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特表2023-5099852,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩に対する感受性を決定する方法
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  • 特表-2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩に対する感受性を決定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩に対する感受性を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/185 20060101AFI20230303BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230303BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230303BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230303BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230303BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230303BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61K31/185
C12Q1/6813 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/06
C12N15/12
A61P35/00
A61K31/337
A61K33/24
A61K31/282
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542467
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2021012994
(87)【国際公開番号】W WO2021142460
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,615
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400268
【氏名又は名称】ランタン ファルマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ,アディティア
(72)【発明者】
【氏名】バティア,キショー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA06
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR36
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
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4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA06
4C206JB14
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
腫瘍またはがんの試料が患者から取得され、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩類似体に対する応答性についてスクリーニングされる、患者のがんを治療するための方法。試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩類似体で処理して、複数のバイオマーカーのうちの1つ以上が類似体中で発現されるかどうかを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のがんを治療するための方法であって、
(a)前記患者から前記がんの試料を取得するステップと、
(b)前記試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩類似体で処理するステップと、
(c)複数のバイオマーカーのうちの1つ以上について前記試料中の発現レベルを取得するステップと、ここで、前記複数のバイオマーカーがNRF2(配列番号1)を含み、
(d)前記NRF2(配列番号1)の発現レベルから、前記試料が2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムによる処理に感受性があることを決定するステップと、
(e)前記NRF2(配列番号1)の発現レベルが、非がん細胞と比較して1倍を超える場合に、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウム類似体を含むがん治療を前記対象に施すステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のバイオマーカーが、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)からなる群から選択される1つのバイオマーカーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非がん細胞が、健康な患者から取得された生物学的試料における前記発現のレベルであり、参照レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩類似体が、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記がん治療が、白金錯体およびタキサンからなる群から選択される1つ以上の化学療法剤の投与を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記がん治療が、放射線治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料からの1つ以上の核酸分子を、(a)前記バイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第1の一本鎖核酸分子と、(b)複数のバイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第2の一本鎖核酸分子とを含むデバイスに接触させ、前記バイオマーカーが核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対象における固形腫瘍がんを治療する方法であって、
(a)前記腫瘍を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩類似体で処理するステップと、
(b)複数のバイオマーカーのうちの1つについて対象からの試料中の発現レベルを取得するステップと、ここで、前記複数のバイオマーカーが、NRF2(配列番号1)を含み、
(c)前記NRF2(配列番号1)の発現レベルから、前記腫瘍が2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウム類似体による治療に感受性があることを決定するステップと、
(d)前記NRF2(配列番号1)の発現レベルが、非がん細胞の1倍を超える場合に、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムを含むがん治療を施すステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記複数のバイオマーカーが、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)からなる群から選択される1つのバイオマーカーをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウム類似体である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、約14g/m~約22g/mの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化学療法治療が、白金錯体およびタキサンからなる群から選択される1つ以上の化学療法剤の投与を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記白金錯体薬剤が、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、サトラプラチンならびにそれらの誘導体および類似体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
既知のがん型を有する患者の腫瘍試料を試験する方法であって、前記患者が、1つ以上のがん療法に耐性があり、かつ2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムに対する応答性が未知であり、
前記試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムと接触させるステップと、
