(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/002 20180101AFI20230301BHJP
B27N 3/04 20060101ALI20230301BHJP
C03C 25/64 20060101ALI20230301BHJP
C03C 25/34 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C03C25/002
B27N3/04 A
C03C25/64
C03C25/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542237
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 FR2021050008
(87)【国際公開番号】W WO2021140295
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】ママドゥ セック
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル デルメ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリック ギヨ
【テーマコード(参考)】
2B260
4G060
【Fターム(参考)】
2B260AA02
2B260AA20
2B260BA07
4G060BA04
4G060BA05
4G060BB02
4G060BC01
4G060BC10
4G060BD22
4G060CB08
4G060CB12
4G060CB24
(57)【要約】
【課題】有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法の提供。
【解決手段】有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法であって、以下の一連の工程:(a)室温のミネラルウールを提供すること、(b)ミネラルウールに水性の熱硬化性バインダー組成物を適用すること、(c)水性の熱硬化性バインダー組成物を含浸させたミネラルウールを乾燥させて、熱硬化性ミネラルウールを得ること、(d)熱硬化性ミネラルウールを成形すること、及び(e)成形された熱硬化性ミネラルウールを、バインダーの構成成分が縮合され、不溶性のバインダーが形成されることを可能にするのに十分な温度と長さで加熱すること、を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法であって、前記方法が、以下の一連の工程:
(a)室温のミネラルウールを提供すること、
(b)前記ミネラルウールに水性の熱硬化性バインダー組成物を適用すること、
(c)前記水性の熱硬化性バインダー組成物を含浸させた前記ミネラルウールを乾燥させて、熱硬化性ミネラルウールを得ること、
(d)前記熱硬化性ミネラルウールを成形すること、及び
(e)成形された前記熱硬化性ミネラルウールを、前記バインダーの構成成分が縮合され、不溶性のバインダーが形成されることを可能にするのに十分な温度と長さで加熱すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(a)において提供される前記ミネラルウールが、未使用のミネラルウール又は再生ミネラルウールであるか、未使用のミネラルウールと再生ミネラルウールとのブレンドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性のバインダー組成物を適用する前記工程中、前記ミネラルウールが室温であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(c)と前記工程(d)との間に、前記熱硬化性ミネラルウールと、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウール及び/又は天然有機繊維とをブレンドする工程を更に含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記天然有機繊維が、植物繊維であり、好ましくはリグノセルロース繊維及び綿からなる群から選択され、または前記天然有機繊維が、動物繊維であり、好ましくは動物ウールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
