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特表2023-509566拡張領域で動作する自律走行車両のための無線制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】拡張領域で動作する自律走行車両のための無線制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230302BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20230302BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G08G1/16 A
H04W4/40
G08G1/09 V
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527163
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019081483
(87)【国際公開番号】W WO2021093967
(87)【国際公開日】2021-05-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲルスカンス,ヨナス
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB05
5H181EE14
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
5K067AA26
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
拡張領域で動作する自律走行車両のための無線制御システムである。無線制御システムは、通信ネットワークによってリンクされた複数のローカルステーション(1)を含んで構成される。各ローカルステーションは、それぞれの無線カバレッジエリア(9)において、永続的なステータス信号を送信する。自律走行車両(20、21、22)は、ステータス信号を受信している間、移動が許可される。ローカルステーションの緊急停止スイッチが作動した場合、ローカルステーションはステータス信号の送信を中断する。また、通信ネットワークでリンクされている1つ以上のローカルステーションに対して、ステータス信号の送信を中断するように命令する。このように、ローカルステーションの緊急停止スイッチの作動は、制御システム全体に影響を及ぼし、最終的にはすべての自律走行車両を停止させることになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカルステーション(1)であって、
前記ローカルステーションの無線カバレッジエリア(9)において、自律走行車両(20、21、22)が当該信号を受信している間に移動することを許可する永続的なステータス信号を送信するように動作可能な無線送信機(2)と、
前記ステータス信号を中断させるための緊急停止スイッチ(3)と
を備え、
通信ネットワーク(11)によってリンクされている、1つまたは複数の同様に装備されたさらなるローカルステーションと通信するための通信エレメント(4)であって、
前記ローカルステーションの前記非常停止スイッチの作動に応答して、前記さらなるローカルステーションのうちの少なくとも1つに前記ステータス信号を中断するように命令することと、
前記さらなるローカルステーションのうちの1つから受信した、前記ステータス信号を中断させる命令を実行することと
を行うように構成された通信エレメントを備えることを特徴とする、ローカルステーション。
【請求項2】
前記通信ネットワークは、有線ネットワークであることを特徴とする、請求項1に記載のローカルステーション。
【請求項3】
前記非常停止スイッチは、人間のオペレータによって作動可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のローカルステーション。
【請求項4】
前記非常停止スイッチは、前記ローカルステーションに配置された非常停止キー(5)を備えることを特徴とする、請求項3記載のローカルステーション。
【請求項5】
前記緊急停止スイッチは、前記ローカルステーションの前記無線カバレッジエリア内に配置されたセンサ(6)からの信号により作動可能である、請求項1-4のいずれかに記載のローカルステーション。
【請求項6】
前記通信エレメントは、前記受信した命令を前記さらなるローカルステーションのうちの別の1つに伝播させるように構成されている、請求項1-5のいずれかに記載のローカルステーション。
【請求項7】
前記通信エレメントは、
前記通信ネットワークによってリンクされているさらなるローカルステーションの存在を感知することと、