(a)複数のバイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第1の一本鎖核酸分子であって、第1のバイオマーカーがNFR2である、第1の一本鎖核酸分子と、(b)NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)のバイオマーカーから選択される耐性の複数のバイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第2の一本鎖核酸分子とを含むデバイスと前記試料を接触させるステップと、
前記複数のバイオマーカーの発現レベルを検出するステップと、
2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムに応答性であると決定されている患者に2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムを投与するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
1.5超~2倍の発現レベルの変化が、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩感受性を示し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、がん治療の一部として、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩に対する患者の感受性を検出するためのバイオマーカーの存在および/またはレベルを決定することに関する。本出願は、がん患者におけるバイオマーカーをコードする遺伝子の発現レベルを検出し、がん療法の一部として2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムに対するがん患者の応答性を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん化学療法は、科学的試みが拡大している分野であり、外科手術や放射線療法とともにがん治療の重要な要素となっている。化学療法は、かつては外科手術および/または放射線療法による治癒が不可能であると診断された患者の生存期間を延長する手段としてのみ受け入れられていたが、現在ではほぼすべての変異のがんで認められている治療法である。
【0003】
現代のがん化学療法は通常、2つ以上の異なる薬剤の組み合わせを伴い、技術と医学的知識の進歩により、多くの形態のがんにおける患者の回復の可能性が大幅に向上した。がん療法における化学療法剤の役割は、がんの形態によって大きく異なる。たとえば、化学療法は、卵巣、精巣、乳房、膀胱などのがん、白血病、リンパ腫の主要な治療法であることが多く、一般に、多数の肉腫、メラノーマ、骨髄腫、その他の治療において放射線療法と組み合わせて使用される。
【0004】
化学療法剤は、いくつかの多様なグループに分類される。これらの薬剤の大部分は、細胞毒性薬として作用し、特定のグループの各メンバーは、通常、同様の生物学的メカニズムを通じてその細胞毒性効果を発揮すると仮定されている。抗腫瘍薬の作用の生物学的および生化学的メカニズムの完全な理解は、十分には知られていない。
【0005】
したがって、がんが、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体を含む化学療法剤に応答性であるかどうかを決定または予測することができる方法が、常に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、腫瘍またはがんの試料が患者から得られ、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体に対する応答性についてスクリーニングされる、患者のがんを治療するための方法を開示する。試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体で処理し、複数のバイオマーカーのうちの1つ以上が試料中で発現されるかどうかを決定する。バイオマーカーまたは複数のバイオマーカーは、核因子赤血球系2関連因子2(NRF2)または他のバイオマーカーであり得る。試料は、NRF2(および/または他のバイオマーカー)の発現レベルが、非がん細胞または参照レベルの1倍を超える場合、患者が2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体に応答性であり得ることを示している。
【0007】
一態様は、複数のバイオマーカーが、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)からなる群から選択されるものをさらに含む方法を含む。非がん細胞は、バイオマーカーの参照レベルを定義する。
【0008】
がん治療は、白金錯体およびタキサンから選択される1つ以上の化学療法剤の投与を含む。がん治療には、放射線治療が含まれる。
【0009】
1つ以上のがん療法に耐性があり、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体に対して未知の応答性を有する、既知のがんタイプを有する患者の腫瘍試料を試験する方法。この方法は、試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体と接触させるステップと、(a)複数のバイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第1の一本鎖核酸分子と、ここで、第1のバイオマーカーがNFR2であり、(b)NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号 4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)から選択される複数のバイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる第2の一本鎖核酸分子とを含むデバイスと、試料を接触させるステップと、複数のバイオマーカーの発現レベルを検出するステップと、参照レベルからバイオマーカーの発現から2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体に応答性であると決定された患者に、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体を投与するステップとを含む。
【0010】
明らかなように、本出願の1つの態様の特徴および特性は、本出願の他の多くの態様に適用できる。本発明は、以下の非限定的な実施例によって、添付の図を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】30μMのt-BHQで処理した細胞および2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩で処理した細胞におけるNrf2の核発現の誘導を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[シーケンスリスト]
配列番号1--NRF2(NFE2L2)のアミノ酸配列、
配列番号2--NQ01のアミノ酸配列、
配列番号3--PHGDHのアミノ酸配列、
配列番号4--HMOX1のアミノ酸配列
配列番号5--SLC7A11のアミノ酸配列、
配列番号6--SRXN1のアミノ酸配列
配列番号7--SOX2のアミノ酸配列、
配列番号8--GPX2のアミノ酸配列、
配列番号9--GPX3のアミノ酸配列、および
配列番号10--GPX7のアミノ酸配列。
【0013】
[定義]
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学における)の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0014】
配列番号Xに記載されるアミノ酸配列と整列しているアミノ酸配列(変異体ポリペプチドを指す場合)は、変異体アミノ酸配列および配列番号Xに記載されるアミノ酸配列が、配列の相互比較を可能にし、配列番号Xに記載のアミノ酸配列と比較した場合、同じアミノ酸が存在する(同一の位置)か、または別のアミノ酸が存在する(置換)か、または1つ以上の余分なアミノ酸が存在する(挿入または伸長)か、またはアミノ酸が存在しない(欠失または切り詰め)のいずれかである変異体のアミノ酸配列における位置の同定を可能にする適切な方法によって整列していることを意味する。
【0015】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、インタクトの分子、ならびに例えばFab、F(ab’)2、FvおよびscFvなどのそのフラグメントを含むか、またはそれらからなる分子、ならびにエピトープ決定基に結合することができるダイアボディ、トリアボディ、ミニボディおよび単一ドメイン抗体を含む操作された変異体を含む。したがって、抗体はインタクトの免疫グロブリンとして、またはさまざまな形態の修飾として存在する可能性がある。
【0016】
