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特表2023-509955陰圧治療のためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】陰圧治療のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542179
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 US2021012739
(87)【国際公開番号】W WO2021142293
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,551
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】519224269
【氏名又は名称】アプライド ティシュ テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】APPLIED TISSUE TECHNOLOGIES LLC
【住所又は居所原語表記】99 Derby Street, Ste. 200, Hingham, MA 02043, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,エロフ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA38
4C267BB24
4C267CC01
4C267CC06
4C267JJ06
4C267JJ08
4C267JJ09
4C267JJ14
4C267JJ16
(57)【要約】
浮腫管理、たとえば浮腫の軽減のためのデバイスおよび方法が開示される。治療デバイスが、治療空間を画定するチャンバであって実質的に不透性の材料から製作され、周辺部の形状に従うように構成され、チャンバの内面が複数の表面パターンを有し、チャンバが基部に封止部を有するチャンバと、チャンバに接続され、治療空間への陰圧の印加を可能にするように治療空間と流体連通している少なくとも1つの導管とを含み得る。治療デバイスは、被験者の標的部位における浮腫を軽減するように構成可能である。治療デバイスは、被験者の少なくとも一方の乳房、たとえば両方の乳房の、浮腫管理、たとえば浮腫の軽減のためにさらに構成可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者上の標的部位における浮腫を軽減する方法であって、
前記標的部位の周辺部に治療デバイスを固定することを含み、
前記治療デバイスが、
治療空間を画定するチャンバであって、実質的に不浸透性の材料から製作され、前記周辺部の形状に従うように構成され、前記チャンバの内面が複数の表面パターンを有し、前記チャンバが基部に封止部を有する、チャンバと、
前記チャンバに接続され、前記治療空間への陰圧の印加を可能にするように前記治療空間と流体連通している少なくとも1つの導管とを含み、
前記方法がさらに、
前記複数の表面パターンが前記標的部位に直接接触することができるようにし、前記治療空間に前記陰圧を均一に分散させるように構成された経路を形成することができるようにするように、前記治療デバイスの前記治療空間に陰圧を印加することと、
前記標的部位の浮腫を軽減するのに十分な期間にわたって前記治療空間内の前記陰圧を維持することとを含む、方法。
【請求項2】
前記標的部位が創傷部位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療デバイスが前記創傷部位を囲む組織における浮腫を軽減する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的部位が前記被験者の乳房に付随する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療デバイスが、前記被験者の少なくとも一方の乳房の上に配置されるような大きさおよび形状とされている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の表面パターンが、前記被験者の前記少なくとも一方の乳房の外面形状に従う形状とされている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療デバイスが前記被験者の両方の乳房に固定される、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の表面パターンが複数のエンボス加工構造物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的部位が前記被験者の下肢に付随する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的部位が前記被験者の足に付随する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的部位が前記被験者の腕に付随する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的部位が前記被験者の手に付随する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的部位が前記被験者の胸部に付随する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標的部位が前記被験者の腹部に付随する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標的部位が選択的処置に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記選択的処置が美容整形処置である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的部位が皮膚移植処置に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記標的部位が外科処置に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記外科処置が切開を生じさせる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標的部位からの滲出物を収集することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記治療デバイスの固定の前に前記標的部位を清拭することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記標的部位を滅菌溶液で洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記標的部位に治療薬を適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
被験者上の標的部位における浮腫を軽減するための浮腫管理デバイスであって、
治療空間を画定するチャンバであって、実質的に不浸透性の材料から製作され、前記浮腫標的部位の周辺部の形状に従うように構成され、前記チャンバの内面が複数の表面パターンを有する、チャンバと、
前記浮腫標的部位の周囲の前記周辺部の皮膚に固定されるように構成された前記チャンバの基部における封止部であって、接着材を含む封止部と、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部が、前記チャンバに接続され、前記治療空間への陰圧の印加を可能にするように前記治療空間と流体連通している、少なくとも1つの導管とを含む、浮腫管理デバイス。
【請求項25】
前記チャンバが、浮腫を生じている前記被験者上の標的部位を囲むように構築され、構成されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記少なくとも1つの導管が、前記治療空間から流体を除去し、または前記治療空間に流体を導入するように構成されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記複数の表面パターンが、前記標的部位に接触し前記標的部位の外面形状に従うような形状とされた、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記複数の表面パターンが、互いに約0.2mmから約10mmの距離に離隔して配置されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項29】
前記複数の表面パターンが、約0.1mmから約5mmの高さを有する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項30】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの前記内面に一様なパターンで配置されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項31】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの前記内面に一様でないパターンで配置されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項32】
前記複数の表面パターンのそれぞれが、円錐形、ピラミッド形、五角形、六角形、半球形、ドーム形、棒状、丸みのある辺を有する細長い隆起、および角張った辺を有する細長い隆起からなるグループから選択された形状を有する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項33】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの前記内面に対して概ね垂直の方向に前記治療空間内に貫入している、請求項24に記載のデバイス。
【請求項34】
前記複数の表面パターンが、複数のエンボス加工構造物を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項35】
前記チャンバが多孔質挿入物を含まない、請求項24に記載のデバイス。
【請求項36】
前記陰圧を印加するための吸引デバイスと、流体トラップと、排気口とをさらに含み、前記吸引デバイスが各チャンバの前記治療空間と前記流体トラップと前記排気口と流体連通し、前記流体トラップが前記吸引デバイスと前記排気口との間に流体配置されている、請求項24に記載のデバイス。
【請求項37】
前記標的部位が前記被験者の乳房に付随する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項38】
前記標的部位が前記被験者の下肢に付随する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項39】
前記標的部位が前記被験者の足に付随する、請求項38に記載のデバイス。
【請求項40】
前記標的部位が被験者の腕に付随する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項41】
前記標的部位が前記被験者の手に付随する、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
被験者の少なくとも一方の乳房のための浮腫管理デバイスであって、
少なくとも一方の乳房を囲むような大きさおよび形状とされた治療空間を画定する内面を有するチャンバであって、前記内面が、前記少なくとも一方の乳房に直接接触するように、および前記内面と前記少なくとも一方の乳房との間に陰圧を分散させるための経路を形成するように構成された複数の表面パターンを含む、チャンバと、
前記少なくとも一方の乳房の周囲の胸壁の皮膚に固定されるように構成された前記チャンバの基部における封止部であって、接着材を含む封止部と、
第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部が、前記チャンバに接続され、前記治療空間への陰圧の印加を可能にするように前記治療空間と流体連通している、少なくとも1つの導管とを含む、浮腫管理デバイス。
【請求項43】
前記チャンバが前記被験者の両方の乳房を囲むような大きさおよび形状とされている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記チャンバが、陰圧が印加されると前記少なくとも一方の乳房に支持を与えるように構成されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項45】
前記チャンバが、前記少なくとも一方の乳房に支持を与えるように構成された下着に付随している、請求項42に記載のデバイス。
【請求項46】
前記下着が前記チャンバを囲む外側支持構造体を含む、請求項44に記載のデバイス。
【請求項47】
前記外側支持構造体が繊維材である、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記チャンバが、実質的に不浸透性の材料から製作されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項49】
前記少なくとも1つの導管が、前記治療空間から流体を除去し、または前記治療空間に流体を導入するように構成されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項50】
前記複数の表面パターンが前記少なくとも一方の乳房の外面形状に従う形状とされている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項51】
前記複数の表面パターンが互いに約0.2mmから約10mmの距離に離隔して配置されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項52】
前記複数の表面パターンが、約0.1mmから約5mmの高さを有する、請求項42に記載のデバイス。
