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  • 特表-光フィルタ及びその方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】光フィルタ及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529442
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2019120583
(87)【国際公開番号】W WO2021102628
(87)【国際公開日】2021-06-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522196515
【氏名又は名称】アイピーシー ワークス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPC WORKS LIMITED
【住所又は居所原語表記】17B Grandion Plaza, 932 Cheung Sha Wan Road, Lai Chi Kok, Kowloon, Hong Kong (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ, ワイ ヤン ヴィアン
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PA02
4C082PA03
4C082PC04
4C082PC10
4C082PE01
4C082PE10
4C082PG05
4C082PJ01
(57)【要約】
光フィルタ(100)は、バインダマトリックス(110)の少なくとも1つの層と、複数の透明結晶(120)とを含む。複数の透明結晶(120)は、バインダマトリックス(110)の少なくとも1つの層において不規則に且つ側方に分散され、それにより、光フィルタ(100)を通る光は、異なる波長に分離され、且つ/又は異なる向きに偏波される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光フィルタであって、
a)バインダマトリックスの少なくとも1つの層と、
b)複数の透明結晶と
を含み、
前記複数の透明結晶は、前記バインダマトリックスの少なくとも1つの層において不規則に且つ側方に分散され、
それにより、前記光フィルタを通る光は、異なる波長に分離され、且つ/又は異なる向きに偏波される、光フィルタ。
【請求項2】
前記光フィルタを通る前記光は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記透明結晶は、種々の形状及びサイズを有する、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記光フィルタの厚さは、0.01mm~20mmの範囲である、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記光フィルタの厚さは、0.1mm~2mmの範囲である、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記透明結晶は、0.01mm~5mmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項7】
前記透明結晶は、ガラス、結晶又はプラスチックで作られる、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項8】
前記透明結晶は、二酸化ケイ素で作られる、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項9】
前記バインダマトリックスは、透明ポリマーで作られる、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項10】
透明ポリマーは、ポリカーボネート、PMMA、ポリエチレンテレフタレート、PETG、PVC、液体シリコーンゴム、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、MABS、イオノマー樹脂、ポリプロピレン、FEP、SMMA、SAN、エポキシ又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の光フィルタ。
【請求項11】
照明装置であって、
a)少なくとも1つの方向に照明するように適合された光源と、
b)前記光源の前記少なくとも1つの照明方向に配置される少なくとも1つの光フィルタであって、バインダマトリックスの少なくとも1つの層と、複数の透明結晶とを含む、少なくとも1つの光フィルタと
を含み、
前記複数の透明結晶は、前記少なくとも1つのバインダマトリックスにおいて不規則に且つ側方に分散され、
それにより、前記光フィルタを通る光は、異なる波長に分離され、且つ/又は異なる向きに偏波される、照明装置。
【請求項12】
前記光フィルタを通る前記光は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折される、請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記透明結晶は、種々の形状及びサイズを有する、請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
