(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】音波検出用光学装置
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20230303BHJP
G01H 13/00 20060101ALI20230303BHJP
H04R 23/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G01H9/00 B
G01H13/00
H04R23/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539388
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2020087869
(87)【国際公開番号】W WO2021130367
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515111048
【氏名又は名称】アンスティテュー ポリテクニック ドゥ グルノーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ラウエルス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バスルール スカンダール
(72)【発明者】
【氏名】クタール ジャン-ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】グリエール アラン
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン ギヨーム
【テーマコード(参考)】
2G064
5D021
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
5D021DD04
(57)【要約】
本発明は、共振周波数を規定する光空洞を含む導波路を担持する膜に向かって伝搬する音波を検出するための装置及び方法である。膜の振動の影響下で、光共振器の共振周波数は変化する。装置は、光波を光空洞内に導くための光源と、光波の波長を光空洞の共振波長にサーボ制御するためのサーボ回路とを含む。光波の波長の変化をモニターすることにより、音波の振幅を推定することが可能となる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波(5)を検出する装置(1)であって、
音波の周波数(f
a)で振動するように構成され、導波路(20)を担持する膜(2)と、
第1の反射器(24
1)と第2の反射器(24
2)とを含み、当該各反射器は、反射スペクトル帯域(Δλ
20)の光を反射し、前記膜とともに振動するように構成される前記導波路と、を備え、
前記第1の反射器及び前記第2の反射器は、光共振空洞(26)を形成するように互いに間隔をあけて配置され、当該光共振空洞は、前記反射スペクトル帯域(Δλ
20)において共振波長(λ
r)を規定し、
前記導波路は、前記共振波長(λ
r)で光を透過し、共振波長(Δλ
20)ではなく前記反射スペクトル帯域の光を反射し、
当該装置もまた、
前記導波路(20)内に発光波長(λ
12)の光波(12)を放射するように構成されるレーザ光源(10)と、
前記共振波長(λ
r)で前記導波路によって伝達される光波(14)を検出するように構成される光検出器(16)と、
前記光源(10)及び前記光検出器(16)に接続され、前記光波の波長(λ
12)を前記光共振空洞(26)の前記共振波長(λ
r)に様々な時間でサーボ制御するように構成されるサーボ回路(41)と、
前記サーボ回路に接続され、以下のように構成される処理ユニット(42)と、を備え、
前記膜の振動の影響下での前記発光波長(λ
12)の周期的な時間依存性の変化を決定し、当該発光波長の周期的な時間依存性の変化は、前記共振波長の周期的な変化に対応しており、
前記発光波長の前記周期的な時間依存性の変化に基づいて音波の振幅を推定し、
当該装置は、
前記導波路(20)は、前記膜(2)上に直接形成され、
前記膜は、振動の影響下において少なくとも一つの振動波腹を示し、前記振動の振幅は、各振動波腹において最大であり、
前記導波路(20)は、少なくとも一つの振動波腹と同じ高さにある、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
当該各反射器(24
1、24
2)は、前記導波路に沿った屈折率(n
1、n
2)の周期的な変調によって形成されたブラッグミラーである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サーボ回路(41)は、前記光源(10)に接続され、かつ前記光源によって放射される光波の波長(λ
12)を前記光共振空洞の前記共振波長(λ
r)までサーボ制御するように構成されるサーボループを備える、上記請求項いずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記サーボ回路(41)は、トップオブフリンジロックサーボ技術を実施する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記レーザ光源は、10pm未満の幅の発光スペクトル帯域(Δλ
12)で前記光波を発光する、上記請求項いずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
上記請求項いずれか一項に記載の装置であって、
前記第1の反射器(24
1)は、第1のブラッグミラーであり、
前記第2の反射器(24
2)は、第2のブラッグミラーであり、
前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、同一のブラッグミラーを形成し、後者は欠陥(25)を有し、前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、それぞれ前記欠陥の両側に位置する前記ブラッグミラーの部分に対応する、ことを特徴とする装置。