【請求項53】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの前記内面に一様なパターンで配置されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項54】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの前記内面に一様でないパターンで配置されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項55】
前記複数の表面パターンのそれぞれが、円錐形、ピラミッド形、五角形、六角形、半球形、ドーム形、棒状、丸みのある辺を有する細長い隆起、および角張った辺を有する細長い隆起からなるグループから選択された形状を有する、請求項42に記載のデバイス。
【請求項56】
前記複数の表面パターンが、各チャンバの内面に対して概ね垂直の方向に前記治療空間内に貫入している、請求項42に記載のデバイス。
【請求項57】
前記チャンバが多孔質挿入物を含まない、請求項42に記載のデバイス。
【請求項58】
前記陰圧を印加するための吸引デバイスと、流体トラップと、排気口とをさらに含み、前記吸引デバイスが各チャンバの前記治療空間と前記流体トラップと前記排気口と流体連通し、前記流体トラップが前記吸引デバイスと前記排気口との間に流体配置されている、請求項42に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には浮腫管理および標的部位の治癒に関し、より具体的には、陰圧および/または治療薬により、標的部位における浮腫を軽減し、治癒を促進するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科処置後の切開部などの開放創を治療するため、および、身体の様々な部位における浮腫を軽減するために、様々な技術が採用されている。たとえば、開放創は、湿潤または乾燥ガーゼを使用して治療される場合がある。浮腫は、圧迫ラップ、患部の温度降下、心臓レベルより高位への患部の挙上、利尿剤などの医薬品を使用して管理される場合がある。しかし、このような治療の結果、過度の痛み、創傷の脱水、体液およびタンパク質の損失、熱損失または治癒遅延を生じさせる可能性がある。感染の発現を遅らせるために、熱傷を抗生物質入りクリームなどで追加的に治療する場合もある。
【0003】
治療部位を保護し、治療部位の環境管理を行うためのデバイスが開発されている。たとえば、使用のためのデバイスおよび方法の例は、Elof Erikssonによる「System for Diagnosis and Treatment of Wounds」という名称の米国特許第5,152,757号、Erikssonらによる「Wound Chamber with Remote Access Portal」という名称の米国特許出願第11/130,490号に記載されており、それぞれが参照によりその全体が記載されているかのように本明細書に組み込まれる。また、Erikssonらの米国特許第8,298,197号、第8,632,523号、第9,693,908号および第9,717,829号も、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
デバイスは、典型的には、患者の部位の周囲の所定表面領域を囲むためのチャンバを含む。デバイスは、その部位に直接隣接する皮膚に封着される。しかし、肢の上および周囲の特定の部位は、比較的平坦な皮膚表面での使用が意図されているデバイスによる治療が可能でない場合がある。その代わりに、その部位の周囲にチャンバ環境を作り出すために、チャンバ内に肢の全部または一部を囲む必要がある場合がある。デバイスは、他の特徴に加えて、治療流体および治療添加剤をデバイスに導入し、創傷流体および/または空気をデバイスから抜き取るための導管を有することがある。
【0005】
多くの部位を陰圧の印加によって治療することができる。そのような治療方法は、多年にわたって実践されてきた。そのような治療の利点には、細菌負荷の低減、浮腫の軽減、滲出物および間質液の低減、傷の大きさの縮小、血流の促進および循環の円滑化、および肉芽組織の形成の刺激が含まれ得る。細胞レベルでは、陰圧創傷治療は、創傷の治癒の血管形成段階および増殖段階に関与する細胞の移動および分化を引き起こす炎症誘発性遺伝子発現を促進する。陰圧療法の提供のための既存のデバイスおよび装置は複雑である。そのようなデバイスは、典型的には、患部に配置される発泡材またはガーゼなどの多孔質挿入物と、内部空間を吸引源に接続する導管と、これらの構成要素の上を覆い、部位の周囲の皮膚に封着される柔軟性カバーと、電動吸引ポンプと、ポンプを操作し、システムを監視するためのコントロールと、滲出物を収集する容器と、部位から除去された物質を処理するためのフィルタと、患者に対する危害を防止し、生体物質が外部環境に漏出するのを遮断する安全システムとを含む。このようなデバイスは、高価で、手間がかかり、患者の可動性を制限する。これらのデバイスは一般に、乳房、顔、首および頭部を含む、身体の特定の領域上の部位に適するとはみなされない。多くの構成要素、特に挿入物および導管の周囲の封止物は、漏れやすい。したがって、連続的に、または頻繁に吸引を適用する必要がある。
【0006】
連続吸引は、典型的には、電気モータを動力源とする真空ポンプによって行われる。このようなシステムは、患者の安全を確保するためにポンプの動作を測定、監視、および制御するのに複雑な手段を必要とする。さらに、多くの陰圧デバイスは、壊死組織、侵襲性感染、活動性出血、および露出血管が存在する場合には禁忌である。これらの陰圧デバイスは、創傷において多孔質挿入物(スポンジ、発泡材、ガーゼ、メッシュなど)の使用を必要とする。挿入物には2つの問題がある場合がある。すなわち、挿入物内への組織の成長と、挿入物内の感染性および/または望ましくない物質の内包である。組織はこのような挿入物内および周囲に増殖する可能性があり、それによって治癒過程に逆効果を生じさせる。また、このような挿入物は、滲出物および微生物を保持する可能性があり、したがって汚染および/または感染を起こす可能性があり、それによって治癒過程に逆効果を呈する。さらに、これらのデバイスの高コストは、患者に対する使用を思いとどまらせ、または遅らせる可能性がある。
【0007】
既存の陰圧治療デバイスは、ユーザがいくつかの構成要素を組み立て、取り付け、カスタマイズする必要があるため、手間がかかる。まず、ユーザは、標的部位に配置される発泡材、ガーゼ、メッシュまたはその他の材料の挿入物を準備し、カットし、所定の大きさにする必要がある。次に、ユーザは挿入物内に導管を配置し、次に導管を覆い、漏れ防止封止を形成することを目的として挿入される材料とともに挿入する必要がある。実際には、上述のように、このような構成要素は漏れがちであり、創傷の周囲の空間内に陰圧を確立し、再確立するために、吸引を頻繁に適用する必要がある。さらに、現在入手可能な陰圧デバイスおよびシステムは、部位の視界を妨げ、それによって監視と診断をより困難にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つまたは複数の実施形態によると、陰圧および/または治療薬を使用して標的部位における浮腫を軽減するデバイスおよび方法が開示される。
【0009】
1つまたは複数の実施形態によると、被験者の標的部位における浮腫を軽減する方法が、標的部位の周辺部に治療デバイスを固定することと、複数の表面パターンが標的部位に直接接触することができるように、および、治療空間内に陰圧を均一に分散させるように構成された経路を生じさせることができるように、治療デバイスの治療空間に陰圧を印加することと、標的部位の浮腫を軽減するのに十分な期間にわたって治療空間内の陰圧を維持することとを含むことができる。治療デバイスは、治療空間を画定するチャンバであって実質的に不浸透性の材料からなり、周辺部の形状に従うように構成され、チャンバの内面が複数の表面パターンを含み、基部における封止部を有するチャンバと、チャンバに接続され、治療空間に陰圧を印加することができるように治療空間と流体連通する少なくとも1つの導管とを含むことができる。
【0010】
実施形態によっては、標的部位は創傷部位を含む。
【0011】
実施形態によっては、方法は、創傷部位を囲む組織、たとえば健常組織における浮腫を軽減することを含む。
【0012】
実施形態によっては、標的部位は被験者の乳房に付随する。実施形態によっては、治療デバイスは、被験者の少なくとも一方の乳房上に配置される大きさおよび形状とされる。特定の実施形態では、複数の表面パターンは、被験者の少なくとも一方の乳房の外面形状に従う形状とされる。実施形態によっては、治療デバイスは被験者の両乳房に固定される。
【0013】
実施形態によっては、複数の表面パターンは複数のエンボス加工構造物を含む。
【0014】
実施形態によっては、標的部位は被験者の下肢に付随する。特定の実施形態では、標的部位は、被験者の足に付随する。実施形態によっては、標的部位は被験者の腕に付随する。特定の実施形態では、標的部位は被験者の手に付随する。実施形態によっては、標的部位は被験者の胸部に付随する。実施形態によっては、標的部位は被験者の腹部に付随する。
【0015】
実施形態によっては、標的部位は選択的処置に起因する。特定の実施形態では、選択的処置は美容整形処置である。実施形態によっては、標的部位は外科処置に起因する。特定の実施形態では、外科処置は切開を生じさせる。
【0016】
特定の実施形態では、標的部位は皮膚移植処置に起因する。
【0017】
さらなる実施形態では、方法は標的部位から滲出物を収集することを含み得る。
【0018】
さらなる実施形態では、方法は治療デバイスを固定する前に標的部位を清拭することを含み得る。
【0019】
さらなる実施形態では、方法は標的部位を滅菌溶液で洗浄することを含み得る。
【0020】
さらなる実施形態では、方法は標的部位に治療薬を適用することを含み得る。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、被験者の標的部位における浮腫を軽減する浮腫管理デバイスが、治療空間を画定するチャンバであって、実質的に不浸透性の材料から製作され、標的部位の周辺部の形状に従うように構成され、チャンバの内面が複数の表面パターンを有するチャンバと、標的部位の周囲の周辺部の皮膚に固定されるように構成されたチャンバの基部における封止部であって、接着材を含む封止部と、第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部が、チャンバに接続され、治療空間への陰圧の印加を可能にするように治療空間と流体連通している、少なくとも1つの導管とを含み得る。
【0022】
実施形態によっては、チャンバは浮腫を生じている被験者の標的部位を囲むように構築され、構成されている。
【0023】
実施形態によっては、少なくとも1つの導管は、流体を治療空間から除去し、または流体を治療空間に導入するように構成されている。
【0024】
実施形態によっては、複数の表面パターンは、標的部位と接触し、標的部位の形状に従う形状とされている。複数の表面パターンは、互いに約0.2mmから約10mm離隔して配置されてもよく、約0.1mmから約5mmの高さを有してもよい。実施形態によっては、複数の表面パターンは、各チャンバの内面に一様なパターンで配置される。実施形態によっては、複数の表面パターンは、各チャンバの内面に一様ではないパターンで配置される。
【0025】
実施形態によっては、複数の表面パターンのそれぞれが、円錐形、ピラミッド形、五角形、六角形、半球形、ドーム形、棒状、丸みのある辺を有する細長い隆起、および角張った辺を有する細長い隆起からなるグループから選択された形状を有する。
【0026】
実施形態によっては、複数の表面パターンは、チャンバの内面に対して概ね垂直な方向に、分離した治療空間内に貫入している。特定の実施形態では、複数の表面パターンは複数のエンボス加工構造物を含む。
【0027】
さらなる実施形態では、浮腫管理デバイスは、陰圧を印加するための吸引デバイスと、流体トラップと、排気口とを含んでもよく、吸引デバイスは各チャンバの治療空間、流体トラップおよび排気口と流体連通し、流体トラップは吸引デバイスと排気口との間に流体配置されている。
【0028】
実施形態によっては、標的部位は被験者の乳房に付随する。実施形態によっては、標的部位は被験者の下肢に付随する。特定の実施形態では、標的部位は被験者の足に付随する。実施形態によっては、標的部位は被験者の腕に付随する。特定の実施形態では、標的部位は被験者の手に付随する。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によると、被験者の少なくとも一方の乳房のための浮腫管理デバイスが、少なくとも一方の乳房を囲むような大きさと形状の治療空間を画定する内面を有するチャンバであって、内面が、少なくとも一方の乳房と直接接触するように、および、内面と少なくとも一方の乳房との間に陰圧を分散させるための経路を形成するように構成された、複数の表面パターンを含む、チャンバと、少なくとも一方の乳房の周囲の胸壁の皮膚に固定されるように構成されたチャンバの基部における封止部であって、接着材を含む封止部と、第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部が、チャンバに接続され、治療空間への陰圧の印加を可能にするように治療空間と流体連通している、少なくとも1つの導管とを含み得る。
【0030】
実施形態によっては、チャンバは被験者の両乳房を囲むような大きさおよび形状とされている。
【0031】
実施形態によっては、チャンバは陰圧が加えられると少なくとも一方の乳房に対して支持を与えるように構成される。
【0032】
実施形態によっては、チャンバは少なくとも一方の乳房に支持を与えるように構成された下着に付随する。下着は、チャンバを囲む袋またはポケットなどの外側支持構造体を含んでもよい。特定の実施形態では、外側支持構造体は繊維材料である。
【0033】
実施形態によっては、チャンバは実質的に不浸透性の材料で形成されている。
【0034】
実施形態によっては、少なくとも1つの導管は、治療空間から流体を除去し、または治療空間に流体を導入するように構成される。
【0035】
