(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】植物栽培用光源
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539659
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2021000027
(87)【国際公開番号】W WO2021137676
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520408054
【氏名又は名称】インダストリー-ユニヴァーシティ コーポレーション ファウンデーション オブ チュンブク ナショナル ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】65-16,Sandan-ro 163 Beon-gil,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ミョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユン ソン
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022AB11
2B022AB13
2B022DA03
(57)【要約】
植物に光を照射する植物栽培用光源は、植物に光を提供する少なくとも2個以上の発光素子を含み、前記各発光素子のそれぞれは、第1導電型ドーパントがドーピングされた第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられ、前記第1導電型ドーパントと異なる第2導電型ドーパントがドーピングされた第2半導体層と、前記第1及び第2半導体層の間に設けられた活性層とを含み、前記各発光素子は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つが互いに同一でない条件で植物に光を照射することによって前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に光を照射する植物栽培用光源において、植物栽培用光源は、植物に光を提供する少なくとも2個以上の発光素子を含み、
前記各発光素子のそれぞれは、
第1導電型ドーパントがドーピングされた第1半導体層、
前記第1半導体層上に設けられ、前記第1導電型ドーパントと異なる第2導電型ドーパントがドーピングされた第2半導体層、及び
前記第1及び第2半導体層の間に設けられた活性層、を含み、
前記各発光素子は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つが互いに同一でない条件で植物に光を照射することによって、前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節する植物栽培用光源。
【請求項2】
前記各発光素子は、第1及び第2発光素子を含み、
前記第1発光素子は第1光を出射し、前記第1発光素子は第2光を出射するとき、前記第1及び第2光は、それぞれ互いに異なる波長帯域でピーク波長を有する、請求項1に記載の植物栽培用光源。
【請求項3】
前記有効成分は、第1有効成分と、前記第1有効成分とは異なる第2有効成分と、を含み、前記第1有効成分が前記第2有効成分と異なる程度に前記植物内に含有されるように、前記第1光と前記第2光の波長、照射強度及び光の照射時期のうち少なくとも一つが調節される、請求項2に記載の植物栽培用光源。
【請求項4】
前記第1光は第1区間に照射され、前記第2光は第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第1有効成分の量が前記第2有効成分の量より多くなるように前記第2区間が前記第1区間より先行する、請求項3に記載の植物栽培用光源。
【請求項5】
前記第1光は第1区間に照射され、前記第2光は第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第2有効成分の量が前記第1有効成分の量より多くなるように前記第1区間が前記第2区間より先行する、請求項3に記載の植物栽培用光源。
【請求項6】
前記有効成分は、ケンペロール類、ヒドロケイ皮酸類、フラボノール、及びアントシアニンのうち少なくとも一つである、請求項2に記載の植物栽培用光源。
【請求項7】
前記有効成分は、ケンペロール類及びヒドロケイ皮酸類のうち少なくとも一つである、請求項2に記載の植物栽培用光源。
【請求項8】
前記第1及び第2発光素子はそれぞれ発光ダイオードである、請求項2に記載の植物栽培用光源。
【請求項9】
前記第1光は、紫外線Bに対応する波長を有する、請求項2に記載の植物栽培用光源。
【請求項10】
前記第1光は、ピークが約280nmから約300nmの波長帯域内にある、請求項9に記載の植物栽培用光源。
【請求項11】
前記第2光は、前記第1光と互いに異なる波長を有する、請求項10に記載の植物栽培用光源。
【請求項12】
前記第2光は、ピークが約310nmから約390nmの波長帯域内にある、請求項11に記載の植物栽培用光源。
【請求項13】
前記植物はアブラナ科の植物である、請求項1に記載の植物栽培用光源。
【請求項14】
前記アブラナ科の植物は、キャベツ、白菜、ケール、ブロッコリー、大根、ナズナ、菜の花、からし菜、及びチンゲン菜のうち少なくとも一つである、請求項13に記載の植物栽培用光源。
【請求項15】
オン又はオフになり、植物に光を照射することによって植物を栽培する植物栽培用光源において、植物栽培用光源は、
第1導電型ドーパントがドーピングされた第1半導体層、
前記第1半導体層上に設けられ、前記第1導電型ドーパントと異なる第2導電型ドーパントがドーピングされた第2半導体層;及び
前記第1及び第2半導体層の間に設けられた活性層、を含み、
前記光源は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つを変更する条件で植物に光を照射することによって、前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節する植物栽培用光源。
【請求項16】
植物に光を照射する光源を用いて植物を栽培する植物栽培方法において、前記植物栽培用光源は、植物に光を提供する少なくとも2個以上の発光素子を含み、前記各発光素子は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つが互いに同一でない条件で植物に光を照射することによって、前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節する植物栽培方法。
【請求項17】
前記各発光素子は、互いに異なるピーク波長を有する第1及び第2光を出射し、前記有効成分は、第1有効成分と、前記第1有効成分とは異なる第2有効成分と、を含み、前記第1有効成分が前記第2有効成分と異なる程度に前記植物内に含有されるように、前記第1光と前記第2光の波長、照射強度及び光の照射時期のうち少なくとも一つが調節される、請求項16に記載の植物栽培方法。
【請求項18】
前記第1光は、ピークが約280nmから約300nmの波長帯域内にあり、前記第2光は、ピークが前記第1光と異なる波長帯域内にある、請求項17に記載の植物栽培用植物栽培方法。
【請求項19】
前記第1光が第1区間に照射され、前記第2光が第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第1有効成分の量が前記第2有効成分の量より多くなるように前記第2区間が前記第1区間より先行する、請求項17に記載の植物栽培方法。
【請求項20】
前記第1光が第1区間に照射され、前記第2光が第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第2有効成分の量が前記第1有効成分の量より多くなるように前記第1区間が前記第2区間より先行する、請求項17に記載の植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用光源に関し、より詳細には、植物における有用物質の合成に最適化された光を出射する光源に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培用照明器具として、太陽光に取って代わる多様な光源が開発されて使用されている。従来は、植物栽培用照明器具として白熱灯、蛍光灯などが主に使用されていた。しかし、従来の植物栽培用照明器具は、単純に植物の光合成のみのために所定波長の光のみを植物に提供し、それ以外の追加的な機能を有していない場合がほとんどである。
【0003】