【請求項7】
上記請求項いずれか一項に記載の装置(1)を用いて音波(5)の振幅(A
a)を検出する方法であって、
a)前記膜(2)の振動、前記音波の影響下において、当該膜は、前記音波の周波数(f
a)に対応する振動周波数で振動し、当該膜の振動は、前記導波路(20)の前記共振波長が周期的に変調される振動の影響下において前記導波路の振動を引き起こし、
b)前記レーザ光源が前記発光波長(λ
12)において前記導波路内に光波を放出するように、前記レーザ光源(10)を活性化させ、
c)サーボ回路(41)を用いて、前記発光波長(λ
12)が周期的に変化するように、前記発光波長(λ
12)を前記共振波長(λ
r)までサーボ制御し、前記発光波長の前記時間依存性の振動(λ
12(t))は、前記音波の周波数(f
a)における前記共振波長(λr(t))の当該周期的な変調に対応し、
d)前記サーボ回路(41)を介して得られる前記発光波長の当該時間依存性の変化に基づいて、処理ユニット(42)により前記音波の振幅を推定する、方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置を製造する方法であって、
導波路を形成するために第1の材料の薄層を膜上に堆積し、
前記導波路の屈折率の周期的な変調を得るために、前記導波路にフェムト秒レーザビームで光彫刻をする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、光共振空洞を用いた音波の検出である。
【背景技術】
【0002】
音波は通常、MEMS又はNEMS電気機械共振器(MEMSはマイクロ電気機械システム(micro-electro mechanical systems)の頭字語であり、NEMSはナノ電気機械システム(nano-electro mechanical systems)の頭字語である)に基づく装置によって検出される。このタイプのトランスデューサは、ウェハレベルの微細加工プロセスを用いて製造することができる。その結果、適度な製造コストが実現でき、そのような変換器を日常的な部品での使用に特に適したものにする。これらの共振器は、音波への曝露の影響下で振動する膜に基づいており、振動は電気的変換を介して検出される。変換は、圧電材料を介して、又は容量効果を介して達成され得る。
【0003】
しかしながら、特定の用途においては、光変換を介して膜の振動を検出することが有利である。具体的には、光変換は、接触することなく遠隔測定を可能にすることができる。これは、電気的変換が不可能な特定の環境(熱的又は電磁気的性質のストレスにさらされる)において特に適切である。さらに、光変換は爆発の危険がある環境に適している。
【0004】
光変換に基づく装置は、以下の文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gallego D.“High-sensitivity ultrasound interferometric single-mode polymer optical fiber sensors for biomedical applications”, Opt Letter, Vol.34, n°12, p. 1807, 2009.06
【非特許文献2】Chen K.“Fiber-optic Fabry Perot Interferometer based high-sensitive cantilever microphone”, Sense. Actuators Phys., vol.279, p. 107-112, 2018.08
【非特許文献3】S. M.Leinders“A sensitive optical micromachined ultrasound sensor (OMUS) based on a silicon photonic ring resonator on a acoustical membrane”, Sci. Rep., vol.5, N°1, 2015.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、特にコンパクトで、製造が簡単で、検出感度が高い装置を設計した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の主題は、音波を検出する装置であって、
音波の周波数で振動するように構成され、導波路を担持する膜と、
第1の反射器及び第2の反射器を含み、各反射器は、反射スペクトル帯域で光を反射し、前記膜とともに振動するように構成される前記導波路と、を備え、
前記第1の反射器及び前記第2の反射器は、光共振空洞を形成するように互いに間隔を置いて配置され、当該光共振空洞は、前記反射スペクトル帯域において共振波長を規定し、
前記導波路は、前記共振波長において光を透過し、当該共振波長ではなく前記反射スペクトル帯域において光を反射し、
当該装置もまた、
前記導波路内に発光波長の光波を放射するように構成されるレーザ光源と、
前記共振波長で前記導波路によって伝達される光波を検出するように配置される光検出器と、
前記光源及び前記光検出器に接続され、前記光波の波長を前記光共振空洞の前記共振波長に種々の時間でサーボ制御するように構成されるサーボ回路と、
前記サーボ回路に接続され、以下のように構成される処理ユニットと、を備え、
前記膜の振動の影響下での前記発光波長の周期的な時間依存性の変化を決定し、当該発光波長の周期的な時間依存性の変化は、前記共振波長の周期的な変化に対応しており、
前記発光波長の前記周期的な時間依存性の変化に基づいて音波の振幅を推定する。
【0009】
一実施形態によれば、各反射器は、前記導波路に沿った屈折率の周期的な変調によって形成されたブラッグミラーである。
【0010】
