(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(54)【発明の名称】常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置におけるチエノピリドン誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4365 20060101AFI20230303BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61K31/4365
A61P13/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560086
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2021058792
(87)【国際公開番号】W WO2021198506
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512169062
【氏名又は名称】ポクセル
【氏名又は名称原語表記】POXEL
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ボルズ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・フォクレ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー・アラク-ボゼク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB29
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA81
(57)【要約】
本発明は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置における、チエノピリドン誘導体、又はそれを含む医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置における使用のための、
式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を表し、
R2は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数の基で置換されているか、又は置換されていない、インダニル又はテトラリニル基を表し、
R3は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル、及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数の原子又は基で置換されているか、又は置換されていない、アリール基を表す)
のチエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、
又は前記チエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が、ヒト患者に0.5mg~3000mg、好ましくは20mg~1000mg、更に好ましくは60mg~500mgの1日投与量で1日1回又は2回投与される、請求項1に記載の使用のための、請求項1に記載のチエノピリドン誘導体、又は前記チエノピリドン誘導体を含む医薬組成物。
【請求項3】
前記化合物又は医薬組成物が、嚢胞の増殖を防止若しくは制限し、又は嚢胞体積を減少させるのに有効である、請求項1又は2に記載の使用のための、請求項1に記載のチエノピリドン誘導体、又は前記チエノピリドン誘導体を含む医薬組成物。
【請求項4】
以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1に記載のチエノピリドン誘導体。
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が置換されていないか、又は少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1若しくは2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形態、好ましくはナトリウム又はカリウム塩、更に好ましくはカリウム塩である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形態、好ましくは水和物、更に好ましくは一水和物である。
【請求項5】
以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項4に記載のチエノピリドン誘導体。
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形態、好ましくはナトリウム又はカリウム塩、更に好ましくはカリウム塩である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形態、好ましくは水和物、更に好ましくは一水和物である。
【請求項6】
式(Ia):
【化2】
を有する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンの一水和物カリウム塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項5に記載のチエノピリドン誘導体。
【請求項7】
以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1に記載のチエノピリドン誘導体。
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がインダニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す。
【請求項8】
式(Ib):
【化3】
を有する2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項7に記載のチエノピリドン誘導体。
【請求項9】
式(Ic):
【化4】
を有する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための、請求項7に記載のチエノピリドン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置におけるチエノピリドン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は最も一般的な単一遺伝子による遺伝性腎疾患であり、発症率は500人に1人~1000人に1人である(P. Igarashiら、J. Am. Soc. Nephrol.、13(9)、2384~2398頁、2002年)。ポリシスチン-1及びポリシスチン-2をコードするPKD1及びPKD2遺伝子の変異は、ADPKD症例のそれぞれ85%及び15%の原因である。ADPKDは、多数の両側性腎嚢胞が進行性に発生及び増殖し、その結果、急性及び慢性疼痛、腎結石及び尿路感染症等の多くの異常をもたらすことを特徴とし、その中でも特に重要なものは腎機能の喪失である。ADPKD患者の約70%は中央値年齢58歳で末期腎不全(ESRD)に進行する(E.M. Spithovenら、Kidney Int.、86(6)、1244~1252頁、2014年)。
【0003】
嚢胞の増殖を推進する種々のシグナル伝達経路を標的とする、ADPKDの多数の治療法が提案されている。そのような治療法には、トルバプタン等のバソプレシン受容体阻害剤、オクトレオチド及びランレオチド等のソマトスタチン類似体、プラバスタチン、並びにテセバチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。その中でも、トルバプタンは、急速に進行するADPKDのリスクのある成人において、腎機能の低下を遅延させるとしてFDAに承認された最初の薬物処置であった。しかし、トルバプタンは肝細胞毒性を有する可能性があるため、トルバプタンで処置される患者は、頻繁に肝機能をモニターする必要がある。これらの化合物は、ADPKDの発症機序に関与すると考えられている重要なプロセス(増殖又は分泌)の1つを標的としている。
