(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】遷移金属触媒作用のためのN-複素環カルベン錯体
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
C07F15/00 C CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542198
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021012735
(87)【国際公開番号】W WO2021142289
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517349186
【氏名又は名称】ラトガース ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ショスタク ミハル
(72)【発明者】
【氏名】シ シチェン
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AB40
4H050AC90
4H050WB12
4H050WB14
4H050WB17
4H050WB21
(57)【要約】
アニリンを使い捨て配位子として有する新規クラスの高活性Pd(II)-NHC錯体が本明細書に記載される。これらの触媒は明確に定義されており、空気および水分に対して安定であり、クロマトグラフィー技術によって容易に精製可能である。C-N、C-O、およびC-Cl開裂による鈴木・宮浦クロスカップリングにおける高い活性および汎用性が例示されている。これらの触媒の容易な合成も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
は単結合または二重結合であり;
R
1およびR
2はそれぞれ独立してC
3~10シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいC
3~10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、C
1~12アルキル、OC
1~12アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基を含み; あるいは、
R
3およびR
4は、それらが結合している環と一緒に、C
4~20シクロアルキル、C
6~20アリール、またはC
6~20ヘテロアリールを形成するのに使用されており、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
5はHまたは置換されていてもよいC
1~3アルキルであり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
AはC
6~18アリールまたはC
6~18ヘテロアリールであり、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルであり;
mは1、2、または3であり;
nは1、2、3、または4である。
【請求項2】
下記構造:
を有する、請求項1記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体。
【請求項3】
R
1およびR
2がいずれもアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
アリールが
であり、
式中、
R
6およびR
7がそれぞれ独立してC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルであり;
R
8が水素、またはC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルである、
請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R
8が水素である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R
6およびR
7がそれぞれC
1~6アルキルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R
6およびR
7がそれぞれC(H)(CH
3)
2である、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
Mが、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
MがPdである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
Xが、F、Cl、Br、I、OSO
2R、OSO
3R、およびOC(=O)Rからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
式Iの化合物のN-複素環カルベン(NHC)部分が、以下からなる群より選択される、請求項10記載の化合物:
式中、
R
1は、t-Bu、1-アダマンチル、シクロヘキシル、i-Pr、メチル、エチル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、および
からなる群より選択され;
R
6はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、CH(2-Np)
2、またはCH(Et)
2であり;
R
6'はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、またはCH(Et)であり;
R
8はCH(フェニル)
2、Me、OMe、またはHである。
【請求項12】
式Iの化合物のNHC部分が、以下
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
nが2である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Aが
であり、
式中、各R
9が独立して、OCH
3、CF
3、2,6-ジメチル、2,6-ジ-イソプロピル、および水素からなる群より選択され、pが0、1、2、3、4、または5である、
請求項1記載の化合物。
【請求項15】
R
5が水素またはメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と
を溶媒中で接触させる工程であって、
式中、各R
9は独立して、水素、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキルアルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択され、pは0、1、2、3、4、または5である、工程
を含む、請求項1記載の化合物を作製する方法。
【請求項17】
溶媒が非極性非プロトン性溶媒である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
溶媒がクロロホルム、ジエチルエーテル、重水素化クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、またはそれらの混合物を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
接触が室温で行われる、請求項16記載の方法。
【請求項20】
式Iの化合物を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
式MX
2(A-N(H)(R
5))
2の化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と
を溶媒中で接触させる工程
を含む、請求項1記載の化合物を作製する方法。
【請求項21】
接触が塩基の存在下で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項22】
塩基がNaOC
1~4アルキル、KOC
1~4アルキル、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、LiC
1~4アルキル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
溶媒が極性非プロトン性溶媒を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
溶媒がテトラヒドロフラン、2-N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
式IIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
R
5はHまたは置換されていてもよいC
1~3アルキルであり;
R
A、R
6、およびR
7は独立して、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、または少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルより選択され、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
nは1~4の整数であり;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルである。
【請求項26】
式IIIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
R
5はHまたはC
1~3アルキルであり;
R
6、R
7、およびR
8は独立して、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、または少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルより選択され、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Gは存在しないか、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、または少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
YはNまたはCであり;
ZはNまたはCであり;
nは1~4の整数であり;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルであるが、
但し、YおよびZの両方がCであることはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2020年1月8日出願の「遷移金属触媒作用のためのN-複素環カルベン錯体(COMPLEXES OF N-HETEROCYCLIC CARBENES FOR TRANSITION METAL CATALYSIS)」と題する米国仮特許出願第62/958,583号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府の後援による研究に関する記載
本発明は、米国国立科学財団が授与したCHE1650766および米国国立衛生研究所が授与したGM133326に基づく政府支援により行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
パラジウム触媒クロスカップリング反応は小分子の合成に革命をもたらした。これは多様な化学物質の構築における最も重要な方法の1つとなっている。特に、近年では、操作が簡便なプロトコルにおいて最適な1:1のPd対配位子比を使用することを可能にする、明確に定義されたPd(II)プレ触媒が出現している。Nolanの[Pd(NHC)(アリル)Cl]錯体および[Pd(NHC)(cin)Cl]錯体、OrganのPd-PEPPSI系、Hazariの[Pd(NHC)(ind)Cl]触媒、またはBuchwaldのG1~G4パラダサイクルを含む、いくつかのこれらのプレ触媒が現在市販されており、エンドユーザーによる直接適用および反応最適化が可能になっている。
