(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】タバコにおける超低ニコチン含有量を達成するための遺伝学的手法
(51)【国際特許分類】
A24B 1/02 20060101AFI20230303BHJP
A01H 6/82 20180101ALI20230303BHJP
A24B 15/10 20060101ALI20230303BHJP
A24B 13/00 20060101ALI20230303BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230303BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
A24B1/02 A
A01H6/82
A24B15/10
A24B13/00
C12N15/113 Z
C12N15/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022542214
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2021012742
(87)【国際公開番号】W WO2021142296
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508290987
【氏名又は名称】ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】519069280
【氏名又は名称】トゥエンティセカンド センチュリー リミテッド、 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】22ND CENTURY LIMITED, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ラムゼイ・エス.
(72)【発明者】
【氏名】デューイ,ラルフ・イー.
(72)【発明者】
【氏名】タンブリーノ,ホアン・サンチェス
【テーマコード(参考)】
2B030
4B043
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD09
2B030CA01
2B030CA05
4B043BA15
4B043BA80
4B043BB22
4B043BB25
4B043BC16
4B043BC18
(57)【要約】
本発明は、変異したベルベリンブリッジ酵素様核酸ならびに劣性nic1および/またはnic2アレルを含む植物由来のタバコ製品、ならびにそれを作製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに
(B)nic1のホモ接合型劣性アレル、またはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレル
を含むニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理する方法であって、
(a)92°F~96°Fの温度から始めて前記葉を加熱し、最大上限温度に達するまで時間あたり約1°Fの割合で104°F~108°Fの温度まで増加させ、前記上限温度で約52~58時間の期間保持するステップを含む、黄化工程;
(b)約120°Fの温度で約22時間乾燥させるステップを含む、葉乾燥工程;および
(c)約132°F~138°Fの温度で約50時間~約65時間乾燥させるステップを含む、茎乾燥工程
を含み、それによって前記ニコチアナ植物の前記1または複数枚の葉を乾燥処理し、前記ニコチアナ植物の1または複数枚の乾燥処理された葉を産生する、方法。
【請求項2】
前記ニコチアナ植物が、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニコチアナ植物が、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、またはBBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1のホモ接合型劣性アレル、またはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレルを含む、請求項1または2に記載の方法によって産生される前記ニコチアナ植物の乾燥処理された葉。
【請求項5】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、またはBBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレルを含む、請求項4に記載の乾燥処理された葉。
【請求項6】
野生型対照ニコチアナ植物の葉と比較して、またはNic1/Nic2対照ニコチアナ植物と比較して、低下したニコチン性アルカロイド含有量である、請求項5に記載の乾燥処理された葉。
【請求項7】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンである、請求項6に記載の乾燥処理された葉。
【請求項8】
0.5mg/g以下のニコチン含有量である、請求項7に記載の乾燥処理された葉。
【請求項9】
0.4mg/g以下のニコチン含有量である、請求項8に記載の乾燥処理された葉。
【請求項10】
標準的な乾燥処理法に従って乾燥処理された葉と比較して、増加したレベルの糖類および/または低下したレベルのアンモニアを含む、請求項4~9のいずれか1項に記載の乾燥処理された葉。
【請求項11】
前記ニコチアナ植物が、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含む、請求項4~10のいずれか1項に記載の乾燥処理された葉。
【請求項12】
請求項4~11のいずれか1項に記載の乾燥処理された葉を含む、タバコ製品。
【請求項13】
前記タバコが、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項12に記載のタバコ製品。
【請求項14】
シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項13に記載のタバコ製品。
【請求項15】
ニコチアナ植物が、
(1)ホモ接合型劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方を含み、かつ、
(2)BBLa、BBLb、およびBBLcの活性を低下させるように、またはBBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように、野生型と比べて変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を含み、それにより、前記ニコチアナ植物のニコチン性アルカロイド含有量は対照ニコチアナ植物と比較して減少する、
ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項16】
前記ニコチアナ植物が、前記ホモ接合型劣性nic1およびnic2アレルの両方を含む、請求項15に記載の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項17】
対照ニコチアナ植物由来の乾燥処理された葉のUSDA等級指数と比較して、匹敵するまたは向上するUSDA等級指数を含む、請求項15または16に記載の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項18】
約60またはそれよりも高いUSDA等級指数を含む、請求項16に記載の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項19】
乾燥処理された葉の産出量が、対照ニコチアナ植物と比較して匹敵するまたは増加する、請求項15~18のいずれか1項に記載の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項20】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンである、請求項15~19のいずれか1項に記載の乾燥処理されたタバコ葉。
【請求項21】
請求項15~20のいずれか1項に記載の乾燥処理された葉を含む、タバコ製品。
【請求項22】
前記タバコが、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項21に記載のタバコ製品。
【請求項23】
シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項22に記載のタバコ製品。
【請求項24】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに
(B)nic1のホモ接合型劣性アレルまたはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレル
をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含む、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有するニコチアナ植物を産生する方法であって、前記ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、方法。
【請求項25】
前記ニコチアナ植物がnic1の前記ホモ接合型劣性アレルを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ニコチアナ植物がnic1の前記ホモ接合型劣性アレルおよびnic2の前記ホモ接合型劣性アレルを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現を低下させるステップをさらに含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ニコチアナ植物が、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも40%減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンであり、前記ニコチン含有量が、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約40%~約90%減少する、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンであり、前記ニコチン含有量が約0.014%~約0.098%である、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1のホモ接合型劣性アレル、またはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレルを含む、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法によって産生される植物。
【請求項32】
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1のホモ接合型劣性アレル、またはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレルを含む、請求項31に記載の植物から産生される子孫植物または種子。
【請求項33】
ニコチアナ植物由来のタバコを含むタバコ製品であって、前記ニコチアナ植物が、
(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに
(B)nic1のホモ接合型劣性アレルまたはnic1のホモ接合型劣性アレルおよびnic2のホモ接合型劣性アレル
を含み、前記ニコチアナ植物が、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、タバコ製品。
【請求項34】
前記ニコチアナ植物が、BBLa、BBLb、およびBBLcの活性、ならびに/またはBBLa、BBLb、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように改変され、nic1の前記ホモ接合型劣性アレルを含む、請求項33に記載のタバコ製品。
【請求項35】
前記ニコチアナ植物が、BBLa、BBLb、およびBBLcの活性、ならびに/またはBBLa、BBLb、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように改変され、nic1の前記ホモ接合型劣性アレルおよびnic2の前記ホモ接合型劣性アレルを含む、請求項33に記載のタバコ製品。
【請求項36】
前記ニコチアナ植物が、(A)のみによって改変された植物と比較して少なくとも40%減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、請求項33~35のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項37】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンであり、前記ニコチン含有量が、(A)のみによって改変された植物と比較して約40%~約90%減少する、請求項33~35のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項38】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンであり、前記ニコチン含有量が約0.014%~約0.098%である、請求項33~37のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項39】
前記ニコチン性アルカロイドがニコチンであり、前記ニコチン含有量が約0.014%である、請求項35に記載のタバコ製品。
【請求項40】
前記タバコが、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項33~39のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項41】
シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される、請求項33~39のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項42】
前記ニコチアナ植物が、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含む、請求項33~41のいずれか1項に記載のタバコ製品。
【請求項43】
請求項1に記載のニコチアナ植物の産出量を向上させる方法であって、
(a)約90%の発芽の段階で苗に施肥するステップ、ここで、前記施肥するステップが施肥灌漑を通じて行われ、任意で肥料におけるNの濃度は約200ppmであり;
(b)プラスチックマルチ処理を適用するステップ;ならびに
(c)前記ニコチアナ植物の産出量および品質の増加を提供するために、移植後約4~5週目に、移植後約6~7週目に、および移植後約8~9週目に、約90~120ポンド/エーカーのN総量の割合で前記苗に窒素を適用するステップ
を含む、方法。
【請求項44】
前記窒素が施肥灌漑を使用して適用される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
基板を地表被覆シートで被覆し、それによって、地表被覆シートで被覆された基板を提供する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記基板および/または地表被覆シートで被覆された前記基板をマルチで被覆する、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年1月8日に出願された米国出願第62/958,505号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容はそれらの全体として本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、変異したベルベリンブリッジ酵素様核酸ならびに劣性nic1および/またはnic2アレルを含む植物由来のタバコ製品、ならびにそれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タバコ(ニコチアナ・タバカムL.(Nicotiana tabacum L.))のピリジンアルカロイドは、植物二次化合物の最も調査されている群の1つである。ニコチンは、ほとんどのタバコ遺伝子型における総アルカロイドプールの90%を上回る割合を構成し、タバコ製品のユーザーによって経験される薬理学的応答に主に関与する。相対存在量の多いものから順に、タバコにおける残りの主要なアルカロイドには、アナタビン、ノルニコチン、およびアナバシンが含まれる。タバコにおけるアルカロイドレベルは、環境条件、植物害虫との相互作用、および植物遺伝学による影響を受ける。
【0004】
ニコチンは、タバコ製品のユーザーに、彼らが求める薬理学的効果を与える主な化合物であるものの、非常に低いレベルのニコチンを産生しかつ蓄積するタバコ植物を使用して製品を開発することが望ましいであろういくつかの状況がある。例えば、一部の調査は、禁煙ストラテジーにおける構成要素としての低ニコチンシガレットの使用が、やめようとしている喫煙者を手助けし得ることを示している(Hatsukami et al.,2010a;Donny et al.,2014)。他の報告は、タバコ製品においてニコチンレベルを臨界閾値より低く下げることによって、それらはもはや中毒応答を引き起こし得ないまたは維持し得ないことを実証している(Benowitz and Henningfield,1994;Benowitz et al.,2007)。これら等の調査は、どれほどの許容されるレベルの様々なタバコ構成成分(ニコチンを含む)が、シガレットおよび他のタバコ製品において許容可能であろうかということを判定する権限を与えられているアメリカ食品医薬品局等の規制当局に究極的に影響を与え得る。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様において、本技術の開示は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含むニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理する(cure)方法であって、(a)92°F~96°Fの温度から始めて葉を加熱し、最大上限温度に達するまで時間あたり約1°Fの割合で104°F~108°Fの温度まで増加させ、上限温度で約52~58時間の期間保持するステップを含む、黄化工程;(b)約120°Fの温度で約22時間乾燥させるステップを含む、葉乾燥工程;および(c)約132°F~138°Fの温度で約50時間~約65時間乾燥させるステップを含む、茎乾燥工程、を含み、それによってニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理し、ニコチアナ植物の1または複数枚の乾燥処理された葉を産生する、方法を提供する。
【0006】
一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する。
【0007】
一部の実施形態において、本技術は、前記方法によって産生されるニコチアナ植物の乾燥処理された葉であって、乾燥処理された葉は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、乾燥処理された葉を提供する。一部の実施形態において、乾燥処理された葉は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、葉は、野生型対照ニコチアナ植物の葉と比較して、またはNic1/Nic2対照ニコチアナ植物と比較して、低下したニコチン性アルカロイド含有量である。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンである。一部の実施形態において、乾燥処理された葉は、0.5mg/g以下のニコチン含有量である。一部の実施形態において、乾燥処理された葉は、0.4mg/g以下のニコチン含有量である。一部の実施形態において、葉は、標準的な乾燥処理法に従って乾燥処理された葉と比較して、増加したレベルの糖類および/または低下したレベルのアンモニアを含む。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレート(quinolate)ホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含む。
【0008】
一部の実施形態において、本技術は、乾燥処理された葉を含むタバコ製品を提供する。一部の実施形態において、タバコは、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される。一部の実施形態において、製品は、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型(recess)フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態において、本技術の開示は、ニコチアナ植物の産出量を向上させる方法であって、(a)約90%の発芽の段階で苗に施肥するステップ、ここで、施肥するステップは施肥灌漑(fertigation)を通じて行われ、任意で肥料におけるNの濃度は約200ppmであり;(b)プラスチックマルチ処理を適用するステップ;ならびに(c)ニコチアナ植物の産出量および品質の増加を提供するために、移植後約4~5週目に、移植後約6~7週目に、および移植後約8~9週目に、約90~120ポンド(lbs)/エーカーのN総量の割合で苗に窒素を適用するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、窒素は施肥灌漑を使用して適用される。一部の実施形態において、基板を地表被覆シートで被覆し、それによって、地表被覆シートで被覆された基板を提供する。一部の実施形態において、基板および/または地表被覆シートで被覆された基板をマルチで被覆する。