前記感知された存在に応じて、前記命令及び任意の伝播を実行することと
を行うように構成されている、請求項1-6のいずれかに記載のローカルステーション。
【請求項8】
前記感知することは、前記命令および伝播が向けられるべき、少なくとも1つの隣接するローカルステーションを識別することを含む、請求項7に記載のローカルステーション。
【請求項9】
前記通信エレメントは、前記通信ネットワークを介してハートビート信号を発信し、前記ハートビート信号を中断することによって前記命令及び任意の伝播を実行するように構成されている、請求項1-8のいずれかに記載のローカルステーション。
【請求項10】
前記緊急停止スイッチが作動したことの視覚的表示(8)を表示するように構成されている、請求項1-9のいずれかに記載のローカルステーション。
【請求項11】
自律走行車両(20、21、22)を制御するための無線制御システム(10)であって、
請求項1-10のいずれかに記載の複数のローカルステーション(1)と、
前記通信ネットワーク(11)と
を備えた無線制御システム。
【請求項12】
自律走行車両(20、21、22)を制御するための無線制御システム(10)のローカルステーション(1)によって実施される方法(50)であって、
前記ローカルステーションの無線カバレッジエリア(9)において、自律走行車両(20、21、22)が当該信号を受信している間に移動することを許可する永続的なステータス信号を送信すること(52)と、
前記ローカルステーションの緊急停止スイッチ(3)の作動(53)に応答して、前記ステータス信号を中断すること(54)と
を含み、
さらに、前記作動に応答して、前記無線制御システム内の1つまたは複数の同様に装備されたさらなるローカルステーション(1)に、前記ステータス信号を中断するように命令する(55)
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記さらなるローカルステーションのうちの1つから受信した命令を実行し、前記ローカルステーションのステータス信号を中断することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記受信した命令を前記さらなるローカルステーションのうちの別の1つに伝播させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ローカルステーションが通信ネットワークによってリンクされているさらなるローカルステーションの存在を感知し、
前記感知された存在に応じて、前記命令及び任意の伝播を実行する
ことをさらに含む、請求項12-14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記感知することは、前記命令および任意の伝播が向けられるべき、少なくとも1つの隣接するローカルステーションを識別すること(51)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
自律走行車両(20、21、22)を制御するための無線制御システム(10)のローカルステーション(1)を制御するプロセッサ(7)によってプログラムが実行されると、前記ローカルステーションに請求項12に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項18】
自律走行車両(20、21、22)を制御するための無線制御システムのローカルステーション(1)を制御するプロセッサ(7)によって実行されると、前記ローカルステーションに請求項12に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行車両(autonomous vehicles)の無線制御システムの分野に関する。特に、単一の送信機のカバレッジエリアを超えた効果を有する緊急停止機構を提供する。
【背景技術】
【0002】
自律走行車両(AV)は、ほとんどまたは全く人間の相互作用なしに動作するように設計されているが、受け入れられている安全基準は、監視だけでなく、信頼性の高い緊急停止機構の利用可能性をも要求する。AVの運転中、そのような緊急停止は、例えばセンサ信号に基づいて自動的に、または人間のオペレータによって命令され得る。特に、大型AVや自律型建設機械、及び同様の機械において、安全基準が特に厳しくなっている。
【0003】
無線AV制御システムを設計する際には、無線通信の故障しやすい性質を考慮しなければならない。実際、送信機が常に走行中のAVとの有効な無線リンクを有しており、必要なときに緊急停止メッセージを送信できると仮定すると、緊急停止機構は本質的に安全ではない可能性がある。そこで、無線AV制御システムが認証信号を送らずに緊急停止を命令することで、無線リンク障害のリスクを低減することができる。AV側の観点においては、例えば特定の間隔で予定通りに認証信号を受信した場合のみ、移動が可能となる。AVは、送信機との無線リンクを失った場合には停止しなければならない。