【0004】
NHC(NHC = N-複素環カルベン)は、ホスフィンの補完物として当初設計されたものであるが、金属中心の周りの強力なσ供与および立体調整を含むPd触媒作用における補助配位子として著しい利点を示している。アミン型窒素によるパラジウムの安定化はNolanおよびBuchwaldのパラダサイクルの主要な特徴である。理想的な触媒設計基準としては、活性一配位Pd(0)錯体を得るための活性化工程中に使い捨て配位子が容易に除去されるはずであり、一方で、その再結合により活性金属種を安定化することで触媒寿命を延長することが可能になる。
【0005】
したがって、クロスカップリング反応における触媒として使用可能な新規錯体が当技術分野において要求されている。本発明はこの要求に対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
様々な態様では、本開示は、式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を提供する:
式中、
は単結合または二重結合であり;
R
1およびR
2はそれぞれ独立してC
3~10シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいC
3~10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、C
1~12アルキル、またはOC
1~12アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基を含み; あるいは、
R
3およびR
4は、それらが結合している環と一緒に、C
4~20シクロアルキル、C
6~20アリール、またはC
6~20ヘテロアリールを形成するのに使用されており、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
5はHまたは置換されていてもよいC
1~3アルキルであり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
Aはアリールまたはヘテロアリールであり、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
各Rは独立して水素またはC
1~10アルキルであり;
mは1、2、または3であり;
nは1、2、3、または4である。
【0007】
様々な態様では、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を作製する方法が提供される。本方法は、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体とを溶媒中で接触させる工程を含み、
式中、各R
9は独立して、水素、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択され、pは0、1、2、3、4、または5である。
【0008】
いくつかの態様では、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を作製する別の方法は、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を形成するために、式I-SMの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
式MX
2(A-N(H)(R
5))
2の化合物とを溶媒中で接触させる工程を含む。いくつかの態様では、本反応工程は塩基の存在下で行われる。式I-SMの化合物は本明細書に記載の任意のNHC部分の安定な塩でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面は、本出願の様々な態様を一般的に、例示として、但し限定としてではなく示す。
【0010】
【
図1】異なる使い捨て配位子を有する明確に定義されたPd(II)プレ触媒の構造を示す。
【
図2】錯体6a(a)および7a(b)のX線結晶構造を示す。2つの図: 正面図(上面図); 側面図(下面図)。NHC骨格およびArNH
2部分中の原子を除いては、わかりやすくするために水素原子を省略した。選択される結合長[Å]および結合角[°](6a): Pd1-C1、1.970(3); Pd1-N3、2.109(2); Pd1-Cl1、2.2997(9); Pd1-Cl2、2.2990(9); C1-N1、1.354(3); C1-N2、1.358(3); C1-Pd1-N3、175.5(1); N3-Pd1-Cl1、87.59(6); N3-Pd1-Cl2、90.51(6); C1-Pd1-Cl2、90.54(8); N1-C1-N2、105.3(2); N1-C1-Pd1、124.2(2); N2-C1-Pd1、130.4(2)。(7a)の選択される結合長[Å]および結合角[°]について。
【
図3】象限当たりの% V
burを示す、[(IPr)PdCl
2(AN)](6a)および[(SIPr)PdCl
2(AN)](7a)のトポグラフィー立体マップを示す。
【
図4】
図4A~
図4Bは、IPr
#-PEPPSI、[Pd(IPr
#)(3-Cl-py)Cl
2]のX線結晶構造を正面図(
図4A)および側面図(
図4B)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
理想的な触媒の基準に適合する[(NHC)PdCl2(アニリン)]錯体の合成、特性評価、および反応性が本明細書に記載される。特定の非限定的な態様では、本明細書の触媒の意外な特徴として、N-C(O)活性化によるアミドの鈴木・宮浦クロスカップリング、ならびにエステルと塩化アリールとの鈴木・宮浦クロスカップリングおよびBuchwald-Hartwigアミノ化における明確な定義、空気および水分安定性、ならびに高い活性が挙げられる。本明細書の化合物では、広範に入手可能なアニリンが、明確に定義されたPd(II)-NHC触媒作用のための使い捨て配位子として使用されている。構造的および電子的多様性を有するものを含む様々なアニリン骨格が入手可能であることで、困難なクロスカップリング反応の設計および微調整における利点が得られる。
【0012】
ここで、開示される主題の特定の態様に詳細に言及する。これら態様の例の一部は添付図面に示される。開示される主題を番号付きの請求項との関連で説明するが、例示される当該の主題が特許請求の範囲を開示される当該の主題に限定するようには意図されていないことが理解されよう。
【0013】
本文献全体を通じて、範囲という形で表される値は、範囲の限界値として明示的に記載される数値を含むだけではなく、該範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も、あたかも各数値および部分範囲が明示的に記載されるかのように含むように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、指示された範囲内の個々の値(例えば1%、2%、3%、および4%)ならびに部分範囲(例えば0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むものと解釈されるべきである。別途指示がない限り、「約X~Y」という記載は「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、別途指示がない限り、「約X、Y、または約Z」という記載は「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0014】
本文献では、文脈上別途明らかな指示がない限り、「a」、「an」、または「the」という用語は1つまたは2つ以上を含むように使用される。別途指示がない限り、「または」という用語は、非排他的な「または」を意味するように使用される。「AおよびBのうち少なくとも1つ」または「AもしくはBのうち少なくとも1つ」という記載は「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。さらに、本明細書において使用され、かつ他の箇所で定義されていない語句または用語は、記述のみを目的としており、限定を目的としていないものと理解されるべきである。節の見出しの任意の使用は、本文献の読解の助けとなるように意図されており、限定的なものと解釈されるべきではない。節の見出しに関連する情報は、その特定の節の内側または外側で生じうる。本文献において言及されるすべての刊行物、特許、および特許文献は、個々に参照により組み入れられるかのように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
本明細書に記載の方法では、時間順序または操作順序が明示的に記載されている場合を除き、行為を任意の順序で行うことができる。さらに、特定の行為が別々に行われなければならないと請求項の明示的な文言に記載されていない限り、それらを同時に行うことができる。例えば、Xを行うという請求項記載の行為およびYを行うという請求項記載の行為を1つの操作内で同時に行うことができ、結果的なプロセスは請求項記載のプロセスの字義通りの範囲内である。
【0016】
定義
本明細書において使用される「約」という用語は、記載される値または記載される範囲限界値の例えば10%以内、5%以内、または1%以内での値または範囲の変動率を可能にしうるものであり、記載される正確な値または範囲を含む。
【0017】
本明細書において使用される「実質的に」という用語は、「の大部分(a majority of)」または「大部分は(mostly)」を、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上、または100%と同様に意味する。本明細書において使用される「実質的に含まない」という用語は、全く有さないこと、または些少な量で有することを意味しうるものであり、したがって、存在する材料の量は、該材料を含む組成物の材料特性に影響せず、したがって、該材料は該組成物の約0重量%~約5重量%、または約0重量%~約1重量%、または約5重量%以下、または約4.5重量%未満、約4.5重量%と同等、もしくは約4.5重量%超、または4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001重量%以下である。「実質的に含まない」という用語は、些少な量で有することを意味しうるものであり、したがって、材料は組成物の約0重量%~約5重量%、または約0重量%~約1重量%、または約5重量%以下、または約4.5重量%未満、約4.5重量%と同等、もしくは約4.5重量%超、または4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001重量%以下、または約0重量%である。
【0018】
本明細書において使用される「有機基」という用語は、任意の炭素含有官能基を意味する。例としてはアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基などの酸素含有基; カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基; アルキルスルフィド基およびアリールスルフィド基などの硫黄含有基; ならびに他のヘテロ原子含有基を挙げることができる。有機基の非限定的な例としてはOR、OOR、OC(O)N(R)2、CN、CF3、OCF3、R、C(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、C(=NOR)R、および置換または非置換(C1~C100)ヒドロカルビルが挙げられ、ここでRは水素(他の炭素原子を含む例において)または炭素系部分であることができ、炭素系部分は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0019】
