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特表2023-510085架橋コアを有するシリコーン粒子及びその製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】架橋コアを有するシリコーン粒子及びその製造
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20230306BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230306BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230306BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230306BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
C08K3/36
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022533450
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2019085649
(87)【国際公開番号】W WO2021121561
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール,セバスティアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP042
4J002CP121
4J002DA036
4J002DE097
4J002DJ016
4J002DJ018
4J002FB098
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD060
4J002FD090
4J002FD147
4J002FD157
4J002FD208
4J002GB00
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は、架橋シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含むコアKと、シリカSのシェルHとから構成される粒子P、及び粒子Pの製造方法であって、第1の工程において、シリカS及び水を含む分散液Aを、架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む混合物Bと混合して、水を含む連続相と、架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む不連続相とを与え、第2のステップにおいて、不連続相を架橋して粒子Pを与える、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含むコアKとシリカSのシェルHとから構成される粒子P。
【請求項2】
前記シリコーンエラストマー組成物Xが付加架橋であり、
(A) 脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を含む、少なくとも1種の直鎖状化合物、
(B) Si結合した水素原子を有する、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、
又は(A)及び(B)の代わりに、
(C) 脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合した水素原子を有するSiC結合基を含む、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、及び
(D) 少なくとも1種のヒドロシリル化触媒
を含む、請求項1に記載の粒子P。
【請求項3】
前記補強充填剤Fが、DIN66131のBET比表面積が少なくとも50m/gの焼成疎水性シリカ又は沈降疎水性シリカから、並びにカーボンブラック及び活性炭及びシリコーン樹脂から選択される、請求項1又は2に記載の粒子P。
【請求項4】
表面処理のために前記補強充填剤Fが、40を超えるメタノール価を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子P。
【請求項5】
前記コアKが、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xの100重量部当たり、5~200重量部の補強充填剤Fを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のP粒子。
【請求項6】
前記シリカSが、少なくとも50m/gのBET比表面積を有する焼成疎水性シリカ又は沈降疎水性シリカから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子P。
【請求項7】
前記補強充填剤FがシリカSよりも疎水性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子P。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子Pの製造方法であって、
第1の工程において、シリカS及び水を含む分散液Aを、架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む混合物Bと混合して、水を含む連続相と架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む不連続相とを得て、
第2の工程において、該不連続相を架橋して粒子Pを得る、方法。
【請求項9】
前記連続相が少なくとも80wt%の水を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の工程において、混合物B及び分散液Aの全体積を最初に導入し、最初に導入される体積が、必要なシリカS及び水の全量を含むようにされる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
第1の工程において、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xを架橋するために触媒が添加される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋シリコーンエラストマー組成物及び補強充填剤を含むコアから構成されるエラストマー粒子P、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2017142068A1号は、シリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子の有利な特性、特に球状特性、疎水特性に影響を及ぼす可能性、摩擦低減特性、及び目詰まりしないことについて記載する。したがって、この種のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子は化粧品に適用される。
【0003】
このような粒子には、ケアオイル又は芳香剤などの機能性物質を吸収できるという利点もある。これは、WO2007113095号に開示されている樹脂ベースの粒子よりも大きな利点である。しかし、WO2017142068号によるこれらの粒子は、まだ理想的ではない皮膚感触及び低い機械的安定性を有する。圧力及び摩擦により、このようなエラストマー粒子は容易に破壊される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/142068号
