量の本明細書で開示される組成物を投与することを含む。p50を含む複合体は、急性炎症及び免疫応答の急速な調節因子である(Thanos,D.and Maniatis,T.,Cell(1995)80:529-532)。
【0198】
NF-κBはまた、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、及びVCAM-1をコードする細胞接着遺伝子の発現に関与する(Collins,T.,Lab.Invest.(1993)68:499-508)。いくつかの実施形態では、細胞接着(例えば、E-セレクチン、P-セレクチン、ICAM、又はVCAM-1により媒介される細胞接着)を阻害するための方法であって、有効量の本明細書で開示される医薬組成物に細胞を接触させる(又はこれを患者に投与する)ことを含む、方法が提供される。
【0199】
虚血及び再潅流障害は、身体組織に到達する酸素が欠乏した状態である低酸素症をもたらす。この状態は、Iκ-Bαの分解の増加を引き起こし、それによりNF-κBの活性化をもたらす。低酸素症をもたらす傷害の重症度は、プロテアソーム阻害剤の投与により低減され得ることが実証されている。したがって、虚血状態又は再潅流障害を処置する方法であって、こうした処置を必要とする患者に、有効量の本明細書で開示される化合物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。こうした状態又は傷害の例としては、急性冠不全症候群(不安定プラーク)、動脈閉塞性疾患(心臓、脳、末梢動脈及び血管閉塞)、アテローム性動脈硬化(冠動脈硬化、冠動脈疾患)、梗塞症、心不全、膵炎、心筋肥大、狭窄、及び再狭窄が挙げられるがこれらに限定されない。
【0200】
NF-κBはまた、HIVエンハンサー/プロモーターに特異的に結合する。mac239のNefと比較すると、pbj14のHIV調節タンパク質Nefは、タンパク質キナーゼ結合を制御する領域において2つのアミノ酸が異なる。タンパク質キナーゼは、IκBのリン酸化をシグナル伝達し、ユビキチン-プロテアソーム経路を介してIκB分解をトリガすると考えられる。分解後、NF-κBは核内に放出され、こうしてHIVの転写を向上させる(Cohen,J.,Science,(1995)267:960)。対象におけるHIV感染を阻害又は低減するための方法、及びウイルス遺伝子発現のレベルを低下させるための方法が本明細書で提供され、各方法は、患者に、有効量の本明細書で開示される組成物を投与することを含む。
【0201】
ウイルス感染は、多くの疾患の病理に寄与する。持続的な心筋炎及び拡張型心筋症などの心臓状態は、コクサッキーウイルスB3に関連付けられている。感染したマウスの心臓の比較全ゲノムマイクロアレイ分析において、特定のプロテアソームサブユニットが、慢性心筋炎を発症したマウスの心臓において均一に上方制御されていた(Szalay et al,Am J Pathol 168:1542-52,2006)。一部のウイルスは、ウイルスがエンドソームからサイトゾル内に放出されるウイルス侵入工程において、ユビキチン-プロテアソーム系を用いた。マウス肝炎ウイルス(MHV)は、コロナウイルス科(Coronaviridae)ファミリーに属し、これはまた、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスを含む。Yu及びLai(J Virol 79:644-648,2005)は、MHVに感染した細胞のプロテアソーム阻害剤による処置が、ウイルス複製の減少をもたらし、未処置細胞のものと比較したウイルス価の低減と相関することを実証した。ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)ウイルスファミリーのメンバーであるヒトB型肝炎ウイルス(human hepatitis B virus、HBV)は、同様に、伝播にウイルスコードされたエンベロープタンパク質を必要とする。プロテアソーム分解経路の阻害は、分泌されるエンベロープタンパク質の量の大幅な低減をもたらす(Simsek et al,J Virol 79:12914-12920,2005)。HBVに加えて、他の肝炎ウイルス(A、C、D、及びE)もまた、分泌、形態形成、及び発症のためにユビキチン-プロテアソーム分解経路を用い得る。したがって、特定の実施形態では、SARS又はA型、B型、C型、D型、及びE型肝炎などのウイルス感染を処置するための方法であって、有効量の本明細書で開示される化合物に細胞を接触させる(又はこれを患者に投与する)ことを含む方法が提供される。
【0202】
TNFαなどのリポ多糖体(LPS)誘導サイトカインの過剰産生は、敗血性ショックに付随するプロセスの中心であると考えられている。更に、LPSによる細胞の活性化における第1の工程は、特異的膜受容体に対するLPSの結合であることが一般に認められている。20Sプロテアソーム複合体のα-及びβ-サブユニットは、LPS結合性タンパク質として同定されており、これは、LPS誘導シグナル伝達が、敗血症の処置又は予防における重要な治療標的となり得ることを示唆する(Qureshi,N.et al.,J.Immun.(2003)171:1515-1525)。したがって、特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、敗血性ショックを予防及び/又は処置するためのTNFαの阻害に用いられ得る。
【0203】
細胞内タンパク質分解は、Tリンパ球に対する提示のための小ペプチドを生成し、MHCクラスI媒介免疫応答を誘引する。免疫系は、ウイルス感染しているか、又は発癌性形質転換を生じている自己細胞をスクリーニングする。一実施形態は、細胞における抗原提示を阻害するための方法であって、本明細書に記載される組成物に細胞を曝露することを含む、方法である。更なる実施形態は、患者の免疫系を抑制する(例えば、移植片拒絶反応、アレルギー、喘息を阻害する)ための方法であって、患者に、有効量の本明細書に記載される組成物を投与することを含む、方法である。本明細書で提供される組成物はまた、紅斑性狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、並びに潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患などの自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
【0204】
別の実施形態は、プロテアソーム又は多触媒性活性を有する他のNtnにより産生される抗原ペプチドのレパートリーを改変するための方法である。例えば、20SプロテアソームのPGPH活性が選択的に阻害される場合、いかなる酵素阻害も用いずに、或いは例えば、プロテアソームのキモトリプシン様活性の選択的阻害を用いて産生及び提示されるものとは異なるセットの抗原ペプチドが、プロテアソームにより産生され、細胞表面上のMHC分子中で提示される。
【0205】
特定のプロテアソーム阻害剤は、インビトロ及びインビボでのユビキチン化NF-κBの分解及び処理の両方をブロックする。プロテアソーム阻害剤は、IκB-α分解及びNF-κB活性化もブロックする(Palombella,et al.Cell(1994)78:773-785、及びTraenckner,et al.,EMBO J.(1994)13:5433-5441)。いくつかの実施形態では、IκB-α分解を阻害するための方法であって、本明細書に記載される組成物に細胞を接触させることを含む、方法が提供される。更なる実施形態は、細胞、筋肉、臓器、又は患者におけるNF-κBの細胞内含有量を低減するための方法であって、細胞、筋肉、臓器、又は患者を、本明細書に記載される組成物に接触させることを含む、方法である。
【0206】
タンパク質分解処理を必要とする他の真核生物転写因子としては、基本転写因子TFIIA、単純ヘルペスウイルスVP16付属タンパク質(宿主細胞因子)、ウイルス誘導IFN調節因子2タンパク質、及び膜結合ステロール調節要素結合タンパク質1が挙げられる。
【0207】
更に、サイクリン依存性真核細胞周期に影響を与えるための方法であって、細胞(インビトロ又はインビボ)を、本明細書で開示される組成物に曝露することを含む、方法が本明細書で提供される。サイクリンは、細胞周期の制御に関与するタンパク質である。プロテアソームは、サイクリンの分解に関与する。サイクリンの例としては、有糸分裂サイクリン、G1サイクリン、及びサイクリンBが挙げられる。サイクリンの分解により、細胞は、1つの細胞周期段階(例えば、有糸分裂)から出て、別の段階(例えば、細胞分裂)に入ることができる。全てのサイクリンは、p34cdc2タンパク質キナーゼ又は関連キナーゼに関連していると考えられる。タンパク質分解標的化シグナルは、アミノ酸42-RAALGNISEN-50(破壊ボックス)に限局される。サイクリンがユビキチンリガーゼの影響を受けやすい形態に変換されること、又は、サイクリン特異的リガーゼが有糸分裂中に活性化される証拠が存在する(Ciechanover,A.,Cell,(1994)79:13-21)。プロテアソームの阻害は、サイクリン分解を阻害し、したがって、例えばサイクリン関連癌における細胞増殖を阻害する(Kumatori et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:7071-7075)。患者における増殖性疾患(例えば、癌、乾癬、又は再狭窄)を処置するための方法であって、患者に、有効量の本明細書で開示される組成物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。患者におけるサイクリン関連炎症を処置するための方法であって、患者に、治療的有効量の本明細書に記載される組成物を投与することを含む、方法も本明細書で提供される。
