(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】レーザースキャンシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230302BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20230302BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20230302BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230302BHJP
G02B 26/06 20060101ALI20230302BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G02B21/06
B23K26/082
G02B26/12
G02B26/10 104A
G02B26/06
G02B26/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539353
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 AU2020051418
(87)【国際公開番号】W WO2021127733
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522254228
【氏名又は名称】ジ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェイ ミン
(72)【発明者】
【氏名】リム イェン ジン
【テーマコード(参考)】
2H045
2H052
2H141
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AA01
2H045AB25
2H045BA13
2H052AA07
2H052AC15
2H052AC34
2H052AF25
2H141MA11
2H141MA27
2H141MB24
2H141MB51
2H141MC01
2H141MF11
2H141MG10
2H141MZ12
4E168CB04
4E168EA15
4E168EA16
(57)【要約】
視野上でレーザーをスキャンする方法(および方法に対応する装置)であって、以下を含む方法。視野の最初のサブエリア上でレーザービームをラスタライズする。レーザービームを視野の第2のサブエリアに偏向させる。視野の第2のサブエリアにわたってレーザービームをラスタライズする。そして、レーザービームによって生成された画像情報をキャプチャして、視野の各サブエリアについて、ラスタライズされたレーザービームが複数の画像セグメントを画定するようにする。各セグメントについて、画像補正を計算し、セグメントに対して計算された画像補正に従ってレーザーに補正を適用する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野上でレーザーをスキャンする方法であって、
レーザービームを生成するためのレーザーを提供し、
前記視野の最初のサブエリア上で前記レーザービームをラスタライズし、
前記レーザービームを前記視野の第2のサブエリアに偏向させ、
前記視野の前記第2のサブエリアで前記レーザービームをラスタライズし、
前記視野の各サブエリアについて、前記ラスタライズされたレーザービームが複数の画像セグメントを画定するように、前記レーザービームによって生成された画像情報をキャプチャし、
各前記セグメントについて、画像補正を計算し、前記セグメントに対して計算された前記画像補正に従って前記レーザーに補正を適用する
ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
各前記補正および/または各前記セグメントにタイムスタンプを適用すること
をさらに含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
対応する前記セグメントが前記レーザーによってスキャンされているときに前記補正を適用するステップ
をさらに含む方法。
【請求項4】
前記視野が標的と関連する、請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
対物レンズを使用して、前記レーザービームを前記標的に集束させること
をさらに含む方法。
【請求項5】
前記画像補正を計算することには、波面マスクを導出することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
各前記補正は、対応する波面マスクを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記画像補正の計算には、各前記セグメントごとに、画像ベースの波面検知ループの繰り返しを適用する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記補正の適用は、変形可能なミラーを調整することを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記レーザービームのラスタライズには、前記レーザービームを、x軸に対応する第1の方向、およびy軸に対応する第2の方向に移動させることを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記x軸方向へのレーザービームの移動が、前記y軸方向へのレーザービームの移動よりも速い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザービームを視野の前記第2のサブエリアに偏向させることは、前記レーザービームを前記y軸の方向に偏向させることを含む、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