100質量部の前記熱硬化性ミネラルウールが、10~400質量部の、好ましくは20~300質量部の、特に、30~200質量部の、前記未使用のミネラルウール及び/又は前記再生ミネラルウール及び/又は前記天然有機繊維とブレンドされることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性のバインダー組成物を含浸させた前記ミネラルウールの乾燥(前記工程(c))が、60~110℃、好ましくは70~100℃の温度に加熱することによって実施されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱硬化性ミネラルウールが、乾燥質量で、3~20%、好ましくは4~18%、特に、5~15%の熱硬化性バインダーを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(e)において得られる前記遮断製品の密度が、4~150kg/m
3、好ましくは5~60kg/m
3、特に、6~40kg/m
3であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(e)において得られる前記遮断製品の厚さが、20mm~500mm、好ましくは50mm~200mm、特に、60mm~150mmであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性のバインダー組成物が、乾燥質量で50%より多いバイオ由来試薬を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオ由来試薬が、糖類及び糖類水素化生成物から選択されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱硬化性ミネラルウールを成形する前記工程(d)が、前記熱硬化性ミネラルウールを成型すること、及び/又は圧縮することよって実施されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(e)の前記加熱温度が、130℃~240℃、好ましくは180℃~230℃であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
熱硬化性の有機バインダーの乾燥した層に囲まれた結合鉱物繊維と、任意選択的に、結合していない繊維とを含有する、バラ詰め熱硬化性ミネラルウール。
【請求項16】
前記結合していない繊維が、未使用のミネラルウールの繊維及び/又は再生ミネラルウールの繊維及び/又は天然有機繊維から選択される、請求項15に記載のバラ詰め熱硬化性ミネラルウール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法であって、乾燥した非粘着性の熱硬化性ミネラルウールを調製することと、このミネラルウールを、任意選択的に、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウールと、又は天然有機繊維とブレンドした後に、熱硬化することとを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
一般的に、ミネラルウールをベースとした遮断製品の製造は、溶融ガラス又は溶融岩の遠心の方法(繊維化)によって、ガラス繊維又は岩石繊維を製造する工程を含む。新しく形成された繊維は、熱風の流れによってコンベヤベルトへ運ばれ、コンベヤベルトは、繊維を収集し(成形)、硬化炉を通してそれらを輸送する。遠心デバイス(繊維化)及び繊維収集ベルトの間の経路において、水性の熱硬化性バインダー組成物が繊維上にスプレーされ、それは次に硬化炉において約200℃の温度で熱硬化反応を受ける。
【0003】
水性のバインダー組成物は、低粘度の、モノマー試薬、オリゴマー及び/又はポリマー樹脂の希釈水溶液である。それらは、新しく形成された、まだ熱い鉱物繊維上に、遠心デバイスのすぐ近くで、遠心デバイスの下流に位置するスプレー環によってスプレーされる。
【0004】
繊維が、収集ベルト上にマット(又はロフト)として収集され、集められる場合、それらは粘着性であり、鉱物繊維を囲むバインダー組成物膜は、依然として水を含有している。
【0005】
サイジング処理されたミネラルウールマットは、温度制御された硬化炉に入るときにだけ、水の蒸発が完了し、バインダー試薬の縮合反応が始まる。
【0006】
上記のように動作する(まだ熱い繊維上へのバインダー組成物のスプレー(噴霧)、水の部分的な蒸発、粘着性繊維のマットの形成、炉中での粘着性繊維のマットの硬化)、有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品を製造するための装置は、装置を洗浄するためのシステム、特に、成形チャンバと収集ベルトとを洗浄するためのシステムを必ず含む。実際に、まだ湿っているサイジング処理された繊維の高いタック(ねばつき)は、繊維化デバイス及びコンベヤベルトの間で熱風の流れにおいて運ばれ、成形チャンバの壁、コンベヤベルト、及びその下流に位置する吸引デバイスの汚染をもたらす。
【0007】
洗浄水は、閉回路においてリサイクルされ、ろ過され、中和され、バインダー溶液の製造、及び製造設備の洗浄のために再利用される。製造装置を洗浄し、閉回路において洗浄水を再利用するためのシステムは、結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品のための製造装置の投資及び運転費用の重要な部分を占める。