【0004】
この「許可信号」パラダイムの下での無線AV制御システムにおける緊急停止機構は、通常、十分な安全特性をもって設計することができる。AVが単一の無線送信機でカバーできない作業現場で動作する使用事例のために、同等の緊急停止機構を備えたAV制御システムを提供することが望ましい。作業現場の物理的範囲が広大であったり、反射面や吸収面があったり、他の送信機との干渉を管理する必要がある場合は、複数の送信機が必要になる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、単一の無線カバレッジエリアを超えて動作するAVのための緊急停止機構を提案することである。本発明は、独立請求項によって定義される。
【0006】
本発明の第1の態様は、AVを制御するための無線制御システムであって、複数のローカルステーションと、ローカルステーションをリンクする通信ネットワークとを備える、無線制御システムを提供する。ローカルステーションは、別個の、しかし必ずしも不連続ではない無線カバレッジエリアに対応する。
【0007】
第2の態様は、無線制御システムのためのローカルステーションを提供する。ローカルステーションは、無線送信機と緊急停止スイッチとを含んで構成され得る。無線送信機は、当該信号を受信している間に移動することを許可する永続的なステータス信号を送信するように動作可能である。ステータス信号の送信は、緊急停止スイッチを用いて中断することができる。第2の態様によれば、ローカルステーションは、ローカルステーションが通信ネットワークによってリンクされている、同様に装備された1つまたは複数のさらなるローカルステーションと通信するための通信エレメントをさらに備える。通信エレメントは、さらなるローカルステーションのうちの少なくとも1つに対して、ステータス信号の送信を中断するように命令するように構成されている。逆に、通信エレメントは、さらなるローカルステーションの1つから、ステータス信号の送信を中断する命令を受信した場合、その命令を実行するように構成されている。
【0008】
本明細書で使用されるように、2つのローカルステーションは、それらが第2の態様による構造的および機能的特性を有する場合、「同様に装備された」ものである。これは、類似性の最小の程度を定義するものである。ローカルステーションは、同一に装備される必要はなく、ローカルステーションのいずれかが追加の構造または機能性を含んでもよい。
【0009】
第2の態様によるローカルステーションを含む無線制御システムは、各AVへの無線リンクの障害に対して本質的に安全である。1つのローカルステーションの緊急停止スイッチによってトリガされた緊急停止は、通信ネットワークを介して、すなわち、AVへの無線リンクに依存することなく、さらなるローカルステーションに伝播される。この伝播により、制御システムのすべてのローカルステーションからのステータス信号の伝送が中断され、すべてのAVが停止するように命令される。
【0010】
第3の態様は、無線AV制御システムにおいてローカルステーションによって実施される方法に関するものである。この方法によれば、緊急停止スイッチの作動は、ローカルステーションにそのステータス信号を中断させるだけでなく、無線制御システム内の1つまたは複数のローカルステーションにその中断を命令する。
【0011】
第3の態様に従った論理で構成されたローカルステーションは、本質的に安全なグローバル緊急停止機能を有する無線AV制御システムの要素として機能することができる。
【0012】
第4の態様は、前記方法を実行するためのコンピュータプログラムを提供する。
【0013】
さらなる有利な実施形態は、従属請求項によって定義され、以下に詳細に説明される。
【0014】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で別段の定めがない限り、技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the要素、装置、構成要素、手段、ステップ等」への全ての言及は、別段に明示的に記載されていない限り、その要素、装置、構成要素、手段、ステップ等の少なくとも1つのインスタンスを指すものとして、オープンに解釈されるものとする。本明細書に開示された任意の方法のステップは、明示的に記載されていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。
【0015】
ここで、態様および実施形態を、添付の図面を参照して、例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】複数のローカルステーションを有するAV制御システムが配備された作業現場の例を示す図である。