【0010】
1つの態様において、本技術の開示は、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉であって、ニコチアナ植物は、(1)劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方を含み、(2)BBLa、BBLb、およびBBLcの活性を低下させるように、またはBBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように、野生型と比べて変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を含み、それにより、ニコチアナ植物のニコチン性アルカロイド含有量は対照ニコチアナ植物と比較して減少する、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉を提供する。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、劣性nic1およびnic2アレルの両方を含む。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、乾燥処理された葉は、対照ニコチアナ植物由来の乾燥処理された葉のUSDA等級指数と比較して、匹敵するまたは向上するUSDA等級指数を含む。一部の実施形態において、葉は、約60またはそれよりも高いUSDA等級指数を含む。一部の実施形態において、乾燥処理された葉の産出量は、対照ニコチアナ植物と比較して匹敵するまたは増加する。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンである。
【0011】
一部の実施形態において、本技術は、乾燥処理された葉を含むタバコ製品を提供する。一部の実施形態において、タバコは、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される。一部の実施形態において、タバコ製品は、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される。
【0012】
1つの態様において、本技術の開示は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含む、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有するニコチアナ植物を産生する方法であって、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、方法を提供する。一部の実施形態において、ニコチアナ植物はnic1の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、方法は、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現を低下させるステップをさらに含む。
【0013】
一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも40%減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンであり、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約40%~約90%減少する。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンであり、ニコチン含有量は約0.014%~約0.098%である。一部の実施形態において、植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。
【0014】
一部の実施形態において、本技術は、前記植物から産生される子孫植物または種子であって、子孫植物または種子は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、子孫植物または種子を提供する。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。
【0015】
1つの態様において、本技術の開示は、ニコチアナ植物由来のタバコを含むタバコ製品であって、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、タバコ製品を提供する。一部の実施形態において、nic1の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、nic2の劣性アレルはホモ接合型劣性アレルである。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、BBLa、BBLb、およびBBLcの活性、ならびに/またはBBLa、BBLb、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように改変され、nic1の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、BBLa、BBLb、およびBBLcの活性、ならびに/またはBBLa、BBLb、およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させるように改変され、nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された植物と比較して少なくとも40%減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンであり、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された植物と比較して約40%~約90%減少する。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンであり、ニコチン含有量は約0.014%~約0.098%である。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンであり、ニコチン含有量は約0.014%である。一部の実施形態において、タバコは、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される。一部の実施形態において、製品は、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含む。
【0016】
1つの態様において、本発明は、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉であって、(A)ニコチアナ植物は、(1)劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方を含み、(2)野生型と比べて変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を含み、それにより、ニコチアナ植物のニコチン性アルカロイド含有量は前記野生型(例えば、BBLabcなし、nic1なし、およびnic2なし)と比較して低下し;ならびに(B)乾燥処理されたタバコ葉は、良好な色彩強度、通常の幅、および均一な質感を有する良品質~上品質の葉の特徴を有し、任意で、乾燥処理されたタバコ葉は、60を上回るUSDA等級指数を有する、またはUSDA標準等級による上品質~良品質~低品質もしくは優良品質~上品質~良品質のものである(“Official Standard Grades for Flue-Cured Tobacco U.S. Types 11,12,13,14,and Foreign Type 92”)、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉を提供する。
【0017】
1つの態様において、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有するニコチアナ植物を産生する方法であって、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、方法が提供される。
【0018】
1つの態様において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含むニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理する方法であって、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有し、方法は、(a)92°F~96°Fの温度から始めて葉を加熱し、最大上限温度に達するまで時間あたり約1°Fの割合で104°F~108°Fの温度まで増加させ、上限温度で約52~58時間の期間保持するステップを含む、黄化工程;(b)約120°Fの温度で約22時間の葉乾燥工程;および(c)継続的モニタリングを有した、約132°F~138°Fの温度で約50時間~約65時間の茎乾燥工程、を含み、それによってニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理し、ニコチアナ植物の1または複数枚の乾燥処理された葉を産生する方法である。一部の実施形態において、葉乾燥工程は、約116°F~120°Fの温度で約28~34時間生じる。一部の実施形態において、葉乾燥工程は、約116°F~118°Fの温度で約28~34時間生じる。一部の実施形態において、本技術の開示は、乾燥処理する方法によって産生されるニコチアナ植物の乾燥処理された葉に関する。一部の実施形態において、葉は、0.04%のニコチン以下を含む超低ニコチン葉である。一部の実施形態において、葉は、標準的な乾燥処理法に従って乾燥処理された葉と比較して、増加したレベルの糖類および/またはアンモニアを含む。一部の実施形態において、ニコチアナ植物は、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622からなる群から選択される付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含む。一部の実施形態において、本技術の開示は、本明細書に記載される乾燥処理法によって産生される乾燥処理された葉を含むタバコ製品に関する。タバコ製品の一部の実施形態において、タバコは、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および噛みタバコからなる群から選択される。一部の実施形態において、タバコ製品は、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および噛みタバコからなる群から選択される。
【0019】
1つの態様において、本発明のニコチアナ植物の産出量および品質を向上させる方法であって、(a)約90%の発芽の段階で苗に施肥するステップであって、施肥するステップは施肥灌漑(例えば、点滴灌漑)を通じて行われ、任意でNの濃度は約200ppmである、ステップ;(b)プラスチックマルチ処理を適用するステップであって、例えばプラスチックマルチは、施肥灌漑設備(例えば、点滴テープ/チューブ)を被覆するように添加される、ステップ;ならびに(c)移植後約4~5週目に、移植後約6~7週目に、および移植後約8~9週目に、苗に約90~120ポンド/エーカーのN総量の割合で窒素を適用して、ニコチアナ植物の産出量および品質の増加を提供するステップ、を含む、方法が提供される。
【0020】
1つの態様において、タバコ製品であって、タバコ製品はニコチアナ植物由来のタバコを含み、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、タバコ製品が提供される。
【0021】
本発明は、本発明の方法によって産生される植物およびその植物部分、ならびに前記植物およびその一部から産生される農作物、子孫、および製品、ならびに前記植物由来の種子をさらに提供する。本発明は、本発明の方法を行うためのベクターおよび発現カセットをさらに提供する。
【0022】
本発明のこれらのおよび他の態様は、下の発明の説明においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】アルカロイドレベル、産出量、および品質判定について評価された鉄管乾燥処理された遺伝物質に対するエントリー平均を示した図である。平均は、6つの2016年および2017年のノースカロライナ圃場環境にわたって平均化されている。異なる文字を有する平均は、P<0.05レベルの有意性で互いと有意に異なる。
【
図2】BBL-a、BBL-b、およびBBL-cにおける変異に対して固定されているがNic1およびNic2遺伝子座での劣性アレルに対して分離されている、BC
2F
3個々の植物の最上部2枚の葉に対する乾燥重量パーセントベースでの平均アルカロイド含有量を示した図である。摘心(topping)の21日後にサンプルを回収した。各遺伝子型クラスにおける植物の数が、括弧内に表示されている。遺伝子型平均が、個々のバーに表示されており、同じ文字を有する平均は、t検定によって判定されるP>0.05レベルの有意性で互いと有意には異ならない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の詳細な説明]
ここで、本発明は、本発明の実施形態が示される添付の図面および実施例を参照して、以下に記載されるであろう。本説明は、本発明が実行され得るすべての異なるやり方または本発明に付加され得るすべての特質についての詳細な目録であることを意図されるわけではない。例えば、1つの実施形態を参照して例示される特質は、他の実施形態に組み入れられ得、特定の実施形態を参照して例示される特質は、その実施形態から欠失され得る。ゆえに、本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載される任意の特質または特質の組み合わせが除外され得るまたは省略され得ることを企図する。加えて、本明細書において示唆される、様々な実施形態に対する数々の変形および付加は、本開示を踏まえて当業者に明らかであると考えられ、それは本発明から逸脱するものではない。それゆえ、以下の説明は、本発明の一部の特定の実施形態を例示することを意図され、そのすべての並べ替え、組み合わせ、および変形を徹底的に指定することを意図されるわけではない。
【0025】
別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における発明の説明において使用される術語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、本発明を限定することを意図されるわけではない。
【0026】
本明細書において引用されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参考文献が提示される文章および/または段落に関連する教示に対して、参照によりそれらの全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0027】
文脈上別様に示されない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特質は、任意の組み合わせで使用され得ることが具体的に意図される。さらに、本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載される任意の特質または特質の組み合わせが除外され得るまたは省略され得ることも企図する。例示するために、本明細書により、組成物が構成要素A、B、およびCを含むことが明記される場合、A、B、もしくはC、またはその組み合わせのいずれかは、単独でまたは任意の組み合わせで省略され得かつ放棄され得ることが具体的に意図される。
【0028】
発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用するとき、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈上別様にはっきりと示されない限り、複数形の形態も含むことを意図される。
【0029】
また本明細書において使用するとき、「および/または」とは、関連する列挙された項目の1つまたは複数のありとあらゆる考え得る組み合わせ、ならびに選択的に(「または」)解釈される場合には組み合わせがないことを指しかつ包含する。
【0030】
本明細書において使用される「約」という用語は、量または濃度等の測定可能な値を指す場合、指定された値ならびに指定された値の±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらに±0.1%の変動を包含することを意図される。例えば、「約X」は、Xが測定可能な値である場合、X、ならびにXの±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらに±0.1%の変動を含むことを意図される。測定可能な値に対して本明細書において提供される域は、その中にある任意の他の域および/または個々の値を含み得る。
【0031】
本明細書において使用するとき、「X~Yの間」および「約X~Yの間」等の語句は、XおよびYを含むと解釈されるべきである。本明細書において使用するとき、「約X~Yの間」等の語句は「約X~約Yの間」を意味し、「約X~Y」等の語句は「約X~約Y」を意味する。
【0032】
本明細書における値の域についての記述は、本明細書において別様に示されない限り、域内に入るそれぞれ別個の値を個々に指す簡潔な方法としての役割を果たすことを単に意図され、それぞれ別個の値は、あたかもそれが本明細書において個々に記述されているかのように本明細書に組み入れられる。例えば、10~15という域が開示される場合には、11、12、13、および14も開示される。
【0033】
本明細書において使用される「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という用語は、明記される特質、整数、ステップ、作業、エレメント、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特質、整数、ステップ、作業、エレメント、構成要素、および/またはその群の存在または付加を排除するわけではない。
【0034】
本明細書において使用するとき、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が、請求項に記述される指定された材料またはステップ、および請求される発明の基本的でかつ新規の特徴に著しく影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきであることを意味する。ゆえに、「から本質的になる」という用語は、本発明の請求項において使用される場合、「含む(comprising)」と等価であると解釈されることを意図されるわけではない。
【0035】
本明細書において使用するとき、「増加させる」、「増加させること」、「増加した」、「増強する」、「増強した」、「増強すること」、および「増強」という用語(および、その文法的変形)は、対照と比較して、少なくとも約15%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%、500%の、またはそれよりも多い上昇を記載する。
【0036】
本明細書において使用するとき、「低下させる」、「低下した」、「低下させること」、「低下」、「低減する」、「抑制する」、および「減少させる」という用語(および、その文法的変形)は、例えば、対照と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、35%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の減少を記載する。一部の実施形態において、低下は、検出不能または本質的に検出不能な(すなわち、わずかな量、例えば約10%またはさらに5%未満の)活性または量をもたらし得る。ゆえに、例えば、1つまたは複数の標的DNAの転写の低下は、対照(例えば、BBLa、BBLb、およびBBLc核酸に変異を含まない植物)と比較して、少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の、標的遺伝子の転写の低下を意味し得る。
【0037】
本明細書において使用するとき、「非常に低いニコチン」または「VLN」タバコという用語は、0.5mgニコチン/グラムタバコ以下を含むタバコを指す。
【0038】
本明細書において使用するとき、「標準的な乾燥処理法」、「乾燥処理する標準的方法」、「標準的な乾燥処理プロトコール」、または「標準的なタバコ乾燥処理法」等の用語は、公知のタバコ乾燥処理法(例えば、Powell 1987(Powell Manufacturing,Co.’s Bulk Curing/Drying Owner’s Operator’s Manual for Flue Cured Tobaccos,Powell Manufacturing,Co.と題されたマニュアル(Jan.20,1987))に記載される方法等)を指す。
【0039】
本明細書において使用するとき、「キメラ」とは、少なくとも2つの構成要素が、異なる供給源(例えば、異なる生物、異なるコード領域)に由来する核酸分子またはポリペプチドを指す。
【0040】
本明細書において使用される「相補体」とは、比較ヌクレオチド配列との100%の相補性もしくは同一性を意味し得る、またはそれは、100%未満の相補性(例えば、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%等の相補性)を意味し得る。
【0041】
