(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】モータ制御システム及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230302BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20230302BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20230302BHJP
H02P 29/028 20160101ALI20230302BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L9/18 J
B60L58/20
H02P29/028
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540598
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2020140926
(87)【国際公開番号】W WO2021136279
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911420460.9
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】▲喩▼▲軼▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】徐▲魯▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】杜智勇
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼阿喜
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲広▼明
【テーマコード(参考)】
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125BA00
5H125BB07
5H125BC29
5H125EE02
5H125EE03
5H125EE06
5H125EE07
5H125EE26
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC09
5H501EE08
5H501HA08
5H501HA09
5H501HB07
5H501HB16
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL35
5H501LL52
5H501MM09
5H501MM11
(57)【要約】
モータ制御システム及び車両であり、該モータ制御システム(1)は、モータ駆動モジュール(10)、マルチコア処理モジュール(20)、及び安全ロジックモジュール(30)を含み、マルチコア処理モジュール(20)は、主機能コア(21)及びロックステップ監視コア(22)を含み、主機能コア(21)は、サンプリングデータを取得し、サンプリングデータ、主機能コア(21)の動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態のいずれか1つに異常が発生する場合、ロックステップ監視コア(22)は、安全トリガー信号を出力し、安全ロジックモジュール(30)は、安全トリガー信号を受信すると、モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュール(10)に出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動モジュールと、
主機能コア及びロックステップ監視コアを含み、前記主機能コアがサンプリングデータを取得すると共に、前記サンプリングデータに基づいてモータ制御信号を生成し、前記ロックステップ監視コアが、主機能コアのサンプリングデータ、主機能コアの動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態を監視し、サンプリングデータ、主機能コアの動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態のいずれか1つに異常が発生する場合、駆動制御を制限し、安全トリガー信号を出力するマルチコア処理モジュールと、
前記マルチコア処理モジュールにそれぞれ接続され、前記安全トリガー信号を受信すると、前記モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュールに出力する安全ロジックモジュールと、
を含むことを特徴とするモータ制御システム。
【請求項2】
前記マルチコア処理モジュール及び前記モータ駆動モジュールにそれぞれ接続され、前記サンプリングデータを取得し、前記主機能コアが故障する場合、前記サンプリングデータに基づいて前記モータ制御信号を生成する補助制御モジュールを更に含み、
前記ロックステップ監視コアは、更に、前記補助制御モジュールが故障する場合、前記モータ制御信号が異常であるか否かを判定し、