【0004】
近年、嚢胞液の分泌に関与する嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、及び嚢胞上皮細胞の増殖を推進し得る哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)経路が、いずれもAMP-活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)によって負の制御を受け得ることが示された。したがって、AMPKの活性化因子は、ADPKDの2つの重要なプロセスを同時に標的とする可能性がある。この文脈では、AMPKの間接的活性化因子として知られているメトホルミンを使用して、嚢胞増殖の分泌成分及び増殖成分の両者を抑制し、それによって腎嚢胞形成を遅延させることが提案された(V. Takiarら、PNAS、第108巻、第6号、2462~2467頁、2011年)。しかし、メトホルミンは、副作用として乳酸アシドーシスを誘発することが知られている。メトホルミンは腎臓で排泄されるため、慢性腎臓疾患はこの合併症の素因となる可能性があると考えられている。更に、少なくともメトホルミンの生物学的利用率は低いため、ヒトの腎臓におけるメトホルミンを用いた治療的AMPK活性化には、その高経口用量が必要となる可能性があるという懸念がある。
【0005】
メトホルミンに加え、他のAMPK活性化因子がADPKDの処置に有用である可能性が示唆されている。このように、W02017/011917は、広い式で定義された多数のチエノピリドン類を開示しているが、どのようにチエノピリドン類を合成することができるかについても、どの特定の化合物が含まれるかについても何ら開示していない。
【0006】
最近になって、サリチル酸塩のプロドラッグ二量体でAMPKの直接活性化因子であるサルサレート(salsalate)が、変異マウスの嚢胞腎の重症度を下げるのにメトホルミンよりも有効であることが示された(W.N. Leohnardら、EBioMedicine、第47巻、436~445頁、2019年)。サルサレートは、AMPK β1イソ型の薬物結合ドメインと直接相互作用することによりAMPKを活性化する。しかし、サルサレートはメトホルミンと比較して生物学的利用率が高いにもかかわらず、治療効果を得るために必要な経口用量は依然として高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】W02017/011917
【特許文献2】WO2014/001554
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】P. Igarashiら、J. Am. Soc. Nephrol.、13(9)、2384~2398頁、2002年
【非特許文献2】E.M. Spithovenら、Kidney Int.、86(6)、1244~1252頁、2014年
【非特許文献3】V. Takiarら、PNAS、第108巻、第6号、2462~2467頁、2011年
【非特許文献4】W.N. Leohnardら、EBioMedicine、第47巻、436~445頁、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、この目的のために提案された化合物よりも低い用量及び/又は高い有効性で、及び/又は副作用が低減した、ADPKDの処置に有用な別の化合物の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、本発明者らは、特定のチエノピリドン誘導体が、他のAMPK活性化因子よりも低い経口用量でADPKDの処置に使用することができることを示した。これらの化合物は、WO2014/001554にはAMPK活性化因子として広く開示されているが、これらの化合物をADPKDの処置に使用することは今まで提案されていなかった。これらの化合物は、β1サブユニットを含む、様々なAMPKイソ型の直接的活性化因子であることが証明された。
【0011】
本発明は、ADPKDの処置における使用のための、
式(I):
【0012】
【0013】
(式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を表し、
R2は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数(例えば、2、3、4、5、6又は7個)の基で置換されているか、又は置換されていない、インダニル又はテトラリニル(tetralinyl)基を表し、
R3は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル、及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数(例えば、2、3、4又は5個)の原子又は基で置換されているか、又は置換されていない、アリール基を表す)
のチエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、
又は前記チエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、ADPKDを処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の上記チエノピリドン誘導体、又は有効量の上記チエノピリドン誘導体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0015】
本発明はまた、ADPKDの処置のための医薬の製造のための、上記チエノピリドン誘導体、又は上記チエノピリドン誘導体を含む医薬組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、10μM、100μM及び1mMのメトホルミン、又は10μM、25μM又は50μMのPXL770の存在下でplMDCK細胞から形成された嚢胞の体積を対照培地と比較して示す。
【
図2】
図2は、10μM、100μM及び1mMのメトホルミン、又は10μM、25μM又は50μMのPXL770の存在下でplMDCK細胞から形成された嚢胞の写真を示す。
【
図3】
図3は、本発明の種々のチエノピリドン類の嚢胞膨潤に対する効果を、類似の化合物と比較して評価したインビトロ実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で使用する場合、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味であると定義される。
【0018】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子から選択される元素を意味する。
【0019】
「アルキル基」という用語は、1~5個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖の飽和鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、又はtert-ブチルを意味する。好ましくは、アルキル基は、1~3個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖の飽和鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、又はイソ-プロピルを意味する。
【0020】
