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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】上皮カドヘリン特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230303BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230303BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230303BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20230303BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230303BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230303BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230303BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230303BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230303BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/63 Z
A01K67/027
C12Q1/04
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K47/68
A61K35/17 A
A61K35/76
A61K35/12
A61K31/7088
A61K48/00
A61K45/00
G01N33/574 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542247
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 NL2021050009
(87)【国際公開番号】W WO2021141492
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20151325.6
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521361969
【氏名又は名称】クリング・バイオセラピューティックス・べー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティム・ボーモン
(72)【発明者】
【氏名】サブリナ・ジュリア・ルイーザ・メラト
(72)【発明者】
【氏名】マルク・イェロン・クワッケンボス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ケッデ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲン・スピツ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AA94X
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085CC01
4C085DD23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BC83
4C087CA05
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、上皮カドヘリン特異性抗体、ならびに癌などの疾患の診断および処置におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E-カドヘリンの1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基が、図1Aに示されるような前記E-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの結合が、図1Aに示されるような前記E-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基、468位でのO-マンノシル化スレオニン残基、470位でのO-マンノシル化スレオニン残基、472位でのO-マンノシル化スレオニン残基、463位でのグルタミン酸残基、465位でのセリン残基、469位でのセリン残基、および/または477位でのバリン残基の存在に依存している、請求項1に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの前記結合が、図1Aに示されるような前記E-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または470位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好にO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項5】
O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体または抗原結合フラグメントが:
a.アミノ酸配列GFXFSXAWを含む重鎖可変領域CDR1(XはTまたはIであり、XはNまたはYである);
または前記GFXFSXAW配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
b.アミノ酸配列IKSKIDG XT Xを含む重鎖可変領域CDR2(XはGまたはEであり、XはTまたはIである);
または前記IKSKIDG XT X配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
c.アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);
または前記TPGVGXNXPYYFDR配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
d.アミノ酸配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖可変領域CDR1;
または前記QSVLCRSNNKNC配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
e.アミノ酸配列WAXを含む軽鎖可変領域CDR2(XはSまたはCである);
または前記WAX配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
f.アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3;
または前記QQYSNTPQT配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
の1つまたは複数、および場合によってはそれぞれを含む、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
a.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
b.配列GFIFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
c.配列GFIFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
d.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
e.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
f.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WACを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
g.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
h.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGTNNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
i.配列GFTFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
j.配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTIを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
k.配列GFTFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
l.配列GFIFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3;または
m.配列GFIFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項7】
- 配列番号1~17からなる群より選択されるVH配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域;および/または
- 配列番号18~22からなる群より選択されるVL配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項8】
- 配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号22に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号2に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号3に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも90%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号4に示されるようなVH配列および配列番号19に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号5に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号20に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号7に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号8に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号9に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号21に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号11に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号12に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号13に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号14に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号15に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号16に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号17に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項9】
ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体が、IgGアイソタイプ、好ましくはIgG1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項11】
脱フコシル化されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項12】
O-マンノシル化E-カドヘリン、好ましくはO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンへの結合について、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、以下の特徴:
- O-マンノシル化E-カドヘリンの細胞外(EC)3ドメインに結合する;
- O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好にO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する;
- E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を同時発現する腫瘍細胞を結合する
の1つまたは複数、好ましくはそれぞれを有している、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項14】
別の化合物、好ましくは免疫調節化合物、T細胞結合化合物、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)結合化合物、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)結合化合物、ガンマ-デルタT細胞結合化合物、CD3特異性結合化合物、TGFβ特異性結合化合物、サイトカイン、二次抗体またはその抗原結合部分、検出可能な標識、薬物、化学療法剤、細胞毒性剤、毒性部分、ホルモン、酵素、および放射性化合物からなる群より選択される化合物と結合している、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項15】
O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる、二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントであって:
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント;および
- 免疫調節化合物
を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントおよび治療用化合物を含む、抗体薬物複合体。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントが、CD3特異性結合化合物またはTGFβ特異性結合化合物に結合している、請求項14に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメント、または請求項15に記載の二重特異性もしくは多重特異性抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または請求項16に記載の抗体薬物複合体。
【請求項18】
O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントであって:
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)またはガンマ-デルタT細胞に特異的である、好ましくはCD3に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントであって:
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- TGFβに特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞であって、前記CAR T細胞が、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
【請求項21】
請求項5または6に列挙された重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、請求項20に記載のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞。
【請求項22】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントをコードする、または請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列をコードする、または請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列をコードする、または請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合フラグメントの少なくとも前記重鎖可変領域および/もしくは前記軽鎖可変領域をコードする、単離、合成または組換え核酸。
【請求項23】
配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、および/または配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項22に記載の核酸。
【請求項24】
非ヒト宿主細胞における発現のために最適化されたコドンである、請求項22から23のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項25】
請求項22から24のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項26】
前記ベクターが、T細胞活性化ドメインをコードする核酸配列および抗原認識ドメインをコードする核酸配列を含むCAR T細胞ベクターであり、前記抗原認識ドメインが、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、好ましくは請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
- 配列番号23に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号23に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号44に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号24に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列
- 配列番号25に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号26に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号41に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号27に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号28に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号28に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号42に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号29に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号30に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号31に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号32に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号32に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号43に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号33に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号34に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号35に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号36に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号37に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号38に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号39に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項25または26に記載のベクター。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体薬物複合体、CAR T細胞、核酸またはベクターを含む、単離または組換え宿主細胞、または非ヒト動物。
【請求項29】
哺乳動物細胞、細菌細胞、植物細胞、HEK293T細胞またはCHO細胞である、請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体薬物複合体、CAR T細胞、核酸分子、ベクターまたは宿主細胞を含む、組成物。
【請求項31】
前記組成物が、医薬適合性のある担体、希釈剤または賦形剤も含む医薬組成物である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置または予防のための別の治療剤をさらに含む、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体薬物複合体、CAR T細胞、核酸分子、ベクターまたは宿主細胞ならびにO-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置または予防のための別の治療剤を含む、キットオブパーツ。
【請求項34】
請求項1から21のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは抗体薬物複合体またはCAR T細胞を産生するための方法であって、前記方法が、請求項22から27のいずれか一項に記載の核酸またはベクターを含む細胞を培養すること、ならびに前記細胞が前記核酸またはベクターを翻訳することを可能にすること、それによって、請求項1から21のいずれか一項に記載の前記抗体または抗原結合フラグメントまたは抗体薬物複合体またはCAR T細胞を産生することを含み、前記方法が、好ましくは前記抗体または抗原結合フラグメントまたは抗体薬物複合体またはCAR T細胞を前記細胞から、および/または培養培地から取り出すことをさらに含む、方法。
【請求項35】
医薬品または予防薬または診断薬としての使用のための、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞。
【請求項36】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防するための方法における使用のための、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞。
【請求項37】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の診断における使用のための、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞。
【請求項38】
前記障害が、上皮癌、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、好ましくは結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される、請求項32に記載の組成物、請求項33に記載のキットオブパーツ、または請求項36もしくは37に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合フラグメントもしくは二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体もしくはCAR T細胞もしくは核酸もしくはベクターもしくは宿主細胞。
【請求項39】
前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置および/または予防に有用である別の治療剤と組み合わせられる、請求項36から38のいずれか一項に記載の使用のための抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞。
【請求項40】
試料がO-マンノシル化E-カドヘリンを含む、細胞、好ましくは腫瘍細胞を含むかどうかを決定するための、請求項1から21のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞の使用。
【請求項41】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞が試料中に存在するかどうかを決定するための方法であって:
- 前記試料を請求項1から21のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞と接触させること、および
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に結合することを可能にすること、および
- 細胞が、前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞が前記試料中に存在するかしないかを決定すること
を含む、方法。
【請求項42】
ヒトまたは非ヒト個体が、O-マンノシル化E-カドヘリンに陽性である癌に罹患しているかどうかを決定するための方法であって:
- 前記個体の腫瘍細胞を請求項1から21のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞と接触させること、
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを含む腫瘍細胞に結合することを可能にすること、および
- 腫瘍細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、前記個体がO-マンノシル化E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を含む癌に罹患しているかいないかを決定すること
を含む、方法。
【請求項43】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連する障害を処置または予防するための方法であって、請求項1から33のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞または組成物またはキットオブパーツの治療的有効量を、場合によっては、さらなる治療剤または治療手順に関連して、それを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項44】
医薬品の製造のための、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用。
【請求項45】
O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連する障害を処置または予防するため医薬品の製造のための、請求項1から29のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体または抗体薬物複合体またはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用。
【請求項46】
前記障害が、上皮癌、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、好ましくは結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される、請求項43に記載の方法または請求項44もしくは45に記載の使用。
【請求項47】
請求項34に記載の方法により得られる場合の抗体または抗原結合フラグメントまたは抗体薬物複合体またはCAR T細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、医学および免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
膜貫通タンパク質上皮カドヘリン(E-カドヘリン:とりわけCD324、カドヘリン-1、CAM120/80およびウボモルリンとも呼ばれる)は、カドヘリンスーパーファミリーのメンバーである。E-カドヘリンは、当技術分野において、分子量が約120kDaであるカルシウム依存性細胞間接着糖タンパク質として既知であり、5つの細胞外カドヘリン(EC)リピート(EC1~EC5)、膜貫通領域および高度に保存された細胞質テールで構成される。E-カドヘリンは、上皮細胞を互いにしっかりと保持する細胞間接着タンパク質の重要な種類である。E-カドヘリンダウンレギュレーションは、組織内部の細胞接着の強度を低下させ、結果として細胞の運動性および上皮間葉転換(EMT)の増加となる可能性がある。E-カドヘリン機能または発現の喪失は、癌の進行および転移に関係している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上皮カドヘリン特異性抗体、ならびに癌などの疾患の診断および処置におけるその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、本明細書において指定された構造的および機能的特徴を含むE-カドヘリン特異性抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0005】
種々の実施形態において、本発明は、E-カドヘリンの1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する。好ましい実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの結合は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基、468位でのO-マンノシル化スレオニン残基、470位でのO-マンノシル化スレオニン残基、472位でのO-マンノシル化スレオニン残基、463位でのグルタミン酸残基、465位でのセリン残基、469位でのセリン残基、および/または477位でのバリン残基の存在により、特に、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または470位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に対して影響される。いくらかの実施形態において、465位および/または469位での前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。好ましい実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好にO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する。好ましい実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも、少なくとも2倍良好に、より好ましくは少なくとも3倍良好に、より好ましくは少なくとも4倍良好に、より好ましくは少なくとも5倍良好にO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する。
【0006】
種々の実施形態において、本発明は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは:
a.アミノ酸配列GFXFSXAWを含む重鎖可変領域CDR1(XはTまたはIであり、XはNまたはYである);
または前記GFXFSXAW配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
b.アミノ酸配列IKSKIDG XT Xを含む重鎖可変領域CDR2(XはGまたはEであり、XはTまたはIである);
または前記IKSKIDG XT X配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
c.アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);
または前記TPGVGXNXPYYFDR配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
d.アミノ酸配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖可変領域CDR1;
または前記QSVLCRSNNKNC配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
e.アミノ酸配列WAXを含む軽鎖可変領域CDR2(XはSまたはCである);
または前記WAX配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
f.アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3;
または前記QQYSNTPQT配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
の1つまたは複数、および場合によってはそれぞれを含む。
【0007】
ある特定の実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるように、配列番号1~17からなる群より選択されるVH配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号18~22からなる群より選択されるVL配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変動は、CDR領域の外側に位置している。
【0008】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、完全長抗体である。
【0009】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0010】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgAアイソタイプである。種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgMアイソタイプである。種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgDアイソタイプである。ある特定の実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトIgA、IgMまたはIgDである。
【0011】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプである。ある特定の実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、好ましくはIgG1である。ある特定の実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、好ましくはヒトIgG1である。
【0012】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、脱フコシル化されている。
【0013】
ある特定の実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリン、好ましくはO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンに結合するために、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体と競合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0014】
ある特定の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、以下の特徴:
- O-マンノシル化E-カドヘリンの細胞外3(EC3)ドメインに結合する;
- O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好に、好ましくは少なくとも2倍良好に、より好ましくは少なくとも3倍良好に、より好ましくは少なくとも4倍良好に、より好ましくは少なくとも5倍良好に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する;および
- E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を同時発現する腫瘍細胞を結合する
の1つまたは複数、好ましくはそれぞれを有している。
【0015】
いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、以下の特徴:
- 結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合する;
- 健康な胸腺髄質上皮細胞または樹状細胞またはランゲルハンス細胞よりも良好に結腸癌細胞株SW948を結合する
の少なくとも1つをさらに含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、別の化合物に結合される。ある特定の実施形態において、前記他の化合物は、治療用化合物である。ある特定の実施形態において、前記他の化合物は、免疫調節化合物、T細胞結合化合物、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)結合化合物、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)結合化合物、ガンマ-デルタT細胞結合化合物、CD3特異性結合化合物、TGFβ特異性結合化合物、サイトカイン、二次抗体またはその抗原結合部分、検出可能な標識、薬物、化学療法剤、細胞毒性薬、毒性部分、ホルモン、酵素および放射性化合物からなる群より選択される化合物である。いくらかの実施形態において、前記免疫調節化合物は、本発明による抗体のFcテールではない。いくらかの実施形態において、前記免疫調節化合物は、非天然系免疫調節化合物である。
【0017】
直接的または間接的に治療用化合物に結合されている本発明による抗体または抗原結合フラグメントはまた、本明細書では本発明による抗体薬物コンジュゲート(ADC)とも呼ばれる。
【0018】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- 免疫調節化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0019】
いくらかの実施形態において、前記免疫調節化合物は、本発明による抗体のFcテールではない。いくらかの実施形態において、前記免疫調節化合物は、非天然系免疫調節化合物である。
【0020】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- T細胞結合化合物またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)結合化合物またはナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)結合化合物またはガンマ-デルタT細胞結合化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0021】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- CD3特異性結合化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0022】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- KLRG1特異性結合化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0023】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- CD103特異性結合化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0024】
本発明はまた:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメント;および
- TGFβ特異性結合化合物
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性または多重特異性結合化合物、好ましくは二重特異性または多重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0025】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- 好ましくはT細胞、NK細胞、NKT細胞またはガンマ-デルタT細胞に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0026】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
・CD3に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0027】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- KLRG1またはCD103に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0028】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- TGFβに特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0029】
ある特定の実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を提供し、CAR T細胞は、本発明による抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。前記CAR T細胞はまた、本発明による抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むことが好ましい。好ましくは、前記CDR1~3配列は、単鎖フォーマットにおける前記CAR T細胞の表面に存在する。
【0030】
本発明はまた、本明細書において指定された構造的および機能的特徴を含む核酸も提供する。種々の実施形態において、本発明は、本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメントをコードする、または本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖可変領域および/もしくは軽鎖可変領域をコードする単離、合成または組換え核酸を提供する。
【0031】
ある特定の実施形態において、本発明は、表1に示されるように、配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、および/または配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む核酸を提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記配列変動は、CDR領域の外側に位置している。
【0032】
ある特定の実施形態において、本発明による核酸は、DNAまたはRNAを含む。
【0033】
ある特定の実施形態において、本発明による核酸は、cDNA、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、またはDNA/RNAヘリックスを含む。
【0034】
ある特定の実施形態において、本発明による核酸は、非ヒト宿主細胞における発現に最適化されたコドンである。
【0035】
ある特定の実施形態において、本発明による核酸は、HEK293T細胞またはCHO細胞における発現に最適化されたコドンである。
【0036】
本発明は、本発明による核酸を含むベクターをさらに提供する。いくらかの実施形態において、前記ベクターは、抗原認識ドメインおよびT細胞活性化ドメインをコードする核酸配列を含むCAR T細胞ベクターである。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞ベクターは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列をさらに含む。
【0037】
本発明は、本発明による抗体、抗原結合フラグメント、核酸、ベクター、ADCまたはCAR T細胞を含む単離または組換え宿主細胞、または非ヒト動物をさらに提供する。ある特定の実施形態において、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞、細菌細胞、植物細胞、HEK293T細胞またはCHO細胞である。
【0038】
本発明はまた、本発明による抗体、抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター、ADC、CAR T細胞または宿主細胞を含む組成物も提供する。種々の実施形態において、前記組成物は、医薬適合性のある担体、希釈剤または賦形剤も含む医薬組成物である。
【0039】
本発明はまた、本発明による抗体、抗原結合フラグメント、核酸分子、ベクター、ADC、CAR T細胞または宿主細胞を含むキットオブパーツも提供する。
【0040】
ある特定の実施形態において、本発明による組成物またはキットオブパーツは、少なくとも1つの他の治療剤をさらに含む。
【0041】
本発明はまた、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを産生するための方法も提供し、その方法は、本発明による核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養して前記宿主細胞が前記核酸またはベクターを翻訳することを可能にし、それによって本発明による前記抗体または抗原結合フラグメントを産生することを含む。前記方法は、好ましくは、前記抗体または抗原結合フラグメントを前記宿主細胞から、および/または培養培地から回収することをさらに含む。いくらかの実施形態において、前記宿主細胞には、前記抗体の重鎖をコードする核酸配列および前記抗体の軽鎖をコードする核酸配列を両方とも含むベクターが提供される。いくらかの実施形態において、前記宿主細胞には、少なくとも2つの異なるベクターが提供され、1つのベクターは、前記抗体の重鎖をコードする核酸配列を含み、第2のベクターは、前記抗体の軽鎖をコードする核酸配列を含む。
【0042】
また、本発明による方法により得られる場合、抗体または抗原結合フラグメントも提供される。
【0043】
本発明はまた、医薬品または予防薬または診断薬としての使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞も提供する。
【0044】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞も提供される。いくらかの好ましい実施形態において、前記障害は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌である。いくらかの実施形態において、前記癌はまた、TGFβを発現する腫瘍細胞も含む。
【0045】
種々の実施形態は、本発明による使用のための抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供し、それによって、前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置および/または予防に有用な別の治療剤と併用される。
【0046】
本発明はまた、医薬品の製造のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用も提供する。
【0047】
また、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞に関連している障害を処置または予防するための医薬品の製造のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用も提供される。特定の実施形態において、前記細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態において、前記O-マンノシルトランスフェラーゼは、TMTC3である。また、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を処置または予防するための医薬品の調製のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用も提供される。特定の実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、上皮癌である。いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される。
【0048】
いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される。
【0049】
本発明はまた、治療的有効量の本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメント、および/または本発明による二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体もしくはADCもしくはCAR T細胞、および/または本発明による核酸、および/または本発明によるベクターもしくは細胞、および/または本発明による組成物もしくはキットオブパーツを、それを必要とする個体に投与することを含む、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置および/または予防するための方法も提供する。治療的有効量の本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメント、および/または本発明による二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体もしくはADCもしくはCAR T細胞、および/または本発明による核酸、および/または本発明によるベクターもしくは細胞、および/または本発明による組成物もしくはキットオブパーツを、それを必要とする個体に投与することを含む、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を少なくとも一部処置および/または予防するための方法が、さらに提供される。前記組成物は、本発明による医薬組成物であることが好ましい。
【0050】
本発明はまた、試料がO-マンノシル化E-カドヘリンを含む、細胞、好ましくは腫瘍細胞を含むかどうかを決定するための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞の使用も提供する。
【0051】
また、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む、細胞、好ましくは腫瘍細胞が試料中に存在するかどうかを決定するため方法も提供され、その方法は:
- 前記試料を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、ならびに
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン含有腫瘍細胞に結合することを可能にすること、ならびに
- 細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン含有腫瘍細胞が前記試料中に存在するかしないかを決定すること
を含む。
【0052】
また、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞が、試料中に存在するかどうかを決定するための方法も提供され、その方法は:
- 前記試料を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、ならびに
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に結合することを可能にすること、ならびに
- 細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞が前記試料中に存在するかしないかを決定すること
を含む。
【0053】
本発明はまた、ヒトまたは非ヒト個体がO-マンノシル化E-カドヘリンに陽性である癌に罹患しているかどうかを決定するための方法も提供し、その方法は:
- 前記個体の腫瘍細胞を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリン含有腫瘍細胞を結合することを可能にすること、ならびに
- 腫瘍細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、前記個体がO-マンノシル化E-カドヘリンに陽性である癌に罹患しているかいないかを決定すること
を含む。
【0054】
いくらかの実施形態において、前記方法は、エクスビボ方法である。他の実施形態において、前記方法は、インビボで実行される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A】(A)本文全体で使用されている番号付けを含む、完全長E-カドヘリンアミノ酸配列(Uniprot Q9UII7)が示されている。
図1B】(B)E-カドヘリンの異なるドメインが示される。Berx et al.Genomics 1995から採用。赤はAT1636の予測された結合エピトープ。
図1C】(C)さらに実施例においてp70と示されている、膜貫通(イタリック)および細胞間ドメインを含む短縮70kDaタンパク質が示されている。
図2】(A)AT1002およびAT1636抗体の免疫沈降試料を分析するSDS-PAGE。矢印は、AT1636により免疫沈降させ、質量分析により分析したタンパク質「バンド」を示し、JKT=Jurkat陰性対照T細胞株、DLD1は、結腸癌細胞株であり、M=分子量マーカー、IP=免疫沈降およびAT1002は、陰性対照抗体である。(B)EP700Yウサギ抗体(アブカム)およびCテール細胞内指向性抗体(BDバイオサイエンス)による完全長E-カドヘリンの免疫沈降ならびにDLD1細胞からのAT1636によるp70タンパク質の免疫沈降を示すウェスタンブロット。EP700Y;細胞外膜近位EC5ドメインを結合する;Cテールイントラ、E-カドヘリン(BDバイオサイエンス)のC末端細胞内ドメインに特異的で、検出のために使用されたマウス抗E-カドヘリン、ならびにAT1636は、p70E-カドヘリン型に優先的に曝露されているエピトープと反応する。
図3】完全長および短縮p70E-カドヘリンを表すグラフィックの概要。黒色のロリポップは、報告されたO-マンノースグリコシル化部位(Larsen PNAS(2017)およびVester-Christensen,PNAS(2013))を示し、白色および暗灰色のロリポップは、予測されたO-マンノースグリコシル化部位を説明し、明灰色のロリポップは、AT1636免疫沈降p70E-カドヘリンの質量分析によりマンノシル化されている可能性があることにより我々が同定した部位を説明する。太字で示されたアミノ酸残基は、アラニンスキャニングにより決定されたようにAT1636結合にとって重要である。大文字の残基472および474は、O-マンノシル化されていることが既知であり、470は、Larsen et al 2017およびVester-Christensen et al 2013により記載されるようにマンノシル化されることが予測されている。完全長E-カドヘリン(上)において、SC10.17(抗CD324モノクローナル抗体およびその使用、米国特許第9534058号)およびEP700Yの抗体結合領域ならびにβ-カテニン結合領域が示される。
図4】異なる阻害剤で前処理されているDLD1細胞へのAT1636の結合のフローサイトメトリ分析。Mann(マンノシルトランスフェラーゼ阻害剤:4-オキソ-2-チオキソ-3-チアゾリジニル酢酸(シグマ))またはCMK(フーリン含有コンベルターゼ阻害剤:デカノイル-RVKR-CMK(Tocris))阻害剤で48時間前処理したDLD1細胞に対しての5μg/mlでのAT1636および対照抗体AT1002およびEP700Yのヒストグラム(実線、オープンヒストグラム)が示されている。塗りつぶされたヒストグラムは、非処理細胞への結合を示す。
図5】(A)E-カドヘリンクローン親クローン、7G02の平均結合と比較してE-カドヘリン組換えタンパク質への増加した結合を有するサブクローン(赤ボックス)の選択および単離。細胞を組換えE-カドヘリンタンパク質およびIgG(H+L)-Alexa647および抗マウスFc-PE抗体で染色した。ゲート細胞の単一細胞クローニングを細胞ソーター(FACS ARIA、BD)で実行した。(B)親7G02クローンと比較したE-カドヘリン抗原結合の増加したサブクローンの選択。AT1636GFP低親細胞をGFP高サブクローン細胞と混合した。細胞のこの混合物をE-カドヘリン結合およびBCR発現について染色した。親7G細胞(オレンジ色)と比較したサブクローン(青色)のBCR発現に関連する抗原結合の強度が示されている。
図6A】(A)フローサイトメトリにより検出されるようなヒトCRC細胞株DLD1、胸部上皮細胞株MCF10aおよびマウスCRC細胞株CMT93へのAT1636およびAT1636高親和性変異型の結合曲線が示されている(ヤギ抗ヒト二次抗体(インビトロジェン)に共役したAlexa647染料の中央蛍光強度(MFI)が示されている)。EP700YおよびSC10.17抗体は、マウスE-カドヘリンと交差反応しない。
図6B】(B)皮膚上皮細胞株A431、肺A546およびマウスCMT93細胞株に対してフローサイトメトリにより検出されるようなAT1636およびAT1636-YNおよび-IYN変異型の対照抗体AT1002に対する結合比が示されている。
図7A】(A)可溶性p70E-カドヘリンへのAT1636、AT1636-NYおよび-IYN変異型のSPR結合。5.0μg/mlの抗体を、2.0μg/mlのp70E-カドヘリンで固定化されたスポットに注入した。対照として、EC5ドメインに特異的であるEP700Yウサギ抗ヒトE-カドヘリンを使用した。結合は、IBISマルチプレックスSPRイメージングを使用して検出される.