前記光フィルタの厚さは、0.01mm~20mmの範囲である、請求項11に記載の照明装置。
【請求項15】
前記透明結晶は、0.01mm~5mmの粒子サイズを有する、請求項11に記載の照明装置。
【請求項16】
前記バインダマトリックスは、透明ポリマーで作られる、請求項11に記載の照明装置。
【請求項17】
急性痛又は慢性痛の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、
a.照明装置を使用して、前記対象に向かって光を照らすことと、
b.光フィルタを使用して、前記光を異なる波長に分離し、且つ/又は前記光を異なる向きに偏波することと、
c.前記異なる波長及び/又は向きの光を前記対象に照らすことと
を含む方法。
【請求項18】
血液循環の改善を、それを必要としている対象において行う方法であって、
a.照明装置を使用して、前記対象に向かって光を照らすことと、
b.光フィルタを使用して、前記光を異なる波長に分離し、且つ/又は前記光を異なる向きに偏波することと、
c.前記異なる波長及び/又は向きの光を前記対象に照らすことと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波光フィルタ、偏波光及びフィルタを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患を治し、傷を治すための電磁放射の可視スペクトル、即ち有色光の使用は、光線療法として知られている。可視光は、多くの電磁周波数に分解することができ、周波数は、異なる色、即ち赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫及びそれらの全ての振動に関連する。各色は、別個の波長、周波数及びエネルギー量を特徴とする。光線療法の教示によれば、それぞれ固有の波長及び振動を有するこれらの可視色は、障害のある臓器又は生命システムに選択的に適用される場合、身体によって要求される必要な治癒エネルギーを提供する。異なる光の波長は、皮膚の異なる深さまで浸透し、人体における生化学過程及びホルモン過程の主要なアクチベータである電気インパルス及びエネルギー場を生成する。
【0003】
様々なタイプの光線療法の中でも、偏波光線療法(PLT)は、偏波光放射を利用して疾患又は傷を治療する。光が偏波する場合、個々の光粒子を振動させ、且つ同じ方向に移動させ、体内のより深部への浸透を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の背景に鑑みて、本発明の目的は、光線療法の改良された装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本開示は、よりよい生体刺激効果を有する光線療法の装置及び方法を教示する。
【0006】
本発明の例示的な一実施形態は、バインダマトリックスの少なくとも1つの層と、複数の透明結晶とを含む光フィルタである。複数の透明結晶は、バインダマトリックスの少なくとも1つの層において不規則に且つ側方に分散され、それにより、光フィルタを通る光は、異なる波長に分離され、且つ/又は異なる向きに偏波される。
【0007】
別の例示的な実施形態は、少なくとも1つの方向に照明するように適合された光源と、光源の少なくとも1つの照明方向に配置される少なくとも1つの光フィルタとを含む照明装置である。光フィルタは、バインダマトリックスの少なくとも1つの層と、複数の透明結晶とを含む。複数の透明結晶は、少なくとも1つのバインダマトリックスにおいて不規則に且つ側方に分散され、それにより、光フィルタを通る光は、異なる波長に分離され、且つ/又は異なる向きに偏波される。
【0008】
別の例示的な実施形態は、急性痛又は慢性痛の治療を、それを必要としている対象において行う方法であり、照明装置を使用して、対象に向かって光を照らすことと、光フィルタを使用して、光を異なる波長に分離し、且つ/又は光を異なる向きに偏波することと、異なる波長及び/又は向きの光を対象に照らすこととを含む。
【0009】
別の例示的な実施形態は、血液循環の改善を、それを必要として対象において行う方法であり、照明装置を使用して、対象に向かって光を照らすことと、光フィルタを使用して、光を異なる波長に分離し、且つ/又は光を異なる向きに偏波することと、異なる波長及び/又は向きの光を対象に照らすこととを含む。
【0010】
他の例示的な実施形態も本明細書で考察される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、例示的な実施形態による光フィルタの断面図を示す図である。
図1B図1Bは、例示的な実施形態による光フィルタの断面図を示す図である。
図2A図2Aは、例示的な実施形態による光フィルタを通る光線の束の光路の概略図を示す図である。
図2B図2Bは、例示的な実施形態による光フィルタを通る光線の束の光路の概略図を示す図である。
図3図3は、例示的な実施形態による光装置の断面図を示す図である。
図4図4は、例示的な実施形態による、対象の急性痛又は慢性痛を治療する方法の流れ図を示す図である。