本明細書において使用される「相補的な」または「相補性」という用語は、塩基対合による、容認される塩および温度条件下でのポリヌクレオチドの天然の結合を指す。例えば、配列「A-G-T」は、相補的配列「T-C-A」に結合する。2つの一本鎖分子間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する「部分的」であり得る、またはそれは、一本鎖分子間に全くの相補性が存在する場合に完全であり得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率性および強度に対して重大な効果を有する。
【0042】
本明細書において使用するとき、核酸分子および/またはヌクレオチド配列(例えば、RNAまたはDNA)に関する「発現する(express)」、「発現する(expresses)」、「発現した」、または「発現」等の用語は、核酸分子および/またはヌクレオチド配列が転写され、任意で翻訳されることを示す。ゆえに、核酸分子および/またはヌクレオチド配列は、例えば関心対象のポリペプチドまたは機能的非翻訳RNAを発現し得る。
【0043】
ヌクレオチド配列の「フラグメント」または「一部分」とは、参照核酸またはヌクレオチド配列と比べて低下した(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれを上回る数のヌクレオチドだけ低下した)長さで、かつ参照核酸またはヌクレオチド配列と同一のまたは実質的に同一の(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一の)連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、および/またはそれからなる、ヌクレオチド配列を意味すると理解されるであろう。本発明に従ったそのような核酸フラグメントまたは一部分は、適当な場合には、それが構成成分であるより大きなポリヌクレオチドに含まれ得る。
【0044】
本明細書において使用するとき、「遺伝子」という用語は、mRNA、アンチセンスRNA、RNAi(miRNA、siRNA、shRNA)、抗マイクロRNAアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド(AMO)等を産生するために使用され得る核酸分子を指す。遺伝子は、機能的タンパク質または遺伝子産物を産生するために使用される能力があってもなくてもよい。遺伝子は、コードおよび非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、終結配列、ならびに/または5’および3’非翻訳領域)の両方を含み得る。遺伝子は、その天然状態において通常では核酸と関連付いて見い出される構成要素を実質的にまたは本質的に含んでいない核酸を意味する「単離された」であり得る。そのような構成要素には、他の細胞物質、組換え産生からの培養培地、および/または核酸を化学合成する際に使用される様々な化学物質が含まれる。
【0045】
「異種の」または「組換えの」核酸とは、天然に存在するヌクレオチド配列の天然に存在しない多コピーを含めた、それが導入される宿主細胞と天然には関連しないヌクレオチド配列である。あるいは、異種ヌクレオチド配列とは、それが関連する別のヌクレオチド配列とともに天然には存在しないものであり得る。例えば、核酸分子と作動的に関連付けされた「異種プロモーター」を含む核酸構築物は、それが関連する前記核酸分子とともに天然には存在しないプロモーターである。
【0046】
相同性を有する異なる核酸またはタンパク質は、本明細書において「相同体」と称される。相同体という用語は、同じおよび他の種由来の相同配列、ならびに同じおよび他の種由来のオルソロガス配列を含む。「相同性」とは、位置的同一性(すなわち、配列類似性または同一性)のパーセンテージの観点からの、2種以上の核酸および/またはアミノ酸配列間の類似性のレベルを指す。相同性は、異なる核酸またはタンパク質の間の類似した機能的特性の概念も指す。ゆえに、本発明の組成物および方法は、本発明のヌクレオチド配列およびポリペプチド配列に対する相同体をさらに含む。本明細書において使用される「オルソロガスな」とは、種分化の間に共通の祖先遺伝子から生じた、異なる種における相同なヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を指す。本発明のヌクレオチド配列の相同体は、本発明の前記ヌクレオチド配列との実質的な配列同一性(例えば、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%)を有する。
【0047】
本明細書において使用するとき、ハイブリダイゼーション、ハイブリダイズする、ハイブリダイズすること、およびその文法的変形は、2つの完全に相補的なヌクレオチド配列、または一部のミスマッチした塩基対が存在し得る実質的に相補的な配列の結合を指す。ハイブリダイゼーションの条件は当技術分野において周知であり、ヌクレオチド配列の長さおよびヌクレオチド配列間の相補性の程度に基づいて変動する。一部の実施形態において、ハイブリダイゼーションの条件は、ハイブリダイズされる対象となる配列の相補性の量および長さに応じて、高ストリンジェンシーであり得る、またはそれらは中ストリンジェンシーもしくは低ストリンジェンシーであり得る。ヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーションの目的のための、低、中、および高ストリンジェンシーを構成する条件は、当技術分野において周知である(例えば、Gasiunas et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.109:E2579-E2586;M.R.Green and J.Sambrook(2012)Molecular Cloning:A Laboratory Manual.4th Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい)。
【0048】
本明細書において使用するとき、「改変する」、「改変すること」、または「改変」(および、その文法的変形)は、BBLポリヌクレオチド(例えば、BBLa、BBLb、BBLc)および/またはBBLポリペプチド、あるいは該核酸の発現ならびに/または該ポリペプチドの産生および/もしくは活性の低下または消去をもたらす他のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの任意の変更を意味する。そのような改変には、核酸の発現ならびに/またはポリペプチドの産生および/もしくは活性を低下させるまたは消去する、1つもしくは複数のヌクレオチドまたは核酸領域全体(転写および非転写領域)を欠失させることまたは挿入すること、および/あるいは1つまたは複数の点変異を導入することが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書において使用するとき、「モジュレートする(modulate)」、「モジュレートする(modulates)」、「モジュレートされた」、または「モジュレーション」という用語は、指定された活性の増強(例えば、増加)または阻害(例えば、低下)を指す(例えば、モジュレートされたニコチン産生/含有量)。ゆえに、一部の実施形態において、対照と比較して約15%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれを上回る割合の活性(例えば、ヌクレアーゼ活性)の上昇または増加が観察され得る。他の実施形態において、約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の発現レベルまたは活性(例えば、BBLa、BBLb、およびBBLc発現レベル、またはBBLa、BBLb、およびBBLcポリペプチド活性)の低下が、対照と比較して観察され得る。
【0050】
「天然の」または「野生型の」核酸、ヌクレオチド配列、ポリペプチド、またはアミノ酸配列とは、天然に存在するまたは内因性の核酸、ヌクレオチド配列、ポリペプチド、またはアミノ酸配列を指す。ゆえに、例えば、「野生型核酸」は、生物に天然に存在するまたは内因性である核酸である。「相同な」核酸配列は、それが導入される宿主細胞と天然に関連したヌクレオチド配列である。本明細書において使用される、タバコの「野生型の」系統または株とは、BBLabc変異、または劣性nic1および/もしくはnic2アレルを含まないタバコ系統または株を指す。本明細書において使用されるタバコの「Nic1/Nic2対照」系統または株とは、ホモ接合型劣性nic1および/またはnic2アレルを含まないタバコ系統または株を指す。
【0051】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるように、本技術の植物は、3つの主要なbbl変異に対してホモ接合型(例えば、bbl-a/bbl-a、bbl-b/bbl-b、bbl-c/bbl-c)であり、劣性nic1および/またはnic2アレルに対してもホモ接合型(例えば、nic1/nic1、nic2/nic2)であるBBLabc変異を含む。
【0052】
また本明細書において使用するとき、「核酸」、「核酸分子」、「核酸構築物」、「ヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状のもしくは分岐した、一本鎖もしくは二本鎖の、またはそのハイブリッドであるRNAまたはDNAを指す。該用語は、RNA/DNAハイブリッドも包含する。dsRNAが合成で産生される場合、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチン、および他のもの等のあまり一般的でない塩基も、アンチセンス、dsRNA、およびリボザイム対合に使用され得る。例えば、ウリジンおよびシチジンのC-5プロピン類似体を含有するポリヌクレオチドは、高いアフィニティーでRNAに結合し、遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが示されている。ホスホジエステル骨格、またはRNAのリボース糖基における2’-ヒドロキシへの改変等、他の改変も行われ得る。本開示の核酸構築物は、DNAまたはRNAであり得るが、好ましくはDNAである。ゆえに、本発明の核酸構築物は、意図される使用に応じて、DNAの形態で記載され得かつ使用され得るものの、それらはRNAの形態でも記載され得、かつ使用され得る。
【0053】
本明細書において使用するとき、「ヌクレオチド配列」という用語は、ヌクレオチドのヘテロポリマー、または核酸分子の5’から3’末端へのこれらヌクレオチドの配列を指し、そのいずれも一本鎖または二本鎖であり得るcDNA、DNAフラグメントまたは一部分、ゲノムDNA、合成(例えば、化学合成された)DNA、プラスミドDNA、mRNA、およびアンチセンスRNAを含めた、DNAまたはRNA分子を含む。「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」という用語も、ヌクレオチドのヘテロポリマーを指すために本明細書において互換可能に使用される。本明細書において提供されるすべての核酸は、5’および3’末端を有する。さらに、別様に示されるものを除いて、本明細書において提供される核酸分子および/またはヌクレオチド配列は、本明細書において左からの右へ5’から3’方向で提示され、米国配列規則、米国特許規則1.821~1.825、および世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25に記載の、ヌクレオチド文字を表す標準コードを使用して表される。
【0054】
本明細書において使用するとき、「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」という用語は、2つの配列が最適にアラインされた場合の、試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(または、その相補鎖)と比較した、参照(「クエリー」)ポリヌクレオチド分子(または、その相補鎖)の直鎖状ポリヌクレオチド配列における同一ヌクレオチドのパーセンテージを指す。一部の実施形態において、「同一性パーセント」は、アミノ酸配列における同一アミノ酸のパーセンテージを指し得る。
【0055】
本明細書において使用するとき、「配列同一性」とは、2つの最適にアラインされたポリヌクレオチドまたはペプチド配列が、構成要素、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸のアライメントのウィンドウ全体にわたって不変である程度を指す。「同一性」は、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,New York(1991)に記載されるものを含むがこれらに限定されない、公知の方法によって容易に算出され得る。
【0056】
本明細書において使用するとき、「標的DNA」、「標的領域」、または「ゲノムにおける標的領域」とは、それに対して任意のクラスのカスタム設計ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ、CRISPR-Cas等)が結合しかつ切断するように操作されている遺伝子の領域と、完全にまたは実質的に相補的である(例えば、少なくとも70%相補的(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを上回る割合))生物のゲノムの領域を指す。
【0057】
本明細書において使用するとき、少なくとも2つの核酸分子、ヌクレオチド配列、またはタンパク質配列の文脈における「実質的に同一の」または「実質的な同一性」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用してまたは目視点検によって測定される、最大一致のために比較されかつアラインされた場合に、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基配列同一性を有する、2種以上の配列または部分配列を指す。
【0058】
配列比較に関して、典型的に、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列はコンピューターに入力され、必要な場合には部分配列座標が定められ、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが定められる。次いで、配列比較アルゴリズムは、定められたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比べた試験配列に関する配列同一性パーセントを算出する。
【0059】
比較ウィンドウをアラインするための配列の最適なアライメントは当業者に周知であり、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似性検索法等のツールによって、ならびに任意で、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.、San Diego、CA)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA等、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行によって行われ得る。試験配列および参照配列のアラインされたセグメントに対する「同一性画分」は、参照配列セグメント、すなわち参照配列全体または参照配列のより小さな規定された部分における構成要素の総数で割られた、2つのアラインされた配列によって共有される同一の構成要素の数である。配列同一性パーセントは、100をかけた同一性画分として表される。1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の比較は、全長ポリヌクレオチド配列もしくはその一部分に対する、またはより長いポリヌクレオチド配列に対するものであり得る。本発明の目的上、「同一性パーセント」は、翻訳されるヌクレオチド配列に関してはBLASTXバージョン2.0、およびポリヌクレオチド配列に関してはBLASTNバージョン2.0を使用しても判定され得る。
【0060】
BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センターを通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードとアラインした場合に、いくらかプラスに見積もられる閾値スコアTとマッチするまたはそれを満たす、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、まず高スコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは、近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschul et al.,1990)。これらの初回の近隣ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見い出す検索を開始するためのシードとして働く。次いで、ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメーターM(マッチする残基のペアに対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して算出される。アミノ酸配列に関しては、スコア行列を使用して累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から分量X下落する、1つもしくは複数のマイナスに採点される残基アライメントの蓄積に起因して、累積スコアがゼロもしくはそれよりも下になる、またはいずれかの配列の末端に達する場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、初期設定として、11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムは、初期設定として、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコア行列を使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0061】
配列同一性パーセントを算出することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性についての統計分析も実施する(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、それは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じるであろう確率の表示を提供する。例えば、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率が約0.1未満~約0.001未満である場合、試験核酸配列は参照配列に類似していると見なされる。ゆえに、本発明の一部の実施形態において、試験ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との比較における最小合計確率は約0.001未満である。
【0062】
2つのヌクレオチド配列は、2つの配列がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする場合にも、実質的に相補的であると見なされ得る。一部の代表的な実施形態において、実質的に相補的であると見なされる2つのヌクレオチド配列は、高度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズする。
【0063】
サザンおよびノーザンハイブリダイゼーション等の核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存的であり、種々の環境パラメーターの下で異なる。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、Tijssen Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2 “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays” Elsevier,New York(1993)に見い出される。一般的に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定のイオン強度およびpHでの特異的配列に対する熱融解点(Tm)よりも約5℃下回るように選択される。
【0064】
Tmとは、標的配列の50%が、完璧にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度(規定のイオン強度およびpHの下での)である。極めてストリンジェントな条件は、特定のプローブに対するTmと等しいように選択される。サザンまたはノーザンブロットにおける、フィルター上に100個を上回る数の相補的残基を有する相補的ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃における1mgのヘパリンを有する50%ホルムアミドであり、ハイブリダイゼーションは一晩行われる。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、72℃で約15分間の0.1 5M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃で15分間の0.2×SSC洗浄である(SSCバッファーの説明に関しては、下記Sambrookを参照されたい)。しばしば、バックグラウンドプローブシグナルを除去するために、高ストリンジェンシー洗浄の前に、低ストリンジェンシー洗浄が先行する。例えば100個を上回る数のヌクレオチドの二重鎖に対する中ストリンジェンシー洗浄の例は、45℃で15分間の1×SSCである。例えば100個を上回る数のヌクレオチドの二重鎖に対する低ストリンジェンシー洗浄の例は、40℃で15分間の4~6×SSCである。短いプローブ(例えば、約10~50個のヌクレオチド)に関しては、ストリンジェントな条件は、典型的に、pH7.0~8.3で、約1.0M未満のNaイオンの塩濃度、典型的には約0.01~1.0M Naイオン濃度(または、他の塩)を伴い、温度は典型的に少なくとも約30℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加を用いても達成され得る。一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおける非関連プローブに対して観察されるものよりも2×(またはそれよりも高い)シグナル対ノイズ比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしないヌクレオチド配列は、それらがコードするタンパク質が実質的に同一である場合には、依然として実質的に同一である。これは、例えば、ヌクレオチド配列のコピーが、遺伝子コードによって容認される最大コドン縮重を使用して創出される場合に生じ得る。
