(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20230302BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230302BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230302BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540713
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2019129742
(87)【国際公開番号】W WO2021134153
(87)【国際公開日】2021-07-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149663
【氏名又は名称】▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 開 華
(72)【発明者】
【氏名】蒋 振 康
(72)【発明者】
【氏名】唐 洲
(72)【発明者】
【氏名】李 涛
(72)【発明者】
【氏名】杜 修 平
(72)【発明者】
【氏名】白 亮
(72)【発明者】
【氏名】張 華
(72)【発明者】
【氏名】武 志 江
(72)【発明者】
【氏名】蒋 世 鳳
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法であって、三元金属溶液を第1のベース液を含む反応釜に添加して反応させ、粒径が1.5~3.0μmに達すると、材料の添加を停止し、種結晶スラリーを得るステップ1)と、三元金属溶液、液体アルカリ溶液、アンモニア水溶液を同時に並流して第2のベース液を含む成長釜に添加して反応させ、粒径が6~8μmに達すると、種結晶スラリーを反応系に添加し、前記種結晶の供給速度を調整することにより、粒径を9.0~11.0μmに制御し、目標物を得るステップ2)とを含む。該調製方法は種結晶の連続的な添加を採用することにより、調製された三元前駆体材料における結晶面のパラメータ001のピークは結晶面のパラメータ101のピークよりも低く、これはLiイオンの挿入により寄与し、これにより該材料で調製された電池の性能を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三元金属溶液を第1のベース液を含む反応釜に添加して共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が1.5~3.0μmに達すると、材料の添加を停止し、種結晶スラリーを得るステップ1と、三元金属溶液、液体アルカリ溶液、アンモニア水溶液を同時に並流して第2のベース液を含む成長釜に添加して共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が6~8μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を600~5000g/hに調整することにより、粒径D50を9.0~11.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得るステップ2とを含む、ことを特徴とする種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項2】
前記ステップ1では、前記第1のベース液におけるアンモニア水の濃度は4~8g/L、前記第1のベース液の温度は40~60℃、前記第1のベース液のpHは11.0~12.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項3】
前記ステップ1では、前記三元金属溶液の供給速度は100~300L/hである、ことを特徴とする請求項2に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項4】
前記ステップ1では、前記共沈反応時の撹拌速度は250~350r/minである、ことを特徴とする請求項3に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項5】
前記ステップ2では、前記ステップ1では、前記第2のベース液におけるアンモニア水の濃度は4~10g/L、前記第2のベース液の温度は40~60℃、前記第2のベース液のpHは10.5~11.5である、ことを特徴とする請求項4に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項6】
前記ステップ2では、前記三元金属溶液の供給速度は250~300L/h、前記液体アルカリの供給速度は50~100L/h、前記アンモニア水の流量は20~40L/hである、ことを特徴とする請求項5に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項7】
前記ステップ2では、前記共沈反応時の撹拌速度は200~400r/minである、ことを特徴とする請求項6に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ2では、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである、ことを特徴とする請求項7に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項9】
前記ステップ2では、前記液体アルカリ溶液における液体アルカリの質量濃度は30~32%、前記アンモニア水溶液におけるアンモニア水の質量濃度は15~25%である、ことを特徴とする請求項8に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項10】
前記ステップ2で得られた結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体におけるニッケルの含有量は80~85mol%である、ことを特徴とする請求項9に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【請求項11】
前記三元金属溶液はニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液であり、前記ニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液におけるニッケルイオンの濃度は80~85mol%、Coイオンの濃度は10~15mol%、Mnイオンの濃度は3~7mol%である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三元前駆体調製の技術分野に属し、具体的には、種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元前駆体の作製プロセスにおいて、よく使用される合成プロセスは、バッチ法、連続法、及びバッチ法と連続法の組み合わせがある。バッチ法は、一般的にプロセス条件が安定し、過程でパラメータを調整する必要がなく、1つのプロセス条件で反応を完了すれば反応を済ませることができる。連続法は、反応の平衡点が絶えず変化し、製造過程全体で反応が動的平衡に達し、連続性を維持するように、製造過程でプロセスパラメータを絶えず変更する必要がある。
