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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】経カテーテル式人工弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542137
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2020001065
(87)【国際公開番号】W WO2021140355
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】16/736,116
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522273078
【氏名又は名称】ハイライフ エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウィル
(72)【発明者】
【氏名】ナスル、マレク
(72)【発明者】
【氏名】ベルトライン、ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】オファーマン、ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】マドリッド、ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】バルケ、グレン
(72)【発明者】
【氏名】ディープ、エリック
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC05
4C097CC11
4C097DD10
4C097EE08
4C097SB03
(57)【要約】
置換心臓弁のシステム、及び患者に置換心臓弁を移植する方法。置換心臓弁のシステムは、半径方向に自己拡張可能な筒状体と、前記筒状体と連結され、複数の弁尖を含む弁とを有する。前記筒状体は、セルの円周方向の列を定める相互に接続されたストラットを含み、流出端と、外径が前記流出端の外径よりも大きくなるように半径方向の外側に張り出す流入端とを有する。流入端に形成される最近位のセルの第1の列は、円周方向に互いに間隔をあけるように互いに分離された円周方向に隣接するセルを含む。患者に置換心臓弁を移植する方法は、前記筒状体を搬送カテーテルから搬送する工程と、前記最近位のセルが生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、前記筒状体を拡張する工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換心臓弁のシステムであって、
前記システムは、半径方向に自己拡張可能な筒状体と、前記筒状体と連結され、複数の弁尖を含む弁とを有し、
前記筒状体は、遠位の流出端と、近位の流入端と、複数の相互に接続されたストラットとを有し、
前記流入端は、前記流入端の外径が前記流出端の外径よりも大きくなるように半径方向の外側に張り出すものであり、
前記ストラットは、前記流入端に配置される第1の列を含む、セルの円周方向の列を定めるものであり、前記第1の列は最近位のセルから形成されるものであり、
前記最近位のセルは、前記筒状体の最近位部分を形成し、円周方向に整列され、かつ、スペースによって前記円周方向に互いに間隔をあけるように互いに分離された円周方向に隣接するセルを含むものであることを特徴とする置換心臓弁のシステム。
【請求項2】
前記最近位のセルは、それぞれ、前記円周方向に前記最近位のセルの間に位置するストラットの最近位部分の近位に位置する最近位の頂点を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項3】
前記筒状体は、さらに、前記セルの第1の列と軸方向に隣接するセルの第2の列を含み、かつ、前記第2の列のセルの近位部分は、前記軸方向に前記スペースと重なるように、互いに間隔をあけられた前記円周方向に隣接するセルの間の位置に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項4】
前記第2の列の円周方向に隣接するセルは、前記第2の列が円周方向に隣接するセルの間にスペースを含まないように、互いに接合されたものであることを特徴とする請求項3に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項5】
前記最近位のセルのそれぞれの遠位部分が、前記第2の列の軸方向に隣接するセルの一部も定めるストラットによって定められるものであることを特徴とする請求項3に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項6】
前記第2の列の前記セルは、前記第1の列の前記最近位のセルよりも大きいものであることを特徴とする請求項3に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項7】
前記第2の列の前記セルの前記近位部分は、互いに間隔をあけられた前記円周方向に隣接するセルの間に頂点を形成するものであることを特徴とする請求項3に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項8】
前記最近位のセルのそれぞれの遠位部分が、前記第2の列の軸方向に隣接するセルの頂点も定めるストラットによって定められるものであることを特徴とする請求項6に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項9】
前記筒状体は、さらに、最近位のセルの前記第1の列よりも前記流出端の近くに配置されたセルの遠位の列と、アームとを有し、前記アームは、互いに間隔をあけられた前記円周方向に隣接するセルの間に前記アームの一部が配置されるように、前記セルの遠位の列から伸びるものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項10】
前記筒状体は、さらに、円周方向に伸び、前記流入端と前記流出端との間に配置された溝を有し、かつ、
前記セルの遠位の列は、前記溝よりも前記流出端に近くなるように前記溝の遠位側に位置するものであることを特徴とする請求項9に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項11】
前記アームが、前記遠位の列のセルの頂点から伸びているものであることを特徴とする請求項9に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項12】