前記モータ制御信号が異常であると、ロックステップ監視コアは、駆動制御を制限すると共に、安全トリガー信号を出力し、
安全ロジックモジュールは、前記マルチコア処理モジュールにそれぞれ接続され、前記安全トリガー信号を受信すると、前記モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュールに出力することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
電源信号を前記マルチコア処理モジュールに供給すると共に、前記マルチコア処理モジュールの動作状態を監視し、かつ前記マルチコア処理モジュールが故障する場合、安全制御信号を出力する電源管理モジュールを更に含み、
前記安全ロジックモジュールは、電源管理モジュールに接続され、安全制御信号を受信すると、モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュールに出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記電源管理モジュール及び前記モータ駆動モジュールにそれぞれ接続され、第1の給電停止信号を受信すると、前記モータ駆動モジュールへの給電を停止する低電圧電源モジュールを更に含み、
前記マルチコア処理モジュールは、前記低電圧電源モジュールに接続され、前記ロックステップ監視コアから出力された前記安全トリガー信号に応答し、前記モータ駆動モジュールが予想通りにロックステップ監視コアの安全トリガー信号に応答できない場合、ロックステップ監視コアは前記第1の給電停止信号を出力することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
前記低電圧電源モジュールは、
前記モータ駆動モジュール及び前記マルチコア処理モジュールに接続され、前記モータ駆動モジュールに給電すると共に、前記第1の給電停止信号を受信すると出力を停止する第1のDC/DCユニットと、
第1の逆流防止ダイオードにより前記第1のDC/DCユニット、前記電源管理モジュールにそれぞれ接続され、前記電源管理モジュールに給電する低電圧電源と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記電源管理モジュール及び前記モータ駆動モジュールにそれぞれ接続され、第1の給電信号を受信すると、給電信号を出力して前記電源管理モジュール及び前記モータ駆動モジュールに給電する予備電源モジュールを更に含み、
前記マルチコア処理モジュールは、前記予備電源モジュールに接続され、前記低電圧電源の出力が異常である場合、前記第1の給電信号を前記予備電源モジュールに出力することを特徴とする請求項4又は5に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記予備電源モジュールは、
高電圧電源及び第2のDC/DCユニットを含み、前記高電圧電源は、前記第2のDC/DCユニットにより前記電源管理モジュール及び前記第1のDC/DCユニットにそれぞれ接続され、
前記マルチコア処理モジュールは、前記第2のDC/DCユニットに接続され、前記低電圧電源の出力が異常である場合、前記第2のDC/DCユニットをオンにするように制御するか、又は、前記第2のDC/DCユニットの出力が異常である場合、前記第2のDC/DCユニットをオフにするように制御することを特徴とする請求項6に記載のモータ制御システム。
【請求項8】
前記第2のDC/DCユニットは、
第1の端子が前記高電圧電源に接続されるDC/DC制御ユニットと、
第1の端子が前記DC/DC制御ユニットの第2の端子に接続され、第2の端子が第2の逆流防止ダイオードにより前記電源管理モジュール及び前記第1のDC/DCユニットに接続され、制御端子が前記マルチコア処理モジュールに接続されるスイッチユニットと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御システム。
【請求項9】
前記安全ロジックモジュールは、第1のイネーブル端子及び第2のイネーブル端子を含み、前記第1のイネーブル端子が前記モータ駆動モジュールのローサイド側に接続され、前記第2のイネーブル端子が前記モータ駆動モジュールのハイサイド側に接続され、
前記マルチコア処理モジュールは、更に、前記モータ駆動信号が異常である場合、第1の安全トリガー信号又は第2の安全トリガー信号を出力し、
前記安全ロジックモジュールは、前記第1の安全トリガー信号に基づいて前記第1のイネーブル端子により前記モータ駆動モジュールのローサイド側をイネーブルするか、又は、前記第2の安全トリガー信号に基づいて前記第2のイネーブル端子により前記モータ駆動モジュールのハイサイド側をイネーブルして、モータ駆動を停止することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のモータ制御システム。
【請求項10】
モータと、請求項1~9のいずれか一項に記載のモータ制御システムとを含み、
前記モータ制御システムは、前記モータを制御することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願日が2019年12月31日、出願番号が201911420460.9、名称が「モータ制御システム及びそれを備えた車両」である特許出願の優先権を主張するものである。
