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特表2023-509634乳酸塩被覆粒子を含む粉末及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】乳酸塩被覆粒子を含む粉末及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230302BHJP
   A23L 2/44 20060101ALI20230302BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230302BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230302BHJP
   C07C 59/08 20060101ALI20230302BHJP
   C07C 53/10 20060101ALI20230302BHJP
   C07C 53/122 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L2/00 P
A23L2/52
A23L5/00 F
A23L29/00
C07C59/08
C07C53/10
C07C53/122
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540416
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020087997
(87)【国際公開番号】W WO2021136787
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】20150170.7
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オルロビッチ, マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ルーゼン, ランベルトゥス ヘンリキュス エリザベス
【テーマコード(参考)】
4B035
4B117
4H006
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE07
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG06
4B035LK19
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP36
4B035LP43
4B117LC15
4B117LE01
4B117LK01
4B117LK08
4B117LL07
4B117LL09
4B117LP03
4B117LP16
4B117LP20
4H006AA01
4H006AB10
(57)【要約】
本発明は、乳酸塩被覆粒子を含む粒子状製品であって、#少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する1つ又は複数の担体粒子を含み、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである;#前記1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも80wt.%の乳酸ナトリウムを含有する;#前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムを1:2~2:1の重量比で含有する;並びに、#40~1,500μmの範囲の粒径を有する、という特性を有する少なくとも10wt.%の乳酸塩被覆粒子を含有する、粒子状製品を提供する。乳酸ナトリウムで被覆されたC1-2アルカンカルボン酸塩粒子の形態である乳酸塩被覆粒子を含む粒子状製品は、これらの有機酸塩のドライブレンドを上回るいくつかの利点を提供する。本発明はまた、食料品又は飲料における本発明の粒子状製品の使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸塩被覆粒子を含む粒子状製品であって、以下の特性を有する少なくとも10wt.%の乳酸塩被覆粒子を含有する、粒子状製品。
前記乳酸塩被覆粒子は少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する1つ又は複数の担体粒子を含み、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、
前記乳酸塩被覆粒子は前記1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも80wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、
前記乳酸塩被覆粒子は前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムを1:2~2:1の重量比で含有する、及び、
前記乳酸塩被覆粒子はレーザー回折を使用して測定される、40~1,500μmの範囲の粒径を有する。
【請求項2】
前記1つ又は複数の担体粒子が、少なくとも90wt.%の前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する、請求項1に記載の粒子状製品。
【請求項3】
前記コーティング層が少なくとも90wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、請求項1又は2に記載の粒子状製品。
【請求項4】
前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムが、2:3~3:2の重量比で前記乳酸塩被覆粒子中に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項5】