本明細書に定義の分子または有機基に関して本明細書において使用される「置換された」という用語は、そこに含まれる1個または複数の水素原子が1個または複数の非水素原子で置き換えられた状態を意味する。本明細書において使用される「官能基」または「置換基」という用語は、分子または有機基上で置換を行いうるかまたは置換を行う基を意味する。置換基または官能基の例としてはハロゲン(例えばF、Cl、Br、およびI); ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基などの基の中の酸素原子; チオール基、アルキルスルフィド基およびアリールスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、ならびにスルホンアミド基の中の硫黄原子; アミン、ヒドロキシアミン、ニトリル、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、アジド、およびエナミンなどの基の中の窒素原子; ならびに様々な他の基の中の他のヘテロ原子が挙げられるがそれに限定されない。置換された炭素原子(または他の原子)に結合可能な置換基の非限定的な例としてはF、Cl、Br、I、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、およびC(=NOR)Rが挙げられ、ここでRは水素または炭素系部分であることができ、例えばRは水素、(C1~C100)ヒドロカルビル、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであることができ、あるいは、窒素原子または複数の隣接する窒素原子に結合した2個のR基は、1個または複数の該窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができる。
【0020】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、1個~40個の炭素原子、1個~約20個の炭素原子、1個~12個の炭素、またはいくつかの態様では1個~8個の炭素原子を有する、直鎖および分岐アルキル基、ならびにシクロアルキル基を意味する。直鎖アルキル基の例としては1~8個の炭素原子を有する基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、およびn-オクチル基が挙げられる。分岐アルキル基の例としてはイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、および2,2-ジメチルプロピル基が挙げられるがそれに限定されない。本明細書において使用される「アルキル」という用語は、n-アルキル基、イソアルキル基、およびアンテイソアルキル(anteisoalkyl)基、ならびに他の分岐鎖形態のアルキルを包含する。代表的な置換アルキル基は本明細書に列挙されるいずれかの基、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、およびハロゲン基で1回または複数回置換されていてもよい。
【0021】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重結合が2個の炭素原子の間に存在すること以外は本明細書に定義の通りである、直鎖および分岐鎖ならびに環状アルキル基を意味する。したがって、アルケニル基は2個~40個の炭素原子、または2個~約20個の炭素原子、または2個~12個の炭素原子、またはいくつかの態様では2個~8個の炭素原子を有する。例としては特にビニル、-CH=C=CCH2、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、およびヘキサジエニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0022】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の三重結合が2個の炭素原子の間に存在すること以外は本明細書に定義の通りである、直鎖および分岐鎖アルキル基を意味する。したがって、アルキニル基は2個~40個の炭素原子、2個~約20個の炭素原子、または2個~12個の炭素、またはいくつかの態様では2個~8個の炭素原子を有する。例としては特に-C≡CH、-C≡C(CH3)、-C≡C(CH2CH3)、-CH2C≡CH、-CH2C≡C(CH3)、および-CH2C≡C(CH2CH3)が挙げられるがそれに限定されない。
【0023】
本明細書において使用される「アシル」という用語は、カルボニル炭素原子を通じて結合する、カルボニル部分を含む基を意味する。カルボニル炭素原子は、「ホルミル」基を形成する水素に結合するか、またはアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基などの一部でありうる別の炭素原子に結合する。アシル基は、カルボニル基に結合した0個~約12個、0個~約20個、または0個~約40個のさらなる炭素原子を含みうる。アシル基は、本明細書における意味の範囲内の二重結合または三重結合を含みうる。アクリロイル基はアシル基の一例である。アシル基は、本明細書における意味の範囲内のヘテロ原子を含んでもよい。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は本明細書における意味の範囲内のアシル基の一例である。他の例としてはアセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ピリジルアセチル基、シンナモイル基、およびアクリロイル基などが挙げられる。カルボニル炭素原子に結合した炭素原子を含む基がハロゲンを含む場合、基は「ハロアシル」基と呼ばれる。一例はトリフルオロアセチル基である。
【0024】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などであるがそれに限定されない環状アルキル基を意味する。いくつかの態様では、シクロアルキル基は3個から約8~12個までの環員を有することができ、一方、他の態様では、環炭素原子の数は3から4、5、6、または7までの範囲である。さらに、シクロアルキル基としてはノルボルニル基、アダマンチル基、ボルニル基、カンフェニル(camphenyl)基、イソカンフェニル(isocamphenyl)基、およびカレニル(carenyl)基などであるがそれに限定されない多環式シクロアルキル基、ならびにデカリニルなどであるがそれに限定されない縮合環、などが挙げられる。シクロアルキル基は、本明細書に定義の直鎖または分岐鎖アルキル基で置換された環も含む。代表的な置換シクロアルキル基は、2,2-、2,3-、2,4-、2,5-、もしくは2,6-二置換シクロヘキシル基または一置換、二置換、もしくは三置換ノルボルニル基もしくはシクロヘプチル基などであるがそれに限定されない、一置換のまたは2回以上置換された基であることができ、これらは例えばアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、およびハロゲン基で置換されていてもよい。単独のまたは組み合わせでの「シクロアルケニル」という用語は環状アルケニル基を意味する。
【0025】
本明細書において使用される「アリール」という用語は、環中にヘテロ原子を含まない環状芳香族炭化水素基を意味する。したがって、アリール基としてはフェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基、およびナフチル基が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、アリール基は、基の環部分に約6個~約14個の炭素を含む。アリール基は置換されていなくてもよく、本明細書に定義のように置換されていてもよい。代表的な置換アリール基は、フェニル環の2位、3位、4位、5位、もしくは6位のうちいずれか1つもしくは複数において置換されたフェニル基、またはその2位~8位のうちいずれか1つもしくは複数において置換されたナフチル基などであるがそれに限定されない、一置換のまたは2回以上置換された基でありうる。
【0026】
本明細書において使用される「アラルキル」という用語は、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。代表的なアラルキル基としてはベンジル基およびフェニルエチル基、ならびに4-エチル-インダニルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基が挙げられる。アラルケニル基とは、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルケニル基のことである。
【0027】
本明細書において使用される「ヘテロシクリル」という用語は、そのうち1個または複数がN、O、およびSなどであるがそれに限定されないヘテロ原子である3個以上の環員を含む芳香環および非芳香環化合物を意味する。したがって、ヘテロシクリルはシクロヘテロアルキル、またはヘテロアリール、または多環式であれば、それらの任意の組み合わせでありうる。いくつかの態様では、ヘテロシクリル基は3個~約20個の環員を含み、一方、他の同様の基は3個~約15個の環員を有する。C2-ヘテロシクリルと呼ばれるヘテロシクリル基は、2個の炭素原子および3個のヘテロ原子を有する5員環、2個の炭素原子および4個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。同様に、C4-ヘテロシクリルは、1個のヘテロ原子を有する5員環、2個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。炭素原子の数およびヘテロ原子の数は環原子の総数に等しい。ヘテロシクリル環は1個または複数の二重結合を含んでもよい。ヘテロアリール環はヘテロシクリル基の一態様である。「ヘテロシクリル基」という語句は、縮合芳香族基および非芳香族基を含む種を含む縮合環種を含む。例えば、ジオキソラニル環およびベンゾジオキソラニル環系(メチレンジオキシフェニル環系)はいずれも、本明細書における意味の範囲内にあるヘテロシクリル基である。この語句は、キヌクリジルなどであるがそれに限定されない、ヘテロ原子を含む多環系も含む。ヘテロシクリル基は置換されていなくてもよく、本明細書において説明のように置換されていてもよい。ヘテロシクリル基としてはピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、インドリル基、ジヒドロインドリル基、アザインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、アザベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、イソオキサゾロピリジニル基、チアナフタレニル基、プリニル基、キサンチニル基、アデニニル基、グアニニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、キノキサリニル基、およびキナゾリニル基が挙げられるがそれに限定されない。代表的な置換ヘテロシクリル基は、一置換のまたは2回以上置換されているピペリジニル基またはキノリニル基などであるがそれに限定されない基であることができ、これらは本明細書に列挙される基などの基で2-、3-、4-、5-もしくは6-置換または二置換されている。