図7B】(B)組換えの、固定化された完全長E-カドヘリン(左パネル)、p70E-カドヘリン(中央パネル)および(この残基のマンノシル化を阻止する)M470A置換を含むE-カドヘリンD3ドメイン(右パネル)へのAT1636およびAT1636-IYN変異型の結合を決定するためのELISAアッセイ。SC10.17抗体は、完全長(EC1ドメイン)には結合するが、p70およびD3ドメインには結合しない対照抗体として使用される。AT1002は、インフルエンザに特異的な陰性ヒト対照抗体である。
図7C】(C)組換えの、固定化された完全長E-カドヘリン(左パネル)、p70E-カドヘリン(中央パネル)および(この残基のマンノシル化を阻止する)M470A置換を含むE-カドヘリンD3ドメイン(右パネル)に結合するために幅広い濃度範囲のAT1636およびその変異型を使用するELISAアッセイ。AT1002は、インフルエンザに特異的な陰性ヒト対照抗体である。
図8A】(A)AT1636免疫沈降および高レベルのマンノピラノシドを使用するAT1636免疫沈降物からのp70の特異的溶出の後の投入物およびフロースルー(FT)を示すウェスタンブロット。
図8B】(B)HEK細胞に由来する完全長E-カドヘリン(Sino Biological)へのAT1636結合(左パネル)および大腸菌由来E-カドヘリン(Lsbio)へのAT1636の結合の欠如(左パネル)を示すELISA。大腸菌産生E-カドヘリンは、EP700Y抗体により認識される。
図9】E-カドヘリン p70短縮EC3ドメイン(D3)のアラニン置換は、AT1636の結合に必須であるいくらかのアミノ酸を明らかにする。組換え小規模D3-FLAGマウスFc融合タンパク質へのAT1636の結合は、抗マウスFc捕捉時にELISAにより研究された。すべてのタンパク質は、培養上清において類似の量で発現し、D3野生型結合は、1と設定され、すべて、抗FLAG検出に正規化される。
図10】示されている計算解析は、いくらかの腫瘍特異的細胞株におけるTMTC3およびE-カドヘリンの複合mRNA発現である;円の中央には、組織の種類ごとに含まれる腫瘍細胞株の数がある。明灰色で、腫瘍細胞株の割合がE-カドヘリンおよびTMTC3発現の両方について高く(≧7倍)、したがって、AT1636により認識されると予測される。7のカットオフ値は、表3を参照して、そのような細胞株がAT1636抗体により結合される可能性があることを示したフローサイトメトリ分析に基づいて選択された。通常はTMTC3およびE-カドヘリンの両方について陰性である組織は、造血組織またはリンパ組織、骨および軟部組織である。(Broad Institute:https://portals.broadinstitute.org/ccle,J.Barretina,Nature(2012)から得られたデータ)。
図11】AT1636の結合が完全長E-カドヘリンを含むコンストラクトを用いて形質導入されたSK-MEL-5細胞に対して増加していることを示唆するフローサイトメトリ分析。SK-MEL-5が、通常はE-カドヘリンに対して陰性であるが、TMTC3を発現する。AT1636(実線)は、SK-MEL-5(左)には結合しないが、E-カドヘリンが過剰発現する場合に結合する(中央)。また、EP700Y(右)は、ここで、SK-MEL-5が結合されている。明灰色曲線は、アイソタイプの対照のバックグラウンド染色である。
図12】shRNA誘導TMTC3ノックダウンは、フローサイトメトリにより決定されるように、結果として低減されたAT1636結合となる。対照のスクランブルshRNAベクターのほかに、TMTC3標的化shRNAプローブが開発され、試験された。TMTC3発現は、qPCRにより決定されるように強力に低下される(左)。TMTC3ノックダウンは、結果として、AT1636結合において>3倍の低下となった(右パネル、実線)。
図13A】(A)抗CD3 UCHT1に融合したAT1636またはAT1636-IYNからなる一価T細胞誘導体(mTCE)の構造のグラフィック表現。
図13B】(B)化合物を2D細胞培養モデルにおいて試験し、ルシフェラーゼおよびGFP陽性CRC細胞株DLD1、HT29およびHCT116を5000c/w(96w)でO/N培養した後、エフェクタ細胞として刺激されていない総PBMCとともに2日間インキュベートした。細胞毒性は、48時間にわたって発現したルシフェラーゼの測定により確立された。
図13C】(C)AT1636、AT1636-IYNまたはAT1002およびUCHT1抗体に由来するCD3εscFvの両方について一価であるノブインホール(KiH)二重特異性フォーマットの構造のグラフィック表現。
図13D】(D)化合物を2D細胞培養モデルにおいて試験し、ルシフェラーゼおよびGFP陽性CRC細胞株DLD1およびHT29およびメラノーマ細胞株A375を5000c/w(96w)でO/N培養した後、KiH二重特異性一価AT1636、AT1636-IYNおよびAT1002をUCHT1 scFv CD3εとインキュベートし、続いて、エフェクタ細胞として刺激されていない総PBMCとともに2日間培養した。細胞毒性は、48時間のインキュベーション時間の終わりでのルシフェラーゼ活性の測定により評価された。
図14】通常、E-カドヘリンを発現する細胞株(DLD1、HCT116、およびHT29)および通常、E-カドヘリンに対して陰性である細胞(SK-MEL-5)におけるp70E-カドヘリンおよび完全長E-カドヘリンの安定した過剰発現。左の列は空のベクターが形質導入された細胞を示す。p70E-カドヘリンの過剰発現で、すべての細胞は、脱接着形態学的表現型(EMT表現型を示唆)を示す。
図15】TGFβの非存在下で培養された細胞と比較してTGFβとともに長期間培養されたDLD1細胞に結合するAT1636のフローサイトメトリ分析。
図16A】TGFβおよびAT1636-IYNの添加後に低下した細胞増殖および細胞数。(A)TGFβおよびAT1636およびAT1636-IYN変異型の非存在下または存在下でのA431細胞培養物。一番上の行のパネルは、組織培養処理済みプラスチック上で5日間培養されたA431細胞を示し、一番下の行のパネルは、10×倍率を使用してフィブロネクチンコートプラスチック上で培養された細胞A431細胞を示す。左パネルは培養培地中、中央のパネルはTGFβの存在下で、右はTGFβおよびAT1636-IYNとともに培養された細胞を示す。TGFβおよびAT1636-IYNの存在下で培養されたウェルにおいて、減少した(生存可能な)細胞および接着性がより低い細胞が観察された。プラスチックまたはフィブロネクチンコートプレートで培養された細胞間で差異は観察されず、AT1636-wtまたはAT1002対照抗体について、影響は観察されなかった(示さず)。
図16B】(B)TGFβ(左パネル)およびTGFβおよびAT1636-IYN(右パネル)の存在下での培養7日後にフィブロネクチンコートウェルで培養されたA431細胞の20×倍率を使用する詳細な代表的な概要。右パネルでは、より丸く、乾燥した単一細胞および接着性がより低い細胞が観察される。
図17】pH感受性Zenon pHrodo iFL染料を使用して蛍光顕微鏡(Incucyte)で検出されたDLD1細胞におけるAT1636およびその変異型の内在化の時系列分析。陰性対照AT1002を除くすべての抗体は、内在化される。
図18】AT1636およびその変異型およびCD103特異性抗体(MCA708)とインキュベートした後の完全長およびp70E-カドヘリンタンパク質が結合したプレート上でインキュベートされたCFSE標識CD103+T細胞の細胞表面被覆率が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
E-カドヘリン
E-カドヘリンはヒトに存在し、CD324とも呼ばれるCDH1遺伝子によりコードされている。現在既知であるヒトE-カドヘリンのアミノ酸配列を図1Aに示す。E-カドヘリンは、上皮細胞の接着結合に局在化する120kDaの膜貫通糖タンパク質である。E-カドヘリンは、いくらかのサブタイプ:E-カドヘリン(CDH1)、N-カドヘリン(CDH2)、およびP-カドヘリン(CDH3)などのタイプIの古典的カドヘリン;VE-カドヘリン(CDH5)およびOB-カドヘリン(CDH11)などのタイプIIの古典的カドヘリン;デスモソームカドヘリン;7回膜貫通型カドヘリン;FATおよびdachsous(DCHS)グループのカドヘリン;ならびにプロトカドヘリン(PCDH)に分類することができるカドヘリンの大きなファミリーのメンバーである。E-カドヘリンは、3つの成分:(1)同型のカドヘリン-カドヘリン相互作用を担っている細胞外カドヘリンドメイン(EC)(2)1回膜貫通型ドメインまたは7回膜貫通型ならびに(3)細胞表面、関連する細胞質カテニンタンパク質および細胞骨格の間のコネクタとして作用する細胞質ドメインを有する膜貫通タンパク質である。カドヘリンは、生物の成長(胚発生)、創傷治癒および腫瘍浸潤および転移に関与する。
【0057】
カルシウム依存性接着分子であることに加えて、E-カドヘリンはまた、上皮接合部形成の重要な調節因子である。カテニンとのその連携は、細胞-細胞接着および外側膜と頂端膜との間の上皮細胞/上皮シートの極性化を必要とする。チロシンリン酸化は、これらの複合体を崩壊させることができ、細胞接着特性における変化をもたらす。E-カドヘリン発現は、高侵襲性で不十分な分化の癌腫において頻繁にダウンレギュレートされる。これらの細胞におけるE-カドヘリンの増加した発現は、侵襲性を低下させる。したがって、E-カドヘリンの発現または機能の喪失は、腫瘍形成の進行における重要なステップであるように思われる。さらに、カドヘリンは、上皮間葉転換(EMT)、可逆的なプロセスを通じた細胞の浸潤および遊走において重要な役割を果たす。EMTは、多くの外部シグナル(炎症、ストレス、低酸素、免疫応答など)により調整することができる非常に多様なプロセスである。特に、EMT誘導転写因子(Snail、E47、TwistおよびZebファミリー)の強力な調節が、EMTに基づいており、例えばTGFβ、Wnt、インテグリンおよび増殖因子の細胞への結合により、結果としてE-カドヘリン、ZO-1、デスモプラキンのダウンレギュレーション、ならびにビメンチン、フィブロネクチン、N-カドヘリンなどアップレギュレーションとなることが、一般に受け入れられている。細胞は、より「幹細胞性」のような表現型に似ているプロセスを通過する。さらに最近では、既知のEMTマーカーのダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションなしで細胞がEMTを「示す」こともできることが観察されたため、このモデルは変更されている。これは、部分的EMT、ハイブリッドEMT/METおよび準EMTと名付けられており、新規モデルのほとんどは、細胞がタンパク質発現を調節することができる(例えばタンパク質内在化、高/低タンパク質の代謝回転)か、細胞が一緒に(クラスター)、活性/侵襲性の異なるモードを有するシステムを提案する。E-カドヘリンは、それらのプロセスで支配的な役割を果たしており、この点で、E-カドヘリンO-マンノシル化は、腫瘍細胞が周囲のマトリックスと相互作用する間、接着および形態学的変化を調節するための追加のツールであると考えられている。
【0058】
抗E-カドヘリン抗体およびその抗原結合フラグメント
本発明は、O-マンノシル化E-カドヘリンを特異的に結合することができる抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態において、抗体は単離される。他の実施形態において、抗体は、合成または組換えである。興味深いことに、本発明は、転移を有するステージIV結腸癌に罹患しているが、化学療法後何年もの間、完全に寛解しているヒト個体に由来するヒト抗体のVHおよびVL配列に基づいているVHおよびVL配列を含む抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。対照的に、多くの現在既知の治療用抗体は、典型的には、マウス、ラット、ラクダ、ウサギまたはヤギなどの非ヒト動物を免疫化し、その後、場合によってはヒト化プロセスを行うことにより得られる。そのようなヒト化抗体は、非ヒト配列に対するレシピエントの免疫応答に起因する有害な副作用のリスクを依然として伴う。加えて、多くの従来技術の治療用抗体またはそのフラグメントは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖が無作為に対になっている人工ファージディスプレイライブラリに由来する。対照的に、本発明は、完全寛解状態にあるヒト患者においてインビボで進化している抗体の配列に基づいて、自然に対になっている重鎖および軽鎖を有する抗体および抗原結合フラグメントを提供する。
【0059】
E-カドヘリンが、多くの上皮組織において幅広く発現しているので、本発明以前は、特にE-カドヘリンがEMTを促進するために腫瘍細胞において頻繁にダウンレギュレートされる事実に鑑み、当技術分野において治療用途のための選択の抗原としてE-カドヘリンは考慮されていなかった。しかし、本発明は、腫瘍細胞において頻繁にアップレギュレートされている、約70kDaの分子量を有するE-カドヘリンの短縮型を特異的に結合することができる、抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、タンパク質性分子ならびに任意のその抗原結合フラグメントを包含する。前記タンパク質性分子は、好ましくは免疫グロブリンタンパク質であり、それらがタンパク質の免疫グロブリンクラスに属していることを意味する。いくらかの実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原上のエピトープを結合する1つまたは複数のドメインを含み、そのようなドメインは、好ましくは抗体の可変ドメインに由来するか、それと配列相同性を共有する。
【0061】
相補性決定領域(CDR)は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインに存在する超可変領域である。完全長抗体の場合、重鎖のCDR1~3および接続した軽鎖のCDR1~3は一緒に抗原結合部位を形成する。
【0062】
天然の抗体のフラグメント結晶化可能(Fc)領域は、2つの重鎖のCH2およびCH3ドメインで構成される。
【0063】
典型的には、抗体の抗原結合フラグメントは、必ずしも同じ程度である必要はないが、前記抗体と同じ抗原を結合することができる。いくらかの実施形態において、抗原結合フラグメントは、少なくとも抗体の重鎖CDR3領域を含む。いくらかの実施形態において、抗原結合フラグメントは、少なくとも抗体の重鎖CDR3領域および軽鎖CDR3領域を含む。いくらかの実施形態において、前記重鎖および軽鎖CDR3領域は、互いに対になっている。
【0064】
種々の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域を含む。種々の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくともVHドメインを含む。種々の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域を含む。種々の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくともVLドメインを含む。種々の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくともVHおよびVLドメインを含む。
【0065】
本発明による抗体または抗原結合フラグメントの非限定例は、完全長抗体、DuoBody(登録商標)(2つの異なるIgG1を含む二重特異性抗体)、単一ドメイン抗体またはナノボディ(単一VHまたはVLドメインを含む)、単鎖可変フラグメント(scFv;典型的に短いリンカーペプチドにより接続されたVHドメインおよびVLドメインを含む)、Fvフラグメント(VHドメインおよびVLドメインを含む、典型的にはリンカーがない)、unibody(商標)、Fdフラグメント(VHドメインおよびCH1ドメインを含む)、diabody(2つのVHドメインおよび2つのVLドメインを含み、VHはそのような短いリンカーによりVLと結合しており、互いに対になることができないが別の鎖のVLおよびVHと対になり、それによって2つの抗原結合部位を作成する)、Fabフラグメント(重鎖定常ドメインCH1、軽鎖定常ドメインCLならびに重鎖可変ドメインVHおよび軽鎖可変ドメインVLを含む)ならびにF(ab’)フラグメント(ジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む)である。
【0066】
種々の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。いくらかの実施形態において、前記VHは、前記VLと対になっている。
【0067】
治療的使用のための抗体は、可能な限り処置される被験者の自然抗体に近いもの(例えば、ヒト被験者についてはヒト抗体)が好ましい。種々の実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgGまたはIgMまたはIgA完全長抗体である。本明細書で使用されるように、IgG完全長抗体は、2つのガンマクラスの重鎖および2つの軽鎖を含む二価の分子である。当業者に周知であるように、抗体の重鎖は、免疫グロブリン分子を構成する2つのタイプの鎖のうち大きいほうである。天然重鎖は、典型的には、定常領域CH1、CH2およびCH3を含む定常ドメインCH、ならびに抗原結合に関与する可変ドメイン(VH)を含む。抗体の軽鎖は、免疫グロブリンを構成する2つのタイプの鎖のうち小さい方である。天然軽鎖は、典型的には、定常ドメイン(CL)および可変ドメイン(VL)を含む。軽鎖可変ドメインは、常にではなく頻繁に、抗原結合に関与する重鎖の可変ドメインと一緒になっている。
【0068】
完全長IgD抗体は、デルタクラスの2つの重鎖および2つの軽鎖を含む二価の分子である。
【0069】
IgMの場合における完全長抗体は、免疫グロブリンの各モノマーが重鎖および軽鎖で形成される2つの抗原結合部位を有する5個または6個の結合した免疫グロブリンを含む十価または十二価の分子である。
【0070】
IgAの場合における完全長抗体は、単量体または二量体であり得る。
【0071】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである。ヒトアミノ酸配列の存在は、マウスまたはヒト化抗体とは反対に、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくし、非ヒトCDRまたは可変領域または定常領域の配列は、ヒトレシピエントにおける抗マウス免疫応答のリスクに関与する。
【0072】
種々の実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプ、好ましくはIgG1である。これは、例えばIgG1抗体が典型的にヒト個体へのインビボ投与時に好ましい半減期を有しているので、ヒトにおける医療用途に有益である。さらに、IgG1のFcテールは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞貪食(ADCP)のようなエフェクタ機能を可能にする。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトIgG、好ましくはヒトIgG1である。
【0073】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgG2アイソタイプである。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgG3アイソタイプである。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgG4アイソタイプである。
【0074】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgMアイソタイプである。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgAアイソタイプである。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、IgDアイソタイプである。
【0075】
種々の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、1つまたは複数の突然変異を含む。そのような突然変異は、例えば、アミノ酸置換、挿入または欠失を含む。本明細書で使用されるように、得られる抗体の結合特徴を本質的に変更せずに1個または数個、好ましくは最大20個のアミノ酸残基が欠失している完全長抗体は、依然として完全長抗体とみなされる。
【0076】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、修飾されたFcテールを有する。いくらかの実施形態において、前記Fcテールは、1つまたは複数のアミノ酸置換(複数を含む)および/またはグリコシル化の変更により修飾されている。いくらかの実施形態において、前記Fcテールは、ADCC活性を低下させるために修飾されている。いくらかの実施形態において、前記Fcテールは、ADCC活性を強化するために修飾されている。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、脱フコシル化されており、それによって、ADCC活性が強化される。
【0077】
用語「結合することができる」、「特異的に」、「特異的に結合することができる」、「特異的結合が可能である」および「結合する」は、本明細書において交換可能に使用され、抗体、またはその抗原結合フラグメントと、その標的(その抗原とも呼ばれる)との間の相互作用を指す。これは、前記抗体または抗原結合フラグメントが他の抗原またはアミノ酸配列よりも優先的に前記抗原に結合することを意味する。したがって、抗体または抗原結合フラグメントが、他の抗原またはアミノ酸配列に非特異的に結合する可能性があるが、前記抗体または抗原結合フラグメントのその抗原に対する結合親和性は、前記抗体または抗原結合フラグメントの他の抗原またはアミノ酸配列に対する非特異的結合親和性よりも有意に高い。
【0078】
典型的に、いくらかの方法において修飾されている本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、少なくとも50%のその結合活性(親抗体と比較した場合)を保持している。好ましくは、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、親抗体と比較して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または100%のその結合活性を保持している。
【0079】
いくらかの実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、実質的にその生物学的活性を変更しない保存的または非保存的アミノ酸置換を含む(得られる変異型は、本明細書においてそれぞれ「保存的変異型」または「機能保存変異型」と呼ばれる)。いくらかの実施形態において、そのような保存的変異型または機能保存変異型は、親抗体と比較して少なくとも80%、90%、95%または100%のその結合活性を保持している。
【0080】
本明細書で使用されるように、保存的置換は、それによってアミノ酸残基が一般的に類似の特性(サイズ、疎水性など)を有する別の残基で置換されている置換であり、そのため、抗体の全体的な機能性は、本質的に影響されない。典型的には、表2に示される、同じクラス内でのアミノ酸残基の置換は、保存的アミノ酸置換とみなされる。
【0081】
O-マンノシル化E-カドヘリンに結合することができる本発明による抗体または抗原結合フラグメントはまた、前記抗体または抗原結合フラグメントにより結合されるO-マンノシル化E-カドヘリンエピトープが前記他の化合物にも期せずして存在する場合、別の化合物にも特異的である可能性がある。そのような場合において、本明細書でO-マンノシル化E-カドヘリンに特異的であると呼ばれている抗体または抗原結合フラグメントはまた、同じ種類のO-マンノシルエピトープを含むそのような他の化合物にも特異的である。そのような他のO-マンノシル化エピトープは、O-マンノシル化E-カドヘリンをインビボで産生するO-マンノシルトランスフェラーゼ以外の別のO-マンノシルトランスフェラーゼによりインビボで産生される可能性がある。したがって、用語「結合すること」または「特異的な」は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの別のタンパク質または同じ種類のO-マンノシル化エピトープを含むタンパク質(複数を含む)への結合を排除しない。
【0082】
「結合親和性」は、抗体または抗原結合フラグメントの単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用されるように、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。親和性は、一般に、平衡解離定数(K)により表すことができ、kのkに対する比率として算出されるものであり、例えば、Chen,Y.,et al.,(1999)J.Mol Biol 293:865-881を参照されたい。親和性は、例えば、BiaCore(GEヘルスケア)、Octet(Fortebio)またはIBIS Technologies BV(ヘンゲロー、オランダ)のIBIS-iSPRインスツルメントなどの表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイまたはKinexaなどの液相アッセイなどの当技術分野で既知の一般的な方法により測定することができる。
【0083】
本明細書で使用されるように、用語「核酸」および「核酸分子」は、交換可能に使用される。いくらかの実施形態において、本発明による核酸または核酸分子は、ヌクレオチドの鎖、より好ましくはDNA、cDNAまたはRNAを含む。いくらかの実施形態において、本発明による核酸または核酸分子は、例えばDNA/RNAヘリックス、ペプチド核酸(PNA)および/またはロック核酸(LNA)などの、天然ヌクレオチドと同じ機能を示す非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチドおよび/または非ヌクレオチド構築ブロックを含む。
【0084】
アミノ酸または核酸配列の同一性の割合、または用語「%配列同一性」は、本明細書において、2つの配列を整列させて必要に応じてギャップを導入し、最大パーセント同一性に達した後の参照配列における残基と同一である、候補アミノ酸または核酸配列における残基の割合として定義される。整列のための方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野において周知であり、例えば「Align2」である。
【0085】
本明細書で使用されるように、単数形の用語「a」は、用語「1つまたは複数」を包含する。
【0086】
代表的なE-カドヘリン特異性抗体
本発明は、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的であり、特定の構造的および機能的特徴を有する抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびに疾患の処置または予防のためのそれらの治療的使用を提供する。そのような疾患の非限定例は、O-マンノシル化E-カドヘリン含有癌である。
【0087】
本明細書で使用されるように、用語「O-マンノシル化E-カドヘリン」は、マンノースがスレオニンまたはセリンの酸素原子と結合していることを意味するO-結合マンノースを有する少なくとも1つの前記スレオニンまたはセリン残基を含むE-カドヘリンタンパク質を指す。いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリンタンパク質は、少なくとも1つの単一O-マンノシル化スレオニンまたはセリン残基を含む。用語「単一O-マンノシル化スレオニン残基」は、別の糖部分のO-結合マンノースへの結合がない前記O-結合マンノースを含むスレオニン残基を指す。用語「単一O-マンノシル化セリン残基は、別の糖部分のO-結合マンノースへの結合がない前記O-結合マンノースを含むセリン残基を指す。
【0088】
種々の実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的である本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの結合は、図1Aに示されるように、E-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基、468位でのO-マンノシル化スレオニン残基、470位でのO-マンノシル化スレオニン残基、472位でのO-マンノシル化スレオニン残基、463位でのグルタミン酸残基、465位でのセリン残基、469位でのセリン残基、および/または477位でのバリン残基の存在に依存している。
【0089】
いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的である抗体、およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの結合は、図1Aに示されるように、E-カドヘリンアミノ酸領域467~472内の1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または470位でのO-マンノシル化スレオニン残基および/または472位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基および472位でのO-マンノシル化スレオニン残基の存在に依存している。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントの前記E-カドヘリンへの結合は、図1Aに示されるように、E-カドヘリン配列の463位でのグルタミン酸残基、および/または465位でのセリン残基、および/または469位でのセリン残基、および/または477位でのバリン残基の存在にさらに依存している。いくらかの実施形態において、465位および/または469位での前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0090】
本明細書で使用されるように、抗体または抗原結合フラグメントの結合は、前記アミノ酸残基のアラニン残基による置き換えが、前記抗体または抗原結合フラグメントのその抗原への結合を少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%低減する場合、ある特定のアミノ酸残基に「依存している」。
【0091】
いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的であり、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基、および/または468位でのO-マンノシル化スレオニン残基、および/または470位でのO-マンノシル化スレオニン残基、および/または472位でのO-マンノシル化スレオニン残基、および/または463位でのグルタミン酸残基、および/または465位でのセリン残基、および/または469位でのセリン残基、および/または477位でのバリン残基に特異的に結合する本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態において、465位および/または469位での前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0092】
本発明のいくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的であり、E-カドヘリンのO-マンノシル化スレオニン残基の1つまたは複数に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する。
【0093】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基、468位でのO-マンノシル化スレオニン残基、470位でのO-マンノシル化スレオニン残基、および472位でのO-マンノシル化スレオニン残基からなる群より選択される1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の468位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の470位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の472位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0094】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0095】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0096】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列の467位でのO-マンノシル化スレオニン残基および468位でのO-マンノシル化スレオニン残基および470位でのO-マンノシル化スレオニン残基および472位でのO-マンノシル化スレオニン残基を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。
【0097】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のT468およびT470を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、スレオニン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0098】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のT467、T468およびT470を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、3つのスレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。
【0099】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のT467、T468、T470およびT472を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、4つのスレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。
【0100】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のT468、S469およびT470を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、スレオニン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0101】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のT467、T468、S469およびT470を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0102】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のS465、T467、T468、S469およびT470を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0103】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のS465、T467、T468、S469、T470およびT472を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0104】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のE463、S465、T467、T468、S469、T470およびT472を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0105】
いくらかの実施形態は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のE463、S465、T467、T468、S469、T470、T472およびV477を含むE-カドヘリンの領域を特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0106】
いくらかの実施形態は、配列TSTを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、スレオニン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0107】