好ましくは、前記サーボ回路は、前記光源に接続され、かつ前記光源によって放射される前記光波の発光波長を前記光共振空洞の共振波長までサーボ制御するように構成されるサーボループを備える。当該サーボ回路は、特に、トップオブフリンジロックサーボ技術を実施することができる。
【0011】
好ましくは、レーザ光源は、10pm未満、又は1pm未満の幅の発光スペクトル帯域で光波を発光する。より一般的には、発光スペクトル帯域は、光共振空洞の共振ピークの幅よりも狭い。
【0012】
一実施形態によれば、前記第1の反射器は、第1のブラッグミラーであり、前記第2の反射器は第2のブラッグミラーであり、前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、同一のブラッグミラーを形成し、後者は欠陥を有し、前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、それぞれ前記欠陥の両側に位置する前記ブラッグミラーの部分に対応する。
【0013】
前記膜は、振動の影響下において、少なくとも一つの振動波腹を示し、前記振動の振幅は各振動波腹で最大である。前記導波路は、好ましくは、少なくとも一つの振動波腹と同じ高さにある。
【0014】
一実施形態によれば、前記導波路は、前記膜上に直接形成される。特にフェムト秒レーザによる光彫刻で形成することができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記導波路は、膜上に堆積された微細構造光ファイバである。
【0016】
本発明の第2の主題は、本発明の第1の課題に係る装置を用いて音波の振幅を検出する方法であって、
a)前記膜の振動、前記音波の影響下において、当該膜は、前記音波の周波数に対応する振動周波数において振動し、当該膜の振動は、前記導波路の前記共振波長が周期的に変調される振動の影響下において前記導波路の振動を引き起こし、
b)前記光源が前記発光波長において前記導波路内に光波を放射するように、レーザ光源を活性化させ、
c)サーボ回路を用いて、前記発光波長が周期的に変化するように、前記発光波長を前記共振波長までサーボ制御し、前記発光波長の前記時間依存性の振動は、前記音波の周波数における前記共振波長の当該周期的な変調に対応し、
d)前記サーボ回路を介して得られる前記発光波長の当該時間依存性の変化に基づいて、処理ユニットにより前記音波の振幅を推定する。
【0017】
本発明の第3の主題は、本発明の第1の主題に係る装置を製造するための方法であって、前記装置は、前記導波路が前記膜上に直接形成され、当該方法は、
導波路を形成するために第1の材料の薄層を膜上に堆積し、
前記導波路の屈折率の周期的な変調を得るために、前記導波路にフェムト秒レーザビームで光彫刻をする。
【0018】
本発明は、以下に列挙された図を参照し、説明の残りの部分で記載される例示的な実施形態の説明を読むことによって、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2A】ブラッグミラーを形成する微細構造の光ファイバを示す。
【
図2B】
図2Aに概略的に示される光ファイバの反射スペクトル帯域を示す。
【
図2C】間隔をあけた2つのブラッグミラーに基づく光共振空洞を形成する微細構造光ファイバを示す。
【
図2D】
図2Cに概略的に示される光ファイバの反射スペクトル帯域を示す。
【
図3A】光共振空洞を含む変形されていない導波路を示す。
【
図3B】変形された光共振空洞を含む導波路を示す。
【
図3D】変形の影響下における
図3Cに示されるような導波路の反射スペクトル帯域の変化を示す。
【
図3E】膜の直径に沿った半径方向の変形の振幅を示す。
【
図3F】
図3Dに示す変形に対して最適に配置された導波路を示す。
【
図4A】トップオブフリンジロック法を用いて光源の波長をサーボ制御するための回路を概略的に示す。
【
図4B】トップオブフリンジロック法を用いて得られた誤差関数の変化を示す。
【
図5A】膜の振動の影響下での光共振空洞の共振波長のシフトを示す。
【
図5C】共振波長の時間依存性の変調に基づく膜の振動振幅の推定値を概略的に示す。
【
図7A】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造プロセスの主要なステップを示す。
【
図7B】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造プロセスの主要なステップを示す。
【
図7C】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造プロセスの主要なステップを示す。
【
図7D】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造プロセスの主要なステップを示す。
【
図8A】本発明による装置の2つの可能な構成を概略的に示す。
【
図8B】本発明による装置の2つの可能な構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1A~
図1Cは、本発明による装置1の一例を示す。装置は、入射された音波5にさらされると振動するように構成された可撓性の膜2を含む。入射音波の周波数は、可聴音波又は超音波音波の領域に含まれる。したがって、膜2は、20Hzから20kHz(可聴範囲)の間及び/又は20kHzを超える周波数帯域、例えば20kHzから数十MHzの間で振動することができる。
【0021】
図示の例では、膜2は、横軸Zに垂直な半径方向平面PXY内にある。
【0022】
膜2は、その周囲を介して、装置の本体を形成する基板3に接続される。膜の直径Φ、又は最も長い対角線は、1mm~10mmであってもよい。横軸に沿った膜の厚さは、10μmから数mmの間であり、厚さは、膜の半径r又は直径Φに依存する。厚さは、半径の数千分の1(10-3)と1/10(10-1)との間で構成することができる。例えば、半径の100分の1に等しくすることができる。