変形可能なミラーが、前記y軸における前記レーザービームの動きと同期している、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記セグメントが実質的に前記視野をカバーするように、各前記セグメントが前記x軸および前記y軸の唯一の部分に関連付けられている、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
各前記サブエリアが、前記視野の同じエリアをカバーする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のサブエリアは、前記第2のサブエリアとは、前記視野の異なる領域をカバーする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
視野上でレーザーをスキャンするためのシステムであって、
レーザービームを生成するためのレーザーと、
視野の第1のサブエリアにわたって前記レーザービームをラスタライズするための第1の可動デフレクターと、
前記第1の可動デフレクターが前記視野の第2のサブエリアをラスタライズするように、前記レーザービームを偏向させるための第2の可動デフレクターと、
ターゲットと相互作用する前記レーザービームによって生成された画像情報をデジタル化するための画像デジタイザと、
前記画像デジタイザによって生成された画像情報を、前記視野の各前記サブエリアについて、ラスタライズされた前記レーザービームが複数の画像セグメントを画定するようにキャプチャするためのコンピュータプロセッサであって、各前記セグメントの画像補正を計算するコンピュータプロセッサと、
さらに、計算された前記画像補正に従って、前記レーザービームに補正を適用するための光学補正要素と
を含むシステム。
【請求項17】
3つの可動ミラーを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記視野の前記サブエリアにわたって前記レーザービームをラスタライズするための前記第1の可動デフレクターが、回転する多角形ミラーおよび第1のガルバニックミラーを含み、
前記視野の前記第2のサブエリアをラスタライズするために前記レーザービームを偏向させるための前記第2の可動デフレクターは、第2のガルバニックミラーを含む
システム。
【請求項19】
前記回転する多角形ミラーが前記レーザービームをx軸に移動させ、前記第1のガルバニックミラーが前記レーザービームをy軸に移動させる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2のガルバニックミラーの動きは、前記レーザービームを前記y軸の方向に偏向させ、それによって、前記レーザービームを前記視野の第2のサブエリアに偏向させる、請求項18または請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記プロセッサが各前記セグメントの前記画像補正を計算する、請求項16から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサが各前記セグメントおよび各前記補正にタイムスタンプを適用する、請求項16から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記レーザービームを前記ターゲットに集束させるための対物レンズをさらに備える、請求項16から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記光学補正要素が変形可能ミラーである、請求項16から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記変形可能ミラーが、前記x軸または前記y軸のうちの1つにおける前記レーザービームの動きと同期している、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
各前記サブエリアが、前記視野の同じエリアをカバーする、請求項16から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1のサブエリアは、前記第2のサブエリアとは、前記視野の異なる領域をカバーする、請求項16から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
視野上でレーザービームをスキャンする方法であって、
前記視野の複数のサブエリア内で前記レーザービームを順次ラスタースキャンするステップであって、前記サブエリアは前記視野の第1の方向に配置されているステップと、
各前記サブエリアについて複数の画像セグメントを定義するステップであって、特定の前記サブエリアの前記画像セグメントは前記第1の方向に垂直な、視野の第2の方向に配置されているステップと、
各前記画像セグメントの画像情報をキャプチャするステップであって、前記画像情報は前記レーザービームによる視野の照明と関連づけられているステップと、
各前記セグメントについて画像補正を計算するステップであって、前記画像補正は、前記レーザービームが、対応する前記セグメント上で次にラスタースキャンされる際に前記レーザービームを補正できるように構成されているステップと
を含む方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
後に前記レーザービームをラスタースキャンするとき、前記セグメントごとに、前記光学補正要素を使用して計算された前記補正を前記レーザービームに適用するステップ
をさらに含む方法。
【請求項31】
視野上でレーザーをスキャンするためのシステムであって、
レーザービームを生成するためのレーザーと、
前記レーザービームをラスタースキャンするための第1の可動デフレクターと、
前記レーザービームを偏向させて、視野の複数のサブエリアであって、視野の第1の方向に配置されているサブエリアを順次ラスタースキャンするための第2の可動デフレクターと、
