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特表2023-509969新規なマスクされたサイトカインおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】新規なマスクされたサイトカインおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20230303BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230303BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230303BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230303BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230303BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230303BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
A61K47/68
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 123
A61P35/00
A61P37/06
A61P37/04
A61P31/00
A61P31/18
A61P31/20
A61P31/14
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P3/10
A61P21/00
A61K38/19
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K38/20
A61K38/21
A61K39/395 M
A61K39/395 B
A61K39/395 J
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C07K14/47
C07K16/28
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542224
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2021013007
(87)【国際公開番号】W WO2021142471
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,973
(32)【優先日】2020-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/027,138
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/029,473
(32)【優先日】2020-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/126,393
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347328
【氏名又は名称】アスクジーン・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AskGene Pharma, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ユエフォン
(72)【発明者】
【氏名】ユィ,チュンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ジエン-フォン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,リーチン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC35
4C076CC42
4C076EE59
4C076FF67
4C076GG50
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA41
4C084BA42
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA14
4C084DA16
4C084DA17
4C084DA18
4C084DA22
4C084DA24
4C084DA25
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA11
4C084NA13
4C084NA15
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB051
4C084ZB081
4C084ZB091
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZB311
4C084ZB331
4C084ZC551
4C085AA25
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085CC05
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
サイトカインプロドラッグおよびその製造方法ならびに免疫系の刺激または処置する癌、自己免疫性疾患または感染性疾患における使用方法がここに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン部分、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、
a)マスキング部分がサイトカイン部分に結合し、サイトカインの生物学的活性を阻害し;
b)担体部分が抗原結合部分を含み、ここで、抗原結合部分は標的細胞の表面に発現される抗原に結合し;そして
c)マスキング部分が担体部分に開裂不可能ペプチドリンカーを介してまたはペプチドリンカーを伴わず直接的にまたは間接的に連結される、
プロドラッグ。
【請求項2】
プロドラッグが、細胞表面に抗原およびサイトカイン部分の受容体両者を発現する細胞により活性化される、所望により、ここで、プロドラッグの生物学的活性が、細胞を含まない部位と比較して、細胞を含む疾患部位で少なくとも2倍、5倍または10倍増加される、請求項1のプロドラッグ。
【請求項3】
サイトカイン部分の受容体が、2以上のサブユニットを含む、請求項1または2のプロドラッグ。
【請求項4】
抗原が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、LAG-3、CD25、CD16a、CD16b、NKG2D、NKP44、NKP30、CD19、CD20、CD30、CD38、BCMAおよびシグナル制御タンパク質アルファ(SIRPアルファ)から選択される、請求項1~3の何れかのプロドラッグ。
【請求項5】
サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチド、IL-21アゴニストポリペプチド、IL-1αアゴニストポリペプチド、IL-1βアゴニストポリペプチド、IL-4アゴニストポリペプチド、IL-5アゴニストポリペプチド、IL-6アゴニストポリペプチド、IL-8アゴニストポリペプチド、IL-10アゴニストポリペプチド、IL-12アゴニストポリペプチド、IL-17アゴニストポリペプチド、IL-18アゴニストポリペプチド、IL-22アゴニストポリペプチド、IL-23アゴニストポリペプチド、IL-31アゴニストポリペプチド、IL-33アゴニストポリペプチド、IL-36アゴニストポリペプチド、インターフェロン-アルファアゴニストポリペプチド、インターフェロンガンマアゴニストポリペプチド、4-1BBリガンド、OX-40リガンドまたはCD-40リガンドを含む、請求項1~4の何れかのプロドラッグ。
【請求項6】
マスキング部分がサイトカインの受容体のECDまたはサイトカインに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、請求項1~5の何れかのプロドラッグ。
【請求項7】
請求項1~6の何れかのプロドラッグであって、
i)サイトカイン部分がIL-7アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-7受容体αの細胞外ドメイン(ECD)(IL-7Rα ECD)またはその機能的アナログを含む、
ii)サイトカイン部分がIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-21受容体αのECD(IL-21Rα ECD)またはその機能的アナログを含む、
iii)サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチドまたはIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-2受容体βのECD(IL-2Rβ ECD)またはその機能的アナログを含む、
iv)サイトカイン部分がIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-21に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体を含む、
v)サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-2に対するscFvまたは単一ドメイン抗体を含む、
vi)サイトカイン部分がIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-15に対するscFvまたは単一ドメイン抗体を含むまたは
vii)サイトカイン部分がIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-15受容体αのスシドメイン(IL-15Rαスシドメイン)を含む、
プロドラッグ。
【請求項8】
サイトカイン部分が配列番号6または62またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-2アゴニストポリペプチドを含む、請求項5~7の何れかのプロドラッグ。
【請求項9】
サイトカイン部分が配列番号7またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-15アゴニストポリペプチドを含む、請求項5~7の何れかのプロドラッグ。
【請求項10】
サイトカイン部分がIL-2またはIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-2Rβ ECDまたはその機能的アナログを含む、所望により、ここで、IL-2-Rβ ECDが配列番号11またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項5~9の何れかのプロドラッグ。
【請求項11】
サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-2に対するscFvを含み、所望によりIL-2サイトカイン部分とIL-2Rα、IL-2RβおよびIL-2Rγの1以上の間の相互作用を阻害または妨害し、所望により、ここで、scFvが
抗体4E12B2D10、抗IL-2 scFv1または抗IL-2 scFv2のHCDR1~3およびLCDR1~3または重鎖および軽鎖可変ドメインまたは
配列番号22、配列番号23または配列番号60および61またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列
を含む、請求項5~9の何れかのプロドラッグ。
【請求項12】
サイトカイン部分がIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-15に対するscFvを含み、所望によりIL-15サイトカイン部分とIL-15Rα、IL-2RβおよびIL-2Rγの1以上の間の相互作用を阻害または妨害し、所望により、ここで、scFvが
抗体146B7、抗IL-15 scFv1または抗IL-15 scFv2のHCDR1~3およびLCDR1~3または重鎖および軽鎖可変ドメインまたは
配列番号18、配列番号19または配列番号83および84またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列
を含む、請求項5~9の何れかのプロドラッグ。
【請求項13】
サイトカイン部分が配列番号1~5の何れかまたはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-21アゴニストポリペプチドを含む、請求項5~7の何れかのプロドラッグ。
【請求項14】
サイトカイン部分がIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がIL-21Rα ECDまたはその機能的アナログまたはIL-21Rγ ECDまたはその機能的アナログを含み、所望により、ここで、マスキング部分が配列番号12、13または配列番号63~73の何れかまたはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項5~7または13の何れかのプロドラッグ。
【請求項15】
サイトカイン部分がIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分がヒトIL-21に対するscFvを含み、所望によりIL-21サイトカイン部分とIL-21Rαおよび/またはIL-21Rγの間の相互作用を阻害または妨害し、所望により、ここで、scFvが
抗IL-21 scFv1または抗IL-21 scFv2のHCDR1~3およびLCDR1~3または重鎖および軽鎖可変ドメインまたは
配列番号20または21またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列
を含む、請求項5~7または13の何れかのプロドラッグ。
【請求項16】
マスキング部分が
IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインに対するscFvを含み、所望によりサイトカインとIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害するまたは
IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21から選択されるサイトカインの受容体αまたはγのECDを含む、
請求項1~15の何れかのプロドラッグ。
【請求項17】
プロドラッグが、抗PD-1抗体部分、ここで、抗体部分が配列番号44を含む2個の軽鎖およびそれぞれ
配列番号24および25、
配列番号24および26または74,
配列番号35および36、
配列番号37および36、
配列番号37および38または75、
配列番号39および41または74または
配列番号42および43または74
を含む2個の重鎖
を含む、請求項1~16の何れかのプロドラッグ。
【請求項18】
プロドラッグが、抗CTLA4抗体部分、ここで、抗体部分が配列番号50を含む2個の軽鎖およびそれぞれ
配列番号51および54、
配列番号51および55、
配列番号51および56、
配列番号52および54、
配列番号53および58、
配列番号53および59または
配列番号52および57
を含む2個の重鎖
を含む、請求項1~17の何れかのプロドラッグ。
【請求項19】
請求項1~18の何れかのプロドラッグおよび薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~18の何れかのプロドラッグをコードする、1以上のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20の1以上のポリヌクレオチドを含む、1以上の発現ベクター。
【請求項22】
請求項21のベクターを含む、宿主細胞であって、所望により、哺乳動物細胞である、宿主細胞。
