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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】卵胞の成熟を促進するための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/80 20060101AFI20230303BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230303BHJP
   C07D 215/54 20060101ALI20230303BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C07D213/80 CSP
A61P15/00
C07D215/54
C07D405/04
A61K31/455
A61K31/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541249
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021050262
(87)【国際公開番号】W WO2021140194
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】PA202070020
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202070016
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リュッゲ-ハートマン,カリン
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ,ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ダウンハム,ロバート
【テーマコード(参考)】
4C055
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA04
4C055BA02
4C055BA06
4C055BA08
4C055CA02
4C055CA33
4C055DA01
4C055FA01
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC78
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086BC28
4C086GA02
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
(57)【要約】
いくつかの類似体(例えば、3-カルバモイル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリジン-1-イウム、3-カルボキシ-1-イソプロピルピリジン-1-イウム、1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウム、3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウムおよびシクロパミン)が、雌の不妊症を治療するために開示されており、これらの化合物は、対照サンプルと比較して、原始卵胞に対して一次卵胞のパーセンテージを増加させる。
【選択図】図1























【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であって、式中、Rが、オキソシクロヘキサニル、オキソシクロペンタニルおよびオキソシクロブタニルからなる群から選択される、化合物。
【請求項2】
が、オキソシクロヘキサニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)の化合物またはその薬物的に許容される塩であって、
【化2】

式中、Rが、低級アルキルまたはアリールである、化合物。
【請求項4】
前記低級アルキルが、メチルまたはエチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、メチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記Rが、フェニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項8】
医薬品として使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
卵胞成熟の促進に使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
排卵障害の治療に使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~7に記載の治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒトまたは動物に投与することを含む、病状を治療する方法。
【請求項13】
前記病状が排卵障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
医薬品の製造のための、請求項1~7に記載の化合物の使用。
【請求項16】
排卵障害の治療に使用するための医薬品を製造するための、請求項1~7に記載の化合物の使用。
【請求項17】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項16に記載の化合物の使用。
【請求項18】
式(IV)の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、
【化4】
式中、Rが、排卵障害の治療に使用するための低級アルキル、アミド、フェニルまたはベンジルである、化合物。
【請求項19】
前記低級アルキルが、エチル、プロピルまたはイソプロピルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が、イソプロピルである、請求項18および19に記載の化合物。
【請求項21】
が、エタンアミドである、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
が、フェニルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項23】