【0028】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、そのうち1個または複数がN、O、およびSなどであるがそれに限定されないヘテロ原子である5個以上の環員を含む芳香環化合物を意味し、例えばヘテロアリール環は5個から約8~12個までの環員を有しうる。ヘテロアリール基とは、芳香族電子構造を有する種々のヘテロシクリル基のことである。C2-ヘテロアリールと呼ばれるヘテロアリール基は、2個の炭素原子および3個のヘテロ原子を有する5員環、2個の炭素原子および4個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。同様に、C4-ヘテロアリールは、1個のヘテロ原子を有する5員環、2個のヘテロ原子を有する6員環などでありうる。炭素原子の数およびヘテロ原子の数の合計は環原子の総数に等しい。ヘテロアリール基としてはピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、アザインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、アザベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、イソオキサゾロピリジニル基、チアナフタレニル基、プリニル基、キサンチニル基、アデニニル基、グアニニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラヒドロキノリニル基、キノキサリニル基、およびキナゾリニル基などの基が挙げられるがそれに限定されない。ヘテロアリール基は置換されていなくてもよく、本明細書において説明される基で置換されていてもよい。代表的な置換ヘテロアリール基は、本明細書に列挙される基などの基で1回または複数回置換されていてもよい。
【0029】
アリール基およびヘテロアリール基のさらなる例としてはフェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、N-ヒドロキシテトラゾリル、N-ヒドロキシトリアゾリル、N-ヒドロキシイミダゾリル、アントラセニル(1-アントラセニル、2-アントラセニル、3-アントラセニル)、チオフェニル(2-チエニル、3-チエニル)、フリル(2-フリル、3-フリル)、インドリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、キナゾリニル、フルオレニル、キサンテニル、イソインダニル、ベンズヒドリル、アクリジニル、チアゾリル、ピロリル(2-ピロリル)、ピラゾリル(3-ピラゾリル)、イミダゾリル(1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル)、トリアゾリル(1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-2-イル、1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサゾリル(2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、チアゾリル(2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリミジニル(2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル)、ピラジニル、ピリダジニル(3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル)、キノリル(2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル(1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル)、ベンゾ[b]フラニル(2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[b]チオフェニル(2-ベンゾ[b]チオフェニル、3-ベンゾ[b]チオフェニル、4-ベンゾ[b]チオフェニル、5-ベンゾ[b]チオフェニル、6-ベンゾ[b]チオフェニル、7-ベンゾ[b]チオフェニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル、(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、インドリル(1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、インダゾール(1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、8-ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(1-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチアゾリル(1-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、カルバゾリル(1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル)、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)などが挙げられるがそれに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、本明細書に定義のアルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のヘテロシクリル基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。代表的なヘテロシクリルアルキル基としてはフラン-2-イルメチル、フラン-3-イルメチル、ピリジン-3-イルメチル、テトラヒドロフラン-2-イルエチル、およびインドール-2-イルプロピルが挙げられるがそれに限定されない。
【0031】
本明細書において使用される「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基の水素結合または炭素結合が本明細書に定義のヘテロアリール基への結合で置き換えられた、本明細書に定義のアルキル基を意味する。
【0032】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、本明細書に定義のシクロアルキル基を含むアルキル基に接続された酸素原子を意味する。直鎖アルコキシ基の例としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。分岐アルコキシの例としてはイソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。環状アルコキシの例としてはシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるがそれに限定されない。アルコキシ基は、酸素原子に結合した約1個~約12個、約1個~約20個、または約1個~約40個の炭素原子を含むことができ、二重結合または三重結合をさらに含むことができ、ヘテロ原子も含むことができる。例えば、アリルオキシ基またはメトキシエトキシ基も本明細書における意味の範囲内のアルコキシ基であり、構造の2個の隣接する原子がそれで置換されるという文脈ではメチレンジオキシ基もそうである。
【0033】
本明細書において使用される「アミン」という用語は、各基が独立してH、またはアルキル、アリールなどの非Hでありうる式N(基)3を例えば有する第一級、第二級、および第三級アミンを意味する。アミンとしてはR-NH2、例えばアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン; 各Rが独立して選択されるR2NH、例えばジアルキルアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン、ヘテロシクリルアミンなど; ならびに各Rが独立して選択されるR3N、例えばトリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、トリアリールアミンなどが挙げられるがそれに限定されない。「アミン」という用語は、本明細書において使用されるアンモニウムイオンも含む。
【0034】
本明細書において使用される「アミノ基」という用語は、各Rが独立して選択される形態-NH2、-NHR、-NR2、-NR3
+の置換基、および、プロトン化され得ない-NR3
+を除く各形態のプロトン化形態を意味する。したがって、アミノ基で置換された任意の化合物をアミンと見なすことができる。本明細書における意味の範囲内の「アミノ基」は第一級、第二級、第三級、または第四級アミノ基でありうる。「アルキルアミノ」基はモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、およびトリアルキルアミノ基を含む。
【0035】
本明細書において使用される、それ自体でのまたは別の置換基の一部としての「ハロ」、「ハロゲン」、または「ハロゲン化物」基という用語は、別途記載がない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。
【0036】
本明細書において使用される「ハロアルキル」基という用語は、モノ-ハロアルキル基、すべてのハロ原子が同じでも異なっていてもよいポリ-ハロアルキル基、およびすべての水素原子がフルオロなどのハロゲン原子で置き換えられたペル-ハロアルキル基を含む。ハロアルキルの例としてはトリフルオロメチル、1,1-ジクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、1,3-ジブロモ-3,3-ジフルオロプロピル、ペルフルオロブチルなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において使用される「一価の」という用語は、置換された分子に置換基が単結合によって接続されることを意味する。置換基が一価、例えばFまたはClである場合、置換基は、単結合によって、それが置換している原子に結合している。
【0038】
本明細書において使用される「炭化水素」または「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子および水素原子を含む分子または官能基を意味する。この用語は、炭素原子および水素原子の両方を通常含むが、すべての水素原子が他の官能基で置換されている、分子または官能基を意味することもある。
【0039】