前記第1の列の前記最近位のセルが、さらに、一組の互いに直接接合した接合セルを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項13】
前記第1の列の前記最近位のセルが、複数組の互いに直接接合した接合セルを含み、前記複数組は、前記筒状体の前記流入端の周囲で互いに等間隔に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項14】
前記筒状体は、さらに、円周方向に伸び、前記流入端と前記流出端との間に配置された溝を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項15】
前記流入端の前記外径は、前記溝から前記最近位端部分への方向に沿って大きくなるものであることを特徴とする請求項14に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項16】
前記第1の列は、前記筒状体の円周方向の列の残りの部分よりも少ない数のセルを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項17】
前記スペースの円周方向の寸法が、最近位のセルの円周方向の寸法と実質的に等しいものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項18】
前記スペースの円周方向の寸法が、前記複数の相互に接続されたストラットのうちの一つの円周方向の寸法と実質的に等しいものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項19】
少なくとも一つの前記互いに間隔をあけて円周方向に隣接するセルはシールを含み、前記シールは、前記スペースの側面を定めるストラットであって前記円周方向に隣接するセルのうちの一つのセルの側面を形成するストラットから円周方向に伸びるものであることを特徴とする請求項1に記載の置換心臓弁のシステム。
【請求項20】
患者に置換心臓弁を移植する方法であって、前記方法は、
半径方向に自己拡張可能な筒状体と、前記筒状体と連結され、複数の弁尖を含む弁とを搬送カテーテルから搬送する工程であって、前記筒状体は、遠位の流出端と、近位の流入端と、複数の相互に接続されたストラットとを有し、前記流入端は、前記流入端の外径が前記流出端の外径よりも大きくなるように半径方向の外側に張り出すものであり、前記ストラットは、前記流入端に配置される第1の列を含む、セルの円周方向の列を定めるものであり、前記第1の列は最近位のセルから形成されるものであり、前記最近位のセルは、前記筒状体の最近位部分を形成し、円周方向に整列され、かつ、スペースによって前記円周方向に互いに間隔をあけるように互いに分離された円周方向に隣接するセルを含む工程と、
前記最近位のセルが生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、前記筒状体を拡張する工程と、
を含むことを特徴とする患者に置換心臓弁を移植する方法。
【請求項21】
前記筒状体は、さらに、前記セルの第1の列と軸方向に隣接するセルの第2の列を含み、かつ、前記第2の列のセルの近位部分は、互いに間隔をあけられた前記円周方向に隣接するセルの間の位置に配置されたものであり、
前記最近位のセルのそれぞれの遠位部分が、前記第2の列の軸方向に隣接するセルの一部も定めるストラットによって定められるものであり、
前記セルの第2の列も生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、前記筒状体が拡張されることを特徴とする請求項20に記載の患者に置換心臓弁を移植する方法。
【請求項22】
前記筒状体は、さらに、最近位のセルの前記第1の列よりも前記流出端の近くに配置されたセルの遠位の列と、アームとを有し、前記アームは、互いに間隔をあけている前記円周方向に隣接するセルの間に前記アームの一部が配置されるように、前記セルの遠位の列から伸びるものであり、
前記アームも生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、前記筒状体が拡張されることを特徴とする請求項20に記載の患者に置換心臓弁を移植する方法。
【請求項23】
さらに、捕捉部材を前記筒状体の周りに推進させて、前記筒状体と前記捕捉部材との間に生来の弁尖及び/又は腱索の部分を捕捉する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の患者に置換心臓弁を移植する方法。
【請求項24】
さらに、
細長い外部部材を前記筒状体の周りに推進させる工程、
前記捕捉部材が前記筒状体の周りに配置されるように、前記捕捉部材を、前記細長い外部部材にそって、前記細長い外部部材を覆うように推進させる工程、及び
患者から前記細長い外部部材を除去する工程、
を含むことを特徴とする請求項23に記載の患者に置換心臓弁を移植する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
毎年、全世界で約300、000人の人が心臓の弁疾患に罹患している。これらの弁疾患によって、弁尖組織の異常、例えば、組織の過剰な増殖、組織の退化/断裂、組織の硬化/石灰化等が生じる。また、これらの弁疾患によって、心臓周期内で組織の位置の異常、例えば、弁輪の拡張や心室の再成形等が生じる。このような弁尖組織の異常及び組織の位置の異常は、漏れ/血液の逆流(弁不全症)又は血流に対する抵抗(弁狭窄症)等を含む、弁の機能低下につながる。
【0002】
弁を置換する手術は、患者の欠陥のある心臓弁が修復される、最小限の侵襲性の外科手術である。このように、弁尖組織の異常や組織の位置の異常を、心臓弁の機能を回復させるために修復することができる。弁を置換する手術において、人工弁は、患者の生来の心臓弁を除去せずに、患者の生来の心臓弁に搬送される。その代わりに、人工弁は、生来の心臓弁の機能を置換する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ここに開示されるのは、置換心臓弁のシステム、及び患者に置換心臓弁を移植する方法である。置換心臓弁のシステムは、半径方向に自己拡張可能な筒状体を有し、前記筒状体は、遠位の流出端と、近位の流入端と、複数の相互に接続されたストラットとを有し、前記流入端は、前記流入端の外径が前記流出端の外径よりも大きくなるように半径方向の外側に張り出すものであり、前記ストラットは、前記流入端に配置される第1の列を含む、セルの円周方向の列を定めるものであり、前記第1の列は最近位のセルから形成されるものであり、前記最近位のセルは、前記筒状体の最近位部分を形成し、円周方向に整列され、かつ、前記円周方向に互いに間隔をあけるように互いに分離された円周方向に隣接するセルを含む。複数の弁尖を含む弁が前記筒状体と連結される。