【請求項23】
請求項1~18の何れかのプロドラッグを製造する方法であって、
a)哺乳動物細胞である請求項22の宿主細胞を、プロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し;そして
b)プロドラッグを細胞培養物から単離する
ことを含む、方法。
【請求項24】
処置を必要とする患者における癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、患者に治療有効量の請求項1~18の何れかのプロドラッグまたは請求項19の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項25】
処置を必要とする患者における、癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激に使用するための、請求項1~18の何れかのプロドラッグまたは請求項19の医薬組成物。
【請求項26】
処置を必要とする患者における、癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造のための、請求項1~18の何れかのプロドラッグの使用。
【請求項27】
患者が
HIV、HBV、HCVまたはHPV感染、
ループス、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、GvHDまたは関節リウマチから選択される自己免疫性疾患または
乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌または胃癌からなる群から選択される癌
を有する、請求項24の方法、請求項25の使用のためのプロドラッグまたは医薬組成物または請求項26の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月11日出願の米国仮出願62/959,973;2020年5月19日出願の米国仮出願63/027,138;2020年5月23日出願の米国仮出願63/029,473;および2020年12月16日出願の米国仮出願63/126,393も基づく優先権を主張する。前記優先権主張出願の開示を、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提供しており、引用により全体として本明細書に包含させる配列表を含む。該ASCIIコピーは2021年1月11日に作成し、025471_WO008_SL.txtなる名称であり、240,322バイトサイズである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21は、免疫細胞の増殖、分化および生存に重要な役割を演ずる。これらサイトカインの受容体は、CD132としても知られる共通のγ鎖(γC)を共有する。故に、これらサイトカインは、共通γCファミリーサイトカインとも称される。
【0004】
IL-2は、リンパ球発生、生存および恒常性に中心的役割を演ずる。133アミノ酸を有し、その機能に必須の四次構造を形成する4個の逆平行、両親媒性アルファらせんからなる(Smith, Science (1988) 240:1169-76; Bazan, Science (1992) 257:410-13)。IL-2は、3個までの個別のサブユニットからなるIL-2受容体(IL-2R)への結合により、その活性を発揮する。α(CD25またはTac抗原)、β(CD122)およびγCサブユニットの結合は、IL-2に対する三量体性、高親和性受容体をもたらす(K 約0.01nM)。βおよびγサブユニットからなる二量体IL-2受容体は、中間親和性IL-2Rと称される(K 約1nM)。αサブユニット単独は、単量体低親和性IL-2受容体を形成する(K 約10nM)。例えば、Kim et al., Cytokine Growth Factor Rev. (2006) 17:349-66参照。二量体中間親和性IL-2受容体は、三量体高親和性受容体より約100倍低い親和性でIL-2に結合するが、二量体および三量体IL-2受容体は、IL-2結合によりシグナルを伝達できる(Minami et al., Annu Rev Immunol. (1993) 11:245-68)。
【0005】
IL-15は、IL-2と構造が類似するサイトカインである。IL-15は、ウイルス感染後単核食細胞および他の免疫細胞により分泌される。IL-15は、ナチュラルキラー(NK)および免疫系の他の細胞の増殖を誘導し、ウイルス感染細胞および癌細胞の殺滅に関与する。IL-2と同様、IL-15は、中間親和性受容体であるIL-2受容体(IL-2R)β/γ複合体に、約1nMのKで結合する(Giri et al., EMBO J. (1994) 13:2822-30)。IL-15は、遥かに高い親和性でIL-15受容体(IL-15R)αに結合する(K 約0.05nM)。IL-15RαはIL-2Rβ/γ複合体と結合して、IL-15特異的、機能的高親和性(αβγ)受容体を形成できる((Minami et al., Annu. Rev. Immunol. (1993) 11:245-67; Giri et al., J Leukoc Biol. (1995) 5745:763-6; and Lehours et al., Eur Cytokine Netw. (2000) 11:207-15)。
【0006】
IL-21は、活性化CD4 T細胞、T濾胞性ヘルパー細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞により産生される(Spolski and Leonard, Ann Rev Immunol. (2008) 26:57008)。IL-21は、種々のクラスのリンパ系細胞の増殖、分化および細胞毒性に多面的効果を発揮することが示されている。もっと最近では、IL-21は、CD4 T細胞の、炎症状態および自己免疫性疾患の進展と関連するT細胞のサブセットであるT-ヘルパー17(TH17)細胞への分化に重要な役割を演ずることが示されている(Korn et al., Nature (2007) 448(7152):484-87; Nurieva et al., Nature (2007) 448(7152):480-83)。IL-21の受容体複合体は、専用鎖IL-21Rαおよび共通鎖γC(またはRγ)からなる。ヒトIL-21は、IL-21Rαに極めて高い親和性で結合し(K 約70pM; Zhang et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 300(2):291-6)、一方IL-21Rγへの結合は比較的低親和性である(K 約160μM)。
【0007】
上記サイトカイン、そのムテインおよび融合タンパク質は、治療剤としての可能性について探索されており、組み換えIL-2は、癌治療について承認された初めてのサイトカインである。しかしながら、これらのサイトカイン薬物および薬物候補は、相当な副作用を有する。さらに、それらのインビボ半減期は、抗体-サイトカイン融合分子として存在するときでさえ、おそらく免疫細胞上のサイトカインの受容体により形成される「PK沈降」のため、しばしば短い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
故に、より腫瘍部位選択的であり、PKおよび有効性が改善され、同時に引き起こされる副作用が少ない、サイトカインベースの癌治療を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、サイトカイン部分、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がサイトカイン部分に結合し、サイトカインの生物学的活性を阻害し;担体部分が標的細胞表面に発現される抗原に結合する抗原結合部分を含み;およびマスキング部分が開裂可能ペプチドリンカーを伴わず担体部分に連結される(例えば、開裂不可能ペプチドリンカーを介して担体部分に間接的に連結;またはペプチドリンカーを伴わず直接連結)を提供する。
【0010】
ある実施態様において、プロドラッグは、細胞表面に抗原およびサイトカイン部分の受容体両者を発現する細胞により活性化される。ある実施態様において、プロドラッグの生物学的活性は、細胞を含まない部位と比較して、細胞を含む疾患部位で少なくとも2倍、5倍または10倍増加される。具体的実施態様において、サイトカイン部分の受容体は、2以上のサブユニットを含む。
【0011】
ある実施態様において、抗原は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、LAG-3、CD25、CD16a、CD16b、NKG2D、NKP44、NKP30、CD19、CD20、CD30、CD38、BCMAおよびシグナル制御タンパク質アルファ(SIRPアルファ、命名CD172a)から選択される。
【0012】
ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチド、IL-21アゴニストポリペプチド、IL-1αアゴニストポリペプチド、IL-1βアゴニストポリペプチド、IL-4アゴニストポリペプチド、IL-5アゴニストポリペプチド、IL-6アゴニストポリペプチド、IL-8アゴニストポリペプチド、IL-10アゴニストポリペプチド、IL-12アゴニストポリペプチド、IL-17アゴニストポリペプチド、IL-18アゴニストポリペプチド、IL-22アゴニストポリペプチド、IL-23アゴニストポリペプチド、IL-31アゴニストポリペプチド、IL-33アゴニストポリペプチド、IL-36アゴニストポリペプチド、インターフェロン-アルファアゴニストポリペプチド、インターフェロンガンマアゴニストポリペプチド、4-1BBリガンド、OX-40リガンドまたはCD-40リガンドを含む。
【0013】
ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-2アゴニストポリペプチドまたはIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-2受容体βのECD(IL-2Rβ ECD)またはその機能的フラグメントを含む。さらなる実施態様において、サイトカイン部分はIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-21に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体を含む。他の実施態様において、サイトカイン部分はIL-2アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-2に対するscFvまたは単一ドメイン抗体を含む。さらなる実施態様において、サイトカイン部分はIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-15に対するscFvまたは単一ドメイン抗体を含む。他の実施態様において、サイトカイン部分はIL-15アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-15受容体αのスシドメイン(IL-15Rαスシドメイン)を含む。
【0014】
ある実施態様において、サイトカイン部分は配列番号1またはそれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むIL-21アゴニストポリペプチドを含む。他の実施態様において、サイトカイン部分は配列番号6または62またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-2アゴニストポリペプチドを含む。他の実施態様において、サイトカイン部分は配列番号7またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-15アゴニストポリペプチドを含む。
【0015】
ある実施態様において、マスキング部分はサイトカインの受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含む。具体的実施態様において、サイトカイン部分はIL-7アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分はIL-7受容体αのECD(IL-7Rα ECD)またはその機能的アナログを含む。具体的実施態様において、サイトカイン部分はIL-21アゴニストポリペプチドであり、マスキング部分はIL-21受容体αのECD(IL-21Rα ECD)またはその機能的アナログを含む。具体的実施態様において、マスキング部分は配列番号12、13および63~73またはそれと少なくとも90%(例えば、少なくとも95%)同一のものから選択されるアミノ酸配列を含むIL-21Rα ECDまたはその機能的アナログを含む。ある実施態様において、マスキング部分は配列番号11またはそれと少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むIL-2Rβ ECDまたはその機能的アナログを含む。
【0016】
ある実施態様において、マスキング部分はサイトカイン部分に結合し、サイトカイン部分とその受容体の間の相互作用を阻害または妨害するscFvを含む。具体的実施態様において、マスキング部分は、ヒトIL-21と結合し、配列番号20または21のアミノ酸配列を含むscFvである。具体的実施態様において、マスキング部分は、IL-2と結合し、IL-2とIL-2Rαの相互作用、IL-2とIL-2Rβの相互作用および/またはIL-2とIL-2Rγの相互作用を阻害または妨害するscFvを含み、所望により、ここで、scFvは抗体4E12B2D10の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。ある実施態様において、scFvは抗体4E12B2D10の重鎖および軽鎖を含む。具体的実施態様において、4E12B2D10の重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号60および61を含む。ある実施態様において、マスキング部分は、IL-2と結合し、配列番号22または23または配列番号22または23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むscFvである。具体的実施態様において、マスキング部分はIL-15に結合し、IL-15とIL-2Rβの相互作用および/またはIL-15とIL-2Rγの相互作用を阻害または妨害するscFvを含み、所望により、ここで、scFvは抗IL-15抗体146B7、146H5または404E4の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含みまたは所望により、ここで、scFvは抗IL-15抗体146B7、146H5または404E4の重鎖および軽鎖を含みまたは所望により、ここで、scFvは配列番号18または19を含む。ある実施態様において、scFvまたはFab IL-15アンタゴニストは146B7、146H5および404E4から選択される抗IL-15抗体の重鎖CDR1~3;および146B7、146H5および404E4から選択される抗IL-15抗体の軽鎖CDR1~3を含み、その全てWO2003/017935A2に記載される。
【0017】
具体的実施態様において、マスキング部分は、IL-21に結合し、IL-21とIL-21Rαの間の相互作用および/またはIL-21とIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害するscFvを含む。具体的実施態様において、マスキング部分は、IL-2、IL-7、IL-9、IL-15またはIL-21から選択されるサイトカインに結合し、サイトカインとIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害するscFvを含む。
【0018】