【0208】
追加の実施形態は、腫瘍性タンパク質のプロテアソーム依存的調節に影響を与えるための方法、及び癌の成長を処置又は阻害する方法を含み、各方法は、細胞(インビボ、例えば患者内、又はインビトロ)を、本明細書で開示される組成物に曝露することを含む。HPV-16及びHPV-18誘導E6タンパク質は、ATP及びユビキチン依存的接合、並びに粗網状赤血球溶血液中のp53の分解を刺激する。劣性癌遺伝子p53は、突然変異熱不安定性E1を有する細胞株において、非許容温度で蓄積することが示されている。p53のレベルの上昇は、アポトーシスをもたらし得る。ユビキチン系により分解されるプロト腫瘍性タンパク質の例としては、c-Mos、c-Fos、及びc-Junが挙げられる。一実施形態は、p53関連アポトーシスを処置するための方法であって、患者に、有効量の本明細書で開示される組成物を投与することを含む、方法である。
【0209】
別の実施形態では、本開示の組成物は、寄生原生動物により引き起こされる感染症などの、寄生虫感染症の処置に有用である。これらの寄生虫のプロテアソームは、主に細胞分化及び複製活性に関与するものと考えられる(Paugam et al.,Trends Parasitol.2003,19(2):55-59)。更に、エントアメーバ種は、プロテアソーム阻害剤に曝露されると被嚢形成能力を失うことが示されている(Gonzales,et al.,Arch.Med.Res.1997,28,Spec No:139-140)。特定のこうした実施形態では、本開示の組成物は、プラズモディウム種(Plasmodium sps)(マラリアを発症させるP.ファルシパルム(P.falciparum)、P.ビバックス(P.vivax)、P.マラリエ(P.malariae)、及びP.オバレ(P.ovale)を含む)、トリパノソーマ種(Trypanosoma sps)(シャーガス病を発症させるT.クルジ(T.cruzi)、及びアフリカ睡眠病を発症させるT.ブルセイ(T.brucei)を含む)、リーシュマニア種(Leishmania sps)(L.アマゾネシス(L.amazonesis)、L.ドノバニ(L.donovani)、L.インファンタム(L.infantum)、L.メキシカーナ(L.mexicana)などを含む)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)(AIDS及び他の免疫抑制患者において肺炎を引き起こすことが知られている原生動物)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、エントアメーバ・ヒストリティカ (Entamoeba histolytica)、エントアメーバ・インバデンス(Entamoeba invadens)、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)から選択される寄生原生動物によって生じる、ヒトにおける寄生虫感染症の処置に有用である。特定の実施形態では、本開示の組成物は、プラスモディウム・ヘルマニ(Plasmodium hermani)、クリプトスポリジウム種(Cryptosporidium sps)、単包条虫(Echinococcus granulosus)、アイメリア・テネラ(Eimeria tenella)、サルコシスティス・ニューローナ(Sarcocystis neurona)、及びアカパンカビ(Neurospora crassa)から選択される寄生原生動物により引き起こされる動物及び家畜における寄生虫感染症の処置に有用である。寄生虫疾患の処置におけるプロテアソーム阻害剤として有用な他の化合物は、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第98/10779号パンフレットに記載されている。
【0210】
特定の実施形態では、本開示の組成物は、寄生虫内でプロテアソーム活性を不可逆的に阻害する。こうした不可逆的な阻害は、赤血球及び白血球中で回復することなしに酵素活性のシャットダウンを誘導することが示されている。特定のこうした実施形態では、血液細胞の長い半減期は、寄生虫への反復的な曝露に対する治療に関して長期的な保護を提供することができる。特定の実施形態では、血液細胞の長い半減期は、将来の感染に対する化学的予防に関して長期的な保護を提供することができる。
【0211】
原核生物は、真核生物20Sのプロテアソーム粒子と同等のものを有する。原核生物20S粒子のサブユニット組成は、真核生物のサブユニット組成よりも単純であるにもかかわらず、同様にペプチド結合を加水分解する能力を有する。例えば、ペプチド結合に対する求核攻撃は、β-サブユニットのN末端上のトレオニン残基を介して生じる。いくつかの実施形態では、原核生物感染症を処置する方法であって、患者に、有効量の本明細書で開示されるプロテアソーム阻害剤組成物を投与することを含む、方法が提供される。原核生物感染症は、マイコバクテリア(例えば、結核、ハンセン病、又はブルーリ潰瘍)、又は古細菌のいずれかにより生じる疾患を含み得る。
【0212】
20Sプロテアソームに結合する阻害剤は、骨組織培養における骨形成を刺激することも実証されている。更に、こうした阻害剤をマウスに全身投与すると、特定のプロテアソーム阻害剤が骨量及び骨形成速度を70%超増加させたため(Garrett,I.R.et al.,J.Clin.Invest.(2003)111:1771-1782)、ユビキチン-プロテアソーム機構が骨芽細胞分化及び骨形成を調節することが示唆されている。したがって、本開示の組成物は、骨粗しょう症などの骨損失に関連する疾患の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0213】
本明細書で提供されるプロテアソーム阻害剤を投与することを含む、癌、自己免疫疾患、移植片又は移植関連状態、神経変性疾患、線維化関連状態、虚血関連状態、感染症(ウイルス、寄生虫、又は原核生物)、及び骨損失に関連する疾患から選択される疾患又は状態を処置するための方法が本明細書で提供される。例えば、式(5)の化合物。
【0214】
骨組織は、骨細胞を刺激するための能力を有する因子の優れた供給源である。したがって、ウシ骨組織抽出物は、骨の構造的完全性の維持を担う構造タンパク質だけでなく、骨細胞の増殖を刺激し得る生物活性骨成長因子も含有する。これらの後者の因子の中に、最近記載された骨形態形成タンパク質(BMP)と称するタンパク質のファミリーが存在する。これらの成長因子の全てが、他の種類の細胞、のみならず骨細胞に対する効果を有しており、例えば、Hardy,M.H.,et al.,Trans Genet(1992)8:55-61は、骨形成タンパク質(BMP)が発生中の毛包内に差次的に発現する証拠を記載している。Harris,S.E.,et al.,J Bone Miner Res(1994)9:855-863は、BMP-2及び骨細胞内の他の物質の発現に対するTGF-βの効果を説明している。成熟毛包中のBMP-2発現は、成熟化の間、及び細胞増殖期間後にも生じる(Hardy,et al.(1992、上記))。したがって、本明細書で提供される化合物は、毛包成長の刺激にも有用となり得る。
【0215】
最後に、本開示の組成物は、プロテアソームを含むNtnヒドロラーゼによって処理されるタンパク質(例えば、酵素、転写因子)をスクリーニングするための診断薬(例えば、診断キット中の、又は臨床検査室における使用のための)としても有用である。本開示の組成物は、X/MB1サブユニット又はα鎖に特異的に結合するための、及びそれに関連するタンパク質分解活性を阻害するための研究試薬としても有用である。例えば、プロテアソームの他のサブユニットの活性(及びその特異的阻害剤)を決定することができる。
【0216】
大半の細胞タンパク質は、成熟化又は活性化の間にタンパク質分解処理に晒される。本明細書で開示される酵素阻害剤は、細胞、発生、又は生理学的プロセス又は出力が、特定のNtnヒドロラーゼのタンパク質分解活性によって調節されているかどうかを決定するために用いることができる1つのこうした方法は、生物、無傷の細胞調製物、又は細胞抽出物を入手することと、生物、細胞調製物、又は細胞抽出物を本明細書で開示される組成物に曝露することと、この化合物を曝露した生物、細胞調製物、又は細胞抽出物をシグナルに曝露することと、プロセス又は出力を監視することと、を含む。本明細書で開示される化合物の高い選択性により、所与の細胞、発生、又は生理学的プロセスにおける、Ntn(例えば20Sプロテアソーム)の迅速且つ正確な除去又は包含が可能となる。
【0217】
投与