【0003】
連続法での三元前駆体の製造では、粒度が目標粒度に近いとき、通常、反応している系で三元流量、液体アルカリ流量、アンモニア水流量、回転速度、温度などのプロセスパラメータの増加と減少を採用することにより、成長状態にある反応系がプロセスパラメータの変更により変動して、新しい結晶核を発生し、新しい小さな粒子を生成し、成長しながら溢流する方法で、連続反応することによって、材料を連続的に排出し、製造を安定させる。しかし、通常、高pH環境で発生する小さな粒子は、形態が粗く、球形度が悪く、且つ粒度の制御が困難であり、調整が必要なパラメータが多く、精度よく制御することが容易ではなく、また、高pH環境で反応する粒子が回折した後に、001結晶面のピーク高さが101結晶面のピーク高さよりも高くなり、Liイオンが挿入しにくく、電池の性能に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況に鑑みて、本願は、従来の技術における粒度分布を維持するためにpHを向上させることによる粒子の形態が悪く、球形度の一致性が悪く、結晶面のパラメータ001のピークが101のピークよりも高い問題が解決される、種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術案は、上記の目的を達成するために、以下のように実現される。
三元金属溶液を第1のベース液を含む反応釜に添加して共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が1.5~3.0μmに達すると、材料の添加を停止し、種結晶スラリーを得るステップ1と、
三元金属溶液、液体アルカリ溶液、アンモニア水溶液を同時に並流して第2のベース液を含む成長釜に添加して共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が6~8μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を600~5000g/hに調整することにより、粒径D50を9.0~11.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得るステップ2、を含むことを特徴とする種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法。
【0006】
好ましくは、前記ステップ1では、前記第1のベース液におけるアンモニア水の濃度は4~8g/L、前記第1のベース液の温度は40~60℃、前記第1のベース液のpHは11.0~12.0である。
【0007】
好ましくは、前記ステップ1では、前記三元金属溶液の供給速度は100~300L/hである。
【0008】
好ましくは、前記ステップ1では、前記共沈反応時の撹拌速度は250~350r/minである。
【0009】
好ましくは、前記ステップ2では、前記ステップ1では、前記第2のベース液におけるアンモニア水の濃度は4~10g/L、前記第2のベース液の温度は40~60℃、前記第2のベース液のpHは10.5~11.5である。
【0010】
好ましくは、前記ステップ2では、前記三元金属溶液の供給速度は250~300L/h、前記液体アルカリの供給速度は50~100L/h、前記アンモニア水の流量は20~40L/hである。
【0011】
好ましくは、前記ステップ2では、前記共沈反応時の撹拌速度は200~400r/minである。
【0012】
好ましくは、前記ステップ2では、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである。
【0013】
好ましくは、前記ステップ2では、前記液体アルカリ溶液における液体アルカリの質量濃度は30~32%、前記アンモニア水溶液におけるアンモニア水の質量濃度は15~25%である。
【0014】
好ましくは、前記ステップ2で得られた結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体におけるニッケルの含有量は80~85mol%である。
【0015】
好ましくは、前記三元金属溶液はニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液であり、前記ニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液におけるニッケルイオンの濃度は80~85mol%、Coイオンの濃度は10~15mol%、Mnイオンの濃度は3~7mol%である。
【発明の効果】
【0016】
従来の技術と比べて、本発明は種結晶を連続的に添加する反応方法を採用することにより、反応系に形態と球形度が安定した小さな種結晶を持続的に添加することを確保することで、製造された三元前駆体の形態の一致性、球型度がよく、粒径分布が安定し、且つ三元前駆体材料における結晶面のパラメータ001のピークが結晶面のパラメータ101のピークよりも低く、これはLiイオンの挿入により寄与し、これにより該材料で調製された電池の性能を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のSEM図である。
【
図2】本発明の実施例2で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のSEM図である。
【
図3】本発明の実施例3で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のSEM図である。
【
図4】本発明の実施例1で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のXRD図である。
【
図5】本発明の実施例2で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のXRD図である。
【
図6】本発明の実施例3で得られた種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体のXRD図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は、本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0019】