【0023】
膜2は、好ましくは、横軸Zに平行に延びる開口6を含む。このような孔は、膜の両側の圧力を平衡に保つことを可能にする。これらは、膜の両側の圧力差がゆっくりと現れて、膜が変形するのを防ぐ。ゆっくりと現れるとは、膜の動作周波数範囲より低い周波数で生じる圧力差を意味する。開口6の直径は、例えば、膜の直径の1/10未満である。例えば、10μm、20μm程度である。
【0024】
導波路20は、膜2に接触し、膜2に平行に膜2上に延びている。導波路は、入口20iと出口20oとの間に延在する。導波路は、第1の屈折率n1を有する第1の材料21から形成される。
【0025】
導波路20は、光ファイバであってもよく、この場合、第1の材料は光ファイバのコアの材料である。また、第1の材料21の薄層の堆積物から形成される導波路、例えばSiON(酸窒化シリコン)の問題であってもよく、これは
図1Aから
図1Cに示される例に対応する。導波路は、屈折率が第1の材料n
1の屈折率n
3よりも低い閉じ込め材料23によって囲まれる。導波路20が光ファイバの場合、閉じ込め材料23は、光ファイバのクラッドである。
【0026】
導波路20は、メリットがあるように、第1の材料21の薄い層から形成される。閉じ込め材料23は、単に第1の材料を取り囲む空気であってもよい。導波路の横軸Zに沿った厚さは、10μm又は5μm未満であることが好ましい。このような導波路を形成するためのプロセスを、
図7A~
図7Dを参照して説明する。膜上に直接導波路を形成することにより、光ファイバを膜に接合する工程を回避することができる。光ファイバの使用に関する別の利点は、より剛性の低い導波路が得られることである。
【0027】
選択された構成にかかわらず、封止材料23の屈折率n3は、第1の材料21の屈折率n1よりも低い。第1の材料21が膜上に直接堆積されると、第1の材料21の屈折率n1は、膜2が形成される材料の屈折率よりも高い。
【0028】
導波路20の一例を
図1Bに示す。この例では、第1の材料21は、膜2上に堆積される。導波路は、第2の屈折率n
2の第2の材料22のセグメントを含み、これらのセグメントは、導波路20に沿って周期的に分布される。第2の屈折率n
2は、第1の屈折率n
1とは異なる。第1の屈折率と第2の屈折率との間の相対的な変化は、0.01%(10
-4)から0.1%(10
-3)まで変化し得る。
【0029】
導波路が延びる軸に沿って、屈折率がn1とn2との間で周期的に変調され、反射スペクトル帯域Δλ20にブラッグミラーが形成される。ブラッグミラーの構造は、当業者には公知であり、屈折率が周期的に変化する構造であり、光が伝搬する軸に沿って、2つの異なる屈折率のセグメントが周期的に交互に形成され、各セグメントの光学的厚さは、λB/4niであり、各セグメントの光学的厚さは、λBは、反射スペクトル帯域Δλ20の中心波長であり、niは、当該材料の屈折率(ni=n1又はni=n2)である。屈折率コントラストが低いほど、周期の数が多くなる。
【0030】
反射スペクトル帯域Δλ
20は、ブラッグ波長λ
Bとも呼ばれる共振波長λ
rを中心とし、以下のようになる。
ここで、n
effは格子の有効指数であり、以下のようになる。
Λは、格子の空間的周期、すなわち、導波路の軸に沿った2つの連続するセグメント21及び22の長さである。
【0031】
導波路20は、セグメント21とセグメント22とが交互に形成されたブラッグミラーが欠陥を含むようなものである。欠陥とは、屈折率変調の周期性における局所的な破断を意味する。この欠陥は、例えば、所定の材料、例えば、第1の材料21からなる連続した欠陥25であって、一つの期間Λの長さ又は複数の連続した期間の長さを延長したものに相当する。
図1Bを参照されたい。欠陥を有するレベルでは、導波路は単一の材料を含み、導波路20の軸に沿って距離が延びる。距離dが、d=kλ
B/n
eff(1’)(kは正の自然整数)である場合、共振波長λ
rを規定する共振ファブリペロー光空洞26が形成される。欠陥25が単一の期間Λに及ぶ場合、λ
r=λ
Bである。
【0032】
また、d>kλB/neffである場合、反射スペクトル帯域Δλ20には、ブラッグ波長λBと異なる他の共振波長λrが現れることがある。この場合、共振ピークが最も狭い共振波長を保持することが好ましい。
【0033】
これにより、導波路20において、第一ブラッグミラー241と第二ブラッグミラー242とを分離することができる。第1のブラッグミラー241、第2のブラッグミラー242、及びブラッグミラー間の欠陥25によって形成されるアセンブリは、共振空洞26を形成する。
【0034】
次に、導波路は、以下のように構成される。ブラッグミラー241、242の反射スペクトル帯域Δλ20の光を反射し、共振波長λrの光を反射しない。共振空洞26の共振波長λrの光を透過させる。
【0035】
装置1はまた、導波路20の入口20iに向かって入射光波12を放射するように配置された光源10、特にレーザダイオードを含む。光波12は、発光波長λ12を中心とする発光スペクトル帯域Δλ12で放射される。発光スペクトル帯域Δλ12は、反射スペクトル帯域Δλ20に含まれる。好ましくは、共振波長λrに関連する共振ピークの幅よりも狭い。発光スペクトル帯域Δλ12の幅が共振ピークの幅よりも狭いことにより、発光波長λ12を導波路の共振波長に対して正確に調整することができる。この調整は、後述するサーボ回路41によって行われる。
【0036】
発光スペクトル帯域Δλ12の幅は、10pm又は1pmよりも小さいことが好ましい。発光スペクトル帯域Δλ12の幅は、発光スペクトル帯域の半値全幅を意味する。光源10は、連続波レーザであることが好ましい。例えば、出力1mW、波長1.55μmで発光し、1pmのオーダーのスペクトル幅を有するDFBレーザダイオード(DFBは分布帰還(distributed feedback)の頭字語である)であってもよい。このタイプのレーザダイオードは、電気通信の分野で一般的に使用されている。