本明細書に記載されるように調製された組成物は、当該技術分野で周知されるように、処置対象の障害、並びに患者の年齢、状態及び体重に応じて様々な形態で投与することができる。例えば、組成物が経口投与される場合、これらは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、又はシロップとして配合されてもよく、或いは、非経口投与の場合は、これらは(静脈内、筋肉内、又は皮下)注射剤、点滴注入調製物、又は座薬として配合されてもよい。眼粘膜経路による適用の場合、これらは点眼剤又は眼軟膏剤として配合されてもよい。これらの配合物は、本明細書に記載される方法と併せて従来の手段によって調製されてもよく、また所望される場合、活性成分は、シクロデキストリン及び緩衝剤に加えて、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯正剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、又はコーティング剤などの任意の従来の添加剤又は賦形剤と混合されてもよい。投薬量は、患者の症状、年齢及び体重、処置又は予防対象の障害の性質及び重症度、投与経路、並びに薬物の形態に応じて変化するが、一般には0.01~2000mgの1日投薬量の本化合物が成人患者に推奨されており、これは単回用量で又は分割用量で投与され得る。単回剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般には、治療効果を生じる化合物の量である。一般に、非経口使用(例えば静脈内、皮下注射)が目的の組成物は、置換シクロデキストリンを含む。その他の経路、特に経口経路を介して投与される組成物は、置換又は非置換シクロデキストリンを含む。
【0218】
所与の患者における処置効力の点で最も効果的な結果をもたらす、組成物の正確な投与時間及び/又は量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及びバイオアベイラビリティ、患者の生理学的条件(例えば年齢、性別、疾患の種類及びステージ、全身的な身体状態、所与の投与量に対する応答性、並びに薬物の種類)、投与経路などに応じて変わる。しかし、上記ガイドラインは、患者をモニタリングすること、並びに投薬量及び/又はタイミングを調整することからなる日常的な実験に過ぎないものを必要とする、処置を微調整するための(例えば、最適な投与の時間及び/又は量を決定するための)基準として用いられ得る。
【0219】
語句「薬学的に許容される」とは、本明細書中では、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは難題を伴わず、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、妥当な利益/リスク比に見合う、リガンド、材料、組成物及び/又は剤形を指すために使用される。
【0220】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という句は、液状若しくは固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材などの、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖;(2)コーンスターチ、ジャガイモデンプン及び置換又は非置換β-シクロデキストリンなどのデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び座薬ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;並びに(21)薬学的配合物に使用される他の非毒性適合物質。特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は非発熱性、すなわち、患者に投与された場合に有意な温度上昇を誘発しない。
【0221】
用語「薬学的に許容される塩」は、阻害剤の比較的毒性が低い無機及び有機の酸付加塩を指す。これらの塩は、阻害剤の最終的な単離及び精製中にその場で、又は遊離塩基形態の精製されたペプチドプロテアソーム阻害剤を適切な有機酸若しくは無機酸と別に反応させ、こうして生成した塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルチミン酸塩、ステアリン酸塩ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩及びアミノ酸塩などが挙げられる。(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。
【0222】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるペプチドプロテアソーム阻害剤は、1つ以上の酸性官能基を含有してもよく、したがって、薬学的に許容される塩基を有する薬学的に許容される塩を形成することが可能である。こうした場合の用語「薬学的に許容される塩」とは、阻害剤の比較的毒性が低い無機及び有機の塩基付加塩を指す。これらの塩も、同様に、阻害剤の最終的な単離及び精製中にその場で調製されてもよく、或いは、その遊離酸形態の精製された阻害剤を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭酸塩などの好適な塩基と、アンモニアと、又は薬学的に許容される有機第一級、第二級、若しくは第三級アミンと別々に反応させることによって調製されてもよい。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、上記のBerge et alを参照されたい)。
【0223】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤、及び抗酸化剤も組成物中に存在し得る。
【0224】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0225】
経口投与に適した配合物は、それぞれ活性成分として所定量の阻害剤を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(風味付き基礎原料、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、散剤、顆粒剤の形態であってもよく、或いは水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型の液体エマルジョンとして、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として、又はトローチ剤(不活性マトリックス、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを用いる)として、且つ/又はうがい薬としてなどであってもよい。組成物はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与されてもよい。
【0226】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、散剤、顆粒剤など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容される担体、及び/又は以下のうちのいずれかと混合される:(1)デンプン、シクロデキストリン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸などの充填剤又は増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又はアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えばアセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物などの潤滑剤;並びに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含み得る。類似の種類の固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどといった賦形剤を使用して、軟質及び硬質の充填ゼラチンカプセル中で充填剤としても使用され得る。
【0227】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分を用いて、圧縮又は成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、又は分散剤を用いて調製され得る。成形された錠剤は、適切な機械中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化阻害剤の混合物を成形することにより作製され得る。
【0228】
錠剤、及び他の固体剤形、例えば、糖衣丸、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤は、必要に応じて、刻み目が付けられてもよく、又はコーティング及びシェル、例えば、腸溶性コーティング及び製薬配合分野で周知される他のコーティングを用いて調製されてもよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリクス、リポソーム、及び/又はマイクロスフェアを用いて、その中で活性成分の徐放又は制御放出を提供するように配合されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターを用いる濾過によって、或いは滅菌水又は他の何らかの注射可能な滅菌媒体中に使用直前に溶解され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意選択的に不透明化剤を含有してもよく、任意選択的に遅延様式で、胃腸管の特定の部分に活性成分のみを放出するか、或いは活性成分を優先的に放出する組成物であってもよい。使用され得る埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1つ以上を含むマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0229】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水又はその他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物などの当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有し得る。
