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特表2023-509782スポーツボールの追跡のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(54)【発明の名称】スポーツボールの追跡のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20230302BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
A63B71/06 U
A63B71/06 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542321
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2021050387
(87)【国際公開番号】W WO2021148943
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/963,868
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002457
【氏名又は名称】トラックマン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】TRACKMAN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク トゥクセン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウンシュトルップ
(57)【要約】
ゴルフショットの軌道の潜在的な変更を決定するためのシステムは、ゴルファーのスイングに関連するスイングデータおよびゴルファーが打った複数のショットのそれぞれの軌道に関連する軌道データを感知するセンサアレイと、データリポジトリおよびプロセッサを含む計算配置であって、プロセッサが、スイングデータおよび軌道データをデータリポジトリに格納することと、ミスヒットを表す、ゴルファーが打ったショットを識別することと、ミスヒットとして識別されていないゴルファーが打ったすべてのショットに対するスイングデータおよび軌道データに基づいて出力データを決定することであって、出力データは、ゴルファーが達成可能な最適なショットを示す、決定することと、を実行するように構成された計算配置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフショットの軌道の潜在的な変更を決定するためのシステムであって、
ゴルファーのスイングに関連するスイングデータおよび前記ゴルファーが打った複数のショットのそれぞれの前記軌道に関連する軌道データを感知するセンサアレイと、
データリポジトリおよびプロセッサを含む計算配置であって、前記プロセッサが、
前記スイングデータおよび前記軌道データを前記データリポジトリに格納するステップと、
前記スイングデータおよび前記軌道データに基づいて出力データを決定するステップであって、前記出力データは、前記ゴルファーが達成可能な最適なショットを示す、決定するステップと、を実行するように構成される、計算配置と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサが、ミスヒットを表す前記ゴルファーが打ったショットを識別するように構成され、前記スイングデータが、前記ゴルファーが打った前記ショットの少なくとも一部に対するクラブ速度を含み、前記最適なショットが、ミスヒットとして識別されない前記ゴルファーが打った前記ショットの前記クラブ速度に基づいて決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スイングデータが、前記ゴルファーが打った前記ショットの少なくとも一部に対する、アタックアングル、クラブパス、動的ロフトおよびフェースアングルのうちの少なくとも一つを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記ゴルファーによるショットが標的領域内に着地する可能性を示す前記軌道データに基づいて、前記ゴルファーに対する精度スコアをさらに決定し、前記プロセッサが、前記ゴルファーが打った前記ショットの前記軌道と、前記最適なショットに関連付けられた軌道との間の一致の程度を示す前記軌道データに基づいて、前記ゴルファーに対する軌道スコアも決定する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記ゴルファーの精度スコアおよび前記ゴルファーの軌道スコアのうちの一つにプラスの効果を与えるであろう、前記ゴルファーのクラブのデリバリへの変更をさらに識別する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、ミスヒットを表す前記ゴルファーが打ったショットを識別するように構成され、前記出力データが、ミスヒットとして識別されない前記ゴルファーが打ったすべてのショットに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記計算配置が、
前記スイングデータおよび前記軌道データを前記データリポジトリに格納することと、
ミスヒットを表す第一のゴルファーが打ったショットを識別することと、
前記スイングデータおよび前記軌道データに基づいて出力データを決定することであって、前記出力データが、前記第一のゴルファーによって達成可能な最適なショットを示す、決定することと、
複数の追加のゴルファーの各々に対する、複数のゴルフショットに対するスイングおよび軌道データを含む、前記データリポジトリからの潜在的な第一の比較データを含む第一の訓練セットを作成することであって、前記第一の潜在的な比較データには、前記第一のゴルファーの前記スイングおよび軌道データに対応するものとして予め識別された、スイングおよび軌道データを有する前記追加のゴルファーのものと対応する、潜在的に比較上のゴルファーデータが含まれる、作成することと、
前記潜在的な比較データならびにスイング変更推奨および器具変更推奨のうちの一つの前後に前記第一のゴルファーの前記ゴルフショットの変化に対応するデータを使用してニューラルネットワークを訓練することと、
前記第一のゴルファーが受信したスイング変更推奨および前記器具変更推奨のうちの前記の同じ一つの受信前から受信後まで、前記第一のゴルファーのそれと同程度の進捗を示した前記第一の比較データで識別された前記ゴルファーのものを含む第二の訓練セットを作成することと、
前記第二の訓練セットを使用して前記ニューラルネットワークを訓練することと、を実行するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
スイング変更推奨および器具変更推奨のうちの前記一つがスイング変更推奨であるとき、前記出力データが、前記スイング変更推奨を示すデータと重ね合わされた前記第一のゴルファーのビデオを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
ゴルファーを訓練する方法であって、
前記ゴルファーのスイングに関連するスイングデータおよび前記ゴルファーが打った複数のショットに関連する軌道データをデータリポジトリに格納することと、
前記ゴルファーが打った前記ショットのいずれかがミスヒットを表すかどうかをプロセッサが判定することと、
前記スイングデータおよび前記軌道データに基づいて、前記ゴルファーが達成可能な最適なクラブのデリバリ、および最適な軌道を前記プロセッサによって決定することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記スイングデータが、前記ゴルファーが打った前記ショットの少なくとも一部に対するクラブ速度を含み、前記最適なクラブのデリバリが、ミスヒットとして識別されない前記ゴルファーが打った前記ショットに対する前記クラブ速度に基づいて決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スイングデータが、前記ゴルファーが打った前記ショットの少なくとも一部に対する、アタックアングル、クラブパス、動的ロフトおよびフェースアングルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ゴルファーによるショットが標的領域内に着地する可能性を示す前記軌道データに基づいて前記ゴルファーの精度スコアを決定することと、