【0037】
装置1は、光検出器16、好ましくは高速光検出器、ここではフォトダイオードを含む。光検出器は、反射スペクトル帯域Δλ20を含む検出スペクトル帯域Δλ16を有する。
【0038】
装置1は、膜の振動の影響下で共振空洞26の共振波長λ
rの時間依存の変化λ
r(t)に追従するように構成されたサーボ回路41を含む。このような回路について、
図4A及び
図4Bを参照して以下に説明する。サーボ回路41は、光源10がサーボ制御されて、光源によって放射される光波12の発光波長λ
12が共振空洞26の共振波長λ
rに対応するようにする。
【0039】
この装置は、膜2が振動する影響下で音波5の振幅を推定するように構成された処理ユニット42を含む。サーボ回路41で決定された発光波長λ
12の時間依存の変化λ
12(t)に基づいて音波の振幅が推定される。処理ユニット42の動作については、
図5を参照してさらに詳細に説明する。
【0040】
装置は、後部容積を規定するカバー8を備え、後部容積は、膜2とカバー8との間に延びる容積に対応する。
【0041】
一般に、導波路20は、第1の反射器241及び第2の反射器242から形成された共振空洞26を含み、これらの反射器は、屈折率の周期的変動を誘起するように導波路20を微細構造化することによって得られる。
【0042】
本発明の重要な一面は、以下に説明される事実に関係する。光源10が活性化され、その発光波長λ12が導波路20の共振波長(より正確には共振空洞26の共振波長)λrに対応しない光波12を放射すると、導波路20は反射波12’を反射する。しかし、光源10が活性化され、共振空洞26の共振波長λrに対応する発光波長λ12の光波12を放射すると、導波路20は、光検出器16に透過波14を透過させる。また、発光波長λ12が共振波長λrに近づくほど、透過波14の強度は高くなる。
【0043】
本発明は、音響振幅Aaの音波5にさらされると、膜2が音波5の周波数faの振動振幅で振動することに基づいている。この結果、導波路20は周期的に変形し、その変形の影響下で共振波長λrは周期的な時間依存の変化λr(t)を示す。時間依存の変調の振幅Aλrは、膜の振動の振幅に依存し、この振幅は、音響振幅Aaと相関し、例えば、音響振幅Aaに比例する。このように、振幅Aλrを推定することにより、音響振幅Aaを推定することができる。
【0044】
図1Cは、
図1Aを参照して説明した放射平面P
XY内の特定の要素の図を示す。この例では、膜2は、半径の100分の1の厚さの薄い円板の形態をとる。
【0045】
図2Aは、導波路20が微細化された光ファイバであり、その内部にブラッグ格子が形成される実施形態を示す。光ファイバにおけるこの種の微細構造は、通常、ファイバブラッグ格子(FBG:fiber Bragg grating)と呼ばれる。光ファイバは、コアを形成する第1の材料21と、クラッドを形成する封止材料23とを含む。光ファイバのコアには、屈折率が第1の材料と異なる第2の材料22の介在物又は空洞が形成される。
【0046】
図2Bは、このように微細化された光ファイバの反射スペクトルを示す。反射スペクトルは、波長(x軸-単位nm)の関数として、照明強度(y軸)によって正規化された反射強度に対応する。反射スペクトル帯域Δλ
20で反射が最大となる。このような導波路は、光波12が照射されると、反射スペクトル帯域Δλ
20では、反射スペクトル帯域Δλ
20全体で光波12’を反射する。
【0047】
図2Cは、
図1Bを参照して説明したように、二つのブラッグミラー24
1及び24
2が、第1の材料21で充填された欠陥25によって分離されている、同様の光ファイバを示す。欠陥25の長さが反射スペクトル帯域に含まれる共振波長k/n
effの時間に対応する場合、光ファイバは共振空洞26を含む。
【0048】
図2Dは、このように微細化された光ファイバの反射スペクトルを示す図である。共振波長λ
rを除いて、反射スペクトル帯域Δλ
20において、反射率が最大となる。このような導波路は、光波12が照射されると、反射スペクトル帯域Δλ
20において波長λ
12が共振波長と異なる場合には、光波12’を反射し、波長λ
12が共振ピークに位置する場合には、透過光波と呼ばれる光波14を透過する。
【0049】
図2C及び2Dは、Matlab(登録商標:Mathworks)で書かれたモデルを用いて得られたものであり、その構造は3mmの長さLに沿って延びていると考えられ、第1及び第2の材料21、22の間の屈折率コントラストは10
-3であると考えられ、各ブラッグミラーの周期は約0.5μmであると考えられた。したがって、各ブラッグミラーは、3000に等しい数の周期を有する。
【0050】
図3A~
図3Cは、
図1B又は
図2Cに示すような導波路20の変形から生じる共振波長λ
rの変化を示す。
図3A及び
図3Bは、それぞれ、導波路20が変形されていない状態、及び変形された状態を示す。変形の影響下で、屈折率変調の空間的周期は、ΛからΛ’=Λ+dΛに変化する。式(1)を適用すると、ブラッグ波長λ
Bにおけるシフト
dλBが生じ、この波長は反射スペクトル帯域Δλを拡張する。
λBのシフトは、以下のようになる。
ここで、εは、10
-4%に相当するμ
ε(microstrain、マイクロストレイン:マイクロメートルオーダーのひずみ)で表される変形に相当し、変形εは、長さの正規化された変動で、次のようになる。
なお、×は乗算演算子である。
【0051】
式(3)は、膜がSiO
2であり、第1の材料と第2の材料との間の指数ジャンプが10
-3である場合を考慮して得られたものである。これは、
図3Bに示すように、各ブラッグミラーが均一に変形することを前提としている。式(3)によれば、1μ
εの変形に対して、ブラッグ波長λ
Bにおけるシフトdλ
Bは1.2pmである。
【0052】
図3Cでは、導波路20の不均一な変形が示されており、ブラッグミラーのあるセグメントは他のセグメントよりも変形が少ないことが示されている。