が、ベンジルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項24】
式(V)の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、
【化5】
式中、Rが、排卵障害の治療に使用するためのH、F、Clまたはメトキシ基である、化合物。
【請求項25】
が、Hである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
が、オルト位のFである、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
が、メタまたはパラ位のClである、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
が、メタ位のメトキシ基である、請求項24に記載の化合物。
【請求項29】
排卵障害の治療に使用するための、式(VI)の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、
【化6】
式中、Rが、低級アルキルであり、Rが、Hまたはメチルである、化合物。
【請求項30】
が、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
が、イソプロピルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
が、メチルであり、Rが、Hである、請求項29に記載の化合物。
【請求項33】
が、エチルであり、Rが、Hである、請求項29に記載の化合物。
【請求項34】
が、メチルであり、Rが、オルト位のメチルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項35】
が、メチルであり、Rが、パラ位のメチルである、請求項29に記載の化合物。
【請求項36】
排卵障害の治療に使用するための、化合物シクロパミン。
【請求項37】
卵胞の成熟を促進するのに使用するための、請求項18~36に記載の化合物。
【請求項38】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項18~36に記載の化合物。
【請求項39】
請求項18~36に記載の治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒトまたは動物に投与することを含む、排卵障害を治療する方法。
【請求項40】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
排卵障害の治療のための医薬品の製造のための、請求項18~36に記載の化合物の使用。
【請求項42】
前記排卵障害が、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される、請求項41に記載の化合物の使用。
【請求項43】
雌個体の排卵障害の治療に使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
追加の活性剤をさらに含む、請求項43および44に記載の医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
受胎する能力は、多くの場合、社会の継続的な発展を維持するために必要なイベントを表す、最も自然かつ高頻度の出来事であると考えられる。しかし、現在の治療法では補助できない不妊女性の群が大きく、増加している。
【0003】
不妊症に対して現在利用可能な唯一の治療は、標準的ホルモン治療である。治療の前に、内因性ホルモンレベルが測定され、高い卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルを有する女性は、これが致命的となり得るため、この治療から除外される。標準的ホルモン治療は、主に5~6日間の静脈内投与として行われ、毎月の卵巣周期ですでに活性化されている卵胞を補助することを目的としており、卵胞の成長および成熟を完了するにはホルモンの補助が必要である。その後、この処置が奏功した場合、卵は、超音波および捕集管を使用して吸引され、in vitro受精(IVF)させる。現在、受精卵は、胚子鏡を使用して監視し、胚が高品質で発育した場合(形態によって判断した場合)、胚は、治療を受けた女性の子宮に戻される。標準的ホルモン治療を受けた女性の10%未満が、体外受精で発育した乳児の出産に成功する。今日の不妊治療は、卵胞発育の後期に向けられているため、おそらく原始(安静時)卵胞が、実際に活性化されていない事により、女性の大部分は、依然として不妊である。したがって、雌の不妊症の治療の成功率を高めるための大きなアンメットメディカルニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、卵胞の成熟を促進するのに使用するために、特に卵胞の原始から一次への移行を促進するのに使用するために同定された化合物を開示する。原始卵胞の活性化は、扁平顆粒膜細胞が、増殖を開始して立方体になり、卵母細胞のサイズが成長したときに、原始から一次へ形態学的に移行することを特徴とする。
本発明は、原始卵胞のこの活性化を開始させ得る化合物を特定した。これにより、不妊症を引き起こす排卵障害に罹患し、標準的ホルモン治療に応答しない女性のために、新しい治療ラインが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】原始から一次への移行の概略を示す図である。原始卵胞は、体細胞顆粒膜細胞の平らな層によってほぼ完全に囲まれた卵母細胞からなる。活性化後、原始卵胞は一次卵胞に移行する。これは、卵母細胞のサイズの増加、および周囲の顆粒膜細胞の成長および形質転換を伴い、顆粒膜細胞が、立方体になり、卵母細胞を完全に覆う。
図2】卵巣切片を化合物582とインキュベートした結果を示す図である。(A)は、582とインキュベートした卵巣の断面を示す図である。(B)は、582および対照で治療された卵巣の様々な段階(原始、一次、および二次)における卵胞の分布を比較した図である。(C)は、582の構造を示す図である。
図3】卵巣切片を化合物583とインキュベートした結果を示す図である。(A)は、583とインキュベートした卵巣の断面を示す図である。(B)は、583および対照で治療された卵巣の様々な段階(原始、一次、および二次)における卵胞の分布を比較した図である。(C)は、583の構造を示す図である。