「バイオマーカー」という用語は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムまたはその類似体を含む処置に対する患者の応答性を予測するために対象を識別するのに有用な、対象によって産生される遺伝子、遺伝子転写物(例えば、mRNA)、ペプチドまたはタンパク質またはそれらのフラグメントなどの任意の分子を指す。対象または対象群からの生物学的試料中に示差的に存在する(すなわち、増加または減少する)バイオマーカーは、第2の表現型(例えば、疾患を有さない)を有する対象または対象群からの生物学的試料と比較して、第1の表現型(例えば、疾患を有する)を有する。バイオマーカーは、どのレベルでも示差的に存在し得るならば、一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、またはそれ以上増加するレベルで存在するか、または一般に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%(すなわち、存在しない)減少するレベルで存在する。バイオマーカーは、統計的に有意なレベルで示差的に存在することが好ましい(例えば、WelchのT検定またはWilcoxonの順位和検定のいずれかを使用して決定された0.05未満のp値および/または0.10未満のq値)。
【0017】
「がん」および「がん性」という用語は、通常、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物(例えば、ヒト)の生理学的状態を指すか、記述する。がんの例には、前立腺がん、卵巣がん(例えば、卵巣腺がんまたは胎生期がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC)または肝がん)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、結腸直腸がん(例えば、結腸がんおよび直腸がん)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ腫性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、および慢性白血病)、骨髄異形成症候群、リンパ腫(例、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ウォルデンストロムマクログロブリン血症、リンパ球性リンパ腫)、子宮頸がん、食道がん、黒色腫、神経膠腫(例えば、乏突起神経膠腫)、膵臓がん(例えば、腺扁平上皮がん、印環細胞がん、肝様がん、コロイドがん、膵島細胞がん、膵神経内分泌がん)、消化管間質腫瘍、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、平滑筋腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫)、乳がん(髄様がん)、ER陽性がん、膀胱がん、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮がん)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、大細胞がん、気管支原性がん、乳頭状腺がん)、転移性がん、口腔がん、子宮がん、精巣がん(例えば、セミノーマおよび胎生期がん)、皮膚がん(例えば、扁平上皮がんおよび基底細胞がん)、甲状腺がん(例えば、乳頭がんおよび髄様がん)、脳がん(例えば、星状細胞腫および頭蓋咽頭腫)、胃がん、上皮内がん、骨がん、胆道がん、眼がん、喉頭がん、腎臓がん(例えば、腎細胞がんおよびウィルムス腫瘍)、胃がん、芽細胞腫(例えば、腎芽細胞腫、髄芽細胞腫、血管芽細胞腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)、真性赤血球増加症、脊索腫、滑液腫瘍、中皮腫、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、嚢胞腺がん、胆管がん、絨毛がん、上皮がん、上衣腫、松果体腫、聴神経腫、シュワン細胞、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫瘍、小腸がん、内分泌系がん、陰茎がん、尿道がん、皮膚または眼内黒色腫、婦人科腫瘍、小児期の固形腫瘍、および中枢神経系の新生物が挙げられるが、これらに限定されない。がんという用語には、固形腫瘍(例えば、前立腺がん、卵巣がん、または肝細胞がん(HCC))および血液がんが含まれる。
【0018】
「診断」という用語、および「診断する」、「診断された」または「診断」などのこれらに限定されないその変形は、臨床状態の一次診断に限定されないが、再発病の診断を含むと解釈されるべきである。
【0019】
「対象」という用語は、がんを発症する可能性のある任意の動物を指し、哺乳動物(例えば、ヒト)または非ヒト哺乳動物(例えば、ネコおよびイヌ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットなど)、および家畜などの動物を含む。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0020】
「試料」は、任意の適切なタイプであり得、例えば、バイオマーカーの存在またはレベルを検出することができる材料を指し得る。好ましくは、試料は、バイオマーカーの存在および/またはレベルの検出がインビトロで行われ得るように、対象から取得される。あるいは、バイオマーカーの存在および/またはレベルをインビボで検出することができる。試料は、ソースから取得したものを直接、または少なくとも1つの(部分)精製ステップの後に、使用できる。試料は、本発明の方法を妨害しない任意の手頃な媒体で調製することができる。通常、試料は、水溶液、生体液、細胞、または組織である。好ましくは、試料は、血液、血漿、血清、尿、血小板または他の物質である。前処理は、例えば、血液から血漿を調製すること、粘性流体を希釈することなどを含み得る。処理方法には、ろ過、蒸留、分離、濃縮、妨害成分の不活性化、および試薬の添加が含まれる。試験前の生物学的試料の選択および前処理は、当技術分野で周知であり、これ以上説明する必要はない。
【0021】
本明細書で使用される「発現レベル」および「発現のレベル」という用語は、細胞、組織、生物学的試料、生物、または患者における遺伝子産物の量、例えば、DNA、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))、または特定の遺伝子に対応するタンパク質の量を指す。
【0022】
「健康な個人」という用語は、がんに罹患していないことが知られている個人を意味すると解釈され、そのような知識は、本明細書に記載されるものとは異なる診断アッセイを含むがこれに限定されない、個人の臨床データから得られる。
【0023】
「参照レベル」は、特定の病状、表現型、またはそれらの欠如、ならびに病状、表現型、またはそれらの欠如の組み合わせを示す、本発明の化合物または追加のバイオマーカーのレベルを意味する。
【0024】
「参照試料」とは、バイオマーカーの参照レベルを含む試料を指する。例えば、参照試料は、特定の疾患、病状、またはがんもしくは急性損傷などの表現型を有さない対象から取得することができる。
【0025】
本出願は、がんを有する患者、例えば、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体以外の1つ以上のがん療法に耐性のあるがんを有する患者(例えば、単独の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩もしくはその類似体、または1つ以上のがん療法との組み合わせに耐性がある肺がん、前立腺がん、卵巣がん、または肝細胞がん(HCC)を有する患者)を検出するための、および、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩もしくはその類似体のみによる、または他の療法との組み合わせによる治療に対するがん患者(例えば、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、またはHCCの患者)の応答性を決定するための方法を含む。本出願はまた、治療を必要とする患者(例えば、肺がん、前立腺がん、卵巣がん、もしくはHCCまたはそれらの治療耐性型を有する患者)におけるがんを治療する方法を特徴とし、本明細書に記載の診断方法に従って、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩もしくはその類似体に応答性であるか、または応答性であると決定されている患者に2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体を投与することを含む。応答性は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩もしくはその類似体および/または抗がん活性によって示される保護効果(抗がん剤の効果に対する保護)であり得る。応答性は、1つまたは複数のバイオマーカーによって示される。
【0026】