ある実施態様において、プロドラッグは、対応する野生型サイトカインより少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍または少なくとも200倍長い、非ヒト霊長類またはヒトにおける半減期を有する。
【0019】
具体的実施態様において、プロドラッグは、配列番号44のアミノ酸配列を有する2個の軽鎖およびアミノ酸配列がそれぞれ配列番号24および25;配列番号35および36;配列番号37および36;配列番号37および38;配列番号39および41;または配列番号42および43を含む2個の重鎖ポリペプチド鎖を含む。
【0020】
具体的実施態様において、プロドラッグは、配列番号50のアミノ酸配列を有する2個の軽鎖およびアミノ酸配列がそれぞれ配列番号51および54;配列番号51および55;配列番号51および56;配列番号52および54;配列番号53および58;配列番号53および59;または配列番号52および57を含む2個の重鎖ポリペプチド鎖を含む。
【0021】
ある実施態様において、本発明は、本発明のプロドラッグおよび薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物を提供する。
【0022】
ある態様において、本発明は、本プロドラッグをコードする1以上のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび発現ベクターを含む宿主細胞(例えば、CHO、NS0細胞および293T細胞などの哺乳動物宿主細胞)を提供する。本発明はまた本プロドラッグを製造する方法であって、プロドラッグの発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養し、プロドラッグを単離(精製も)することを含む、方法も提供する。
【0023】
FcベースのIL-21プロドラッグ分子はIL-21受容体を発現するMino細胞などの細胞と結合できず(図2)、サイトカイン部分がマスクされたことが確認された。担体としてPD-1抗体を有するマスクされた分子が、PD-1を発現しないNK92細胞に最小活性を有することも示された(図3)。PD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグ分子が、活性化前のMino細胞に意義ある活性を有することは発明者らにとって驚きであった(図4Aおよび4B)。同様のことがIL-2プロドラッグ(図6Aおよび6B)およびIL-15プロドラッグ(図5A~C)で観察された。何らかの理論に拘束されることを意図しないが、抗原およびサイトカイン受容体両者が同じ細胞に発現されているときの、PD-1抗体の抗原へのおよびサイトカイン部分のサイトカイン受容体へのそれぞれのシス結合が、マスキング部分のマスキング効果の取り消しに至ると仮設だてられる。したがって、ターゲティング部分を有するプロドラッグが、担体部分により標的とされる抗原を発現する細胞への、抗原を有しないものを超える有意な選択性を提供することが提唱される。驚くべきことに、マスキング部分のプロテアーゼ切断または除去の必要なく、プロドラッグを構築することができる。
【0024】
本発明は、マスキング部分のプロテアーゼ切断または除去の必要なく、疾患部位で選択的に活性化され得るプロドラッグを提供する。ある態様において、本発明は、サイトカイン部分(サイトカインアゴニストポリペプチド)、マスキング部分および担体部分を含む新規サイトカインプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がサイトカインアゴニストポリペプチドに結合し、サイトカインの意図される生物学的活性を阻害し;担体部分が抗原結合部分を含み;マスキング部分が担体部分に開裂不可能ペプチドリンカーを介してまたはペプチドリンカーを伴わず直接的にまたは間接的に連結され;そして、ここで、プロドラッグの活性が、担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞の刺激について、サイトカインの受容体を発現するが、担体部分により標的とされる抗原を発現しない細胞を刺激する活性より高い、プロドラッグを提供する。
【0025】
ある態様において、本発明は、サイトカイン部分(サイトカインアゴニストポリペプチド)、マスキング部分および担体部分を含む新規サイトカインプロドラッグであって、ここで、マスキング部分がサイトカインアゴニストポリペプチドに結合し、サイトカインの意図される生物学的活性を阻害し;担体部分が抗原結合部分を含み;マスキング部分が担体部分に開裂不可能ペプチドリンカーを介してまたはペプチドリンカーを伴わず直接的にまたは間接的に連結され;そして、ここで、プロドラッグが担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞が存在する疾患部位で活性化されるまたはプロドラッグの生物学的活性が担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞が存在する疾患部位で少なくとも2倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍増加する、プロドラッグを提供する。
【0026】
ある実施態様において、プロドラッグは、如何なる開裂可能ペプチドリンカーも含まない。
【0027】
ある実施態様において、担体部分が抗原結合部分を含み、ここで、抗原は免疫細胞に発現される。ある実施態様において、担体部分が抗原結合部分を含み、ここで、抗原は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、LAG-3、CD25、CD16aおよびCD16bから選択される。
【0028】
ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチドおよびIL-21アゴニストポリペプチドから選択されるサイトカインを含む。ある実施態様において、サイトカインは、IL-1αアゴニストポリペプチド、IL-1βアゴニストポリペプチド、IL-4アゴニストポリペプチド、IL-5アゴニストポリペプチド、IL-6アゴニストポリペプチド、IL-8アゴニストポリペプチド、IL-10アゴニストポリペプチド、IL-12アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチド、IL-17アゴニストポリペプチド、IL-18アゴニストポリペプチド、IL-22アゴニストポリペプチド、IL-23アゴニストポリペプチド、IL-31アゴニストポリペプチド、IL-33アゴニストポリペプチド、IL-36アゴニストポリペプチド、インターフェロン-アルファアゴニストポリペプチド、インターフェロンガンマ、4-1BBリガンド、OX-40リガンド、CD-40リガンドから選択される。
【0029】
ある実施態様において、マスキング部分はサイトカインの受容体の細胞外ドメイン(ECD)である。ある実施態様において、マスキング部分はサイトカインに対する抗体または抗体の結合フラグメントを含む。
【0030】
ある実施態様において、サイトカインはIL-21アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分はIL-21受容体αの細胞外ドメイン(IL-21Rα ECD)またはその機能的アナログである。ある実施態様において、サイトカインはIL-2アゴニストポリペプチドまたはIL-15アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分はIL-2受容体βの細胞外ドメイン(IL-2Rβ ECD)である。ある実施態様において、サイトカインはIL-21アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分はIL-21に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である。
【0031】
ある実施態様において、サイトカインはIL-2アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分はIL-2に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である。
【0032】
ある実施態様において、サイトカインはIL-15アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分はIL-15に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である。ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-15アゴニストポリペプチドを含み、ここで、キメラ分子はさらにIL-15受容体αのスシドメイン(IL-15Rαスシドメイン)を含む。
【0033】
ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドは、配列番号1のまたは配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-21Rα-ECDまたはその機能的アナログであり、それは配列番号12、63~72および73から選択されるまたは配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はヒトIL-21に結合するscFvであり;そして、ここで、scFvは配列番号20または21のアミノ酸配列を含む。
【0034】
ある実施態様において、IL-2アゴニストポリペプチドは、配列番号6または61のまたは配列番号6または61と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2Rβ-ECDまたはその機能的アナログを含み;、ここで、IL-2-Rβ-ECDは配列番号11のまたは配列番号11と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvはIL-2とIL-2Rαの相互作用を妨害する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvはIL-2とIL-2Rβの相互作用を妨害する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvはIL-2とIL-2Rγの相互作用を妨害する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvは、ハイブリドーマ4E12B2D10と同じ重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvは配列番号22、23のまたは配列番号22、23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0035】
ある実施態様において、IL-15アゴニストポリペプチドは、配列番号7のまたは配列番号7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、IL-15プロドラッグはスシドメインをさらに含み、それは配列番号8のまたは配列番号8と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2Rβ-ECDまたはその機能的アナログを含み;、ここで、IL-2-Rβ-ECDは配列番号11のまたは配列番号11と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvはIL-15とIL-2Rβの相互作用を妨害する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvはIL-15とIL-2Rγの相互作用を妨害する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvは、IL-15抗体146B7、146H5または404E4と同じ重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvは配列番号18または19のアミノ酸配列を含む。
【0036】
ある実施態様において、ヒトIL-21アゴニストポリペプチドは、D18、Q19、E109およびK117から選択される位置の1か所(配列番号1によるナンバリング)に変異を含む。具体的実施態様において、ヒトIL-21アゴニストポリペプチドは、配列番号1、2、3、4および5から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
本プロドラッグのある実施態様において、サイトカイン部分およびマスキング部分は、配列番号27~34から選択されるものなどの開裂不可能ペプチドリンカーを介して担体部分に融合される。
【0038】
本プロドラッグのある実施態様において、担体部分は変異L234AおよびL235A(「LALA」)を含むIgG1抗体(EUナンバリング)または変異228P/L234A/L235A(PAA)を含むIgG4抗体である。Tam et al., Antibodies (2017) 6(12):1-34により記載されているような、Fc機能性を低減させる他の変異も、Fcドメインまたは抗体のFcが担体部分として使用されるとき、導入され得る。
【0039】
具体的実施態様において、担体部分はノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体であり、ここで、サイトカイン部分およびマスキング部分は抗体の異なる重鎖に融合される。ある実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異は、Fcドメインのポリペプチド鎖または抗体の重鎖にT366Y「ノブ」変異およびFcドメインの他方のポリペプチドまたは抗体の他方の重鎖にY407T「ホール」変異を含む(EUナンバリング)。ある実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349Cおよび/またはT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含む(EUナンバリング)。
【0040】
ある実施態様において、担体部分は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、炭水化物抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、癌胎児性抗原(CEA)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、PD1、クローディン18.2、クローディン6、5T4、BCMA、PD-L1、PD-1、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPアルファ)、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)および上皮細胞接着分子(EPCAM)から選択される1以上の抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。具体的実施態様において、担体部分はFAPアルファまたは5T4に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントである。
【0041】
他の態様において、本発明は、本プロドラッグまたは融合分子をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび発現ベクターを含む宿主細胞(例えば、CHO、NS0細胞および293T細胞などの哺乳動物宿主細胞)を提供する。本発明はまた本プロドラッグまたは融合分子を製造する方法であって、哺乳動物宿主細胞を、プロドラッグまたは融合分子の発現を可能とする条件下で培養し、プロドラッグまたは融合分子を単離することを含む、方法も提供する。
【0042】