前記ゴルファーが打った前記ショットの前記軌道と前記最適な軌道との間の一致の程度を示す前記軌道データに基づいて、前記ゴルファーの軌道スコアを決定することと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ゴルファーに対する前記精度スコアおよび前記軌道スコアのうちの一つにプラスの効果をもたらすであろう、前記ゴルファーのクラブのデリバリの変更を識別することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ゴルファーが達成可能な最適な軌道を、ミスヒットとして識別されない前記ゴルファーが打った前記ショットのすべてに対する前記スイングデータおよび前記軌道データに基づいて、前記プロセッサによって決定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ゴルフショットの軌道の潜在的な変更を決定するためのシステムであって、
スイングに関連するスイングデータおよび第一のゴルファーが打った複数のショットのそれぞれの前記軌道に関連する軌道データを感知するセンサアレイと、
データリポジトリおよびプロセッサを含む計算配置であって、前記プロセッサが、
前記スイングデータおよび前記軌道データを前記データリポジトリに格納するステップと、
前記スイングデータおよび前記軌道データに基づいて出力データを決定するステップであって、前記出力データが、前記第一のゴルファーによって達成可能な最適なショットを示す、決定するステップと、
複数の追加のゴルファーの各々に対する、複数のゴルフショットに対するスイングおよび軌道データを含む、前記データリポジトリからの潜在的な比較データを含む訓練セットを作成するステップであって、前記第一の潜在的な比較データは、前記第一のゴルファーの前記スイングおよび軌道データに対応するものとして予め識別された、スイングおよび軌道データを有する前記追加のゴルファーのものに対応する、潜在的に比較上のゴルファーデータを含む、作成するステップと、
前記潜在的な比較データおよび経時的な前記ゴルファーの進捗を表すスイングおよび軌道データを含む、前記複数の追加のゴルファーのそれぞれに対する前記データリポジトリからのデータを使用して、モデルを訓練するステップと、を実行するように構成される、計算配置と、を備える、システム。
【請求項16】
前記データリポジトリ内の前記データが、前記複数の追加のゴルファーからの前記データに時間的に関連付けられたスイングおよび器具変更の推奨を表すデータを含み、このデータが前記訓練データに含まれる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、ミスヒットを表す前記第一のゴルファーによるショットを識別するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記モデルがニューラルネットワークである、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権主張
本出願は、2020年1月21日に出願された米国仮特許出願第62/963,868号に対する優先権を主張するものである。上記で特定された出願の明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
今日の技術的に進化した世界では、スポーツボールを使用する選手は、スポーツボールの発射に関連する発射運動(例えば、クラブまたはバットのスイング、キックまたはスローイングの動きなど)だけでなく、スポーツボールの軌道に関する情報も提供する測定機器へのアクセスが増えている。
【0003】
効率的に改善するためには、これらの測定値および様々なパラメータを合成して、性能の最も効率的な改善を可能にするシステムを構築しなければならない。
【0004】
例えば、ゴルフでは、スイングの中の様々な要因と機器の選択との相互作用は、従来のコーチなどの任意の人間による監視および分析には複雑すぎる。まして任意の所定の一連の作用の潜在的な利益を定量化するために、任意の調整に対する機器と生体機械反応との間の相互作用を検討する際に、改善をもたらす一連の実践を決定することは、さらに複雑になり、ヒトの能力をさらに超える。
【発明の概要】
【0005】
本実施形態は、ゴルファーのスイングに関するスイングデータおよびゴルファーが打った複数のショットのそれぞれの軌道に関する軌道データを感知するセンサアレイと、データリポジトリおよびプロセッサを含む計算配置であって、プロセッサが、データリポジトリにスイングデータおよび軌道データを格納することと、ミスヒットを表す、ゴルファーが打ったショットを識別することと、ミスヒットとして識別されていないゴルファーが打ったすべてのショットに対するスイングデータおよび軌道データに基づいて出力データを決定することであって、出力データは、ゴルファーが達成可能な最適なショットを示す、決定することと、を実行するように構成された計算配置と、を備える、ゴルフショットの軌道の潜在的な変更を決定するためのシステムに関する。
【0006】
本実施形態は、スポーツボールを追跡し、選手のパフォーマンスを分析して、プロのスポーツコーチまたはインストラクタの必要性を排除または低減して効率的な改善のための計画を生成するためのシステムを提供する。本実施形態は、ボールの軌道ならびにボールを達成されたスポーツボールの軌道内に発射するスイング、キック、投げるなどのデータを測定する一つ以上のセンサを含むシステムを含む。システムは、経時的に動作して、発射運動(例えば、スイング、キック、投げるなど)に対する測定されたパラメータの影響を学習して、これらのパラメータに対する変化が結果として生じるスポーツボールの軌道に与える影響を計算し得る。この学習に基づいて、システムは、どの発射運動パラメータを変更するか、および選手のパフォーマンスを改善するために望ましい変化の程度を特定する。
【0007】
発射されたスポーツボールを追跡することによって、本実施形態は、一つ以上のパフォーマンススコアで、選手のパフォーマンスをベンチマークテストにかけて、異なる可能性のある発射運動および/または機器変更の選手のパフォーマンスへの影響をシステムによって計算することを許容し、選手のパフォーマンスに最もプラスの影響を与える変更を特定する計画の開発を可能にする。これらの計算は、複数のパラメータ間の物理学および相互作用が非常に複雑であるため、コーチまたはインストラクタによって実行することはできない。ヒトのコーチでは、変更によって影響を受ける可能性のある複数の追加パラメータについて、一つのパラメータ変更の複雑な結果を誰もが計算することはほぼ不可能であるため、より限定的な焦点が必要である。
【0008】
発射運動の変化がスポーツボールの軌道にどのように影響するかに関するシステムの学習の性質を理解するために、ゴルフからの以下の例を考慮する。
【0009】
右ききのゴルファーのクラブパスが、クラブフェースのフェースアングルの左にあるとして検出されると(例えば、いわゆる「オープンフェーストゥパス」)、ボールは一般に、右に傾いたスピン軸の周りのスピンで付与され(例えば、ボール追跡システムによって確認および測定され得る)、これは一般的に、右に湾曲するボールの軌道をもたらす。
【0010】
検出されたクラブ速度が他のすべてが同じままで増加する場合、検出されたボール速度およびスピン速度は概して増加する。これはまた、一般に、より高い、およびより長い検出されたボールの軌道をもたらす。
【0011】
クラブフェース上のボールのインパクトの検出された点が、クラブフェース上に投影されたクラブヘッドの重力の中心から離間している場合、検出されたボール速度は低下する可能性が高く、検出された軌道の曲率も影響を受け得る。
【0012】
検出されたクラブヘッドのアタックアングルが増加すると、発射後のボールの検出された軌道は、概してより急勾配(垂直に近い)となり、より高い検出されたボールの軌道をもたらす。
【0013】
しかしながら、ゴルフスイングの複雑な生体力学により、これらの変数のいずれか一つに対する変化は、個人によって大きく変化し得る他に対する変化をもたらす可能性が高い。本開示は、一つの変数に対処する変更の影響が自信を持って予測され得るように、複数のゴルファーの各々に対する経験モデルから構築され得る。例えば、ゴルファー自身および/または他の多くのゴルファーからの多くの過去のショットからの様々なパラメータ(例えば、生体力学的、機器関連など)に対応するデータは、ニューラルネットワークを訓練して、ゴルファーのパフォーマンスに関する任意の単一の変化の結果を予測するモデルを開発するために使用され得る。同様の問題は、他のスポーツ活動の発射運動の複雑さによって提起され、同様の方法で本実施形態によって対処される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態による、ゴルファーのために、ゴルファーのパフォーマンスを測定し、ゴルファーの特徴を決定し、ゴルファーのパフォーマンスを改善する一つ以上の影響力のある方法を決定し得るシステムを示す。