【0002】
本願は、車両の分野に関し、特にモータ制御システム、及び該モータ制御システムを含む車両に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギー車の開発の初期段階において、全業界の主な開発目標は、アーキテクチャの層が少なく、機能が広範囲に共存し、診断内容がシンプルであり、カバレッジが様々な保護を主とする機能及びより優れた性能を実現することである。関連技術において、12V/24Vなどの外部低電圧電源により、制御チップ+変圧器+フィルタなどのディスクリート電源回路を介して、制御システムに電力を供給し、主制御ユニット、サンプリング回路、ロジックチップFPGA/CPLDなどに給電し、外部低電圧電源によりディスクリートDC/DC回路を介して駆動システムに電力を供給する。主制御ユニットは、三相電流、バス電圧、モータ位置を取得し、CANによって受信された目標トルクと組み合わせてモータ制御を行う。CPLD/FPGAは、制御信号を監視し、過電流、過電圧、過温度などの迅速な保護を行って、信頼性を保証する。
【0004】
また、ISO 26262の推進と普及に伴い、電気制御方式は、多層の複雑なシステムに徐々に変化し、様々な故障によるリスクを考慮し始め、これらのリスクに対して監視、診断、故障処理を行って、機能間の分離、制御と診断の間の独立などを実現する必要がある。従来の技術は、業界の要求を満たすことができなくなっている。
【0005】
現在、モータ制御システムの設計には、いくつかの欠点が存在する。例えば、システムは、シリアルアーキテクチャを用いている。中間工程に故障が生じると、システムは制御状態をタイムリーかつ効果的に保証できなくなり、車両全体に潜在的なリスクが存在するようになり、独立性が乏しくなる。診断メカニズムが実装されても、電源、サンプラー、チップなどの共有リソースに故障が生じると、メカニズムは無効になる。また、ISO 26262における標準機能安全規格の要求に適応することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、従来技術における技術的課題の1つを少なくとも解決しようとする。このため、本願は、階層化独立制御を実現し、安全性を向上させることができるモータ制御システムを提供することを目的とする。
【0007】
本願は、車両を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様の実施例は、モータ駆動モジュールと、主機能コア及びロックステップ監視コアを含み、前記主機能コアがサンプリングデータを取得すると共に、前記サンプリングデータに基づいてモータ制御信号を生成し、前記ロックステップ監視コアが、主機能コアのサンプリングデータ、主機能コアの動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態を監視し、サンプリングデータ、主機能コアの動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態のいずれか1つに異常が発生する場合、駆動制御を制限し、安全トリガー信号を出力するマルチコア処理モジュールと、前記マルチコア処理モジュールにそれぞれ接続され、前記安全トリガー信号を受信すると、前記モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュールに出力する安全ロジックモジュールと、を含むモータ制御システムを提供する。
【0009】
本願の実施例のモータ制御システムによれば、マルチコア処理モジュールを用いて、安全監視機能をロックステップ監視コアに設定することにより、安全診断を実現できる。主機能コアが故障した場合、主機能コアの制御権限を制限し、駆動と診断が互いに独立するようにすることができる。また、モータ制御信号が異常である場合、安全ロジックモジュールをトリガーして安全制御を実行して、駆動メカニズムと診断メカニズムの独立制御を実現することで、関連標準の要求に適合できる。モータ制御の途中の工程で故障が生じた場合、制御状態をタイムリーかつ効果的に保証し、安全性を向上させることができる。
【0010】
本願の実施例のモータ制御システムによれば、主機能コア及びモータの動作状態に多層監視を行うことにより、主機能コアの入力、処理、出力の各層の監視と、モータの動作状態の監視とを実現し、応答性能及び安全性を効果的に向上させる。
【0011】
上記目的を達成するために、本願の第2の態様の実施例は、モータと、前記モータ制御システムとを含み、前記モータ制御システムが前記モータを制御する車両を提供する。本願の実施例の車両によれば、上記実施例のモータ制御システムを用いて、駆動メカニズムと診断メカニズムの独立制御を実現することにより、モータ制御の途中の工程で故障が生じた場合、制御状態をタイムリーかつ効果的に保証し、安全性を向上させることができる。
【0012】
本願の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか又は本願の実施により把握される。
【0013】