図4】卵巣切片を化合物797とインキュベートした結果を示す図である。(A)は、797とインキュベートした卵巣の断面を示す図である。(B)は、797および対照で治療された卵巣の様々な段階(原始、一次、および二次)における卵胞の分布を比較した図である。(C)は、797の構造を示す図である。
図5】卵巣切片を化合物798とインキュベートした結果を示す図である。(A)は、798とインキュベートした卵巣の断面を示す図である。(B)は、798および対照で治療された卵巣の様々な段階(原始、一次、および二次)における卵胞の分布を比較した図である。(C)は、798の構造を示す図である。
図6】シクロパミンおよび対照で治療された卵巣の様々な段階(原始、一次、および二次)における卵胞の分布の比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、式(I)の化合物に関し、
【化1】
式中、Rは、低級アルキルまたはアリールである。
【0007】
本明細書で使用される場合、「低級アルキル」は、1~約4個の炭素原子を含む分岐または直鎖の非環式アルキル基を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルが挙げられる。本明細書で使用される「アリール」という用語は、6~14個の炭素原子を有する炭素環式芳香環を指す。アリール基の例としては、例えば、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0008】
一実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。
【0009】
好ましい実施形態では、Rは、メチルである。その化合物の一般名は、5-カルボキシ-1,2-ジメチルピリジン-1-イウムである。
【0010】
別の好ましい実施形態では、Rは、フェニルである。その化合物の一般名は、5-カルボキシ-1-メチル-2-フェニルピリジン-1-イウムである。
【0011】
本発明の一実施形態は、式(II)の化合物に関する。
【化2】
【0012】
この化合物の一般名は、3-カルボキシ-1-メチルキノリン-1-イウムである。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、式(III)の化合物に関する。
【化3】
式中、Rは、オキソシクロヘキサニル、オキソシクロペンタニルおよびオキソシクロブタニルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、Rは、オキソシクロヘキサニルである。この化合物の一般名は、3-カルボキシ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル))ピリジン-1-イウムである。本出願では、3-カルボキシ-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル))ピリジン-1-イウムは、番号798と称する。
【0014】
本発明の別の実施形態は、式(IV)の化合物に関する。
【化4】
式中、Rは、排卵障害の治療に使用するための低級アルキル、アミド、フェニルまたはベンジルである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「低級アルキル」は、1~約4個の炭素原子を含む分岐または直鎖の非環式アルキル基を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルが挙げられる。さらなる実施形態では、低級アルキルは、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。
【0016】
一実施形態では、低級アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。好ましい実施形態では、Rは、排卵障害の治療に使用するためのイソプロピルである。その化合物の一般名は、3-カルボキシ-1-イソプロピルピリジン-1-イウムである。本出願では、3-カルボキシ-1-イソプロピルピリジン-1-イウムは、番号797と称される。
【0017】
別の実施形態では、Rは、エタンアミドである。その化合物の一般名は、1-(2-アミノ-2-オキソエチル)-3-カルボキシピリジン-1-イウムである。
【0018】
別の実施形態では、Rは、フェニルである。その化合物の一般名は、3-カルボキシ-1-フェニルピリジン-1-イウムである。
【0019】
さらに別の実施形態では、Rは、ベンジルである。その化合物の一般名は、1-ベンジル-3-カルボキシピリジン-1-イウムである。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は、排卵障害の治療に使用するための、式(V)の化合物に関する:
【化5】
式中、R:H、F、Clまたはメトキシ基である。
【0021】
好ましい実施形態では、Rは、Hである。この化合物の一般名は、1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウムである。本出願では、1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウムは、番号582と称される。別の実施形態では、Rは、オルト位のFである。さらなる実施形態では、Rは、メタまたはパラ位のClである。さらに別の実施形態では、Rは、メタ位のメトキシ基である。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、排卵障害の治療に使用するための、式(VI)の化合物に関する:
【化6】
式中、Rは、低級アルキルであり、Rは、Hまたはメチルである。一実施形態では、低級アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。好ましい実施形態では、Rは、イソプロピルである。
【0023】
別の好ましい実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、Hである。この化合物の一般名は、3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウムである。本出願において、3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウムは、番号583と称される。別の実施形態では、Rは、エチルであり、Rは、Hである。さらなる実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、オルト位のメチルである。さらに別の実施形態では、Rは、メチルであり、Rは、パラ位のメチルである。