「アリール基」という用語は、場合により、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ(OH)、アルキルオキシ基、アミノ(NH2)、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ(COOH)、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド(CONH2)、シアノ(CN)、アルキルスルホニル基及びトリフルオロメチル(CF3)から選択される1個又は複数の原子又は基で置換されているC6~C18の芳香族基、例えば、フェニル又はナフチル基を意味する。より具体的には、アリール基は、フッ素、塩素、臭素原子、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、カルボキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、カルボキサミド、ジメチルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、シアノ、メチルスルホニル又はトリフルオロメチル基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0021】
「アラルキル基」という用語は、その水素原子が上記で定義されたアリール基で置き換えられている、上記で定義したアルキル基を意味する。アラルキル基の例はベンジル基である。
【0022】
「アルキルオキシ」(又は「アルコキシ」)基という用語は、酸素原子を介して分子の残部に結合した上記で定義したアルキル基を意味する。アルキルオキシ基としては、メトキシ及びエトキシ基を挙げることができる。
【0023】
「アラルキルオキシ」基という用語は、酸素原子を介して分子の残部に結合した上記で定義したアラルキル基を意味する。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基を挙げることができる。
【0024】
「アルキルアミノ」基という用語は、窒素原子を介して分子の残部に結合した上記で定義したアルキル基を意味する。アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ基を挙げることができる。
【0025】
「アルキルオキシカルボニル基」という用語は、カルボニル基を介して分子の残部に結合した上記で定義したアルキルオキシ基を意味する。
【0026】
「アルキルアミノカルボニル基」という用語は、カルボニル基を介して分子の残部に結合した上記で定義したアルキルアミノ基を意味する。
【0027】
「アルキルスルホニル」という用語は、SO2基を介して分子の残部に結合した上記で定義したアルキルを意味する。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル及びエチルスルホニル基を挙げることができる。
【0028】
本発明においては、化合物の「溶媒和物」は、不活性な溶媒分子が化合物に付加し、相互の引力で形成されるものを意味する。溶媒和物は、例えば水和物又はアルコラートである。
【0029】
本発明は、ADPKDの処置における使用のための、
式(I):
【0030】
【0031】
(式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を表し、
R2は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数(例えば、2、3、4、5、6又は7個)の基で置換されているか、又は置換されていない、インダニル又はテトラリニル基を表し、
R3は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル、及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数(例えば、2、3、4又は5個)の原子又は基で置換されているか、又は置換されていない、アリール基を表す)
のチエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、
又は前記チエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
【0032】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の例は、式(I)の化合物を、当技術分野で通常知られている手順で種々の有機及び無機塩基と反応させて、対応する塩基付加塩を与えることにより得ることができる。このような塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムを含むアルカリ金属炭酸塩;水酸化バリウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ土類金属炭酸塩;カリウムエトキシド及びナトリウムプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシド;並びにピペリジン、ジエタノールアミン及びN-メチルグルタミン等の種々の有機塩基である。式(I)の化合物のアルミニウム塩も同様に含まれる。
【0033】
したがって、式(I)の化合物の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛塩が挙げられるが、これらは限定を意味するものではない。上記塩のうち、一、二、及び三ナトリウム又はカリウム塩が好ましく、カリウム塩が最も好ましい。
【0034】
本発明では、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、又は本化合物自体のいずれかを、その溶媒和物の1つの形態で使用することができる。本発明では、化合物の「溶媒和物」とは、不活性な溶媒分子が化合物に付加し、相互の引力で形成されるものを意味する。したがって、溶媒和物の性質は、塩基と式(I)の化合物の反応の際に使用される溶媒に依存する。溶媒和物の例としては、アルコール溶媒和物、例えばメタノール又はエタノール溶媒和物、並びに一水和物、二水和物、三水和物、又は四水和物を含む水和物が挙げられるが、これらは限定を意味するものではない。
【0035】
特定の実施形態では、以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす:
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が置換されていないか、又は少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1若しくは2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形態、好ましくはナトリウム又はカリウム塩、更に好ましくはカリウム塩である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形態、好ましくは水和物、更に好ましくは一水和物である。
【0036】
更に好ましくは、以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす:
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形態、好ましくはナトリウム又はカリウム塩、更に好ましくはカリウム塩である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形態、好ましくは水和物、更に好ましくは一水和物である。
【0037】
別の実施形態では、以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは以下の条件を全て満たす:
・ R1がハロゲン原子、特に塩素原子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がインダニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す。
【0038】
本発明によるチエノピリドン誘導体の例としては、以下のものが挙げられる:
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-(3-メトキシフェニル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-(4-メトキシフェニル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
