(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】複合型離型フィルムと付加製造分野で該離型フィルムを使用する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/223 20170101AFI20230302BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20230302BHJP
【FI】
B29C64/223
B29C64/124
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541860
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020136861
(87)【国際公開番号】W WO2021139497
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520433333
【氏名又は名称】ラクスクレオ・(ベイジン)・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】朱 光
(72)【発明者】
【氏名】范 文
(72)【発明者】
【氏名】万 政▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 雨桐
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AJ03
4F213AJ09
4F213AJ10
4F213AJ11
4F213AR12
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL56
4F213WL67
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
複合型離型フィルムは、光硬化3D印刷方法において現在の硬化層を光硬化成形表面から分離するために使用される。前記複合型離型フィルムは、塑性層及び弾性層を含み、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられる。前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体をさらに含んでもよく、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填され、前記弾性層の靭性支持体が弾性層の下表面に複数の突起を有する。また、付加製造の分野で上記複合型離型フィルムを使用して光硬化3D印刷技術により三次元物体を製造する装置及び方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化3D印刷方法において現在の硬化層を光硬化成形表面から分離するための複合型離型フィルムであって、塑性層及び弾性層を含み、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられていることを特徴とする、複合型離型フィルム。
【請求項2】
前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体を含み、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填されている、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項3】
前記弾性層の靭性支持体は、前記弾性層の下表面に複数の突起を有する、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項4】
前記塑性層の材料の耐膨潤性は、前記弾性層の材料の耐膨潤性より優れる、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項5】
前記塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より高い、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項6】
前記塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より20%以下高い、請求項5に記載の複合型離型フィルム。
【請求項7】
前記弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の弾性率より高い、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項8】
前記弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高い、請求項7に記載の複合型離型フィルム。
【請求項9】
前記塑性層の厚さは、前記弾性層の厚さより小さい、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項10】
前記塑性層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項11】
前記弾性層基体の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン又はゴムを含む、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項12】
前記弾性層の靭性支持体の材料は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は多孔質フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項13】
前記弾性層の靭性支持体が前記弾性層の下表面に有する複数の突起の平均高さは、100nm~20μmの範囲にある、請求項3に記載の複合型離型フィルム。
【請求項14】
a.印刷原料となる光硬化性液体樹脂を収容する材料槽であって、その底面が光透過可能である材料槽と、
b.前記材料槽の底部に配置され、光硬化成形表面から現在の硬化層を分離するために使用され、塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムであって、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が前記弾性層の上表面に貼り合わせられる複合型離型フィルムと、
c.成形テーブルであって、該成形テーブルと前記複合型離型フィルムの塑性層の上表面との間の空間が印刷領域である成形テーブルと、
d.前記印刷領域内の液体樹脂を照射し、エネルギーを供給して現在の硬化層を形成するための光源と、
を含む、光硬化3D印刷のための装置。
【請求項15】
前記複合型離型フィルムの弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体を含み、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填されている、請求項14に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項16】
前記弾性層の靭性支持体は、前記弾性層の下表面に複数の突起を有し、前記複数の突起が前記材料槽の底面と接触する、請求項15に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項17】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の耐膨潤性は、前記弾性層の材料の耐膨潤性より優れる、請求項14に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項18】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より高い、請求項14に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項19】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より20%以下高い、請求項18に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項20】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より高い、請求項15に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項21】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高い、請求項20に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項22】