【0230】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、並びに防腐剤などの補助剤も含むことができる。
【0231】
活性阻害剤に加えて、懸濁液は、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などを含み得る。
【0232】
直腸又は膣投与のための配合物は、座薬として提供することができ、この座薬は、1つ以上の阻害剤を、室温で固体であるが体温では液体であり、したがって直腸又は膣腔内で融解して活性剤を放出する、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬蝋又はサリチル酸塩を含む1つ以上の好適な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製することができる。
【0233】
膣投与に好適な配合物としては、当該技術分野で適切であることが既知である担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー配合物も挙げられる。
【0234】
阻害剤の局所投与又は経皮投与用の剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、貼付剤、及び吸入剤が挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合され得る。
【0235】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、及びゲル剤は、阻害剤に加えて、賦形剤、例えば、動物性脂肪及び植物性脂肪、油状物、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有し得る。
【0236】
散剤及びスプレー剤は、阻害剤に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。スプレー剤は、慣習的な噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素、並びに揮発性の非置換炭化水素、例えばブタン及びプロパンを更に含有し得る。
【0237】
ペプチドプロテアソーム阻害剤は、エアロゾルによって投与され得る。これは、組成物を含む水性エアロゾル、リポソーム調製物、又は固形粒子を調製することによって達成され得る。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液が使用され得る。いくつかの実施形態では、ソニック噴霧器は、化合物の分解をもたらし得る剪断に薬剤が曝されるのを最小限にするため、ソニック噴霧器が好ましい。
【0238】
通常、水性エアロゾルは、薬剤の水溶液又は懸濁液を従来の薬学的に許容される担体及び安定剤と一緒に配合することによって作製される。担体及び安定剤は、特定の組成物の要件によって変化するが、これとしては、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、ソルビタンエステル、レシチン、Cremophor)、ポリエチレングリコールなどの薬学的に許容される共溶媒、血清アルブミンのような無害のタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖、又は糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは、一般には等張液から調製される。
【0239】
経皮パッチは、身体に対する阻害剤の制御した送達を提供するという追加の利点を有する。こうした剤形は、薬剤を適切な媒体中に溶解又は分散させることによって作製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚全体の阻害剤の流れを増加させるために使用され得る。こうした流れの速度は、速度制御膜を提供するか、或いは阻害剤をポリマーマトリクス又はゲル中に分散させるかのいずれかによって制御され得る。
【0240】
非経口投与に好適な医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、配合物を目的のレシピエントの血液と等張性にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含み得る、1つ以上の薬学的に許容される滅菌水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液、若しくはエマルジョン、又は使用直前に滅菌した注射可能溶液若しくは分散液へと再構成され得る滅菌散剤と組み合わせて、1つ以上のペプチドプロテアソーム阻害剤を含む。
【0241】
本明細書で提供される医薬組成物で使用され得る好適な水性及び非水性担体の例としては、注射用水(例えば注射用滅菌水)、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、緩衝剤(クエン酸緩衝剤など)、及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0242】
医薬組成物は、典型的には薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される担体」という用語には、薬剤投与に適合する、緩衝剤、注射用滅菌水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は緩衝剤(例えばクエン酸緩衝剤)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は注射用滅菌水である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体はクエン酸を含む。
【0243】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの補助剤も含有してもよい。種々の抗菌剤や抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを含有させることにより、微生物の作用の防止を確保してもよい。また、組成物中に糖などの張性調整剤を含めることが望ましい場合がある。更に、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅くする薬剤を含有させることによって、注射用薬剤の吸収を長期間持続させるようにしてもよい。
【0244】
場合によっては、薬剤の効果を長期間持続させるために、皮下注射又は筋肉注射からの薬剤の吸収を遅らせることが望ましい。例えば、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0245】
注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に阻害剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製することができる。薬剤とポリマーの比率、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬剤放出の速度が調節され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能配合物はまた、身体組織と適合性があるリポソーム又はマイクロエマルション中に薬剤を封入することによって調製される。
【0246】
薬剤の調製物は、経口的に、非経口的に、局所的に、又は直腸に与えられ得る。当然ながら、これらは各々の投与経路に好適な形態によって与えられる。例えば、これらは、錠剤又はカプセル剤の形態で注射、吸入、点眼薬、軟膏、座薬、注入によって投与され、ローション剤又は軟膏によって局所投与され、座薬によって直腸投与される。いくつかの実施形態では、投与は経口である。
【0247】
本明細書中で使用するとき、句「非経口投与」及び「非経口投与される」とは、経腸投与及び局所投与以外の投与様式、通常は、注射による投与を意味し、これとしては、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、嚢内注射、眼窩内注射、心臓内注射、皮内注射、腹腔内注射、経気管注射、皮下注射、表皮下注射、関節内注射、被膜下注射、くも膜下注射、脊髄内注射、及び胸骨内注射、並びに注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0248】
本明細書中で使用するとき、句「全身投与」、「全身投与した」、「末梢投与」及び「末梢投与した」とは、リガンド、薬物、又は他の物質が患者の系に侵入して、代謝及び他の同様のプロセスに供されるように、リガンド、薬物、又は他の物質を、中枢神経系への直接投与以外で投与すること、例えば皮下投与を意味する。
【0249】
本明細書に記載されるペプチドプロテアソーム阻害剤は、治療のために、経口投与、例えば噴霧による経鼻投与、直腸投与、膣内投与、非経口投与、大槽内投与、並びに粉末、軟膏、又はドロップによる頬側投与及び舌下投与を含む局所投与が挙げられる任意の適切な投与経路によって、ヒト及び他の動物に投与され得る。