一実施形態によれば、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体に対する応答性が知られている、もしくは知られていない、既知のがん型を有する患者の腫瘍試料を試験する方法であって、(a)試料を2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体と接触させるステップと、(b)2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体との接触後、i)NFR2/NFE2L2(配列番号1)のバイオマーカーから選択される複数の感受性バイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる一本鎖核酸分子、および/または、ii)NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)のバイオマーカーから選択される複数の耐性バイオマーカーのヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる一本鎖核酸分子を含むデバイスと試料を接触させるステップと、(c)複数のバイオマーカーの発現レベルを検出するステップとを含む方法が含まれる。バイオマーカーが非腫瘍細胞または参照細胞における通常の量を超えている場合、患者は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはその類似体を含む治療に応答性であり得る。
【0027】
いくつかの例では、がんは、前立腺がん、卵巣がん、肝細胞がん(HCC)、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、食道がん、黒色腫、神経膠腫、膵臓がん、消化管間質腫瘍(GIST)、肉腫、エストロゲン受容体陽性(ERpos)乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸がん、膀胱がん、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病-慢性期(CMLCP)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、およびホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0028】
本明細書に記載の方法により治療(例えば、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩)に対する応答性について治療または試験される患者は、本明細書に記載のようながん、例えば、前立腺がん、卵巣がん、または肝細胞がん(HCC)と診断された患者であり得る。診断は、X線、MRI、または生検などの当技術分野で知られている任意の方法または技術によって行われ、医師によって確認され得る。治療的ではない可能性のある薬物治療への患者の曝露を最小限に抑えるために、患者は、本明細書に記載の方法に従って、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩などのがん治療に応答性であるか、または応答性でないかのいずれかであると決定され得る。特定の例では、試料は、組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞からなる群から選択される。
【0029】
別の実施形態は、NRF2(配列番号1)発現、ならびにNQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を評価することにより、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩治療に対する非小細胞がんの感受性を治療または決定するための方法を含む。説明のために、非小細胞肺がん細胞株HCC827を1mMおよび15mMの濃度の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩のみで2時間処理し、RNAseqを使用した全トランスクリプトームプロファイリングによって遺伝子発現レベルの変化を測定した。同じ期間の無処理の対照試料をベースライン遺伝子発現レベルとして使用した。1.5超~2倍の発現レベルの変化は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩の感受性を示し得る。
【0030】
別の実施形態では、NRF2(配列番号1)は、NFE2L2の別名であり得る。
【0031】
別の実施形態では、以下の遺伝子のうちの1つ以上に関連するNRF2の検出:JAG1、IGF1、NANOG、GPX6、GPX5、PRDX4、TXN、TERT、TXNRD2、FGF2、PRDX2、PRDX3、PRDX1、BMPR1A、PDGFC、GPX1、PSPH、SHMT1、TXN2、SHMT2、PRDX6、NPNT、PSAT1、NOTCH1、GLRX2、VEGFC、GSR、ADAM10、PRDX5、TXNRD1、GLRX、ATF4、SIRT1、ITGB2、G6PD、GPX4、GPX3、GPX2、NQO1、PHGDH、GPX7、SLC7A11、SOX2、SRXN1、HMOX1、BCL2、BMI1、HEBP1、NFE2L2、PGK1、POU5F1、およびTALDO1。
【0032】
一実施形態は、本明細書に開示される方法により、2,2’-ジチオ-ビスーエタンスルホン酸塩に応答性であると決定されている患者に2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩を投与するステップを含む、投与を必要とする患者におけるがんを治療する方法を含む。特に、患者は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩以外の、またはそれとあわせて、1つ以上のがん療法に耐性のあるがん(2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩以外の、またはそれとあわせて、1つ以上のがん療法に耐性がある、例えば、前立腺がん、卵巣がん、またはHCCを有する患者)を有し得る。
【0033】
別の実施形態は、対象における固形腫瘍がんを治療する方法であって、(a)複数のバイオマーカーについて対象からの試料における発現レベルを取得する、または取得された複数のバイオマーカーについて対象からの試料における発現レベルを用意するステップと、ここで、複数のバイオマーカーが、(1)NRF2(配列番号1)と、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーとを含み、(b)対象が2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩による治療に感受性があることを決定するステップと、(c)2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩を含むがん治療を施すステップと、を含む方法を含む。
【0034】
一実施形態では、患者または対象は、1つ以上の他のがん治療とともに、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩で治療される。例えば、そのような治療法には、シスプラチン、パクリタキセル、および他の利用可能な治療法が含まれる。
【0035】
方法は、化学療法剤を投与されている、または投与される予定の対象に、約0.1g/分~約2.0g/分の速度で対象に投与される、有効量の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体を投与することを含む。
【0036】
別の実施形態において、有効量の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体は、約0.2g/分~約1.0g/分の速度で対象に投与される。
【0037】
別の実施形態では、有効量の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体は、約0.7g/分の速度で対象に投与される。
【0038】
一実施形態では、2、2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体の用量は、約45分の期間にわたって対象に投与される。
【0039】
別の実施形態において、対象に投与される、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体の総用量は、約4.0g/m約35g/mである。1回の投与量は約18.4g/mである。対象への化合物の前述の用量のうちの1つ以上の投与は、約45分にわたることがあり得る。
【0040】
本発明はまた、化学療法剤を投与されている対象における化学療法関連毒性の低減、予防、軽減、発症の遅延、重症度の軽減、および/または解決の促進の方法であって、有効量の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩、その薬学的に許容される塩、および/またはその類似体を、約0.1g/分~約4.6g/分の速度で、総用量約4g/m~約35gmを対象に投与するステップを含む方法を含む。約18.4g/mの総用量を約0.1g/分~約4.6g/分の速度で対象に投与することが好ましい。約0.4g/m/分の投与速度で、約45分間にわたって約18.4g/mの総用量を対象に投与することが、特に好ましい。
【0041】