特定の実施形態では、複数の表面パターンは、少なくとも一方の乳房の外面形状に従う形状とされる。複数の表面パターンは、互いに約0.2mmから約10mm離隔して配置されてもよく、約0.1mmから約5mmの高さを有してもよい。実施形態によっては、複数の表面パターンは、各チャンバの内面に一様なパターンで配置されている。実施形態によっては、複数の表面パターンは各チャンバの内面に一様ではないパターンで配置されている。
【0036】
実施形態によっては、複数の表面パターンのそれぞれは、円錐形、ピラミッド形、五角形、六角形、半球形、ドーム形、棒状、丸みのある辺を有する細長い隆起、および角張った辺を有する細長い隆起からなるグループから選択された形状を有する。
【0037】
実施形態によっては、複数の表面パターンは、チャンバの内面に対して概ね垂直な方向に、分離した治療空間に貫入している。
【0038】
特定の実施形態では、チャンバは多孔質挿入物を含まない。
【0039】
さらなる実施形態では、浮腫管理デバイスは、陰圧を印加するための吸引デバイスと、流体トラップと、排気口とを含むことができ、吸引デバイスは各チャンバの治療空間、流体トラップおよび排気口と流体連通し、流体トラップは吸引デバイスと排気口との間に流体配置されている。
【0040】
図面では、異なる図面を通じて同様の参照文字は同じ部分を一般的に指す。また、図面は必ずしも一律の縮尺ではなく、全般的に本発明の原理を例示することに重点を置いており、本発明の範囲の定義としては意図されていない。わかりやすくするために、すべての図面においてすべての構成要素に標識が付けられてはいない場合がある。以下の説明では、本発明の様々な実施形態について以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】チャンバから吸引源まで至る導管を有する治療デバイスを示す透視図である。
図2図1のデバイスを示す垂直断面図である。
図3】出入口に至る追加の導管を有する図1のデバイスを示す断面図である。
図4】出入口に至る分岐導管を有する図1のデバイスを示す断面図である。
図5】内部チャンバ空間と連通する導管の端部を示す透視図である。
図6】チャンバ壁の内面上および内面中に配置された複数の表面パターンであって、複数の表面パターンが一様な大きさおよび形状であり、一様に離隔されている表面パターンを示す、垂直断面図である。
図6a】1つまたは複数の実施形態による複数の表面パターンを示す概略図である。
図6b】1つまたは複数の実施形態による複数の表面パターンを示す概略図である。
図6c】1つまたは複数の実施形態による複数の表面パターンを示す概略図である。
図7】チャンバ壁の内面上および内面中に配置された表面パターンの2つのグループであって、一方のグループが治療空間に貫入し、他方のグループの貫入の程度が小さく、これらのグループの表面パターンが規則的なパターンで交互になっている、表面パターンのグループを示す垂直断面図である。
図8】チャンバ壁の内面上および内面中に配置された表面パターンの3つのグループであって、グループはチャンバ空間への貫入の程度が異なり、規則的なパターンで交互になっている、表面パターンのグループを示す垂直断面図である。
図9a】構造物が隆起帯からなる、チャンバ壁の内面上および内面内に配置された表面パターンを示す概観図である。
図9b】丸みのある縁を有する図9aの隆起帯を示す垂直断面図である。
図9c】角張った断面を有する図9aの隆起帯を示す垂直断面図である。
図10】隆起帯の間に配置された隆起ドーム形表面パターンが付加された、図9aに示す隆起帯表面パターンを示す概観図である。
図11】チャンバ壁の内面上および内面中に配置された隆起帯形表面パターンであって、その表面パターンの2本の平行な線がチャネルを形成する表面パターンを示す概観図である。
図12】チャンバ壁の内面上および内面内に配置された隆起ドーム形表面パターンであって、表面パターンの2本の平行な線がチャネルを形成する表面パターンを示す概観図である。
図13】チャンバの中央に通じ、次に治療空間の内部から連通する導管に通じるチャネルのパターンを示す、チャンバの図である。
図14】連通導管に通じるチャネルの放射状パターンを示す図である。
図15】連通導管に通じるチャネルの分岐パターンを示す図である。
図16】連通導管に通じる副分岐パターンを示す図である。
図17】チャンバ壁における襞を示す垂直断面図である。
図18a】表面パターンが襞内に連続空き空間を維持している、襞の内面上および内面内に配置された複数の表面パターンを有する、チャンバ壁における襞を示す垂直断面図である。
図18b】襞の内面上に配置された複数の表面パターンを有する、図17のチャンバ壁における襞を示す垂直断面図である。
図19】肢の上に配置するための導管として構成されたチャンバであって、チャンバ壁の内面に複数の表面パターンおよびチャネルを有するチャンバを示す図である。
図20】吸引源の前に配置された流体収集器を示す、図1のデバイスの断面図である。
図21】変形可能材料の圧搾球の形態の吸引デバイスを示す断面図である。
図22】1つまたは複数の圧縮ばねを含む柔軟性チャンバの形態の吸引デバイスを示す断面図である。
図23】1つまたは複数のねじりばねを含む楔形チャンバの形態の吸引デバイスを示す断面図である。
図24】板ばねを含む、図23のデバイスを示す断面図である。
図25】排気口に組み込まれたトラップとフィルタを有する吸引デバイスを示す断面図である。
図26】1つまたは複数の実施形態による、顔、頭部および首の創傷のための治療デバイスを示す透視図である。
図27】1つまたは複数の実施形態による、顔、頭部および首に付随する治療部位のための治療デバイスの別の実施形態を示す透視図である。
図28】1つまたは複数の実施形態による、顔、頭部よび首に付随する治療部位のための組み立てられていない治療デバイスを示す透視図である。
図29】1つまたは複数の実施形態による、顔、頭部および首に付随する治療部位のための組み立てられた治療デバイスを示す前面図である。
図30】1つまたは複数の実施形態による、滲出物収集デバイスを示す透視図である。
図31】1つまたは複数の実施形態による、滲出物収集デバイスを示す概略側面図である。
図32】1つまたは複数の実施形態による、滲出物収集デバイスを示す分解概略側面図である。
図33a】1つまたは複数の実施形態による、治療デバイスを示す透視図である。
図33b】1つまたは複数の実施形態による、チャンバ治療デバイスを示す側面図である。
図34a】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図34b】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図34c】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図34d】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図35a】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図35b】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図35c】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図35d】添付の実施例において説明するデータを示す図である。
図36a】1つまたは複数の実施形態による、被験者の乳房に取り付けるための治療デバイスを示す前面図である。
図36b】1つまたは複数の実施形態による、被験者の乳房に取り付けるための治療デバイスを示す側面図である。
図37】異なる寸法の本開示の治療デバイスを示す図である。
図38】1つまたは複数の実施形態による、治療デバイスを使用する治療の前の被験者集団に対して行われた外科処置を示すパイチャートである。
図39】本開示の治療デバイスを使用した異なる段階における胸骨正中切開部の治療を示す図であり、(a)は被覆材適用前、すなわち0日目の閉合切開部を示す図、(b)は0日目の被覆材を適用し、-80mmHgの圧力を維持した後の閉合切開部を示す図、(c)は4日目の被覆材除去直後の閉合切開部を示す図、(d)は13日目の閉合切開部の外見を示す図である。
図40】本開示の治療デバイスを使用した異なる段階における開胸切開部の治療を示す図であり、(a)は被覆材適用前、すなわち0日目の閉合切開部を示す図、(b)は0日目の被覆材を適用し、-80mmHgの圧力を維持した後の閉合切開部を示す図、(c)は3日目の被覆材除去直後の閉合切開部を示す図、(d)は9日目の閉合切開部の外見を示す図である。
図41】本開示の治療デバイスを使用した異なる段階における開腹切開部の治療を示す図であり、(a)は被覆材適用前、すなわち0日目の閉合切開部を示す図、(b)は0日目の、被覆材を適用し、-80mmHgの圧力を維持した後の閉合切開部を示す図、(c)は3日目の被覆材除去直後の閉合切開部を示す図、(d)は14日目の閉合切開部の外見を示す図である。
図42】本開示の治療デバイスを使用した異なる段階における乳房再建処置による切開部の治療を示す図であり、(a)は被覆材適用前、すなわち0日目の閉合切開部を示す図、(b)は0日目の、被覆材を適用し、-80mmHgの圧力を維持した後の閉合切開部を示す図、(c)は5日目の被覆材除去直後の閉合切開部を示す図、(d)は14日目の閉合切開部の外見を示す図である。
図43】本開示の治療デバイスを使用した異なる段階における患者の鼠径部における全層植皮術(FTSC)採皮部位の切開部の治療を示す図であり、(a)は被覆材的用前、すなわち0日目の閉合切開部を示す図、(b)は0日目の、被覆材を適用し、-80mmHgの圧力を維持した後の閉合切開部を示す図、(c)は4日目の被覆材除去直後の閉合切開部を示す図、(d)は13日目の閉合切開部の外見を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、様々な修正および代替形態が可能であるが、本発明の特定の実施形態を例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかし、特定の実施形態の説明は、本発明を開示されている特定の形態に限定することを意図しておらず、逆に、本発明は添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の趣旨および範囲に含まれるすべての修正、均等物おおび代替形態を対象として含むことを意図している。
【0043】
本開示は、設置および操作しやすく、患者に運動の自由を与え、上述の問題のうちの1つまたは複数の問題の影響を克服するかまたは少なくとも軽減する、簡単、安全で使い捨て可能なコスト効率の高い浮腫管理デバイスを提供することを目的とする。少なくとも一部の実施形態では、本開示は、多孔質挿入物などの界面層の使用を必要としない。一部の実施形態では、デバイスのワンピース、ツーピースまたはマルチピース構造が、患者の治療に適しており、実質的にあらゆる漏出をなくし、したがって、陰圧の持続的または頻繁な再生を必要とせずに、標的部位における陰圧を失わず、維持する。さらに、このデバイスの構造は、浮腫を軽減し、標的部位の治癒を促進し、それを介して治療空間において陰圧を分散させ、維持することができる経路を形成するように構成される。デバイスは、多孔質挿入物などの界面層を使用せずに、標的部位に直接接触させることができる。実施形態によっては、デバイスは、即効型または徐放型薬剤などの治療薬と併せて使用することができる。治療薬は、バイオマテリアルを使用するものなど、本明細書で詳述するように処方することができる。バイオマテリアルは、天然由来で生体適合性のあるものとすることができる。実施形態によっては、バイオマテリアルは、治療薬に架橋してもよい。バイオマテリアルは、その特性に基づいて選択可能である。実施形態によっては、バイオマテリアルは、たとえばヒドロゲル、親水コロイド、アルギン酸塩、または任意のその他のゲルであってもよい。本発明のデバイスは、たとえば水分損失を低減することによって治癒を促進するため、および治療薬の使用を容易にするためなどに、実質的に不浸透の性材料からなってもよい。少なくとも一部の実施形態では、材料の浸透性は、一般に水分および/または水蒸気透過速度に関係する。滲出物収集デバイスが、この治療デバイスと接続し、併用されてもよい。本開示の標識は、現在のデバイスに課される限界を超えて拡大可能である。本開示のコスト効果の結果として、より広範囲に、標的部位治療のスケジュールのより早期に、陰圧治療を与えることができる。
【0044】
様々な態様および実施形態によると、本開示のデバイスおよび方法は、非処置浮腫、たとえば糖尿病性関節腫脹または妊娠中の腫脹、リンパ浮腫、たとえばリンパ系またはその他の閉塞による腕、脚、または両方の腫脹、全層または部分層熱傷、外傷性疾患、選択的処置たとえば美容整形処置による手術後創傷、または非選択的処置、痛みおよび潰瘍、たとえば糖尿病性潰瘍、感染創、感染症後創傷、皮膚病変による皮膚喪失、および皮膚および深層組織損失を生じさせるその他の状態を治療するために使用可能である。一部の非限定的実施形態では、患者が約5%から約30%、またはそれ以上の全体表面積(TBSA)損傷を有してもよい。実施形態によっては、標的部位は創傷部位を含む。実施形態によっては、創傷部位は両側損傷の場合がある。創傷は、急性または慢性であってもよい。少なくとも一部の実施形態では、標的部位の性質により、真皮、皮下組織、筋肉、筋膜、腱または骨が露出していていもよい。デバイスおよび方法は、人体のどこでも使用可能であり、獣医学用途にも適し得る。たとえば、本発明のデバイスとともに使用するのに適する治療部位には、乳房、下肢たとえば足、腕たとえば手、胸部、および腹部に付随する治療部位が含まれるが、これらには限定されない。非限定的実施例として、本発明のデバイスおよび方法は、外傷性疾患、たとえば打撲傷、または、糖尿病もしくは妊娠に起因する合併症の結果など、先行する外科処置がないものであっても、下肢浮腫の治療において有用となり得る。
【0045】