前記複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、前記弾性層の厚さより小さい、請求項14に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項23】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項14に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項24】
前記複合型離型フィルムの弾性層基体の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン又はゴムを含む、請求項15に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項25】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は多孔質フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項15に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項26】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体が前記弾性層の下表面に有する複数の突起の平均高さは、100nm~20μmの範囲にある、請求項16に記載の光硬化3D印刷のための装置。
【請求項27】
三次元物体を製造するための方法であって、
a.成形テーブルと光硬化成形表面を含む液体樹脂材料槽とで定義される印刷領域を提供するステップであって、該液体樹脂材料槽の底部は光透過可能であり、かつ塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムが配置され、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられるステップと、
b.前記印刷領域に光硬化性液体樹脂を充填するステップと、
c.前記印刷領域をエネルギーに曝露して現在の硬化層を形成するステップであって、前記現在の硬化層が前記成形テーブルにより駆動されて光硬化成形表面から離れる方向に移動するステップと、
d.前記三次元物体の印刷が完了するまでステップb及びcを繰り返すステップと、
を含む、三次元物体を製造するための方法。
【請求項28】
前記複合型離型フィルムの弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体を含み、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填される、請求項27に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項29】
前記弾性層の靭性支持体は、前記弾性層の下表面に複数の突起を有し、前記複数の突起が前記液体樹脂材料槽の底面と接触する、請求項28に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項30】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の耐膨潤性は、前記弾性層の材料の耐膨潤性より優れる、請求項27に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項31】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より高い、請求項27に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項32】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より20%以下高い、請求項31に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項33】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より高い、請求項28に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項34】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高い、請求項33に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項35】
前記複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、前記弾性層の厚さより小さい、請求項27に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項36】
前記複合型離型フィルムの塑性層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項27に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項37】
前記複合型離型フィルムの弾性層基体の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン又はゴムを含む、請求項28に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項38】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は多孔質フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項28に記載の三次元物体を製造するための方法。
【請求項39】
前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体が前記弾性層の下表面に有する複数の突起の平均高さは、100nm~20μmの範囲にある、請求項29に記載の三次元物体を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造の技術分野に関し、特に複合型離型フィルムと付加製造分野で該離型フィルムを使用する装置及び方法に関する。
【0002】
[参照による援用]
本発明は、2020年1月7日に出願された出願番号62/958062の米国仮出願及び2020年1月8日に出願された出願番号62/958606の米国仮出願に対する優先権を主張するものである。上記出願の内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
コンピュータ及び機械科学技術の発展に伴い、各種の付加製造又は3D印刷技術はいずれも急速に発展している。一般的に、付加製造又は3D印刷技術の技術原理はまずコンピュータ支援設計(Computer Aided Design、CAD)のソフトウェアにより構築された物体の三次元モデルを階層化し、次に各層の輪郭情報又は画像情報を取得し、粉末状金属又は樹脂などの粘着可能な材料を使用して層ごとに印刷する方式により三次元物体の製造を完了する。そのうちの1つの付加製造の技術方法として、光硬化3D印刷技術は、主に液体樹脂を原材料として使用し、印刷原料の液体樹脂が特定の波長及び強度の光照射で硬化するという特性を利用して印刷を完了する過程である。光硬化3D印刷の具体的なステップは一般的に以下のとおりである。まず三次元モデルを一方向に階層化して各層の輪郭情報又は画像情報を取得し、次に各層の光パターンを印刷原材料に照射し、原材料中の印刷原料が光照射を受けると、硬化反応が発生して硬化層を形成し、該硬化層の光パターンが硬化した後、次の層の硬化を行い、これを繰り返し、最後に完全な印刷物(即ち、三次元モデル)を形成する。
【0004】
