(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】光音響リモートセンシング(PARS)及び関連する使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/00 20060101AFI20230302BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230302BHJP
A61B 8/13 20060101ALI20230302BHJP
G01N 29/06 20060101ALI20230302BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G01N21/00 A
A61B1/00 500
A61B8/13
G01N29/06
G01N29/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537098
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 IB2019061131
(87)【国際公開番号】W WO2021123893
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520277531
【氏名又は名称】イルミソニックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ILLUMISONICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハジ レザ、パーシン
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ケヴァン
【テーマコード(参考)】
2G047
2G059
4C161
4C601
【Fターム(参考)】
2G047AA12
2G047AC13
2G047BC13
2G047CA04
2G047GD01
2G047GH06
2G059AA05
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2G059EE16
2G059FF03
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2G059HH03
2G059JJ19
2G059JJ22
2G059KK03
4C161BB08
4C161CC07
4C161FF46
4C161QQ04
4C601DE16
4C601EE09
(57)【要約】
試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、励起位置において試料内に圧力信号を生成するように構成された複数の励起ビームと、励起位置において試料に入射する複数のインタロゲーションビームであって、複数のインタロゲーションビームの一部分が、生成された圧力信号を示している試料から戻る、複数のインタロゲーションビームとを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源と、複数の励起ビームを第1の焦点において、且つ複数のインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、第1及び第2の焦点は、試料の表面の下にある、光学系と、複数のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つの戻り部分を検出するようにそれぞれ構成された複数の検出器とを含む光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、
励起位置において前記試料内に圧力信号を生成するように構成された複数の励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、前記1つ又は複数のレーザ源は、前記励起位置において前記試料に入射する複数のインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、前記複数のインタロゲーションビームの一部分が、生成された前記圧力信号を示している前記試料から戻る、前記1つ又は複数のレーザ源と、
前記複数の励起ビームを第1の焦点において、且つ前記複数のインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、前記第1及び第2の焦点は、前記試料の表面の下にある、前記光学系と、
前記複数のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つの戻り部分を検出するようにそれぞれ構成された複数の検出器と
を備える光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【請求項2】
前記1つ又は複数のレーザ源は、複数のレーザ源である、請求項1に記載のPARS。
【請求項3】
前記複数の励起ビームの各々は、異なる波長を有する、請求項1に記載のPARS。
【請求項4】
前記複数の励起ビームは、
近赤外線ビーム、
短波赤外線ビーム、
UVCビーム、
UVBビーム、
UVAビーム、及び
可視光
を含む、請求項3に記載のPARS。
【請求項5】
前記複数の励起ビームは、前記試料上に順次送達されるように構成される、請求項1に記載のPARS。
【請求項6】
前記複数の励起ビームは、前記試料上に同時に送達されるように構成される、請求項1に記載のPARS。
【請求項7】
前記第1及び第2の焦点は、前記試料の前記表面の下の50nm~8mmの深さにある、請求項1に記載のPARS。
【請求項8】
以下の応用であって、
組織試料のイメージング、
細胞核のイメージング、
タンパク質のイメージング、
シトクロムのイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血中酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、
微小循環系のイメージング、
血中酸素濃度パラメータのイメージング、
組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、
分子固有標的のイメージング、
前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、
微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、
皮膚病変のイメージング、
黒色腫のイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術のイメージング、
腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、
周辺血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、
焼灼のイメージング、
形成外科、
顕微鏡手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
黒色腫細胞のイメージング、
リンパ節血管形成のイメージング、
光線力学的療法に対する反応のイメージング、
血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、
化学療法に対する反応のイメージング、
抗血管薬に対する反応のイメージング、
放射線治療に対する反応のイメージング、
多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、
パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、
バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、
脳外科手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の検証、
臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、
島移植の周囲の血管形成のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、
顕微鏡手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、
臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、
前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、
凝血のイメージング、又は
凝血の病期診断
の応用のうちの1つ又は複数において使用される、請求項1に記載のPARS。
【請求項9】
試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、
励起位置において前記試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、前記少なくとも1つの励起ビームは、第1の経路に沿って前記試料に向けられ、前記1つ又は複数のレーザ源は、前記励起位置において前記試料に入射し、且つ前記第1の経路からオフセットされた第2の経路に沿って前記試料に向けられる少なくとも1つのインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された前記超音波信号を示している前記試料から戻り、前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの戻り部分は、前記第1の経路及び前記第2の経路の各々からオフセットされた第3の経路に沿って戻る、前記1つ又は複数のレーザ源と、
前記少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において集束するように構成された第1の光学系と、
前記少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された第2の光学系であって、前記第1及び第2の焦点は、前記試料の表面の下にある、前記第2の光学系と、
前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの戻り部分を検出するように構成された少なくとも1つの検出器と
を備える光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【請求項10】
前記第1の経路と前記第2の経路との間の角度は、前記第2の経路と前記第3の経路との間の角度と実質的に同じである、請求項9に記載のPARS。
【請求項11】
前記第1の経路と前記第3の経路との間の角度は、前記第1の経路と前記第3の経路との間の角度と実質的に同じである、請求項10に記載のPARS。
【請求項12】
前記第1及び第2の焦点は、前記試料の前記表面の下の50nm~8mmの深さにある、請求項9に記載のPARS。
【請求項13】
以下の応用であって、
組織試料のイメージング、
細胞核のイメージング、
タンパク質のイメージング、
シトクロムのイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血液酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、
微小循環系のイメージング、
血中酸素濃度パラメータのイメージング、
組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、
分子固有標的のイメージング、
前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、
微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、
皮膚病変のイメージング、
黒色腫のイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術のイメージング、
腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、
周辺血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、
焼灼のイメージング、
形成外科、