特定の例では、本明細書に開示される方法は、機械を使用してバイオマーカーまたはプローブを試料から単離するステップをさらに含み得る。あるいは、またはさらに、本明細書に開示される方法は、バイオマーカー、プローブ、またはそれらの組み合わせに特異的に結合する標識と試料を接触させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載された遺伝子から選択されるバイオマーカーに特異的に結合する標識と試料を接触させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、バイオマーカー、プローブ、またはそれらの任意の組み合わせを増幅することをさらに含む。本明細書に開示される方法は、標的、プローブ、またはそれらの任意の組み合わせを配列決定するステップをさらに含み得る。場合によっては、この方法は、複数のバイオマーカーの発現レベルを定量化するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、複数のバイオマーカーを標識するステップをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、がんの状態または結果を診断、予測、および/または監視することは、治療用の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩レジメンを決定することを含み得る。治療レジメンの決定は、抗がん治療薬の投与を含み得る。あるいは、がんの治療法を決定することは、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩を含むかまたは低減するように治療レジメンを変更することを含み得る。治療レジメンの変更は、治療レジメンの増加、低減、または終了を含み得る。
【0043】
別の実施形態では、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩は、二ナトリウム塩である。
【0044】
他の実施形態において、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩は、例えば、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸モノナトリウム、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸ナトリウムカリウム、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二カリウム、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸カルシウム、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸マグネシウム、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸モノカリウム、または2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸マンガン;2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸アンモニウムなどの類似体であり得る。
【0045】
特定の実施形態において、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩は、例えば、フルオロピリミジン、ピリミジンヌクレオシド、プリンヌクレオシド、抗葉酸剤、白金類似体、アントラサイクリン/アントラセンジオン、エピポドフィロトキシン、カンプトテシン、ホルモン、ホルモン類似体、抗ホルモン薬、酵素、タンパク質、ペプチド、またはポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、抗微小管剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、抗ウイルス剤、もしくは別の細胞毒性および/または細胞増殖抑制剤である化学療法剤と共に投与される。フルオロピリミジンには、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、S-1カペシタビン、フトラフル、5’デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシルなどが含まれる。ピリミジンヌクレオシドには、例えば、シタラビン、デオキシシチジン、5-アザシトシン、ゲムシタビン、5-アザシトシン、5-アザデオキシシチジンなどが含まれる。プリンヌクレオシドには、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チオグアニン、アロプリノール、クラドリビン、および2-クロロアデノシンが含まれる。抗葉酸剤には、例えば、メトトレキサート(MTX)、トリメトレキサート、アミノプテリン、およびメチレン-10-デアザミノプテリン(MDAM)が含まれる。白金類似体には、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、白金-DACHおよびそれらの類似体が含まれる。アントラサイクリン/アントラセンジオンには、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、およびイダルビシンが含まれる。エピポドフィロトキシン誘導体には、例えば、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドが含まれる。カンプトテシンには、例えば、イリノテカン、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9-ニトロカンプトテシン、およびTAS103が含まれる。ホルモンおよびホルモン類似体には、例えば、アナストロゾール、ジエチルスチルベストロール、エストラジオール、プレマリン、ラロキシフェンを含むエストロゲンおよびエストロゲン類似体;プロゲステロン、ノルエチノドレル、エスチステロン、ジメスチステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、およびノルエチステロンを含むプロゲステロン、プロゲステロン類似体およびプロゲスチン;フルオキシメステロン、メチルテストステロンおよびテストステロンを含むアンドロゲン;ならびにデキサムタゾン、プレドニゾン、コルチゾール、ソルメドロールなどを含むアドレナリンコルチコステロイドが含まれ得る。抗ホルモンには、例えば、(i)タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェンを含む抗エストロゲン;アミノグルテチミド、テストトラクトン、ドロロキシフェン、アナストロゾール、(ii)ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ゴセレリンを含む抗アンドロゲン、(iii)フルタミド、リュープロリド、およびトリプトレリンを含む抗テストステロン、(iv)アミノグルテチミドおよびミトタンを含む副腎ステロイド阻害剤;ゴセレリンを含む抗ロイテイン化ホルモンが含まれる。酵素、タンパク質、ペプチド、ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体には、例えば、アスパラギナーゼ、セツキシマブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、ゲフィチニブ、トラスツズマブ、インターロイキン、インターフェロン、ロイプロリド、ペガスパラナーゼなどが含まれ得る。ビンカアルカロイドには、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンなどが含まれる。タキサンには、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ならびにそれらの製剤および類似体が含まれる。アルキル化剤には、例えば、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾラミド、チオテパ、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、L-フェニルアラニンマスタード、メルファランなど)、オキサザホスホリン(例えば、イホスファミド、シクロホスファミド、メホスファミド、ペルホスファミド、トロホスファミドなど)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、およびニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンなど)が含まれ得る。エポチロンには、例えば、エポチロンAEが含まれる。代謝拮抗剤には、例えば、トムデックスおよびメトトレキサート、6-メルカプトプリン、んらびに6-チオグアニンが含まれる。トポイソメラーゼ阻害剤には、例えば、イリノテカン、およびトポテカン、カレニテシン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、およびドキソルビシン、ダウノルビシン、ならびに他の類似体が含まれる。抗ウイルス剤には、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、およびジドブジンが含まれる。モノクローナル抗体剤には、例えば、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブなど、ならびにエルロチニブなどの細胞増殖抑制剤が含まれる。一般に、細胞増殖抑制剤は、腫瘍性疾患の進行を遅らせるメカニズムベースの薬剤である。
【0046】
<2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩処理感受性のバイオマーカーの検出>
前述の説明から、本発明の診断方法は、患者試料中のバイオマーカーのレベルを決定するためのある程度の定量化を含み得ることが明らかであろう。このような定量化は、適切な対照試料を含めることによって容易に提供される。
【0047】