光硬化3D印刷技術は主に2つの種類に分けられている。第1の種類はトップダウン(Top-Down)印刷と呼ばれ、このような方法において、硬化光源が印刷原料の液体樹脂を収容する材料槽の上方に位置し、層を硬化させるたびに、印刷成形テーブルが下に一定の距離を移動する。このような印刷技術では、液体樹脂の表面に光硬化が発生するため、印刷高さは材料槽の深さにより制限される。一般的に、材料槽に配置する必要のある液体樹脂は実際に硬化した樹脂よりはるかに多いため、ある程度の原材料の無駄をもたらす。また、トップダウン(Top-Down)の印刷方式は、一般的に、完了した硬化層を覆うまで液体樹脂の流れを容易にするように、液面制御システム(例えば、塗布用スクレーパ)を増設する必要があり、装置のコストが高く、操作が複雑になる。第2の種類の光硬化印刷技術はボトムアップ(Bottom-Up)印刷技術であり、このような印刷技術において、硬化光源が材料槽の下方に配置され、材料槽の底部に光硬化が発生し、各層の硬化が完了すると、印刷成形テーブルが上に一定の距離を移動して印刷物が上に移動するように駆動する。液体樹脂は、その粘度が非常に大きくない場合、重力作用だけにより還流し、印刷物の上への移動により生成した空間を埋め、次の層の硬化を行うことができる。ボトムアップ(Bottom-Up)印刷技術は、液面制御システムを必要とせず、装置のコストが比較的低い。しかしながら、ボトムアップ(Bottom-Up)技術も欠点を有し、硬化が完了し、成形テーブルが上に移動するたびに、硬化層と材料槽の底部の光硬化成形表面とを分離する必要があり、これは硬化層の微細構造に対する損傷を引き起こす可能性があり、また、この分離過程は印刷速度をも大幅に制限する。従来技術では、迅速かつ非破壊的離型に役立つように、通常、弾性高分子材料で製造され、材料槽の底部に配置された離型フィルムを使用する。例えば特許文献1に開示された弾性分離層技術がある。
【0005】
他のいくつかの改良されたボトムアップ(Bottom-Up)印刷技術、例えば米国Carbon社のCLIP(Continuous Liquid Interface Production:連続液体界面製造)は、透明で通気性のあるテフロン(登録商標)フィルムを材料槽の底部材料として使用し、光及び酸素を通過させ、酸素の重合防止効果により、材料槽に入った酸素が材料槽の底部に最も近い一部の液体樹脂の光硬化を抑制するため、材料槽の底部に薄い液膜(「デッドゾーン」(Dead Zone)と呼ばれる)を形成する。デッドゾーンの上に硬化した硬化層は材料槽から分離せず、デッドゾーンの液膜から分離するため、印刷速度が速くなり、これにより連続印刷を実現する。CLIP技術にもいくつかの欠点があり、例えばデッドゾーンは温度に対する感受性が高く、微小な温度変動は印刷の失敗を引き起こす可能性がある。また、デッドゾーンでの酸素の含有量を正確に制御する必要があるため、装置の操作等が複雑になるとともにコストが高くなる。
【0006】
したがって、光硬化3D印刷は、より優れた代替装置及び印刷技術を必要とし、特にボトムアップ(Bottom-Up)印刷技術における硬化層分離に対する解決方法を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様に係る、光硬化3D印刷方法において現在の硬化層を光硬化成形表面から分離するための複合型離型フィルムは、塑性層及び弾性層を含み、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられることを特徴とする。
【0009】
いくつかの実施例において、前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体をさらに含んでもよく、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填される。
【0010】
いくつかの実施例において、前記弾性層の靭性支持体は、弾性層の下表面に複数の突起を有する。
【0011】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の耐膨潤性は、弾性層の材料の耐膨潤性より優れる。
【0012】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より高い。
【0013】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より20%以下高い。
【0014】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の弾性率より高い。
【0015】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高い。
【0016】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、弾性層の厚さより小さい。
【0017】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの塑性層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む。
【0018】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの弾性層基体の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン又はゴムを含む。
【0019】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は多孔質フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む。
【0020】
いくつかの実施例において、前記複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体が弾性層の下表面に有する複数の突起の平均高さは、100nm~20μmの範囲にある。
【0021】
本発明の一態様に係る光硬化3D印刷のための装置は、印刷原料となる光硬化性液体樹脂を収容する材料槽であって、その底面が光透過可能である材料槽と、前記材料槽の底部に配置され、光硬化成形表面から現在の硬化層を分離するために使用され、塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムであって、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられる複合型離型フィルムと、成形テーブルであって、該成形テーブルと前記複合型離型フィルムの塑性層の上表面との間の空間が印刷領域である成形テーブルと、前記印刷領域内の液体樹脂を照射し、エネルギーを供給して現在の硬化層を形成するための光源と、を含む。いくつかの実施例において、前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体をさらに含んでもよく、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填される。いくつかの実施例において、前記弾性層の靭性支持体は、弾性層の下表面に複数の突起を有し、前記複数の突起が前記材料槽の底面と接触する。
【0022】
本発明の1つの態様に係る三次元物体を製造するための方法は、a.成形テーブルと光硬化成形表面を含む液体樹脂材料槽とで定義される印刷領域を提供するステップであって、該液体樹脂材料槽の底部は光透過可能であり、かつ塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムが配置され、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられるステップと、b.前記印刷領域に光硬化性液体樹脂を充填するステップと、c.前記印刷領域をエネルギーに曝露して現在の硬化層を形成ステップであって、前記現在の硬化層が成形テーブルにより駆動されて光硬化成形表面から離れる方向に移動するステップと、d.前記三次元物体の印刷が完了するまでステップb及びcを繰り返すステップと、を含む。いくつかの実施例において、前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体をさらに含んでもよく、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填される。いくつかの実施例において、前記靭性支持体は、弾性層の下表面に複数の突起を有し、前記複数の突起が前記材料槽の底面と接触する。
【0023】
当業者であれば、以下の詳細な説明から素子、装置及び方法の技術的特徴及び技術的利点を理解するであろう。なお、素子、装置及び方法はいずれも様々な形態の実施例を有するが、以下の説明は、特定の実施例を含み、当業者であれば、本発明の開示が例示的なものであり、本発明を本明細書に記載された特定の実施例に限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、例示的な実施例の方式でさらに説明し、これらの例示的な実施例を図面により詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではない。
