(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】焼入システムおよび焼入方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20230303BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20230303BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C21D9/00 H
C21D9/00 J
C21D9/00 G
C21D1/18 N
C21D1/18 F
C21D1/42 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534194
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2021082266
(87)【国際公開番号】W WO2021197119
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010235699.5
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222009
【氏名又は名称】上海精智実業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JINGZHI INDUSTRY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101,Block D,Building 11,128 Xiangyin Road,Yangpu District Shanghai 200433,China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】梁 冰
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲てい▼
(72)【発明者】
【氏名】周 偉
(72)【発明者】
【氏名】孟 西陵
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼ 南建
【テーマコード(参考)】
4K042
【Fターム(参考)】
4K042AA14
4K042BA13
4K042DA01
4K042DB01
4K042DD04
4K042DE02
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
本発明は、焼入システムおよび焼入方法を提供する。当該焼入システムは、ワークを挟持するための挟持ツールであって、前記ワーク(4)を空間内において移動するように駆動できる挟持ツールと、誘導コイル部(81)を含み、前記ワーク(4)が前記誘導コイル部(81)の中心を通過させるように、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整して前記ワーク(4)の焼入れを完了することが可能な焼入れツールと、を含む。当該焼入方法は上記の焼入システムを用いてワーク(4)を焼入れする方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼入システムであって、
ワーク(4)を挟持するための挟持ツールであって、前記ワーク(4)を空間内において移動するように駆動できる挟持ツールと、
誘導コイル部(81)を含み、前記ワーク(4)が前記誘導コイル部(81)の中心を通過させるように、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整して前記ワーク(4)の焼入れを完了することが可能な焼入れツールと、を含む焼入システム。
【請求項2】
前記誘導コイル部(81)は、
前記ワーク(4)を加熱するための誘導コイル(811)と、
環状構造で、前記誘導コイル(811)と同軸に設けられたスプレーリング(812)であって、前記スプレーリング(812)内には収容キャビティが設けられており、前記収容キャビティは、焼入れ液を前記収容キャビティに搬送して前記ワーク(4)を噴霧するための油圧ポンプに連通するスプレーリング(812)と、を含む請求項1に記載の焼入システム。
【請求項3】
前記誘導コイル部(81)は、誘導コイル取付部(813)をさらに含み、前記誘導コイル(811)は前記誘導コイル取付部(813)内に取り付けられ、前記スプレーリング(812)は前記誘導コイル取付部(813)と同軸に設けられ、且つ前記誘導コイル取付部(813)に固定的に接続されている、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項4】