【0250】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得るペプチドプロテアソーム阻害剤、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、当業者に既知の従来法によって薬学的に許容される剤形へと配合される。
【0251】
本明細書で提供される医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物及び投与方式に望ましい治療応答を、患者に対して毒性となることなく達成するのに有効な量の活性成分を得るように変更することができる。
【0252】
薬学的に許容される混合物中の開示される化合物の濃度は、投与される化合物の投薬量、利用される化合物の薬物動態学的特徴、及び投与経路を含むいくつかの要因に依存して変動する。一般に、本明細書で提供される組成物は、非経口投与のために、物質の中でもとりわけ、本明細書で開示される化合物を約0.1%~10%w/vを含有する水溶液で提供され得る。典型的な用量範囲は、1~4回の分割用量で投与して約0.01~約50mg/kg体重/日である。各分割用量は、同じ又は異なる化合物を含有してよい。投薬量は、患者の全体的な健康状態、並びに選択された化合物の配合及び投与経路を含むいくつかの要因に応じて有効量となる。
【0253】
別の実施形態では、医薬組成物は経口溶液又は非経口溶液である。別の実施形態は、投与前に再構成可能なフリーズドライ調製物である。固体として、この配合物は錠剤、カプセル剤、又は散剤も含み得る。
【0254】
ペプチドプロテアソーム阻害剤又はペプチドプロテアソーム阻害剤を含む医薬組成物と共に1つ以上のその他の治療薬が投与される併用療法(conjoint therapy)も本明細書で提供される。こうした併用処置は、処置の個々の成分の同時、逐次、又は個別投薬によって達成され得る。
【0255】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上の他のプロテアソーム阻害剤と併用して投与され得る。
【0256】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上の化学療法薬と併用して投与され得る。好適な化学療法薬としては、天然生成物、例えばビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)、タキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、例えばドセタキセル)、エピジポドフィロトキシン(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン;例えばドキソルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシン、酵素(全身的にL-アスパラギンを代謝し、それ自体のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を枯渇させるL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば窒素マスタード(メクロレタミン、イホスファミド、シクロホスファミド及びそのアナログ、メルファラン、クロラムブシル、例えばメルファラン)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル(ブスルファン)、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及びそのアナログ、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂抗代謝剤、例えば葉酸アナログ(メトトレキサート)、ピリミジンアナログ(フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)、プリンアナログ及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及び2-クロロデオキシアデノシン);アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、エキセメスタン、及びレトロゾール);白金配位複合体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;DNA結合/細胞毒性剤(例えばZalypsis);ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(例えば、トリコスタチン、酪酸ナトリウム、アピシダン、ヒドロキサム酸スベロイルアニリド(SAHA(ボリノスタット))、トリコスタチンA、デプシペプチド、アピシジン、A-161906、スクリプトエイド、PXD-101、CHAP、酪酸、デプデシン、オキサムフラチン、フェニルブチラート、バルプロ酸、MS275(N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシ-カルボニル)アミノメチル]ベンズアミド)、LAQ824/LBH589、CI994、MGCD0103、ACY-1215、パノビノスタット);ホルモン(すなわち、エストロゲン)及びホルモンアゴニスト、例えば黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(ゴセレリン、ロイプロリド、及びトリプトレリン)が挙げられ得る。その他の化学療法剤としては、メクロレタミン、カンプトテシン、イホスファミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ゲムシタビン、ナベルビン、又は上述の任意のアナログ若しくは誘導体バリアントが挙げられ得る。
【0257】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(例えば、トリコスタチン、酪酸ナトリウム、アピシダン、ヒドロキサム酸スベロイルアニリド(「SAHA」(ボリノスタット))、トリコスタチンA、デプシペプチド、アピシジン、A-161906、スクリプトエイド、PXD-101、CHAP、酪酸、デプデシン、オキサムフラチン、フェニルブチラート、バルプロ酸、MS275(N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシ-カルボニル)アミノメチル]ベンズアミド)、LAQ824/LBH589、CI994、MGCD0103、ACY-1215、パノビノスタット;例えばSAHA、ACY-1215、パノビノスタット)と併用して投与され得る。
【0258】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上の窒素マスタード(メクロレタミン、イホスファミド、シクロホスファミド及びそのアナログ、メルファラン、クロラムブシル、例えばメルファラン)と併用して投与され得る。
【0259】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上のDNA結合/細胞毒性剤(例えばZalypsis)と併用して投与され得る。
【0260】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上のタキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、例えばドセタキセル)と併用して投与され得る。
【0261】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上の抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン;例えばドキソルビシン)と併用して投与され得る。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上のサイトカインと併用して投与され得る。サイトカインとしては、インターフェロン-γ、-α、及び-β、インターロイキン1-8、10、及び12、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、TNF-α及び-β、並びにTGF-βが挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上のステロイドと併用して投与され得る。好適なステロイドとしては、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベータメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタール、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノアセテート、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、並びにそれらの塩及び/又は誘導体(例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、及びプレドニゾロン;例えばデキサメタゾン)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0264】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、デキサメタゾンと併用して投与され得る。特定の実施形態では、併用療法は、例えば以下のKYPROLISラベル上に提供された投薬レジメンを含む。