植物は、多様なストレスに抵抗する過程で人間に有用な各物質を合成できるので、人間に有用な物質が多量に含有された植物を栽培できる光源、栽培装置、栽培方法などが多様に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人間に有用な物質が多量に含有された植物を栽培することができる光源を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、前記光源を用いて植物を容易に栽培することができる栽培方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、植物栽培用光源は、植物に光を提供する少なくとも2個以上の発光素子を含み、前記各発光素子のそれぞれは、第1導電型ドーパントがドーピングされた第1半導体層、前記第1半導体層上に設けられ、前記第1導電型ドーパントと異なる第2導電型ドーパントがドーピングされた第2半導体層、及び前記第1及び第2半導体層の間に設けられた活性層、を含む。前記各発光素子は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つが互いに同一でない条件で植物に光を照射することによって、前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節する。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記各発光素子は、第1及び第2発光素子を含み、前記第1発光素子は第1光を出射し、前記第2発光素子は第2光を出射するとき、前記第1及び第2光は、それぞれ互いに異なる波長帯域でピーク波長を有することができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記有効成分は、第1有効成分と、前記第1有効成分とは異なる第2有効成分とを含み、前記第1有効成分が前記第2有効成分と異なる程度で前記植物内に含有されるように前記第1光と前記第2光の波長、照射強度及び光の照射時期のうち少なくとも一つを調節することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記第1光は第1区間に照射され、前記第2光は第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第1有効成分の量が前記第2有効成分の量より多くなるように前記第2区間が前記第1区間より先行することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記第1光は第1区間に照射され、前記第2光は第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第2有効成分の量が前記第1有効成分の量より多くなるように前記第1区間が前記第2区間より先行することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記有効成分は、ケンペロール類、ヒドロケイ皮酸類、フラボノール、アントシアニンなどであってもよく、特に、前記有効成分は、ケンペロール類及びヒドロケイ皮酸類のうち少なくとも一つであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第1及び第2発光素子は、それぞれ発光ダイオードであってもよい。ここで、前記第1光は、紫外線Bに対応する波長を有してもよく、ピークが約280nmから約300nmの波長帯域内にあってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記第2光は、前記第1光と互いに異なる波長を有することができる。前記第2光は、ピークが約310nmから約390nmの波長帯域内にあってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記植物は、アブラナ科の植物であってもよく、前記アブラナ科の植物は、キャベツ、白菜、ケール、ブロッコリー、大根、ナズナ、菜の花、からし菜、及びチンゲン菜のうち少なくとも一つであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記光源を用いて植物を栽培する植物栽培方法を含む。このとき、前記各発光素子は、光の波長、光の照射強度、及び光の照射時期のうち少なくとも一つが互いに同一でない条件で植物に光を照射することによって、前記植物内の有効成分の種類及び含量を調節することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る光源を用いると、効率的な植物栽培が可能であり、植物内の人に有益な有効成分の含量を容易に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る植物栽培用光源を示した平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る植物栽培用光源モジュールを示したブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る発光素子として、発光ダイオードを示した図である。
【
図4】
図4は、本実験例で使用した発光ダイオードのスペクトルを共に示した図である。
【
図5a】
図5aは、
図4の発光ダイオードのスペクトルを示した図である。
【
図5b】
図5bは、
図4の発光ダイオードのスペクトルを示した図である。
【
図5c】
図5cは、
図4の発光ダイオードのスペクトルを示した図である。
【
図6】
図6は、各条件、すなわち、処理区1から処理区6、及び対照区における生体重を示したグラフである。
【
図7a】
図7aは、実験例2に関するものであって、地上部の生体重を測定した結果グラフである。
【
図7b】
図7bは、実験例2に関するものであって、地下部の生体重を測定した結果グラフである。
【
図7c】
図7cは、実験例2に関するものであって、地上部の乾物重を測定した結果グラフである。
【
図7d】
図7dは、実験例2に関するものであって、地下部の乾物重を測定した結果グラフである。
【
図8a】
図8aは、実験例2に関するものであって、植物体g当たりのフェノール含量を示したグラフである。
【
図8b】
図8bは、実験例2に関するものであって、植物体当たりのフェノール含量を示したグラフである。
【
図8c】
図8cは、実験例2に関するものであって、g当たりの抗酸化度を示したグラフである。
【
図8d】
図8dは、実験例2に関するものであって、植物体当たりの抗酸化度を示したグラフである。
【
図9】
図9は、実験例4に関するものであって、紫外線処理区6日目及び8日目に測定したイメージ蛍光値である。
【
図10】
図10は、実験例6に関するものであって、処理区1から処理区5、及び対照区における生体重を示したグラフである。
【
図11a】
図11aは、実験例7に関するものであって、植物体g当たりのフェノール含量を示したグラフである。
【
図11b】
図11bは、実験例7に関するものであって、植物体当たりのフェノール含量を示したグラフである。
【
図11c】
図11cは、実験例7に関するものであって、g当たりの抗酸化度を示したグラフである。
【
図11d】
図11dは、実験例7に関するものであって、植物体当たりの抗酸化度を示したグラフである。
【
図12】
図12は、実験例8に関するものであって、紫外線処理区2日目、4日目及び8日目に測定したイメージ蛍光値である。
【
図13a】
図13aは、実験例9の代謝体分析結果を示した図であって、PCA(Principal Component Analysis)を示した図である。
【
図13b】
図13bは、実験例9の代謝体分析結果を示した図であって、PLS-DA(Partial Least Squares Discriminant Analysis)を示した図である。
【
図14a】
図14aは、実験例11に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図14b】
図14bは、実験例11に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図14c】
図14cは、実験例11に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図14d】
図14dは、実験例11に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図14e】
図14eは、実験例11に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図15a】
図15aは、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図15b】
図15bは、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図15c】
図15cは、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図15d】
図15dは、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図15e】
図15eは、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16a】
図16aは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16b】
図16bは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16c】
図16cは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16d】
図16dは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16e】