前記スプレーリング(812)の内輪側壁には、前記収容キャビティに連通するスプレー孔(8121)が開口している、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項5】
前記焼入れツールは、前記誘導コイル(811)の温度を検出するための温度センサをさらに含む、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項6】
前記焼入れツールは、第1のロボット(82)をさらに含み、前記誘導コイル部(81)は、前記第1のロボット(82)の出力端に設けられ、前記第1のロボット(82)は、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整できる、請求項1に記載の焼入システム。
【請求項7】
前記挟持ツールは、
取付部(1)と、
前記取付部(1)に固定的に取り付けられている第1の挟持部(2)と、
前記取付部(1)に取り付けられ、且つ前記第1の挟持部(2)に対する距離が調整できる第2の挟持部(6)と、を含み、
前記第1の挟持部(2)および第2の挟持部(6)は、前記挟持ツールにワーク(4)を挟持するために使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の焼入システム。
【請求項8】
前記挟持ツールは、浮動部(3)をさらに含み、前記第2の挟持部(6)は、前記浮動部(3)に固定的に取り付けられ、前記浮動部(3)は、前記取付部(1)に取り付けられ、且つ前記第2の挟持部(6)の前記第1の挟持部(2)に対する距離を調整するために、前記取付部(1)に対して浮動できる、請求項7に記載の焼入システム。
【請求項9】
前記挟持ツールは、第2のロボット(7)をさらに含み、前記取付部(1)は、前記第2のロボット(7)の出力端に設けられ、前記第2のロボット(7)は、前記取付部(1)を空間内において移動するように駆動できる、請求項8記載の焼入システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の焼入システムを用いてワーク(4)を焼入れする焼入方法であって、焼入れの時に、挟持ツールは、前記ワーク(4)が誘導コイル部(81)を通過させるように駆動し、焼入れツールは、前記ワーク(4)が前記誘導コイル部(81)の中心を通過させるように、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整するステップを含む焼入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年3月30日に中国特許庁に出願され、出願番号202010235699.5の中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、焼入加工の技術分野に関し、例えば、焼入システムおよび焼入方法に関する。
【背景技術】
【0003】
焼入れはワークの力学性能を改善する重要な処理プロセスである。誘導焼入れ(induction quenching)は、焼入れプロセスの一つとして、電磁誘導の原理を利用してワーク内に渦電流を発生させてワークを加熱する。
【0004】
従来技術では、ワークに対して誘導焼入れを行う必要がある場合、一般的にワークを誘導コイルに通過させ、誘導コイルによってワークに対する加熱を実現する。誘導焼入れの時に、ワークと誘導コイルの一方が静止し、他方が静止部材に対して移動することにより、誘導コイルがワークに対する加熱を完了させる。
【0005】
しかし、いくつかの複雑な空間曲線形状のロッド状ワーク、例えば自動車スタビライザバーに対して、誘導焼入れを行う場合、自動車スタビライザバーの空間構造が複雑であるため、誘導コイルを静止させてワークが誘導コイルを通過するように移動させるか、またはワークを静止させて誘導コイルがワークを通過するように移動させるか、誘導焼入れが完了した後にそのロッド状ワークの折り曲げ箇所に対する焼入れ効果が低く、ワークの焼入れ品質に影響を与える。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一つの目的は、関連技術に存在する複雑な空間曲線形状のロッド状ワークに対する誘導焼入れ効果が悪いという技術的問題を解決するために、焼入システム及び焼入方法を提供することである。