【
図1】本発明に係る方法に使用可能な光硬化印刷装置の一実施例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例2で製造された複合型離型フィルムの弾性層の一実施例の電子顕微鏡写真である。
【
図3】本発明に係る方法で製造された複合型離型フィルムと市販されている離型フィルムとの離型効果試験の比較実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下に図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。理解されるように、ここで説明された具体的な実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。逆に、本発明は、請求項により定義された本発明の趣旨及び範囲で行われた任意の代替、修正、等価方法及び解決手段を含む。さらに、公衆が本発明をよりよく理解するために、以下、本発明の詳細な説明において、いくつかの特定の詳細部分を詳細に説明する。当業者であれば、これらの詳細部分の説明がなくても本発明を完全に理解することができる。逆に、本発明は、請求項により定義された本発明の趣旨及び範囲で行われた任意の代替、修正、等価方法及び解決手段を含む。さらに、公衆が本発明をよりよく理解するために、以下に本発明の詳細な説明において、いくつかの特定の詳細部分を詳細に説明する。当業者であれば、これらの詳細部分の説明がなくても本出願を完全に理解することができる。
【0026】
空間関連用語、例えば「下方」、「低い」、「下部」、「上方」、「上部」等は、本明細書において、説明しやすくするように使用されて、図面に示された素子又は部材と他の1つ又は複数の素子又は部材との関係を説明することができる。空間関連用語は、図面に示す配向以外に、使用中又は動作中のデバイスの異なる配向を含むことを意図することを理解されたい。例えば、図中のデバイスを逆転すると、他の素子又は部材の「下方」又は「下表面」に位置すると説明された素子は、他の素子又は部材の「上方」に配向するようになる。したがって、例示的な用語「下方」は、上方及び下方の配向の両方を含んでもよい。デバイスは、他の方式で配向(90度回転するか又はその他の配向)し、それに応じて本明細書に使用された空間関連説明語を解釈することができる。同様に、特に指示しない限り、「上に」、「下に」、「垂直」、「水平」等の用語は、本明細書において解釈及び説明のためのものに過ぎない。
【0027】
背景技術に説明されるように、従来のボトムアップ(Bottom-up)印刷技術では、液体樹脂材料槽の底部に成形された現在の硬化層を光硬化成形表面から分離する過程は、硬化層の微細構造への損傷を引き起こす可能性があり、この分離過程は印刷速度をも制限する。従来技術では、迅速な離型に役立つために、通常、弾性高分子材料で製造され、材料槽の底部に配置された離型フィルムを使用する。例えば、特許文献1に開示された弾性離型フィルムの技術がある。弾性離型フィルムは、材料槽の底部に粘着しないことを保証するように、適切な材料を選択する必要があり、離型過程において、硬化層と離型フィルムとの間の粘着力は離型フィルムと材料槽の底面との間の粘着力より大きい必要があり、このようにして離型過程の開始時に離型フィルムが硬化層と離型フィルムとの間の粘着力により引き上げられて弾性変形し、その一部が材料槽の底面から離れることを保証することができる。この際、弾性離型フィルム自体の弾性は、弾性復元力を提供し、弾性復元力が硬化層と離型フィルムとの間の粘着力より大きい場合に、離型フィルムは、硬化層から剥離され、その本来の形状に回復する。弾性離型フィルムを使用することで、材料槽の底面から硬化層を直接剥離する必要があるという従来の過程を回避し、印刷速度及び連続性を大幅に向上させる。特許文献1に開示された弾性離型フィルムは、ラテックス又はシリコーンゴムなどの弾性材料を使用することができる。
【0028】
従来技術に用いられた弾性離型フィルムの材料は、「老化」現象が発生しやすいため、即ち一定の時間印刷した後、局所の箇所が複数回繰り返して引き上げられた後に剥離されるため、弾性離型フィルムが提供できる局所弾性復元力が減衰し、離型効果が低くなる。また、いくつかの光硬化印刷に使用される印刷用樹脂材料に分子量の小さい分子が含まれている場合、これらの分子は、弾性離型フィルムの三次元網状構造に入り、「膨潤」を発生させる可能性があり、このような膨潤現象は、弾性離型フィルムの力学的性質に影響を与え、離型効果の低下をもたらす。構造及び材料の選択からみれば、本発明に係る複合型離型フィルムは、上記問題を解決するとともに、いくつかの追加の利点を提供する。
【0029】
図1は、本発明のいくつかの実施例に係る光硬化3D印刷装置の一実施例を示す概略図である。本実施例において、光硬化3D印刷装置10は、光硬化性樹脂400を収容するための材料槽200と、光透過可能な材料槽200の底部に配置された複合型離型フィルム100とを含み、該複合型離型フィルム100は、上層にある塑性層110及び下層にある弾性層120を含む。ここで、塑性層110の上表面111は、光硬化性樹脂400と接触し、塑性層110の下表面112は、弾性層120の上表面121と貼り合わせられる。光硬化3D印刷装置10は、三次元印刷物500を移動するように駆動するための成形テーブル300をさらに含み、ここで、成形テーブル300と塑性層110の上表面111とは印刷領域を定義する。光硬化3D印刷装置10は、該印刷領域にエネルギー700を供給して、照射される光硬化性樹脂を硬化させるための光源600をさらに含む。該光硬化3D印刷装置を使用して三次元物体を製造する典型的な過程において、印刷装置10の制御システム(
図1に示されていない)は、現在の硬化層のパターンを光源600で印刷領域へ照射し、光源600から放射されたエネルギー700は、印刷領域での光硬化性樹脂を硬化させて現在の硬化層を形成し、かつ成形テーブル300に付着する(該硬化層が第1の硬化層でなければ、該硬化層は前の硬化層に付着される)。光硬化過程が完了すると、成形テーブル300は、全ての硬化層が上に一定の距離を移動するように駆動することにより、現在の硬化層が塑性層110の上表面111(即ち光硬化成形表面であり、硬化層離型面とも呼ばれる)から分離するように駆動し、その後、光硬化性樹脂400は、流れて、現在の硬化層の離型後に生成した空間を充填すると、次の硬化層の印刷を行うことができる。このように繰り返し、三次元印刷物500全体の印刷が完了するまで停止する。
【0030】
本発明において使用された「塑性層」の定義は、名称で「弾性層」と区別するために使用され、必ずしも圧縮及び引張強度が高いか、又は大きな塑性変形を生じることができる等の性質の材料を指すものではなく、複合型離型フィルムにおける2つの層の材料の応力歪み曲線の異なる特徴を区別することも意図しない。本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より大きければよい。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層の材料の弾性率は、0.1~100MPaの範囲内にある。本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の材料の弾性率は、塑性層の材料の弾性率より小さい。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の材料の弾性率は、0.1~100MPaの範囲内にある。
【0031】
本発明に係る複合型離型フィルムは、複合構造を用い、ここで、塑性層の上表面を光硬化成形表面とし、その材料が光硬化性樹脂と非相溶である。いくつかの実施例において、複合型離型フィルムの塑性層の材料と光硬化性樹脂の材料とは相互に浸潤しないため、光硬化性樹脂材料が塑性層の上表面で硬化反応を発生させて硬化層を形成すると、硬化層と塑性層との間の粘着力が小さく、硬化層と光硬化成形表面との分離に役立つ。本発明に係る「浸潤しない」の定義は、光硬化性樹脂材料と塑性層の上表面との接触角が60°以上であることである。いくつかの実施例において、光硬化性樹脂材料と塑性層の上表面での接触角は70°以上である。いくつかの実施例において、光硬化性樹脂材料の塑性層の上表面との接触角は80°以上であり、いくつかの実施例において、光硬化性樹脂材料と塑性層の上表面との接触角は90°以上である。