【0024】
本明細書における上記の化合物は、以下の2つの一般的な合成経路を介して調製することができる:
経路1:
これは、ハロゲン化アルキルを使用した窒素でのアルキル化である。Xは、IまたはBrであり得る。Rは、ピリジン部分の任意の置換基を表す。
【化7】
【0025】
経路2:
経路2は、ジンケ反応である。Rは、ピリジン部分の任意の置換基を表し、Rは、ピリジンの窒素に添加される置換基を表す。
【化8】
【0026】
代替的実施形態では、本発明は、排卵障害の治療に使用するためのシクロパミンに関する。シクロパミンは、以下の式VIIの構造で表される:
【化9】
【0027】
シクロパミンは、コーンリリー(corn lily)から単離された天然に存在する化学物質である。
【0028】
本発明によるいくつかの化合物は、正電荷を含む。したがって、本発明による使用に好適である化合物の薬学的に許容される塩は、負に帯電したイオンを含めることによって得ることができる。このような負に帯電したイオンの例は、塩化物、ヨウ化物、および臭化物である。他の負に帯電したイオンを使用して、本開示による化合物の薬学的に許容される塩を得ることができる。
【0029】
実施例1に記載のとおり、試験された化合物のいずれも、哺乳動物細胞に対して毒性を示さない。したがって、一実施形態では、本発明による化合物を医薬品として使用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、治療有効量の記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒトまたは動物に投与することを含む、病状を治療する方法が提供される。
【0031】
別の実施形態では、本発明による化合物は、医薬品の製造に使用することができる。
【0032】
さらに、本発明による化合物は、原始卵胞から一次卵胞への卵胞の移行を刺激することによって卵胞の成熟を促進する。本発明による化合物は、in vivoで使用することができ、それらを必要とする雌個体に投与される。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、in vivoで卵胞の成熟を促進するのに使用するためのものである。
【0033】
これらの化合物はまた、in vitroで使用することができ、in vitroで卵胞に添加される。したがって、別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、in vitroで卵胞の成熟を促進するのに使用するためのものである。
【0034】
好ましい実施形態では、卵胞は、哺乳動物の卵胞である。哺乳動物の卵胞は、家畜、例えば、ウマ、ブタ、またはウシなど、任意の哺乳動物に由来し得る。好ましい実施形態では、哺乳動物は、ウシである。好ましい実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0035】
雌の不妊症の多くの症例は、排卵障害によって引き起こされる。視床下部または下垂体による生殖ホルモンの調節の問題、または卵巣中の問題は、排卵障害を引き起こし得る。現在の標準的不妊治療は、卵胞発育の後期に向けられているため、標準的ホルモン療法は、二次卵胞を生成できる女性に対して非常に効果的である。
【0036】
本発明者らの研究によると、ほとんどの排卵障害は、原始卵胞の最初の活性化の欠如または活性化が非常に少ないことによって生じ、その結果、一次および二次卵胞の生成がもたらされない。本発明の化合物は、原始卵胞から一次卵胞への卵胞の移行を促進する。したがって、本発明は、新しい治療ラインが、成熟した受精卵を生成するために卵巣周期を開始するために必要とされる原始卵胞を標的にすることを示唆している。
【0037】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、標準的な現在のホルモン治療に応答しない女性の不妊症の治療に使用するためのものである。好ましい実施形態では、これは、排卵障害に起因する。したがって、一実施形態では、本発明は、排卵障害の治療に使用するための本明細書に記載の化合物に関する。
【0038】
一実施形態では、排卵障害は、早発卵巣不全(POI)および早発閉経からなる群から選択される。
【0039】
POIは、不妊症を引き起こす排卵障害である。POIは、早発閉経と称されることもあり、40歳になる前に女性の卵巣が機能しなくなったときに生じる。POIは、遺伝的異常(ターナー症候群または脆弱X症候群、自己免疫疾患、医薬品もしくは放射線療法への曝露など)によって引き起こされ得る。しかし、特発性POIは、不妊症を引き起こす疾患であり、あまりよく理解されておらず、それ自体が、十分な量のエストロゲンの不足による骨粗鬆症、様々な自己免疫疾患、メンタルヘルス疾患(自殺リスクの増大)、甲状腺機能低下症および心臓疾患など、多くの追加の健康への影響を示す。POIは、多くの場合、20代前半の女性に現れ、早発閉経様症状が現れる。閉経は、エストロゲンおよびプロゲステロンのレベルが低下する、ならびに卵巣予備能が使い果たされるために雌の生殖機能が停止することを特徴とする主要なホルモンの変化を表している。
【0040】
化学療法または骨盤放射線療法などの特定の曝露、および特定の病状は、POIを引き起こし得るが、多くの場合、その原因は説明されていない。
【0041】
本発明の化合物を単独で投与することは可能であるが、それらを医薬製剤の形態で提示することが好ましい。
【0042】
本発明の一態様は、雌哺乳動物、好ましくは雌哺乳動物がヒト女性である場合の排卵障害の治療に使用するための、本明細書で定義される少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0043】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含むことが好ましい。
【0044】
薬学的に許容される担体は、固体または液体のいずれかであり得る。
【0045】
固形調製物には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ、坐剤、および分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用し得る1つ以上の賦形剤であり得る。