本発明はまた、処置を必要とする患者(例えば、ヒト患者)における癌もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、患者に治療有効量の本発明のサイトカインプロドラッグまたは医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。患者は、例えば、ウイルス感染(例えば、HIV、HBV、HCVまたはHPV感染)または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有し得る。またここに提供されるのは、本方法における癌もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激に使用するためのサイトカインプロドラッグ;本方法における癌もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造のための、サイトカインプロドラッグの使用;および本サイトカインプロドラッグを1投与単位以上含む、製品(例えば、キット)である。
【0043】
またここに提供されるのは、本方法における癌もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激に使用するためのプロドラッグ;本方法における癌もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造のためのプロドラッグの使用;および本プロドラッグを1投与単位以上含む、製品(例えば、キット)である。
【0044】
本発明の他の特性、目的および利点は、次の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、詳細な記載は本発明の実施態様および態様を示すが、単なる説明として提供され、限定ではないことは理解されるべきである。本発明の範囲内の種々の変更および修飾が、詳細な記載から当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1A~Eは、担体が抗体であるヘテロ二量体サイトカインプロドラッグを示す。図1Aは、担体が2個の軽鎖および2個の重鎖を有する典型的抗体である、プロドラッグを説明する。図1Bは、担体として二特異的抗体を有するプロドラッグを記載し、ここで、各抗原結合部分はFabドメインを含む一つの抗原結合部分およびscFvを含む第二の抗原結合部分を有する単量体または単一ドメイン抗体である。図1Cは、担体として二特異的抗体を有するプロドラッグを示し、ここで、各抗原結合部分は二量体である。図1Dは、ポリペプチド鎖の一方でFabドメインおよびポリペプチド鎖の他方でサイトカインペプチドに融合した二量体Fcドメインを有するプロドラッグを示す。サイトカインは、N末端を介してマスキング部分に融合される。図1E illustrates ポリペプチド鎖の一方でFabドメインおよびポリペプチド鎖の他方でサイトカインペプチドに融合した二量体Fcドメインを有するプロドラッグ。マスキング部分は、N末端を介してサイトカインペプチドに融合される。
【0046】
図2図2は、PD-1抗体およびFc-IL-21融合分子および対照分子のMino細胞への結合を示す。結合はFACSにより分析した。
【0047】
図3図3は、プロテアーゼMMP2および対照分子による活性化前後のIL-21プロドラッグのNK-92細胞ベースの生物学的活性アッセイの結果を示す。PW04-38 αPD1-IL21-a*およびPW09-16 αPD1-IL21-a*マスキング部分としてIL-21R α-ECDを有する抗PD-1抗体ベースのIL-21である同じ分子の2バッチである;PW05-68 αPD1-IL21-scFvはマスキング部分としてscFvを有するPD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグである。第一の対照分子PW04-67 αPD1-IL21no マスクは、マスクがなく、野生型IL-21を有する抗PD-1抗体-IL-21融合分子である。他の対照分子、PW09-02 αPD1-IL21ムテインR9ER76Aは、マスクがなく、R9EおよびR76Aアミノ酸置換を有するIL-21ムテインを有する抗PD-1抗体-IL-21融合分子である(配列番号1によるナンバリング)。PW04-38 αPD1-IL21-a*活性化およびPW09-16 αPD1-IL21-a*活性化は、いずれもマスクがプロテアーゼにより開裂されている、抗PD-1抗体-IL-21野生型融合分子である。
【0048】
図4図4Aおよび4Bは、PD-1-プロテアーゼMMP2および対照分子による活性化前後のIL-21プロドラッグのMino細胞ベースの生物学的活性アッセイの結果を示す。図4Aは、分析前にサイトカイン融合分子とMino細胞を72時間インキュベーションした後の結果を示す。図4Bは、分析前に120時間インキュベーション後の結果を示す。
【0049】
図5図5A、5Bおよび5Cは、抗PD-1抗体(PD-1)、scFvでマスクされたFc-IL-15融合分子(215β)、scFvでマスクされた抗PD1-抗体-IL-15融合分子(215γ)、マスクがないFc-IL-15融合分子(215β ref)およびマスクがないPD1-抗体-IL-15融合分子(PD1/IL15ムテイン(M2))で処理後のPBMCにおけるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Aは、PD-1発現がないCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Bは、PD-1発現があるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Cは、PD-1発現がないおよびあるCD4 T細胞での試験品のEC50値を示す。PD-1発現がないおよびあるCD4 T細胞間でのEC50値の変化倍率も示す。
【0050】
図6図6Aおよび6Bは、抗PD-1抗体(PD-1)、陰性対照(IgG1抗体)およびIL-2受容体β細胞外ドメインでマスクされた抗PD1-抗体-IL-2ムテイン融合体(IL-2Rβ-ECD)(PD-1/IL2V*)で処理後のPBMCにおけるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図6Aは、PD-1発現がないCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図6Bは、PD-1発現があるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。
【0051】
図7図7は、「シス結合」を介するプロドラッグ活性化の新規機構を示す。標的細胞(右)は、担体部分により標的とされる抗原およびサイトカイン部分の受容体両者を発現する。プロドラッグの細胞表面の抗原への結合は、プロドラッグを細胞のサイトカイン受容体に近づけ、サイトカイン受容体がマスキング部分と効率的に競合し、置き換わり、結合したサイトカイン受容体による細胞シグナル伝達に至ることを可能とする。マスクを外し、プロドラッグを活性化するためにマスキング部分のプロテアーゼ切断は必要ではない。サイトカイン受容体を発現するが、抗原は発現しない細胞で(左)、プロドラッグのサイトカイン部分は、マスクされ、不活性なままである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な記載
ここでおよび添付する特許請求の範囲で使用される単数表現は、文脈が明確に異なる指示をしない限り、複数表現を含む。
【0053】
ここでの「約」を付した数値またはパラメータは、その数値またはパラメータ自体を含む(および記載する)。例えば、「約X」なる記載は、「X」を含む。さらに、何らかの一連の数値の前の「約」の使用は、その一連の数値各々の「約」を含む。例えば、「約X、YまたはZ」なる記載は、「約X、約Yまたは約Z」を意味する。
【0054】
用語「抗原結合部分」は、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、二重特異的または二特異的抗体、抗イディオタイプ抗体または二機能性ハイブリッド抗体)またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)または二重特異性抗体、一本鎖抗体およびイムノアドヘシンなどのFc含有ポリペプチド)を含むが、これらに限定されない抗原に結合するポリペプチドまたは一組の相互作用ポリペプチドをいう。ある実施態様において、抗体は、あらゆる重鎖アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)またはサブタイプ(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)であり得る。ある実施態様において、抗体は、あらゆる軽鎖アイソタイプ(例えば、カッパまたはラムダ)であり得る。抗体は、ヒト、非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギまたは他の非ヒト動物由来)、キメラ(例えば、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を有する)またはヒト化(例えば、非ヒトCDRおよびヒトフレームワークおよび定常領域を有する)であり得る。ある実施態様において、抗体は、誘導体化抗体である。
【0055】
ここで使用する、2分子間の相互作用下における用語「に対する」、「に結合する」または「に特異的に結合する」は、当分野における一般的方法(例えば、表面プラズモン共鳴、ELISAなど)により測定して、結合が1000nMを超えない(例えば、100nM、10nMまたは1nMを超えない;例えば1nM、1~10nM、10~100nMまたは100~1000nM未満)Kを有することを意図する。
【0056】
用語「サイトカインアゴニストポリペプチド」は、野生型サイトカインまたはそのアナログをいう。野生型サイトカインのアナログは、野生型サイトカインと同じ生物学的特異性(例えば、同じ受容体に結合し、同じ標的細胞を活性化)を有するが、アナログの活性レベルは野生型サイトカインのものと異なり得る。アナログは、例えば、野生型サイトカインのムテイン(すなわち、変異ポリペプチド)であってよく、野生型サイトカインに対して少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個の変異を含み得る。
【0057】
用語「サイトカインアンタゴニスト」、「マスキング部分」または「サイトカインマスク」は、サイトカインに結合し、それによりアンタゴニストまたはマスクに結合されている間、サイトカインが標的細胞表面のその受容体に結合するおよび/または生物学的機能を発揮するのを阻害する、部分(例えば、ポリペプチド)をいう。サイトカインアンタゴニストまたはマスクの例は、サイトカインと接触するサイトカインの細胞外ドメイン由来のポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0058】
用語「有効量」または「治療有効量」は、特定した障害、状態または疾患の処置に十分である化合物または組成物の量をいう(例えば、その症状の1以上の好転、緩和、低減および/または遅延)。癌などの疾患に関して、有効量は、癌進展または進行の遅延(例えば、腫瘍増殖速度の減少および/または腫瘍血管形成、転移または末梢臓器への癌細胞浸潤の遅延または阻止)、類上皮細胞数減少、癌退縮誘導(例えば、腫瘍の縮小または根絶)および/または予防または発癌もしくは再発の遅延のために十分な量であり得る。有効量は、1用量以上で投与され得る。
【0059】
用語「機能的アナログ」は、対照分子と同じ生物学的特異性(例えば、同じリガンドに結合)および/または活性(例えば、標的細胞活性化または阻害)を有する分子をいう。
【0060】
2個のポリペプチド配列に関連する用語「融合」または「融合体」は、主鎖ペプチド結合を介する2個のポリペプチド配列の連結をいう。2個のポリペプチドは、直接または1以上のアミノ酸長であるペプチドリンカーを介して融合され得る。融合ポリペプチドは、2個の融合パートナーの各コード配列を、その間のペプチドリンカーをコードする配列を伴いまたは伴わずに、当該コード配列から、組み換え技術により産生され得る。ある実施態様において、融合は化学的結合(conjugation)を含む。
【0061】
用語「薬学的に許容される添加物」は、組成物中の成分ついて使用されるとき、該添加物がヒト対象を含む対象の処置のために、対象に過度の有害な副作用を伴わず、かつ活性医薬成分(API)の生物学的活性に影響することなく、投与するのに適するものを意味する。
【0062】
用語「プロドラッグ」は、インビトロまたは循環中は不活性または低活性であり、他方その活性が疾患部位で増加する、治療分子をいう。
【0063】
用語「対象」は哺乳動物を言い、ヒト、ペット(例えば、イヌまたはネコ)、家畜(例えば、ウシまたはウマ)、齧歯類または霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0064】
ここで使用する、「処置」または「処置する」は、有益なまたは所望の臨床的結果を得るためのアプローチである。有益なまたは所望の臨床的結果は、次の、疾患に由来する1以上の症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患状態の好転、疾患の安定(例えば、疾患悪化または進行の予防または遅延)、疾患拡散(例えば、転移)の予防または遅延、疾患再発の予防または遅延、疾患の部分的または完全寛解の提供、疾患の処置に必要な1以上の他の医薬の用量の減少、患者のクオリティ・オブ・ライフの改善および/または生存期間の延長の1以上を含むが、これらに限定されない。本発明の方法は、処置のこれら態様の何れか1以上を意図する。
【0065】
ここに記載する種々の実施態様の性質の1個、一部または全てを組み合わせて、本発明の他の実施態様を形成し得ることは理解される。ここで使用するセクションの見出しは、記載事項の整理のみを目的するものあり、その見出しのもとに記載される主題を限定すると解釈してはならない。
【0066】
I. サイトカインプロドラッグ
本発明は、疾患部位でより活性となるサイトカインプロドラッグを提供する。プロドラッグは、サイトカインアゴニストポリペプチド(サイトカイン部分)、担体部分およびマスキング部分を含む。サイトカイン部分は、ペプチドリンカー(例えば、開裂不可能ペプチドリンカー)を伴いまたは伴わずに担体部分に連結され、マスキング部分によりマスク(結合)される。マスキング部分は、ペプチドリンカー(例えば、開裂不可能ペプチドリンカー)を伴いまたは伴わずにサイトカイン部分または担体部分に連結され得る。あるいは、サイトカイン部分は、ペプチドリンカー(例えば、開裂不可能ペプチドリンカー)を伴いまたは伴わずに、マスキング部分に連結され、これは、次に、ペプチドリンカー(例えば、開裂不可能ペプチドリンカー)を伴いまたは伴わずに、担体部分に連結される。
【0067】
担体部分は標的細胞(例えば、腫瘍細胞または免疫細胞)の抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。ある実施態様において、担体は抗体を含む。例えば、図1A参照。ある実施態様において、担体部分は、図1Bおよび1Cに説明するとおり、2個の異なる抗原に結合する二特異的抗体を含む。
【0068】
マスキング部分は、例えば、サイトカイン受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含んでよく、ここで、ECDは、サイトカイン部分(例えば、図1Dおよび1E参照)および/または開裂不可能リンカーを介して担体部分(例えば、図1A~Cおよび1E参照)に連結される。マスクは、サイトカイン部分に結合し、生物学的機能を阻害する。これらプロドラッグは、細胞表面に発現するサイトカイン受容体および抗原の「シス結合」を介して標的細胞に結合し、マスキング部分の切断および除去なく、プロドラッグの活性を増加させ得る。プロドラッグのサイトカイン部分は、担体により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者が同じ細胞で発現されるところである、標的部位(例えば、腫瘍部位または周囲環境)で活性を増加させ得る。このようなプロドラッグの例を図1A~Eに示し、「シス結合」作用機構を図7に示す。