本明細書において使用される「ヒドロカルビル」という用語は、直鎖、分岐、または環状炭化水素から誘導される官能基を意味するものであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アシル、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。ヒドロカルビル基は(Ca~Cb)ヒドロカルビルとして示されることがあり、ここでaおよびbは整数であり、a~bのいずれかの数の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C4)ヒドロカルビルとは、ヒドロカルビル基がメチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、またはブチル(C4)でありうることを意味し、(C0~Cb)ヒドロカルビルとは、特定の態様においてヒドロカルビル基が存在しないことを意味する。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC1~12アルキルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC2~12アルケニルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC2~12アルキニルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC3~12シクロアルキルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC1~12ヘテロアルキルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC1~12アルコキシである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC6~14アリール、および/または置換されていてもよいC6~12アリール、および/または置換されていてもよいC6~10アリールである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC2~C12ヘテロシクリルである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC4~C12ヘテロアリールである。特定の態様では、ヒドロカルビルは置換されていてもよいC1~12アシルである。
【0040】
本明細書において使用される「溶媒」という用語は、固体、液体、または気体を溶解させうる液体を意味する。溶媒の非限定的な例としてはシリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン性液体、および超臨界流体がある。
【0041】
本明細書において使用される「より独立して選択される」という用語は、文脈上明らかに別途指示されない限り、言及される基が同じ基、異なる基、またはそれらの混合物であることを意味する。したがって、この定義に基づけば、「X1、X2、およびX3は希ガスより独立して選択される」という語句は、例えば、X1、X2、およびX3がすべて同じであるという状況、X1、X2、およびX3がすべて異なるという状況、X1およびX2が同じであるがX3が異なるという状況、および他の類似した並べ替えの状況を含むであろう。
【0042】
本明細書において使用される「室温」という用語は約15℃~28℃の温度を意味する。
【0043】
本明細書において使用される「標準温度」および「標準圧力」という用語は20℃および101kPaを意味する。
【0044】
本明細書において使用される「組成物」または「薬学的組成物」という用語は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物と薬学的に許容される担体との混合物を意味する。薬学的組成物は、患者または対象への化合物の投与を促進する。静脈内投与、経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、眼内投与、肺内投与、および局所投与を含むがそれに限定されない、化合物を投与する複数の技術が当技術分野に存在する。
【0045】
本明細書において使用される「Np」という略語はナフチルを意味する。したがって、1-Npは1-ナフチルであり、2-Npは2-ナフチルである。
【0046】
化合物の調製
式Iの化合物または本明細書に別途記載の化合物を、本明細書に記載の一般的スキームによって、当業者に公知の合成方法を使用して調製することができる。以下の例は、本明細書に記載の化合物およびそれらの調製の非限定的態様を示す。
【0047】
様々な態様では、本開示は、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を提供する:
式中、
は単結合または二重結合であり;
R
1およびR
2はそれぞれ独立してC
3~10シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいC
3~10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロアリール、C
1~12アルキル、またはOC
1~12アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基を含み; あるいは、
R
3およびR
4は、それらが結合している環と一緒に、C
4~20シクロアルキル、C
6~20アリール、またはC
6~20ヘテロアリールを形成するのに使用されており、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
5はHまたは置換されていてもよいC
1~3アルキルであり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
Aはアリールまたはヘテロアリールであり、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルであり;
mは1、2、または3であり;
nは1、2、3、または4である。
【0048】
式Iの化合物中の変動要素Aの性質は特に限定されないが、これは、遷移金属との安定な錯体が本明細書に記載の配位子によって形成可能であり、得られる遷移金属錯体が触媒活性を有することが条件である。他の好適なA部分としてはアントラセン(例えば1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン、9-アミノアントラセン); アミノビフェニル(例えば4-アミノビフェニル); アミノフェナントレン(例えば1-アミノフェナントレン、2-アミノフェナントレン、9-アミノフェナントレン); アミノピレン(例えば1-アミノピレン、2-アミノピレン); アミノクリセン(例えば1-アミノクリセン、2-アミノクリセン、6-アミノクリセン); アミノフルオレン(例えば1-アミノフルオレン、2-アミノフルオレン); ナフタレン(例えば1-アミノナフタレン、2-アミノナフタレン); アクリジン(例えば9-アミノアクリジン、2-アミノアクリジン); キノリン(例えば8-アミノキノリン、2-アミノキノリン、5-アミノキノリン); などが挙げられる。本明細書に記載の任意のアリールアミンまたはヘテロアリールアミンは第一級アミンまたは第二級アミンでありうる。
【0049】
いくつかの態様では、本化合物は、式Iaの構造、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を有する。
【0050】
いくつかの態様では、本化合物は、式Ib、式Ic、式Id、式Ie、もしくは式Ifの構造、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を有する。
【0051】
いくつかの態様では、R
1およびR
2はいずれもアリールである。様々な態様では、アリール基は下記構造:
、またはその塩、溶媒和物、幾何的異性体、もしくは立体異性体を有し、式中、
R
6およびR
7はそれぞれ独立してC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルであり;
R
8は水素、またはC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルである。
【0052】
いくつかの態様では、R8は水素である。様々な態様では、R6およびR7はそれぞれC1~6アルキルである。いくつかの態様では、R6およびR7はそれぞれC(H)(CH3)2である。様々な態様では、MはFe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群より選択される。いくつかの態様では、MはPdである。様々な態様では、XはF、Cl、Br、I、OSO2R、OSO3R、およびOC(=O)Rからなる群より選択される、いくつかの態様では、XはClである。様々な態様では、mは1である。様々な態様では、nは2である。
【0053】
いくつかの態様では、Aは
であり;
各R
9は独立して、OCH
3、CF
3、2,6-ジメチル、2,6-ジ-イソプロピル、および水素からなる群より選択され、pは0、1、2、3、4、または5である。いくつかの態様では、R
5は水素またはメチルである。
【0054】
【0055】
様々な態様では、式Iの化合物中のNHC部分は、以下からなる群より選択される:
式中、
R
1は、t-Bu、1-アダマンチル、シクロヘキシル、i-Pr、メチル、エチル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、および
からなる群より選択され;
R
6はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、CH(2-Np)
2、またはCH(Et)
2であり;
R
6'はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、またはCH(Et)であり;
R
8はCH(フェニル)
2、Me、OMe、またはHである。
【0056】
様々な態様では、式Iの化合物中のNHC部分は、以下:
および
からなる群より選択される。
【0057】
様々な態様では、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を作製する方法が提供される。本方法は、式Iの化合物を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体とを溶媒中で接触させる工程を含み、
式中、各R
9は独立して、水素、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択され、pは0、1、2、3、4、または5である。
【0058】
様々な態様では、溶媒は非極性非プロトン性溶媒である。好適な非極性非プロトン性溶媒としてはクロロホルム、ジエチルエーテル、重水素化クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、またはそれらの混合物が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、接触は室温で行われる。
【0059】
いくつかの態様では、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を作製する別の方法は、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を形成するために、式I-SMの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
式MX
2(A-N(H)(R
5))
2の化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体とを溶媒中で接触させる工程を含む。いくつかの態様では、本反応工程は塩基の存在下で行われる。式I-SMの化合物は本明細書に記載の任意のNHC部分の安定な塩でありうる。
【0060】
好適な塩基としてはNaOC1~4アルキル、KOC1~4アルキル、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、LiC1~4アルキル、またはそれらの組み合わせなどが挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、塩基を用いる反応は極性非プロトン性溶媒中で行われる。好適な極性非プロトン性溶媒としてはテトラヒドロフラン、2-N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、またはそれらの混合物などが挙げられるがそれに限定されない。
【0061】