図2】リニアバス型トポロジーを有する通信ネットワークでリンクされた2つのローカルステーションを示す図である。
図3】デイジーチェーントポロジーを有する通信ネットワークでリンクされた3つのローカルステーションと、これらの間で交換されるメッセージを示す図である。
図4】例示的なAVを示す図である。
図5】ローカルステーションで実施される方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の態様を、本発明の特定の実施形態が示されている添付図面を参照しながら、より完全に説明する。
【0018】
しかしながら、これらの態様は、多くの異なる形態で具体化されることができ、記載された実施形態は、限定的に解釈されるものではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の全ての態様の範囲を完全に伝えるように、例示として提供される。同番号は、本明細書全体を通して同種の要素を指す。
【0019】
図1は、複数のAV20、21、22が無線制御システム10の監視下で動作する作業現場の一部を概略的に示している。AVは、図4に示すように、自動車、特にトラック41、バス42、軽機または重機43であってもよい。作業現場の道路は複雑な形状をしており、電波を通さない建物などの物体が立ち並んでいる。作業現場の全てのエリアで有効な無線(電波)状況を実現するために、複数のローカルステーション1a、1b、1c、1dが配備され、それぞれがそれぞれの無線カバレッジエリア9a、9b、9c、9dを定義している。図1の破線の円は、遮蔽物が存在しないものとして、各無線カバレッジエリア9a、9b、9c、9dの最大範囲を示していることに留意されたい。ローカルステーション1a、1b、1c、1dは、以降の図において項目11として示される通信ネットワークによってリンクされている。
【0020】
通信ネットワーク11は、有線(光ファイバーを含む)ネットワークであっても、無線ネットワークであってもよい。ローカルステーションの間隔に応じて、通信ネットワーク11の無線実装は、ローカルエリアまたはセルラー周波数で動作してもよいし、GSM、UMTS、LTEまたはNR規格、またはそれ以上に従った既存のセルラーネットワークへのオーバーレイであってもよい。通信ネットワーク11は、ローカルステーション1と各AV20、21、22との間の無線リンクよりも信頼性が高いことが好ましく、この要件により、通常は有線実装が好ましい選択とされる。しかしながら、ローカルステーションをノードとする無線通信ネットワーク11であっても、物理的に静止したノード間に安定した無線条件が存在すること、ローカル無線ステーションが電池駆動でない限り高出力で送信することができること、及び高度な復号化、マルチアンテナ技術などを適用するのに十分な処理資源を有することを考慮すれば、非常に信頼性の高いものにすることが可能である。
【0021】
通常の動作の間、各ローカルステーション1は、AV20、21、22に移動を許可する永続的な無線ステータス信号を送信する。本明細書で使用されるように、移動は、運転だけでなく、ティッパー、アーム、または他の潜在的に危険なツールの操作も含む。無線ステータス信号は、予め定義された時間-周波数パターンに従って送信されてもよく、このパターンは、独自のものであっても標準化されたものであってもよい。例えば、ステータス信号は、予め定義された周波数帯域で周期的に送信される基準信号であってもよい。無線カバレッジエリアが重なるステーション間干渉を避けるために、異なる周波数帯が異なるローカルステーションに割り当てられてもよく、AV20、21、22は、ローカルステーション1のいずれかからステータス信号を受信するとすぐに移動することが許可される。この許可規則を適用すると、AV20、21、22が異なる無線カバレッジエリア9に移動する際に、多くの既知のセルラー通信システムのような専用のハンドオーバー手順を必要とせずに、本発明による緊急停止機構を実施することができる。ステータス信号の周期Tは、許容可能な最大の緊急停止待ち時間と同じ位数(order)である。AVのそれぞれが、ステータス信号の予め定められた数nの送信を受信できなかった場合に移動を停止するように構成されているとき、第1のローカルステーション1aが送信するステータス信号によって現在移動を許可されている第1のAV20は、第1のローカルステーション1aがステータス信号を中断してから最大nT秒で停止することになる。
【0022】
カバレッジ範囲外に移動するAV20、21、22は、自動的に停止されることに留意されたい。従って、システム10の全ての無線カバレッジエリア9a、9b、9c、9dの和集合(union)は、AVが移動することを許可されている作業現場の範囲を定義する。
【0023】