【0069】
A. プロドラッグのサイトカイン部分
ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-2アゴニストポリペプチドを含む。ある実施態様において、IL-2アゴニストポリペプチドは、変異R38S/F42A/Y45A/E62AまたはF42A/Y45A/L72Gを有するIL-2ムテインである(ナンバリングは配列番号6による)。ある実施態様において、本発明のIL-2ムテインは、T3、D20、K35、R38、F42、F44、Y45、E62、E68、L72、A73、N88、N90、C125およびQ126に変異を含み得る(ナンバリングは配列番号6による)。ある実施態様において、新規IL-2ムテインは、R38、F42、Y45およびA73に変異を含む(ナンバリングは配列番号6による)。
【0070】
ある実施態様において、プロドラッグのサイトカイン部分は、IL-15アゴニストポリペプチドを含む。ある実施態様において、ヒトIL-15ポリペプチドは、N1A、N1D、N4A、N4D、I6T、S7A、D8A、D8T、D8E、D8N、K10A、K10D、K11A、K11D、E46、V49、L45、S51、L52、D61A、D61N、T62L、T62A、E64A、E64L、E64K、E64Q、N65A、N65L、N65D、L66D、L66E、I67D、I67E、I68S、I68E、L69S、L69E、N72A、N72D、V63E、V63D、L66E、L66D、I67E、I67D、Q108E、N112A、N1D/D61N、N1D/E64Q、N4D/D61N、N4D/E64Q、D8N/D61N、D8N/E64Q、D61N/E64Q、E64Q/Q108E、N1D/N4D/D8N、D61N/E64Q/N65D、N1D/D61N/E64Q、N1D/Q108E、N1D/D61N/E64Q/Q108E、N4D/D61N/E64Q/Q108EおよびD30N/E64Q/N65Dから選択される1以上の変異を含む(ナンバリングは配列番号7による)。ある実施態様において、IL-15プロドラッグはさらにスシドメインを含む。ある実施態様において、スシドメインは配列番号8のまたは配列番号8と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0071】
ある実施態様において、サイトカイン部分はIL-21アゴニストポリペプチドを含む。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドは、野生型ヒトIL-21(例えば、配列番号1)などの野生型IL-21ポリペプチドまたはヒトIL-21由来のIL-21ムテイン、例えば、配列番号2~5から選択されるアミノ酸配列のものであり得る。IL-21ムテインは、野生型IL-21と比較して、IL-21RαまたはIL-21RαRγに対する親和性が有意に減少されていてよい。ある実施態様において、IL-21ムテインは、野生型IL-21と比較して、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、300倍、500倍、1,000倍または10,000倍低い、高親和性IL-2Rαに対する結合親和性を有する。特に断らない限り、ここに記載するIL-21およびIL-21ムテインの全残基番号は、配列番号1のナンバリングによる。
【0072】
B. プロドラッグのマスキング部分
本プロドラッグのマスキング部分は、プロドラッグのサイトカイン部分に結合し、サイトカイン部分をマスキングし、その生物学的機能を阻害するペプチドまたは抗体または抗体フラグメントを含む。ある実施態様において、マスキング部分は、開裂不可能ペプチドリンカーを介して、プロドラッグの残りに作動的に連結される。
【0073】
例として、プロドラッグはIL-2アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分は、IL-2に結合し、IL-2のその同族受容体への結合を妨害するペプチドまたは抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む。ある実施態様において、マスキング部分はマスクされている間IL-2部分の生物学的活性を低減する。ある実施態様において、IL-2アンタゴニストは、ヒトIL-2RβまたはヒトIL-2Rγ(例えば、配列番号11または13)由来のものなどのIL-2RβまたはIL-2Rγ細胞外ドメインまたはその機能的アナログを含む。ある実施態様において、IL-2マスキング部分はペプチドライブラリースクリーニングを介して同定されたペプチドを含む。ある実施態様において、IL-2マスキング部分はIL-2またはIL-2ムテインのIL-2受容体への結合を遮断する抗体またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-2に対する抗体のscFvを含む。ある実施態様において、マスキング部分は配列番号22または23のまたは配列番号22または23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0074】
他の例として、プロドラッグはIL-21アゴニストポリペプチドを含み、マスキング部分は、IL-21に結合し、IL-21のその同族受容体への結合を妨害するペプチドまたは抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む。ある実施態様において、マスキング部分はマスクされている間IL-21部分の生物学的活性を低減する。ある実施態様において、IL-21アンタゴニストは、ヒトIL-21RαまたはヒトIL-21Rγ(例えば、配列番号12または13)由来のものなどのIL-21RαまたはIL-21Rγ細胞外ドメインまたはその機能的アナログを含む。ある実施態様において、IL-21マスキング部分はペプチドライブラリースクリーニングを介して同定されたペプチドを含む。ある実施態様において、IL-21マスキング部分はIL-21またはIL-21ムテインのIL-21受容体への結合を遮断する抗体またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、マスキング部分はIL-21に対する抗体のscFvを含む。ある実施態様において、マスキング部分は配列番号20または21のまたは配列番号20または21と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0075】
他の例として、プロドラッグは、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチド、IL-1αアゴニストポリペプチド、IL-1βアゴニストポリペプチド、IL-4アゴニストポリペプチド、IL-5アゴニストポリペプチド、IL-6アゴニストポリペプチド、IL-8アゴニストポリペプチド、IL-10アゴニストポリペプチド、IL-12アゴニストポリペプチド、IL-17アゴニストポリペプチド、IL-18アゴニストポリペプチド、IL-22アゴニストポリペプチド、IL-23アゴニストポリペプチド、IL-31アゴニストポリペプチド、IL-33アゴニストポリペプチド、IL-36アゴニストポリペプチド、インターフェロン-アルファアゴニストポリペプチド、インターフェロンガンマアゴニストポリペプチド、4-1BBリガンド、OX-40リガンドおよびCD-40リガンドから選択されるサイトカインを含むが、これらに限定されないここに開示するあらゆるサイトカインのマスキング部分を含む。
【0076】
C. プロドラッグの担体部分
本プロドラッグの担体部分は、抗原結合ドメインおよび所望により他のドメインを含む。担体部分はサイトカインアゴニストポリペプチドの血清半減期などのPKプロファイルを改善し、サイトカインアゴニストポリペプチドを腫瘍部位などの体内の標的部位にも向ける。
【0077】
1. 担体部分の抗原結合ドメイン
担体部分は抗原結合ドメインを含み、抗体またはその抗原結合フラグメントまたはイムノアドヘシンであり得る。ある実施態様において、抗原結合担体部分は、2個の重鎖および2個の軽鎖を有する完全長抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド連結Fvフラグメント、単一ドメイン抗体、ナノボディまたは一本鎖可変フラグメント(scFv)である。ある実施態様において、抗原結合部分は二特異的抗原結合部分であり、2個の異なる抗原または同じ抗原の2個の異なるエピトープに結合できる。抗原結合部分は、サイトカインアゴニストポリペプチドに相加的および相乗的となり得る治療有効性を提供する。
【0078】
サイトカインアゴニストポリペプチドおよびそのマスクは、抗原結合部分の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に融合し得る。例として、IL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスクは、抗体重鎖もしくはその抗原結合フラグメントまたは抗体軽鎖もしくはその抗原結合フラグメントに融合され得る。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドの一端は抗体の重鎖の一方または両方のC末端に融合され、IL-21マスクは、開裂不可能ペプチドリンカーを介してIL-21アゴニストポリペプチドの他端に融合される。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドは抗体の重鎖の一方のC末端に融合され、IL-21マスクは開裂不可能ペプチドリンカーを介して抗体の他方の重鎖のC末端に融合され、ここで、2個の重鎖は、2個の異なる重鎖の特異的ペアリングを可能とする変異を含む。
【0079】
ヘテロ二量体を形成する戦略は周知である(例えば、Spies et al., Mol Imm. (2015) 67(2)(A):95-106参照)。例えば、プロドラッグの2個の重鎖ポリペプチドは、「ノブ・イントゥ・ホール」変異を介して安定なヘテロ二量体を形成し得る。「ノブ・イントゥ・ホール」変異は、抗体重鎖のヘテロ二量体の形成を促進するためになされ、二特異的抗体の製造に一般的に使用される(、例えば、米国特許8,642,745参照)。例えば、抗体のFcドメインは「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。CH3ドメイン間のさらなる鎖間ジスルフィド架橋も、例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356CまたはS354C変異を導入することにより、用い得る(例えば、Merchant et al., Nature Biotech (1998) 16:677-81参照)。他の実施態様において、抗体部分は、2個のCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。ある実施態様において、抗体部分は、2個のCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにS354C(またはE356C)、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異、そしてCH3ドメインの一方にさらなるY349C変異および他方のCH3ドメインにさらなるE356CまたはS354C変異を含み得て、鎖間ジスルフィド架橋を形成する(ナンバリングは常にKabatのEU indexによる;Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。EP1870459A1に記載のものなどの他のノブ・イントゥ・ホール技術を、これとは別にまたはこれに加えて使用できる。故に、抗体部分のノブ・イントゥ・ホール変異の他の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D/K370E変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K/E357K変異を有することである(EUナンバリング)。
【0080】
ある実施態様において、プロドラッグの抗原結合部分は、FcドメインにL234AおよびL235A(「LALA」)変異を含む抗体である。LALA変異は、補体結合および固定ならびにFcγ依存的ADCCを排除する(例えば、Hezareh et al. J. Virol. (2001) 75 (24):12161-8参照)。さらなる実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えてLALA変異が抗体部分に存在する。
【0081】
ある実施態様において、抗原結合部分はFcドメインにM252Y/S254T/T256E(「YTE」)変異を含む抗体である。YTE変異は、血清半減期、組織分布およびIgG活性の同時調節を可能とする(Dall’Acqua et al., J Biol Chem. (2006) 281:23514-24;およびRobbie et al., Antimicrob Agents Chemother. (2013) 57(12):6147-53参照)。さらなる実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えてYTE変異が抗体に存在する。具体的実施態様において、抗体は、YTE、LALAおよびノブ・イントゥ・ホール変異またはこれらの何れかの組み合わせを含む。
【0082】
具体的実施態様において、抗原結合部分は免疫細胞などの標的細胞の表面の抗原に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。免疫細胞は当分野で周知である。免疫細胞の非限定的例は、T細胞、NK細胞およびマクロファージを含む。抗原結合部分は、免疫細胞を活性化し、その抗癌活性を増強する能力を有し得る。抗体はADCC活性を有しても有していなくてもよい。抗原結合部分は、さらに細胞毒性薬物にコンジュゲートもし得る。ある実施態様において、抗原結合部分は、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、CTLA-4またはTGF-ベータに結合し得る。他の実施態様において、抗原結合部分は、腫瘍細胞などの標的細胞の表面の抗原に結合し得る。例えば、抗原結合部分は、FAPアルファ、5T4、Trop-2、PD-L1、HER-2、EGFR、クローディン18.2、DLL-3、GCP3または癌胎児性抗原(CEA)に結合し得る。
【0083】
ある実施態様において、抗原結合部分は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、炭水化物抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、クローディン18.2、クローディン6、BCMAまたはEPCAMに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3の上皮細胞増殖因子(EGF)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3のデルタ/Serrate/Lag2(DSL)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、GPC3の374番目のアミノ酸の後ろに位置するエピトープに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、GPC3のヘパリン硫酸グリカンに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分はクローディン18.2に結合し、クローディン18.1に結合しない。ある実施態様において、抗原結合部分は、クローディン18.2より少なくとも10倍弱い結合親和性でクローディン18.1に結合する。