各画像セグメントの画像情報であって、前記レーザービームによる前記視野の照明と関連づけられている前記画像情報をキャプチャするように構成された画像キャプチャ手段と、
プロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、
特定の前記サブエリアの画像セグメントが、前記第1の方向に垂直な、前記視野の前記第2の方向に配置されている各前記サブエリアについて、複数の前記画像セグメントを画定し、
各前記画像セグメントの前記画像情報であって、前記レーザービームによる前記視野の照明と関連付けられている前記画像情報をキャプチャし、
各前記セグメントについて、前記レーザービームが対応する前記セグメント上で次にラスタースキャンされるときに、前記レーザービームの補正を可能にするように構成されている画像補正を計算する
ように構成されているシステム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムであって、
前記レーザービームを補正するための光学補正要素をさらに備え、
前記プロセッサは、後に前記レーザービームをラスタースキャンするとき、各前記セグメントについて計算された前記補正を、前記レーザービームに適用するなど、前記光学補正要素を制御するように構成されている
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、顕微鏡、レーザーリソグラフィー、レーザー書き込み、レーザー彫刻、および対応するレーザースキャン方法などの光学システムに使用するための、レーザースキャンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光、その他の電磁放射が操作されるいずれのシステムにおいても、システムの能力を制限する多数の要因が存在する。例えば、光学系において、最も重要なものの一つは、試料中の異なる位置における屈折率の変化である場合がある。他の例としては、光学トレイン内の光歪み(レーザースキャンユニットや像面湾曲)が挙げられる。これらの変化により、空間および/または時間の経過とともにシステムから最良の結果を得ることが困難になることがある。
【0003】
「補償光学」は、システムに影響を与える光学特性の小さな変化を補正するため、1つまたは複数のアクティブな光学コンポーネントを使用することを示すためによく使用される用語である。一般に、これには、補正する光学収差の範囲を決定し、補正を計算し、そしてその補正を実施することが含まれる。
【0004】
必要な補正を決定するためのさまざまな方法がある。一例は波面検出器に拠るものだが、これは、焦点が合っていない光から生じる不正確性の影響を受けやすい。波面センサーを使用する場合、2Dアレイ上の各検出器間のダークノイズ、バックグラウンドノイズ、およびクロストークのレベルが、上記システムのパフォーマンスを制限する可能性がある。
【0005】
多くの既存の補正アプローチは、サンプルの歪みにオンザフライで適応することができない。スキャンを一時停止するか、固定のスキャンフィールドに制限するかしないと、空間的に変化する収差をオンザフライで達成することはできない。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、視野にわたってレーザービームをスキャンする方法を提供し、この方法は、以下を含む。
レーザービームを生成するためのレーザーを提供し、
視野の最初のサブエリア上でレーザービームをラスタライズし、
レーザービームを視野の第2のサブエリアに偏向させ、
視野の2番目のサブエリアでレーザービームをラスタライズし、
視野の各サブエリアについて、ラスタライズされたレーザービームが複数の画像セグメントを画定するように、レーザービームによって生成された画像情報をキャプチャし、
各セグメントについて、画像補正を計算し、セグメントに対して計算された画像補正に従ってレーザーに補正を適用する。
【0007】
補正は、セグメント毎にあってもよい。
【0008】
各セグメントおよび各補正は、時刻記録してもよい。時刻記録は、セグメントがスキャンされる相対時間を記録することを含み得る。対応セグメントがラスタライズされるとき、レーザーへの補正を対応セグメントに適用できるように、相対時間はセグメントのシーケンスを確立するであろう。
【0009】
この方法は、対応セグメントがレーザーによってスキャンされているときに補正を適用するステップをさらに含み得る。
【0010】
視野はターゲットと関係していてもよい。この方法は、ラスタライズミラーなどの1つまたは複数の光学要素に対してターゲットを移動させることを含んでもよいし、あるいは/加えて、この方法は、ターゲットに対して光学要素を移動させることを含んでもよい。光学素子は、対物レンズを含み得る。視野は、光学要素に相対するターゲットの所与の位置に画定することができる。したがって、実施形態では、セグメントがスキャンされている間、ターゲットも光学要素も動かされない。
【0011】
画像セグメントと補正の間の時間相関は、補正への時分割多重アプローチをもたらす可能性がある。時分割多重アプローチを使用すると、特定の目的位置の有効視野を広げることが容易になる。時分割多重アプローチを使用すると、レーザー強度の向上が促進される場合がある。視野をセグメント化することにより、空間的に異なる領域に対して、異なる補正を、異なる時間に適用できる。
【0012】
実施形態は、システムの異なる光学特性および/またはターゲットの異なる光学特性に適用される、異なる補正を提供できる。
【0013】
画像補正の計算は、波面マスクを導出することを含み得る。各補正は、対応する波面マスクを含み得る。
【0014】
画像補正の計算は、各セグメントについて、反復的な画像ベースの波面検知ループを適用することを含み得る。ループは、測定された強度に適用される山登りアルゴリズムを含み得る。測定強度は、各セグメントについて測定され得る。画像補正の計算は、各セグメントのゼルニケモードを識別し、識別されたゼルニケモードに基づいて1つまたは複数の波面マスクを導出することを含み得る。