図5図5は、血液微小循環顕微鏡下で観測された対象の爪郭の毛細血管の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む」は、続く要素を含むことを意味するが、他の要素を除外しない。
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「種々の形状」は、限定されないが、球体、立方体、直方体、円柱体、円錐体、三角柱、五角柱、六角柱、方錐、四面体、八面体、粉体及び他の多角形又は不規則な形状を含む。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「不規則性」は、規則に従った構成に従わず、ランダムな性質であり得る様式又はパターンを意味する。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「側方に」は、側方に向かう方向を意味する。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「透明」は、少なくとも部分的に光学的にクリアであり、その物質が特定量の光線を透過させる性質を有することを意味する。透過可能な光線の量は、ユーザの用途に従って決定することができる。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「結晶」は、限定されないが、ガラス、結晶及びプラスチックを含む固体材料を指す。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「光」は、無線波、マイクロ波、赤外線波、可視光、紫外線放射、X線及びガンマ線を含む全ての形態の電磁放射を指す。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「高度の散乱」は、0.001cd以上の散乱光の平均強度を指す。
【0020】
例示的な実施形態は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折され、光線療法に向けて異なる波長に分離され、且つ異なる向きに偏波される光をもたらす解決策を提供する。
【0021】
例示的な実施形態による光フィルタは、光源から発せられた光を異なる波長及び異なる向きに変換して、刺激を与えて治癒を加速させ、回復を促進することにより、既存の治療効果の改善を可能にするために使用される。
【0022】
以下の説明では、同じ番号が異なる図の同じ構成要素を示すために採用される。
【0023】
ここで、図1を参照すると、バインダマトリックス110の層と、複数の透明結晶120とを含む光フィルタ100が示されている。多くの透明結晶120は、バインダマトリックス110においてランダム及び不規則に且つ側方に分散される。バインダマトリックス110の層は、透明結晶120を一緒に保持して、バインダマトリックス110内の複数の透明結晶120の相対位置を維持する。幾つかの例示的な実施形態では、透明結晶120は、バインダマトリックス110の層内でランダムに分布する。
【0024】
幾つかの例示的な実施形態では,光フィルタ100は、透明結晶120が内部に分散されたバインダマトリックス110の2つ以上の層を含み得る。図1Bを参照すると、例えば、光フィルタ100は、一緒に付着した3層のバインダマトリックス110、即ち100A、100B及び100Cを含む。幾つかの他の例示的な実施形態では、バインダマトリックス110の層の幾つかは、内部に分散された結晶120を含まなくてよい。更に別の例示的な実施形態では、光フィルタ100は、バインダマトリックス110の少なくとも1つの層に付着したガラスの少なくとも1つの層を含み得る。
【0025】
幾つかの例示的な実施形態では、バインダマトリックス110は、高い透光及び光学的明澄度を可能にする高度の透明度を有する透明ポリマーで作られる。更なる例示的な実施形態では、透明ポリマーは、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート-1,4-シクロヘキサン2メチルエステル(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、液体シリコーンゴム、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、メチルメタクリレートアクロニトリフブタジエンスチレン(MABS)、イオノマー樹脂、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、スチレンメタクリル酸メチル(SMMA)、アクリロニトリルスチレン(SAN)、エポキシ又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0026】
幾つかの例示的な実施形態では、透明結晶120は、ガラス、結晶又はプラスチックで作られて、高度の透光を可能にする。更なる例示的な実施形態では、透明結晶120は、二酸化ケイ素で作られる。幾つかの例示的な実施形態では、透明結晶120は、図1に示すような種々の形状を有し得る。種々の形状は、限定されないが、球体、立方体、直方体、円柱体、円錐体、三角柱、五角柱、六角柱、方錐、四面体、八面体、粉体及び他の多角形又は不規則な形状又はそれらの任意の組合せを含む。幾つかの例示的な実施形態では、透明結晶120は、種々のサイズを有し得る。更なる例示的な実施形態では、透明結晶120は、0.01mm~5mmの粒子サイズを有する。そのような細かい粒子サイズでは、透明結晶は、砂様又は粉体の形態であり得る。透明結晶の粒子サイズが小さいほど、光の散乱が大きくなる。