1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムの組み合わせが、前記乳酸塩被覆粒子の少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項6】
前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩が、酢酸ナトリウム水和物、無水酢酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項7】
前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩が、プロピオン酸カルシウム水和物、無水プロピオン酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項8】
前記乳酸塩被覆粒子が、100~900μmの範囲内の平均径D[4,3]を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項9】
前記製品が、0.45~0.75g/mlの範囲内の嵩密度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子状製品。
【請求項10】
食料品又は飲料を調製する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子状製品を前記食料品又は前記飲料の0.1~10重量%の濃度で組み込むステップを含む、方法。
【請求項11】
前記粒子状製品が、前記食料品又は前記飲料の重量に対して0.3~1.0%の乳酸塩被覆粒子を提供する濃度で組み込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子状製品を製造する方法であって、
少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する担体粒子の流動床を準備するステップであり、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、ステップと、
前記流動床に32~75wt.%の乳酸ナトリウムを含有する水性液体をスプレーすることにより、前記担体粒子をスプレーコーティングするステップと、
乳酸塩でスプレーコーティングされた前記担体粒子を乾燥させるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記水性液体が35~72wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項14】
前記水性液体が、スプレーされる際に40~100℃の温度を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体粒子の少なくとも90wt.%が20~1000μmの範囲内の粒径を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、C1-2アルカンカルボン酸塩(酢酸塩又はプロピオン酸塩)及び乳酸ナトリウムを含有する粒子を含む粉末に関する。より詳細には、これらの粒子は、C1-2アルカンカルボン酸塩から本質的になる1つ又は複数の担体粒子と、これらの担体粒子を被覆するコーティング層とを含み、前記コーティング層は乳酸ナトリウムから本質的になる。
【0002】
本発明の乳酸塩被覆粒子を含有する粉末は、食品の保存料として、特に加工肉製品において適切に使用されてもよい。
【0003】
本発明は、乳酸塩被覆粒子及び他の粒子状成分のブレンドにも関する。さらに、本発明は、食料品又は飲料の調製における、乳酸塩被覆粒子の使用、及びこれらの粒子を含有するブレンドの使用に関する。最後に、本発明は乳酸塩被覆粉末を製造する方法を提供する。
【0004】
[発明の背景]
酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、及び酢酸カルシウムは、食品添加剤として、例えば保存料として使用される。これらの酢酸塩は、適切な塩基(例えばNaOH、KOH、又はCa(OH))で酢を中和することにより適切に製造されてもよい。あるいは、酢酸塩は化学的に製造されてもよい。
【0005】
プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、及びプロピオン酸カルシウムも食料品の保存料として使用される。これらのプロピオン酸塩は、適切な基質をプロピオニバクテリウムで発酵させ、続いて適切な塩基で中和することにより製造されてもよい。あるいは、プロピオン酸塩は化学的に製造されてもよい。
【0006】
乳酸ナトリウムは典型的には、糖原料を発酵させ、続いて得られる乳酸を中和することにより製造される。乳酸ナトリウムは保存料、pH調整剤、及び膨化剤として作用する。乳酸ナトリウムは吸湿性が高い。乳酸ナトリウムは水を非常に急速に吸収し、その際に粘性の流体を形成する。
【0007】
Taniguchiら(Production of a mixture of antimicrobial organic acids from lactose by co-culture of Bifidobacterium longum and Propionibacterium freudenreichii、Biosci Biotechnol Biochem.1998年8月;62(8):1522~7頁)は、ミクロコッカス・ルテウス、緑膿菌種、及び黄色ブドウ球菌を試験微生物として使用して、3種の有機酸(乳酸、酢酸、及びプロピオン酸)の標準溶液の抗菌活性を比較した研究を記載している。
【0008】