本願の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面を参照して実施例を説明することにより、明らかになって理解されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願の一実施例に係るモータ制御システムのブロック図である。
【
図2】本願の一実施例に係るマルチコア処理モジュールのブロック図である。
【
図3】本願の一実施例に係るモータ制御システムのブロック図である。
【
図4】本願の一実施例に係る第2のDC/DCユニットのブロック図である。
【
図5】本願の一実施例に係る車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願の実施例を詳細に説明する。図面を参照して説明される実施例は例示的なものである。以下は、本願の実施例を詳細に説明するものである。
【0016】
以下、
図1~
図4を参照して本願の実施例に係るモータ制御システムを説明する。
【0017】
図1は、本願の一実施例に係るモータ制御システムのブロック図である。
図1に示すように、本願の実施例のモータ制御システム1は、モータ駆動モジュール10、マルチコア処理モジュール20、及び安全ロジックモジュール30を含む。
【0018】
モータ駆動モジュール10は、駆動制御ユニット11と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)回路などであってもよいパワーモジュール回路12とを含み、PWM信号などのモータ制御信号に基づいてモータを制御する。具体的には、駆動制御ユニット11は、マルチコア処理モジュール20のPWM信号を伝達することにより、パワー半導体IGBT又はMosfetを駆動して、モータを駆動する。また、ハイサイドHigh side及びローサイドLow sideのシステム診断の駆動を実行することができる。
【0019】
図2に示すように、マルチコア処理モジュール20は、主機能コア21及びロックステップ監視コア22を含む。マルチコア処理モジュール20とモータ駆動モジュール10は、情報2などの情報の交換を行う。主機能コア21は、電流、電圧、角度などを含むサンプリングデータを取得すると共に、サンプリングデータに基づいてモータ制御信号を生成し、PWM信号などのモータ制御信号をモータの駆動制御ユニット11に伝送する。これにより、駆動制御ユニット11がモータ制御信号に基づいてモータを駆動することができる。ロックステップ監視コア22は、主機能コア21のサンプリングデータ、主機能コア21の動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態を監視する。サンプリングデータ、主機能コア21の動作状態、モータ制御信号、及びモータの動作状態のいずれか1つに異常が発生した場合、ロックステップ監視コア22は、駆動機能を制限すると共に、安全トリガー信号を出力する。
【0020】
主機能コア及びモータの動作状態に多層監視を行うことにより、主機能コアの入力、処理、出力の各層の監視と、モータの動作状態の監視とを実現し、応答性能及び安全性を効果的に向上させる。本願の一実施例において、主機能コア21の入力情報は、サンプリングデータ情報であり、主機能コア21の処理情報は、主機能コア21自体の動作状態であり、主機能コア21の出力情報は、モータ制御信号である。
【0021】
本願の実施例において、
図2に示すように、マルチコア処理モジュール20は、複数の処理コアを含み、Core_F(ロックステップ機能LCはオプションである)などの主機能コア21は、電流、電圧、角度などを含むsampling1信号などの外部信号を取得し、制御信号を送信することにより、モータを制御する。また、ロックステップ機能付きのロックステップ監視コア22は、機能安全監視を実行する。即ち、主機能コア21の動作状態を監視するために、安全監視機能をロックステップ監視コア22に設定する。主機能コア21が故障した場合、主機能コア21の制御権限を制限し、安全トリガー信号を出力することにより、安全状態に入ることができる。マルチコア処理モジュール20の他のコアは、他の機能を実行可能である。対応するロックステップ機能LC(LOCK)はオプションであり、ここで具体的に限定しない。
【0022】
安全ロジックモジュール30は、マルチコア処理モジュール20にそれぞれ接続され、安全トリガー信号を受信すると、モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュール10に出力することにより、安全状態に入り、安全性が向上する。例えば、
図1に示すように、マルチコア処理モジュール20は、主機能コア21が故障した場合、signal1信号により安全ロジックモジュール30をトリガーすることにより、ローサイド(Low side)のPWM_En/disable及びハイサイド(High side)のGate_En/disable信号をトリガーして、優先度のより高い層でモータ駆動モジュール10を制御して、階層化独立制御を実現し、システムを安全状態に入らせる。
【0023】