【0015】
補正を適用することは、変形可能なミラーを調整することを含み得る。変形可能なミラーは、対応する波面マスクに従って調整できる。
【0016】
適用される唯一の光学的補正は、変形可能なミラーによって適用され得る。
【0017】
レーザービームをラスタライズすることは、レーザービームを2つの方向に動かすことを含み得る。レーザービームは、x軸に対応する第1の方向およびy軸に対応する第2の方向に移動することができる。x軸方向へのレーザービームの動きは、y軸方向へのレーザービームの動きよりも速くてよい。実施形態では、x軸およびy軸は互いに直交しており、ターゲットの平面内にある。実施形態ではターゲットの平面内のシステムの光学特性に差がないので、x軸およびy軸は任意に選択できる。
【0018】
レーザービームを視野の第2のサブエリアに偏向させることは、レーザービームをy軸の方向に偏向させることを含み得る。
【0019】
変形可能なミラーは、y軸におけるレーザービームの動きと同期させることができる。したがって、実施形態は、ビデオフレームレート(約5μsの滞留時間で毎秒約20フレーム)で収差補正を達成するほどの、高速変形可能ミラーを必要としないかもしれない。一実施形態では、変形可能ミラーは、毎秒200個の波形マスクを実装できる。変形可能なミラーは、30から50個のアクチュエータを有し得る。一実施形態では、変形可能ミラーは、約40個のアクチュエータを備えればよい。同期は、画像情報がキャプチャされた時間とともに、キャプチャされた画像情報を保存することを含み得る。次いで、セグメントのラスタライズ時に対応する時間にレーザーに補正を適用することで、セグメントに対応する画像情報に補正を適用できる。すべてのセグメントに対応する画像情報の相対的なタイミングを比較することによって、システムは、各補正をレーザーに適用するためのシーケンスおよびタイミングを決定できることを理解されたい。
【0020】
実施形態では、反復アプローチが画像補正の計算に適用される。レーザーに適用される補正は、反復のたびに更新され得る。
【0021】
各サブエリアは、視野の同じエリアをカバーしてもよいし、第1のサブエリアは、第2のサブエリアとは、視野の異なる領域をカバーしてもよい。
【0022】
さらなる実施形態は、視野にわたってレーザービームをスキャンするためのシステムを提供する。このシステムは、以下を備える。
レーザービームを生成するためのレーザーと、
視野の第1のサブエリアにわたってレーザービームをラスタライズするための第1の可動デフレクターと、
第1の可動デフレクターが視野の第2のサブエリアをラスタライズするように、レーザービームを偏向させるための第2の可動デフレクターと、
ターゲットと相互作用するレーザービームによって生成された画像情報をデジタル化するための画像デジタイザと、
画像デジタイザによって生成された画像情報を、視野の各サブエリアについて、ラスタライズされたレーザービームが複数の画像セグメントを画定するようにキャプチャするためのコンピュータプロセッサであって、各セグメントの画像補正を計算するコンピュータプロセッサと、
さらに、計算された画像補正に従ってレーザービームに補正を適用するための光学補正要素。
【0023】
システムは、サブエリアをラスタライズするための3つの可動デフレクターを備え得る。可動デフレクターは、3つのスキャニングミラーで構成される。システムは、回転するポリゴンミラーおよび2つのガルバニックミラーを含み得る。視野のサブエリアにわたってレーザービームをラスタライズするための第1の可動デフレクターは、回転する多角形ミラーと第1のガルバニックミラーを含み得る。視野の第2のサブエリアをラスタライズするためにレーザービームを偏向させるための第2の可動デフレクターは、第2のガルバニックミラーを含み得る。
【0024】
視野はターゲットと関係していてもよい。ターゲットが、ラスタライズミラーなどの1つまたは複数の光学要素に対して移動可能であってもよいし、あるいは/加えて、光学要素が、ターゲットに対して移動可能であってもよい。光学素子は、対物レンズを含み得る。視野は、光学要素に相対するターゲットの所与の位置に画定することができる。したがって、実施形態では、セグメントがスキャンされている間、ターゲットも光学要素も動かされない。
【0025】
レーザービームをラスタライズすることは、レーザービームを2つの方向に動かすことを含み得る。レーザービームは、x軸に対応する第1の方向およびy軸に対応する第2の方向に移動することができる。ラスタライズ中のx軸方向のレーザービームの動きは、y軸方向のレーザービームの動きよりも速くてよい。
【0026】
ラスタライズ中、回転するポリゴンミラーはレーザービームをx軸に移動し、最初のガルバニックミラーはレーザービームをy軸に移動し得る。x軸およびy軸は、互いに直交し得る。
【0027】
第2のガルバニックミラーの動きは、レーザービームをy軸の方向に偏向させ、それにより、レーザービームを視野の第2のサブエリアに偏向させることができる。
【0028】
プロセッサは、各セグメントの画像補正を計算できる。画像補正は、計算された波面マスクであり得る。
【0029】
プロセッサは、各セグメントおよび各補正にタイムスタンプを適用し得る。
【0030】
プロセッサは、対応セグメントがレーザーによってスキャンされているときに、補正を適用できる。
【0031】
画像セグメントと補正の間の時間相関は、補正への時分割多重アプローチをもたらす可能性がある。時分割多重アプローチを使用すると、特定の目的位置の有効視野を広げることが容易になる。視野をセグメント化することにより、空間的に異なる領域に対して、異なる補正を、異なる時間に適用できる。
【0032】
実施形態は、システムの異なる光学特性に適用される、異なる補正を提供できる。
【0033】
画像補正の計算は、波面マスクを導出することを含み得る。各補正は、対応する波面マスクを含み得る。