【0046】
使用の直前に、経口投与用の液体形態の調製物に変換させることを意図した固形形態の調製物も含まれる。このような液体形態には、溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝液、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0047】
粉末中では、担体は、細かく分割された固体であり、細かく分割された活性成分との混合物である。錠剤中では、活性成分は、好適な比率で、必要な結合能力を有する担体と混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。
【0048】
薬学的に許容される担体の液体形態では、非経口投与が可能になり、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、注入バッグなど、単位用量または複数用量の密封容器に入れて、任意により防腐剤を添加して、提示することができる、または、これらは、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存でき、この状態では、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とする。即時注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョン、例えば、ポリエチレングリコール水溶液などの形態をとることができる。油性または非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの剤を含み得る。あるいは、有効成分は、好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で使用する前に、滅菌固体の無菌単離によって、または構成のための溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であり得る。
【0049】
経口投与に好適である他の形態には、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤、水溶液、水性懸濁液などの液体形態の調製物が含まれ得る。
【0050】
好ましくは、製剤は、約0.5重量%~75重量%の有効成分(複数可)を含み、残りは、本明細書に記載の好適な医薬賦形剤からなる。
【0051】
それらが調製され得る本発明の化合物の薬学的に許容される塩もまた、本発明によって網羅されることが意図されている。これらの塩は、製薬用途への適用において許容できるものとなるであろう。それは、塩が親化合物の生物学的活性を保持し、塩がその適用および疾患の治療における使用において、不適当なまたは有害な影響を有することはないことを意味する。
【0052】
薬学的に許容される塩は、標準的方法で調製される。親化合物が塩基である場合、好適な溶媒中で過剰の有機酸または無機酸で処理される。親化合物が酸の場合、好適な溶媒中で無機または有機塩基で処理される。
【0053】
本発明の化合物は、アルカリ金属またはその土類アルカリ金属塩の形態で、薬学的に許容される担体または希釈剤と並行して(concurrently)、同時に(simultaneously)、または一緒に、特に、好ましくはその医薬組成物の形態で、有効量で、経口、直腸、または非経口(皮下など)経路によって、投与され得る。
【0054】
本発明の医薬組成物で使用するための薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの鉱酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、p-トルエンスルホン酸およびアリールスルホン酸などの有機酸に由来するものが含まれる。
【0055】
本発明による液滴は、滅菌または非滅菌の水溶液または油溶液または懸濁液を含み得、有効成分を好適な水溶液、任意により、殺菌剤および/または殺真菌剤および/または他の任意の好適な防腐剤など、ならびに任意により表面活性剤などに溶解することによって調製され得る。油性溶液の調製にとって好適である溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。
【0056】
エマルジョンは、水性プロピレングリコール溶液を含む溶液中で調製され得るか、またはレシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシアなどの乳化剤を含み得る。水溶液は、活性成分を水に溶解し、好適な着色剤、香料、安定剤および増粘剤を添加することによって調製できる。水性懸濁液は、天然または合成のガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁剤など、粘性物質を含む水に細かく分割された活性成分を分散させることによって調製することができる。
【0057】
一実施形態では、医薬組成物は、追加の活性剤を含む。医薬組成物はまた、本明細書に記載の化合物の組み合わせを含み得る。
【0058】
本明細書に記載されるとおり、投与形態には、これらに限定されないが、経口、非経口、経腸、直腸または頬側投与が挙げられる。
【0059】
一実施形態では、医薬組成物は、経腸的に、非経口的に、または徐放性インプラントの一部として投与されるか、または投与に適合される。非経口投与は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内または腹腔内であり得る。
【0060】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、注射によって投与されるか、または注射に適合される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、卵巣への注射によって投与されるか、または卵巣への注射に適合される。
【0061】
