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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】耐糖能異常障害を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230302BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230302BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20230302BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20230302BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
C12N15/115 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540737
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021012612
(87)【国際公開番号】W WO2021142200
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,660
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】505373306
【氏名又は名称】ソマロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハガー ヨランダ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QX02
(57)【要約】
対象が耐糖能異常障害、具体的には、前糖尿病または糖尿病に罹患しているか否かを決定するための方法、組成物、及びキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象での耐糖能異常障害の有無、または対象が耐糖能異常障害を有している尤度を決定する方法であって、N個のバイオマーカータンパク質を有するバイオマーカーパネルを形成すること、及び、前記対象から得た試料でのN個の前記バイオマーカータンパク質のそれぞれのレベルを検出することを含み、また、Nは、少なくとも3であり、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する、前記方法。
【請求項2】
対象での前糖尿病の有無、または対象が前糖尿病もしくは糖尿病を発症する尤度を決定する方法であって、N個のバイオマーカータンパク質を有するバイオマーカーパネルを形成すること、及び、前記対象から得た試料でのN個の前記バイオマーカータンパク質のそれぞれのレベルを検出することを含み、また、Nは、少なくとも3であり、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する、前記方法。
【請求項3】
試料でのN個のバイオマーカータンパク質のレベルを検出する方法であって、対象から前記試料を得ること、N個のバイオマーカータンパク質を有するバイオマーカーパネルを形成すること、及び前記対象から得た前記試料でのN個の前記バイオマーカータンパク質のそれぞれのレベルを検出することを含み、Nは、少なくとも3であり、N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する、前記方法。
【請求項4】
Nが3~41、またはNが4~41、またはNが5~41、またはNが6~41、またはNが7~41、またはNが8~41、またはNが9~41、またはNが10~41、またはNが11~41、またはNが12~41、またはNが13~41、またはNが14~41、またはNが15~41、またはNが16~41である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Nが3、またはNが4、またはNが5、またはNが6、またはNが7、またはNが8、またはNが9、またはNが10、またはNが11、またはNが12、またはNが13、またはNが14、またはNが15、またはNが16、またはNが17、またはNが18、またはNが19、またはNが20、またはNが21、またはNが22、またはNが23、またはNが24、またはNが25、またはNが26、またはNが27、またはNが28、またはNが29、またはNが30、またはNが31、またはNが32、またはNが33、またはNが34、またはNが35、またはNが36、またはNが37、またはNが38、またはNが39、またはNが40、またはNが41である先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
N個の前記バイオマーカータンパク質のそれぞれを、表1から選択する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、及びKINから選択する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
N個の前記バイオマーカータンパク質の1つまたは2つが、INHBC及び/またはSHBGである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
N個の前記タンパク質バイオマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個を、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個を、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、HTRA1、CHAD、CPM、DLK1、HERC1、IL20RB、MAP2K4、GPX2、及びFGFR4から選択する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びACY1である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びACY1である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びACY1である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びCOL1A1である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びCOL1A1である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びCOL1A1である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びRTN4Rである、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びRTN4Rである、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びRTN4Rである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びCRLF1:CLCF1複合体である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びCBX7である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びCBX7である、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びCBX7である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
N個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、INHBC及びKINである、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の2つが、SHBG及びKINである、またはN個の前記バイオマーカータンパク質の3つが、INHBC、SHBG、及びKINである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
Nは、少なくとも5である、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも5つが、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、及びRTN4Rである先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
Nは、少なくとも16である、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質の少なくとも16個が、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、INHBC、SHBG、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、及びHTRA1である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、血液試料、血漿試料、または血清試料である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、普通の食事を続ける、かつ、前記試料を得る前にグルコース溶液を前記対象に投与しない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
それぞれのバイオマーカーのコントロールレベルよりも高レベルにあるSHBG、COL1A1、CRLF1:CLCF1複合体、FAM20B、COL15A1、KIN、SERPINA11、PELI2、MARCKSL1、CHAD、IL20RB、MYOC、WFDC11、MAP2K4、CALB1、FGFR4、OSTM1、ITIH1、CFAP45、及びSFTPDから選択する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、前記対象が、耐糖能異常障害を有する、または有する可能性が高い、前糖尿病を発症している、または発症する可能性が高い、及び/または糖尿病を発症する可能性が高いことを示す、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
それぞれのバイオマーカーのコントロールレベルよりも低レベルにあるINHBC、ACY1、RTN4R、CBX7、TFF3、HTRA1、FABP12、GAD1、CPM、SVEP1、SOCS7、F9、DLK1、HERC1、STC1、CCL16、SMCO2、GPX2、CCL23、RNASE10、及びZNF134から選択する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、前記対象が、耐糖能異常障害を有する、または有する可能性が高い、前糖尿病を発症している、または発症する可能性が高い、及び/または糖尿病を発症する可能性が高いことを示す、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、糖尿病を発症するリスクがある、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いかを決定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、耐糖能異常障害を有する可能性が高い、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、耐糖能異常障害を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、前糖尿病を発症する可能性が高いか、または前糖尿病であるかを決定することを含む、請求項2~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、前糖尿病を発症する可能性が高い、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、前糖尿病である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、糖尿病を発症する可能性が高い、請求項25、26、28、及び29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記糖尿病が、2型糖尿病である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象を治療することを含む、請求項21~23、25、26、及び28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療が、インスリン、メトホルミン、減量プログラムの実施、食事制限の実施、カロリー制限の実施、及び/または運動プログラムの実施を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の前記試料のバイオマーカータンパク質を、一組のバイオマーカー捕捉試薬と接触させることを含み、また、一組の前記バイオマーカー捕捉試薬のそれぞれのバイオマーカー捕捉試薬が、検出した異なるバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
それぞれのバイオマーカー捕捉試薬が、抗体またはアプタマーである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
それぞれのバイオマーカー捕捉試薬が、アプタマーである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのアプタマーが、低速オフレートを示すアプタマーである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
低速オフレートを示す少なくとも1つのアプタマーでは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または、少なくとも10個のヌクレオチドが修飾を受けている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
低速オフレートを示すそれぞれのアプタマーが、≧30分、≧60分、≧90分、≧120分、≧150分、≧180分、≧210分、または≧240分のオフレート(t1/2)で、それらの標的タンパク質に結合する、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、耐糖能異常障害を有する、または、有する可能性が高い、前糖尿病である、または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高い場合、前記対象に対して、体重の減量、血糖コントロール、及び/または薬物治療を含むレジメンを勧める、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記決定を、分類モデルまたはエラスティックネットロジスティック回帰モデルを使用して、N個の前記バイオマーカータンパク質レベルのレベルを解析することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
医療保険料、または、生命保険料を決定する目的で、前記対象が、耐糖能異常障害を有する、もしくは、有する可能性が高い、前糖尿病である、または前糖尿病もしくは糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、医療保険料または生命保険料を決定することをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、前記方法から得た情報を使用して、医療資源の利用を予測及び/または管理することをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
N個のバイオマーカータンパク質捕捉試薬を含むキットであって、Nが、少なくとも3である、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の少なくとも1つが、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、前記キット。
【請求項46】
Nが3~41、またはNが4~41、またはNが5~41、またはNが6~41、またはNが7~41、またはNが8~41、またはNが9~41、またはNが10~41、またはNが11~41、またはNが12~41、またはNが13~41、またはNが14~41、またはNが15~41、またはNが16~41である、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
Nが3、またはNが4、またはNが5、またはNが6、またはNが7、またはNが8、またはNが9、またはNが10、またはNが11、またはNが12、またはNが13、またはNが14、またはNが15、またはNが16、またはNが17、またはNが18、またはNが19、またはNが20、またはNが21、またはNが22、またはNが23、またはNが24、またはNが25、またはNが26、またはNが27、またはNが28、またはNが29、またはNが30、またはNが31、またはNが32、またはNが33、またはNが34、またはNが35、またはNが36、またはNが37、またはNが38、またはNが39、またはNが40、またはNが41である、請求項45または46に記載のキット。
【請求項48】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬のそれぞれが、異なるバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~47のいずれか1項に記載のキット。
【請求項49】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬のそれぞれが、表1から選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~48のいずれか1項に記載のキット。
【請求項50】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の少なくとも1つが、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、及びKINから選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~49のいずれか1項に記載のキット。
【請求項51】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の1つまたは2つが、INHBC及び/またはSHBGに対して特異的に結合する、請求項45~50のいずれか1項に記載のキット。
【請求項52】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の少なくとも2つ、または少なくとも3つのそれぞれが、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択するタンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~51のいずれか1項に記載のキット。
【請求項53】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の少なくとも1つが、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、HTRA1、CHAD、CPM、DLK1、HERC1、IL20RB、MAP2K4、GPX2、及びFGFR4から選択するタンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~52のいずれか1項に記載のキット。
【請求項54】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはACY1に対して特異的に結合する、またはN個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはACY1に対して特異的に結合する、または、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びACY1から選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~53のいずれか1項に記載のキット。
【請求項55】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはCOL1A1に対して特異的に結合する、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはCOL1A1に対して特異的に結合する、または、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の内の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びCOL1A1から選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~54のいずれか1項に記載のキット。
【請求項56】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはRTN4Rに対して特異的に結合する、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはRTN4Rに対して特異的に結合する、または、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びRTN4Rから選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~55のいずれか1項に記載のキット。
【請求項57】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはCRLF1:CLCF1複合体に対して特異的に結合する、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはCRLF1:CLCF1複合体に対して特異的に結合する、または、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びCRLF1:CLCF1複合体から選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~56のいずれか1項に記載のキット。
【請求項58】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはCBX7に対して特異的に結合する、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはCBX7に対して特異的に結合する、またはN個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びCBX7から選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~57のいずれか1項に記載のキット。
【請求項59】
N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、INHBCもしくはKINに対して特異的に結合する、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の2つのそれぞれが、SHBGもしくはKINに対して特異的に結合する、またはN個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の3つのそれぞれが、INHBC、SHBG、及びKINから選択したバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~58のいずれか1項に記載のキット。