本願の実施例のモータ制御システム1によれば、マルチコア処理モジュール20を用いて、安全監視機能をロックステップ監視コア22に設定することにより、安全診断を実現し、主機能コア21が故障した場合、主機能コア21の制御権限を制限し、駆動と診断を互いに独立した状態とできる。また、モータ制御信号が異常である場合、安全ロジックモジュール30をトリガーして安全制御を実行して、駆動メカニズムと診断メカニズムの独立制御を実現することで、関連標準の要求に適合できる。モータ制御の途中の工程で故障が生じた場合、制御状態をタイムリーかつ効果的に保証し、安全性を向上させることができる。
【0024】
更に、
図3に示すように、本願の実施例のモータ制御システム1は、補助制御モジュール40を更に含む。補助制御モジュール40は、マルチコア処理モジュール20及びモータ駆動モジュール10にそれぞれ接続され、サンプリングデータを取得し、主機能コア21が故障した場合、サンプリングデータに基づいてモータ制御信号を生成し、モータ制御信号をモータ駆動モジュール10に送信することにより、モータを駆動し続ける。
【0025】
具体的には、補助制御モジュール40は、FPGA/CPLDを含む。補助制御モジュール40は、マルチコア処理モジュール20と情報交換を行う。主機能コア21が正常に動作している場合、補助制御モジュール40は、主機能コア21から送信されたキー信号、例えば図中の6チャネルPWM信号を受信し、PWM信号を処理し、処理されたPWM信号をモータ駆動モジュール10に伝送することにより、モータを駆動する。
【0026】
本願の実施例において、サンプリングモジュールは、モータの電流、電圧、角度などの情報を取得すると共に、サンプリングデータsampling1及びサンプリングデータsampling2をそれぞれ出力し、それぞれマルチコア処理モジュール20及び補助制御モジュール40に伝送する。主機能コア21が故障した場合、補助制御モジュール40は、サンプリングデータ2などの外部冗長信号を取得し、サンプリングデータに基づいてモータ制御信号を生成する。補助制御モジュール40がモータ駆動モジュール10と情報交換を行うことにより、モータ駆動モジュール10は、補助制御モジュール40から送信されたモータ制御信号に基づいてモータを駆動し続けることができる。つまり、主機能コア21が故障した場合、補助制御モジュール40が、駆動制御機能を受け継ぐことになる。
【0027】
更に、ロックステップ監視コア22は、補助制御モジュール40が故障した場合、モータ制御信号が異常であるか否かを判定する。モータ制御信号が異常である場合、ロックステップ監視コア22は、駆動制御を制限し、安全トリガー信号を出力する。安全ロジックモジュール30は、マルチコア処理モジュール20にそれぞれ接続され、安全トリガー信号を受信すると、モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュール10に出力する。即ち、主機能コア21が正常に動作している場合、主機能コア21によりモータ制御信号を送信し、主機能コア21が故障した場合、補助制御モジュール40により駆動制御を一時的に行う。補助制御モジュール40も故障した場合、ロックステップ監視コア22は、モータ制御信号が異常であると見なし、安全制御を実行し、安全トリガー信号を安全ロジックモジュール30に送信することにより、制御システムが安全状態に入る。
【0028】
具体的には、ロックステップ監視コア22は、安全監視、例えば入力診断、出力診断、主機能コア21のフリーズ監視、CPLD/FPGAなどの補助制御モジュール40のフリーズ監視を行う。ロックステップ監視コア22が異常を診断した場合、独立したチャネルにより、駆動ユニットを制御し、安全ロジックモジュール30により、ローサイドのPWM_En/disable信号を駆動してPWMチャネルの切り替えを実行し、主機能コア21及びCPLD/FPGA機能層の制御権限を除去する。同時に、安全ロジックモジュール30は、ハイサイドの第2の信号Gate_En/disableによりIGBT/MOSFETがオフ状態/三相短絡状態にあることを保証する。即ち、システムが安全状態に入ることを実現する。
【0029】
実施例において、
図1又は
図3に示すように、本願の実施例のモータ制御システム1は、電源管理モジュール50を更に含む。
図1の情報1のような情報が、電源管理モジュール50とマルチコア処理モジュール20との間で交換される。電源管理モジュール50は、Vsなどの電源信号をマルチコア処理モジュール20に供給し、マルチコア処理モジュール20の動作状態を監視し、マルチコア処理モジュール20が故障した場合、安全制御信号を出力する。安全ロジックモジュール30は、電源管理モジュール50に接続され、安全制御信号を受信すると、モータ制御信号の実行を禁止する指令をモータ駆動モジュール10に出力することにより、モータ駆動機能を除去すると共に、モータ駆動モジュール10のスイッチトランジスタをオフにするか又はモータを三相短絡状態にし、安全状態に入る。即ち、マルチコア処理モジュール20の動作が異常である場合、電源管理モジュール50は、安全ロジックモジュール30をトリガーして、システムを安全状態に切り替えることができる。
【0030】