【0004】
患者に置換心臓弁を移植する方法は、前記半径方向に自己拡張可能な筒状体を搬送カテーテルから搬送する工程と、前記最近位のセルが生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、前記筒状体を拡張する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図中で、異なる見方の複数の図を通じて、同じ符号は同じ部分を示す。図は必ずしも正確な縮尺ではなく、概して本発明の原理を示すために強調されている。下記の説明では、次に示す図に言及して多様な実施形態が説明される。
【0006】
図1】開示される本発明の実施形態による経カテーテル式人工弁を示す概略図である。
【0007】
図2】開示される本発明の実施形態による経カテーテル式人工弁を示す概略図である。
【0008】
図3】本発明の実施形態による患者に移植された経カテーテル式人工弁を示す概略図である。
【0009】
図4】本発明の実施形態による患者に移植された経カテーテル式人工弁を示す概略図である。
【0010】
図5】本発明の実施形態による経カテーテル式人工弁の流入端を示す概略図である。
【0011】
図6A】本発明の実施形態による経カテーテル式人工弁の流入端を示す図である。
図6B】本発明の実施形態による経カテーテル式人工弁の流入端を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、開示された形態を実施することができる具体的な細部を描いた添付の図に言及する。他の実施形態も利用することができ、本発明の範囲から外れることなく構造的、論理的変更を行うこともできる。異なる複数の実施形態は必ずしも相互に排他的ではなく、いくつかの実施形態は、1つ以上の他の実施形態と組み合わせて新たな実施形態とすることができる。
【0013】
開示される実施形態は、接続チャンネル内で患者の生来の心臓弁を機能的に置換するための経カテーテル式人工弁1に関するものである。患者の生来の心臓弁は、例えば僧帽弁又は三尖弁などの房室心臓弁でもよい。経カテーテル式人工弁1は、患者の生来の弁の人工置換弁として働くことができる。
【0014】
置換される生来の房室心臓弁(例えば僧帽弁又は三尖弁)は、心臓の心房140と心室130との間の接続チャンネル(又は貫通孔)を形成する概して円周の壁構造を有する。壁構造は、円周の弁輪、弁輪に近い位置で接続チャンネル又は貫通孔を開閉する弁尖160、弁尖160と概して円周の乳頭筋との間に接続された概して円周の腱索構造(腱索)170、及び上記の円周の乳頭筋を含む。
【0015】
図1と2に示されるように、経カテーテル式人工弁1は、縦軸に沿って伸びている近位の流入端10と遠位の流出端15(本システムが患者に移植されたときの血流の向きによる)を持つ、半径方向に自己拡張可能な筒状体5を含む。ここで用いられているように、「近位」は流入端10に向かう方向を示し、「遠位」は流出端15に向かう方向を示す。いくつかの実施形態では、筒状体5は、バルーン拡張可能であってもよい。筒状体5は、搬送カテーテルを介して患者の体内に搬送される、メッシュ状の構造体から成ることができる。筒状体5のメッシュ状の構造体は、ニッケル、チタン及び/又は貴金属(例えば金)を含む超合金及び/又は形状記憶合金から形成される複数のストラット8を含むことができる。いくつかの実施形態で、筒状体5はニチノールから形成される。別の実施形態では、筒状体5は、ポリマーから形成され、このポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、及び/又は他のポリマーが挙げられる。例えば、筒状体5は1つ以上の生体吸収性高分子から形成されることができる。
【0016】
筒状体5は概して円柱形状であってもよい。筒状体5の流入端10は、流出端15よりも外径が大きくなるように半径方向の外側に張り出すものであってよい。以下で議論するように、筒状体5は、さらに、円周方向に伸び、流入端10と流出端15との間に配置された溝7を有するものであってよい。
【0017】
流入端10は筒状体の中心(縦)軸に沿って概して円錐、又は広がる形状を有し、その断面直径は溝7から大きくなってよい。流出端15は概して円柱状であってよい。これに代わって、流入端10と流出端15の両方が筒状体の軸に沿って円錐形状を有し、それら各々の断面直径は溝7から大きくなってよい。加えて、筒状体5の流出端15は、予め形成された溝7から流出(最遠位)端に向かって、半径方向の外側に傾斜する円錐台形状をとってよい。
【0018】
流入端10の外径は、溝7から最近位端部分又は最流入端部分102への方向に沿って大きくなるものであってよい。流入端10は、効果的な弁周囲の漏出シールを提供するのに十分に大きく設計されてよい。例えば、図3と4に示されるように、流入端10は、患者に移植されたときに生来の弁輪の表面に対して配置されるように設計されてよい。流入端10は、心臓の左心房140の中の生来の弁輪の表面に対して配置されるように設計されてよい。筒状体5の流出端15は、半径方向の外側に傾斜する円錐台形状をとってよい。これに代わって、筒状体5の流出端15は内側に向かって細くなってもよい。
【0019】
流入端10と流出端15の部分の断面は、楕円形又はD字形の断面のような非円形形状であってよく、又は楕円形又はD字形の断面のような非円形形状を含んでよい。加えて、溝7と流入端10との間及び/又は溝7と流出端15との間の軸方向の輪郭(筒状体5に沿った横断面で見たとき)の湾曲方向は変化してよい(例えば、溝7と流入端10又は流出端15との間の変わり目で溝7の凹状湾曲から凸状湾曲へ)。
【0020】
筒状体5は、セルの円周方向の列を定める複数の相互に接続されたストラット8を含む。セルの円周方向の列は、流入端10に配置される第1の列101を含む。第1の列は、筒状体の最近位部分又は最流入端部分を形成する最近位のセル又は最流入端セル101から形成される。図1、2、及び5に示されるように、最近位のセル101は円周方向に整列されている。例えば、最近位のセル101の頂点102は互いに円周方向に整列されている。最近位のセル101は、互いに分離された円周方向に隣接するセルを含む。即ち、最近位のセル101は、互いに触れ合っていないか、もしくは互いに直接接合又は結合していない円周方向に隣接するセルを含む。むしろ、いくつかのセル101は、一つ以上の円周方向のスペース107(図1、2、6B)、又はスペース108(図5、6A)によって、円周方向に互いに間隔をあけられているか、又は互いに離されている。