顕微鏡手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
黒色腫細胞のイメージング、
リンパ節血管形成のイメージング、
光線力学的療法に対する反応のイメージング、
血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、
化学療法に対する反応のイメージング、
抗血管薬に対する反応のイメージング、
放射線治療に対する反応のイメージング、
多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、
パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、
バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、
脳外科手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の検証、
臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、
島移植の周囲の血管形成のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、
顕微鏡手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、
臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、
前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、
凝血のイメージング、又は
凝血の病期診断
の応用のうちの1つ又は複数において使用される、請求項9に記載のPARS。
【請求項14】
試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、
励起位置において前記試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、前記1つ又は複数のレーザ源は、前記励起位置において前記試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された前記超音波信号を示している前記試料から戻る、前記1つ又は複数のレーザ源と、
前記少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ前記少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、前記第1及び第2の焦点は、前記試料の表面の下にある、前記光学系と、
少なくとも1つの戻り部分の偏光変調を検出するように構成された偏光変調検出器と
を備える光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【請求項15】
前記第1及び第2の焦点は、前記試料の前記表面の下の50nm~8mmの深さにある、請求項14に記載のPARS。
【請求項16】
以下の応用であって、
組織試料のイメージング、
細胞核のイメージング、
タンパク質のイメージング、
シトクロムのイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血液酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、
微小循環系のイメージング、
血中酸素濃度パラメータのイメージング、
組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、
分子固有標的のイメージング、
前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、
微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、
皮膚病変のイメージング、
黒色腫のイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術のイメージング、
腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、
周辺血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、
焼灼のイメージング、
形成外科、
顕微鏡手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
黒色腫細胞のイメージング、
リンパ節血管形成のイメージング、
光線力学的療法に対する反応のイメージング、
血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、
化学療法に対する反応のイメージング、
抗血管薬に対する反応のイメージング、
放射線治療に対する反応のイメージング、
多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、
パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、
バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、
脳外科手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の検証、
臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、
島移植の周囲の血管形成のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、
顕微鏡手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、
臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、
前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、
凝血のイメージング、又は
凝血の病期診断
の応用のうちの1つ又は複数において使用される、請求項14に記載のPARS。
【請求項17】
試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、
励起位置において前記試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、前記1つ又は複数のレーザ源は、前記励起位置において前記試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された前記超音波信号を示している前記試料から戻る、前記1つ又は複数のレーザ源と、
前記少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ前記少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、前記第1及び第2の焦点は、前記試料の表面の下にある、前記光学系と、
少なくとも1つの戻り部分の位相変調を検出するように構成された位相変調検出器と
を備える光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【請求項18】
前記第1及び第2の焦点は、前記試料の前記表面の下の50nm~8mmの深さにある、請求項17に記載のPARS。
【請求項19】
以下の応用であって、
組織試料のイメージング、
細胞核のイメージング、
タンパク質のイメージング、
シトクロムのイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血液酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、
微小循環系のイメージング、
血中酸素濃度パラメータのイメージング、
組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、
分子固有標的のイメージング、
前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、
微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、
皮膚病変のイメージング、
黒色腫のイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術のイメージング、
腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、
周辺血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、
焼灼のイメージング、
形成外科、
顕微鏡手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
黒色腫細胞のイメージング、
リンパ節血管形成のイメージング、
光線力学的療法に対する反応のイメージング、
血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、
化学療法に対する反応のイメージング、
抗血管薬に対する反応のイメージング、
放射線治療に対する反応のイメージング、
多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、
パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、
バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、
脳外科手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の検証、
臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、
島移植の周囲の血管形成のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、
顕微鏡手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、
臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、
前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、
凝血のイメージング、又は
凝血の病期診断
の応用のうちの1つ又は複数において使用される、請求項17に記載のPARS。
【請求項20】
試料内の構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)であって、
励起位置において前記試料内に圧力を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、前記1つ又は複数のレーザ源は、前記励起位置において前記試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、前記少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された超音波/圧力信号を示している前記試料から戻る、前記1つ又は複数のレーザ源と、
少なくとも1つの戻り部分の少なくとも1つの光特性を検出するように構成された検出器と
を備える光音響リモートセンシングシステム(PARS)。
【請求項21】
前記少なくとも1つの光特性は、偏光、位相、振幅、散乱、自家蛍光及び二次高調波発生を含む、請求項20に記載のPARS。
【請求項22】
前記少なくとも1つの光特性は、複数の光特性を含み、及び前記検出器は、前記複数の光特性を同時に又は別々に検出するように構成される、請求項20に記載のPARS。
【請求項23】
前記試料を保持する硝子窓を介して前記試料の構造をイメージングするように構成される、請求項20に記載のPARS。
【請求項24】
複数の励起ビームを同時に、複数のインタロゲーションビームを同時に、又は少なくとも1つの励起ビーム及び少なくとも1つのインタロゲーションビームを同時に生成するように構成された複数のレーザ源を含む、請求項20に記載のPARS。
【請求項25】
内視鏡を含む、請求項20に記載のPARS。
【請求項26】