デバイスおよび方法は、たとえば、瘢痕化の防止と、治療時の皮膚移植部の固定および保護とを目的として標的部位を準備するために使用可能である。本明細書に記載の一部の特定の非限定的な実施形態では、治療は、頭部、顔および/または首に発生する損傷に関するものであってもよい。たとえば、患者の頬、額および/または頭頂部を治療することができる。顔の組織を含む頭部は、1つまたは複数の実施形態により対処可能な特有の課題を提示する。本明細書に記載の他の特定の非限定的実施形態では、美容整形処置または乳腺切除などの外科処置の後など、少なくとも一方の乳房またはその付近で浮腫および切開部管理を行うことができる。乳房の手術後の切開部および皮膚の管理は、乳房全体の顕著な腫脹と組み合わさった皮膚の血行不良および切開部の治癒の遅れによって複雑化することが多い。この結果、顕著な瘢痕および、しばしば乳房の形状の変形を生じる。一部の非限定的実施形態では、浮腫管理デバイスを、胸骨切開、開胸、開腹などの外科処置の結果による創傷部位上、または全層皮膚移植の採皮部位に配置することができる。
【0046】
本開示の一態様は、標的部位の周囲に治療空間を画定するチャンバを含む、被験者上の標的部位における浮腫を軽減するための浮腫管理デバイスに見られる。チャンバは、可撓性の、実質的に水分および気体不浸透性材料からなってよく、標的部位の周辺の形状に従うように構成可能である。チャンバの基部における封止部は、適切な接着材料を使用して水密および気密封止を形成する。少なくとも1つの導管が治療空間から吸引源まで通じている。少なくとも1つの導管は、治療空間から流体を除去し、または治療空間に流体を導入するように構成可能である。本明細書に記載の少なくとも一部の実施形態では、吸引源は、密閉空間内に大気圧より低い圧力を発生および/または維持することができる。吸引源は、排出流体および壊死組織片など、標的部位からの滲出物を含む、チャンバから除去された物質の受け部としても機能する。すべての構成要素が、好ましくは、安価、軽量、使い捨て可能である。
【0047】
図1および図2を参照すると、治療デバイス20の図が示されている。デバイス20は、治療空間24を画定するチャンバ22と、患者の皮膚表面28の標的部位30上に封着可能な基部26とを含む。図の実施形態では、チャンバ22は、折り目23を有するふいご構造を有する。しかし、本発明はこれには限定されず、可撓性の、実質的に水分および気体不浸透性材料からなるチャンバの他の構成も使用可能である。チャンバは、治療中に標的部位の視診を可能にするために、透明とすることができる。特定の実施形態では、材料は実質的に透明とすることができる。他の実施形態では、材料は実質的に不透明であってもよい。実質的に不浸透性の材用の使用は、標的部位に治療薬を導入するのに特に有利である。さらに、チャンバ材料の不浸透性は、標的部位からの水分損失を防止し、それによって治癒の向上を促進する。デバイス20を形成可能な材料については以下で詳述する。デバイス20は、人体および獣医学用途の両方を含めて、身体部分上の任意の標的部位で使用されるように設計可能である。意図された用途に基づいて、円形、正方形、矩形、チューブ状、袋状、包膜またはその他の形状など、様々な幾何形状を実装することができる。一部の実施形態によると、治療空間24を画定するチャンバ22は、特定の身体部分用に構成されてもよい。たとえば、肢の上に配置するためのチューブまたはスリーブの形態のチャンバが図19に示されており、一方、以下で詳述するように頭の上に配置するためのフードの形態のチャンバが図26に示されている。
【0048】
場合によっては、治療デバイスが、図36aおよび図36bに示すように、少なくとも一方の乳房上への配置のための形状をしたチャンバを有してもよい。治療デバイスは、両方の乳房を囲む単体、たとえば単一のデバイスであってもよく、または、図36aに示すようにそれぞれが単一の乳房を覆う2つの別個のデバイスであってもよい。乳房のために使用される治療デバイスの数を問わず、治療デバイスのチャンバは少なくとも一方の乳房を囲む大きさおよび形状の治療空間を画定する内面と、接着材を使用して少なくとも一方の乳房の周囲の胸壁の皮膚に固定されるように構成された治療デバイスの基部における封止部と、第1の端部および第2の端部を有する少なくとも1つの導管とを有する。導管の第1の端部は、チャンバに接続可能であり、治療空間への陰圧の印加を可能にするように治療空間と流体連通することができる。場合によっては、2つのチャンバを有するデバイスでは、それぞれのチャンバからの導管を独立して使用することができ、あるいは各チャンバからの導管を単一の流路を有するように流体接続してもよい。
【0049】
少なくとも一方の乳房のための治療デバイスは、乳房に支持を与えるように構成されてもよい。たとえば、治療デバイスは、乳房に接着され、減圧されると、シャツまたは同様のものなどの標準的衣類とともに装着しているときに乳房を支持するのに十分な剛性を有してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、治療デバイスおよびその任意のチャンバが、ブラジャーまたは同様の下着など、乳房に支持を与えるように構成された下着に付随していてもよい。治療デバイスは、胸部および/または肩の周囲と乳房とに治療デバイスを固定するために、スナップまたはマジックテープなどの外すことができる留め具を備えた一連のストラップを有する下着に直接組み込むことも可能である。場合によっては、治療デバイスは、治療デバイスを受け入れるような大きさと形状であるポケットまたは袋などの下着の外側支持構造体に付随していてもよい。この構成では、外側支持構造体を含む下着は、外すことができる留め具などを備えたストラップなどの、下着に典型的に見られる閉じ具を含む。外側支持構造体および下着全体は、下着に使用される任意の適切な繊維材料からなってよく、下着の適切な繊維材料は当業者に知られている。
【0050】
1つまたは複数の実施形態によると、治療デバイス・チャンバの幾何形状は、たとえば、陰圧の印加時などに、深い創傷または全層創傷内に引き下ろされることができるようにするために、全般にある程度の凹面または凸面を含んでもよい。一部の非限定的実施形態では、チャンバを形成するために使用される材料および/またはその形状は、解剖学的外面形状および/または標的部位外面形状に従うという意味でこの設計を与えることができる。たとえば、チャンバを形成するために使用される材料は、乳房の全体的形状と実質的に一致する凸面を有してもよく、乳房の標準カップ・サイズ(すなわちA、B、C、Dなど)のうちの1つのサイズに従う大きさであってもよい。実施形態によっては、デバイスは、標的部位に向かって内側に全体としてくぼませた凹状構造であってもよい。深い創傷などの特定の場合には、構造に大きな余剰性(デバイスに対して相対的な凹性)があることがきわめて望ましい。たとえば、穿刺創などの深い傷では、深い創傷面全体に陰圧創傷治療とマイクロメカニカル力を与えるために、概ね凹状のデバイスの下面が創傷のあらゆる深部まで引き込まれるようにしてもよい。デバイスの構造に余剰性をもたせるもう一つの理由は、標的部位の深部内に延びる襞をもたせ、それによって空気および流体の流れのための流路を形成することである。
【0051】
図1および図2を続けて参照すると、患者の通常の動作時にチャンバ22の偶発的な外れまたは流体密封封止部の破れを防ぐのに十分な接着強度を備えた流体気密封止をもたせるために、基部26の封止部に真皮または皮膚接着材料が設けられてもよい。これらの目的にとって十分な、多くの接着材料が当業者には知られている。
【0052】
一部の実施形態によると、デバイス20は、頭部、顔および/または首に付随する標的部位の治療専用に設計することができる。デバイスは、頭部のみまたは頭部と首の両方を覆ってもよい。再び図26を参照すると、頭の上にフィットし、たとえば鎖骨またはその近辺の首の基部に取り付けられるチャンバを形成することができる。実施形態によっては、チャンバは単一の材料によって画定されてもよく、または2つ以上の部分からなる設計が実装されてもよい。デバイスは、どのような大きさの頭部にも合うように大きめのサイズにされてもよく、またはカスタム化されてもよい。大きめのデバイスは、使用時にしわの存在をもたらし、これは陰圧の分散にとって有利になり得る。他の実施形態により、図26を参照すると、デバイスは、たとえば頭部の中線の周囲および両耳を横断する継ぎ目202を形成するように接着可能な2つの部分201Aおよび201Bからなることができる。実施形態によっては、これらの部分は他の方法で接合されてもよく、たとえばジッパー型継ぎ目によるものであってもよい。さらに他の実施形態によると、図27に示すように、デバイスは顔の凹凸に従う複数の部分から形成されてもよい。
【0053】
頭部デバイスは、鼻と口のための開口部があってもなくてもよい。デバイスが鼻と口を覆うように製作される場合、鼻および口を治療のために外科的に閉じてもよい。たとえば、柔軟な適合栓塞子または縫合糸を使用してもよい。図28を参照すると、鼻と口を覆うデバイス20によって治療中の患者が、取り付けられた器官切開チューブ203を介して呼吸することができ、取り付けられた胃瘻チューブ204を介して栄養供給可能である。これらのチューブはデバイスの外部、たとえば首にはめ込まれてもよい。治療中に眼球を保護するために、大型レンズなどのコンタクトレンズ(図示せず)を使用してもよい。
【0054】
第1の(または近位)端部と第2の(または遠位)端部とを有する導管32が、チャンバ22の基部26の好ましくは上方に離隔した場所に取り付けられ、治療空間24と連通する。導管32は、潰れずにその形状を維持するように、および、流体および壊死組織片を排出するなど滲出物を通すように構築される。導管32は、チャンバ22に永久的に固定されてもよく、または、導管32、または治療空間24に物質または治療薬を送り込み、または治療空間24から物質を除去することができる任意のその他のデバイスの着脱を可能にするために、チューブ・ポート25などの取り付け部が設けられてもよい。導管32はチャンバ22の壁で終わってもよく、または壁を貫通して一定距離延び、治療空間内で終わってもよく、そこでそのような空間と、またはチャンバ壁の内面に形成されたチャネルと、またはチャンバ壁に形成された襞と連通してもよい。導管32は、治療空間24から外部環境に液体または気体が漏れるのを防ぐようにチャンバ22に封着される。導管32の遠位端または第2の端部は、吸引デバイス34などの大気圧より低い圧力を発生させるデバイスで終わる。吸引デバイス34はポンプであってもよいが、後述するように他の種類のデバイスも使用可能である。導管32に対する吸引デバイス34の取り外しと再取り付けを可能にするように、取り付け部33が設けられてもよい。図36aを参照すると、各乳房について1つずつ、2つのチャンバ22を組み込んだ治療デバイス20であって、各チャンバ22が、吸引デバイス34への接続のためのY字コネクタまたは同様のものなど、チャンバ22の個別流体経路を1つに結合する取り付け部33に流体接続された導管32を有することができる。
【0055】
図28を参照すると、デバイス20が顔、頭部および/または首を治療するために使用される場合、デバイス20は1つまたは複数のチューブ32との連通のための複数のチューブ・ポート25を含んでもよい。ポート25は、チャンバの幾何形状に基づいて効果的に配置されてもよい。少なくとも1つのチューブ・ポート25がデバイスの最上部に位置してもよく、少なくとも1つのチューブ・ポート25がデバイスの底部に位置してもよい。実施形態によっては、チューブ・ポート25が患者の顔の側面の耳に近いこめかみに配置されてもよい。実施形態によっては、少なくとも2つのチューブ・ポートが存在する。
【0056】
図3を参照すると、チャンバ22に取り付けられ、治療空間24と、またはチャネルと、または襞と連通する第2の導管35を示す、デバイス20の断面図が示されている。導管35の遠位端が入口36で終わっている。本開示は、いかなる数の連通導管にも限定されず、治療空間24にアクセスするための複数の導管および入口が設けられてもよい。図4に、入口36に至る導管32の分岐を備えた図1のデバイスを示す。入口36は、陰圧の印加の前、印加中または印加後に、抗菌薬、抗生物質、抗真菌薬、および鎮痛剤などの治療薬を送達するために使用可能である。したがって、入口36は容器またはシリンジへの取り付け用に構成されたルアーであってもよい。あるいは、吸引デバイス34と連通する同じ導管32を通して治療薬が送達されてもよい。
【0057】
実施形態によっては、治療デバイスは、標的部位に直接治療薬を送達することを可能にしてもよい。したがって、治療薬は、他の方法で静脈投与または経口投与することができるよりも大幅に高い濃度で送達することができる。たとえば、ほぼ従来の経口濃度から従来の経口濃度の約1000倍(すなわち1000×MIC)までの範囲またはそれより高い濃度で、抗生物質を標的部位に直接適用することができる。経口投与または血流に直接投与した場合、このような濃度は身体にとって有毒となる。局所適用は、治癒を促進する大幅により高い濃度の使用を容易にする。鎮痛剤、抗生物質などの治療薬と化学または酵素清拭剤との組合せも使用可能であり、標的部位の外科的清拭の必要を低減またはなくすことができるので有利である。治療薬は、1倍MICから少なくとも1,000倍MICの濃度で送達することができる。実施形態によっては、より短い治療期間に最大5,000倍MICの濃度を使用することができる。たとえば、大きめの標的部位の場合、制限要因は、標的部位からの吸収による全身性の毒性である場合がある。吸収半減期と表面積の組合せのため、病理作用薬剤の総量は一般に、24時間の期間の標準総静脈内投与量の5倍までに制限される必要がある。一部の非限定的実施形態では、1,000から5,000×MICの濃度が安全かつ有効に投与可能である。他の非限定的実施形態では、15から500から1,000×MICの濃度が安全かつ有効に投与可能であり、特定の実用用途、たとえば様々な軍用用途に利用可能である。濃度、量、吸収速度、および表面積はすべて、様々な実施形態による様々な治療薬の目標の正確な送達に関して考慮事項および定義済み変数となり得る。様々な実施形態において、治癒のための可用性を促進するように処方治療薬のリザーバを形成するために、本明細書に記載の治療デバイスを使用することができる。本明細書に記載の処方治療薬と組み合わせたこのデバイスの使用は、標的部位の治癒および浮腫管理における効率の点で相乗効果を示すことができる。
【0058】