【0065】
以下は、本発明の参照ヌクレオチド配列と実質的に同一である相同ヌクレオチド配列をクローニングするために使用され得るハイブリダイゼーション/洗浄条件のセットの例である。1つの実施形態において、参照ヌクレオチド配列は、50℃で2×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における洗浄とともに、50℃で7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAにおいて、「試験」ヌクレオチド配列にハイブリダイズする。別の実施形態において、参照ヌクレオチド配列は、50℃で1×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における洗浄とともに、50℃で7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAにおいて、または50℃で0.5×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における洗浄とともに、50℃で7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAにおいて、「試験」ヌクレオチド配列にハイブリダイズする。なおさらなる実施形態において、参照ヌクレオチド配列は、50℃で0.1×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における洗浄とともに、50℃で7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAにおいて、または65℃で0.1×SSC、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)における洗浄とともに、50℃で7%SDS、0.5M NaPO4、1mM EDTAにおいて、「試験」ヌクレオチド配列にハイブリダイズする。
【0066】
関心対象のヌクレオチド配列(例えば、BBL核酸を変異させるのに有用なヌクレアーゼをコードする核酸)は、植物細胞における発現のための多様なプロモーター、ターミネーター、および/または他の調節エレメントと作動的に関連付けされ得る。植物細胞において機能的な任意のプロモーター、ターミネーター、または他の調節エレメントが、本発明の核酸とともに使用され得る。一部の実施形態において、プロモーターは、本発明を行うことにおいて有用なポリヌクレオチドおよび/または核酸に作動的に連結され得る。一部の実施形態において、ターミネーターは、本発明のポリヌクレオチドおよび/または核酸に作動的に連結され得る。
【0067】
「プロモーター」とは、プロモーターと作動的に関連付けされているヌクレオチド配列(すなわち、コード配列)の転写を制御するまたは調節するヌクレオチド配列である。コード配列は、ポリペプチドおよび/または機能的RNAをコードし得る。典型的に、「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIに対する結合部位を含有しかつ転写の開始を指揮するヌクレオチド配列を指す。一般的に、プロモーターは、相当するコード配列のコード領域のスタートに対して5’、つまり上流に見い出される。プロモーター領域は、遺伝子発現の調節因子として働く他のエレメントを含み得る。これらには、TATAボックスコンセンサス配列、およびしばしばCAATボックスコンセンサス配列が含まれる(Breathnach and Chambon,(1981)Annu.Rev.Biochem.50:349)。植物において、CAATボックスは、AGGAボックスによって置換され得る(Messing et al.,(1983)in Genetic Engineering of Plants,T.Kosuge,C.Meredith and A.Hollaender(eds.),Plenum Press,pp.211-227)。
【0068】
本発明との有用なプロモーターには、組換え核酸分子、すなわち「キメラ遺伝子」または「キメラポリヌクレオチド」の調製における使用のための、例えば構成的な、誘導性の、時間的に調節された、発生的に調節された、化学的に調節された、組織好適な、および/または組織特異的なプロモーターが含まれ得る。これらの様々なタイプのプロモーターは、当技術分野において公知である。プロモーターの選定は、発現の時間的および空間的要件に応じて、また形質転換される対象となる宿主細胞に応じて変動するであろう。多くの異なる生物に対するプロモーターが、当技術分野において周知である。当技術分野に存在する広範な知識に基づいて、適当なプロモーターは、関心対象の特定の宿主生物に対して選択され得る。ゆえに、例えば、モデル生物において高度に構成的に発現される遺伝子の上流にあるプロモーターについて多くのことが公知であり、そのような知識は、容易にアクセスされ得かつ必要に応じて他のシステムにおいて実行され得る。一部の実施形態において、関心対象のヌクレオチド配列の発現は、任意の植物および/または植物部分における(例えば、葉における、柄または茎における、穂における、花序における、根、種子、および/または苗における等)ものであり得、プロモーターはそれに応じて選択される。
【0069】
一部の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドおよび核酸の1つまたは複数は、植物細胞における発現のためのプロモーター、ならびにターミネーター、および/または他の調節エレメントと作動的に関連付けされ得る。植物細胞において機能的である任意のプロモーター、ターミネーター、または他の調節エレメントが、本発明の核酸とともに使用され得る。本発明との有用なプロモーターの非限定的な例には、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、35Sプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター、ルビスコ(Rubisco)小サブユニットプロモーター、AlcR/AlcA(エタノール誘導性)プロモーター、グルココルチコイド受容体(GR)融合体、GVG、pOp/LhGR(デキサメタゾン誘導性)プロモーター、XVE/OlexA(β-エストラジオール誘導性)プロモーター、熱ショックプロモーターを含むがこれらに限定されない誘導性プロモーター、および/または二方向性プロモーターが含まれる(例えば、Gatz,Christine.Current Opinion in Biotechnology 7(2):168-172(1996);Borghi L.Methods Mol Biol.655:65-75(2010);Baron et al.Nucleic acids research 23(17)(1995),3605;Kumar et al.Plant molecular biology 87(4-5):341-353(2015)を参照されたい)。
【0070】
本明細書において使用される「作動的に連結された」または「作動的に関連付けされた」によって、表示されるエレメントが互いに機能的に関連しており、一般的には物理的にも関連していることを意味する。ゆえに、本明細書において使用される「作動的に連結された」または「作動的に関連付けされた」という用語は、機能的に関連付けされている、単一核酸分子上のヌクレオチド配列を指す。ゆえに、第2のヌクレオチド配列に作動的に連結されている第1のヌクレオチド配列とは、第1のヌクレオチド配列が、第2のヌクレオチド配列と機能的関係性に置かれていることを意味する。例えば、プロモーターが前記ヌクレオチド配列の転写または発現を生じさせる場合、プロモーターはヌクレオチド配列と作動的に関連付けされている。当業者であれば、制御配列(例えば、プロモーター)は、それが作動的に関連付けされているヌクレオチド配列と、制御配列がその発現を指揮するように機能する限りにおいて、連続している必要はないことを解するであろう。ゆえに、例えば、介在する翻訳されないが転写される配列が、プロモーターとヌクレオチド配列との間に存在し得、プロモーターは、ヌクレオチド配列に「作動的に連結された」と依然として見なされ得る。
【0071】
一部の実施形態において、BBL核酸および関心対象の任意の他のポリヌクレオチド(例えば、ニコチン性アルカロイド生合成をプラスに調節するニコチン性アルカロイド生合成酵素転写因子をコードする他のポリヌクレオチド)を改変するまたは変異させるための構成要素が、「発現カセット」に含まれ得る。本明細書において使用するとき、「発現カセット」とは、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、BBL核酸を変異させるのに有用なヌクレアーゼ)であって、前記ヌクレオチド配列は少なくとも制御配列(例えば、プロモーター)と作動可能に関連付けされている、ヌクレオチド配列を含む核酸構築物を意味する。発現カセットは、その構成要素の少なくとも1つが、その他の構成要素の少なくとも1つに対して異種であることを意味する、キメラであり得る。ゆえに、例えば、発現される対象となる核酸は、発現される対象となる核酸に対して異種(例えば、CRISPRガイドDNAに対して異種)であるプロモーターまたは他の調節エレメントに作動的に連結され得る。発現カセットは、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で獲得されているものでもあり得る。
【0072】
プロモーターに加えて、発現カセットは、転写および/または翻訳終結領域(すなわち、終結領域)を含むがこれらに限定されない、植物細胞において機能的な付加的な調節エレメントも任意で含み得る。多様な転写ターミネーターが、発現カセットにおける使用のために入手可能であり、関心対象の異種ヌクレオチド配列を超える転写の終結および正しいmRNAポリアデニル化に関与する。終結領域は、転写開始領域に対して天然であり得る、関心対象の作動的に連結されたヌクレオチド配列に対して天然であり得る、宿主細胞に対して天然であり得る、または別の供給源に由来し得る(すなわち、プロモーターに対して、関心対象のヌクレオチド配列に対して、宿主に対して、またはその任意の組み合わせに対して外来のまたは異種の)。植物において機能的でかつ本発明との有用なターミネーターの非限定的な例には、アクチンターミネーター;ルビスコ小サブユニットターミネーター、ルビスコ大サブユニットターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、および/またはユビキチンターミネーターが含まれる。
【0073】
ウイルスに由来するいくつかの非翻訳リーダー配列は、遺伝子発現を増強することが公知である。具体的には、タバコモザイクウイルス(TMV、「ω配列」)、トウモロコシクロロティックモットルウイルス(Maize Chlorotic Mottle Virus)(MCMV)、およびアルファルファモザイクウイルス(AMV)由来のリーダー配列は、発現を増強することにおいて有効であることが示されている(Gallie et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:8693-8711;およびSkuzeski et al.(1990)Plant Mol.Biol.15:65-79)。当技術分野において公知の他のリーダー配列には、脳心筋炎(EMCV)5’非コード領域リーダー等のピコルナウイルスリーダー(Elroy-Stein et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6126-6130);タバコエッチウイルス(TEV)リーダー等のポチウイルスリーダー(Allison et al.(1986)Virology 154:9-20);トウモロコシドワーフモザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus)(MDMV)リーダー(上記Allison et al.(1986));ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)リーダー(Macejak&Samow(1991)Nature 353:90-94);AMVのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4;Jobling&Gehrke(1987)Nature 325:622-625);タバコモザイクTMVリーダー(Gallie et al.(1989)Molecular Biology of RNA 237-256);およびMCMVリーダー(Lommel et al.(1991)Virology 81:382-385)が含まれるが、これらに限定されない。Della-Cioppa et al.(1987)Plant Physiol.84:965-968も参照されたい。
【0074】
発現カセットは、植物において機能的である転写および/または翻訳終結領域(すなわち、終結領域)も任意で含み得る。多様な転写ターミネーターが、発現カセットにおける使用のために入手可能であり、関心対象の異種ヌクレオチド配列を超える転写の終結および正しいmRNAポリアデニル化に関与する。終結領域は、転写開始領域に対して天然であり得る、関心対象の作動的に連結されたヌクレオチド配列に対して天然であり得る、植物宿主に対して天然であり得る、または別の供給源に由来し得る(すなわち、プロモーター、関心対象のヌクレオチド配列、植物宿主、またはその任意の組み合わせに対して外来のまたは異種の)。適当な転写ターミネーターには、CAMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、および/またはエンドウrbcs E9ターミネーターが含まれるが、これらに限定されない。これらは、単子葉植物および双子葉植物の両方において使用され得る。加えて、コード配列の天然転写ターミネーターが使用され得る。
【0075】
発現カセットは、形質転換された宿主細胞を選択するために使用され得る選択可能なマーカーに対するヌクレオチド配列も含み得る。本明細書において使用するとき、「選択可能なマーカー」とは、発現した場合に、マーカーを発現する宿主細胞に明確な表現型を与え、ゆえに、そのような形質転換された細胞がマーカーを有しないものと区別されるのを可能にする、ヌクレオチド配列を意味する。そのようなヌクレオチド配列は、マーカーが、選択用作用物質(例えば、抗生物質等)を使用することによって等の化学的手段によって選択され得る形質を付与するかどうか、またはマーカーが、単に、スクリーニングによって等の観察もしくは試験を通じて同定し得る形質(例えば、蛍光)であるかどうかに応じて、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーのいずれかをコードし得る。適切な選択可能なマーカーの多くの例が当技術分野において公知であり、本明細書に記載される発現カセットにおいて使用され得る。
【0076】
発現カセットに加えて、本明細書に記載される核酸は、ベクターと接続して使用され得る。「ベクター」という用語は、細胞内に1つまたは複数の核酸を移動させる、送達する、または導入するための組成物を指す。ベクターは、移動する、送達される、または導入される対象となるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。宿主生物の形質転換における使用のためのベクターは、当技術分野において周知である。一般的なクラスのベクターの非限定的な例には、自己伝染性または可動性であってもなくてもよい、二本鎖または一本鎖の直鎖状または環状形態にある、ウイルスベクター、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、バクテリオファージ、人工染色体、またはアグロバクテリウム(Agrobacterium)バイナリーベクターが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に規定されるベクターは、細胞ゲノムへの組み込みまたは染色体外に存在すること(例えば、複製の起点を有する自律複製プラスミド)によって真核生物宿主を形質転換し得る。付加的に、天然にまたは設計により、2つの異なる宿主生物における複製の能力があるDNAビヒクルを意味するシャトルベクターが含まれる。一部の代表的な実施形態において、ベクターにおける核酸は、宿主細胞における転写のための適当なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあり、それに作動的に連結されている。ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであり得る。ゲノムDNAの場合には、これはそれ自身のプロモーターまたは他の調節エレメントを含有し得、cDNAの場合には、これは、宿主細胞における発現のための適当なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあり得る。したがって、ポリヌクレオチドおよび/または発現カセットは、本明細書に記載されるおよび当技術分野において公知のベクターに含まれ得る。
【0077】
本明細書において使用するとき、「ニコチン性アルカロイド」とは、ニコチン酸に由来するアルカロイドを指す。これらのアルカロイドは、一般的に、3-ピリジル環構造を含有し、ニコチン、ノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンは、ニコチアナ属内の主たるニコチン性アルカロイドである。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドは、ニコチン、ノルニコチン、アナタビン、および/またはアナバシンを含み得る、それから本質的になり得る、またはそれからなり得る。一部の実施形態において、ニコチン性アルカロイドはニコチンである。
【0078】
本明細書において使用するとき、「アルカロイド含有量」とは、例えば乾燥重量パーセント(乾燥重量%)または生体重パーセント(生体重%)の観点からの、植物に見い出されるアルカロイドの総量を意味する。
【0079】
本発明との有用な植物は、ニコチンおよび/または他の関連アルカロイドを産生する任意のニコチアナ植物であり得る。ゆえに、一部の実施形態において、植物は、ニコチアナ・タバカム、ニコチアナ・ルスティカ(Nicotiana rustica)、またはニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)であり得る。芳香性火乾燥処理ブライトリーフタバコ、バーレー(Burley);キャベンディッシュ(Cavendish);コロジョ(Corojo);クリオロ(Criollo);オリエンタルタバコ;ペリック(Perique);シェード(Shade)タバコ;トゥックラオ(Thuoc lao);タイプ22;NC95、K326、K346、ホワイトバーレー、野生タバコ、Y1等を含むがこれらに限定されない、任意の多様なタバコが本発明と有用である。
【0080】
本明細書において使用される「植物部分」という用語は、生殖組織(例えば、花弁、萼片、雄しべ、雌しべ、花托、葯、花粉、花、果実、花芽、胚珠、種子、胚);栄養組織(例えば、葉柄、茎、根、根毛、根端、髄、子葉鞘、柄、苗条、枝、頂端分裂組織、腋芽、子葉、胚軸、および葉);維管束組織(例えば、師部および木部);表皮細胞、柔組織細胞、厚角組織(chollenchyma)細胞、厚壁組織(schlerenchyma)細胞、気孔、孔辺細胞、クチクラ、葉肉細胞等の特殊化した細胞;カルス組織;および挿し木(cutting)を含むが、これらに限定されない。「植物部分」という用語は、植物および/または植物の一部において無傷である植物細胞を含めた植物細胞、植物プロトプラスト、植物組織、植物器官、植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊等も含む。本明細書において使用するとき、「苗条」とは、葉および茎を含めた、地表より上の部分を指す。本明細書において使用するとき、「組織培養物」という用語は、組織、細胞、プロトプラスト、およびカルスの培養物を包含する。
【0081】
本明細書において使用するとき、「植物細胞」とは、典型的に細胞壁を含むが、プロトプラストも含む、植物の構造的および生理学的単位を指す。本発明の植物細胞は、単離された単一細胞の形態にあり得る、または培養細胞であり得る、または例えば植物組織(カルスを含む)もしくは植物器官等のより高度に組織化された単位の一部であり得る。一部の実施形態において、植物細胞は藻類細胞であり得る。
【0082】
「植物細胞培養物」とは、例えばプロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織における細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合子、および発生の様々な段階での胚等の植物単位の培養物を意味する。本発明の一部の実施形態において、トランスジェニック組織培養物またはトランスジェニック植物細胞培養物であって、トランスジェニック組織または細胞培養物は、本発明の核酸分子/ヌクレオチド配列を含む、トランスジェニック組織培養物またはトランスジェニック植物細胞培養物が提供される。