前記少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ前記少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系をさらに含み、PARSは、前記試料が静止したままである間に前記光学系を走査するように構成される、請求項20に記載のPARS。
【請求項27】
前記少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ前記少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された1つ又は複数の光学系をさらに含み、前記第1及び第2の焦点は、前記試料の表面の下にある、請求項20に記載のPARS。
【請求項28】
前記第1及び第2の焦点は、前記試料の前記表面の下の50nm~8mmの深さにある、請求項27に記載のPARS。
【請求項29】
以下の応用であって、
組織試料のイメージング、
細胞核のイメージング、
タンパク質のイメージング、
シトクロムのイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血液酸素飽和度のイメージング、
腫瘍低酸素症のイメージング、
創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、
微小循環系のイメージング、
血中酸素濃度パラメータのイメージング、
組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、
分子固有標的のイメージング、
前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、
微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、
皮膚病変のイメージング、
黒色腫のイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース手術のイメージング、
腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、
周辺血管疾患のイメージング、
糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、
焼灼のイメージング、
形成外科、
顕微鏡手術、
循環腫瘍細胞のイメージング、
黒色腫細胞のイメージング、
リンパ節血管形成のイメージング、
光線力学的療法に対する反応のイメージング、
血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、
化学療法に対する反応のイメージング、
抗血管薬に対する反応のイメージング、
放射線治療に対する反応のイメージング、
多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、
パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、
バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、
脳外科手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の検証、
臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、
島移植の周囲の血管形成のイメージング、
皮膚移植のイメージング、
脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、
顕微鏡手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、
臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、
前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、
凝血のイメージング、又は
凝血の病期診断
の応用のうちの1つ又は複数において使用される、請求項20に記載のPARS。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生医学光学イメージングの分野に関し、特に、生体組織の生体内又は生体外非接触イメージングのためのレーザ及び超音波ベースの方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光音響イメージングは、高空間分解能を有する光学的コントラストを提供する新たなハイブリッドイメージング技術である。組織内に発射されるナノ秒又はピコ秒レーザパルスは、高分解能画像を形成するために検出され、再構築される熱弾性誘起音響波を発射する。光音響イメージングは、光音響トモグラフィ(PAT:photoacoustic tomography)、光音響顕微鏡分光法(PAM:photoacoustic microscopy)、光学分解能光音響顕微鏡分光法(OR-PAM:optical-resolution photoacoustic microscopy)及びアレイベースPAイメージング(アレイPAI)を含む複数の実施形態に展開されてきた。光音響トモグラフィ(PAT)では、いくつかの信号は、X線CTと同様の方法で断層画像を形成するために複数の変換器位置から収集及び再構築される。PAMでは、通常、単一の素子集束高周波超音波変換器が光音響信号を収集するために使用される。時間(深度)に応じた光音響信号は、3D光音響画像を形成するために、機械的に走査された軌道内の各位置に関して記録される。深度に応じた最大振幅は、最大振幅投影(MAP:maximum amplitude projection)C走査画像を形成するために各x-y走査位置において判断され得る。光音響顕微鏡分光法は、巨大血管から微小血管までの血管構造物をイメージングするための大きい可能性を示してきた。光音響顕微鏡分光法は、ナノ粒子造影剤のイメージング及び遺伝子発現のイメージングを含む機能及び分子イメージングの大きい将来性も示してきた。多波長光音響イメージングは、既知の酸化及び脱酸化ヘモグロビンモル吸光スペクトルを使用することにより、血液酸素飽和度のイメージングに使用されてきた。
【0003】
従来の光音響イメージングでは、空間分解能は、超音波集束に起因するものであり、且つ100より大きい深度対分解能比を提供し得る。OR-PAMでは、侵入深さは、組織内の約1mmまで制限される(光輸送の基本的制限に起因して)が、分解能は、光学的集束に起因してマイクロメートルスケールである。OR-PAMは、いかなる他の技術も提供し得ない、生体内の反射モードでの光吸収のマイクロメートルスケール画像を提供し得る。OR-PAMは、血管から毛細血管サイズまで非侵襲的にイメージングすることができる。毛細血管は、体内の最小血管であり、酸素及び栄養輸送を含む非常に重大な生物学的事象は、このレベルで発生し、且つ毛細血管レベルでも多くの問題が発生し得る。癌では、細胞は、その無制約成長を支援するために酸素及び栄養素に関して飽くことなく必要とする。細胞は、血管形成として知られた過程において新しい血管をもたらすために一定範囲の信号伝達経路を引き起こし、これらの血管は、通常、異常に形成する。腫瘍は、多くの場合、非常に不均質であり、且つ低酸素症の領域を有する。光音響イメージングは、生体内の血液酸素飽和度(SO2)及び腫瘍低酸素症をイメージングする能力を実証してきた。
【0004】
ほとんどの光音響及び超音波イメージングシステムでは、水又は超音波ゲルなどの超音波接触媒体が必要とされる圧電変換器が採用されてきた。しかし、創傷治癒、焼灼診断、手術及び多くの内視鏡手順などの多くの臨床応用に関して、物理的接触、結合又は浸漬は、望ましくないか又は非実用的である。
【0005】
光音響イメージングにおける超音波の検出は、最近まで、生体組織又は超音波結合剤と接触する超音波変換器に依存してきたが、その両方が上述のような重大な欠点を有する。光音響イメージングに関連付けられた非接触光学的干渉法感知問題を解決するためのいくつかの検出戦略が報告されてきた。
【0006】
超音波及び光音響信号を検出する光学的手段は、長年にわたって研究されてきたが、今日まで、いかなる技術も、コントラスト機構として共焦点分解能及び光吸収を有する反射モードにおいて実用的非接触生体内顕微鏡使用検査法を実証していない。
【0007】
ほとんどの以前の手法は、干渉計測方法により表面振動を検出した。他の手法は、光音響応力を観測するために干渉分光法(光コヒーレンス断層撮影法(OCT:optical coherence tomography)方法を含む)を使用した。これらの方法は、散乱体の運動、表面下振動及び表面振動だけでなく、望ましくない振動にも関連付けられた散乱探査ビームの位相変調に対する潜在的感度を提示する。これらの方法は、複雑な振幅反射率変調に対しても感度がある。
【0008】
光音響信号を感知するための低コヒーレンス干渉法の一例は、光コヒーレンス断層撮影法(OCT)システムと組み合わされ、30μm横方向分解能を生じる特許文献1において提案された。
【0009】
別の従来技術システムは、生体内又は生体外の非接触光音響イメージング(結合剤の必要性のない生体組織非接触イメージング)システムについて説明する、「生体組織検査方法及びシステム(Biological Tissue Inspection Method and System)」という名称の特許文献2に記載されている。
【0010】
他のシステムは、光音響信号を検出し、且つ音響(光学的でない)分解能を有するファントムの光音響画像を形成するために光増幅を有するファイバベース干渉計を使用する。しかし、これらのシステムは、他の接触ベース光音響システムは、著しく改善された検出能力を提示するのに対して、劣悪な信号対雑音比に直面する。さらに、生体内イメージングは、実証されておらず、光学分解能励起は、実証されなかった。
【0011】
工業用レーザ超音波は、非破壊試験のための非生物の光学的励起に起因する音響シグネチャ(acoustic signatures)を検出するために干渉分光法を使用してきた。この手法は、鶏胸及び子牛脳検体内の生体外超音波を検出するように適応化されてきたが、励起光の光学分解能集束は検討されなかった。
【0012】
レーザ・ドップラー振動測定法は、有力な非接触振動感知方法であったが、弱い信号対雑音及び劣悪な画像品質は広いビーム光音響励起から深い組織信号を感知する際の制限となることが分かった。
【0013】
同様に、マッハ・ツェンダー干渉分光法及び2波混合干渉分光法は、光音響信号を感知するために既に使用されている。しかし、多くのこのような技術は、直接的接触又は流体結合を依然として必要とし、生体内研究も、ファントム研究のための光学分解能も提示していない。
【0014】
本明細書において説明される(非干渉法光音響リモートセンシング(NI-PARS:non-interferometric photoacoustic remote sensing)を含む)光音響リモートセンシング(PARS:PHOTOACOUSTIC REMOTE SENSING)システムは、超音波信号/光音響信号の検出のための他の手法と基本的に異なる。PARSは、インタロゲーションビームと共焦点化又は共走査される励起ビームを利用する。具体的には、PARSは、広範な領域にわたって送達される従来の広い励起ビームではなく、回折限界点の近くに集束されるnJスケールのパルスエネルギーを使用する。さらに、NI-PARSでは、検出機構は、非干渉法感知に基づく。表面振動を検出することよりむしろ、初期衝撃波面から生じる圧力誘起の屈折率変調は、音圧が大きい場合、その表面下源において正しくサンプリングされ得る。インタロゲーションレーザの短いコヒーレンス長と共に検出の非干渉性は、初期圧信号のみを提供するために表面振動及び表面下振動の検出を排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0185055号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0200845号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