1つまたは複数の実施形態によると、治療デバイスに関連した有効性および/または利便性の向上のために、1つまたは複数の治療薬を処方することができ、送達することができる。小分子であるか高分子であるかを問わず、鎮痛剤および/または抗生物質および/または抗真菌剤および/または清拭剤および/または抗炎症剤および/または瘢痕低減剤および/または化学療法剤および/または無菌液を標的部位に送達することができる。実施形態によっては、治療薬は、長期治療を可能にするために、徐放用に処方されてもよい。本明細書に記載のように、処方によって、標的部位に対して相対的な治療薬の所望の留置の維持も促進することができる。デバイスへの液状またはゲル状の活性治療薬の送達によって、全身的には不可能な標的部位の高用量局所治療を可能にすることができる。実施形態によっては、抗生物質は、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、ミノサイクリン、またはテトラサイクリンであってもよい。実施形態によっては、抗真菌剤は、DIFLUCAN(R)またはアンフォテリシンであってもよい。実施形態によっては、鎮痛剤は、リドカインであってもよい。実施形態によっては、抗炎症剤は、ステロイドまたは、インドメタシンもしくはアスピリンなどの非ステロイド抗炎症剤であってもよい。実施形態によっては、瘢痕低減剤はコルチゾンであってもよい。実施形態によっては、化学療法剤はフルオロウラシル(5FU)であってもよい。これらのうちの1つまたは複数の治療薬およびその他の様々な治療薬を、単独で、または組み合わせて実装可能である。
【0059】
実施形態によっては、1つまたは複数の治療薬またはその組合せを、標的部位への送達のためにゲルを使用して処方することができる。本明細書に記載のように、ヒドロゲル、親水コロイド、アルギン酸塩、または任意のその他のゲルが使用可能である。処方薬を作製し、その後、治療チャンバに送達することができる。あるいは、1つまたは複数の治療薬の送達の前に、治療チャンバ内にゲルを配置してもよい。ゲルのリザーバから1つまたは複数の治療薬の徐放送達を行うことができる。2mmから10mmの厚さの層などのゲルの層が塗布されてもよい。一実施形態では、3mmの厚さのゲルの層を使用してもよく、ゲルの総量は100mL(100cc)であってもよい。たとえばバンコマイシンまたはゲンタマイシンを使用する場合、一般細菌に対してMICは典型的には1mLまたは1cm当たり約2マイクログラムである。100mLのゲル中でこれらの抗生物質のそれぞれの必要な総量は200mgである。一例に過ぎないが、約2,000cmの表面積を有する上腕は、3mmの厚さの層に基づいて60cmのゲルを使用することになる。
【0060】
ヒドロゲルは、典型的には、水分含有量の高い親水性ポリマーからなる3次元架橋網である。ヒドロゲル、ゲル、親水コロイド、アルギン酸塩、メチルセルロース、ゼラチンまたは任意のその他のゲルは、治療薬に徐放特性を与えることができ、治療する標的部位に対して相対的な治療薬の所定位置での滞留を促進することもできる。たとえば、ゲルは、治療薬を少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、または少なくとも96時間、徐放させることができる。ゲルおよび/または抗生物質および/または鎮痛剤の徐放を含む実施形態に関連して、活性抗生物質の半減期は、約24時間、48時間、96時間、またはより長くなり得る。薬物放出速度は、網を介した薬物の拡散によって制御可能である。ポリマー濃度および分子量と、化学および物理架橋の種類および程度によって、粘度および薬物放出速度などのゲルの物理特性の操作が可能になる。たとえばアルギン酸塩を、受容可能な粘度範囲を実現するために治療薬の様々な処方で使用することができる。比較的高い粘度が、比較的低い凝固点とともに、治療を促進するために望ましい特性である場合がある。
【0061】
ゲルは、その特性のうちの少なくとも1つの特性の理由で選択可能である。たとえば、ゲルは、プレゲル・レオロジー特性、ゲル化後の力学的安定性、または組み込まれた治療薬の放出の制御の理由で選択可能である。ゲル化前に、ゲル前駆体は、モールドに流入し、デバイスの皮膚に面する側の外面形状に従うことを可能にするのに十分に低い粘度を有することができる。ゲル化後、ゲルはその形態を維持し、破断してもデバイスから漏れないようにする適切な硬さを有する必要があり、デバイスの取り扱いによる破損を防ぐのに十分な靱性を有する必要がある。
【0062】
表1によると、抗生物質と0.5%(アガロース)ヒドロゲルとを含むゲル治療薬製剤は最大1週間まで安定であり得る。薬物はゲル中に受動溶解し、長時間安定を保つ。実施形態によっては、ゲル治療薬製剤は、生理食塩水をさらに含み得る。ゲルは、生体適合性を有することができ、すなわち、組織における細胞外基質と構造的に類似している。ゲルは、流動性があり、たとえばモールドへの流し込み、または針によるポートを介した注入を可能にし得る。水素治療薬製剤のデバイスへの投入により、患者が動いても皮膚との一貫した均一な接触を可能にすることができ、それによって下にある組織に対する治療薬の連続送達を維持することができる。ゲル治療薬製剤は、デバイスの封止部の接着材において軽微な漏出があった場合でも、治療薬の損失を防ぐことができる。
【0063】
【表1】
【0064】
一部の特定の非限定的実施形態では、ゲルは天然由来の多糖類を含んでもよい。実施形態によっては、ゲルは、アルギン酸塩、アガロース、親水コロイド、セルロースまたはこれらの組合せを含んでもよい。少なくとも一部の実施形態では、ゲルはヒドロゲルであってもよい。
【0065】
少なくとも一部の実施形態では、感染症を軽減または完全になくすためと痛みを軽減するために、抗生物質と鎮痛剤の両方を実装することができる。
【0066】
実施形態によっては、重量を最小限にし、貯蔵、安定性および移送を容易にするために、デバイスに投入する前または後にゲルを凍結乾燥することができる。
【0067】
1つまたは複数の実施形態によると、(以下で詳述するパターン化面を有する)デバイス・チャンバの皮膚に面する加工面が、ゲル処方治療薬の均一な分散を促進することができる。本明細書に記載のデバイスは、治療薬の持続放出または徐放を容易にすることもできる。
【0068】
1つまたは複数の実施形態によると、治療デバイスは、保護被覆材と、治療薬の正確な局所送達のための手段とを与えるために、受傷直後に適用可能な滅菌カバーを提供することができる。デバイスは、制御環境における戦略的組織再生のためのインキュベータとして機能することもできる。したがって、デバイスは、軍隊と一般市民の両方において応急治療から治療過程全体を通して、深部進行、感染、敗血症の問題に対処することができる。先進医療施設に到着するまで、長時間の現場治療および/または避難に安全に具合よく耐えることができるので有益である。迅速な汚染除去、浮腫軽減、痛みの軽減炎症軽減、組織損失低減、瘢痕縮小、治癒の質の向上をすべて促進することができる。
【0069】
実施形態によっては、デバイスは、受傷24時間以内に、新鮮な標的部位に適用することができる。1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、交換または完全に取り外されるまで最大約4日から7日またはそれ以上の長期にわたって所定位置に留まることができる。標的部位からの滲出物を除去することができ、ポートを介してデバイスに治療薬ゲルを加えることができる。透明なデバイスは、標的部位評価を可能にすることができる。追加的保護のためにデバイスの上にスリーブをかぶせることができる。デバイスは、使い捨ての1回の使用のための使い捨て無菌包装に適し得る。ゲルは貯蔵後に最水和可能である。
【0070】
1つまたは複数の実施形態によると、併用および/または連続治療計画を実施することができる。デバイスは、止血後に適用されてもよい。標的部位は、一定時間、清拭されてもよく、その後、本明細書に記載のデバイスと処方治療薬を使用した治療が施されてもよい。一部の非限定的実施形態では、本開示の治療薬は、さらなる治療ステップを見極めるために標的部位をさらに評価する前に、1週間以上まで標的部位に配置しておいてもよい。治癒を促進するために、標的部位を長期間、本開示のデバイスの無菌環境に置かれたままにすることができるので有益である。また、処方治療薬は、比較的中断のない期間の治療部位治療も促進する。実施形態によっては、陰圧標的部位治療の期間は、本明細書に記載のように開示のデバイスにより標的部位に適用可能である。このような治療は、連続的または定期的であってもよく、処方治療薬の適用と同時に、またはその前に、またはその後に実施することができる。少なくとも一部の実施形態では、陰圧治療を薬物送達とともに連続して使用することができる。特定の実施形態では、陰圧治療は、たとえば従来の標的部位洗浄技術とは異なる手法であり得るために薬物送達と並行して実施されない。
【0071】
次に図5を参照すると、チャンバ空間24内に延びる導管32の端部が複数の穴44を備えて示されている。穴44の目的は、気体、液体、流体、壊死組織片およびその他の物質が、確実に治療空間24から流れ出て、妨げなく導管32に流入することができるようにすることである。
【0072】
標的部位を実質的に透明なチャンバ材料を通して有利に監視することができる。陰圧デバイス20は、チャンバ空間24内の特定のパラメータを監視するためのセンサも備えることができる。たとえば、酸素、二酸化炭素、pH、温度およびその他のパラメータを測定し、監視してもよい。
【0073】
図6を参照すると、チャンバ壁の内面が、表面上に加工された複数の表面パターン40を備えて構成可能である。図6aから図6cに、1つまたは複数の非限定的実施形態による、異なる加工表面パターンの概略図を示す。加工表面パターン40を備えた内面の部分は、図に示すものとは異なっていてもよく、好ましくは内面の高い割合が加工表面パターン40を含む。表面パターンは、好ましくは内面の少なくとも50%、より好ましくは内面の少なくとも約95%を占める。複数の表面パターンは、治療空間24内から見ると隆起しており、治療空間24の内面に対して概ね垂直な方向にその空間内に貫入している。複数の表面パターンは、円錐形、ピラミッド形、五角形、六角形、半球形、ドーム形、棒状、丸みのある辺を有する細長い隆起、または角張った辺を有する細長い隆起を含むがこれらには限定されない、任意の形状とすることができる。複数の表面パターンは、同じ形状として、または形状の任意の組み合わせで設けることができる。複数の表面パターンは、同じ大きさで、または異なる大きさの任意の組み合わせで設けることができる。複数の表面パターンは、表面上に規則的なパターンまたは不規則なパターンで設けることができる。このような表面パターンによるチャンバ壁からの治療空間24内への貫入の距離(そのような構造物の高さ)は、好ましくは0.01mmと20mmの間、好ましくは1mmと10mmの間、最も好ましくは約2mmである。このような表面パターン間の間隔は、好ましくは0.01mmと5mmの間であり、間隔はたとえば最も好ましくは約2mmである。実施形態によっては、約2mmの高さの構造物が約2mm間隔で配置されている。大きめの表面パターンが使用される場合、構造物はより間隔があけられてもよく、小さめの構造物が使用される場合、構造物は互いにより接近した間隔があけられていてもよい。たとえば、0.2mmの高さのピラミッド形の構成は約0.2mmの間隔があけられてもよく、一方、約5mmの高さのより大きいピラミッド形の構成は10mmの間隔があけられていてもよい。
【0074】
複数の表面パターン40は、デバイス20の使用中に標的部位に接触し、その外面形状に従う。複数の表面パターンは、標的部位表面に直接接触してもよい。複数の表面パターンの1つの目的は、治療空間24内に確立された陰圧が確実にその空間全体に均一に分散され、その空間全体に維持されるようにすることである。吸引源に至る導管内に陰圧または大気圧より低い圧力が確立されると、チャンバは標的部位の組織に対してより密接に接する。デバイス20は、標的部位表面にわたり陰圧を確立し、分散させ、維持するための経路を画定するためと、チャンバの内面と標的部位組織との完全な接触を防ぐために、複数の表面パターン40を含む。このような表面パターンがなければ、チャンバ壁が標的部位表面と完全に接触することになる。その結果、陰圧を確立し、分散させ、維持することができる空間がなくなる。したがって、複数の表面パターンは好ましくは半剛体である。「半剛体」という用語は、0.5psi~2psiの範囲の動作陰圧下で顕微鏡レベルの変形しか生じないことを意味するものと理解されたい。あるいは、複数の表面パターンは、表面パターンの個々のフィーチャ間の間隔によっては多少可撓性であってもよい。また、複数の表面パターンは、十分な量の空き空間が維持されるように、標的部位組織が構造物の間の空間に入ることができる程度を低減するように設計される。複数の表面パターンは、チャンバ内に所望の陰圧経路を生じさせるように表面上に戦略的にパターン形成することができ、チャンバの内面の形状およびパターン形成はこの効果を最大限にするように特定の組織タイプに合わせて修正されてもよい。
【0075】
これらの構造物のもう一つの目的は、肉芽組織の形成およびマイクロメカニカル力の増大を含むがこれらには限定されない有益な結果を生じさせるように、標的部位に対する刺激の一形態として機能することである。そのようなマイクロメカニカル力は、陰圧治療の有効性の要因として示唆されている刺激を、標的部位組織の一部に与える。上記の説明および図面から、可撓性チャンバは、治療の標的部位の周囲の一定範囲の位置にわたって動くことができることを理解されたい。この範囲の位置には、複数の表面パターン40が基部26によって画定されるチャンバの開口から間隔をあけて配置されている、図1および図2に示す位置などの第1の位置が含まれる。この範囲の位置には、複数の表面パターン40の少なくとも一部がチャンバの開口に配置されている、第2の位置も含まれる。第2の位置は、好ましくは複数の表面パターン40が標的部位とかみ合う位置である。
【0076】