次に、ローカルステーション1の内部動作の例について、図2を参照して説明する。ここでは、2つの同様に装備されたローカルステーション1が通信ネットワーク11に接続されているのが示されている。図示の例では、ローカルステーション1をリンクする通信ネットワーク11は有線ネットワークであり、少なくとも図2に示す部分において、リニアバス型トポロジーを有する。リニアバス型トポロジーは、一般に、各ノードがネットワーク内の任意の他のノードと直接通信することを可能にする。ローカルステーション1は、プロセッサ7と無線送信機2とを含んで構成される。プロセッサ7は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)であってもよいし、PCLに含まれてもよい。無線送信機2は、少なくともステータス信号をAV20、21、22に向けて送信するように適合されている。この目的のために、無線送信機2は、ベースバンド回路、増幅器、及び少なくとも1つのアンテナを含んでいてもよい。無線送信機2は、さらに、受信機能を有していてもよい。
【0024】
ローカルステーション1は、緊急停止スイッチ3をさらに備え、このスイッチによって、ステータス信号の送信を中断して、AV20、21、22を停止させることができる。緊急停止スイッチ3は、例えば、ローカルステーションに配置された緊急停止キー5を使用して、人間のオペレータによって作動させることができる。代替的にまたは追加的に、緊急停止スイッチ3は、センサ6からの信号によって作動させることができる。センサ6は、例えば、ローカルステーション1の近傍にあるAVの安全性、またはシステム10全体によって制御されるAVの安全性に関連する状態、例えば高温または低温、強風、作業現場における無許可の人または動物の存在などを感知することができる。センサ6は、ローカルステーション1の無線カバレッジエリア内に配置してもよいし、そうでなければ、ローカルステーションが最も便利な1接続ポイントになるような場所に配置してもよい。
【0025】
ローカルステーション1は、任意選択で、ローカルステーション1の緊急停止スイッチ3が作動したことを視覚化するように動作可能な視覚的表示8を備える。好ましくは、ローカルステーション1が、異なるローカルステーションから通信ネットワーク11を介して受信した命令に応答して、ステータス信号の送信を中断した場合、視覚的表示8は作動しない。これは、オペレータが特定のローカルステーション1に対して緊急停止した原因を突き止めるのに役立つ。一実施形態では、視覚的表示8は、複数のモードで動作可能であってもよい。例えば、視覚的表示8は、通常動作を表す緑色の光、自身の緊急停止スイッチによって中断されたステータス信号を表す赤色の光、及び別のローカルステーションから受信した中断命令によって中断されたステータス信号を表す黄色の光を発生するように動作可能であってもよい。
【0026】
ローカルステーション1は、通信ネットワーク11によってリンクされているさらなるローカルステーションと通信するように構成された通信エレメント4を備えている。ローカルステーション1は、ローカルステーション1自身の緊急停止スイッチ3が作動したときに、さらなるローカルステーションの少なくとも1つにステータス信号の中断を命令する。通信ネットワーク11が、図2に例示したバス型トポロジーやスター型トポロジーなどの適切なトポロジーを有する場合、ローカルステーション1は、この命令を、さらなるすべてのローカルステーションに自律的に送信することができる。デイジーチェーンおよび他のトポロジーの場合、以下に説明するように、ローカルステーション1は、隣接するローカルステーションに中断命令を送ることができるが、命令がシステム10の全てのローカルステーションに到達するためには、隣接およびさらなるローカルステーションの支援を必要とする場合があり、隣接するローカルステーションは、自身に隣接するローカルステーション(複数可)に命令を伝播させる。
【0027】
ローカルステーション1は、ステータス信号を中断するための着信命令を受信した状態において、この命令を実行するように構成されている。スター型トポロジーまたはバス型トポロジーの場合、着信命令は、緊急停止スイッチ3が作動した別のローカルステーションから発信されたものである。デイジーチェーントポロジーでは、中断のための着信命令は、緊急停止スイッチが作動したローカルステーションから、またはさらに別のローカルステーションからそのような命令を伝播させたローカルステーションから発信されている可能性がある。既に述べたように、ステータス信号が着信命令に応答して中断される場合、視覚的表示8は作動されるべきではない。
【0028】