一例によると、試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)は、励起位置において試料内に圧力信号を生成するように構成された複数の励起ビームと、励起位置において試料に入射する複数のインタロゲーションビームであって、複数のインタロゲーションビームの一部分が、生成された圧力信号を示している試料から戻る、複数のインタロゲーションビームとを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源を含み得る。PARSは、複数の励起ビームを第1の焦点において、且つ複数のインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、第1及び第2の焦点は、試料の表面の下にある、光学系と、それぞれ複数のインタロゲーションビームのうちの少なくとも1つの戻り部分を検出するように構成された複数の検出器とをさらに含み得る。1つ又は複数のレーザ源は、複数のレーザ源であり得る。複数の励起ビームの各々は、異なる波長を有し得る。複数の励起ビームは、近赤外線ビーム、短波赤外線ビーム、UVCビーム、UVBビーム、UVAビーム及び可視光を含み得る。複数の励起ビームは、試料上に順次送達されるように構成され得るか、又は試料上に同時に送達されるように構成され得る。第1及び第2の焦点は、試料の表面の下の1μm未満の深さにあり得る。
【0017】
別の例では、試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)は、励起位置において試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームであって、第1の経路に沿って試料に向けられる、少なくとも1つの励起ビームと、励起位置において試料に入射し、且つ第1の経路からオフセットされた第2の経路に沿って試料に向けられる少なくとも1つのインタロゲーションビームであって、少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された超音波信号を示している試料から戻る、少なくとも1つのインタロゲーションビームとを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源を含み得、少なくとも1つのインタロゲーションビームの戻り部分は、第1の経路及び第2の経路の各々からオフセットされた第3の経路に沿って戻る。PARSは、少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において集束するように構成された第1の光学系と、少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された第2の光学系であって、第1及び第2の焦点は、試料の表面の下にある、第2の光学系と、少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの戻り部分を検出するように構成された少なくとも1つの検出器とをさらに含み得る。第1の経路と第2の経路との間の角度は、第2の経路と第3の経路との間の角度と実質的に同じであり得る。第1の経路と第3の経路との間の角度は、第1の経路と第3の経路との間の角度と実質的に同じであり得る。
【0018】
別の例では、試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)は、励起位置において試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームと、励起位置において試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームであって、少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された超音波信号を示している試料から戻る、少なくとも1つのインタロゲーションビームとを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源を含み得る。PARSは、少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、第1及び第2の焦点は、試料の表面の下にある、光学系と、少なくとも1つの戻り部分の偏光変調(polarization modulation)を検出するように構成された偏光変調検出器とをさらに含み得る。
【0019】
別の例によると、試料内の表面下構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)は、励起位置において試料内に超音波信号を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームと、励起位置において試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームであって、少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された超音波信号を示している試料から戻る、少なくとも1つのインタロゲーションビームとを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源を含み得る。PARSは、少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系であって、第1及び第2の焦点は、試料の表面の下にある、光学系と、少なくとも1つの戻り部分の位相変調を検出するように構成された位相変調検出器とをさらに含み得る。
【0020】
別の例では、試料内の構造をイメージングするための光音響リモートセンシングシステム(PARS)は、励起位置において試料内に圧力を生成するように構成された少なくとも1つの励起ビームを生成するように構成された1つ又は複数のレーザ源であって、励起位置において試料に入射する少なくとも1つのインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、少なくとも1つのインタロゲーションビームの少なくとも1つの一部分が、生成された超音波/圧力信号を示している試料から戻る、1つ又は複数のレーザ源と、少なくとも1つの戻り部分の少なくとも1つの光特性を検出するように構成された検出器とを含み得る。少なくとも1つの光特性は、偏光、位相、振幅、散乱、自家蛍光及び二次高調波発生を含み得る。少なくとも1つの光特性は、複数の光特性を含み得、及び検出器は、複数の光特性を同時に又は別々に検出するように構成され得る。PARSは、試料を保持する硝子窓を介して試料の構造をイメージングするように構成され得る。PARSは、複数の励起ビームを同時に、複数のインタロゲーションビームを同時に、又は少なくとも1つの励起ビーム及び少なくとも1つのインタロゲーションビームを同時に生成するように構成された複数のレーザ源を含み得る。PARSは、内視鏡を含み得る。さらに、PARSは、少なくとも1つの励起ビームを第1の焦点において、且つ少なくとも1つのインタロゲーションビームを第2の焦点において集束するように構成された光学系をさらに含み得、PARSは、試料が静止したままである間に光学系を走査するように構成される。
【0021】
上述のPARS例は、以下の応用であって、組織試料のイメージング、細胞核のイメージング、タンパク質のイメージング、シトクロムのイメージング、DNAのイメージング、RNAのイメージング、脂質のイメージング、血液酸素飽和度のイメージング、腫瘍低酸素症のイメージング、創傷治癒、焼灼診断又は手術のイメージング、微小循環系のイメージング、血中酸素濃度パラメータのイメージング、組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流の推定、分子固有標的のイメージング、前臨床腫瘍モデルのための血管形成のイメージング、微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージング、眼のイメージング、蛍光眼底血管撮影法の強化又は置換、皮膚病変のイメージング、黒色腫のイメージング、基底細胞癌のイメージング、血管腫のイメージング、乾癬のイメージング、湿疹のイメージング、皮膚炎のイメージング、モース手術のイメージング、腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、周辺血管疾患のイメージング、糖尿病性潰瘍及び/又は圧迫潰瘍のイメージング、焼灼のイメージング、形成外科、顕微鏡手術、循環腫瘍細胞のイメージング、黒色腫細胞のイメージング、リンパ節血管形成のイメージング、光線力学的療法に対する反応のイメージング、血管除去機構を有する光線力学的療法に対する反応のイメージング、化学療法に対する反応のイメージング、抗血管薬に対する反応のイメージング、放射線治療に対する反応のイメージング、多波長光音響励起を使用した酸素飽和度の推定、パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、酸素流量及び/又は酸素消費量の推定、バレット食道癌及び/又は結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さのイメージング、脳外科手術中の機能イメージング、内出血の評価及び/又は焼灼の検証、臓器及び/又は臓器移植の灌流の十分性のイメージング、島移植の周囲の血管形成のイメージング、皮膚移植のイメージング、脈管化及び/又は免疫拒絶を評価するための組織足場及び/又は生体材料のイメージング、顕微鏡手術を支援するためのイメージング、血管及び/又は神経を切断することを避けるための案内、臨床又は前臨床応用における造影剤のイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質及び/又は蛍光タンパク質を含む遺伝的符号化レポータのイメージング、分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、凝血のイメージング、又は凝血の病期診断の応用のうちの1つ又は複数において使用され得る。
【0022】
上述の様々な実施形態は、特定の光音響リモートセンシング(PARS)システムに限定されない。むしろ、これらは、本明細書において説明される様々なPARSシステムであって、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第10,117,583B2号明細書、米国特許出願公開第10,327,646B2号明細書、米国特許出願公開第2019/0104944A1号明細書、米国特許出願公開第2019/0320908A1号明細書、米国特許出願公開第2018/0275046A1号明細書及び国際公開第2019/145764号パンフレットで説明される様々なPARSシステムに適用され得る。
【0023】
他の態様は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
これら及び他の特徴は、添付図面を参照する以下の説明から明らかになる。添付図面は、例示の目的のみのものであり、決して限定するように意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】様々な実施形態による光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡システムのブロック図である。
【
図1B】様々な実施形態による光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡システムのブロック図である。
【
図1C】様々な実施形態による光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡システムのブロック図である。
【
図2A】他の実施形態によるPARSのブロック図である。
【
図2B-2C】試料上の励起ビーム及び検出ビームの図である。
【
図2D】検出ビームの戻り部分と共に試料に適用される励起ビーム及び検出ビームを示す3次元図である。
【
図3A】他の実施形態によるPARSのブロック図である。
【
図3B】他の実施形態によるPARSのブロック図である。
【
図4】別の実施形態によるPARSのブロック図である。
【
図5A-5D】試料上の励起ビームとインタロゲーションビームとの間の様々なオーバーラップの代表的図である。
【
図5E-5I】試料上の励起ビームとインタロゲーションビームとの間の様々なオーバーラップの代表的図である。
【
図6A-6C】様々な実施形態による内視鏡検査構成の感知システムのブロック図である。