【0021】
例えば、図1、2において、第1の列は、いくつかのストラットが除去された、分離されたセル101を含み、これにより、いくつかのセル101がスペース107によって互いに間隔をあけられた、不規則な円周の流入縁を形成する。図5において、第1の列は、同様に、スペース108によって互いに間隔をあけられた分離されたセル101を含む。スペース107は円周方向にスペース108より大きくてよい。例えば、スペース107の円周方向の寸法が、セル101の円周方向の寸法と実質的に等しいものであってよい。図1、2に示されるように、分離されたセル101は一つ以上のスペース107によって互いに間隔をあけられてもよい。図5に示されるように、スペース108の円周方向の寸法が、ストラットの円周方向の寸法と実質的に等しいものであってよい。
【0022】
開示される筒状体5の流入端の配置は、筒状体5に不均一なステント剛性を与える。例えば、開示される筒状体5の不均一なステント剛性の配置は、所望のステントの構造一体性と機能を維持しながら、患者の解剖学的構造へのより高いステント適合性を達成することを可能にする。図1、2、及び5~6Bに示されるように、不均一なステント剛性は、選択的にストラットの断絶を作り、ストラットの連結を変えることによって達成することができる。例えば、円周方向に整列され、かつ、スペースによって前記円周方向に互いに触れ合っていないか、又は互いに離されるように互いに分離された円周方向に隣接するセルを含む最近位のセル101の列を含むように流入端10を設計することによって、円周の周りに及び/又は筒状体5の長さに沿った不均一なステント剛性を達成することができる。
【0023】
クレームされた配置の結果として、陥入又はステント陥入が除去されてもよい。陥入又はステント陥入は、流入端のセルのいくつかが内側にねじれる場合であり、これにより、中心に向けたステント陥入を作る。ステント陥入又は陥入は、例えば、人工弁が該人工弁よりも小さいジオメトリをもつ生来の自然弁に移植された場合等、様々な状況下で起こり得る。筒状体5の流入端10を、互いに分離された(例えば、一つ以上のスペース107又は108によって、互いに触れ合っていない、又は互いに間隔をあけている)最近位のセル101を有するように設計することによって、筒状体5の流入端10は、小型の生来の自然弁又は窮屈な生来の自然弁の中でより容易に重圧を分布させ、それによりストラットのねじれ又は陥入を回避する。筒状体5のより柔軟な流入端は、人工弁1を様々な患者の解剖学的構造に対してより適応性がありその一方でなおも機能的かつ耐久性のあるものとする。加えて、分離されたセル101はより容易な弁の装填とより小さい搬送形態を可能にし、搬送システムから弁を完全に展開することなく人工弁の機能評価をよりよく行うことができる。
【0024】
図1に示されるように、第1の列の最近位のセル101は、複数組の互いに直接接合した接触セルを含んでもよい。複数組のセル101はスペース107によって円周方向に隣接する組と間隔があけられる。図1に示されるように、セル101の組は、筒状体5の流入端10の周囲で互いに等間隔に配置されてよく、もしくは円周方向に互いに非等間隔に配置されてよい。筒状体5は図1に示される配置(もしくは以下で議論する図2~6Bに示される配置)に限定されない。少なくともいくつかのセル101が、円周方向に互いに離されているか、又は互いに間隔をあけられている(例えば、半径方向の内側への力のような、円周方向の存在しない力において、少なくともいくつかのセル101は互いに接触していない)ように、互いに分離されている限り、第1の列の最近位のセル101の他の配置が可能である。
【0025】
例えば、第1の列の最近位のセル101は単一組の互いに直接接合した接触セル101を含み、第1の列の他のセル101は、スペース107によって互いに触れ合っていない、又は互いに間隔をあけているようにして、互いに分離されていてよい。第1の列の最近位のセル101は、筒状体5の半径方向に反対側に配置された接触セル101を2組含んでよい。さらに他の態様では、最近位のセル101は、2組よりも多くの互いに直接接合した接触セル101を含んでよい。接触セル101の組は、円周方向に互いに等間隔に又は非等間隔に配置されてよい。最近位のセル101は、接触セル101のグループが少なくとも一つの円周方向に隣接するセルから分離されている(例えば、接触していない)限り、2つよりも多くの互いに直接接合した接触セル101を含んでよい。例えば、最近位のセル101は、そのグループが少なくとも一つの円周方向に隣接するセルから分離されている限り、互いに直接接合した2、3、4、5、またはそれより多くのセルのグループを一つ以上含んでよい。直接接合したセル101のグループは様々な数のセル101を含んでよい。例えば、第1の列は2、3、4、5、6、またはそれより多くのセル101からなる第1のグループを含んでよく、該第1のグループは異なる数の直接接合したセル101からなる第2のグループから間隔をあけている。グループ及び/又は個々のセルは、円周方向の一つ以上のスペース107によって互いに間隔をあけられてよい。セル101及び/又は接合セル101のグループは、筒状体5の流入端10の周囲で、円周方向に隣接するセル又はセル101のグループから等間隔又は非等間隔に間隔があけられていてよい。第2の列のセル103の頂点105は、スペース107に軸方向に重なるように、円周方向に隣接する接触セル101の組又は個々のセル101の間に配置されてよい。
【0026】
これに代わって、第1の列は接触する又は直接接合したセル101を含んでいなくてよい。例えば、第1の列は、セル101が他の最近位のセル101のいずれとも触れ合わないように、互いに分離された(例えば、間隔をあけられた)個々のセル101のみを含んでよい。むしろ、各々のセル101は、スペース107によって円周方向に隣接するセル101から間隔をあけられている。個々のセル101は、円周方向に互いに等間隔に又は非等間隔に配置されてよい。任意の適切な数の個々のセル101が第1の列を形成することができる。例えば、第1の列は最近位のセル101を一つだけ含むことができる。又は、第1の列はスペース107によって互いに円周方向に間隔をあけられた2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれより多くの最近位のセルを含むことができる。セル101は互いに非等間隔に配置されてよい。セル101は任意の適切な形状を有するように設計されてよく、筒状体5の最近位点としての頂点102を有するように形成されてもよい。