【0084】
抗原結合部分の例は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598およびその抗原結合フラグメントに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブまたはパニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する。ある実施態様において、抗原結合部分はトラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントの抗体重鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体重鎖を含む。ある実施態様において、抗原結合部分はトラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントの抗体軽鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体軽鎖を有する。抗原結合部分は、IL-2アゴニストポリペプチドに融合される。ある実施態様において、抗原結合部分はトラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33、抗EGFR抗体mAb806または抗dPNAG抗体F598の6個の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0085】
いくつかのCDR標記が当分野で知られ、ここに包含される。当業者は、重鎖または軽鎖可変領域の配列に基づき、CDRを容易に決定できる。「Kabat」CDR標記は、配列変動性に基づき、最も一般に使用される(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「Chothia」CDR標記は、構造ループを参照する(Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. (1987) 196:901-917)。「AbM」CDR標記は、Kabat CDRとChothia構造ループの間の妥協点を表し、Oxford Molecular’s AbMは抗体モデリングソフトウェアで使用される。「Contact」CDR標記は、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づく。これらCDRの各々からの残基を下表1に、一般的抗体ナンバリングスキームを引用して記載する。ここで特に断らない限り、抗体のCDRアミノ酸番号は、Kabat、Chothia、AbMまたはContactスキームを引用してなされたときを含み、Kabat et al., supraに記載のKabatナンバリングスキームを引用する。このナンバリングシステムを使用して、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのフレームワーク領域(FR)またはCDRの短縮または挿入に対応する、少ないまたは多いアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろに単一アミノ酸挿入(Kabatによる残基52a) および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。ある抗体について残基のKabatナンバリングは、「標準」Kabat番号付けされた配列を有する抗体と、配列の相同性の領域を整列することにより決定され得る。
【表1】
【0086】
ある実施態様において、CDRは、「拡張CDR」であり、異なるスキームに従い開始または終了する領域を包含する。例えば、拡張CDRは次のとおりであり得る:L24-L36、L26-L34またはL26-L36(VL-CDR1);L46-L52、L46-L56またはL50-L55(VL-CDR2);L91-L97(VL-CDR3); H47-H55、H47-H65、H50-H55、H53-H58またはH53-H65(VH-CDR2);および/またはH93-H102(VH-CDR3)。
【0087】
ある実施態様において、抗原結合部分はPDL1に結合し、配列番号45と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号46と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは配列番号45からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号46からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0088】
ある実施態様において、抗原結合部分はPD-1に結合し、配列番号44と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号47と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは配列番号44からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号47からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0089】
ある実施態様において、抗原結合部分はPD-1に結合し、配列番号48と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号49と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは配列番号48からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号49からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0090】
ある実施態様において、抗原結合部分は1個、2個または3個の抗原結合ドメインを含む。例えば、抗原結合部分は二特異的であり、CD3、HER2、HER3、EGFR、5T4、FAPアルファ、Trop-2、GPC3、VEGFR2、クローディン18.2およびPD-L1からなる群から選択される2個の異なる抗原に結合する。ある実施態様において、二特異的抗原結合部分は、HER2の2個の異なるエピトープに結合する。他の実施態様において、抗原結合部分は二特異的であり、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CD47、CD3、TIM-3、LAG-3およびTIGITから選択される2個の異なる抗原に結合する。
【0091】
2. 担体部分の他のドメイン
担体部分は、抗原結合性ではない他のドメインも含み得る。例えば、抗体Fcドメイン(例えば、ヒトIgG、IgG、IgGまたはIgG Fc)、ポリマー(例えば、PEG)、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)またはそのフラグメントまたはナノ粒子が使用され得る。
【0092】
例として、サイトカインアゴニストポリペプチド(例えば、IL-2、IL-21、IL-5またはここに開示するあらゆるサイトカイン)およびそのアンタゴニストを抗体Fcドメインに融合して、Fc融合タンパク質を形成し得る。ある実施態様において、サイトカインアゴニストポリペプチドは、Fcドメインポリペプチド鎖の一方のC末端またはN末端に融合(直接またはペプチドリンカーを介して)され、サイトカインマスクは開裂可能ペプチドリンカーを介して他方のFcドメインポリペプチド鎖の対応するC末端またはN末端に融合され、ここで、2個のFcドメインポリペプチド鎖は、2個の異なるFc鎖の特異的ペアリングを可能とする変異を含む。ある実施態様において、Fcドメインは上記ホール・イントゥ・ホール変異を含む。さらなる実施態様において、Fcドメインは上記YTEおよび/またはLALA変異も含み得る。
【0093】
プロドラッグの担体部分は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)またはそのフラグメントを含み得る。ある実施態様において、担体部分は、約10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上または550以上のアミノ酸長であるアルブミンフラグメント(例えば、ヒト血清アルブミンフラグメント)を含む。ある実施態様において、アルブミンフラグメントは、約10アミノ酸~約584アミノ酸長(例えば約10~約20、約20および約40、約40および約80、約80および約160、約160および約250、約250および約350、約350および約450または約450および約550アミノ酸長)である。ある実施態様において、アルブミンフラグメントは、Sudlow IドメインまたはそのフラグメントまたはSudlow IIドメインまたはそのフラグメントを含む。
【0094】
D. プロドラッグのリンカー要素
サイトカインアゴニストポリペプチドは、ペプチドリンカーを伴いまたは伴わずに担体部分と融合され得る。ペプチドリンカーは、開裂不可能である。ある実施態様において、ペプチドリンカーは配列番号27~34から選択される。具体的実施態様において、ペプチドリンカーはアミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号30)を含む。
【0095】
マスキング部分を、開裂不可能リンカーを介してまたはペプチドリンカーを用いずにサイトカイン部分または担体に融合し得る。
【0096】
II. 医薬組成物
本発明のプロドラッグおよびムテイン(すなわち、活性医薬成分またはAPI)を含む医薬組成物は、所望の純度を有するAPIと、1以上の任意の薬学的に許容される添加物(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition., Osol, A. Ed. (1980)参照)の混合により凍結乾燥製剤または水溶液に調製され得る。薬学的に許容される添加物(または担体)は、一般に用いる投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、例えば、リン酸、クエン酸、スクシネート、ヒスチジン、酢酸または他の無機または有機酸またはその塩を含む、緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン;スクロース、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これらに限定されない。
【0097】
緩衝液は、特に、安定性がpH依存的であるとき、治療有効性を最適化する範囲にpHを制御するために使用される。緩衝液は、好ましくは約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在する。本発明で使用するための適当な緩衝剤は、有機および無機両方の酸およびその塩、例えばクエン酸、リン酸、琥珀酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、シュウ酸、乳酸および酢酸を含む。さらに、緩衝液は、ヒスチジンおよびTrisなどのトリメチルアミン塩を含み得る。
【0098】
防腐剤は、微生物の成長を遅らせるために使用し、概して0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本発明で使用するための適当な防腐剤は、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムハライド(例えば、クロライド、ブロマイド、アイオダイド)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールを含む。
【0099】
等張化剤は、「安定化剤」として知られることもあり、組成物の液体の張性を調節または維持するために使用される。タンパク質および抗体などの大型、荷電生体分子と使用されるとき、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより分子間および分子内相互作用の可能性を低減できるため、しばしば「安定化剤」と称される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%~25重量%またはそれ以上、好ましくは1%~5重量%のある量で存在し得る。好ましい等張化剤は、多価糖アルコール、好ましくは三価またはそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールを含む。
【0100】
非イオン性界面活性剤または界面活性剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助け、治療タンパク質を撹拌誘導凝集に対して保護するために存在し、また製剤が活性治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく剪断表面ストレスにさらされることを可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。
【0101】
適当な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(184、188など)、プルロニック(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアラート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む。使用できるアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートを含む。カチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
【0102】
医薬担体、添加物または希釈剤の選択は、意図する投与経路および標準的手法を考慮して選択され得る。医薬組成物は、さらに何らかの適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤または可溶化剤を含み得る。
【0103】
異なる送達系に依存して、異なる組成物/製剤要件が存在し得る。例として、本発明において有用な医薬組成物は、ミニポンプを使用してまたは粘膜経路により、例えば、経鼻スプレーまたは吸入用エアロゾルとしてまたは摂取可能溶液としてまたは組成物が、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のための注射用形態で製剤化される非経腸で投与するために製剤化され得る。
【0104】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は凍結乾燥タンパク質製剤である。他の実施態様において、医薬組成物は水性液体製剤であり得る。
【0105】
III. 処置方法
サイトカインプロドラッグおよび融合分子を、抗原結合ドメインにより結合される抗原に依存して、疾患の処置に使用できる。ある実施態様において、サイトカインプロドラッグまたは融合分子は、癌の処置に使用される。ある実施態様において、サイトカインプロドラッグまたは融合分子は、感染の処置に使用される。
【0106】
ある実施態様において、対象における疾患(例えば癌、寄生虫感染、ウイルス感染または細菌感染)を処置する方法は、対照に有効量のサイトカインプロドラッグまたは融合分子を投与することを含む。
【0107】
ある実施態様において、癌は固形癌である。ある実施態様において、癌は血液癌または固形腫瘍である。処置し得る癌の例は、白血病、リンパ腫、腎臓癌、膀胱癌、尿路癌、頸部癌、脳癌、頭頸部癌、皮膚癌、子宮癌、精巣癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮細胞癌、前立腺癌、膵臓癌、非小細胞肺癌などの肺癌、胆管癌、乳癌および卵巣癌を含むが、これらに限定されない。
【0108】