【
図7】別の光学的イメージングシステムと一体化された感知システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、その例が添付図面に示される本開示の例を詳細に参照する。可能な限り、同じ又は同様の部品を指すために同じ参照番号が添付図面を通して使用される。以下に続く説明では、「約」、「ほぼ」、「略」などの相対語は、述べられた数値内の±10%の可能な変動を指示するために使用される。
【0026】
光音響イメージングは、組織を励起するためにレーザ光を使用する生医学イメージング様式である。発色団又は任意の他の吸収体により吸収されるエネルギーは、熱弾性膨張に起因して音響波に変換される。これらの音響信号は、光吸収コントラストを有する画像を形成するために検出され、再構築される。光音響イメージング(PA:photoacoustic imaging)は、微小血管の精巧な画像を提供することが示されており、他の用途の中でも、血液酸素飽和度、遺伝子発現及び造影剤をイメージングすることができる。ほとんどのPA及び超音波イメージングシステムでは、水又は超音波ゲルなどの超音波結合媒体が必要とされる圧電変換器が採用されてきた。しかし、創傷治癒、焼灼診断、手術及び多くの内視鏡手順などの多くの臨床応用に関して、物理的接触、結合又は浸漬は、望ましくないか又は非実用的である。本明細書において説明されるシステムは、いかなる超音波媒体の使用もない非接触非干渉法感知を使用することにより、生体内光学分解能光音響顕微鏡分光測定が可能である。
【0027】
本明細書において説明されるシステム(すなわち光音響リモートセンシング(PARS)顕微鏡システム)は、励起光を励起点(例えば、絶対的回折限界点より大きい開口制限回折限界点)に集束し、且つ励起点と共焦点化された共焦点インタロゲーションビームを使用することにより、光音響信号を検出するという考えに基づく。以前の手法は、広い領域にわたってmJ~Jのパルスエネルギーを送達する強力なレーザによる広い励起ビームを使用するが、本明細書において説明されるPARS顕微鏡使用検査法技術は、励起点(例えば、回折限界点の近く)に集束されるnJジュール又はピコジュールスケールパルスエネルギーを使用する。より大きいパルスエネルギーが励起点のサイズに依存して送達され得ることに留意されたい。励起点サイズ(すなわち励起点の径)は、特に制限されない。いくつかの例では、励起点サイズは、30μm未満、20μm未満、10μm未満又は1μm未満であり得る。より大きいパルスエネルギーは、励起が回折限界より著しく大きい事例でも適切であり得る。組織内に集束する際、表面流束量(surface fluence)は、レーザ露光のための現在のANSI制限下に維持され得るが、組織の下の弾道的集束光(ballistically-focused light)は、ANSI制限を瞬間的に(transiently)超える流束量を生成し得る(他の顕微鏡使用検査方法においてそうであるように)。PARSでは、これは、非常に大きい局所的流束量約J/cm2がマイクロメートルスケール点以内に生成され、且つ大きい初期音圧を生成することを意味する。例えば、532nm励起波長では、500mJ/cm2の局所流束量を有する毛細血管のイメージングは、100MPa程度の初期圧を局所的に生じるであろう。PARS手法では、大きい光学的集束光音響信号が光音響源の可能な限り近くで検出され、これは、インタロゲーションビームと励起点とを共焦点化させることにより光学的に行われる。
【0028】
干渉法PARSシステムのいくつかの例(例えば、コヒーレンスゲート制御光音響リモートセンシング(CG-PARS:coherence gated photoacoustic remote sensing)システム)は、試料の光学的深さ走査を行い得る。CG-PARS及び他のPARSシステムは、2D及び3D光学分解能(OR:optical resolution)PARSイメージングの焦点深度を改善するための多焦点設計を利用するために最適化され得る。コリメートレンズ及び対物レンズ対における色収差は、各波長が若干異なる深さ位置に集束されるように光をファイバから対象物内に再集束するために利用され得る。これらの波長を同時に使用することは、PARS像の被写界深度及び信号対雑音比(SNR)を改善するために利用され得る。PARSイメージング中、波長チューニングによる深さ走査が行われ得る。
【0029】
PARSシステムの他の例は、光学的深さ走査を行わない場合がある。深さ走査がNI-PARSのいくつかの実施形態と共に行われないため、NI-PARSは、高パルス反復レーザ及び高速走査ミラーを使用することにより、ほぼリアルタイムで行われ得る。しかし、ほとんどの以前の非接触光音響検出方法は、リアルタイムイメージング能力を示さず、及び光学分解能は、実証されなかった。本開示の実施形態は、高いマイクロスケール初期圧を生成するためにパルス励起レーザを表面組織内に光学的に集束する。次に、これらの大きい光学的集束光音響信号は、光音響源の可能な限り近くで収集される。これは、励起点と共焦点化され、共走査される共焦点インタロゲーションビームを使用することにより、光音響信号を検出することにより行われる。局所初期圧は、光学的集束条件及び熱閉じ込め条件が適用されると非常に大きくなる。これらの大きい初期圧は、NI-PARSにより反射光の変化として測定される著しい屈折率不整合領域を引き起こし得る。
【0030】
さらに、PARSは、単独励起ビーム及び/又は単独検出/インタロゲーションビームの応用に限定されない。例えば、PARSは、複数の励起ビームを一点(例えば、回折限界点近くの開口制限回折限界点)及び/又は複数のインタロゲーションビームを励起点に集束し得る。上記で説明したように、励起点のサイズは、特に制限されず、且つ30μm未満、20μm未満、10μm未満又は1μm未満であり得る。PARSは、戻り光音響信号を検出するように構成された複数の検出器をさらに含み得る。このようなシステムは、柔軟性及び順次試料インタロゲーションを含む追加の利点及び恩恵を提供し得る。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態は、圧力誘起の屈折率変調だけでなく、リアルタイム非接触検出にも基づく超音波/光音響イメージング検出機構に関連する。この手法は、非接触システムを使用することにより、光学分解能により表面下吸収を調べることを企図する。表面下深さの範囲は、特に制限されないが、いくつかの例では約50nm~8mmの範囲であり得る。したがって、表面下吸収深さは、いくつかの例では、(例えば、皮膚試料又は組織学スライドガラスにおいて)極めて小さい場合がある。このような事例では、励起点のある部分(例えば、1/2)は、試料の内側にあり得る一方、別の部分(例えば、残りの1/2)は、試料の外側にあり得る。
【0032】
提案システムの高感度及び高分解能は、他の生体内光学分解能光音響顕微鏡システムに相当する性能を提供する(但し、多くの臨床応用及び前臨床応用に好適な非接触反射モードにおいて)。
【0033】
光音響リモートセンシング顕微鏡システム(PARS)の様々な実施形態が
図1A~
図4を通して描写される。描写されるシステムに対する変形形態が当業者に明らかになる。
PARS 10aの実施形態のブロック図である
図1Aを参照する。多波長ファイバ励起レーザ12は、光音響信号を生成するために多焦点形式で使用される。励起レーザ12は、可視、紫外線又は近赤外スペクトルにおいて動作し得るが、特定の波長が特定の応用の要件に従って選択され得る。励起ビーム17は、多波長ユニット40を通過し、励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16の両方は、試料18上のその焦点を調整するためにレンズ系42を通過する。その経路が互いに正反対である励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16は、ビーム合成器(beam combiner)30を使用することにより合成されることになる。音響シグネチャは、検出レーザ14からの試料18上の励起点と共焦点化又は共アライメントされる短コヒーレンス長探査ビーム又は長コヒーレンス長探査ビーム16のいずれかを使用することにより調べられる。インタロゲーション/探査ビーム16は、反射光20を試料18からフォトダイオード46に誘導するために偏光ビームスプリッタ44及び1/4波長板56を通過する。しかし、PARS 10aは、偏光ビームスプリッタ44及び1/4波長板56を含むことに限定されない。前述の部品は、非相反素子であるファイバベース等価部品(例えば、サーキュレータ、カプラー、WDM及び/又は二重クラッドファイバ)で置換され得る。このような素子は、第1の経路から光を受信し得るが、次に前記光を第2の経路に方向転換し得る。励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16の合成ビーム21は、走査ユニット19により走査されることになる。走査された合成ビーム21は、対物レンズ58を通過し、試料18上に集束することになる。反射ビーム20は、同じ経路に沿って戻り、検出ユニット22により解析される。ユニット22は、増幅器48、高速データ収集カード50及びコンピュータ52を含む。
【0034】
図1Bは、PARS 10bの別の実施形態を示し、ここで、走査ユニット19(
図1Aに示す)は、固定された合成ビーム21に対して試料18を走査(移動)するために走査ユニット11により置換される。いくつかの他の実施形態では、PARSシステムは、走査ユニット11及び走査ユニット19の両方を含み得、これにより合成ビーム21の両端に走査ユニットを有する。
【0035】
図1Cは、PARS 10cの実施形態の別のブロック図である。PARS 10cは、3つの励起ビーム17a~17cを提供するように構成された3つの励起レーザ12a~12c、3つのインタロゲーションビーム16a~16cを提供するように構成された3つの検出レーザ14a~14c、及び反射ビーム20a~20cを受信し、解析するための3つの検出ユニット22a~22cを含む。しかし、励起レーザ、検出レーザ及び検出器の数は、特に制限されず、且つ任意(例えば、2、4、5つ以上など)の好適な数のレーザ及びその構成が使用され得ることに留意されたい。PARS 10aと同様に、励起ビーム17a~17c及びインタロゲーションビーム16a~16cは、ビーム合成器30を介して合成され、且つこの合成されたビーム21を、対物レンズ58を通して試料18上に集束する。反射ビーム20a~20cは、合成ビーム21の反対方向に反射し、且つ検出ユニット22a~22cにより受信される。ビーム合成器30は、PARS 10c内の追加機能を提供し得る(インタロゲーションビーム16a~16cの偏光ビームスプリッタとして、且つ反射ビーム20a~20cを検出ユニット22a~22cの方向に方向転換するためのガイドとしての役割を果たすことを含む)。検出ユニット22a~22cは、それぞれ増幅器(図示されず)、高速データ収集カード(図示されず)及びコンピュータ(図示されず)(
図1Aに関して上に説明された増幅器48、高速データ収集カード50、コンピュータ52など)を含み得る。
【0036】