本発明は、レーザー粒度分析器を用いて四酸化三コバルトを生成する過程での粒子の粒径及び最終的に得られる四酸化三コバルトの粒子の粒径を測定し、本発明の実施例で使用される化学試薬は、特に説明されてない限り、いずれも通常の商業的方法で得られる。
【0020】
本発明の実施例に係る種結晶の添加量で調整・制御する結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体の調製方法は次のステップを含む。
【0021】
ステップ1では、ニッケルイオンの濃度が80~85mol%、Coイオンの濃度が10~15mol%、及びMnイオンの濃度が3~7mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液を、100~300L/hの供給速度で温度が40~60℃、アンモニア水の濃度が4~8g/L及びpHが11.0~12.0の第1のベース液を含む反応釜に添加するとともに、250~350r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が1.5~3.0μmに達すると、完全に反応するまで材料の添加を停止し、密封保温処理を行い、種結晶スラリーを得る。
【0022】
ステップ2では、ニッケルイオンの濃度が80~85mol%、Coイオンの濃度が10~15mol%、及びMnイオンの濃度が3~7mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液、質量濃度が30~32%の液体アルカリ及び質量濃度が15~25%のアンモニア水を、それぞれ250~300L/h、50~100L/h、20~40L/hの供給速度で同時に並流し、温度が40~60℃、アンモニア水の濃度が4~10g/L及びpHが10.5~11.5の第2のベース液を含む成長釜に添加するとともに、200~400r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が6~8μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を600~5000g/hに調整することにより、粒径D50を9.0~11.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、ニッケル含有量が80~85mol%である結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得て、その中、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである。
【0023】
また、ステップ1及びステップ2で使用される三元金属溶液はいずれもニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液であり、その中、前記ニッケル-コバルト-マンガン三元混合塩溶液の濃度は1.8~2.2mol/Lである。
【0024】
また、上記第1のベース液の調製方法は、具体的に、反応釜内に2/3体積の純水を添加するとともに温度を40~60℃に調整し、アンモニア水の濃度が4~8g/Lになるまで前記純水に質量濃度が15~25%のアンモニア水を添加してから、質量濃度が30~32%のNaOHでpHを11.0~12.0に調整するものである。
【0025】
上記第2のベース液の調製方法は、具体的に、生産釜に2/3体積の純水を添加するとともに温度を40~60℃に調整し、アンモニア水の濃度が4~10g/Lになるまで前記純水に質量濃度が15~25%のアンモニア水を添加してから、質量濃度が30~32%のNaOHでpHを10.5~11.5に調整するものである。
【0026】
上記方案を採用した後に、種結晶を連続的に添加する反応方法を採用することにより、反応系に形態と球形度が安定した小さな種結晶を持続的に添加することを確保することで、製造された三元前駆体の形態の一致性、球型度がよく、粒径分布が安定し、且つ三元前駆体材料における結晶面のパラメータ001のピークが結晶面のパラメータ101のピークよりも低く、これはLiイオンの挿入により寄与し、これにより該材料で調製された電池の性能を効果的に向上させることができる。
【0027】
本発明の方案をよりよく説明するために、以下、具体的な実施例を参照しながらさらに説明する。
【実施例1】
【0028】
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを混合してニッケルイオンの濃度が83mol%、Coイオンの濃度が12mol%、Mnイオンの濃度が5mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を調製し、また質量濃度が30%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が20%のアンモニア水溶液をそれぞれ調製した。
【0029】
上記ニッケルイオンの濃度が83mol%、Coイオンの濃度が12mol%、Mnイオンの濃度が5mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を、200L/hの供給速度で温度が50℃、アンモニア水の濃度が6g/L及びpHが11.5の第1のベース液を含む反応釜に添加するとともに、300r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が2.0μmに達すると、完全に反応するまで材料の添加を停止し、密封保温処理を行い、種結晶スラリーを得た。
【0030】
上記ニッケルイオンの濃度が83mol%、Coイオンの濃度が12mol%、Mnイオンの濃度が5mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液、質量濃度が30%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が20%のアンモニア水溶液を、それぞれ300L/h、50L/h、30L/hの供給速度で同時に並流し、温度が50℃、アンモニア水の濃度が7g/L及びpHが11の第2のベース液を含む成長釜に添加するとともに、300r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が5μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を2000g/hに調整することにより、粒径D50を10.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、ニッケル含有量が82mol%である結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得て、その中、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである。