【0083】
本明細書において使用するとき、「植物器官」とは、根、茎、葉、花芽、または胚等、植物の明確でかつ目に見えて構造化されかつ分化した部分である。
【0084】
本明細書において使用される「植物組織」とは、構造的および機能的単位に組織化された植物細胞の群を意味する。インプランタでのまたは培養下での植物の任意の組織が含まれる。この用語は、植物全体、植物器官、植物種子、組織培養物、ならびに構造的および/または機能的単位に組織化された植物細胞の任意の群を含むが、これらに限定されない。上で列挙されるまたはそうでなければ本定義によって内包される任意の特異的タイプの植物組織と併せたまたはそれ不在でのこの用語の使用は、任意の他のタイプの植物組織を除外することを意図されるわけではない。
【0085】
関心対象のポリヌクレオチド(例えば、BBL核酸を変異させるのに有用なヌクレアーゼ)の文脈における「導入すること」、「導入する」、「導入された」(および、その文法的変形)は、ポリヌクレオチドが細胞の内部にアクセスするような様式で、関心対象のポリヌクレオチドを宿主生物または前記生物の細胞(例えば、宿主細胞)に提示することを意味する。1つを上回るポリヌクレオチドが導入される対象となる場合、これらのポリヌクレオチドは、単一のポリヌクレオチドもしくは核酸構築物の一部として、または別個のポリヌクレオチドもしくは核酸構築物として組み立てられ得、同じまたは異なる発現構築物または形質転換ベクターに配置され得る。したがって、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換事象で、別個の形質転換/トランスフェクション事象で細胞に導入され得る、または例えば、それらは、従来の育種プロトコールによって生物に組み入れられ得る。ゆえに、一部の態様において、BBL核酸を改変するまたは変異させるのに有用なヌクレアーゼ(例えば、Crispr-Casヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および/または転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN))をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、単独で、または単一の発現カセットおよび/もしくはベクターにおいて組み合わせて、宿主生物または前記宿主生物の細胞に導入され得る。一部の実施形態において、nic1の劣性アレル、または劣性アレルnic1およびnic2の劣性アレルを導入することは、例えばBBLa、BBLb、およびBBLcにおける改変を含む植物に、従来の育種によって劣性アレルの1つまたは複数を組み入れることを含み得、それにより、BBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子は、低下した発現を有するもしくは発現を有しない、または改変されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子によってコードされるポリペプチドは、低下した活性を有するもしくは活性を有しない。
【0086】
本明細書において使用される「形質転換」または「トランスフェクション」という用語は、細胞への、ヌクレアーゼをコードする核酸等の異種核酸の導入を指す。細胞の形質転換は、安定なもしくは一過性であり得る、または部分的に安定に形質転換され得かつ部分的に一過性に形質転換され得る。ゆえに、一部の実施形態において、植物ゲノムの改変は安定であり得、および一部の実施形態において、改変は一過性であり得る。一部の実施形態において、安定な形質転換の後、植物ゲノムに導入された核酸構築物は、例えば非改変植物との交配または非ホモ接合型植物の分離によって除去され得る。
【0087】
ポリヌクレオチドの文脈における「一過性の形質転換」とは、ポリヌクレオチドが細胞に導入され、細胞のゲノムには組み込まれないことを意味する。
【0088】
ポリヌクレオチドの文脈における「安定に導入すること」または「安定に導入された」によってとは、導入されたポリヌクレオチドが細胞のゲノムに安定に組み入れられ、ゆえに細胞がポリヌクレオチドで安定に形質転換されることを意味する。
【0089】
本明細書において使用される「安定な形質転換」または「安定に形質転換された」とは、核酸構築物が細胞に導入され、細胞のゲノムに組み込まれることを意味する。そのため、組み込まれた核酸構築物は、その子孫によって、より特に複数の代々の世代の子孫によって受け継がれ得る。本明細書において使用される「ゲノム」は、核、色素体、および/またはミトコンドリアゲノムを含み得、それゆえ、核、色素体、および/またはミトコンドリアゲノムへの核酸構築物の組み込みを含み得る。本明細書において使用される安定な形質転換は、例えばミニ染色体またはプラスミドとして、染色体外で維持される導入遺伝子も指し得る。
【0090】
一過性の形質転換は、例えば、植物または植物細胞に導入された1つまたは複数の導入遺伝子によってコードされるペプチドまたはポリペプチドの存在を検出し得る、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはウェスタンブロットによって検出され得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、生物(例えば、細菌、古細菌、酵母、藻類等)に導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列との、細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出され得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、植物または他の生物に導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列との、細胞のDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出され得る。細胞の安定な形質転換は、例えば、導入遺伝子の標的配列とハイブリダイズする特異的プライマー配列を採用し、標準的方法に従って検出され得る導入遺伝子配列の増幅をもたらす、当技術分野において周知であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の増幅反応によっても検出され得る。形質転換は、当技術分野において周知のダイレクトシーケンシングおよび/またはハイブリダイゼーションプロトコールによっても検出され得る。
【0091】
植物を形質転換するための手順は、当技術分野において周知でありかつルーチンであり、文献を通じて記載される。植物の形質転換のための方法の非限定的な例には、細菌媒介性核酸送達による形質転換(例えば、アグロバクテリウムによる)、ウイルス媒介性核酸送達、炭化ケイ素または核酸ウィスカー媒介性核酸送達、リポソーム媒介性核酸送達、マイクロインジェクション、微粒子銃、リン酸カルシウム媒介性形質転換、シクロデキストリン媒介性形質転換、エレクトロポレーション、ナノ粒子媒介性形質転換、超音波処理、浸潤、PEG媒介性核酸取り込み、ならびにその任意の組み合わせを含めた、植物細胞への核酸の導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的(機械的)、および/または生物学的メカニズムが含まれる。当技術分野において公知の様々な植物形質転換法の一般的指針には、Miki et al.(“Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants” in Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology,Glick,B.R.and Thompson,J.E.,Eds.(CRC Press,Inc.,Boca Raton,1993),pages 67-88)およびRakowoczy-Trojanowska(Cell.Mol.Biol.Lett.7:849-858(2002))が含まれる。
【0092】
アグロバクテリウム媒介性形質転換は、形質転換のその高い効率性が理由で、および多くの異なる種とのその広い実用性が理由で、植物、特に双子葉植物を形質転換するためによく使用される方法である。アグロバクテリウム媒介性形質転換は、典型的に、共在性Tiプラスミド上または染色体上で宿主アグロバクテリウム系統によって運ばれるvir遺伝子の相補体に依存し得る、適当なアグロバクテリウム系統への関心対象の外来DNAを運ぶバイナリーベクターの移動を伴う(Uknes et al.(1993)Plant Cell 5:159-169)。アグロバクテリウムへの組換えバイナリーベクターの移動は、組換えバイナリーベクターを運ぶ大腸菌(Escherichia coli)、標的アグロバクテリウム系統に組換えバイナリーベクターを動員し得るプラスミドを運ぶヘルパー大腸菌系統を使用した三親交雑(triparental mating)手順によって遂行され得る。あるいは、組換えバイナリーベクターは、核酸形質転換によってアグロバクテリウムに移動し得る(Hofgen&Willmitzer(1988)Nucleic Acids Res.16:9877)。
【0093】
組換えアグロバクテリウムによる植物の形質転換は、通常、アグロバクテリウムと植物由来の外植片との共培養を伴い、当技術分野において周知の方法に従う。形質転換された組織は、バイナリープラスミドT-DNA境界の間に抗生物質または除草剤耐性マーカーを持つ選択培地で再生される。
【0094】
植物、植物部分、および/または植物細胞を形質転換するための別の方法は、不活性なまたは生物学的に活性な粒子を植物組織および細胞において推進することを伴う。例えば、米国特許第4,945,050号;第5,036,006号;および第5,100,792号を参照されたい。一般的に、この方法は、細胞の外面に浸透しかつその内部への組み入れを与えるのに有効な条件下で、不活性なまたは生物学的に活性な粒子を植物細胞において推進することを伴う。不活性粒子が利用される場合、関心対象の核酸を含有するベクターで粒子をコートすることによって、ベクターは細胞に導入され得る。あるいは、1つまたは複数の細胞がベクターによって取り囲まれ得、それによりベクターは、粒子の後流(wake)によって細胞に運ばれる。生物学的に活性な粒子(例えば、それぞれが、導入されることが求められる1つまたは複数の核酸を含有する、乾燥した酵母細胞、乾燥した細菌、またはバクテリオファージ)も、植物組織内に推進され得る。
【0095】
それゆえ、ヌクレオチド配列は、当技術分野において周知であるいくつものやり方で、植物、植物部分、および/または植物細胞に導入され得る。本発明の方法は、それらが植物の少なくとも1つの細胞の内部にアクセスするということのみで、植物に1つまたは複数のヌクレオチド配列を導入するための特定の方法に依存しない。ゆえに、本発明の特定の実施形態において、多様な公知の技法のいずれかを使用して、これらの形質転換された細胞から無傷の植物が再生され得る。植物細胞、植物組織培養物、および/または培養されたプロトプラストからの植物再生は、例えばEvans et al.(Handbook of Plant Cell Cultures,Vol.1,MacMilan Publishing Co.New York(1983));ならびにVasil I.R.(ed.)(Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Acad.Press,Orlando,Vol.I(1984)およびVol.II(1986))に記載される。形質転換されたトランスジェニック植物、植物細胞、および/または植物組織培養物を選択する方法は、当技術分野においてルーチンであり、本明細書において提供される本発明の方法において採用され得る。
【0096】
本明細書において使用するとき、「タバコ製品」とは、例えば、禁煙のためのニコチンガムおよびパッチ、拡張した(膨化した)および再構成されたタバコを含むシガレットタバコ、葉巻タバコ、パイプタバコ、シガレット、葉巻、ならびに噛みタバコ、スナッフ、スヌース、およびトローチ等の無煙タバコのすべての形態を含めた、ニコチアナ植物によって産生される材料を含む製品を指す。「シガレット」には、電子シガレット、およびタバコを燃焼させるよりもむしろタバコを加熱するシガレット様デバイスである「加熱式(heat not burn)」製品が含まれる。一部の実施形態において、タバコ製品には、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および/または噛みタバコが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0097】
本発明は、一部には、(a)ベルベリンブリッジ様(BBL)ポリペプチドであるBBLa、BBLb、およびBBLcをコードするポリヌクレオチドであって、それは、ポリヌクレオチドの発現および/またはそれから産生されるポリペプチドの活性を低下させるまたは消去するように改変されている、ポリヌクレオチド、ならびに(b)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含むニコチアナ植物が、改変されたBBLa、BBLb、およびBBLcポリヌクレオチド、ならびにnic1の劣性アレル、もしくはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含まないニコチアナ植物と比較して、または改変されたBBLa、BBLb、およびBBLcポリヌクレオチドのみを含むニコチアナ植物と比較して、低下したニコチン性アルカロイド含有量を提供するという発見に係るものである。
【0098】
ニコチンは、タバコとして一般に知られるニコチアナ・タバカムL.種、およびニコチアナ属の数々の他のメンバーによってかなりの分量で産生される非常に調査されている植物天然産物である。このピリジンアルカロイドは、タバコ根において合成され、その後、植物創傷または頂端花序の喪失によって刺激される過程において着生植物部分へ移行する。ニコチン蓄積は、おそらく、草食動物に対する天然の植物防御において役割を果たす。ニコチンは、それが、十分に調査された毒物プロファイルを有する可燃性シガレット等の製造されたタバコ製品における主な中毒物質であることから、人間社会においても重要な役割を果たす。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、発がん、中毒、または呼吸器の、循環器の、生殖的な、もしくは発生的な毒性とのそれらの関連性に起因して、「有害および潜在的に有害」として定められる93種のタバコおよびタバコ煙の化学的構成成分を列挙している(U.S.Food and Drug Administration 2012)。
【0099】
ニコチンそれ自体は発がん性物質として認識されないが、World Health Organization(2015)およびUnited States Food and Drug Administration(2018)は、そのような製品への全体的中毒を低下させ、相当する毒物曝露を下げるために、可燃性シガレットにおけるニコチンレベルを非中毒性レベルまで下げること義務づけることを推奨している。従来のタバコ栽培品種における乾燥重量ベースでのニコチンパーセントは、典型的に1.0~5.0%の間に及び、販売タイプ(バーレー、鉄管乾燥処理、ダーク、葉巻、またはオリエンタル)、植物遺伝学、生育環境、および柄の位置(stalk position)に起因して変動性が観察される。メーカーは、供給される乾燥処理された葉をブレンドして、乾燥重量ベースで1.0~2.0%の間のニコチンを有するシガレットタバコフィルターを産生する。ニコチンが、可燃性シガレットにおいて非中毒性になる具体的濃度は判定するのが困難であり得、個体間で変動し得るが、BenowitzおよびHenningfield(New Engl.J.Med.331,123-125(1994))は、0.02~0.03%の間のタバコフィルターニコチン含有量が「中毒の閾下レベル」を下回ると予測している。World Health Organization(2015)は、タバコフィルターのニコチン含有量を0.04%より下まで下げることを推奨している。
【0100】
伝えられるところによれば、タバコフィルターのニコチン含有量の80%~98%の低下を達成するために化学的抽出の様々な方法が使用されている。しかしながら、化学的抽出に伴うコストの増加、および官能特性にプラスの影響を及ぼす化合物の共抽出の可能性は、これらの手法を魅力のないものにする。改変された植物遺伝学の使用は、シガレットニコチンレベルの低下を達成する好ましい道筋である。
【0101】
ニコチン蓄積の可能性の低下を有する新たなタバコ栽培品種を開発する遺伝学的手法は、(1)N.タバカムもしくは近縁種内に天然に存在する遺伝学的変動性、(2)遺伝子編集もしくは変異原処理によって誘導される遺伝学的変動性、または(3)遺伝子操作によって生み出される新規の変動、の使用を含む。米国ニコチアナ遺伝資源コレクション(United States Nicotiana Germplasm Collection)における多種多様なタバコ材料の中には、乾燥重量ベースで0.02~6.55%に及ぶ、アルカロイド蓄積に対する幅広い変動が存在する。しかしながら、世界保健機関によって推奨される0.04%の超低ニコチンレベルは、最低アルカロイド材料において当たり前には観察されない。Nic1およびNic2(AおよびBとしても知られる)遺伝子座における劣性アレルは、1.5~4.5%の間からおよそ0.20~0.45%への、ニコチンおよび関連アルカロイド(ノルニコチン、アナバシン、およびアナタビン)の大きな低下に寄与することが見い出されている。しかしながら、このアレル変動性は、乾燥処理された葉の産出量および品質の低下と関連することが周知であり、乾燥処理された葉を商業的に望ましくない状態にする。
【0102】
ニコチン生合成に関わることが同定された特異的遺伝子の知識は、それらの発現を下げかつニコチン蓄積の相当する低下を達成するための、RNA干渉等の技術の使用を可能にする。しかしながら、「GMO」タバコ栽培品種の商業化は、世界中で可変レベルの複雑な規制監督に供される。遺伝子操作の代替案として、誘導性変異または遺伝子編集によって達成される遺伝子サイレンシングを使用して、ニコチンの低下を実現し得る。N.タバカムのポリープ様性質が理由で、所望の表現型を達成するために、多遺伝子コピーにおける変異がしばしば必要である。ポリープ様種における変異育種の複雑性の増加は、そのような育種手法の成果物が世界各地において規制品目として見なされないという事実によって相殺され得る。
【0103】
ベルベリンブリッジ様(BBL)遺伝子ファミリーは、それらの正確な役割は現在理解されていないものの、N.タバカムニコチン生合成経路の最終ステップの1つに関わる酵素をコードすることが以前に同定された。このファミリーは6種の近縁メンバーから構成され、そのうちの3種はかなりの程度で発現され(BBL-a、BBL-b、およびBBL-c)、およびそのうちの3種は低く発現される(BBL-d1、BBL-d2、およびBBL-e)。本発明者らは、この遺伝子ファミリーの発現を低下させるRNA干渉導入遺伝子を持つ、従来的に屋外生育された鉄管乾燥処理されたタバコ植物における実質的に低下したニコチン含有量を以前に実証した(Lewis et al.,PLOS ONE 10,e0117273(2015))。本発明者らは、3種の最も高く発現されるBBL遺伝子ファミリーメンバーにおける誘導性変異の効果に関する予備的結果も報告した(Lewis et al.,PLOS ONE 10,e0117273(2015))。本発明は、BBLabc変異と、Nic1およびNic2遺伝子座における天然に存在する劣性アレルとを組み合わせたタバコ株の開発および試験に向けられる。
【0104】
したがって、本発明は、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有するニコチアナ植物を産生する方法であって、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含む。一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、をニコチアナ植物において組み合わせるステップを含む。一部の実施形態において、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有するニコチアナ植物を産生する方法は、付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現を低下させる改変をさらに含み得る。一部の実施形態において、付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素には、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、および/またはA622が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0105】
一部の実施形態において、本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも40%(例えば、少なくとも約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96%、もしくはそれを上回る割合;またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約40%~約90%(例えば、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、もしくは91%、またはそれを上回る割合;あるいはその中にある任意の域または値)低下し得る。一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、約0.014%~約0.098%のニコチン含有量を含み得る。
【0106】