【0265】
1.KYPROLISを3週間にわたり各週2日間連続で(1、2、8、9、15、及び16日目)2~10分間静脈内投与した後に、12日間(17~28日目)の休止期間とする。各28日間の期間を1回の処置サイクルとする(表A)。
【0266】
サイクル1では、KYPROLISを20mg/mの用量で投与する。サイクル1で耐容されれば、用量をサイクル2で27mg/mまで上昇させ始め、後続のサイクルで27mg/mに維持すべきである。処置は、疾患が進行するまで、又は許容できない毒性が発生するまで継続してよい。
【0267】
用量は、ベースラインで患者の実際の体表面積を用いて計算する。2.2mを超える体表面積を有する患者には、2.2mの体表面積に基づいた用量が投与されるべきである。体重変化が20%以下の場合、用量調節を行う必要はない。
【0268】
【表3】
【0269】
2.患者に水分補給し、KYPROLIS処置による腎毒性及び腫瘍溶解症候群(TLS)のリスクを低減させる。処置全体を通じて適切な流体体積状態を維持し、血液化学を綿密に監視する。サイクル1の各用量前に、250mL~500mLの通常生理食塩水又は他の適した静脈内用流体を投与する。KYPROLIS投与後に必要に応じて追加の250mL~500mLの静脈内用流体を投与する。後続のサイクルで必要に応じて静脈内水分補給を継続する。この期間、過剰輸液に関しても患者を監視する。
【0270】
3.サイクル1中のKYPROLISの全用量前に、且つ27mg/mに用量を増加させる最初のサイクル中のすべてのKYPROLIS用量の前に、デキサメタゾン4mgを経口で又は静脈内に前投与して、注入反応の発生及び重症度を低減させる。後続のサイクルでこれらの症状が発生又は再発した場合、デキサメタゾンの前投与(4mg経口又は静脈内)を再開する。
【0271】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、1つ以上の免疫療法剤と併用して投与され得る。好適な免疫療法剤としては、MDR調節物質(ベラパミル、バルスポダール、ビリコダール、タリキダール、ラニキダール)、シクロスポリン、ポマリドマイド、サリドマイド、CC-4047(Actimid)、レナリドマイド(Revlimid)、及びモノクローナル抗体が挙げられ得るが、これらに限定されない。モノクローナル抗体は裸でもよく、又はリツキシマブ、トシツモマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ゲムツズマブオゾガミシン、ベバシズマブ、セツキシマブ、エルロチニブ、及びトラスツズマブなどにコンジュゲートさせてもよい。特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、レナリドマイド(Revlimid)と併用して投与される。
【0272】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキット(例えばカルフィルゾミブを含む医薬組成物)は、以下のものと併用して投与され得る。
(i)以下のうちの1つ以上:
・1つ以上の第2の化学療法剤(例えば、1つ以上のHDAC阻害剤、例えば、SAHA、ACY-1215、パノビノスタット;1つ以上の窒素マスタード、例えば、メルファラン;1つ以上のDNA結合/細胞毒性剤、例えばZylapsis;1つ以上のタキサン、例えば、ドセタキセル;1つ以上の抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン;例えばドキソルビシン);
・1つ以上の他のプロテアソーム阻害剤(例えば、式(1)~(5)の別の化合物);
・1つ以上のサイトカイン;
・1つ以上の免疫療法剤(例えばRevlimid);
・1つ以上のトポイソメラーゼ阻害剤;
・1つ以上のm-TOR阻害剤;
・1つ以上のタンパク質キナーゼ阻害剤(例えばソラフェニブ);
・1つ以上のCDK阻害剤(例えばDinaciclib);
・1つ以上のKSP(Eg5)阻害剤(例えばArray520);
・1つ以上のPI13デルタ阻害剤(例えばGS-1101 PI3K);
・1つ以上の二重阻害剤:PI3Kデルタ及びガンマ阻害剤(例えばCAL-130);
・1つ以上のマルチキナーゼ阻害剤(例えばTG02);
・1つ以上のPI3Kデルタ阻害剤(例えばTGR-1202);
並びに
(ii)1つ以上のステロイド(例えばデキサメタゾン)。
【0273】
その他の実施形態では、本明細書で提供されるシクロデキストリン非含有薬学的配合物又はキットは、以下のものと併用して投与され得る。
(i)以下のうちの1つ:
・1つ以上の第2の化学療法剤(例えば、1つ以上のHDAC阻害剤、例えば、SAHA、ACY-1215、パノビノスタット;1つ以上の窒素マスタード、例えば、メルファラン;1つ以上のDNA結合/細胞毒性剤、例えばZylapsis;1つ以上のタキサン、例えば、ドセタキセル;1つ以上の抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン;例えばドキソルビシン);
・1つ以上の他のプロテアソーム阻害剤(例えば、式(1)~(5)の別の化合物);
・1つ以上のサイトカイン;
・1つ以上の免疫療法剤(例えばRevlimid);
・1つ以上のトポイソメラーゼ阻害剤;
・1つ以上のm-TOR阻害剤;
・1つ以上のタンパク質キナーゼ阻害剤(例えばソラフェニブ);
・1つ以上のCDK阻害剤(例えばDinaciclib);
・1つ以上のKSP(Eg5)阻害剤(例えばArray520);
・1つ以上のPI13デルタ阻害剤(例えばGS-1101 PI3K);
・1つ以上の二重阻害剤:PI3Kデルタ及びガンマ阻害剤(例えばCAL-130);
・1つ以上のマルチキナーゼ阻害剤(例えばTG02);
・1つ以上のPI3Kデルタ阻害剤(例えばTGR-1202);
並びに
(ii)デキサメタゾン。
【実施例
【0274】
実施例1:非水性及び水性溶媒のスクリーニング
初回の溶媒のスクリーニングでは、以下のように3つの目標CFZ-API濃度を用いて、その溶解度プロファイルを調べた:
非水相:(a)水混和性溶媒のスクリーニングのために200mg/ml~250mg/mlのCFZ-API目標濃度、及び(b)共溶媒のスクリーニングのために20~50mg/mlのCFZ-API目標濃度、並びに
水相:約2mg/mlの目標CFZ-API最終濃度。
【0275】
実施例1A.非水相溶媒のスクリーニング
a.有機水混和性溶媒のスクリーニング。
CFZ-APIは水に極めて不溶性であるため、CFZ-API製剤原料粉末を溶解するために様々な有機水混和性溶媒を最初にスクリーニングした。表1は、様々な水混和性溶媒中で初期の200mg/ml~250mg/mlのCFZ-API濃度を満たす溶解度パターンの目視観測を示す。表1に示すように、試験溶液番号7~11は、CFZ-APIの不溶性をもたらしたため、試験溶液番号1~6のみが共溶媒スクリーニングへと進められた。
【0276】
【表4】
【0277】
b.共溶媒のスクリーニング
CFZ-APIを上記で特定された非水性の水混和性溶液中で20~50mg/mlの第2の目標濃度まで更に希釈するための共溶媒のスクリーニングを実施した。上記の表1の結果に基づき、DMSO又はNMPを好ましい水混和性溶媒として選択した。表2は、DMSO又はNMP水混和性溶媒に予め溶解されたCFZ-APIを希釈して目標の20~50mg/mlのCFZ-API濃度を満たすために更にスクリーニングされた様々な共溶媒を列挙する。CFZ-APIは求核攻撃に対して敏感なエポキシケトン部分を含有するため、スクリーニングのために非求核性溶媒及び/又は賦形剤は慎重に選択した。更に、FDAの注入限度に基づく許容可能な濃度での静脈内注射(IV)及び皮下注射(SC)のための非経口用途で承認された溶媒/賦形剤も、スクリーニングのために慎重に選択した。
【0278】
【表5】
【0279】
沈殿したCFZ-APIが濾過後に沈殿しなかった試料配合物と比較してより低いCFZ-API回復を有することが予期された試料配合物。各条件のプラセボ緩衝液を用いて、任意の他の物質ではなく溶液から沈殿したCFZ-APIを決定した。表2の試料番号14~15及び21~34の目視観測は、水の存在が、20mg/ml~50mg/mlの目標濃度範囲でCFZ-APIの沈殿をもたらしたことを示した。表2の試料番号14~34はCFZ-APIの不溶性をもたらし、試料番号1~13のみを次の水性溶媒スクリーニングで更に調査した。
【0280】
ポビドン及び水で2mg/mlに希釈してpH3にしたときに目視観測で判定して、PEG400及びエタノールと組み合わせた乳酸及びマレイン酸が最大の溶解度をもたらしたが、これについては次の節で論じる。更に、2℃~8℃で貯蔵して3日後に沈殿した配合物を含有するマレイン酸と比較して、配合物を含有する乳酸は、2℃~8℃でより長期間のCFZ-API溶解度を有することが判明した。配合物中おける乳酸の欠如は、pH3でCFZ-APIの沈殿を示したため、乳酸はpHを低下させること、のみならずCFZ-APIの共可溶化剤として作用することに寄与した。
【0281】
実施例1B:水相溶媒のスクリーニング