【0027】
図1中、セル101は任意の適切な形状を有するように設計されてよく、筒状体5の最近位点としての頂点102を有するように形成されてもよい。頂点102は、円周方向に互いに整列されてよい。以下でより詳細に議論するように、セルの第2の列のセル103は、円周方向に分離されたセル101の間の位置に配置されるように、流入側に向かって伸びる最近位部分105を有してよい。例えば、セル103の最近位部分105は、軸方向にスペース107に重なってよい。セル103の最近位部分105は、セル101の最近位部分102のように頂点を形成してよい。セル101の最近位頂点102は、第2の列のセル103の最近位部分105の近位に位置してよい。加えて、セル101の最近位頂点102とセル103の最近位部分105は、共同して筒状体5の最流入端を定めてよい。また軸方向にセル101により整列させられるセル103は、最近位部分104を含んでもよい。また最近位部分104を形成するストラットは、セル101の最遠位端を定めてもよい。
【0028】
これに代わって、図2に示されるように、第1の列は2つの最近位のセル101a、101bを含むことができる。図2のセル101a、101bは筒状体5の半径方向に反対側に配置される。これに代わって、セル101a、101bは、筒状体5の流入端10の周囲の異なる位置に配置されてよい。加えて、第1の列の最近位又は最流入端セル101は、図2のセル101a、101bよりも多い又は少ないセルを含んでよい。最近位のセル101a、101bは、流入端の周囲で互いに等間隔(図2参照)又は非等間隔に配置されてよい。図1に関して上記で議論されたように、最近位のセル101は、接触セルの一つ以上の組又はグループが第1の列の少なくとも一つの円周方向に隣接するセルから分離されている(例えば、接触していない)限り、互いに直接接合した接触セルの組(2つ有する)又はグループ(2つより多く有する)を一つ以上含んでよい。これに代わって、第1の列は、非接触セル101を含んでよい。例えば、第1の列は、セル101が他の最近位のセル101のいずれとも触れ合わないように、互いに分離された(例えば、間隔をあけられた)個々のセル101のみを含んでよい。個々のセル101は、円周方向に互いに等間隔に又は非等間隔に配置されてよい。図1に関して上記で議論されたように、任意の適切な数の個々のセル101が第1の列を形成することができる。
【0029】
図2中、筒状体5の半径方向の反対側に配置されるセル101a、101bは任意の適切な形状を有するように設計されてよく、筒状体5の最近位点としての頂点102a、102bを有するように形成されてもよい。頂点102a、102bは、円周方向に互いに整列されてよい。セル101a、101bは互いに触れ合っていなく、互いに直接接合してもいない。その代わりに、セル101a、101bは円周方向の一つ以上のスペース107によって互いに間隔をあけられている。以下でより詳細に議論するように、セル106の遠位の列から伸びるものである複数のアーム106は、アーム106の各々の一部が円周方向にセル101aと101bとの間の位置に配置されるように、流入側に向かって伸びている。例えば、アーム106はスペース107を定めてよい。最近位頂点102aと102bは、円周方向に最近位のセル101aと101bとの間に位置するアーム106の最近位部分の近位に位置してよい。
【0030】
図5に示されるように、最近位のセル101は、スペース108によって円周方向に隣接する組から間隔をあけられた複数組の互いに直接接合した接触セルを含んでもよい。これに代わって、第1の列の各々のセル101は、スペース108によって円周方向に隣接するセルから間隔をあけられてよい。即ち、セル101の第1の列又は最流入端列は、円周方向に互いに直接接合又は結合されたセルを含まなくてよい。むしろ、セル101の最流入端列は、スペース108によって互いに間隔をあけられた個々のセル101のみを含んでよい。
【0031】
これに代わって、個々のセル101又は円周方向のセルにおいて互いに直接接合した2、3、4、5、6、7、8、またはそれより多くのセル101のグループは、スペース108によって円周方向に隣接するセルから円周方向に間隔をあけられてよい。例えば、最近位のセル101は、そのグループが少なくとも一つの円周方向に隣接するセルから分離されている限り、互いに直接接合した2、3、4、5、またはそれより多くのセルのグループを一つ以上含んでよい。分離されたセル101は、円周方向に互いに等間隔に又は非等間隔に配置されてよい。例えば、個々のセル101は、互いに直接接合された2又はそれより多くのセルのグループから、スペース108によって間隔をあけられてよい。もしくは、第1のグループが第2のグループよりも多くのセルを有するように、セル101の第1のグループは円周方向に隣接したセル101の第2のグループから間隔をあけられよい。言い換えると、流入端10は様々な数の直接接合したセル101を含んでよい。さらに別の言い方をすれば、スペース108は、筒状体5の流入端10の周囲で、円周方向に互いに等間隔又は非等間隔に位置してよい。
【0032】
図5のセル101は任意の適切な形状を有するように設計されてよく、筒状体5の最近位点としての頂点102を有するように形成されてもよい。頂点102は、円周方向に互いに整列されてよい。以下でより詳細に議論するように、セルの第2の列のセル103は最近位部分104を有してよい。図5に示されるように、最近位部分104は、頂点を形成してよい。また第2の列のセル103の最近位部分104は、第1の列のセル101の最遠位部分を定めてもよい。
【0033】
上記で議論したように、スペース108はスペース107より小さくてよい。スペース108は、スペース107の円周方向の寸法より小さい円周方向の寸法を有してよい。例えば、スペース108は、筒状体5の流入端10を形成するストラットの円周方向の寸法と実質的に等しい円周方向の寸法を有してよい。図5に示される流入端10の配置においては、ねじれ又は陥入を起こすことなく流入端10を生来の解剖学的構造に適合させるように、分離されたセル101は半径方向の圧縮下において円周方向に互いに重なってよい。例えば、生来の弁の弁輪からの半径方向の圧縮下において、分離されたセル101は円周方向に互いに重なるように圧縮されてよい。分離されたセル101は、扇のような方法で互いに重なるように半径方向に圧縮されてよい。そのような柔軟性は筒状体5が生来の弁の解剖学的構造によりよく適合することを可能にし、これによって弁周囲の漏出を防止又は低減する。
【0034】