【0053】
図3Dは、
図3Cを参照して説明したような構成におけるブラッグミラーの反射スペクトルの変化を示すモデルである。曲線a、b、cは、それぞれ、変形がないこと、導波路の軸に沿った0から10マイクロストレインの間で構成される線形変形、及び導波路の軸に沿った4から6マイクロストレインの間で構成される線形変形に対応する。スペクトルシフトは小さく、10pmより小さい。曲線b及びcは、導波路の同じ平均変形に対応し、5マイクロストレインに等しい。これらの2つの構成間の共振波長のシフトは、導波路の軸に沿ったひずみの変動に起因し、それぞれ0~10マイクロストレイン及び4~6マイクロストレインの範囲である。変形が均一であればあるほど、変形の影響下での共振波長のスペクトルシフトは大きくなる。
【0054】
好ましくは、導波路20は、膜2のうち最も大きな変形を受ける部分にわたって延在する。膜2は、振動の振幅が最大となる一つ以上の振動波腹を示す。各波腹は、モデリング及び/又は実験によって決定することができる。好ましくは、導波路20は、膜の振動の少なくとも一つの振動波腹を越えて延在する。これにより、導波路20の変形が最大化され、変形によるスペクトルシフトがさらに増大する。このようにして、より良好な感度が得られる。
【0055】
本発明者らは、
図1A及び
図1Cに概略的に示されるような膜2の変形をモデル化した。モデル化した膜は、半径1mm、厚さ10μmのSiO
2からなり、1Paの圧力が掛けられている。膜の直径の一つに沿った変形を
図3Eに示す。x軸は膜の中心からの距離(mm)に対応し、y軸はマイクロストレインにおける変形に対応する。共振空洞26は、好ましくは、変形の最大振幅を有するレベル、すなわち膜2の中心に配置される。
図3Eに示すシミュレーションは、この膜で1Paの圧力を加えると、約10
-2マイクロストレインの変形が誘発されることを示している。
【0056】
さらに、可能な限り均一な変形を達成するために、共振空洞26は、変形の影響下で曲率が可能な限り均一である膜の部分に配置されることが好ましい。換言すれば、それは曲率の導関数が低い膜の部分の問題である。
【0057】
図3Eでは、膜の変形は、中心部2
cでは負、周辺部2
pでは正である。共振空洞26は、メリットがあるように、膜の振動の影響下で、それが圧縮の問題であるか拡張の問題であるかにかかわらず、変形が同じ符号である膜2のセグメント上に配置される。
【0058】
図3Fは、共振空洞26が膜2の中心部2
cに位置し、膜2の中心から±0.5mmの距離だけ延びる導波路20を概略的に示す。膜の振動の影響で、変形は
図3Eに示すように交互に負(ε<0)、次に正になる。変形が負の場合、光空洞は圧縮され、第2の材料22のセグメントは互いに接近する。変形が正の場合、光空洞は拡大し、第2の材料22のセグメントは互いに離れる。
【0059】
図4A及び
図4Bは、サーボ回路41の動作を概略的に示しており、その機能は、発光波長λ
12を導波路20に形成された共振空洞26の共振波長λ
rにサーボ制御することである。サーボ回路41は、波長λ
12を共振波長λ
rにロックする。これは、トップオブフリンジロックを使用して行われる。例えば、Pound-Drever-Hallサーボ技術を使用する回路の問題であり、このような回路は、Chow J.H.“Phase-sensitive interrogation of fiber Bragg grating resonators for sensing applications”、 J.Light Technol., vol.23, No.5, pp.1881-1889, 2005年5月、又はBlack E.“An introduction to Pound-Dever-Hall laser frequency stabilization”、 Am.J. Phys. 69(1)、2001.01の出版物に記載されている。
【0060】
サーボ回路41は、光源10によって放射された光波12の波長λ12を、10kHzから数百MHzまで変化し得る高い変調周波数で変調するための変調器411を含む。発光波長λ12の変調周波数は、装置によってアドレス指定される最大音響周波数よりもはるかに高い。例えば、装置によってアドレスされる最大音響周波数よりも少なくとも10倍高くてもよい。導波路20を透過して光検出器16で検出された光波14の強度は、回路41に送られ、回路は光検出器16で検出された強度の変化を波長変調の関数として表す関数hを測定する。
【0061】
関数hの符号に応じて、誤差信号が光源に送られ、発光波長λ12が増減する。例えば、波長が増加に伴う検出された強度の変化が負である場合、発光波長は徐々に減少する。波長の増加に伴う検出された強度の変化が正である場合、発光波長は増加する。変調による検出された強度変化が0に近い場合、発光波長は導波路の共振波長に対応する。サーボ回路41は、以下の事実を用いている。
λ12<λrの場合、発光波長λ12が大きくなると、送信波14の強度が大きくなる。逆に、波長λ12の減少は、透過波14の強度の減少をもたらす。
λ12>λrの場合、発光波長λ12が大きくなると、送信波14の強度が小さくなる。逆に、波長λ12の減少は、透過波14の強度の増加をもたらす。
【0062】
したがって、放出光波12の波長λ12に小さな変調を加え、透過光波14の強度に対する変調の効果を観察することによって、光源10をサーボ制御して、放出波長λ12を導波路20の共振波長λrに追従させることができる。
【0063】
トップオブフリンジロックによって共振波長を追従させることにより、音波5の音響周波数が10kHzより高い場合には10-6pmのオーダー、音響周波数が1kHzより低い場合には10-3pmのオーダーの波長感度で共振波長を追従させることができる。SiO2膜に適用される式(3)を考慮すると、このような感度であれば、数ピコストレインオーダー、あるいは数mPaに相当する膜の変形を推定することができると考えられる。したがって、Pound-Dever-Hall法は、共振空洞26のスペクトルシフトが小さく、当該スペクトルシフトがおそらく数pm程度であることを考えると、適切な方法である。