溶液中における化合物のより良好な分散を見込むための1つ以上の可溶化剤の存在下で、CFZ-APIに対する水の導入を実施した。この工程では全ての試料で沈殿が観測されたが、3.0~3.1のpH範囲を達成して溶解度を増加させるためにメタンスルホン酸を用いたpHの調節を実施した。大半の試料はpH調節後も混濁していたため、溶液を0.22μmのPESメンブレンフィルタで濾過し、RP-HPLC上でCFZ-APIの溶解度を調べた。表3は、2mg/mlのCFZ-APIに到達するためにDMSO、PEG400、エタノール、及び乳酸中のCFZ-APIの組み合わせで用いられた、水を含む様々な増量剤及び可溶化剤のpH調節及び濾過後の目視観測、並びにCFZ-API溶解度を示す。結果は、全てのPVP含有配合物(表3の条件3~8)が、他の配合物と比較してより高いCFZ-API溶解度をもたらしたことを断定する。NMP及びPVPからの溶解度の証拠に基づき、本発明者らは、ピロリドン環又は類似する構造を有するその他の分子がCFZ-APIを可溶化するのではないかと考える。
【0282】
【表6】
【0283】
表4に見られるように、酸、アミノ酸、及びPluronicを含むその他の賦形剤は、2mg/mlでCFZ-APIを可溶化又は部分的に可溶化した。HCl、トリエタノールアミン(TEA)、又はモノエタノールアミン(MEA)でpHを約3.0に調節したときに目視観測を行った。これらの賦形剤によるCFZ-APIの回復及び安定性は依然として調査中である。
【0284】
【表7】
【0285】
実施例2.シクロデキストリン非含有CFZ-API試料配合物の目視観測
カルフィルゾミブ(CFZ)は、多発性骨髄腫の処置のための凍結乾燥製剤であるKYPROLIS(登録商標)のプロテアソーム阻害剤及び活性成分である。KYPROLISの現在市販される配合物は、CFZ-APIの溶解度を補助するために用いられるシクロデキストリンであるCAPTISOL(登録商標)を含有する。本発明は、注射に適した、水溶液中のCFZ-APIのための安定なシクロデキストリン非含有配合物を提供する。図1は、(a)リン酸緩衝液(PBS)の存在下で水不溶性のCFZ-API(左のバイアル)、(b)CAPTISOLを含有する、現在市販されるKYPROLIS配合物(中央のバイアル)、及び(c)本発明のシクロデキストリン非含有配合物(右のバイアル)を示す。各試料は2mg/mlのCFZ-API濃度を含む。シクロデキストリン非含有ポリビニルピロリドン(PVP)配合物試料の黄色い色調は、PVP共可溶化剤が一因であるが、透明の溶液は、シクロデキストリンを含まない配合物にCFZ-APIが溶解することを示す。
【0286】
【表8】
【0287】
実施例3:溶媒空間を画定するための溶解度モデリング
表1、2、及び5に記載されるように、CFZ-APIは、DMSO又はNMPなどの高濃度の水混和性溶媒中に溶解され得る。CFZの溶媒化の性質を更に理解するための取り組みにおいて、溶解度パラメータ評価を用いて、表1で試験したものの他にCFZを潜在的に可溶化し得る溶媒の溶媒空間を拡張した。このアプローチでは、ソフトウェアパッケージ(Hansen Solubility Parameter/HSP)を用いて、次式に従い合計パラメータδが分散性力(δD)、極性力(δP)、及び水素結合(δH)力からの寄与へと分割される、溶解度(元は総凝集エネルギーの平方根としてHildebrandtによって定義された)を計算した:δ=δD+δP+δH。https://www.hansen-solubility.com/HSP-science/basics.phpを参照されたい。表1に示される結果を伴い実験的に測定された、及び過去の未公開の結果からのいくつかの溶媒におけるCFZ-APIの溶解度を用いて、下記の表5に示す情報を生成し、好適な溶媒(CFZ溶解度>200mg/ml)をスコア1で特定し、好適でない溶媒(CFZ溶解度<1mg/ml)をスコア0で特定した。続いて3D溶解度球を得、ここで好適な溶媒は球の内部にあり、好適でない溶媒は球の外部にある。表5は、HSPソフトウェアから得た溶解度パラメータも示し、これらはδD(分散性)、δP(極性)、及びδH(水素結合)力として特定される。表中の相対エネルギー距離(RED)の項は、単に、各溶媒に関する球の中心までの距離を中心点からの球の半径によって除算した比を指す。距離は、Hansenによって定義された以下の公知の方程式から得る。
Ra=4(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH
【0288】
0に近いREDスコアを有する全ての溶媒は、CFZとの好適な溶解度を可能にする。1を超える任意の数は、CFZに対して好適でないか、あまり好適でない溶媒と見なされる。
【0289】
【表9】
【0290】
溶媒球の3D溶解度プロットを図2に示す。示されるように、円は、本実験を通して判定されたCFZ-APIに好適であるか又はより好適である溶媒を指し、四角は好適でない溶媒を指す。全体的な溶解度における分散性(D)、極性(P)、及びH結合(H)のパラメータのそれぞれの寄与を学ぶために、2Dプロットを描いて、図3に示されるように溶解度パラメータδD、δP、及びδHのそれぞれを比較した。図3は、実験データに基づき、δP対δH、及びδH対δDは好適でない溶媒から好適な溶媒を成功裏に差別化したが、δP対δDの比較に関して相関関係は弱かったことを示した。これは、H結合パラメータは、CFZの全体的な溶解度パターンに寄与した主要因子であったが、分散性及び極性パラメータはより小さな役割を果たしたことを示唆した。
【0291】
表5は、NMP及びDMSOのREDスコアが1に近いことを示し、これは、CFZ-APIがこれらの溶媒中でより低い溶解度を有すると予期されることを反映したものである。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、CFZ-APIがこれらの溶媒に高溶解性であることを発見した。この知見は、分散性及び極性力と比較して、H結合力が、CFZ-APIの溶解度を決定する上で、及びひいては溶媒の選択に主要な役割を果たすことを示唆した。
【0292】
表5に示す情報、並びに図2及び3のプロットに基づいて、本発明者らは、選択された溶解限度内に含まれる分子をHSPデータベース内で選択することによって、CFZに対して効果的であり得る潜在的な溶媒を慎重に選択することができる。本発明者らの実験結果に基づく選択された限度は、以下のとおりである:δD=16~19.5;δP=5~18;及びδH=7~19.6。HSPソフトウェアを使用して、図4に示す指定された範囲に含まれる分子のリストを生成した。このリストは、名前、CAS番号、δD、δP、δH値、δHD/A項(ドナー及びアクセプターの寄与へと細分化された水素結合パラメータ)、及び沸点によって各分子を特定する。図4の詳細に基づいて、本発明者らは、HSPデータベース内でCFZ-APIに対する様々な好適な溶媒を選択することができる。更に、HSPデータベースにはないが、上記の範囲内で指定したδD、δP、及びδH値を有する分子は、CFZ-APIに対して好適な、又はより好適な溶解度プロファイルを提供することが予期され得る。
【0293】
本発明者は、PVPが、より高濃度からより低濃度へと希釈したときにCFZ-APIの可溶化を補助したことも発見した。HSPソフトウェアを用いて、PVPのδD、δP、及びδH値を、δD=21.4、δP=11.6、及びδH=21.6と計算した。ポリマーの分子量は溶解度に対して影響を有し得、また分子量はこの情報源には列挙されていないため、広範囲のδD、δP、及びδH値が予想外ではない。図5は、上記の各条件に対して以下の範囲を用いてPVPと可溶性があることが予期され得る溶解度データベースからの分子を列挙する:Hansenソース:δD=16~24;δP=8~14;及びH=17~24。本明細書で指定される範囲内の溶解度パラメータを有する分子は、PVPを可溶化させることが予期されるが、PVPの分子量は溶解度プロファイルにも影響を与えるため、CFZ-APIを溶解するのに好適なPVPの好適な分子量の特定も、好適なPVPを選択する上で有用である。
【0294】
実施例4:凍結乾燥サイクルのプロセス、増量剤のスクリーニング、及び結果
長期間の安定性を達成するため、CFZ-APIのシクロデキストリン非含有液体配合物の凍結乾燥について検討した。
【0295】
凍結乾燥プロセス:
上記で3mLのSchott 1Aガラスバイアル中に調製した1mLのCFZ-API液体配合物フィルを、VirTis Genesis 12 EL凍結乾燥(TS Systems LyoStar(商標)-3,SP Scientific,Warminster,PA)に装填した。増量剤のスクリーニングに用いた凍結乾燥サイクルは、棚の温度を4℃で30分間維持し、続いて棚を0.2℃/分で-45℃に冷却することからなった。続いて0.3℃/分で-45℃から-12℃までのアニーリング工程を実施した。一次乾燥及び二次乾燥の棚の温度はそれぞれ-25℃及び25℃であった。一次及び二次乾燥に適用した加熱速度は、それぞれ0.2℃/分及び0.1℃/分であった。
【0296】
表5は、PVP12,000MW、マンニトール、又はグリシンなどの増量剤を含有する配合物の凍結乾燥前後の初期凍結乾燥研究の結果を記載する。PVPは、上述したように凍結乾燥前後のPVP中におけるCFZ-APIの高い溶解度のため、共可溶化剤の候補として選択した。PVPは様々な分子量及び様々な濃度で市場で入手可能であるため、10,000MW、12,000MW、及び17,000MW、並びに10%~40%の濃度範囲を有する様々なPVPを試験した。本発明者らは、PVPの分子量及び濃度によって影響を受ける2つの溶解度の傾向を発見した。第1に、CFZ-APIはより低いMWのPVPにより溶解性が高いことが判明した。この場合、10,000MWのPVPが、最高の溶解度を提供し、続いて12,000MWのPVP、及び続いて17,000MWのPVPであることが判明した。第2に、より高いPVPの濃度は、より高いCFZ-APIの溶解度を提供した。これら2つの傾向の組み合わせにより、最大のCFZ-API溶解度を達成するために、高濃度の低分子量PVPが好適な選択肢となり得ることが明らかとなった。29%の10,000MWのPVPが、2.2mg/mlのCFZ-APIを溶解するのに好適であり、一方でより低濃度の20%の12,000MWのPVPが、2mg/mlのCFZ-APIを溶解するのに好適であったことが判明した。