3-(2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-6-オキソ-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-5-イル)ベンゾニトリル
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-(3-メチルフェニル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシインダン-5-イル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシインダン-5-イル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシインダン-5-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシインダン-5-イル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
3-(2-クロロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-3-テトラリン-6-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-5-イル)ベンゾニトリル
三ナトリウム2-クロロ-3-(5-オキシドテトラリン-6-イル)-5-フェニル-チエノ[2,3-b]ピリジン-4,6-ジオレート
2-クロロ-4-ヒドロキシ-5-フェニル-3-テトラリン-6-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
二ナトリウム2-クロロ-3-(5-オキシドテトラリン-6-イル)-6-オキソ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オレート
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-(3-メチルフェニル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-(4-メチルフェニル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
2-クロロ-5-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン
ナトリウム2-クロロ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-6-オキソ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オレート、
カリウム2-クロロ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-6-オキソ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オレート。
【0039】
式(I)の化合物は、一般にWO2014/001554に開示されたようにして調製することができる。
【0040】
このような化合物の例としては、以下のものが挙げられる:
・ 下記式(Ia):
【0041】
【0042】
の構造に対応する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンのカリウム塩一水和物であるPXL770、
・ 式(Ib):
【0043】
【0044】
を有する2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン、
・ 式(Ic):
【0045】
【0046】
を有する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン。
【0047】
PXL770は、
(A)式(II):
【0048】
【0049】
の化合物を、水並びに酢酸n-ブチル及びイソプロパノールから選択される溶媒を含む溶液中で炭酸カリウムと反応させる工程と;
(B)沈殿を形成させる工程と;
(C)工程(B)で得られた沈殿を、好ましくはろ過により回収する工程と
を含む方法により調製することができる。
【0050】
式(II)の化合物及びその調製方法は、特許出願WO2014/001554に開示されている。
【0051】
或いは、式(II)の前記化合物は、
(a)6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリンを、塩基の存在下で求電子性ベンジル源、好ましくは臭化ベンジルと反応させる工程と;
(b)工程(a)で得られた化合物を、ヘキサメチルジシラザン及び酢酸の存在下でシアノ酢酸エチルと反応させる工程と;
(c)工程(b)で得られた化合物を、塩基の存在下で硫黄と反応させる工程と;
(d)場合により、工程(c)で得られた化合物の塩、好ましくは塩酸塩を形成する工程と;
(e)工程(c)又は(d)で得られた化合物を、求電子性塩素源、好ましくはN-クロロスクシンイミドと反応させる工程と;
(f)工程(e)で得られた化合物をフェニルアセチルクロリドと反応させる工程と;
(g)工程(f)で得られた化合物を塩基と反応させる工程と;
(h)工程(g)で得られた化合物を、三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素、好ましくは三塩化ホウ素と反応させる工程と;
(i)場合により、工程(h)で得られた化合物を回収する工程と
を含む、改善された方法により得ることができる。
【0052】
典型的には、工程(B)は、工程(A)で得られた混合物を、好ましくは混合物の還流に近い温度で加熱するサブステップ(b1)と、それに続いて、得られた混合物を、例えば-15℃~35℃の間に含まれる温度で冷却するサブステップ(b2)を含んでいてもよい。「混合物の還流に近い」という表現は、典型的には工程(A)の溶媒系(例えば、水/イソプロパノール又は水/酢酸n-ブチル)の沸点の90%~100%の間に含まれる温度を意味する。
【0053】
蒸留工程は、加熱サブステップ及びサブステップ(b2)の間に、好ましくは減圧下で実施することができる。
【0054】
工程(B)により、結晶性沈殿が形成され、この形成は、工程(b2)にシードを加えることで有利に誘発されることがある。
【0055】
好ましい実施形態では、前記沈殿は工程(C)においてろ過によって回収される。その後、沈殿を、1種又は複数の溶媒、好ましくは水、酢酸n-ブチル、及び/又はtert-ブチルメチルエーテルで連続的に洗浄してもよい。
【0056】
このようにして、式(Ia)の化合物、すなわちPXL770は、Cu K(アルファ)線を使用する回折計による測定で以下のXRPD(粉末X線回折)ピークを有する、粉末等の固体形態で得られる。
【0057】
【0058】
以下の説明において、「チエノピリドン誘導体」という用語は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物の1つを意味する。
【0059】
本発明の目的は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の前記チエノピリドン誘導体、又は有効量の前記チエノピリドン誘導体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0060】
本発明は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置のための医薬の製造における、前記チエノピリドン誘導体、又は前記チエノピリドン誘導体を含む組成物の使用に更に関する。
【0061】
本発明に従って使用される医薬組成物は、任意の従来の方法によって調製することができる。チエノピリドン誘導体は、少なくとも1種の固体、液体、及び/又は半液体の賦形剤又は補助剤と共に、また所望に応じて、1種又は複数の更なる活性成分と組み合わせて適切な剤形に変換することができる。