【0008】
本発明は、有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法であって、部分的に乾燥し、粘着性であるバインダー組成物によってサイジング処理された鉱物繊維が、繊維化デバイスとマットを形成するための領域との間で気流によって運ばれる工程を含まない、方法を提案することを目的とする。
【0009】
本発明の遮断製品の製造方法において、バインダー組成物は、まだ熱い、新しく形成された鉱物繊維には適用されないが、室温の(すなわち周辺環境と熱平衡にある)鉱物繊維に適用される。次いで、サイジング処理された鉱物繊維は、水を完全か、ほとんど完全に蒸発させ、繊維の粘着性の性質を消失させるのに十分高い温度で乾燥される。しかし、乾燥温度は、バインダー試薬の架橋開始温度よりも低い。
【0010】
このようにして、バインダーの架橋温度より低い温度で実施された乾燥工程の終わりに、乾燥バインダーの層に囲まれた鉱物繊維が得られる。乾燥されたバインダーはもはや粘着性ではない。しかし、それは、熱硬化性である、すなわち、それは、バインダー試薬を含有し、かつ、重合及び/又は架橋すること、並びに不溶性のバインダーを形成することができる。用語「熱硬化性ミネラルウール」及び「結合繊維」は、以下、有機バインダーでサイジング処理され、乾燥され、粘着性でなく、十分に高い温度に加熱されたときに架橋により硬化する能力を保持している、これらの鉱物繊維を指すために区別なく用いられる。
【0011】
本発明は、粘着性でない乾燥バインダーの層が、1組の繊維が乾燥バインダーの試薬の縮合を引き起こすのに十分高い温度に加熱されたときに、鉱物繊維を相互に結び付けることを依然として可能にしたという発見に基づく。
【0012】
本発明のミネラルウールの製造方法において、熱硬化性ミネラルウールは、次いで、任意選択的に非熱硬化性ミネラルウールとブレンドされた後に、成形され、硬化工程を経る。この硬化工程中に、乾燥バインダーは、最初に柔らかくなり、次いで溶融し、これにより、互いの繊維の接着が促進され、次いで、不溶性の溶融していない有機バインダーを形成するように、バインダーの試薬が重合し、架橋する。
【0013】
本発明の方法では、水性のバインダー組成物で新たにサイジング処理されたミネラルウールが熱風の流れによって運ばれることはない。したがって、それは、ミネラルウールのマットを形成するための装置に大きく付着することはほとんどなく、本方法は、閉回路において動作する洗浄水のシステムなしで操作することができる。本発明の方法において、水性のバインダー組成物でサイジング処理されたミネラルウールは、運ばれる前に最初に乾燥処理を受け、任意選択的に他の繊維とブレンドされ、成形され、炉において硬化される。
【0014】
したがって本発明は、以下の一連の工程を含む、有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法に関する:
(a)室温のミネラルウールを提供すること、
(b)ミネラルウールに水性の熱硬化性バインダー組成物を適用すること、
(c)水性の熱硬化性バインダー組成物を含浸させたミネラルウールを乾燥させて、熱硬化性ミネラルウールを得ること、
(d)熱硬化性ミネラルウールを成形すること、及び
(e)成形された熱硬化性ミネラルウールを、バインダーの構成成分が縮合され、不溶性のバインダーが形成されることを可能にするのに十分な温度と長さで加熱すること。
【0015】
したがって、方法の第一の工程は、室温のミネラルウールを提供することからなる。用語「室温の」は、特定の温度又は温度範囲を指定しないが、鉱物繊維がそれらのすぐまわりの環境と熱平衡にあることを意味する。したがって、鉱物繊維は、溶融ガラス又は溶融岩の遠心によって繊維化する工程を出て、冷却の過程にある鉱物繊維ではない。「室温」は、典型的には、15℃~30℃、特に18℃~25℃である。
【0016】
工程(a)において提供されるミネラルウールは、未使用のミネラルウールであってよい。本件において、用語「未使用のミネラルウール」は、内部又は外部遠心によって得られるミネラルウール、特にガラスウール又はロックウールを指し、これらの繊維は、有機バインダーによって互いに結び付けられていない。そのような未使用のミネラルウールは、典型的には、屋根裏の遮断のために吹きつけられるウールとして用いられる。未使用のミネラルウールの繊維は、サイジング又は潤滑剤の薄層でコーティングすることができる。
【0017】
工程(a)において提供されるミネラルウールは、再生ミネラルウールであってもよい。本開示において、用語「再生ミネラルウール」は、既に架橋されている、不溶性の、溶融していない有機バインダーを表面に有する鉱物繊維からなるミネラルウールを指す。
【0018】