【請求項60】
Nは、少なくとも5である、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の5つのそれぞれが、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、及びRTN4Rから選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~59のいずれか1項に記載のキット。
【請求項61】
Nは、少なくとも16である、かつ、N個の前記バイオマーカータンパク質捕捉試薬の16個のそれぞれが、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1、CBX7、KIN、SERPINA、PELI2、TFF3、FABP12、INHBC、SHBG、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、及びHTRA1から選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する、請求項45~60のいずれか1項に記載のキット。
【請求項62】
N個の前記バイオマーカー捕捉試薬のそれぞれが、抗体またはアプタマーである、請求項45~61のいずれか1項に記載のキット。
【請求項63】
それぞれのバイオマーカー捕捉試薬が、アプタマーである、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
少なくとも1つのアプタマーが、低速オフレートを示すアプタマーである、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
低速オフレートを示す少なくとも1つのアプタマーでは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個のヌクレオチドが修飾を受けている、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
低速オフレートを示すそれぞれのアプタマーが、≧30分、≧60分、≧90分、≧120分、≧150分、≧180分、≧210分、または≧240分のオフレート(t1/2)で、それらの標的タンパク質に結合する、請求項64または請求項65に記載のキット。
【請求項67】
対象から得た試料でのN個の前記バイオマーカータンパク質の検出において使用する請求項45~66のいずれか1項に記載のキット。
【請求項68】
前記対象が、耐糖能異常障害を有するか、もしくは、有する可能性が高いか、または、前糖尿病であるか、または前糖尿病もしくは糖尿病を発症する可能性が高いか否かの決定において使用する請求項67に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年1月10日に出願した米国仮出願第62/959,660号の優先権の利益を主張するものであり、この出願を、あらゆる目的で、その全内容を、参照により、本明細書に記載した一部を構成するものとして援用する。
【0002】
発明の分野
本出願は、一般的に、バイオマーカーの検出、及び耐糖能の特徴決定に関連しており、例えば、前糖尿病または糖尿病の兆候である耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い対象を特定する。様々な実施形態では、本発明は、耐糖能異常障害の特徴決定を行うための1つ以上のバイオマーカー、方法、機器、試薬、システム、及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
耐糖能を決定する現在の方法では、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の参加者に対して、2時間の血漿ブドウ糖レベルを測定する。一般的なOGTTは、一晩の絶食の後に、75グラムの経口ブドウ糖溶液を摂取して、ベースライン(「空腹時血漿ブドウ糖」)、及び摂取後2時間(「2時間-OGTTブドウ糖値」)において血漿ブドウ糖測定を行う。現在のところ、2型糖尿病の臨床的診断には、空腹時血漿グルコース、及び2時間OGTT血漿グルコースの両方が、HbA1c値をも含めて、American Diabetes Associationで採用されている。2型糖尿病の予防は、主として、耐糖能異常障害を有する方々に基づいて評価をしており、2時間のOGTT血漿グルコースレベルを≧7.8mmol/Lで定義している。例えば、Knowler et al.N.Engl.J.Med.2002;346:393-403及びTuomilehto et al.N.Engl.J.Med.2001;344:1343-1350を参照されたい。絶食またはブドウ糖の投与を必要とせず、耐糖能異常障害に対するOGTT血漿ブドウ糖閾値を示すプロテオミクスモデルの開発が待望されている。
【発明の概要】
【0004】
概要
一部の実施形態では、対象が耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いか否かを決定する方法を提供する。一部の実施形態では、前糖尿病である対象、または前糖尿病を発症する可能性が高い対象を同定する方法を提供する。一部の実施形態では、糖尿病を発症する可能性が高い対象を同定する方法を提供する。
【0005】
一部の実施形態では、本明細書に記載した方法は、対象が前糖尿病または糖尿病の兆候である耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いか否かを決定する方法であり、この方法は、N個のバイオマーカータンパク質を有するバイオマーカーパネルを形成する、及び、対象から得た試料でのN個のバイオマーカータンパク質のそれぞれのレベルを検出することを含み、また、Nは、少なくとも3つである、そして、N個の当該バイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する。一部の実施形態では、Nは3~41、Nは4~41、Nは5~41、またはNは6~41、またはNは7~41、またはNは8~41、またはNは9~41、またはNは10~41、またはNは11~41、またはNは12~41、またはNは13~41、またはNは14~41、またはNは15~41、またはNは16~41、またはNは少なくとも4である、またはNは少なくとも5である、またはNは少なくとも6である、またはNは少なくとも7である、またはNは少なくとも8である、またはNは少なくとも9である、またはNは少なくとも10である、またはNは少なくとも11である、またはNは少なくとも12である、または、Nは少なくとも13である、または、Nは少なくとも14である、または、Nは少なくとも15である、またはNは少なくとも16である。一部の実施形態では、Nは3である、またはNは4である、またはNは5である、またはNは6である、またはNは7である、またはNは8である、またはNは9である、またはNは10である、またはNは11である、またはNは12である、またはNは13である、またはNは14である、またはNは15である、またはNは16である、またはNは17である、またはNは18である、またはNは19である、またはNは20である、またはNは21である、またはNは22である、またはNは23である、またはNは24である、またはNは25である、またはNは26である、またはNは27である、またはNは28である、またはNは29である、またはNは30である、またはNは31である、またはNは32である、またはNは33である、またはNは34である、またはNは35である、またはNは36である、またはNは37である、またはNは38である、またはNは39である、またはNは40である、またはNは41である。一部の実施形態では、対象は、耐糖能異常障害を有する。一部の実施形態では、対象は、耐糖能異常障害を有する可能性が高い。一部の実施形態では、対象は、前糖尿病を発症する可能性が高い。一部の実施形態では、対象は、前糖尿病である。一部の実施形態では、対象は、糖尿病を発症する可能性が高い。一部の実施形態では、対象は、耐糖能異常障害と糖尿病とを併発している。一部の実施形態では、糖尿病を発症する可能性が高い対象は、糖尿病の発症を抑制するために、予防措置を講じる、または予防的治療を受ける。
【0006】
一部の実施形態では、N個のバイオマーカーのそれぞれを、表1から選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、及びKINから選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の1つまたは2つは、INHBC及び/またはSHBGである。一部の実施形態では、N個のタンパク質バイオマーカーの少なくとも2つ、または少なくとも3つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、HTRA1、CHAD、CPM、DLK1、HERC1、IL20RB、MAP2K4、GPX2、及びFGFR4から選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びACY1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びACY1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びACY1である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCOL1A1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCOL1A1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCOL1A1である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びRTN4Rである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びRTN4Rである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びRTN4Rである。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCRLF1:CLCF1複合体である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCBX7である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCBX7である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCBX7である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びKINである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びKINである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びKINである。一部の実施形態では、Nは少なくとも5つであり、かつ、N個のバイオマーカータンパク質の内の5つは、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、及びRTN4Rである。一部の実施形態では、Nは少なくとも16である、かつ、N個のバイオマーカータンパク質の内の16個は、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、INHBC、SHBG、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、及びHTRA1である。
【0007】
本明細書に記載したいずれの実施形態でも、対象は、耐糖能異常障害を発症するリスクを持ち得る。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、対象は、前糖尿病を発症するリスクを持ち得る。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、対象は、糖尿病を発症するリスクを持ち得る。一部の実施形態では、この方法は、対象が、前糖尿病または糖尿病の兆候である耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いか否かを決定することを含む。一部の実施形態では、この方法は、対象が、前糖尿病であるか否か、または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定することを含む。一部の実施形態では、糖尿病は、2型糖尿病である。一部の実施形態では、この方法は、対象を治療することを含む。一部の実施形態では、治療は、対象に対して、インスリン及び/またはメトホルミンを投与することを含む。一部の実施形態では、治療は、対象のための減量プログラムの実施、食事制限の実施、カロリー制限の実施、及び/または運動プログラムの実施を含む。
【0008】
本明細書に記載したいずれの実施形態のいずれでも、N個のバイオマーカータンパク質のそれぞれは、互いに相違する。一部の実施形態では、この方法は、対象から得た試料のバイオマーカーを、一組のバイオマーカー捕捉試薬と接触させることを含み、そして、一組のバイオマーカー捕捉試薬のそれぞれのバイオマーカー捕捉試薬は、検出する異なるバイオマーカーに対して特異的に結合する。一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカー捕捉試薬は、抗体またはアプタマーである。一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカー捕捉試薬は、アプタマーである。一部の実施形態では、少なくとも1つのアプタマーは、低速オフレートを示すアプタマーである。一部の実施形態では、少なくとも1つの低速オフレートを示すアプタマーでは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個のヌクレオチドが修飾を受けている。一部の実施形態では、低速オフレートを示すそれぞれのアプタマーは、≧30分、≧60分、≧90分、≧120分、≧150分、≧180分、≧210分、または≧240分のオフレート(t1/2)で、バイオマーカータンパク質に結合する。
【0009】
本明細書に記載したいずれの実施形態でも、試料を、血液試料とし得る。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、試料は、血清試料または血漿試料から選択し得る。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対象は、試料を提供する前に普通の食事をする、また、この普通の食事では、空腹時が通常よりも長くならないようにする。
【0010】
一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカーのコントロールレベルよりも高レベルであるSHBG、COL1A1、CRLF1:CLCF1複合体、FAM20B、COL15A1、KIN、SERPINA11、PELI2、MARCKSL1、CHAD、IL20RB、MYOC、WFDC11、MAP2K4、CALB1、FGFR4、OSTM1、ITIH1、CFAP45、及びSFTPDから選択する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、前糖尿病である、及び/または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いことを示す。
【0011】
一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカーのコントロールレベルよりも低レベルであるINHBC、ACY1、RTN4R、CBX7、TFF3、HTRA1、FABP12、GAD1、CPM、SVEP1、SOCS7、F9、DLK1、HERC1、STC1、CCL16、SMCO2、GPX2、CCL23、RNASE10、及びZNF134から選択する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルは、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、前糖尿病である、及び/または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いことを示す。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に記載した方法は、医療保険料または生命保険料を決定することを目的とする。一部の実施形態では、この方法は、医療保険料または生命保険料を決定することをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法は、この方法で得られる情報を使用して、医療資源の利用を予測及び/または管理することをさらに含む。
【0013】
一部の実施形態では、キットを提供する。一部の実施形態では、キットは、N個のバイオマーカータンパク質捕捉試薬を含み、また、Nは少なくとも3つである、かつ、N個のバイオマーカータンパク質捕捉試薬の少なくとも1つが、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択するバイオマーカータンパク質に対して特異的に結合する。一部の実施形態ではで、Nは3~41である、またはNは4~41である、またはNは5~41である、またはNは6~41である、またはNは7~41である、またはNは8~41である、またはNは9~41である、またはNは10~41である、またはNは11~41である、またはNは12~41である、またはNは13~41である、またはNは14~41である、またはNは15~41である、またはNは16~41である、またはNは少なくとも4である、またはNは少なくとも5である、またはNは少なくとも6である、またはNは少なくとも7である、またはNは少なくとも8である、またはNは少なくとも9である、またはNは少なくとも10である、またはNは少なくとも11である、またはNは少なくとも12である、またはNは少なくとも13である、またはNは少なくとも14である、またはNは少なくとも15である、またはNは少なくとも16である。一部の実施形態では、Nは3である、またはNは4である、またはNは5である、またはNは6である、またはNは7である、またはNは8である、またはNは9である、またはNは10である、またはNは11である、またはNは12である、またはNは13である、またはNは14である、またはNは15である、またはNは16である、またはNは17である、またはNは18である、またはNは19である、またはNは20である、またはNは21である、またはNは22である、またはNは23である、またはNは24である、またはNは25である、またはNは26である、またはNは27である、またはNは28である、またはNは29である、またはNは30である、またはNは31である、またはNは32である、またはNは33である、またはNは34である、またはNは35である、またはNは36である、またはNは37である、またはNは38である、またはNは39である、またはNは40である、またはNは41である。一部の実施形態では、キットは、試料に含まれるN個のバイオマーカータンパク質のレベルを検出するために使用する、また、この試料は、対象由来のものである。一部の実施形態では、キットは、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、前糖尿病であるか否か、及び/または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定するために使用する。
【0014】
一部の実施形態では、N個のバイオマーカーのそれぞれを、表1から選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、及びKINから選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の1つまたは2つは、INHBC及び/またはSHBGである。一部の実施形態では、N個のタンパク質バイオマーカーの少なくとも2つまたは少なくとも3つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、HTRA1、CHAD、CPM、DLK1、HERC1、IL20RB、MAP2K4、GPX2、及びFGFR4から選択する。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びACY1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びACY1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つはINHBC、SHBG、及びACY1である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCOL1A1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCOL1A1である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCOL1A1である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びRTN4Rである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びRTN4Rである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びRTN4Rである。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCRLF1:CLCF1複合体である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCRLF1:CLCF1複合体である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びCBX7である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びCBX7である、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びCBX7である。一部の実施形態では、N個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、INHBC及びKINである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の2つは、SHBG及びKINである、またはN個のバイオマーカータンパク質の内の3つは、INHBC、SHBG、及びKINである。一部の実施形態では、Nは、少なくとも5である、N個のバイオマーカータンパク質の内の5つは、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、及びRTN4Rである。一部の実施形態では、Nは、少なくとも16である、N個のバイオマーカータンパク質の内の16個は、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、INHBC、SHBG、FAM20B、COL15A1、MARCKSL1、及びHTRA1である。
【0015】
一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカー捕捉試薬は、抗体またはアプタマーである。一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカー捕捉試薬は、アプタマーである。一部の実施形態では、少なくとも1つのアプタマーは、低速オフレートを示すアプタマーである。