【0062】
「薬学的に許容される担体」という用語は、対象には薬理学的/毒性学的観点から、及び製薬化学者には物理的/化学的観点から、組成、製剤、安定性、対象の受容性及びバイオアベイラビリティに関して許容されるキャリア、補助剤又は賦形剤を意味する。
【0063】
「キャリア」、「補助剤」、又は「賦形剤」という用語は、それ自体は治療薬ではないが、その取扱い性又は保存特性を改善するため、又は組成物の投与単位を個別の物品に形成することを可能にし、若しくは容易にするために、治療薬を対象に送達するためのキャリア、補助剤、及び/又は希釈剤として使用されるように医薬組成物に添加される、あらゆる物質を意味する。本発明の医薬組成物は、個々に、又は組み合わされ、分散剤、可溶化剤、安定化剤、保存料等の中から選択される1種又は複数の薬剤又はビヒクルを含んでいてもよい
【0064】
「処置」、「処置すること」、及び「処置する」という用語は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療、防止及び予防を意味する。本明細書に開示されるように、「処置」、又は「処置すること」という用語は、疾患又はその症状の少なくとも1つの予防を意味する。これはまた、処置されている疾患に関連する少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善、防止を意味し、対象の識別は可能であっても可能でなくてもよい。「処置」、又は「処置すること」という用語は更に、身体的には、識別可能な症状の安定化、生理学的には、例えば身体的パラメータの安定化、又はその両方で、疾患の進行を抑制し、又は遅延させることを意味する。「処置」又は「処置すること」という用語はまた、疾患又は障害の発症を遅延させることを意味する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は防止的手段として投与される。この文脈では、「防止」又は「防止すること」は、疾患に関連する症状の少なくとも1つが発症するリスクを低減することを意味する。
【0065】
「処置すること」という用語は、チエノピリドン誘導体又はチエノピリドン誘導体を含む医薬組成物によって嚢胞の増殖を防止又は制限することを含み得る。本明細書で使用される「処置」は、嚢胞体積を減少させることも包含する。したがって、「処置する」、「処置すること」、「処置」等の用語には、ADPKDに関連する症状の処置が含まれる。
【0066】
処置には、申告された障害を有する対象に本発明のチエノピリドン誘導体又は医薬組成物を投与して、進行を治癒し、遅延し又は遅らせ、それによって患者の病状を改善することが含まれる。
【0067】
本発明の文脈では、「対象」という用語は、哺乳動物、より詳細にはヒトを意味する。本発明により処置される対象は、疾患に関連するいくつかの基準に基づいて適切に選択することができる。ADPKDの場合、処置は、PKD1遺伝子及び/若しくはPKD2遺伝子に少なくとも1つの変異を有する患者、又はADPKDのリスクを有する患者に対して特に適切なものである。「ADPKDのリスクを有する」患者には、超音波検査により検出された、片側又は両側の腎嚢胞が3個又はそれ以上ある15~39歳の患者、各腎臓に嚢胞が2個又はそれ以上ある40~59歳の患者、並びに各腎臓に嚢胞が4個又はそれ以上ある60歳以上の患者が包含される。或いは、核磁気共鳴画像で少なくとも10個の腎嚢胞が観察される30歳以下の患者は、通常、ADPKDのリスクがあるとみなされる。
【0068】
医薬組成物は、投与単位あたり所定の有効量の活性成分を含む投与単位の形態で投与することができる。
【0069】
医薬組成物は、あらゆる所望の適切な方法、例えば、経口(頬又は舌下を含む)、直腸、鼻、局所(頬、舌下又は経皮を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を含む)方法による投与に適合させることができる。このような組成物は、例えば、活性成分を賦形剤(複数可)又は補助剤(複数可)と組み合わせることにより、医薬の分野において既知のあらゆる方法を使用して調製することができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は経口投与に適している。
【0070】
経口投与に適した医薬組成物は、例えば、カプセル剤又は錠剤;粉末若しくは顆粒;水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液;食用フォーム若しくはフォーム食品;又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションのようなエマルション等の個別のユニットとして投与することができる。
【0071】
したがって、例えば、錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与する場合、活性成分を、経口用の、非毒性で薬学的に許容される不活性な賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適当な大きさに粉砕し、同様の方法で粉砕した医薬賦形剤、例えば、デンプン又はマンニトールのような、例えば食用炭水化物と混合することにより調製される。香料、防腐剤、分散剤、及び色素も同様に存在してもよい。
【0072】
カプセル剤は、上記のような粉末混合物を調製し、これを成形したゼラチンシェルに充填することにより製造することができる。充填操作の前に、例えば、固体形態の高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はポリエチレングリコール等の流動促進剤及び滑沢剤を粉末混合物に添加することができる。また、カプセル剤を服用した後の医薬の有効性を高めるために、例えば寒天、炭酸カルシウム、又は炭酸ナトリウム等の崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。
【0073】
更に、所望に応じて、又は必要に応じて、適切な結合剤、滑沢剤及び崩壊剤、並びに色素を同様に混合物に配合することができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、例えばグルコースや又はベータ-ラクトース等の天然糖類、トウモロコシを原料とする甘味料、例えばアラビアガム、トラガカント、アルギン酸ナトリウム等の天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。これらの剤型に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられるが、これらに限定されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒又は乾式成形し、滑沢剤及び崩壊剤を添加し、混合物全体をプレスして錠剤を得ることにより製剤化される。粉末混合物は、適当な方法で粉砕した化合物を、上記のように希釈剤又は基剤と混合し、場合により、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン又はポリビニルピロリドン等の結合剤、例えばパラフィン等の溶解遅延剤、例えば第四級塩等の吸収促進剤、及び/又は例えばベントナイト、カオリン又は第二リン酸カルシウム等の吸収剤を混合することにより調製される。粉末混合物は、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアガム粘液、又はセルロース若しくは高分子材料の溶液等の結合剤で湿潤させ、篩を通してプレスすることで造粒することができる。造粒の代わりに、粉末混合物を打錠機にかけて、形状が不均一の塊を作り、それを砕いて粒状にすることもできる。錠剤鋳造用鋳型への付着防止のため、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク又は鉱物油を添加して顆粒を潤滑にすることができる。次いで、この潤滑化された混合物をプレスして錠剤を得る。また、本発明による化合物は、流動性のある不活性な賦形剤と組み合わせ、次いで、造粒又は乾式プレスの工程を実施せずに、直接プレスして錠剤を得ることもできる。シェラックシール層、糖又はポリマー材料の層、及びワックスの光沢層からなる透明又は不透明な保護層が存在してもよい。これらのコーティングには、異なる投与単位を区別し得るように色素を添加することができる。