【0032】
本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層の材料の耐膨潤性は、弾性層の材料より優れるため、光硬化性液体樹脂に含まれる可能性のある小分子が離型フィルムの材料に入って膨潤するという現象を回避する。複合構造において、弾性層は、主に離型過程における復元力を供給することを担当し、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より大きければよい。塑性層と弾性層の両方は、複合型離型フィルムの使用中において引き上げ及び剥離の過程を経る必要があるため、好ましくは二層の間の界面応力が小さく、ここで、界面応力は、圧縮応力、引張応力、押圧応力、剪断応力等を含むが、これらに限定されない。塑性層の材料と弾性層の材料の弾性率の差が大きすぎれば、二層の材料の界面応力もそれに応じて増大するため、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率を過度に超えないことが好ましい。いくつかの実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より20%以下高く(即ち、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率の1.2倍以下である)、他の実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より15%以下高い。いくつかの実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より10%以下高く、他の実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より5%以下高い。いくつかの実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より3%以下高く、他の実施例において、塑性層の材料の弾性率は、弾性層の材料の弾性率より1%以下高い。
【0033】
本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層の材料の選択可能な例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド又はナイロン(PA)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリブテン(PB)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリルスチレン(AS)、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びフッ素樹脂(FR)のうちの一種又は複数種の組み合わせ、又はそれらのうちの任意の二種又は二種以上の重合体若しくはそのモノマーを重合して形成されたブレンド重合体又はブロック重合体又は相互侵入網目重合体を含むが、これらに限定されない。
【0034】
いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルム100の弾性層120は、
図1の拡大部分に示すように、靭性支持体124及び靭性支持体に充填された弾性層基体123を含む。弾性層120の主な作用は、離型過程における弾性復元力を供給することであり、弾性層の靭性支持体124の作用は、弾性層120をより長時間使用できるようにその機械的強度を向上させることであり、弾性層基体123は、主に離型過程における弾性復元力を供給する。いくつかの実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より大きい。いくつかの実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高く(即ち、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率の1.2倍以下である)、他の実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より15%以下高い。いくつかの実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より10%以下高く、他の実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より5%以下高い。いくつかの実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より3%以下高く、他の実施例において、弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、弾性層基体の材料の弾性率より1%以下高い。いくつかの実施例において、塑性層と弾性層との間の界面応力をさらに低減するために、弾性層の靭性支持体は、塑性層と同様の材料を選択することができる。複合型離型フィルムの弾性層が弾性層基体及び靭性支持体を含む実施例において、弾性率を比較することにより適切な弾性層の材料及び塑性層の材料を選択する場合、塑性層の材料の弾性率と弾性層基体の材料の弾性率とを比較することができ、つまり、弾性層基体の材料の弾性率を弾性層の材料の弾性率として比較することができる。
【0035】
いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体は、高分子繊維材料で構成され、様々な構造を有することができる。いくつかの実施例において、弾性層の靭性支持体は、蜘蛛の巣状の細孔構造であり、ここで、細孔は、高分子微細繊維が重なり合って形成されるものである。他の実施例において、弾性層の靭性支持体は、短い高分子繊維材料で規則的に配列して構成され、ここで、短い高分子繊維は、互いに平行であることにより重なり合わない。他の実施例において、弾性層の靭性支持体は、短い高分子繊維材料で不規則に配列して構成される。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の高分子繊維材料の直径は、50nm~10μmの範囲内、又は100nm~5μmの範囲内、又は200nm~2μmの範囲内にある。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムであり、その表面の形態が蜘蛛の巣状の細孔構造であり、ポリテトラフルオロエチレン微細繊維の間に空隙が形成され、該細孔構造は、多くの微細繊維が絡み合って接続されて形成され、該空隙の直径は、50nm~10μmの範囲内にすることができる。いくつかの実施例において、PTFE膜の縦方向断面は、ネットワーク構造であり、細孔の三次元構造に網状連通、孔のはめ込み、チャネルの湾曲などの非常に複雑な変化があり、複数の細孔で1つのチャネルを構成する可能性があり、1つの細孔が複数のチャネルに接続される可能性もある。他のいくつかの弾性層の靭性支持体の材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド又はナイロン(PA)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリブテン(PB)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリルスチレン(AS)、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びフッ素樹脂(FR)のうちの一種又は複数種の組み合わせ、又はそれらのうちの任意の二種又は二種以上の重合体若しくはそのモノマーを重合して形成されたブレンド重合体又はブロック重合体又は相互侵入網目重合体を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の靭性支持体の材料は、塑性層と同じ材料を選択することができる。
【0036】
いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層基体は、任意の適切なエラストマーであってもよい。弾性層基体の材料は、例えば、ポリエステルエラストマー、プロピレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、シロキサン重合体、エポキシ重合体、シリコーン系重合体、有機フッ素系エラストマーなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、弾性層基体の材料は、シリカゲル、ゴム、シリコーンゴム、熱可塑性加硫ゴム(TPV)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステルゴム(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、T-NR-トランスポリイソプレンゴム(TPI)、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(TPB)、有機フッ素系熱可塑性エラストマー(TPF)、熱可塑性フェノール樹脂(Novalc樹脂)、熱可塑性塩素化ポリエチレン(TCPE)、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシラン、熱可塑性ポリ塩化ビニルエラストマー(PVC)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリオレフィンエラストマー(POE)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレン系熱可塑性ゴム(SEBS、SBS)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、EVM)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリアクリルゴム、フルオロシリコーンゴム及びフッ素含有エラストマーのうちの一種又は複数種の組み合わせ、又はそれらのうちの任意の二種又は二種以上の重合体若しくはそのモノマーを重合して形成されたブレンド重合体又はブロック重合体又は相互侵入網目重合体を使用してもよいが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施例において、本発明に係る靭性支持体及び弾性層基体を含む複合型離型フィルムの弾性層の製造は、1)弾性層基体の材料の反応性前駆体成分をそれぞれ計量し、割合で混合するステップと、2)弾性層基体の材料を硬化させる前に弾性層基体の反応性前駆体成分の混合物を靭性支持体の材料に浸漬するステップであって、使用される靭性支持体の材料が繊維構造であってもよく、多孔質高分子膜の形態であってもよいステップと、3)適切な反応条件を選択して、上記弾性層基体の材料の反応性前駆体成分が上記靭性支持体において重合反応を発生させ、かつ硬化して上記弾性層基体となることにより、複合型離型フィルムの弾性層の製造を完了するステップと、を含んでもよい。いくつかの実施例において、弾性層基体の反応性前駆体成分の混合物は、液状であり、該混合物を弾性層の靭性支持体に浸漬し、弾性層基体の反応性前駆体成分を靭性支持体中で硬化させて、本方法に開示された複合型離型フィルムの弾性層を成形する方法は、以下の複合材料成形プロセスのうちの一種又は複数種の組み合わせから選択することができる。ハンドレイアップ、噴射、巻き付き、樹脂トランスファー成形、真空注入、引き抜き、反応射出引き抜き、押し出し、編組引き抜き、ラミネーション、型押し、シートモールディングコンパウンドのプレス成形、バルクモールディングコンパウンドのプレス成形、射出成形、反応射出成形、プリプレグ成形、オートクレーブ成形、熱間巻き取り、遠心回転成形、ブロー成形及びスラッシュ成形等。
【0038】
図1に示すように、本発明に係る複合型離型フィルムのいくつかの実施例において、弾性層120の靭性支持体124は、弾性層120の下表面122の外に延伸して複数の突起126を形成することができる(明確に例示するために、
図1において弾性層120の下表面122での突起構造126は縮尺どおり示されず、拡大されている)。上記複数の突起126が弾性層の下表面122と材料槽200の底面との間に位置するため、弾性層120の下表面122と材料槽200の底面との間の接触面積が減少し、上記複数の突起126のみにより接触する。弾性層の下表面と材料槽の底面との間の接触面積を減少させることにより弾性層と材料槽の底部との間の粘着力を減少させて、離型過程において弾性層と塑性層が同時に硬化層によって引き上げられる変形過程に役立ち、変形時間を減少させることができ、引き上げにより弾性層が変形することにより、後続の塑性層から硬化層を剥離することに必要な弾性復元力を供給する。複数の突起はさらに、弾性層の下表面と材料槽の底面との間に形成される可能性のあるキャビティ負圧吸着作用を除去することができるという点において引き上げによる弾性層の変形に役立つため、弾性層の変形にさらに役立つことができる。
【0039】
光硬化3D印刷物体の解像度は、使用される光源の解像度により制限され、場合によっては、光硬化印刷物は、透明樹脂材料で印刷されても、その表面に依然として大量の画素点が表示されるため、印刷物の透明度に影響を与える。上記複数の突起により弾性層の下表面と材料槽の底面との間に気固界面が導入されるため、材料槽の光透過性底面を透過した入射光の一部が屈折し、該屈折により、マクロレベルで硬化層の各硬化画素点の境界のぼやけが発生し、印刷物がより透明になる可能性がある。
【0040】
いくつかの実施例において、上記弾性層の底面の靭性支持体の突起の製造は、1)弾性層基体の材料の反応性前駆体成分をそれぞれ計量し、割合で混合するステップと、2)弾性層基体の材料を硬化させる前に弾性層基体の材料の反応性前駆体成分の液体混合物を基材に塗布するステップ(いくつかの実施例において、基材はガラス又は他の適切な材料を選択することができる)と、3)靭性支持体の材料を弾性層基体の材料の反応性前駆体成分の混合物に塗布し、毛細管作用により、弾性層基体の材料の反応性前駆体成分の液体混合物が靭性支持体の空隙に浸透し、適切な割合の靭性支持体の材料を選択するとともに、重力作用により、その上表面が硬化後の弾性層基体によって覆われないことを確保することにより、硬化後の弾性層の基材から離れる表面に複数の靭性支持体の材料の突起を有することを確保するステップと、4)上記弾性層基体の材料の反応性前駆体成分が重合し硬化して弾性層基体となるように適切な反応条件を選択するステップと、5)硬化後の弾性層を基材から剥離し、複合型離型フィルムの弾性層の製造を完了するステップと、を含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、5μm~50μmの範囲に選択してもよく、いくつかの実施例において、複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、10μm~40μmの範囲に選択してもよく、いくつかの実施例において、複合型離型フィルムの塑性層の厚さは、20μm~30μmの範囲に選択してもよい。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の厚さは、10μm~8mmの範囲に選択してもよく、いくつかの実施例において、複合型離型フィルムの弾性層の厚さは、20μm~5mmの範囲に選択してもよく、いくつかの実施例において、複合型離型フィルムの弾性層の厚さは、50μm~5mmの範囲に選択してもよい。いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層の底面にある靭性支持体突起の高さは、100nm~20μmの範囲に選択してもよく、いくつかの実施例において、弾性層の底面にある靭性支持体突起の高さは、150nm~15μmの範囲にしてもよく、いくつかの実施例において、弾性層の底面にある靭性支持体突起の高さは、200nm~10μmの範囲に選択してもよい。
【0042】
本発明に係る複合型離型フィルムの塑性層及び弾性層(弾性層基体及び靭性支持体を含む)は、いずれも光透過性のものであり、特に説明しない限り、本発明における「光透過性」とは、印刷領域の光硬化性樹脂を照射して硬化反応を発生させるためのエネルギーに対して1%~100%の透過率を有することである。いくつかの実施例において、「光透過性」の材料又は素子は、印刷領域を照射するための光硬化エネルギーに対して少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の透過率を有する。「光透過性」の材料又は素子は、広い範囲の波長が透過可能であり、X線放射、紫外(UV)光放射、可視光放射、赤外(IR)放射及びマイクロ波放射に対応する波長を含むが、これらに限定されない。
【0043】