複数の励起ビーム、及び/又はインタロゲーションビーム、及び/又は検出器を含むPARS 10cは、様々な目的のために様々な特性(例えば、波長)のビームを適用するという選択肢をユーザに提供し得る。例えば、生体組織の深部をイメージングするために、短波赤外線波長など、深く侵入する(長い輸送平均自由行程)光波長を使用することが望ましい場合がある。深く侵入する波長の例は、深いイメージングのためのPARSにおいて通常使用される1310nmである。代替的に、表面標的をイメージングする際、630nmなどのより短い可視波長を使用することに対して幾何学的恩恵(より小さい焦点サイズの観点における)及び感度恩恵(増加される散乱の観点における)があり得る。このような幾何学的恩恵と感度恩恵との組み合わせは、イメージングされた試料からの戻り光の量の数桁の大きさ差を生じ得る。例えば、同じ集束光学系に関して500nm光の焦点面積は、1500nm光のものよりほぼ9倍小さくなる。同様に、生体組織に関して、例えば、500nmにおける散乱は、1500nmにおけるものより3~4倍強くなり得る。したがって、500nmの波長を使用することからのこのような恩恵は、1500nmの波長とは対照的に、いくつかの表面深さにおいて30~40倍の検知感度改善を最終的に生じ得る。励起波長は、前述の値の例に特に制限されず、且つ意図される目的に好適な任意の波長であり得ることに留意されたい。深い試料侵入及び改善された表面性能の2つの特性は、同時使用に望ましいか、又はイメージングセッションの所望の結果に依存して切り替え可能な選択肢として望ましい場合もある。例えば、両方のビームは、単一容積走査により表面近傍毛細血管に続いてより深い血管をイメージングする場合に同時に使用され得る。表面構造は、より短い検出波長の改善された分解能及び感度から恩恵を受け得る一方、より深い構造は、赤外線波長を使用することのみにより復元され得る。しかし、2つのビームの同時使用は、あまりに大きい露出を光学的放射に提供し得、したがってより短い検出波長が試料内の適切な深さにおけるより長い波長検出と交換される切り替え手法が採用され得る。したがって、複数の励起ビーム、及び/又はインタロゲーションビーム、及び/又は検出器を有するPARSは、ユーザが同じシステムにおいて2回以上の検出を実施することを可能にし得、これによりユーザが試料上の各検出の有効性を検査することを可能にする。いくつかの試料は、特定の波長における光散乱及び減衰の性質に起因して他を上回る所与の検出波長の特に改善されたコントラストを提供し得る。複数の検出経路は、二色スプリッタ若しくはビームスプリッタなどの自由空間光ビーム合成器を使用するか、又はカプラー若しくは波長分割マルチプレクサなどのファイバベースデバイスを使用することによっても合成され得る。
【0037】
複数の励起波長はまた、単一試料から多重化/機能情報を取得しながら(例えば、血中酸素濃度の可視化のための酸化及び脱酸化ヘモグロビンをイメージングしながら又は組織試料から組織情報を抽出するためにDNA及びシトクロム吸収ピークを標的としながら)順次使用され得る。運動アーチファクトの可能性を最小化し得、且つ映像速度リアルタイム多重化/機能イメージングを可能にし得る迅速且つ一貫したイメージングを容易にするために、複数の励起波長は、複数の励起ビーム源が同じPARSにおいて同時にセットアップされ活性状態となるように、互いに密に連続して使用され得る(例えば、MHz範囲反復率まで)。多重化/機能情報は、パルス幅の変動を使用することによっても試料から抽出され得る。これらの幅は、特に制限されず、且つ何百ナノ秒内で又はフェムト秒範囲まで熱及び応力閉じ込め条件から変動し得る。例えば、酸化ヘモグロビン及び脱酸化ヘモグロビンは、2つの532nm源を使用することにより分離され得る(一方は、ピコ秒スケールパルス幅を提供し、他方は、ナノ秒領域内で動作する(ナノ秒スケールパルス幅を提供する))。一般的に、PARS励起経路は、波長、パルス幅、反復率及びパルスエネルギーの任意の組み合わせを含み得、試料露出、イメージング感度、イメージング特異性及び発色団偏析(chromophore de-mixing)の観点で様々な恩恵を提供する。複数の励起ビーム経路は、二色スプリッタ若しくはビームスプリッタなどの自由空間光ビーム合成器を使用するか、又はカプラー若しくは波長分割マルチプレクサなどのファイバベースデバイスを使用することによっても合成され得る。
【0038】
したがって、複数の検出ビーム/インタロゲーションビームと励起ビームとの組み合わせを含むPARSは、高度にチューニング可能なイメージングパラメータを提供し得る。上記で説明したように、このようなシステムは、近赤外線血液吸収を標的とするために散乱組織内深くでイメージングするように構成され得る。同システムは、2μm未満である光学分解能に対して3mmに近い侵入深さ(この深さを超えると、分解能は低下される)を提供する短波赤外線検出を利用するように構成され得る。これは、同じPARS内で順次又は同時に行われ得る。同システムは、DNA吸収を標的とするために200~280nmの波長を有するUVC励起も使用し得、且つ数百ナノメートル程度の分解能を有する表面イメージング性能を提供するために315~400nmの波長を有するUVA検出を使用し得る。UVBビームは、励起/検出のためにも利用され得る。
【0039】
図2Aは、それぞれ励起ビーム16及びインタロゲーションビーム17を集束させ、且つ反射ビーム20を受信するように別々に構成される互いに隣接した個々の光学系を含むPARS 10dの実施形態を示す。PARS 10dでは、励起ビーム16及びインタロゲーションビーム17は、ビーム合成器を介して合成されず、且つ別個の集束光学系(すなわち58a及び58b)を介して試料18上に共集束する。集束光学系58a及び58bは、光のビームを集束するために使用される任意のデバイス(対物レンズ又は湾曲ミラーなど)を含み得る。励起ビーム16の中心軸及びインタロゲーションビーム17の中心軸は、互いに対して角度を付けられ、オフセットされるが、この角度は、特に制限されないことに留意されたい。反射ビーム20は、インタロゲーションビーム16の軸に対して角度を付けられオフセットされた異なる経路に沿って戻り、且つ集束光学系58c(反射ビーム20を検出ユニット22に誘導する)に向かって反射する。
【0040】
PARS 10dと同様に、
図2B及び
図2Cは、互いに対してある角度で試料18に向けられる励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16をさらに示す。しかし、システム10dと異なり、
図2B-
図2Cは、例えば、ミラーなどの反射光学系とは対照的に屈折光学系の使用を示す。
図2Bでは、励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16の両方は、ビーム16及び17を2つの別個の角度から試料18上に共集束する単一対物レンズ58を通過する。ビーム16及び17の屈折部分は、(レンズ58を通過する前のビーム16及び17の)個々の長手方向軸から外れるが、屈折ビームは、ビーム16及び17が試料18の同じ点上に共集束することができるように前記軸に対して依然として平行である。
図2Bでは、単一対物レンズ58が存在するため、ビーム16及び17間の角度は、2つのレンズが使用され得るシステムと比較して相対的に浅い場合がある。しかし、単一対物レンズ58の使用は、試料18上へのビーム16及び17の比較的容易な共アライメントも可能にし得る。
【0041】
対照的に、
図2Cでは、励起ビーム16及びインタロゲーションビーム17は、それぞれの対物レンズ(すなわち対物レンズ58b及び対物レンズ58a)をそれぞれ通過する。さらに、ビーム16及び17は、試料18の同じ点上に共集束するためにそれぞれの長手軸に沿って中心合わせされたままである。ビーム16及び17のための別個の対物レンズ58b及び58aがそれぞれ存在するため、ビーム16及び17間の角度の範囲は、
図2Bに示す実施形態より柔軟であり、且つより大きい角度であり得る。このような構成は、高レベルの偏光も可能にし得る。しかし、
図2Cに示す実施形態は、ビーム16及び17が試料18上に共集束し得るように対物レンズ58b及び58aの共アライメントを必要とする。他のPARS実施形態は、追加の個々の光学系を含み得、且つ/又は互いに対して異なる構成又は配置のものでもあり得る。
【0042】
PARS 10dの構成及び
図2A~
図2Cに示されるビーム構成は、望ましくないランダム散乱光子の追加の空間的除去を可能にし、且つ励起レーザ12により変調された光子のみを検出し得る。PARSイメージング領域は、励起ビーム16、検出/インタロゲーションビーム17及び後方検出/反射ビーム経路20のオーバーラップにより定義されるため、これらの経路がすべて共アライメントされる場合、試料18上のインタロゲーション領域は、軸方向分布より一般的に短い半径方向分布により定義され得る。これは、このようなイメージングシステムの軸方向分解能をより大きくさせ、したがって横方向分解能を悪化させ得る。PARS 10dに示すように励起ビーム16及びインタロゲーションビーム17(
図2A~
図2Cに示すビーム)を互いに対して角度付けすることにより、オーバーラップは、ここで、2つ又は3つの半径方向分布の組み合わせ間において定義され得る。これは、ビームのうちの1つのビームの横方向分解能が他のビームにより提供される軸方向性能を向上させることを可能にする。この効果を最大化するために、方位角が均等に分散され、且つそれぞれ試料表面に対して約45度を有する3つのビームを有することが最も有利であり得る。これは、平面上の試料18と、試料18を起点として、合同方位角(congruent azimuth angles)26a(すなわち120°)のビーム経路を有する励起ビーム17、インタロゲーションビーム16及び反射されたインタロゲーションビーム20を示す
図2Cに示される。ビーム経路は、20~90°の範囲であり得る合同高度角(congruent altitude angles)26bも有する。しかし、他の実施形態では、高度角は、ビーム経路間で変化し得る。ビーム16、17及び20間の内角を低減することは、内角を低減するための無傾斜PARSの性能に単純に近づき始め、且つ角度が180度に近づくにつれて非実用的になり得る。これは、試料が概して平坦であるためである。
【0043】
図2A~
図2Cに示すように、励起ビーム16の集束経路とインタロゲーションビーム17の集束経路との間の角度付けは、入力ビームの単一集束用素子(すなわち
図2Bに示す対物レンズ58)内への角度付けによって、若しくは互いに角度付けされた複数の集束用素子(すなわち
図2Cに示す対物レンズ58及び15)を有するシステムを構築することにより、又はこれらの2つの何らかの組み合わせにより達成され得る。この結果、励起ビーム16及びインタロゲーションビーム17の軸は、互いに対して角度付けされ得る。
【0044】
図1Aの実施形態に似た励起源、検出源、励起ビームとインタロゲーションビームとを合成するビーム合成器、集束光学系及び検出器を含むPARSは、試料から収集された光/反射ビームにおける強度変調を捕捉する。これは、試料からの散乱の変化を感知することにより行われ得る。このような機能を行い得る他の非PARS又はデバイスは、合成器/スプリッタを通過して集束光学系(ビームを試料上に集束する)に達する検出源からの検出ビームを含み得る散乱顕微鏡及び反射されたインタロゲーション/検出ビーム(励起ビームなし)を受信するように構成された強度検出器を含む。
【0045】
しかしながら、反射されたインタロゲーションビームは、その偏光状態及びその位相に関する情報も含み、偏光及び位相累積(polarization and phase accumulation)を捕捉し得る従来の非PARS又はデバイスが存在する。1つのこのようなデバイスは、偏光検出器が強度検出器の代わりに使用されることを除いて、上述の散乱顕微鏡と同様の偏光ベース顕微鏡であり得る。別のこのようなデバイスは、従来の位相差顕微鏡(干渉計を通過する検出源からの検出ビームを試料上に集束する集束光学系と、干渉計を通過して戻る反射されたインタロゲーション/検出ビームを受信するように構成された位相検出器とを含み得る)であり得る。したがって、本開示のPARSは、反射ビーム20の散乱特性を変調し、且つまた試料内の見かけの偏光及び位相累積をそれぞれ変調する。このようなPARSについては、
図3A及び
図3Bを参照して以下にさらに説明される。
【0046】
図3Aは、PARS 10gの実施形態の別のブロック図を示す。PARS 10fは、励起ビーム17を提供するように構成された励起レーザ12及びインタロゲーションビーム16を提供するように構成された検出レーザ14を含む。しかし、既に説明されたように、励起レーザ及び検出レーザの数は、特に制限されず、且つ任意の好適な数のレーザ及びその構成が使用され得る。PARS 10aと同様に、励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16は、ビーム合成器30を介して合成され、且つ合成ビーム21を、対物レンズ58を通して試料18上に集束する。さらに、この実施形態では、ビーム合成器30は、インタロゲーションビーム16の偏光ビームスプリッタの機能も提供し得る。しかしながら、PARS 10fは、
図1Aに示す検出ユニット22を含まない。代わりに、反射ビーム20は、ビーム合成器30により反射され、ビーム合成器30は、反射ビーム20を偏光変調検出器23に誘導する。1/4波長板は、PARS 10gにおいて使用されないため、反射ビーム20の偏光状態は、偏光変調検出器23の方向に誘導される際に維持され得ることに留意されたい。
【0047】