一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1μg/kg~30,000μg/kg体重、例えば、1μg/kg~7,500μg/kg、例えば、1μg/kg~5,000μg/kg、例えば、1μg/kg~2,000μg/kg、例えば、1μg/kg~1,000μg/kg、例えば、1μg/kg~700μg/kg、例えば、5μg/kg~500μg/kg、例えば、10μg/kg~100μg/kg体重の投与量で投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1μg/kg~1,000μg/kg体重、例えば、1μg/kg~500μg/kg、例えば、1μg/kg~250μg/kg、例えば、1μg/kg~100μg/kg、例えば、1μg/kg~50μg/kg、例えば、1μg/kg~10μg/kg体重の投与量で投与される。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、10μg/kg~30,000μg/kg体重、例えば、10μg/kg~7,500μg/kg、例えば、10μg/kg~5,000μg/kg、例えば、10μg/kg~2,000μg/kg、例えば、10μg/kg~1,000μg/kg、例えば、10μg/kg~700μg/kg、例えば、10μg/kg~500μg/kg、例えば、10μg/kg~100μg/kg体重の投与量で投与される。
【0062】
本発明の医薬組成物はまた、雌個体の原始卵胞にin vitroで投与され得る。したがって、原始卵胞は、それを必要とする個体から採取され、本発明の少なくとも1つの化合物でin vitroで処理され、雌個体に再挿入され得る。
【0063】
一実施形態では、雌個体は、雌の哺乳動物である。好ましくは、雌の哺乳動物は、雌のヒトである。
【0064】
実施例
実施例A:5-カルボキシ-1,2-ジメチルピリジン-1-イウムヨウ化物の合成
【化10】
6-メチルニコチン酸、N,N-ジメチルホルムアミドおよびヨードメタンをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌する。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-d6)δ9.50(d,J=1.4Hz,1H),8.81(dd,J=8.2,1.8 Hz,1H),8.13(d,J=8.2Hz,1H),4.29(s,3H),2.83(s,3H)
【0065】
実施例B:5-カルボキシ-1-メチル-2-フェニルピリジン-1-イウムヨウ化物の合成
【化11】
6-フェニルニコチン酸、N,N-ジメチルホルムアミドおよびヨードメタンをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌する。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-d6)δ9.68(d,J=1.8Hz,1H),8.95(dd,J=8.2,1.8Hz,1H),8.17(d,J=8.2Hz,1H),7.73-7.65(m,5H),4.19(s,3H)
【0066】
実施例C:3-カルボキシ-1-メチルキノリン-1-イウムヨウ化物の合成
【化12】

3-キノリンカルボン酸、N,N-ジメチルホルムアミドおよびヨードメタンをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌する。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-d6)δ9.96(d,J=0.9Hz,1H),9.79(br.s,1H),8.66(dd,J=8.2,1.4Hz,1H),8.56(d,J=8.7Hz,1H),8.42-8.37(m,1H),8.15-8.11(m,1H),4.70(s,3H)
【0067】
実施例D:3-カルバモイル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリジン-1-イウムの合成(798)
【化13】
4-アミノテトラヒドロピラン(125mg、1.23mmol)/メタノール(2.0mL)溶液を1-(2,4-ジニトロフェニル)ピリジン-1-イウム-3-カルボキサミド(carboxamidm)クロリド(200mg、0.616mmol)で処理し、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物をフリットに通し、MeOH(4mL)で洗浄した。濾液をエーテル(10mL)で希釈し、得られた沈殿物を真空下で濾過して、表題化合物を黄色固体として得た(80mg、54%)。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-d6)δ9.56(s,1H),9.42-9.41(m,1H),8.96(dt,J=8.2,1.4 Hz,1H),8.28(dd,J=7.8,6.4 Hz,1H),7.39-7.14(見かけ1:1:1三重項,塩化アンモニウム,~0.73H合計),5.16(tt,J=11.9,4.1Hz,1H),4.07(dd,J=11.0,4.1Hz,2H),3.46(td,J=11.7,2.0Hz,2H),2.26-2.10(m,4H)
【0068】
実施例E:3-カルボキシ-1-フェニルピリジン-1-イウムクロリドの合成:
【化14】
1-(2,4-ジニトロフェニル)ピリジン-1-イウム-3-カルボキサミドクロリド(0.20g、0.616mmol)を無水メタノール(2.0mL)に溶解し、次にアニリン(0.16mL、1.24mmol)を加えた。反応混合物を一晩維持し、次に焼結管を通して濾過し、固体をメタノール(3x1mL)で洗浄した。濾液をエーテル(約30mL)で希釈して沈殿物を形成させ、混合物を再び焼結管を通して濾過した。固体をエーテルで洗浄し、次に短時間吸引乾燥して、1-フェニルピリジン-1-イウム-3-カルボキサミドクロリドを黄色固体として得た(105mg、73%)。
【0069】
1-フェニルピリジン-1-イウム-3-カルボキサミドクロリド(88mg、0.375mmol)および濃塩酸(32%)(1.0mL、10.2mmol)をエース圧力管に入れ、窒素でパージし、密封し、ブラストシールドの後ろに置き、60℃まで一晩加熱した。
【0070】
反応混合物をジオキサン(5mL)で希釈し、次に真空中で濃縮乾固させた。残留物をトルエン(x2)で共沸させた。残留物をイソプロパノールで粉砕し、次にエタノールに溶解し、脱脂綿栓を通して濾過し、エーテルの添加により沈殿させ(2回繰り返し)、表題化合物を白色固体として得た(29mg、33%)。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-d6)δ9.54(m,1H),9.49(dt,J=6.0,1.4Hz,1H),9.12(dt,J=7.8,1.4Hz,1H),8.38(dd,J=8.0,6.2Hz,1H),7.94-7.89(m,2H),7.76-7.72(m,3H)