【0007】
一実施例において、焼入システムを提供し、当該焼入システムは、
ワークを挟持するための挟持ツールであって、前記ワークを空間内において移動するように駆動できる挟持ツールと、
誘導コイル部を含み、前記ワークが前記誘導コイル部の中心を通過させるように、前記誘導コイル部の姿勢を調整して前記ワークの焼入れを完了することが可能な焼入れツールと、を含む。
【0008】
一実施例において、焼入方法を提供し、当該焼入方法は、上記の焼入システムを使用してワークを焼入れし、焼入れの時に、挟持ツールは、前記ワークが誘導コイル部を通過させるように駆動し、焼入れツールは、前記ワークが前記誘導コイル部の中心を通過させるように、前記誘導コイル部の姿勢を調整するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施例1に提供された焼入システムの構造模式図である。
【
図2】本開示の実施例1に提供された挟持ツールの使用時の構造模式図である。
【
図3】本開示の実施例1に提供された挟持ツールがワークを挟持する際の模式図である。
【
図4】本開示の実施例1に提供された挟持ツールの構造模式図である。
【
図5】
図4の第2の挟持部を隠蔽した構造模式図である。
【
図6】本開示の実施例1に提供された浮動部に取り付けた第2の挟持部の構造模式図である。
【
図7】本開示の実施例1に提供された挟持ツールの一部の構造模式図である。
【
図8】本開示の実施例1に提供された浮動部の構造模式図である。
【
図9】本開示の実施例1に提供された焼入れツールの構造模式図である。
【
図10】本開示の実施例1に提供された誘導コイル部の一つのビューの構造模式図である。
【
図11】本開示の実施例1に提供された誘導コイル部の別のビューの構造模式図である。
【
図12】本開示の実施例1に提供されたスプレーリングの構造模式図である。
【0010】
図面において、
1、取付部;11、ガイドロッド;12、制限板;13、第2の制限ブロック;131、第2の当接ブロック;
2、第1の挟持部;
3、浮動部;31、第1の制限ブロック;311、第1の当接ブロック;3111、第1の逃げ溝3;312、接続ブロック;32、穿設部;321、ガイド孔;33、第1の制限ブロック取付部;
4、ワーク;
5、ゼロ復帰機構;51、タイロッド;511、第1の当接フランジ;512、第2の当接フランジ;
6、第2の挟持部;
7、第2のロボット;
81、誘導コイル部;811、誘導コイル;812、スプレーリング;8121、スプレー孔;8122、入液管;813、誘導コイル取付部;
82、第1のロボット。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本実施例は、複雑な空間曲線形状のロッド状ワークに対する誘導焼入れの品質を向上させるために、焼入システムを提供する。
【0012】
図1を参照するように、当該焼入システムは、挟持ツールおよび焼入れツールを含む。ここで、挟持ツールは、ワーク4を挟持するために使用され、ワーク4を空間内において移動するように駆動でき、挟持ツールは、誘導コイル部81を含み、ワーク4が誘導コイル部81の中心を通過させるように、誘導コイル部81の姿勢を調整してワーク4の焼入れを完了する。
【0013】
一実施例において、焼入システムは、挟持ツールおよび焼入れツールの移動を制御協調するための制御装置をさらに含む。
【0014】
具体的には、本実施例では、自動車スタビライザバーを焼入対象ワークとして紹介し、自動車スタビライザバーは、バネ鋼で製造されたねじり棒ばねであり、その形状がほぼ「U」型であり、複雑な空間曲線形状を有し、複数箇所の折り曲げ部を有する。本実施例に提供される焼入システムを用いて自動車スタビライザバーを焼入れする時、挟持ツールを用いて自動車スタビライザバーを挟持し、挟持ツールによって自動車スタビライザバーが空間内において移動させるように駆動し、自動車スタビライザバーを誘導コイル部81に等速で通過させる。自動車スタビライザバーが誘導コイル部81を通過する過程において、焼入れツールによって誘導コイル部81に対して姿勢を調整することで、自動車スタビライザバーが折り曲げ箇所に誘導コイル部81を円滑に通過することができ、同時に自動車スタビライザバーが通過する位置を誘導コイル部81の中心位置とし、即ち自動車スタビライザバーが誘導コイル部81を通過する時、誘導コイル部81内に位置する一部の軸線は誘導コイル部81の軸線と重なり、それにより自動車スタビライザバーの各位置の焼き入れ後の硬度、焼き入れ層の深さ及びワークの各部位の焼き入れ効果の一致性を確保する。