一実施形態では、内部対照が本発明の方法に含まれる。好ましい内部対照は、1人以上の健康な個人から採取された1つ以上の試料である。
【0048】
当業者に知られているように、実施される各アッセイに内部対照が含まれていない場合、対照は、確立されたデータセットに由来するものでもよい。
【0049】
対照となる対象に関するデータは、1.がんまたは特定のがんを有することが知られている対象の典型的な集団についてのバイオマーカーの存在または発現レベルの測定値を含むデータセット、2.試験される対象についてのバイオマーカーの存在またはレベルの測定値を含むデータセットであって、前述の測定値が、例えば、対象が健康であることがわかっている場合、またはがんを有する対象である場合、対象が診断されたか、または疾患進行の初期段階にある場合など、以前に行われた測定値を含む、データセット、3.健康な個人または健康な個人の集団についてのバイオマーカーの存在またはレベルの測定値を含むデータセット、4.正常な個人または正常な個人の集団についてのバイオマーカーの存在またはレベルの測定値を含むデータセットからなる群から選択され得る。
【0050】
当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、過度の実験なしに、本発明の任意の診断アッセイにおける比較のためのベースラインを容易に決定することができる。
【0051】
診断上使用されたときにバイオマーカーに結合する化合物は、検出可能な標識などの診断試薬に連結されて、インビトロまたはインビボでの結合事象の容易な検出を可能にし得る。適切な標識には、標的分子の検出および/または局在化のための放射性同位元素、色素マーカーまたは他の画像化試薬が含まれる。検出可能なラベルに連結された化合物は、例えば、放射線学、蛍光透視法、核磁気共鳴画像法(MRI)、CATスキャン、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法などの適切なインビボ画像化技術とともに使用することができる。
【0052】
特定の方法は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩を含むがん治療に対する感受性を検出することができる。当業者によって理解されるように、感受性は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩または類似体を含む治療に対して感受性を有すると正しく識別される、試験における実際の陽性の割合を指す。一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも50%、60%もしくは66%、もしくは少なくとも75%、80%、85%、88%、89%、90%、もしくは少なくとも95%の感受性で2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩を検出することができる。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも80%、もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%、または少なくとも95%の感受性でがんを診断または検出することができる。
【0053】
<タンパク質検出技術>
一実施形態では、バイオマーカーポリペプチドは、患者試料中で検出され、試料中のポリペプチドの存在および/またはレベルは、がんを示し得る。例えば、この方法は、対象に由来する生物学的試料を、バイオマーカーポリペプチドに結合することができる化合物と接触させるステップ、および化合物とバイオマーカーポリペプチドとの間の錯体の形成を検出するステップを含み得る。本明細書で使用される「バイオマーカーポリペプチド」という用語は、例えば、免疫原性フラグメントおよびバイオマーカーポリペプチドのエピトープを含む、バイオマーカーポリペプチドのフラグメントを含む。
【0054】
一実施形態では、バイオマーカーに結合する化合物は、抗体である。
【0055】
別の実施形態では、バイオマーカーポリペプチドに対する抗体が患者試料で検出され、試料中の抗体の存在および/またはレベルはがんを示している。
【0056】
本明細書で企図される好ましい検出システムは、例えば、SDS/PAGE、等電点電気泳動法、SDS/PAGEおよび等電点電気泳動法を含む2次元ゲル電気泳動、イムノアッセイ、フローサイトメトリー、例えば蛍光活性化セルソーティング(FACS)、抗体または非抗体化合物、例えば小分子(例えば、化学化合物、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、競合阻害剤、またはタンパク質の非競合的阻害剤)を使用する検出ベースのシステムなど、ヒト対象から単離された生物学的試料中のタンパク質または抗体を検出するための任意の既知のアッセイを含む。これらの実施形態によれば、抗体または小分子は、タンパク質の検出に適している任意の標準的な固相または液相アッセイ形式で使用することができる。例えば、質量分析、MALDI-TOF、バイオセンサー技術、エバネセント光ファイバー、または蛍光共鳴エネルギー移動を使用するような光学的または蛍光的検出は、本発明に明確に包含される。質量試料のハイスループットスクリーニングでの使用に適したアッセイシステム、例えば、ハイスループット分光法共鳴法(例えば、MALDI-TOF、エレクトロスプレーMSまたはナノエレクトロスプレーMS)もまた企図される。別の適切なタンパク質検出技術には、LC-MS(LC/MRM-MS)での多重反応モニタリング(MRM)の使用が含まれる(Anderson and Hunter、2006)。
【0057】
イムノアッセイフォーマットは、例えば、イムノブロット、ウエスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイからなる群から選択されるのに特に適している。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、同位体コード化アフィニティータグ(ICAT)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、バイオセンサー技術、エバネッセント光ファイバー技術を利用した改変イムノアッセイまたはプロテインチップ技術も有用である。
【0058】
<核酸検出技術>
試料中のバイオマーカーポリヌクレオチドのレベルの定性的および/または定量的評価を可能にする任意の適切な技術を使用することができる。本明細書で使用される「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」という用語は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの任意のフラグメントを指す。
【0059】
比較は、標準的な対照、または健康な組織に見られる対照レベルを参照することによって行うことができる。例えば、転写された遺伝子のレベルは、ノーザンブロッティングおよび/またはRT-PCRによって決定することができる。定量的(リアルタイム)PCRの出現により、目的の遺伝子に適切なプライマーを使用することにより、遺伝子発現の定量的分析を行うことができる。核酸は、遺伝子アレイ上で標識およびハイブリダイズすることができ、その場合、遺伝子濃度は、アレイで生成される放射性または蛍光シグナルの強度に正比例するであろう。
【0060】
ヌクレオチド配列の直接配列決定のための方法は、当業者に周知であり、例えば、Ausubel et al., eds., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley, (1995)and Sambrook et al., Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press,(2001)に見出され得る。配列決定は、任意の適切な方法、例えば、ジデオキシ配列決定、化学的配列決定、またはそれらの変形によって実施することができる。直接配列決定には、特定の配列の任意の塩基対の変化を決定するという利点がある。
【0061】
試験のために、核酸を試料から分離することができる。適切な方法は、当業者に知られているであろう。例えば、RNAは、QIAGENテクノロジーによって提供されるような従来の手順を使用して、分析される試料から単離され得る。次に、このRNAは、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写され、目的のDNA分子は、特定のプライマーを使用したPCR技術によって増幅される。
【0062】
診断手順は、患者の試料で直接実行することもできる。例えば、サザンまたはノーザンブロット分析、免疫組織化学、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)およびPCR分析などのハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイは、この点で有用な技術のうちの一つである。必要に応じて、標的またはプローブ核酸を、マイクロタイタープレート、膜、ポリスチレンビーズ、スライドガラスまたは他の固相などの固体支持体に固定化することができる。
【0063】
<キット>
本発明は、がんの診断または検出のためのキットを提供する。そのようなキットは、核酸種の検出に適している可能性があり、あるいは、上記のように、ポリペプチド遺伝子産物の検出に適している可能性がある。
【0064】