【0071】
実施例F:1-ベンジル-3-カルボキシピリジン-1-イウムブロミドの合成:
【化15】
ニコチン酸(100mg、0.812mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)および臭化ベンジル(0.11mL、0.894mmol)をバイアルに入れた。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して淡黄色の油を得た。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させた。エーテル層を除去し、残留物を真空で乾燥させた。粗製物質を水から再結晶化して、白色固体(110mg、46%)を得た。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-D6)δ9.54(1H,s),9.23-9.15(1H,m),8.91-8.83(1H,m),8.20-8.12(1H,m),7.57-7.50(2H,m),7.48-7.38(3H,m),5.91(2H,s)
【0072】
実施例G:3-カルボキシ-1-イソプロピルピリジン-1-イウムの合成(797)
【化16】
1-(2,4-ジニトロフェニル)ピリジン-1-イウム-3-カルボキサミドクロリドを無水メタノールに溶解し、次に2-アミノプロパンを加える。反応混合物を一晩維持し、次に焼結管を通して濾過し、固体をメタノールで洗浄する。濾液をエーテルで希釈して沈殿物を形成させ、混合物を再び焼結管を通して濾過する。固体をエーテルで洗浄し、次に短時間吸引乾燥して3-カルバモイル-1-イソプロピルピリジン-1-イウムクロリドにする。
【0073】
3-カルバモイル-1-イソプロピルピリジン-1-イウムクロリドおよび濃塩酸(32%)をエース圧力管に入れ、窒素でパージし、密封してブラストシールドの後ろに置き、60℃まで一晩加熱する。
【0074】
反応混合物をジオキサンで希釈し、次に真空中で濃縮乾固する。残留物をトルエン(x2)で共沸させる。残留物をイソプロパノールで粉砕し、次にエタノールに溶解し、脱脂綿栓を通して濾過し、エーテルの添加により沈殿させ(2回繰り返す)、表題化合物を得る。
1H NMR割り当て:(400 Hz,DMSO-d6)δ9.55(s,1H),9.40-9.38(m,1H),8.94(dt,J=8.2,1.4 Hz,1H),8.27(dd,J=8.2,6.0 Hz,1H),7.39-7.11(m,見かけの1:1:1三重項,アンモニウムイオン,~4H),5.18(見かけの五重項,予想されるセプテットの最も外側の線が区別できない,J=6.8Hz,1H),1.63(d,J=6.4 Hz,6H)
【0075】
実施例H:1-(2-アミノ-2-オキソ-エチル)ピリジン-1-イウム-3-カルボン酸ブロミドの合成:
【化17】
ニコチン酸、N,N-ジメチルホルムアミドおよび2-ブロモアセトアミドをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して、白色固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-D6)δ9.36(1H,s),9.02-8.97(1H,m),8.94-8.88(1H,m),8.20-8.13(1H,m),8.04(1H,s),7.70(1H,s),5.46(2H,s)
【0076】
実施例I:1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウム(582)ブロミドの合成
【化18】
ニコチンアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよび臭化ベンジルをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して、白色固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-D6)δ9.63(1H,s),9.32-9.27(1H,m),9.00-8.93(1H,m),8.60(1H,s),8.33-8.25(1H,m),8.19(1H,s),7.61-7.53(2H,m),7.51-7.39(3H,m),5.92(2H,s).
【0077】
実施例J:3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウム(583)ヨウ化物の合成
【化19】
ニコチンアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびヨードメタンをバイアルに入れる。これを密封し、光を遮断するために箔で覆い、混合物を50℃で18時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して油を得る。粗生成物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルの添加により油として沈殿させる。エーテル層を除去し、残留物を真空乾燥させる。粗製物質を水から再結晶化して、白色固体を得る。
1H NMR割り当て:(400MHz,DMSO-D6)δ9.36(1H,s),9.02-8.97(1H,m),8.94-8.88(1H,m),8.20-8.13(1H,m),8.04(1H,s),7.70(1H,s),5.46(2H,s).
【0078】
実施例1-毒性アッセイ
ID8マウス卵巣表面上皮細胞株(Milipore、SCC145)を、35mmディッシュに細胞密度150000で、高グルコースDMEM培地(Sigmaカタログ番号D6429)、4%FBS(カタログ番号ES-009-C)、5μg/mLインスリン、5μg/mLトランスフェリンおよび5ng/mLセレン酸ナトリウム(1X ITS;Gibcoカタログ番号41400045)および1Xペニシリン-ストレプトマイシン溶液(Thermo Fisherカタログ番号15140122)に播種した。この培地に、即座に1μMの化合物を添加し、細胞を2日間成長させ、光学顕微鏡を使用して形態を確認した。
【0079】