【0016】
一部の実施形態では、それぞれの低速オフレートを示すアプタマーは、≧30分、≧60分、≧90分、≧120分、≧150分、≧180分、≧210分、または≧240分のオフレート(t1/2)で、バイオマーカータンパク質に結合する。
【0017】
本明細書に記載したいずれの実施形態でも、試料を、血液試料とし得る。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、試料を、血清試料及び血漿試料から選択し得る。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。
【0018】
本明細書に記載したいずれの実施形態でも、N個のバイオマーカータンパク質のそれぞれは、その他のN個のバイオマーカータンパク質とは相違する。本明細書に記載したいずれの実施形態でも、少なくとも1つの低速オフレートを示すアプタマーは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個のヌクレオチドが修飾を受けている。一部の実施形態では、修飾は、疎水性修飾である。一部の実施形態では、修飾は、疎水性塩基修飾である。一部の実施形態では、1つ以上の改変は、図2に示す改変から選択し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】Aは、実施例4に記載したように、一度に1つのバイオマーカータンパク質をモデルに加えるモデルの結果を示す。Bは、実施例4に記載したように、一度に1つのバイオマーカータンパク質をモデルから減らすモデルの結果を示す。Cは、実施例4に記載したように、表1から無作為に選択したN個のバイオマーカーを含むモデルの結果を示す。
図2】アプタマーで使用することができる特定の核酸塩基修飾を示す。
図3】コンピューターで実施する様々な方法での使用のための本明細書に記載した例示的なコンピューターシステムを示しているが、これらに限定されない。
図4】従来のOGTT(x軸)で決定したレベルを使用して、実施例2(y軸)に記載した方法で決定した耐糖能状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明を、代表的な特定の実施形態と併せて説明をするが、本発明は、特許請求の範囲によって定義されており、それらの実施形態に限定するものでない、ことを理解されたい。
【0021】
当業者であれば、本明細書に記載したものと類似または同等の数多くの方法及び材料が、本発明を実施するにあたって使用し得ることを認識する。本発明は、本明細書に記載した方法及び材料に限定することは、決してない。
【0022】
特記しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が、一般的に理解する意味を有する。本明細書に記載したものと類似または同等のあらゆる方法、装置、及び材料を、本発明の実施に使用することができるが、特定の方法、装置、及び材料を、本明細書に記載している。
【0023】
本明細書で引用するすべての刊行物、公開特許公報、及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物、公開特許公報、または特許出願を、参照により、あたかも具体的かつ個別に示したものと同然に、参照により、それらの内容を本明細書で援用する。
【0024】
本明細書に添付した許請求の範囲を含めて、本出願で使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確にその他の事項を指していない限り、複数形を含む、また、「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」と互換可能に使用し得る。したがって、「アプタマー」とは、アプタマーの混合物を含み、「プローブ」とは、プローブの混合物などを含む。
【0025】
本明細書で使用する用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、及び、それらのあらゆる変形は、プロセス、方法、プロダクト-バイ-プロセス、または、要素を含む(comprises)、含む(includes)、または含む(contains)組成物などを排他的に含むことは意図していない、そして、要素の一覧は、その一覧に明示されていないその他の要素を含み得る。
【0026】
本出願は、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いか否か、または前糖尿病及び/または糖尿病を発症しているか、または発症する可能性が高いか否かを決定するためのバイオマーカー、方法、機器、試薬、システム、及びキットを含む。一部の実施形態では、耐糖能異常障害の対象が、前糖尿病または糖尿病を発症しているか、または発症する可能性が高いか否かを決定するためのバイオマーカー、方法、機器、試薬、システム、及びキットを提供する。
【0027】
本明細書で使用する用語「CRLF1:CLCF1複合体」は、CRLF1及び/またはCLCF1、及び/またはCRLF1とCLCF1の複合体のことを指すために使用する。したがって、方法が、バイオマーカー「CRLF1:CLCF1複合体」を検出することを含むのであれば、その方法は、CRLF1、CLCF1、CRLF1とCLCF1の両方、及び/またはCRLF1とCLCF1との複合体を検出することを含み得る。CRLF1:CLCF1複合体に対して特異的に結合するバイオマーカー捕捉試薬は、CRLF1、及び/またはCLCF1、及び/またはCRLF1とCLCF1の両方、及び/またはCRLF1とCLCF1との複合体に結合し得る。
【0028】
一部の実施形態では、単独で、または様々な組み合わせで、対象が耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、または前糖尿病及び/または糖尿病を発症しているか、または発症する可能性が高いか否かを決定する。後述するように、例示的な実施形態として、表1に提供するバイオマーカーがある。
【0029】
バイオマーカーは、多重化アプタマーをベースとしたアッセイを使用して同定した。表1に、耐糖能を有する個体から得た試料と、耐糖能異常障害を有する個体から得た試料を識別する上で役立つバイオマーカーを示す。
【0030】
用語「感受性」及び「特異性」は、生物学的試料で検出した1つ以上のバイオマーカーレベルに基づいて、疾患を有する個体、または疾患を持たない個体を正しく見分ける能力に関して本明細書で使用する。一部の実施形態では、用語「感受性」及び「特異性」は、生物学的試料で検出した1つ以上のバイオマーカーレベルに基づいて、耐糖能異常障害を有する個体、または正常な耐糖能を有する個体を正しく見分ける能力に関して本明細書で使用し得る。そのような実施形態では、「感受性」は、耐糖能異常障害を有する個体を正しく見分けるバイオマーカー(複数可)の性能を示す。「特異性」は、耐糖能異常障害を持たない個体を正しく見分けるバイオマーカー(複数可)の性能を示す。例えば、バイオマーカーのパネルに対して、85%の特異性と90%の感受性を試験するために使用した、一連のコントロール試料(健康な個体または耐糖能異常障害を持っていないことが明らかな対象からの試料など)、及び試験試料(耐糖能異常障害を有する個体の試料など)は、コントロール試料の85%が、パネルではコントロール試料として正しく分類されており、かつ、試験試料の90%が、パネルでは試験試料として正しく分類されている。
【0031】
一部の実施形態では、用語「感受性」及び「特異性」は、試料で検出した1つ以上のバイオマーカーレベルに基づいて、一般的には、前糖尿病の兆候であり、かつ、一部の事例では、糖尿病を示し得る個体については、耐糖能異常障害を有する個体として正しく見分ける能力として本明細書で使用し得る。「感受性」は、一般的には、前糖尿病の兆候であり、かつ、一部の事例では、糖尿病を示し得る個体については、耐糖能異常障害を有する個体を正しく見分けるバイオマーカー(複数可)の性能を示す。「特異性」は、一般的には、前糖尿病の兆候であり、かつ、一部の事例では、糖尿病を示し得る個体については、耐糖能異常障害を持たない個体を正しく見分けるバイオマーカー(複数可)の性能を示す。例えば、正常耐糖能を有する個体から得た試料のセットを試験するために使用するバイオマーカーのパネルに関して85%の特異性と90%の感受性であれば、85%の個体を正しくも見分ける。同様に、耐糖能異常障害を有する個体から得た試料のセットでは、個体の90%が正しく分類される。
【0032】
一部の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーのパネルの全体的な性能を、曲線下面積(AUC)値で表す。このAUC値は、受信者動作特性(ROC)曲線から導き出す。このROC曲線は、試験の偽陽性率(1-特異度)に対する試験の真正陽性率(感受性)のプロットである。用語「曲線下面積」または「AUC」は、受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積のことを指しており、これらは、両方ともに、当該技術分野で周知である。AUCの測定は、完全なデータ範囲にわたって分類器の精度を比較する上で役立つ。AUCが大きい分類器は、関心を寄せた2つのグループの間(例えば、正常な個体と糖尿病の個体、または耐糖能異常障害のある個体と糖尿病であり得る個体)で未知数を正しく分類する能力を高める。ROC曲線は、2つの母集団を区別する際に、特定の機能(例えば、本明細書で説明するバイオマーカーのいずれか、及び/またはさらなる生物医学情報のあらゆる特徴)のパフォーマンスをプロットする上で役立つ。一般的には、母集団全体の機能データを、単一の機能の値に基づいて昇順で並べ替える。次に、その機能に関するそれぞれの数値に関して、データの真陽性率と偽陽性率を計算する。真陽性率は、その機能の数値を超える事例の数を計数して、事例の総数で割って決定する。偽陽性率は、その機能の数値を超えるコントロールの数を計数して、コントロールの総数で割って決定する。この定義は、コントロールと比較して機能が改善している状況のことを指しているが、この定義は、コントロールと比較して機能が改善していない状況にも使える(そのような状況では、その機能の数値を下回る試料を計数する)。ROC曲線は、単一の機能、及びその他の単一の出力に対して生成することができる、例えば、2つ以上の機能の組み合わせを数学的に(例えば、加算、減算、乗算などで)組み合わせて、単一の合計値を提供することができ、この単一の合計値は、ROC曲線にプロットすることができる。加えて、複数の機能のあらゆる組み合わせ、すなわち、単一の出力値を導出する組み合わせを、ROC曲線にプロットすることができる。
【0033】
本明細書で使用する対象に関する「肥満」とは、BMIが30以上の対象のことを指す。
【0034】
「生物学的試料」及び「試料」は、本明細書では互換可能に使用しており、個体から得た、またはその他の方法で得たあらゆる材料、体液、組織、または細胞のことを指す。このものとして、血液(全血、白血球、末梢血単核細胞、バフィーコート、血漿、及び血清など)、喀痰、涙液、粘液、鼻洗浄液、鼻吸引液、尿、唾液、腹腔洗浄液、腹水、嚢胞液、腺液、リンパ液、気管支吸引物、滑液関節吸引物、臓器分泌物、細胞、細胞抽出物、及び脳脊髄液がある。これには、上記したすべての実験的に分離した画分も含む。例えば、血液試料は、血清、血漿、または、赤血球や白血球(white blood cells)(白血球(leukocytes))などの特定の種類の血液細胞を含む画分に分画することができる。一部の実施形態では、試料は、組織及び液体試料の組み合わせなど、個体由来の試料の組み合わせとし得る。また、用語「生物学的試料」は、例えば、糞便試料、組織試料、または組織生検など、均質化した固体材料を含む材料も含む。用語「生物学的試料」は、組織培養または細胞培養に由来する材料も含む。生物学的試料を得るためのあらゆる適切な方法を使用することができる;例示的な方法として、例えば、瀉血、綿棒拭い(例えば、口腔内綿棒拭い)、及び細針吸引生検方法がある。細針吸引の影響を受けやすい例示的な組織として、リンパ節、肺、甲状腺、乳房、膵臓、及び肝臓がある。試料は、例えば、顕微解剖(例えば、レーザーキャプチャーマイクロ解剖(LCM)、またはレーザーマイクロ解剖(LMD))、膀胱洗浄、塗抹標本(例えば、PAP塗抹標本)、または管洗浄で回収することもできる。個体から得た、または個体に由来する「生物学的試料」として、個体から得た後にあらゆる適切な方法で処理をした試料がある。
【0035】
本明細書で使用する「普通の食事」とは、個体の毎日の食生活のことを意味する。個体の普通の食事は、その他の個体の普通の食事と同じである、似ている、または異なり得る。普通の食事療法は、普段より長く絶食する、普段より多めに、または少なめに食べる、または医学的検査に向けて行われる食事療法の変更など、食事療法の変更は控える。
【0036】
さらに、一部の実施形態では、生物学的試料は、数多くの個体から生物学的試料を採取する、それらをプールする、または、それぞれの個体の生物学的試料のアリコートをプールすることによって誘導し得る。プールしたこれらの試料は、単一の個体に由来する試料に関して本明細書で記載したようにして処理し得る、そして、例えば、プールした試料に予後不良が確立すれば、次に、それぞれの生物学的試料を改めて試験をして、いずれの個体(複数可)が、耐糖能異常障害を有する、及び/または前糖尿病または糖尿病である、またはそれらを発症する可能性が高い、ことを決定することができる。
【0037】
「標的」、「標的分子」、及び「分析物」とは、本明細書では互換可能に使用しており、試料に存在し得る関心を寄せたあらゆる分子のことを指す。「関心を寄せた分子」とは、特定の分子の小さなあらゆる変化を含んでおり、例えば、タンパク質の事例では、アミノ酸配列のわずかな変化、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、またはその他のあらゆる操作または修飾、例えば、分子の同一性を実質的に変化させない標識成分とのコンジュケーションがある。「標的分子」、「標的」、または「分析物」とは、分子または多分子構造の1つのタイプまたは種のコピーのセットのことを指す。「標的分子」、「標的」、及び「分析物」とは、分子または多分子構造の2つ以上のタイプまたは種のことを指す。例示的な標的分子として、タンパク質、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、アフィボディ、抗体模倣対、ウイルス、病原体、毒性物質、基質、代謝産物、遷移状態類似体、補因子、阻害剤、薬物、色素、栄養素、成長因子、細胞、組織、及び上記したいずれかのあらゆるフラグメントまたは部分がある。一部の実施形態では、標的分子は、タンパク質であり、この事例では、標的分子は「標的タンパク質」と称し得る。
【0038】
本明細書で使用する「捕捉剤」または「捕捉試薬」とは、バイオマーカータンパク質に対して特異的に結合することができる分子のことを指す。「バイオマーカータンパク質捕捉試薬」とは、バイオマーカータンパク質に対して特異的に結合することができる分子のことを指す。捕捉試薬の例として、アプタマー、抗体、アドネクチン、アンキリン、その他の抗体模倣体、及びその他のタンパク質スキャホールド、自己抗体、キメラ、小分子、核酸、レクチン、リガンド結合受容体、インプリントポリマー、アビマー、ペプチド模倣体、ホルモン受容体、サイトカイン受容体、合成受容体、及び、上記した捕捉試薬のいずれかの修飾体またはフラグメントがあるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、捕捉試薬は、アプタマー、及び抗体から選択する。
【0039】
用語「抗体」は、あらゆる種の完全長抗体、及びそのような抗体のフラグメント、及び誘導体、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、一本鎖抗体、Fvフラグメント、及び一本鎖Fvフラグメントのことを指す。また、用語「抗体」は、合成抗体のことも指しており、例えば、ファージディスプレイ由来の抗体、及びフラグメント、アフィボディ、及びナノボディがある。
【0040】
本明細書で使用する「マーカー」及び「バイオマーカー」は互換可能に使用しており、個体での正常または異常なプロセスの徴候、または、個体での疾患またはその他の病態を示す標的分子のことを指す。より具体的には、「マーカー」または「バイオマーカー」は、正常または異常に関係なく、また異常であるならば、慢性または急性に関係なく、特定の生理学的状態またはプロセスの存在に関連する解剖学的、生理学的、生化学的、または分子的パラメーターである。バイオマーカーは、実験室アッセイ、及び医療イメージングを含めた様々な方法によって検出可能かつ測定可能である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、標的タンパク質である。
【0041】
本明細書で使用する「バイオマーカーレベル」及び「レベル」は、生物学的試料でのバイオマーカーを検出するあらゆる分析方法を使用して得た測定値のことを指しており、このものは、当該生物学的試料でのバイオマーカーに応じて、存在、不存在、絶対量または濃度、相対量または濃度、力価、レベル、発現レベル、測定したレベルの比率などを示す。「レベル」の正確な内容は、バイオマーカーを検出するために採用した特定の分析方法の特定のデザインと要素が関係している。
【0042】
標的分子の「コントロールレベル」とは、疾患または病態が認められない個体、または疾患または病態を有する疑いのない個体から得た同じ試料タイプでの標的分子のレベルのことを指す。標的分子の「コントロールレベル」は、本発明の方法を行う度に決定する必要はなく、特定の試料のレベルが、通常のレベルより高い、または低いことを決定するためのリファレンスまたは閾値として使用する従前に決定したレベルとし得る。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法でのコントロールレベルは、正常耐糖能を有する1名以上の対象で認められたレベルである。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法でのコントロールレベルは、耐糖能異常障害を有するが、糖尿病ではない、1名以上の対象で認められたレベルである。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法でのコントロールレベルは、複数の正常な対象、または耐糖能異常障害を有するが、糖尿病ではない対象で認められた平均または平均レベルであり、任意に統計的変動を加減している。
【0043】
本明細書で使用する「個体」及び「対象」は、試験対象または患者のことを指すために互換可能に使用する。個体は、哺乳動物または非哺乳動物とし得る。様々な実施形態では、個体は、哺乳動物である。哺乳動物の個体は、ヒトまたは非ヒトとし得る。様々な実施形態では、個体は、ヒトである。健康または正常な個体は、関心を寄せた疾患または病態(耐糖能異常障害など)が、従来の診断方法では検出できない個体のことである。
【0044】
「診断する(Diagnose)」、「診断する(diagnosing)」、「診断(diagnosis)」、及びこれらの変形は、個体に関連する1つ以上の徴候、症状、データ、またはその他の情報に基づいて、その個体の健康状態または病態を検出、定量、または認識することを指す。個体の健康状態は、健康/正常(すなわち、疾患または病態が存在しないことの診断)、または病気/異常(すなわち、疾患または病態の存在の診断または特徴の評価)として診断することができる。「診断する(Diagnose)」、「診断する(diagnosing)」、「診断(diagnosis)」などの用語は、特定の疾患または病態に関して、疾患の初期検出、疾患の特徴決定または分類、疾患の進行、寛解、または再発の検出、及び個体に対して治療(treatment)または治療(therapy)を行った後の疾患応答の検出を含む。用語「診断する(diagnose)」、「診断する(diagnosing)」、「診断(diagnosis)などは、特定の疾患または病態に関して、疾患の当初の検出;疾患の特徴決定または分類;疾患の進行、寛解、または再発の検出;及び、個体に治療または療法を行った後の疾患反応の検出を含む。耐糖能異常障害の診断は、耐糖能異常障害がある個体と、正常耐糖能を有する個体とを識別することを含む。前糖尿病または糖尿病の診断は、耐糖能異常障害を有しているが、おそらく糖尿病ではない個体と、正常耐糖能を有する個体とを識別することを含む。
【0045】
「予後(Prognose)」、「予後(prognosing)」、「予後(prognosis)」、及びこれらの変形は、疾患または病態を有する個体での疾患または病態の将来の経過の予測(例えば、患者の生存予測)のことを指しており、そして、そのような用語は、個体に治療(treatment)または治療(therapy)を施した後の疾患反応の予測能のことを指す。
【0046】
「評価する(Evaluate)」、「評価する(evaluating)」、「評価(evaluation)」、及びこれらの変形は、「診断」及び「予後」の両方を含み、また、疾患を有していない個体での疾患または病態の将来の経過についての判断または予測、ならびに、疾患が治癒したことが明白な個体において、疾患または病態が生じる尤度に関する判断及び予測を含む。また、用語「評価する(evaluate)」は、治療法に対する個体の応答を評価すること、例えば、個体が治療剤に対して好ましい応答を示し得るか、または治療剤に対して応答し得ない(または、例えば、毒性またはその他の望ましくない副作用を被る)かについて予測すること、個体に投与するための治療剤を選択すること、または、個体に対して行っている治療法に対する個体の応答をモニタリングまたは判定することも含む。したがって、耐糖能を「評価する(evaluating)」ことは、例えば:個体における耐糖能の将来の経過を予測すること;耐糖能異常障害が、前糖尿病または糖尿病にまで進行するか否かを予測すること;前糖尿病または糖尿病の特定の段階が、前糖尿病または糖尿病のさらに高い段階にまで進行するか否かを予測する、などのいずれかを含み得る。
【0047】
本明細書で使用するバイオマーカーレベルに関する「検出する」または「決定する」には、バイオマーカーレベルに対応するシグナルを検知及び記録するために使用する機器と、そのシグナルを生成するために必要な材料の両方の使用がある。様々な実施形態では、レベルは、蛍光、化学発光、表面プラズモン共鳴、表面音響波、質量分析、赤外線分光法、ラマン分光法、原子間力顕微鏡法、走査型トンネル顕微鏡法、電気化学検出法、核磁気共鳴検出、量子ドットなどのあらゆる適切な方法を使用して検出する。
【0048】
本明細書で使用する「耐糖能異常障害を有する対象」は、耐糖能異常障害と診断した対象のことを指す。一部の実施形態では、耐糖能異常障害は、定期検査、メタボリックシンドローム、及び肥満のモニタリング、または薬物が起こし得る副作用をモニタリングしている間に出現しやすい。
【0049】
本明細書で使用する「前糖尿病である対象」または「糖尿病である対象」は、前糖尿病または糖尿病との診断を受けた対象のことを指す。一部の実施形態では、前糖尿病または糖尿病であると診断することは、耐糖能異常障害に関して上記した方法を含む。
【0050】
本明細書で使用する病態を「発症するリスクのある対象」とは、病態の1つ以上のリスク因子または併存疾患を有する対象のことを指す。一部の実施形態では、病態は、糖尿病である。糖尿病の発症に関連するリスク因子として、45歳以上、男性、体重が大きい、または約25kg/m以上のBMI、糖尿病の家族歴、3時間未満/週の運動、人種(例えば、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック/ラテン系アメリカ人、アメリカ先住民、またはアラスカ先住民)、妊娠糖尿病、及び/または多嚢胞性症候群の病歴があるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用する「可能性が高い」とは、0.50超の確率のことを意味する。