【0074】
経口投与に適した医薬組成物は、固体又は液体分散体を噴霧乾燥することによって製剤化することもできる。
【0075】
例えば、溶液、シロップ、エリキシル等の経口液体は、所定の量が予め指定された量の化合物を含むように、投与単位の形態で調製することができる。シロップは、化合物を適切な香料を含む水溶液に溶解して調製することができ、エリキシルは非毒性のアルコール性ビヒクルを使用して調製される。懸濁液は、非毒性のビヒクル中に化合物を分散させることによって製剤化することができる。例えばエトキシ化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル等の可溶化剤及び乳化剤、保存料、例えばペパーミントオイル等の風味添加物、又は天然甘味料若しくはサッカリン、又は他の人工甘味料等も同様に添加することができる。
【0076】
経口投与用の投与単位製剤は、所望に応じて、マイクロカプセルに封入することができる。また、製剤は、例えば、ポリマー、ワックス等で微粒子材料をコーティング又は包埋して、放出が延長又は遅延されるように調製することもできる。
【0077】
また、本発明に従って使用されるチエノピリドン誘導体は、例えば、小型単層小胞体、大型単層小胞体及び多層小胞体等のリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等の様々なリン脂質から形成することができる。
【0078】
「有効量」とは、ヒトにおいて処置される疾患の有害な影響を防止、除去又は軽減する、上記で定義される化合物の量を意味する。投与量は、患者、病状、投与形態等に応じて、当業者により調整することができると理解される。例えば、チエノピリドン誘導体は、ヒト患者に対して、1日当たり0.5mg~300mg、好ましくは20mg~1000mg、更に好ましくは60mg~500mgの用量で、1日1回又は2回投与することができる。チエノピリドン誘導体は、長寿命薬として週4、5、6、7日投与することができる。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、チエノピリドン誘導体は、0.5mg~1500mg、好ましくは20mg~1000mg、更に好ましくは60mg~500mgのチエノピリドン誘導体を含む投与単位で投与される。
【0080】
本発明を以下の実施例においても更に詳細に説明するが、この実施例は添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
PXL770の合成
分析法
XRPD
粉末X線回折(XRPD)分析は、Cu(Kアルファ線)X線管及びピクセル検出システムを備えたPanalytical Xpert Pro回折計を使用して行った。試料を透過モードで分析し、低密度ポリエチレンフィルムの間に保持した。HighScore Plus 2.2cソフトウェアを使用してXRPDパターンを分類し、処理し、インデックスを付けた。
【0082】
TG/DTA
熱重量(TG)分析は、Perkin Elmer社製Diamond Thermogravimetric/Differential Temperature Analyser(TG/DTA)を用いて実施した。キャリブレーション標準物質はインジウム及びスズであった。試料をアルミニウム試料皿に入れ、TG炉へ装入し、正確に秤量した。試料を窒素流中で30~300℃まで10℃/分の速度で加熱した。試料の分析の前に炉の温度を30℃で平衡化させた。
【0083】
1a)1-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)エタノン(1)の合成
【0084】
【0085】
6-アセチル-5-ヒドロキシテトラリン(100g、1当量)をアセトニトリル(300mL)中に溶解させた。K2CO3(1.1当量)及び臭化ベンジル(1.05当量)を添加した後、懸濁液を加熱した(76℃)。48時間後、臭化ベンジル(0.1当量)を添加した。全体で74時間後、固体をろ過して除き、アセトニトリル(200mL)で洗浄し、合わせたろ液を蒸発させた。
【0086】
化合物1がシロップとして得られた。m=148.6g、定量的収率、純度96.6% a/a。
【0087】
1b)エチル2-アミノ-4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)チオフェン-3-カルボキシレート(2)の合成
【0088】
【0089】
酢酸(70mL)をT=65℃まで加熱した。HMDS(1.5当量)を10分かけて添加した。その後、酢酸(140mL)中の化合物1(69.5g、1当量)及びシアノ酢酸エチル(1.5当量)の溶液を添加した。得られた混合物をT=65℃で24時間撹拌した。
【0090】
室温まで冷却した後、NaOH水溶液(1M、140mL)及びTBME(210mL)を添加した。層を分離させた。水性相のpHが塩基性(pH=13)になるまで、有機層を水性NaOH(1M、4×140mL)で洗浄した。有機層を水性HCl(1M、140mL)及びH2O(2×140mL)で洗浄した。
【0091】
EtOH(240mL)、NaHCO3(1.3当量)、及び硫黄(1.0原子当量)を添加した。180分間加熱還流させた後、反応混合物を210mLまで濃縮し、TBME(3×140mL)で共蒸発させた。室温まで冷却した後、懸濁液をろ過し、固体をTBME(70mL)で洗浄した。合わせたろ液を210mLまで濃縮し、ジオキサン(1.1当量)中のHClを室温で滴下して添加した。シードを添加した後、析出が観察された。ヘプタン(350mL)を室温で滴下して添加した。14時間撹拌した後、懸濁液をろ過した。ヘプタン(3×70mL)で洗浄し乾燥させた後、化合物2を固体として回収した。m=83.2g、収率71%、純度93.7% a/a。
【0092】
1c)エチル4-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-5-クロロ-2-[(2-フェニルアセチル)アミノ]チオフェン-3-カルボキシレート(3)の合成
【0093】
【0094】
化合物2(17.69g、1当量)をジクロロメタン(140mL)中に溶解させた。得られた溶液を氷/水で冷却した。撹拌下で、N-クロロスクシンイミド(1.05当量)を添加した。混合物は数分かけて暗色になった。1時間後、フェニルアセチルクロリド(1.25当量)を添加した。
【0095】
0℃で1時間及び室温で2時間後、混合物を約35mLまで蒸発させ、EtOH(2×70mL)を添加し、再び蒸発させた。混合物をEtOH(35mL)で希釈し、氷/水で冷却した。生成物が沈殿した。固体をろ過し、冷却したEtOH(3×18mL)で洗浄した。
【0096】
化合物3を固体として得た。m=20.99g、収率94.2%、純度99.3% a/a。
【0097】
1d)3-(5-ベンジルオキシテトラリン-6-イル)-2-クロロ-4-ヒドロキシ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(4)の合成
【0098】
【0099】
化合物3(19.88g、1当量)をメチルテトラヒドロフラン(120mL)中に可溶化させ、反応混合物を-16℃~-10℃(NaCl/氷)の間の温度まで冷却した。カリウムtert-ブトキシド(5当量)を4回に分けて添加した。次いで、反応混合物を室温まで温め、室温で65分間撹拌した。T=0~5℃(水/氷)で2NのHCl(5当量)の滴下を行い、得られた混合物を強く撹拌した。有機相をNaCl(aq)(11%、1×50mL)及び水(2×50mL)で洗浄した。有機相を約50%の溶液まで濃縮した。メチルテトラヒドロフラン(80mL)を添加し、得られた溶液を約50%の溶液まで濃縮した。TBME(100mL)を添加し、得られた溶液を約50%の溶液まで濃縮した(この工程を3回繰り返した)。次いで、TBME(25mL)、化合物4のシード、及びn-ヘプタン(20mL)を添加し、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。混合物を約50mLまで濃縮し、ろ過し、母液ですすぎ、n-ヘプタン(2×40mL)で洗浄し、乾燥させた。化合物4を粒状固体として得た。収率88%、純度99.5% a/a。