【0034】
実施形態は、画像化性能を改善できる。例えば、点像分布関数、空間-帯域幅積、および/または蛍光強度は、検出信号を光学的に分割することなく、既知の配置と比較して改善できる。したがって、実施形態は、波面検出器の感度または画像分割器の数によって制限されない可能性がある。
【0035】
画像補正の計算は、各セグメントについて、反復的な画像ベースの波面検知ループを適用することを含み得る。ループは、山登りアルゴリズムを含み得る。画像補正の計算は、各セグメントのゼルニケモードを識別し、識別されたゼルニケモードに基づいて1つまたは複数の波面マスクを導出することを含み得る。
【0036】
光学補正要素は、変形可能なミラーを含み得る。変形可能なミラーは、対応する波面マスクに従ってプロセッサによって調整されるよう、適応化され得る。
【0037】
光学補正要素は、変形可能なミラーで構成できる。システムは、ただ1つの変形可能なミラーまたは他の補償光学要素を含み得る。変形可能ミラーは、低解像度の変形可能ミラーであり得る。変形可能ミラーは、高速の変形可能ミラーであり得る。一実施形態では、変形可能ミラーは、毎秒200個の波形マスクを実装するよう、適応化されている。変形可能なミラーは、30から50個のアクチュエータを有し得る。一実施形態では、変形可能ミラーは、約40個のアクチュエータを備えればよい。
【0038】
実施形態は、点像分布関数の完全な、またはほぼ完全な回復を伴って、画像化視野を拡張できる。
【0039】
光学補正要素は、デジタルマイクロミラー、および/または空間光変調器を含み得る。
【0040】
変形可能なミラーは、y軸におけるレーザービームの動きと同期させてもよいし、x軸の動きと同期させてもよい。したがって、実施形態は、ビデオフレームレート(約5μsの滞留時間で毎秒約20フレーム)で収差補正を達成するほどの、高速変形可能ミラーを必要としないかもしれない。
【0041】
各サブエリアは、視野の同じエリアをカバーしてもよいし、第1のサブエリアは、第2のサブエリアとは、視野の異なる領域をカバーしてもよい。
【0042】
さらなる実施形態は、視野上でレーザービームをスキャンする方法を含み、以下のステップを含む。
視野の複数のサブエリア内でレーザービームを順次ラスタースキャンする。ここで、サブエリアは視野の第1の方向に配置されている。
各サブエリアについて複数の画像セグメントを定義する。ここで、特定のサブエリアの画像セグメントは、第1の方向に垂直な、視野の第2の方向に配置されている。
各画像セグメントの画像情報であって、レーザービームによる視野の照明と関連づけられた画像情報をキャプチャする。
各セグメントについて画像補正を計算する。ここで、画像補正は、レーザービームが対応セグメント上で次にラスタースキャンされる際に、レーザービームを補正できるように構成されている。
【0043】
別のさらなる実施形態は、視野にわたってレーザーをスキャンするためのシステムであって、以下を含む。
レーザービームを生成するためのレーザー。
レーザービームをラスタースキャンするための第1の可動デフレクター。
レーザービームを偏向させて、視野の複数のサブエリアを順次ラスタースキャンするための第2の可動デフレクター。ここで、サブエリアは視野の第1の方向に配置されている。
各画像セグメントの画像情報であって、レーザービームによる視野の照明と関連づけられている画像情報をキャプチャするように構成された画像キャプチャ手段。
以下の通り構成されたプロセッサ:
各サブエリアについて複数の画像セグメントを画定する。ここで、特定のサブエリアの画像セグメントは、第1の方向に垂直な、視野の第2の方向に配置されている。
各画像セグメントの画像情報であって、レーザービームによる視野の照明と関連付けられている画像情報をキャプチャする。
各セグメントについて、画像補正を計算する。ここで、画像補正は、レーザービームが対応セグメント上で次にラスタースキャンされるときに、レーザービームの補正を可能にするよう構成されている。
【0044】
なお、実施形態は、既存のレーザースキャンシステムに後付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下の添付の図面を参照しつつ、実施形態を説明する。
【
図1】一実施形態に係るレーザースキャン型顕微鏡の光学要素の概略図。
【
図2】
図1のレーザースキャン型顕微鏡の電子部品の概略図。
【
図3】
図1のレーザースキャン型顕微鏡の視野の画像のセグメンテーションを示す図。
【
図4】一実施形態に係るレーザーをスキャンする方法を示す図。
【
図5】一実施形態に係る画像セグメントと波面マスク間の相関関係を示す図。
【
図6】
図1のレーザースキャン型顕微鏡の視野のさらなるセグメンテーションを示す図。
【
図7】視野の複数のセグメントとサブエリア、およびそれぞれについて計算された波面マスクを示す図。
【
図8】さまざまなセグメントに対するさまざまな波面補正の効果を示す図。
【
図9A】補正なしのフォトリソグラフィープロセスの結果を示す図。
【
図9B】補正ありのフォトリソグラフィープロセスの結果を示す図。
【
図10】ビーズの未補正画像と補正画像間で、強度プロファイルと解像度の改善を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、レーザースキャン型顕微鏡10を示している。レーザースキャン型顕微鏡10は、顕微鏡の光学要素を通してサンプル12にレーザービームを向け、光電子増倍管34を用いて画像情報を収集することによって、ターゲットのサンプルステージ14上のサンプル12を画像化するために使用される。この実施形態は、光電子増倍管34を利用するが、光学情報を電子情報に変換するための他の任意のデバイスを代わりに使用できることを理解されたい。
【0047】