【0027】
例示的な実施形態では、光フィルタ100は、0.01mm~20mmの厚さを有する。更なる例示的な実施形態では、光フィルタ100は、0.1mm~2mmの厚さを有する。光フィルタ100の厚さは、光フィルタを透過する光の分散角に影響する。光フィルタが厚いほど、光の分散角が小さくなり、より合焦された光線になる。フィルタ厚の選択は、ユーザの要件に従って選択することができる。
【0028】
ここで、図2Aを参照すると、光フィルタ100を通る光線の束の光路が示されている。光源は、例えば、蛍光、発光ダイオード(LED)光、白熱光、レーザ光、UV光、加熱による赤外線放射又は赤外線LED光であり得る。光フィルタ100は、光源210と物体220との間に置かれる。光フィルタ100は、光源210に面する第1の表面130と、物体220に面する、第1の表面とは逆の第2の表面140とを含む。光源210によって生成された光線は、光フィルタ100の第1の表面130に入り、光フィルタ100を透過し、光フィルタ100の第2の表面から出て物体220に達する。図2Aに示すこの例示的な実施形態では、光源210から放射された入射光線230の束は、光フィルタ100の第1の表面130に入る。光線230がバインダマトリックス110を通る際、光線の幾らかは、バインダマトリックス110においてランダムに分散された複数の透明結晶120を透過する。透明結晶120は、種々の形状及びサイズを有し得る。プリズムとしての形状の透明結晶120を透過すると、光線は、プリズムを異なる角度で出る、異なる波長を有する異なる色に分離される。光線は、光フィルタ100の第2の表面から出る際に更に屈折し、光が物体220に達する際、異なる角度で分離された異なる波長を有する屈折光線250を生じさせる。加えて、光線が複数の透明結晶120を透過する際、光の屈折及び/又は反射によって偏波も生じる。光ビームがある材料から別の材料に渡る際、例えば空気からバインダマトリックスに、バインダマトリックスから透明結晶に且つその逆に渡る際、屈折が生じる。ビーム路は、2つの材料の表面においてその向きを変え、屈折ビームは、いくらかの程度の偏波を得る。入射光線は、種々の形状及びサイズの透明結晶120を透過し、ときに更に複数の透明結晶を透過してから、光フィルタ100から出て伝達されるため、光フィルタから出る屈折及び/又は反射した光線240は、高度に散乱され、且つ異なる向きで偏波される。
【0029】
図2Bは、光フィルタのバインダマトリックス110内においてランダムに分散された複数の透明結晶120A、120B、120C、120D及び120Eを透過する光線260(点線として示される)の一例を示す。透明結晶120Aを透過すると、光線260は、幾つかの光線、例えば異なる角度で透明結晶120Aから出てくる、異なる波長を有する光線262及び264(点線として示される)に分離される。光線262は、透明結晶120Bを透過し、透明結晶120Bから出てくるとき、その光路が更に屈折する。光線264は、透明結晶120Eの表面によって反射され、反射された光線は、透明結晶120Cに入る。透明結晶120Cに入ると、光線264は、透明結晶から出てくる前に透明結晶120C内で複数の内部反射を受け得る。図2Bに示す幾つかの状況では、光線264は、透明結晶120Dを透過するとき、別の複数の内部反射を更に受け得る。加えて、光線262及び264が複数の透明結晶を透過するとき、光の屈折及び/又は反射によって偏波も生じる。したがって、光フィルタから現れた光線は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折され、異なる波長に分離され、且つ異なる向きに偏波される。
【0030】
ここで、図3を参照すると、照明装置300は、ある方向に照明するように適合された光源310と、光源310の照明方向に配置される光フィルタ100とを含む。光フィルタ100は、バインダマトリックス110の層と、バインダマトリックス110の層において不規則に且つ側方に分散された複数の透明結晶120とを含む。示されるこの例示的な実施形態では、照明装置300は、筐体320と、一端部における開口部330とを更に含む。光フィルタ100は、開口部330の近傍で筐体320に設置され、筐体内に閉じられた内部空間340を画定する。光源310は、開口部330に対向する筐体320の先端部に取り付けられる。光源310は、筐体320の長さに平行に延びる軸において照明するように光学的に位置合わせされ、光フィルタ110は、軸に沿って位置決めされる。光源310が光線を放射すると、光フィルタ110を透過した光線は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折され、異なる波長に分離され、且つ異なる向きに偏波される。
【0031】
幾つかの例示的な実施形態では、光源310は、蛍光、LED光、白熱光、レーザ光、UV光、加熱による赤外線放射又は赤外線LED光であり得る。幾つかの例示的な実施形態では、照明装置は、光源310をオン及びオフにするスイッチを更に含む。幾つかの実施形態では、光源は、種々の方向から照明し得、フィルタは、光源の1つ又は複数の照明方向に配置され得る。