【0052】
本明細書では、「固体支持体」は、分子が、共有結合または非共有結合のいずれかを介して直接的または間接的に付着し得る表面を有するあらゆる基板のことを指す。「固体支持体」は、様々な物理的形式、例えば、膜;チップ(例えば、タンパク質チップ);スライド(例えば、スライドガラス、またはカバーガラス);カラム;例えば、ビーズなどの中空、中実、半中実、細孔または空洞を含む粒子;ゲル;光ファイバー材料を含むファイバー;マトリックス;及び、試料レセプタクルを持つことができる。試料レセプタクルの例として、試料ウェル、チューブ、キャピラリー、バイアル、及び試料を保持することができるその他のあらゆる容器、溝、または、窪みがある。試料レセプタクルは、マイクロタイタープレート、スライド、マイクロフルイディクス機器などのマルチ試料プラットフォームに収容することができる。支持体は、天然または合成の材料、有機または無機の材料で構成することができる。捕捉試薬が付着する固体支持体の組成は、一般的には、付着の方法(例えば、共有結合)に依存する。その他のレセプタクルの例として、微小液滴、及びマイクロ流体制御、またはバルク油/水性エマルジョンがあり、その内部で、アッセイ及び関連する操作をし得る。適切な固体支持体として、例えば、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカまたはシリカをベースとした材料、機能性ガラス、変性シリコン、炭素、金属、無機ガラス、膜、ナイロン、天然繊維(例えば、絹、羊毛、及び綿など)、ポリマーなどがある。固体支持体を構成する材料として、捕捉試薬の付着に使用する、例えば、カルボキシ、アミノ、またはヒドロキシル基などの反応性基を含むことができる。高分子固体支持体として、例えば、ポリスチレン、ポリエチレングリコールテトラフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンフルオリド、ポリカーボネート、及びポリメチルペンテンがある。使用可能な適切な固体支持体粒子として、例えば、Luminex(登録商標)タイプのコード化粒子、磁性粒子、及びガラス粒子などのコード化粒子がある。
【0053】
バイオマーカーの例示的使用
様々な例示的な実施形態では、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、前糖尿病である、及び/または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定する方法を提供する。様々な実施形態では、対象が、耐糖能異常障害を有するか、及び/または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定する方法を提供しており、当該対象から試料を得る、N個のバイオマーカータンパク質を有するバイオマーカーパネルを形成する、そして、当該試料でのN個のバイオマーカータンパク質のそれぞれのレベルを検出することを含み、また、Nは、少なくとも3であり、かつ、N個のバイオマーカータンパク質の少なくとも1つを、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1:CLCF1複合体、CBX7、KIN、SERPINA11、PELI2、TFF3、FABP12、GAD1、SVEP1、SOCS7、F9、STC1、MYOC、WFDC11、CALB1、CCL16、SMCO2、CCL23、OSTM1、RNASE10、ITIH1、ZNF134、CFAP45、及びSFTPDから選択する。
【0054】
様々な実施形態では、N個のバイオマーカーのそれぞれを、表1から選択する。

【表1-1】
【表1-2】
【0055】
一部の実施形態では、バイオマーカーは、正常耐糖能を有する個体と比較して、耐糖能異常障害を有する個体では異なるレベルで存在する。
【0056】
個体でのバイオマーカーの差次的レベルの検出を使用すると、例えば、個体が、耐糖能異常障害を有するか、または、有する可能性が高い、または耐糖能異常障害を有する個体が、前糖尿病であるか、または前糖尿病を発症する可能性が高いか否かの決定を可能にする。一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカーのいずれかを使用して、耐糖能異常障害の発症について個体をモニタリングする、または前糖尿病または糖尿病の発症について耐糖能異常障害のある個体をモニタリングすることができる。
【0057】
本明細書に記載したバイオマーカーのいずれかを使用して、対象が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高いか否かを決定する方法の例として、耐糖能異常障害の診断を受けていない個体での本明細書で説明をした1つ以上のバイオマーカーのレベルでは耐性は認められるが、1つ以上の耐糖能異常障害のリスク因子または併存疾患がある場合には、別の試験を使用して、個体が耐糖能異常障害を発症したことを早期の段階で示し得る。耐糖能異常障害を早期に発見することで、医学的介入がより効果的になり得る。このような医学的介入として、体重減少、及び血糖コントロールがあるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、インスリンまたはメトホルミンなどの治療薬を使用し得る。
【0058】
同様に、本明細書に記載したバイオマーカーを使用して、耐糖能異常障害を有する対象が、前糖尿病または糖尿病の発症の有無を決定することができる方法のさらなる例として、耐糖能異常障害を有する個体での本明細書に記載したバイオマーカーの1つ以上のレベルが、個体が前糖尿病または糖尿病を発症していることを示し得る。前糖尿病または糖尿病を早期に発見することで、医学的介入がより効果的になり得る。このような医学的介入として、体重の減量、及び血糖コントロールがあるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、インスリンまたはメトホルミンなどの治療薬を使用し得る。
【0059】
加えて、一部の実施形態では、個体での1つ以上のバイオマーカーの経時的な差次的発現レベルは、特定の治療レジメンに対する個体の応答を示し得る。一部の実施形態では、フォローアップモニタリングリングの間での1つ以上のバイオマーカーの発現の変化は、特定の治療が効果的であることを示す、または治療レジメンを何らかの方法で変更する、例えば、さらに積極的に血糖をコントロールする、もっと積極的に減量に取り組むべきである、ことを示唆し得る。一部の実施形態では、個体における1つ以上のバイオマーカーの経時的な一定の発現レベルは、個体の耐糖能異常障害が悪化していない、または前糖尿病または糖尿病を発症していない、ことを示し得る。
【0060】
スタンドアロンの診断試験としてバイオマーカーレベルを試験することに加えて、バイオマーカーレベルを、疾患の感受性のリスクの高まりを示す一塩基多型(SNP)、または、その他の遺伝領域、または変動性と組み合わせて決定することもできる。
【0061】
スタンドアロンの診断試験としてバイオマーカーレベルを試験することに加えて、バイオマーカーレベルを、その他の耐糖能異常障害スクリーニング法と組み合わせて行うこともできる。一部の事例では、本明細書に記載したバイオマーカーを使用する方法は、耐糖能異常障害、または前糖尿病、または糖尿病に対して、さらに積極的な治療、さらに頻繁な追跡スクリーニングなどを実施するにあたって、医学的及び経済的妥当性を高め得る。耐糖能異常障害を発症するリスクはあるが、耐糖能異常障害と診断されていない個体に関して、診断試験が、疾患を発症する可能性が高いことを示している場合でも、バイオマーカーを使用して治療も開始し得る。
【0062】
その他の耐糖能異常障害診断法と組み合わせてバイオマーカーレベルを試験することに加えて、バイオマーカーに関する情報は、その他のタイプのデータ、特に、耐糖能異常障害の個体のリスクを示すデータと組み合わせて評価することもできる。これらの様々なデータは、コンピューター、またはその他の装置/機器で具体化することができるコンピュータープログラム/ソフトウェアなどの自動化した方法で評価することができる。
【0063】
バイオマーカーとバイオマーカーレベルの検出及び決定
本明細書に記載したバイオマーカーのバイオマーカーレベルは、公知の様々な分析方法のいずれかを使用して検出することができる。ある実施形態では、バイオマーカーレベルは、捕捉試薬を使用して検出する。様々な実施形態では、捕捉試薬を、溶液でのバイオマーカーに触れさせる、または捕捉試薬が固体支持体に固定化している間にバイオマーカーに触れさせることができる。その他の実施形態では、捕捉試薬は、固体支持体の二次的特徴を受けて反応する性質を含む。これらの実施形態では、捕捉試薬は、溶液でのバイオマーカーに触れさせる、次いで、捕捉試薬の特徴を受けて、固体支持体の二次的特徴と組み合わせて使用して、固体支持体にバイオマーカーを固定化することができる。捕捉試薬は、実施する分析の種類に基づいて選択する。捕捉試薬として、アプタマー、抗体、アドネクチン、アンキリン、その他の抗体模倣体、及びその他のタンパク質スキャホールド、自己抗体、キメラ、小分子、F(ab’)フラグメント、一本鎖抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメント、核酸、レクチン、リガンド結合受容体、抗体、ナノボディ、インプリントポリマー、アビマー、ペプチド模倣体、ホルモン受容体、サイトカイン受容体、合成受容体、及びこれらの修飾物とフラグメントがあるが、これらに限定しない。
【0064】
一部の実施形態では、バイオマーカーレベルは、バイオマーカー/捕捉試薬複合体を使用して検出する。
【0065】
一部の実施形態では、バイオマーカーレベルは、バイオマーカー/捕捉試薬複合体に由来しており、そして、例えば、バイオマーカー/捕捉試薬の相互作用の結果として間接的に検出されるが、バイオマーカー/捕捉試薬複合体の形成に依存している。
【0066】
一部の実施形態では、バイオマーカーレベルは、生物学的試料でのバイオマーカーから直接に検出する。
【0067】
一部の実施形態では、バイオマーカーは、生物学的試料での2つ以上のバイオマーカーの同時検出を可能にする多重化フォーマットを使用して検出する。多重化フォーマットの一部の実施形態では、捕捉試薬は、直接的または間接的に、共有結合または非共有結合で、固体支持体での別個の位置に固定化する。一部の実施形態では、多重化フォーマットは、個別の固体支持体を使用しており、それぞれの固体支持体は、例えば、量子ドットなど、その固体支持体に関連する固有の捕捉試薬を有する。一部の実施形態では、個々の機器は、生物学的試料において検出する複数のバイオマーカーのそれぞれの検出のために使用する。個々の機器は、生物学的試料のそれぞれのバイオマーカーを同時に処理するように構成することができる。例えば、マイクロタイタープレートを使用して、プレート内のそれぞれのウェルで、生物学的試料で検出する複数のバイオマーカーの内の1つ以上を分析することができる。
【0068】
上記した実施形態の1つ以上では、蛍光タグを使用して、バイオマーカー/捕捉試薬複合体の成分を標識して、バイオマーカーレベルを検出することができる。様々な実施形態では、蛍光標識は、公知の技術を使用して、本明細書に記載したバイオマーカーのいずれかに特異的な捕捉試薬にコンジュゲートすることができる、次いで、蛍光標識を使用して、対応するバイオマーカーレベルを検出することができる。適切な蛍光標識として、希土類キレート、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、アロフィコシアニン、PBXL-3、Qdot 605、Lissamine、フィコエリトリン、Texas Red、及びその他のかような化合物がある。
【0069】
一部の実施形態では、蛍光標識は、蛍光色素分子である。一部の実施形態では、蛍光色素分子は、少なくとも1つの置換したインドリウム環系を含み、インドリウム環の3つの炭素にある置換基は、化学的に反応性を示す基または共役物質を含む。一部の実施形態では、色素分子は、例えば、AlexaFluor 488、AlexaFluor 532、AlexaFluor 647、AlexaFluor 680、またはAlexaFluor 700などのAlexFluor分子を含む。一部の実施形態では、色素分子は、例えば、2つの異なるAlexaFluor分子など、第1のタイプ及び第2のタイプの色素分子を含む。一部の実施形態では、色素分子は、第1のタイプ及び第2のタイプの色素分子を含み、そして、2つの色素分子は、異なる発光スペクトルを有する。
【0070】
蛍光は、様々なアッセイ形式と互換可能である様々な機器で測定することができる。例えば、分光蛍光光度計は、マイクロタイタープレート、顕微鏡スライド、プリントアレイ、キュベットなどを分析するようにデザインしている。Principles of Fluorescence Spectroscopy,by J.R.Lakowicz,Springer Science + Business Media,Inc.,2004を参照されたい。Bioluminescence & Chemiluminescence: Progress & Current Applications;Philip E.Stanley and Larry J.Kricka editors,World Scientific Publishing Company,January 2002を参照されたい。
【0071】
1つ以上の実施形態では、化学発光タグを任意に使用して、バイオマーカー/捕捉複合体の成分を標識して、バイオマーカーレベルを検出することができる。適切な化学発光材料として、塩化オキサリル、ローダミン6G、Ru(bipy) 2+、TMAE(テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン)、Pyrogallol(1,2,3-トリヒドロキシベンゼン)、Lucigenin、ペルオキシシュウ酸塩、シュウ酸アリール、アクリジニウムエステル、ジオキセタンなどがある。
【0072】
一部の実施形態では、検出方法は、バイオマーカーレベルに対応する検出可能なシグナルを生成する酵素/基質の組み合わせを含む。一般的に、この酵素は、分光光度法、蛍光、化学発光などの様々な手法を使用して測定できる発色基質の化学的変化を触媒する。適切な酵素として、例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、尿素、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ウリカーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどがある。
【0073】
一部の実施形態では、検出方法は、測定可能なシグナルを生成する蛍光、化学発光、放射性核種の組み合わせ、または酵素/基質の組み合わせとすることができる。一部の実施形態では、マルチモーダルシグナリングは、バイオマーカーアッセイフォーマットにおいて、独特で有利な特性を有する。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカーのバイオマーカーレベルは、後述するような、シングルプレックスアプタマーアッセイ、マルチプレックスアプタマーアッセイ、シングルプレックスまたはマルチプレックス免疫アッセイ、mRNA発現プロファイリング、miRNA発現プロファイリング、質量分光分析、組織学的/細胞学的方法などのあらゆる分析方法を使用して検出することができる。
【0075】
アプタマーをベースとしたアッセイを使用したバイオマーカーレベルの決定
生物学的試料及びその他の試料での生理学的に重要な分子の検出及び定量に関するアッセイは、科学研究及びヘルスケア分野での重要なツールである。そのようなアッセイの1種は、固体支持体に固定化した1つ以上のアプタマーを含むマイクロアレイの使用を含む。アプタマーはそれぞれ、非常に特異的な方法で、かつ、非常に高い親和性で標的分子に結合することができる。例えば、米国特許第5,475,096号、「Nucleic Acid Ligands」を参照されたい;また、例えば、それぞれの発明の名称が、「Nucleic Acid Ligand Diagnostic Biochip」である米国特許第6,242,246号、米国特許第6,458,543号、及び米国特許第6,503,715号を参照されたい。マイクロアレイが試料と接触すると、アプタマーは、試料に存在するそれぞれの標的分子に結合する、それによって、バイオマーカーに対応するバイオマーカーレベルの決定が可能となる。
【0076】
本明細書で使用する「アプタマー」は、標的分子に対して特異的な結合親和性を有する核酸のことを指す。親和性の相互作用は、程度の問題であると認識されているが、このことに関して、その標的に対するアプタマーの「特異的結合親和性」とは、そのアプタマーが、一般的には、試験試料でのその他の成分に結合するよりも遙かに高レベルの親和性で、その標的に対して結合することを意味する。「アプタマー」は、特定のヌクレオチド配列を有する核酸分子の1つのタイプまたは1種のコピーのセットである。アプタマーは、あらゆる個数の化学的に修飾したヌクレオチドを含んだ、あらゆる適切な個数のヌクレオチドを含むことができる。「アプタマー」は、そのような分子の複数のセットのことを指す。異なるアプタマーは、同数または異なる個数のヌクレオチドを持つことができる。アプタマーは、DNAまたはRNAまたは化学的に修飾した核酸とすることができる、また、一本鎖、二本鎖、または二本鎖領域を含むことができる、そして、さらに高次の構造を含むことができる。また、アプタマーが、光反応性または化学反応性官能基を含んだアプタマーであれば、対応する標的に共有結合する光アプタマーとすることができる。本明細書に開示したアプタマー方法のいずれでも、同じ標的分子に対して特異的に結合する2つ以上のアプタマーの使用を含むことができる。後述するように、アプタマーは、タグを含み得る。アプタマーがタグを含んでいると、アプタマーのすべてのコピーに、同じタグを付ける必要がない。さらに、異なるアプタマーが、それぞれタグを含んでいると、これらの異なるアプタマーは、同じタグまたは異なるタグのいずれかを持つことができる。
【0077】
アプタマーは、SELEXプロセスを含むあらゆる公知の方法を使用して識別することができる。同定が行われると、アプタマーは、化学的合成法、及び酵素的合成法を含むあらゆる公知の方法に従って調製または合成することができる。
【0078】
用語「SELEX」及び「SELEXプロセス」は、本明細書では互換可能に使用しており、一般的には、(1)所望の方法で標的分子と相互作用するアプタマーの選択、例えば、タンパク質に対する高度の親和性での結合と、(2)選択したそれらの核酸の増幅との組み合わせのことを指す。このSELEXプロセスは、特定の標的またはバイオマーカーに対して高度の親和性を有するアプタマーを同定するために使用することができる。
【0079】
SELEXは、一般的には、核酸の候補混合物を調製すること、当該候補混合物と所望の標的分子とを結合させて親和性複合体を形成すること、当該親和性複合体を非結合候補核酸から分離すること、当該核酸を当該親和性複合体から分離及び単離すること、当該核酸を精製すること、及び、特異的アプタマー配列を同定すること、を含む。このプロセスは、選択したアプタマーの親和性をさらに改良するために複数回行い得る。このプロセスは、プロセスでの1回以上の時点において、増幅ステップを含み得る。例えば、発明の名称が「Nucleic Acid Ligands」である米国特許第5,475,096号を参照されたい。SELEXプロセスは、その標的と非共有結合するアプタマーに加えて、その標的と共有結合するアプタマーを生成するために使用することができる。例えば、発明の名称が「Systematic Evolution of Nucleic Acid Ligands by Exponential Enrichment:Chemi-SELEX」である米国特許第5,705,337号を参照されたい。
【0080】
SELEXプロセスは、改善した特性、例えば、改善したインビボ安定性、または、改善した送達特性などをアプタマーに付与する修飾ヌクレオチドを含有する親和性の大きなアプタマーを同定するために使用することができる。このような修飾の例として、リボース位置、及び/またはリン酸位置、及び/または塩基位置での化学的置換がある。SELEXプロセスで同定する修飾ヌクレオチドを含有するアプタマーは、発明の名称が「High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides」である米国特許第5,660,985号に記載されており、そこでは、ピリミジンの5’位、及び、2’位で化学的に修飾したヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドについて記載がされている。前出の米国特許第5,580,737号は、2’-アミノ(2’-NH2)、2’-フルオロ(2’-F)、及び/または、2’-O-メチル(2’-OMe)で修飾した1つ以上のヌクレオチドを含有する優れた特異性を有するアプタマーについて記載している。広範な物理的及び化学的特質を有する核酸ライブラリー、ならびに、SELEX、及び、photoSELEXでのそれらの使用について記載している、発明の名称が「SELEX and PHOTOSELEX」である米国特許出願公開第2009/0098549号も参照されたい。
【0081】
また、SELEXは、所望の低速特性を有するアプタマーを同定するために使用することができる。発明の名称が「Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates」であり、標的分子に結合することができるアプタマーを生成する改善したSELEX方法を記載している米国特許出願公開第2009/0004667号を参照されたい。解離速度がさらに低速である、それぞれの標的分子由来のアプタマー及び光アプタマーを製造するための方法を説明している。この方法は、候補混合物を標的分子と接触させ、核酸-標的複合体の形成を可能ならしめ、そして、低速オフレートの核酸-標的複合体に富んだプロセスを行う、そこでは、高速解離速度の核酸-標的複合体は解離してしまい、再形成することはなく、一方で、低速解離速度を示す複合体はそのまま残存する。加えて、この方法は、候補核酸混合物の生産において修飾ヌクレオチドを使用して、改善したオフレート性能を有するアプタマーを生成することを含む。例示的な修飾ヌクレオチドとして、例えば、図2に示す修飾ピリミジンがあるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、アプタマーは、塩基修飾などの修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、アプタマーは、標的タンパク質との疎水性接触を可能にする、疎水性塩基修飾などの疎水性修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。そのような疎水性接触は、一部の実施形態では、アプタマーよりも大きな親和性、及び/または低速のオフレートを示す結合に寄与する。疎水性修飾を有する例示的なヌクレオチドを図2に示すが、これらに限定されない。一部の実施形態では、アプタマーは、疎水性修飾を有する少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個のヌクレオチドを含んでおり、当該疎水性修飾は、その他のものと同じものとし得る、または、違うものとし得る。一部の実施形態では、アプタマーでの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個の疎水性修飾を、図2に示す疎水性修飾から独立して選択する。
【0082】
一部の実施形態では、低速オフレートを示すアプタマー(疎水性修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含むアプタマーを含む)は、≧30分、≧60分、≧90分、≧120分、≧150分、≧180分、≧210分、または≧240分のオフレート(t1/2)を有する。
【0083】