【0064】
また、トップオブフリンジロックによって共振波長を追従させることにより、空洞26の共振波長の変動に対する追従を、温度や湿度などの環境パラメータの変動の影響下で、反応しにくくすることができる。
【0065】
図5A~
図5Cは、音波5の影響を受けて膜2が振動したときの発光波長λ
12の周期的な時間依存性の変化λ
12(t)と音波の振幅との関係を示す。サーボ回路41によって実行されるサーボ制御のため、発光波長λ
12(t)における周期的な時間依存性変動は、膜振動によって引き起こされる共振波長λ
r(t)の時間依存性変調に対応すると考えられる。
図5Aは、導波路20の変形の影響下での透過光波14のスペクトル及びスペクトルシフトdλ
rを示す。
図5Bは、導波路20の変形から生じる共振波長λ
rの時間依存性の変調を示し、変調は周期的であり、音響周波数f
aに対応する周波数fλ
rの変調を示す。サーボ回路41は、発光波長λ
12を共振波長λ
rにサーボ制御することにより、このような変調を決定する。処理ユニット42は、発光波長の周期的変動を解析し、周波数f
aにおける共振波長(又は発光波長)の変調の振幅Aλ
rを推定するように構成される。処理ユニット42は、その振幅Aλ
rに基づいて、音波5の振幅A
aを推定する。
【0066】
共振波長の変調の振幅Aλrに基づく音振幅Aaの推定値は、シミュレーション及び/又は実験的較正を介して決定することができる。
【0067】
音振幅Aaの決定は、必ずしも共振波長の値の決定を必要とせず、変調の振幅Aλrの正確な決定のみを必要とすることに留意されたい。
【0068】
図6は、装置1の動作周波数範囲の選択に対応する。
図6は、膜の変形の振幅(y軸、単位:dBV/Pa)を音響周波数(x軸、単位:Hz)の関数として表したものである。この装置の動作周波数範囲は、曲線の最も平坦な部分に対応する。動作周波数範囲は、低いカットオフ周波数f
lowと機械的共振周波数f
resとの間に及ぶ。この例では、100Hzから20kHzの間の可聴音波をカバーするように周波数範囲が選択されている。
【0069】
低いカットオフ周波数は次のようになる。
ここで、R
6は、膜2の開口6による粘性損失を定量化したものであり、C
8は、
図1Aを参照して定義した装置の後部容積の圧縮性に相当する。R
6は、以下のように表される。
ここで、Nは、膜の開口6の数に相当し、ηは、空気の粘度(Pa・s)であり、eは、膜の厚さであり、s
6は、開口6の断面積であり、その断面は、径方向平面P
XYに平行に切断される。
さらに、C
8は、以下のように表される。
ここで、V
8は、後部の容積(cm
3)であり、c
0は、空気中の音速(ms
-1)であり、ρ
0は、空気の密度(g・cm
-3)である。
膜の共振周波数は、次式によって計算することができる。
ここで、rは、膜2の半径(cm)であり、Eは、膜が形成される材料のヤング率であり、ρは、膜が形成される材料の密度(g・cm
-3)であり、νは、膜を形成する材料のポアソン比である。
【0070】
したがって、可聴領域又は超音波領域の全部又は一部をカバーするように、上記で定義されたパラメータの関数として動作周波数範囲を選択することが可能である。膜の厚さが厚く、直径が小さいほど、共鳴周波数fresは高くなる。逆に、膜が薄く、直径が大きいほど、共鳴周波数fresは低くなる。
【0071】
図7A~
図7Dは、非光ファイバの導波路20を膜2上に形成することを可能にする主な工程を示す。
【0072】
基板3は、例としてSi基板であり、例えば厚さ4μmのSiO
2(屈折率:1.44)からなる第1の層3
1と、例えば厚さ1μmのSiON(シリコン酸窒化物、屈折率:1.60)からなる第2の層3
2とが堆積されている(
図7A参照)。
【0073】
この方法は、以下を含む。
フォトリソグラフィーを用いて第2の層3
2をエッチングし、導波路20を形成する(
図7B参照)。この例では、SiONが導波路の第1の材料21に対応する。
第1の層3
1の一部を剥離するように基板3の裏面をエッチングし、当該一部に浮遊した膜2を形成する(
図7C参照)。
第2の材料22の空洞を形成するためにフェムト秒レーザパルスにさらす(
図7D参照)。レーザ照射の影響により、SiONの指数は局所的に変化する。露出したSiONは、第2の材料22に対応し、その屈折率n
2は、露出していないSiONの屈折率と異なる。具体的には、露光により微小気泡が発生し、屈折率の変化を引き起こす。この露光は、空洞22の規則的かつ周期的な分布が得られるように行われる。この結果、光の伝搬軸に沿って、導波路20の屈折率が導波路内で変調される。各パルスの持続時間は、例えば、800nmの波長において、100fsに等しく、各パルスのエネルギーは30nJである。パルス周波数は、数Hzから200kHzの間で構成することができる。別の露光技術として、UV光彫刻があり、これは、Chow J.H.“Phase-sensitive interrogation of fiber Bragg grating resonators for sensing applications”、 J.Light. Technol., vol.23, No.5, pp.1881-1889, 2005.05の出版物に記載されている。例えば、UV光彫刻は、光ファイバを微細構造化することを可能にする。
【0074】
露光による屈折率の変調は10-3程度と比較的小さい。しかし、フェムト秒レーザによる光彫刻は、ブラッグミラーを1mm程度の短い長さで製造することを可能にする。このタイプの露光は、高精度の共振空洞26を得ることを可能にし、共振ピークの幅は、数十pm未満、あるいは10pm未満、場合によっては、5pm未満である。
【0075】
各ブラッグミラーが延びる長さを長くすることも可能である。これにより、共鳴ピークの幅をさらに減少させる。