【0015】
図2図2は、実施形態による、ゴルファーの特徴を決定し、ゴルファーのパフォーマンスを改善するための影響力のある方法を決定する方法を記述するフローチャートを示す。
【0016】
図3図3は、ヒットされたゴルフボールの軌道を決定する事象の論理順序を示す。
【0017】
図4図4は、本実施形態によって支持されるゴルファーの改善サイクルを示す。
【0018】
図5図5は、ゴルファーのベンチマーキングおよびゴルファーの特徴のディスプレイの一例を示す。
【0019】
図6図6は、焦点を絞った実践計画に直接アクセスできる、優先度順にゴルファーの改善対象を表示する一例を示す。
【0020】
図7図7は、本実施形態の実装形態の一例を示す。
【0021】
図8図8は、同様の問題のあるグループのプレーヤーをカテゴライズする二つのベンチマーキングスコアの使用を示す。
【0022】
図9図9は、ゴルフショット追跡システムによって測定された、男性ゴルフ選手の平均クラブのデリバリおよびボール発射および着地条件を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的な実施形態は、以下の説明および関連する添付図面を参照してさらに理解されてもよく、同様の要素は、同じ参照番号が与えられる。
【0024】
以下では、ゴルフボールを打つゴルファーが本実施形態の一例として使用される。しかしながら、当業者であれば、スポーツボールの特定の軌道もしくは最終位置を達成する意図で、例えば、ボールを直接打つこと(例えば、バレーボールまたはサッカー)ボールをクラブもしくはバット(例えば、クリケット、野球、およびゴルフ)で打つこと、またはスポーツボールの投げによって、スポーツボールなどのスポーツ物体を選手が発射する、同じ原理が、様々な他のスポーツに適用され得ることを理解するであろう。
【0025】
本出願において使用される用語は、インパクト時にクラブとボールとの間の動的相互作用を説明するための座標系を定義する。しかしながら、当業者であれば、得られたデータにより、結果として得られたショットの質をヒトが理解し、それを改善するための方法の予測をすることができる限り、ゴルフボールとゴルフクラブとの間のインパクトの三次元特性(または、スポーツボールに影響を与える任意の器具とスポーツボールとの間の)を分析するための任意の他の座標系またはシステムが、本実施形態の範囲から逸脱することなく採用され得ることを理解するであろう。ゴルフボールとゴルフクラブの衝撃特性を分析する際に、クラブパス、アタックアングル、動的ロフト、フェースアングル、およびダイナミックライなどの変数が有用であり、原点がインパクト前のボールの位置である座標系に関して理解され得る。座標系の第一の軸は、例えば、ボールから意図された標的(例えば、標的方向)への水平線であってもよく、座標系の第二の軸は、ボールを通過する垂直線であり、第三の軸は、デカルト座標系を完了する標的方向に対して垂直な水平線である。
【0026】
当業者であれば、インパクトの時点でのゴルフクラブの三次元方向を考慮すると、ゴルフクラブのヒールでのクラブパスは、ゴルフクラブのトウでのクラブパスと同じではなく、したがって、ボールとクラブフェースとの間のインパクトの実際の位置のパスは、これらのパスのいずれとも異なり得ることを理解するであろう。しかしながら、これらの実施形態の目的のために、例えば、アタックアングルおよびクラブパス(以下に定義される)を決定する際の基準点として選択される点は、インパクト時のボールとクラブフェースとの間の動的関係を表す、クラブフェース上で選択された任意の基準点であってもよい。したがって、クラブフェースの中心がゴルフクラブの方向を決定するための基準点として選択されるか、クラブヘッドの幾何学的中心またはクラブヘッドの質量の中心が基準点として選択されるかにかかわらず、選択された基準点の移動は、インパクト時にボールに対して決定される。アタックアングルは、地平線に対して測定されたインパクトの直前のクラブヘッドの垂直方向として定義され、クラブパスは、標的方向に対して測定されたインパクトの直前のクラブヘッドの水平方向として定義される。同様に、当業者であれば、インパクト時にゴルフクラブフェースの三次元配向を考慮すると、ヒールのフェースアングルは、ドライバのような突出半径が顕著なクラブのトウのフェースアングルと同じではないであろうと理解するであろう。
【0027】
しかしながら、これらの実施形態の目的のために、例えば、動的ロフトおよびフェースアングル(以下に定義される)を決定する際の基準点として選択された点は、インパクト時のボールとクラブフェースとの間の動的関係を表す、クラブフェース上で選択される任意の基準点であってもよい。したがって、ゴルフクラブの方向を決定するための基準点として、クラブフェースの中心が選択されるか否かにかかわらず、クラブフェース上のボールとのインパクト点は、基準点として選択され、選択された基準点の向きは、インパクト時のボールに対して決定される。動的ロフトは、インパクト時のクラブフェース上の基準点におけるクラブフェース法線(例えば、クラブフェースに対して90度)の垂直角度として定義され、地平線に対して測定される、すなわち、インパクト時のクラブフェース上のロフトの量である。同様に、フェースアングルは、標的方向に対して水平面で測定される、インパクト時の基準点におけるクラブフェース法線(例えば、クラブフェースに対して90度)として定義される。
【0028】
図1は、ゴルファーの特徴を決定し、ゴルファーの能力を改善する最も影響力のある方法を特定するための第一のシステム100を示す。ゴルファー130は、ゴルフクラブ120をスイングし、ボールの軌道109上でゴルフボール110を発射する。システム100は、以下でより詳細に説明するように、スイングおよびショットのパラメータを記録する一つ以上のセンサ106を含む。
【0029】
スイングおよびショットのパラメータは、ゴルフボールの軌道およびボールのおおよその終了位置(すなわち、ボールが着地し、跳ね返り、停止まで転がった後のボールの最終的な静止場所)を予測するのに十分なボールデータを含む。当業者によって理解されるように、これは、例えば、カメラおよび/またはレーダベースのセンサシステム100(すなわちレーダとカメラ追跡とを組み合わせたシステム)を用いて全ボール軌道を測定することによって、行うことができ、またはシステム100は、ボールの速度、発射角度、発射方向、ゴルフボールの空気力学的特性および温度、圧力、風速、風向、地面の状態などの環境条件に関する所定の情報を使用して、ゴルフボールの軌道の計算を可能にするのに十分な精度を有するスピン速度およびスピン軸などのボールの発射条件を測定できる。
【0030】
ゴルフボールの軌道を決定することに加えて、システム100はまた、結果として生じるボール軌道と相関する少なくとも一つのスイングパラメータ、ゴルファーのスイング運動および/またはクラブのデリバリに関連するスイングパラメータ(複数可)も測定する。好ましい環境では、クラブのデリバリパラメータには、クラブの速度、クラブパス、フェースアングル、アタックアングル、クラブフェースの動的ロフト、およびクラブフェースのインパクト位置が含まれる。しかしながら、ゴルファーのスイングの実行中に、クラブヘッド、手、肩、腰、骨盤、および脊椎の位置および角度配向など、ゴルファー130の追加的なスイングパラメータは、関連するパラメータであり、また測定されてもよい。これらのスイング運動パラメータはまた、意図されるクラブのデリバリを生成する際に重要であり、またこれらの動作を確実に再現可能にする上で重要な、運動学的配列の一部である直線速度および角速度の両方を決定するために使用され得る。
【0031】
図3は、着地後にスポーツボールが跳ね返り、最終静止地点へと転がる際に、ボールの継続した移動と共に、軌道上にスポーツボールを打ち出す一連のイベントを示す。順序は、腕、脚、肩などのゴルファーの動きから始まり、それを通して、ゴルファーは、特定の配向、方向、および速度でクラブヘッドをボールに送達する。ゴルファーの動きに応答してのクラブヘッドの動きは、ゴルフクラブの構造(例えば、クラブヘッドの質量、シャフトの長さおよび剛性)にも影響される。したがって、クラブヘッドのクラブフェースは、ボールが初期のボールの発射条件で発射され、その後、いくつかの着地条件(例えば、角度、速度およびスピン速度)の下で、かつ、芝生条件(例えば、硬さ、衝撃領域の水平への角度など)に応じて、ボールが跳ね返りおよび/または最終静止位置に転がるまで空気中を空気力学的に飛ぶようにボールに衝突する。