図16eは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16f】
図16fは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16g】
図16gは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16h】
図16hは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16i】
図16iは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16j】
図16jは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図16k】
図16kは、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示した図である。
【
図17a】
図17aは、実験例12の代謝体分析結果を示した図であって、PCA(Principal Component Analysis)を示した図である。
【
図17b】
図17bは、実験例12の代謝体分析結果を示した図であって、PLS-DA(Partial Least Squares Discriminant Analysis)を示した図である。
【
図18a】
図18aは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18b】
図18bは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18c】
図18cは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18d】
図18dは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18e】
図18eは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18f】
図18fは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図18g】
図18gは、実験例14に関するものであって、ケンペロール類に関する代謝体分析結果である。
【
図19a】
図19aは、実験例14に関するものであって、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析結果である。
【
図19b】
図19bは、実験例14に関するものであって、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析結果である。
【
図19c】
図19cは、実験例14に関するものであって、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析結果である。
【
図19d】
図19dは、実験例14に関するものであって、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析結果である。
【
図19e】
図19eは、実験例14に関するものであって、ヒドロケイ皮酸類に関する代謝体分析結果である。
【
図20a】
図20aは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図20b】
図20bは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図20c】
図20cは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図20d】
図20dは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図20e】
図20eは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図20f】
図20fは、実験例14に関するものであって、未確認の化合物に関する代謝体分析結果である。
【
図21】
図21は、本発明の一実施例に係る栽培装置を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るので、特定の実施形態を図面に例示し、これを本文で詳細に説明する。しかしながら、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物及び代替物を含むものと理解しなければならない。
【0019】
各図面を説明する際、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使用した。添付の図面において、各構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際より拡大して示したものである。「第1」及び「第2」などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用され得るが、前記各構成要素は、前記各用語によって限定されてはならない。前記各用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲で、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、これと同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。
【0020】
本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0021】
本発明は、植物の栽培時に使用される光源に関する。本発明の一実施形態に係る光源は、植物工場に使用され、植物工場内の植物に光を提供することができる。植物工場とは、「施設内で作物の地上部の環境(光、温度、湿度、二酸化炭素の濃度など)及び地下部の環境(培養液の酸度、濃度、養分の構成など)を人工的に制御し、作業の自動化を通じて季節や場所と関係なく自動的に年中作物を生産するシステム」と定義することができる。植物工場の最大の長所は、作物が育つ地上部及び地下部の環境を完璧に制御できる点にある。
【0022】
植物は、可視光線波長帯域の光を用いて光合成を行い、光合成を通じてエネルギーを得る。植物は、可視光線波長帯域の光以外に他の光に照射されると、摂取時に人又は植物の健康に肯定的な影響を及ぼし得る成分(以下では、有効成分と称する)の含量が増加し得る。そこで、本発明の一実施形態では、可視光線波長帯域の光以外に有効成分を増加させるための波長帯域の光を提供するための光源を開示する。ここで、有効成分は、人に必要であると言われている物質であって、例えば、ケンペロール系化合物、ヒドロケイ皮酸などの抗酸化性物質である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る光源が適用される植物の種類は多様に変更可能である。ただし、種によって、光源から出射された光の光合成効率や前記有効成分の含量増加程度などに差があり得る。本発明の一実施形態に係る光源の場合、アブラナ科の植物に適用され得る。アブラナ科の植物としては、キャベツ、白菜、ケール、ブロッコリー、大根、ナズナ、菜の花、からし菜、チンゲン菜などがある。また、本発明の一実施形態に係る光源の場合、アブラナ科の植物のうちケールに適用され得る。本発明の一実施形態に係る植物の種類は、これにのみ限定されるのではなく、他の種にも適用可能であることは当然である。以下では、説明の便宜のために、アブラナ科の植物のうち、特にケールに本発明の一実施形態に係る光源を適用したことを一例として説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る植物栽培用光源を示した平面図で、
図2は、本発明の一実施形態に係る植物栽培用光源モジュールを示したブロック図である。
【0025】
本発明は、植物栽培用光源に関するものであって、植物栽培用光源は、植物に光を提供する複数個の発光素子を含む。本発明の一実施形態において、光源は、2個以上の発光素子を含み得るが、以下では、光源が2個である場合を一例として説明する。しかし、各発光素子の個数は、これに限定されず、3個以上で提供されてもよい。
【0026】
図1及び
図2を参照すると、植物栽培用光源モジュール100は、植物が必要な光を出射する光源30と、前記光源30を制御する制御部40と、前記光源30及び/又は制御部40に電源を提供する電源供給部50とを含む。
【0027】
光源30は、互いに異なる波長にスペクトルのピークを有する第1及び第2光源31、33を含むことができる。前記第1及び第2光源31、33のうち少なくとも一つは、植物の有効成分の合成のためにスペクトルのピークが紫外線波長帯域に位置し得る。以下では、第1光源31が紫外線波長帯域に位置することを一例として説明する。
【0028】
第1光源31は、紫外線波長帯域の光を出射することができる。前記第1光は、ピークが約280nmから約300nmの波長帯域内にあってもよい。本発明の一実施形態において、前記第1光は、半値幅が約30nm以下の値を有するシャープなピーク波長を有することができる。
【0029】