【0297】
【表10】
【0298】
凍結乾燥及び増量剤のスクリーニングからの結果は、大半が低質な凍結乾燥ケークをもたらしたが、2つの選択された増量剤は、全体的な製剤の提示においてより見た目の良いケークを提供した。これらの2つのケーク(20%PVP 12,000MW配合物、及び200mMマンニトール配合物)を、注射用水(WFI)で再構成した。20%PVP 12,000MW配合物は、5分間以内に透明溶液へと再構成した(表5の第2の列に示す)。1.8mg/mlのCFZ-APIの回復は、予期された2mg/mlよりも低かったが、これは恐らく、粉末のその他の構成成分が水を吸収して、理論的に測定したよりも希薄になったためである。凍結乾燥前から凍結乾燥後でのオスモル濃度レベルの観測された低下は、エタノール定量化アッセイにより確認されたエタノールの蒸発によるものである。エタノールをtert-ブチルアルコール(TBA)と交換する(swap out)ための調査、及び凍結乾燥サイクルの最適化が、観察された微量のケークの崩壊を解決し得る。
【0299】
実施例5:安定性試験及び分析
分析試験:
上記で調製したPVP配合物中のCFZ-APを、(A)2℃~8℃で1日、2日、及び1週間の貯蔵、並びに(B)25℃で8時間及び1日間の貯蔵にわたるCFZ-APIの濃度を正確に定量化するために、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分析した。3つの配合物溶液の試料、すなわち(i)KYPROLIS(登録商標)(非ヒト用/NHU)、(ii)2mg/mlのCAPTISOL(登録商標)非含有CFZ-API(0.85%のDMSO、1.4%のPEG400、1.4%のエタノール、0.15%の乳酸、及び28.8%のPVP 10Kからなる)、及び(iii)2mg/mlのCAPTISOL(登録商標)CFZ-API(0.85%のNMP、1.4%のPEG400、1.4%のエタノール、0.15%の乳酸、及び28.8%のPVP 10Kからなる)を、安定性試験のために比較及び分析した。
【0300】
図6A及び6Bは、それぞれ2~8℃及び25℃での貯蔵時間にわたるパーセント主ピークを示す。NMP中のCAPTISOL(登録商標)非含有CFZ-APIには主ピークの有意な喪失はなかったが、毒性基準の懸念がより低いためDMSOが好ましいことが判明した。
【0301】
実施例6-凍結シクロデキストリン非含有カルフィルゾミブ配合物の安定性分析
DMSOは非常に吸湿性が高いため、試料の取り扱いは、低湿条件下で、注意が必要である。更に、水分不含有貯蔵容器及び/又は装置は、2℃~8℃で高いCFZ安定性に達して凍結状態を維持するのに有用である。0.5mLの微小遠心エッペンドルフ管、並びに凍結乾燥ストッパ及びクリンプシールを備えた3ccのガラス製Schott 1Aバイアルなどの容器を、DMSO中のCFZの安定性に関して調べた。図7は、2℃~8℃で4週間貯蔵時のクリンプシールを有する容器及びクリンプシールを有さない容器中の凍結カルフィルゾミブ製剤の間の視覚的差異を示す。
【0302】
クリンプシールされた容器は、クリンプシールを有さない凍結製剤と比較して、より結晶状の凍結固体製剤を有した。エッペンドルフ管はDMSO中のCFZを最大で3週間凍結状態に保ち、続いて液体となった。2℃~8℃で4週間貯蔵した場合の製剤安定性を、図8に示すようにRP-HPLCによって測定した。4週間にわたってパーセント主ピークの有意な喪失はなく、これは、凍結状態が短期間の安定性を維持したことを示唆した。
【0303】
実施例7:オスBALB/cマウスにおける予備的な単一用量局所耐性研究
オスBALB/cマウスに(A)皮下投与及び(B)静脈内投与された本発明のシクロデキストリン非含有2mg/mlCFZ-API配合物のプロテアソーム活性を測定する研究を実施した。本研究は、Charles River Laboratory,Inc.の試験施設(Spencerville,OH)で実施した。皮下及び静脈内の曝露経路の両方がヒト曝露の潜在的な経路であるため、これらを選択した。
【0304】
マウスに皮下投与されたCFZ-APIのプロテアソーム活性
上記で調製されたPVP配合物中のCFZ-APをマウスに皮下投与した。1日目に下脇腹(後背部(caudodorsal back))領域に1回皮下注射することによって、試験物質及び対照物質を適切な動物に投与した。各動物の用量体積は、最新の体重測定に基づいた。動物は、用量投与のために一時的に拘束し、鎮静剤の投与は行わなかった。用量は、針を取り付けた注射器を用いて与えた。投薬の第1日を1日目と指定した。第1の用量の前に動物の脇腹領域を刈り取って体毛を除去した。刈り取り手順の間は、皮膚の擦り傷を避けるように注意を払った。注射部位(2cm×2cm)の輪郭に不滅マーカーで線を引き、その後は必要に応じて再度マーキングした。投薬後5、10、15、及び20時間にわたる配合物のプロテアソーム活性(キモトリプシン様パーセント(%CT-L)活性)を正確に定量化するために、結果を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分析した。3つの配合物溶液の試料、すなわち(i)2mg/mlのCAPTISOL(登録商標)非含有CFZ-API(0.85%のDMSO、1.4%のPEG400、1.4%のエタノール、0.15%の乳酸、及び28.8%のPVP 10Kからなる)、(ii)KYPROLIS(登録商標)NHU 5mg/ml、及び(iii)KYPROLIS(登録商標)NHU 16.7mg/mlを、薬力学試験のために比較及び分析した。
【0305】
(B)マウスに静脈内投与されたCFZ-APIのプロテアソーム活性
上記で調製されたPVP配合物中のCFZ-APIをマウスに静脈内投与し、上記で調製されたPVP配合物中のCFZ-APIをマウスに皮下投与した。1日目に尾静脈に1回静脈内(低速ボーラス)注射することによって、試験物質及び対照物質を適切な動物に投与した。各動物の用量体積は、最新の体重測定に基づいた。動物は、用量投与のために一時的に拘束し、鎮静剤の投与は行わなかった。用量は、針を取り付けた注射器を用いて与えた。投薬の第1日を1日目と指定した。投薬後5、10、15、及び20時間にわたる配合物のプロテアソーム活性(%CT-L活性)を正確に定量化するために、結果を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分析した。3つの比較研究を以下の通り実施した。
【0306】
【表11】
【0307】
図9は、マウスに2mg/mlで静脈内投与された本発明のCAPTISOL(登録商標)非含有CFZ-API配合物、及びKYPROLIS(登録商標)NHU配合物のプロテアソーム活性の結果を示した。明確にするため、1.7mg/mLのCFZ-API試料は液体バージョンであり、これは凍結乾燥された。凍結乾燥生成物を2mg/mLに再構成し、個別の試料注射剤として用いた。より低い投薬量のシクロデキストリン非含有CFZ-APIが、皮下投与においてCAPTISOL(登録商標)含有CFZ-API(KYPROLIS NHU)と同じ効力を達成することが示された。この投薬量の低下は、CFZ-APIによって発揮される毒性の低下と解釈され得る。皮下投与されたCAPTISOL(登録商標)非含有配合物は、10,000mwのPVP配合組成物を含む液体DPであった。これは、ヒアルロニダーゼを含む及び含まないKYPROLIS(登録商標)NHUと比較して、より低いパーセントのプロテアソーム活性、又はより高いプロテアソーム阻害を有した。
【0308】
図10は、マウスに2mg/mlで静脈内投与されたCAPTISOL(登録商標)非含有CFZ-API及びKYPROLIS(登録商標)NHUのプロテアソーム活性の結果を示す。KYPROLIS(登録商標)NHUと比較したとき、28.8%のPVP10,000mwを含有するCAPTISOL(登録商標)非含有配合物中で最高のプロテアソーム阻害が観測された。凍結乾燥PVP12,000MW配合物は、わずかに低いプロテアソーム阻害を示したが、これはまだ許容可能な範囲内であり、現在市販されるKYPROLIS(登録商標)の標準偏差の範囲内である。
【0309】
動物研究の結果は、現行のCAPTISOL(登録商標)含有配合物と比較して、本発明のシクロデキストリン非含有配合物由来のマウスにおける著しく高い薬力学を示したことが観測された。CAPTISOL(登録商標)はCFZ-APIを封入しているため、そのバイオアベイラビリティ特性は損なわれるか、又はシクロデキストリン非含有CFZ-APIよりも最適でないという仮説が立てられ得る。同様に、添加剤又は共可溶化剤(例えばPVP、DMSO、NMPなど)は、シクロデキストリン非含有配合物中でCFZ-APIのバイオアベイラビリティを向上させ得る。
【0310】
他の実施形態
本開示はその詳細な説明と併せて読まれるが、前述の説明は、例示を意図し、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲の限定を意図しないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】