いくつかの実施例において、本発明に係る複合型離型フィルムの製造は、1)本発明に係る方法に基づいて、弾性層基体及び靭性支持体を含んでもよく、1つの表面に弾性層基体外に露出した複数の靭性支持体で構成された複数の突起を有する弾性層を製造するステップと、2)フィルム張設装置を使用して、弾性層の靭性支持体突起を有する表面を1つの基材、例えばガラスに固定するステップと、3)弾性層の靭性支持体突起を有しない表面に塑性層を敷設し、ローラなどの装置で塑性層を平坦化し、塑性層と弾性層との界面に気泡、しわなどの構造がないことを確保するステップと、を含んでもよい。いくつかの実施例において、上記ステップ2では、弾性層の靭性支持体突起を有する表面を、光硬化性樹脂を収容する材料槽の底部として直接使用できる基材に直接固定することができ、これらの実施例において、上記ステップ3が完了すると、製造された材料槽の底面の基材に張設された複合型離型フィルムは、光硬化3D印刷装置に直接使用することができる。光硬化性樹脂を収容する材料槽の底部として直接使用できる基材のいくつかの例は、ガラス、低鉄ガラス、サファイアガラス、石英、ソーダ石灰(BK7)アクリル酸、溶融シリカ、溶融石英、ゲルマニウム、ホウケイ酸、窒化ケイ素又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。他の実施例において、上記ステップ3が完了すると、製造された複合型離型フィルムは、ステップ2で使用された基材から剥離することができ、その後、光硬化3D印刷装置の材料槽の底部に配置して使用することができる。
【0044】
本発明に係る複合型離型フィルムは、ラジカル光硬化及びカチオン光硬化の付加製造方法に使用することができる。ラジカル光硬化性樹脂材料の例は、アクリル酸、メタクリル酸、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、スチレン、オレフィン、ハロゲン化オレフィン、シクロオレフィン、無水マレイン酸、オレフィン、アルキン、一酸化炭素、官能化オリゴマー(例えば、エポキシ、ウレタン、ポリエーテル又はポリエステルなどの、アクリレート又はメタクリレート基で官能化されたオリゴマー)及び官能化PEGを含むが、これらに限定されない。カチオン性の光硬化性樹脂材料の例は、エポキシ基及びビニルエーテル基を含むが、これらに限定されない。いくつかの例は、スチレン系化合物、ビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、ラクトン、ラクタム、環状エーテル(例えば、エポキシド)、環状アセタール及び環状シロキサンを含む。DLP/LCD光硬化印刷システムに対して、ビニルエーテル、アクリレート及びメタクリレート(これらの基を有するオリゴマーを含む)は好ましい。
【0045】
本発明の実施例の別の態様によれば、本発明に係る複合型離型フィルムの実施例を利用して光硬化3D印刷技術により三次元物体を製造する装置は、
a)印刷原料となる光硬化性液体樹脂を収容する材料槽であって、その底面が光透過可能であり、即ち、光透過性であり、材料槽の底面として使用可能な光透過性材料の例が、ガラス、低鉄ガラス、サファイアガラス、石英、ソーダ石灰(BK7)アクリル酸、溶融シリカ、溶融石英、ゲルマニウム、ホウケイ酸、窒化ケイ素又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない材料槽と、
b)上記材料槽の底部に配置され、光硬化成形表面から現在の硬化層を分離することにより、高速連続印刷機能を実現するために使用され、塑性層及び弾性層を含む本発明に係る複合型離型フィルムであって、上記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、印刷原料の液体樹脂との接触面であり、塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられる複合型離型フィルムと、ここで、いくつかの実施例において、弾性層は弾性層基体及び靭性支持体をさらに含んでもよく、該弾性層基体は靭性支持体の空隙に充填され、同時に靭性支持体は弾性層の下表面に複数の突起を有し、上記複数の突起は上記材料槽の底面と接触し、
c)成形テーブルであって、該成形テーブルと上記複合型離型フィルムの塑性層の上表面との間の空間が印刷領域である成形テーブルと、
d)上記印刷領域内の液体樹脂を照射して、照射された液体樹脂を硬化させて現在の硬化層を形成するための光源であって、光源は1種又は複数種の光源であってもよく、使用可能な光源の例は、白熱灯、蛍光灯、燐光又は発光灯、レーザ、発光ダイオード等又は上記光源のアレイを含むが、これらに限定されない光源と、を含み、ここで、いくつかの実施例において、光源は、装置のコントローラに接続され、硬化層パターンを形成できる操作可能な素子をも含み、硬化層パターンを形成できる素子の例は、デジタル光処理(DLP)を有するデジタル(又は変形可能)マイクロミラー装置(DMD)、空間変調器(SLM)又は微小電気機械システム(MEMS)レンズアレイ、LCD、マスク(フォトマスクとも呼ばれる)又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の実施例の別の態様に係る、本発明に係る光硬化3D印刷技術装置を使用して三次元物体を製造する方法は、
a)
図1に示すように、上記印刷領域は成形テーブル300と光硬化成形表面111を含む液体樹脂材料槽200とで定義される印刷領域を提供するステップであって、該液体樹脂材料槽200の底部は光透過可能であり、かつ塑性層110及び弾性層120を含む本発明に係る光透過性の複合型離型フィルム100が配置され、塑性層110の上表面111が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂400との接触面であり、塑性層の下表面112が弾性層120の上表面121に貼り合わせられるステップと、ここで、いくつかの実施例において、弾性層120は弾性層基体123及び靭性支持体124をさらに含んでもよく、該弾性層基体123が靭性支持体124の空隙に充填され、同時に靭性支持体124が弾性層の下表面122に複数の突起126を有し、上記複数の突起126が光透過性の材料槽200の底面と接触し、
b)上記印刷領域に光硬化性液体樹脂400を充填するステップと、
c)上記印刷領域をエネルギー700に曝露して現在印刷領域にある光硬化性液体樹脂400を硬化させて現在の硬化層を形成するステップであって、現在の硬化層が成形テーブル300に直接付着されるか又は前に完成した硬化層に付着されるステップと、
d)成形テーブル300により現在の硬化層が上に一定の距離を移動するように駆動されて、現在の硬化層と複合型離型フィルム100の塑性層110の上表面111との分離を実現するステップと、
e)三次元物体の印刷が全て完了するまでステップc)及びd)を繰り返すステップと、を含む。
【0047】
上記印刷ステップc)において、成形テーブル300が現在の硬化層を上に移動するように駆動すると、まず、塑性層110は、その上表面111と現在の硬化層との間の粘着力により現在の硬化層が上に移動することに伴って局所的な変形が発生する。弾性層の上表面121は、塑性層の下表面112との間の粘着力及び表面張力により同様に変形し、弾性変形がある程度まで発生すると、弾性層120の材料自体の反発力が塑性層の上表面111と現在の硬化層との間の粘着力を超えることにより、塑性層の上表面111が現在の硬化層から剥離され、弾性層120の弾性復元力は、塑性層110及び弾性層120を複合型離型フィルム100の初期状態に復元するように駆動する。周囲の液体樹脂400は、塑性層の上面111が現在の硬化層から剥離された後に生じた空間に迅速に還流することができ、次の硬化層の印刷を継続することができる。本発明に係る複合型離型フィルムの弾性層120の厚さは、塑性層110より大きいことにより、離型過程のために十分な弾性復元力を供給することを保証することができ、離型過程で発生した弾性変形が複合型離型フィルムの初期状態に迅速に復元することができることを確保する。同時に、弾性層120の靭性支持体124は内部の支持作用を提供し、弾性層120の機械的強度を強化し、その耐用年数を延長する。弾性層120の靭性支持体124の弾性層120の下表面122にある複数の突起126は、弾性層120の下表面122と材料槽200の底部との接触面積を減少させ、弾性層120が弾性変形を迅速に発生させることに役立ち、続いて弾性復元力を迅速に供給して離型を完了するとともに、突起構造126は、さらに、弾性層120の下表面122と材料槽200の底面との間に形成される可能性のある負圧吸着作用を除去することができるという点において引き上げによる弾性層120の変形に役立つため、弾性層120の変形をさらに促進することができる。複合型離型フィルム100の塑性層110は、優れた耐膨潤性を提供し、印刷原料の液体樹脂中の小分子が離型フィルム100に入ることを防止する。
【0048】