当然、工程(a)において提供されるミネラルウールは、任意のそれぞれの比率での、未使用のミネラルウール及び再生ミネラルウールのブレンドであってよい。
【0019】
本発明の方法の以下の工程は、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウールに水性のバインダー組成物を適用することからなる。これは、有利には、バインダーの成分の水溶液であり、それは、互いに反応することによって、不溶性で、溶融していない架橋されたポリマーネットワークを形成することができる。
【0020】
バインダー組成物の適用は、それ自体知られている任意の適切な手段、例えば、スプレーすること、ローラー塗り、又は水性のバインダー組成物に鉱物繊維を浸漬すること、によって、行うことができる。
【0021】
したがって、水性のバインダー組成物は、有利には、スプレーすることによって鉱物繊維に適用することができるほど、または水性のバインダー組成物への浸漬によるミネラルウールの含浸を可能にするほど、十分に低い粘度を有する。
【0022】
上に説明されるように、水性のバインダー組成物を適用する工程(工程(b))中、ミネラルウールは、好ましくは室温である。水性のバインダー組成物も同様である。
【0023】
水性のバインダー組成物は、有利には、1~10質量%、好ましくは1.5~8質量%、特に、2~7質量%の固形分を有する。
【0024】
水性のバインダー組成物を適用した後に、サイジング処理されたミネラルウールは、サイジング処理された繊維を実質的に非粘着性にするほど水を十分に蒸発させることを目的とする乾燥工程(工程(c))を経る。
【0025】
この乾燥工程は、例えば、温度制御された換気炉において加熱することによって、又は赤外線若しくはマイクロ波放射線を照射することによって、実施することができる。乾燥が、ミネラルウール繊維を過度に高温に加熱しないことを保証することが重要であり、過度な加熱は、乾燥したバインダーの軟化、又はバインダーの成分の架橋の開始をもたらす。通常、水の沸点に近い加熱温度で十分である。
【0026】
したがって、水性のバインダー組成物を含浸させたミネラルウールの乾燥(工程(c))は、好ましくは60~110℃、特に、70~100℃の温度に加熱することによって実施される。乾燥工程の終わりに得られるミネラルウールの繊維は、乾燥した有機バインダーの鞘に囲まれている。水性のバインダー組成物による未使用のウール/再生ウールのぬれ性があまり高くない場合、有機バインダーの鞘は不揃いである場合があり、乾燥したバインダーの小滴が、顕微鏡で観察できる場合がある。
【0027】
乾燥(工程(c))の後に得られるミネラルウールは、本件において「熱硬化性ミネラルウール」と呼ばれる。したがって、この用語は、水溶性の乾燥した固体バインダーを表面に有する鉱物繊維によって形成されたミネラルウールを指し、このバインダーは試薬を含有しており、この試薬は、所与の値(架橋開始温度)より高い温度に加熱された際に、重合すること及び/又は架橋することができ、かつ、不溶性のバインダーを形成することができる。この熱硬化性ミネラルウールを構成する繊維は、「結合繊維」とも呼ばれる。
【0028】
熱硬化性ミネラルウールは、乾燥質量で、通常3~20%、好ましくは4~18%、特に、5~15%の熱硬化性バインダーを含む。工程(a)において提供されるミネラルウールが、一定の割合の架橋された有機バインダーを既に含有している再生ミネラルウールである場合、上述のパーセンテージは、バインダー組成物を適用する前に繊維上に存在している架橋された有機バインダーの量を包含しないことに留意されたい。したがって、熱硬化性ミネラルウールの強熱減量(LOI)は、熱硬化性の乾燥有機バインダーの含有量より大きいことがある。
【0029】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、乾燥させる工程(c)と成形する工程(d)との間に、熱硬化性ミネラルウール(結合繊維)と、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウール及び/又は天然有機繊維(結合していない繊維)とをブレンドする工程を更に含む。
【0030】
天然有機繊維は、植物又は動物由来の、非熱可塑性繊維である。植物繊維は、好ましくは、リグノセルロース繊維及び綿繊維からなる群から選択される。リグノセルロース繊維は、好ましくは、木質繊維、麻繊維、亜麻繊維、サイザル繊維、綿繊維、ジュート繊維、ココヤシ繊維、ラフィア繊維、アバカ繊維、穀物わら又は稲わらから選択される。動物繊維は、好ましくは、羊毛などの動物ウールからなる群から選択される。
【0031】
このブレンドは、原則として、任意の適切な機械的な手段及び/又は空気圧の手段によって実施することができる。本発明者らは、最終遮断製品の機械的特性は、ブレンド方法が、ブレンドされた鉱物繊維の長さを長く保存するほど良好であることを見出した。実際に、ブレンドする工程によって繊維の大きさが大幅に減少する場合、鉱物繊維の絡み合いが少なくなり、最終製品の引張強度が低下する。本発明の方法の好ましい実施態様において、結合繊維及び結合していない繊維のブレンドは、渦流室を通過する圧縮空気の流れによって実施される。そのようなデバイスは、過度に繊維の長さを短くすることなく、実際に、高度に規則的なブレンドを得ることを可能にする。