【0015】
無論、自動車スタビライザバーの一部の位置を選択的に誘導焼入れすることも可能である。
【0016】
具体的には、
図2と
図3を参照するように、本実施例に提供された挟持ツールは、取付部1と、第1の挟持部2と、第2の挟持部6とを含み、第1の挟持部2および第2の挟持部6は、挟持ツールにワーク4を挟持するために使用される。具体的には、第1の挟持部2は取付部1に固定的に取り付けられ、第2の挟持部6は取付部1に取り付けられ、且つ誘導焼入れの時にワーク4の熱膨張変形量に適応するために、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が調整可能である。
【0017】
挟持ツールが部品取り、焼入れ、部品放出等の工程における移動を実現しやすくするために、本実施例では、挟持ツールはさらに第2のロボット7を含み、取付部1は第2のロボット7の端部に固定的に取り付けられ、第2のロボット7の移動により取付部1を空間内において移動するように駆動させ、部品取り、焼入れ及び部品放出等の工程を実現する。
【0018】
一実施例において、第1の挟持部2と第2の挟持部6はいずれもエアクランプノズルである。エアクランプノズルは非常に成熟した関連技術であり、ここで説明を省略する。ワーク4を把持する必要がある場合、エアクランプノズルの2つの挟持指が開いてワーク4を把持することができ、構造を把持した後に2つの挟持指が閉じてワーク4をクランプすることができる。
【0019】
ワーク4を把持する時、第2のロボット7の移動により取付部1をワーク取り出し位置に移動させ、且つ第1の挟持部2と第2の挟持部6のクランプノズルを開いてワーク4を把持し、続いて第2のロボット7は取付部1を駆動して加工位置に移動させ、誘導コイル部81によってワーク4に対して誘導焼入れを行う。
【0020】
誘導コイル部81はワーク4を焼入れする時、挟持ツールはワーク4を挟持しており、第2のロボット7はワーク4を誘導コイル部81の中心位置に等速で通過させるように移動し、第1の挟持部2または第2の挟持部6は誘導コイル部81の位置に進行すると、その対応する挟持指が開かれ、誘導コイル部81を回避する。
【0021】
一実施例において、第1の挟持部2と第2の挟持部6のうちの一つの挟持指が開いた後、ワーク4は一つの挟持点のみが残り、ワーク4に対する挟持が不安定になることを回避するために、本実施例では、取付部2に少なくとも2つの第1の挟持部2が設けられる。
【0022】
誘導焼入れの過程中、誘導コイル部81は、ワーク4を加熱してワーク4を膨張変形させることにより、ワーク4のサイズを自身の延在方向に大きくし、ワーク4の温度が冷却されると、ワーク4のサイズは初期状態に復帰する。本実施例において、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が調整可能であり、熱膨張によりワーク4のサイズが大きくなると、ワーク4の熱膨張変形量に適応するために、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が大きくなり、ワーク4の温度が冷却されると、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が小さくなり、ワーク4の変形に適応し、且つワーク4に安定したサポートを提供する。
【0023】
図4を参照するように、ワーク4の変形は、時間とともに直線的かつ連続的に変化する過程であり、その変化幅が小さいので、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離の調整をワーク4の変形に適合させるために、本実施例では、挟持ツールは浮動部3も含み、第2の挟持部6が浮動部3に固定的に取り付けられ、浮動部3が取付部1に取り付けられ、且つ第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離調整のために、浮動部3が取付部1に対して浮動できるようにする。具体的には、本実施例では、浮動部3の浮動方向は、第1の挟持部2と第2の挟持部6とを結ぶ方向と一致している。
【0024】
浮動部3の設置により、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離は、第2の挟持部6の浮動により調整を実現し、さらに第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離はワーク4の変形に伴って微調整することができ、挟持ツールはワーク4に安定したサポートを提供すると同時に、ワーク4の焼入れ加工過程における変形量に自己適応することができ、誘導焼入れの加工品質を向上させる。