筒状体5の流入端10はスペース107とスペース108との組み合わせを含んでよい。例えば、個々の又はグループのセル101は、スペース107とスペース108との組み合わせによって円周方向に隣接するセルから間隔をあけられてよい。最近位のセル101の第1の列が円周方向にスペース107及び/又は108によって互いに離された(例えば、互いに触れ合っていなく、互いに直接接合してもいない)円周方向に隣接するセルを含む限り、様々な他の改変や図1、2、及び5の間における要素の組み合わせは容易に許容される。
【0035】
最近位部の配置の結果として、第1の列101は筒状体5の円周方向の列の残りの部分よりも少ないセルを含んでよい(図1、2参照)。図1、2、及び5に示されるように、最近位のセル101は、各々、円周方向に最近位のセル101の間に位置するストラットの最近位部分105の近位に位置する最近位頂点102を含んでよい。
【0036】
図1、2、及び5に示されるように、筒状体5は、セル101の第1の列に軸方向に隣接するセル103の第2の列をさらに含んでよい。図1と2に示されるように、第1の列101はセル103の第2の列より少ないセルを含んでよい。もしくは図5に示されるように、セル101の第1の列とセル103の第2の列は等しい数のセルを含んでよい。第2の列のセル103は第1の列の最近位のセル101より大きくてよい。第2の列のセル103は、筒状体5において、いずれかの他のセルよりも大きくてよい。
【0037】
図1に示されるように、第2の列のセル103の近位部分105は、円周方向に隣接する、触れ合っていないセル101の間の位置に配置されてよい。例えば、第2の列のセル103の近位部分105は、軸方向にスペース107に重なるように配置されてよい。即ち、近位部分105はスペース107によって円周方向に整列させられてよい。第2の列のセル103の近位部分105は分離されたセル101の間に頂点を形成してよい。セル103の第2の列はスペース107又は108のようなスペースを含まなくてよい。即ち、図1と5に示されるように、第2の列の全てのセル103は、円周方向に隣接するセルと直接接合してよい。これに代わって、図2に示されるように、セル103の第2の列はアーム106によって定められるスペース107を含んでよい。
【0038】
図1、2、及び5に示されるように、最近位のセル101の各々の遠位部分(即ち、流出部分)104は、第2の列の軸方向に隣接するセル103の一部も定めるストラットによって定められてよい。最近位のセル101の各々の遠位部分104は、第2の列の軸方向に隣接するセル103の頂点も定めるストラットによって定められてよい。頂点102、104、105は、V字形、U字形、もしくは任意の他の適切な形を有してよい。頂点又は先端102、104、105は近位の方向(例えば、流入方向)に向けられて(向いて)よい。
【0039】
図2に示されるように、筒状体5は、セル101a、101bの第1の列に軸方向に隣接するセル103a、103bの第2の列を含んでよい。第1の列101はセル103の第2の列より少ないセルを含んでよい。第2の列のセル103a、103bは、第1の列の最近位のセル101a、101bよりも大きくてよい。第2の列のセル103a、103bは、筒状体5において、いずれかの他のセルよりも大きくてよい。近位部分105が非接触のセル101a、101bの間に位置することの代わりに、複数のアーム106が、円周方向にセル101aと101bとの間に配置される。図2に示されるように、アーム106は、遠位の列のセル151の頂点又は先端から伸びてよい。
【0040】
図2はセル101aと101bとの間に配置される複数のアーム106を示すが、筒状体5は、一つ以上のアーム106のような、セル101a、101bの間に任意の適切な数のアーム106を含んでもよい。これに代わって、筒状体5は、第1の列の非接触セル101の間に、近位の頂点部分105(図1参照)とアーム106(図2参照)の組み合わせを含んでよい。図2に示されるアーム106は、図1に示されるような、触れ合う又は接合するセル101の組(2つ有する)又はグループ(2つより多く有する)との組み合わせにおいて用いられてよい。同様に、図1に示される第2の列のセル103の近位部分105は、図2に示される個々の分離されたセル101a、101bの中間に配置されてよい。最近位のセル101の第1の列が円周方向にスペース107及び/又は108によって互いに離された(例えば、互いに触れ合っていなく、互いに直接接合してもいない)円周方向に隣接するセルを含む限り、様々な他の改変や図1、2、及び5の間における要素の組み合わせは容易に許容される。
【0041】
図1と2に示されるように、筒状体5は、最近位のセル101の第1の列よりも流出端15の近くに配置されるセル151の遠位の列を含んでよい。セル151の遠位の列は、溝7よりも流出端15の近くになるように、溝7の遠位側に位置してよい。図2に示されるように、筒状体5は、アーム106の一部が、円周方向に隣接する、触れ合っていないセル101a、101bの間に配置されるように、セル151の遠位の列から伸びるアーム106を含んでよい。アーム106は遠位の列151のセルの頂点から伸びてよい。図5、6A、及び6Bは筒状体5の流入端10だけを示しているが、図1~4において示され議論された筒状体5と同じ特徴を有してよい。
【0042】
筒状体5は図1、2、及び5に示される配置に限定されない。一つ以上のスペース107及び/又は108によって円周方向に互いに離されるように少なくともいくつかのセル101が互いに分離されている限り、第1の列の最近位のセル101の他の配置が可能である。
【0043】
図6Aと6Bに示されるように、円周方向に分離された最近位の又は第1の列のセル101はシール109を含んでよい。シール109は、円周方向に隣接するセル101(例えば、これらもスペース107又は108と接する)に向かって円周方向に伸びるようにして、スペース107又は108に接するセル101の側面に取り付けられてよい。スペース107又は108を形成する側面を有する分離されたセル101の両方がシール109を含んでよい。例えば、図6Aと6Bに示されるように、スペース107又は108を形成する側面を有する分離されたセル101はそれぞれシール109aと109bを有してよい。シール109aと109bは、円周方向に互いに重なりスペース107と108を密閉するように、円周方向に他のセル101に向かってそれぞれのセル101の側面から伸びてよい。これに代わって、分離されたセル101の一つのみがシール109を含んでよい。図6Aと6Bに示されるように、スペース107及び/又は108の各々が少なくとも一つのシール109によって部分的に又は完全に覆われてよく、もしくは、スペース107及び/又は108のいくつかのみが一つ以上のシール109によって覆われてよい。