【0032】
システム100では、センサ106は、例えば、カメラ106(a~b)および/またはレーダ106(c)を含み得るが、当業者によって理解されるように、任意のセンサあるいは、例えば、ライダ、超音波、音響または磁気センサ、加速度計などを含むボールの軌道およびクラブのデリバリ、ならびに/またはスイング運動パラメータのショットパラメータのいずれかを測定することができる、異なる種類のセンサの組み合わせを含み得る。パラメータの一部はまた、ゴルファー130、ゴルフクラブ120、ゴルフボール110に取り付けられたセンサ、またはこうしたセンサの任意の組み合わせのいずれかからのデータに基づいて決定され得る。しかしながら、可能な場合、センサ106は、ゴルファーに対して無接触であり、ゴルファーによる使用を容易にするために、ゴルフクラブまたはボールのいずれも変更を必要としない。
【0033】
システム100は、センサ106によって感知されたスイングおよびショットパラメータを記録および分析するプロセッサ105を含む。プロセッサ105は、記録されたパラメータ、かつゴルファーのパフォーマンス(既に生成されている場合)、ゴルファーの特徴(例えば、ゴルファーのスイングおよびショットの特徴に関連する履歴データ)に関連する格納されたデータに基づいて、ゴルファーのベンチマーキングを決定、生成または更新し、ゴルファーに、ベンチマーキングを改善するよう設計された改善点を推奨する。ベンチマーキング結果は、例えば、ディスプレイ107によってゴルファーに提示され得るが、音声装置、電子または印刷された報告書、または任意の他の適切な出力手段を介して送達されてもよい。
【0034】
ゴルファーのベンチマーキングは通常、特定のクラブの種類(例えば、6番アイアン)に対して行われるが、ゴルファーが打ったすべてのクラブの種類、またはウッド、ハイブリッド、アイアン、ロングアイアン、ショートアイアン、またはウェッジなどのクラブの一群に対する一般的なベンチマーキングである場合もある。典型的には、ベンチマーキングは、ゴルファーのクラブの種類(例えば、6番アイアンおよび7番アイアン)によって大きく変化しないため、ベンチマーク前に群内のクラブの種類を組み合わせることは、データ記憶および処理要件を減少させ、より効率的なシステム運用を可能にするため、望ましい場合がある。
【0035】
当業者によって理解されるように、カメラ106(a~b)は、視覚周波数領域および/または近赤外線もしくは赤外線領域で動作してもよい。カメラ106(a~b)は、カラーまたは単色であってもよく、録画中に適切な照明を確保するために、それと共に動作可能な光システムを含んでもよい。カメラは、典型的には、クラブのデリバリ、スイング運動パラメータ、およびボールショットパラメータを記録するために、100~10,000フレーム/秒で動作する。ゴルファーの手、腕、肩、腰の動きなどを測定し、スイング運動パラメータを決定するために使用されるカメラについては、これらの項目がクラブヘッドよりもゆっくりと移動しているために、30fpsなどの低速フレームレートが、採用され得る。
【0036】
当業者によって理解されるように、高フレームレートは、クラブヘッドとボールとの間の相互作用が観察されるべき場合に特に有用であり得る。なぜなら、このインパクトは、非常に短い時間枠にわたって発生する動的要素を含むからである。画像からクラブヘッドのボールとのインパクト時の位置および配向を検出するために、インパクト前に最小数のフレーム(例えば、2~3)が必要である。これらの検出は、ボールに接触する直前のクラブのデリバリを正確に観察するために、インパクト時間に対して十分に分散される必要がある。フレームはインパクト後にも使用され得るが、ボールとの衝突、およびおそらくは地面との衝突により、クラブヘッドは、ゴルファーのスイングに容易に関連しない別の経路へインパクト後に偏向され得る。典型的には、4~10フレームがクラブのインパクト前に所望され、次に、例えば、ゴルファーの最大クラブヘッド速度が150mphであると仮定して、カメラの視野およびフレームレートに対する制限を設定する。画像を使用して、発射されたボールの速度、方向、およびスピンも判定される場合、通常、正確なボール発射データを得るために、同様の数の4~10フレームが必要である。ボールとの正確なインパクト時間を決定するには、2000fps以上のフレームレートを使用することが望ましい。クラブとボールとの間の接触時間は、典型的には0.5msであり、これは、2000fpsで、ボールがクラブヘッドと接触するフレームを有することが保証されることを意味する。
【0037】
レーダ106(c)は、例えば、最大500ミリワットのEIRP(等価等方放射電力)の電力でXバンド周波数(例えば、10GHz)でマイクロ波を放射する連続波ドップラーレーダであってもよく、従って、近距離国際ラジエータに対するFCCおよびCE規制に準拠し得る。ただし、他の法域では、その他の電力レベルおよび周波数が、現地の規制に従って使用され得る。例示的な実施形態では、マイクロ波は、例えば、5~125GHzの間のより高い周波数で放射される。より低い物体速度でのより正確な測定のために、20GHz以上の周波数が使用され得る。相変調または周波数変調CWレーダ、多周波数CWレーダ、または単一周波数CWレーダを含む、任意の種類の連続波(CW)ドップラーレーダを使用してもよい。
【0038】
ライダなどの他の追跡装置は、可視または不可視の周波数領域のいずれかで放射線と共に使用され得ることが理解されよう。電流パルスレーダシステムは、レーダ装置の近くの物体を追跡する能力が制限される。しかし、物体がこれらのパルスレーダシステムからでなければならない距離は、時間と共に減少しており、減少し続けると予想される。したがって、これらの種類のレーダは、これらの動作に対してまもなく有効になり得、以下に記載される本開示のシステムにおけるそれらの使用が企図される。本出願を通して、ドップラー周波数スペクトルの使用に基づいて、物体の追跡が記述される。理解されるように、これらのドップラー周波数スペクトルは、使用される任意の種類のレーダまたはライダからのドップラースペクトルを指す。
【0039】
システム100は、当業者によって理解されるように、例えば、有線または無線接続データ記憶装置などを介して、カメラ106(a~b)および/またはレーダ106(c)(または複数のレーダ装置)を含み得る、センサ106と通信する一つ以上のプロセッサ105を含み得る、処理ユニットをさらに含む。一実施形態では、プロセッサ105は、センサ106に関連付けられたコンピュータを含む。プロセッサはまた、コードおよび履歴データを格納するための機械可読媒体を取り付けてもよい。プロセッサは、手持ち式装置、パーソナルコンピュータ、組み込みコンピュータであってもよく、または、クラウドもしくは任意の他の種類のリモートコンピューティング装置にも位置してもよい。
【0040】
図2は、例示的な実施形態によるプロセス200を示す。ステップ205では、ゴルファー130は、一つ以上のゴルフショットをする。各ゴルフショットについて、スイングおよびショットのパラメータは、システム100によって検出され、ステップ210で記録される。次に、記録されたデータをステップ220で分析して、ステップ220でゴルファー130のスイングおよびショット特性を決定する。プロセッサ105は、この分析中に、特定のショットを良く打ったと識別し、これらのよく打ったショットを、ゴルファー130の可能性を表すものとして識別すると同時に、あまり上手く実行されなかったショットをゴルファー130のエラーまたは不十分なスイングを表すものとして、識別し得る。
【0041】
典型的には、ボールがうまく打たれた時にボールをどれだけ遠くに、およびどれほど効率的に打てるか、ならびにこの種類のよく打たれたショットをどの程度確実に繰り返すかという観点の能力によって、ゴルファーは評価される。そのため、ステップ220で分析の一部に対して、ゴルファーの特徴を決定する際に(例えば、特定のショットの種類の再現性レベルを決定する際に)、すべてのショットが使用されるが、他の分析(例えば、力がボールに送達される効率を評価する)では、特定のショットが省略され得る(例えば、十分打てなかったとして識別されるショット)。ステップ220で決定したゴルファーの特徴は、好ましくは、ゴルファーと共有される。これは、次のような形態を取ることができる。「中位の高さの軌道を有する左から右にカーブする158mの距離のボールを打った。50%のショットが、標的ラインの右側に寄ってしまう。」これは、図5に示すようにグラフィカルに示されてもよい。