より具体的には、偏光変調を捕捉するために、制御された偏光を有するインタロゲーションビーム16が、試料18に送出され、ここで、反射光20がその偏光内容に基づいて分離される。偏光が制御される手段は、特に制限されず、例えば従来の偏光制御器であり得、及びいくつかの実施形態では、ビーム16は、レーザ14から放出される際に既に偏光され得る。例えば、垂直方向に偏光された光は、検出器23内の1つの光検出器に向けられ得、水平方向に偏光された光は、検出器23内の別の光検出器に向けられ得る。直線方向、円偏光状態の掌性及び高次元の偏光分布(半径方向及び方位角的偏光状態など)など偏光の様々な態様が使用され得る。これらの状態の分離及び特徴付けは、偏光感知検出器(すなわち偏光変調検出器23、1/4波長板56、及び偏光感知スプリッタ(図示されず))により達成され得る。これは、変調値が同じ試料位置において無変調値と直接比較され得るため、偏光シフトの精密な特徴付けを可能にし得る。
【0048】
図3Bは、励起ビーム17を提供するように構成された励起レーザ12及びインタロゲーションビーム16を提供するように構成された検出レーザ14をも含むPARS 10hの実施形態を示す。PARS 10gは、干渉計24及び位相変調検出器25を含む。PARS 10gは、インタロゲーションビーム17が干渉計24を通過し、且つビーム合成器30(ここで、インタロゲーションビーム17が励起ビーム16と合成される)に誘導されるように配置され得る。試料18からの反射ビーム20は、インタロゲーションビーム17と同じ経路に沿って干渉計24まで戻り、ここで、反射ビーム20は、位相変調検出器25の方向に誘導され、且つ位相変調検出器25により受信される。
【0049】
位相シフトを捕捉するために、位相感知検出器(すなわち位相変調検出器25)が実装される。これは、試料18からの戻り光20の一成分又は全直交成分を捕捉し得るヘテロダイン及びホモダイン干渉分光法により行われ得る。これは、変調値が同じ試料位置において無変調値と直接比較され得るため、位相シフトの精密な特徴付けが可能となる。
【0050】
これらの6つの光特性(例えば、散乱、偏光、位相及びそれらの個々の変調)の任意の組み合わせが捕捉され、且つ任意の好適な機構(例えば、位相に関する位相変調検出器25)を介してPARSにおいて解析され得、ここで、コントラスト機構が固有情報及び相補的情報(complementary information)を提供し得る。例えば、PARSは、PARS効果に起因して、試料から強い二次高調波信号及び自家蛍光を生成し得る。例えば、散乱コントラストは乏しいが、試料18からの強い偏光コントラストが存在する場合がある。従来のイメージングシステムは、このような信号を見出すように構成されていないが、偏光変調検出器23を介した偏光感知検出は、改善された結果を提供し得る。反射ビーム20の偏光及び位相に含まれる追加情報を使用することにより、追加の感度が、シフト全体にわたって平均化することにより実現され得、必要とされる光学的露出がより低くなる。光吸収情報を与える相補的情報がこれらのシフト間で見出され得、無シフト値は、それ自体の光で散乱、偏光及び位相を生じ得る。所与の標的がこれらの6つのモダリティ(例えば、従来の散乱顕微鏡、従来の偏光ベース顕微鏡、従来の位相差顕微鏡、PARS顕微鏡並びに
図3A及び
図3Bに示す顕微鏡)全体にわたって固有のシグネチャを提供するため、このような豊富な情報を使用して、特異性を大幅に改善して、多重化能力の向上を可能にする。
【0051】
図4は、励起ビーム17及びインタロゲーションビーム16が別個の経路を有し、したがって合成されないPARS 10iの別の実施形態を示す。この実施形態では、インタロゲーションビーム16は、別の対物レンズ15を使用することにより試料18に集束される。他の実施形態では、PARS 10iは、
図1C及び
図2Aに示すPARS 10c、10dの両方の態様に類似し得る。PARS 10cと同様に、PARS 10iは、複数の励起レーザ、検出レーザ及び検出ユニットを有してもよく、その数は特に制限されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、両方のビームは、共に走査され得る。代替的に、1つのビームは、他のビームが走査され得る間、固定され得る。他の実施形態では、試料18は、両方のビームが固定されている間に走査され得る。試料18は、両方のビームが走査される間にも走査され得る。試料18は、1つのビームが固定され、他のビームが走査される間にも走査され得る。
【0053】
他のPARS実施形態は、同様の結果を達成するために様々な部品により設計され得ることが当業者に明白になる。例えば、他の実施形態は、サーキュレータが、光コヒーレンス断層撮影法アーキテクチャと同様にビームスプリッタを置換する全ファイバアーキテクチャを含み得る。他の代替形態は、様々なコヒーレンス長光源、平衡型光検出器の使用、インタロゲーションビーム変調、戻り信号経路への光増幅器の取り込み等を含み得る。
【0054】
共焦点PAM構成を模擬し得るPARSは、試料上の2つの集束レーザビームを利用する。
PARSは、光学的励起及び検出を利用して、システムのフットプリントを劇的に低減させることができる。嵩張った超音波変換器がないことで、このシステムは、他の光学的イメージングシステムとの一体化に好適である。多くの以前の非接触光音響イメージングシステムと異なり、PARSは、生体内イメージングが可能である。PARSは、はるかに単純なセットアップに依存し、且つ顕著な音響損失なしに、大きな初期超音波圧力を記録することを利用する。
【0055】
生体内イメージング実験中、いかなる薬剤又は超音波結合媒体も必要とされない。しかし、標的は、非接触イメージングセッション前に水又は任意の液体(オイルなど)により用意され得る。PARSは、多くの他の干渉法センサと異なり浮動テーブルを必要としない。いかなる特別なホルダー又は固定具も、イメージングセッション中に標的を保持するために必要とされない。しかし、カバースリップが標的を平坦にするために実装され得る。いくつかの事例では、標的(例えば、切除された組織)のガラス窓(標的の上に載る)が必要であり得、及びイメージングは、前記ガラス窓を介して行われ得る。これは、標的の平坦化された表面をイメージングすることに役立ち得る。
【0056】
構造に固有の他の利点は、当業者に明白になる。本明細書において説明される実施形態は、例示的であり、したがって特許請求の範囲を限定するようには意図したものではなく、本明細書全体に照らして解釈されるものである。
【0057】
PARSでは、パルスレーザが光音響信号を生成するために使用され、音響シグネチャは、励起点と共焦点化される長コヒーレンス長探査ビーム又は短コヒーレンス長探査ビームのいずれかを使用することにより調べられる。PARSは、発色団からの大きな局所初期圧を、回折、伝搬及び減衰による顕著な音響損失なしに、遠隔的に記録するために利用され得る。
【0058】
励起ビームは、レーザ又は他の光源を含む電磁放射線の任意のパルス源又は変調源であり得る。一例では、ナノ秒パルスレーザが使用され得る。励起ビームは、試料の光(又は他の電磁気)吸収を利用するのに好適な任意の波長に設定され得る。光源は、単色又は多色であり得る。
【0059】
インタロゲーションビームは、レーザ又は他の光源を含む電磁放射線の任意のパルス源、連続源又は変調源であり得る。任意の波長は、用途に依存して、インタロゲーション目的のために使用され得る。
【0060】
コリメートレンズ及び対物レンズ対における色収差は、各波長が若干異なる深さ位置に集束されるように、ファイバからの光を対象物内に再集束するために利用され得る。これらの波長を同時に使用することにより、OR-PAMによる微小血管系の構造イメージングのための被写界深度及びSNRを改善し得る。
【0061】
NI-PARSは、干渉法ではないため、NI-PARSの探査ビーム/受信ビーム/インタロゲーションビームは、いかなる基準ビーム又は基準アームも必要としない長コヒーレンス長探査ビーム又は短コヒーレンス長探査ビームであり得る。しかし、短コヒーレンス長を使用することは、システム又は試料内の反射からの干渉を排除して、不要信号を回避し、光音響初期圧のみを抽出することを保証し得る。
【0062】
光音響信号の光コヒーレンス断層撮影法(OCT)又は干渉分光法検出と異なり、NI-PARSは、音圧に起因する試料からの反射光の量の変化を検出するため、いかなる干渉分光法設計(基準ビーム及び基準ビームの基準アーム又は軸方向走査など)も必要とされない。
【0063】
様々なPARSシステム(限定しないが、PARS、NI-PARS、CG-PARS、C-PARS及びSS-PARSを含む)は、光音響システム及びOCTシステムの両方により提示される情報の完全な組を提供するためにOCTと統合され得る。
【0064】
さらに、短コヒーレンスビーム又は長コヒーレンスビームを有する様々なPARSは、光学分解能光音響顕微鏡分光法(OR-PAM)若しくは一般的光音響顕微鏡分光法(PAM)のいずれかのために使用され得るか、又は二次高調波顕微鏡若しくは三次高調波顕微鏡、蛍光顕微鏡、多光子顕微鏡、ラマン顕微鏡及び/又は他の顕微鏡と組み合わされ得る。
【0065】
一例では、励起ビーム及び受信ビームの両方は、合成されて走査され得る。このようにして、光音響励起は、光音響励起が生成された領域と同じ領域内において、且つ光音響励起が最大である場所において感知され得る。励起ビームを走査する間受信ビームを固定しておくこと(又はその逆)と、試料が静止したままである間光学系を機械的に走査すること(例えば、患者が静止したままでなければならない外科用顕微鏡などにおいて)とを含む他の構成も使用され得る。検流計、MEMSミラー及びステッパ/DCモータは、励起ビーム、探査/受信ビーム又はその両方を走査する手段として使用され得る。
【0066】
図5A~
図5Dに示す構成は、PARSイメージング及びNI-PARSイメージングを行うために使用され得る。描写された実施形態では、励起ビーム502は、より大きい曲率半径を有して描写され、受信ビーム/検出ビーム504は、より小さい曲率半径を有して描写される。
図5Aは、共焦点光音響システムの実施形態を示し、ここで、励起ビーム502及び探査受信ビーム504は、マイクロメートル又はサブミクロンスケールであり得る同じ点上に集束される。
図5Bでは、光学分解能は、励起ビーム502ではなく、むしろ受信ビーム504によって提供され得る。
図5Cは、異なる点上に集束された励起ビーム502及び受信ビーム504を示し、且つ励起ビーム502及び受信ビーム504を異なる位置に定位するために超音波飛行時間を利用する。
図5Dでは、光学分解能は、励起ビーム502によって提供され得る。好適には、励起ビーム502及び検出ビーム504のいずれか又は両方の焦点は、30μm未満、10μm未満、1μm未満又は最大で光の回折限界である。より狭い焦点は、検出される反射ビームの考え得るより高い分解能及びより良い信号対雑音比を生じ得る。本明細書で使用されるように、用語「焦点」は、ビームの焦点ゾーン又はビームスポットサイズが最も狭いサイズである点であり、焦点ゾーンの径がビームスポットサイズの径より30%大きい場所を指すように意図される。また好適には、励起ビーム502及び検出ビーム504は、同じ位置上に集束されるが、
図5Cに示すように個々の焦点間にある間隔が存在し得る。
図5Cでは、ビームは、異なる位置に集束され得るが、好適には1mm、0.5mm、100μm内に又はビームの最大焦点の範囲内に集束され得る。
図5A、
図5B及び
図5Dでは、ビームは、共焦点状態であり得るか、又は最大焦点を有するビームの焦点内でオーバーラップし得る。例えば、
図5Aでは、励起ビーム502は、検出ビーム504より大きく、検出ビーム504は、励起ビーム502の焦点内のある位置に向けられる。検出ビーム504を移動させることにより、励起ビーム502内の領域がイメージングされ得る。共焦点ビームを有することにより、両方のビームが試料をイメージングするために移動され得る。
【0067】
ビームの一方又は両方は、好適には、試料の表面の下に集束される。一般的に言えば、ビームは、試料の表面の下の最大8mm(以上)まで効果的に集束され得る。ビームは、表面の下の少なくとも50nm(又はさらにそれ未満)に集束され得るか、又はビームの焦点が少なくとも試料の表面の下のビームの焦点ゾーンの距離にあるように集束され得る。両方のビームは、好適には、表面の下に集束されるが、いくつかの実施形態では、励起ビーム又はインタロゲーションビームのいずれかが表面の下に集束され、他方が例えば、試料の表面上に集束され得ることが理解される。1つのビームのみが試料の表面の下で集束される事例では、既に説明されたビーム間の分離は、横方向(すなわち試料の面内であり、且つ試料の深さに直交する)分離になる。