一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルを有する本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも約30%(例えば、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約40%低下し得る。一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、約0.098%のニコチン含有量を含み得る。
【0107】
一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも約40%(例えば、少なくとも約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約90%(例えば、約90、91、92、93、94、95、96、97%、またはそれを上回る割合)低下し得る。一部の実施形態において、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、約0.014%のニコチン含有量を含み得る。
【0108】
一部の実施形態において、本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して増加したクロロフィル(例えば、増加した緑)を含み得、任意で、クロロフィルの増加は、植物の葉におけるまたは植物の葉および茎におけるものである。一部の実施形態において、本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して低い糖類含有量を含み得、任意で、糖類含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約7%~28%(例えば、約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)低下し得る。一部の実施形態において、本発明の方法によって産生されるニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して低い窒素含有量を含み得、任意で、窒素含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約10%~25%(例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)低下し得る。
【0109】
本発明は、本発明のニコチアナ植物の葉および茎を乾燥処理する方法をさらに提供する。本明細書に記載される遺伝子改変を含む本発明のニコチアナ植物は、標準的なタバコ乾燥処理法(例えば、Powell 1987(Powell Manufacturing,Co.’s Bulk Curing/Drying Owner’s Operator’s Manual for Flue Cured Tobaccos,Powell Manufacturing,Co.と題されたマニュアル(Jan.20,1987)に記載される方法等)を使用して乾燥処理された場合、タバコ製品における使用のための十分な品質のタバコを提供しない、葉および茎を産生する。乾燥処理する標準的方法とは対照的に、本明細書に記載される乾燥処理する方法は、本発明のニコチアナ植物(例えば、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する)の葉および茎に適用された場合、標準的な乾燥処理プロトコール[例えば、約92°F~約96°F(例えば、約92°F、93°F、94°F、95°F、もしくは96°F、またはその中にある任意の域もしくは値)のスタート温度で葉を加熱し、最大上限温度に達するまで時間あたり約1°Fの割合で約104°F~約108°F(例えば、約104°F、105°F、106°F、107°F、108°F、またはその中にある任意の域もしくは値)の最大上限温度まで増加させ、上限温度は約52~58時間(例えば、約52、53、54、55、56時間、またはその中にある任意の域もしくは値)のおよその期間保持されるステップを含む、黄化工程;約120°Fの温度で約22時間の葉乾燥工程;および(c)継続的モニタリングを有した、約132°F~138°F(例えば、約132°F、133°F、134°F、135°F、136°F、137°F、もしくは138°F、またはその中にある任意の域もしくは値)の温度で約50時間~約65時間(例えば、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、もしくは65時間、またはその中にある任意の域もしくは値)の茎乾燥工程、それによってニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理し、ニコチアナ植物の1または複数枚の乾燥処理された葉を産生する]を使用して乾燥処理された本発明のニコチアナ植物の葉および茎と比較して、向上した品質を有するタバコを提供する。一部の実施形態において、葉乾燥工程は、約116°F~120°Fまたは約116°F~118°F(例えば、約116°F、117°F、118°F、119°F、120°F、またはその中にある任意の域もしくは値)の温度で約28~34時間(例えば、約28、29、30、31、32、33、もしくは34時間、またはその中にある任意の域もしくは値)行われる。本技術の方法に従って乾燥処理された本技術のニコチアナ植物の品質の向上には、標準的な乾燥処理プロトコールを使用して乾燥処理された本技術のニコチアナ植物と比較して、より良い指数等級、質感の向上、色彩の向上、高い上品質、糖類レベルの増加、およびアンモニアレベルの低下が含まれるが、これらに限定されない。鉄管乾燥処理された種類における糖類レベルは、良好な香味の明るい葉のインジケーターであり、アンモニアレベルは、典型的に、タバコにおける異味のインジケーターとして使用される。
【0110】
ゆえに、一部の実施形態において、本発明は、ニコチアナ植物の1つまたは複数の葉および/または茎を乾燥処理する方法であって、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を有し、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有し、この方法は、(a)92°F~96°Fの温度から始めて葉を加熱し、最大上限温度に達するまで時間あたり約1°Fの割合で104°F~約108°F(例えば、104°F、105°F、106°F、107°F、もしくは108°F、またはその中にある任意の域もしくは値)の温度まで増加させ、上限温度で約52~58時間(例えば、約52、53、54、55、56、57、または58時間、およびその中にある任意の域または値)の期間保持するステップを含む、黄化工程であって、任意で該工程は、長さが約54時間である、黄化工程;(b)任意で、約120°Fの温度で約22時間の葉乾燥工程;および(c)継続的モニタリングを有した、約132°F~138°F(132°F、133°F、134°F、135°F、136°F、137°F、もしくは118°F、またはその中にある任意の域もしくは値)、任意で134°Fの温度で、約50時間~約65時間(例えば、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、6、61、62、63、64、もしくは65時間、またはその中にある任意の域もしくは値)の茎乾燥工程、を含み、それによってニコチアナ植物の1または複数枚の葉を乾燥処理し、ニコチアナ植物の1または複数枚の乾燥処理された葉を産生する、方法を提供する。一部の実施形態において、葉乾燥工程は、約116°F~120°Fまたは約116°F~118°F(116°F、117°F、118°F、119°F、120°F、またはその中にある任意の域もしくは値)の温度で約28~34時間行われる。
【0111】
一部の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって産生される乾燥処理されたタバコを提供する。一部の実施形態において、本発明の乾燥処理されたタバコ(例えば、葉、喫煙用の葉、ラグ(lug)、カッター(cutter)、プライミング(priming))は、良好な色彩強度、通常の幅、および均一な質感を有する良品質~上品質の特徴を有し、任意で、乾燥処理されたタバコは、60を上回るUSDA等級指数を有する。一部の実施形態において、乾燥処理されたタバコは、USDA標準等級(“Official Standard Grades for Flue-Cured Tobacco U.S. Types 11,12,13,14,and Foreign Type 92”)(USDA Agriculture Marketing Serviceウェブサイト(ams.usda.gov/grades-standards/tobacco)で公開される)およびTitle 7,Chapter 1,Part 29 Issued under authority of The Tobacco Inspection Act(49 Stat.731;7 U.S.C.511)(effective date of March 27,1989(54 F.R.7925))による、上品質~良品質~低品質または優良品質~上品質~良品質のものである。例となるUSDA標準等級は表1に記載される。
【0112】
【表1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【0113】
一部の実施形態において、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉であって、(A)ニコチアナ植物は、(1)劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方を含み、(2)野生型と比べて変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を含み、それにより、ニコチアナ植物のニコチン性アルカロイド含有量は前記野生型と比較して低下し;ならびに(B)乾燥処理されたタバコ葉(葉、喫煙用の葉、先端、カッター、ラグを含む)は、本発明の方法を使用して栽培されておらずかつ乾燥処理されておらず、その結果、劣品質~低品質の葉を産生する同じニコチアナ植物由来の葉と比較して、良好な色彩強度、通常の幅、および均一な質感を有する上品質~良品質の葉の特徴を有する、ニコチアナ植物由来の乾燥処理されたタバコ葉が提供される。一部の実施形態において、本発明の乾燥処理されたタバコは、60を上回るUSDA等級指数を有し得る。
【0114】
一部の実施形態において、(野生型と比べて)劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有する(ニコチアナ植物のニコチン性アルカロイド含有量が野生型と比較して低下した)ニコチアナ植物由来の、本発明の方法によって産生される乾燥処理されたタバコには、葉、喫煙用の葉、先端、カッター、プライミング、および/またはラグが含まれ得るが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本発明によって提供される喫煙用の葉は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物の喫煙用の葉に対するH6F(劣品質のオレンジ色の喫煙用の葉)~H6FR(劣品質の橙赤色の喫煙用の葉)~H6K(劣品質の斑入りの喫煙用の葉)と比較して、H3F(上品質のオレンジ色の喫煙用の葉)~4F(良品質のオレンジ色の喫煙用の葉)~5F(低品質のオレンジ色の喫煙用の葉)のUSDA品質等級を有し得る。一部の実施形態において、本発明によって提供される葉(B群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物の葉(B群)に対するB5L(低品質のレモン色の葉)~B6L(劣品質のレモン色の葉)と比較して、B2L(優良品質のレモン色の葉)~B3L(上品質のレモン色の葉)~B4L(良品質のレモン色の葉)のUSDA品質等級を有し得る。
【0115】
一部の実施形態において、本発明によって提供されるカッター(C群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のカッター(C群)に対するC5L(低品質のレモン色のカッター)と比較して、C2L(優良品質のレモン色のカッター)~C3L(上品質のレモン色のカッター)~C4L(良品質のレモン色のカッター)のUSDA品質等級を有し得る。一部の実施形態において、本発明によって提供されるカッター(C群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のカッター(C群)に対するC5F(低品質のオレンジ色のカッター)と比較して、C2F(優良品質のオレンジ色のカッター)~C3F(上品質のオレンジ色のカッター)~C4F(良品質のオレンジ色のカッター)のUSDA品質等級を有し得る。
【0116】
一部の実施形態において、本発明によって提供されるラグ(X群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のラグ(X群)に対するX5L(低品質のレモン色のラグ)と比較して、X2L(優良品質のレモン色のラグ)~X3L(上品質のレモン色のラグ)~X4L(良品質のレモン色のラグ)のUSDA品質等級を有し得る。一部の実施形態において、本発明によって提供されるラグ(X群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のラグ(X群)に対するX5F(低品質のオレンジ色のラグ)と比較して、X2F(優良品質のオレンジ色のラグ)~X3F(上品質のオレンジ色のラグ)~X4F(良品質のオレンジ色のラグ)のUSDA品質等級を有し得る。
【0117】
一部の実施形態において、本発明によって提供されるプライミング(P群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のプライミング(P群)に対するP5L(低品質のレモン色のプライミング)と比較して、P2L(優良品質のレモン色のプライミング)~P3L(上品質のレモン色のプライミング)~P4L(良品質のレモン色のプライミング)のUSDA品質等級を有し得る。一部の実施形態において、本発明によって提供されるプライミング(P群)は、本発明の方法を使用して乾燥処理されていないまたは栽培されていない、劣性nic1およびnic2アレルの一方または両方ならびに変更されたBBLa、BBLb、およびBBLc遺伝子を有するニコチアナ植物のプライミング(P群)に対するP5F(低品質のオレンジ色のプライミング)と比較して、P2F(優良品質のオレンジ色のプライミング)~P3F(上品質のオレンジ色のプライミング)~P4F(良品質のオレンジ色のプライミング)のUSDA品質等級を有し得る。
【0118】
本明細書において使用するとき、「葉」とは、タバコ植物の主要な構成要素を指し、サイズ、形状、および柄における位置は、葉の品質のインジケーターであり得る。鉄管乾燥処理されたタバコ植物上の「葉」は、最上部からの第2の群の葉を指し、一方で火乾燥処理されたおよび暗色空気乾燥処理されたタバコにおいて、「葉」は、タバコ植物の最上部3番目に配置される葉のすべてに対する一般的用語である。
【0119】
「喫煙用の葉」は、柄の中央部のすぐ上で生育する。
【0120】
本明細書において使用するとき、「ラグ」とは、鉄管乾燥処理されたタバコ植物上の、地表から第2の群の葉;火乾燥処理されたおよび暗色空気乾燥処理されたタバコ植物上の、柄の中央部および/または葉の中央部の群の近くに配置される、バーレータバコ植物上の最大の葉を指す。
【0121】
本明細書において使用される「カッター」とは、柄の中央部の近くに配置される、鉄管乾燥処理されたタバコ植物上の最大の葉を指す。
【0122】
本明細書において使用するとき、「先端」とは、加工の間にしばしば除去される、鉄管乾燥処理されたタバコ植物もしくはバーレータバコ植物上の最上の葉、および/またはタバコ葉のとがった末端(柄から最も遠くに配置される)を指す。
【0123】
一部の実施形態において、ニコチアナ植物由来のタバコを含むタバコ製品であって、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、タバコ製品が提供される。一部の実施形態において、ニコチアナ植物由来のタバコを含むタバコ製品であって、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルを含む、タバコ製品が提供される。一部の実施形態において、ニコチアナ植物由来のタバコを含むタバコ製品であって、ニコチアナ植物は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、タバコ製品が提供される。
【0124】
一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも約40%(例えば、少なくとも約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、本発明のニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して約40%~約90%(例えば、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、もしくは91%、またはそれを上回る割合;あるいはその中にある任意の域または値)低下し得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルまたはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、約0.014%~約0.098%のニコチン含有量を含み得る。
【0125】
一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも約30%(例えば、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、本発明のニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された植物と比較して約40%低下し得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、約0.098%のニコチン含有量を含み得る。
【0126】
一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して少なくとも40%(例えば、少なくとも約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)減少したニコチン性アルカロイド含有量を含み得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、本発明のニコチアナ植物において低下するニコチン性アルカロイドはニコチンであり得、ニコチン含有量は、(A)のみによって改変された植物と比較して約90%(例えば、約90、91、92、93、94、95、96、97%、もしくはそれを上回る割合、またはその中にある任意の域もしくは値)低下し得る。一部の実施形態において、タバコ製品を産生することにおける使用のための、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する本発明のニコチアナ植物は、約0.014%のニコチン含有量を含み得る。
【0127】
ニコチン性アルカロイド含有量を判定するための手順は、当技術分野において周知でありかつルーチンであり、文献を通じて記載される。そのような方法の非限定的な例には、ガスクロマトグラフィー、質量分析(Domino et al.1992 Med Sci Res.20:859-860;Sheen et al.2006 J Food Sci 53(5):1572-1573)、HPLC(Keinanen et al.2001 J Agric Food Chem 49:3553-3558;Halitschke and Baldwin 2003 Plant J 36:794-807)、UV吸収(Willits et al.2005 Analytical Chemistry 22:430-433)等が含まれる。
【0128】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるタバコおよびタバコ製品を産生するのに有用なニコチアナ植物は、さらなる遺伝子改変を含み得る。例えば、ニコチアナ植物は、付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードするポリヌクレオチドの発現の低下をさらに含み得る。一部の実施形態において、付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素には、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、および/またはA622が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0129】
本発明のニコチアナ植物は、付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素の活性を低下させるように、または付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素をコードする核酸の発現を低下させるようにさらに改変され得る。そのような付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素には、付加的なベルベリンブリッジ酵素様ポリペプチド、アスパラギン酸オキシダーゼ、キノリン酸シンターゼ、キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、プトレシンN-メチルトランスフェラーゼ、メチルプトレシンオキシダーゼ、およびA622が含まれるが、これらに限定されない。ゆえに、例えば、ニコチアナ植物は、BBLe、BBLd-1および/もしくはBBLd-2の発現を低下させるように、かつ/またはBBLe、BBLd-1および/もしくはBBLd-2等の付加的なベルベリンブリッジ酵素様ポリペプチドの活性を低下させるようにさらに改変され得る。