ポリペプチドの検出では、抗体が最も一般的にキットの構成成分として使用される。しかしながら、バイオマーカー遺伝子産物に特異的に結合することができる任意の薬剤は、本出願のこの態様において有用であろう。キットの他の構成成分には、通常、ラベル、二次抗体、基質(遺伝子が酵素の場合)、阻害剤、補因子、および制御遺伝子産物の調製物が含まれ、ユーザーが発現レベルを定量化し、診断実験が正しく動作したかどうかを評価できるようにする。酵素結合免疫吸着アッセイベース(ELISA)試験および競合ELISA試験は、当業者がキット構成要素を使用して容易に実施することができる特に適切なアッセイである。
【0065】
必要に応じて、キットは、バイオマーカーポリペプチドに対する抗体の結合を検出するための手段をさらに含む。そのような手段には、例えば、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなど)、染料、放射性ヌクレオチド、発光基、蛍光基、ビオチン、またはコロイド金もしくはセレンなどのコロイド粒子などのレポーター分子が含まれる。好ましくは、そのようなレポーター分子は、抗体に直接連結される。
【0066】
さらに別の実施形態では、キットは、参照試料をさらに含み得る。一実施形態では、参照試料は、抗体によって検出されるポリペプチドを含む。好ましくは、ポリペプチドは既知の濃度のものである。そのようなポリペプチドは、標準として特に有用である。したがって、そのようなポリペプチドの様々な既知の濃度は、本明細書に記載の診断アッセイを使用して検出することができる。
【0067】
核酸を検出するために、そのようなキットは、バイアルまたはプラスチックチューブなどの第1の容器、またはオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロタイタープレートを含み得る。キットには、任意選択で、プライマーを保持する第2の容器が含まれ得る。プローブは、発現の変化ががんに関連しているDNAにハイブリダイズすることが可能であり、プライマーはこのDNAの増幅に有用である。固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブを含むキットも、例えば、アレイを使用して開発することができる(第21号(1)Nature Genetics、1999年の補足を参照)。
【0068】
核酸のPCR増幅のために、本明細書に記載のバイオマーカー遺伝子の少なくとも一部に相補的である核酸プライマーがキットに含まれ得る。プライマーのセットは、通常、DNAの特異的増幅が可能な少なくとも2つのオリゴヌクレオチド、好ましくは4つのオリゴヌクレオチドを含む。定量的PCR測定を可能にする蛍光標識オリゴヌクレオチドが含まれ得る(例えば、TaqMan chemistry,Molecular Beacons)。DNAの増幅に適した酵素も含まれる。
【0069】
<回帰アルゴリズムと統計>
がんの診断または検出に適したバイオマーカーのパネルを開発するために、本発明者らは、統計モデルにおいて多数のバイオマーカーを分析した。試験の性能におけるこのような改善は、「試料内」性能と呼ばれることもある。試験の公正な評価には、試料外の対象、すなわち初期予測モデルの構築に含まれていない対象を使用した評価が必要である。これは、相互検証を使用して試験性能を評価することによって達成される。
【0070】
統計的有意性の検定には、ANOVA、Kruskal-Wallis、Wilcoxon、Mann-Whitney、オッズ比、ベイジアン確率アルゴリズムなどの線形回帰および非線形回帰が含まれる。しかしながら、測定されるバイオマーカーの数が増えるにつれて、いくつか挙げると、ランダムフォレスト、単純なロジスティック、ベイジアンネットなどのより高度な手法を使用する方が一般的に簡便な場合があり得る。
【0071】
たとえば、ベイズ確率を採用することができる。この状況では、10分割交差検証を使用して、問題のモデルの「試料外」の性能を推定できる。検討中のバイオマーカーの組み合わせごとに、データをランダムに10個のサブ試料に分割し、各サブ試料は、健康な対象と疾患の各段階の対象の比率が同じである。次に、各サブ試料を除外し、残りの90%の対象を使用してロジスティックモデルを構築できる。次に、このモデルを使用して、除外されたサブ試料のがんの確率を推定し、「試料外」の性能の推定値を提供できる。残りの9つのサブ試料についてこれを繰り返すことにより、「試料外」の性能を調査データ自体から推定できる。次に、これらの試料外の予測確率を対象の実際の疾患状態と比較して、受信者操作特性(ROC)曲線を作成し、そこから95%の特異度での交差検証された感受性を推定できる。
【0072】
交差検証(または他の方法)を使用した「試料外」の性能の各推定値には、偏りはないが、変動性の要素がある。したがって、(バイオマーカーの組み合わせに基づく)モデルのランク付けは、そのようなモデルの相対的な性能のみを示すことができる。しかしながら、「試料外」の性能評価で示されるように、診断試験を生成するために多数の組み合わせで使用できる一連のバイオマーカーには、繰り返しの評価に耐えるバイオマーカーの組み合わせ自体がほぼ確実に含まれている。
【0073】
したがって、本明細書の教示に照らして、当業者は、がんを診断するための試験の感受性および特異性が、本明細書に記載のバイオマーカーの異なる組み合わせを選択することによって調節され得ることを理解するであろう。
【実施例
【0074】
[実施例1]
非小細胞肺がん細胞株HCC827を1mMおよび15mMの濃度の2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムのみで2時間処理し、RNAseqを使用した全トランスクリプトームプロファイリングによって遺伝子発現レベルの変化を測定した。同じ期間無処理の対照試料をベースライン遺伝子発現レベルとして使用した。バイオマーカー遺伝子の倍数変化の閾値ならびにNRF2自体を使用して、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウム曝露に応答して増加した遺伝子は、9つの遺伝子である。これらの9つの遺伝子には、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10)が含まれる。参照レベルからの1.5~2倍超の発現レベルの変化は、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸二ナトリウムの感受性を示していた。
【0075】
[実施例2]
Aは、神経成長因子(NGF)によってニューロン様細胞に分化したPC12細胞(ラット副腎髄質褐色細胞腫細胞株)における2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩による核因子赤血球系2関連因子2(Nrf2)の核発現の誘導を示した。PC12細胞を、7.5%の不活化ウシ胎児血清および7.5%の不活化ウマ血清を含むDMEMに懸濁した。I型コラーゲンでコーティングされた100mm培養皿に播種した後、これらの細胞を100ng/mLのNGFの存在下で7日間インキュベートしてプライミングした。次に、培地を、N-2サプリメントおよび30ng/mLのNGFを含む2mMグルタミンを添加したNeurobasal(商標)培地と交換し、神経様細胞に分化させるために細胞を再度3日間インキュベートした。次に、これらの細胞を、6mMの2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩で1、2、4、および8時間、または既知のNrf2活性化因子であるtert-ブチルヒドロキノン(t-BHQ)30μMで3時間処理した。次に、ウエスタンブロッティングによるNrf2の核発現の検出のために、細胞から核タンパク質を抽出した。
【0076】
図1は、30μMのt-BHQで処理された細胞および2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩で処理された細胞においてNrf2の核発現の誘導を示す。6mMのNrf2の核発現は、治療開始後1時間で始まり、Nrf2の明らかな発現は、治療開始後8時間まで持続した。2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩またはt-BHQのみで処理された対照細胞では、Nrf2の核発現は、ほとんどの場合、どの処理期間でも観察されなかった。
【0077】
これらの結果は、ニューロン様細胞に分化したPC12細胞において、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩がNrf2の核発現を示し、2,2’-ジチオ-ビス-エタンスルホン酸塩に対する感受性を示すことを明らかにした。
【0078】
NRF2(配列番号1)、NQO1(配列番号2)、PHGDH(配列番号3)、HMOX1(配列番号4)、SLC7A11(配列番号5)、SRXN1(配列番号5)のタンパク質配列Uniprotデータベースからの配列番号6)、SOX2(配列番号7)、GPX2(配列番号8)、GPX3(配列番号9)、およびGPX7(配列番号10):
【0079】
[配列番号1(配列番号1)]
>sp|Q16236|NF2L2/NFE2L2またはNRF2_ヒト 核因子赤血球系2関連因子2 OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=NFE2L2 PE=1 SV=3