【0025】
図5と
図6を参照するように、浮動過程に浮動部3が浮動方向にずれることなく、常にワーク4を安定したサポートを提供するために、取付部1にはガイドロッド11が設けられ、浮動部3がガイドロッド11に穿設され、且つガイドロッド11に沿って往復浮動できる。
【0026】
同時に、浮動部3に対して浮動限界位置を制限するために、浮動部3がワーク4の変形に伴って浮動する時に慣性による過剰に浮動することを防止し、ワーク4に対する挟持の安定性に影響を与え、本実施例では、ガイドロッド11は取付部1の端面から延び、浮動部3の一端は取付部1の端面に当接するまで浮動することができ、即ち取付部1の端面は浮動部3の第1の限界位置であると同時に、ガイドロッド11の端部、即ちガイドロッド11の取付部1から離れた端面の一端に制限板12が設けられ、浮動部3の他端は制限板12に当接するまで浮動することができ、即ちガイドロッド11の端部の制限板12は浮動部3の第2の限界位置である。浮動部3は、ガイドロッド11に沿って第1の限界位置と第2の限界位置との間で浮動可能であり、浮動部3が第2の限界位置に向かって浮動すると、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が大きくなり、浮動部3が第1の限界位置に向けて浮動すると、第2の挟持部6の第1の挟持部2に対する距離が小さくなる。
【0027】
一実施例において、ガイドロッド11は、ガイド過程中の安定性を向上させるために、少なくとも2本設けられている。それに応じて、浮動部3には複数のガイドロッド11に1対1で対応するガイド孔321が設けられ、ガイドロッド11はそれに対応するガイド孔321内に穿設される。
【0028】
勿論、他の実施例では、取付部1に第1の挟持部2と第2の挟持部6の接続方向と平行するガイドレールが設けられ、ガイドレールにガイドレールに沿って往復摺動可能なスライダが設けられ、浮動部3がスライダに固定的に取り付けられ、ガイドレールスライダ機構によって浮動部3の浮動を実現し、浮動部3の浮動をガイドする。浮動部3を制限するために、同時にガイドレールにそれぞれ第1の限界位置と第2の限界位置に対応する制限部が設けられる。ガイドレールスライダ機構は摺動過程における摩擦力が小さく、スライダは小さな作用力だけでガイドレールに対して摺動することができるため、浮動部3の感度が比較的高く、ワーク4の変形によりよく適応する。
【0029】
図7を参照するように、本実施例において、挟持ツールが毎回ワーク4を掴む時に掴み位置の一致性を保証するために、挟持ツールは取付部1に設けられるゼロ復帰機構5をさらに含み、ゼロ復帰機構5は、浮動部3が取付部1上の位置を変化できないように、浮動部3を取付部1に固定することができ、それにより第2の挟持部6が毎回ワーク4を掴む時の掴み位置の一致性を保証する。
【0030】
具体的には、ゼロ復帰機構5はタイロッド51を含み、タイロッド51は、取付部1に当接して浮動部3を浮動できないように、または浮動部3から離脱して浮動部3を浮動可能となるように、浮動部3を選択的に引っ張ることができる。
【0031】
一実施例において、タイロッド51は取付部1に対して伸縮することができ、タイロッド51の端部に第1の当接フランジ511が設けられ、第1の当接フランジ511は、タイロッド51が後退すると、第1の当接フランジ511が浮動部3を取付部1に当接するまで引っ張って浮動部3を浮動できなく、タイロッド51が伸び出すと、第1の当接フランジ511が浮動部3から離脱し、浮動部3が浮動可能となるように配置される。
【0032】
図7と
図8を参照するように、浮動部3に第1の当接フランジ511と係合する第1の制限ブロック31が固設され、第1の当接フランジ511は、浮動部3を取付部1に当接させ、または第1の制限ブロック31から離脱させて浮動部3を浮動させることができるように、第1の制限ブロック31を選択的に引っ張ることができてる。
【0033】
具体的には、浮動部3は、垂直に設けられた穿設部32と、第1の制限ブロック取付部33とを備えた「L」型の一体成形構造であり、ガイド孔321は、穿設部32に設けられ、穿設部32の一方側が取付部1の端面に当接することができ、他方側が制限板12に当接することができる。
【0034】