Tangkhamら(Effect of sodium lactate and sodium acetate on shelf-life of raw chicken breasts、Afr.J.Food Sci.、6巻(13)、375~380頁、2012年7月15日)は、生の鳥胸肉の微生物集団及び保存可能期間に対する乳酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムの効果を評価するために行われた実験を記載している。生の鶏胸肉に、0、0.87、若しくは1.74%の乳酸ナトリウム、又は1.74%酢酸ナトリウム、3.48%酢酸ナトリウム、又は1.74%乳酸ナトリウム及び1.74%酢酸ナトリウムの組み合わせを含有する処理をランダムに施した。すべての処理はリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び様々なレベルの蒸留水を含有するものとした。試料を冷蔵し(2~3℃)、一般生菌数(APC)を3日ごとに計測した。3日目から15日目の細菌増殖の低減において1.74%乳酸ナトリウム及び1.74%酢酸ナトリウムの組み合わせが最も効果的であった。酢酸ナトリウムが微生物増殖の阻害において最も効果的であった。
【0009】
Opti.Form(登録商標)Powder Ace S50は、微生物増殖阻害剤としてCorbion Puracにより販売されている市販品である。この製品は乳酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムの粉末ブレンドである。製品の組成は49.5%の乳酸ナトリウム、49.5%の酢酸ナトリウム、及び0.5~1.0%の水である。この製品は乳酸ナトリウムの存在に起因して吸湿性が高い。また、乳酸ナトリウム粒子は押出成形により製造されるという事実に起因して非常に大きい。
【0010】
国際公開第2019/091970号は、以下の特性を有する少なくとも10wt.%の被覆酢酸塩粒子を含む粒子状製品を記載している。
・被覆酢酸塩粒子は酢酸ナトリウム水和物、無水酢酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも80wt.%の酢酸ナトリウム成分を含有する1つ又は複数の担体粒子を含む、
・被覆酢酸塩粒子は1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも60wt.%の酢酸カリウムを含有する、
・被覆酢酸塩粒子はカリウム及びナトリウムを0.4:1~5:1のモル比で含有する、並びに
・被覆酢酸塩粒子は粒径が40~1,000μmの範囲内である。
【0011】
国際公開第2019/068798号は、以下の特性を有する少なくとも10wt.%の被覆乳酸塩粒子を含む粒子状製品を記載している。
・被覆乳酸塩粒子は乳酸カルシウム水和物、無水乳酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも80wt.%の乳酸カルシウム成分を含有する1つ又は複数の担体粒子を含む、
・被覆乳酸塩粒子は1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも60wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、
・被覆乳酸塩粒子はナトリウム及びカルシウムを2.1:1~5:1のモル比で含有する、並びに
・被覆乳酸塩粒子は粒径が120~1,200μmの範囲内である。
【0012】
[発明の概要]
発明者らは、粉末形態でC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムを組み合わせる方法であって、これらの有機酸塩のドライブレンドを上回る重要な利点を提供する、方法を見出した。より詳細には、発明者らは、C1-2アルカンカルボン酸塩粒子を乳酸ナトリウムの層でコーティングすることにより、C1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムのドライブレンドよりも良好な取り扱い特性(流動挙動及び発塵性)、良好な安定性、良好な均質性、及びより少ない脱混合の傾向を有する、乳酸塩被覆粉末を製造できることを見出した。さらに、発明者らは、小さい粒子サイズであるこれらの乳酸塩被覆粒子を製造することが可能であることを見出した。
[発明の概要]
【0013】
したがって、本発明は、以下の特性を有する少なくとも10wt.%の乳酸塩被覆粒子を含む粒子状製品を提供する。
・前記乳酸塩被覆粒子は少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する1つ又は複数の担体粒子を含み、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、
・前記乳酸塩被覆粒子は前記1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも80wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、
・前記乳酸塩被覆粒子は1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムを1:2~2:1の重量比で含有する、及び、
・前記乳酸塩被覆粒子は40~1,500μmの範囲内の粒径を有する。
【0014】
本発明の別の態様は、食料品又は飲料を調製する方法であって、食料品又は飲料の0.1~10重量%の濃度で上記の粒子状製品を組み込むステップを含む、方法に関する。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、本発明の粒子状製品を製造する方法であって、