いくらかの実施形態は、配列TTSTを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記セリン残基は、O-マンノシル化されている。
【0108】
いくらかの実施形態は、配列STTSTを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0109】
いくらかの実施形態は、配列STTSTTを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0110】
いくらかの実施形態は、配列ESTTSTTを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0111】
いくらかの実施形態は、配列ESTTSTTVを含むE-カドヘリンのエピトープを特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供し、前記スレオニン残基の少なくとも1つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも2つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基の少なくとも3つは、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、前記スレオニン残基はすべて、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、少なくとも1つのセリン残基は、O-マンノシル化されている。いくらかの実施形態において、セリン残基は両方とも、O-マンノシル化されている。
【0112】
E-カドヘリンは、CDH1遺伝子の産物として当技術分野において既知であり、ヒトにおいては、約120kDaの分子量を有する。しかし、本発明は、O-マンノシル化短縮Eカドヘリン型も自然界に存在するという驚くべき洞察を提供する。約70kDaの分子量を有するこの短縮型は、完全長E-カドヘリンの細胞外ドメインEC1およびEC2を欠く。細胞外ドメイン5,4および細胞外ドメインEC3の一部は、短縮70kDa型に依然として存在している。本発明者らは、この短縮70kDa型のE-カドヘリンが多くの種類の上皮細胞の表面に存在し、頻繁に腫瘍細胞上でアップレギュレートされるという洞察を提供している。理論に縛られることなく、とりわけ、短縮70kDa型が実施例において示されるように上皮間葉転換(EMT)を刺激し、それによって、腫瘍細胞の遊走および転移を増加させるので、70kDa型のE-カドヘリンのアップレギュレーションが腫瘍増殖に寄与すると考えられている。さらに、短縮70kDa型のE-カドヘリンが、120kDaの完全長型のE-カドヘリンと比較して免疫細胞を結合する能力が低いので、70kDa型のE-カドヘリンのアップレギュレーションが腫瘍の免疫逃避メカニズムに貢献すると考えられている。本発明によれば、O-マンノシル化70kDa E-カドヘリン型の過剰発現は、CD3またはKLRG1またはCD103を介する免疫細胞認識からの逃避を促進することができ、E-カドヘリンの完全なダウンレギュレーションなしでEMTを促進する。したがって、腫瘍細胞上での70kDa短縮型のアップレギュレーションは、これらの腫瘍細胞と免疫細胞との間の相互作用を減少させることができ、それによって、免疫応答から腫瘍が回避するのを支援する可能性がある。
【0113】
いくらかの実施形態において、本発明は、約120kDaの周知のO-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好に、上述したO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する、抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。好ましい実施形態は、O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも少なくとも2倍良好に、より好ましくは少なくとも3倍良好に、より好ましくは少なくとも4倍良好に、より好ましくは少なくとも5倍良好にO-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。この特徴は、短縮70kDa E-カドヘリン型が、腫瘍細胞上で有意にアップレギュレートされる場合に、健康な組織結合により引き起こされる腫瘍特異性の向上および有害な副作用の低下を可能にする。本明細書で使用されるように、用語「完全長E-カドヘリン」は、例えば図1Aに示されるように、ヒトにおいて約120kDaの分子量を有する既知のCDH1遺伝子産物を指す。用語「短縮70kDa E-カドヘリン」または「70kDa E-カドヘリン型」は、60kDaから80kDa、典型的には約70kDaの分子量を有し、また上皮細胞の表面上で自然に発生する、より小さいE-カドヘリン型を指す。図1Cに示されるように、60kDaから80kDaの分子量を有するこの自然発生した短縮E-カドヘリン型は、完全長E-カドヘリンの細胞外ドメインEC1およびEC2を欠く。細胞外ドメイン5,4および細胞外ドメインEC3の一部は、この短縮70kDa型に依然として存在している。用語「O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリン」は、図1Aに示されるように少なくとも1つのO-マンノシル化スレオニンまたはセリン残基、好ましくは少なくとも467位および/または468位および/または470位でのO-マンノシル化スレオニン残基を含む上述した短縮70kDa E-カドヘリンタンパク質を指す。
【0114】
ある特定の実施形態において、本発明の抗E-カドヘリン抗体または抗原結合フラグメントは:
- アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);および
- アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0115】
ある特定の実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは:
a.アミノ酸配列GFXFSXAWを含む重鎖可変領域CDR1(XはTまたはIであり、XはNまたはYである);
b.アミノ酸配列IKSKIDG XT Xを含む重鎖可変領域CDR2(XはGまたはEであり、XはTまたはIである);
c.アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);
d.アミノ酸配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖可変領域CDR1;
e.アミノ酸配列WAXを含む軽鎖可変領域CDR2(XはSまたはCである);
f.アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3;
または前記QQYSNTPQT配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
の1つまたは複数、および場合によってはそれぞれを含む。
【0116】
場合によっては、保存的アミノ酸置換は、上述したCDR配列の少なくとも1つに適用される。いくらかの実施形態において、前記保存的置換は、表2に示されるようなアミノ酸クラスの1つまたは複数のアミノ酸残基の、同じアミノ酸クラスの別のアミノ酸残基による置換を含む。保存的アミノ酸置換の非限定例は、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水性残基の、別の疎水性残基による置換、およびアルギニンのリジンによる置換、グルタミン酸のアスパラギン酸による置換、またはグルタミンのアスパラギンによる置換などの1つの極性残基の別の極性残基による置換を含む。好ましくは、保存的アミノ酸置換の後、親抗体の好ましいE-カドヘリン結合特徴は、維持されるかさらには改善される。好ましくは、そのような変異型のCDR配列は、親配列とは3つ以下、好ましくは2つ以下、好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なる。
【0117】
そのため、いくらかの実施形態は:
- アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);または前記TPGVGXNXPYYFDR配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;ならびに
- アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3または前記QQYSNTPQT配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、本発明の抗E-カドヘリン抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0118】
また、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、前記抗体または抗原結合フラグメントは:
a.アミノ酸配列GFXFSXAWを含む重鎖可変領域CDR1(XはTまたはIであり、XはNまたはYである);
または前記GFXFSXAW配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
b.アミノ酸配列IKSKIDGXTXを含む重鎖可変領域CDR2(XはGまたはEであり、XはTまたはIである);
または前記IKSKIDGXTX配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
c.アミノ酸配列TPGVGXNXPYYFDRを含む重鎖可変領域CDR3(XはAまたはTであり、XはDまたはNである);
または前記TPGVGXNXPYYFDR配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
d.アミノ酸配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖可変領域CDR1;
または前記QSVLCRSNNKNC配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
e.アミノ酸配列WAXを含む軽鎖可変領域CDR2(XはSまたはCである);
または前記WAX配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
f.アミノ酸配列QQYSNTPQTを含む軽鎖可変領域CDR3;
または前記QQYSNTPQT配列とは1つ、2つまたは3つの保存的置換により異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
の1つまたは複数、および場合によってはそれぞれを含む。
【0119】
表1は、本発明による好ましい抗体の配列を提供する。これらの好ましい抗体は、本明細書では、抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENと呼ばれる。これらの抗体は、O-マンノシル化E-カドヘリン、特に、本明細書の上記で記載されたような新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を結合する。これらの好ましい抗体の重鎖および軽鎖CDR配列は、a)からf)で上述したようにCDR配列GFXFSXAW、IKSKIDGXTX、TPGVGXNXPYYFDR、QSVLCRSNNKNC、WAXおよびQQYSNTPQTによる。
【0120】
本明細書で使用されるように、用語「AT1636」、「E-C06」、「D-H04」、「D-A02」、「D-E09」、「E-A04」、「E-B09」、「C-A05」、「C-A03」、「C-B02」、「C-D04-A」、「C-D04-B」、「F-C08」、「D-G03」、「D-F10」、「C-E08」、「D-B06」、「D-G05」、「D-H08」、「C-H01」、「D-C12」、「D-C11」、「E-C10」、「AT1636-I」、「AT1636-Y」、「AT1636-E」、「AT1636-N」、「AT1636-YN」、「AT1636-IYN」および「AT1636-IYEN」は、図1に示されるようなこれらの抗体の少なくとも重鎖および軽鎖CDR1~3領域、好ましくは重鎖および軽鎖可変領域を有するすべての抗体および抗原結合フラグメントを包含する。
【0121】
表1に示される抗体に基づいて、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合し、表1に示される抗体の少なくとも1つのCDR配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを産生することが可能である。そのため、表1に示されるような抗体の少なくとも1つのCDR配列を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。前記CDR配列は、表1に示されるような抗体のCDR3配列が好ましい。いくらかの実施形態において、表1に示されるような抗体の重鎖CDR3配列および軽鎖CDR3配列を含む抗体または抗原結合フラグメントが提供される。したがって、いくらかの実施形態は、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体の重鎖および軽鎖CDR3配列を含む抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0122】
いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合し、表1に示される1つまたは複数の抗体の重鎖CDR1~3配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0123】
いくらかの実施形態において、表1に示された同じ抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体または抗原結合フラグメントが提供される。したがって、この実施形態によれば、抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNまたはAT1636-IYENの重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列は、1つの抗体または抗原結合フラグメントに一緒に存在する。そのような抗体または抗原結合フラグメントは、複数の異なる重鎖と機能的に対となることができ、それによって前記重鎖の抗原特異性が維持される軽鎖として本明細書で定義されている一般的な軽鎖をさらに含む。このアプローチは、重鎖が多くの場合親和性および特異性の主な推進力であるという周知の事実に基づく。一般的な軽鎖の所与の重鎖とのペアリングは、典型的に、好ましい構造を提供するが、そのような一般的な軽鎖は、抗原特異性に有意には寄与しない。
【0124】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示される同じ抗体の3つすべての重鎖CDRおよび3つすべての軽鎖CDRを含む。そのため、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体の重鎖および軽鎖CDR1~3配列を含む抗体または抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0125】
抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)配列も、表1に示される。これらのVHおよび/またはVL配列に基づいて、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合し、表1に示される抗体の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを産生することがさらに可能である。典型的には、80%から99%のVHおよびVL配列の変形は許容されるが、特に、CDR領域が未変更のままである場合に抗原結合性を維持する。そのため、表1に示されるようなVHまたはVL配列と少なくとも80%の配列同一性を有するVHまたはVL配列を含む抗体および抗原結合フラグメントもまた、本明細書で提供される。
【0126】
そのため、表1に示される抗体の重鎖可変領域(VH)、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントが提供される。また、表1に示される抗体の軽鎖可変領域(VL)、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントも提供される。いくらかの実施形態は、表1に示される抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、表1に示される抗体の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体の重鎖CDR3配列および軽鎖CDR3配列を含む。好ましくは、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0127】
例えば、いくらかの実施形態において、表1に示されるVHまたはVL配列の1つまたは複数のフレームワーク残基は、免疫原性を低下させるため、および/または得られる抗体または抗原結合フラグメントの結合有効性または安定性を高めるために修飾される。フレームワーク配列は、例えば、好ましくは得られる抗体-またはその抗原結合フラグメント-の特徴を試験した後で、そのようなフレームワーク配列をコードする核酸分子を突然変異することにより最適化される。このように、改善された結合化合物を得ることが可能である。
【0128】
いくらかの実施形態において、1つまたは複数のフレームワーク残基は、免疫原性を低下させるために、抗体AT1636が由来する生殖系列の配列に突然変異して戻される。所与の抗体のフレームワーク領域を、抗体が由来する生殖系列の配列と比較するための方法は、当技術分野において周知である。
【0129】
いくらかの実施形態において、表1に示されるVHまたはVL配列の1つまたは複数のフレームワーク残基は、1つまたは複数のT細胞エピトープを除去するために修飾され、それによって、得られる抗体または抗原結合フラグメントの潜在的な免疫原性を低下させる。これは、脱免疫化と呼ばれる。所与の抗体または抗原結合フラグメントのフレームワーク領域を脱免疫化する方法もまた、例えば、De Groot et al,2005に記載されているように、当技術分野において周知である。
【0130】
いくらかの実施形態において、表1に示されるようなVHまたはVL配列のフレームワーク残基の最大10のアミノ酸残基は、表1に示されるような前記VHまたはVL配列と比較して修飾されている。いくらかの実施形態において、表1に示されるようなVHまたはVL配列のフレームワーク残基の最大8つのアミノ酸残基は修飾されている。いくらかの実施形態において、表1に示されるようなVHまたはVL配列のフレームワーク残基の最大5つのアミノ酸残基は修飾されている。いくらかの実施形態において、表1に示されるようなVHまたはVL配列のフレームワーク残基の最大3つまたは2つのアミノ酸残基は修飾されている。いくらかの実施形態において、表1に示されるようなVHおよびVL配列のフレームワーク残基の1つのアミノ酸残基は修飾されている。
【0131】
いくらかの実施形態は:
- 配列番号1~17からなる群より選択されるVH配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域;および/または
- 配列番号18~22からなる群より選択されるVL配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0132】
本発明による好ましい抗体は、抗体AT1636である。この抗体は、腫瘍細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に本明細書の上記で記載されたような新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を結合することができるので好ましい。AT1636の特定の利点は、約120kDaの完全長E-カドヘリンよりも良好にこの短縮70kDa E-カドヘリン型を結合するという事実である。AT1636のこの特徴は、典型的に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンが、腫瘍細胞上でアップレギュレートされる場合に、腫瘍特異性の向上を可能にする。AT1636が短縮70kDa E-カドヘリン型を優先するというさらなる利点は、完全長E-カドヘリンが広く発現されることである。したがって、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先がない場合、広く発現した完全長E-カドヘリンは、シンクとして機能する可能性がある、および/または望ましくない効果をもたらす可能性がある。さらに、完全長E-カドヘリンの発現レベルは非常に高く、そのため、多くの場合、健康な上皮細胞と腫瘍上皮細胞との間を区別することができないが、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先は、より高い腫瘍特異性を可能にする。加えて、E-カドヘリンは、重要なバリア機能を有し、そのため、E-カドヘリンの健康な機能による有意な干渉を回避することが好ましい。
【0133】
さらに、AT1636は、転移を有するステージIV結腸癌に罹患しているが、化学療法後何年もの間、完全に寛解しているヒト個体に由来し、治療効果を示唆する。興味深いことに、AT1636は、IgG3アイソタイプである。ヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0134】
加えて、AT1636は、O-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合するその能力により選択された。AT1636は、腫瘍細胞、特に上皮腫瘍細胞、より具体的には、実施例において示されるように、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、肺癌細胞および食道癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞に結合する。そのため、抗体AT1636は、O-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を発現する癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に特に適している。
【0135】
表1に示される抗体E-C10、D-C12およびD-C11は、AT1636と同じ重鎖および軽鎖CDR1~3配列を有し、そのため、同じ結合特異性を有する。これらの抗体はまた、とりわけ、細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に本明細書に記載されるような新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型、より具体的には、図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基を結合することができるので、本発明による好ましい抗体であり、そのため、そのようなO-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞、特に癌細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に非常に適している。ヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0136】
表1に示されるような抗体AT1636、E-C10、D-C12およびD-C11の重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANDPYYFDRである。これらの抗体AT1636、E-C10、D-C12およびD-C11の軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0137】
抗体AT1636のVH配列は、配列番号1として表1に示されている。抗体AT1636のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体AT1636の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0138】
抗体E-C10のVH配列は、配列番号1として表1に示されている。抗体E-C10のVL配列は、配列番号22として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号22に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号1に示されるようなVH配列および配列番号22に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体E-C10の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0139】
抗体D-C12のVH配列は、配列番号13として表1に示されている。抗体D-C12のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号13に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号13に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-C12の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0140】
抗体D-C11のVH配列は、配列番号14として表1に示されている。抗体D-C11のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号14に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号14に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-C11の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0141】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体AT1636またはE-C10またはD-C12またはD-C11と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0142】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636またはE-C10またはD-C12またはD-C11と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0143】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636またはE-C10またはD-C12またはD-C11と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0144】
表1に示される、抗体E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-EおよびAT1636-Nはまた、本発明による好ましい抗体である。これらの抗体はまた、細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型、より具体的には、図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基を結合することができ、そのため、そのようなO-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞、特に癌細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に非常に適している。これらの抗体におけるヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0145】
表1に示される、抗体E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09およびAT1636-Iの重鎖CDR1~3配列は、GFIFSNAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANDPYYFDRである。これらの抗体E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09およびAT1636-Iの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFIFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0146】
抗体E-C06およびD-H04のVH配列は、配列番号2として表1に示されている。抗体E-C06およびD-H04のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号2に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号2に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体E-C06またはD-H04の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0147】
抗体D-A02、D-E09、E-A04、E-B09およびAT1636-IのVH配列は、配列番号3として表1に示されている。抗体D-A02、D-E09、E-A04、E-B09およびAT1636-IのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号3に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号3に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-A02、D-E09、E-A04、E-B09またはAT1636-Iの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0148】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体E-C06またはD-H04またはD-A02またはD-E09またはE-A04またはE-B09またはAT1636-Iと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0149】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体E-C06またはD-H04またはD-A02またはD-E09またはE-A04またはE-B09またはAT1636-Iと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0150】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体E-C06またはD-H04またはD-A02またはD-E09またはE-A04またはE-B09またはAT1636-Iと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0151】
表1に示される、抗体C-A05の重鎖CDR1~3配列は、GFIFSNAW、IKSKIDGETTおよびTPGVGANDPYYFDRである。この抗体C-A05の軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFIFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0152】
抗体C-A05のVH配列は、配列番号4として表1に示されている。抗体C-A05のVL配列は、配列番号19として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号4に示されるようなVH配列および配列番号19に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号4に示されるようなVH配列および配列番号19に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-A05の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0153】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-A05と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0154】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-A05と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0155】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-A05と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0156】
表1に示される、抗体C-A03、C-B02およびAT1636-Eの重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGETTおよびTPGVGANDPYYFDRである。これらの抗体C-A03、C-B02およびAT1636-Eの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0157】
抗体C-A03、C-B02およびAT1636-EのVH配列は、配列番号5として表1に示されている。抗体C-A03、C-B02およびAT1636-EのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号5に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号5に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-A03またはC-B02またはAT1636-Eの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0158】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-A03またはC-B02またはAT1636-Eと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0159】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-A03またはC-B02またはAT1636-Eと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0160】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-A03またはC-B02またはAT1636-Eと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0161】
表1に示される、抗体C-D04-Aの重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGETTおよびTPGVGANNPYYFDRである。この抗体C-D04-Aの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0162】
抗体C-D04-AのVH配列は、配列番号6として表1に示されている。抗体C-D04-AのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-D04-Aの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0163】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-D04-Aと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0164】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-D04-Aと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0165】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-D04-Aと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0166】