チャンバ壁は、可撓性、順応性、気体不浸透性、液体不浸透性、形成、細工、および加工のしやすさ、所望の範囲の陰圧下で隆起構造物の形状、機能および有効性を維持する能力という特徴を有する任意の適切な医療用材料から形成することができる。材料は、一般に接着と内包成長を抑止する必要がある。材料は、好ましくは、治療中に標的部位の視診を可能にするように透明である。さらに、材料は、好ましくは低刺激性であり、無菌状態で医療施設に提供される。たとえば、チャンバ・デバイスは、ポリウレタン、ポリエチレンまたはシリコーンなどの可撓性で順応性の材料からなり得るが、他の類似した材料も使用可能である。材料は、約5mmから約100mmの範囲の厚さを有してもよい。実装形態によっては、材料は、約1milから約100milまでの厚さを有してもよい。一部の特定の実施形態では、治療チャンバを形成するために5milのポリウレタン膜が使用されてもよい。
【0077】
チャンバは、好ましくは、特別なサイズ決定、トリミング、またはその他のカスタマイズ操作なしに、標的部位組織の表面に接して位置するのに十分な材料を備えるように設計される。チャンバは、材料の単層からなってもよく、または、複数の表面パターンがその中およびその上に加工された複数の層からなってもよい。単層チャンバは、製造時に材料の複数のシートからなっていてもよいが、複数のシートが互いに付着またはその他の方法で結合された状態で医療施設に提供されることを理解されたい。たとえば、複数の表面パターンを設けるために製造時に個別の3次元形状がチャンバ壁の内面に接着または付着されてもよい。単層チャンバは、チャンバ壁と複数の表面パターンの両方を画定する材料の単一のシートから形成されてもよい。たとえば、複数の表面パターンはエンボス加工されてもよい。あるいは、多層チャンバが、材料の層がチャンバを形成するように積層された状態で医療施設に提供されてもよい。たとえば、チャンバの内部治療空間に面する層が、医師によって材料の概ね平坦な層(または概ね平坦な層の複数のシート)に付着させられる複数の表面パターンを含む層であってもよい。
【0078】
複数の表面パターンは、エンボス加工、スタンピング、モールド、成形、またはボンディングなど、当業者によく知られている技術によって形成することができる。構造物がその形状を材料中にエンボス加工することによって形成される場合、エンボス加工された表面パターンは、図6に示すようにチャンバの外部に対して相対的に凹状に残されてもよい。エンボス加工表面パターンは、チャンバの壁と基部も形成する材料の単層上に形成されてもよい。これにより、材料の単層上に半剛体構造物を備えた比較的柔軟なチャンバを設けることができる。あるいは、表面パターンを中密にするように、空洞が適切な材料で満たされてもよい。別の代替形態として、チャンバの内面に中密構造物が貼り付けられてもよい。
【0079】
チャンバ壁の内面の隆起構造物は、いくつかのパターンに構成され、分散されてもよい。たとえば、図6は、治療空間24に面する材料の内面の複数の表面パターン40を示す、チャンバ壁の一部の垂直断面図である。複数の表面パターン40は形状と大きさが同じであり、互いに等間隔で配置されている。別の実施例として、図7は、チャンバ空間内に貫入している複数の表面パターン41および42を示す垂直断面図であり、表面パターン41が表面パターン42よりもさらに貫入しており、複数の表面パターンは、41-42-41-42というように規則的な交互のパターンに構成されている。さらに別の実施例として、図8は、治療空間中に貫入している複数の表面パターン43、44および45を示す垂直側面図であり、表面パターン43が表面パターン44および45よりもさらに貫入しており、表面パターン44が表面パターン43よりは貫入していないが表面パターン45よりはさらに貫入し、表面パターン45は表面パターン43および44よりも貫入していない。これらの表面パターンは、43-45-44-45-43-45-44-45-43というように規則的な交互のパターンに構成されている。図8に示す実施形態は、標的部位の軟組織が複数の表面パターン間の空間のすべてに侵入するのを困難にする。陰圧の分散と、標的部位を洗浄する滅菌液、標的部位を清拭する流体、または治療薬などの流体の添加と、標的部位からの滲出物の除去とを可能にするのに十分な量の連続空間が形成される。さらに別の実施例として、図9aは、隆起部の形態の複数の表面パターン47を示す、チャンバ壁の一部の概要図である。複数の表面パターン47は、側面から見たときに、丸みがある(図9b)か、角張っている(図9c)か、またはこれらの組み合わせとすることができる。さらに別の実施例として、図10は、隆起構造物47が間に点在している複数のドーム形構造物48としての複数の表面パターンを示す概要図である。複数のドーム形構造物48は、好ましくは側面から見たときに半球状であるが、他の形状も考えられる。
【0080】
チャンバ・デバイス内および標的部位上のすべての点における陰圧の分散と維持は、陰圧の分散のための複数の表面パターン間の経路として画定されたチャネル空間を設けることによって向上させることができる。しかし、画定されたチャネル空間は、治療空間内に流体経路を設けるために必須ではない。図11は、チャネル49を形成するように2本の平行線に配置された複数の表面パターン47を示す、チャンバ壁の一部の概要図である。図12に、隆起ドーム形構造物48の2本の平行線によって形成されたチャネル49を示す。このようなチャネルは、放射状、環状、同心状、または分岐などの様々なパターンで構成可能である。図13図16に、治療空間24に面するチャンバ22の内面に沿ったチューブ32から続くチャネル49のパターンの概要図を示す。パターンごとに、チャネル49が、治療空間24に直接開口する空間を画定する。この空間は、好ましくはチャネル49の全長にわたって治療空間24に開口している。
【0081】
チャンバ・デバイス内および標的部位上のすべての点における陰圧の分散と維持は、陰圧の分散のための追加のチャネル空間を形成するためのチャンバ壁における襞の使用によっても向上させることができる。チャンバ内に陰圧が確立されると、材料は事前形成された場所に沿って襞を生じやすくなる。図17にチャンバ壁の襞に形成されたチャネル50を示す。チャネル50は、治療空間24に直接開かれた空間を画定する。この空間は、好ましくはチャネル50の全長にわたって治療空間24に開いている。このような襞内のチャネル空間の量を増大させるために、襞の壁は、そのような空間が潰れるのを防ぎ、陰圧の分散および維持と、液体、気体およびその他の物質の通過のための連続した空き空間を確保する、複数の表面パターンを備えて構成することができる。代替形態として、図18aに、襞が完全に潰れるのを防ぎ、連続したチャネル空間51を確保する複数の表面パターン52を示す。チャンバ壁の内面上に形成された、または襞によって形成されたすべてのチャネル空間が、チャンバ内の陰圧の分散と維持の有効性を増すための手段として、および、チャンバ治療空間からの気体、液体、流体、壊死組織片およびその他の物質の除去の有効性を向上させる手段としても機能する。別の代替形態として、図18bに、襞の対向する側に複数の表面パターン52が付加された、図17に示す実施形態と類似した実施形態を示す。複数の表面パターン52は、襞が、襞の内面のすべてが陰圧の移動に対して密封を形成する時点まで潰れないように設けられている。しかし、襞に隣接した内面など、内面の一部が、好ましくは上述のような刺激を与えるように標的部位と接触する。前述の実施形態で説明した襞は、チャンバ22の表面をモールドまたはエンボス加工することによって、好ましくは特定の画定された領域に形成される。
【0082】
図19に、肢の上に配置することができる円筒の形態の、陰圧と治療剤とを送達するための治療デバイス120を示す。治療デバイス120は、開放端と閉止端とを含むが、チャンバは他の身体部分に対応するように他の形状を有してもよく、たとえば頭部の上に取り付けるのに適していてもよい。開放端は、好ましくはカフまたは襟(図示せず)によって封止され、開放端は封止部を画定する内面上に接着材を含んでもよい。治療デバイス120は、チャンバ壁の内面に複数の表面パターン40とチャネル49とを含む。
【0083】
図20に示すように、チャンバ22と吸引デバイス34との間の導管32上に流体収集器60を配置することができる。収集器60は、チャンバ空間24から抜き取られた流体または標的部位からの壊死組織片または物質などの滲出物を受け、そのような物質を最終的に廃棄するために貯留することを意図したものである。収集器60は、満杯の収集器を空の収集器と交換するために、導管32から取り外し可能とすることができる。
【0084】
大気圧より低い圧力を与えるために適切なコネクタによってチャンバ・デバイスに着脱されるポンプであってもよい、吸引デバイス34によって、治療デバイスに吸引が与えられる。チャンバは電動機駆動ポンプとともに使用することができるが、介護人または患者によって作動させられる手動デバイスを使用するのも有効である。手動デバイスは、その構造の材料に蓄えられたエネルギーを使用して吸引力をもたらす圧搾球であってもよい。あるいは、吸引デバイスは、ユーザによって圧縮されるばねによって動力供給されてもよい。ばねは、臨床的に望ましいレベルの陰圧を生じさせるように選定可能である。したがって、これらの吸引デバイスによってもたらされる吸引力の量は、圧搾される材料またはばねによって生じる力のレベルに依存する。電動機駆動吸引ポンプとは異なり、手動デバイスは、好ましくは治癒に悪影響を及ぼす可能性のある高レベルの吸引力を生じさせることができない。
【0085】
図21を参照すると、変形エネルギーを蓄える変形可能材料からなる球の形態の吸引デバイス61が使用されてもよい。導管32が吸引デバイス61の内部と連通している。一方向排気弁62も、吸引デバイス61の内部と連通している。ユーザが吸引球61を圧搾すると、デバイス内の空気が排気弁62を通って排出される。吸引デバイス61を変形させるために使用されるエネルギーの一部は、吸引デバイス61の形成材料に蓄えられ、それによってデバイス内と導管32およびチャンバ空間24内の吸引力が維持される。球は、一定した力を維持し、チャンバ空間24内の臨床的に望ましいレベルの陰圧を維持するように選定され、加工される。標的部位30からの流体が、導管32を通って吸引デバイス61に流入することができ、吸引デバイス61に貯留されてから廃棄される。吸引デバイスが流体で満たされると、陰圧の発生は停止する。したがって吸引デバイスの流体容量が、電気センサおよびコントロール類を必要とせずに安全遮断メカニズムとして機能する。
【0086】
図22に、可撓性面64と剛性面65とからなる別の吸引デバイス63を示す。吸引デバイス63内に圧縮ばね66が配置される。導管32と排気弁62の両方が、吸引デバイス63の内部と連通している。ユーザが剛性面65を互いに向かって圧搾すると、ばね66が圧縮され、デバイス内の空気が一方向排気弁62を通って排出され、それによってデバイス内と、導管32およびチャンバ空間24内の吸引力が維持される。ばね66は、剛性面65に対する一定した力を維持するように、および、チャンバ空間24内の臨床的に望ましいレベルの陰圧を維持するように選定され、加工される。標的部位30からの流体は、導管32を通って吸引デバイス63に流入し、デバイス全体63を廃棄するまでそこに貯留可能である。また、吸引デバイスは流体で満たされると動作を止める。
【0087】
図23に、ヒンジ73によって結合された剛性面72と、可撓性面71とからなる別の吸引デバイス70を示す。剛性面72の内側または外側にねじりばね74が取り付けられている。導管32と排気弁62の両方が吸引デバイス70の内部と連通している。ユーザが剛性面72を互いに向かって圧搾すると、ばね74が圧縮され、デバイス内の空気が一方向排気弁62を通って排出され、それによってデバイス内と、導管32およびチャンバ空間24内の陰圧が維持される。ばね74は、チャンバ空間24内の臨床的に望ましいレベルの陰圧を維持するために剛性面72に対する力を維持するように選定され、製作される。標的部位30からの流体は、導管32を通って吸引デバイス70に流入することができ、デバイス全体が廃棄されるまで吸引デバイス70に貯留することができる。図24に、ねじりばね74が板ばねに78に置き換えられた、図27のデバイスを示す。
【0088】
前述の吸引デバイスの場合、吸引力が確立されると、標的から流体が吸引デバイスに流れることができ、吸引デバイスにおいて収集され、最終的に廃棄するために貯留可能である。あるいは、図20の流体収集器60のような別個の流体収集器をチャンバと吸引デバイスとの間に配置することも可能である。吸引デバイスがその元の形状に膨らむと、吸引は停止する。吸引デバイスは動作を継続せず、取り外して廃棄することができる。治療を継続する場合、新たな吸引デバイスを接続し、作動させることができる。
【0089】
図25は、吸引デバイスから液体またはエアロゾルが排出されるのを防ぐ目的で吸引デバイス34と排気弁62との間に挿入されたトラップ80とフィルタ82とを示す断面図である。
【0090】
本開示は、臨床処置に応じて様々なレベルの陰圧で動作するように設計可能である。従来の陰圧デバイスは、-0.5psiと-2psiの間、または約-750mmHGから約-125mmHgの陰圧を印加することができる。本開示のデバイスは、この範囲で効率的に動作する。チャンバ材料は、標的部位およびその任意の周辺部の形状に従い、複数の表面パターンがその形状および機能を維持する。しかし、チャンバはより高いレベルの陰圧で動作するように設計することもできる。本開示のデバイスは、たとえば約-125mmHgから約-10mmHGのより小さい陰圧でも効率的に機能することができる。より小さい陰圧の印加により、痛みおよびその他の合併症を低減することができる。さらに、手動吸引デバイスを使用する場合、デバイスの動作圧力は一般に受け入れられている範囲より高い場合がある。すなわち、デバイスは、吸引が停止する前に0psiに近い圧力で動作し得る。
【0091】
1つまたは複数の実施形態によると、治療デバイスは、循環を容易にするため、たとえば血流と新たな血管の成長を刺激し、細胞の分裂と増殖を促進するように細胞を生体力学的に刺激し、細菌などの治癒を妨げる可能性のある要因を取り除くための、陰圧吸引型とすることができる。さらなる実施形態では、治療デバイスは、リンパ系における閉塞、たとえばリンパ浮腫、または循環系の別の部分における閉塞、たとえば静脈機能不全に起因する腫脹を低減するための陰圧吸引型とすることができる。たとえば、陰圧の印加は、リンパ系またはその一部、たとえばリンパ節における適正な排液を回復させる助けとなり得る。治療の段階に応じて、接続導管は、陰圧の印加、標的部位の洗浄または清拭、標的部位の排液、および標的部位への治療薬の送達のために、異なるデバイスに差し込むことができる。