第1光源31は、第2光源33と異なる波長帯域の光を出射することができる。本発明の一実施形態において、第1光源31は、紫外線波長帯域、特に、紫外線B波長帯域の光を出射することができる。第1光源31は、植物内の有効成分の含量を増加させるための光に該当する。第1光源31も、必要によって単数又は複数個の発光ダイオードを含むことができる。
【0030】
第2光源33は、第1光源31と異なる波長帯域の光を出射することができる。前記第2光は、ピークが約310nmから約390nmの波長帯域内にあってもよい。例えば、前記第2光は、ピークが約315nmにあってもよく、又は約385nmにあってもよい。本発明の一実施形態において、前記第2光は、半値幅が約30nm以下の値を有するシャープなピーク波長を有することができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、第2光源33は、紫外線波長帯域の光を出射し、紫外線Aや、紫外線Aと紫外線Bの境界と隣接した波長帯域の光を出射することができる。第2光源33も、植物内の有効成分の含量を増加させるための光に該当し、また、必要によって単数又は複数個の発光ダイオードを含むことができる。
【0032】
第1光源31と第2光源33は独立して駆動してもよい。これによって、第1光源31及び第2光源33のうちいずれか一つの光源のみがオンになってもよく、又は第1及び第2光源31、33の全てがオン又はオフになってもよい。本発明の一実施形態において、第1光源31及び第2光源33は、独立してオン/オフして、所定のスペクトルを有する光を植物に提供することができる。植物は、生長時期によって、明周期であるのか、それとも暗周期であるのかによって、又は収穫時期によって、光源から、すなわち、第1及び第2光源31、33から多様な形態で光を受ける。第1及び第2光源31、33を含む光源から出射された光は、有効成分の種類や含量によって多様な形態に調節され得る。
【0033】
ここで、有効成分は、植物に照射する光の波長帯域、強度、及び照射時期によってその種類及び含量が多様に変わり得る。例えば、有効成分が第1有効成分と、前記第1有効成分と異なる第2有効成分とを含むとしたとき、前記第1有効成分が前記第2有効成分と異なる程度で前記植物内に含有されるように前記第1光及び前記第2光の波長、照射強度及び光の照射時期のうち少なくとも一つが調節され得る。
【0034】
このとき、前記第1光は第1区間に照射され、前記第2光は第2区間に照射されるとき、前記植物内に前記第1有効成分の量が前記第2有効成分の量より多くなるように前記第2区間が前記第1区間より先行したり、前記植物内に前記第2有効成分の量が前記第1有効成分の量より多くなるように前記第1区間が前記第2区間より先行し得る。言い換えると、まず、所定の波長帯域の光(例えば、第1光)を一定時期に植物に照射し、次に、他の波長帯域の光(例えば、第2光)を照射する場合、光が照射された植物内に所定の有効成分(例えば、第2有効成分)の量が他の有効成分の量より多く合成可能であり、その逆も可能である。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記有効成分は、ケンペロール類、ヒドロケイ皮酸類、フラボノール、アントシアニンなどの物質であってもよい。本発明の一実施形態では、特に、前記有効成分は、ケンペロール類及びヒドロケイ皮酸類のうちいずれか一つであってもよい。
【0036】
第1光源31及び第2光源33は基板20上に配置されてもよい。基板20は、第1光源31及び第2光源33が直接実装され得る配線や回路などが形成された印刷回路基板であってもよいが、これに限定されない。基板は、第1光源31及び第2光源33が配置され得るものであれば十分であり、その形状や構造は特に限定されず、省略されてもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、制御部40は、第1及び/又は第2光源31、33に接続され、第1光源31及び第2光源33の動作有無を制御する。制御部40は、第1及び/又は第2光源31、33に有線又は無線で接続されてもよい。制御部40には、制御部40に電源を供給する電源供給部50が接続される。電源供給部50は、制御部40を介して、又は光源に直接接続され、光源に電源を供給することができる。
【0038】
制御部40は、第1光源31及び第2光源33が所定区間に所定の強度で光を出射するように第1光源31及び/又は第2光源33のオン/オフを制御することができる。植物が光合成を最大限効率的に行うように、第1光源31及び第2光源33がそれぞれ個別に動作してもよい。制御部40は、第1及び第2光源31、33からの光の出射強度や出射時間などをそれぞれ独立して制御することができる。また、第1光源31及び/又は第2光源33が複数個の発光ダイオードを含む場合、個別の発光ダイオードを独立して制御することができる。
【0039】
制御部40は、第1光源31及び第2光源33の動作を、先にセッティングされたプロセスによって、又はユーザーの入力によって制御することができる。第1光源31及び第2光源33の動作は、植物の種類、植物の生長時期などによって多様に変更可能である。
【0040】
図示してはいないが、本発明の一実施形態に係る植物栽培用光源は、前記光合成に使用される波長帯域の光を照射する可視光線光源をさらに含むことができる。本発明の一実施形態に係る光源が、外部光(例えば、太陽光)が提供される温室などの場所に提供される場合は、別途の可視光線光源が必要でないこともあるが、別途の外部光が提供されていない暗室などの場所に提供される場合は、別途の可視光線光源が必要である。この場合、前記光源が可視光線光源を含むことによって、植物の光合成に適切な光を提供することができる。可視光線光源が出射する光は、植物の光合成に主に使用される波長帯域の光であって、PAR領域(Photosynthetic Active Radiation)内の光であってもよい。PARは、太陽光スペクトルの一部を占めており、約400ナノメートルから約700ナノメートルの帯域に該当する。
【0041】
可視光線光源は、光合成が可能な可視光線波長帯域の光を出射する限度内で、一つ又は複数個の発光ダイオードで具現され得る。又は、後述する所定のスペクトルの光を出射する限度内で、一つ又は複数個の発光ダイオードで具現され得る。例えば、可視光線光源は、青色と赤色を同時に出射する発光ダイオードから構成されてもよく、又は、青色波長帯域の光を出射する発光ダイオード及び赤色波長帯域の光を出射する複数個の発光ダイオードから構成されてもよい。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係る発光素子として、発光ダイオードを示した図である。
【0043】
図3を参照すると、発光ダイオードは、第1半導体層223、活性層225、及び第2半導体層227を含む発光構造体と、発光構造体に接続された第1電極221及び第2電極229とを含むことができる。
【0044】
第1半導体層223は、第1導電型ドーパントがドーピングされた半導体層である。第1導電型ドーパントはp型ドーパントであってもよい。第1導電型ドーパントは、Mg、Zn、Ca、Sr、Baなどであってもよい。本発明の一実施形態において、第1半導体層223は、窒化物系半導体材料を含むことができる。本発明の一実施形態において、第1半導体層223の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInNなどを挙げることがきる。
【0045】
活性層225は、第1半導体層223上に設けられ、発光層に該当する。活性層225は、第1半導体層223を介して注入される電子(又は正孔)と、第2半導体層227を介して注入される正孔(又は電子)とが互いに出合い、活性層225の形成物質によるエネルギーバンド(Energy Band)のバンドギャップ(Band Gap)差によって光を放出する層である。
【0046】
活性層225は、化合物半導体で具現され得る。活性層225は、例として、3族-5族又は2族-6族の化合物半導体のうち少なくとも一つで具現され得る。
【0047】
第2半導体層227は、活性層225上に設けられる。第2半導体層227は、第1導電型ドーパントと反対の極性を有する第2導電型ドーパントを有する半導体層である。第2導電型ドーパントはn型ドーパントであってもよいので、第2導電型ドーパントは、例えば、Si、Ge、Se、Te、O、Cなどを含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、第2半導体層227は、窒化物系半導体材料を含むことができる。第2半導体層227の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInNなどを挙げることができる。
【0049】
第1電極221及び第2電極229は、それぞれ第1半導体層223及び第2半導体層227と接続されるように多様な形態で設けられ得る。本実施形態では、第1半導体層223の下部に第1電極221が設けられ、第2半導体層227の上部に第2電極229が設けられた場合を示したが、これに限定されない。本発明の一実施形態において、第1電極221及び第2電極229は、例えば、Al、Ti、Cr、Ni、Au、Ag、Ti、Sn、Ni、Cr、W、Cuなどの多様な金属又はこれらの合金からなってもよい。第1電極221及び第2電極229は、単一層又は多重層で形成されてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、発光ダイオードが縦型で提供された場合を説明したが、発光ダイオードが必ず縦型である必要はなく、本発明の概念に符合する限り、他のタイプで提供されてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態によると、試料に光を照射するために光源として、既存の一般的なランプでない発光ダイオードを使用することによって、次のような効果を得ることができる。