様々な態様では、本化合物は式IIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体である。
【0062】
式IIの化合物中、Xおよび「n」は本明細書に定義の通りである。
【0063】
RA、R6、およびR7はそれぞれ独立して、置換されていてもよいC1~12アルキル、置換されていてもよいC1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC1~12アルキル、置換されていてもよいC3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC6~10アリール、置換されていてもよいC6~10ヘテロアリール、A、R1、またはR2より選択される。R6およびR7中の任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR3、OSiR3、OSiR3、OSi(OR)3、BR3、BR2、B(OR)3、B(OR)2、CN、CF3、OCF3、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、NR2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)C(O)OR、C1~12アルキル、C1~12ヘテロアルキル、OC1~12アルキル、C3~12シクロアルキル、C6~10アリール、およびC6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基である。
【0064】
様々な態様では、本化合物は式IIIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体である。
【0065】
式IIIの化合物中、X、n、R6、およびR7は本明細書に定義の通りである。変動要素R8はR6と同様に定義される。変動要素YはNまたはCであり、ZはNまたはCであるが、但し、YおよびZの両方がCであることはできない。Gは存在しないか、またはR6と同様に定義される。式IIIの化合物はメソイオンカルベン錯体である。
【0066】
式IIIの化合物は、例えば以下の反応により形成可能である。
【0067】
様々な態様では、本化合物は、以下
からなる群より選択されるメソイオンカルベン錯体である。
【0068】
本明細書に記載の化合物は1個または複数の立体中心を有しうるし、各立体中心は独立して(R)配置または(S)配置で存在しうる。特定の態様では、本明細書に記載の化合物は光学活性体またはラセミ体として存在する。本明細書に記載の化合物が、本明細書に記載の治療上有用な特性を有するラセミ体、光学活性体、位置異性体、および立体異性体、またはその組み合わせを包含するということを理解すべきである。光学活性体の調製は、再結晶技術によるラセミ体の分割、光学活性出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離を非限定的な例として含む任意の好適な様式で実現される。特定の態様では、1つまたは複数の異性体の混合物が、本明細書に記載の治療用化合物として利用される。他の態様では、本明細書に記載の化合物は1個または複数のキラル中心を含む。これらの化合物は、鏡像異性体および/またはジアステレオマーの混合物の立体選択的合成、エナンチオ選択的合成、および/または分離を含む任意の手段によって調製される。化合物およびその異性体の分割は、化学的プロセス、酵素的プロセス、分別結晶化、蒸留、およびクロマトグラフィーを非限定的な例として含む任意の手段によって実現される。
【0069】
本明細書に記載の方法および製剤は、本明細書に記載の任意の化合物の構造を有する化合物のN-オキシド(適切であれば)、結晶形(多形としても知られる)、溶媒和物、非晶相、および/または薬学的に許容される塩、ならびに同種の活性を示すこれらの化合物の代謝産物および活性代謝産物の使用を含む。溶媒和物としては水、エーテル(例えばテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル)またはアルコール(例えばエタノール)の溶媒和物や、酢酸エステルなどが挙げられる。特定の態様では、本明細書に記載の化合物は、水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形で存在する。他の態様では、本明細書に記載の化合物は非溶媒和形で存在する。
【0070】
特定の態様では、本明細書に記載の化合物は互変異性体として存在しうる。すべての互変異性体は、本明細書に提示される化合物の範囲内に含まれる。
【0071】
特定の態様では、本明細書に記載の化合物はプロドラッグとして調製される。「プロドラッグ」とは、インビボで親薬物に変換される薬剤を意味する。特定の態様では、インビボ投与時に、プロドラッグは本化合物の生物学的、薬学的、または治療的に活性な形態に化学変換される。他の態様では、プロドラッグは1つまたは複数の段階またはプロセスによって本化合物の生物学的、薬学的、または治療的に活性な形態に酵素代謝される。
【0072】
特定の態様では、本明細書に記載の化合物の例えば芳香環部分上の部位は様々な代謝反応を受けやすい。芳香環構造上に適切な置換基を組み込むことで、この代謝経路を減少させ、最小化し、または排除することができる。特定の態様では、芳香環の代謝反応の受けやすさを減少させるかまたは排除するために適切な置換基は、単なる例として重水素、ハロゲン、またはアルキル基である。
【0073】
本明細書に記載の化合物は、同一の原子数を有するが自然界に通常見られる原子質量または原子質量数とは異なる原子質量または原子質量数を有する原子で1個または複数の原子が置き換えられた、同位体標識化合物も含む。本明細書に記載の化合物に好適に含まれる同位体の例としては2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、および35Sが挙げられるがそれに限定されない。特定の態様では、同位体標識化合物は薬物分布試験および/または基質組織分布試験において有用である。他の態様では、重水素などの重同位体による置換によって、代謝安定性の増大(例えばインビボ半減期の増加または所要投与量の減少)が得られる。さらに他の態様では、11C、18F、15O、および13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、基質受容体占有率を調査するための陽電子放出断層撮影(PET)試験において有用である。同位体標識化合物は、任意の好適な方法によって、または別途使用される非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用するプロセスによって調製される。
【0074】
特定の態様では、本明細書に記載の化合物は、発色団もしくは蛍光部分、生物発光標識、または化学発光標識の使用を含むがそれに限定されない他の手段によって標識されている。
【0075】
本明細書に記載の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物は、本明細書に記載の技術および材料を使用して、かつFieser & Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991)、Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)、March, Advanced Organic Chemistry 4th Ed., (Wiley 1992); Carey & Sundberg, Advanced Organic Chemistry 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000,2001)およびGreen & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Ed., (Wiley 1999)(いずれもその開示が参照により組み入れられる)に例えば記載のように合成される。本明細書に記載の化合物の調製のための一般的方法は、本明細書に示される式に見られる様々な部分を導入するために、適切な試薬および条件の使用によって修正される。
【0076】
本明細書に記載の化合物は、商業的供給源から入手可能な化合物から出発する任意の好適な手順を使用して合成されるか、または本明細書に記載の手順を使用して調製される。
【0077】
特定の態様では、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、チオ基、またはカルボキシ基などの反応性官能基が、反応に対するそれらの望ましくない関与を回避するために保護される。保護基は、一部または全部の反応性部分をブロックして、当該の基が化学反応に関与することを保護基が除去されるまで防止するために使用される。他の態様では、各保護基は異なる手段によって除去可能である。完全に異なる反応条件下で開裂する保護基によって、差次的除去の必要性が満たされる。
【0078】
特定の態様では、保護基は酸、塩基、還元条件(例えば水素化分解)、および/または酸化条件によって除去される。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタール、およびt-ブチルジメチルシリルなどの基は、酸不安定性であり、また、水素化分解で除去可能なCbz基で保護されたアミノ基、および塩基不安定性のFmoc基で保護されたアミノ基の存在下でカルボキシ反応性部分およびヒドロキシ反応性部分を保護するために使用される。カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分は、t-ブチルカルバメートなどの酸不安定性基でブロックされたアミンの存在下でメチル、エチル、およびアセチルなどであるがそれに限定されない塩基不安定性基でブロックされるか、または酸安定性かつ塩基安定性であるが加水分解で除去可能なカルバメートでブロックされる。
【0079】
特定の態様では、カルボン酸反応性部分およびヒドロキシ反応性部分はベンジル基などの加水分解で除去可能な保護基でブロックされ、一方、酸との水素結合が可能なアミン基はFmocなどの塩基不安定性基でブロックされる。カルボン酸反応性部分は、アルキルエステルへの変換を含む本明細書に例示される単純エステル化合物への変換によって保護されるか、または2,4-ジメトキシベンジルなどの酸化で除去可能な保護基でブロックされ、一方、同時に存在するアミノ基はフッ化物不安定性シリルカルバメートでブロックされる。
【0080】
アリルブロッキング基は酸保護基および塩基保護基の存在下で有用である。というのも、前者が安定であり、引き続き金属触媒またはπ酸触媒によって除去されるためである。例えば、アリルブロッキングカルボン酸は、酸不安定性t-ブチルカルバメートまたは塩基不安定性アセテートアミン保護基の存在下でパラジウム触媒反応によって脱保護される。保護基のさらに別の形態は、化合物または中間体がそこに結合する樹脂である。残基が樹脂に結合する限り、その官能基はブロックされて反応しない。樹脂から放出されたときに官能基は反応に利用可能になる。
【0081】
通常、ブロッキング基/保護基は以下より選択されうる。
【0082】
他の保護基は、保護基の創製および除去に適用可能な技術の詳細な説明と併せて、その開示が参照により本明細書に組み入れられるGreene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999およびKocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994に記載されている。
【実施例】
【0083】
例示として提供される以下の実施例を参照することで、本出願の様々な態様をより良く理解することができる。本出願の範囲は以下に示される実施例に限定されない。
【0084】
近年、いくつかの明確に定義された安定なプレ触媒が出現している(