ローカルステーション1は、ステータス信号の送信を中断する命令の不存在または存在を表す信号を通信ネットワーク11を介して送信するように構成され得る。通信ネットワーク11がネットワークの健全性を監視するための別個のエンティティを含み、及び/または失敗した送信の再送信を自動的に要求するための機構を有する場合、命令は、任意の適切なフォーマットで符号化及びシグナリングされることができる。実際、監視または再送信メカニズムが障害を示し、命令が予定通りに他のローカルステーションに到達しない可能性がある状態は、グローバル緊急停止など、制御システム10における安全策をトリガし得る。通信ネットワーク11がそのような安全監視または再送信メカニズムを含まない実装では(または、他の理由により、ネットワーク11自身の他に安全層が望まれる場合)、以下のシグナリングを使用することができる。(1)ステータス信号の送信を中断する命令の不存在は、ローカルステーション1が通信ネットワーク11上でハートビート信号を発信することに対応し、(2)中断する命令の存在は、ローカルステーション1がハートビート信号の発信を中断することに対応する。ハートビート信号は、伝送路上の待機電位や無線チャネル上の干渉など、通信ネットワーク11のバックグラウンド信号と混同されにくい任意の波形であればよい。有線ネットワークにおけるハートビート信号としては、周期やパルス幅が予め設定された矩形波が用いられてもよい。
【0029】
ローカルステーション1に再びハートビート信号の発信を開始するよう命令することにより、通常動作を再開することができる。一部のローカルステーションのやや遅れた開始が新たな中断命令と解釈される状況でのセルフブロッキングを回避するために、ローカルステーション1は好ましくはほぼ同時の方法で再開されるべきである。あるいは、専用の再開手順順序を定義してもよく、この順序は、ローカルステーション1が、リンクされたローカルステーションから予定されたハートビート信号を受信せずにハートビート信号を発信することが許されるサンライズ期間を含むものである。
【0030】
図2に示すようなバス型またはスター型トポロジーを有する通信ネットワーク11では、ローカルステーション1による送信は、他の全てのローカルステーションによってマルチキャストメッセージのように受信される。異なるローカルステーションから発信される伝送を分離して区別するために、時分割プロトコルが使用され得る。例えば、N個のローカルステーションを有する制御システム10において、各ローカルステーションは、N番目のタイムスロット毎にそのハートビート信号を発するように割り当てられることができ、ここで、一意のオフセット(タイムスロット数で表される)が各ローカルステーションに割り当てられることが考えられる。各ローカルステーションは、発信元に関係なく中断命令を実行するため、ローカルステーションは正確な割り当てを識別する必要はなく、ハートビート信号を聞くタイムスロットのセットのみを識別すればよい。リスニングしているローカルステーションは、タイムスロットの1つに予定されたハートビート信号がない場合、ステータス信号の送信を中断する命令であると解釈する。時分割の代わりに、コード分割方式を採用し、異なるローカルステーションが直交するハートビート信号を発するようにしてもよい。
【0031】
次に図3を参照して、ローカルステーション1がその1つまたは複数の隣接するローカルステーションにのみメッセージを送信することを可能にするという意味でデイジーチェーントポロジーまたは同等のトポロジーを有する通信ネットワーク11につき、対応するシグナリングについて説明する。通信ネットワーク11はセグメントで構成され、各セグメントは一対のローカルステーションをリンクする。図3は、第1および第2のローカルステーション1a、1bの間、ならびに第2および第3のローカルステーション1b、1cの間の完全なセグメントを示す。また、第1のローカルステーション1aとさらなるローカルステーション(図示せず)との間のセグメント、および第3のローカルステーション1cとさらに別のローカルステーション(図示せず)との間のセグメントも提案されている。セグメントは、リーク、接地差、ショート等によって引き起こされるスプリアス信号を回避するために、互いに電気的に絶縁されてもよい。
【0032】
通信ネットワーク11のセグメントは一方向の通信のみを可能にし、ネットワーク11の端点は閉じた循環型のトポロジーを形成するように接続されていると、最初に仮定する。この仮定の下では、図3において32b及び32cで示されるメッセージは送信されないが、後述する。通常の動作では、第1のローカルステーション1aは、第2のローカルステーション1bに向けて第1のハートビート信号31aを発信し、第2のローカルステーション1bは、第3のローカルステーション1cに向けて第2のハートビート信号31bを発信する。逆に、第2のローカルステーション1bは、第1のハートビート信号31aを検知し、第3のローカルステーション1cは、第2のハートビート信号31bを検知する。第2のローカルステーション1bは、第1のハートビート信号31aを所定時間h受信しなかった場合、これを第1のローカルステーション1aから受信した中断命令と解釈し、その無線カバレッジエリア9bにおけるステータス信号の送信を中断する。さらに第2ローカルステーション1bは、第3ローカルステーション1cに向けての第2ハートビート信号31bの発信を停止する。第2ハートビート信号31bの停止は、中断命令を伝播させることに相当する。N個のローカルステーションを有するAV制御システム10において、全てのローカルステーションは、最大(N-1)h秒の総伝播時間(内部処理遅延を無視)内にステータス信号の送信を中断するよう命令され、最後に停止するAVは、第1の緊急停止スイッチの作動から(N-1)h+nT秒の最大の総遅延時間を経て停止することになる。