【0044】
シール109はストラット、布で覆われたワイヤー伸長部分、又は任意の他の適切な材料から形成されてよい。例えば、下記で議論されるいずれの布又は材料も使用できる。シール109は任意の適切な形状又はサイズを有してもよい。例えば、図6Aと6Bに示されるシール109は長方形の形をしているが、シール109は半円形、正方形、三角形、ひし形、星形、五角形、台形、六角形、多角形、平行四辺形、七角形、八角形、九角形、又は任意の他の適切な形状であってよい。シール109はスペース107又は108を横断して円周方向に隣接するセル101へ伸びてよく、もしくはスペース107を部分的に横断して伸びてよい。図6Aと6Bに示されるように、シール109は両方とも筒状体5の半径方向に内側で伸びてよい。もしくは、シール109は筒状体5の半径方向に外側で伸びてよい。これに代わって、一つのシールは半径方向に外側で伸びてよく、もう一方のシールは筒状体5の半径方向に内側で伸びてよい。シール109は、移植部位での望ましくない弁周囲の漏出及び/又は逆流を防ぐために、生来の弁の弁輪に対して人工弁を密閉するのを助けてよい(例えば、それらの間に血液が通らないシールを形成する)。
【0045】
隣接するシール109aと109bは、生来の弁の弁輪に対して筒状体5を密閉するのを容易にするために互いに半径方向に重なるように、円周方向に互いに向かって伸びてよい。隣接するシール109aと109bは、半径方向に筒状体5の内側で互いに半径方向に重なってよく、もしくは半径方向に筒状体5の外側で互いに半径方向に重なってよい。これに代わって、筒状体5の反対の半径方向の側面でシールが半径方向に互いに重なるように、シール109aと109bの一つは半径方向に内側で伸びてよく、もう一方のシール109aと109bは半径方向に外側で伸びてよい。これに代わって、隣接するシール109aと109bは互いに重ならなくてよい。例えば、シール109aと109bがスペース107、108を部分的にのみ覆うように、隣接するシール109aと109bは、重ならないように、円周の反対方向に互いに向かって伸びてよい。これに代わって、シール109aと109bの隣接する縁又は側面は、半径方向に互いに重なることなく触れ合ってよい。
【0046】
図1と2に示されるように、筒状体5はまた、柔軟なストラット9を含んでもよい。そのような柔軟なストラット9はS字形であってよい。S字形のストラット9は溝7に重なってよく、もしくは溝7の流入(例えば、近位)側に配置されてよい。S字形のストラット9はアーム106の一部(図2参照)又は第2の列のセル103の側面(図1参照)を形成してよい。S字形のストラット9はそれぞれ、筒状体5の流入端10と筒状体5の流出端15との間の動きを分離するような、無相関部を形成することができる。このように、S字形のストラット9は、流入端10又は流出端15の動きに応じて、圧迫、収縮するように構成することができる。このように、S字形のストラット9が伸張、及び/又は収縮するため、筒状体5の一端における動きは、筒状体5の他方の端には移動又は伝達しない。S字形のストラット9は、流入方向に、完全に予め形成された溝7の近位に設置することができる。
【0047】
筒状体5の溝7は、筒状体5の半径方向の外側に開いていてよい。予め形成された溝7は、筒状体5のメッシュ状の構造体におけるチャンネルを定める窪みであることができる。図1と2に示されるように、予め形成された溝7は、筒状体5の外周全体にわたって伸びていてもよい。別の実施形態では、予め形成された溝7は、筒状体5の外周全体より少ない部分にわたって伸びていてもよい。予め形成された溝7は連続的な、中断されない溝であってもよく、また、例えば、2つ以上の溝の部分を有する、中断された溝であってもよい。いくつかの実施形態では、予め形成された溝7は、筒状体5の流入端10と流出端15から、筒状体5の縦軸に沿った、軸方向の距離に位置していてもよい。このように、予め形成された溝7は、筒状体5の最近位端と最遠位端から軸方向に離れていてもよい。
【0048】
予め形成された溝7は、筒状体5から外向きに突き出る突起群(不図示)によって境界を定めることができる。このように、いくつかの実施形態では、筒状体5は、流入方向に、予め形成された溝7より上に設置された第1の突起群と、流出方向に、予め形成された溝7より下に設置された第2の突起群とを含むことができる。このように、第1と第2の突起群は、予め形成された溝7の上と下の部分を取り囲むことができる。第1と第2の突起群は、互いに向き合っていてもよい。これに加えて、第1と第2の突起群は、組織を刺し通すように構成された部材、例えば、スパイク、三角形状の突起、掛かりなどであってもよい。
【0049】
図3と4に示されるように、筒状布25を、筒状体5の外表面上に設置することができる。布25は、筒状体5の外表面全体、又は筒状体5の外表面の一部分だけを覆うことができる。布25は、布25が溝7の輪郭に沿うように、溝7内に設置することができる。布25は、たるんだ状態又は張った状態で筒状体5上に設置することができる。下で述べるように、筒状体5の周りに捕捉部材150を設置することができる。布25は、捕捉部材150が筒状体25の周りに設置されるまでたるんだ状態であるように、筒状体25上に設置することができる。このように、捕捉部材150は、布25が張った状態になるように、布25を予め形成された溝内に移動させることができる。
【0050】
布25は、例えば、ポリエステル生地(例えばダクロン(登録商標)又は他のPTFEグラフト素材)を含むポリマー素材から形成されてよい。これに加えて、又はこれに代わって、布25は心膜及び/又は金属メッシュ素材(例えば、ニチノールから形成される金属メッシュ)であってもよい。いくつかの実施形態では、布25は1つ以上の構成部分を含むことができる。例えば、布25は、2つ、4つ、又は6つの構成部分を含むことができる。複数の構成部分は空間的に隔てられ、隣接する構成部分の間に隙間があってもよい。これに代わって、又はこれに加えて、一部の又はすべての隣接する構成部分は、重なっていてもよい。布25は、1つ、又は複数の素材の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、布25は皮膜又はライナーを含んでもよい。
【0051】
布25は、既知の、どのような固定機構によって筒状体5に取り付けてもよい。例えば、布25と筒状体5は、接着剤及び/又は縫合によって固定することができる。布25は、筒状体5とともに、展開、拡張された形態と、収縮、縮小された形態をとるように構成することができる。このように、布25は、筒状体5の状態に応じて拡張し、収縮することができる。