【0100】
1e)2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(I)の合成
【0101】
【0102】
化合物4(15g、1当量)を75mLのジクロロメタンに溶解させ、T=-10℃/-15℃まで冷却した(氷/NaClを用いて)。BCl3(1.5当量、ジクロロメタン中の1mol/L溶液)を滴下して添加し、得られた混合物を室温で15時間撹拌した。得られた混合物を氷/水で冷却し、水(75mL)を添加した。得られた混合物を強く撹拌し、有機相を水/MeOH(9:1v/v、5×45mL)で抽出した。有機相を濃縮し、トルエン(3×90mL)により溶媒交換を行い、90mLのトルエンの最終体積に到達するようにトルエンで希釈した。得られた混合物を加熱還流し、15mLのメタノールを添加した。少量の粒子を含む褐色がかった溶液が得られた。シードをT=40℃で添加し、T=52℃まで温め、室温まで冷却した。得られた混合物を一晩撹拌し、次いで、氷/NaCl(T=-10℃/-15℃)で100分間冷却した。沈殿した生成物をろ過し、トルエン/ヘプタン1:2v/v(15mL)及びヘプタン(15mL)で洗浄し、乾燥させた。化合物(I)の結晶を得た。収率87%、純度99.0% a/a。
【0103】
1f)2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン(Ia)のカリウム塩一水和物の合成
化合物(I)を水/イソプロパノール混合物(1/1、5部の各溶媒)中に懸濁させ、次いで0.50~0.55当量の炭酸カリウムを添加した。炭酸カリウムの添加終了時点でpHは約12であった(pH試験紙)。50℃で3時間撹拌した後、懸濁液は濃くなり、pHは約8であった(pH試験紙)。溶液が得られるまで温度を80℃に上昇させた(10~15分間)。必要に応じて、プロセスのこの時点で清澄化を行うことができる。7部の水を添加し、次いで反応混合物を40℃まで冷却した(濁った溶液が観察された)。7部の溶媒が反応器中に残るまで、溶媒を減圧下(180mbar~40mbar)、40℃で蒸留した。ここで、カリウム塩一水和物の結晶化が生じる可能性がある。4.2部の水を添加し、混合物に化合物(I)のシード(1~2%のシード)を添加した。次いで、懸濁液を7時間で40℃から5℃まで冷却し(5℃/時間)、5℃で数時間維持した。懸濁液をろ過した。ケーキを1.42部の水で2回洗浄した。収集した固体を真空下、40℃で乾燥させて、必要とされる化学純度(すなわち98%+)において化合物(Ia)を収率80%以上で得た。
【0104】
(実施例2)
PXL770の特性決定
a)化合物(Ia)の粉末X線回折(XRPD)データにより、この化合物が結晶性物質で構成されていることがわかった。化合物(Ia)のXRPDの説明をTable 1(表2)に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
b)TG/DTA分析では30~100℃で1.1%の初期重量減少が示され、続いて117~160℃で結合水の減少に起因する3%のより大きい重量減少が示された。2番目の重量減少は大きな吸熱を伴い、合わせて4%の重量減少は一水和物の重量減少理論値(3.75%w/w)に近い。この化合物は240℃を超えたところで分解した。
【0108】
(実施例3)
インビトロ実験
方法:
plMDCK細胞は、「アールズバランス塩溶液」、2mM L-グルタミン、10%熱ショック不活性化FCS、50IU/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含有する改変MEM-培地で37℃、21% O2及び5% CO
2で培養した。嚢胞形成のために、plMDCK細胞をトリプシン処理し、I型コラーゲン懸濁液に溶解した後、24ウェルプレートに移した。各条件及び各実験につき4ウェルを使用した。次に、10μMフォルスコリン(対照;Ctrl)又は10μMフォルスコリン+メトホルミン、又は10μMフォルスコリン+PXL770を所定の濃度で含有する細胞培養液を添加した。実験は5日間行った。その後、Zeiss Axiocam 105カラーカメラを備えたZeiss Primo Vert顕微鏡(いずれもZeiss Microscopy GmbH社、イェーナ、ドイツ)を使用して、各ウェルの4つの異なる領域(0、3、6、9時)で写真を撮影した。次いで、盲検下でImageJ(V.1.48)を用いて嚢胞の直径を測定した。嚢胞の形状を球形と仮定し、4/3π
3の式を使用して体積を算出した。各条件及び実験の全嚢胞の平均を算出した。対照の嚢胞の体積を100%とした。結果を
図1に示す。
【0109】
嚢胞の写真も撮影し、
図2に示す(スケールバー:100μm)。
【0110】
結果:
図1及び
図2に示すように、PXL770はメトホルミンよりも低用量で、嚢胞の増殖を有意に抑制する。
【0111】
(実施例4)
比較実験
本実施例では、種々のチエノピリドン化合物、すなわち、以下の化合物をインビトロ実験で比較した。
PXL770:カリウム2-クロロ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-6-オキソ-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-4-オレート、
PXL700:2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-(3-ピリジル)-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン、
PXL702:2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン、
PXL695:2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン、
PXL037:
【0112】
【0113】
これらの化合物の効果を調べるために、3D培養マトリックスに埋め込まれた多発性嚢胞腎(PKD)患者由来の初代細胞(huPKDモデルと呼ぶ)を用いたインビトロ3D嚢胞膨潤アッセイを使用した。嚢胞の膨潤は、ハイコンテンツな顕微鏡で可視化し、定量化することができる。
【0114】
方法
huPKD05細胞を用いて、3D huPKD嚢胞膨潤アッセイを行った。
【0115】
3D培養及び化合物曝露。huPKD05細胞(PKD1変異:c.5622G>A p.Trpl874*)をPrimCyst-Gel(OcellO BV社)と混合した。CyBio Felix 96/250液体ディスペンサーロボット(Analyik Jena AG社)を使用して、15μLの細胞-ゲルミックスを、384-ウェルプレート(GreinerμClear、Greiner Bio-One B.V.社)にピペットで移した。ゲル-細胞ミックスを、ウェルあたり450嚢胞の最終細胞密度で播種した。37℃で30分間のゲル重合を行った後、33μLの培地(血清を含まない)を各ウェルに加えた。細胞を、ゲル中で24時間培養した後、細胞を、嚢胞の膨張を刺激するデスモプレシン(ddAVP)(Tocris)と以下の分子PXL770、PXL037、PXL700、PXL695、PXL702と48時間同時曝露した。
【0116】
【0117】