【0033】
時分割複信のような既知の多重化技術によって配置され得るように、各セグメントで双方向通信が可能であれば、循環型のトポロジーによる通信ネットワーク11における伝播時間は短縮され得る。図3に部分的に示される通信ネットワーク11においてこれが可能であると仮定すると、各ローカルステーションは、隣接する2つのローカルステーションに向けてハートビート信号31、32を発信するが、本開示における純粋な命名規則として、上向き(upward)および下向き(downward)と呼ぶ。例えば、第2のローカルステーション1bは、第3のローカルステーション1cに向かって上向きの第2のハートビート信号31bを発し、第1のローカルステーション1aに向かって下向きの第2のハートビート信号32bを発する。同様に、第2のローカルステーション1bは、第1のローカルステーション1aからの上向きの第1のハートビート信号31aを検知し、第3のローカルステーション1cからの下向きの第3のハートビート信号を検知する。循環型のトポロジーでは、これにより、最大の総遅延は、次式に示すように低減され得る。
【0034】
【数1】
【0035】
図3の通信ネットワーク11のトポロジーがオープンで、例えば、ネットワークの端点を構成する2つのローカルステーションの間にローカルステーションが順次配置されている場合、双方向接続性により、最終的に、すべてのローカルステーションにステータス信号の送信を中断する命令が到達することが保証される。最悪のシナリオでは、中断命令が一方の端点から発生した場合、他方の端点への伝播時間は(N-1)hの位数となり、最大の総遅延時間は(N-1)h+nTとなる可能性がある。
【0036】
実施形態において、ローカルステーション1は、その近傍のローカルステーションの存在を感知するように構成される。今述べた例では、通信ネットワーク11が双方向ネットワークセグメントを有するオープンデイジーチェーントポロジーを有する場合、端点を構成するローカルステーションは、中間のローカルステーションとは異なる動作を行う。本実施形態に従って構成されたローカルステーション1は、自己編成ネットワーク要素として動作することになる。これにより、全てのローカルステーション1は、同一のハードウェア及びソフトウェアを有するように製造することができ、感知ステップで個別化が行われるため、展開プロセスが簡素化される。
【0037】
近傍ノードの感知は、(a)通信エレメント4上のケーブル端子の占有ステータス、(b)緊急停止状態にかかわらず全てのローカルステーションがハートビート信号を発するように設定された特定の初期化モードにおける受信ハートビート信号の検知、または(c)例えば、受信ハートビート信号の最大数がローカルステーションの実際の接続性を表すと仮定し、最長時間にわたって有効である接続状態が正常動作を表すと仮定するなどによる統計手法、に基づくことが考えられる。図3に示される例では、第1、第2及び第3のローカルステーション1a、1b、1cは、2つのリンクした近傍局の存在を感知し、したがって、それぞれ2つのハートビート信号を発信し、検知することになる。端点ノード(図示せず)は、感知後、1つのハートビート信号のみを検知し、1つのみ発信することになる。つまり、存在感知の結果により、感知したローカルステーションが中断命令を命令すべきさらなるローカルステーション、および着信した中断命令を伝播すべきさらなるローカルステーションを決定する。ここで説明した実施形態は、複雑なまたは不均一なトポロジーを有する通信ネットワーク11、例えば、各ローカルステーションが1、2、3またはそれ以上の近傍局を有する可能性がある場合に、さらに有利になり得る。
【0038】