【0032】
2種類の繊維のブレンドに空気圧の手段を用いる場合、圧縮空気の流れが、起こり得る有機バインダーの軟化を防ぐために十分に低い温度であることを保証することが重要である。
【0033】
実際に、本発明の方法の好ましい実施態様において、熱硬化性ミネラルウールの繊維を囲む有機鞘を形成する乾燥した有機バインダーは、熱可塑性の挙動を示す、すなわち、それが一定の温度(以下、示差走査熱量測定(DSC)によって決定された、「軟化温度」又は「ガラス転移温度」と呼ぶ)に加熱される場合、それは柔らかくなるか液化する。この軟化温度は、乾燥温度より高いが、バインダーの架橋開始温度より低い。この軟化は、有利には、繊維に一定のタック(ねばつき)を与え、それによって、互いに付着することができるようになり、さらに、任意選択的に存在する、結合していない鉱物繊維(未使用のミネラルウール/再生ミネラルウール)又は結合していない天然有機繊維にも付着することができるようになる。本発明者らは、乾燥した有機バインダーが高温時に十分に流動化すると、それは、熱硬化性ミネラルウールの繊維からでさえ、未使用のミネラルウール/再生ミネラルウールの繊維、又は天然有機繊維に移動することを観察した。50質量%の熱硬化性ミネラルウール及び50質量%の未使用のミネラルウールをブレンドすることにより得られた遮断製品を光学顕微鏡で検査したときに、本発明者らは、それらの半分だけではなく、すべての繊維上で有機バインダーの存在を認めた。
【0034】
熱硬化性鉱物繊維(結合繊維)と、未使用の鉱物繊維/再生鉱物繊維又は天然有機繊維とのそれぞれの比率は、かなり広い範囲で変更することができる。これらの範囲は、とりわけ、繊維のブレンドの均一性、及び結合繊維の熱硬化性バインダーの含有量に依存する。ブレンドの均一性が大きく、結合繊維の熱硬化性バインダーの含有量が高いほど、結合していない未使用の繊維/再生繊維又は天然有機繊維の割合が高くなってよい。
【0035】
通常、100質量部の熱硬化性ミネラルウールが、10~400質量部の、好ましくは20~300質量部の、特に、30~200質量部の、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウール(結合していないミネラルウール)と、又は天然有機繊維と、ブレンドされる。
【0036】
したがって、特に有利な実施態様において、有機バインダーによって結合されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法は、以下の7つの一連の工程を含む:
- 室温のミネラルウールを提供すること、
- ミネラルウールに水性の熱硬化性バインダー組成物を適用すること、
- 水性の熱硬化性バインダー組成物を含浸させたミネラルウールを乾燥させて、熱硬化性ミネラルウールを得ること、
- 熱硬化性ミネラルウールと、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウールとを、又は天然有機繊維とをブレンドすること、
- 熱硬化性ミネラルウールと、未使用のミネラルウール及び/又は再生ミネラルウールとの、又は天然有機繊維とのブレンドを成形すること、並びに
- 成形されたブレンドを、バインダーの構成成分が架橋し、不溶性のバインダーが形成されることを可能にするのに十分な温度と長さで加熱すること。
【0037】
熱硬化性ミネラルウール(又は熱硬化性ミネラルウールと、未使用のミネラルウール及び/若しくは再生ミネラルウールとの、若しくは天然有機繊維とのブレンド)を成形する工程は、好ましくは、成型及び/又は圧縮よって実施される。製品の成型のために用いられる型は、熱硬化工程の温度に耐えることができる材料で製造される必要がある。さらに、それは、硬化炉からの熱風が、容易に成形品に浸透することを可能にする構造を有する必要がある。型は、例えば箱形の金属製スクリーンからなってよい。金属製スクリーン箱は、好ましくはその容量より大きい大量のバラ詰め熱硬化性ミネラルウールで充填され、次いで金属製スクリーンカバーによって閉じられる。したがって、熱硬化性ミネラルウールは、過剰な充填量に応じて、多かれ少なかれ圧縮される。熱硬化性ミネラルウールによる箱のこの過剰な充填量は、例えば、10%~150%、好ましくは15~100%、特に、20~80%である。
【0038】
本発明の方法が連続方法である場合、熱硬化性ミネラルウールの成形は、例えば、コンベヤ上の硬化炉の入口にあるローラーによる圧縮によって行うことができる。
【0039】