【0130】
一部の実施形態において、本発明は、ニコチアナ植物または植物部分におけるニコチン性アルカロイド生合成をプラスに調節する転写因子をコードするポリヌクレオチドの発現を低下させることをさらに含む。ゆえに、一部の実施形態において、ニコチアナ植物または植物部分は、ニコチン性アルカロイド生合成をプラスに調節する転写因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を低下させるようにさらに改変され得る。ニコチン性アルカロイド生合成をプラスに調節する転写因子の非限定的な例には、ERF189、ERF221およびERF32等のERFファミリー転写因子、ならびに/またはNtMYC1およびNtMYC2等のbHLHファミリー転写因子、ならびにCOI1が含まれる。
【0131】
一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物は、ニコチン性アルカロイド生合成をマイナスに調節する転写因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを過剰発現するようにさらに改変され得る。ニコチン性アルカロイド生合成をマイナスに調節する転写因子の非限定的な例にはJAZが含まれる。
【0132】
本明細書において使用するとき、「過剰発現する」、「過剰発現」、「過剰発現した」(および、その文法的変形)は、対照ニコチアナ植物または植物部分における同じ遺伝子産物の産生のレベルを超える、トランスジェニックニコチアナ植物または植物部分における遺伝子産物の産生を指し、トランスジェニックニコチアナ植物または植物部分は、遺伝子産物の産生の増加を付与する組換え核酸構築物で形質転換されており、一方で対照ニコチアナ植物または植物部分は、前記組換え核酸構築物で形質転換されていない。
【0133】
本発明のニコチアナ植物において変更される対象となる付加的なポリヌクレオチドのいずれかの発現は、遺伝子編集を含めた、変異を導入するための公知の任意の手段によって、および/または付加的なニコチン性アルカロイド生合成酵素のいずれか1つもしくは複数をコードする核酸を標的にするように開発された干渉RNAのニコチアナ植物への導入を介して低下し得る。当技術分野において周知であるように、「干渉RNA」とは、遺伝子サイレンシングを引き起こし得るRNAである。本明細書において使用される干渉RNAには、センスRNA、アンチセンスRNA、短い干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ヘアピンRNA(RNA)等を含むがこれらに限定されない、標的ニコチン性アルカロイド生合成核酸の発現を下方調節し得るまたはサイレンシングし得る任意のタイプのRNA分子が含まれる。
【0134】
一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物であって、種子は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、ニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物が提供される。一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物であって、種子は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、ニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物が提供される。一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物であって、種子は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレル、を含み、ニコチアナ植物は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、ニコチアナ植物の種子および種子から産生されるニコチアナ植物が提供される。
【0135】
一部の実施形態において、本発明は、本発明のニコチアナ植物から産生される子孫ニコチアナ植物を提供する。一部の実施形態において、農地において一緒に植え付けられる、本発明の複数のニコチアナ植物を含む農作物がさらに提供される。
【0136】
本発明の付加的な態様は、本発明のニコチアナ植物または植物部分から産生される収穫産物、ならびに前記収穫産物から産生される加工製品を含む。収穫産物は、植物全体または任意の植物部分であり得、前記収穫産物は、本発明の組換え核酸分子/構築物を含む。ゆえに、一部の実施形態において、収穫産物の非限定的な例には、種子、果実、花、またはその一部(例えば、葯、柱頭等)、葉、茎等が含まれる。
【0137】
任意のタバコまたはタバコ製品は、本発明のニコチアナ植物を使用して産生され得る。一部の実施形態において、産生されるタバコには、葉タバコ、細断タバコ、刻みタバコ、挽きタバコ、粉末タバコ、タバコ抽出物、無煙タバコ、湿潤または乾燥スナッフ、パイプタバコ、葉巻タバコ、シガリロタバコ、シガレットタバコ、および/または噛みタバコが含まれ得るが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本発明のタバコを使用して作製されるタバコ製品には、シガリロ、クレテックシガレット、非通気式凹型フィルターシガレット、通気式凹型フィルターシガレット、葉巻、スナッフ、タバコ含有ガム、タバコ含有トローチ、および/または噛みタバコが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0138】
一部の実施形態において、本発明は、タバコ製品であって、製品はブレンドされたタバコ製品であり得る、タバコ製品を提供する。本発明の一部の実施形態において、本発明のタバコ製品は、低下したニコチンタバコ製品であり得る。さらに他の実施形態において、本発明のタバコ製品は、低下したニコチン含有量を有するブレンドされたタバコ製品であり得る。ゆえに、本発明のタバコ製品は、ブレンドされた低下したニコチンタバコ製品であり得る。
【0139】
一部の実施形態において、本発明は、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物またはその植物部分から産生される低下したニコチン性アルカロイドタバコ製品であって、ニコチアナ植物またはその植物部分は、(A)のみによって改変された(例えば、(A)および(B)によって改変されていない)植物と比較して減少したニコチン性アルカロイド含有量を有する、低下したニコチン性アルカロイドタバコ製品を提供する。
【0140】
本発明は、a)第1のタバコを提供するステップ;b)第2のタバコを提供するステップ、ここで、第2のタバコは、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生され;ならびにc)第1のタバコと第2のタバコとがブレンドされたタバコを産生するために、第1のタバコと第2のタバコとをブレンドするステップを含む、ブレンドされたタバコを産生する方法をさらに提供する。一部の実施形態において、第1および第2のタバコは、本発明のニコチアナ植物から産生され得、一部の実施形態において、第1のタバコおよび第2のタバコは、両方とも、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレルにおける、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルにおける変異を含む、異なるニコチアナ植物の種類由来のものである。
【0141】
本発明の他の態様において、ブレンドされた低下したニコチンタバコを産生するための方法であって、a)第1のタバコを提供するステップ;b)第2のタバコを提供するステップ、ここで、第2のタバコは、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生され;ならびにc)第1のタバコと第2のタバコとをブレンドして、前記ブレンドされた低下したニコチンタバコを産生するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態において、第1および第2のタバコは、本発明のニコチアナ植物から産生され得、一部の実施形態において、第1のタバコおよび第2のタバコは、両方とも、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、異なるニコチアナ植物の種類由来のものである。例として、鉄管乾燥処理されたおよび空気乾燥処理されたタバコは、一般的なアメリカブレンドシガレットの構成要素である。ゆえに、本発明の一部の実施形態において、低ニコチン性アルカロイドタバコ製品は、各種類が、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、低ニコチンのバーレー種類と高ニコチンの鉄管乾燥処理された種類とをブレンドし、それによって低アルカロイドタバコ製品の全体的ニコチン性アルカロイド(例えば、ニコチン、アナタビン、ノルニコチン、アナバシン等)含有量を低下させることによって産生され得る。
【0142】
当技術分野において周知であるように、タバコ製品のためのタバコ製剤は、タバコに加えて、製剤の苦味、甘味、酸味、または塩味を変更し得;製剤の感知される乾燥度もしくは湿潤度;または製剤によって呈されるタバコ風味の程度を増強し得る他の構成要素を組み入れ得る。そのような他の構成要素は、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等);天然甘味料(例えば、フルクトース、スクロース、グルコース、マルトース、マンノース、ガラクトース、ラクトース等);人工甘味料(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等)、有機および無機充填剤(例えば、穀物、加工穀物、膨化穀物、マルトデキストリン、デキストロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、とうもろこしデンプン、ラクトース、マンニトール(manitol)、キシリトール、ソルビトール、微粉セルロース等);結合剤(例えば、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の改変セルロースタイプの結合剤、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、デンプンベースの結合剤、アラビアガム、レシチン等);pH調整剤または緩衝化剤(例えば、金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ならびに炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の他のアルカリ金属緩衝剤等);着色剤(例えば、カラメル着色料おとび二酸化チタンを含めた、色素および顔料等);保湿剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール等);防腐剤(例えば、ソルビン酸カリウム等);シロップ(例えば、ハチミツ、異性化糖(high fructose corn syrup)等);崩壊補助剤(例えば、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化とうもろこしデンプン等);抗酸化物質(例えば、アスコルビン酸、ブドウ種子抽出物および油、緑茶抽出物および紅茶抽出物等のポリフェノール含有材料、落花生内果皮(endocarb)、ジャガイモ皮等(Santhosh et al.,Phytomedicine,122:16-220(2005)を参照;参照により本明細書に組み入れられる));ならびに香味剤であり得る。香味剤は、天然または合成であり得、新鮮な、甘い、ハーブの、お菓子の、花の、フルーティーなもの、または香辛料を含むが、これらに限定されない。具体的なタイプの香味には、バニラ、コーヒー、チョコレート、クリーム、ミント、スペアミント、メントール、ペパーミント、ウィンターグリーン、ラベンダー、カルダモン、ナツメグ、シナモン、クローブ、カスカリラ、ビャクダン、ハチミツ、ジャスミン、ショウガ、アニス、セージ、甘草、ブドウ、レモン、オレンジ、リンゴ、モモ、ライム、サクランボ、およびイチゴが含まれるが、これらに限定されない。(Leffingwill et al.,Tobacco Flavoring for Smoking Products,R.J.Reynolds Tobacco Company(1972)を参照されたい)。香味料には、ユーカリを含むがこれに限定されない、湿潤剤、冷却剤、または平滑化剤と見なされる構成要素も含まれ得る。これらの香味は、単独でまたは混成物(例えば、スペアミントおよびメントール、またはオレンジおよびシナモン)で提供され得る。代表的なタイプの構成要素は、Whiteらに対する米国特許第5,387,416号、およびQuinterらに対するPCT出願公開第WO2005/041699号にも記載され、そのそれぞれの関連部分は参照により本明細書に組み入れられる。ゆえに、一部の実施形態において、本発明のタバコ製品は、香味構成要素または香気を含み得る。
【0143】
タバコ製剤中のタバコの量は変動し得る。特定の実施形態において、タバコ製剤中のタバコの量は、乾燥重量ベースで少なくとも約25パーセント~少なくとも約40パーセント(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40乾燥重量%、およびその中にある任意の値または域)である。タバコ製剤中の他の構成要素の量は、好ましくは、乾燥重量ベースで約25パーセント~約40パーセントを超過している。
【0144】
本発明の一部の実施形態において、タバコを使用するヒトにおけるニコチンの量を低減する方法であって、本発明のタバコ製品のいずれかを前記ヒトに提供するステップを含む方法が提供される。
【0145】
本発明のさらに他の態様において、喫煙者のニコチン消費量を低下させる方法であって、(a)低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生されるタバコを含む第1のタバコ製品を前記喫煙者に提供するステップ;(b)低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生されるタバコを含む第2のタバコ製品を前記喫煙者に提供するステップであって、前記第2のタバコ製品は、前記第1のタバコ製品よりも少ないニコチンを含む、ステップ、を含む、方法が提供される。
【0146】
本発明の一部の態様において、喫煙者は、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生されるタバコを含む付加的なタバコ製品であって、前記付加的なタバコ製品は、前記第1または第2のタバコ製品よりも少ないニコチンを含む第3の製品から始まる、逐次的に低下した量のニコチンを含む付加的なタバコ製品を提供され得る。
【0147】
本発明の一部の実施形態において、タバコ使用中止キットであって、タバコ使用中止キットは、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生される本発明の製品のいずれかのタバコ製品から選択されるタバコ製品を含む、タバコ使用中止キットが提供される。
【0148】
一部の実施形態において、本発明は、ニコチンを含む第1のタバコ製品、および第1のタバコ製品における量未満のニコチンの量を含む第2のタバコ製品を含むキットであって、前記第1または第2のタバコ製品は、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生されるタバコ製品を含む、キットを提供する。
【0149】
一部の態様において、本発明は、低下したニコチン性アルカロイド含有量を有し、かつ(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含む、本発明のニコチアナ植物から産生される製品であって、産生される製品は、産業用酵素、医薬品、化粧品構成要素、ヒトおよび家畜食物、食品添加物、ならびに発酵産物からなる群から選択される、製品を提供する。
【0150】
本発明は、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを有する、本発明のニコチアナ植物の産出量および品質を向上させる/増加させるための方法をさらに提供する。一部の実施形態において、本発明のニコチアナ植物の産出量を向上させるための方法は、(a)約90%の発芽の段階で苗に施肥するステップここで、、施肥するステップは施肥灌漑(例えば、点滴灌漑)を通じて行われ、任意で肥料におけるNの濃度は約200ppmであり;(b)プラスチックマルチ処理を適用するステップ、ここで、例えばプラスチックマルチは、施肥灌漑設備(例えば、点滴テープ/チューブ)を被覆するように添加され;ならびに(c)ニコチアナ植物の産出量および品質の増加を提供するために、移植後約4~5週目に、移植後約6~7週目に、および移植後約8~9週目に、苗に約90~120ポンド/エーカーのN総量の割合で窒素を適用するステップを含む。
【0151】
本明細書において使用するとき、ニコチアナ植物および/またはその植物部分(例えば、種子)が生育されている/植え付けられる「基板」とは、種子を発芽させるための、および/またはニコチアナ植物を植え付ける/生育するための任意の媒体を指し、天然土壌、合成土壌、植え付け媒体、土壌なしの媒体(例えば、ミズゴケ、パーライト、バーミキュライト等)、および/またはその任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
【0152】
本明細書において使用される「産出量の増加」とは、標準的なタバコ生育条件(例えば、地表に適用されるおよび後に側面に添加される(例えば、貯蔵される(laid-by))肥料、ならびに別個に供給される水(雨または外部灌漑);プラスチックマルチは、標準的な生育手順の一部ではなく、点滴テープによる施肥灌漑(水+肥料)の使用でもない)の下で生育される同じ植物と比較して、本明細書に記載される改変された条件下で生育された場合に、(A)BBLa、BBLbおよびBBLcの活性を低下させる、または、BBLaをコードする核酸、BBLbをコードする核酸およびBBLcをコードする核酸の発現を低下させる改変、ならびに(B)nic1の劣性アレル、またはnic1の劣性アレルおよびnic2の劣性アレルを含むタバコ植物に対して観察されるバイオマスの増加、葉数の増加、葉面積の増加、および/または柄周の増加を指す。
【0153】
一部の実施形態において、窒素は、施肥灌漑を使用して基板に適用され得る(植え付け前および/または後)。本明細書において使用するとき、「施肥灌漑」とは、肥料が、点滴システムによって灌漑用水の中に組み入れられる肥料適用を指す。施肥灌漑は、灌漑による肥料溶液の均等な分配を提供する。
【0154】
一部の実施形態において、ニコチアナ植物が植え付けられる基板は、雑草生育および水分喪失を低下させるために、ならびに基板の温度をより良好に制御する(例えば、より一定に保ちかつ/または土壌温度を増加させる)ために被覆され得る。一部の実施形態において、被覆は、プラスチック地表被覆シート(例えば、白いプラスチックシート、黒いプラスチックシート)を含むがこれに限定されない、プラスチックマルチ(例えば、地表被覆シート)であり得る。
【0155】
ここで、本発明は、以下の実施例を参照して記載されるであろう。これらの実施例は、特許請求の範囲を本発明に限定することを意図されるわけではなく、むしろある特定の実施形態の例示であることを意図されることが解されるべきである。当業者に思い浮かぶ、例示される方法における任意の変形は、本発明の範囲内に入ることが意図される。
【実施例】
【0156】
[実施例1:BBL-a、BBL-b、およびBBL-cにおける変異(BBL変異(a、b、およびc))を含有する、K326鉄管乾燥処理されたタバコイソ株(isoline)についての評価]
6箇所の圃場環境における8種のK326ホモ接合型BBL変異体株およびそれらに対応する対照についての評価は、BBL遺伝子変異を1つも付加しないことが、ニコチン蓄積を下げる有意な効果を有することを示した(
図1)。BBL-aおよびBBL-bの両方における変異を有する遺伝子型のみが、K326と比較して、ニコチンの有意な(P<0.05)低下を呈した。K326(220)およびK326(222)変異体株は、K326に対する2.69%と比較して、それぞれ0.45および0.38%のニコチンを蓄積した。ニコチンの漸進的減少が、NC95の遺伝学的バックグラウンドにおいて増加する、nic1およびnic2遺伝子座での劣性アレルの数として観察された。三重ホモ接合型変異体株K326(222)におけるニコチンレベルは、鉄管乾燥処理されたタバコ栽培品種NC95のnic1/nic1 nic2/nic2イソ株であるLAFC53に対するものよりも低くなかった。
【0157】
いくらかのわずかに有意な(P<0.05)低下が、単一変異体株においてアナタビンパーセントに関して観察されたが、アナバシンに関しては観察されなかった(
図1)。アナタビンパーセントの極度の低下が、K326(220)およびK326(222)に対して測定された。より控えめであるが依然として有意な低下が、これら2つの遺伝子型に対するアナバシンパーセントに関して見い出された。ニコチンと同様に、アナタビンおよびアナバシン蓄積の漸進的減少が、NC95遺伝学的バックグラウンドにおけるnic1およびnic2遺伝子座での劣性アレルの付加とともに見い出された。ノルニコチンパーセントの有意な(P<0.05)増加が、二重変異体遺伝子型K326(220)およびK326(222)に対して観察された(
図1)。還元糖パーセントの有意な変化は、K326イソ株の間でまたはNC95イソ株の間で見い出されなかった。表2は、本実施例においてアルカロイド蓄積および農学的形質について評価された遺伝子型の要約を提供する。