【0042】
システム100による測定値からゴルファーの特徴を決定することが望ましいが、ゴルファーの特徴は、ユーザが入力してもよい。例えば、「私のクラブの速度は、6番アイアンで通常80mphで、ショットの形状はハイフェードで距離は150mです」などである。
【0043】
システム100はまた、ショット分析を実施する際に、ゴルファーからの入力を組み込み得る。ステップ218では、ゴルファーは、意図を入力してもよく、例えば、ゴルファーは、特定の距離、特定のショット形状(例えば、ドロー、フェードまたはストレート)、特定の高さ(例えば、低、中、または高)、または特定のスピンレート(例えば、低、中、または高)、またはこうした意図の任意の組み合わせを打つことの意図を入力してもよい。ゴルファーの意図218が利用できない場合、システム100は、例えば、意図として、同じクラブを使用した以前のよく打ったショットと同じ距離で標的ラインに着地する、反復可能なよく打ったショットを想定し得る。
【0044】
ゴルファー130はまた、ゴルファーの能力に影響を与える制限(例えば、柔軟性の低下、強度の低下など)を有してもよい。これらは、ステップ219でシステム100に入力されてもよい。制限はまた、ゴルファーの身長、腕と脚の長さ、および一般的な体寸法に関する情報に関連する場合がある。
【0045】
ステップ215では、ゴルファー130は、クラブの種類(例えば、ドライバ、3番ウッド、2番ハイブリッド、7番アイアン、54度ウェッジなど)、シャフトのフレックス(例えば、レギュラー、ソフト、スティッフ、エキストラスティッフ)および/またはボール情報(例えば、プレミアムボール、2ピースボール、レンジボールなど)など、選手が使用する器具に関する詳細を入力し得る。情報はまた、クラブヘッド質量、静的ロフト、重心の位置、慣性モーメント、反発係数、ライ角度、シャフトの長さ、重量、フレックスのプロファイル、グリップの種類、および/またはボールの重量、反発係数、摩擦特性などのより詳細な情報を含んでもよい。
【0046】
システム100はまた、センサ106からのデータに基づいて、ステップ215で器具情報を自動的に決定し得る。例えば、クラブの種類または少なくともクラブの分類(例えば、ドライバ、ウッド、ハイブリッド、アイアン、ウェッジ、またはパター)は、例えば、機械学習ベースのネットワークまたは他の種類の分類技法を使用してなされた分類に基づいて、センサ106(a~b)によって撮影された画像から器具を識別することによって決定され得る。
【0047】
ステップ220で決定されたゴルファーの特徴、ステップ215で決定された任意の器具の詳細、およびステップ218で入力された任意のゴルファーの意図情報、ならびにステップ219で入力された任意のゴルファーの制限に基づいて、プロセッサ105は、最適な、まだ達成可能な、ゴルファーのショットパラメータ、ならびにステップ230でこうした最適なショットに関連付けられたクラブのデリバリおよびスイング運動パラメータを決定する。ゴルファーが達成可能なものを決定する際に、システム100は、どの態様のゴルファーのスイングが他のものよりも変更しやすいかに関する先験的知識を含む場合がある。
【0048】
例えば、フェースアングル、クラブフェース上のインパクト位置、ゴルファーのアタックアングルまたはクラブパスを変更するのは比較的簡単であり得るが、一方で、クラブ速度を変更するのはより困難であり得る。特定の変更が実施され得る容易さのこのランキングは、以下でより詳細に説明するように、システム100が生成する推奨に影響を与えるであろう。当業者であれば理解するように、これらの特性の補正の容易さは、ゴルファーのスイングの任意の態様における改善のための余地の量に基づいて、システム100によって調整され得る(すなわち、ゴルファーが提案を実施し、現在のスイング特性と達成可能な最適との間の差が減少すると、他の特性への変更がより有望であるとランク付けされ得る)。
【0049】
ステップ235では、システム100は格納された情報のデータベースにアクセスして、ゴルファーにとって最適なショットを決定する。例えば、システム100は、ステップ220でゴルファーに対して決定された特徴に可能な限り合致するショット形状で、所与のクラブ速度でボールを効率的に打つ方法に関連する情報を、ステップ235でデータベースから取り出し得る。このデータベースは、例えば、プロのゴルファーからの何千ものショットに対応するデータを含んでもよく、および/またはステップ220で決定されたゴルファーの特徴に合致するようにパラメータを調整することによって、現在のゴルファーを可能な限り厳密に一致させるように適合される人工モデルゴルファーを含んでもよい。ゴルファーの最適なショットは、ニューラルネットワークを利用して、データベース235内の多くの格納された最適な軌道(例えば、異なる種類の器具を使用する複数のゴルファーからの複数のショットに関するデータを含む)のいずれが、ステップ220で決定されたゴルファーの特徴に最も厳密に合致するかを識別することによって、またはステップ220で決定されたゴルファーの特徴を考慮して最も早期に達成可能な最適な軌道に関して学んだ履歴データに基づいて(例えば、パフォーマンスの変化が同様の開始点から練習などに対する特定の推奨事項に従った場合の同様の関連する特徴を有すると識別されたゴルファーのパフォーマンスの変化の分析に基づき、)、ステップ230で決定されてもよい。
【0050】
最適なものとして識別される軌道は、ヒトが効果的に考慮することが不可能である多くの要因に依存し得る。例えば、ドライバーショットの場合、最適なボールの軌道は、一般的に、ボールの最終位置に対する標的線からの広がりを最小化しながら、ボールの発射位置から最終静止場所までの距離を最大化するボール軌道とみなされる。しかしながら、一部の選手は、ボールの最終静止位置までの距離よりも、キャリー距離(例えば、ボールが最初に地面に接触する点までの発射位置からの距離)を高く評価したい場合がある。この好みは、ユーザによって入力され得る。
【0051】
最終静止位置の最適な軌道は、芝生条件に応じて変化する。非常に硬い芝生条件では、最も長い最終静止位置は、しばしば、より低い飛行を伴う軌道と関連付けられ、それによって、キャリー距離を最大化するより高いボールの軌道と比較して、より浅い着地角と関連付けられる。ドライバにとって最適な軌道は、環境条件にも依存する。空気の密度が低い高地では、最適な軌道は、一般的に、低い高度での最適な軌道と比較して、高い発射角を有する。また、風の状態は、最適な軌道に影響を与えるであろう。リンクコースをプレイする場合、風は一般的に非常に強い。これにより、空中における時間が少なく、より頂点高さが低く、ボール軌道が低くなり、そこでは風速が典型的にはより低く、より最適である。しかし、木々がボールに影響を与える風速を制限するパークコースをプレイする場合、ボールの軌道がより高い方が最適であり得る。ドライバ以外のクラブの種類での目的、したがって最適な軌道は、必ずしもショット距離を最適化するものではない。
【0052】
例えば、これらの他のクラブの種類でのショットの種類は、主に、ある標的領域に到達し、ボールが終わる場所を制御するために、ゴルファーのフルスイングで、ある距離だけボールを打つことである。打つ距離(例えば、ボールの現在の位置からボールの所望の最終静止場所までの距離)および芝生および環境条件に応じて、最適な軌道は、ゴルファーにとって変化するであろう。例えば、グリーンが非常に柔らかい場合、跳ね返りおよび転がりの量を最小化するように、高いボールの軌道を有することが好ましい場合がある。一方で、グリーンが非常に硬い場合、ボールをグリーンの外に着地し、ボールを跳ね返させてグリーン上に転がすことが好ましいことが多い。最適なショットを定義する最適な軌道を定義することは、非常に複雑な問題であり、ヒトが実施できない、ゴルファー、器具、環境条件および芝生条件などに関する多くの変数を考慮に入れた、多くの複雑な計算を通常は伴う。
【0053】
ステップ240でゴルファーのパフォーマンスのベンチマークを決定する際、1)230で決定した最適なショット(図5~6では、これは軌道スコアと呼ばれる)と比較した、ゴルファーの実際のショット形状(例えば、上述のように十分打てなかったショットを場合によって省略して)、および2)同じショットをゴルファーが実行できる再現性(図5~6では、これは精度スコアと呼ばれる)の二つの異なる態様が一般的に考慮される。ステップ230で決定される最適なゴルフショットは、ステップ220で決定されるゴルファーの特徴に対応するショットと異なっていてもよい。例えば、ゴルファーが、常にドライバをクラブフェースのヒールに衝突させる場合、ボールの速度が最適より遅くなるだけでなく、ゴルファーの特徴に反映された実際のショットの形状は、ヒールの衝突位置による水平ギア効果のため、フェードショットとなる可能性が高いが、一方で、最適なショットの形状は、ストレートショットであり得る。ベンチマーキングはまた、ボールを一貫して標的上または標的領域内に着地するゴルファーの能力を反映する採点を含んでもよい。