成形された熱硬化性ミネラルウールを、バインダーの構成成分が縮合(重合/架橋)され、不溶性のバインダーが形成されることを可能にするのに十分な温度と長さで加熱することによって、成形された熱硬化性ミネラルウールを硬化する工程は、当業者によく知られている条件下で実施される。方法が連続方法である場合、硬化炉は、有利には、先行技術の遮断製品を製造するためのラインの炉と同一であり、そこでは非常に高温の圧縮空気が、ミネラルウールのマットを通過する。
【0040】
工程(e)の加熱温度は、有利には、130℃~240℃、好ましくは180℃~230℃、特に、190℃~220℃である。加熱時間は、有利には、30秒~15分、好ましくは1分~10分、特に、2~8分である。
【0041】
硬化工程中に熱硬化性ミネラルウールの圧縮率を変更することによって、本発明の方法によって得られるミネラルウールをベースとした遮断製品の密度及び厚さを調節するのは容易である。遮断製品の密度は、通常4~150kg/m3、好ましくは5~60kg/m3、特に、6~40kg/m3である。その厚さは、通常20mm~500mm、有利には40mm~300mm、好ましくは50mm~200mm、特に、60mm~150mmである。
【0042】
上に開示されたミネラルウールをベースとした遮断製品の製造方法は、原則として、ミネラルウールの分野において現在用いられている任意の熱硬化性有機バインダーを用いて実施することができる。
【0043】
そのようなバインダーの例としては、以下が挙げられる。
- レゾール樹脂(フェノール-ホルムアルデヒド)、好ましくは尿素で変性したレゾール樹脂をベースとしたもの、
- メイラード試薬(還元糖及びアミン)をベースとしたもの、
- アクリルポリマーと、ポリヒドロキシ化試薬及びポリアミノ化試薬などの架橋剤とをベースとしたもの、
- 非還元糖及び/又は水素化糖と、クエン酸などのポリカルボキシ化試薬とをベースとしたもの、
- カルボン酸無水物とアルカノールアミンとの反応によって得られるアミノアミドをベースとしたもの。
【0044】
バインダーは、好ましくはホルムアルデヒドを含まず、有利には、短期間で再生可能なバイオ由来試薬を含む。1つの有利な実施態様において、水性のバインダー組成物は、乾燥質量で50%より多いバイオ由来試薬を含む。
【0045】
これらのバイオ由来試薬は、例えば、糖類及び糖類水素化生成物から選択される。水性のバインダー組成物は、架橋剤を追加で含有し、架橋剤は、典型的にはポリカルボン酸、好ましくはクエン酸である。糖類及び糖類水素化生成物とポリカルボン酸との反応は、有利には、触媒、特に、次亜リン酸ナトリウム(HPS)によって触媒される。
【0046】
還元糖類、非還元糖類及び/又は水素化糖と、ポリカルボン酸とをベースとしたミネラルウールのための熱硬化性バインダーの系は、国際出願WO2009/080938、WO2010/029266、WO2013/014399、WO2013/021112及びWO2015/132518において本出願人の名前で詳細に開示されている。
【0047】
本出願人の知る限り、本発明の方法の工程(c)の終わりに得られる中間製品、すなわち、周りの環境と熱平衡にある、乾燥した熱硬化性の有機層に囲まれた鉱物繊維から形成された熱硬化性ミネラルウールは、先行技術において前もって開示されていない。
【0048】
結果として、本件は、さらに、熱硬化性の有機バインダーの乾燥した層に囲まれた結合鉱物繊維と、任意選択的に、結合していない繊維とを含有する、バラ詰め熱硬化性ミネラルウールに関する。このミネラルウールはバラ詰めである、すなわち、それは、個々の繊維からなり、これらの繊維は交錯することができるが、繊維のマットを形成するように互いに付着はしていない。
【0049】
繊維の表面上の有機バインダー層は、水を含有しておらず、したがって有機バインダーの水性の粘性組成物ではないため、この熱硬化性ミネラルウールは粘着性ではない。
【0050】
さらに、この熱硬化性ミネラルウールは、その環境と熱平衡にある、すなわち、それは、(例えば繊維化の後の)冷却又は(例えば炉中での)加熱の過程にはない。
【0051】
本発明の熱硬化性ミネラルウールは、温度及び相対湿度の環境条件下で保管、輸送、及び変換することができる安定な中間製品である。
【0052】
それは、排他的に結合繊維(熱硬化性の有機バインダーの層に囲まれた鉱物繊維)からなることができるが、結合繊維及び結合していない繊維の両方を含有することもできる。後者の場合において、上に規定され、開示されるように、有利には、結合していない繊維は、未使用のミネラルウールの繊維及び/又は再生ミネラルウールの繊維及び/又は天然有機繊維から選択される。
【0053】
本発明のバラ詰め熱硬化性ミネラルウールが、結合繊維と結合していない繊維とのブレンドである場合、それは、熱硬化性ミネラルウール100質量部に対して、通常10~400質量部、好ましくは20~300質量部、特に、30~200質量部の、未使用のミネラルウール及び/若しくは再生ミネラルウール(結合していないミネラルウール)又は天然有機繊維を含む。
【国際調査報告】