【0052】
本発明の一実施形態によって発光ダイオードを光源として使用する場合、既存の一般ランプ(例えば、既存の紫外線ランプ)から出射された光に比べて特定の波長の光を用いて植物を処理することができる。既存のランプから出射された光は、発光ダイオードから出射された光に比べて広い領域でブロードなスペクトルを有する。これによって、既存の紫外線ランプの場合、出射された光の波長帯域のうち一部の帯域の光のみを分離することが容易でない。これに比べて、発光ダイオードから出射された光は、特定の波長でのシャープなピークを有するように製造可能であり、既存のランプからの光に比べて半値幅が非常に狭い特定の波長の光を提供する。これによって、特定の波長の光のみが必要である場合、特定の波長の光を選択することが容易であり、その選択された特定の波長の光のみを試料に提供することができる。結果的に、ブロードな波長の光や特定の波長の光を選択できる幅が広くなる。
【0053】
また、既存のランプの場合、試料に光を提供し、光量の正確な限定が難しいことがあるが、発光ダイオードの場合、光量を明確に限定して提供することができる。また、既存のランプの場合、光量の正確な限定が難しいことがあるので、照射時間も広い範囲で設定され得るが、発光ダイオードの場合、相対的に短時間で、明確な時間内に試料に必要な光を提供することができる。
【0054】
上述したように、既存のランプの場合、相対的に広い範囲の波長、広い範囲の光量、及び広い範囲の照射時間によって光照射量の明確な判断が難しい。これに比べて、発光ダイオードの場合、相対的に狭い範囲の波長、狭い範囲の光量、及び狭い範囲の照射時間によって明確な光照射量を提供することができる。
【0055】
これに加えて、既存のランプの場合、電源をオンにした後、最大光量まで到逹するのに相当の時間がかかっていた。これに比べて、発光ダイオードを使用する場合、電源をオンにした後、ウォーミングアップ時間が実質的にほとんどなく、直ぐに最大光量まで到逹する。よって、発光ダイオード光源の場合、植物に特定の波長の光を照射するとき、光の照射時間を明確に制御することができる。
【0056】
また、発光ダイオードは、既存の蛍光灯に比べて発熱量が少なく、電力消耗が少ないだけでなく、寿命が長いので、経済的な側面で既存の蛍光灯より有利である。
【0057】
前記のような植物栽培用光源を用いて植物を栽培する場合、有効成分で表示される二次代謝産物が増進する。ここで、二次代謝産物は、多様な生理活性を帯びており、人によって摂取され、抗酸化性、坑癌性、抗炎症、抗菌性などの多様な機能を示すことができる。本実施形態では、このような有効成分を多量に含む植物を食品や医薬品に加工したり、加工せずに人間が摂取したりすることができるようにするという効果がある。
【0058】
実験例1:光照射条件1
【0059】
ケールで二次代謝産物の増進のための光の照射条件を設定するために実験を行った。
【0060】
実験は、温度20℃、湿度60%、可視光線発光ダイオード(Red:White、9:1)、130μmol/m2/sPPFD条件の植物工場で行った。種子成長パックに播種されたケール(「Manchoo Collard」)は、2週間栽培した後、上で言及した環境でのDFT(deep-flow technique)水耕栽培システムに定植し、3週間栽培した。
【0061】
定植してから3週目に発光ダイオードで紫外線処理を開始した。
【0062】
光周期は、12時間の暗周期と12時間の明周期の順に行われ、明周期の間に紫外線の照射が行われた。
【0063】
図5Aは、本実験例で使用した295nmのピーク波長を有する発光ダイオードのスペクトルを示し、
図5Bは、本実験例で使用した315nmのピーク波長を有する発光ダイオードのスペクトルを示し、
図5Cは、本実験例で使用した385nmのピーク波長を有する発光ダイオードのスペクトルを示す。
図4は、
図5Aから
図5Cの発光ダイオードのスペクトルを共に示した図である。紫外線A発光ダイオードは、385nmのピーク波長を有し、30W/m
2の強さで2日間連続的に照射した。紫外線B発光ダイオードは、315nmと295nmのピーク波長を有し、315nmでは1W/m
2、0.3W/m
2の強さで照射し、295nmでは0.3W/m
2、1W/m
2の強さで下記の表1の条件で照射した。紫外線B発光ダイオードの照射は、毎日6時間ずつ2日間行われた。
【0064】
【0065】
実験例2:光照射後の生体重及び乾物重
【0066】
実験例1での処理条件による結果の差を確認するために、植物体の生体重を測定した。
【0067】
図6は、各条件、すなわち、処理区1から処理区6、及び対照区による生体重を示したグラフである。グラフにおいて、x軸は経過時間(day)で、y軸は生体重(g)である。各グラフは、対照区(Control)、処理区1(295-0.3W)、処理区2(295-1W)、処理区3(315-0.3W)、処理区4(315-1W)、処理区5(385-30W)、処理区6(385-1W)で示した。
【0068】
図7aから
図7dは、対照区及び処理区による地上部と地下部の生体重及び乾物重を測定した結果のグラフであって、対照区、処理区1、処理区3から6の地上部と地下部の生体重及び乾物重を測定した図である。
図7a及び
図7bは、それぞれ地上部と地下部の生体重(g)で、
図7c及び
図7dは、それぞれ地上部と地下部の乾物重(g)である。
【0069】
図6を参照すると、処理区1から処理区6の全てを対照区と比較すると、有意な差が見られなかった。ただし、処理区2(295-1W)の場合、36時間が経過した後、ケールが枯死することによって追加的なデータを得ることができなかった。これに比べて、同一の波長であっても、強度を0.3に低下させた処理区1(295-0.3W)の場合、枯死現象が見られなかった。
【0070】
図7aから
図7dを参照すると、地上部の場合、対照区と比較したとき、処理区5(385-30W)で有意に高い値を示し、紫外線B処理区(処理区1)で有意に低い値を示した。地下部の場合、対照区と比較したとき、処理区5(385-30W)で有意に高い値を示し、処理区3や4では有意な差がなかった。
【0071】
実験例3:光照射後の有効成分含量の測定
【0072】
実験例1での処理条件による有効成分の生成結果の差を確認するために、植物体g当たりのフェノール含量、植物体当たりのフェノール含量、g当たりの抗酸化度、及び植物体当たりの抗酸化度を測定した。
【0073】
図8aから
図8dは、時間の経過(d)による植物体g当たりのフェノール含量(mg GAE/g FW)、植物体当たりのフェノール含量(mg GAE/plant)、g当たりの抗酸化度(mM TEAC/g FW)、及び植物体当たりの抗酸化度(mM TEAC/plant)を示したグラフである。
【0074】
図8aを参照すると、ほとんどの処理区では、対照区に比べて総フェノール含量で大きな差を示さなかったが、36時間の経過後、処理区4~6(315-1W、385-30W、385-W)でg当たりのフェノール含量が増加したことが観察された。しかし、処理区2(295-1W)では、36時間の経過後に枯死し、フェノール含量を測定できなかった。
【0075】
図8bを参照すると、処理区2を除いた全体の処理区では、時間によって植物体当たりの総フェノール含量が増加した。ここで、315nm波長の光に該当する処理区3と4において、処理区3の場合は、総フェノール含量がゆっくり増加する一方で、処理区4の場合は、総フェノール含量が速く増加した。
【0076】
図8cを参照すると、g当たりの抗酸化度は、時間によって増加する傾向を示した。ここで、紫外線Aに該当する処理区6は、他の処理区に比べてg当たりの抗酸化度が低く測定された。
【0077】
図8dを参照すると、全体的に見たとき、対照区に比べて植物体に提供する光のエネルギーが強いほど、植物体当たりの抗酸化度が増加することを確認できた。特に、処理区5(315-1W)の場合、他の処理区に比べて36時間の経過後に有意に高い植物体当たりの抗酸化度を示した。
【0078】
実験例4:光照射後のイメージ蛍光測定
【0079】
紫外線発光ダイオードで植物を処理したとき、このような処理が植物体にストレスを与えたのかどうかを間接的に評価するためにイメージ蛍光(Fv/Fm、最大光量子収率)を測定した。
【0080】
図9は、紫外線処理区6日目と8日目に測定したイメージ蛍光値である。
【0081】
図9を参照すると、蛍光値が0.8以上である場合、植物体がストレスを受けていないことを示すが、6日目に処理区2及び3を除いた処理区及び対照区で0.8以上の値を示すことによって、植物体に害になる程度のストレスを未だに受けていないことを示した。処理区2及び3の場合は、0.8以下の値を示したので、植物体に害を与える程度のエネルギー強さであることが分かり、処理区2の場合は、1Wのエネルギー強度で8日目以前に枯死することによって蛍光を測定することができなかった。
【0082】
実験例5:光照射条件2