【0092】
本開示は、浮腫および切開部管理のための既存の陰圧治療システムの欠点の多くを解消する。たとえば、本開示のデバイスは、好ましくは簡素化されており、軽量であり、標的部位および浮腫の視診を可能にする。本開示の一部の実施形態では、患者は電源またはバッテリ・パックに制約されない。システムは、患者の可動性が他の点では阻害されないように容易に装着可能である。さらに、治療デバイスは、特注付属品および構造体を必要とせずに迅速に適用することができる。デバイスは、好ましくは、基部における滑らかな接着封止部のために漏出がなく、それによって、高機能コントロール類および安全対策を使用する電気ポンプからの絶え間ない吸引の必要をなくす。組織の内方成長を生じさせ、感染性物質を潜ませる潜在的可能性のある多孔質挿入物などの界面物質が存在しない。その代わりに、チャンバの内面は標的部位組織とのいかなる相互作用も防止するように、概ね無孔質で非接着性である。さらに、吸引ポンプは好ましくは、吸引力、動作持続期間および流体収集器の過剰貯留に対する内蔵安全制限を有する。複数の表面パターンは、標的部位における治癒組織を刺激し、陰圧の分散のための効率的な経路を形成することができる。治療デバイスのチャンバは、四肢、頭部、顔または首および乳房を含む任意の身体部分での使用のためにカスタム化可能である。本明細書で開示されているデバイスおよび方法は、いかなる禁忌もなしに従来の組織創傷清拭および移植技術と併用可能である。デバイスおよび方法は、皮膚移植およびマイクログラフト部の固定化および保護を容易にすることができる。デバイスおよび方法は、少なくとも肉芽組織形成および浮腫管理に関して従来の負圧管理手法より優れている可能性がある。
【0093】
1つまたは複数の実施形態によると、治療デバイスは流体収集デバイスと併用可能である。したがって、治療システムは、治療デバイスと流体収集デバイスとを含み得る。収集デバイスは、吸収挿入物などの吸収性材料を含んでもよい。当業者には容易にわかる、任意の吸収性材料、好ましくは廃棄可能性の点で生体適合性の材料を実装可能である。吸収性材料は、流体収集デバイスによって画定されるコンパートメントを少なくとも部分的に満たすことができる。収集デバイス挿入物は、動作時に流体を吸収し、廃棄のためにパッケージ化することができる。すべての構成要素が、好ましくは、安価、軽量で使い捨て可能である。少なくとも一部の実施形態では、流体収集デバイスは、実質的にフィルタまたはウォーター・トラップとして機能することができる。
【0094】
図30を参照すると、流体収集デバイス300の図が示されている。このデバイスは、処置中または治療中に標的部位から除去された流体、壊死組織片、滲出物、またはその他の物質を受け、そのような物質を最終的な廃棄のために貯留することが意図されている。デバイスは、収集空間を画定するコンパートメント310を含む。図の実施形態では、コンパートメントはピロー形構成を有する。しかし、本発明はこれには限定されず、可撓性の実質的に水分および気体不浸透性材料からなるコンパートメントの他の構成も使用可能である。不浸透性材料の使用は、コンパートメントからの流体損失を防ぐのに特に有利である。デバイスを製作可能な材料は異なり得る。一部の非限定的実施形態では、収集デバイス・チャンバは、治療デバイス・チャンバと同じ材料からなってもよい。
【0095】
デバイスは、本明細書に記載されている任意の治療デバイスとともに、人体おおび獣医学用途の両方を含めて、任意の身体部分に対して使用するために設計することができる。目的用途に基づいて、球形、立方体、平行六面体、チューブ状、袋、包膜またはその他の形状などの様々な幾何形状を実装可能である。
【0096】
実施形態によっては、流体収集デバイスは、吸収性挿入物320を含んでもよい。吸収性挿入物320は吸収性または高吸収性材料などの基材からなることができる。吸収性材料は、シート状、粉末状、粒状、または乾燥状態のその他の形態とすることができる。吸収性材料は、たとえば、任意の親水性ポリマーまたは任意の多孔質、繊維状または非合成材料であってもよい。吸収性材料はゲルまたはポリマーを含み得る。たとえば、吸収性材料は、合成ポリマーまたは天然由来ポリマーとすることができる。吸収性材料は、一般に、液体が吸収されると膨張する。吸収性材料は、標的部位における物質とゲルを形成してもよい。実施形態によっては、液体が吸収されると流体収集チャンバ310の壁が膨張してもよい。吸収性挿入物320は、陰圧が印加されたときに容器が潰れるのを防ぐことができる。実施形態によっては、容器は、治療デバイスの上部構造を構成する同じ不浸透性材料からなってもよい。材料は、エンボス加工された部分が容器内部に面するようにエンボス加工されてもよく、それによって流体トラップを通る空気流を可能にし、または容易にするための空気流の経路を設けてもよい。少なくとも一部の非限定的実施形態では、吸収性挿入物は少なくとも500gの物質を取り込むことができる。
【0097】
収集デバイス300は、治療デバイスのチャンバと流体連通する第1のチューブ330を含むことができる。収集デバイス300は、吸引源と流体連通する第2の導管340を含むことができる。本明細書に記載の少なくとも一部の実施形態では、吸引源は、密閉空間内で大気圧より低い圧力を発生および/または維持することができる。デバイスはインラインポンプを含んでもよい。治療デバイスと流体収集デバイスとの間の一方向弁が、治療デバイスへの逆漏出を防止することができる。吸収性材料が完全に飽和状態になったら空気流を自動的に停止することができるように、トランスデューサなどの安全デバイスをポンプ側に組み込むことができる。
【0098】
図31は、1つまたは複数の実施形態による流体収集デバイスの概略側面図である。1片の材料を折り畳み、外周の残りの3辺で封止して収集デバイスを形成することができることが示されている。図32は、1つまたは複数の実施形態による流体収集デバイスの分解概略側面図である。図32は、コンパートメント7が木綿素材と積層吸収シートの両方を含み得ることを示している。逆止め弁(一方向)10が治療デバイスへの逆流を防ぎ、トランスデューサ3が上述のような安全手段として機能する。
【0099】
実施形態によっては、流体収集デバイスは使い捨て可能であり、産業廃棄物廃棄規制に従っている。本開示の一部の実施形態では、患者は電源またはバッテリ・パックに制約されない。収集デバイスは、患者の可動性がその他の点で阻害されないように、容易に使用することができる。また、吸引ポンプは、好ましくは、吸引力、動作持続期間および流体収集器の過剰貯留に対する内蔵安全制限を有する。
【0100】
実施形態によっては、治療デバイス・チャンバは、一般に、たとえば、陰圧の印加時などに深い創傷または全層創傷と接触するように引き下ろされることができるようにする、凸面度または凹面度を有する。図33aに、治療デバイス・チャンバの凹面性を示す。適用時のデバイスに対して相対的に凹状である治療デバイス・チャンバが、標的部位の周辺部の上に配置される標的部位周辺領域330を有する。デバイスの使用時に複数の表面パターン40が標的部位表面と境界を接する。複数の表面パターンは標的部位表面と直接接触することができる。治療デバイス・チャンバの凹面性は、標的部位が深い創傷、たとえば穿刺傷である場合など、特定の場合に望ましいことがある。たとえば、深い創傷では、陰圧治療とマイクロメカニカル力を深い創傷面に与えるために、デバイスの下面が創傷の深部内に引き込まれることができる。図33bに示すように、治療デバイス・チャンバが凹状上部構造350を有する。デバイスの上部構造の凹面は、空気流および流体流のためのチャネルを形成するように標的部位の深部内まで延びる襞を与えることができる。
【0101】
図36aおよび図36bに、被験者の乳房に載り、そこに治療空間24を画定するような大きさの2つの乳房形チャンバ22の形態を有する、陰圧と、任意により治療剤を送達するための治療デバイス20を示す。図36bに示すように、各チャンバ22は被験者の乳房に密接に一致する大きさおよび形状とされ、チャンバを乳房の周囲および下部の皮膚に固定する封止部を有する。図36aおよび図36bの点は、本明細書に記載のように乳房の組織に直接接触することができる複数の表面パターン40に対応する。各チャンバは、各チャンバ22の治療空間24への流体アクセスを提供する導管32を有する。図36aに示すように、各導管32の第2の端部が、独立した流体路を流体容器および吸引源34への接続のための1つの経路に結合するY字形取り付け具33に接続される。
【0102】
1つまたは複数の実施形態によると、治療用のキットが、本明細書に記載のような治療デバイス、処方治療薬、および/または流体収集デバイスを含むことができる。キットは、治療用に構成要素のうちの1つまたは複数の構成要素を使用するための使用説明書をさらに含んでもよい。
【0103】
別の態様によると、被験者上の標的部位における浮腫を軽減する方法が提供される。この方法は、標的部位の周辺部に本明細書に記載のような治療デバイスを固定することを含むことができる。この方法は、治療デバイスの内面の複数の表面パターンが標的部位に直接接触し、治療空間に陰圧を均一に分散させるように構成された経路を形成することができるように、治療デバイスの治療空間に陰圧を印加することをさらに含むことができる。この方法は、さらに、標的部位の浮腫を軽減するのに十分な期間、治療空間内の陰圧を維持することを含むことができる。実施形態によってはこの方法は、治療デバイスが固定される場所など、創傷部位を囲む組織、たとえば健常組織における浮腫を軽減することをさらに含むことができる。
【0104】
実施形態によっては、治療デバイスは、治療空間を画定するチャンバを含み、チャンバは、実施的に不浸透性の材料から作製され、周辺部の形状に従うように構成され、チャンバの内面が複数の表面パターンを含み、チャンバが基部の封止部と、チャンバに接続され、治療空間への陰圧の印加を可能にするように治療空間と流体連通する少なくとも1つの導管とを有する。標的部位は、創傷部位であってもよく、被験者の乳房、下肢、たとえば足、または腕、たとえば手に付随していてもよい。被験者の乳房に付随する場合、デバイスは少なくとも一方の乳房上に配置されるような大きさおよび形状とすることができ、表面パターンは被験者の少なくとも一方の乳房の外面形状に従う形状である。場合によっては、治療デバイスが被験者の両乳房に固定されてもよい。
【0105】
標的部位は、美容整形処置などの選択的処置に起因するものであってもよく、または切開部を生じさせる外科処置に起因するものであってもよい。場合によっては、標的部位は、どのような処置にも関連付けられなくてもよく、外傷性疾患、または糖尿病もしくは妊娠による腫脹など、浮腫を生じている身体上の領域であってもよい。一部の非限定的実施形態では、浮腫管理デバイスは、胸骨切開、開胸、または全層皮膚移植の採皮部位などの外科処置による創傷部位に配置されてもよい。
【0106】
場合によっては、標的部位は、治療デバイスが固定される前または後に、滅菌溶液で洗浄または清拭されてもよい。壊死組織片または排液を含む、標的部位粗の滲出物が収集されて廃棄されてもよい。場合によっては、治療デバイスが固定される前または後に、本明細書に記載の治療薬が標的部位に適用されてもよい。
【0107】
実施例
本明細書で開示されている材料および方法の上記およびその他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からよりよく理解されるであろう。以下の実施例は、本開示の材料および方法の利点を例示することを意図しており、その全範囲を例示しているわけではない。
【0108】
実施例1
ブタによる研究を行った。各ブタの背上に最大14の部分層熱傷を生じさせた。その後、熱傷創に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)、またはカンジダ・アルビカンス(C.albicans)を感染させ、その後、個別に7日間、それぞれ、0.625%アルギン酸塩ヒドロゲル中で処方された、1000×MICの局所バンコマイシン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、または10×MICの局所DIFLUCAN(R)で治療した。本明細書に記載のような治療デバイスを、抗生物質治療と併用した。スルファジアジン銀クリーム(SILVADENE(R))、ブランク0.625%アルギン酸塩ヒドロゲルおよびIV抗生物質を、それぞれの局所抗生物質ヒドロゲルの対照薬として使用した。7日目に、定量細菌分析のために、安楽死直後に各創傷から6mmの創傷組織パンチ・バイオプシを採取し、急速冷凍した。
【0109】
図34aによると、アシネトバクター・バウマニを感染させた熱傷からの結果は、1000×MICミノサイクリン・ヒドロゲルによる局所治療が、IVミノサイクリンおよび乾燥対照薬(それぞれ、p<0.001およびP<0.01)よりも効率的に細菌数を低減することを示した。図34bによると、緑膿菌感染熱傷において、1000×MICゲンタマイシン・ヒドロゲルは、SILVADENE(R)クリーム(p<0.01)、ブランク・ヒドロゲル(p<0.01)、乾燥対照薬(p<0.01)、およびIVミノサイクリンよりも効率的に細菌数を低減した。図34cによると、黄色ブドウ球菌感染創傷において、1000×MICミノサイクリン・ヒドロゲルが、SILVADENE(R)クリーム(p<0.01)およびIVミノサイクリン(p<0.01)よりも効率的に熱傷組織における細菌数を低減した。図34dによると、カンジダ・アルビカンス感染創傷において、10×MIC DIFLUCAN(R)ヒドロゲルが、乾燥対照薬(p<0.01)およびIV DIFLUCAN(R)(p<0.01)より効率的に熱傷組織における細菌数を低減した。
【0110】
0.625%アルギン酸塩ヒドロゲルに関する熱安定性データを、室温から-45℃で毎分0.1℃の速度でのヒドロゲル・サンプルの示差走査熱量計(DSC)測定値を示す図35aに示す。凝固点は、-17.38℃で開始する冷却サイクル中のヒドロゲル・サンプルへの正の熱流によって示されている。
【0111】