一部の実施形態では、このアッセイは、アプタマーが、それらの標的分子と共有結合する、または、「光架橋する」ことを可能にする光反応性官能基を含むアプタマーを使用する。例えば、発明の名称が、「Nucleic Acid Ligand Diagnostic Biochip」である米国特許第6,544,776号を参照されたい。これらの光反応性アプタマーは、光アプタマーとも称する。例えば、発明の名称がいずれも「Systematic Evolution of Nucleic Acid Ligands by Exponential Enrichment:Photoselection of Nucleic Acid Ligands and Solution SELEX」である米国特許第5,763,177号、米国特許第6,001,577号、及び、米国特許第6,291,184号を参照されたい;また、例えば、発明の名称が「Photoselection of Nucleic Acid Ligands」である米国特許第6,458,539号も参照されたい。マイクロアレイを試料と接触させ、光アプタマーが、それらの標的分子と結合する機会を得た後に、光アプタマーを光活性化し、そして、固体支持体を洗浄してあらゆる非特異的結合分子を除去する。光アプタマーに結合する標的分子は、光アプタマーでの光活性化官能基(複数可)が作り出す共有結合であるため、通常は除去されないので、徹底した洗浄条件を使用し得る。このアッセイは、このようにして、試験試料でのバイオマーカーに対応するバイオマーカーレベルの検出を可能にする。
【0084】
一部のアッセイ形式では、アプタマーを、試料と接触させる前に、固体支持体に固定化する。しかしながら、特定の状況下では、試料と接触させる前のアプタマーの固定は、最適なアッセイを提供し得ない。例えば、アプタマーを予め固定化すると、固体支持体表面でのアプタマーと標的分子との混合が非効率的になりかねず、おそらくは、このことが、反応時間の長期化を招き、それ故に、アプタマーと、それらの標的分子との効率的な結合を可能にするためのインキュベーション時間を長くする。さらに、光アプタマーを、アッセイにおいて、かつ、固体支持体として利用する材料に応じて使用する場合、固体支持体は、光アプタマーと、それらの標的分子との間に共有結合を形成するために使用する光を散乱させる、または、吸収する傾向を示し得る。さらに、使用する方法に応じて、標的分子を、それらのアプタマーに結合させて検出することは、固体支持体の表面が、使用するあらゆる標識薬剤にも曝露されて、これらの影響を受ける場合もあり得るので、対象を不正確なものにしかねない。最後に、固体支持体でのアプタマーの固定化は、一般的には、試料に対してアプタマーを曝露する前に、アプタマー調製ステップ(すなわち、固定化)を含んでおり、そして、この調製ステップは、アプタマーの活性または機能性に影響を及ぼし得る。
【0085】
アプタマーが、溶液において、その標的を捕捉し、次いで、アプタマー-標的混合物の特定の成分を検出前に除去することが可能になるようにデザインした分離ステップを用いるアプタマーアッセイも記載されている(発明の名称が、「Multiplexed Analyses of Test Samples」である米国特許出願公開第2009/0042206号を参照されたい)。ここに記載されているアプタマーアッセイ方法は、核酸(すなわち、アプタマー)を検出及び定量することで、試験試料での非核酸標的(例えば、タンパク質標的)の検出及び定量を可能にする。ここに記載されている方法は、非核酸標的を検出及び定量する核酸代用物(すなわち、アプタマー)を作り出し、それにより、増幅を含む多種多様な核酸技術を、タンパク質標的など、より広範囲な所望の標的に適用することを可能にする。
【0086】
アプタマーは、アプタマーバイオマーカー複合体(または、光アプタマーバイオマーカー共有結合複合体)由来のアッセイ成分の分離を容易にし、そして、検出及び/または定量のためのアプタマーの単離を許容するように構築することができる。ある実施形態では、このような構築物は、アプタマー配列に切断可能な要素、または放出可能な要素を含むことができる。その他の実施形態では、さらなる機能性をアプタマーに導入することができる、例えば、標識または検出可能成分、スペーサー成分、または特異的結合タグ、または固定化要素を導入することができる。例えば、アプタマーは、切断可能部分を介して、アプタマーに接続したタグ、標識、その標識を分離するスペーサー成分、及び切断可能部分を含むことができる。ある実施形態では、切断可能要素は、光切断可能リンカーである。光切断可能リンカーは、ビオチン部分、及びスペーサー部分に結合可能であり、アミンの誘導体化のためのNHS基を含むことが可能であり、ビオチン基をアプタマーに導入するために使用することができる、それにより、その後にアッセイ法でアプタマーの放出が可能になる。
【0087】
均質アッセイは、溶液に含まれるすべてのアッセイ成分を使用して実施するが、シグナルの検出前に試料及び試薬の分離を必要としない。これらの方法は、迅速かつ容易に使用できる。これらの方法は、その特定の標的と反応する分子捕捉試薬または結合試薬に基づいてシグナルを生成する。本明細書に記載した方法の一部の実施形態では、分子捕捉試薬は、アプタマーまたは抗体などを含んでおり、当該特定の標的は、表1に示すバイオマーカーとし得る。
【0088】
一部の実施形態では、シグナル生成のための方法は、フルオロフォア標識捕捉試薬と、その特異的バイオマーカー標的との相互作用による異方性シグナル変化を利用する。標識した捕捉物質がその標的と反応すると、分子量の増加によって、複合体に結合しているフルオロフォアの回転運動が生じて、異方性値の変化が非常に遅くなる。異方性変化をモニタリングすることで、結合事象を使用して、溶液でのバイオマーカーを定量的に測定することができる。その他の方法として、蛍光偏光アッセイ、分子ビーコン法、時間分解蛍光消光、化学発光、蛍光共鳴エネルギー移動などがある。
【0089】
生物学的試料でのバイオマーカーレベルを検出するために使用し得る例示的な溶液をベースとしたアプタマーアッセイは:(a)生物学的試料を、第1のタグを含み、かつ、バイオマーカーに対して特異的親和性を有するアプタマーに接触させる、また、バイオマーカーが試料に存在する場合、アプタマー親和性複合体を形成する;(b)混合物を、第1の捕捉要素を含む第1の固体支持体に曝露し、そして、第1のタグを、第1の捕捉要素と関連付ける;(c)第1の固体支持体に関連しない混合物の成分を除去する;(d)アプタマー親和性複合体のバイオマーカー成分に、第2のタグを結合させる;(e)第1の固体支持体からアプタマー親和性複合体を放出させる;(f)放出したアプタマー親和性複合体を、第2の捕捉要素を含む第2の固体支持体に曝露する、そして、第2のタグを、第2の捕捉要素と会合させる;(g)複合体を形成していないアプタマーを、アプタマー親和性複合体から分配して、複合体を形成していないアプタマーを混合物から除去する;(h)固体支持体からアプタマーを溶出させる;及び、(i)アプタマー親和性複合体のアプタマー成分を検出して、分析物を検出すること、を含む。
【0090】
アプタマーを使用して生物学的試料でのバイオマーカーを検出する例示的な方法を、実施例3に記載しているが、これに限定されない。Kraemer et al.,PLoS One 6(10):e26332に記載されている。
【0091】
イムノアッセイを使用するバイオマーカーレベルの定量
イムノアッセイ法は、対応する標的または分析物、例えば、バイオマーカータンパク質に対する抗体の反応に基づいており、そして、特定のアッセイ形式に応じて試料に含まれる分析物を検出することができる。特異的なエピトープ認識を備えているが故に、免疫反応性に基づいたアッセイ法の特異性及び感受性を改善するために、モノクローナル抗体、及びそのフラグメントを使用することが多い。ポリクローナル抗体も、モノクローナル抗体と比較して標的に対する親和性が高いので、様々なイムノアッセイで首尾よく使用されている。イムノアッセイは、広範囲の生物学的試料マトリックスと共に使用するようにデザインされている。イムノアッセイ形式は、定性的、半定量的、及び定量的な結果が得られるようにデザインされている。
【0092】
定量的な結果は、公知の濃度の検出すべき特定の分析物で作り出した標準曲線を使用して得る。未知の試料からの応答またはシグナルを標準曲線にプロットし、そして、未知の試料での標的に対応する量またはレベルを確立させる。
【0093】
数多くのイムノアッセイ形式がデザインされている。ELISAまたはEIAは、分析物の検出において定量的にし得る。この方法は、分析物または抗体のいずれかに対する標識の結合に依存しており、そして、標識成分は、直接的または間接的に酵素を含む。ELISA試験は、分析物の直接的、間接的、競合的、またはサンドイッチ検出のためにフォーマット作成することができる。その他の方法は、例えば、放射性同位体(I125)または蛍光などの標識に依存している。さらなる技術として、例えば、凝集、比濁法、濁度法、ウェスタンブロット、免疫沈降、免疫細胞化学、免疫組織化学、フローサイトメトリー、Luminexアッセイなどがある(ImmunoAssay:A Practical Guide(Brian Law編、Taylor & Francis,Ltd.発行、2005年版)を参照されたい)。
【0094】
例示的なアッセイ形式として、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、蛍光、化学発光、及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、または時間分解FRET(TR-FRET)イムノアッセイがある。バイオマーカーを検出するための手順の例として、バイオマーカー免疫沈降、それに続いて、サイズ及びペプチドレベルの識別を可能にする定量的方法(例えば、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、平面電気クロマトグラフィーなど)がある。
【0095】
検出可能な標識またはシグナル生成材料を検出及び/または定量する方法は、標識の性質に依存している。適切な酵素が触媒した反応の産物(検出可能な標識が酵素である場合;上記を参照されたい)は、限定を意図するものではないが、蛍光性、発光性、または放射性のものとし得る、または、このような産物は、可視光または紫外光を吸収することができる。このような検出可能な標識を検出する上で好適な検出器の例として、X線フィルム、放射能カウンター、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、照度計、及び濃度計があるが、これらに限定されない。
【0096】
検出のための方法はいずれも、反応に向けたあらゆる好適な調製、処理、及び分析を可能にするあらゆる形式で実施することができる。この形式として、例えば、マルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルまたは386ウェル)や、あらゆる好適なアレイまたはマイクロアレイを用いる形式もある。様々な作用物質の原液は、手動またはロボットで作り出すことができる、そして、それに続くピペッティング、希釈、混合、分配、洗浄、インキュベーション、試料読み出し、データ収集、及び分析のすべてを、検出可能な標識を検出できる市販の分析ソフトウェア、ロボット工学、及び検出計測器を使用して、ロボットが行い得る。
【0097】
遺伝子発現プロファイリングを使用するバイオマーカーレベルの決定
生物学的試料でのmRNAの測定は、一部の実施形態では、当該生物学的試料での対応するタンパク質のレベルの検出のための代替物として使用し得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルは、適切なRNAを検出することで検出し得る。
【0098】
一部の実施形態では、mRNA発現レベルは、逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCRと、それに続くqPCR)で測定する。RT-PCR法を使用して、mRNAからcDNAを作り出す。このcDNAを、qPCRアッセイに使用すると、DNA増幅プロセスが進行するにつれて蛍光を生成し得る。標準曲線と比較することで、qPCRは、絶対的測定値、例えば、mRNAのコピー数/細胞などを示し得る。ノーザンブロット、マイクロアレイ、インベーダーアッセイ、及びキャピラリー電気泳動と組み合わせたRT-PCRは、すべて、試料に含まれるmRNAの発現レベルを測定するために使用する。Gene Expression Profiling:Methods and Protocols,Richard A.Shimkets,editor,Humana Press,2004を参照されたい。
【0099】
インビボ分子イメージング技術を使用するバイオマーカーの検出
一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカーは、分子イメージング試験で使用することができる。例えば、造影剤を、捕獲試薬にカップリングしたものを使用してインビボでバイオマーカーを検出することができる。
【0100】
インビボでのイメージング技術は、個体の体内の特定の疾患の病態を決定する非侵襲的方法を提供する。例えば、身体の全部分、または全身をも三次元画像として見ることができ、これにより、体内の形態及び構造に関する有用な情報を提供し得る。このような技術は、本明細書に記載したバイオマーカーの検出と組み合わせて、インビボでのバイオマーカーに関する情報を提供し得る。
【0101】
インビボでの分子イメージング技術は、様々な技術進歩を受けて発展しつつある。これらの進歩として、体内で強力なシグナルを発生させることができる放射標識、及び/または蛍光標識などの新しい造影剤または標識の開発;及び、身体の外部からこれらのシグナルを十分な感度ならびに精度で検出して分析を行って、有用な情報を提供することができる強力で新規のイメージング技術の開発がある。造影剤は、適切なイメージングシステムで可視化することができる、それにより、体内の造影剤が存在する部分(複数可)の画像を得ることができる。造影剤は、例えば、アプタマーまたは抗体などの捕獲試薬、及び/またはペプチドもしくはタンパク質、またはオリゴヌクレオチド(例えば、遺伝子発現の検出のためのもの)、またはこれらのいずれかと1つ以上の巨大分子及び/またはその他の粒子型とを含む複合体と結合または連結し得る。
【0102】
また、造影剤は、イメージングにおいて有用な放射性原子を特徴とするものとし得る。適切な放射性原子として、シンチグラフ検査のためのテクネチウム-99mまたはヨウ素-123がある。その他の容易に検出可能な部分として、例えば、磁気共鳴像(MRI)用のスピン標識があり、例えば、ヨウ素-123の他に、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄がある。このような標識は、当該技術分野において周知であり、当業者であれば容易に選択することができる。
【0103】
標準的なイメージング技術として、磁気共鳴撮像、コンピューター断層撮影スキャン、陽電子射出断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)などがあるが、これらに限定されない。インビボでの診断イメージングについては、所定の造影剤、例えば、所定の放射性核種と、それを使用して標的化する具体的なバイオマーカー(タンパク質、mRNAなど)との選択に際して利用可能な検出機器のタイプが重要な要素となる。一般的に選択されている放射性核種は、所定のタイプの機器で検出できるある種の減衰を示す。また、インビボでの診断のために放射性核種を選択する場合、その半減期は、標的組織の取り込み時間が最長であるが、宿主に対する有害な放射線を最小化する上で十分な程度の短さにすべきである。
【0104】
例示的なイメージング技術として、個体に対して放射性核種を合成的または局所的に照射するイメージング技術であるPET及びSPECTがあるが、これらに限定されない。その後の放射性トレーサーの取り込みを経時的に測定して、標的組織及びバイオマーカーに関する情報を得るために使用する。使用する特定の同位体からの高エネルギー(ガンマ線)放射と、それを検出するために使用する機器の感度及び精巧さが故に、身体の外部から放射活性の二次元分布を推定し得る。
【0105】
PETにおいて一般的に使用されている陽電子放出核種として、例えば、炭素-11、窒素-13、酸素-15、及びフッ素-18がある。SPECTでは、電子捕獲、及び/またはガンマ放射によって減衰する同位体を使用しており、例えば、ヨウ素-123、及びテクネチウム-99mがある。アミノ酸を、テクネチウム-99mで標識する例示的な方法では、キレート前駆体の存在下で過テクネチウム酸イオンを還元し、次いで、不安定なテクネチウム-99m前駆体複合体を形成し、続いて、このものを二官能性修飾下走化性ペプチドの金属結合基と反応させて、テクネチウム-99m-走化性ペプチドコンジュケートを形成する。
【0106】
このようなインビボでのイメージング診断方法では、抗体が、頻繁に使用されている。インビボでの診断用抗体の調製及び使用は、当該技術分野において周知である。同様に、アプタマーは、このようなインビボイメージング診断法に使用し得る。例えば、本明細書に記載した特定のバイオマーカーを同定するために使用したアプタマーを、適切に標識し、個体に注射し、そして、インビボでバイオマーカーを検出し得る。使用する標識は、上記したようにして使用するイメージング様式に従って選択する。アプタマー特異的造影剤は、その他の造影剤と比べて、組織透過性、組織分布、速度論、除去、効力、及び選択性に関して、特有かつ有利な特性を有する。
【0107】
また、そのような技術は、任意に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するイメージングで遺伝子発現を検出するために、例えば、標識したオリゴヌクレオチドも使用し得る。これらの方法は、例えば、標識として蛍光分子または放射性核種を使用するインサイチュハイブリダイゼーションで利用する。遺伝子発現の検出のためのその他の方法として、例えば、レポーター遺伝子活性の検出がある。
【0108】
別の一般的なタイプのイメージング技術として、光学イメージングがあり、このものは、対象の身体内の蛍光シグナルを、対象の外部にある光学装置が検出する。これらのシグナルは、実際の蛍光、及び/または生物発光に起因し得る。光学検出装置の感度を改善することで、インビボでの診断アッセイのための光学イメージングの有用性を改善し得る。
【0109】
その他の技術の総論については、N.Blow、Nature Methods、6、465-469、2009を参照されたい。
【0110】
組織学/細胞学的方法を使用するバイオマーカーの決定
一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカーは、組織学的または細胞学的方法を使用して、様々な組織試料において検出し得る。例えば、気管支内生検、及び経気管支生検、穿刺吸引生検、切断針、及びコア生検を組織学に使用することができる。気管支洗浄、及び擦過、胸膜吸引、及び喀痰は、細胞診に使用することができる。本明細書で同定したいずれのバイオマーカーも、疾患の兆候として、標本を染色するために使用することができる。
【0111】
一部の実施形態では、対応するバイオマーカー(複数可)に特異的な1つ以上の捕捉試薬を、試料の細胞学的評価に使用する、そして:細胞試料の回収、細胞試料の固定、脱水、清浄、顕微鏡スライドでの細胞試料の固定化、細胞試料の透過処理、分析物の回収処理、染色、脱色、洗浄、ブロッキング、及び緩衝剤での1つ以上の捕捉試薬との反応の1つ以上を含み得る。別の実施形態では、細胞試料は、細胞ブロックから生成する。
【0112】
一部の実施形態では、対応するバイオマーカーに特異的な1つ以上の捕捉試薬を、組織試料の組織学的評価に使用する、そして:組織標本の回収、組織試料の固定、脱水、清浄、組織試料の顕微鏡スライドへの固定化、組織試料の透過処理、分析物の回収、染色、脱色、洗浄、ブロッキング、再水和、及び緩衝剤での捕捉試薬(複数可)との反応の1つ以上を含み得る。別の実施形態では、固定化及び脱水を、凍結と置き換える。
【0113】
別の実施形態では、対応するバイオマーカー(複数可)に特異的な1つ以上のアプタマー(複数可)は、組織学的または細胞学的試料と反応して、核酸増幅法において核酸標的として機能することができる。適切な核酸増幅法として、例えば、PCR、q-ベータレプリカーゼ、ローリングサークル増幅、鎖置換、ヘリカーゼ依存的増幅、ループ媒介等温増幅、リガーゼ連鎖反応、そして、制限及び環状化支援ローリングサークル増幅がある。
【0114】
ある実施形態では、組織学的または細胞学的評価で使用するための対応するバイオマーカーに特異的な1つ以上の捕捉試薬を:ブロッキング物質、競合物質、界面活性剤、安定剤、担体核酸、ポリアニオン性材料などのいずれかを含むことができる緩衝剤において混合する。
【0115】
「細胞診プロトコール」は、一般的には、試料の回収、試料の固定、試料の固定化、及び染色を含む。「細胞調製」は、調製した細胞の染色のための1つ以上のアプタマーの使用を含んでいる、試料回収後の幾つかの処理ステップを含むことができる。
【0116】
質量分析法を使用するバイオマーカーレベルの決定
様々な構成の質量分析計を使用して、バイオマーカーレベルを検出することができる。幾つかのタイプの質量分析計が利用可能であり、または様々な構成で製造することができる。一般的に、質量分析計は:試料注入口、イオン源、質量分析器、検出器、真空系、及び計測器制御系、及びデータ系という主要な構成要素を備えている。一般的に、試料注入口、イオン源、及び質量分析器での差異は、計測器のタイプと、その能力を表している。例えば、注入口は、キャピラリーカラム液体クロマトグラフィー源や、マトリックス支援レーザー脱離で使用するような、直接プローブまたはステージとすることができる。一般的なイオン源は、例えば、エレクトロスプレー、例えば、ナノスプレーやマイクロスプレーなど、またはマトリックス支援レーザー脱離である。一般的な質量分析器として、四重極質量フィルター、イオントラップ質量分析器、及び飛行時間型質量分析器がある。さらなる質量分析法は、当該技術分野で周知である(Burlingame et al.Anal.Chem.70:647 R-716R(1998);Kinter and Sherman,New York(2000)を参照されたい)。
【0117】
タンパク質バイオマーカー、及びバイオマーカーレベルは:エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、ESI-MS/MS、ESI-MS/(MS)n、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)、シリコンでの脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、四重極飛行時間型(Q-TOF)、ultraflex III TOF/TOFと称するタンデム飛行時間型(TOF/TOF)技術、大気圧化学イオン化質量分析(APCI-MS)、APCI-MS/MS、APCI-(MS)、大気圧光イオン化質量分析(APPI-MS)、APPI-MS/MS及びAPPI-(MS)、四重極質量分析、フーリエ変換質量分析(FTMS)、定量的質量分析、及びイオントラップ質量分析のいずれかで、検出及び測定することができる。
【0118】
試料調製戦略は、タンパク質バイオマーカーの質量分析による特徴決定と、バイオマーカーレベルの定量の前に、試料を標識及び濃縮するために使用する。標識方法として、相対的及び絶対的定量のための等圧性タグ(iTRAQ)、及び細胞培養物でのアミノ酸を含む安定同位体標識(SILAC)があるが、これらに限定されない。質量分析の前に候補バイオマーカータンパク質のための試料を選択的に濃縮するために使用する捕捉試薬として、アプタマー、抗体、核酸プローブ、キメラ、小分子、F(ab’)フラグメント、一本鎖抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメント、核酸、レクチン、リガンド結合受容体、アフィボディ、ナノボディ、アンキリン、ドメイン抗体、代替的抗体スキャホールド(例えば、ダイアボディなど)インプリントポリマー、アビマー、ペプチド模倣体、ペプトイド、ペプチド核酸、トレオース核酸、ホルモン受容体、サイトカイン受容体、及び合成受容体、そして、これらの修飾物及びフラグメントがあるが、これらに限定されない。