【0054】
図5は、ディスプレイ107上でゴルファーに提供されるフィードバックの実施例を示す。この場合、ゴルファーのパフォーマンスのベンチマーキングは、軌道および精度の二つのパラメータに反映される。さらに、最適な軌道およびキャリー/合計の数字は、実際の軌道およびキャリー/合計の数字に隣接して示されている。最後に、散布図が示され、この例では、多くのショットがターゲットの左側よりも右側にミスしていることを示す。
【0055】
ステップ220で決定されたゴルファーの特徴およびステップ230で決定されたゴルファーの最適なショットに基づいて、スイングモデル245は、ゴルファーのスイング運動およびクラブのデリバリの特徴に対して較正される。次に、プロセッサ105は、どのパラメータがゴルファーのパフォーマンスのベンチマーキングに最もプラスの影響を与えるかを決定することができる全てのパラメータおよび/またはスイングの変化をスイングモデル内で調整することによって、潜在的な改善250を分析する。次に、どの変更がゴルファーがより簡単に達成できるかもことによると考慮しつつ、パラメータまたはスイングのそれぞれの変化についてベンチマーキングのパフォーマンスの潜在的な改善を比較する。推奨される改善の結果は、図6に示すように、ステップ250でゴルファーに提示され得る。推奨される変更には、(a)最もプラスの影響を与える変更のみ、(b)ベンチマークにプラスの影響を与えるすべての変更、または(c)ベンチマークにプラスの影響を与える一つ以上の選択された変更を含めることができる。
【0056】
図6では、軌道スコアおよび精度スコアの両方を示す。したがって、全体的な潜在的な改善を決定する際に、二つのスコアが組み合わされる。この組み合わせは、様々な方法で行われてもよい。簡単なアプローチは、二つのスコアに類似した重みを与えることである。これは、総合パフォーマンススコアが二つのスコアの合計または平均であり得ることを意味する。より多くの、または異なるサブスコアを有する他の採点機構も行われてもよく、または代替的に行われてもよい。ただし、改善の推奨をランク付けできるように、サブスコアを総合スコアに組み合わせることが望ましい。
【0057】
あるいは、改善の複数の分類の各々は、独自の採点機構を有してもよい。例えば、一つの分類は、ランキングのための軌道スコアのみを使用する効率/軌道であってもよく、別の分類は、改善の順位のための精度スコアのみを使用する精度であってもよい。その後、ゴルファーは、これらの分類から、どのゲームの態様を改善するかを決定することができる。
【0058】
ステップ250で推奨事項を決定する際に、推奨されるパラメータの変更またはスイングの変更を達成するためにゴルファーに必要とされる期待相対努力を考慮に入れ得る。また、システム100によって自動的に、またはゴルファー130によって、分析から一部の変更が省略されてもよい。例えば、ゴルファーは、器具の変更を省略するか、またはその逆で、器具の変更についてのみ推奨を表示するように求めることができる。後者は通常、プロのフィッティングインストラクターが行う。
【0059】
ステップ250で推奨される改善を決定するための代替的なアプローチは、過去に同様のスイング運動またはクラブのデリバリの失敗があった複数のゴルファーの履歴データ、ならびにそれらが経時的にどれほど良好に、どれほど速く、そして改善のためどのような変化を生じさせたかに基づいて、ステップ245でスイングモデルが人工知能システムを介して決定される場所であり得る。こうしたシステムの有効性は、システムによってより多くのデータが記録され使用されるにつれて、経時的に改善されるであろう。
【0060】
ゴルファーに推奨される改善は、特定のパラメータまたはスイングの動きを変更するためのステップ260で決定される、個人的に集中した訓練計画につながり得る。ステップ260で決定される訓練計画は、当業者によって理解されるであろう、別の種類のクラブまたは別の点で異なるロフトまたは仕様を有するクラブなどの、ステップ265における異なる器具に対する提案によって補足され得る。推奨はまた、ステップ268で、ゴルファーによって示されるものなどのスイングの失敗にプラスの影響を与えることが知られている個人用ドリルの提案を含んでもよい。
【0061】
本実施形態のさらなる態様は、選手の特徴および推奨を使用して、ゴルファーの一式のクラブ、すなわち、いわゆるセットメイクへの変更をゴルファーに提案する。ゴルフのルールにより、選手は最大で14本のクラブを使うことができる。しかし、14種類以上のクラブがある。そのため、すべてのゴルファーは、どの種類のクラブ(ドライバ、ウッド、ハイブリッド、アイアン、ウェッジ、パターなど)を持っていくかを決定し、選択されたクラブのそれぞれのクラブの仕様(ロフト、長さ、重量など)を選択する必要がある。どの距離でウッドからハイブリッドへ、そしてハイブリッドからアイアンへ切り替えるかの決定は、多くの場合感触に基づく。ステップ220で決定されたゴルファーの特徴、およびステップ235でデータベースから取得された情報、ならびにステップ245で決定されたスイングモデルに基づいて、システム100は、ステップ240で決定されたベンチマークのパフォーマンスを全ゴルファーのクラブにわたって最大化するために、様々な距離について、ゴルファーのクラブおよび/またはクラブ選択への変更をゴルファーに提案し得る。この態様では、システム100は、典型的なゴルフのラウンド中に各クラブで打つショットの予想される数についての情報を使用し得る。
【0062】
ゴルファーは、典型的には、ある程度のギャップがある一定の距離を打つ能力を考慮する。例えば、ゴルファーは、フルスイングのキャリー距離で10mの間隔を置いて隣接するクラブを有することを好む場合がある。しかし、これはドライバの距離からロブウェッジのような最も短いクラブまで、14のクラブすべてでは通常可能ではない。通常、ゴルファーは、最長のアイアンとおそらく最長のハイブリッドまでのクラブの間で10メートルの間隔のようなものを有し、その後、残りの長いクラブにはより大きな距離の間隔を選択することを好むであろう。システム100は、類似の論理を用いてセットメイクを決定することができる。
【0063】
セットメイクについてのこの推奨は、ゴルファーが自分のクラブのすべてを打っていない場合でも行うことができる。実際には、これらのショットがすべて単一のクラブの種類を使用している場合だとしても、システム100によってわずか数ショットのみが分析された後、セットメイクが行われてもよい。これは、例えば、ゴルファーが6つのアイアンを打つ方法は、4つのアイアンまたは9つのアイアン、またはドライバおよびウェッジのような他のクラブを打つ方法と非常に類似しているため、可能である。これは、パッティングとショートチップショットを除く、ほぼすべての種類のゴルフショットを行うための体動が根本的に同じであるためである。図9では、男子のツアープロゴルファーのクラブのデリバリと、ボールの発射とフライトデータの平均を示す。隣り合うクラブのクラブデリバリとボール発射データは、非常に相関していることが観察された。これは、あるクラブのデリバリとボールの飛行詳細を、別のクラブのデータに基づいて予測できることを示している。これは、高度にアマチュアのゴルファーにとっても同様であることが判明している。しかしながら、通常、適切なセットメイク分析は、ドライバと一つ以上のアイアンの両方を打つことを伴う。
【0064】
さらに、本開示の別の態様は、特定の一つの器具がゴルファーのゲームにプラスの影響を与えるかどうかを判定するために、ゴルファーのスイング運動およびクラブのデリバリ特性のデータベースを使用することである。これは、共通の特定のスイング特性を有するゴルファーに有用なクラブを識別するために使用することができる。例えば、一製品は、これらのゴルファーのスイング特性を考慮すると、これらのゴルファーのパフォーマンスにプラスの効果を与える可能性が高いと識別され得る。
【0065】
図7には、例示的な実施形態の実装が示されている。図7では、すべての円は、測定値、パラメータ、または特性を表し、長方形のボックスは、所与の一組の入力から出力を生成するアルゴリズム、プロセス、またはネットワークである。
【0066】