顕微鏡10は、図示のように、レーザービームを生成するレーザー16を含む。変形可能ミラー18は、波面マスクを適用して、顕微鏡10、使用中のサンプル12を保持するターゲット、および/または周囲環境における光学収差を補正するために使用される。実施形態は補償光学に関連し、補償光学の分野から知ることのできる実施形態の側面は、本明細書では詳細に説明されないことを理解されたい。
【0048】
レーザービームをスキャンするため、以下に説明する方法で多角形スキャンミラー22が使用される。2つのガルバニックミラー26および28もまた、ターゲット12に対するレーザービームの位置を変更するために使用される。Y軸ガルバニックミラー26は、y軸(
図1の図面の平面内で垂直方向)におけるレーザービームの方向を変更し、一方、x軸ガルバニックミラー28は、x軸(
図1の図面の平面に出入りする方向)におけるレーザービームの方向を変更する。
【0049】
開示の実施形態では、顕微鏡10は、レーザービームを集束および方向付ける3組のテレスコーピングレンズ20、24、および30を含む。フィルタ32(この実施形態では、ダイクロイック・ロングパス・フィルタ)は、放出された蛍光信号を光電子増倍管34に反射する。対物レンズ36は、顕微鏡10の光学要素を通過したレーザービームをターゲット12に集束させる。そして、画像情報は、光電子増倍管34によってキャプチャされる。
【0050】
図1に示されるレーザースキャン型顕微鏡10は、本発明の用途の一例にすぎないことを理解されたい。追加の実施形態が、他のタイプの顕微鏡、および、以下に説明するように、顕微鏡以外の分野での用途を見出すと理解されるべきである。
【0051】
図2は、顕微鏡10の電子的要素を示している。変形可能ミラー18、多角形ミラー22、およびガルバニックミラー26および28は、プロセッサ40に接続されている(例えば、パーソナルコンピューティングユニットの形態で)。プロセッサ40は、クロック44に取り付けられた中央処理装置42を含む。プロセッサ40は、情報を記憶するために使用される記憶装置46に取り付けられている。光電子増倍管34は、光電子増倍管34によってキャプチャされた画像情報がプロセッサによって操作され、記憶装置46に記憶され得るように、プロセッサ40に接続されている。
【0052】
図2に示されているプロセッサ40および他の電子的要素は、概略形式でのみ示されている。したがって、例えば、クロック44は、中央処理装置42の一部として提供され得るか、またはそれとは別に提供され得る。さらに、プロセッサ40および記憶装置46は、代わりに、ネットワークを介して顕微鏡10に接続された別個の場所に提供され得、さらなる例として、クラウドコンピューティングとして提供され得ることを理解されたい。
【0053】
クロック44は、画像情報と、ポリゴンミラー22およびガルバニックミラー26と28の相対位置、ならびに変形可能ミラー18の動作を、以下に説明する方法で同期できるように、タイミング機構を提供する。
【0054】
図3は、対物レンズ36によって提供される視野のサブエリアまたは部分50を表すスキャン画像情報を示している。図示されているように、部分50は、x軸(水平)およびy軸(垂直)を有する。回転する多角形ミラー22は、x軸でレーザービームをスキャンし、Y軸ガルバニックミラー26は、y軸でレーザービームをスキャンする。したがって、サブエリア50のスキャン画像情報は、特定の列を形成する多数のスキャン画像情報の行から成る。したがって、サブエリア50は、回転する多角形ミラー22およびY軸ガルバニックミラー26の組み合わされた作用によって、レーザーでラスタースキャンされる。
【0055】
次に、本発明の実施形態は、これらのスキャンされた行のいくつかを一緒にグループ化することによって、サブエリア50のセグメント52を定義する。
図3に示される実施形態では、5つのセグメント52A、52B、52C、52Dおよび52Eが存在する。図示のように、各セグメント52は、複数のスキャンされた行から構成される。たとえば、セグメント52Aは行1から102とし、セグメント52Eは行409から512とし、中間行は残りのセグメント52B、52C、および52Dに割り当てられる。隣接するセグメント52は、隣接する行の間で境界付けられるのが望ましい。例えば、セグメント52Aは行102で終了し、セグメント52Bは行103で開始する。そうすれば、セグメント52は、サブエリア50全体をカバーする。
【0056】
一実施形態によれば、サブエリア50を定義するためのスキャンプロセスの間、X軸ガルバニックミラー28は静止したままである。しかしながら、
図6を参照して以下で詳しく説明するように、スキャンプロセスがサブエリア50のコラムの底部に到達すると、ガルバニックミラー28は、レーザービームを隣接するサブエリア50に移動し、レーザービームは隣接するサブエリアをスキャンする。
図6には、サブエリア50A、50B、および50Cが示され、それぞれに5つのセグメント52A(A)から52F(C)がある。したがって、図では、特定のセグメント52がある行とある列に関連付けられており、括弧内の値は、50A-50Cの中の特定のサブエリアを表している。
【0057】
図4は、
図1に示されるスキャン型レーザー顕微鏡10を使用してレーザーをスキャンする方法80を示す。最初のステップであるステップ82で、サンプルはレーザービームでスキャンされ、対応する画像情報が記憶装置46に記憶される。このステップの間、回転ポリゴンミラー22とガルバニックミラー26および28は、上記のように複数の隣接するコラムをスキャンすることによって、対物レンズ36によって提供される視野をスキャンするために共同する。
【0058】
一実施形態では、視野は、レーザービームをサンプル12に集束させる対物レンズ36によって画定される。視野は、対物レンズ36の所与の位置に対して提供される。
【0059】