図1、1~5)。アミン型窒素によるパラジウムの安定化はNolanおよびBuchwaldのパラダサイクルの主要な特徴である(
図1、4~5)。[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体などの式Iの化合物の合成をスキーム1に示す。IPrがPd-NHC触媒作用(6)における特権的なモチーフであることから、それをモデルNHC補助配位子として選択した。さらに、代表的なイミダゾリニリデン複合体Pd-SIPrを合成した(7)。アニリンと[{Pd(NHC)(Cl)(μ-Cl)}
2]二量体とをCH
2Cl
2中、室温で反応させることで、[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体の合成を優れた収率で容易に実現した。冷ペンタンでトリチュレートした後、[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体を単離した。すべての錯体は空気および水分に対して安定であることがわかった。所望であれば、[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体をクロマトグラフィー精製に供してもよく、これによりそれらの使用が促進されるはずであるということに留意されたい。錯体6aおよび7aをX線結晶構造解析によって完全に特性評価した(
図2、下記参照)。様々なNHCに関する迅速なスクリーニングのためのPdCl
2(アニリン)
2前駆体の有用性を考慮して、[(IPr)PdCl
2(AN)](AN = アニリン)の直接合成(スキーム2)を開発した。いくつかの態様では、IPrHCl(1.5当量)とPd(PhNH
2)
2Cl
2(1.0当量)およびKOt-Bu(1.5当量)とをTHF中、80℃で反応させることで、明確に定義された[(IPr)PdCl
2(AN)]錯体を収率70%で得る。
【0085】
図2A~
図2Bに示すように、錯体6aおよび7aでは、わずかに歪んだ正方形の平面幾何形状が採用されている(6a: C-Pd-N、175.5°; 7a: C-Pd-N、175.3°)。C-Pd結合長およびPd-N結合長はそれぞれ6aでは1.970Åおよび2.109Åであり、7aでは1.967Åおよび2.116Åである。Cl
1-Pd結合長およびCl
2-Pd結合長はそれぞれ6aでは2.2997Åおよび2.2.990Åであり(Cl
1-Pd-Cl
2、175.8°)、7aでは2.299Åおよび2.285Åである(Cl
1-Pd-Cl
2、174.7°)。これらの結合長はPd(NHC)(複素環)Cl
2錯体と同等の範囲内であり、このことから、アニリンが入手可能であることにより、[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体中で金属中心に対する立体的効果および電子的効果を調節するための直接的なアプローチが実現されると推論される。
【0086】
[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体中での立体的影響を評価するために、6aおよび7aにおける埋没体積%(%V
bur)および立体マップを計算した(
図3)。(%V
bur)が36.1%および39.7%であることから、6aおよび7aは嵩高い[Pd-NHC]錯体となる。これらの値を[Pd(IPr)(3-Cl-py)Cl
2]錯体および[Pd(SIPr)(3-Cl-py)Cl
2]錯体の(%V
bur)34.8%および39.2%と比較することができる。予想通り、非対称性アニリン使い捨て配位子により、各象限について30.7%、41.0%、36.9%、35.9%(6a)および35.4%、44.5%、37.3%、41.6%(7a)で不均一な象限分布が生じる。金属の周りの特殊な立体環境は、[(NHC)PdCl
2(アニリン)]錯体における基質アプローチおよび触媒活性化に影響することがある。
【0087】
スキーム1 (NHC)PdCl
2(アニリン)錯体の合成
a
a条件: [{Pd(NHC)(Cl)(μ-Cl)}
2](1.0当量)、アニリン(2.0当量)、CH
2Cl
2、23℃。
【0088】
スキーム2 (IPr)PdCl
2(AN)の直接合成
a
a条件: IPrHCl(1.5当量)、PdCl
2(AN)
2(1.0当量)、KOt-Bu(1.5当量)、THF、80℃。AN = PhNH
2。
【0089】
(NHC)PdCl2(アニリン)錯体を直接入手した後、これら新規Pd(II)-NHCプレ触媒の反応性を調査した。初期スクリーニングのために、N-C(O)活性化によるアミドの鈴木・宮浦クロスカップリングを選択した(表1)。一連の電子的および立体的に特殊なプレ触媒6a~hを使用して(IPr)PdCl2(アニリン)1.0mol%で行われた反応(K2CO3、H2O、THF、16時間)は、穏やかな室温でのクロスカップリングにおける高い反応性を示した(表1、A欄)。したがって、電子中性アニリン配位子(6a)、電子供与性4-アニシジン(6b)および電子求引性4-トリフルオロメチルアニリン(6c)の両方、ならびに中程度に立体障害性の2,6-キシリジン(6d)はいずれも、これらの条件下でクロスカップリング生成物を定量的収率で生じさせた。立体的に比較的嵩高い2,6-ジイソプロピルアニリン(6e)の使用によりクロスカップリングの効率が低下した。メタ位の電子求引性トリフルオロメチル基(6f)、ならびにN-Me-アニリン(6g~h)、および飽和骨格(SIPr)PdCl2(AN)(7a)を有する代表的なNHCの使用により、クロスカップリング生成物が優れた効率で得られた。
【0090】
(表1)アミドの鈴木・宮浦クロスカップリングにおける(NHC)PdCl
2(アニリン)錯体の活性
a[Pd](1.0mol%)、アミド(1.0当量)、Ar-B(OH)
2(2.0当量)、K
2CO
3(3.0当量)、H
2O(5.0当量)、THF(0.25M)、23℃、16時間。
b[Pd](0.25mol%)。
c[Pd](1.0mol%)、3時間。
【0091】
次に、クロスカップリングを(IPr)PdCl2(アニリン)添加率0.25mol%で行うことで、これら新規プレ触媒の活性を識別した(表1、B欄)。このいっそう識別的なスクリーニングでは、電子中性置換基(6a)および電子求引性置換基(6c)が電子供与性置換基(6b)よりも好ましく、一方で、アニリン環(6d~e)での立体障害によりクロスカップリング効率が低下した。メタ位のトリフルオロメチル基(6f)およびN-Me-アニリン(6g~h)がこのスクリーニングにおいて好成績であった一方で、飽和(SIPr)PdCl2(AN)(7a)は効率が比較的低いことがわかった。これら新規プレ触媒の活性化に関する見識を得るために、反応を(IPr)PdCl2(アニリン)1.0mol%でより短い反応時間にわたって行った(表1、C欄、室温、3時間)。表に示すように、電子中性(6a)、電子求引性(6b)、およびN-Me置換(6g)によって高い反応効率が得られた。したがって、本研究によって、3-トリフルオロメチルアニリン(6f)が最適な配位子として見出され、中性アニリン(6a)が大量に入手可能である安価な変種として見出された。
【0092】
(IPr)PdCl2(AN)を使用する鈴木・宮浦クロスカップリングの汎用性を表2に示す。表に示すように、反応は、ボロン酸およびアミドクロスカップリングパートナーの両方における官能基および置換基を十分に許容した。電子供与性置換基、電子求引性置換基、および立体障害性置換基が両カップリングパートナーにおいて十分に許容されて、クロスカップリング生成物が優れた収率で得られた。
【0093】
(表2)C-N開裂によるアミドの[(IPr)PdCl
2(AN)]触媒鈴木・宮浦クロスカップリング
a
a条件: [Pd](1.0mol%)、アミド(1.0当量)、Ar-B(OH)
2(2.0当量)、K
2CO
3(3.0当量)、H
2O(5.0当量)、THF(0.25M)、23℃、16時間。
【0094】
C-O活性化によるエステルの鈴木・宮浦クロスカップリングも、この新規触媒系を使用して実行可能である(スキーム3)。いくつかの態様では、この比較的困難なC-Oクロスカップリングでは、3-トリフルオロメチルアニリン(6f)を有するPd-NHC触媒が中性アニリン(6a)配位子よりも効率が高く、このことは、アミドC-N結合活性化において観察される反応性の傾向を反映している。(NHC)PdCl2(アニリン)錯体の有用性を拡張するために、塩化アリールの鈴木・宮浦クロスカップリングにおける(IPr)PdCl2(AN)の反応性(スキーム4および表3)を調査した。表に示すように、反応は優れた許容性を示した。電子供与性官能基、電子求引性官能基、および立体障害性官能基で置換された塩化アリール、ならびに電子供与性置換基、電子求引性置換基、および立体障害性置換基を有するボロン酸によりクロスカップリング生成物が優れた収率で得られた。
【0095】
スキーム3 C-O開裂によるエステルの[(IPr)PdCl
2(アニリン)]触媒鈴木・宮浦クロスカップリング
【0096】
スキーム4 塩化アリールの[(IPr)PdCl
2(アニリン)]触媒鈴木・宮浦クロスカップリング
【0097】
(表3)塩化アリールの[(IPr)PdCl
2(AN)]触媒鈴木・宮浦クロスカップリング
a
a条件: [Pd](1.0mol%)、塩化アリール(1.0当量)、Ar-B(OH)
2(2.0当量)、NaOH(2.0当量)、EtOH(0.25M)、23℃、16時間。
【0098】
(NHC)PdCl2(アニリン)錯体の有用性を塩化アリールのBuchwald-Hartwigクロスカップリングにおいて評価した(スキーム5)。このように、中性アニリン(6a)および3-トリフルオロメチルアニリン(6f)を有するPd-NHC触媒はクロスカップリングを優れた収率で促進した。
【0099】
スキーム5 塩化アリールの[(IPr)PdCl
2(アニリン)]触媒Buchwald-Hartwigクロスカップリング
【0100】
これら新規(NHC)PdCl
2(アニリン)錯体の特性に関する見識を得るために、代表的な(IPr)PdCl
2(AN)(6a)のHOMOおよびLUMOエネルギーレベルをB3LYP 6-311++g(d,p)理論レベルで確定した(
図4)。X線で確定された固相構造に基づく基底状態特性の計算評価によって、金属-NHC錯体の反応性を予測するための強力なアプローチが得られる。(6a)のHOMO(-6.08eV)およびLUMO(-1.76eV)の確定は、HOMOがパラジウムに位置する一方で、LUMOがカルベン配位子、塩化物、および使い捨て配位子に位置することを示す。これを類似のPd-PEPPSI系(-6.06eV; -1.88eV)およびイミダゾリニリデン系(7a)(-6.07eV; -1.75eV)と比較することができる。(NHC)PdCl
2(アニリン)錯体中のPd-C(カルベン)結合の特性をさらに理解するために、本発明者らはNBO解析を行った。(6a)中のPd-C(カルベン)結合およびPd-N結合のWiberg結合次数は0.6776および0.3142(Pd-C
1、0.6299; Pd-Cl
2、0.6305)であり、これらを類似の[Pd(IPr)(3-Cl-py)Cl
2]系(Pd-C、0.6871; Pd-N、0.6302; Pd-Cl
1、0.6302; Pd-Cl
2、0.6278)およびイミダゾリニリデン系(7a)(Pd-C、0.6745; Pd-N、0.3024)と比較することができる。計算研究は、電子密度を金属-NHC軸に沿って変化させることに、アニリン配位子が十分に適用可能であることを示唆している。
【0101】
スキーム6 IPr
#-PEPPSI、[Pd(IPr
#)(3-Cl-py)Cl
2]の合成に関する一般的手順
攪拌子を備えたオーブン乾燥フラスコにIPr