【0032】
図4は、急性痛又は慢性痛の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、照明装置を使用して、対象に向かって光を照らすこと(ステップ410)と、光フィルタを使用して、光を異なる波長に分離し、且つ/又は光を異なる向きに偏波すること(ステップ420)と、異なる波長及び/又は異なる向きの光を対象に照らすこと(ステップ430)とを含む方法を示す。例示的な実施形態では、照明装置は、光源を含む。光が光源から生成され、対象を照らす。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲に記載のように、「急性痛又は慢性痛」は、人間又は動物等の対象の急性(即座の)痛又は慢性(進行中の)痛を指す。急性痛又は慢性痛は、対象の体の1つ又は複数の部位で生じ得る。体の部位の例には、限定されないが、頭、首、皮膚、四肢、背中、間接及び臓器がある。例示的な実施形態では、急性痛又は慢性痛は、以下の1つ又は複数を含む:歯痛、痛風、リウマチ痛、椎間板ヘルニアの起因した痛み、腰痛、関節痛、膝関節痛、胸痛、座骨神経痛、湿疹に起因した痛み、睡眠中の四肢の麻痺、手首痛、癌関連の背中の痛み、首の痛み、痔の痛み、三叉神経痛、頭痛、阻血性壊死痛、頚腕痛、足の痛み、腕の痛み、骨盤痛、腰部炎症、足底筋膜炎、腓腹筋痛及び麻痺、胃痛、膝関節痛、癌治療の後遺症に起因した痛み又は上記症状の組み合わせ。
【0034】
例示的な実施形態では、光フィルタは、光源と対象との間に位置決めされる。更なる例示的な実施形態では、光フィルタは、照明装置内部に収容される。光フィルタを透過した光は、複数の内部反射及び複数の偏波を含めて、高度に散乱及び/又は屈折され、異なる波長に分離され、且つ異なる向きに偏波される。
【0035】
例示的な実施形態では、光は、光フィルタから現れ、異なる波長に分離され、異なる向きに偏波された光を含む。濾波された光は、対象が異なる波長及び/又は異なる向きの光の光線療法を受けるように対象を照らす。
【0036】
本開示の教示によれば、異なる向きから体の部位に当たる光波は、異なる生物学的効果をもたらすことが確認されている。
【0037】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態及び態様を実証して更に示すために提供され、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【実施例
【0038】
実施例1:対象の急性痛又は慢性痛の痛み軽減のためのLED治療
上述したように、光フィルタと共にLED光源を使用して、急性痛又は慢性痛を有する対象の痛み軽減へのLED治療の効果を評価した。
【0039】
急性痛又は慢性痛を有する対象を、対象が濾波LED治療を受けるように光フィルタがLED光源の照明方向に設置されたLED光源下に配置した。各治療セッションについて50分間、合計で8日間、濾波光の照射を実行した。
【0040】
異なるタイプの急性痛又は慢性痛を有する対象の痛み軽減への濾波LED治療の有効性を以下の表1に示す。30人の対象のうち、対象の97%は、合計で8日以下の濾波LED治療を受けた後、痛みの低下を報告した。幾人かの対象では、濾波LED治療を受ける前又は受けた後の痛みの程度(1~10の尺度)を記録し、それを表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例2:対象の血液循環を改善するためのLED治療
別の例示的な実施形態は、血液循環の改善を、それを必要としている対象において行う方法を含む。方法は、照明装置を使用して、対象に向かって光を照らすことと、光フィルタを使用して、光を異なる波長に分離し、且つ/又は光を異なる向きに偏波することと、異なる波長及び/又は向きの光を対象に照らすこととを含む。例示的な実施形態では、照明装置は、光源を含む。光は、光源から生成され、対象を照らす。一実施形態では、光源は、蛍光、LED光、白熱光、レーザ光、UV光、加熱による赤外線放射又は赤外線LED光であり得る。
【0043】
上述した光フィルタと共にLED光源を使用する、対象の血液循環改善へのLED治療の効果を、血液微小循環顕微鏡(DMX980 DigiLens、倍率320×)を使用して血液微小循環テストによって評価した。対象が濾波LED治療を受けるように光フィルタがLED光源の照明方向に設置されたLED光源下に対象を配置した。各対象への濾波光の照射を2秒~20秒の持続時間で実行した。対象の指先を血液微小循環顕微鏡下に配置することにより、照射前及び照射後の対象の爪郭の血管の血液循環を調べた。
【0044】
図5は、倍率320×の血液微小循環顕微鏡下で観測された対象の爪郭の毛細血管の画像を示す。濾波光で対象を照射した後、2~3倍の対象の爪郭の毛細血管での血液循環の増大が記録された。
【0045】
本発明の例示的な実施形態についてこうして十分に説明した。説明は、特定の実施形態を参照したが、本発明は、これらの具体的な詳細の変形形態を用いて実施され得ることが当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】