【0083】
ケールで二次代謝産物の増進のための光の照射条件を設定するために実験を行った。
【0084】
実験は、温度20℃、湿度60%、可視光線発光ダイオード(Red:White、9:1)、130μmol/m2/sPPFD条件の植物工場で行った。種子成長パックに播種されたケール(「Manchoo Collard」)は、2週間栽培した後、上記で言及した環境でのDFT(deep-flow technique)水耕栽培システムに定植し、3週間栽培した。
【0085】
定植してから3週目に発光ダイオードで紫外線処理を開始した。
【0086】
紫外線A発光ダイオードは、385nmのピーク波長を有し、30W/m2の強さで8日間連続的に照射した。紫外線B発光ダイオードは、315nmと295nmのピーク波長を有し、315nmでは0.7W/m2、0.3W/m2の強さで照射し、295nmでは0.3W/m2、0.1W/m2の強さで下記の表2の条件で照射した。紫外線B発光ダイオードの照射は、毎日6時間ずつ8日間行われた。
【0087】
【0088】
実験例6:光照射後の生体重
【0089】
実験例5での処理条件による結果の差を確認するために、植物体の生体重を測定した。
【0090】
図10は、各条件、すなわち、処理区1から処理区5、及び対照区による生体重を示したグラフである。グラフにおいて、x軸は経過時間(day)で、各グラフは、対照区(Control)、処理区1(295-0.1W)、処理区2(295-0.3W)、処理区3(315-0.3W)、処理区4(315-0.7W)、処理区5(385-30W)で示した。
【0091】
図10を参照すると、処理区1から処理区5では、いずれも対照区と比較して6日目までは有意な差がほとんど見られなかった。ただし、8日目の場合、処理区2の生体重が残りの処理区1、処理区3から処理区5、及び対照区に比べて減少したことが見いだされ、残りの処理区1、処理区3から処理区5、及び対照区では有意な差が見られなかった。
【0092】
結果的に、処理8日目を基準にして295nmの高エネルギー(0.3W/m2)が照射された処理区2を除いた残りの処理区で対照区に比べてケールの生体重の減少がないことから、295nm-0.1W/m2、315nmの紫外線Bは、生長を阻害する程度の強さで照射されていないと判断された。
【0093】
実験例7:光照射後の有効成分含量の測定
【0094】
実験例5での処理条件による有効成分の生成結果の差を確認するために、植物体g当たりのフェノール含量、植物体当たりのフェノール含量、g当たりの抗酸化度、及び植物体当たりの抗酸化度を測定した。
【0095】
図11aから
図11dは、植物体g当たりのフェノール含量、植物体当たりのフェノール含量、g当たりの抗酸化度、及び植物体当たりの抗酸化度を順次示したグラフである。
【0096】
図11aを参照すると、ほとんどの処理区では、対照区に比べて総フェノール含量が高く、特に、紫外線Bに対応する処理区1で総フェノール含量が高く表れた。言い換えると、総フェノール含量の場合、植物体の生体重単位g当たりのフェノール含量が、処理区2日目、4日目及び8日目に対照区に比べて紫外線B処理区で高い値を示すことを確認した。植物体全体の総フェノール含量は、処理6日目と8日目にはストレスを強く受けた処理区2を除いた残りの処理区のフェノール含量が増加した。
【0097】
図11bを参照すると、6日目を基準にして対照区に比べて全ての処理区で高い処理値を示した。ただし、処理区2において、生体重の減少によって8日目(48h)で有意に低い植物体当たりのフェノール含量値を示した。
【0098】
図11cを参照すると、各波長及びエネルギー強度が異なる場合、時間の経過によるg当たりの抗酸化度の推移が異なる形に表れた。植物体単位g当たりの抗酸化度の場合、紫外線A処理を受けたケール(処理区3から5)を対照区と比較したとき、紫外線B処理を受けるケール(処理区1、2)の処理区でより速い時間内に増加することを確認できた。より詳細には、処理区2の場合、2日目でg当たりの抗酸化度が最も高く表れたが、4日目や6日目には2日目よりg当たりの抗酸化度が減少した。処理区1の場合も、2日目と4日目の場合、相対的に高く表れた後、6日目や8日目にはg当たりの抗酸化度が相対的に低く表れた。これと異なり、処理区5の場合、2日目と4日目には相対的に低く表れたが、6日目と8日目にg当たりの抗酸化度が高く表れた。
【0099】
図11dを参照すると、全体的に見たとき、対照区に比べて植物体に提供する光のエネルギーが強いほど植物体当たりの抗酸化度が増加することを確認できた。特に、処理区1の場合、2日目に植物体当たりの抗酸化度が最も高く表れた。
【0100】
図11aから
図11dを参照すると、g当たりのフェノール含量及び抗酸化度は、植物体当たりのフェノール含量及び抗酸化度と照射日によって異なる様相を示した。例えば、処理区1と2を比較すると、g当たりの抗酸化度は、2日目に処理区2で最も高い値を示し、処理区1では処理区2より低い値を示した。これと異なり、植物体当たりの抗酸化度の場合、2日目に処理区1で最も高い値を示し、処理区2では処理区1より低い値を示した。これに加えて、8日目には、更に異なる様相を示したが、g当たりの抗酸化度は、処理区1で最も高い値を示し、処理区2では処理区1より遥かに低い値を示した。その一方で、植物体当たりの抗酸化度の場合、8日目に処理区2より高い値を示した。このように、g当たりの有効成分の含量と植物体当たりの有効成分の含量が光照射時間及び光照射強度によって互いに異なる値を示すことを確認できた。本実施例において、g当たりの有効成分の含量と植物体当たりの有効成分の含量とが互いに異なる点を考慮すると、個体が小さくても単位g当たりの有効成分の生産量がさらに高い場合がある。狭い面積でより多い個体を収穫できるので、状況によっては、個体が小さい植物における有効成分の含量が高い場合は、有効成分を収得することが、個体が大きい場合よりも容易になり得る。
【0101】
実験例8:光照射後のイメージ蛍光測定
【0102】
紫外線発光ダイオードで植物を処理したとき、このような処理が植物体にストレスを与えたかどうかを間接的に評価するためにイメージ蛍光(Fv/Fm、最大光量子収率)を測定した。
【0103】
図12は、紫外線処理区2日目、4日目、及び8日目に測定したイメージ蛍光値である。
【0104】
蛍光値が0.8以上である場合、植物体がストレスを受けていないことを示すが、2日目には全ての処理区と対照区で0.8以上の値を示すことによって、植物体に害になる程度のストレスを未だに受けていないことを示した。しかし、4日目と8日目の場合、処理区2と処理区5で0.8以下の値を示したので、植物体に害を与える程度のエネルギー強さであることが分かった。
【0105】
実験例9:光照射後の代謝体分析(2日目)
【0106】
紫外線Aと紫外線Bをそれぞれ処理したとき、紫外線Bの刺激でのみ生成される特定の生理活性物質を確認するために代謝体分析を実施した。
【0107】
ここで、処理区及び対照区の条件は、次の表3の通りであり、他の条件は上述した各実施例と同一であった。
【0108】
【0109】
処理が持続されるにつれて処理区別にグループ化され、これは、他のグループの代謝産物が生合成されたことを意味する。
【0110】
図13は、代謝体分析結果を示した図であって、
図13aは、PCA(Principal Component Analysis)を示し、
図13bは、PLS-DA(Partial Least Squares Discriminant Analysis)を示した図である。2日目でのグループ間のPCA(主成分分析)結果、PC1(9.5%)によって[対照区、処理区1(295nm+0.1W)、処理区2(295nm+0.3W)]と[処理区4(315+0.7W)、処理区5(UV-A)]とに区分されることを確認できた。また、PLS-DAを通じて5つのグループ内の相違する代謝体を確認できた。(VIP>1.0)本実験例において、LTQ-IT-MS分析が行われ、このために、合計150個のケール(個体当たり約0.5g)を用いた。
【0111】
実験例10:光照射後の植物体内の代謝体同定結果(2日目)
【0112】
実験例9で説明したように、PLS-DAを通じて2日内に5つの処理区の相違する代謝体を確認(VIP>1.0、p-value<0.05)し、次に、ケンペロールグリコシド(Kaempferol glycosides)、ヒドロケイ皮酸(hydroxycinnamic acids)系列を含む合計21個の代謝体を同定した。表4は、代謝体の同定結果である。
【0113】
【0114】
実験例11:光照射後の植物体内の代謝体分析(2日目)
【0115】
図14aから
図14eはケンペロール類、
図15aから
図15eはヒドロケイ皮酸類、
図16は、未確認の化合物に関する代謝体分析(LTQ-IT-MS)結果を示す。
【0116】
以下の各実施例において、各グラフのx軸は、対照区、処理区1、処理区2、処理区3、及び処理区4を順次に示したものであって、対照区、処理区1、処理区2、処理区3、処理区4は、それぞれControl、295nm+0.1W、295nm+0.3W、315nm+0.7W、及びUV-Aで表示した。
【0117】