【0158】
【0159】
[実施例2:BBL変異(a、b、およびc)へのNic1およびNic2遺伝子座における劣性アレルの遺伝子移入、ならびに圃場評価]
本発明は、一部には、誘導性BBL変異とNic1およびNic2遺伝子座における天然に存在する劣性アレルとを組み合わせることが、タバコにおけるニコチン蓄積をさらに下げ得るかどうかを判定することに係る。この目的のために、Nic1およびNic2遺伝子座における劣性アレルを、3種の最も高く発現されるBBL遺伝子ファミリーメンバー(BBL-a、BBL-b、およびBBL-c)に誘導性変異を含む遺伝学的バックグラウンドを有するK326(222)に対して遺伝子移入した。まず、K326(222)を、LAFC53(nic1/nic1 nic2/nic2)とハイブリダイズさせた。その後、以前に記載されるKASPマーカーを使用したBBL-a、BBL-b、およびBBL-c遺伝子座におけるホモ接合型変異体条件についての選択、ならびにAdams et al.(2016)によって記載されるSNPマーカーを使用した劣性nic1およびnic2アレルについての選択を伴う、K326(222)への戻し交配後に、BC2F1子孫を発生させた。bbl-a/bbl-a bbl-b/bbl-b bbl-c/bbl-c Nic1/nic1 Nic2/nic2 BC2F1個体は自家受粉し、三重ホモ接合型bbl変異体BC2F2は、Nic1/Nic1 nic2/nic2、nic1/nic1 Nic2/Nic2、またはnic1/nic1 nic2/nic2のいずれかであることが遺伝子型判定により同定された。そのようなBC2F2植物を自家受粉させてBC2F3ファミリーを産生し、それを、クレイトン、NCの近くの単一の2019年の圃場環境において、ニコチン蓄積についてK326、K326(222)、およびLAFC53との比較で評価した。植物を、ノースカロライナの標準的な鉄管乾燥処理産生慣例に従って管理した。実験設計は、12~37種の間の植物によって表される各遺伝子型を用いた完全にランダム化された設計であった。以前に記載されるように、各植物の最上部2枚の葉を、摘心の21日後に収穫し、空気乾燥処理し、アルカロイドプロファイルについて分析した。
【0160】
[実施例3:Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL変異(a、b、およびc)についてのアルカロイド分析]
図2に示されるように、bbl-a/bbl-a bbl-b/bbl-b bbl-c/bbl-c遺伝学的組み合わせの遺伝子型は、K326遺伝学的バックグラウンドにおけるNic2遺伝子座のみでの劣性アレル(「222 Nic1/Nic1 nic2/nic2」)と組み合わせた場合、概して、より低い、しかし有意にはより低くないアルカロイドレベルを呈した(ノルニコチンを除く)。すべてのアルカロイドの有意な低下(P<0.05)は、Nic1遺伝子座のみでの劣性アレル(「222 nic1/nic1 Nic2/Nic2」)も持つbbl-a/bbl-a bbl-b/bbl-b bbl-c/bbl-c個体に対して観察された(
図2)。最も低いアルカロイドレベルは、Nic1およびNic2遺伝子座の両方での劣性アレルに対してホモ接合型(「222 nic1/nic1 nic2/nic2」)でもあるbbl-a/bbl-a bbl-b/bbl-b bbl-c/bbl-c植物に対して測定された(
図2)。この遺伝子型を有する植物の平均ニコチン含有量は非常に低かった(0.014%)(
図2)。
【0161】
[実施例4:Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL変異(a、b、およびc)を含有する、鉄管乾燥処理されたタバコについての評価]
本技術のニコチアナ植物(K326(222)nic1/nic1 nic2/nic2)を、K326(WT)およびK326(222)植物との比較で、産出量、品質、および乾燥処理された葉の化学的性質について評価した。K326(WT)とともに、4種のK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2株、2つのK326(222)株由来の植物を、3つの複製を有して各株に対しておよそ60~90個の植物の2列で生育し、ノースカロライナの標準的な鉄管乾燥処理産生慣例に従って管理した。公的に入手可能な鉄管乾燥処理されたタバコ物価指数に基づいて、ハンドレッドウェイトあたりの価格($/Cwt)および価格($/A)を算出した。収穫しかつ乾燥処理した後、アルカロイドレベルおよび乾燥処理された葉の等級指数値を測定した。Lewis et al.,PLOS ONE 10,e0117273(2015)によって以前に概説されるように、オーブン乾燥サンプルを挽いて1mmの篩に通し、アルカロイドプロファイル(乾燥重量のパーセンテージとして表現される)について分析した。
【0162】
表3に示されるように、低下したニコチンレベルを有する本技術のニコチアナ植物(K326(222)nic1/nic1 nic2/nic2)は、野生型対照(K326)およびNic1/Nic2対照(K326(222))と比較して、匹敵するまたは向上する乾燥処理された葉の産出量およびUSDA等級指数を維持した。
【0163】
【0164】
[実施例5:Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL変異(a、b、およびc)を含む、圃場生育されたタバコの最適化]
<タバコ苗産生>
BBLabc/nic1-2株に対するタバコ苗産生を、一部の改変を除いて、野生型と同様に実施する。温室は、清潔であり、かつ昆虫および他の害虫に対する餌または棲み処を提供し得る雑草、腐敗した植物物質、残屑、藻類、および任意の他の品目がないことを必要とする。異なる齢および遺伝的特徴の苗に対して、異なる浮き床(float bed)を使用した。浮き床の間に少なくとも1フィートの緩衝材が維持され、頻繁に改修されることを確保する。標準的な苗基板/生育ミックス(例えば、Seedling Pro-Mix)での浮きトレイの充填。発芽が90%に達した時点で、浮き床水を洗い流し、それを、約200ppmの窒素濃度を有する肥料(40-10-20)(N-P-K)と混合された新鮮な水で置き換える。最初のトリミングは、肥料が水に添加された2または3週間後に生じるべきであり、後続のトリミングは、苗の均一性を確保するために定期的に行われるべきである。茎が太くなり、それらが、土壌ラインより上に少なくとも約3インチ生育した時点で、苗は移植の準備ができているべきである。
【0165】
<栽培および収穫>
苗栽培のための土壌組成物は、およそ20%粘土、25%沈泥、および55%砂であるべきである。水はけクラスは、約6.5のpHを有して、中程度から良い水はけであるべきである。施肥灌漑を使用して、移植後約4、6、および8週目での3回の別個の適用期間にわたる他方の半分割を有して、Nの半分を植え付け前として適用する。プラスチックマルチを添加して、施肥灌漑点滴テープまたはチューブを被覆した。施肥灌漑のタイミングは、以下のように植物による3つの期間のN需要を捉えることを意図される。移植後4週目に、植物は「定着」し、総バイオマスの約80%に到達するであろうかつ窒素は植物によって需要が高い状態にあるであろう「急生育」段階に入る。2週間後、植物は、「急生育」段階にあると予想されるであろう。移植後8週目に、植物は、十分に伸長した葉成熟を助け、かつ高いGRI品質に到達するために水およびNが必要になる「開花」に入るであろう。
【0166】
実験を、それぞれが試験される異なる株を含有する3つのブロックを有するランダム化完備型ブロック計画(complete block design)にて組み立てた。地表を回転させ、植え付け前窒素を所定の処理量で適用し、次いでその後に、除草剤および殺菌剤の噴霧が続いた。この噴霧と床への苗の移植との間にプラスチックマルチを適用した。移植の4~5週間後、プラスチック培養(plasticulture)に施肥灌漑した。別の適用を6~7週間後に行い、最終的に、最後の適用は移植の8~9週間後であった。開花段階で、植物を摘心し、吸枝コントロールを噴霧した。BBLabc/nic1-2の組み合わせは、野生型対照とは異なる速度で成熟するという事実により、異なる株を同時または従来のやり方では収穫しなかった。典型的に、野生型タバコ葉は、それらが十分に成熟しかつ熟成した時点で収穫される。成熟した葉は、わずかな黄変および葉脈間の縮みを呈し、未成熟の葉よりも容易に柄が折れて取れる。BBLabc/nic1-2組み合わせ株において、この過程は、野生型株と比較すると、底部の葉で加速され、上部の葉とは異なる。葉の黄変および質感は、正常な野生型とは異なる。収穫量データは、エーカー数概算で推定される内部2つのサンプル列において達成されたバイオマスの測定結果であった。
【0167】
[実施例6:Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL変異(a、b、およびc)の鉄管乾燥処理工程の最適化]
窯に、1回に1つの遺伝学的バックグラウンド由来の新しく収穫された葉を充填した(いっぱいにかつむらなく詰めた)。窯に置かれた葉材料は、できる限り同程度の品質のものであった。アナログ式温度計およびデジタル式センサーを使用して、乾球温度(DBT)および湿球温度(WBT)の軌跡を保った。乾燥処理工程の間、葉をモニターした。初回パラメーターは以下のものであり、一部の改変を有して、Powell 1987(Powell Manufacturing,Co.’s Bulk Curing/Drying Owner’s Operator’s Manual for Flue Cured Tobaccos,Powell Manufacturing,Co.と題されたマニュアル(Jan.20,1987))に基づく。例えば、最大上限温度に達するまで時間あたり1°F増加の割合で、上限温度を104~108°Fまで増加させ、下限温度を92~96°Fまで減少させ、上限温度で約52~58時間の期間保持した。乾燥処理における黄化ステップは、典型的には48時間であるが、本明細書ではこのステップを、温度および葉の色彩の継続的モニタリングを伴って52~58時間に延長した。時間の長さおよび温度の改変は、Nic1および/またはNic2の劣性アレルの導入により生じるより高い含有量のクロロフィル(葉の緑)に起因する。各葉の大多数が黄色になり、かつ緑色のほとんどが葉の葉脈に限られると、黄化相は終わる。
【0168】
次のステップは、「葉乾燥」相である。この相は典型的には約24時間であるが、本明細書では22時間に減らす。葉乾燥に関しては、上限温度(ULT)を120°Fまで上げた。このステップの後、葉はオレンジ色/赤色であった。乾燥処理の最後の相は茎乾燥である。ULTを135°Fまで上げることによって茎乾燥を開始し、葉の完全な乾燥(18%湿気)をもたらした。
【0169】
本技術の方法によって栽培されかつ乾燥処理された場合、本技術の乾燥処理されたタバコ葉(葉、喫煙用の葉、先端、カッター、ラグを含む)は、このニコチアナ植物を用いて劣品質~低品質の葉を産生するタバコ生育(天水を含む)および乾燥処理の標準的手順と比較すると、良好な色彩強度、通常の幅、および均一な質感を有する上品質~良品質の葉の特徴を有する。例えば、本技術の方法によって栽培されかつ乾燥処理されたBBLabc/nic1-2系統は、喫煙用の葉に対する良品質のオレンジ色(H4F)、良品質のレモン色のカッター(C4L)、およびプライミング葉に対する良品質のオレンジ色(P4F)を産生した。一部の実施形態において、概して、本発明の乾燥処理されたタバコ葉は、60を上回るUSDA等級指数を有し得る。したがって、本技術の栽培および乾燥処理法は、超低ニコチンレベルを有する商業的品質の乾燥処理されたタバコ葉を産生するのに有用である。
【0170】
[実施例7:Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL変異(a、b、およびc)を含む、圃場生育されたタバコ植物の最適化]
世界保健機関によって推奨される0.04%の超低ニコチンレベルは、今日入手可能な最低アルカロイドタバコの中に当たり前には観察されない。これまでに、0.04%を下回る超低ニコチンレベルを達成している唯一の公知のタバコ株は、Vector 21-41 GMOの種類である。この種類は、Nic1およびNic2遺伝子座(AおよびBとしても知られる)における劣性アレルの遺伝学的バックグラウンドの下で、タバコ根におけるニコチン生合成に関わる酵素であるキノレートホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の発現を特異的に抑制するアンチセンスRNAを使用して開発された(Xie et al.,2004)。これらの遺伝子座は、1.5~4.5%の間からおよそ0.20~0.45%への、ニコチンおよび関連アルカロイド(例えば、ノルニコチン、アナバシン、およびアナタビン)の大きな低下に寄与することが見い出されている(Legg et al.Can.J.Genet Cytol.13:287-291(1971);Lewis,Nicotine&Tobacco Res.Pages 1-5(2018)doi:10109/ntr/nty022)。
【0171】
彼らが、10種の異なるタバコ遺伝学的バックグラウンドにNic1およびNic2の劣性アレルを遺伝子移入した、Chaplin and Weeks(Crop Sci.16:416-418(1976))による影響力の大きい仕事は、10種の株のうちの7種の産出量が低下したことを示した。さらに、3種の株は、反復親と比較して、ニコチンのいかなる低下も示さなかった。USDA等級指数は、反復親と比較して、乾燥処理された葉の7種の低アルカロイド株に対する乾燥処理された葉のより暗い色彩に起因して、株の7種のうちの3種に対してより低かった。nic1およびnic2遺伝子移入株の3種は、親と等しいまたは親よりも良い等級指数を呈した。それらの株におけるnic1およびnic2劣性アレルの効果を軽減するのを助け得る遺伝学的バックグラウンド構成要素がある可能性がある。加えて、nic1およびnic2遺伝子移入株のほとんどは、反復親と比較して、糖類(7~28%)および窒素含有量(10~25%)の低下を呈した。全般的特徴は、葉が親と比較して外見上より緑色であり、おそらくより高い含有量のクロロフィルを含有したことである。加えて、葉の熟成は正常ではないことが観察された(すなわち、反復親植物と同じではない)。
【0172】
これらの同じ特徴は、BBL変異(a、b、およびc)を含むがより穏やかな発現を有するタバコ植物に遺伝子移入されたnic1およびnic2劣性アレルの組み合わせにおいて観察された。BBL変異(a、b、およびc)を含有する株は、生育条件に応じてより低い産出量(10~30%)およびより低い等級指数(9~16%)を提供する(Lewis et al.,PLOS ONE 10:e0117273(2015));しかしながら、クロロフィル含有量および糖類含有量は影響を受けない。劣性Nic1およびNic2アレルとの組み合わせで(個々にまたは一緒に)BBL変異(a、b、およびc)を含むタバコ植物は、より低いニコチンレベルを提供するが、この組み合わせは、タバコ植物の産出量および葉等級指数にマイナスの影響を及ぼし得る。劣性Nic1およびNic2アレルと組み合わせられた(個々にまたは一緒に)BBLabc変異を含むタバコ株を生育するおよび乾燥処理するための本技術の方法および改変は、これらの株によって産生される葉の産出量および品質にマイナスの影響を与え得る、窒素含有量の低下、糖類含有量の低下、および高いクロロフィル含有量等の問題を緩和することを目指す。ゆえに、本発明のタバコ株(例えば、BBLabc+nic1;BBLabc+nic1およびnic2)との有用であり得る本技術のタバコ栽培および乾燥処理プロトコールは、以下のとおりである:
(a)約90%の苗発芽の段階で、浮き床水を洗い流し、肥料(40-10-20)(N-P-K)と混合された新鮮な水で置き換える。窒素の量は、約200ppmで、標準的な生育条件下よりも高い。苗は、それらの高さが土壌ラインより上に少なくとも約3インチに達した時点で移されるべきである。
(b)施肥灌漑を使用して、移植後約4~5、6~7、および8~9週目での植物生育の特定の期間における3回の別個の適用にわたる他方の半分割を有して、Nのほぼ半分を植え付け前として(例えば点滴テープにより)適用する(43ページ、最後の段落を参照されたい)。施肥するステップは、約90~120ポンド/エーカーのN総量の割合で、主に点滴灌漑を通じて行われる。
(c)温度を上げるのを助けかつ苗生育を向上させるために、プラスチックマルチを使用して、上げられた床を被覆する。
(d)BBLabc/nic1-2株における葉の熟成過程は、タバコにとっては典型的ではない。この場合、該過程は、野生型株と比較すると、底部の葉で加速され、上部の葉とは異なる。摘心の前に追加の窒素を適用する(エーカーあたり約90~120ポンドの割合で)。葉の黄化および質感は、典型的な野生型タバコ葉とは異なる。葉は、それらが緑色~黄色の色彩である時点で収穫されるべきである。
(e)乾燥処理に関しては、より広い温度域およびより長い黄化工程が必要とされることが判定された。ゆえに、下限温度から上限温度まで時間あたり1°F増加の割合で、上限温度を108°Fまで増加させ、下限温度を92°Fまで減少させた。乾燥処理における黄化ステップは、通常48時間である;しかしながら、本明細書ではこのステップを、温度および葉の色彩の継続的モニタリングを有して52~58時間(または、黄化に応じてより多く)に延長した。
【0173】
[実施例8:本技術の方法に従って栽培されかつ乾燥処理される、Nic1およびNic2遺伝子座における種々の劣性アレルを有するBBL(a、b、およびc)変異を含む植物由来のタバコ葉は、標準的方法に従って栽培されかつ乾燥処理される植物由来のタバコ葉と比較した品質の向上によって特徴付けられる]
実施例2に従って調製される、BBLa、b、およびc変異(bbl-a/bbl-a、bbl-b/bbl-b、bbl-c/bbl-c)を含む対照タバコ植物(K326(WT))およびK326(222)タバコ植物、ならびにNic1およびNic2遺伝子座の両方での劣性アレルに対してホモ接合型(nic1/nic1、nic2/nic2)でもある、BBLa、b、およびc変異(bbl-a/bbl-a、bbl-b/bbl-b、bbl-c/bbl-c)を含むK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2タバコ植物を、Powell 1987(Powell Manufacturing,Co.’s Bulk Curing/Drying Owner’s Operator’s Manual for Flue Cured Tobaccos,Powell Manufacturing,Co.と題されたマニュアル(Jan.20,1987))等の当技術分野において公知の標準的工程(「標準的NC」)、または実施例5~7に記載される本技術の方法(「新H」)のいずれかに従って栽培しかつ乾燥処理した。
【0174】
2つの圃場試行を実施した。「標準的NC」および「新H」群の両方からのタバコ植物を、同じ圃場において生育した。個々の遺伝学的バックグラウンドのそれぞれに対するいくつかの株(>10)から葉を収穫した。化学的性質評価のために、乾燥処理された葉の100グラムサンプルを実験室(Global Lab ServicesおよびEnthalpy Analytical)に送ることによって、様々なタバコ品質パラメーターを測定した。
【0175】
<結果>
表4に示されるように、タバコ葉品質を指し示すいくつかのパラメーターを、標準的方法または本技術の方法のいずれかに従って栽培されかつ乾燥処理された対照ならびにK326(222)およびK326(222)nic1/nic1タバコ植物から収穫された葉において測定した。
【0176】
【0177】
全体として、本技術の方法に従って生育されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2タバコ植物由来の葉は、標準的方法に従って生育されかつ乾燥処理された植物由来の葉と比較して、より良い等級、質感、色彩、および高い上品質を有した。表4に示される結果によって実証されるように、本技術の方法に従って生育されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2タバコ植物(すなわち、「新H」法に従って栽培されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2)由来の葉は、標準的方法に従って栽培されかつ乾燥処理された植物(すなわち、「標準的NC」法に従って栽培されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2タバコ植物)由来の葉と比較して、より多くの糖類を含有した。鉄管乾燥処理された種類における糖類レベルは、良好な香味の明るい葉の良好なインジケーターである。加えて、本技術の方法に従って生育されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2株由来の葉は、標準的方法に従って生育されかつ乾燥処理されたK326(222)およびK326(222)nic1/nic1 nic2/nic2株由来の葉と比較して、アンモニアのパーセンテージの低下によって特徴付けられた。アンモニアパーセンテージは、典型的に、タバコにおける異味のインジケーターとして使用される。同様の結果が、総窒素に関して観察された(データ示さず)。アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドについての評価は、有意な差を示さなかった(データ示さず)。
【0178】
したがって、これらの結果は、本技術の栽培および乾燥処理法が、向上した品質および非常に低いニコチンレベルを有する乾燥処理されたタバコ葉を産生するのに有用であることを実証する。
【0179】
前述のものは、本発明の例示であり、その限定として受け取られるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の等価物はその中に含まれるべきである。
【国際調査報告】