【0119】
上記したアッセイは、本明細書に記載した方法において有用なバイオマーカーレベルの検出を可能にしており、当該方法は、個体由来の生物学的試料において、表1に記載したバイオマーカーの少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9つを検出することを含む。本明細書に記載した方法のいずれかに従って、バイオマーカーレベルを、個別に検出及び分類することができる、あるいは、例えば、マルチプレックスアッセイ形式など、それらを集合的に検出及び分類することができる。
【0120】
バイオマーカーの分類、及び疾患スコアの計算
一部の実施形態では、所定の診断試験に関するバイオマーカーの「シグネチャー」は、一連のバイオマーカーを含んでおり、それぞれのバイオマーカーは、関心を寄せた集団において特徴的なレベルを有する。特徴的なレベルとは、一部の実施形態では、特定のグループ内での個体に関するバイオマーカーの平均または平均値のことを指し得る。一部の実施形態では、本明細書に記載した診断方法を用いて、個体由来の未知の試料を、2つのグループの内の一方、すなわち、耐糖能異常障害または正常耐糖能の内の一方に割り当てることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載した診断方法を使用して、個体から未知の試料を3つのグループ:正常耐糖能、前糖尿病または糖尿病でない耐糖能異常障害、及び前糖尿病または糖尿病の内の1つに割り当てることができる。
【0121】
試料を2つ以上のグループの内の1つに割り当てることは、分類として知られており、また、この割り当てを達成するための手法は、分類器または分類方法として知られている。分類方法は、スコア付け法とも称し得る。バイオマーカーレベルのセットから診断分類器を構築するために使用することができる数多くの分類方法がある。一部の事例では、分類方法は、監視型ラーニング技術を使用して行われており、そこでは、区別しようとする2つ(または、多変量状態の場合では、それより多く)の別個のグループの個体から得た試料を使用してデータセットを回収する。それぞれの試料が属するクラス(グループまたは集団)が、それぞれの試料について予め分かっているので、分類方法をトレーニングして、望ましい分類応答を得ることができる。監視型ラーニング技術を使用しなくとも、診断分類器を作り出すことは可能である。
【0122】
診断分類器を開発するための一般的な手法として、決定木;バギング+ブースティング+フォレスト;推論ルールに基づく学習;パルザン窓(Parzen Windows);線形モデル;記号論理学;ニューラルネットワーク法;非監視型クラスタリング;K平均法;階層上昇/下降;半管理学習法;プロトタイプ法;最近傍法;カーネル密度推定;サポーティブベクターマシーン;隠れマルコフ(Markov)モデル;ボルツマン(Boltzmann)学習があり、そして、分類器は、単純に組み合わせ得る、あるいは特定の目的関数を最小化する方法で組み合わせ得る。総論に関して、例えば、Pattern Classification、R.O.Duda,et al.、John Wiley & Sons、2nd edition、2001を参照されたい。また、The Elements of Statistical Learning-Data Mining,Inference,and Prediction、T.Hastie,et al.、Springer Science+Business Media,LLC、2nd edition、2009も参照されたい。
【0123】
管理学習技術を使用して分類器を作るために、トレーニングデータと称する試料のセットを入手する。診断テストに関連して、トレーニングデータは、後から、未知試料が割り当てられる別個のグループ(クラス)に由来する試料を含むことになる。例えば、コントロール集団の個体から回収した試料と、特定の疾患を有する集団の個体から回収した試料とで、未知試料(また、より具体的には、試料を得た個体)を、疾患の有無のいずれかで分類することができる分類器を開発するためのトレーニングデータを構成することができる。トレーニングデータに由来する分類器の開発は、分類器のトレーニングとして知られている。分類器のトレーニングに関する具体的な詳細は、管理学習技術の性質に依存している。単純ベイズ分類器は、このような管理学習技術の一例である(例えば、Pattern Classification、R.O.Duda,et al.、editors,John Wiley & Sons、2nd edition、2001を参照されたい;また、The Elements of Statistical Learning-Data Mining,Inference,and Prediction、T.Hastie,et al.、editors,Springer Science+Business Media,LLC、2nd edition、2009も参照されたい)。単純ベイズ分類器のトレーニングは、例えば、米国特許公開第2012/0101002号、及び同第2012/0077695号に記載されている。
【0124】
一般的には、トレーニングセットの試料よりも数多くの潜在的なバイオマーカーレベルがあるので、過剰適合を回避する配慮が必要である。過剰適合は、統計モデルが、基礎となる関係の代わりに、ランダムエラーまたはノイズを表現する場合に発生する。過剰適合は、様々な方法で回避することができ、そのような方法として、例えば、分類器開発に使用するバイオマーカーの数を制限すること、バイオマーカーの応答が互いに独立していると仮定すること、使用する基本とする統計モデルの複雑度を制限すること、そして、基本とする統計モデルが確実にデータに一致させる、ことがある。
【0125】
バイオマーカーのセットを使用する診断試験の開発の具体的な例として、単純ベイズ分類器の利用、すなわち、バイオマーカーの厳密な独立した処理を行うベイズの定理に基づいた単純な確率的分類器の利用がある。それぞれのバイオマーカーは、それぞれのクラスでのRFU測定値または対数RFU(相対蛍光単位)測定値に関するクラス依存性確率密度関数(pdf)で説明される。1つのクラスでのバイオマーカーのセットに関する結合pdfは、それぞれのバイオマーカーに関する個々のクラス依存性pdfの積であると推定される。このことに関連して、単純ベイズ分類器をトレーニングすることは、クラス依存性pdfを特性化するために、パラメーターを割り当てること(「パラメーター化」)に等しい。クラス依存性pdfのために、あらゆる基本モデルを使用し得るが、このモデルは、一般的には、トレーニングセットで認められたデータと一致する必要がある。
【0126】
単純ベイズ分類器の性能は、分類器を構築及びトレーニングするために使用するバイオマーカーの個数及び品質に依存している。単一のバイオマーカーは、KS-距離(コルモボロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)に従う。良好なKS距離(例えば、>0.3)を有するバイオマーカーを続けて加えると、続けて加えたバイオマーカーが第1のバイオマーカーから独立している場合には、一般的には、分類性能を高める。分類器スコアとして感受性に加えて特異性を使用して、高いスコアを付ける数多くの分類器を、グリーディアルゴリズムの変動を利用して作り出すことができる。(グリーディアルゴリズムとは、大域的最適解を見出すという目的で、それぞれの段階において局所的に最適な選択を行って、問題解決を図るメタヒューリスティック手法に従うあらゆるアルゴリズムのことである)。
【0127】
分類器性能を説明する別の方法は、受信者動作特性(ROC)、または単純にROC曲線、もしくはROCプロットによる。ROCとは、2項分類器系の識別閾値の変化に応じた、その2項分類器系に関する、感受性、または真陽性率の偽陽性率に対する(1-特異性、または1-真陽性率)グラフィカルプロットである。また、このROCは、陽性の内の真陽性の割合(TPR=真陽性率)を、陰性の内の偽陽性の割合(FPR=偽陽性率)に対してプロットして同等に表すことができる。このことは、基準の変化が、2つの動作特性(TPR & FPR)の比較であるので、相対的動作特性曲線としても知られている。ROC曲線下面積(AUC)は、診断精度の集約尺度として一般的に使用されている。これは、0.0~1.0の値になり得る。AUCは、重要な統計的性質:すなわち、分類器のAUCが、分類器が無作為に選択した正事例を、無作為に選択した負事例よりも上にランク付けする確率と同等である(Fawcett T、2006.An introduction to ROC analysis.Pattern Recognition Letters.27:861-874)。このものは、ウィルコクソン順位検定(Wilcoxon test of ranks)に相当する(Hanley,J.A.、McNeil,B.J、1982.The meaning and use of the area under a receiver operating characteristic(ROC) curve.Radiology 143、29-36.)。
【0128】
例示的な実施形態は、表1に記載したあらゆる個数のバイオマーカーの様々な組み合わせを使用して、耐糖能異常障害を有する個体を同定する診断試験を作り出す。表1に記載したバイオマーカーを様々な方法で組み合わせて、分類器を作り出すことができる。一部の実施形態では、バイオマーカーのパネルは、選択した特定の診断性能基準に応じて、異なるセットのバイオマーカーから構成する。例えば、バイオマーカーの特定の組み合わせは、その他の組み合わせよりも感受性が高い(または、より特異的な)試験を構成し得る。
【0129】
一部の実施形態では、パネルが特定のバイオマーカーのセットを含むように定義されており、また、分類器をトレーニングデータのセットから構築すると、診断試験パラメーターが完了する。一部の実施形態では、生物学的試料に対して1つ以上のアッセイを行って、分類用の関連する定量的バイオマーカーレベルを決める。測定したバイオマーカーレベルを、分類を決める分類方法の入力値として、また、クラス割り当ての信頼性を反映する試料の任意のスコアとして使用する。
【0130】
一部の実施形態では、試料を、任意に希釈して、多重化アプタマーアッセイを行って、データを、次のように評価する。まず、アッセイから得たデータを、任意に、正規化及び標準化する、そして、得られた結果のバイオマーカーレベルを、ベイズ分類スキームの入力値として使用する。次に、測定した個別のバイオマーカーごとに対数尤度比を計算し、合計して最終的な分類スコア、別名、診断スコアを生成する。結果の割り当てと、全体的な分類スコアを報告することができる。一部の実施形態では、それぞれのバイオマーカーレベルについて計算した個々の対数尤度リスク因子も報告することができる。
【0131】
キット
例えば、本明細書に開示した方法を実行するための使用において、適切なキットを利用して、本明細書に記載したバイオマーカーのあらゆる組み合わせを検出することができる。さらに、いずれのキットも、本明細書に記載したような1つ以上の検出可能な標識、例えば、蛍光部分などを含むことができる。
【0132】
一部の実施形態では、キットは、(a)生体試料での1つ以上のバイオマーカーを検出するための1つ以上の捕獲試薬(例えば、少なくとも1つのアプタマーまたは抗体)、及び、任意に、(b)生体試料を提供した個体が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、または、前糖尿病である、または、前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを予測するための1つ以上のソフトウェアまたはコンピュータープログラム製品とを含む。あるいは、1つ以上のコンピュータープログラム製品よりもむしろ、上記した工程を、ヒトが手動で行うための1つ以上の説明書を提供し得る。
【0133】
一部の実施形態では、キットは、固体支持体、捕獲試薬、及び少なくとも1つのシグナルを生成する材料を含む。また、キットは、機器と試薬の使用、試料の取り扱い、及びデータ解析に関する説明書を含むことができる。さらに、キットは、生体試料の分析結果を解析して報告するためのコンピューターシステムまたはソフトウェアと共に使用し得る。
【0134】
さらに、キットは、生体試料を処理するための1つ以上の試薬(例えば、可溶化緩衝剤、洗浄剤、洗浄液、または緩衝剤)を含むことができる。本明細書に記載したいずれのキットも、例えば、緩衝剤、ブロッキング剤、質量分析用マトリックス材料、抗体捕獲剤、陽性コントロール試料、陰性コントロール試料、プロトコール、ガイダンス、及びリファレンスデータなどのソフトウェアならびに情報を含むことができる。
【0135】
一部の実施形態では、キットを、耐糖能異常障害を分析するために提供する、そして、キットは、本明細書に記載したバイオマーカーに特異的な1つ以上のアプタマーのためのPCRプライマーを含む。一部の実施形態では、キットは、バイオマーカーの使用に関する説明書と、バイマーカーと、耐糖能異常障害、及び/または前糖尿病または糖尿病の予後との相関についての説明書をさらに含み得る。一部の実施形態では、キットは、試料DNAを増幅または単離するために、本明細書に記載した1つ以上のバイオマーカーの補体を含むDNAアレイ、試薬、及び/または酵素を含み得る。キットは、リアルタイムPCRのための試薬、例えば、TaqManプローブ、及び/またはプライマー、及び酵素を含み得る。
【0136】
例えば、キットは、(a)試料での1つ以上のバイオマーカーのレベルを決定するための少なくとも1つの捕獲試薬を含む試薬、及び、任意に、(b)試料に関して定量したそれぞれのバイオマーカーの量を、1つ以上の所定のカットオフと比較する工程を行うための1つ以上のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムとを含むことができる。一部の実施形態では、アルゴリズムまたはコンピュータープログラムは、当該比較に基づいて定量したそれぞれのバイオマーカーに関するスコアを割り当てる、一部の実施形態では、バイオマーカーごとに割り当てられたスコアを足し合わせて総スコアを得る。さらに、一部の実施形態では、アルゴリズムまたはコンピュータープログラムは、総スコアと所定のスコアとを比較して、この比較を利用して、個体での耐糖能異常障害の有無を決定する。あるいは、1つ以上のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムよりはむしろ、上記した工程を、ヒトが手動で行うための1つ以上の説明書を提供することができる。
【0137】
コンピューターによる方法、及びソフトウェア
バイオマーカーまたはバイオマーカーパネルを選択したら、個体が、耐糖能異常障害を有するか、または有する可能性が高い、または、前糖尿病である、または、前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを決定する方法は:1)当該個体から生体試料を回収する、または得る;2)分析方法を行って、生体試料においてパネルでのバイオマーカーを検出して測定する;及び、3)バイオマーカーレベルの結果を報告する、ことを含み得る。一部の実施形態では、バイオマーカーレベルの結果を、例えば、下された診断(「耐糖能異常障害」、または「前糖尿病」)として、または「陽性」及び「陰性」と定義される陽性/陰性として簡略して報告する。一部の実施形態では、個体での耐糖能異常障害の有無を決定する方法は:1)生体試料を回収する、または得る;2)分析方法を行って、生体試料のパネルでのバイオマーカーを検出して測定する;3)あらゆるデータの正規化または標準化を行う;4)それぞれのバイオマーカーレベルを決定する;及び、5)これらの結果を報告することを含み得る。一部の実施形態では、バイオマーカーレベルは、何らかの方法で組み合わせる、そして、組み合わせたバイオマーカーレベルに関する単一の値を報告する。この手法において、一部の実施形態では、スコアは、すべてのバイオマーカーの計算の合計から決定する単一の数値であり、この数値を、病態の有無の指標として予め設定した閾値と比較し得る。あるいは、診断スコアは、それぞれが、バイオマーカー値を示す一連のバーであり、そして、応答パターンは、病態の有無の決定について予め設定したパターンと比較し得る。
【0138】
本明細書に記載した方法の少なくとも一部の実施態様は、コンピューターを使用して実施することができる。図3に、コンピューターシステム100の例を示す。図3を参照すると、システム100は、プロセッサ101、入力装置102、出力装置103、記憶装置104、コンピューターで読取り可能な記憶媒体リーダー105a、通信システム106、加速処理装置(例えば、DSP、または特殊用途のプロセッサ)107、及び記憶装置109を含む、バス108を介して電気的に接続したハードウェア要素から構成されている。コンピューターで読取り可能な記憶媒体リーダー105aは、コンピューターで読取り可能な記憶媒体105bにさらに接続しており、この組み合わせは、コンピューターで読取り可能な情報を、一時的な格納、及び/または長期間の格納、遠隔利用、ローカル接続、固定、及び/または取り外しが可能な記憶装置と記憶媒体、メモリなどを総合的に示しており、この組み合わせは、記憶装置104、記憶装置109、及び/または、そのようなその他のあらゆるアクセス可能なシステム100リソースを含む。また、システム100は、オペレーティングシステム192、及びその他のコード193、例えば、プログラム、データなどを含むソフトウェア要素(作業メモリ191内に配置したものとして示す)も含む。
【0139】
図3を参照すると、システム100は、広範な適応性と構成可能性とを備えている。したがって、例えば、単一のアーキテクチャーを利用して1つ以上のサーバーを実施することが可能であり、このようなサーバーは、現在のところ、所望のプロトコール、プロトコール変更、拡張などにしたがって再構成することもできる。しかしながら、当業者であれば、ある特定のアプリケーション要求に従って実施形態を利用できることは自明の事項である。例えば、1つ以上のシステム要素が、システム100の構成要素(例えば、通信システム106)の下位要素として実施し得る。また、カスタマイズしたハードウェアを利用することもできる、及び/またはハードウェア、ソフトウェア、またはその両方において特定の要素を実施し得る。さらに、ネットワーク入力/出力装置(図示せず)などのその他の演算装置に接続し得るが、その他の演算装置への有線、無線、モデム、及び/またはその他の接続(複数可)も利用し得る、ことを理解されたい。
【0140】
ある態様では、システムは、耐糖能異常障害、及び/または前糖尿病に特徴的なバイオマーカーの特徴を含むデータベースを含むことができる。このバイオマーカーデータ(または、バイオマーカー情報)を、コンピューターに入力して、コンピューターに実装した方法の一部として使用することができる。バイオマーカーデータは、本明細書に記載したようなデータを含むことができる。
【0141】
ある態様では、システムは、入力データを1つ以上のプロセッサに提供するための1つ以上の装置をさらに含む。
【0142】
システムは、ランク付けしたデータ要素のデータセットを格納する記憶装置をさらに含む。
【0143】
別の態様では、入力データを提供するための装置は、例えば、質量分析計または遺伝子チップリーダーなどのデータ要素の特徴を検出するための検出器を含む。
【0144】
システムは、データベース管理システムをさらに含み得る。ユーザーの要求または質問は、質問を処理するトレーニングセットのデータベースから関連情報を抽出するデータベース管理システムが理解する適切な言語でフォーマットし得る。
【0145】
システムは、ネットワークサーバーと1つ以上のクライエントとを接続するネットワークに接続可能とし得る。ネットワークは、当該技術分野で公知のように、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)とし得る。好ましくは、サーバーは、コンピュータープログラム製品(例えば、ソフトウェア)を作動させてユーザーの要求を処理するためのデータベースのデータにアクセスする上で必要なハードウェアを含む。
【0146】
システムは、データベース管理システムからの命令を実行するオペレーティングシステム(例えば、UNIX(登録商標)またはLinux)を含み得る。ある態様では、オペレーティングシステムは、インターネットなどのグローバル通信ネットワークで作動する、そして、そのようなネットワークに接続するために、グローバル通信ネットワークサーバーを利用することができる。
【0147】
システムは、当該技術分野で公知のグラフィカルユーザーインターフェースで日常的に認められるボタン、プルダウンメニュー、スクロールバー、テキスト入力用フィールドなどのインターフェース要素を含むグラフィカルディスプレイインターフェースを含む1つ以上の装置を含み得る。ユーザーインターフェイスで入力される要求事項は、システム内のアプリケーションプログラムに送信して、1つ以上のシステムデータベースにおいて関連情報を検索するようにフォーマットすることができる。ユーザーが入力した要求または質問は、あらゆる適切なデータベース言語で構築することができる。
【0148】
グラフィカルユーザーインターフェースは、オペレーティングシステムの一部としてグラフィカルユーザーインターフェースコードで作製し得る、そして、データを入力したり、及び/または入力したデータを表示したりするために利用することができる。処理したデータの結果は、インターフェースで表示する、システムと接続した印刷機で印刷する、記憶装置デバイスに保存する、及び/またはネットワークに送信し得る、あるいはコンピューターで読取り可能な媒体の形態で提供することができる。
【0149】
システムは、システムにデータ要素に関するデータ(例えば、発現値)を提供する入力装置と接続することができる。ある態様では、この入力装置は、例えば、質量分析装置、遺伝子チップ、またはアレイリーダーなどの遺伝子発現プロファイリングシステムを含むことができる。
【0150】
様々な実施態様に従ってバイオマーカー情報を解析する方法及び装置は、あらゆる適切な方式で、例えば、コンピューターシステムで作動するコンピュータープログラムを使用して実施することができる。リモートアクセス可能なアプリケーションサーバー、ネットワークサーバー、パーソナルコンピューター、またはワークステーションなどのプロセッサ、及びランダムアクセス記憶装置を含む従来のコンピューターシステムを利用し得る。さらなるコンピューターシステム要素は、例えば、大規模記憶システム、及びユーザーインターフェイス、例えば、従来型のモニター、キーボード、及びトラッキング装置などの記憶装置デバイスまたは情報保存システムを含み得る。コンピューターシステムは、スタンドアロンシステムとし得る、またはサーバーと1つ以上のデータベースとを含むコンピューターのネットワークの一部とし得る。
【0151】
バイオマーカー解析システムは、データ収集、処理、解析、報告、及び/または診断などのデータ解析を完了するための機能及び操作を提供することができる。例えば、ある実施態様では、コンピューターシステムは、バイオマーカーに関する情報を受け取る、保存する、検索する、解析する、及び報告することができるコンピュータープログラムを実行することができる。コンピュータープログラムは、様々な機能または操作を実行する複数のモジュールを含み得る、例えば、生データを処理して補充データを生成するための処理モジュール、及び生データと補足データを解析して、疾患の病態及び/または診断をもたらす解析モジュールなどがある。耐糖能異常障害、前糖尿病、及び/または糖尿病の可能性を特定することは、疾患に関連する個体の病態に関するさらなる生物医学情報を含むあらゆるその他の情報を生成または回収すること、さらなる検査が望ましいか否かを決定すること、または、その他の方法で個体の健康状態を評価することを含み得る。
【0152】
本明細書に記載した一部の実施形態は、コンピュータープログラム製品の形態で実施することができる。コンピュータープログラム製品は、アプリケーションプログラムを生成する媒体内にあり、コンピューターで読取り可能なプログラムコードを有しているコンピューターで読取り可能な媒体を含み、データベースを備えたコンピューターを作動させ得る。