図7は、図3に示すボールの軌道へのゴルファースイングの論理シーケンスの全モデルの実施例を含む。実施形態によっては、図7に示すモデルの使用部品のみを考慮する。
【0067】
図7は、スイング運動(S)310からクラブのデリバリ(C)311およびクラブのスイング特性(pCs)320を計算できる、スイングモデル(SM)330を含む実装300を示す。図7はまた、クラブのデリバリ311からボールの発射条件(L)312を計算できる衝突モデル(CM)331、クラブ衝突特性(pCc)321、およびボール衝突特性(pBc)322も含む。次に、ボールの飛行モデル(BFM)332は、ボールの発射条件312、ボールの空気力学的特性(pBa)323、ならびに風速および風向、空気の密度、温度および気圧などの環境条件(cE)324からボールの軌道(T)313を計算する。次に、跳ね返りおよび転がりモデル(BRM)333は、ボール(F)314の最終静止位置を、ボールの軌道313から、特に、着地速度、着地角度および着地スピンレート、ならびにターフ条件(cT)325から計算する。
【0068】
以下では様々な実施形態を説明する。上記の異なるモデルの説明から、実施形態の複数の変形は、記述されたモデルを使用して、またはパラメータを直接測定することによって、達成できることは明らかである。例えば、ボールの発射条件312を知っている場合、ボールの軌道313および最終静止位置314は、ボールの飛行モデル332ならびに跳ね返りおよび転がりモデル333を使用して、合理的な精度で計算され得るため、ボールの軌道313および最終静止位置314を直接決定または測定する必要はない。いくつかの実施形態では、パラメータを直接測定することと比較して、モデル332、333を使用することが好ましく、他の実施形態では、パラメータを測定することが好ましい。
【0069】
本実施形態の第一のステップは、ゴルファーの特徴(GC)315を生成するために使用されるスイングの特徴付け(SC)340である。これは、典型的には、スイング運動310および/またはクラブのデリバリ311データを、複数のショットについて記録することによって行われる。さらに、ボールの発射条件312、ボール軌道データ313、およびボール314の最終静止位置は、同じショットにも使用され得る。このプロセスには、よく打ったショット、あまりよく打てなかったショット、または十分打てなかったショットのインテリジェントフィルタリングが含まれる。
【0070】
一実施例では、ゴルファーの特徴315は、「6番アイアンの82mphのクラブ速度、アタックアングル-3.2度、3度のフェーストゥパス、クラブパス+1.4度」によって記述される。
【0071】
スイングの特徴付け340はまた、例えば、標準偏差または90%信頼区間または他の統計的記述に関して記載されるゴルファーの可変性の統計的記述を含んでもよい。いくつかの実施形態では、それほどよく打てなかったショットを特徴付けることも望ましい場合がある。エリートゴルファーは一般的に、良いショットをわずかに改善するよりも、悪いショットをゲームから排除することに関心を持つ。そのため、それほどよく打てなかったショットに対するスイング運動と、クラブのデリバリとの特徴付けは、これらのゴルファーにとって特に興味深いものである可能性がある。
【0072】
ゴルファーにとって最適なショット316を決定するために、ショットの最適化350を実行する。ショットの最適化350は、ゴルファーの特徴315を入力として使用する。ゴルファーの特徴315は、スイング特性340から決定することができるか、あるいはユーザ入力特性(UIC)341または他の所定の方法に基づいてもよい。当然のことながら、ゴルファーの特徴315は、スイング特性340およびユーザ入力特性341の組み合わせであってもよい。
【0073】
最適なショット316を決定するとき、システム100は、ユーザの意図(UI)345を使用し得る。ユーザの意図345は、望ましいショットの種類(例えば、高いショット、低いショット、フェード、ドローなどの好ましいショット形状)、または特定のキャリー距離または着地の範囲、スピンレートなどのような他の特性のユーザの意図として表現され得る。
【0074】
ショットの最適化350はまた、ボールの発射条件312、ボールの軌道313および/または最終静止位置314を使用してもよい。上述のように、これらは、利用可能な測定値に応じて、衝突モデル331、ボールの飛行モデル332、および跳ね返りおよび転がりモデル333から計算され得る。
【0075】
最適なショット316は、様々な方法で表され得る。これは、最適なスイング運動 Sopt、クラブのデリバリ Copt、ボールの発射条件 Lopt、ボールの軌道 Topt、および/または最終静止位置Foptを記述するパラメータで表現されてもよい。好ましい実施形態では、最適なショット316は、例えば、クラブのデリバリパラメータ(例えば、クラブ速度、クラブパス、アタックアングル、フェースアングル、動的ロフト、動的ライ、インパクト位置など)に対する一つ以上の最適な値、ならびにボールの発射条件パラメータ(例えば、スピン速度、発射角、発射方向、スピンレート、スピン軸など)に対する最適な値の一つ以上からなる、最適なクラブのデリバリ Coptおよび最適なボールの発射条件Loptによって記述される。
【0076】
一実施形態では、ショットの最適化350は、衝突モデル331、ボールの飛行モデル332、ならびに跳ね返りおよび転がりモデル333を使用して、ゴルファーの特徴315に近く、かつゴルファーによって達成可能であると判定される様々なクラブのデリバリから、様々なボールの軌道および最終静止位置を計算する。多くの様々なボールの軌道および最適な軌道のデータベースから、ゴルファーの特徴315に最も近い最適なショットが見つかる。最適なクラブのデリバリおよび軌道の一例を図9に示す。これは、男子のツアープロゴルフプレーヤの平均を表す。ショットの最適化350の一部であるデータベースは、図9に示すことに類似のプロのゴルファーからの数千ものクラブのデリバリおよびボールの発射条件から構成され得るため、あらゆる種類のクラブ、あらゆる種類のクラブ速度、およびあらゆる種類の様々なショット形状を網羅している。データベースはまた、効率的な衝突のみを考慮するよう構成される衝突モデル331によって完全にまたは部分的に置き換えられてもよい。
【0077】
ベンチマーキング360は、ゴルファーの実際のボールの発射条件312、ボールの軌道313および/または最終静止位置314を、最適なショット316に対応するデータと比較することによって行われる。ベンチマーキング360はまた、ゴルファーのスイング運動310および/またはクラブのデリバリ311を使用して、対応する最適なデータと比較してもよい。ベンチマーキング360は、高度では、スイング運動(S)310とSoptとの比較であり、クラブのデリバリ(C)311とCopt、ボールの発射条件(L)312とLopt、ボールの軌道(T)313とTopt、および/または最終静止位置(F)314とFoptとの比較である。
【0078】
ベンチマーキング360の結果は、ベンチマーク317である。ベンチマーク317は、ベンチマーク317を定量化することが可能な一つ以上のスコアQで表現されることが好ましい。好ましい実施形態では、二つのスコアが計算される。ゴルファーが、通常、ゴルファーのよい打ったショットのみを使用して、最適なショットの軌道をどの程度うまく達成できるかを表す軌道スコアQtrajectory、および通常、ゴルファーからのすべてのショットを使用して、ゴルファーが、意図された標的で、ボールを終了させることが、どの程度うまくできるかを表す、精度スコアQprecisionである。
【0079】
ゴルファーが毎回最適なショットを繰り返すことができる極端な場合では、ベンチマークスコアは、スケールに応じて、図5および図6のように100のスコアのように最大となる。
【0080】
ゴルファーのベンチマークスコア317を使用して、ゴルファーを分類してもよい。図8では、達成された軌道および精度スコアに基づいて、ゴルファーの分類が行われる。この分類は、すべてのゴルファーのクラブで、いく人かのゴルファーで行われてもよく、または同様のクラブ速度を有するゴルファーに細分することができる。この種類のゴルファーの分類は、どの種類のサービスまたは製品がどの種類のゴルファーに利益をもたらすかを理解するのに役立ち得る。
【0081】