少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する担体粒子の流動床を準備するステップであり、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、ステップと、
前記流動床に32~75wt.%の乳酸ナトリウムを含有する水性液体をスプレーすることにより、前記担体粒子をスプレーコーティングするステップと、
乳酸塩でスプレーコーティングされた担体粒子を乾燥させるステップと
を含む、方法に関する。
【0016】
[発明の詳細な説明]
本発明の第1の態様は、乳酸塩被覆粒子を含む粒子状製品であって、以下の特性を有する少なくとも10wt.%の乳酸塩被覆粒子を含有する、粒子状製品に関する。
・前記乳酸塩被覆粒子は少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する1つ又は複数の担体粒子を含み、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、
・前記乳酸塩被覆粒子は前記1つ又は複数の担体粒子を被覆するコーティング層を含み、前記コーティング層が少なくとも80wt.%の乳酸ナトリウムを含有する、
・前記乳酸塩被覆粒子は1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムを1:2~2:1の重量比で含有する、及び、
・前記乳酸塩被覆粒子はレーザー回折を使用して測定される、40~1,500μmの範囲内の粒径を有する。
【0017】
本明細書で使用する「粒子状製品」という用語は、粉末又は顆粒などの粒子で構成されている製品を指す。
【0018】
本明細書で使用する「C1-2アルカンカルボン酸塩」という用語は、酢酸塩、プロピオン酸塩、及びそれらの組み合わせを指す。
【0019】
本明細書で使用する「乳酸ナトリウム」という用語は、無水乳酸ナトリウム(CHCH(OH)COONa)を指す。
【0020】
本明細書において「乳酸塩被覆粒子」に言及する場合はいつでも、別段の指示がない限り、上記で指定されるような特性、又は本明細書で指定されるようなこれらの乳酸塩被覆粒子の好ましい実施形態の特性を有する、乳酸塩被覆粒子を意味する。
【0021】
本明細書において粒子の粒径に言及する場合はいつでも、別段の指示がない限り、この粒径はレーザー回折(Malvern Mastersizer 3000)を使用して測定される粒径である。
【0022】
本発明の乳酸塩被覆粒子は好ましくは3.5wt.%未満、より好ましくは3.0wt.%未満、最も好ましくは2.5wt.%未満の水分含量を有する。本明細書において材料の水分含量に言及する場合はいつでも、これは典型的にはKarl Fischer滴定法により測定される水分含量であり、酢酸ナトリウム三水和物(CNaO)などの水和物に含有される結晶水を含む。
【0023】
本発明の粒子状製品の水分含量は、典型的には3wt.%未満、好ましくは2wt.%未満、より好ましくは1.5wt.%未満、最も好ましくは1.0wt.%未満である。ここで粒子状製品の水分含量は乳酸塩被覆粒子に含有されている水分を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、粒子状製品は、少なくとも20wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、さらにより好ましくは少なくとも80wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%の乳酸塩被覆粒子を含有する。
【0025】
乳酸塩被覆粒子に加えて、粒子状製品は1つ又は複数の他の粒子状成分を適切に含有していてもよい。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、乳酸塩被覆粒子は100~900μmの範囲内、より好ましくは200~800μmの範囲内、最も好ましくは300~700μmの範囲内の平均径D[4,3]を有する。ここで「平均径D[4,3]」はDe Brouckere平均径又は体積平均径を指し、実際の粒子と同じ体積の球状の粒子を仮定して、加重平均体積として定義することができる。この平均径は以下の式:
【数1】

[式中、
Di=サイズ等級iの平均粒径、
=サイズ等級iの粒子の数]
により計算される。
【0027】
さらなる好ましい実施形態において、乳酸塩被覆粒子の少なくとも80wt.%は100~1200μmの範囲内、より好ましくは200~1,000μmの範囲内、最も好ましくは250~900μmの範囲内の粒径を有する。
【0028】
本発明の粒子状製品は、好ましくは0.45~0.75g/mlの範囲内、より好ましくは0.5~0.70g/mlの範囲内、最も好ましくは0.52~0.65g/mlの範囲内の嵩密度を有する。本明細書で使用する「嵩密度」という用語は、ある量の粒子状製品の質量を前記量が占めている総体積で割ったものを指す。総体積は、粒子体積、粒子間空隙体積、及び内部細孔体積を含む。本明細書において言及される嵩密度は、「タップ」密度、すなわち体積のさらなる変化がなくなるまで機械的にタップされた後の製品の嵩密度である(最低で180タップの公称カウント)。
【0029】
乳酸塩被覆粒子内の1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは少なくとも85wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%、最も好ましくは少なくとも92wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する。
【0030】