【0153】
本明細書で使用する「コンピュータープログラム製品」とは、あらゆるタイプの物理的媒体(例えば、文書、電子、磁気、光学、またはその他の様式)を含んでおり、また、コンピューターまたはその他の自動データ処理システムで使用することができる自然言語またはプログラミング言語ステートメントの形態で組織化した一連の指示のことを指している。このようなプログラミング言語ステートメントを、コンピューターまたはデータ処理システムで実行すると、コンピューターまたはデータ処理システムが、ステートメントの特定の内容に従って作動する。コンピュータープログラム製品として:ソース及びオブジェクトコードでのプログラム、及び/またはコンピューターで読取り可能な媒体に埋め込まれたテストライブラリーまたはデータライブラリーがあるが、これらに限定されない。さらに、コンピューターシステムまたはデータ処理装置を予め選択した方式で作動可能にしているコンピュータープログラム製品を、数多くの形態で提供することができる、例えば、オリジナルソースコード、アセンブリコード、オブジェクトコード、機械言語、上記コードの暗号化または圧縮したバージョン、そして、ありとあらゆる等価物があるが、これらに限定されない。
【0154】
ある態様では、個体が、耐糖能異常障害を有するか、及び/または個体が前糖尿病を発症しているか、または発症する可能性が高いか否か、及び/または糖尿病を発症する可能性が高いか否かを示すコンピュータープログラム製品を提供する。このコンピュータープログラム製品は、演算装置またはシステムのプロセッサが実行可能なプログラムコードを具体化するコンピューターで読取り可能な媒体を含んでおり、このプログラムコードは:個体由来の生体試料に起因するデータを検索するコードを含んでおり、このデータは、本明細書に記載した1つ以上のバイオマーカーに対応するバイオマーカーレベルと、これらのバイオマーカーレベルに応じて個体の耐糖能異常障害を示す分類方法を実行するコードを含む。
【0155】
様々な実施態様を、方法または機器に関して説明をしてきたが、これらの実施形態は、コンピューターと接続したコード、例えば、コンピューターに内蔵した、またはコンピューターに接続可能なコードを介して実施することができる、ことを理解されたい。例えば、ソフトウェア及びデータベースを利用して、上記した本方法の数多くのことが実施可能である。したがって、ハードウェアが達成する実施態様に加えて、これらの実施態様は、コンピューターで読取り可能なプログラムコードを具体化させるコンピューターが使用可能な媒体で構成されている製造品を使用して、本明細書の説明で開示した機能が達成できる、ことも留意されたい。それ故に、それらのプログラムコード手段においても、これらの実施態様が、本特許によって同様に保護されたものとみなすことが望ましい。さらに、これら実施形態は、実質的にあらゆる種類のコンピューターで読取り可能な記憶装置に保存したコードとして具体化することができ、当該記憶装置として、RAM、ROM、磁気媒体、光学媒体、または磁気光学媒体があるが、これらに限定されない。なおもさらに一般的には、このような実施形態は、ソフトウェア、またはハードウェア、あるいはそれらのあらゆる組み合わせにおいて実施することができ、例えば、汎用プロセッサで作動するソフトウェア、マイクロコード、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、または特定用途向け集積回路(ASIC)などで実施可能であるが、これらに限定されない。
【0156】
搬送波で具体化するコンピューターシグナル、及び伝送媒体を介して伝播するシグナル(例えば、電気、及び光学)で、実施形態が達成し得ることも想定される。したがって、上記した様々な種類の情報を、データ構造などの構造でフォーマットして、伝送媒体を介して電気シグナルとして伝送する、またはコンピューターで読取り可能な媒体に保存することができる。
【0157】
治療の方法
一部の実施形態では、対象が耐糖能異常障害を有する、または有する可能性が高い、または前糖尿病である、または前糖尿病または糖尿病を発症する可能性が高いという決定に続いて、当該対象は、疾患の悪化を遅延または予防するための治療レジメンを受ける。耐糖能異常障害、前糖尿病、及び/または糖尿病の例示的治療レジメンとして、体重の減量と、血糖コントロールがあるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、対象は、インスリンまたはメトホルミンなどの治療薬を服用する。
【0158】
一部の実施形態では、耐糖能異常障害をモニタリングする方法を提供する。一部の実施形態では、対象での耐糖能異常障害の有無を決定する本発明の方法は、時間0で行う。一部の実施形態では、この方法は、対象の耐糖能異常障害の進行をモニタリングするために、時間1、そして、任意に時間2、及び、任意に時間3などで改めて行う。一部の実施形態では、個体の疾患の現在の状態に応じて、及び/または疾患が疑われる、または、進行すると考えられる際に予測される速度に応じて、異なる時点で、異なるバイオマーカーを使用する。
【0159】
その他の方法
一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカー及び方法は、医療保険料及び/または生命保険料を決定するために使用する。一部の実施形態では、本明細書に記載した方法の結果は、医療保険料及び/または生命保険料を決定するために使用する。一部のこのような事例では、医療保険または生命保険を提供する組織は、医療保険または生命保険の申請に応じる、そうでなければ、対象の耐糖能異常障害または前糖尿病、または前糖尿病または糖尿病状態を発症し得る尤度に関する情報を得る、または、その情報を使用して、当該対象に関する適切な医療保険料または生命保険料を決定する。一部の実施形態では、この審査は、医療保険または生命保険を提供する組織が要求し、そして、その審査経費は当該組織が負担する。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書に記載したバイオマーカー及び方法は、医療資源の利用を予測、及び/または管理するために使用する。一部のそのような実施形態では、本方法は、そのような予測目的のために行われることはないが、本方法から得た情報を、そのような医療資源の利用の予測及び/または管理のために使用する。例えば、検査施設または病院は、特定の施設、または特定の地理的領域での医療資源の利用を予測及び/または管理するために、数多くの対象に関する情報を、本方法で回収し得る。
【実施例
【0161】
以下の実施例は、例示目的で提供しており、添付した特許請求の範囲が定義している本出願の範囲の限定を意図するものではない。以下の実施例で説明する所定の分子生物学技術は、標準的な実験マニュアル、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd.ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(2001)に記載されているようにして行う。
【0162】
実施例1.バイオマーカー同定のための多重化アプタマーアッセイ及び統計的手法
多重化アプタマーアッセイを使用して、試験試料とコントロール試料を分析し、耐糖能異常障害を予測するバイオマーカーを特定した。この実験で使用した多重分析では、少量の試料(約65μlの血清または血漿)から得た血液に含まれる約5,000個のタンパク質を検出するアプタマーを使用しており、検出限界は低く(1pMの中央値)、約7 logのダイナミックレンジ、そして、変動係数は、中央値で5%であった。多重化アプタマーアッセイは、一般的には、例えば、Gold et al.(2010) Aptamer-Based Multiplexed Proteomic Technology for Biomarker Discovery.PLoS ONE 5(12): e15004;及び、米国公開:2012/0101002及び2012/0077695に記載されている。
【0163】
耐糖能障害の分類器
安定性によって選択した41個のバイオマーカーのパネルを表1に示している、そして、ランダムフォレストアルゴリズムに供してモデルを作成した。本明細書に記載したバイオマーカーに対して利用するモデルは分類モデルであり、具体的には、エラスティックネットロジスティック回帰モデルである。
【0164】
それぞれのバイオマーカーのベータ_ハット(Beta_hat)値を、以下の表2に示す。ベータ_ハット値は、試験試料でのバイオマーカーレベルとの相対的変化を示しており、コントロール試料と比較して得られたものであり、このものは、試験試料が、耐糖能異常障害のある対象から得たことを示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0165】
発達コホート及びモデル開発
発達コホートは、英国での12,000名超の男性と女性の参加者(29~64歳)を対象とした[EGC1]集団をベースとした研究である。この研究の目的は、一般的な集団での糖尿病、肥満、及び関連する健康状態を招く遺伝的及びライフスタイルのリスク因子を同定することであった。臨床的に糖尿病の診断を受けた参加者、臨床的に精神病の診断を受けた参加者、末期疾患の参加者、妊婦、または自力歩行不可能な参加者を、この研究から除外した。このコホートでは、本明細書に記載した多重アッセイを使用して、参加者から得た試料の測定を行っており、当該試料は、4つの研究登録サイトで得たフェーズ1(ベースライン)及びフェーズ2(ベースラインから約6年のフォローアップ訪問)試料である。
【0166】
試料処理プロトコールは、2つの測定の間で変更した。この変更により、フェーズ1は、サイトごとの処理時間の分布が、フェーズ2よりも広くなった。フェーズ1(ベースライン)訪問では、研究参加者の試験(OGTT、DEXA、トレッドミルなど)を効率的に実施することを優先しており、試料を回収した後の血液試料処理の時間範囲が数時間になった。フェーズ2の訪問では、スタッフを増員して、すべての試料を、回収時に迅速に処理をした。したがって、2番目の時点(フェーズ2)では、最初の時点(フェーズ1)よりも、調査サイト全体で均一な試料処理を行えている。プロトコールの変更を説明し、そして、時系列データ全体でモデルのロバスト性を高めるために、モデルの開発、検証、及び妥当性確認に使用するデータセットには、フェーズ1及びフェーズ2の測定値を含めた。これらのデータは、7,116個のフェーズ1試料(フェーズ1だけに参加した参加者由来のもの)と、5,003個のフェーズ2試料(フェーズ1及び2に参加した参加者由来のもの)を含んでいた。有効な2h-OGTT血漿グルコース測定値を使用して、それぞれの参加者からの1つの測定値だけを使用して、試料間の独立性の仮定を維持した。
【0167】
このデータセットでは、表3に示すように、標準的なOGTTで測定した耐糖能異常障害を有する個体の有病率は6.5%であった。この研究期間での英国全体での耐糖能異常障害または前糖尿病の推定値は10.5%であった(https://www.diabetes.co.uk/pre-diabetes.htmlを参照されたい)。米国では、現在の推定値は高く、18歳以上の成人の有病率は33.9%と予測している(https://www.niddk.nih.gov/health-information/health-statistics/diabetes-statisticsを参照されたい)。米国などの有病率の高い母集団では、この試験結果のPPV(正の予測値)は、改善する可能性が高く、NPV(負の予測値)は、有病率の低い母集団の試験パフォーマンスと比較して、わずかに低下し得る。米国の有病率人口には、現在の標的市場である自己負担の高級専門医療に関する許容可能な過小予測のリスクがわずかにある。
【0168】
コホートデータセットは、それぞれ、70%/15%/15%を、トレーニング、検証、及び妥当性確認のデータセットに分けた。標準OGTTで測定したトレーニング、及び検証データセットの人口統計を、表3に示す。
【表3】
【0169】
機械学習技術を使用して予測モデルを開発する場合には、複数のデータセットを使用して、最高の予測機能を備えたモデルを同定すべきである。この目的のために、データを分割する次の戦略を使用した。このデータを、3つのセットに分割した:トレーニングセット(相互検証を通じて上位モデルを識別するために使用した)、検証セット(上位モデルのパラメーターを調整できる第2のトレーニングセット)、及び検証試験セット(最終モデルの評価にだけ使用する、モデルの開発には使用しないホールドアウトセット)。このデータを3つの方法で分割することが最も理想的であり、そして、試料の規模を大きくする必要があるので、一般的には使用されておらず、また、モデル開発に必要であるとは見なされていない。この手法は、特徴選択とパラメーター推定を実行する際の過剰適合の問題を軽減する。
【0170】
コホートは、2つの時点で本明細書に記載した多重アッセイを使用した試料測定を行っており、また、その2つの時点の間に試料処理プロトコールを変更するので、モデルの開発、検証、及び妥当性確認に使用するデータセットは、両方の時点での測定を含んでいた。この分析のために選択したコホートは、フェーズ1での試料だけを有する個体に由来する7,116個の試料と、両方の時点でのデータを有する5,003名の個体から得たフェーズ2データだけの試料を加えた。
【0171】
データの品質を確保するために、データを分析する前に、4つの前処理ステップを行った。
1.ANMLによる正規化:最大尤度(ANML)を使用して適応正規化を行って、希釈特異的試料、及びアッセイバイアス、例えば、ピペッティングエラー、試薬濃度、アッセイのタイミング、及びその他のシステムの変動原因の変化などを補正した。試料の測定値が、リファレンス分布(コントロール試料セット)から得た確率を最大化して倍率を計算した。リファレンス分布と比較して|2|のZスコアを超えた分析物を除外して、試料処理のアーティファクト、またはその他の大きなプロテオミクスの変化のバイアスを軽減した。
2.データ品質管理(QC):このステップでは、試料の処理と、正規化の問題を確認した。まず、試料データを正規化して、処理を行っている間のハイブリダイゼーション変動を解消した。これに続いて、キャリブレーター試料全体の中央値を正規化して、分析を行っている間のその他のアッセイバイアスを解消した。次に、プレートごとに、全体的なスケーリングを行って、実行を行っている間の全体的な強度の差異を解消した。次に、キャリブレーションを行って、その間のアッセイの差異を解消した。最後に、リファレンスに対する中央値の正規化を、QC、緩衝剤、及び個々の試料で行った。
3.事前分析:このステップでは、臨床変数と正規化倍率との関係を調べて、2つの間に最小限の相関関係があることを確認した。
【0172】
4.欠測データ:モデル開発の前に、対象または試料の除去を必要とする欠測データポイントは無かった。モデルは、二分法のものを開発した:患者の耐糖能は、正常である(<7.8mmol/LのOGTTブドウ糖測定値に対応する)、または耐糖能異常障害である(≧7.8mmol/LのOGTTブドウ糖測定値に対応する)。利用したモデリングBI内で応答変数を計算した。
【0173】
データ品質管理と事前分析の後に、モデル開発を、次の2つのステップで完了した。
1.概念実証(POC):終点での関心を寄せたシグナルの証拠の有無を理解するためにデザインした、単変量の機械学習分析。
2.改良:POCで作成したモデルを確認及び拡張するモデラー主導の分析。データとモデルに関するその他のさらなる懸念事項に対処する。
【0174】
POCステップでは、トレーニングデータだけを使用した。ロジスティック回帰係数のt検定、KS検定、Mann-Whitney検定、及びWald検定を使用した単変量分析を行って、分析対象とOGTT状態との間での統計的に有意な関連の有無を判断した。それぞれの単変量試験について、Benjamini-Hochberg手順(Hochberg,et.al)と、Bonferroni補正したp値を使用して計算した偽発見率(FDR)で複数の試験を補正した。最小指標を満たすか否かを評価するために、予備的なエラスティックネットロジスティック回帰モデルも作成した。このモデルは、10分割交差検定を、5回繰り返して開発した。クラスの不均衡(トレーニングデータの6.5%だけに「グルコース障害」と標識付けした)が故に、交差検定内での低解像度処理を採用した。初期モデルのパフォーマンス基準を満足すると、試験をモデル改良に移す上で十分な証拠が得られる。
【0175】
改良して開発したモデルは、コホートのトレーニングと検証のデータセットを使用した。初期モデルでは、終点のクラスの不均衡に対応するために、交差検定内での低解像度処理を使用して、トレーニングデータの10分割交差検定を5回繰り返して計算した。モデルの精度を使用して上位モデルを選択した、すなわち、精度=(真陽性+真陰性)/nである。感度と特異性のバランスを表す(AUCとは異なり、感度や特異性が低いモデルでも、それらが非常に高くなることがある。)ので、この測定基準を使用した。分析ツールとして改良の間に精度を使用したが、モデルの受け入れ基準は、AUC、感度、及び特異性の組み合わせのままであった。次に、これらの上位モデルは、検証データと様々なモデル改善ツールを使用してさらに改良した。
【0176】
モデル構築に使用した主な手法として、モデルのパフォーマンスが改善しなくなるまで特徴要素を繰り返してフィルタリングするエラスティックネットペナルティモデルを反復ラウンドに供した。
【0177】
反復エラスティックネットの特徴縮小モデリングのアルゴリズムは、次の通りである。
1.ランクに基づいて、機能をフィルタリングするエラスティックネットモデルを構築する。
2.ステップ1で作成した最上位モデルから、推定値がゼロと等しくないすべての特徴を保持する。
3.ステップ2で保持したすべての機能を含む新しいエラスティックモデルを作成する。
4.ステップ2及び3を、少なくとも10回繰り返す、そして、精度が上がらなくなるまで継続する。
【0178】
このプロセスを、複数回実行する:単変量ランク(上位100、200、または500の特徴要素を含む)によるプロセス;絶食状態と統計的に有意に関連する(FDR<=0.01)特徴要素の除去;干渉試験の失敗に関連する特徴要素の削除;及び、モデルの強化に使用する外部データセットの変動性に基づいた特徴要素の削除、などの様々な方法で特徴要素をフィルタリングした。
【0179】
この最終モデルは、様々な合成データセットを調査して最小値と最大値に関するデータの補完の影響を確認する、そして、モデル予測に対する試料処理の効果を評価することで、ロバスト性についても評価した。
【0180】
次に、フェーズ1とフェーズ2の両方で最良のモデルの予測パフォーマンスを調査して、2つの時点の間に有意差が認められなかったことを確認した。加えて、残ったモデルを、年齢、性別、または訪問との相関について調査した。
【0181】
データQCは、219個の試料が、行チェックに失敗したことを示しており、このことは、ハイブリダイゼーションの少なくとも1つ、または3つの中央値スケール係数が、0.4~2.5の範囲外にあることを意味しており、改めて実行しても試料の修正に至らない試料の特定の技術的な問題(例えば、詰まり)を示している。加えて、中央値シグナルからの測定値の少なくとも5%にはMADが6を超える18個の試料と、正規化スケール係数が大きな2つの試料があった。これら239個の試料(1.4%)は、以降の分析から除外した。最後に、標的確認特異性試験に合格した分析物だけを分析に使用した。
【0182】
PC1対PC2のPCAプロットも、2つの主成分間の非線形関係の可能性を示したが、これらは、回収時点(フェーズ1対フェーズ2)では有意な差異が認められなかったので、大きな懸念事項にはならなかった。試料回収プロトコールを、フェーズ1とフェーズ2との間で変更したので、2つの時点の比較は重要であり、したがって、プロトコールの変更が、アッセイシグナルの変動の最大の原因ではない、ことが確認できたことが重要であった。
【0183】
事前分析では、第1または第2の時点で、終点と正規化スケール係数との間に強い関係がある、との根拠は示されなかった。
【0184】
POCの結果は、様々なFDRレベルの数多くの重要な分析物を示した。これらの数値とパーセンテージを、単変量t検定に関して、表4に示す。
【表4】
【0185】
最高のパフォーマンスを発揮するモデルは、AUCが0.856、そして、感度/特異性が0.78/0.77であるエラスティックネットロジスティック回帰モデルであり、AUC、感度は、実現可能性基準を上回っており、また。特異性は、≧0.70であった。
【0186】
このタイプのモデルは、POCステージで最も成功を示しており、また、ソフトウェアへのモデル転送プロセスに要する負担を軽減するための改良に向けて、エラスティックネットロジスティック回帰モデルを使用した。トレーニング及び検証データに関するモデルのパフォーマンスを、表5に示す。95%のブートストラップ間隔を、表5の括弧内に示している。
【表5】
【0187】
範囲外の数値に関するデータ補完の効果を、2段階で調査した。
1.トレーニングデータを使用して、それぞれの分析物の最小及び最大許容RFU値を、次のようにして計算した:
a.トレーニングデータを使用して、(トレーニングデータと同じ試料サイズの)ブートストラップデータセットを作成する。
b.データをk倍に分割する、すなわち、k=max{10、試料サイズ/10}である。c.それぞれのフォールド内、及びそれぞれのアプタマーに関して、データセットの最小値と最大値を計算して、それらを保存する。
d.ステップA~Cを100回繰り返す。
e.k100の繰り返し全体で、それぞれのアプタマーに関して、標準偏差を計算する。
f.アプタマー特異的最小/最大RFU値は、最小/最大トレーニングデータRFU値-/+2SDである(SDは、ステップEからのものである)。
2.次のステップは、ステップ1で計算した最小値と最大値、及び検証データを使用して行った。
a.検証データセット内のnp個の観測値(nは、検証データの試料サイズ、pは、モデル内のアプタマーの数)の内、範囲外にあるRFU値の1.5%を無作為に収集する。(1.5%は、従前のアッセイ性能と、RFU測定に関する経験的観察に基づいている。)これらの行及び列特異的数値にはタグ付けしている。
b.検証データのタグ付けした数値を、1(F)からの最大値と最小値と置換する。このデータセットを使用して、最終モデルの予測精度(セクション5.4での式において示す)を計算する。
c.検証データのタグ付けした数値を、0に置換する(この作業は、モデル由来のアプタマーの除去に類似している)。このデータセットを使用して、最終モデルの予測精度を(ステップBと同じ方法を使用して)計算する。
d.ステップA~Eを、100回繰り返す。予測精度の兆候をまとめる。最高の予測精度測定基準を提供するデータの補完方法は、生産に向けて推奨される方法である。
【0188】
結果として得られる予測測定基準は同じであり(表6を参照されたい)、また、このプロセスが、最も一般的に使用されているので、範囲外のアプタマーは、Winsorizedとすべきである。
【表6】
【0189】
実施例2:モデルの検証
15%ホールドアウト検証(試験)セットで評価した最終モデル。このデータは、試験リポジトリの別のフォルダに保存しており、そして、検証データの人口統計表を作成する目的においてのみ調査した(表7を参照されたい)。
【0190】
モデル予測は、個体が耐糖能を損なう確率を示す可能性である。カットオフ閾値は、0.5であり、カットオフよりも高い確率を持つ個体は「耐糖能異常障害」として分類する。「1」に近い値は、耐糖能異常障害の可能性が最も高い対象を示す。
【0191】
検証フェーズでは、予測確率と、それに関連する分類器を、検証データに基づいて計算した。AUC、感度、及び特異性は、それぞれ、0.70以上である必要があり、実際には、0.70以上であった(表8を参照されたい)。
【0192】
検証データセットは、合計1,761名の患者を含むコホートデータセットの最後の15%から構成されていた。このデータセットの人口統計(表7)は、トレーニング及び検証セット(表3)と定性的に同じであった。
【表7】
【0193】