試料の処理:48時間後、培養物を4%ホルムアルデヒド(Sigma Aldrich社)で固定し、同時に0.2% Triton-X100(Sigma Aldrich社)で透過処理し、1×PBS(Sigma Aldrich社)中の0.25μMローダミン-ファロイジン(Sigma Aldrich社)及び0.1% Hoechst 33258(Sigma Aldrich社)で2日間、光から保護しながら4℃にて染色をした。固定化及び染色の後、プレートを1×PBSで洗浄し、プレートをGreiner SilverSeal(Greiner Bio-One B.V.社)で密封し、画像処理の前に4℃で保存した。
【0118】
画像処理及び画像解析:画像処理は、Molecular Devices ImageXpress Micro XLS (Molecular Devices社)を使用し、4×NIKON対物レンズで行った。各ウェルについて、Z方向に両チャンネルで約35枚の画像を作成し、各画像でZ面全体を撮影した。画像解析は、Ominer(商標)ソフトウェア(OcellO BV社)を用いて行った。嚢胞は、Hoechstで染色した核とRhodamine-phalloidinで染色した細胞性f-アクチンの検出により分けた。嚢胞の面積は、全ての焦点が合っている平面における各オブジェクトのピクセル(px)単位の面積を計算することによって決定した。これはウェルごとに平均化され、溶媒対照(0%)と刺激剤単独(100%)の間で正規化された。統計にはGraphPad Prismを使用し、グラフはGraphPad Prism 6(GraphPad Software社、ラホーヤ、カリフォルニア州)で作成した
【0119】
【0120】
対照条件:デスモプレシン(ddAVP)刺激及び非刺激(溶媒対照、DMSO)の間に有意なアッセイウィンドウが確立された(
図1)(ddAVP単独対DMSO、p<0.0001)。
【0121】
PXL770、PXL695、PXL700、PXL702及びPXL037:
PXL770 PXL695、PXL700、PXL702及びPXL037について、4種の濃度:すなわち、ddAVP(2.5μM)の存在下、10、5、2.5、0.5μMで試験した。
【0122】
PXL770は用量依存的に嚢胞面積を減少させ、この効果はddAVP単独と比較して5及び10μMで有意であり、5及び10μMのPXL770のいずれにおいても、50%減少した(ddAVP単独に対してそれぞれp<0.01及びp<0.05)。
図3には示していないが、PXL770は25μMで嚢胞の面積を75%減少させた(ddAVP単独に対してp<0.0001)ことに注目すべきである。
PXL695及びPXL702は用量依存的に嚢胞の面積を減少させた。
一方、PXL037及びPXL700はddAVP単独と比較して、有意な効果を示さなかった。
【0123】
結論
PXL770、PXL037、PXL770、PXL695及びPXL702をhuPKD嚢腫膨張アッセイにおいて評価して、デスモプレシン(ddAVP)による嚢腫膨張誘発を抑制する効力を検討した。
PXL770は用量依存的に嚢胞の膨潤を減少させた。PXL770は、5μ及び10μMで、誘発された膨張を約50%抑制した。
PXL695及びPXL702は、同様の効力と有効性を達成した。
PXL037及びPXL700は10μM以下で嚢胞の面積に影響を与えなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子又はハロゲン原子を表し、
R2は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数の基で置換されているか、又は置換されていない、インダニル又はテトラリニル基を表し、
R3は、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、モノ又はジアルキルアミノカルボニル基、カルボキサミド、シアノ、アルキルスルホニル、及びトリフルオロメチル基から選択される1個又は複数の原子又は基で置換されているか、又は置換されていない、アリール基を表す)
のチエノピリドン誘導体、又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和
物を含む
、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の処置における使用のための、医薬組成物。
【請求項2】
前記
医薬組成物が、ヒト患者に
前記チエノピリドン誘導体の0.5mg~3000m
gの1日投与量で1日1回又は2回投与される
、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項3】
前記チエノピリドン誘導体の1日投与量が20mg~1000mgである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前
記医薬組成物が、嚢胞の増殖を防止若しくは制限し、又は嚢胞体積を減少させるのに有効である
、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項5】
式(I)の前記チエノピリドン誘導体が以下の条件の少なくとも1つ
を満たすものである、請求項1に記載の
医薬組成物。
・ R1がハロゲン原
子を表す、
・ R2が置換されていないか、又は少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1若しくは2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形
態である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形
態である。
【請求項6】
式(I)の前記チエノピリドン誘導体が以下の条件の少なくとも1つ
を満たすものである、請求項
5に記載の
医薬組成物。
・ R1がハロゲン原
子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がテトラリニル基である、
・ R3が、置換されていないフェニル基を表す、
・ 式(I)の化合物が塩の形
態である、
・ 式(I)の化合物が、溶媒和物の形
態である。
【請求項7】
前記チエノピリドン誘導体が2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記チエノピリドン誘導体が式(Ia):
【化2】
を有する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-(5-ヒドロキシテトラリン-6-イル)-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンの一水和物カリウム塩である
、請求項
7に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
式(I)の前記チエノピリドン誘導体が以下の条件の少なくとも1つ
を満たすものである、請求項1に記載の
医薬組成物。
・ R1がハロゲン原
子を表す、
・ R2が、少なくとも1個のヒドロキシ基を含む1又は2個の置換基で置換されている、
・ R2がインダニル基である、
・ R3が、置換されていないか、又は1若しくは2個の置換基で置換されているフェニル基を表す。
【請求項10】
前記チエノピリドン誘導体が式(Ib):
【化3】
を有する2-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンである
、請求項
9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記チエノピリドン誘導体が式(Ic):
【化4】
を有する2-クロロ-4-ヒドロキシ-3-インダン-5-イル-5-フェニル-7H-チエノ[2,3-b]ピリジン-6-オンである
、請求項
9に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記チエノピリドン誘導体が式(I):
(式中、
- R1がClであり、
- R2がヒドロキシ基により任意選択で置換されているインダニル又はテトラリニル基であり、
- R3がハロゲンにより任意選択で置換されているフェニル基である)
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】