担体粒子中の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩は、好ましくは大部分が無水C1-2アルカンカルボン酸塩からなる。したがって、好ましい実施形態において、1つ又は複数の担体粒子は、少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも85wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%の1種又は複数の無水C1-2アルカンカルボン酸塩を含有する。
【0031】
本発明の有利な実施形態において、1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩は、酢酸ナトリウム水和物、無水酢酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩は無水酢酸ナトリウムである。
【0032】
別の有利な実施形態によれば、1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩は、プロピオン酸カルシウム水和物、無水プロピオン酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩は無水プロピオン酸カルシウムである。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態において、乳酸塩被覆粒子中のナトリウムの総量は、好ましくは20~25wt.%の範囲内、より好ましくは22~24wt.%の範囲内である。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態において、乳酸塩被覆粒子は2~15wt.%のナトリウム及び6~19wt.%のカルシウム、より好ましくは3~12wt.%のナトリウム及び8~15wt.%のカルシウムを含有する。
【0035】
被覆乳酸塩粒子のコーティング層は、好ましくは少なくとも85wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%、最も好ましくは少なくとも92wt.%の乳酸ナトリウムを含有する。
【0036】
本発明の乳酸塩被覆粒子は、乳酸ナトリウムを含有するコーティング層に加えて、1つ又は複数のさらなるコーティング層を含有していてもよい。しかし本発明の利益は、乳酸塩被覆粒子がさらなるコーティング層を含有しない場合に特に認識される。
【0037】
別の好ましい実施形態において、1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムは、2:3~3:2の重量比で、最も好ましくは3:4~4:3の重量比で乳酸塩被覆粒子中に存在する。
【0038】
好ましい実施形態によれば、C1-2アルカンカルボン酸塩及び乳酸ナトリウムの組み合わせは、乳酸塩被覆粒子の少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%、最も好ましくは少なくとも95wt.%を構成する。
【0039】
本発明の乳酸塩被覆粒子に含有されている1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは20~1000μmの範囲内、より好ましくは100~800μmの範囲内、最も好ましくは150~750μmの範囲内の中央値粒径を有する。
【0040】
本発明の別の態様は、食料品又は飲料を調製する方法であって、本明細書において定義されるような粒子状製品を、食料品又は飲料の0.1~10重量%、好ましくは0.3~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%の濃度で組み込むステップを含む、方法に関する。
【0041】
好ましくは、粒子状製品は、食料品又は飲料の重量の0.2~1.5%、より好ましくは0.4~1.2%の乳酸塩被覆粒子を提供する濃度で、食料品又は飲料中に組み込まれる。
【0042】
本発明の方法は好ましくは、食料品全体に粒子状製品を分布させるステップ、又は飲料全体に粒子状製品を分散させるステップを含む。
【0043】
好ましくは、本発明の方法は、粒子状製品を食料品中に組み込むステップを含む。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、食料品は肉製品、より好ましくは加工肉製品である。加工肉製品の例としては、
・生鮮加工肉製品(例えばハンバーグ、フライドソーセージ、ケバブ、チキンナゲット)
・塩漬け肉片(例えば生の塩漬け牛肉、生ハム、調理牛肉、調理ハム、再構成製品、及びベーコン)
・生-加熱調理済み製品(例えばフランクフルトソーセージ、モルタデッラ、リオナー、及びミートローフ)
・プレクック-加熱調理済み製品(例えばレバーソーセージ、ブラッドソーセージ、及びコンビーフ)
・生(乾燥)-発酵ソーセージ(例えばサラミ)
・乾燥肉
が挙げられる。
【0045】
最も好ましくは、本発明の方法は塩漬け肉片及び生(乾燥)-発酵ソーセージから選択される加工肉製品の調製に応用される。
【0046】
本発明のさらに別の態様は、本発明の粒子状製品を製造する方法であって、
・少なくとも80wt.%の1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する担体粒子の流動床を準備するステップであり、前記1種又は複数のC1-2アルカンカルボン酸塩がC1-2アルカンカルボン酸の無水金属塩及び水和金属塩から選択され、前記金属塩の金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属のカチオンである、ステップと、
・前記流動床に32~75wt.%の乳酸ナトリウムを含有する水性液体をスプレーすることにより、前記担体粒子をスプレーコーティングするステップと、
・乳酸塩被覆担体粒子を乾燥させるステップと