次のステップ、ステップ84では、セグメントが規定される。このステップでは、セグメントに割り当てるスキャンの行数が決定される。このステップには、潜在的な視野のどれだけを処理する必要があるかの決定も含まれる場合がある。セグメントサイズの規定は、回転するポリゴンミラー22とガルバニックミラー26および28の相対速度を決定する。各セグメントの画像情報がデジタル化されて保存されるとき、時計44によって提供されるタイムスタンプがそのセグメント用に保存される。これにより、各セグメントの補正を追って同期できる。
【0060】
セグメントサイズは、ターゲットおよび/またはシステムの光学的特性に応じて選択できることを理解されたい。特に、現在視野の最適な補正を見つけるため、セグメントサイズが変更されることがある。したがって、ラスター化中にセグメントサイズが変更される場合がある。
【0061】
ステップ86で、セグメントの処理が開始される。このプロセスは最初のセグメントから始まり、すべてのセグメントが処理されるまで次のセグメントを繰り返しロードする。ステップ88でメトリック(この場合は強度)が計算され、次のステップであるステップ90で、山登りアルゴリズムを使用して波面が推定される。山登り法は、ゼルニケモードの最初の13次(チップ、チルト、ピストンを含まない)を低次(Z4)から高次(Z15)にかけて移動して、各補正に最適なゼルニケマスクのセットを特定することで実現される。各ステップは、ゼルニケ振幅の0.05ステップ値とする。最適化では、測定された強度(高いほど良い)が考慮されるが、各ポイント間の勾配(各測定間の差)は考慮されない。
【0062】
ステップ値は、特定の要件を満たすために変更される場合があることを認識されたい。
【0063】
ステップ92で、ゼルニケモードの振幅が設定される。ステップ94で、現在のセグメントに対応する波面マスクが生成され、記憶装置46に記憶される。したがって、画像補正の計算には、セグメントごとに、反復的な画像ベースの波面検知ループを適用することが含まれる。
【0064】
次に、プロセスはステップ86に戻り、そこで次のセグメントが考慮され、プロセスは再びステップ88、90、92、および94を循環して、次のセグメントの波面マスクを生成する。このようにして、各セグメントの波面マスクが生成される。
【0065】
動作中、サンプルは継続的にスキャンされる。したがって、以前に波面マスクが生成されて保存されたセグメントがスキャンされているとプロセッサが判断すると、プロセッサはその波面マスクを使用して変形可能ミラーを変形し、それによる波面マスクを適用してそのセグメントの収差を補正する。
図5に示されるように、波面マスク102A、102B、102C、102D、および102Eは、セグメント52A、52B、52C、52D、および52Eに対応する。
【0066】
一実施形態では、各セグメント52について、決定された波面マスク102は、各スキャン中に連続的に更新される。例えば、セグメント52は、計算された波面マスク102を使用して画像化され、(例えば、ディスプレイまたはデータストアへの)出力を生成することができる。セグメント52のこの新しく得られた画像はまた、(本明細書に記載された実施形態の通り)新しい波面マスク102を決定するために利用され得る。都合がよいことに、この新しく決定された波面マスク102は、以前の波面マスク102で生成された画像から決定されるので、より正確な補正を生成することができる。そのような補正プロセスは、サンプル12の画像化中に進行し得る。ほとんどの場合、結果として得られる画像は継続的に改善されることが期待できるが、後続のキャプチャの改善はわずかである。何回かの更新の後、最大の効果的な補正が得られる場合もある。
【0067】
図6は、スキャンサブエリア50がオフセットされる方法を示している。中間の列は、上記で
図3に示されているサブエリア50に対応する。X軸ガルバニックミラー28は、x軸にオフセットを提供するように制御され、それによって、異なるサブエリア50を画定する。例えば、サブエリア50Aは、それ自体がサブエリア50Cに対してオフセットされているサブエリア50Bに対してオフセットされている。一連のオフセットを適用することにより、システムはスキャンされた有効視野を有利に拡張できる。これは、変形可能ミラー18を介した異なる補正が、x方向の視野の範囲にわたって必要とされることが予想されるためである。これは、y方向で必要なさまざまな補正に似ているが、y方向の差異は、ラスタースキャンの方向によって自然に考慮されている。有利なことに、x軸を異なるサブエリア50に分割することにより、視野はx方向およびy方向の両方で十分に補正され、サンプル12の改善された画像化が可能になる。
【0068】
図7は、複数のサブエリア50A-50Jが2次元グリッドに画定されている例を示している。示されるように、各サブエリア50A-50Jは5つのセグメント52を含み、したがって、結果として、50のセグメント52が存在する。各セグメント52を、計算された波面マスク102とともに示す。見ての通り、各セグメント52は、対応する画像エリア特有のひずみに依存した、固有の波面マスク102を持つ。
【0069】
図7は、視野を、個別の領域(すなわち、セグメント52)に分割し、各領域で固有の波面マスク102を決定することで、比較的広い領域が画像化可能である(すなわち、視野が比較的高い)という利点を示している。本発明の利点は、波面マスク102の決定数と動作速度のバランスが取れることであろう。個別の多数の固有波面マスク102は、例えば、ビデオレベルのフレームレート(例えば、毎秒20フレーム)を維持しながら、有用な補償光学的補正を、優位に可能にするであろう。
【0070】
図7に示されるように、各セグメント52のサイズ(すなわち、視野内の範囲)は変化し得る。例えば、セグメント52Aは、セグメント52Bとは異なるサイズである。この図では、セグメントサイズはx方向で変化し、ラスタースキャン時のラインの長さ(つまり、レーザースキャン)に本質的に対応している。一実施形態では、セグメント52あたりの線の数も変えることができる。これにより、y方向のサイズが変更される。一実施形態では、線の長さおよび線の数の変更を各セグメント52に適用することができ、それにより、x方向およびy方向の両方でセグメント52のサイズの変更を可能にする。