表1に示される、抗体C-D04-Bの重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGETTおよびTPGVGANNPYYFDRである。この抗体C-D04-Bの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WACおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WACを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0167】
抗体C-D04-BのVH配列は、配列番号6として表1に示されている。抗体C-D04-BのVL配列は、配列番号20として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号20に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号6に示されるようなVH配列および配列番号20に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-D04-Bの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0168】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-D04-Bと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0169】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-D04-Bと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0170】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-D04-Bと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0171】
表1に示される、抗体F-C08、D-G03およびAT1636-Nの重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANNPYYFDRである。これらの抗体F-C08、D-G03およびAT1636-Nの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0172】
抗体F-C08のVH配列は、配列番号7として表1に示されている。抗体F-C08のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号7に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号7に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体F-C08の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0173】
抗体D-G03およびAT1636-NのVH配列は、配列番号8として表1に示されている。抗体D-G03およびAT1636-NのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号8に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号8に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-G03またはAT1636-Nの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0174】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体F-C08またはD-G03またはAT1636-Nと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0175】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体F-C08またはD-G03またはAT1636-Nと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0176】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体F-C08またはD-G03またはAT1636-Nと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0177】
表1に示される、抗体D-F10の重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGTNNPYYFDRである。この抗体C-A05の軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGTNNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0178】
抗体D-F10のVH配列は、配列番号9として表1に示されている。抗体D-F10のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号9に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号9に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-F10の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0179】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体D-F10と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0180】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体D-F10と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0181】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体D-F10と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0182】
表1に示される、抗体C-E08、D-B06、D-G05、AT1636-YおよびD-H08の重鎖CDR1~3配列は、GFTFSYAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANDPYYFDRである。これらの抗体C-E08、D-B06、D-G05およびD-H08の軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0183】
抗体C-E08、D-B06およびAT1636-YのVH配列は、配列番号10として表1に示されている。抗体C-E08、D-B06およびAT1636-YのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-E08またはD-B06またはAT1636-Yの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0184】
抗体D-G05のVH配列は、配列番号10として表1に示されている。抗体D-G05のVL配列は、配列番号21として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号21に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号10に示されるようなVH配列および配列番号21に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-G05の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0185】
抗体D-H08のVH配列は、配列番号11として表1に示されている。抗体D-H08のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号11に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号11に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体D-H08の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0186】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-E08またはD-B06またはD-G05またはD-H08またはAT1636-Yと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0187】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-E08またはD-B06またはD-G05またはD-H08またはAT1636-Yと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0188】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-E08またはD-B06またはD-G05またはD-H08またはAT1636-Yと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0189】
表1に示される、抗体C-H01の重鎖CDR1~3配列は、GFTFSNAW、IKSKIDGGTIおよびTPGVGANDPYYFDRである。この抗体C-H01の軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSNAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTIを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANDPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0190】
抗体C-H01のVH配列は、配列番号12として表1に示されている。抗体C-H01のVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号12に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号12に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体C-H01の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0191】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体C-H01と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0192】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体C-H01と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0193】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体C-H01と競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0194】
本発明による別の好ましい抗体は、抗体AT1636-YNである。この抗体は、腫瘍細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を結合することができるので好ましい。AT1636-YNの特定の利点は、約120kDaの完全長E-カドヘリンよりも良好にこの短縮70kDa E-カドヘリン型を結合するという事実である。本明細書の上記で記載されたように、この特徴は、典型的に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンが、腫瘍細胞上でアップレギュレートされる場合に、腫瘍特異性の向上を可能にする。AT1636-YNが短縮70kDa E-カドヘリン型を優先するというさらなる利点は、完全長E-カドヘリンが広く発現されることである。したがって、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先がない場合、広く発現した完全長E-カドヘリンは、シンクとして機能する可能性がある、および/または望ましくない効果をもたらす可能性がある。さらに、完全長E-カドヘリンの発現レベルは非常に高く、そのため、多くの場合、健康な上皮細胞と腫瘍上皮細胞との間を区別することができないが、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先は、より高い腫瘍特異性を可能にする。加えて、E-カドヘリンは、重要なバリア機能を有し、そのため、E-カドヘリンの健康な機能による有意な干渉を回避することが好ましい。
【0195】
加えて、AT1636-YNは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合することができる。AT1636-YNは、腫瘍細胞、特に上皮腫瘍細胞、より具体的には、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、肺癌細胞および食道癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞に結合する。そのため、抗体AT1636-YNは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を発現する癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に特に適している。ヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0196】
さらに、抗体AT1636-YNは、抗体AT1636よりも良好に類表皮癌細胞株A431、肺癌細胞株A549およびマウス腫瘍細胞株CMT93を結合する(図6Bを参照されたい)。
【0197】
表1に示される、抗体AT1636-YNの重鎖CDR1~3配列は、GFTFSYAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANNPYYFDRである。この抗体AT1636-YNの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFTFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0198】
抗体AT1636-YNのVH配列は、配列番号15として表1に示されている。抗体AT1636-YNのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号15に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号15に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体AT1636-YNの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0199】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体AT1636-YNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0200】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-YNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0201】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-YNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0202】
本発明による別の好ましい抗体は、抗体AT1636-IYNである。この抗体は、腫瘍細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を結合することができるので好ましい。AT1636-IYNの特定の利点は、約120kDaの完全長E-カドヘリンよりも良好にこの短縮70kDa E-カドヘリン型を結合するという事実である。本明細書の上記で記載されたように、この特徴は、典型的に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンが、腫瘍細胞上でアップレギュレートされる場合に、腫瘍特異性の向上を可能にする。AT1636-IYNが短縮70kDa E-カドヘリン型を優先するというさらなる利点は、完全長E-カドヘリンが広く発現されることである。したがって、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先がない場合、広く発現した完全長E-カドヘリンは、シンクとして機能する可能性がある、および/または望ましくない効果をもたらす可能性がある。さらに、完全長E-カドヘリンの発現レベルは非常に高く、そのため、多くの場合、健康な上皮細胞と腫瘍上皮細胞との間を区別することができないが、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先は、より高い腫瘍特異性を可能にする。加えて、E-カドヘリンは、重要なバリア機能を有し、そのため、E-カドヘリンの健康な機能による有意な干渉を回避することが好ましい。
【0203】
加えて、AT1636-IYNは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合することができる。AT1636-IYNは、腫瘍細胞、特に上皮腫瘍細胞、より具体的には、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、肺癌細胞および食道癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞に結合する。そのため、抗体AT1636-IYNは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を発現する癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に特に適している。ヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0204】
さらに、抗体AT1636-IYNは、抗体AT1636よりも良好に、結腸細胞株DLD1、乳房上皮細胞株MCF10a、類表皮癌細胞株A431、肺癌細胞株A549およびマウス腫瘍細胞株CMT93を結合する(図6Aおよび図6Bを参照されたい)。
【0205】
表1に示される、抗体AT1636-IYNの重鎖CDR1~3配列は、GFIFSYAW、IKSKIDGGTTおよびTPGVGANNPYYFDRである。この抗体AT1636-IYNの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFIFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGGTTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0206】
抗体AT1636-IYNのVH配列は、配列番号16として表1に示されている。抗体AT1636-IYNのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号16に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号16に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体AT1636-IYNの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0207】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体AT1636-IYNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0208】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-IYNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0209】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-IYNと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0210】
本発明による別の好ましい抗体は、抗体AT1636-IYENである。この抗体は、腫瘍細胞上に発現されたO-マンノシル化E-カドヘリン、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を結合することができるので好ましい。AT1636-IYENの特定の利点は、約120kDaの完全長E-カドヘリンよりも良好にこの短縮70kDa E-カドヘリン型を結合するという事実である。本明細書の上記で記載されたように、この特徴は、典型的に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンが、腫瘍細胞上でアップレギュレートされる場合に、腫瘍特異性の向上を可能にする。AT1636-IYENが短縮70kDa E-カドヘリン型を優先するというさらなる利点は、完全長E-カドヘリンが広く発現されることである。したがって、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先がない場合、広く発現した完全長E-カドヘリンは、シンクとして機能する可能性がある、および/または望ましくない効果をもたらす可能性がある。さらに、完全長E-カドヘリンの発現レベルは非常に高く、そのため、多くの場合、健康な上皮細胞と腫瘍上皮細胞との間を区別することができないが、短縮70kDa E-カドヘリン型の優先は、より高い腫瘍特異性を可能にする。加えて、E-カドヘリンは、重要なバリア機能を有し、そのため、E-カドヘリンの健康な機能による有意な干渉を回避することが好ましい。
【0211】
加えて、AT1636-IYENは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合することができる。AT1636-IYENは、腫瘍細胞、特に上皮腫瘍細胞、より具体的には、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン発現結腸癌細胞、乳癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、子宮内膜癌細胞、肺癌細胞および食道癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞に結合する。そのため、抗体AT1636-IYENは、O-マンノシル化E-カドヘリン発現癌細胞、特に新規に発見された約70kDaの短縮E-カドヘリン型を発現する癌細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞の存在に関連している障害の処置および/または診断に特に適している。ヒトアミノ酸配列の存在は、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0212】
さらに、抗体AT1636-IYENは、抗体AT1636よりも良好に、結腸細胞株DLD1、乳房上皮細胞株MCF10aおよびマウス腫瘍細胞株CMT93を結合する(図6Aを参照されたい)。
【0213】
表1に示される、抗体AT1636-IYENの重鎖CDR1~3配列は、GFIFSYAW、IKSKIDGETTおよびTPGVGANNPYYFDRである。この抗体AT1636-IYENの軽鎖CDR1~3配列は、QSVLCRSNNKNC、WASおよびQQYSNTPQTである。そのため、いくらかの実施形態は、配列GFIFSYAWを含む重鎖CDR1および配列IKSKIDGETTを含む重鎖CDR2および配列TPGVGANNPYYFDRを含む重鎖CDR3および配列QSVLCRSNNKNCを含む軽鎖CDR1および配列WASを含む軽鎖CDR2および配列QQYSNTPQTを含む軽鎖CDR3を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0214】
抗体AT1636-IYENのVH配列は、配列番号17として表1に示されている。抗体AT1636-IYENのVL配列は、配列番号18として表1に示されている。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号17に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。そのため、いくらかの実施形態は、配列番号17に示されるようなVH配列および配列番号18に示されるようなVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体AT1636-IYENの重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。
【0215】
O-マンノシル化E-カドヘリンへの結合について、好ましくは図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニン残基への結合について、抗体AT1636-IYENと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0216】
O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞、好ましくはO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-IYENと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。前記細胞は、好ましくは、それらの表面上でO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する。
【0217】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞への結合について、抗体AT1636-IYENと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントがさらに提供される。
【0218】
いくらかの実施形態において、上述した抗体の重鎖および軽鎖CDR1~3配列は、列挙された重鎖および軽鎖CDR1~3配列からなる。
【0219】
いくらかの実施形態において、抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNまたはAT1636-IYENの重鎖および軽鎖CDR1~3配列は、異なる抗体のフレームワーク配列に合体されている。前記フレームワーク配列は、ヒトフレームワーク配列が好ましい。ヒトフレームワーク領域の配列は、公開DNAデータベースから利用可能である。いくらかの好ましい実施形態において、ヒト生殖系列の配列は、本発明による抗体および抗原結合フラグメントにおけるフレームワーク領域のために使用される。これらの生殖系列の配列が、典型的に、免疫原性応答を引き起こす可能性がある体細胞高頻度突然変異がないので、ヒト生殖系列の配列の使用は、前記抗体の免疫原性のリスクを最小化する。
【0220】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである。ヒトアミノ酸配列の存在は、非ヒト抗体と比較して、ヒト患者における治療的使用中の有害な副作用の機会を少なくする。
【0221】
いくらかの実施形態は、完全長抗体である本発明による抗体を提供する。完全長抗体は、それらの好ましい半減期のために有利である。本発明の抗体は、好ましくはIgGアイソタイプである。特に、IgG1は、ヒトにおける長い循環半減期に基づいて好まれる。さらにIgG1抗体は、商業的に容易に産生され、それらのFcテールは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞貪食(ADCP)のようなエフェクタ機能を可能にする。ヒトにおける免疫原性を防止するために、本発明による抗体がヒト抗体、またはその抗原結合フラグメントであることが好ましい。
【0222】
本明細書の上記で記載されたように、抗体AT1636は、IgG3アイソタイプである。IgG3アイソタイプの抗体が、凝集する傾向を有するため商業的に開発するのが困難であるので、いくらかの実施形態は、抗体AT1636の重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3配列を含むIgG1アイソタイプの抗体を提供する。いくらかの実施形態は、抗体AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体の重鎖CDR1~3および軽鎖CDR1~3配列を含むIgG1抗体を提供する。
【0223】
いくらかの実施形態は、抗体AT1636、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体のVH配列およびVL配列、またはそれらと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むIgG1抗体を提供する。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列変化は、CDR領域の外側に位置している。
【0224】
本発明による完全長IgG抗体は、所望の特徴を提供する突然変異が存在する抗体を包含する。そのような突然変異は、任意の抗体領域の実質的な部分の欠失であってはならない。しかし、本明細書の上記で記載されたように、得られる抗体の結合特徴を本質的に変更せずに、1つまたはいくらかのアミノ酸残基が欠失されている抗体は、用語「完全長抗体」に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域における1~20のアミノ酸残基の挿入、欠失またはそれらの組み合わせを有する可能性がある。例えば、本明細書の以下で記載されたように、グリコシル化を低減することができ、ADCCまたはCDC活性を変更することができる。
【0225】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、以下の特徴:
- O-マンノシル化E-カドヘリンの細胞外(EC)3ドメインに結合する;
- O-マンノシル化完全長E-カドヘリンよりも良好に、好ましくは少なくとも2倍良好に、より好ましくは少なくとも3倍良好に、より好ましくは少なくとも4倍良好に、より好ましくは少なくとも5倍良好に、O-マンノシル化短縮70kDa E-カドヘリンを結合する;
- E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を同時発現する腫瘍細胞を結合する
の1つまたは複数、好ましくはそれぞれを有している。
【0226】
いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、以下の特徴:
- 結腸癌サブタイプCMS1、CMS2、CMS3およびCMS4を結合する;
- 健康な胸腺髄質上皮細胞または樹状細胞またはランゲルハンス細胞よりも良好に結腸癌細胞株SW948を結合する
の少なくとも1つをさらに含む。
【0227】
いくらかの好ましい実施形態は、上に列記された各特徴を有する本発明による抗体および抗原結合フラグメントを提供する。そのような抗体および抗原結合フラグメントは、異なる癌のタイプおよび異なる結腸癌のサブタイプを結合するそれらの能力に鑑み、幅広い抗腫瘍適応性を有する。さらに、本明細書の上記で詳しく説明したように、完全長E-カドヘリンと比較して、短縮70kDa E-カドヘリンを優先することに鑑み、そのような抗体および抗原結合フラグメントは、短縮70kDa E-カドヘリン型が、腫瘍細胞上で有意にアップレギュレートされる場合に腫瘍特異性を向上させるのに適している。
【0228】
実施例において示されるように、E-カドヘリンの1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニンおよび/またはセリン残基を特異的に結合する抗体が提供され、前記1つまたは複数のO-マンノシル化スレオニンおよび/またはセリン残基は、図1Aに示されるようにE-カドヘリン配列のアミノ酸467~472位内に存在する。ここで、O-マンノシル化E-カドヘリンの同じエピトープについて競合しているさらなる抗体を得るか生成することが可能になることが知られている。これは、例えば、非ヒト動物を、図1Aに示されるようなE-カドヘリン配列の上述したアミノ酸残基467~472を含むO-マンノシル化E-カドヘリンペプチド、またはそのようなペプチドを含む免疫原性化合物、またはそのようなペプチドをコードする核酸分子で免疫化することにより行うことができ、好ましくは1つまたは複数のブースター投与が続く。代わりに、非ヒト動物は、細胞表面にO-マンノシル化E-カドヘリンを発現させるためにTMTC3およびE-カドヘリンを発現する細胞で免疫化することができる。また、非ヒト動物は、いわゆるDNA免疫化技術により、例えばTMTC3およびE-カドヘリンを両方とも発現する、例えばcDNAのような核酸で免疫化することもできる。
【0229】
続いて、前記エピトープまたはペプチドに特異的である抗体および/またはB細胞は、前記非ヒト動物から回収することができる。いくらかの実施形態において、ヒトの治療に最適化するために、得られた抗体をヒト化させる。いくらかの実施形態において、前記ペプチドまたはO-マンノシル化E-カドヘリンまたはその70kDa短縮型への結合のために、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはその抗原結合フラグメントとの競合について、得られた抗体またはB細胞を試験する。
【0230】
適切な投与手順およびアジュバント、そのような免疫化動物からの抗体および/または免疫細胞の獲得および精製のための手順、競合実験ならびに非ヒト抗体のヒト化手順を含む、動物免疫化プロトコルは、当技術分野において周知である。例えばHanly et al,1995を参照する。
【0231】
代わりに、またはさらに、前記ペプチドまたはTMCT3-E-カドヘリン同時発現細胞を使用して、O-マンノシル化E-カドヘリン特異性免疫グロブリン、典型的にはFabフラグメントを同定および/または単離するために、ファージディスプレイライブラリをスクリーニングする。得られた抗体、B細胞またはFabフラグメントは、前記ペプチドまたはO-マンノシル化E-カドヘリンまたはその70kDa短縮型への結合のために、典型的に、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる抗体からなる群より選択される抗体、またはその抗原結合フラグメントと競合する。いくらかの実施形態において、競合アッセイが実行される。
【0232】
また、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも1つのCDR配列をコードする核酸分子およびベクターもここで提供される。したがって、いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも1つのCDR配列をコードする、単離、合成もしくは組換え核酸、またはベクターを提供する。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖CDR3配列および軽鎖CDR3配列がコードされる。そのため、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖CDR3配列および軽鎖CDR3配列をコードする、単離、合成もしくは組換え核酸、またはベクターがさらに提供される。好ましくは、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列がコードされる。そのため、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列をコードする、単離、合成もしくは組換え核酸、またはベクターがさらに提供される。好ましくは、前記CDR配列は、表1に示されるような抗体のCDR配列である。