#HCl(552mg、0.44mmol、1.1当量)、PdCl
2(71mg、0.4mmol、1.0当量)、およびK
2CO
3(276mg、2.0mmol、5.0当量)を加え、アルゴン陽圧下に置き、高真空下での3回の脱気/再充填サイクルに供した。3-クロロピリジン(2.0mL)を加え、反応混合物を80℃で24時間攪拌した。指示された時間の後、反応液を室温に冷却し、CH
2Cl
2で希釈し、濾過した。溶液を収集し、濃縮した。生成物をCH
2Cl
2/ヘキサンからトリチュレーションにより白色固体として得た。収量82%(494mg)。
構造をX線結晶構造解析により確定した。
【0102】
(表4)クロスカップリング反応におけるIPr
#-PEPPSI、[Pd(IPr
#)(3-Cl-py)Cl
2]の活性
【0103】
本明細書において使用される用語および表現は、限定ではなく記述の用語として使用され、これらの用語および表現の使用においては、示され記載される特徴の任意の等価物またはその一部を排除するという意図はなく、本出願の態様の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されよう。したがって、本出願では具体的な態様および任意的な特徴が記載されているが、本明細書に開示される組成物、方法、および概念の修正および/または変形に当業者が依拠することができること、ならびに、これらの修正および変形が本出願の態様の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0104】
番号付きの態様
以下の例示的態様が示されるが、その番号付けは重要度のレベルを示すものと解釈されるべきではない。
【0105】
態様1は、以下を提供する:
式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
は単結合または二重結合であり;
R
1およびR
2はそれぞれ独立してC
3~10シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいC
3~10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、C
1~12アルキル、またはOC
1~12アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基を含み; あるいは、
R
3およびR
4は、それらが結合している環と一緒に、C
4~20シクロアルキル、C
6~20アリール、またはC
6~20ヘテロアリールを形成するのに使用されており、これらはそれぞれ、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
R
5はHまたはC
1~3アルキルであり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
AはC
6~18アリールまたはC
6~18ヘテロアリールであり、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基で置換されていてもよく;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルであり;
mは1、2、または3であり;
nは1、2、3、または4である。
【0106】
態様2は、以下を提供する:
下記構造:
、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を有する、態様1の化合物。
【0107】
態様3は、以下を提供する:
R1およびR2がいずれもアリールである、態様1~2のいずれかの化合物。
【0108】
態様4は、以下を提供する:
アリールが
であり、
式中、
R
6およびR
7がそれぞれ独立してC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルであり;
R
8が水素、またはC
1~12アルキル、または少なくとも1個のアリールで置換されたC
1~12アルキルである、
態様1~3のいずれかの化合物。
【0109】
態様5は、以下を提供する:
R8が水素である、態様1~4のいずれかの化合物。
【0110】
態様6は、以下を提供する:
R6およびR7がそれぞれC1~6アルキルである、態様1~5のいずれかの化合物。
【0111】
態様7は、以下を提供する:
R6およびR7がそれぞれC(H)(CH3)2である、態様1~6のいずれかの化合物。
【0112】
態様8は、以下を提供する:
Mが、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群より選択される、態様1~7のいずれかの化合物。
【0113】
態様9は、以下を提供する:
MがPdである、態様1~8のいずれかの化合物。
【0114】
態様10は、以下を提供する:
Xが、F、Cl、Br、I、OSO2R、OSO3R、およびOC(=O)Rからなる群より選択される、態様1~9のいずれかの化合物。
【0115】
態様11は、以下を提供する:
式Iの化合物のN-複素環カルベン(NHC)部分が、以下からなる群より選択される、態様1~10のいずれかの化合物:
式中、
R
1は、t-Bu、1-アダマンチル、シクロヘキシル、i-Pr、メチル、エチル、n-プロピル、ブチル、ペンチル、および
からなる群より選択され;
R
6はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、CH(2-Np)
2、またはCH(Et)
2であり;
R
6'はCH(フェニル)
2、CH(Me)
2、またはCH(Et)であり;
R
8はCH(フェニル)
2、Me、OMe、またはHである。
【0116】
態様12は、以下を提供する:
式Iの化合物のNHC部分が、以下
からなる群より選択される、態様1~11のいずれかの化合物。
【0117】
態様13は、以下を提供する:
nが2である、態様1~12のいずれかの化合物。
【0118】
態様14は、以下を提供する:
Aが
であり、
式中、各R
9が独立して、OCH
3、CF
3、2,6-ジメチル、2,6-ジ-イソプロピル、および水素からなる群より選択され、pが0、1、2、3、4、または5である、
態様1~13のいずれかの化合物。
【0119】
態様15は、以下を提供する:
R5が水素またはメチルである、態様1~14のいずれかの化合物。
【0120】
態様16は、以下を提供する:
式Iの化合物を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と
を溶媒中で接触させる工程であって、
式中、各R
9は独立して、水素、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される、工程
を含む、態様1~15のいずれかの化合物を作製する方法。
【0121】
態様17は、以下を提供する:
溶媒が非極性非プロトン性溶媒である、態様16の方法。
【0122】
態様18は、以下を提供する:
溶媒がクロロホルム、ジエチルエーテル、重水素化クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、またはそれらの混合物を含む、態様16~17のいずれかの方法。
【0123】
態様19は、以下を提供する:
接触が室温で行われる、態様16~18のいずれかの方法。
【0124】
態様20は、以下を提供する:
式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体を形成するために、下記構造:
を有する化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と、
式MX
2(A-N(H)(R
5))
2の化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体と
を溶媒中で接触させる工程
を含む、態様1~15のいずれかの化合物を作製する方法。
【0125】
態様21は、以下を提供する:
接触が塩基の存在下で行われる、態様20の方法。
【0126】
態様22は、以下を提供する:
塩基がNaOC1~4アルキル、KOC1~4アルキル、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、LiC1~4アルキル、またはそれらの組み合わせを含む、態様20~21のいずれかの方法。
【0127】
態様23は、以下を提供する:
溶媒が極性非プロトン性溶媒を含む、態様20~22のいずれかの方法。
【0128】
態様24は、以下を提供する:
溶媒がテトラヒドロフラン、2-N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせを含む、態様20~23のいずれかの方法。
【0129】
態様25は、以下を提供する:
式IIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
R
5はHまたはC
1~3アルキルであり;
R
A、R
6、およびR
7は独立して、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、および少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルより選択され、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
nは1~4の整数であり;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルである。
【0130】
態様26は、以下を提供する:
式IIIの化合物、またはその塩、溶媒和物、幾何異性体、もしくは立体異性体:
式中、
R
5はHまたは置換されていてもよいC
1~3アルキルであり;
R
6、R
7、およびR
8は独立して、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、または少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルより選択され、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Gは存在しないか、置換されていてもよいC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
1~12ヘテロアルキル、置換されていてもよいOC
1~12アルキル、置換されていてもよいC
3~12シクロアルキル、置換されていてもよいC
6~18アリール、置換されていてもよいC
6~18ヘテロアリール、または少なくとも1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されたC
1~3アルキルであり、ここで任意的な置換は、ハロゲン、OR、SiR
3、OSiR
3、OSiR
3、OSi(OR)
3、BR
3、BR
2、B(OR)
3、B(OR)
2、CN、CF
3、OCF
3、SO
2R、SO
2N(R)
2、SO
3R、C(O)R、NR
2、N(R)SO
2R、N(R)SO
2N(R)
2、(CH
2)
0~2N(R)C(O)R、(CH
2)
0~2N(R)N(R)
2、N(R)C(O)OR、C
1~12アルキル、C
1~12ヘテロアルキル、OC
1~12アルキル、C
3~12シクロアルキル、C
6~10アリール、およびC
6~10ヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1個の基による置換であり;
Mは遷移金属であり;
Xは対アニオンであり;
YはNまたはCであり;
ZはNまたはCであり;
nは1~4の整数であり;
各Rは独立して水素または置換されていてもよいC
1~10アルキルであるが、
但し、YおよびZの両方がCであることはない。
【国際調査報告】