ある実施態様において、サイトカインプロドラッグまたは融合分子は、ウイルス感染の処置に使用される。ある実施態様において、ウイルス感染を引き起こすウイルスは、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはヒトパピローマウイルス(HPV)である。ある実施態様において、抗原結合部分はウイルス抗原に結合する。
【0109】
ある実施態様において、サイトカインプロドラッグまたは融合分子は、敗血症などの細菌感染の処置に使用される。ある実施態様において、細菌感染を引き起こす細菌は、薬物耐性細菌である。ある実施態様において、抗原結合部分は細菌抗原に結合する。
【0110】
一般に、本医薬組成物の投与量および投与経路は、対象の体格および状態により、標準的手法に従い決定される。ある実施態様において、医薬組成物を、経口、経皮、吸入、静脈内、動脈内、筋肉内、創傷部位への直接適用、手術部位への適用、腹腔内、坐薬、皮下、皮内、経真皮、噴霧化、胸膜内、脳室内、関節内、眼内、頭蓋内または髄腔内を含む、あらゆる経路を介して対象に投与する。ある実施態様において、組成物を、対象に静脈内投与する。
【0111】
ある実施態様において、医薬組成物の投与量は、単回投与または反復投与である。ある実施態様において、用量を、対象に1日1回、1日2回、1日3回または1日4回またはそれ以上投与する。ある実施態様において、週に約1回以上(例えば約2回、3回、4回、5回、6回または7回以上)を投与する。ある実施態様において、医薬組成物を毎週、2週毎、3週毎、4週毎、3週中2週毎週または4週中3週毎週投与する。ある実施態様において、複数用量を数日、数週、数カ月または数年にわたり投与する。ある実施態様において、処置のコースは、約1回以上(例えば約2回、3回、4回、5回、7回、10回、15回または20回以上)である。
【0112】
ここで他に定義しない限り、本発明と関連して使用する、科学的および技術的用語は、当業者に共通して理解される意味を有する。例示的方法および材料を下に記載するが、ここに記載するものに類似するまたは等価な方法および材料も、本発明の実施または試験に使用され得る。矛盾があれば、定義を含む本明細書の記載が優先する。一般に、個々に記載する、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品化学および薬化学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用する命名法および技術は、当分野で周知であり、一般に使用される。酵素反応および精製技術は、当分野で一般に実施されるとおりまたはここに記載するとおり、製造業者の仕様に従い実施する。さらに、文脈から他の解釈が必要ではない限り、単数表現は複数を含み、複数表現は単数を含む。本明細書および実施態様を通して、用語「有する」および「含む」または「有し」、「有して」、「含み」または「含んで」などの変形は、記載する整数または整数の群を含むが、いかなる整数または整数の群も除外しないことを含意すると解釈されるべきである。ここに記載する本発明の態様およびバリエーションは、「からなる」および/または「本質的にからなる」態様およびバリエーションを含むことは理解されるべきである。ここに記載する全ての刊行物および他の参考文献は、引用により全体として本明細書に包含させる。いくつかの文献がここに引用されているが、この引用は、これらの文献が当技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではない。
【0113】
IV. 例示的実施態様
さらに、本発明の特定の実施態様を以下に記載する。これらの実施態様は本開示に記載される組成物および方法を説明することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
1. サイトカイン部分、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、
a)マスキング部分はサイトカイン部分に結合し、サイトカインの意図される生物学的活性を阻害し;
b)担体部分が細胞の表面に発現される抗原に結合する抗原結合部分を含み;そして
c)マスキング部分が担体部分に開裂不可能ペプチドリンカーを介してまたはペプチドリンカーを伴わず直接的にまたは間接的に連結され;
ここで、プロドラッグの活性が、担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞の刺激について、サイトカインの受容体を発現するが、担体部分により標的とされる抗原を発現しない細胞を刺激する活性より高い、
プロドラッグ。
2. サイトカイン部分、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、
a)マスキング部分はサイトカイン部分に結合し、サイトカインの意図される生物学的活性を阻害し;
b)担体部分が細胞の表面に発現される抗原に結合する抗原結合部分を含み;そして
c)マスキング部分が担体部分に開裂不可能ペプチドリンカーを介してまたはペプチドリンカーを伴わず直接的にまたは間接的に連結され;
ここで、プロドラッグが担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞が存在する疾患部位で活性化されるまたはプロドラッグの生物学的活性が担体部分により標的とされる抗原およびサイトカインの受容体両者を発現する細胞が存在する疾患部位で少なくとも2倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍増加する、
プロドラッグ。
3. サイトカイン部分の受容体が2以上のサブユニットを含む、実施態様1または2のプロドラッグ。
4. 担体が抗原結合部分を含み、ここで、抗原が免疫細胞に発現される、実施態様1または2のプロドラッグ。
5. 担体部分が抗原結合部分を含み、ここで、抗原が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIGIT、TIM-3、LAG-3、CD25、CD16a、CD16b、NKG2D、NKP44、NKP30、CD19、CD20、CD38およびBCMAから選択される、実施態様1または2のプロドラッグ。
6. サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチドおよびIL-21アゴニストポリペプチドから選択されるサイトカインを含む、実施態様1~5の何れかのプロドラッグ。
7. サイトカインが、IL-1αアゴニストポリペプチド、IL-1βアゴニストポリペプチド、IL-4アゴニストポリペプチド、IL-5アゴニストポリペプチド、IL-6アゴニストポリペプチド、IL-8アゴニストポリペプチド、IL-10アゴニストポリペプチド、IL-12アゴニストポリペプチド、IL-17アゴニストポリペプチド、IL-18アゴニストポリペプチド、IL-22アゴニストポリペプチド、IL-23アゴニストポリペプチド、IL-31アゴニストポリペプチド、IL-33アゴニストポリペプチド、IL-36アゴニストポリペプチド、インターフェロン-アルファアゴニストポリペプチド、インターフェロンガンマアゴニストポリペプチド、4-1BBリガンド、OX-40リガンドおよびCD-40リガンドから選択される、実施態様1~5の何れかのプロドラッグ。
8. マスキング部分がサイトカインの受容体の細胞外ドメイン(ECD)である、実施態様1~7の何れかのプロドラッグ。
9. サイトカインがIL-7アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-7受容体αの細胞外ドメイン(IL-7Rα ECD)またはその機能的アナログである、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
10. サイトカインがIL-21アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-21受容体αの細胞外ドメイン(IL-21Rα ECD)またはその機能的アナログである、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
11. サイトカインがIL-2アゴニストポリペプチドまたはIL-15アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-2受容体βの細胞外ドメイン(IL-2Rβ ECD)である、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
12. サイトカインがIL-21アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-21に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
13. サイトカインがIL-2アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-2に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
14. サイトカインがIL-15アゴニストポリペプチドであり;そして、ここで、マスキング部分がIL-15に対する一本鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体である、実施態様1~6の何れかのプロドラッグ。
15. サイトカイン部分がIL-15アゴニストポリペプチドを含み、ここで、融合分子がさらにIL-15受容体αのスシドメイン(IL-15Rαスシドメイン)を含む、実施態様1~6、11および14の何れかのプロドラッグ。
16. IL-21アゴニストポリペプチドが、配列番号1のまたは配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様10または12の何れかのプロドラッグ。
17. マスキング部分がIL-21Rα-ECDまたはその機能的アナログであり、それが配列番号12、63~72および73から選択されるまたは配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様10または16のプロドラッグ。
18. マスキング部分がヒトIL-21に結合するscFvであり;そして、ここで、scFvが配列番号20または21のアミノ酸配列を含む、実施態様12または16のプロドラッグ。
19. IL-2アゴニストポリペプチドが、配列番号6または61のまたは配列番号6または61と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様11または13のプロドラッグ。
20. IL-15アゴニストポリペプチドが、配列番号7のまたは配列番号7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様11または14のプロドラッグ。
21. マスキング部分がIL-2Rβ-ECDまたはその機能的アナログを含み;、ここで、IL-2-Rβ-ECDが配列番号11のまたは配列番号11と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様11、19または20のプロドラッグ。
22. マスキング部分がIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvがIL-2とIL-2Rαの相互作用、IL-2とIL-2Rβの相互作用および/またはIL-2とIL-2Rγの相互作用を阻害または妨害する、実施態様6、13または19の何れかのプロドラッグ。
23. マスキング部分がIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvがIL-15とIL-2Rβおよび/またはIL-2とIL-2Rγの相互作用を阻害または妨害する、実施態様6、14、15または20の何れかのプロドラッグ。
24. マスキング部分がIL-21に結合するscFvであり、ここで、scFvがIL-21とIL-21Rαおよび/またはIL-21とIL-2Rγの相互作用を阻害または妨害する、実施態様6、12または16の何れかのプロドラッグ。
25. マスキング部分がIL-2、IL-7、IL-9、IL-15またはIL-21から選択されるサイトカインに結合するscFvであり;ここで、scFvがサイトカインとIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害し;そして、ここで、プロドラッグが、対応する野生型サイトカインより少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍または少なくとも200倍長い、非ヒト霊長類またはヒトにおける半減期を有する、実施態様6のプロドラッグ。
26. 担体部分、サイトカイン部分およびマスキング部分を含むプロドラッグであって、ここで:
a)サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチドまたはIL-21アゴニストポリペプチドから選択され;
b)マスキング部分がサイトカイン部分に結合するscFvであり;
c)scFvがサイトカインとIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害し;そして
d)ここで、プロドラッグが野生型サイトカインより少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍または少なくとも200倍長い非ヒト霊長類またはヒトにおける半減期を有する、プロドラッグ。
27. scFvがサイトカインに1~10nMのKで結合する、実施態様22~25の何れかのプロドラッグ。
28. scFvがサイトカインに10~100nMのKで結合する、実施態様22~25の何れかのプロドラッグ。
29. scFvがサイトカインに100~1000nMのKで結合する、実施態様22~25の何れかのプロドラッグ。
30. マスキング部分がIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvが、ハイブリドーマ4E12B2D10と同じ重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、実施態様13または19のプロドラッグ。
31. マスキング部分がIL-2に結合するscFvであり、ここで、scFvが配列番号22または23のまたは配列番号22または23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様13または19のプロドラッグ。
32. マスキング部分がIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvが、IL-15抗体146B7、146H5または404E4と同じ重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、実施態様14または20のプロドラッグ。
33. マスキング部分がIL-15に結合するscFvであり、ここで、scFvが配列番号18または19のアミノ酸配列を含む、実施態様14または20のプロドラッグ。
34. プロドラッグが開裂可能ペプチドリンカーを含まない、実施態様1~32の何れかのプロドラッグ。
35. プロドラッグが、配列番号44のアミノ酸配列を有する2個の軽鎖およびアミノ酸配列がそれぞれ
配列番号35および36、
配列番号37および36、
配列番号37および38、
配列番号39および41または
配列番号42および43
を含む2個の重鎖ポリペプチド鎖を含む、
実施態様1のプロドラッグ。
36. プロドラッグが、配列番号50のアミノ酸配列を有する2個の軽鎖およびアミノ酸配列がそれぞれ
配列番号51および54、
配列番号51および55、
配列番号51および56、
配列番号52および54、
配列番号53および58、
配列番号53および59または
配列番号52および57
を含む2個の重鎖ポリペプチド鎖を含む、
実施態様1のプロドラッグ。