【0052】
筒状体5は人工心臓弁(不図示)に連結することができる。このとき、弁が筒状体5の内部に配置されるようにする。弁は複数の弁尖を含んでよい。弁は、患者の生来の心臓弁(例えば、僧帽弁及び/又は三尖弁)を人工置換する役割を果たすことができる。例えば、弁は、一つ以上のストラット8の半径方向の内側に連結されるように、筒状体5の半径方向に内側に配置されてよい。弁は、溝7の近位の位置で、筒状体5の半径方向の内側に連結されてよく、もしくは、弁尖が筒状体5の流出端15から遠位の方向に伸びるように、筒状体5の流出端15に連結されてよい。
【0053】
すべての人工弁1の実施形態は、筒状体5の相対的な及び/又は絶対的な位置決めを容易にするための位置決め及び/又は方位決め装置を有することができる(不図示)。これらの装置は、筒状体5に取り付けられる複数のパッシブマーカーを有することができる。パッシブマーカーは、例えば磁気共鳴又はX線に基づくイメージング技術を用いた医療的なイメージング中でコントラストを向上させるために、筒状体5と異なる素材からなることができる。パッシブマーカーは、例えば、放射線透過性が低い素材からなることができ、これによって、患者の身体に対する人工弁1の構成部分の相対的な及び/又は絶対的な位置を正確に捕捉することができる。
【0054】
図3と4は、患者の生来の弁(例えば、僧帽弁)に移植された人工弁1を示す。人工弁1は、カテーテルを介して患者に展開されることができる。人工弁1を搬送する方法は、搬送カテーテルから、弁が配置された筒状体5を搬送することを含むことができる。
【0055】
次に、図3と4に示されるように、最近位のセル101、101a、101bが生来の心臓弁の弁輪に対して配置されるように、筒状体5と弁は拡張されてよい。例えば、最近位のセル101、101a、101bは、生来の心臓弁の弁輪の心房表面に対して配置されるように、心房140(例えば、左心房)に配置されてよい。セル103の第2の列も生来の心臓弁の弁輪、例えば生来の弁の弁輪の心房140の表面、に対して配置されるように、筒状体5は拡張されてよい。これに代わって、又はこれに加えて、アーム106も生来の心臓弁の弁輪、例えば生来の弁の弁輪の心房140の表面、に対して配置されるように、筒状体5は拡張されてよい。
【0056】
このように、例えば、人工弁1は、機能を回復させるために、患者の、欠陥のある僧帽弁又は三尖弁へ搬送されることができる。人工弁1は、予め形成された溝7が生来の弁の弁輪の心室130側に位置するように患者に搬送することができる(例えば、生来の弁の弁輪から距離をおいて)。
【0057】
人工弁1を患者の心臓弁の内部に配置するために、以下のアプローチを用いることができる。(1)大動脈から心臓内腔に進入する動脈逆行性アプローチ、(2)静脈アクセス及び心房中隔穿刺を介したアプローチ(経中隔アプローチ)、(3)心尖を貫通する穿刺によるアプローチ(経心尖アプローチ)、(4)心臓の外側から心房壁を穿刺するアプローチ、(5)動脈アクセス(例えば鼠径の穿刺を介した大腿動脈からのアクセス)、(6)直接大静脈を通る、右心房の中へのアプローチ(例えば、三尖弁の置換において)、又は(7)当業者に知られた他のアプローチ。
【0058】
患者の心臓弁を機能的に置換するため、人工弁1は、人工弁1の外側の血流に対して密閉されるように、接続チャンネル壁構造に対して固定されることができる。これを達成するため、予め形成された溝7に隣接する接続チャンネル壁構造の組織は予め形成された溝7に押し込まれるか予め形成された溝7内に配置される。
【0059】
この方法はさらに、捕捉部材150を筒状体5の周りと予め形成された溝7の周りに推進させることを含んでもよい。このように、捕捉部材150は、予め形成された溝7内で、生来の弁尖160及び/又は腱索170の部分を捕捉することができる。これは、筒状体5を患者の中に固定する補助とすることができる。捕捉部材150は、完全な、又は部分的な環を有することができる。これに加えて、捕捉部材150は、筒状体5が完全に拡張された後、又は筒状体5部分的にのみ拡張されたとき、筒状体5の周りで動かすことができる。捕捉部材150は、捕捉部材150と予め形成された溝7の間の締まり嵌めによって筒状体5が固定されるように、予め形成された溝7の内部に緩く設置することができる。このように、捕捉部材150は、人工弁1を、患者の内部に固定する機能を有することができる。別の実施形態では、捕捉部材150は、人工弁1を患者の内部に固定するために、筒状体5に対する内向きの、半径方向の力を生じさせることができる。このように、この実施形態では、捕捉部材150は、弁尖160及び/又は腱索170に対して摩擦力を生じさせることできる。
【0060】
捕捉部材150は、搬送カテーテル内では、搬送形態をとり、捕捉部材150が搬送カテーテルから展開された際に展開形態をとることができる。実施形態において、捕捉部材150は展開形態に形状を変化させる。例えば、捕捉部材150は、ニチノールやニチノール系合金などの形状記憶合金を含むことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、細長い外部部材180(図4参照)も筒状体5の周りと予め形成された溝7の周りに推進させることができる。細長い外部部材180は、筒状体5が完全に拡張された後、又は筒状体5が部分的にのみ拡張されたときに筒状体5を囲んでもよい。細長い外部部材180は、患者の生来の弁尖160及び/又は腱索170を予め形成された溝7へと押し込んでもよい。その後、捕捉部材150は、捕捉部材150を筒状体5の周りに、そして予め形成された溝7の内部へと押し込むために、細長い外部部材180にそって、細長い外部部材180を覆うように設置することができる。細長い外部部材180は、捕捉部材150が筒状体5の周りに設置された後に、患者から除去することができる。細長い外部部材180が患者から除去された後、捕捉部材150は、患者の生来の弁尖160及び/又は腱索170を予め形成された溝7の内部に保つことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、細長い外部部材180はガイドワイヤーであってもよい。細長い外部部材180は、捕捉部材150よりも小さい直径を有することができる。
【0063】
開示された人工弁1の使用方法は、患者の生来の弁の閉塞を最小限に抑えながら筒状体5を患者の接続チャンネル壁構造内に固定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】