図3に示すように、電源管理モジュール50は、マルチコア処理モジュール20の状態を監視する。マルチコア処理モジュール20に異常が発生すれば、電源管理モジュール50は、情報により安全ロジックモジュール30をトリガーする。安全ロジックモジュール30は、PWM_En/disable及びGate_En/disable信号をトリガーし、優先度のより高い層でモータ駆動モジュール10を制御して、階層化独立制御を実現する。
【0031】
本願の実施例のモータ制御システム1は、マルチコア処理モジュール20の主機能コア21が故障した場合、FPGA/CPLDが一時的に駆動制御機能を受け継ぐことができる。FPGA/CPLDも故障する場合、ロックステップ監視コア22が安全制御を実行し、システム稼動率を向上させ、安全ロジックモジュール30が安全制御を行って多層の独立制御を実現することができ、これは、自動運転システムなど、より複雑で、多層が要求される車両全体の条件の制御により適する。
【0032】
図1又は
図3に示すように、本願の実施例のモータ制御システム1は、低電圧電源モジュール60を更に含む。低電圧電源モジュール60は、電源管理モジュール50及びモータ駆動モジュール10にそれぞれ接続され、第1の給電停止信号を受信すると、モータ駆動モジュール10への給電を停止する。マルチコア処理モジュール20は、低電圧電源モジュール60に接続され、ロックステップ監視コア22から出力された安全トリガー信号に応答する。モータ駆動モジュール10が予想通りにロックステップ監視コア22の安全トリガー信号に応答できない場合、ロックステップ監視コア22が該第1の給電停止信号を出力し、低電圧電源モジュール60がモータ駆動モジュール10への給電を停止することにより、システムが安全状態に入ると予想されるが、実際にシステムが予想通りに安全状態に入らない場合、低電圧電源モジュール60の給電を遮断して、システム自体が無出力状態に入ることを保証することができる。
【0033】
更に、
図1又は3に示すように、低電圧電源モジュール60は、DC/DC2などの第1のDC/DCユニット61及び低電圧電源62を含む。低電圧電源62は、第1の逆流防止ダイオードD1により第1のDC/DCユニット61、電源管理モジュール50にそれぞれ接続され、電源管理モジュール50に給電する。第1のDC/DCユニット61は、モータ駆動モジュール10及びマルチコア処理モジュール20に接続され、モータ駆動モジュール10に給電し、マルチコア処理モジュール20から送信された第1の給電停止信号を受信すると出力を停止して、システム自体が安全状態に入ることを保証し、安全性を向上させる。
【0034】
図1又は
図3に示すように、本願の実施例のモータ制御システム1は、予備電源モジュール70を更に含む。予備電源モジュール70は、電源管理モジュール50及びモータ駆動モジュール10にそれぞれ接続され、第1の給電信号を受信すると、給電信号を出力して電源管理モジュール50及びモータ駆動モジュール10に給電する。マルチコア処理モジュール20は、予備電源モジュール70に接続され、低電圧電源62の出力が異常である場合、第1の給電信号を予備電源モジュール70に出力する。
【0035】
予備電源モジュール70を追加し、出力される電力のオンとオフを制御することにより、低電圧電源が異常である場合、システムの継続動作をタイムリーかつ効果的に保証することができる。
【0036】
更に、
図1又は
図3に示すように、本願の実施例の予備電源モジュール70は、高電圧電源71、及びDC/DC1などの第2のDC/DCユニット72を含む。高電圧電源71は、第2のDC/DCユニット72により電源管理モジュール50及び第1のDC/DCユニット61にそれぞれ接続される。マルチコア処理モジュール20は、第2のDC/DCユニット72に接続される。例えば、マルチコア処理モジュール20は、En/disableにより第2のDC/DCユニット72のオンとオフを制御することができる。具体的には、マルチコア処理モジュール20は、低電圧電源62の出力が異常である場合、第2のDC/DCユニット72をオンにするように制御するか、又は、第2のDC/DCユニット72の出力が異常である場合、第2のDC/DCユニット72をオフにするように制御することにより、電源による給電の二重保証を実現する。
【0037】
図4に示すように、本願の実施例の第2のDC/DCユニット72は、DC/DC制御ユニット721及びスイッチユニット722を含む。DC/DC制御ユニット721の第1の端子は、高電圧電源71に接続される。スイッチユニット722の第1の端子は、DC/DC制御ユニット721の第2の端子に接続される。スイッチユニット722の第2の端子は、第2の逆流防止ダイオードD2により電源管理モジュール50及び第1のDC/DCユニット61に接続される。スイッチユニット722の制御端子は、マルチコア処理モジュール20に接続される。マルチコア処理モジュール20は、低電圧電源が異常である場合、スイッチユニット722をオンにするように制御し、予備電源モジュール70により給電し、更に予備電源の出力が異常である場合、スイッチユニット722をオフにするように制御する。これにより、予備電源自体の異常によりシステムが破損することを防止できる。例えば、予備電源が高すぎる電圧を供給すると、システムデバイスの破損を引き起こす。予備電源の給電回路にスイッチユニット722を直接配置して、予備電源が異常である場合にスイッチユニット722をオフすることにより、システムの安全性を向上させる。