第1の制限ブロック31は、「L」型を呈し、垂直に接続された第1の当接ブロック311及び接続ブロック312を含み、接続ブロック312は第1の制限ブロック取付部33に垂直に設けられ、第1の当接ブロック311は接続ブロック312の第1の制限ブロック取付部33から離れた一端から接続ブロック312に垂直に延び、第1の当接ブロック311に第1の逃げ溝3111が設けられ、タイロッド51は第1の逃げ溝3111を通過し、このとき第1の当接フランジ511は第1の当接ブロック311と第1の制限ブロック取付部33との間に位置し、第1の当接フランジ511は選択的に第1の当接ブロック311にしっかりと当接し、または第1の当接ブロック311から離脱することができる。
【0035】
第1の当接フランジ511が第1の当接ブロック311にしっかりと当接すると、第1の当接フランジ511は、タイロッド51の後退に伴って第1の当接ブロック311を引っ張ることができ、浮動部3を第1の限界位置まで移動させて、且つ穿設部32を取付部1の端面に当接させるため、浮動部3の浮動を防止する。タイロッド51が伸び出すと、第1の当接フランジ511は第1の当接ブロック311から離脱し、この時、第1の当接フランジ511は第1の当接ブロック311との間が一定の距離を有し、第1の制限ブロック取付部33との間も一定の距離を有し、即ち第1の当接フランジ511と浮動部3との間は接触せず、ワーク4の変形に適応するように、浮動部3はガイドロッド11に沿って往復浮動できる。
【0036】
一実施例において、
図7を参照するように、タイロッド51が過剰に伸び出して第1の当接フランジ511が第1の制限ブロック取付部33に当接するによって、浮動部3が一方向にのみ浮動できることを防止するために、本実施例では、取付部1に第2の制限ブロック13が設けられ、タイロッド51に第1の当接フランジ511と間隔で設けられた第2の当接フランジ512が設けられ、タイロッド51は第2の当接フランジ512が第2の制限ブロック13に当接するまで伸び出すことができるため、第1の当接フランジ511を浮動部3から離脱させ、さらに浮動部3を往復浮動させることができる。
【0037】
第2の当接フランジ512が第2の制限ブロック13に効果的に当接させるために、本実施例では、第2の制限ブロック13に2つの第2の当接ブロック131が間隔で設けられ、2つの第2の当接ブロック131の間にタイロッド51が通過する回避空間が形成され、第2の当接フランジ512が第2の制限ブロック13に当接すると、第2の当接フランジ512も同時に2つの第2の当接ブロック131に当接する。
【0038】
一実施例において、ゼロ復帰機構5はエアシリンダであり、タイロッド51はエアシリンダの出力ロッドである。
【0039】
本実施例に提供された挟持ツールの使用方法は、以下の通りである。
【0040】
(1)ワーク4を把持する前に、ゼロ復帰機構5のタイロッド51がゼロ復帰状態にあることを確保する。ゼロ復帰状態は、タイロッド51が後退状態にあり、第1の当接フランジ511が第1の当接ブロック311に当接し且つ第1の当接ブロック311を引っ張って浮動部3を取付部1の端面に当接させ、それにより第1の挟持部2と第2の挟持部6との間の距離を固定させ、続いて第2のロボット7は取付部1を駆動してワーク4を掴むように移動し、この時は、第2の当接フランジ512は、第2の制限ブロック13と接触していない状態である。
【0041】
(2)ゼロ復帰機構5を解放状態になるように調整する。解放状態は、タイロッド51は伸び出した状態にあり、第2の当接フランジ512は第2の制限ブロック13に当接し、第1の当接フランジ511は第1の当接ブロック311から離脱し、且つ第1の当接フランジ511と第1の当接ブロック311及び第1の制限ブロック取付部33のいずれかとの間にも距離を有し、それにより浮動部3はガイドロッド11に沿って往復浮動でき、焼入れ時のワーク4の変形に適応する状態である。
【0042】
(3)第2のロボット7が移動してワーク4を駆動して誘導コイル部81を通過させ、ワーク4に対して誘導焼入れを行う。ワーク4が熱膨張量を有すると、浮動部3は、第2の挟持部6を第1の挟持部2から離れるように、制限板12に近づく方向に浮動し、ワーク4が徐々に冷却すると、浮動部3は、ワーク4の変形量に適応するように、取付部1の端部に浮動し、ワーク4の挟持された部分が誘導コイル部81に移動すると、対応する挟持指が開かれて誘導コイル部81を回避し、当該部分が誘導コイル部81を通過した後に対応する挟持指が再び閉じられ、ワーク4に十分な挟持力を提供する。
【0043】