PLS-Dを通じて相違する代謝体を分析した結果、ケンペロール(Kaempferol)系列のケンペロール-3-O-カフェオイル-ソホロシド-7-O-K-グルコシド(Kaempferol-3-O-caffeoyl-sophoroside-7-O-K-glucoside)は、対照区に比べて295nm処理区と紫外線A処理区で、ケンペロール-3-O-トリグルコシド-7-O-D-ジグルコシド(Kaempferol-3-O-triglucoside-7-O-D-diglucoside)は、295nm処理区でのみ増加した。ケンペロール-3-O-ソホロトリオシド-7-O-ソホロシド-ジ-シナピン酸(Kaempferol-3-O-sophorotrioside-7-O-sophoroside-di-sinapic acid)は、一部の処理区(処理区1)では対照区に比べて含量が高い傾向を示したが、残りの一部の処理区では、対照区に比べて含量が類似したり低い傾向も共に示した。ケンペロール-3-O-ソホロトリオシド-7-O-グルコシド-フェルラ酸/シナピン酸(Kaempferol-3-O-sophorotrioside-7-O-glucoside-ferulic/sinapic acid)は、295nm+0.1Wで含量の高い傾向があり、ケンペロール-3-O-シナポイルフェルロイルトリグルコシド-7-O-グルコシド(Kaempferol-3-O-sinapoylferuloyltriglucoside-7-O-glucoside)は、295nm+0.1Wで対照区に比べて増加したことを確認した。ヒドロキシケイ皮酸(Hydroxycinnamic acids)系列の場合、1,2-ジシナポイルゲンチオビオシド(1,2-Disinapoylgentiobioside)、1-シナポイル-2-フェルロイルゲンチオビオース(1-sinapoyl-2-feruloyl gentiobiose)、1,2-ジフェルロイルゲンチオビオース(1,2-diferuloylgentiobiose)、1,2,2'-トリシナポイルゲンチオビオシド(1,2,2'-Trisinapoylgentiobioside)、2-フェルロイル-1,2'-ジシナポイルゲンチオビオース(2-Feruloy1-1,2'-disinapoylgentiobiose)は、いずれも紫外線Bの295nm処理区で対照区に比べて増加する傾向を示したが、315nm+0.7W、UV-Aでは対照区に比べて減少したり類似する結果を示した。
【0118】
<2日目の代謝体分析結果評価>
【0119】
前記のように、ケンペロール系列は、概して紫外線B処理区(処理区1(295nm+0.1W)及び処理区2(295nm+0.3W))では、対照区に比べて増加する傾向を示し、残りの二つの処理区(処理区3(315nm+0.7W)及び処理区4(UV-A))では、対照区に比べて減少したり類似する結果を示した。
【0120】
ヒドロケイ皮酸系列は、ケンペロール系列と同様に、紫外線B処理区では対照区に比べて増加する結果を示し、残りの二つの処理区では対照区に比べて減少したり類似する傾向を示すことを確認した。
【0121】
実験例12:光照射後の代謝体分析(8日目)
【0122】
紫外線Aと紫外線Bをそれぞれ処理したとき、紫外線Bの刺激でのみ生成される特定の生理活性物質を確認するために8日目に代謝体分析を実施した。ここで、処理区及び対照区の条件は、8日目であることのみが異なり、2日目の代謝体分析と同一であった。
【0123】
図17は、代謝体分析結果を示した図であって、
図17aは、PCA(Principal Component Analysis)を示し、
図17bは、PLS-DA(Partial Least Squares Discriminant Analysis)を示した図である。8日目でのグループ間のPCA(主成分分析)結果、PC1(15.9%)によって[対照区(control)、処理区1(295nm+0.1W)]と[(処理区3(315nm+0.7W)、処理区4(紫外線A)]とに区分されることを確認できた。また、PLS-DAを通じて、4つのグループ内の相違する代謝体を確認(VIP>1.0)できた。本実験例において、LTQ-IT-MS分析が行われ、このために、合計150個のケール(個体当たり約0.5g)を用いた。
【0124】
実験例13:光照射後の植物体内の代謝体同定結果(8日目)
【0125】
PLS-DAを通じて8日内に4つの処理区(Con/295+0.1W/315+0.7W/UV-A)の相違する代謝体を確認(VIP>1.0、p-value<0.05)し、次に、ケンペロールグリコシド及びヒドロケイ皮酸系列を含む合計18個の代謝体を同定した。表5は、代謝体の同定結果である。
【0126】
【0127】
実験例14:光照射後の植物体内の代謝体同定結果(8日目)
【0128】
【0129】
図18aから
図18gを参照すると、紫外線B処理をした処理区2(295nm+0.1W)では、対照区に比べてケンペロールの含量が増加する傾向を示し、処理区3(315nm+0.7W)では、対照区と類似したり減少し、処理区3(UV-A)では、対照区に比べてケンペロールの含量が減少した。
【0130】
図19aから
図19eを参照すると、紫外線Bと紫外線A処理区では、いずれも対照区に比べて処理強度によってヒドロケイ皮酸の含量が減少した。
【0131】
より詳細には、8日目には、[対照区、295nm+0.1W]と[315+0.7W、UV-A]とに区分され、代謝体を分析した結果、ケンペロール(Kaempferol)系列では、ケンペロール-3-カフェオイルジグルコシド-7-O-ジグルコシド(Kaempferol-3-caffeoyldiglucoside-7-O-diglucoside)、ケンペロール-3-(2-カフェオイルソホロシド)7-グルコシド (Kaempferol-3-(2-caffeoylsophoroside)7-glucoside)、ケンペロール-3-シナポイル-ジグルコシド-7-ジグルコシド(Kaempferol-3-sinapoyl-diglucoside-7-diglucoside)、ケンペロール-3-シナポイル-ジグルコシド-7-グルコシド(Kaempferol-3-sinapoyl-diglucoside-7-glucoside)、ケンペロール-3-(2-フェルロイルソホロシド)7-グルコシド(Kaempferol-3-(2-feruloylsophoroside)7-glucoside)、ケンペロール-3-O-ソホロトリオシド-7-O-ソホロシド-フェルラ酸/シナピン酸(Kaempfrol-3-O-sophorotrioside-7-O-sophoroside-ferulic/sinapic acid)、ケンペロール-3-ジシナポイルトリグルコシド-7-グルコシド (Kaempferol-3-disinapoyltriglucoside-7-glucoside)の7つの物質は、いずれも295nm+0.1Wで対照区に比べて増加する傾向を示した。ヒドロキシケイ皮酸(Hydroxycinnamic acids)系列では、シナポイル-フェルロイル-トリグルコシド (sinapoyl-feruloyl-triglucoside)、1,2-ジシナポイルゲンチオビオース(1,2-Disinapoylgentiobiose)、2-フェルロイル-1-シナポイルゲンチオビオース(2-Feruloyl-1-sinapoylgentiobiose)、1,2,2'-トリシナポイルゲンチオビオシド(1,2,2'-Trisinapoylgentiobioside)、2-フェルロイル-1,2'-ジシナポイルゲンチオビオース(2-Feruloyl-1,2'-disinapoylgentiobiose)は、紫外線波長が長いほど減少する傾向を確認できた。
【0132】
<8日目の代謝体分析結果評価>
【0133】
前記のように、ケールの全体PCA結果、時間別の流れによって変化する様相が確認され、8日目の時期の処理区で他の時期に比べて発光ダイオード処理によって区分される結果を示した。8日目の4つの処理区間のPCA結果、PC1(15.9%)によって[control、295nm+0.1W]と[315nm+0.7W、UV-A]に区分された。
【0134】
PLS-DAを通じて相違する代謝体を分析し、合計18個の代謝体を同定した。ケンペロール系列は、紫外線B処理区(295nm+0.1W)で対照区に比べて増加する傾向を示し、残りの二つの処理区[315nm+0.7W、UV-A]では、対照区に比べて減少したり類似する結果を示した。ヒドロケイ皮酸系列は、発光ダイオード処理及び強度によって対照区で全体的に減少することを確認した。
【0135】
上述した全体の実験例を見ると、栽培中のケールに紫外線Bを照射したとき、一部の処理区(295nm+0.1W、315nm+0.3W、315nm+0.7W)でケールの生長が減少することなく、機能性物質(総フェノール含量、抗酸化度)が増大する結果を得ることができ、特に、紫外線B領域で295nmを照射する場合、紫外線Aと異なる生理活性物質が生成されることを確認できた。これを通じて、紫外線Bが照射されたケールのみの機能性物質が増大する結果を得ることができた。
【0136】
また、紫外線B発光ダイオードを照射する場合、295nmの波長帯で0.3Wの強さが植物体に害を与えるストレスになった一方で、0.1Wの強さは、植物の生理活性物質の生合成増進のための照射条件であることを確立できた。
【0137】
<本発明の一実施例に係る光源の活用>
【0138】
本発明の一実施形態に係る光源は、植物栽培用に使用され得るので、光源が設置された植物工場、植物栽培装置、温室などに適用され得る。
【0139】