化合物3-カルバモイル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリジン-1-イウム(798)、3-カルボキシ-1-メチルキノリン-1-イウム(797)、1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウム(582)、3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウム(583)、およびシクロパミンは、毒性アッセイで試験を行い、すべてが、細胞の形態を変化させることのない、または成長した細胞に対して毒性がないことが判明した。
【0080】
実施例2-化合物798、797、582、583およびシクロパミンで処理後の卵胞数の評価
動物
C57BL/6jxCBA F1ハイブリッドマウス(Janvier Labs,France)は、Department of Biomedicine,Aarhus Universityの動物施設に収容され、飼育された。動物は、12:12時間制御された明暗環境で収容され、餌および水を自由に与えられた。7日齢の雌の子犬をこの検査に使用した。
【0081】
卵巣の単離および器官培養
子犬は屠殺し、卵巣を切除した。実体顕微鏡MZ75(Leica Microsystems、Germany)を使用して、余分な組織を除去した。解剖中、卵巣は培養培地:10%FBS(Thermo Fisher)、100mIU/mLのFSH(Sigma-Aldrich)、100IU/mLペニシリン(Thermo Fisher)、100μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher)および1%インスリン-トランスフェリン-セレニウム(Thermo Fisher)を添加したαMEM(Thermo Fisher)で37℃に維持した。単離された卵巣を、24ウェルプレート(組織培養処理、20細胞培養プレート;Costar)のウェルインサート(PETメンブレンThinCert、孔径0.4μm;Greiner bio-one)に移した。200~300μLの培養培地をインサートの下のウェルに加え、最大2つの卵巣を各インサートのメンブレンに置いた。培養培地には、化合物582および583の場合は、0.5μMおよび1μMの化合物、化合物798および798の場合は、25μMの化合物、最後にシクロパミンの場合は、0.5μMの化合物を補充した。24ウェルプレートの最大6つのウェルをインサートに使用した。湿度を確保するために、残りのウェルに滅菌dH2Oを添加した。卵巣は、37℃、5%COで4日間培養した。150μLの培地を1日おきに新鮮な培養培地と交換した。
【0082】
組織学的分析および卵胞のカウント
器官培養で4日間保持された卵巣は、4%パラホルムアルデヒド溶液で、4℃で、24時間固定した。固定後、70%、96%、および99.9%のエタノールを使用して、一連のエタノール中で卵巣を脱水した。卵巣をパラフィンワックスに浸透させる前に、キシレンを清澄剤として使用した。パラフィン中のサンプルの5μm切片をミクロトーム(Cut 6062,SLEE medical,Germany)を使用して切断した。パラフィン切片をスライドガラスにマウントし、パラフィンを60℃で融解させ、このサンプルをヘマトキシリンおよびエオシンで染色した(標準プロトコルを使用)。サンプルは、キシレン中で2x15分間インキュベートすることにより、脱パラフィンした。その後、一連のエタノール;99.9%エタノール中、3×2分、96%エタノール中2分、70%エタノール中2分で、再水和させた。次に、サンプルをdH2Oですすぎ、ヘマトキシリンで40秒間染色し、dH2Oで5分間すすぎ、エオシンで46秒間染色した。サンプルをエタノールで脱水させた。96%エタノールで2×2分、99.9%エタノールで2x2分、最後にキシレンで少なくとも30分間清澄化後、Eukittマウント培地(Sigma-Aldrich)およびカバーガラスを使用してサンプルをマウントした。各発育段階での卵胞の数は、倒立型研究用顕微鏡(DMI4000B,Leica Microsystems,Germany)を使用してカウントした。各卵巣の3番目から4番目のセクションごとの卵胞を数え、様々な段階での卵胞の分布を決定した(パーセンテージ)。すべての治療は、少なくとも3回の生物学的リピートで繰り返した。卵母細胞の核が見える卵胞のみを数えた。卵胞は、原始、一次、または二次のいずれかに分類した。簡潔に言えば、原始卵胞は、扁平上皮顆粒膜細胞によって内包化された卵母細胞からなる。一次卵胞は、立方体顆粒膜細胞の1つの層によって内包化された卵母細胞であり、二次卵胞は、立方体顆粒膜細胞の複数の層によって内包化された卵母細胞からなる。
【0083】
統計分析
各生物学的リピートの異なる段階の卵胞のパーセンテージを平均した。2つの群を比較する場合、対応のないt検定を実施した。3つ以上の群を比較する場合には、一元配置分散分析およびその後にHolm-Sidak法を使用して、統計的有意性の決定を行った。P≦0.05の場合、群は有意に異なると見なした。統計は、GraphPad Prism(version7.00 GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)を使用して計算した。
【0084】
結果
卵巣を化合物3-カルバモイル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリジン-1-イウム(798)、3-カルボキシ-1-メチルキノリン-1-イウム(797)、1-ベンジル-3-カルバモイルピリジン-1-イウム(582)、3-カルバモイル-1-メチルピリジン-1-イウム(583)およびシクロパミンとインキュベートする効果を上記のように評価した。
【0085】
化合物798、797、582、および583とのインキュベーション後、卵巣切片を視覚的に検査した(図2A~5A)。培養中の卵巣の全体的な外観は健康であり、サイズは正常であり、収縮は観察されなかったことが見出された。さらに、卵胞の形態は、細胞のサイズおよび細胞間の接触に関してこれらの成長が正常であったため、健康に見えた。卵母細胞および顆粒膜細胞は、分離されなかった。最後に、化合物を添加しなかったサンプルと比較して、化合物を添加したサンプルでは、卵胞の活性化、すなわち、原始卵胞から一次および二次卵胞への変換が顕著であることが判明した(図2B~5B、および図6)。

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】