を含む、方法に関する。
【0047】
製造方法の好ましい実施形態において、担体粒子は少なくとも85wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%、最も好ましくは少なくとも92wt.%のC1-2アルカンカルボン酸塩を含有する。
【0048】
一実施形態において、1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも85wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%の無水酢酸ナトリウムを含有する。
【0049】
別の実施形態において、1つ又は複数の担体粒子は、好ましくは少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも85wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%の無水プロピオン酸カルシウムを含有する。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態において、担体粒子の少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%が、20~1000μmの範囲内、より好ましくは100~800μmの範囲内、最も好ましくは150~750μmの範囲内の粒径を有する。
【0051】
水性プロセスで採用される水性液体は、好ましくは35~73wt.%、より好ましくは45~70wt.%の乳酸ナトリウムを含有する。
【0052】
スプレーコーティングされた粒子の乾燥は、好ましくは乾燥用ガス流を粒子の流動床に通すことによりスプレーコーティングと同時に実現される。採用される乾燥用ガスは好ましくは空気、酸素、窒素及びそれらの組み合わせから選択される。
【0053】
同時のスプレーコーティング及び乾燥は、好ましくは70~160℃の範囲内、より好ましくは75~140℃の範囲内、最も好ましくは80~120℃の範囲内の乾燥用ガス温度を使用して行われる。
【0054】
同時のスプレーコーティング及び乾燥は、好ましくは水性液体を1.5~4barの圧力で、最も好ましくは2~3.5barの圧力でスプレーすることにより行われる。
【0055】
以下の非限定的な例により本発明をさらに説明する。
【実施例
【0056】
実施例1
本発明による乳酸塩被覆粒子を下記に説明されるようにGLATT(登録商標)流動床乾燥機において調製した。
【0057】
450μmの平均径D[4,3]を有する酢酸ナトリウム粉末(無水酢酸ナトリウム、Flevochemie社、オランダ)を出発原料として使用した。
【0058】
流動床乾燥機のバスケットに酢酸ナトリウム粉末を入れ、製品を流動化させながら70℃まで加熱した。
【0059】
乳酸ナトリウムの60%水溶液をスプレー液として使用した。この溶液を70℃で維持する。
【0060】
流動床が70℃の温度に到達したらスプレーを開始する。流入空気温度を80~100℃、スプレー圧力を3barで維持した。最初はスプレー量を低く維持し、およそ15wt.%の乳酸ナトリウムがスプレーされるまでゆっくりと上昇させた。次いでスプレー量を最大まで上昇させた。(排気中の17g/kgの水分、排気中で得られる最大混水量)。すべての乳酸ナトリウム溶液をスプレーすると、50wt.%酢酸ナトリウム及び50wt.%乳酸ナトリウムの組成に到達し、材料は1wt.%未満の水分含量まで乾燥され、冷却、及び排出された。
【0061】
このように製造された乳酸塩被覆粉末は平均径D[4,3]がおよそ620μmであった。
【0062】
実施例2
実施例1の酢酸塩-乳酸塩粉末を、酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウム(L-乳酸ナトリウム粉末、Corbion社、オランダ、水分含量1wt.%未満)の1:1(w/w)ドライブレンドと比較した。これらの2種の粉末の各々を1wt.%のシリカとブレンドして流動性を改善した。
【0063】
表1は、レーザー回折により測定される、酢酸塩-乳酸塩粉末及びドライブレンドの粒径分布を示す。D(x)は、粉末中の粒子のx% w/wがD未満であるような粒径を表す。
【0064】
【表1】
【0065】
酢酸塩-乳酸塩粉末はドライブレンドの平均粒径よりも著しく小さい平均粒径を有していただけでなく、ドライブレンドよりも1/2近く小さいスパン(D(90)-D(10))/D50も有する。
【0066】
酢酸塩-乳酸塩粉末の粒径分布は、均質性及び脱混合の傾向に関してより好ましい。酢酸塩-乳酸塩粉末が1種類の粒子からなるが一方ブレンドは2つの異なる種類の粒子で構成されるという事実もまた、均質性及び脱混合の傾向の視点から酢酸塩-乳酸塩粉末をより魅力的なものにする。
【0067】
実施例3
乳酸ナトリウムでコーティングされたプロピオン酸カルシウム粒子をGlatt流動床造粒機において調製した。
【0068】
450μmの平均径D[4,3]を有するプロピオン酸カルシウム粉末を出発物原料として使用した。乳酸ナトリウムの60%水溶液をスプレー液として使用した。この溶液を70℃で維持した。プロピオン酸カルシウムを流動床に充填し、流動化空気により95℃まで加熱した。この温度で5分間維持して、存在する可能性がある微量の水分を乾燥させた。スプレーを開始し、製品温度を70~80℃で維持した。流入空気温度を80~90℃で維持した。噴霧空気圧力を3barとした。試行中のスプレー量は5~8g/minの範囲で非常に低かった。
【0069】
プロピオン酸カルシウム粉末に30wt.%の乳酸ナトリウムが添加されたら、被覆粉末材料を乾燥、冷却し、造粒機から排出させた。このようにして製造された被覆粉末はおよそ500μmの平均径D[4,3]を有する。
【国際調査報告】