【0076】
図8A及び8Bは、装置の例を示す。
図8Aにおいて、装置1は、カバー8によって閉じられたキャリア7上に配置される。レーザ光源10は、放射面P
XYに平行な光波12を放射し、その光波は反射器11によって膜2の方向に反射される。入力結合格子13は、光波12と導波路20の入口20
iとを結合させる。出力結合格子15は、透過光波14の全部又は一部を光検出器16に導くことを可能にする。
【0077】
図8Bでは、アクティブ光学構成要素(光源10、光検出器16、サーボ回路41及び処理ユニット42)がカバー8に取り付けられた周辺部品9内に遠隔に配置された装置が示されている。変形感応素子、すなわち導波路20及び膜2は、カバーによって閉じられたキャリア7から形成されたケーシングに閉じ込められる。カバー8は、出射光12及び透過光14を透過させるための透明な部分を備えている。
【0078】
本発明は、小型の検出装置を形成するために使用される可能性があり、主な用途は、可聴領域及び超音波領域における音波の検出である。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波(5)を検出する装置(1)であって、
音波の周波数(f
a)で振動するように構成され、導波路(20)を担持する膜(2)と、
第1の反射器(24
1)と第2の反射器(24
2)とを含み、当該各反射器は、反射スペクトル帯域(Δλ
20)の光を反射し、前記膜とともに振動するように構成される前記導波路と、を備え、
前記第1の反射器及び前記第2の反射器は、光共振空洞(26)を形成するように互いに間隔をあけて配置され、当該光共振空洞は、前記反射スペクトル帯域(Δλ
20)において共振波長(λ
r)を規定し、
前記導波路は、前記共振波長(λ
r)で光を透過し、共振波長(Δλ
20)ではなく前記反射スペクトル帯域の光を反射し、
当該装置
はさらに、
前記導波路(20)内に発光波長(λ
12)の光波(12)を放射するように構成されるレーザ光源(10)と、
前記共振波長(λ
r)で前記導波路によって伝達される光波(14)を検出するように構成される光検出器(16)と、
前記
レーザ光源(10)及び前記光検出器(16)に接続され、前記光波の波長(λ
12)を前記光共振空洞(26)の前記共振波長(λ
r)に様々な時間でサーボ制御するように構成されるサーボ回路(41)と、
前記サーボ回路に接続され、以下のように構成される処理ユニット(42)と、を備え、
前記膜の振動の影響下での前記発光波長(λ
12)の周期的な時間依存性の変化を決定し、当該発光波長の周期的な時間依存性の変化は、前記共振波長の周期的な変化に対応しており、
前記発光波長の前記周期的な時間依存性の変化に基づいて音波の振幅を推定し、
ここで、
前記導波路(20)は、前記膜(2)上に直接形成され、
前記膜は、振動の影響下において少なくとも一つの振動波腹を示し、前記振動の振幅は、各振動波腹において最大であり、
前記導波路(20)は、少なくとも一つの振動波腹と同じ高さにある
、装置。
【請求項2】
当該各反射器(24
1、24
2)は、前記導波路に沿った屈折率(n
1、n
2)の周期的な変調によって形成されたブラッグミラーである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サーボ回路(41)は、前記
レーザ光源(10)に接続され、かつ前記
レーザ光源によって放射される前記光波の波長(λ
12)を前記光共振空洞の前記共振波長(λ
r)までサーボ制御するように構成されるサーボループを備える、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記サーボ回路(41)は、トップオブフリンジロックサーボ技術を実施する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記レーザ光源は、10pm未満の幅の発光スペクトル帯域(Δλ
12)で前記光波を発光する、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の反射器(24
1)は、第1のブラッグミラーであり、
前記第2の反射器(24
2)は、第2のブラッグミラーであり、
前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、同一のブラッグミラーを形成し、後者は欠陥(25)を有し、前記第1のブラッグミラー及び前記第2のブラッグミラーは、それぞれ前記欠陥の両側に位置する前記ブラッグミラーの部分に対応する
、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置(1)を用いて音波(5)の振幅(A
a)を検出する方法であって、
a)前記膜(2)の振動、前記音波の影響下において、当該膜は、前記音波の周波数(f
a)に対応する振動周波数で振動し、当該膜の振動は、前記導波路(20)の前記共振波長が周期的に変調される振動の影響下において前記導波路の振動を引き起こし、
b)前記レーザ光源が前記発光波長(λ
12)において前記導波路内に
前記光波を放出するように、前記レーザ光源(10)を活性化させ、
c)
前記サーボ回路(41)を用いて、前記発光波長(λ
12)が周期的に変化するように、前記発光波長(λ
12)を前記共振波長(λ
r)までサーボ制御し、前記発光波長の前記時間依存性の振動(λ
12(t))は、前記音波の周波数(f
a)における前記共振波長(λr(t))の当該周期的な変調に対応し、
d)前記サーボ回路(41)を介して得られる前記発光波長の当該時間依存性の変化に基づいて、処理ユニット(42)により前記音波の振幅を推定する、方法。
【請求項8】
請求項
1に記載の装置を製造する方法であって、
前記導波路を形成するために第1の材料の薄層を膜上に堆積し、
前記導波路の屈折率の周期的な変調を得るために、前記導波路にフェムト秒レーザビームで光彫刻をする、方法。
【国際調査報告】