0.625%アルギン酸塩ヒドロゲルに関する累積薬物放出データを図35bに示す。500μLのヒドロゲル・サンプルを、下部ウェルに500μLのPBSを入れたトランズウェル・メンブレン・プレートに配置した。各時点で、下部ウェルから100μLのアリコートを取り出し、一方、100μLの新たなPBSを同時に追加した。アリコートを、液体クロマトグラフィ質量分析(LCMS)を使用して分析し、それぞれの抗生物質の濃度を定量化した。
【0112】
0.625%アルギン酸塩ヒドロゲルに関するレオロジー・データを図35cに示す。応力制御された血流計で、剪断速度スイープにより均質化ヒドロゲルを分析して粘度を注入可能性の標識として計算した。使用した幾何形状は、間隙が400μmの粗面1°40mmの円錐平板であった。
【0113】
0.625%アルギン酸塩ヒドロゲルに関する貯蔵弾性率データと損失弾性率データを図35dに示す。貯蔵弾性率が損失弾性率より大きく、ゲルを示し、粘稠液ではないことを示している。また、弾性率は比較的低く、きわめて柔らかいヒドロゲルであることを証明している。応力スイープを使用してヒドロゲルの線形粘弾性領域を判定し、周波数スイープを使用してヒドロゲルの線形平衡率プラトーを判定している。
【0114】
実施例2
この実施例では、本明細書に記載のような治療デバイスを、大規模な患者母集団に対する異なる処置による閉合した切開外科創傷に使用して、臨床状況において治療デバイスの有効性を調べた。
【0115】
参加被験者
この前向き症例集積研究の一環として、単一のセンターにおいて潜在被験者を5カ月にわたってスクリーニングした。試験対象患者基準には、切開が行われることが予定され、主として手術時に閉合される外科的介入を受けることが予定されていた18歳から85歳までの年齢の任意の患者が含まれていた。除外基準には、活動性感染、免疫抑制剤の使用、過去30日以内の放射線治療または化学療法、妊娠中、またはインフォームド・コンセントを与えることができなかった患者が含まれる。スクリーニングされた併存疾患には、高血圧症、糖尿病、冠動脈疾患、喫煙歴および活性悪性腫瘍などが含まれていた。この研究に参加したすべての患者が、参加の前に書面によるインフォームド・コンセントを与えた。
【0116】
陰圧プラットフォーム創傷被覆材(NP-PWD)
本研究では、NP-PWD(Applied Tissue Technologies LLC、米国マサチューセッツ州ヒンガム)を、-80mmHgの連続圧力でINVIA(R)Motion NPWTポンプ(スイス、バール州メデラ)とともに使用した。各PWDと陰圧ポンプとに陰圧チューブを接続した。本研究では、1インチ(2.54cm)×3インチ(7.62cm)(部品番号AT1073-01)および3インチ(7.62cm)×5インチ(12.7cm)(部品番号AT1074-01)の大きさの創傷開口部を有する楕円形NP-PWDを使用した(図37)。
【0117】
研究設計
手術室での切開閉合直後に、切開部の長さを測定し、写真撮影した。無菌技術を使用してNP-PWDを適用した。適用前に創傷に隣接する余分な毛を剃刀で除去した。次に、NP-PWDの下面の裏当てを取り除き、NP-PWDの中央が創傷の真上になり、接着材が創傷の周囲の無傷の皮膚と接触するように、被覆材を徐々に適用した。次に、INVIA(R)モーション・ポンプ、収集容器、およびチューブ類を組み立て、ポンプをNP-PWDにしっかりと接続した。次にポンプに電源投入し、陰圧を-80mmHgに設定した。術後3日目と5日目(post-operative days:POD)の間の最初の術後検査(post-operative check:POC)時にNP-PWDを除去した。患者は術後9日目から14日目の間に追加のPOCを受ける必要があった。
【0118】
切開部評価
POCは、切開部評価、測定、写真撮影および有害事象(AE)スクリーニングからなっていた。評価は、具体的には、切開部位における紅斑、排液、かゆみ、および痛みを対象としていた。各POCにおいて、研究チームの2人のメンバーが、上記の身体診察の所見の有無を示した。一貫性を維持するために、各時点で同じ研究メンバーが切開部を評価した。紅斑および排液の評価は、研究チームのメンバーによって定性的に行われ、一方、かゆみと痛みの評価は患者の報告に基づいて行われた。各POCにおいて研究チームのメンバーによって切開部測定値がセンチメートル単位で記録された。各POCにおいて各創傷のデジタル写真も撮影された。すべてのAEが記録され、NP-PWDとの関連で評価された。
【0119】
結果
本研究への参加に対する患者の積極的意思に直接関係する困難は特定されなかった。本研究に参加したすべての患者が、意図された期間にわたって被覆材を維持した。本研究に参加したすべての患者が、予定POCの両方に参加し、経過観察が行われなかった患者はいなかった。
【0120】
被覆材の適用には問題がなかった。適用前に被覆材に対して行う必要があるサイズまたは形状の調整がないため、被覆材を適用した者は1~2回の適用後に適用を快適と感じた。
【0121】
研究には10例の切開部を有する合計8人の非継続患者が含まれた。5人の患者が男性であった。3人の患者が女性であった。参加した患者の半数がヒスパニック(4,50%)で、半分が白人(4,50%)であった。年齢中央値は56歳(IQR53歳~74歳)であり、BMI中央値は28.4(IQR25.2~34)であった(表2)。
【0122】
【表2】
【0123】
併存疾患
すべての患者に、少なくとも1つの併存疾患が記録されていた。存在する最も一般的な併存疾患は、高血圧症(n=6)、活性悪性腫瘍(n=4)、および2型糖尿病(n=2)であった。すべての併存疾患を表3に示す。図38に示すように、手術は、鼠径部から得られた全層皮膚移植(FTSG)採皮部位(n=1)、脂肪層切除(n=2)、冠動脈バイパス移植(CABG、n=2)、直視下僧帽弁修復術(n=1)、半結腸切除術(n=1)、乳腺切除(n=2)、および肺切除(n=1)の範囲にわたった。
【0124】
【表3】
【0125】
切開長および被覆材使用期間
初期切開長中央値は20cm(IQR7.4cm~20cm)であった。切開長は全治療期間を通じて同じままであった。切開部の大部分について、被覆材は所定位置に3日間留まっていた(60%)。すべての被覆材がPOD5日目までに除去された(表4)。
【0126】
【表4】

【0127】
切開部評価
1回目のPOCで、すべての切開部が漿液血液状(SS)排液を有することが観察された。切開部の半数未満が紅斑(40%)であり、2例のみに痛みがあることが報告された(20%)。2回目のPOCまでにすべてのSS排液が消散した。3例の切開に紅斑があることがわかった(30%)1例にかゆみがあることが報告され(10%)、痛みのあるものはなかった(表5、図39a~図39d、図40a~図40d、図41a~図41d、図42a~図42dおよび図43a~図43d)。創傷崩壊も感染も観察されなかった。3例の有害事象があった。すなわち、2例の切開部の接着材の下に小水疱が見られ、1人の患者について、ICUからの移送時にチューブが外れ、その結果として治療が中断された。
【0128】
【表5】
【0129】
考察
本研究では、臨床状況におけるNP-PWDの使用について調べた。本研究では、被覆材が、乳房、胸部または胸壁、腹部および鼠径部を含む、身体の異なる領域に対する術後の様々な閉合外科切開部に適用された。本研究中に創傷感染症は発生しなかった。注目すべきは、本研究に含まれた患者は、創傷の治癒を阻害することが知られている糖尿病および活性悪性腫瘍を含む重傷の併存疾患を患っていたことである。被覆材は、医療スタッフにより容易に適用され、患者はいかなる耐えがたい副作用も報告せず、切開部は感染症の兆候も裂開もなく良好に治癒した。2例の切開部の接着材の下に発生した水疱の場合、これはデバイス自体ではなく、切開の場所(脂肪層切除)と患者要因に起因する可能性が高かった。
【0130】
本明細書で開示されているNP-PWDデバイスは、現在入手可能な陰圧創傷治療デバイスの欠点を改善する。たとえば、現在入手可能なデバイスでは、フォーム材を創傷の形状に合わせってカットする時間が多い。現在のデバイス内のフォーム材の不透明性は、デバイスが所定位置にある間の評価を妨げ、感染の温床となる可能性があり、または除去時に健常な肉芽組織の形成を妨げる可能性がある。現在の陰圧創傷治療デバイスは、創傷床に対する治療レベルの陰圧に達するのに、比較的高い陰圧設定を必要とする。高い陰圧レベルの結果、患者にとって不快となる可能性があり、すでに血管新生不良となっている創傷の虚血も至る可能性もある。さらに、現在入手可能な陰圧創傷治療デバイスは、状況によっては、切開部に直接配置されず、別の被覆材の上に配置され、それによってプロセスをより時間を要するものとし、提供者にとってより習得しにくいより複雑なものとしている。本明細書で開示されているNP-PWDデバイスは、手術室で配置可能で、切開部形成後数日以内に除去することができる、適用が容易で、透明で、フォーム材のない被覆材を提供することによってこれらの限界に対処する。
【0131】
本明細書で開示されているNP-PWDは、手術室で配置可能で切開生成後数日以内に除去することができる、適用が容易で、透明な、フォーム材のない被覆材を提供する新規な閉合切開部陰圧治療(NPT)を提供する。
【0132】
本研究の強みとしては、本研究の設計が患者と提供者の関与の両方に関して妥当であることが証明され、本症例集積内で被覆材に関して、創傷治療不良、感染、または参加患者によるデバイス不耐性など、重大な問題が特定されなかったこと含まれる。本研究の過程にわたり切開部が良好に治癒し、大多数に、術後14日までに排液、紅斑、かゆみおよび痛みがなかった。すべての単一機関研究と同様、これらの結果は1つの機関における母集団を表すに過ぎず、したがって、結果を一般化するためにさらなる複数機関による研究が実施される必要があることに留意されたい。この研究に含まれた患者数の少なさと、収集されたデータの大半が定性的であったことも、今後の研究のために考慮されるべきである。予定外科的介入が行われた患者のみが含まれていたため、本研究中には選択バイアスが存在した。測定バイアスと、対照の欠如は、本研究内に存在した症例集積の固有の限界であると認められる。全体として、本症例集積は、創傷の治癒を向上させるための閉合切開部に対するNP-PWDの使用を評価する、追加のより厳格な研究を開発する基となり得る予備データを提供した。
【0133】
予想される実施例1
本研究の目標は、人間の患者における治療被覆材の標準と比較して、痛みを緩和し、または感染を軽減または完全になくすために、本明細書に記載のように治療デバイスを処方された高用量治療薬と併用する有効性を判定することであろう。
【0134】
ブタにおける前臨床実験は、本提示の創傷治療デバイスによる緊急治療が創傷深度進行を停止させ、感染症を防ぐことを実証した。
【0135】
本研究では、ゲル中の大用量だが安全な用量(1000×MIC)の抗生物質および鎮痛剤が、四肢外傷および熱傷(5%から30%の全体表面積)を有する患者を緊急治療するために使用されることになる。25の標準治療(対照)デバイスと、本研究で使用された1つまたは複数の提示実施形態による25の創傷治療デバイスが存在することになる。これらのデバイスは少なくとも48時間および最大96時間にわたって所定位置に放置され、48時間または96時間の時点で除去されて、創傷が培養され、清拭される。デバイス内のゲル流体中と血清中の抗生物質と鎮痛剤の濃度が24時間ごとに測定される。
【0136】
定量的細菌数(CFU)が、標準治療と比較した、本明細書に記載のデバイスおよび処方に関連する感染の有意な低減または根絶を実証することになる。同様に、トノメータ法および疼痛アナログ・スケールによって評価される痛みが、標準治療と比較した痛みの低減またはさらには消滅を証明することになる。
【0137】
本明細書に記載の方法、デバイスおよび装置は、上記の説明に記載されている、または添付図面に図示されている構造の詳細および構成要素の構成には適用が限定されないことを理解されたい。これらの方法、デバイスおよび装置は、他の実施形態でも実装可能であり、実践可能であり、または様々な方法で実施可能である。具体的な実装形態の例は、本明細書において例示のみを目的として示されており、限定的であることは意図されていない。具体的には、いずれの1つまたは複数の実施形態に関連して説明されている動作、要素および特徴も、任意の他の実施形態における類似の役割から除外されることが意図されていない。
【0138】
また、本明細書で使用されている表現および用語は、説明を目的としており、限定的であるものとみなされるべきではない。本明細書においてシステムおよび方法の実施形態または要素または動作について単数形で言及されている場合、複数のそれらの要素を含む実施形態も包含することがあり、本明細書のいずれの実施形態または要素または動作について複数形で言及されている場合も、単一の要素のみを含む実施形態も包含し得る。本明細書において「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、およびこれらの変形の使用は、その後に記載されている項目およびその同等物と、追加の項目を包含することが意図されている。「または」と言う場合、「または」を使用して記載されているいずれの用語も、その記載されている用語のうちの単一、複数、および全部のいずれも示し得るように、包含的であるものと解釈することができる。前および後ろ、左および右、最上部および底部、上部および下部、および垂直および水平と言う場合、説明の都合のために意図されたものであり、本提示のデバイスおよび方法またはそれらの構成要素をいずれか1つの位置的または空間的定位に限定することは意図されていない。
【0139】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について上述したが、当業者には様々な変更、修正および改良が容易に想到可能であるものと理解されるべきである。そのような変更、修正および改良は、本開示の一部であるものと意図され、本発明の範囲に含まれるものと意図される。したがって、以上の説明および図面は例示のみを目的としている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33a
図33b
図34a
図34b
図34c
図34d
図35a
図35b
図35c
図35d
図36a
図36b
図37
図38
図39a-39d】
図40a-40d】
図41a-41d】
図42a-42d】
図43a-43d】
【国際調査報告】