【特許文献2】国際公開第2007/113095号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、架橋シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含むコアKとシリカSのシェルHとから構成される粒子Pを提供する。
【0006】
適用条件下では、粒子Pは、コア中に補強充填剤を持たない既知の粒子に比べて、驚くほど改良された皮膚感触を有する。これは特に驚くべきことである。なぜなら、補強充填剤はシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子のコアKに含まれており、粒子Pの、直接の皮膚感触を生じる外側シェルHを修飾しないからである。
【0007】
全く予期せぬことに、本発明の粒子Pでは、粒子Pの外側シェルHが変化していないという事実にもかかわらず、コアが補強充填剤を含まない又は非補強充填剤を含む既知の粒子と比較して、機械的安定性も改善される。
【0008】
粒子Pは実質的に球形である。好ましくは、球形度SPHT3は、Retsch Technology社のCamsizer X2を用いてISO9276-6により決定可能であるように、少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも0.82である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
粒子Pは特に、使用したシリカSがポリマー粒子Pの表面に実質的に結合していることを特徴とする。使用したシリカSの分布は、本発明の包埋粒子の薄い断面のTEM顕微鏡写真から得ることができる。シリカSは、いずれの場合も架橋重合生成物の外境界から測定して、好ましくは10nm超、好ましくは20nm超、非常に好ましくは30nm超が架橋重合生成物に埋没し、架橋重合生成物から好ましくは10nm超、より好ましくは20nm超、非常に好ましくは30nm超突出しており、粒子Pの表面上で強固に結合される。これは、完成したシリコーンエラストマー粒子がシリカで後処理される市販の製品よりも大きな利点である。このような製品の場合、シリカはシリコーンエラストマーに埋没しないため、表面に強固に結合しない。
【0010】
シリコーンエラストマー組成物Xとしては、原則として、先行技術から知られている全てのシリコーンを使用することが可能である。付加架橋組成物、過酸化物による架橋組成物、縮合架橋組成物又は放射線架橋組成物を使用することができる。過酸化物による架橋成分又は付加架橋成分が好ましい。付加架橋組成物が特に好ましい。
【0011】
本発明で使用される付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xは先行技術で知られており、最も単純な場合は以下を含む。
(A) 脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を含む、少なくとも1種の直鎖状化合物、
(B) Si結合した水素原子を有する、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、
又は(A)及び(B)の代わりに、
(C) 脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合した水素原子を有するSiC結合基を含む、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、及び
(D) 少なくとも1種のヒドロシリル化触媒。
【0012】
付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xは、1成分シリコーン組成物であってもよいし、また2成分シリコーン組成物であってもよい。
【0013】
2成分シリコーンエラストマー組成物Xの場合、付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xの2成分は、任意の所望の組合せにおいて全ての構成成分を含むことができ、ただし一般に1成分が脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合した水素を有するシロキサン、及び触媒を同時に含まず、すなわち、本質的に、構成成分(A)、(B)及び(D)又は(C)及び(D)を同時に含まない。
【0014】
付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xに使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は、知られているように架橋が可能であるように選択される。したがって、例えば、化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を含み、(B)は少なくとも3つのSi結合した水素原子を含んでいるか、若しくは化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を含み、シロキサン(B)が少なくとも2つのSi結合した水素原子を含んでいるか、又は(A)及び(B)の代わりに、上記の割合で脂肪族不飽和基及びSi結合した水素原子を含むシロキサン(C)が用いられる。上記の割合の脂肪族不飽和基及びSi結合した水素原子を有する(A)及び(B)及び(C)の混合物も適切である。
【0015】
付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xは、典型的には30~99.9重量%、好ましくは35~95重量%、より好ましくは40~90重量%の(A)を含む。付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xは、典型的には0.1~60重量%、好ましくは0.5~50重量%、より好ましくは1~30重量%の(B)を含む。付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xが成分(C)を含む場合、典型的には30~95重量%、好ましくは35~90重量%、より好ましくは40~85重量%の(C)が配合物中に存在する。
【0016】
本発明で使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する、ケイ素を含まない有機化合物、及び好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0017】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例は、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基を含むポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチルヘプタ-(1,5)-ジエン、3-フェニルヘキサ-(1,5)-ジエン、3-ビニルヘキサ-(1,5)-ジエン、及び4,5-ジメチル-4,5-ジエチルオクタ-(1,7)-ジエン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジアリルマロネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0018】