ゴルファーに推奨される改善370を決定するために、ボールの軌道および最終静止位置を決定するすべての様々なパラメータを試験して、各パラメータまたはパラメータの任意の組み合わせがベンチマークスコア317にどの程度影響を与えるかを決定する。これは、例えば、ゴルファーの実際の値から、最適なショット316に対応する値に各パラメータを調整し、ベンチマークスコア317の変化を計算することによって行うことができる。これは、ゴルファーからのすべてのショット、またはゴルファーからのショットのサブセット上で行うことができる。試験するパラメータは、例えば、ゴルファーのスイング運動SまたはクラブのデリバリC、クラブのスイング特性pC、クラブの衝突特性pCcおよび/またはボールの衝突特性pBcを含み得る。
【0082】
数学的に推奨を決定するための計算は、dQ/dPを計算することによって行われてもよく、dQは、パラメータ(またはパラメータのグループ)Pを実際の値から、最適なショット316に対応するゴルファーの個人最適値Popt(dP=Popt-P)に変更する際の、ベンチマークスコアQ317の変化である。
【0083】
ベンチマークスコア317にプラスの影響を与えるパラメータ変更(dQ>0)はすべて推奨され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、推奨は、各パラメータ変更がベンチマークスコア317を改善すると予想される量に従ってランク付けされる。一つの実施形態では、ベンチマークスコア317の最大の改善をもたらす変化のみが推奨される。すなわち、「最も大きな影響をもたらす変化の一つは何か、つまり、費用に見合う最高の価値は何か」である。
【0084】
推奨は、スイング運動またはクラブのデリバリの変更など、特定のカテゴリー内の変更のみを表示するようにフィルタリングすることができ、装置の変更など、他の領域の変更は推奨しない。また、推奨は、クラブのシャフトの仕様、クラブのヘッドモデルの仕様、ボールの種類の仕様など、器具のパラメータ変更のみを表示するように制限されてもよい。後者の状況は、フィッティングセッションにとっては典型的であり、ゴルファーが実際にゴルフクラブをスイングする際に、用具がゴルファーに適している。
【0085】
推奨は、図6の例に示すものと類似しており、ここで、最も影響の大きいパラメータとして「スピンロフト」が識別されており、最適になれば、ベンチマークスコア317が最も増加する。図6では、あまり影響力のない推奨であるが、それでも顕著なプラスの影響も提案されている(例えば、スイング方向、インパクト位置の変更など)。「スピンロフト」のような特定のパラメータを改善するための推奨は、ゴルファーの一貫性および測定公差の両方における自然変動を反映する、最適な値および許容範囲(例えば、スピンロフトは、25.5度+-1度以内である必要がある)と関連付けられ得る。許容範囲はまた、ゴルファーのスキルレベルを反映するように調整されてもよい。
【0086】
特定のパラメータを改善する推奨は、ゴルファーによって達成されるパラメータの平均値を変更することに向けられてもよく、また、ゴルファーによって達成される平均実値が最適値と等しい場合でも、パラメータの変動性を減少させるように向けられてもよいことに留意されたい。多くの場合、平均および変動性の両方を改善することが推奨される。
【0087】
推奨の一例は、運転手によるゴルファーのアタックアングルを平均0度から平均+5度に変更することであり得る。システムは、この変更から生じると予想される改善をさらに計算し得る。例えば、システムは、特定の欠陥が除去または最小化される場合、ゴルファーは、11ヤードの増加したキャリー距離および5点のベンチマークスコア317(例えば、0~100のスケール)の改善を達成し得ることを計算し得る。ゴルファーが推奨に従うこの種の動機は、インストラクタまたはコーチによって提供されることはできないが、例えば、ゴルファーによる多くのショット、およびおそらくは他の何百ものゴルファーによるショットを処理するために必要なすべての計算を行うことができるプロセッサを備えたシステムが必要である。
【0088】
追加的な実施形態は、ヒトのコーチからは利用できない固有の出力をユーザに提供する。例えば、ゴルファーによるスイングのビデオは、スイング変更推奨を実施するために行われる、異なる身体部品の位置決めの変化を示すデータと重ね合わされてもよい。例えば、ビデオは、(例えば、グラフィックまたは別個のビデオ画像を重ね合わせることによって)ボールに対する足の望ましい再配置を示して、アタックアングルの望ましい変更を達成するか、または別の望ましい変更を達成するために肩または肘が続く新しい経路を示し得る。システム100によってそのように推奨される変更も記録されてもよく、その後のパフォーマンスの変化がスイング変更推奨と関連付けられ得るように、データはこの情報とタグ付けされた。当業者であれば、システム100はまた、これらの提案されたスイング変更が、実際にゴルファーによって実装された程度を測定するために、選手のその後のゴルフショットに対応するデータを測定し、記録し得ることを理解するであろう。このデータはまた、スイング変更推奨に関連付けられてもよく、経時的なゴルファーのパフォーマンスにおいて測定された変化に相関してもよい。
【0089】
当業者によって理解されるように、これにより、様々な生体認証およびスイング特性を有する様々なゴルファーからの複数のショットを有するデータベースの構築が可能になり、その結果、ニューラルネットワークは、特定のゴルファーにとって改善をもたらす可能性が最も高い変更をより正確に識別し、所与の推奨の実施に関連付けられた潜在的な改善を定量化するように訓練され得る。例えば、図6に示すデータを受信するゴルファーは、提案された変更を実装してもよく、ゴルファーのパフォーマンスにおけるその後の変化が測定され、記録される(また、推奨に応答して、ゴルファーの実際の物理的スイングの変化も記録している間に)。
【0090】
また、システム100は、ゴルファーに提案された関連する焦点を絞った練習の時間および結果を追跡してもよい。次に、このデータがデータベースに格納され、同じまたは類似の提案を受信したこのゴルファーおよびその他全てのデータ(例えば、一つ以上の選択された特徴を共通して有する任意の選択されたゴルファーのサブセット)が、予測された結果を実際に得られたものと比較するニューラルネットワークを訓練するために使用され得る。これにより、ニューラルネットワークは、何らかの示唆によるプラスの変化の可能性をより大きくまたは小さく示すゴルファーの特徴を識別し、提案された変化のランキングおよび定量化、ならびに特定のゴルファーのゲームに対するそれらに関連する潜在的な影響を改善することができる。さらに、焦点を絞った練習データを確認することによって、ニューラルネットワークは、特定の練習レジメンを任意の所与のゴルファーに対してより効果的でないもののうちの多くに与えるゴルファーの特徴を識別し得る。
【0091】
当業者は、実施形態が、有益である焦点を絞った練習のための特定の推奨の識別までずっと進行する必要はないことも理解するであろう。上述の分析に基づいて、例えば、ボールの打撃、ゴルファーまたはコーチにおける最も影響力のある変化の一つ以上を単に識別するシステム100は、練習の効率を改善するためにこの変更を行う手段を選択し得る。そのようなシステムが、最適なショットの軌道に関するデータをゴルファーに提供する場合、ゴルファーは、提案された改善から生じるボールの飛行の実際の変化を理解するので、これはなお更有益である。最後に、システムは、ヒトによって計算できないより多くのデータを提供するために、最適なショットに基づいて上述のベンチマークを計算し得る。
【0092】
当業者であれば、実施形態のシステムは、様々なパラメータを組み合わせて分析し、これまでは達成できなかった多くの要因の微妙な相互作用から生じるデータを生成して、スポーツ選手が、異なる行動方針によって取得可能な定量的結果を、助言およびコーチングのヒトの提供者を通しては入手できない新規の方法で理解できることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、レーダの種類および個々のゴルファーに対するパフォーマンスの変化を示すことができる履歴データとともに画像ベースのスポーツボール追跡システムによって生成されるこのデータの大部分を使用して、ニューラルネットワークを訓練して、ヒトの心の能力をはるかに超える方法で多数の変数間の関係を脱離し、全く新しいクラスのデータを生成することができることを理解するであろう。本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ制限されることが意図される、その範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な変更がなされてもよい。
図1
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図9
【国際調査報告】