AUCは、最後の41個のバイオマーカーパネルモデルを使用して、最後の15%ホールドアウトコホート検証データセットを分類して計算した。このデータは、POCでも、改良版でも使用しなかった。最終モデルは、AUC、感度、及び特異性が、0.70を超えており、検証に合格した。検証データセットの予測測定基準の結果を、以下の表8に示す。95%のブートストラップ間隔を、表8の括弧内に示している。
【表8】
【0194】
図4は、検証データセットの標準的な経口ブドウ糖負荷試験(正常、障害、及び糖尿病の可能性)の数値に基づいた診断によって層別化した、41個のバイオマーカーパネルモデルで予測した耐糖能異常障害の確率のボックスプロットを示す。3つのグループ間の離間は、かなり大きく、ロバストなモデルを示している。
【0195】
このモデルは、AUC/感度/特異性≧0.7/0.7/0.7の検証基準を満たしていた(これは、一部が、2時間のOGTT血漿グルコースレベルの10年間の糖尿病予測値に基づいている)。最終モデルのAUCは、0.764であり、ホールドアウト検証セットの感度/特異性は、0.794/0.734である。この報告の結論は、試験が臨床的許容基準を満たしており、生産に移行できるということである。
【0196】
実施例3:アプタマーを使用する例示的なバイオマーカー検出
試料に含まれる1つ以上のバイオマーカーを検出する例示的な方法は、例えば、Kraemer et al.,PLoSOne6(10):e26332に記載されており、以下に記載する。3つの異なる定量方法:マイクロアレイをベースとしたハイブリダイゼーション、Luminexビーズをベースとした方法、及びqPCRが記載されている。
【0197】
試薬
HEPES、NaCl、KCl、EDTA、EGTA、MgCl、及びTween-20は、例えば、Fisher Biosciencesから購入し得る。公称分子量8000のデキストラン硫酸ナトリウム塩(DxSO4)は、例えば、AICから購入し得る、そして、1回の交換で、少なくとも20時間、脱イオン水に対して透析する。KOD EX DNAポリメラーゼは、例えば、VWRから購入し得る。塩化テトラメチルアンモニウム、及びCAPSOは、例えば、Sigma-Aldrichから購入し得る、そして、ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SAPE)は、例えば、Moss Incから購入し得る。4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)は、例えば、Gold Biotechnologyから購入し得る。ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレートは、例えば、Thermo Scientific(Pierce Streptavidin Coated Plates HBC、透明、96ウェル、製品番号15500または15501)から購入し得る。NHS-PEO4-ビオチンは、例えば、Thermo Scientific(EZ-Link NHS-PEO4-Biotin、製品番号21329)から購入して、無水DMSOに溶解し、そして、使い捨てのアリコートで凍結保存することができる。IL-8、MIP-4、リポカリン-2、RANTES、MMP-7、及びMMP-9は、例えば、R&D Systemsから購入し得る。レジスチン及びMCP-1は、例えば、PeproTechから購入し得る、また、tPAは、例えば、VWRから購入し得る。
【0198】
核酸
従来のオリゴデオキシヌクレオチド(アミン及びビオチンで置換したものを含む)は、例えば、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入し得る。Z-Blockとは、配列5’-(AC-BnBn)7-AC-3’の一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドであり、式中、Bnは、ベンジル置換デオキシウリジン残基を示す。Zブロックは、従来のホスホルアミダイト化学を使用して合成し得る。アプタマー捕捉試薬も、従来のホスホルアミダイト化学で合成し得る、そして、例えば、timberline TL-600またはTL-150ヒーターと、重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)/ACNの勾配を使用するWaters Autopurification 2767システム(または、Waters 600シリーズ半自動システム)で、80℃で作動する、21.5×75mm PRP-3カラムで精製して、生成物を溶出する。検出を260nmで行い、最良のフラクションをプールする前に、メインピーク全体についてフラクションを回収する。
【0199】
緩衝剤
緩衝剤SB18は、40mM HEPES、101mM NaCl、5mM KCl、5mM MgCl、及びNaOHでpHを7.5に調整した0.05%(v/v)Tween20からなる。緩衝剤SB17は、SB18に、1mM 三ナトリウムEDTAを加えたものである。緩衝剤PB1は、10mM HEPES、101mM NaCl、5mM KCl、5mM MgCl、1mM 三ナトリウムEDTA、及びNaOHでpHを7.5に調整した0.05%(v/v)Tween-20からなる。CAPSO溶出緩衝剤は、100mM CAPSO pH10.0と、1M NaClとからなる。中和緩衝剤は、500mM HEPES、500mM HCl、及び0.05%(v/v)Tween-20を含む。Agilentハイブリダイゼーション緩衝剤は、キット(Oligo aCGH/ChIP-on-chipハイブリダイゼーションキット)の一部として提供する当社の製剤である。Agilent洗浄緩衝剤1は、当社の製剤である(Oligo aCGH/ChIP-on-chip洗浄緩衝剤1、Agilent)。Agilent洗浄緩衝剤2は、当社の製剤である(Oligo aCGH/ChIP-on-chip洗浄緩衝剤2、Agilent)。TMACハイブリダイゼーション溶液は、4.5M 塩化テトラメチルアンモニウム、6mM EDTA三ナトリウム、75mM Tris-HCl(pH8.0)、及び0.15%(v/v)サルコシルからなる。KOD緩衝剤(10倍濃縮)は、1200mM Tris-HCl、15mM MgSO、100mM KCl、60mM (NHSO、1%v/v Triton-X100、及び1mg/mL BSAからなる。
【0200】
試料調製
血清(100μLのアリコートを-80℃で保存したもの)を、25℃の水浴で、10分間かけて解凍し、試料を希釈する前に、氷上で保存する。試料は、8秒間、穏やかにボルテックスして混合する。6%血清試料溶液を、0.6mM MgCl、1mM EGTA三ナトリウム、0.8mM AEBSF、及び2μM Z-Blockを加えた0.94×SB17に希釈して調製する。6%血清原液の一部を、SB17で10倍に希釈して、0.6%血清原液を調製する。一部の実施形態では、6%及び0.6%の原液を、それぞれ、存在量の多い分析物と、存在量の少ない分析物を検出するために使用する。
【0201】
捕捉試薬(アプタマー)とストレプトアビジンプレートの調製
アプタマーは、関連する分析物(または、バイオマーカー)の相対的な存在量に応じて、2つの混合物に分ける。原液濃度は、それぞれのアプタマーについて4nMであり、それぞれのアプタマーの最終濃度は0.5nMである。アプタマー原体混合物を、SB17緩衝剤で4倍に希釈し、95℃で5分間加熱し、そして、使用前に、15分間で37℃にまで冷却する。この変性-再生サイクルは、アプタマーのコンフォーマー分布を正常化して、様々な履歴にもかかわらず、再現性のあるアプタマー活性を確保することを目的としている。ストレプトアビジンプレートは、使用前に、150μLの緩衝剤PB1で2回洗浄する。
【0202】
インキュベーション及びプレート捕捉
熱冷却した2×アプタマーミックス(55μL)を、等量の6%または0.6%血清希釈液と合わせて、3%及び0.3%血清を含むインキュベーションミックスを作る。これらのプレートを、Silicone Sealing Mat(Axymat Siliconeシーリングマット、VWR)で密封し、37℃で、1.5時間インキュベーションした。次に、インキュベーションミックスを、洗浄した96ウェルストレプトアビジンプレートのウェルに移し、さらに、37℃に設定したEppendorf Thermomixerで、800rpmで、震盪しながら、2時間、インキュベーションする。
【0203】
マニュアルアッセイ
特記しない限り、液体を流して除去し、続いて、層状のペーパータオルで、2回軽くたたく。洗浄量は150μLであり、すべての震盪インキュベーションを、25℃、800rpmに設定したEppendorf Thermomixerで行う。インキュベーションミックスを、ピペッティングして除去し、そして、プレートを、1mM デキストラン硫酸、及び500μM ビオチンを加えた緩衝剤PB1で、1分間、2回洗浄し、次に、緩衝剤PB1で、15秒間、4回洗浄する。新たに調製した1mM NHS-PEO4-ビオチンを含む緩衝剤PB1(150μL/ウェル)溶液を加え、そして、プレートを震盪しながら5分間インキュベーションする。NHS-ビオチン溶液を除去し、そして、プレートを、20mM グリシンを加えた緩衝剤PB1で3回、そして、緩衝剤PB1で3回洗浄する。次に、1mM DxSO4を加えた85μLの緩衝剤PB1を、それぞれのウェルに加え、そして、プレートを、BlackRay UVランプ(公称波長365nm)の下で、5cmの距離で、20分間、震盪しながら照射する。改めて洗浄したストレプトアビジンコーティングプレート、または公知の洗浄を終えたストレプトアビジンプレートの未使用ウェルに試料を移し、希釈度の高い試料と希釈度の低い試料の混合物を、単一のウェルに合わせる。試料を、室温で、10分間震盪しながらインキュベーションする。未吸着の物質を除去し、そして、プレートを、30%グリセロールを加えた緩衝剤PB1で、それぞれ、15秒間、8回洗浄する。次に、プレートを、緩衝剤PB1で1回洗浄する。アプタマーを、100μL CAPSO溶出緩衝剤を使用して、室温で、5分間溶出する。90μLの溶出液を、96ウェルHybAidプレートに移し、そして、10μLの中和緩衝剤を加える。
【0204】
半自動アッセイ
吸着したインキュベーションミックスを含むストレプトアビジンプレートを、BioTek EL406プレート洗浄機のデッキに置く。BioTek EL406プレート洗浄機は:未吸着物質を吸引して除去する、そして、ウェルを、1mM デキストラン硫酸、及び500μM ビオチンを加えた300μLの緩衝剤PB1で、4回洗浄するステップを行うようにプログラムしている。次に、ウェルを、300μLの緩衝液PB1で、3回洗浄する。新たに調製した(100mM 原液を含むDMSO)150μLの溶液、すなわち、1mM NHS-PEO4-ビオチンを含む緩衝剤PB1を加える。プレートを震盪しながら、5分間、インキュベーションする。液体を吸引し、そして、ウェルを、10mM グリシンを加えた300μLの緩衝剤PB1で8回洗浄する。1mM デキストラン硫酸を加えた100μLの緩衝剤PB1を加える。これらの自動化したステップの後に、プレートを、プレート洗浄機から取り外し、そして、UV光源(BlackRay、公称波長365nm)の下に取り付けたサーモシェーカーに対して、5cmの距離をあけて、20分間置く。サーモシェーカーは、800rpm、25℃に設定している。20分間の照射後に、改めて洗浄をしたストレプトアビジンプレート(または、洗浄を終えた公知のプレートの未使用ウェル)に試料を手動で移す。この時点で、十分量(3%血清+3%アプタマーミックス)と、少量の反応ミックス(0.3%血清+0.3%アプタマーミックス)が、1つのウェルで合わさる。この「Catch-2」プレートを、BioTek EL406プレート洗浄機のデッキに配置する。このプレート洗浄機は:これらのプレートを、震盪しながら、10分間インキュベートするステップを行うようにプログラムしている。液体を吸引し、そして、ウェルを、30%グリセロールを加えた300μLの緩衝剤PB1で21回洗浄する。ウェルを、300μLの緩衝剤PB1で5回洗浄し、そして、最後の洗浄液を吸引する。100μLのCAPSO溶出緩衝剤を加え、そして、アプタマーを、震盪しながら、5分間溶出する。これらの自動化ステップに続いて、プレートを、プレート洗浄機のデッキから取り外し、試料の90μLアリコートを、10μL中和緩衝剤を含むHybAid 96ウェルプレートのウェルに手動で移す。
【0205】
カスタムAgilent8×15kマイクロアレイに対するハイブリダイゼーション
中和した溶出液の24μLを、新たな96ウェルプレートに移し、そして、10Cy3アプタマーから構成されるハイブリダイゼーションコントロールのセットを含む、6μLの10×Agilent Block(Oligo aCGH/ChIP-on-chipハイブリダイゼーションキット、大容量、Agilent 5188-5380)を、それぞれのウェルに加える。30μLの2×Agilent Hybridization緩衝剤を、それぞれの試料に加えて混合する。得られたハイブリダイゼーション溶液の40μLを、ハイブリダイゼーションガスケットスライド(Hybridization Gasket Slide、8個のマイクロアレイ/スライドフォーマット、Agilent)のそれぞれの「ウェル」に対して、手動で、ピペットで移す。20×dTリンカーを備えたそれぞれのアプタマーの40個のヌクレオチドランダム領域に相補的なアレイに対して10個のプローブを備えているカスタムAgilentマイクロアレイスライドを、メーカーのプロトコールに従って、ガスケットスライドに配置する。このアセンブリ(Hybridization Chamber Kit-SureHyb対応可能、Agilent)を固定して、20rpmで、回転させながら、60℃で、19時間、インキュベーションする。
【0206】
ハイブリダイゼーション後の洗浄
約400mLのAgilent Wash Buffer 1を、2つの別々のガラス染色ディシュのそれぞれに入れる。スライド(一度に2つ以下)を、Wash Buffer 1に沈めた状態で分解及び分離させ、次いで、Wash Buffer 1を含む第2の染色ディシュのスライドラックに移す。スライドを、Wash Buffer 1で、さらに5分間撹拌しながらインキュベーションする。スライドを、37℃で、事前に平衡化したWash Buffer 2に移し、そして、撹拌しながら、5分間インキュベーションする。スライドを、アセトニトリルを含む第4の染色ディシュに移し、そして、撹拌しながら5分間インキュベーションする。
【0207】
マイクロアレイイメージング
Agilent G2565CA Microarray Scanner Systemを、100%PMTに設定して、5μmの分解能で、Cy3チャネルを使用し、そして、0.05でXRDオプションを有効にして、マイクロアレイスライドを画像化する。得られるTIFF画像は、GE1_105_Dec08プロトコールを使用したAgilent特徴抽出ソフトウェアバージョン10.5.1.1を使用して処理する。
【0208】
Luminexプローブのデザイン
ビーズに固定化したプローブは、標的アプタマーの40個のヌクレオチドランダム領域の3’末端に相補的な40ヌクレオチドを有する。このアプタマー相補領域は、5’アミノ末端を有するヘキサエチレングリコール(HEG)リンカーを介して、Luminex Microspheresに結合する。ビオチン化検出デオキシオリゴヌクレオチドは、標的アプタマーの5’プライマー領域に相補的な17-21デオキシヌクレオチドを含む。ビオチン部分を、検出オリゴの3’末端に加える。
【0209】
Luminex Microspheresに対するプローブの結合
プローブは、基本的にメーカーの指示に従って、Luminex Microplex Microspheresに結合するが、次の変更:アミノ末端オリゴヌクレオチドの量は、0.08nmol/2.5×106ミクロスフェアである、そして、2回目のEDC添加は、10mg/mLで5μLを添加する、ことが加えられている。カップリング反応は、25℃、600rpmに設定したEppendorf ThermoShakerで行う。
【0210】
ミクロスフェアハイブリダイゼーション
ミクロスフェア原液(約40000ミクロスフェア/μL)を、ボルテックスし、そして、Health Sonics超音波洗浄機(Model:T1.9C)で、60秒間、超音波処理して、ミクロスフェアを懸濁する。懸濁したミクロスフェアを、1.5×TMACハイブリダイゼーション溶液で、反応の度に、2000個のミクロスフェアに希釈をし、そして、ボルテックスと超音波処理して混合する。ビーズ混合物の反応の度に、33μLを、96ウェルHybAidプレートに移す。15nM ビオチン化検出オリゴヌクレオチドストックを含む1×TE緩衝剤の7μLを、それぞれの反応に加えて、混合する。中和したアッセイ試料の10μLを加え、そして、プレートを、シリコンキャップマットシールで密封する。まず、プレートを、96℃で、5分間、インキュベーションする、そして、従来のハイブリダイゼーションオーブンで、50℃で、一晩、撹拌せずに、インキュベーションする。フィルタープレート(Duraポア、Millipore部品番号MSBVN1250、1.2μm孔径)を、0.5%(w/v)BSAを加えた75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液で事前に湿らせておく。ハイブリダイゼーション反応で得た試料全量を、フィルタープレートに移す。ハイブリダイゼーションプレートを、0.5%BSAを含む75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液で濯ぎ、そして、残余の物質を残らずフィルタープレートに移す。試料を、ゆっくりと真空下で濾過し、150μLの緩衝剤を、約8秒間、脱気する。フィルタープレートを、0.5%BSAを含む75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液で1回洗浄し、そして、フィルタープレート内のミクロスフェアを、0.5%BSAを含む75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液に再懸濁する。フィルタープレートを光から保護し、そして、Eppendorf Thermalmixer Rで、1000rpmで、5分間、インキュベーションする。次に、フィルタープレートを、0.5%BSAを含む75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液で、1回洗浄する。75μLの10μg/mLストレプトアビジンフィコエリトリン(SAPE-100、MOSS、Inc.)を含む1×TMACハイブリダイゼーション溶液を、それぞれの反応に加え、そして、Eppendorf Thermalmixer Rで、25℃、1000rpmで、60分間インキュベーションする。このフィルタープレートを、0.5%BSAを含む75μLの1×TMACハイブリダイゼーション溶液で2回洗浄し、そして、フィルタープレート内のミクロスフェアを、0.5%BSAを含む75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液に再懸濁する。次に、フィルタープレートを、Eppendorf Thermalmixer Rで、光から保護しながら、5分間、1000rpmで、インキュベーションする。次に、フィルタープレートを、0.5%BSAを含む75μLの1×TMACハイブリダイゼーション溶液で1回洗浄する。ミクロスフェアを、0.5%BSAを加えた75μL 1×TMACハイブリダイゼーション溶液に再懸濁し、そして、XPonent 3.0ソフトウェアで作動するLuminex 100機器で分析する。PMTキャリブレーションが大きく、かつ、7500~18000のダブレット除去設定の下で、少なくとも100個/ビーズタイプのミクロスフェアを計数する。
【0211】
QPCR読み出し
qPCRの標準曲線を、10倍希釈、及びテンプレートを持たないコントロールを使用して、108~102コピーの範囲で、水中で作成する。中和したアッセイ試料を、diH2Oで、40倍に希釈する。qPCRマスターミックスを、2×最終濃度で調製する(2×KOD緩衝剤、400μM dNTPミックス、400nMフォワード及びリバースプライマーミックス、2×SYBR Green I、及び0.5U KODEX)。10μLの2×qPCRマスターミックスを、10μLの希釈アッセイ試料に加える。qPCRを、BioRad MyIQ iCyclerで、96℃で、2分間行った後に、96℃で、5秒間、72℃で、30秒間のサイクルを、40回行う。
【0212】
実施例4.バイオマーカーパネルモデルの分析
表1及び2に記載した41個のバイオマーカーの様々な組み合わせを含むモデルを分析して、様々なバイオマーカーの組み合わせを含むパネルのAUC、感受性、及び特異性を決定した。以下の表9は、パネルのバイオマーカータンパク質を、表9に示した順序で、1つずつ加えた場合、または1つずつ減らした場合のモデルでの結果を示す。したがって、表9の最初の行は、パネルがINHBCだけを含む場合(「1つずつ加えた」結果)、またはINHBC以外の記載をした41個のバイオマーカーすべてを含む場合(「1つずつ減らした」結果)のモデルの結果を示す。表9の結果は、パネルが少なくとも最初の5つのバイオマーカータンパク質、具体的には、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、及びRTN4Rを含んでいると、それに続く各バイオマーカータンパク質を加えても、AUCの改善は有意に大きくないことを示す。感受性と特異性の値は、残りのバイオマーカータンパク質を加えることで改善が継続した。表9の結果は、パネルが少なくとも最初の10個のバイオマーカータンパク質、具体的には、INHBC、SHBG、ACY1、COL1A1、RTN4R、CRLF1、CBX7、FAM20B、COL15A、及びKINを欠失していると、AUC、感受性、及び特異性が有意に低下することも示している。表9に示す結果は、グラフ形式で図1A及び1Bにも示している。
【表9-1】
【表9-2】
【0213】
モデルのAUC、感受性、及び特異性の分析も行っており、そのパネルは、表1及び2のN個の上記バイオマーカーから構成されており、バイオマーカーを無作為の順序で1つずつ加えた。その結果を、図1Cに示す。それらの結果は、表1及び2から選択したバイオマーカーの追加の有無に関係なく、パネルにバイオマーカーを加えると、モデルのパフォーマンスが改善することを示している。さらに、10個のランダムバイオマーカータンパク質は、一般的に、0.7のAUCを示す。
【0214】
上記した実施形態及び実施例は、例示を意図するものでしかない。特定の実施形態、実施例、または特定の実施形態または実施例の要素は、特許請求の範囲のいずれかの重要な、必要とする、または必須の要素または特徴事項として解釈すべきではない。添付した特許請求の範囲が定義する本出願の範囲から逸脱せずに、開示した実施形態に対して様々な変更、修正、置換、及びその他の変形を行うことができる。図面及び実施例を含む明細書は、限定を意図するものではなく、例示的な方法であるとみなすべきであり、そのようなすべての修正及び置換を、出願の範囲に含めることを意図している。方法またはプロセスの請求項のいずれかに記載したステップは、実行可能なあらゆる順序で行うことができ、実施形態、実施例、または請求項のいずれかに示した順序に限定されない。さらに、上記した方法のいずれかにおいて、1つ以上の具体的に記載したバイオマーカーは、個々のバイオマーカー、またはあらゆるパネルに由来するバイオマーカーとして、具体的に除外することができる。
【符号の説明】
【0215】
100・・・コンピューターシステム
101・・・プロセッサ
102・・・入力装置
103・・・出力装置
104、109・・・記憶装置
105a、105b・・・記憶媒体リーダー
106・・・通信システム
107・・・加速処理装置
108・・・バス
191・・・作業メモリ
192・・・オペレーティングシステム
193・・・コード
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
【国際調査報告】