付加架橋シリコーンエラストマー組成物Xは、好ましくは構成成分(A)として少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含み、この場合、例えば、尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステル-アミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシルアリーレンセグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、及びエーテル基を有するシリコーン(silicon)グラフトコポリマーなど、付加-架橋成分に現在までに使用されている全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を使用することが可能である。
【0019】
脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiC結合した基を含む有機ケイ素化合物(A)として、一般式(I)の単位から構成される直鎖状又は分枝状のオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
SiO(4-a-b)/2 (I)
式中、
は各場合で独立に、同一の又は異なる、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない有機基又は無機基であり、
は各場合で独立に、同一の又は異なる、一価の置換又は非置換の、少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiC結合した炭化水素基であり、
aは0、1、2又は3であり、
bは0、1又は2であり、
ただし、a+bの和が3以下であり、1分子当たり少なくとも2つの基Rが存在するものとする。
【0020】
基Rは、一価又は多価の基を含むことができ、その場合、例えば、二価、三価及び四価の基のような多価の基は、例えば、式(I)の2つ、3つ又は4つのシロキシ単位のような2つ以上を互いに結合する。
【0021】
の他の例は、一価の基-F、-Cl、-Br、OR、-CN、-SCN、-NCO、及びSiC結合した、置換又は非置換炭化水素基(これらは酸素原子又は基-C(O)-によって割り込まれていてもよい。)、及び式(I)に従って両端でSi結合した二価の基である。基RがSiC結合した置換炭化水素基を含む場合、好ましい置換基はハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、-OR、-NR-、-NR 、-NR-C(O)-NR 、-C(O)-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-SO-Ph及びCである。これらの基では、Rは各場合に独立に、同一の又は異なる、水素原子又は1~20個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、Phはフェニル基である。
【0022】
基Rの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基及び2,2,4-トリメチルペンチル基のようなイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基などのアルカリル基、及びベンジル基、α-及びβ-フェニルエチル基などのアラルキル基である。
【0023】
置換された基Rの例は、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基などのハロアルキル基、o-、m-及びp-クロロフェニル基、-(CH)-N(R)C(O)NR 、-(CH-C(O)NR 、-(CH-C(O)R、-(CH-C(O)OR、-(CH-C(O)NR 、-(CH)-C(O)-(CHC(O)CH、-(CH)-O-CO-R、-(CH)-NR―(CH-NR 、-(CH-O-(CHCH(OH)CHOH、-(CH(OCHCHOR、-(CH-SO-Ph及び-(CH-O-Cなどのハロアリール基であり、R及びPhは上でそれらに対して示した定義に対応し、o及びpは0~10の間の同一の又は異なる整数である。
【0024】
式(I)に従って両端でSi-結合した二価の基としてのRの例は、水素原子の置換による追加の結合がある点で基Rに対し上で記載した一価の例に由来する基である。このような基の例は、-(CH)-、-CH(CH)-、-C(CH-、CH(CH)-CH-、-C-、CH(Ph)-CH-、C(CF-、(CH-、-(CH-C-(CH-、-(CH-C-C-(CH-、-(CHO)、(CHCHO)、-(CH-O-C-SO-C-O-(CH-であり、ここでxは0又は1であり、Ph、o及びpは上で記載した定義を有する。
【0025】
基Rは、好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、1~18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した置換されていてもよい炭化水素基、より好ましくは脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、1~6個の炭素原子を有する一価のSiC結合した炭化水素基、より具体的にはメチル基又はフェニル基を含む。
【0026】
基Rは、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)を受けやすい任意の所望の基を含むことができる。
【0027】
基RがSiC結合した置換炭化水素基を含む場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基及び-ORであり、ここでRは上で記載した定義を有する。
【0028】
基Rは、好ましくは、ビニル、アリル、メタリル、1-プロペニル、5-ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、ビニルシクロヘキシルエチル、ジビニルシクロヘキシルエチル、ノルボルネニル、ビニルフェニル及びスチリル基などの2~16個の炭素原子を有するアルケニル及びアルキニル基を含み、ビニル基、アリル基及びヘキセニル基の使用が特に好ましい。
【0029】
構成成分(A)の分子量は、広い限界内、例えば、10~10g/molの間で変化し得る。したがって、例えば、構成成分(A)は、1,2-ジビニルテトラメチルジシロキサンのような比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、又は分子量が、例えば、10g/mol(nmRにより決定される数平均)の高分子ポリジメチルシロキサンであることができ、これらは鎖中又は端部にSi結合したビニル基を有する。同様に構成成分(A)を形成する分子の構造は決まっていない。特に、比較的高分子量のシロキサン、すなわち、オリゴマー又はポリマーシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状、又は樹脂状、網目状であり得る。直鎖状及び環状ポリシロキサンは、好ましくは、式R SiO1/2、R SiO1/2、RSiO1/2及びR SiO2/2の単位で構成され、ここで、R及びRは、上で示された定義を有する。分枝状及び網目状ポリシロキサンは、さらに、三官能性及び/又は四官能性単位を含み、好ましくは式RSiO3/2、RSiO3/2及びSiO4/2のものである。もちろん、構成成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を用いることも可能である。