【実施例2】
【0031】
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを混合してニッケルイオンの濃度が80mol%、Coイオンの濃度が10mol%、Mnイオンの濃度が3mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を調製し、また質量濃度が30%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が15%のアンモニア水溶液をそれぞれ調製し、上記のニッケルイオンの濃度が80mol%、Coイオンの濃度が10mol%、Mnイオンの濃度が3mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を、100L/hの供給速度で温度が50℃、アンモニア水の濃度が6g/L及びpHが11の第1のベース液を含む反応釜に添加するとともに、250r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が1.5μmに達すると、完全に反応するまで材料の添加を停止し、密封保温処理を行い、種結晶スラリーを得た。
【0032】
上記ニッケルイオンの濃度が80mol%、Coイオンの濃度が10mol%、Mnイオンの濃度が3mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液、質量濃度が30%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が15%のアンモニア水溶液を、それぞれ250L/h、100L/h、40L/hの供給速度で同時に並流し、温度が50℃、アンモニア水の濃度が7g/L及びpHが10.5の第2のベース液を含む成長釜に添加するとともに、200r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が5.0μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を600g/hに調整することにより、粒径D50を9.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、ニッケル含有量が80mol%である結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得て、その中、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである。
【実施例3】
【0033】
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを混合してニッケルイオンの濃度が85mol%、Coイオンの濃度が15mol%、Mnイオンの濃度が7mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を調製し、また質量濃度が32%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が25%のアンモニア水溶液をそれぞれ調製した。
【0034】
上記ニッケルイオンの濃度が85mol%、Coイオンの濃度が15mol%、Mnイオンの濃度が7mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液を、300L/hの供給速度で温度が50℃、アンモニア水の濃度が6g/L及びpHが12.0の第1のベース液を含む反応釜に添加するとともに、350r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が3.0μmに達すると、完全に反応するまで材料の添加を停止し、密封保温処理を行い、種結晶スラリーを得た。
【0035】
上記ニッケルイオンの濃度が85mol%、Coイオンの濃度が15mol%、Mnイオンの濃度が7mol%のニッケル-コバルト-マンガン三元混合溶液、質量濃度が32%の液体アルカリ溶液及び質量濃度が25%のアンモニア水溶液を、それぞれ350L/h、100L/h、40L/hの供給速度で同時に並流し、温度が50℃、アンモニア水の濃度が7g/L及びpHが10.5の第2のベース液を含む成長釜に添加するとともに、400r/minの撹拌速度で共沈反応させ、粒径を持続的に監視し、粒径D50が8μmに達すると、ステップ1で得られた種結晶スラリーを均一な速度で反応系に添加し、前記種結晶スラリーの供給速度を5000g/hに調整することにより、粒径D50を11.0μmに制御し、反応し続けて材料を排出し、ニッケル含有量が85mol%である結晶面が優先的に成長する高ニッケル三元前駆体を得て、ここで、1時間ごとに添加される種結晶スラリーにおける種結晶の含有量は前記種結晶スラリーにおける種結晶の固形分の含有量と同じである。
【0036】
本実施例で調製された三元前駆体の粒子の形態が一致しているか否か、球形度が良好であるか否かを検証するために、今度は、それぞれ実施例1~実施例3で得られた三元前駆体を電子顕微鏡でスキャンして検出し、
図1、
図2及び
図3に示すように、
図1、
図2及び
図3から、本発明で得られた三元前駆体の粒子の形態は、一致しており球形度が良好であることが分かった。
【0037】
また、本実施例で調製された三元前駆体の結晶体における結晶面のパラメータ001が結晶面のパラメータ101よりも高いか低いかを検証するために、今度は、それぞれ実施例1~実施例3で得られた三元前駆体を例にとってXRD検出を行い、
図4、
図5及び
図6に示すように、
図4、
図5及び
図6から、回折後、001結晶面のピークは101結晶面のピークよりも低く、且つ結晶面001と結晶面101のHeight、Areaの値の比率は0.7~1.1の間にあることが分かった。
【0038】
以上により、本発明は種結晶を連続的に添加する反応方法を採用することにより、反応系に形態と球形度が安定した小さな種結晶を持続的に添加することを確保することで、製造された三元前駆体の形態の一致性、球型度がよく、粒径分布が安定し、且つ三元前駆体材料における結晶面のパラメータ001のピークが結晶面のパラメータ101のピークよりも低く、これはLiイオンが挿入することにより寄与し、これにより該材料で調製された電池の性能を効果的に向上させることができる。
【0039】
上述は、本発明の好ましい具体的実施形態にすぎないが、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者にとって、本発明に開示している技術範囲内で容易に想到できる変更又は置換は、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の保護範囲に従うべきである。
【国際調査報告】