【0233】
特定の実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの少なくとも重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする単離、合成または組換え核酸を提供する。いくらかの実施形態において、前記核酸は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方をコードする。そのような核酸は、産生細胞における本発明の抗体または抗原結合フラグメントの産生に特に適している。いくらかの実施において、前記核酸は、ある特定の産生細胞、例えば大腸菌、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NSO(マウス骨髄腫)またはT293細胞などに最適化されたコドンである核酸配列を含み、これらの産生細胞において本発明の抗体または抗原結合フラグメントの効率的な産生を可能にする。抗体産生が、任意の組換え抗体産生システムにより行うことができ;上述した4つの産生細胞システムが、現在までに利用可能である多くのシステムのほんの数例であることに注意する必要がある。本明細書で使用されるように、用語「コドン」は、特定のアミノ酸残基をコードするヌクレオチドの3つの組を意味する。用語「最適化されたコドン」は、元の、好ましくはヒトの核酸配列からの1つまたは複数のコドンが、ある特定の産生細胞により好まれる1つまたは複数のコドンにより置き換えられていることを意味する。これらの置き換えコドンは、置き換えられている元のコドンと同じアミノ酸残基をコードすることが好ましい。代わりに、1つまたは複数の置き換えコドンは、異なるアミノ酸残基をコードする。これは、必要ではないが、好ましくは、結果として保存的アミノ酸置換となる。定常領域およびフレームワーク領域において、1つまたは複数のアミノ酸置換は、一般に許容される。CDR領域において、置き換えられている元のコドンと同じアミノ酸残基をコードするコドンを使用することが好ましく、そのため、得られる産物は、元の抗体と同じCDRアミノ酸配列を有する。
【0234】
本発明による好ましい抗体のVHおよびVLアミノ酸およびヌクレオチド配列は、表1に列記されている。多くのアミノ酸残基が、1つより多い異なる核酸コドンによりコードされているので、異なるコドンは、上記で説明したように、例えばある特定の産生細胞に対するコドンの使用を最適化するために、ある特定のアミノ酸残基のために使用することができる。さらに、結果として異なるアミノ酸残基となるいくらかの核酸配列の変形もまた、典型的には、特にCDRをコードする配列の外側で許容される。そのため、特定の実施形態は、表1に示される抗体の少なくとも重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする単離、合成または組換え核酸を提供する。いくらかの実施形態は、配列番号1~17からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列をコードする、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、単離、合成または組換え核酸を提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VH領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。いくらかの実施形態は、配列番号18~22からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードする、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、単離、合成または組換え核酸を提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VL領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。いくらかの実施形態は、配列番号1~17からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号18~22からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードする、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、単離、合成または組換え核酸を提供する。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。
【0235】
いくらかの実施形態は、表1に示されるようなVHまたはVL配列と少なくとも80%の配列同一性を有する単離、合成または組換え核酸を提供する。本発明による好ましい抗体のVH核酸配列は、配列番号23~39として表1に列記されている。本発明による好ましい抗体のVL核酸配列は、配列番号40~44として表1に列記されている。そのため、配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、および/または配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む核酸がさらに提供される。好ましくは、本発明による核酸分子は、表1に示されるような同じ抗体の可変重鎖コード配列および可変軽鎖コード配列を含む。そのため、また、配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、および配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む核酸も提供される。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。
【0236】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸分子が提供される。抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体をコードする核酸分子が、さらに提供される。いくらかの実施形態において、前記核酸は、非ヒト宿主細胞における発現のために最適化されたコドンである。
【0237】
本発明による核酸分子を含むベクターが、さらに提供される。本明細書で使用されるように、「本発明による核酸分子を含むベクター」はまた、「本発明によるベクター」とも呼ばれる。
【0238】
本発明による1つまたは複数の核酸分子(複数を含む)を含むベクターを構築するための方法は、当技術分野において周知である。適切なベクターおよび産生プラットフォームの非限定例は、レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター、細菌または酵母プラスミド、SV40ベクター、バキュロウイルスベクター、ファージDNAベクター、pUCベクター、pBR322のようなプラスミドベクター、例えばpConプラスベクターのようなロンザにより製造されたベクター、例えばTurboCell(商標)発現プラットフォームのようなレンチュラー・バイオファーマにより製造された産生システム、および例えばApollo(商標)哺乳動物発現プラットフォームのようなFujifilm Diosynthの発現プラットフォームである。
【0239】
いくらかの実施形態において、本発明によるベクターは、表1に示されるような抗体のVHおよびVL配列をコードする核酸配列を含む。これらの抗体のVH核酸配列は、配列番号23~39として表1に列記されており、これらの抗体のVL核酸配列は、配列番号40~44として表1に列記されている。そのため、配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む、および/または配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターが、さらに提供される。好ましくは、本発明によるベクターは、表1に示されるような抗体の可変重鎖コード配列および可変軽鎖コード配列を含む。そのため、また、配列番号23~39からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む、および配列番号40~44からなる群より選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクターも提供される。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列の変形は、前記抗体のCDR領域の外側に位置している。
【0240】
いくらかの実施形態は:
- 配列番号23に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号23に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号44に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号24に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列
- 配列番号25に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号26に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号41に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号27に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号28に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号28に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号42に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号29に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号30に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
- 配列番号31に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号32に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号32に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号43に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号33に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号34に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号35に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号36に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号37に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号38に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列;または
配列番号39に示されるようなVHコード核酸配列および配列番号40に示されるようなVLコード核酸配列、もしくはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列
を含むベクターを提供する。
【0241】
好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。
【0242】
いくらかの実施形態において、本発明によるベクターは、抗原認識ドメインおよびT細胞活性化ドメインをコードする核酸配列を含むCAR T細胞ベクターである。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体の少なくとも重鎖CDR1~3配列を含む。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体の少なくとも軽鎖CDR1~3配列を含む。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体の重鎖CDR1~3配列および軽鎖CDR1~3配列を含む。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体のVH配列、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体のVL配列、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、本発明による抗体のVHおよびVL配列、またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。好ましくは、前記配列同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。好ましくは、前記VHおよび/またはVL領域の前記配列の変形は、CDR領域の外側に位置している。
【0243】
いくらかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、単鎖フォーマット内にある。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞ベクターは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列をさらに含む。
【0244】
本発明によるベクターは、例えば、本発明の抗体または抗原結合フラグメントまたはCAR T細胞のインビトロ産生に有用である。これは、例えば、そのような核酸分子またはベクターを細胞に導入することにより行われ、そのため、細胞の核酸翻訳機構は、コードされた抗体または抗原結合フラグメントまたはCAR T細胞を産生する。いくらかの実施形態において、少なくとも1つの本発明による核酸分子またはベクターは、いわゆる産生細胞、例えば、そのいくらかが商業的な抗体産生に適合している、大腸菌、CHO、NSOまたはT293細胞などで発現される。本明細書の上記で記載されたように、そのような場合、本明細書で提供されるような元のヒト配列が産生細胞に最適化されたコドンである、核酸分子を使用することが好ましい。前記産生細胞の増殖は、結果として本発明による抗体または抗原結合フラグメントを産生することができる産生細胞株となる。好ましくは、前記産生細胞株は、ヒトにおける使用のための抗体を産生するのに適している。したがって、前記産生細胞株は、好ましくは病原性微生物などの病原体を含まない。いくらかの実施形態において、ヒト配列からなる抗体は、そのような産生細胞株により生成される。
【0245】
いくらかの実施形態において、本発明によるCAR T細胞ベクターは、CAR T細胞を産生するためにT細胞に導入される。
【0246】
そのため、本発明による少なくとも1つの抗体、または抗原結合フラグメント、または核酸分子、またはベクターを含む、単離または組換え宿主細胞が、さらに提供される。そのような細胞は、好ましくは大規模抗体産生が可能である抗体産生細胞である。いくらかの実施形態において、前記細胞は、哺乳動物細胞、T細胞、細菌細胞、植物細胞、HEK293T細胞、CHO細胞、例えばpConプラスベクター産生システムのようなロンザにより製造された産生システム、例えばTurboCell(商標)発現プラットフォームのようなレンチュラー・バイオファーマにより製造された産生システム、または例えばApollo(商標)哺乳動物発現プラットフォームのようなFujifilm Diosynthの発現プラットフォームである。
【0247】
本発明による抗体または抗原結合フラグメントを産生するための方法がさらに提供され、その方法は、本発明による核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養し、前記宿主細胞が前記核酸またはベクターを翻訳することを可能にし、それによって、本発明による前記抗体または抗原結合フラグメントを産生することを含む。本発明による前記方法は、前記宿主細胞からおよび/または培養培地から前記抗体または抗原結合フラグメントを回収するステップをさらに含むことが好ましい。いくらかの実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、表1に示されるような抗体、好ましくは、AT1636、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、ならびにそれらの抗原結合フラグメントである。いくらかの好ましい実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、ならびにそれらの抗原結合フラグメントである。
【0248】
本発明による方法により得られる場合の抗体または抗原結合フラグメントもまた、本明細書で提供される。本発明にしたがって得られた結合化合物は、例えば、場合によっては、追加の精製、単離または加工ステップの後に、ヒトの治療または診断における使用に適している。
【0249】
いくらかの実施形態において、本発明による少なくとも1つの核酸分子またはベクターは、例えばインビボ抗体産生のために、非ヒト動物に導入される。そのため、本発明による抗体、抗原結合フラグメント、核酸分子またはベクターを含む単離または組換え非ヒト動物が、さらに提供される。遺伝子導入非ヒト動物を生産するための方法は、当技術分野において既知である。
【0250】
追加の抗体修飾
定常領域の1つまたは複数のアミノ酸残基が修飾されている本発明による抗体が、さらに提供される。いくらかの実施形態において、Fc領域における1つまたは複数のアミノ酸は、グリコシル化を低下させるために修飾されている。N-グリコシル化は、抗体の翻訳後修飾として一般的に認められており、コンセンサス配列N-X-SまたはN-X-T(Nはアスパラギンを表し、Xはアミノ酸残基を表し、Sはセリンを表し、Tはスレオニンを表す)を含むグリコシル化モチーフで生じることが知られている。Fcグリコシル化は、抗体のFc部分の構造的特徴に影響し、それによって、エフェクタ機能および薬物動態に影響する。Fcグリコシル化が結果として半減期を短縮するおよび/または免疫原性を向上させることになる可能性があるので、グリコシル化は、治療用抗体に望ましくない可能性がある。いくらかの実施形態において、Fcグリコシル化領域における1つまたは複数のアミノ酸は、グリコシル化を少なくするか、回避するために、元の親抗体と比較して修飾されている。例えば、上述したグリコシル化モチーフのN、SおよびT残基の少なくとも1つは変更されている。いくらかの実施形態において、CH2領域の47位でのアスパラギン残基(N47)は変更されている。いくらかの実施形態において、CH2領域の95位でのスレオニン(T95)は変更されている。
【0251】
代わりに、またはさらに、本発明による抗体の可変フレームワーク領域における1つまたは複数のグリコシル化部位は、グリコシル化を少なくするか、回避するために変更されている。
【0252】
抗体の定常ドメインは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、および補体依存性細胞傷害(CDC)のような種々の抗体の特徴の一端を担う。Fc領域は、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、B細胞および好中球などの免疫エフェクタ細胞上で異なる受容体に結合することにより抗体機能を媒介する。CD16A(FcγRIIIA)およびCD32A(FcγRIIA)などのこれらの受容体のいくらかは、免疫エフェクタ細胞を活性化して抗原に対する応答を構築する。CD32Bなどの他の受容体は、免疫細胞の活性化を阻害する。いくらかの実施形態において、本発明による抗体は、ADCC活性を強化するように設計されている。抗体のADCC活性を強化するための1つの技術は、脱フコシル化されている。そのため、脱フコシル化されている本発明による抗体または抗原結合フラグメントが、さらに提供される。
【0253】
脱フコシル化抗体を得るための当技術分野において既知である任意の手段を適用することができる。脱フコシル化抗体は、例えばLec13 CHO突然変異体(Patnaik&Stanley,2006)などの、例えばフコシル化の能力が低下している産生細胞株の使用により得られる。CHOなどの細胞株におけるアルファ1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子をノックアウトすること(Potelligent(登録商標)技術)(Yamane-Ohnuki et al,2004)も可能である。
【0254】
代わりに、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を過剰発現し、結果として非フコシル化抗体(GlycoMAb(商標)技術)となる抗体産生細胞株を使用することができる。
【0255】
代わりに、またはさらに、例えば、すべて低親和性活性化FcγRIIIaへのFc結合を改善、および/または低親和性阻害性FcγRIIbへの結合を低下しようとしている、糖鎖工学(協和発酵/Biowa、GlycArt(ロシュ)およびEureka Therapeutics)ならびに突然変異誘発(Xencorおよびマクロジェニックス)を含む、複数の他の戦略を使用して、ADCC強化を達成することができる。化学酵素的修飾はまた、Fc結合N-グリカンの修飾のために使用されている。
【0256】
フコースを除いて、他の糖部分も、ADCC活性の一端を担っていることが既知である。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ADCCを強化するために超ガラクトシル化されている。
【0257】
いくらかの実施形態において、本発明の抗体のFcドメイン内のFcγR結合部位の少なくとも1つのアミノ酸は、Fc/FcR相互作用を操作するために修飾されている。いくらかの実施形態において、アミノ酸突然変異S298A、E333AおよびK334Aは、本発明の抗体のFcドメインに導入される。これらの突然変異は、ADCC活性を強化すると報告されている(Shields et al,2001)。いくらかの実施形態において、本発明の抗体のADCC活性は、場合によってはアミノ酸突然変異A330Lと組み合わせて、アミノ酸突然変異S239DおよびI332Eを導入することにより強化される(Lazar et al,2006)。いくらかの実施形態において、本発明の抗体のADCC活性は、アミノ酸突然変異L235V、F243L、R292P、Y300LおよびP396Lを導入することにより強化される(Stavenhagen et al,2007)。そのため、群:
- S298A、E333A、K334A;
- S239D、I332E;
- S239D、I332E、A330L;および
- L235V、F243L、R292P、Y300L、P396L
から選択されるアミノ酸突然変異を含む、本発明による抗体または抗原結合フラグメントが、さらに提供される。
【0258】
ADCCを誘発する際の抗体の有効性を決定するためのいくらかのインビトロ法が存在する。これらの中には、クロム-51[Cr51]放出アッセイ、ユーロピウム[Eu]放出アッセイおよび硫黄-35[S35]放出アッセイがある。通常、ある特定の表面曝露抗原を発現する標識化標的細胞株は、その抗原に特異的な抗体とインキュベートされる。洗浄後、Fc受容体CD16を発現するエフェクタ細胞は、典型的に、抗体標識化標的細胞と同時インキュベートされる。続いて、標的細胞溶解物は、細胞内標識の放出により、例えば、シンチレーションカウンタまたは分光光度法により、典型的に測定される。代わりに、ルシフェラーゼベースの細胞毒性アッセイを使用することができ、ホタルルシフェラーゼを発現する標的細胞を、例えば二重特異性または多重特異性抗体などの抗体とインキュベートする。洗浄後、エフェクタ細胞を加え、同時インキュベートする。続いて、標的細胞死滅は、残りの標的細胞を溶解し、分光測色法によりルシフェリン発光を測定することにより、典型的に測定される。
【0259】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体は、CDC活性を強化するように設計されている。CDCを強化するための1つの方法は、アミノ酸突然変異K326Wおよび/またはE333SのFcドメインへの導入である(Idusogie et al,2001)。いくらかの実施形態において、アミノ酸突然変異S267E、H268FおよびS324Tは、CDC活性を強化するために、本発明の抗体のFcドメインに導入される。これらの突然変異はADCC活性を小さくすると報告されているので、アミノ酸置換G236AおよびI332Eはまた、ADCC活性を修復するために導入されることが好ましい(Moore et al,2010)。
【0260】
いくらかの実施形態において、アミノ酸突然変異E345Rは、CDC活性を強化するために、本発明の抗体のFcドメインに導入される。いくらかの実施形態において、アミノ酸突然変異E345Kおよび/またはE430Gは、CDCおよびADCC活性を強化するために、本発明の抗体のFcドメインに導入される(De Jong et al,2016)。
【0261】
そのため、群:
- K326W;
- E333S;
- K326W、E333S;
- E345R;
- E345K;
- E430G;
- E345K、E430G;
- S267E、H268F、S324T;および
- S267E、H268F、S324T、G236A、I332E
から選択される1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含む、本発明による抗体または抗原結合フラグメントが、さらに提供される。
【0262】
ADCCおよびCDCのような免疫エフェクタ機能が多くの治療用途において有益である一方で、他の用途では、それらを小さくするために有益である。そのような用途は、例えば、作用機序が特にFabアームまたはFc領域に融合した他の部分にある、治療的アプローチを含む。そのような場合において、Fc/FcRおよび/またはFc/C1q相互作用の低下は、免疫エフェクタ機能により引き起こされる組織損傷を低減するために有益である可能性がある。そのため、免疫エフェクタ機能の低下は、本発明による抗体の使用が、ADCCまたはCDCを必要としない場合に好ましい可能性がある。本発明による抗体のエフェクタ機能は、例えば、IgG1と比較してエフェクタ機能が低下しているIgG2またはIgG4フォーマットの使用により小さくされる。いくらかの実施形態において、本発明による抗体のエフェクタ機能は、Fc領域へのL235E突然変異の導入により、またはアミノ酸234~237位内の1つまたは複数の他の突然変異の導入により小さくされる。いくらかの実施形態において、本発明のIgG1抗体には、エフェクタ機能を小さくするためにアミノ酸置換L234AおよびL235A(LALA突然変異)が提供される(Lund et al,1992)。いくらかの実施形態において、本発明のIgG1抗体には、エフェクタ機能を小さくするためにアミノ酸置換L234A、L235AおよびP329G(LALA-PG突然変異)が提供される。いくらかの実施形態において、本発明のIgG4抗体には、アミノ酸置換S228PおよびL235E(SPLE突然変異)が提供される。アミノ酸置換P329Gの導入はまた、エフェクタ機能を小さくするのに有益である。
【0263】
そのため、群:
- L235E;
- L234A、L235A;
- L234A、L235A、P329G;
- S228P、L235E;および
- S228P、L235E、P329G
から選択される1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含む、本発明による抗体または抗原結合フラグメントが、さらに提供される。
【0264】
二重特異性または多重特異性結合化合物
本発明の別の態様は、別の化合物に結合している本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、いわゆる「抗体薬物複合体」(ADC)を形成するために、例えば、薬物、化学療法剤、毒性部分、細胞毒性剤または放射性化合物などの別の治療的部分に結合している。
【0265】
いくらかの実施形態は、ADCを提供し、ADCは、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよび細胞増殖抑制剤または細胞毒性薬の単位を含む。薬物単位は、例えばDNA鎖(例えば、デュオカルマイシン、カリケアミシン、ピロロベンゾジアゼピン[PBD]、およびSN-38[イリノテカンの活性代謝物])または微小管(例えばマイタンシンおよびアウリスタチン)を破壊するか、トポイソメラーゼもしくはRNAポリメラーゼ阻害を用いて、細胞死をもたらす(Chau et al,2019)可能性がある。いくらかの実施形態において、前記ADCは、細胞増殖抑制剤または細胞毒性薬の単位と抗体単位との間に化学リンカー単位を含む(Tsuchikama,2018)。いくらかの実施形態において、リンカーは、細胞内条件下で開裂し、リンカーの開裂は、細胞内環境下で薬物単位を抗体または抗原結合フラグメントから放出する。いくらかの実施形態において、リンカー単位は開裂可能ではなく、薬物は、例えば抗体分解により放出される。いくらかの実施形態において、リンカーは、細胞内環境下(例えばリソソーム内またはエンドソーム内または小窩内)に存在する開裂剤により開裂される。開裂可能なリンカーの非限定例は、ジスルフィド交換を通じて開裂可能であるジスルフィド含有リンカー、酸性pHで開裂可能である酸に不安定なリンカー、および加水分解酵素、エステラーゼ、ペプチダーゼおよびグルクロニダーゼにより開裂可能であるリンカーを含む。
【0266】
いくらかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、細胞毒性リボヌクレアーゼ、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えば、siRAN分子)または免疫賦活性核酸(例えば、免疫賦活性CpGモチーフ含有DNA分子)である可能性がある核酸に共役する。いくらかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、アウリスタチンまたはその機能的ペプチド類縁体もしくは誘導体の代わりに、アプタマーまたはリボザイムに共役する。
【0267】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体薬物複合体は、診断目的および治療目的の両方に有用である、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当技術分野において既知である(例えば、Junghans et al.1996、米国特許第4,681,581号、米国特許第4,735,210号、米国特許第5,101,827号、米国特許第5,102,990号(US RE35,50G)、米国特許第5,648,471号および米国特許第5,697,902号を参照されたい)。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、放射性同位体または放射性同位体含有キレートに共役する。
【0268】
本明細書に開示された抗体およびその抗原結合フラグメントはまた、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11C、150、13N、18F、35S、51Cr、51To、226Ra、6oCo、59Fe、51Se、152Eu、67CU、2nCi、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、および4oK、151Gd、55Mn、52Tr、および56Feなどの標識と共役している可能性がある。
【0269】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントに結合している部分は、免疫調節化合物である。そのような免疫調節化合物の好ましい例は、T細胞結合化合物、NK細胞結合化合物、NKT細胞結合化合物、またはガンマ-デルタT細胞結合化合物である。いくらかの好ましい実施形態において、前記T細胞結合化合物は、CD3特異性結合化合物、KLRG1特異性結合化合物またはCD103特異性結合化合物である。本発明による抗体または抗原結合フラグメントに結合された場合、そのようなT細胞結合化合物は、T細胞を、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する癌細胞などの細胞に向け、それによって、前記(癌)細胞に対して細胞毒性T細胞応答を誘導または強化する。
【0270】
同様に、NK細胞結合化合物、NKT細胞結合化合物、またはガンマ-デルタT細胞結合化合物は、それぞれNK細胞、NKT細胞またはガンマ-デルタT細胞に向けて、それらを、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞に引き付け、細胞毒性または他の免疫媒介活性を誘導するのに適している。
【0271】
いくらかの好ましい実施形態において、前記T細胞結合化合物は、CD3特異性結合化合物である。いくらかの好ましい実施形態において、前記T細胞結合化合物は、KLRG1特異性結合化合物である。いくらかの好ましい実施形態において、前記T細胞結合化合物は、CD103特異性結合化合物である。
【0272】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、TGFβ特異性結合化合物に結合する。これは、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを細胞、好ましくは、O-マンノシル化E-カドヘリンおよびTGFβを含む腫瘍細胞などの疾患特異性細胞に向けるのに特に有用である。実施例において示されるように、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、前記腫瘍がO-マンノシル化E-カドヘリンおよびTGFβを両方とも発現する場合、特に充分に、腫瘍細胞の増殖を阻害する、および/または腫瘍細胞死を増加させることができる。
【0273】
腫瘍学における二重特異性抗体および抗体コンストラクトの概要は、Suurs et al,2019に与えられている。
【0274】
そのため、いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよび免疫調節分子を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0275】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントならびにT細胞結合化合物、NK細胞結合化合物、NKT細胞結合化合物およびガンマ-デルタT細胞結合化合物からなる群より選択される化合物を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0276】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよびCD3特異性結合化合物を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0277】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよびCD103特異性結合化合物を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0278】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよびKLRG1特異性結合化合物を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0279】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよびTGFβ特異性結合化合物を含む、二重特異性または多重特異性結合化合物を提供する。
【0280】
いくらかの実施形態は、別の腫瘍結合化合物に結合している、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。そのような二重特異性または多重特異性化合物は、特に、2つまたはそれ以上の結合した結合化合物が腫瘍細胞上の異なるエピトープに特異的である場合、例えば、腫瘍細胞の結合の増加またはより特異的な結合を可能にする。したがって、そのような二重特異性または多重特異性化合物は、治療用途または診断用途に非常に適している。