MMDLELPPPGLPSQQDMDLIDILWRQDIDLGVSREVFDFSQRRKEYELEKQKKLEKERQEQLQKEQEKAFFAQLQLDEETGEFLPIQPAQHIQSETSGSANYSQVAHIPKSDALYFDDCMQLLAQTFPFVDDNEVSSATFQSLVPDIPGHIESPVFIATNQAQSPETSVAQVAPVDLDGMQQDIEQVWEELLSIPELQCLNIENDKLVETTMVPSPEAKLTEVDNYHFYSSIPSMEKEVGNCSPHFLNAFEDSFSSILSTEDPNQLTVNSLNSDATVNTDFGDEFYSAFIAEPSISNSMPSPATLSHSLSELLNGPIDVSDLSLCKAFNQNHPESTAEFNDSDSGISLNTSPSVASPEHSVESSSYGDTLLGLSDSEVEELDSAPGSVKQNGPKTPVHSSGDMVQPLSPSQGQSTHVHDAQCENTPEKELPVSPGHRKTPFTKDKHSSRLEAHLTRDELRAKALHIPFPVEKIINLPVVDFNEMMSKEQFNEAQLALIRDIRRRGKNKVAAQNCRKRKLENIVELEQDLDHLKDEKEKLLKEKGENDKSLHLLKKQLSTLYLEVFSMLRDEDGKPYSPSEYSLQQTRDGNVFLVPKSKKPDVKKN
【0080】
[配列番号2(配列番号2)]
>sp|P15559|NQO1_ヒト NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ[キノン]1OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=NQO1 PE=1 SV=1
MVGRRALIVLAHSERTSFNYAMKEAAAAALKKKGWEVVESDLYAMNFNPIISRKDITGKLKDPANFQYPAESVLAYKEGHLSPDIVAEQKKLEAADLVIFQFPLQWFGVPAILKGWFERVFIGEFAYTYAAMYDKGPFRSKKAVLSITTGGSGSMYSLQGIHGDMNVILWPIQSGILHFCGFQVLEPQLTYSIGHTPADARIQILEGWKKRLENIWDETPLYFAPSSLFDLNFQAGFLMKKEVQDEEKNKKFGLSVGHHLGKSIPTDNQIKARK
【0081】
[配列番号3(配列番号3)]
>sp|O43175|PHGDHまたはSERA_ヒト D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=PHGDH PE=1 SV=4
MAFANLRKVLISDSLDPCCRKILQDGGLQVVEKQNLSKEELIAELQDCEGLIVRSATKVTADVINAAEKLQVVGRAGTGVDNVDLEAATRKGILVMNTPNGNSLSAAELTCGMIMCLARQIPQATASMKDGKWERKKFMGTELNGKTLGILGLGRIGREVATRMQSFGMKTIGYDPIISPEVSASFGVQQLPLEEIWPLCDFITVHTPLLPSTTGLLNDNTFAQCKKGVRVVNCARGGIVDEGALLRALQSGQCAGAALDVFTEEPPRDRALVDHENVISCPHLGASTKEAQSRCGEEIAVQFVDMVKGKSLTGVVNAQALTSAFSPHTKPWIGLAEALGTLMRAWAGSPKGTIQVITQGTSLKNAGNCLSPAVIVGLLKEASKQADVNLVNAKLLVKEAGLNVTTSHSPAAPGEQGFGECLLAVALAGAPYQAVGLVQGTTPVLQGLNGAVFRPEVPLRRDLPLLLFRTQTSDPAMLPTMIGLLAEAGVRLLSYQTSLVSDGETWHVMGISSLLPSLEAWKQHVTEAFQFHF
【0082】
[配列番号4(配列番号4)]
>sp|P09601|HMOX1_ヒト ヘムオキシゲナーゼ1 OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=HMOX1 PE=1 SV=1
MERPQPDSMPQDLSEALKEATKEVHTQAENAEFMRNFQKGQVTRDGFKLVMASLYHIYVALEEEIERNKESPVFAPVYFPEELHRKAALEQDLAFWYGPRWQEVIPYTPAMQRYVKRLHEVGRTEPELLVAHAYTRYLGDLSGGQVLKKIAQKALDLPSSGEGLAFFTFPNIASATKFKQLYRSRMNSLEMTPAVRQRVIEEAKTAFLLNIQLFEELQELLTHDTKDQSPSRAPGLRQRASNKVQDSAPVETPRGKPPLNTRSQAPLLRWVLTLSFLVATVAVGLYAM
【0083】
[配列番号5(配列番号5)]
>sp|Q9UPY5|SLC7A11またはXCT_ヒト シスチン/グルタミン酸トランスポーター OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=SLC7A11 PE=1 SV=1
MVRKPVVSTISKGGYLQGNVNGRLPSLGNKEPPGQEKVQLKRKVTLLRGVSIIIGTIIGA
GIFISPKGVLQNTGSVGMSLTIWTVCGVLSLFGALSYAELGTTIKKSGGHYTYILEVFGP
LPAFVRVWVELLIIRPAATAVISLAFGRYILEPFFIQCEIPELAIKLITAVGITVVMVLNSMSVSWSARIQIFLTFCKLTAILIIIVPGVMQLIKGQTQNFKDAFSGRDSSITRLPLAFYYGMYAYAGWFYLNFVTEEVENPEKTIPLAICISMAIVTIGYVLTNVAYFTTINAEELLLSNAVAVTFSERLLGNFSLAVPIFVALSCFGSMNGGVFAVSRLFYVASREGHLPEILSMIHVRKHTPLPAVIVLHPLTMIMLFSGDLDSLLNFLSFARWLFIGLAVAGLIYLRYKCPDMHRPFKVPLFIPALFSFTCLFMVALSLYSDPFSTGIGFVITLTGVPAYYLFIIWDKKPRWFRIMSEKITRTLQIILEVVPEEDKL
【0084】
[配列番号6(配列番号6)]
>sp|Q9BYN0|SRXN1_ヒト スルフィレドキシン-1 OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=SRXN1 PE=1 SV=2
MGLRAGGTLGRAGAGRGAPEGPGPSGGAQGGSIHSGRIAAVHNVPLSVLIRPLPSVLDPAKVQSLVDTIREDPDSVPPIDVLWIKGAQGGDYFYSFGGCHRYAAYQQLQRETIPAKLVQSTLSDLRVYLGASTPDLQ
【0085】
[配列番号7(配列番号7)]
>sp|P48431|SOX2ヒト 転写因子 SOX-2OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=SOX2 PE=1 SV=1
MYNMMETELKPPGPQQTSGGGGGNSTAAAAGGNQKNSPDRVKRPMNAFMVWSRGQRRKMAQENPKMHNSEISKRLGAEWKLLSETEKRPFIDEAKRLRALHMKEHPDYKYRPRRKTKTLMKKDKYTLPGGLLAPGGNSMASGVGVGAGLGAGVNQRMDSYAHMNGWSNGSYSMMQDQLGYPQHPGLNAHGAAQMQPMHRYDVSALQYNSMTSSQTYMNGSPTYSMSYSQQGTPGMALGSMGSVVKSEASSSPPVVTSSSHSRAPCQAGDLRDMISMYLPGAEVPEPAAPSRLHMSQHYQSGPVPGTAINGTLPLSHM
【0086】
[配列番号8(配列番号8)]
>sp|P18283|GPX2_ヒト グルタチオンペルオキシダーゼ 2OS=ホモサピエンス OX=9606 GN=GPX2 PE=1 SV=3
MAFIAKSFYDLSAISLDGEKVDFNTFRGRAVLIENVASLUGTTTRDFTQLNELQCRFPRRLVVLGFPCNQFGHQENCQNEEILNSLKYVRPGGGYQPTFTLVQKCEVNGQNEHPVFAYLKDKLPYPYDDPFSLMTDPKLIIWSPVRRSDVAWNFEKFLIGPEGEPFRRY
【0087】
[配列番号9(配列番号9)]
>sp|P22352|GPX3_ヒト グルタチオンペルオキシダーゼ 3OS=ホモサピエンスOX=9606 GN=GPX3 PE=1 SV=2
MARLLQASCLLSLLLAGFVSQSRGQEKSKMDCHGGISGTIYEYGALTIDGEEYIPFKQYAGKYVLFVNVASYUGLTGQYIELNALQEELAPFGLVILGFPCNQFGKQEPGENSEILPTLKYVRPGGGFVPNFQLFEKGDVNGEKEQKFYTFLKNSCPPTSELLG
【0088】
[配列番号10(配列番号10)]
>sp|Q96SL4|GPX7_ヒト グルタチオンペルオキシダーゼ 7OS=ホモサピエンスOX=9606 GN=GPX7 PE=1 SV=1
MVAATVAAAWLLLWAAACAQQEQDFYDFKAVNIRGKLVSLEKYRGSVSLVVNVASECGFTDQHYRALQQLQRDLGPHHFNVLAFPCNQFGQQEPDSNKEIESFARRTYSVSFPMFSKIAVTGTGAHPAFKYLAQTSGKEPTWNFWKYLVAPDGKVVGAWDPTVSVEEV
図1
【国際調査報告】