図9を参照するように、焼入れツールは第1のロボット82を含み、誘導コイル部81は第1のロボット82の出力端に設けられ、第1のロボット82は誘導コイル部81に対してリアルタイムな姿勢調整を行うことができ、誘導コイル部81の軸線を誘導コイル部81を通過するワーク4の軸線と重なるため、ワーク4を誘導コイル部81円滑に通過させ、一方、焼き入れ効果の良好性を保証することができる。
【0044】
図10と
図11を参照するように、誘導コイル部81は、誘導コイル811と、スプレーリング812とを含む。ここで、誘導コイル811はワーク4を加熱するために用いられ、具体的には、誘導コイル811は渦電流表皮効果によってワークに対する加熱を実現する。スプレーリング812は、環状構造であり、誘導コイル811と同軸に設けられ、スプレーリング812内には収容キャビティが設けられており、収容キャビティは、焼入れ液を収容キャビティに搬送してワークを噴霧するための油圧ポンプに連通する。
【0045】
本実施例では、スプレーリング812を環状構造とするため、ワーク4が誘導コイル811を通過すると同時にスプレーリング812を通過することができ、スプレーリング812がワーク4の移動を干渉する。誘導コイル811によるワーク4の加熱が完了すると、スプレーリング812は、焼入れ液をワーク4に噴射してワーク4を急冷する。
【0046】
一実施例において、焼入れツールは、誘導コイル811の温度を検出するための温度センサをさらに含み、誘導コイル811の温度と設定温度との偏差を検出する場合、制御装置により挟持ツールの第2のロボット7を制御してワーク4の移動軌跡及び移動速度を調整し、ワーク4が要求される加熱温度範囲に達することを確保する。具体的には、温度センサは外付け非接触式温度センサである。
【0047】
誘導コイル811とスプレーリング812とが同軸に設けられることを確保するために、誘導コイル811は誘導コイル取付部813をさらに含み、誘導コイル811は誘導コイル取付部813内に取り付けられ、スプレーリング812は誘導コイル取付部813と同軸に設けられ、且つ誘導コイル取付部813に固定的に接続されている。
【0048】
一実施例において、誘導コイル取付部813と、スプレーリング812とは一体成形構造である。
【0049】
図12を参照するように、さらに、スプレーリング812の内輪側壁には、収容キャビティに連通するスプレー孔8121が開口している。一つの実施例において、スプレーリング812の内環側壁の軸線に沿って等間隔で複数のスプレー孔8121が設けられ、それによりスプレーリング812内に位置するワーク4の一部に対する全方位のスプレーを実現し、焼入れ効果及び加工品質を向上させる。
【0050】
同時に、スプレーリング812に収容キャビティと連通する入液管8122が設けられ、使用時に油圧ポンプの出力端は入液管8122と連通し、油圧ポンプ内の焼入れ液は入液管8122によってスプレーリング812の収容キャビティ内に入る。油圧ポンプは焼入れ液を加圧して焼入れ液をスプレーリング812の収容キャビティ内に進入させ、収容キャビティ内に進入した焼入れ液は複数のスプレー孔8121から噴射され、それによりワーク4を急冷する。
【0051】
一実施例において、十分な焼入れ液を確保するために、スプレーリング812に2つの給液管8122が設けられる。
【0052】
一実施例において、油圧ポンプは水ポンプであり、焼入れ液は安価で入手しやすい水を選択することができ、無論、ここではあまり制限なく他の焼入れ液を選択することもできる。
【0053】
一実施例において、本実施例における第1のロボット82及び第2のロボット7はいずれも六軸マニピュレータであってもよい。
【実施例2】
【0054】
本実施形例は、実施例1で提供される焼入システムを使用して、ワーク4を焼入れする焼入方法を提供する。
【0055】
具体的には、ワーク4を焼入れする時に、挟持ツールはワーク4が誘導コイル部81を通過させるように駆動すると同時に、焼入れツールは、ワーク4が誘導コイル部81の中心を通過させるように、誘導コイル部81の姿勢を調整する。即ち、挟持ツールはワーク4の移動を駆動し、ワーク4が誘導コイル部81を通過させると同時に、誘導コイル部81も対応して姿勢調整を行い、ワーク4が誘導コイル部81を通過する部分の軸線を誘導コイル部81の軸線と重なるため、ワーク4の折り曲げ部分が誘導コイルを円滑に通過させ、一方、誘導コイル部81がワーク4に対する焼入れ効果を確保する。
【0056】
具体的には、誘導焼入れ過程において、制御装置によって第2のロボット7の移動軌跡及び移動速度を制御し、ワーク4の移動軌跡及び移動速度の制御を実現し、制御装置は、第1のロボット82の姿勢を制御する。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼入システムであって、