【0068】
試料の表面下の励起ビームと検出ビームとの間(具体的にはその焦点面間)の関係は、
図5E~
図5Iにさらに示される。例えば、
図5Eは、励起ビーム502及び検出ビーム504を含む共焦点光音響システムを示し、ここで、励起焦点面506及び検出焦点面508は、同じ深さに集束され、これにより共アライメント状態を呈示する。これは、
図5Fに同様に示されるが、但し、
図5Fは、共アライメント焦点面506及び508がガラス窓510の下にあることを示す。したがって、この事例では、共アライメントは、窓510を通して発生する。ガラス窓510と焦点面506及び508との距離は、特に制限されない。
図5Gは、焦点面506及び508の共アライメントを再び示す。しかし、
図5Gは、焦点面506及び508が、距離514により規定された深さだけ試料の表面512下であることを示す。したがって、
図5Gは、試料の表面512の下の点上に共集束する励起ビーム502及び検出ビーム504を示す。表面512の下の焦点面506及び508の深さは、特に制限されず、且ついくつかの事例では100nm~1μmの範囲であり得る。
図5Hは、励起焦点面506が検出焦点面508の上にあるように励起ビーム502が検出ビーム504に対して集束される事例を示す。対照的に、
図5Iは、励起焦点面506が検出焦点面508の下にある場合の事例を示す。したがって、
図5H~
図5Iは、焦点面506及び508がミスアライメントされ得ることを示す。焦点面506及び508がミスアライメントされる場合の例は、PARSシステムが試料の表面近くでイメージングするためにアライメントされ、及び前記PARSシステムのユーザが、いかなる調整もなしに、試料内のより深くに集束することを試みる場合であり得る。これは、検出焦点面と励起焦点面とを互いに離れさせる色収差を生じる。焦点面506及び508は、例えば、10μm、20μm、30μm等だけミスアライメントされ得る。しかし、焦点面間の距離は、特に制限されず、したがって任意の好適な距離であり得る。さらに、最適感度のために焦点面506及び508間の距離を最小化することが好ましい場合がある。
【0069】
励起ビーム及び検出ビーム/受信ビームは、ダイクロイックミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光ビームスプリッタなどを使用することにより合成され得る。これらは、異なる光路を使用することによっても集束され得る。
【0070】
反射光は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電管、光電子増倍管、CMOSカメラ、CCDカメラ(EM-CCD、強化型CCD、裏面入射及び冷却型CCDを含む)、分光計などにより収集され得る。検出光は、RF増幅器、ロックイン増幅器、トランスインピーダンス増幅器又は他の増幅器構成により増幅され得る。また、受信ビームからの励起ビームを検出前にフィルタリングするために異なる方法が使用され得る。PARSは、検出光を増幅するために光増幅器を使用し得る。
【0071】
PARSは、テーブルトップ、ハンドヘルド、外科用顕微鏡及び内視鏡検査などの多くの形状因子で使用され得る。PARS励起ユニット1102、PARS検出ユニット1104、画像誘導ファイバなどのファイバ光学系1106及び個々のビームを試料18上に集束するレンズ1108の様々な配置を有する内視鏡検査PARSの例は、
図6A、
図6B及び
図6Cに示される。励起ユニット1102及び検出ユニット1104が分離される場合、単一モードファイバなどの別個のファイバ1110が設けられ得る。
【0072】
テーブルトップPARS及びハンドヘルドPARSは、当技術分野において既知の原理に基づいて構築され得る。提案されるPARSは、システムのフットプリントを劇的に低減することに役立つ光学的励起及び検出を利用する。以前のシステムのフットプリントは、体表面を除いたすべての場所でシステムを使用するには大き過ぎる。内視鏡用途に関して、超音波検出器のフットプリントは、イメージング用カテーテルを、小さい穴又は血管を通してナビゲートするのに十分に小さく且つ柔軟にするために、最小化されなければならない。圧電受信器は、受信器の感度とサイズとのトレードオフがあるため、内視鏡用途の理想的候補ではない。他方で、多くの侵襲性用途のために、殺菌可能又は使い捨て可能なカテーテル及び非接触手法が必要である。本システムは、励起ビーム及びPARSビームの両方が単一モードファイバ又は画像誘導ファイバ内に結合され得るため、光ファイバのサイズの潜在的フットプリントを有するPARS内視鏡検査システムとしても使用され得る。
【0073】
画像誘導ファイバ(200μm~2mmの範囲の径を有する単一光ファイバ内に100,000個以上の個々のマイクロメートルサイズのストランドを有する小型ファイバ束)が両方の集束光点を送信するために使用され得る。励起ビームは、前述の走査法の1つを使用することによりファイバの先端部又は基端部のいずれかにおいて走査され得る。しかし、受信ビームは、走査又は固定され得る。走査点は、画像誘導ファイバ1106を介して出力端部に送信される。したがって、走査点は、試料に直接接触するように使用され得るか、又は付属の小型GRINレンズ1108を使用することにより再集束され得る。一例では、C走査光音響画像は、光音響信号を収集するために外部超音波変換器を使用することにより画像誘導ファイバから取得された。エッジ広がり及びガウス関数を使用することにより、約7μmの分解能が画像誘導ファイバ1106を使用することにより取得された。より高い分解能も、使用されるセットアップ及び機器に対する適切な改善により取得され得ると考えられる。これは、内視鏡PARSデバイスの1つの可能な実施形態であり得る。
【0074】
内視鏡の実施形態は、例えば、励起波長及び検出波長が532nm~637nmであるなど、互いに十分に近ければ、単一モードファイバを使用することによっても構築され得る。これは、ファイバが例えばわずか250マイクロメートルの径である場合、非常にコンパクトなプローブにおいて、両方の波長を単一モードで伝播することが可能となるであろう。
【0075】
内視鏡PARSデバイスの実施形態は、二重クラッドファイバを使用することによっても組み立てられ得る。これらのファイバは、マルチモードコアにより囲まれた単一モードコアを特徴とする。これは、少なくとも1つの波長の単一モード伝搬を維持する一方、532nm~1310nmなどの非常に相違する波長を単一ファイバに結合させることを可能にする。同様に、二重クラッドファイバのマルチモード外層コアは、収集された光を光検出部品の方向に向ける手段として、増加された戻り光収集のために使用され得る。
【0076】
様々なPARSの実施形態は、蛍光顕微鏡法、二光子及び共焦点蛍光顕微鏡法、コヒーレント・アンチ・ラマン・ストローク(Coherent-Anti-Raman-Stokes)顕微鏡使用検査法、ラマン顕微鏡使用検査法、光コヒーレンス断層撮影法、他の光音響及び超音波システムなどの他のイメージング様式と組み合わされ得る。これは、微小循環系のイメージング、血中酸素パラメータのイメージング、及び他の分子固有標的のイメージングを同時に行うことが可能となり、蛍光ベース顕微鏡使用検査法のみにより実施するのが困難である潜在的に重要なタスクを許容し得る。この例が
図7に示され、ここで、PARS 10が別の光学的イメージングシステム1202と統合化され、PARS 10及び他の光学的イメージングシステム1202は、両方とも合成器1204により試料18に接続される。
【0077】
共通路干渉計(特別設計干渉計対物レンズを使用する)、マイケルソン干渉計、フィゾー干渉計、ラムジー干渉計、サニャック干渉計、ファブリ・ペロー干渉計及びマッハ・ツェンダー干渉計などの干渉法設計も本開示の様々な実施形態と統合され得る。
【0078】
多波長可視レーザ源も機能イメージング又は構造イメージングのための光音響信号を生成するために実装され得る。
偏光解析器は、検出光を個々の偏光状態に分解するために使用され得る。各偏光状態で検出された光は、超音波組織相互作用に関する情報を提供し得る。
【0079】
応用
本明細書において説明されたシステムは、従来技術において説明された目的などのために様々な方法で使用され得、且つまた上に述べた態様を利用するために他の方法で使用され得ることが理解される。応用の非網羅的リストが以下に説明される。
【0080】
本システムは、様々な前臨床腫瘍モデルのための血管形成をイメージングするために使用され得る。
本システムは、(1)組織試料、(2)細胞核、(3)タンパク質、(4)シトクロム、(5)DNA、(6)RNA、及び(7)脂質をイメージングするために使用され得る。
【0081】
本システムは、微小及び巨大循環及び色素細胞の臨床イメージングのためにも使用され得、これは、(1)眼(蛍光眼底血管撮影法の潜在的強化又は置換)、(2)皮膚病変(黒色腫、基底細胞癌、血管腫、乾癬、湿疹、皮膚炎)のイメージング、モース手術のイメージング、腫瘍境界切除を検証するためのイメージング、(3)周辺血管疾患、(4)糖尿病及び圧迫潰瘍、(5)焼灼のイメージング、(6)形成外科及び顕微鏡手術、(7)循環腫瘍細胞(特に黒色腫細胞)のイメージング、(8)リンパ節血管形成のイメージング、(9)光線力学的療法(血管除去機構によるものを含む)に対する反応のイメージング、(10)化学療法(抗血管薬を含む)に対する反応のイメージング、(11)放射線治療に対する反応のイメージングの応用に有用であり得る。
【0082】
本システムは、多波長光音響励起及びPARS検出を使用した酸素飽和度の推定、および(1)パルス酸素測定法が使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、および脳静脈酸素飽和度及び中心静脈酸素飽和度の推定を含む応用に有用であり得る。これは、特に小さい子供及び幼児において危険であり得るカテーテル治療を潜在的に置換する可能性がある。
【0083】
酸素流量及び酸素消費量は、酸素飽和度を推定するためにPARSイメージングを使用し、且つ組織の領域に対して流入及び流出する血管内の血流を推定する補助的方法によって推定され得る。
【0084】
本システムは、いくつかの消化器系への応用(バレット食道癌及び結腸直腸癌内の血管床及び侵入の深さをイメージングすることなど)も有し得る。侵入の深さは、予後診断及び代謝能にとって重要である。消化器系への応用は、臨床内視鏡と組み合わされるか、又は臨床内視鏡の上に乗せられ得、小型PARSは、スタンドアロン内視鏡として設計され得るか、又は臨床内視鏡の付属チャネル内に嵌め込まれるように設計することができる。
【0085】
本システムは、脳外科手術中の機能イメージング、内出血の評価及び焼灼の検証のための使用、臓器及び臓器移植の灌流の十分性のイメージング、島移植の周囲の血管形成のイメージング、皮膚移植のイメージング、脈管化及び免疫拒絶を評価するための組織足場及び生体材料のイメージング、顕微鏡手術を支援するためのイメージング、極めて重要な血管及び神経を切断することを避けるための案内などいくつかの手術応用を有し得る。
【0086】
応用の他の例は、臨床又は前臨床応用における造影剤のPARSイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節内の腫瘍の非侵襲性又は最小侵襲性識別、前臨床又は臨床分子イメージング応用のためのチロシナーゼ、色素タンパク質、蛍光タンパク質などの遺伝的符号化レポータのイメージング、分子イメージングのための能動的又は受動的標的光学的吸収ナノ粒子のイメージング、及び凝血のイメージングおよび潜在的な凝血の病期診断を含み得る。
【0087】
本特許明細書では、用語「備える」は、用語に続く事項が含まれるが、特に言及されない事項が除外されるものではないことを意味するためにその非限定的な意味で使用される。不定冠詞「1つの(a)」による要素への参照は、要素の1つ及び1つのみが存在することを文脈が明確に必要としない限り、その要素の2つ以上が存在する可能性を排除しない。
【0088】
以下の特許請求の範囲は、上記の例及び図面において述べられた好ましい実施形態により限定されるべきでなく、全体として本明細書に準拠する最も広い解釈を与えられるべきである。
【国際調査報告】