【0281】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、標識に結合している。これは、そのような標識結合化合物を使用して、例えばE-カドヘリン陽性癌細胞などのE-カドヘリン含有細胞の検出を可能にする。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、ホルモンまたは酵素に結合している。これは、そのようなホルモンまたは酵素の、E-カドヘリン含有(癌)細胞への標的化を可能にする。他の実施形態は、二次抗体またはその抗原結合フラグメントに結合している、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0282】
したがって、いくらかの実施形態は、別の化合物、好ましくは免疫調節化合物、T細胞結合化合物、NK細胞結合化合物、NKT細胞結合化合物およびガンマ-デルタT細胞結合化合物、CD3特異性結合化合物、TGFβ特異性結合化合物、サイトカイン、二次抗体またはその抗原結合フラグメント、検出可能な標識、薬物、化学療法剤、細胞毒性剤、毒性部分、ホルモン、酵素、および放射性化合物からなる群より選択される化合物に結合している、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0283】
いくらかの実施形態において、前記二次抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的である。そのため、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよびO-マンノシル化E-カドヘリンにも特異的である二次抗体またはその抗原結合フラグメントを含む二重特異性または多重特異性結合化合物が提供される。得られる結合化合物は、E-カドヘリンに対して単一特異性であり、各Fabアームは、典型的にそれ自体のE-カドヘリンエピトープと結合する。いくらかの実施形態において、Fabフラグメントにより認識されるエピトープは互いに異なっている。他の実施形態において、エピトープは同じである。Fabアームは、異なる親和性でエピトープを結合する可能性がある。代わりに、Fabアームは、本質的に同じ親和性でそれらのエピトープを結合し、FabアームのKが、30%以下、好ましくは20%以下または10%以下で互いに異なっていることを意味する。
【0284】
いくらかの実施形態において、前記二次抗体またはその抗原結合フラグメントもまた、本発明による抗体または抗原結合フラグメントである。そのため、本発明による少なくとも2つの抗体または抗原結合フラグメントを含む二重特異性または多重特異性結合化合物が提供される。いくらかの実施形態において、本発明による前記少なくとも2つの抗体または抗原結合フラグメントは、互いに結合している。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-I抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-E抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-N抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-Y抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-YN抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-IYN抗体またはその抗原結合部分を含む。いくらかの実施形態において、前記二重特異性または多重特異性結合化合物は、少なくとも2つのAT1636-IYEN抗体またはその抗原結合部分を含む。
【0285】
いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる結合化合物を提供し、前記化合物は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントおよび治療薬または放射性化合物または毒性部分を含む。
【0286】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、二重特異性または多重特異性化合物を産生するために、例えば現在既知である抗E-カドヘリン抗体またはその抗原結合フラグメントなどの別のE-カドヘリン特異性結合化合物に結合している。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントの重鎖は、二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを産生するために、別のE-カドヘリン特異性抗体の重鎖と対になっている。本発明による二重特異性または多重特異性化合物は、例えば、E-カドヘリン含有細胞への結合の増加を可能にする。したがって、そのような二重特異性または多重特異性化合物は、治療用途または診断用途に非常に適している。また、本発明による二重特異性または多重特異性化合物をアッセイで使用することもでき、異なるE-カドヘリン含有細胞は、同じ二重特異性または多重特異性結合化合物に結合している。
【0287】
いくらかの実施形態は、本発明による抗体の1つのFabフラグメントおよび別の抗体の1つのFabフラグメントを含む、二重特異性抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくらかの実施形態において、そのような二重特異性抗体は、本発明による抗体の1つのFabフラグメントおよび好ましくはT細胞、NK細胞、NKT細胞またはガンマ-デルタT細胞に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント、例えば、CD3、KLRG1またはCD103に特異的であるFabフラグメントなどを含む。
【0288】
そのため、いくらかの実施形態は:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- 好ましくはT細胞、NK細胞、NKT細胞またはガンマ-デルタT細胞に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0289】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- CD3に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0290】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- KLRG1に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0291】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- CD103に特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0292】
また:
- 本発明による抗体または抗原結合フラグメントの1つのFabフラグメント;および
- TGFβに特異的である別の抗体の1つのFabフラグメント
を含む、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができる二重特異性抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0293】
本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、例えば酸に不安定なヒドラゾンリンカーなどのリンカーを介して、またはシトルリン-バリンのようなペプチドリンカーを介して、またはチオエーテル結合を介して、または国際公開第2010/087994号に詳細に説明されているソルターゼ触媒アミド基転移により、例えば薬物または免疫調節化合物または標識などの別の部分に結合する可能性がある。
【0294】
ソルターゼ触媒アミド基転移は、抗体の重鎖に対する、好ましくは重鎖のC末端部に対する、および前記抗体に結合している部分に対するソルターゼ認識部位(LPETGG)の設計に関与する。抗体およびその部分はさらに、典型的にGGGGS配列およびHISタグなどの精製目的のためのタグを含む。続いて、ソルターゼ媒介アミド基転移が実行され、続いてクリックケミストリー結合が実行される。ソルターゼ触媒アミド基転移において、「クリックケミストリー結合」は、典型的に、例えばアルキン含有試薬と、例えば抗体の重鎖上のソルターゼモチーフおよび抗体に結合されている部分(タンパク質、ペプチドまたは抗体など)上のソルターゼモチーフへのグリシンの添加を通じてソルターゼにより添加されるアジド含有試薬との化学的カップリングに関与する。そのため、一実施形態において、本発明は、ソルターゼ認識部位(LPETGG)が抗体の重鎖に対して、好ましくは重鎖のC末端部に対して設計される、本発明による抗体を提供し、抗体は、GGGGS配列およびHISタグなどの精製タグをさらに含むことが好ましい。
【0295】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、チオエーテル結合を介して別の部分に結合している。そのような場合において、1つまたは複数のシステインは、好ましくは、本発明による抗体または抗原結合フラグメントに組み込まれる。システインは、チオール基を含み、そのため、1つもしくは複数のシステインの、本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメントへの組み込み、または1つもしくは複数のアミノ酸の、1つもしくは複数のシステインによる置き換えは、前記抗体または抗原結合フラグメントの、別の部分への結合を可能にする。前記1つまたは複数のシステインは、好ましくは、前記抗体または抗原結合フラグメントの折り畳みに有意に影響せず、抗原結合またはエフェクタ機能を有意に変更しない位置で導入される。そのため、本発明はまた、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体の重鎖配列を含む、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体の少なくとも1つのアミノ酸(システイン以外)は、システインにより置き換えられている。
【0296】
本発明は、本発明による抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含むキメラ抗原受容体(CAR)T細胞をさらに提供する。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞は、本発明による抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列をさらに含む。キメラ抗原受容体(CAR、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体または人工T細胞受容体としても既知である)は、新規の特定の標的を結合する細胞の能力を与えることができる、設計された受容体タンパク質である。CARは、抗原結合機能および細胞活性化機能の両方を、1つの受容体に組み合わせる。CARは、典型的に、活性化シグナルを伝達する、抗原結合ドメインと、直接または間接的に結合した1つまたは複数の細胞内ドメインとを含むモジュラーデザインを有している。共刺激ドメインの数に応じて、CARは、第1(CD3zのみ)、第2(1つの共刺激ドメイン+CD3z)、または第3世代CAR(1つより多い共刺激ドメイン+CD3z)に分類することができる。CAR遺伝子のT細胞への導入は、追加の抗原特異性でT細胞を成功裏にリダイレクトし、完全なT細胞活性化を促進するために必要なシグナルを提供する。代わりに、CAR遺伝子はまた、NK、NKTまたはガンマ-デルタ-T細胞などの他の免疫細胞に導入することもできる(Rafiq et al.2019)。CARの抗原結合特徴は、好ましくは、細胞外scFvにより定義される。scFvのフォーマットは、一般に、方向VH-リンカー-VLまたはVL-リンカーVHのいずれかであるフレキシブルなペプチド配列により連結した、2つの可変ドメインである。当技術分野において既知である他のフォーマットは、タンデムCAR、ループタンデムCARおよび一般的なアダプタ分子に結合するCARを含む。(Guedan et al.Mol Ther 2019)。
【0297】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、典型的に、活性化ドメインおよび1つまたは複数の共刺激ドメインを含む。当技術分野において、CARの大部分は、CD3ζ由来免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフを介してCAR T細胞を活性化する。最も広く研究されている共刺激ドメインは、遺伝子(4-1BB(CD137)、OX40およびCD27を含む)のCD28ファミリー(CD28およびICOSを含む)または腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーからの共刺激分子に由来する。代替のドメインは、MYD88またはキラー細胞免疫グロブリン様受容体2DS2(KIR2DS2;DAP12としても既知である、TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質の同時発現と組み合わせる)に由来するものを含む。代わりに、CAR-T細胞に使用される結合ドメインは、5つの他のTCRサブユニットのいずれかの細胞外N末端に融合することができ、結果として、各TCR融合コンストラクト(TRuCs)のTCR複合体への組込みとなる(Bauerle et al,2019)。
【0298】
CARを発現するように細胞を遺伝子組換えするための当技術分野において使用されている戦略は、ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスベクターなどのウイルスベースおよび非ウイルスベースの遺伝子工学ツールを含む。他の方法は、例えば、トランスポゾンシステム様sleeping beauty(SB)およびpiggyBac、mRNA、非統合レンチウイルス、エンドヌクレアーゼ酵素(Guedan et al. 2019)およびインサイチュ細胞プログラミングのためのDNAナノキャリーを含む。
【0299】
本発明によるCAR T細胞は、O-マンノシル化E-カドヘリン、好ましくはその70kDA短縮形を結合し、そのため、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性癌細胞に対する免疫療法における使用に非常に適している。そのため、いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を提供し、CAR T細胞は、本発明による抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞は、表1に示されるような抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞は、表1に示されるような抗体のCDR1、CDR2およびCDR3配列をさらに含む。いくらかの実施形態において、前記CAR T細胞は、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0300】
いくらかの実施形態は、本発明による二重特異性抗体または多重特異性抗体またはCAR T細胞を含む、単離または組換え宿主細胞、または非ヒト動物を提供する。
【0301】
抗E-カドヘリン抗体の治療的使用
本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞は、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞に対する使用に適している。さらに、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる処置が必要なヒト被験者を含む被験者を処置するための方法が提供される。また、医薬品および/または予防薬としての使用のための、本発明による核酸分子もしくはベクター、または本発明による核酸を含む細胞も提供される。本発明による1つまたは複数の核酸分子(を含むベクター)が投与される場合、核酸分子(複数を含む)は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントにインサイチュで翻訳される。得られる本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、続いて、例えばE-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性腫瘍のようなO-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞に関連する障害を妨害または予防する。同様に、それを必要とする患者への本発明による細胞の導入は、結果として本発明による治療的または予防的抗O-マンノシル化E-カドヘリン抗体または抗原結合フラグメントのインビボ生成となる。
【0302】
いくらかの実施形態は、医薬品または予防薬としての使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。いくらかの実施形態において、前記医薬品または予防薬は、E-カドヘリンを発現する細胞に関連している障害に対している。特定の実施形態において、前記細胞はまた、O-マンノシルトランスフェラーゼを発現し、E-カドヘリンのO-マンノシル化およびO-マンノシル化E-カドヘリンに特異的である抗体およびその抗原結合フラグメントによるその結合を可能にする。そのため、いくらかの実施形態は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0303】
特定の実施形態において、前記O-マンノシルトランスフェラーゼは、TMTC3であり、そのE-カドヘリンO-マンノシル化活性について周知である。そのため、E-カドヘリンおよびTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が、さらに提供される。
【0304】
いくらかの実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、上皮癌である。いくらかの実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される。いくらかの実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される。
【0305】
本明細書で使用されるように、E-カドヘリンを発現する腫瘍細胞はまた、「E-カドヘリン発現腫瘍細胞」または「E-カドヘリン陽性腫瘍細胞」とも呼ばれる。E-カドヘリンおよびTMTC3を両方とも発現する腫瘍細胞はまた、本明細書では「E-カドヘリン発現およびTMTC3発現腫瘍細胞」または「E-カドヘリンおよびTMTC3発現腫瘍細胞」または「E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性腫瘍細胞」または「E-カドヘリンおよびTMTC3陽性腫瘍細胞」とも呼ばれる。E-カドヘリンおよびTMTC3を発現する腫瘍細胞を含む癌は、本明細書では「E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌」と呼ばれる。
【0306】
「被験者」は、ヒトまたは動物個体であり得る。いくらかの実施形態において、被験者は、例えばヒト、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、サル、類人猿、またはゴリラなどの哺乳動物個体である。特定の実施形態において、前記被験者は、ヒト個体である。
【0307】
本明細書で使用されるように、用語「E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞に関連している障害」は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する疾患に特異的な細胞の存在を含む任意の疾患を意味する。いくらかの実施形態において、そのような細胞は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞の場合に頻繁にあるように、疾患の原因となる要因である。いくらかの実施形態において、そのような細胞の存在は、例えば炎症および/または疼痛などの有害な症状を引き起こす。
【0308】
用語「E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞に関連している障害を処置または予防すること」は、前記障害の発症または進行を妨害すること、および/または前記障害に起因する症状を緩和することを指す可能性がある。例えば、用語「E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防すること」は、前記腫瘍細胞の増殖を防止、妨害および/もしくは減速させること、ならびに/または患者における前記腫瘍細胞の存在に起因する症状を緩和することを含む可能性がある。
【0309】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を処置または予防するための方法における使用のための、抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。本発明によるO-マンノシル化E-カドヘリン特異性抗体および抗原結合フラグメントの利点は、E-カドヘリンおよびTMTC3を両方とも発現するが、TMTC3を発現しないE-カドヘリン陽性細胞にはかなり低い程度で結合する、(腫瘍)細胞に対するそれらの特異性である。これは、有害な副作用の低減を可能にし、そのためより高い投与量が許容される可能性がある。
【0310】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性上皮癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0311】
いくらかの実施形態は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0312】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸直腸癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0313】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0314】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸癌サブタイプCMS1を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0315】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸癌サブタイプCMS2を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0316】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸癌サブタイプCMS3を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0317】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性結腸癌サブタイプCMS4を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0318】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性咽頭癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0319】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性頭頸部癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0320】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性乳癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0321】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性膵臓癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0322】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性食道癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0323】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性膀胱癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0324】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性肺癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0325】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性胃癌(stomach cancer)を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0326】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性尿路癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0327】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性前立腺癌または卵巣癌(ovary cancer)を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。
【0328】
いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞は、形質転換増殖因子β(TGFβ)、好ましくはTGFβ1を発現する腫瘍細胞も含む、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌に対して使用される。本明細書で使用されるように、E-カドヘリン発現腫瘍細胞およびTMTC3発現腫瘍細胞およびTGFβ発現腫瘍細胞を含む癌は、「E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性およびTGFβ陽性癌」と呼ばれる。実施例において示されるように、本発明による抗体または機能的フラグメントは、TGFβが存在する場合、腫瘍細胞に特によく結合する。本発明による抗体または抗原結合フラグメントのTGFβとの組み合わせは、腫瘍細胞増殖を阻害する、および/または腫瘍細胞死を増加させるのに特に適している。そのため、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性およびTGFβ陽性癌を治療または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が、さらに提供される。TGFβの存在下での改善された腫瘍細胞増殖阻害の利点は、より少ない投与量を使用する可能性である。
【0329】
列挙された方法のいずれかにおける使用のための好ましい抗体は、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、ならびに同じ結合特異性を有するその抗原結合フラグメントである。
【0330】
いくらかの実施形態は、医薬品の製造のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。
【0331】
いくらかの実施形態は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞に関連している障害を処置または予防するための医薬品の製造のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。特定の実施形態において、前記細胞は腫瘍細胞である。特定の実施形態において、前記O-マンノシルトランスフェラーゼは、TMTC3である。いくらかの実施形態は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を処置または予防するための医薬品の調製のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞の使用を提供する。いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、上皮癌である。いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される。いくらかの実施形態において、前記E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌は、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される。
【0332】
さらなる実施形態は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントを含む組成物を提供するいくらかの実施形態は、本発明による二重特異性抗体、多重特異性抗体、ADCまたはCAR T細胞を含む組成物を提供する。本発明による核酸分子を含む組成物、ならびに本発明によるベクターまたは細胞を含む組成物も提供される。いくらかの実施形態において、前記抗体は、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体である。いくらかの実施形態において、本発明による組成物は、本発明による抗体、および別のE-カドヘリン特異性抗体を含む。前記他のE-カドヘリン特異性抗体は、好ましくは、本発明による抗体と比較して、異なるE-カドヘリンエピトープを結合する。異なるE-カドヘリン特異性抗体のそのような組み合わせは、E-カドヘリンおよびTMTC3陽性腫瘍細胞などのE-カドヘリン陽性細胞を結合および/または妨害するのに特に適している。
【0333】
いくらかの実施形態において、本発明による組成物は、医薬組成物である。そのような医薬組成物はまた、医薬適合性のある担体、希釈剤および/または賦形剤を含むことが好ましい。適切な担体の非限定例は、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン(例えば、BSAまたはRSA)および卵白アルブミンを含む。いくらかの特定の実施形態において、前記適切な担体は、例えば生理食塩水のような溶液を含む。本発明による医薬組成物は、好ましくはヒトの使用に適している。
【0334】
本発明は、本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメント、および/または本発明による二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体もしくはADCもしくはCAR T細胞、および/または本発明による核酸、および/または本発明によるベクターもしくは細胞、および/または本発明による組成物もしくはキットオブパーツの治療的有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞、好ましくは限定されないが腫瘍細胞に関連している障害を処置および/または予防するための方法を、さらに提供する。治療的有効量の本発明による抗体もしくは抗原結合フラグメント、および/または本発明による二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞、および/または本発明による核酸、および/または本発明によるベクターもしくは細胞、および/または本発明による組成物もしくはキットオブパーツを、それを必要とする個体に投与することを含む、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を少なくとも一部処置および/または予防するための方法が、さらに提供される。前記組成物は、好ましくは本発明による医薬組成物である。本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは核酸分子またはベクターまたはADCまたはCAR T細胞または医薬組成物は、好ましくは1つまたは複数の注射を介して投与される。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは核酸分子またはベクターまたはADCまたはCAR T細胞または医薬組成物は、静脈投与される。代わりに、当技術分野において既知である他の投与経路が使用される。本発明による結合化合物の投与の用量の非限定例は、体重1kgあたり0.1mgから10mgである。
【0335】
いくらかの実施形態は、別の治療剤、好ましくは、抗癌治療剤および/または免疫調節化合物と組み合わせられる、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。例えば、本発明による抗体または抗原結合フラグメントは、E-カドヘリンおよびTMTC3などのO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置および/または予防において有用である別の薬剤と組み合わせられる。そのため、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が提供され、それによって、本発明による前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している前記障害の処置および/または予防に有用である別の治療剤と組み合わせられる。
【0336】
E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌を処置または予防するための方法における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が、さらに提供され、それによって、本発明による前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞は、前記癌の処置および/または予防のための別の治療剤と組み合わせられる。
【0337】
いくらかの実施形態において、前記他の治療剤は、化学療法剤である。
【0338】
いくらかの実施形態において、前記他の治療剤は、細胞増殖抑制剤または細胞毒性薬である。
【0339】
いくらかの実施形態において、前記他の治療剤は、治療用核酸である。いくらかの実施形態において、前記核酸は、細胞毒性リボヌクレアーゼ、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えばsiRAN分子)または免疫賦活性核酸(例えば免疫賦活性CpGモチーフ含有DNA分子)である。いくらかの実施形態において、前記核酸は、アプタマーまたはリボザイムである。
【0340】
いくらかの実施形態において、前記他の治療剤は、放射性標識アミノ酸を含む。
【0341】
いくらかの実施形態において、前記他の治療剤は、放射性同位体または放射性同位体含有キレートを含む。
【0342】
E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、好ましくはE-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌である。いくらかの実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、上皮癌である。いくらかの実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される癌である。いくらかの特定の実施形態において、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼを発現する腫瘍細胞に関連している前記障害は、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される癌である。
【0343】
本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞および別の治療剤の組み合わせを含む組成物およびキットオブパーツもまた、本明細書で提供される。いくらかの実施形態は、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の処置または予防のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸分子またはベクターまたは宿主細胞、および別の治療剤を含むキットオブパーツまたは組成物を提供する。いくらかの実施形態において、前記組成物は医薬組成物である。前記障害は、好ましくはE-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌である。