【0071】
図8は、2つのセグメント52、TMy
1とTMy
5で測定されたさまざまな改善量を示している。ここで、「軸方向FWHM」(「半値全幅」)が低いほど解像度が高いこと、つまり結果の改善を示し、また蛍光強度が高いほど、結果が改善されていることを示している。TMy
1とTMy
5の両方で、測定された各パラメータは、波面補正なしの場合(「RAOなし」)と比較して、波面補正(「RAO」)によって改善されているが、TMy
5の場合、改善ははるかに顕著である。
図8を生成するために測定された実際のサンプルでは、TMy
5に必要な波面補正はTMy
1よりも複雑であった。これは収差がより複雑であったためである。
【0072】
実施形態は、選択されたセグメントの波面最適化のため、ビデオの保存および再生に匹敵する速度(約20fpsおよび約5μsの滞留時間)で動作可能であり、スキャン速度を遅くしたり関心領域を減少させたりすることを必要としない可能性を秘める。
【0073】
一般に、本明細書に記載の実施形態による補正なしで、レーザースキャン型顕微鏡10を使用してサンプル12を画像化する場合、光学収差およびサンプル収差は、非等波面照明野をもたらす。本明細書に記載の実施形態は、理想的な等波面照明野を目指して照明野を有利に改善することができ、特に、波面マスク102が連続的に更新される実施形態は、等波面照明野を目指した波面マスク102の効果的な反復変更を提供できる。
【0074】
図10は、毛細管内に浮遊しているビーズを画像化したものの強度のプロットを示している。上図は未補正のビーズ画像を示しており、右の画像のラインプロファイルは左の画像に示されている線に対応している。下は補正されたビーズ画像を示しており、右の画像のラインプロファイルは左の画像に示されている線に対応している。見ての通り、ピークは補正された画像でよりはっきりと示されており、ラインプロファイルには誤ったピークが含まれていない。
【0075】
実施形態の有効性(例えば、信号強度の改善によって測定される)は、セグメントの数と相関し得る。あるしきい値までは、セグメントの数が多いほど信号強度の改善が大きくなり、それを超えると、セグメントの数の増加に対する信号強度の改善を定量化することが困難になる。しかしながら、セグメントの数を増やすと、必要な処理リソースも増え、波面マスクの生成とリトリーブの間に遅れがある場合、実施形態の有用性が低下する可能性があり、特にスキャン対物レンズが使用される場合に問題である。したがって、処理されるセグメントの数と有用なフレームレートの間には、例えば、トレードオフが存在するかもしれない。
【0076】
レーザースキャン型顕微鏡に関連する実施形態が図示され、議論されてきたが、さらなる実施形態は、顕微鏡研究の分野外に用途を見出すことを理解されたい。例えば、フォトリソグラフィーの分野では、レーザースキャンが使用され、そのようなプロセスの間、対物レンズの視野にわたってレーザーの出力を最大化することが重要である可能性がある。そのような用途に実施形態を使用すれば、視野の異なるサブエリアまたは部分に異なる波面マスクを適用することによって、対物レンズの有効視野を拡張すること、および/またはレーザーの強度を高めることができる。対物レンズの有効視野を拡大すれば、ステージまたは対物レンズの動きを減らすことができ、精度が向上する可能性がある。レーザーの強度を高めれば、リソグラフィーまたは「レーザー書き込み」プロセスをより広範囲の材料および用途に効果的に適用できる。
【0077】
図9Aおよび9Bは、ガラス毛細管内の蛍光UV硬化性接着剤に形成された2光子レーザー書き込み(すなわち、フォトリソグラフィー)パターンの結果を示している。この図は、蛍光条件下で得られた硬化接着剤を示しており、目に見える特徴は、先行するレーザー書き込みステップに対応している。
図9Aは、波面補正なしのレーザー書き込みの結果の画像を示しているのに対し、
図9Bは、波面補正ありの書き込み結果を示している。
図9Bの目に見える特徴は、波面マスク102を適用してレーザー書き込みプロセスの視野のセグメント52を補正する本明細書に記載の実施形態が、(
図9Aと比較した場合)湾曲したガラス毛細管によって引き起こされる収差を補正することを示す。各スポット全体の残留蛍光強度によって示される通り、リソグラフィパターンの伸長は減り、レーザーパワーはより均等に分布する。
図9Cは、拡大された未補正のレーザー書き込みフィーチャ(
図9A)と拡大された補正レーザー書き込みフィーチャ(
図9B)の蛍光強度のプロットを示している。見ての通り、補正された画像について、過度な強度の改善と細かな特徴が示されている。波面補正は、各セグメント52の波面マスク102を決定するために低出力レーザーを使用して行われることに留意されたい。レーザー書き込みは、続いて、十分な出力を備えたレーザーおよび決定された波面マスク102を使用して実行された。
【0078】
さらなる実施形態は、スキャンレーザーを使用する任意のシステムで用途を見出すことができることを理解されたい。たとえば、レーザー切除や距離測定の分野である。
【0079】
本明細書で先行技術の刊行物が参照される場合、そのような参照は、その刊行物がオーストラリアまたは他の国における当技術分野の一般的な知識の一部を形成することを認めるものではないことを理解されたい。
【0080】
以下の特許請求の範囲および前述の説明では、明示的な文言または必要な含意のために文脈が別途要求する場合を除いて、「comprise」という単語、または「comprises」あるいは「comprising」などの変形は、包括的意味で使用される。すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。同様に、「device」という用語は、広い意味で使用され、全体として提供される構成部分、および1つまたは複数の構成部分が互いに別個に提供される例示をカバーすることを意図している。
【国際調査報告】