ワーク(4)を挟持するための挟持ツールであって、前記ワーク(4)を空間内におい
て移動するように駆動できる挟持ツールと、
誘導コイル部(81)を含み、前記ワーク(4)が前記誘導コイル部(81)の中心を
通過させるように、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整して前記ワーク(4)の焼入
れを完了することが可能な焼入れツールと、を含
み、
前記挟持ツールは、
取付部(1)と、第1の挟持部(2)と、第2の挟持部(6)と、浮動部(3)とを含み、
前記第1の挟持部(2)は前記取付部(1)に固定的に取り付けられ、
前記第2の挟持部(6)は前記取付部(1)に取り付けられ、且つ前記第2の挟持部(6)の前記第1の挟持部(2)に対する距離が調整でき、前記第1の挟持部(2)および第2の挟持部(6)は、前記挟持ツールにワーク(4)を挟持するために使用され、
前記第2の挟持部(6)は、前記浮動部(3)に固定的に取り付けられ、前記浮動部(3)は、前記取付部(1)に取り付けられ、且つ前記浮動部(3)は前記取付部(1)に対して浮動でき、これにより前記第2の挟持部(6)の前記第1の挟持部(2)に対する距離は、前記第2の挟持部(6)の浮動によって調整でき、前記浮動部(3)により、第2の挟持部(6)の第1の挟持部(2)に対する距離は、前記ワーク(4)の変形に伴って微調整することができ、
前記挟持ツールはゼロ復帰機構(5)をさらに含み、前記ゼロ復帰機構(5)は前記取付部(1)に設けられ、前記ゼロ復帰機構(5)は、前記浮動部(3)を前記取付部(1)に固定することができ、前記ゼロ復帰機構(5)はタイロッド(51)を含み、前記タイロッド(51)は、取付部(1)に当接して浮動部(3)を浮動できないように、または浮動部(3)から離脱して浮動部(3)を浮動可能となるように、浮動部(3)を選択的に引っ張ることができる
ことを特徴とする、前記焼入システム。
【請求項2】
前記誘導コイル部(81)は、
前記ワーク(4)を加熱するための誘導コイル(811)と、
スプレーリング(812)とを含み、
前記スプレーリング(812)は環状構造で、
且つ前記誘導コイル(811)と同軸に設けられ、前記スプレーリング(812)内には収容キャビティが設けられており、前記収容キャビティは、焼入れ液を前記収容キャビティ
内に搬送して前記ワーク(4)
に対して噴霧するための油圧ポンプに連通する
、ことを特徴とする請求項1に記載の焼入システム。
【請求項3】
前記誘導コイル部(81)は、誘導コイル取付部(813)をさらに含み、前記誘導コ
イル(811)は前記誘導コイル取付部(813)内に取り付けられ、前記スプレーリン
グ(812)は前記誘導コイル取付部(813)と同軸に設けられ、且つ前記誘導コイル
取付部(813)に固定的に接続されている、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項4】
前記スプレーリング(812)の内輪側壁には、前記収容キャビティに連通するスプレ
ー孔(8121)が開口している、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項5】
前記焼入れツールは、前記誘導コイル(811)の温度を検出するための温度センサを
さらに含む、請求項2に記載の焼入システム。
【請求項6】
前記焼入れツールは、第1のロボット(82)をさらに含み、前記誘導コイル部(81
)は、前記第1のロボット(82)の出力端に設けられ、前記第1のロボット(82)は
、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整できる、請求項1に記載の焼入システム。
【請求項7】
前記挟持ツールは、第2のロボット(7)をさらに含み、前記取付部(1)は、前記第
2のロボット(7)の出力端に設けられ、前記第2のロボット(7)は、前記取付部(1
)を空間内において移動するように駆動できる、
請求項1に記載の焼入システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の焼入システムを用いてワーク(4)を焼入れする焼入方法であって、焼入れ
する際に、挟持ツールは、前記ワーク(4)が誘導コイル部(81)を通過させるように駆動し、焼入れツールは、前記ワーク(4)が前記誘導コイル部(81)の中心を通過させるように、前記誘導コイル部(81)の姿勢を調整する
ことを特徴とする、
前記焼入方法。
【国際調査報告】