【0344】
いくらかの実施形態において、前記組成物は医薬組成物である。前記障害は、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌が好ましい。
【0345】
本発明によるキットオブパーツは、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAT T細胞または核酸分子またはベクターまたは宿主細胞を含む組成物および他の治療剤を含む組成物が充填された1つまたは複数の容器を含む可能性がある。前記キットオブパーツまたは前記1つもしくは複数の容器は、場合によっては1つまたは複数の医薬適合性のある担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む。そのようなキットオブパーツまたは容器(複数を含む)に関連して、使用説明書などの種々の資料、または医薬品の製造、使用もしくは販売を規制する政府機関により規定された形式での通知が含まれる可能性があり、通知は製造、使用または販売の代理店による承認を反映している。いくらかの実施形態において、本発明によるキットオブパーツは、使用説明書を含む。
【0346】
いくらかの実施形態は、ヒトまたは非ヒト個体におけるE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連する障害を処置または予防するための方法を提供し、その方法は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞または組成物またはキットオブパーツの治療的有効量を、さらなる治療剤または治療手順と組み合わせて、前記個体に投与することを含む。前記さらなる治療剤は、本明細書で上述したような薬剤であることが好ましい。
【0347】
E-カドヘリン特異性抗体のさらなる用途
本発明による抗体、抗原結合フラグメント、ADCおよびCAR T細胞はまた、O-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞の検出に特に有用である。例えば、個体、好ましくはヒトが、O-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞に関連する障害に罹患している疑いがある場合、前記個体からの試料をO-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞(本明細書ではO-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞とも呼ばれる)の存在について、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を使用して試験することができる。いくらかの実施形態において、前記試料を、そのような細胞が前記試料中に存在する場合、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞を特異的に結合する、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞と混合する。本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞に結合される、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞などのO-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞は、試料から単離することができる、および/または当技術分野において既知である任意の方法、例えば限定されないが、磁気ビーズ、ストレプトアビジンコートビーズを使用する単離、またはカラムに固定化された二次抗体の使用を通じた単離を使用して検出することができる。代わりに、またはさらに、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞は、それを検出することができるように標識される。そのような抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞は、例えば希土類キレート、フルオレセインまたはその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152E u、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム(acridimium)塩標識、オキサラートエステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、または安定フリーラジカルなどのフルオロフォアを使用して、例えば蛍光標識、酵素標識または放射性標識されている。いくらかの実施形態において、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞は、前記抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞に対して向けられている標識二次抗体を使用して検出される。
【0348】
本明細書で提供されるように、スクリーニングアッセイは、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、ウェスタンブロットアッセイおよび免疫組織化学染色アッセイなどの当技術分野において既知である方法を使用して実行することができる。
【0349】
標識された本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞は、例えば血液試料または組織試料などの個体の細胞含有試料と例えばインキュベートされ、その後、未結合の結合化合物が洗い流される。続いて、前記標識された本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞が、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞に結合されるかどうかが決定される。いくらかの実施形態において、未標識の本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を、細胞含有試料と接触させる。インキュベーション後、1つまたは複数の洗浄ステップは、好ましくは非結合の結合化合物を除去するために実行される。続いて、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞が、例えば本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞に対して特異的に向けられており、例えば蛍光化合物などのマーカー、または例えば西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼと結合している検出抗体を使用して、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞に結合している。さらなる洗浄ステップの後、検出抗体が、例えば発光を測定することによりまたは西洋わさびペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼの基質を添加することにより結合されているかどうかが決定されることが好ましい。これらの検出技術は、当技術分野において周知である。
【0350】
本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞が患者の試料の成分に結合するようにみえる場合、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞の存在について示唆している。このように、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞のような疾患特異的細胞を検出することができる。さらに、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞のような疾患特異的O-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞の存在は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる処置が、有益な効果を有していることを示唆する。そのため、いくらかの実施形態は、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞を試料が含むかどうかを決定するための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞の使用を提供する。いくらかの実施形態において、本発明による前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞は、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する腫瘍細胞を試料が含むかどうかを決定するために使用される。
【0351】
また、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞が試料中に存在するかどうかを決定するための方法も提供され、その方法は:
- 前記試料を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、および
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞に結合することを可能にすること、および
- 細胞が、前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する細胞、好ましくは腫瘍細胞が前記試料中に存在するかしないかを決定すること
を含む。
【0352】
抗体AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYEN、ならびにそれらの抗原結合フラグメントは、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞のようなO-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞を検出するのに特に適している。そのため、O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞を試料が含むかどうかを決定するための、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントの使用がさらに提供される。いくらかの実施形態は、例えばO-マンノシル化E-カドヘリン発現上皮癌細胞、または腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、好ましくは結腸直腸癌細胞、結腸癌細胞、結腸癌サブタイプCMS1細胞、結腸癌サブタイプCMS2細胞、結腸癌サブタイプCMS3細胞、結腸癌サブタイプCMS4細胞、咽頭癌細胞、頭頸部癌、乳癌細胞、膵臓癌細胞、食道癌細胞、膀胱癌細胞、肺癌細胞、胃癌(stomach cancer)細胞、尿路癌細胞、前立腺癌細胞および卵巣癌(ovary cancer)細胞からなる群より選択される癌の細胞のようなO-マンノシル化E-カドヘリンを含む腫瘍細胞を試料が含むかどうかを決定するための、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0353】
また、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞が試料中に存在するかどうかを決定するための方法も提供され、その方法は:
- 前記試料を、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントと接触させること、ならびに
- 前記抗体または抗原結合フラグメントが、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に結合することを可能にすること、ならびに
- 細胞が、前記抗体または抗原結合フラグメントに結合されているかいないかを決定し、それによって、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞が前記試料中に存在するかしないかを決定すること
を含む。
【0354】
いくらかの実施形態は、本発明による方法を提供し、前記試料は、血液試料または骨髄試料または生検を含む。いくらかの実施形態において、前記生検は、腸からであり、好ましくは、消化器癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌または胃癌(stomach cancer)について試験される。いくらかの実施形態において、前記生検は、膵臓組織または肺組織または乳房組織または咽頭組織または扁平上皮組織または肝臓組織または卵巣組織または前立腺組織または尿路組織または膀胱組織または脳組織からである。いくらかの実施形態において、前記試料は血液試料であり、例えば、多発性骨髄腫の存在および/または上述した固形腫瘍のいずれかの転移について試験するのに有用である。
【0355】
本発明による方法の試験結果は、試料のタイピングに有用である。例えば、個体の試料が悪性のO-マンノシル化E-カドヘリン陽性細胞を含むようにみえる場合、試料は、疾患関連細胞を含んでいるとタイピングされる。そのようなタイピングは、その後、O-マンノシル化E-カドヘリン発現細胞に関連する障害の診断に使用することができる。そのため、いくらかの実施形態は、診断薬として使用するための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞を提供する。O-マンノシル化E-カドヘリンを含む細胞、好ましくは腫瘍細胞に関連している障害の診断における使用のための、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞または核酸またはベクターまたは宿主細胞が、さらに提供される。前記障害は、好ましくは上皮癌であり、好ましくは、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、より好ましくは、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される。
【0356】
いくらかの好ましい実施形態において、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントは、上述した検出および診断に使用される。そのため、O-マンノシル化E-カドヘリン含有細胞に関連する障害の診断における使用のための、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントも提供される。いくらかの実施形態は、上皮癌、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、食道胃接合部癌、膀胱癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、尿路癌、前立腺癌、脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌、カルチノイド癌、肝癌、肝細胞癌、頭頸部癌、卵巣癌(ovary cancer)、子宮頸癌、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮内膜癌、上皮内癌、明細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、腎癌、腎細胞癌、腎移行上皮癌、卵管癌および腹膜癌からなる群より選択される、より好ましくは、結腸直腸癌、結腸癌、結腸癌サブタイプCMS1、結腸癌サブタイプCMS2、結腸癌サブタイプCMS3、結腸癌サブタイプCMS4、喉頭癌、頭頸部癌、乳癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、肺癌、胃癌(stomach cancer)、尿路癌、前立腺癌および卵巣癌(ovary cancer)からなる群より選択される、E-カドヘリン陽性およびTMTC3陽性癌細胞の診断における使用のための、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントを提供する。
【0357】
また、ヒトまたは非ヒト個体がO-マンノシル化E-カドヘリンを含む癌に罹患しているかどうかを決定するための方法も提供され、その方法は:
- 前記個体の細胞を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを含む腫瘍細胞を結合することを可能にすること、ならびに
- 腫瘍細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、前記個体がO-マンノシル化E-カドヘリンを含む癌に罹患しているかいないかを決定すること
を含む。いくらかの実施形態において、前記方法はエクスビボ方法である。他の実施形態において、前記方法はインビボ画像検査法である。
【0358】
適切な画像検査技術は、SPECTイメージング(単一光子放射断層撮影)およびPETイメージング(陽電子放射断層撮影)を含む。適切な標識は、例えばSPECTイメージングと組み合わせた、例えばヨウ素-123(1231)およびテクネチウム-99m(9mTc)、または例えばPETイメージングと組み合わせた11C、13N、150または18F、またはインジウム111(例えば、Gordon et al.,(2005)International Rev.Neurobiol.67:385-440を参照されたい)を含む。
【0359】
O-マンノシル化E-カドヘリン陽性癌の非限定例は、上記に列記されている。好ましくは、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントは、前記方法に使用される。そのため、いくらかの実施形態は、ヒトまたは非ヒト個体が、O-マンノシル化E-カドヘリンを発現する癌に罹患しているかどうかを決定するための方法を提供し、その方法は:
- 前記個体の細胞を、AT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントと接触させること、
- 前記抗体または抗原結合フラグメントが、存在する場合にO-マンノシル化E-カドヘリンを含む腫瘍細胞を結合することを可能にすること、ならびに
- 腫瘍細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントに結合されているかいないかを決定し、それによって、前記個体がO-マンノシル化E-カドヘリンを含む癌に罹患しているかいないかを決定すること
を含む。
【0360】
いくらかの実施形態において、個体がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する癌に罹患しているかどうかが決定される。本明細書の上記で説明したように、O-マンノシル化E-カドヘリンを含む癌の存在は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる処置が、有益な効果を有していることを示唆する。そのため:
- 前記個体からの試料を本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞と接触させること、ならびに
- 前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞が、存在する場合にE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する腫瘍細胞を結合することを可能にすること、ならびに
- 腫瘍細胞が前記抗体または抗原結合フラグメントまたは二重特異性抗体または多重特異性抗体またはADCまたはCAR T細胞に結合されているかいないかを決定し、それによって、前記個体がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する癌に罹患しているかいないかを決定すること
を含む、個体がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現する癌に罹患しているかどうかを決定するための方法も提供される。好ましくは、前記個体はヒトである。
【0361】
本発明の別の態様は、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる癌患者の処置が、癌患者の平均個体群と比較して処置の前向きな結果の改善された可能性を有するかどうかを決定するための方法を提供し、その方法は、前記癌患者の試料が、O-マンノシル化E-カドヘリン陽性腫瘍細胞を含むかどうかを決定することを含む。これが事実である場合、例えばAT1636、E-C06、D-H04、D-A02、D-E09、E-A04、E-B09、C-A05、C-A03、C-B02、C-D04-A、C-D04-B、F-C08、D-G03、D-F10、C-E08、D-B06、D-G05、D-H08、C-H01、D-C12、D-C11、E-C10、AT1636-I、AT1636-Y、AT1636-E、AT1636-N、AT1636-YN、AT1636-IYNおよびAT1636-IYENからなる群より選択される抗体のような本発明による抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントが、そのような癌に対抗するのに特に適している。そのため、個体の癌細胞がO-マンノシル化E-カドヘリンをそれらの表面に含むことが既知である場合、処置が成功する可能性が高くなる。そのため、個体の疾患特異的細胞、好ましくは腫瘍細胞がO-マンノシル化E-カドヘリンをそれらの表面で含むかどうかを決定することを含むスクリーニング方法がさらに提供される。いくらかの態様において、前記疾患特異的細胞がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3を発現するかどうかが決定される。いくらかの態様において、前記疾患特異的細胞がTGFβを発現するかどうかがさらに決定される。癌細胞のような疾患特異的細胞が、E-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、好ましくはTMTC3、およびTGFβを発現する場合、本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる処置が成功する可能性は、さらに高くなる。
【0362】
O-マンノシル化E-カドヘリンの存在が、典型的にE-カドヘリンおよび例えばTMTC3などのO-マンノシルトランスフェラーゼの発現の結果であるので、いくらかの実施形態は、個体の疾患特異的細胞、好ましくは腫瘍細胞がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、特にTMTC3を発現するかどうかを決定することを含むスクリーニング方法を提供する。いくらかの実施形態は、個体の疾患特異的細胞、好ましくは腫瘍細胞がE-カドヘリンおよびO-マンノシルトランスフェラーゼ、特にTMTC3、およびTGFβを発現するかどうかを決定することを含むスクリーニング方法を提供する。
【0363】
いくらかの実施形態において、本発明によるそのような方法は:
- 個体からの疾患特異的細胞含有試料を、O-マンノシル化E-カドヘリンに特異的である結合化合物、好ましくは抗体または抗原結合フラグメントと接触させるステップ;
- 前記結合化合物が前記試料の疾患特異的細胞を結合することを可能にするステップ、および
- 前記結合化合物が前記試料の疾患特異的細胞に結合されているかいないかを決定するステップ
を含み、前記結合化合物の、前記試料の疾患特異的細胞への結合が、前記患者が本発明による抗体または抗原結合フラグメントまたはADCまたはCAR T細胞を用いる処置の前向きな結果の優位な可能性を有すことを示唆する。
【0364】
いくらかの実施形態において、前記疾患特異的細胞は腫瘍細胞である。
【0365】
いくらかの実施形態において、前記疾患特異的細胞がまた、TGFβを発現するかどうかがさらに決定される。
【0366】
本出願が同じ実施形態の一部として、または別個の実施形態の一部として、特徴を記載する可能性がある一方で、本発明の範囲はまた、本明細書に記載の特徴のすべてまたはいくらかの任意の組み合わせを含む実施形態を含む。
【実施例
【0367】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではないが、単に本発明を明確にするのに役立つ。
【0368】
【表1】
【0369】
【表2】
【0370】
【表3】
【0371】
【表4】
【0372】
【表5】
【0373】
参考文献
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US 5,648,471

US 5,697,902

US9534058 (B2)

WO 2010/087994

WO 2013/081463

WO 2015/093949
【0374】
実施例
実施例1 AT1636抗体発見
患者および健康なヒトの材料
研究プロトコルは、アカデミックメディカルセンターの医療倫理委員会、アムステルダム、オランダにより承認された。すべての参加者は、インフォームドコンセントに署名した。全末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配遠心分離後に新鮮な血液から単離し、使用するまで凍結した。
【0375】
結腸癌特異性クローンAT1636の生成
国際公開第2015/093949号およびKwakkenbos et al.,Nat Med(2010)により記載された手順にしたがって、ナイーブおよびメモリーIgG B細胞を、MSH6遺伝子における病原性遺伝子変異体の保因者であり、ステージIVの結腸直腸癌(CRC)および肝転移と診断されており、アバスチン、カペシタビンおよびオキサリプラチンを用いる処置に成功している、リンチ症候群に罹患している患者から単離した。B細胞を、最後の処置から9年後にこの患者から得られた末梢血から単離した。ナイーブおよびメモリーIgG B細胞を、Bcl6およびBcl-xL遺伝子ならびにレポータ遺伝子GFPのレトロウイルス形質導入により不死化された。次に、不死化したB細胞を、1ウェルあたり5個、10個または20個の細胞の濃度で播種し(この後、ミクロ培養と名付ける)、IL-21およびCD40Lで増殖させた。その後、増殖させたB細胞ミクロ培養の上清を、結腸細胞株:COLO-205、CACO-2およびDLD1細胞(ATCC)のミクスに結合する特異性抗体についてスクリーニングした。二次抗体として抗ヒトIgG-PE(Southern Biotech)を使用して、フローサイトメトリ(BD)により結合した抗体を検出した。
【0376】
インフルエンザのHA抗原(国際公開第2013/081463号に記載)を特異的に結合する無関係な対照抗体(AT1002)を、実験の陰性対照として含めた。
【0377】
上清が結腸細胞株への特異的な結合を示したミクロ培養を選択し、1個の細胞/ウェルの濃度で播種し、クローン培養を得た。増殖後、クローン培養の上清を、結腸細胞株に特異的に結合する抗体の存在に対して、上述したようにフローサイトメトリを使用して試験した。7G02と名付けられた、得られた結腸特異的B細胞クローンの1つは、3つの結腸細胞株の2つに結合したIgG3抗体を産生した。
【0378】
結腸癌特異性抗体AT1636のクローニング
7G02により産生された抗体を同定するため、メーカーの説明書にしたがってTriPure/クロロホルム法(ロシュ)を使用して、総mRNAを単離した。次に、cDNAを、逆転写酵素(SuperScript III、インビトロジェン)およびランダムヘキサマー(プロメガ)により生成した。CH1(重鎖)およびCkappa(軽鎖)特異的プライマを組み合わせたリーダー特異的プライマを適用するメーカーの手順にしたがって、PCR(FastStart Taq DNAポリメラーゼ、ロシュ)により、重鎖および軽鎖のIgG可変ドメインを増幅させた。アンプリコンは、増幅に使用したような同族プライマを使用する、サンガージデオキシ蛍光シーケンシング(BDT、インビトロジェン)に使用された。逆転写酵素またはDNAポリメラーゼ誘導突然変異を除外するために、少なくとも5つのクローンを配列決定した。
【0379】
次に、7G02の完全重鎖および軽鎖領域をコードする合成コドン最適化DNAフラグメント(GeneArt)を、Double Gene pXCベースの発現ベクター(ロンザ)にサブクローニングした。コンストラクトは、DNAの配列決定により、完全性についてチェックされた。ここから、7G02のヒトIgG1/カッパ組換え抗体は、AT1636と指定されている。
【0380】
続いて、pXC二重遺伝子ベクターを、CHO-GS細胞に安定的にトランスフェクトして、安定プールを生成した(GS Xceedプラットフォーム、ロンザ)。安定プールを拡大し、7日間の振盪フラスコ、流加回分細胞培養IgG産生に使用した。組換えAT1636抗体を含む細胞除去上清を回収し、AKTA精製システム(ゼネラルエレクトリックライフサイエンス)を使用するプロテインAクロマトグラフィを使用して精製した。0.1Mクエン酸、150mM NaCl、pH3.5の緩衝液を使用して抗体を溶出し、続いて、1Mトリス-HCl、pH9.0で中和し、その後サイズ排除クロマトグラフィによりTBS-TS中で再緩衝化した。NanoDrop分光光度計(OD280、サーモフィッシャー)を使用して濃度を確立した。サイズ排除クロマトグラフィを使用して、精製された抗体の単量体含量は、>90%と確認された。精製されたタンパク質の完全性をSDS-PAGEにより確立した。
【0381】
AT1636のフローサイトメトリ結合特性
フローサイトメトリを使用して、細胞株のパネルおよび初代細胞材料への結合について、組換えAT1636抗体を試験した。要するに、細胞を抗体溶液と30~60分間、4℃でインキュベートし、その後、150μlのPBS 1%BSAで2回洗浄した。抗体結合を、抗ヒトIgG-RPE(Southern Biotech)またはAlexa Fluor647共役ポリクローナルBCR抗体(インビトロジェン)で検出し、FACSCanto IIまたはLSRFortessa(ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー)で分析した。AT1636は、E-カドヘリンおよびTMCT3を同時発現する(癌細胞株百科事典(https://portals.broadinstitute.org/ccle)にしたがって)、上皮細胞株への結合を示す(表3を参照されたい)。
【0382】
実施例2 AT1636の標的同定
免疫沈降
AT1636抗体の標的を同定するため、結腸癌細胞株DLD1(ATCC CCL-221)およびT細胞株Jurkat(陰性対照)の細胞を使用して、標的の免疫沈降(IP)を実行した。プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ロシュ)を添加した溶解緩衝液(0.5%Triton X114(シグマ)、0.5%DOC;0.1%SDS、150mM NaCl、10mMトリス-HCL pH7.4、1.5mM MgCl2)を使用して、細胞を溶解した。溶解後、不溶性画分を遠心分離により除去した。その後、溶解物を、プロテインG Dynabeads(インビトロジェン)に結合した無関係な抗体(RSV抗体パリビズマブ)およびストレプトアビジンビーズ(インビトロジェン)を用いて予めきれいにし、非特異性結合タンパク質を除去した。その後、予めきれいにした溶解物を、50μgの、プロテインG Dynabeads結合AT1636抗体または陰性対照としてのビーズ結合インフルエンザ特異性抗体AT1002と3時間4℃でインキュベートした。抗体-インキュベートビーズを溶解緩衝液で3回洗浄し、1×SDS-PAGE試料緩衝液(バイオ・ラッド)+0.1M DTTを用いて、結合したタンパク質をビーズから溶出させた。試料をSDS-PAGEゲル上で分離した。IP試料の85%を分取SDS-PAGEで泳動させ、免疫沈降したタンパク質を、Imperialタンパク質染色(Pierce)で視覚化した。DLD1対Jurkat T細胞(陰性対照として)からのAT1636およびAT1002(陰性対照)免疫沈降物との間で特異の免疫沈降タンパク質:70kDaおよび85kDaを切除した(図2aを参照されたい)。バンドを質量分析に供した。タンパク質は、ジチオスレイトールによる還元、ヨードアセトアミドによるアルキル化、およびProteineer DP消化ロボット(Bruker Daltonics、ブレーメン、ドイツ)を使用するゲル内トリプシン消化に供された。トリプシンペプチドを、Easy nLC 1000勾配HPLCシステム(サーモ、ブレーメン、ドイツ)、およびLUMOS質量分析計(サーモ)からなるシステムを有するオンラインC18ナノHPLC MS/MSにより分析した。その後、ヒトUniprotデータベースに対して、Mascotアルゴリズム(Mascot v2.2.04、マトリックスサイエンス)を使用して質量分析データをサーチすることによりタンパク質を同定した。10ppmのMS許容値および0.02DaのMS/MS許容値を使用した。トリプシンが選択の酵素として指定され、最大2つの開裂部位の欠落を可能にした。カルバミドメチルシステインを固定修飾として、メチオニンの酸化およびN末端アセチル化を可変修飾として選択した。データベースサーチからの結果を分析し、足場(www.proteomesoftware.com)を使用して視覚化した。E-カドヘリンは、O-マンノシル化されていることが認められた。O-マンノシル化の同定のため、ヘキソースによるセリンおよびスレオニンの修飾を可変修飾として選択した。非トリプシンN末端を同定するために、セミトリプシンを酵素特異性として使用した。
【0383】
質量分析により、AT1636による免疫沈降されているタンパク質は、切除された70kDaバンドにおいてE-カドヘリンの24%のシーケンスカバレッジで短縮70kDa型のE-カドヘリン(CDH1、本明細書ではp70と呼ばれる短縮型)であるが、ベータカテニンは、85kDaバンドに認められる(76%のタンパク質カバレッジ)ことが明らかにされた。E-カドヘリンの最も外側のC末端ドメインに対応するペプチドは検出されず、短縮タンパク質が示唆された(図3における完全長および短縮E-カドヘリンの漫画を参照)。さらにN末端アセチル化実験により、N末端残基がグルタミン酸463であることが明らかになった(Uniport P12830エントリによる番号付け)。
【0384】
ウェスタンブロット
AT1636のp70E-カドヘリンの特異的結合は、ウェスタンブロットにより確認された。AT1636反応性を、市販のEP700Y(アブカム、ウサギ抗体)およびE-カドヘリンの細胞質ドメインに特異的なマウス抗体(クローン36/E、BDバイオサイエンス)と比較した。EP700Yは、ヒトE-カドヘリンのEC5ドメインへの結合が示されており、したがって、細胞内Cテール抗体にも当てはまる、完全長およびp70E-カドヘリンの両方を結合する。E-カドヘリン抗体免疫沈降を、同量の溶解物(10mg)および抗体(2.5μg)を用いて、DLD1細胞から実行した。投入物(40μg)およびIP試料(すべて)をSDS-PAGEで泳動させ、免疫ブロット法ためにPVDF膜(バイオ・ラッド)に移した。E-カドヘリンの細胞内ドメインおよびEP700Y抗体を結合する抗体を使用すると、完全長(120kDa)E-カドヘリンおよび70kDaタンパク質が免疫沈降されたが、一方で、AT1636では主に70kDaタンパク質が免疫沈降された(図2b)。したがって、AT1636は、完全長E-カドヘリンよりもp70の濃縮により示されるように完全長E-カドヘリンよりもp70を優先的に結合する。シグナルの濃度測定的定量で、我々は、EP700Y IPと比較して、AT1636IPでは完全長よりもp70の7倍濃縮を認めた。
【0385】
図3において、図は、p70において認められている短縮を要約しており、完全長E-カドヘリンのEC1、EC2およびEC3ドメインの大部分を除去し、D3ドメインの短いペプチドに加えてドメインEC4およびEC5を残している。また、いくらかの抗体の結合領域およびβ-カテニン相互作用ドメインも示す。
【0386】
AT1636標的のタンパク質分解性開裂
p70を生成するためにE-カドヘリンがタンパク質分解的に開裂されるかどうかを調べるため、我々は、DLD1細胞(デカノイル-RVKR-CMK(Tocris))に添加されたフーリン/コンベルターゼ阻害剤を用いてフーリンおよび関連するコンベルターゼを阻害した。示された濃度の阻害剤の非存在下または存在下で細胞を48時間培養し、1回リフレッシュさせた。細胞を回収し、示された抗体(図4)を用いるフローサイトメトリに供した。DLD1細胞のCMKとのインキュベーションは低下したが、DLD1細胞へのAT1636の結合を完全に無効にせず(図4)、p70開裂がフーリンおよび他の関連するコンベルターゼにより一部媒介されていることを示唆した。
【0387】