図21は、本発明の一実施形態に係る栽培装置を概念的に示した図である。
図21に示した栽培装置は、一例として小型栽培装置を示したものであって、これに限定されない。特に、本発明の一実施形態に係る栽培装置は、大規模植物工場にも使用され得るが、本実施形態では、一例として小型栽培装置を説明する。
【0140】
図21を参考にすると、本発明の一実施形態に係る栽培装置100は、植物を育てることができる内部空間を有するハウジング60と、前記ハウジング60内に設けられ、光を出射する光源30とを含む。
【0141】
ハウジング60は、内部に植物が提供され、育ち得る空間をその内部に提供する。ハウジング60は、外部の光を遮断できるボックス形態で提供されてもよい。本発明の一実施形態において、ハウジング60は、上部方向に開口された下部ケース61と、下部方向に開口された上部ケース63とを含むことができる。下部ケース61と上部ケース63は、外部光を遮断するボックス形態になるように締結されてもよい。
【0142】
下部ケース61は、底部と、底部から上向きに延長された側壁部とを含む。上部ケース63は、カバー部と、カバー部から下向きに延長された側壁部とを含む。下部ケース61と上部ケース63の各側壁部は、互いに噛み合って締結される構造を有することができる。下部ケース61と上部ケース63は、ユーザーの意図によって締結又は分離することができ、これによって、ユーザーがハウジング60を開放又は閉鎖することができる。
【0143】
ハウジング60は、多様な形状、例えば、大体直方体の形状を有することができ、又は円筒形状を有することができる。しかし、ハウジング60の形状は、これに限定されなく、これと異なる形状で提供されてもよい。
【0144】
ハウジング60は、内部に提供された植物が生長できる環境を提供する。ハウジング60には、複数個の植物が提供されて生長する場合にも、これを収容できる大きさで提供され得る。併せて、ハウジング60の大きさは、植物栽培装置100の用途によって変わり得る。例えば、植物栽培装置100が家庭で使用する小規模植物栽培に用いられる場合、ハウジング60は相対的に小さくてもよい。植物栽培装置100が商業的に植物を栽培して販売する際に使用される場合、ハウジング60は相対的に大きくてもよい。
【0145】
本発明の一実施例において、ハウジング60は、ハウジング60の外側の光がハウジング60の内部に入り込まないように光を遮断することができる。よって、ハウジング60の内部には、外部と隔離された暗室環境が提供され得る。これによって、外部の光が必要以上にハウジング60の内部に提供された植物に照射されることを防止することができる。特に、ハウジング60は、外部の可視光線が植物に照射されることを防止することができる。ただし、場合によっては、ハウジング60は、一部がオープンになり、外部の光をそのまま受けられるように設計されてもよい。
【0146】
本実施例において、ハウジング60内の空間は一つで提供されてもよい。しかし、これは、説明の便宜のためのものであって、複数個の区域に分離されてもよい。すなわち、ハウジング60内には、ハウジング60内の空間を多数個に分ける各隔壁が設けられてもよい。
【0147】
光源は、ハウジング60内の空間の植物に光を提供する。光源は、上部ケース63や下部ケース61の内面上に設けられる。本発明の一実施例において、光源は、上部ケース63のカバー部上に提供されてもよい。本実施例では、一例として、上部ケース63のカバー部の内面上に光源が設けられたことを示したが、これに限定されない。例えば、本発明の他の実施例において、光源は、上部ケース63の側壁部上に設けられてもよい。又は、本発明の更に他の実施例において、光源は、下部ケース61の側壁部に設けられてもよく、例えば、側壁部の上端に設けられてもよい。又は、本発明の更に他の実施例において、光源は、上部ケース63のカバー部、上部ケース63の側壁部、及び下部ケース61の側壁部のうち少なくとも1ヶ所に設けられてもよい。
【0148】
ハウジング60内の空間には、植物が栽培されやすいように、例えば、水耕栽培が容易になるように栽培台70が設けられてもよい。栽培台70は、ハウジング60の底部から上部方向に離隔して配置された板状のプレート71からなってもよい。プレート71には、一定の大きさの貫通孔73が設けられてもよい。栽培台70は、プレート71の上面に植物が置かれて育つようにするためのものであって、水を供給したとき、供給された水が排水され得るように複数個の貫通孔73を有することができる。貫通孔73は、植物が下部に流されないようにする大きさで設けられてもよい。例えば、貫通孔73の直径は、植物より小さくてもよい。栽培台70と下部ケース61の底部との間の空間は、排水された水が貯蔵される水槽として機能することができる。これによって、栽培台70の貫通孔73を介して下部に排水された水は、下部ケース61の底部と栽培台70との間の空間に貯蔵され得る。
【0149】
しかし、本発明の一実施例によると、イネ科植物は、水耕栽培以外の方法でも栽培可能であり、この場合、ハウジング60内の空間には、イネ科植物に必要な水分及び/又は養分が供給できるように水、培地、土などが提供されてもよく、このとき、ハウジング60はコンテナとして機能することができる。培地や土などには、植物が育つことができる養分、例えば、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)などを含むことができる。植物は、その種類によって培地内に埋まった形態で提供されてもよく、培地の表面上に置かれた形態で提供されてもよい。
【0150】
栽培台70の大きさ及び形態は、ハウジング60の形態及び第1光源と第2光源の提供形態によって変わり得る。栽培台70の大きさ及び形態は、栽培台70上に提供された植物が第1光源及び第2光源から照射される光の照射範囲内に入ってくるように構成されてもよい。
【0151】
ハウジング60内には、植物に水分を供給する水分供給装置が設けられてもよい。水分供給装置は、ハウジング60の上端、例えば、上部ケース63のカバー部の内面上に設けられ、ハウジング60の栽培台70上に水を噴射する形態で構成されてもよい。ただし、水分供給装置の形態は、上述したものに制限されず、ハウジング60の形状及び栽培台70の配置形態によって変わり得る。また、別途の水分供給装置を用いることなく、ユーザーがハウジング60内に直接水分を供給することもできる。
【0152】
水分供給装置は、一つ又は複数個設けられてもよい。水分供給装置の個数は、ハウジングの大きさによって変わり得る。例えば、相対的に小さい家庭用植物栽培装置の場合、ハウジングが小さいので、一つの水分供給装置が設けられてもよい。その一方で、相対的に大きい商業用植物栽培装置の場合、ハウジングが大きいので、複数個の水分供給装置が設けられてもよい。しかし、水分供給装置の個数は、これに限定されず、多様な個数で多様な位置に設けられ得る。
【0153】
水分供給装置は、ハウジング60に設けられた水槽又はハウジング60の外部の水栓に接続されてもよい。併せて、水分供給装置は、水中に浮遊する汚染物質が植物に提供されないようにろ過装置をさらに含むことができる。ろ過装置は、活性炭、不織布などのフィルターを含むことができ、これによって、ろ過装置を経た水は浄水されたものになり得る。ろ過装置は、場合によって光照射フィルターをさらに含むことができるが、光照射フィルターは、紫外線などを水に照射し、水中に存在する細菌、バクテリア、カビ胞子などを除去することができる。水分供給装置が上述した各ろ過装置を含むことによって、水を再活用したり雨水などを直ぐ栽培に使用する場合にも、ハウジング60の内部及び植物が汚染するおそれがない。
【0154】
水分供給装置から提供される水は、別途の養分がなくても水自体(例えば、精製水)でのみ提供されてもよいが、これに限定されず、植物の生長に必要な養分を含むことができる。例えば、水には、ポタシウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)などの物質や、ナイトレート(Nitrate)、ホスフェート(Phosphate)、サルフェート(Sulfate)、クロライド(Cl)などが含有されてもよい。例えば、サックス(Sachs)液、クノップ(Knop)液、ホーグランド(Hoagland)液、ヒューイット(Hewitt)液などが水分供給装置から供給されてもよい。
【0155】
本発明の一実施形態によると、前記光源を用いて植物を栽培することができる。
【0156】
本発明の一実施形態に係る植物の栽培方法は、植物を発芽させる段階と、前記発芽された植物に可視光線波長帯域の光を提供する段階とを含むことができる。植物に提供される光は、上述した各実施形態による各光源から出射されたものであって、前記可視光線波長帯域の光は、光スペクトルが異なる第1から第4光のうち少なくとも二つの光、又は三つの光を含むことができる。
【0157】
以上では、本発明の好適な実施形態を参照して説明したが、該当の技術分野で熟練した当業者又は該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更可能であることを理解できるだろう。
【0158】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載した内容に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって定められるべきであろう。
【国際調査報告】