【0038】
いくつかの実施例において、
図3に示すように、安全ロジックモジュール30は、第1のイネーブル端子及び第2のイネーブル端子を含む。第1のイネーブル端子がモータ駆動モジュール10のローサイド側に接続される。第2のイネーブル端子がモータ駆動モジュール10のハイサイド側に接続される。マルチコア処理モジュール20は、更に、モータ駆動信号が異常である場合、第1の安全トリガー信号又は第2の安全トリガー信号を出力する。例えば、補助制御モジュール40が配置されていないシステムでは、主機能コア21が故障するとモータ駆動信号が異常であると見なされ、一方、補助制御モジュール40が配置されているシステムでは、主機能コア21及び補助制御モジュール40がいずれも異常であるとモータ駆動信号が異常であると見なされる。安全ロジックモジュール30は、第1の安全トリガー信号に基づいて第1のイネーブル端子によりモータ駆動モジュールのローサイド側をイネーブルするか、又は、第2の安全トリガー信号に基づいて第2のイネーブル端子によりモータ駆動モジュールのハイサイド側をイネーブルして、モータ駆動を停止する。例えば、安全ロジックモジュール30は、signal1を受信すると、第1のイネーブル端子によりイネーブル信号PWM_EN/disable信号を出力し、モータ駆動モジュール10の駆動ローサイドでPWMチャネルの切り替えを実行し、主機能コア21及びCPLD/FPGA機能層の制御権限を除去すると共に、ハイサイドのGate_EN/disable信号によりIGBT/MOSFETがオフ状態/三相短絡状態にあることを保証する。駆動制御が正常に回復した後に、モータ駆動モジュール10が正常モードに切り替えるようにイネーブルすることができる。実施例において、マルチコア処理モジュール20は、Signal1とSignal2の論理和により、安全ロジックモジュール30の2つの出力を制御することにより、安全状態に入ることができ、別々に制御することもできる。
【0039】
実施例において、安全ロジックモジュール30は、モータ駆動モジュール10のハイサイド側を駆動して安全制御を行うことにより、中間回路の故障によりシステムが安全状態に正常に入るか又は安全状態を保持できないことを回避し、安全性を向上させることができる。
【0040】
要するに、本願の実施例のモータ制御システム1は、マルチコア処理モジュール20を用いると共に、ロックステップ監視コア22を配置して安全監視を行い、主機能コア21が故障した場合、補助制御モジュール40が駆動制御を受け継ぐことができる。更に補助制御モジュール40も故障した場合、ロックステップ監視コア22が安全制御をトリガーして、システムを安全状態に入らせることができる。また、マルチコア処理モジュール20が故障する場合、電源管理モジュール50が安全制御をトリガーして、システムを安全状態に入らせることができる。また、予備電源を配置することで、低電圧電源が故障した場合、予備電源により給電することができる。更に、予備電源は制御可能であり、予備電源の給電が異常である場合、オフすることもできる。本願の実施例のモータ制御システム1は、多層の独立制御を用い、制御と診断を互いに独立させる。電源、サンプリング、チップなどの共有リソースに故障が生じた場合でも、診断メカニズムが有効であり、故障が生じる確率を低減するか又はより確実にシステムが様々な故障に耐えうるようにでき、自動運転など、複雑で、多階層制御の要求により適する。
【0041】
上記実施例のモータ制御システムに基づいて、以下、
図5を参照して本願の第2の態様の実施例に係る車両を説明する。
【0042】
図5は、本願の一実施例に係る車両のブロック図である。
図5に示すように、本願の実施例の車両100は、モータ2と、上記実施例のモータ制御システム1とを含む。モータ制御システム1は、モータを制御し、モータ制御システム1の構成及び動作過程について、上記実施例の説明を参照することができる。
【0043】
本願の実施例の車両100によれば、上記実施例のモータ制御システム1を用いて、駆動メカニズムと診断メカニズムの独立制御を実現することにより、モータ制御の途中の工程で故障が生じる場合、制御状態をタイムリーかつ効果的に保証し、安全性を向上させることができる。
【0044】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示的な実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」などを参照する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に限定されるものではない。
【0045】
本願の実施例を示し、説明したが、当業者であれば理解できるように、本願の原理及び趣旨から逸脱しない場合、これらの実施例に対して、様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本願の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】