EC3ドメイン内でのE-カドヘリンの独特な開裂に加えて、E-カドヘリンをO-マンノシル化することができることが知られている(I.S.B.Larsen,PNAS(2017)、M.B.Vester-Christensen,PNAS(2013)、M.Lommel,PNAS(2013)およびS.Carvalho S,Oncotarget(2016))。AT1636の開裂部位および可能な結合ドメインに隣接しているものは、少なくとも2つのO-マンノシル化スレオニン(Thr残基472および474)であり、おそらく1つは470位である。AT1636結合についてp70のO-マンノシル化の依存性を研究するため、CMK実験と類似の実験を、マンノシルトランスフェラーゼ阻害剤(Mann、オキソ-2-チオキソ-3-チアゾリジニル酢酸、シグマ)を用いて実行した。図4の2つの右の列に示されているのは、Mannで処置されたDLD1細胞へのAT1636結合の低下であり、AT1636結合領域内でのp70O-マンノシル化が結合に必要とされていることを示唆する。
【0388】
実施例3 高親和性AT1636変異型の生成
組換え可溶性p70E-カドヘリンタンパク質の産生
完全長E-カドヘリンcDNAと、EC5およびEC4ドメインならびに細胞内および膜貫通(TM)ドメインの両方を除く463位でのN末端までのEC3の一部に対応するp70E-カドヘリンcDNA(図1)とを、GeneArtから得、続いて、ソルターゼおよびHISタグを備えたマウスFテール上のFLAGタグを含む、pCMV3、pcDNA3およびpXC19ベクターにクローン化されたか、Cタグのみを含むタンパク質が生産された。ベクターを一時的にExpi293またはCHO細胞にトランスフェクトし、組み換え蛋白質をCタグ親和性マトリックスまたはプロテインAセファロースで精製した。溶出されたタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィによりTBS-TS中で再緩衝化した。NanoDrop分光光度計(OD280、サーモフィッシャー)を使用して濃度を確立した。サイズ排除クロマトグラフィを使用して、精製された抗体の単量体含量は、>90%と確認された。精製されたタンパク質の完全性をSDS-PAGEにより確立した。
【0389】
GFP高発現7G02 B細胞の生成
Bcl6およびBcl-xLの遺伝子の次に、7G02 B細胞に形質導入するために使用されたレトロウイルスはまた、B細胞の形質導入の成功のためのレポータとしてGFPの遺伝子も含んでいた。Bcl6、Bcl-xLおよびGFP遺伝子を含むレトロウイルスを使用して、7G02 B細胞を2回目のレトロウイルス形質導入に供した。これは、結果として、元の7G02 B細胞よりもGFP発現が高い7G02 B細胞となった。高GFP発現7G02 B細胞を、FACSAria III(BDバイオサイエンス)を使用する細胞ソーティングに供し、高レベルのGFPを安定して発現する7G02 B細胞の均一な集団を生成した。7G02-GFP-高細胞の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの配列を、メーカーのプロトコルにしたがって、TriPure/クロロホルム(ロシュ/メルク)を使用して、全RNAを単離することにより決定した。次に、逆転写酵素(インビトロジェン)を使用して、cDNAを生成した。抗体重鎖および軽鎖の可変ドメインをコードするcDNAを、VHおよびVLプライマを使用するPCRにより増幅させ、DNA配列決定に供した。7G02-GFP-高B細胞の抗体重鎖および軽鎖の可変ドメインの配列は、7G02-GFP-低B細胞のものと同一であった。
【0390】
増加した標的結合を有する7G02 B細胞クローンの単離
可溶性E-カドヘリンタンパク質を使用して、Kwakkenbosら(M.J.Kwakkenbos,Methods(2013))により記載されたようなAIMProve法により、元の7G02 B細胞クローンと比較して増加した抗原結合を有するサブクローンを選択した。要するに、7G02 B細胞GFP-高-クローンを拡大し、増殖した細胞を組換え可溶性E-カドヘリンマウスFc融合タンパク質とインキュベートした(上記を参照されたい)。続いて、細胞を洗浄し、B細胞受容体(BCR)の重鎖および軽鎖を特異的に結合するAlexa Fluor647共役ポリクローナル抗体(インビトロジェン)と同時インキュベートして、BCR発現レベルを評価し、R-フィコエリスリン標識ポリクローナル抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて結合したE-カドヘリンタンパク質を視覚化した。細胞をフローサイトメトリにより分析し、平均7G02 B細胞集団と比較してBCR発現に関してより高い組換えE-カドヘリンタンパク質結合を示した細胞は、FACSAria III(BDバイオサイエンス)を使用して単一細胞に分類された(図5a)。選択されたクローンを2週間から3週間培養して増殖を可能にし、その後、親7G02-GFP-低クローンと比較して増加した抗原結合について抗原競合アッセイ(以下を参照されたい)で試験された。
【0391】
抗原競合アッセイ
7G02 B細胞(7G02、GFP低)を回収し、96ウェル丸底フラスコマイクロウェルプレートに、1ウェルあたり10,000個の細胞で播種した。続いて、10~50μLの分類されたサブクローン(GFP高)をこれらのウェルに加えた。全細胞を2回洗浄し、E-カドヘリン-マウスFcタンパク質と1~3時間氷上でインキュベートした。続いて、細胞を2回洗浄し、Alexa Fluor647共役ポリクローナルBCR抗体およびR-フィコエリスリン標識ポリクローナル抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch)と約1時間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、FACS Canto(BDバイオサイエンス)を使用して、フローサイトメトリにより結合した抗体を検出した。親7G02-GFP-低細胞に結合する組換えE-カドヘリンタンパク質の量をサブクローン(GFP高)に結合した組換えE-タンパク質の量と比較する。親クローン(GFP-低)と比較して組換えE-のサブクローン(GFP-高)への結合が、BCR発現レベルに関して高いことは、より高い結合能を有するBCRを示唆する。図5bでプロットされているのは、BCR発現に関して親7G02-GFP-低B細胞と比較してE-カドヘリンタンパク質への向上した結合を示す7G02-GFP-高サブクローンの例である。
【0392】
AT1636の選択されたサブクローン抗体のクローニングおよび配列分析
サブクローンのパネルを、親7G02クローと比較して強化された組換えE-カドヘリン抗原結合に基づいて選択した。メーカーの説明書にしたがってTriPure/クロロホルム法(ロシュ)を使用して、これらのサブクローンの総RNAを単離した。次に、cDNAを、逆転写酵素(SuperScript III、インビトロジェン)およびランダムヘキサマー(プロメガ)により生成した。CH1(重鎖)およびCkappa(軽鎖)特異的プライマを組み合わせたリーダー特異的プライマを適用するメーカーの手順にしたがって、PCR(FastStart Taq DNAポリメラーゼ、ロシュ)により、重鎖および軽鎖のIgG可変ドメインを増幅させた。アンプリコンは、増幅に使用したような同族プライマを使用する、サンガージデオキシ蛍光シーケンシング(BDT、インビトロジェン)に使用された。表1は、B細胞サブクローンの表面上のBCRの量に関して増加した抗原結合を示したサブクローンのDNAおよびアミノ酸配列を示している。この配列データに基づいて、組換え抗体AT1636-I(VH配列番号3、VL配列番号18)、AT1636-Y(VH配列番号10、VL配列番号18)、AT1636-E(VH配列番号5、VL配列番号18)、AT1636-N(VH配列番号8、VL配列番号18)、AT1636-YN(VH配列番号15、VL配列番号18)、AT1636-IYN(VH配列番号16、VL配列番号18)およびAT1636-IYEN(VH配列番号17、VL配列番号18)は、組換え生産された。
【0393】
7G02サブクローン配列に基づいて組換え抗体を生産するため、重鎖および軽鎖可変領域を、ヒトIgG1およびカッパ定常領域とインフレームでDouble Gene pXCベース発現ベクター(ロンザ)にクローン化した。DNAシーケンシングにより完全性についてコンストラクトを調べ、ExpiCHO-S細胞(GS Xceedプラットフォーム、ロンザ)にトランスフェクトした。細胞を増殖させて、振盪フラスコ、流加回分細胞培養IgG産生のために7日間使用した。組換えAT1636抗体を含む細胞除去上清を回収し、AKTA精製システム(ゼネラルエレクトリックライフサイエンス)を使用するプロテインAクロマトグラフィを使用して精製した。0.1Mクエン酸、150mM NaCl、pH3.5の緩衝液を使用して抗体を溶出し、続いて、1Mトリス-HCl、pH9.0で中和し、その後サイズ排除クロマトグラフィによりTBS-TS中で再緩衝化した。NanoDrop分光光度計(OD280、サーモフィッシャー)を使用して濃度を確立した。サイズ排除クロマトグラフィを使用して、精製された抗体の単量体含量は、>90%と確認された。精製されたタンパク質の完全性をSDS-PAGEにより確立した。
【0394】
次に、結腸DLD1、マウスCMT93、乳房MCF10a、皮膚A431および肺A547を含む異なる細胞株に結合するフローサイトメトリについて組換え抗体を比較した(図6aおよび図6b)。これらの実験から、我々は、3つの突然変異(VH配列番号16、VL配列番号18)を組み合わせるAT1636-IYN抗体がAT1636および他のAT1636変異型と比較してさらに効率的にこれらの細胞を結合すると結論付けることができた。
【0395】
実施例4 AT1636高親和性変異型の分析
SPRを使用するAT1636高親和性変異型の結合
組換えp70E-カドヘリンへの結合について、AT1636組換え抗体およびAT1636-YN(本明細書では-NYとも呼ばれる;VH配列番号15およびVL配列番号18)およびAT1636-IYN(本明細書では-IYNとも呼ばれる;VH配列番号16およびVL配列番号18)変異型を試験し、IBIS Mx96(IBIS Technologies)およびCFMスポッタ(ワサッチマイクロ流体工学社)を使用して抗体EP700Y E-カドヘリン抗体と比較した。スプリントソフトウェア(バージョン11.0.24、IBIS)を使用して、結果を分析した。Scrubber2ソフトウェア(バイオロジックソフトウェア)を使用して、結合曲線をフィッティングさせた。
【0396】
SensEye G-STREPチップ(Ssens BV、エンスヘデ、オランダ)を、ヒトp70E-カドヘリン-マウスFc-ビオチンの濃度系列(0.2~2.0μg/ml)でコートした(実施例3を参照されたい)。2μl/分(会合+解離の間)、8μ/分(再生ステップ)の流速下、両方とも25℃の温度で結合を評価した。続いて、抗ウサギIgG(ヤギ抗ウサギH+L、Jackson)、および抗マウスIgG(ヤギ抗マウスH+L、Jackson)、EP700Y(アブカム)、AT1636および変異型-IYNおよび-NYを、0.5~20μg/mlの濃度系列で、二連で注入した。IBISマルチプレックスSPRイメージングにより、結合を確立する。
【0397】
図7aに示されるように、AT1636ならびにその変異型-YNおよび-IYNの可溶性p70E-カドヘリンへの結合を示した。AT1636NYは、AT1636と比較して大幅に改善された結合を示し、AT1636IYNと比較してほぼ等しい結合を示す。AT1636抗体の中で、特にオンレートが増加しても、オフレートは、変化しないままであった。
【0398】
ELISAによるAT1636変異型の定常状態結合
ヤギ抗マウスIgG Fcy抗体(Jackson)を使用する組換えE-カドヘリンmFcタンパク質を、96ウェルプレート(Costar)に捕捉した。TBS/5%BSA/0.05%Tween20でブロッキングした後、PBS/0.05%Tweenで2回洗浄し、捕捉してPBS/0.05%Tweenで2回洗浄し、AT1636およびAT1636親和性変異型を(4度で)加え、これらの抗体の結合をPBS/0.05%Tweenで2回洗浄した後にヤギヒトIgG H+L-HRP(Jackson)を使用して検出した。結合した抗体を、TMB基質(シグマ)を使用して視覚化し、反応をHSO(メルク)で停止し、Envisionプレートリーダー(パーキンエルマー)を使用してOD450測定により定量した。図7b(2つの左パネル)に示されるように、AT1636抗体と比較してAT1636-YNおよび-IYN抗体変異型の類似の増加した結合は、ELISAにより、完全長E-カドヘリンおよびp70に対して観察された。再度、AT1636IYN変異型は、-YNおよびAT1636抗体よりもより強力な結合を示す。ここで、SC10.17、ヒト化EC1ドメイン特異性E-カドヘリン抗体は、完全長E-カドヘリンを結合するが、p70短縮変異型を結合しない。注目すべきことに、試験した抗体AT1636変異型のすべておよびAT1636野生型は、完全長E-カドヘリンよりも良好にE-カドヘリンの短縮70kDa型を結合する。
【0399】
別のELISAにおいて、我々は、AT1636およびその変異型の、残基Thr470のアラニン置換を含むD3-マウスFcタンパク質への結合を試験した。AT1636結合が、実施例2、図4におけるオキソ-2-チオキソ-3-チアゾリジニル酢酸を使用するマンノシルトランスフェラーゼ阻害により示される、O-マンノシル化p70に依存しているので、我々は、O-マンノシル化を無効にする置換を行った。残基470は、AT1636エピトープの中心に位置し、おそらくマンノシル化されている。確かに、我々は、AT1636が、このThr470Ala D3変異型への結合をほとんど完全に喪失したことを示すことが可能である(図7b、右パネル)。AT1636変異型は、AT1636-wtと比較してp70へのそれらの向上した結合能力にも関わらず、依然として、それらの結合エピトープ内で適切なO-マンノシル化に依存していた。
【0400】
完全長E-カドヘリンを超えるp70の結合優先性を評価するため、我々は、完全長E-カドヘリン、p70および、AT1636結合が強力に低減される変異型である残基Thr470のアラニン置換を含むD3マウスFcタンパク質への結合について、幅広い濃度範囲のAT1636およびその変異型を試験した(図7bに示される)。
【0401】
図7cおよび表4に示されるように、AT1636野生型と比較した結合の増加は、-IYNおよび-YN変異型で最も顕著である。重要なことに、それらは、それぞれ完全長E-カドヘリン(YNについては56.5倍、IYNについては67.1倍)および(YNについては28.4倍、IYNについては64.3倍)と比較してE-カドヘリンのp70型への好ましい結合を保持する。
【0402】
実施例5 エピトープマッピング
AT1636へのp70E-カドヘリン結合は、マンノース依存性である
溶解緩衝液(プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ロシュ)を添加した0.5%Triton X114(シグマ)、0.5%DCO;0.1%SDS、150mM NaCl、10mMトリス-HCL pH7.4、1.5mM MgCl2)を使用して、4℃で3時間、DLD1細胞(ATCC CCL-221)を溶解した。溶解後、不溶性画分を遠心分離により除去した。次に、溶解物を、プロテインG Dynabeads(インビトロジェン)およびストレプトアビジンビーズ(インビトロジェン)に捕捉された無関係な抗体(RSV抗体パリビズマブ)を用いて予めきれいにし、非特異性結合タンパク質を除去した。その後、予めきれいにした溶解物を、プロテインG Dynabeads(インビトロジェン)に捕捉されたAT1636抗体と4℃で3時間インキュベートし、溶解緩衝液で3回洗浄し、450mMメチルα-マンノピラノシド(シグマ)を用いて、結合したタンパク質をビーズから溶出させた。1×SDS-PAGE試料緩衝液(バイオ・ラッド)+0.1M DTT中で、SDS-PAGEにより、続いて、PVDF膜上でのウェスタンブロッティングにより、溶出物を分析した。TBST/5%BSAを用いる膜のブロッキング後、膜をウサギ抗E-カドヘリン(EP700Y、アブカム)とインキュベートし、E-カドヘリンタンパク質を検出した。図8aに示されるように、p70E-カドヘリンを高マンノース添加によりAT1636から溶出させ、1つまたは複数のマンノース基が、AT1636の結合エピトープの本質的な部分を形成することを示唆した。AT1636のE-カドヘリンへの結合のマンノース依存性は、ELISAにより確認された。組換えE-カドヘリンタンパク質を、ヤギ抗マウスIgG Fcy抗体(Jackson)を使用して96ウェルプレート(Costar)に捕捉した。HEK細胞由来の完全長E-カドヘリン(Sino Biologics)および大腸菌(LSbio)由来の完全長E-カドヘリンを捕捉した。捕捉してTBS/0.05%Tweenで2回洗浄した後、AT1636およびEP700Y(アブカム)および陰性対照としてのAT1002を用量-濃度で添加した。これらの抗体の結合は、TBS/0.05%Tweenでの2回の洗浄後、ヤギ抗ヒトIgG Fc(y)-HRP(Jackson)または抗ウサギIgG-HRP(Dako)を使用して検出された。結合した抗体を、TMB基質(シグマ)を使用して視覚化し、反応をH2SO4(メルク)で停止し、Envisionプレートリーダー(パーキンエルマー)を使用してOD450測定により定量した。EP700Y、E-カドヘリンのEC5ドメインに対するウサギ抗体は、両方のE-カドヘリン組換えタンパク質を結合するが、AT1636は、大腸菌由来E-カドヘリン(翻訳後修飾を保持しない)を結合せず、HEK産生組換えE-カドヘリンを結合する(図8Bを参照されたい)。
【0403】
いくらかのSer/Thr残基は、マンノシル化されていると報告されている;E-カドヘリンのEC2ドメイン内で5つ、EC3内で4つ、EC4内で4つ、EC5内で1つ(Larsen,PNAS(2017)、Vester-Christensen,PNAS(2013)およびLommel,PNAS(2015))。図3において、E-カドヘリン上の推定O-マンノシル化部位は、黒色で示される。AT1636の質量分析において、免疫沈降したp70E-カドヘリンタンパク質Ser/Thr残基は、1つがO-マンノシル化されていることが認められた。
【0404】
AT1636のアラニン突然変異EC3E-カドヘリンドメインへの結合
短縮E-カドヘリンp70ドメイン内のAT1636抗体の正確な結合エピトープを決定するため、複数のアラニン突然変異を短縮組換え細胞外ドメイン3(D3)内で生成した。最初に、アミノ酸残基EVSLTTSTATVTVDVLDVNEAPIFからなる短縮細胞外ドメインD3のみのドメインを生成した(図3)。加えて、各残基の単一アラニン突然変異が設計された。D3およびそのアラニン突然変異体をコードするcDNAを、FLAGタグおよびソルターゼおよびHISタグを備えたマウスFcテールに融合したpcDNA3ベクターにクローン化した。ベクターを一時的にExpi293またはCHO細胞にトランスフェクトし、組換えタンパク質を含む上清を7日後に回収した。組換えD3タンパク質またはそのアラニン突然変異体を、抗マウスIgG H+L(5ug/ml、Jackson)コート384ウェルspectra plate HB(パーキンエルマー)上のマウスFcドメインを介して捕捉した。インキュベーションおよびTBS/0.05%Tweenでの2回の洗浄後、AT1636-YNまたは対照Ab AT1002を加え、これらの抗体の結合は、二次ヤギヒトIgG Fc(y)-HRP(Jackson)を使用してTBS/0.05%Tweenで2回洗浄した後、検出された。結合した抗体を、TMB基質を使用して視覚化し、反応をHSOで停止した。Envisionプレートリーダー(パーキンエルマー)上でのOD450測定により、結合した抗体の定量化を確立した。
【0405】
アラニン置換は、結果として、野生型E-カドヘリン:E463A、S465A、T467A、S469A、T472AおよびV477Aと比較してAT1636-YNの結合の部分的破棄となった。T468AおよびT470A/G/N/Dの置換は、AT1636-YN結合を完全に破棄した。残基470の重要性も、実施例4、図7b、右パネルに示しており、AT1636およびその変異型は、470位でアラニン突然変異を有するD3タンパク質変異型への結合を可能にしなかった。全体として、特に4つの中心スレオニン(より少ない程度に467、468、470、および472)は、AT1636のE-カドヘリンおよびp70E-カドヘリンへの結合を支配しているようである(図9を参照されたい)。
【0406】
実施例6 AT1636の結合は、TMTC3およびE-カドヘリン同時発現に対応する
Larsenおよび協力者は、E-カドヘリンマンノシル化がテトラトリコペプチドリピート(TPR)リピート含有タンパク質(TMTC1~4)の存在に依存していることを報告した(M.Racape M,PLoS One(2011)、Bartels MF,PLoS One(2016)、J.C.Sunryd,J Biol Chem(2014)およびI.S.B.Larsen,PNAS(2017))。Broad Instituteからの(https://portals.broadinstitute.org/ccle)からの癌細胞株百科事典mRNAデータベースから回収された>1100個の細胞株において完全長E-カドヘリンおよびTMTC3のmRNA発現を使用すると、E-カドヘリンおよびTMTC3の同時発現の間の強力な相関を確立し、一方で、他のTMTC1、2および4はいずれも、そのような相関を確立することができなかった。加えて、E-カドヘリン、TMTC3およびAT1636の結合の間の相関を確立することができた(表3)。TMTC3およびE-カドヘリンのためのmRNA発現について7のカットオフを使用すると、TMTC3およびE-カドヘリンの≧7のmRNA発現を示すすべての細胞株は、AT1636結合に陽性であると予測された。AT1636結合に陽性であると予測されている異なる腫瘍のタイプに由来する細胞株の割合を図10に示す。いくらかの固形腫瘍は、両方の遺伝子を高レベルで発現し、上部(気道)消化管、食道、乳房、結腸、前立腺、膵臓、胃、尿路、卵巣および肺からの腫瘍を含む腫瘍細胞株の大部分が、AT1636またはAT1636高親和性変異型を結合することが示唆される。
【0407】
TMTC3発現E-カドヘリン陰性細胞株における完全長E-カドヘリンの発現
E-カドヘリン完全コード配列を、Geneartから得、IRES-GFPを含むpHEFレンチウイルスベクターにサブクローニングした。VSV-Gエンベロープを用いてレンチウイルス粒子を産生し、SK-MEL-5標的細胞(ATCC HTB-70)にウイルスで形質導入し、少なくとも1週間の増殖後、FACS Aria(BD)を使用してGFP発現について分類した。ヤギ抗ヒトAlexa647(インビトロジェン)およびヤギ抗ウサギAlexa647(Jackson)抗体を検出試薬として使用して、陰性対照抗体としてのAT1002、AT1636およびEP700Y E-カドヘリン抗体とともに単離細胞をフローサイトメトリに供した(図11)。TMTC3を発現しているが、通常はE-カドヘリン陰性である細胞SK-MEL-5細胞における完全長E-カドヘリンの過剰発現は、結果としてAT1636抗体の結合となる。
【0408】
AT1636結合は、TMTC3に依存している
TMTC3 mRNA(NCBI参照配列:NM_181783.4)を標的化するためにいくらかのshRNAを設計した。最終的に、選択されたshTMTC3は、最後のコーディングエクソン(14):22_mer:AGGAGACATTCTGATGAATCAAを標的とする。選択されたshRNAをpTRIPZベクター(サーモサイエンティフィック)にサブクローニングし、VSV-Gエンベロープを有するレンチウイルス粒子をメーカーの説明書にしたがって生成した。DLD1細胞(ATCC CCL-221)に形質導入し、1μg/ml Doxycylin(シグマ)の添加によりshRNAの発現を誘導した。4日間から7日間の培養後、AT1636およびAT1002抗体の結合について、結合した抗体を検出するように、ヤギ抗ヒトAlexa647(インビトロジェン)抗体を使用して、細胞をフローサイトメトリ分析に供した。並行して、Tripure単離試薬(ロシュ)を使用してRNAを単離し、Oilgo-dTプライマを有するSuperscriptIII逆転写酵素キット(インビトロジェン)を用いてcDNAを生成した。ICycler(バイオ・ラッド)上でIQ Sybrgreen supermix(バイオ・ラッド)を用いて定量PCRを実行し、TMTC3 qPCRフォワードプライマ5’-GGTGTGGTTACTGCCTGCTAT-3’およびリバースプライマ5’-GGACGGTAAGACTTGTGGCT-3’を使用してTMTC3 mRNAを検出し、GAPDH対照を使用してmRNA転写を定量した。
【0409】
図12に示されるように、TMTC3のshRNAノックダウンに続き、DLD1細胞へのAT1636結合は強く低下する。
【0410】
実施例7 p70E-カドヘリンを標的とするT細胞エンゲージャーは腫瘍細胞株に対する細胞毒性を誘導する
T細胞誘導抗体の生成
T細胞誘導抗体(TCE)は、p70については二価、CD3ε結合については一価のTCEフォーマット(mTCE)で生成された(図13a;S.Atwell,Journal of Molecular Biology(1997)およびA.M.Merchant,Nature Biotechnology(1998))。1つの重鎖C末端にのみ単一抗CD3フラグメントを備えることができる抗体を得るため、一方における「ノブ」突然変異S354CおよびT366W(配列ID)および他方の重鎖Fc領域における「ホール」突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V(配列ID)をコードするAT1636およびAT1636-IYNの配列を使用した。加えて、「ノブ」突然変異を含む重鎖配列において、C末端リジン残基は、C末端STタグ(アミノ酸配列:GGGGSLPETGGHHHHHH)で置き換えられた。抗体は、a)軽鎖、b)「ノブ」突然変異STタグ含有重鎖およびc)「ホール」突然変異重鎖をコードする3つの異なるベクターを用いるCHO細胞の一時的トランスフェクションで発現された。mTCEを生成し、L.Bartels et al.Cancer Res(2019)およびL.Bartels et al.Methods(2019)に記載された方法にしたがって精製した。培養の7日後、組換え抗体を回収し、AKTA精製システム(ゼネラルエレクトリックライフサイエンス)を使用するプロテインAクロマトグラフィを使用して細胞上清から精製した。0.1Mクエン酸、150mM NaCl、pH3.5の緩衝液を使用して抗体を溶出し、続いて1Mトリス-HCl、pH9.0で中和し、その後サイズ排除クロマトグラフィによりTBS-TS中で再緩衝化した。NanoDrop分光光度計(OD280、サーモフィッシャー)を使用して濃度を確立した。サイズ排除クロマトグラフィを使用して、精製された抗体の単量体含量は、>90%と確認された。精製されたタンパク質の完全性をSDS-PAGEにより確立した。
【0411】
次に、STタグ修飾重鎖C末端は、ソルターゼ触媒ペプチド転移を使用してメチルテトラジンクリックハンドルを備え、完全長抗体に類似であるが相補的クリックハンドルトランスシクロオクテンを有するソルターゼ触媒ペプチド転移により修飾されている抗体UCHT1に基づく抗CD3単鎖可変フラグメントに共役させた。
【0412】
抗体AT1002に基づく対照mTCE(グループ2インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質に特異的)を、同様に調製した。
【0413】
mTCE製剤内に潜在的に残っているエンドトキシンを、Pierce高容量エンドトキシン除去スピンカラム(サーモフィッシャー)を使用して除去し、最終のエンドトキシンレベルをEndoZymeアッセイキット(Hyglos)で確認した。
【0414】
別の実験において、我々は、E-カドヘリンおよびCD3εの両方に対して一価であるT細胞エンゲージャーを生成した。AT1636変異型は、AT1636、AT1636-IYNまたはAT1002の1つの重鎖および軽鎖ならびにFcテールに融合した単鎖抗CD3εフラグメントからなるノブ-イン-ホール(KiH)二重特異性フォーマットに再フォーマットされた(図13c)。抗体は、a)AT1636、AT1636-IYNまたはAT1002の軽鎖、b)AT1636、AT1636-IYNまたはAT1002の突然変異S354C、およびT366Wを保持する「ノブ」突然変異重鎖ならびにc)VH-CH1領域がUCHT1単鎖可変フラグメント(scFv)により置き換えられている、「ホール」突然変異Y349C、T366S、L368A、およびY407Vを保持する重鎖をコードする3つの異なるベクターを用いるCHO細胞の一時的トランスフェクションで発現された。他の抗体のように(上述した)、HiTrap MabSelect Sureカラム(GEヘルスケア)を使用して、KiH二重特異性抗体を精製した。
【0415】
腫瘍細胞の細胞毒性を誘導したAT1636および-IYNのCD3T細胞エンゲージャー
ルシフェラーゼベースの細胞毒性アッセイにおいて、AT1636およびAT1636-IYNのmTCE変異型を評価した。最初にDLD1、HCT116およびHT29(すべてCRC細胞株)に、ホタルルシフェラーゼをコードするレンチウイルスベクター、続いてpHIVまたはpHCMVプロモータ(Addgene)により制御されたZsGreen蛍光タンパク質で形質導入した。FACS ARIAシステム(BD)を使用して緑色蛍光細胞を分類した。トランスフェクトおよび単離された細胞を平底組織培養プレートで一晩、種々の濃度のmTCEおよびエフェクタ細胞としての末梢血単核細胞とともに、約10:1のエフェクタの標的細胞に対する比率で、プレインキュベートした。40~44時間のアッセイインキュベーション後、ONE-Glo、ルシフェリン含有溶解溶液(プロメガ)を使用して細胞を溶解した。EnVisionプレートリーダー(パーキンエルマー)を使用して発光を獲得した。
【0416】
T細胞エンゲージメントアッセイにおいて、AT1636-IYN mTCEは、DLD1、HT29およびHCT116標的細胞に対して、それぞれ139pM、476pM、および926pMのEC50値で細胞毒性を誘導した(図13b)。最大標的細胞溶解は、69%から91%の範囲であった。AT1636 mTCEは、より高濃度で標的細胞溶解を誘導し、陰性対照AT1002 mTCEとのインキュベーション後には、溶解は観察されなかった。
【0417】
AT1636-IYN KiHは、DLD1、HT29およびA375標的細胞に対して、それぞれ160pM、2500pM、および470pMのEC50値で細胞毒性を誘導した(図13d)。最大標的細胞溶解は、34%から96%の範囲であった。AT1636およびAT1002KiHのみが、より高濃度で標的細胞溶解を誘導した。
【0418】
実施例8.脱接着分子としてのp70E-カドヘリン機能の過剰発現
E-カドヘリン完全長オープンリーディングフレームおよびp70E-カドヘリンコード配列を、Geneartから得、IRES-GFPを含むpHEFレンチウイルスベクターにサブクローニングした。VSV-Gエンベロープを用いてレンチウイルス粒子を産生し、標的細胞にウイルスで形質導入した。形質導入細胞をGFP発現について選択し、等量で播種した。48時間後、p70E-カドヘリンタンパク質を過剰発現する細胞は、図14に示されるように、変型した丸い細胞の形態を示し、細胞-細胞相互作用の強度が小さく、単一細胞がより多いことおよび上皮間葉転換(EMT)を示唆した(V.Padmanaban,Nature(2019)およびN.M.Aiello,Developmental Cell(2018))。
【0419】
実施例9.上皮細胞株でのAT1636の結合は、TGFβの存在下で増加する
TGFβは、その上皮間葉転換を促進するための周知の因子である。TGFβ(Prospec、レホボト、イスラエル)(V.Padmanaban,Nature(2019)、D.V.F.Tauriello,Nature(2018)およびN.M.Aiello,Developmental Cell(2018))を10ng/mlから40ng/mlで、ヒトCRC細胞株DLD1、マウス結腸CMT93、ヒト皮膚A431およびヒト乳房MCF7、細胞株に、6日間から7日間添加した。TGFβを1日おきに添加し、4日目に培養培地を新しくした。24ウェルプレート中、組織培養処理済みプラスチックまたはフィブロネクチンがコートされたウェルのいずれかに、低細胞密度で細胞を培養した。加えて、該当する場合、AT1636またはAT1636-IYNを、TGFβの存在下または非存在下で(10μg/mlから50μg/mlの濃度で)添加した。細胞形態および細胞密度をOperetta(パーキンエルマー)により監視し、AT1636またはAT1636-IYNの細胞株への結合を、フローサイトメトリにより監視した(ウェルあたりのMFI)。
【0420】
図15において、TGFβの存在下または非存在下で培養した細胞株間のAT1636-IYNの結合比を示す。TGFβの存在下での延長培養では、AT1636-IYNのA431およびCMT93への結合を3~4倍増加させるが、MCF7については、フローサイトメトリにより決定されるように、より小さい誘導が認められた。TGFβの存在下でのAT1636のHT29細胞への結合における小さい変化が観察された。
【0421】
上述したようなTGFβおよびAT1636-IYN抗体での5~7日間の同時培養中、細胞増殖およびウェル表面に付着した細胞数の減少がA431細胞について観察された(図16a(10×倍)および図16b(20×倍)を参照されたい)。この効果は、細胞がプラスチック上またはフィブロネクチンコートウェル上のいずれかで直接培養された設定で観察された。
【0422】
実施例10.AT1636および高親和性変異型の内在化
8,000個のDLD1細胞を、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μlで播種し、O/Nで培養した。AT1636、AT1636高親和性変異型、AT1002およびSC10.17抗体を、メーカーの説明書にしたがって、ヤギ抗ヒトFc Fab標識Zenon pHrodo iFL色素(インビトロジェン)と15分間のインキュベーション中に共役させた。次に、抗体をDLD1細胞に添加し、pHrodo共役抗体の内在化を、Incucyte(Essenbio)中、最大60時間、1時間毎の検出により経時的に監視した。
【0423】
図17において、酸性環境誘導pHrodo色素蛍光が示されており、AT1636およびAT1636高親和性変異型が、DLD1細胞内に内在化することを示唆する。AT1636-IYN抗体は、AT1636-YN、AT1636またはSC10.17抗体と比較して、内在化するのに最も効果的である。対照的に、陰性対照としてのAT1002は内在化しない。
【0424】
実施例11.CD8+T細胞上での完全長およびp70E-カドヘリンのCD103との相互作用
フィコール勾配遠心分離を使用してリチウム-ヘパリンチューブに回収された血液から新鮮なPBMCを得、メーカーの説明書にしたがってMagniSort(商標)ヒトCD8T細胞濃縮キット(サーモフィッシャー)を使用してCD8+T細胞を単離した。続いて、CD8+細胞を、RPMI 10%FCS pen/strep中、10μg/ml PHA、6000U/ml IL-2および10ng/ml TGFβの存在下、1mlあたり1×10個のPBMCの細胞密度で培養した。約10日後、CD8細胞上でのCD103発現を、フローサイトメトリにより決定した(Ber ACT 8クローン、BD、FITC標識)。
【0425】
CD8+T細胞上でのCD103の、E-カドヘリンタンパク質が結合したプレートとの相互反応を分析するため、完全長およびp70E-カドヘリンを、1mM Ca2+およびMg2+を含むDPBS中、O/Nでコートし、CD103発現CD8+T細胞を、5μM Celltrace-CFSE(サーモフィッシャー)を用いてRTで5分間標識した。次に、1mM Mn2+を有する培養培地中に1×10/mlの濃度で細胞を再懸濁し、30分間、10μg/mlのAT1002陰性対照抗体、抗CD103抗体およびAT1636およびその-IYN変異型と30分間プレインキュベートした。50,000個の細胞(100μl)を37℃で30分間、E-カドヘリンタンパク質を含む各ウェルに添加した後、プレートを元に戻すことによりウェルを空にし、DPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で分析する前に、DPBS中の3.7%ホルマリンで固定した。
【0426】
図18に、CFSE標識CD103+CD8+T細胞によるウェルカバレッジを示す。細胞をCD103特異性抗体MCA708とプレインキュベートした場合、細胞は完全長E-カドヘリンに接着しなかった。細胞をAT1636および-IYN変異型とプレインキュベートした場合、細胞は依然として付着している可能性があり、AT1636が細胞上でCD103タンパク質と相互作用しないことが示唆された。加えて、我々は、CD103+CD8+T細胞がp70E-カドヘリンタンパク質に付着しなかったことを観察した。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
【配列表】
2023509973000001.app
【国際調査報告】