AV20、21、22を制御するための無線制御システム10のローカルステーション1の上述の動作は、図5のフローチャートによる方法50によって要約することができる。オプションの第1のステップ51において、ローカルステーション1は、少なくとも1つの隣接するローカルステーションの存在を感知し、そのローカルステーションに対してステータス信号を中断する命令を送信し、その効果によって受信する命令を伝播させ得る。第2のステップ52において、ローカルステーション1は、そのローカルステーションの無線カバレッジエリア9において、信号を受信している間、AVに移動を許可する永続的なステータス信号を送信する。第3のステップ53において、ローカルステーション1は、その緊急停止スイッチ3を監視する。作動が決定された場合、第4のステップ54において、ローカルステーションは、ステータス信号の送信を中断させる。第5のステップ55において、さらにステップ53における肯定的な決定に応答して、ローカルステーション1は、無線制御システム10内の1つまたは複数の同様に装備されたさらなるローカルステーションに、ステータス信号の送信を中断するように命令する。
【0039】
特定の実施形態では、方法50は、追加のステップのうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。(i)ローカルステーション1の無線送信機2を制御することによって、受信したステータス信号の中断命令を実行するステップ、(ii)受信したステータス信号の中断命令を、少なくとも1つのさらなるローカルステーションに伝播させるステップ、(iii)ローカルステーション1が通信ネットワーク11によってリンクされている、中断するための発信命令が送られるおよび/または受信命令が伝播されるさらなるローカルステーションの存在を感知するステップ、(iv)前記命令が送られるまたは伝播されるべき、隣接するローカルステーションを識別するステップを含む。
【0040】
上記のステップ(iv)による、隣接するローカルステーションのアイデンティティを識別することは、例えばアドレスヘッダを含むユニキャストメッセージのみを許可するプロトコル下の通信ネットワーク11に関連する。ローカルステーション1を区別可能なアイデンティティと関連付けることは、AV制御システム10のパーティショニングを可能にすることもでき、それによって緊急停止は、発信元のローカルステーションに隣接または近接している1つまたは複数のローカルステーションに影響を与えるが、システム10の予め定義されたパーティションに制限される。パーティションは、ローカルステーションのアイデンティティの予め定義されたアドレス範囲に対応してもよい。例えば、システム10の管理者は、緊急停止をトリガする可能性のあるローカル要因が、パーティション内では安全に関連するが、パーティション外ではそうではないと考え得る。これは、コストのかかるダウンタイムを低減しながら、地理的に拡張された制御システム10の便利な集中操作を可能にし得る。
【0041】
様々な実施形態による方法50は、ローカルステーション1を制御するように構成されたプロセッサ7の支援を受けて実行されてもよく、方法50はコンピュータ可読命令として表される。一実施形態では、コンピュータ可読媒体は、そのようなコンピュータ可読命令を含んでいる。添付の特許請求の範囲の意味でのコンピュータ可読媒体は、任意の揮発性または不揮発性の記憶媒体、または前記コンピュータ可読命令を転送する変調された電気、電磁気または光搬送波などの一時的な媒体であってもよい。変調された搬送波は、方法50を実行するローカルステーションのメモリにコンピュータ可読命令をアップロードするために使用されてもよい。
【0042】
本開示の態様は、主に、いくつかの実施形態を参照して上述されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されたもの以外の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内で同様に可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
次に、ローカルステーション1の内部動作の例について、図2を参照して説明する。ここでは、2つの同様に装備されたローカルステーション1が通信ネットワーク11に接続されているのが示されている。図示の例では、ローカルステーション1をリンクする通信ネットワーク11は有線ネットワークであり、少なくとも図2に示す部分において、リニアバス型トポロジーを有する。リニアバス型トポロジーは、一般に、各ノードがネットワーク内の任意の他のノードと直接通信することを可能にする。ローカルステーション1は、プロセッサ7と無線送信機2とを含んで構成される。プロセッサ7は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)であってもよいし、PLCに含まれてもよい。無線送信機2は、少なくともステータス信号をAV20、21、22に向けて送信するように適合されている。この目的のために、無線送信機2は、ベースバンド回路、増幅器、及び少なくとも1つのアンテナを含んでいてもよい。無線送信機2は、さらに、受信機能を有していてもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【国際調査報告】