[実施例]
【実施例1】
【0049】
複合型離型フィルムの弾性層の製造
PDMS(Dow Corning、PDMS、Sylgard 184)を10:1(本体:硬化剤)の質量割合で均一に混合撹拌し、泡を除去し、スクレーパーでガラス基板に200μmを塗布し、次に50μmの靭性支持体の多孔質PTFE膜(深センgorestec科技有限公司、GT-050)を、塗布したPDMS表面に広げ、液状のPDMSは毛細管作用により、多孔質PTFE膜の空隙に浸透し、充填を完了する。体系全体をオーブンに入れて80℃で、120分間熱硬化を行って弾性層の製造を完了する。重力作用及び適切な材料使用量の配合割合のため、PDMSは、靭性支持体を完全に覆うことができないため、一部の靭性支持体がPDMSの上表面から露出して複数の微細構造の突起となる。
図2は、本実施例で製造された弾性層の電子顕微鏡写真であり、ここで糸状の構造はPTFE繊維であり、PTFE繊維間の空隙にPDMSエラストマーが充填される。
【実施例2】
【0050】
複合型離型フィルムの製造
実施例1で製造された弾性層をガラス基板から剥離し、弾性層の露出した靭性支持体突起を有する一面を光学ガラス上に敷設し、その両者を共にフィルム張設装置のクリップの下部クリップ片に固定し、塑性層(デュポン、FEP流延膜)を弾性層の上表面(即ち靭性支持体突起を有しない表面)に平らに敷設し、ローラを使用して塑性層を平坦化し、塑性層と弾性層との間に気泡、しわ等の構造がないことを確保する。クリップの上部クリップ片及び下部クリップ片を固定し、上部クリップ片及び下部クリップ片の周囲の余分な塑性層と弾性層の材料を除去し、フィルムの張設が完了した複合型離型フィルムが表面に被覆された光学ガラスクリップを得た。上記クリップは、光透過性であるとともに複合型離型フィルムを敷設した材料槽の底面となるように、対応する材料槽に直接取り付けることができる。
【実施例3】
【0051】
複合型離型フィルムと市販FEPの印刷離型試験
実施例2の方法に基づいて製造された3つの複合型離型フィルム及び3つの市販のFEP離型フィルム(型番F46、ポリフッ素新材料技術有限公司)をそれぞれLuxCreo
TM社のTP02プリンタのセット材料槽の底部に取り付け、LuxCreo
TM社のEM13樹脂原料を使用し、光強度15000、露光時間50秒の印刷パラメータに従って露光する。露光が終了すると、成形テーブルを持ち上げることにより、硬化層と離型フィルムとを分離し、引張試験機で離型の全過程を記録し、リアルタイムな引張力データを測定した。
図3に示すように、各試験に使用された離型フィルムを同じ位置で2回繰り返して印刷し、それぞれ3組の複合型離型フィルムの離型データ及び3組の市販のFEP離型フィルムの離型データを取得し、ここで離型データは、離型力、離型時間及び離型仕事(
図3における離型曲線の面積)を含む。
図3のデータから分かるように、本発明に係る複合型離型フィルムは、市販のFEP離型フィルムに比べて、離型過程において必要な離型力が小さく、離型時間が短く、離型過程の総仕事量がより少なく、離型効果性能が明らかに向上した。
【0052】
なお、以上の各実施例が本発明の技術手段を説明するためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。前述の各実施例を参照して本発明の技術手段を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術手段を修正するか、又はそのうちの一部又は全部の技術的特徴に対して同等置換を行うことができ、これらの修正及び同等置換は、対応する技術手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0053】
100 複合型離型フィルム
110 塑性層
120 弾性層
123 弾性層基体
124 靭性支持体
126 突起
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化3D印刷方法において現在の硬化層を光硬化成形表面から分離するための複合型離型フィルムであって、塑性層及び弾性層を含み、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられていることを特徴とする、複合型離型フィルム。
【請求項2】
前記弾性層は、弾性層基体及び靭性支持体を含み、該弾性層基体が靭性支持体の空隙に充填されている、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項3】
前記弾性層の靭性支持体は、前記弾性層の下表面に複数の突起を有する、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項4】
前記塑性層の材料の耐膨潤性は、前記弾性層の材料の耐膨潤性より優れる、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項5】
前記塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より高い、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項6】
前記塑性層の材料の弾性率は、前記弾性層の材料の弾性率より20%以下高い、請求項5に記載の複合型離型フィルム。
【請求項7】
前記弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の弾性率より高い、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項8】
前記弾性層の靭性支持体の材料の弾性率は、前記弾性層基体の材料の弾性率より20%以下高い、請求項7に記載の複合型離型フィルム。
【請求項9】
前記塑性層の厚さは、前記弾性層の厚さより小さい、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項10】
前記塑性層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項1に記載の複合型離型フィルム。
【請求項11】
前記弾性層基体の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン又はゴムを含む、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項12】
前記弾性層の靭性支持体の材料は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は多孔質フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項2に記載の複合型離型フィルム。
【請求項13】
前記弾性層の靭性支持体が前記弾性層の下表面に有する複数の突起の平均高さは、100nm~20μmの範囲にある、請求項3に記載の複合型離型フィルム。
【請求項14】
a.印刷原料となる光硬化性液体樹脂を収容する材料槽であって、その底面が光透過可能である材料槽と、
b.前記材料槽の底部に配置され、光硬化成形表面から現在の硬化層を分離するために使用され、塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムであって、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられる複合型離型フィルムと、
c.成形テーブルであって、該成形テーブルと前記複合型離型フィルムの塑性層の上表面との間の空間が印刷領域である成形テーブルと、
d.前記印刷領域内の液体樹脂を照射し、エネルギーを供給して現在の硬化層を形成するための光源と、
を含む、光硬化3D印刷のための装置。
【請求項15】
三次元物体を製造するための方法であって、
a.成形テーブルと光硬化成形表面を含む液体樹脂材料槽とで定義される印刷領域を提供するステップであって、該液体樹脂材料槽の底部は光透過可能であり、かつ塑性層及び弾性層を含む複合型離型フィルムが配置され、前記塑性層の上表面が光硬化成形表面であり、即ち、液体樹脂との接触面であり、前記塑性層の下表面が弾性層の上表面に貼り合わせられるステップと、
b.前記印刷領域に光硬化性液体樹脂を充填するステップと、
c.前記印刷領域をエネルギーに曝露して現在の硬化層を形成するステップであって、前記現在の硬化層が前記成形テーブルにより駆動されて光硬化成形表面から離れる方向に移動するステップと、
d.前記三次元物体の印刷が完了するまでステップb及びcを繰り返すステップと、
を含む、三次元物体を製造するための方法。
【国際調査報告】