37. 実施態様1-36の何れかのプロドラッグ薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
38. 実施態様1~36の何れかのプロドラッグをコードする、1以上のポリヌクレオチド。
39. 実施態様38の1以上のポリヌクレオチドを含む、1以上の発現ベクター。
40. 実施態様39のベクターを含む、宿主細胞。
41. 実施態様1~36の何れかのプロドラッグを製造する方法であって、
哺乳動物細胞である実施態様46の宿主細胞を、プロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し、そして
プロドラッグを単離する
ことを含む、方法。
42. 処置を必要とする患者における癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患を処置するまたは免疫系の刺激する方法であって、患者に治療有効量の実施態様37の医薬組成物を投与することを含む、方法。
43. 処置を必要とする患者における、癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激に使用するための、実施態様1~36の何れかのプロドラッグ。
44. 処置を必要とする患者における、癌、自己免疫性疾患もしくは感染性疾患の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造のための、実施態様1~36の何れかのプロドラッグの使用。
45. 患者がHIV、HBV、HCVまたはHPV感染;ループス、I型糖尿病、乾癬、皮膚筋炎、GvHDまたは関節リウマチから選択される自己免疫性疾患;または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有する、実施態様41の方法、請求項42の使用のためのプロドラッグまたは請求項43の使用のための融合分子または請求項44の使用。
46. 担体部分、サイトカイン部分およびマスキング部分を含むプロドラッグであって、ここで:
a)サイトカイン部分がIL-2アゴニストポリペプチド、IL-7アゴニストポリペプチド、IL-9アゴニストポリペプチド、IL-15アゴニストポリペプチドまたはIL-21アゴニストポリペプチドから選択され;
b)マスキング部分がサイトカイン部分に結合するscFvであり;
c)scFvがサイトカインとIL-2Rγの間の相互作用を阻害または妨害し;そして
d)ここで、プロドラッグが、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍または少なくとも200倍、野生型サイトカインより大きい非ヒト霊長類またはヒトにおける曲線下面積(AUC)を有する、プロドラッグ。
【0114】
本発明がよりよく理解され得るために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、説明のみを目的とするものであり、いかなる方法でも本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない。
【実施例
【0115】
実施例1および2に記載する実験のための材料および方法は次のとおりである。
【0116】
SEC-HPLC分析
SEC-HPLCを、Tosoh Bioscienceに発注したTSKgel G3000SWXLカラム(7.8mm ID×30cm、5μm粒子径)を有するAgilent 1100シリーズのHPLC系で実施した。100μlまでのサンプルを負荷した。カラムを、200mM KPO、250mM KClを含む緩衝液、pH6.5で流した。流速は0.5ml/分であった。カラムを室温で流した。
【0117】
タンパク分解処理
プロテアーゼ、ヒトMMP2、ヒトMMP9、マウスMMP2およびマウスMMP9をR&D systemsから購入した。プロテアーゼ消化を、2mM CaClおよび10μM ZnClを含むHBS緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4)中、10μg~50μgのプロドラッグと1μgのヒトMMP2、ヒトMMP9、マウスMMP2またはマウスMMP9を、37℃で12時間インキュベートすることにより実施した。
【0118】
細胞ベースの活性アッセイ
プロテアーゼ消化前のプロドラッグおよび対照サンプルを、細胞ベースの活性アッセイにより試験した。簡潔には、NK92細胞を、L-グルタミン、10%ウシ胎児血清、10%非必須アミノ酸、10%ピルビン酸ナトリウムおよび55μM ベータ-メルカプトエタノールを添加したRPMI-1640培地で増殖させた。NK92細胞は非接着性であり、100ng/mlのIL-2で培地中1×10~1×10細胞/mlに維持した。一般に、細胞は週2回分裂した。バイオアッセイについて、細胞を、継代後48時間以降に使用するのが最良であった。IL-21機能的活性を、NK92細胞を5×10細胞/ウェルで、一定量のIL-2存在下、連続希釈サンプルと2日間培養することにより、決定した。次いで、上清をELISAによりインターフェロン-γについてアッセイした。
【0119】
Mino IL-21生存能アッセイ
Mino細胞生存能アッセイを、次のプロトコールに従い実施する:
a)96ウェル組織培養プレート中、50μLアッセイ培地(RPMI 1640、10%ウシ胎児血清、NEAA、ピルビン酸ナトリウム、55μM b-メルカプトエタノール)で試験品の連続希釈を実施する。
b)50μLアッセイ培地に20,000 Mino細胞/ウェルを加える。
c)3日間または5日間培養する。
d)100μL/ウェル Cell Titer Glo(Promega)を加える。Cell Titer-Gloは、ATPの定量的評価の提供により、細胞生存能の指標を提供する。
e)ルミネセンスを測定する。
【0120】
PBMC初代細胞でのKi67活性化アッセイ
ヒトPBMCを、100ng/mLの抗CD3抗体、OKT3で2日間刺激し、続いて3回洗浄し、次いで3日間、習慣的な細胞培養培地で37℃、5%COインキュベーターで休息させた。この刺激/休息後、PBMCを、200K細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、示すとおり種々の濃度の試験品で5日間処理し、その後PD-1CD4およびPD-1-CD4+細胞集団におけるKi67について細胞染色およびフローサイトメトリー分析に付した(細胞染色に使用した全Abは、BDから購入した)。
【0121】
実施例1:抗PD-1抗体-IL-21プロドラッグ融合分子の構築
抗PD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグを、第一の重鎖ポリペプチド鎖(配列番号42に示すアミノ酸配列を有する)、第二の重鎖ポリペプチド鎖(配列番号76に示すアミノ酸配列を有する)および2個の同一軽鎖(配列番号44に示すアミノ酸配列を有する)を用いて構築した。。分子を一過性に発現させ、精製した(lot# PW04-38)。
【0122】
マスキング部分としてのscFvを有する第二のPD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグも発現させ、精製した(Lot #PW05-68)。
【0123】
さらに、対照として、マスクがない抗PD-1抗体-IL-21融合分子も発現させ、精製した(Lot #PW05-67)。
【0124】
さらに、第二の対照、マスクがない抗PD-1抗体-IL-21ムテイン(R9ER76A)融合分子も発現させ、精製した(Lot #PW09-02)。
【0125】
実施例2:抗PD-1抗体-IL-21プロドラッグ融合分子の生物学的活性
プロドラッグ分子および数個の対照分子のMino細胞への結合をFACSにより試験した。図2の結果は、PD-1抗体およびFc-IL-21融合分子両者がMino細胞に結合できたことを示し、Mino細胞がPD-1およびIL-21に対する受容体両者を発現することを示す。結果は、FcベースのIL-21プロドラッグ分子の両者が細胞に結合しないことを示し、IL-21サイトカイン部分が対応するマスキング部分によりマスクされていることを示す。しかしながら、PD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグ分子および融合分子は、Mino細胞に結合できた。
【0126】
分子の細胞ベースの活性を、NK92細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞株を使用して評価した。結果を図3に示す。データは、活性化しなければ、マスキング部分としてIL-21α ECDを有するプロドラッグ分子(Lot# PW04-38)は最小の活性を有し、一方マスキング部分としてscFvを有するプロドラッグ(Lot# PW05-68)は、マスキング部分がないもの(PW04-67)より約1000倍低い活性を有することを示した。データは、プロドラッグのバイオアッセイ活性は、プロテアーゼMMP2処理により有意に増強されたことを示す。
【0127】
融合分子の殺腫瘍活性を試験するために、Mino細胞を使用した。Mino細胞は、PD-1およびIL-21の受容体両者を発現する、マントル細胞リンパ腫細胞株である(Harington et al., Leuk Lymphoma (2019) 60(10):2498-2507およびGelebart et al., Leukemia (2009) 23:1836-1846)。Mino生存能アッセイ結果を図4Aおよび4Bに示す。驚くべきことに、抗PD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグ(Lots# PW04-38およびPW05-68)は、活性化前に相当の活性を有し、一方、対照分子(PD-1抗体-IL-21R9E/R76A融合分子、Lot# PW09-02)は活性がないか僅かであった。結果は、抗PD-1 IL-21融合分子が「シス結合」、すなわち、PD-1およびIL-21受容体両者への結合を介して活性化されたことを示す。PD-1抗体の細胞表面上のPD-1抗原へのおよびサイトカインの同じ細胞表面上のその受容体へのシス結合は、マスキング部分のマスキング効果を壊さなかった。それ故に、開裂可能ペプチドリンカーを有しないプロドラッグが、局所免疫細胞が担体により標的とされる抗原およびサイトカイン部分(例えば、IL-21)に結合する受容体両者を発現し得るため、腫瘍などの疾患部位で「活性化」され得ることが予測される。
【0128】
実施例3:抗PD-1抗体-IL-15プロドラッグ融合分子の構築
IL-15部分が、(i)scFv 215βでマスクされた、(ii)scFv 215γでマスクされた、(iii)マスクを有しない(215β Ref)または(iv)変異を有するがマスクを有しない(PD1/IL15ムテイン(M2))一連の抗PD-1抗体ベースのIL-15プロドラッグを構築した。これらプロドラッグにおける抗PD-1抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を有する2個の同一軽鎖および配列番号47のアミノ酸配列を有する2個の同一重鎖を含む。
【0129】
Fcベースのプロドラッグ215βは、アミノ酸配列番号16および17を含む、ヘテロ二量体である。
【0130】
抗PD-1抗体ベースのプロドラッグ215γは、2個の同一軽鎖(配列番号44)、配列番号37のアミノ酸配列を有する第一の重鎖融合ポリペプチド鎖および配列番号77のアミノ酸配列を有する第二の重鎖融合ポリペプチド鎖を含む。
【0131】
215β Refは、IL-15ムテイン(D30N/E64Q/N65D)-Fc融合分子である。
【0132】
PD1/IL15ムテイン(M2)は、IL-15ムテインを有する抗PD-1-抗体融合であり、ここで、IL-15アゴニストは、変異E46G、V49R、E64Q、D30NおよびN1Gを含む。
【0133】
サンプル全てをCHO細胞で発現させ、プロテインA親和性クロマトグラフィー、続いてさらなるクロマトグラフィー工程を使用して、精製した。
【0134】
実施例4:抗PD-1抗体-IL-15プロドラッグ融合分子の生物学的活性
IL-15プロドラッグを、ヒトドナーから得たPBMC細胞におけるKi67発現を刺激する能力について、試験した。図5A~5Cは、処理後のPBMCにおけるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Aは、PD-1発現がないCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Bは、PD-1発現があるCD4 T細胞のKi67活性化の結果を示す。図5Cは、PD-1発現がないおよびあるCD4 T細胞での試験品のEC50値を示す。またPD-1発現がないおよびあるCD4 T細胞間のEC50値の変化倍率も示す。驚くべきことに、データは、215γがPD-1を発現するCD4細胞が、PD-1発現がないものより有意に高いKi67活性を有することを示し、プロドラッグ215γが抗原PD-1およびサイトカインIL-15の受容体両者を発現する細胞に作用したとき、プロテアーゼの切断なしで活性化できたことを示す。
【0135】
実施例5:抗PD-1抗体-IL-2プロドラッグ融合分子
抗PD-1抗体ベースのIL-2プロドラッグを同様に構築した。プロドラッグ、PD-1/IL-2v*は、2個の同一軽鎖(配列番号44)および2個の重鎖融合ポリペプチド(それぞれ配列番号24および25)を含んだ。IL-2部分はIL-2ムテインであり、プロドラッグにおけるマスクはIL-2受容体β細胞外ドメインである。IL-2プロドラッグを、ヒトドナーから得たPBMC細胞におけるKi67発現を刺激する能力について、評価した。
【0136】
図6Aおよび6Bは、抗PD-1抗体(PD-1)、陰性対照またはPD-1/IL-2v*で処理後のPBMCからのCD4 T細胞におけるKi67活性化の結果を示す。陰性対照は、ヒトクローディン18.2に対するIgG1抗体であった。サンプル全てをCHO細胞で発現させ、プロテインA親和性クロマトグラフィー、続いてさらなるクロマトグラフィー工程を使用して、精製した。図6Aは、PD-1発現がないCD4 T細胞におけるKi67活性化の結果を示す。図6Bは、PD-1発現があるCD4 T細胞におけるKi67活性化の結果を示す。驚くべきことに、データは、プロドラッグPD-1/IL2V*がPD-1を発現するCD4細胞で、PD-1発現がないものより有意に高いKi67誘導活性を有することを示した。これらの結果は、PD-1/IL-2v*が、抗原PD-1およびサイトカインIL-2の受容体両者を発現する細胞に作用したとき、プロテアーゼ切断なして活性化できたことを示す。
【0137】
まとめると、上記データは、サイトカインプロドラッグが、サイトカインの受容体および担体部分により標的化される抗原両者を発現する細胞が存在する部位で、活性化できたことを示す。抗原結合部分を有する担体を有するプロドラッグが、プロテアーゼ切断せずに活性化できたことは驚きであった。理論に拘束されることを意図しないが、担体部分の抗原結合ドメインがプロドラッグ分子を抗原を発現する細胞の表面に向け、これにより、細胞のサイトカイン受容体表面がプロドラッグのマスク部分と効率的に競合することが可能となると予測する。この過程は、図7に示すとおり、マスキング部分の細胞表面のサイトカイン受容体への置換を介する、プロドラッグの無プロテアーゼ切断活性化を可能とする。
【0138】
疲弊Teff細胞などの細胞は、抗原(例えば、PD-1)およびサイトカインの受容体(例えば、IL-2RβおよびIL-2Rγ)両者を発現する。疲弊Teff細胞は、一般に腫瘍微小環境に局在するが、正常組織にも存在する。抗原およびサイトカイン受容体を発現する細胞のこの差示的分布は、プロドラッグの疾患部位特異的活性化を可能とする。このような標的特異性は、サイトカイン治療の安全性の増強ももたらす。
【0139】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
【配列表】
2023509969000001.app
【国際調査報告】