【0030】
成分(A)として特に好ましいのは、いずれの場合も25℃で測定した、0.01~500000mm/秒、より好ましくは0.1~100000mm/秒、特に好ましくは1~10000mm/秒のDIN 53019動粘性率を有するビニル官能性で実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンの使用である。
【0031】
有機ケイ素化合物(B)としては、これまでに付加架橋性組成物にも使用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することが可能である。
【0032】
Si結合した水素原子を含むオルガノポリシロキサン(B)として、一般式(III)の単位からなる直鎖状、環状又は分枝状のオルガノポリシロキサンを用いるのが好ましい。
SiO(4-c-d)/2 (III)
式中、
は上で示した定義を有し、
cは0、1、2又は3であり、
dは0、1又は2であり、
ただし、c+dの和が3以下であり、1分子当たり少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在するものとする。
【0033】
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に基づいて、0.04~1.7重量%(wt%)の範囲でSi結合した水素を含む。
【0034】
構成成分(B)の分子量は、同様に、広い限界内、例えば、10~10g/molの間で変化し得る。したがって、例えば、構成成分(B)は、テトラメチルジシロキサンなどの比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサン、又は鎖中又は端部にSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサン、又はSiH基を含有するシリコーン樹脂であることができる。
【0035】
構成成分(B)を形成する分子の構造は決まっていない。特に、比較的高分子量のSiHを含むシロキサン、すなわち、オリゴマー又はポリマーSiH含有シロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状、又は樹脂状、網目状である。直鎖状及び環状ポリシロキサン(B)は、好ましくは、式R SiO1/2、HR SiO1/2、HRSiO2/2及びR SiO2/2の単位で構成され、ここで、Rは、上で示された定義を有する。分枝状及び網目状ポリシロキサンは、さらに、三官能性及び/又は四官能性単位を含み、式RSiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のものが好ましく、ここでRは上で示した定義を有する。
【0036】
もちろん、構成成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を用いることも可能である。特に好ましいのは、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンのような低分子量のSiH官能性化合物、及び25℃におけるDIN 53019動粘性率が1~20000mm/秒、好ましくは10~1000mm/秒であるポリ(ハイドロジェンメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルハイドロジェンメチル)シロキサンのような高分子量のSiH含有シロキサン、又はメチル基の一部が3,3,3-トリフルオロプロピル基又はフェニル基で置換された類似のSiH含有化合物の使用である。
【0037】
成分(B)は、(A)の脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~20、より好ましくは0.3~5.0の間、特に好ましくは0.6~2の間であるような量で架橋性シリコーンエラストマー組成物X中に存在することが好ましい。
【0038】
本発明で使用される成分(A)及び(B)は、商業的に慣用の製品であるか、及び/又は化学において一般的な方法により調製可能である。
【0039】
成分(A)及び(B)の代わりに、シリコーンエラストマー組成物は、脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合した水素原子を含むオルガノポリシロキサン(C)を同時に含むことができる。シリコーンエラストマー組成物Xが3つの成分(A)、(B)及び(C)の全てを含むことも可能である。
【0040】
シロキサン(C)を用いる場合は、一般式(IV)、(V)及び(VI)の単位から構成されるものが好ましい。
SiO4/2 (IV)
SiO3-g/2 (V)
HSiO3-h/2 (VI)
式中、
及びRはこれらについて上で示された定義を有し、
fは0、1、2又は3であり、
gは0、1又は2であり、
hは0、1又は2であり、
ただし、1分子当たり少なくとも2つの基R及び少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在するものとする。
【0041】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、MP樹脂として知られるSiO4/2単位、R SiO1/2単位、R SiO1/2単位及びR HSiO1/2単位から構成されるものであり、これらの樹脂はさらにRSiO3/2単位及びR SiO単位を含むことができ、R SiO1/2単位、R SiO単位及びRHSiO単位から実質的になる直鎖状オルガノポリシロキサンも可能であり、ここで、R及びRは上記の定義を有する。
【0042】
オルガノポリシロキサン(C)は、いずれの場合も25℃で測定される、0.01~500000mm/秒、より好ましくは0.1~100000mm/秒、特に1~10000mm/秒という平均DIN 53019動粘性率を有することが好ましい。
【0043】
オルガノポリシロキサン(C)は、化学において一般的な技術によって調製可能である。
【0044】
ヒドロシリル化触媒(D)として、先行技術で知られている全ての触媒を用いることが可能である。成分(D)は、白金族金属、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム、有機金属化合物、又はそれらの組み合わせであることができる。成分(D)の例は、ヘキサクロロ白金(IV)酸、二塩化白金、白金アセチルアセトネートなどの化合物、及びマトリックス中又はコア-シェル型の構造中に封入される前記化合物の錯体である。オルガノポリシロキサンの低分子量白金錯体としては、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。他の例は、白金亜リン酸錯体又は白金ホスフィン錯体である。光硬化又は紫外線硬化組成物については、例えば、シクロペンタジエニルトリメチル白金(IV)白金、シクロオクタジエニルジメチル白金(II)の誘導体のようなアルキル白金錯体、又はビスアセチルアセトナト白金(II)のようなジケトナト錯体を用いて、光による付加反応を開始することが可能である。これらの化合物は樹脂マトリックスに封入されてもよい。
【0045】
成分Dは、いずれの場合も白金族金属及び架橋性シリコーンエラストマー組成物Xの重量に基づいて、0.1~1000百万分の一(ppm)、より好ましくは0.5~100ppm、特に好ましくは1~25ppmの濃度で使用することが好ましい。
【0046】
白金族金属の構成成分が1ppm未満で存在すれば、硬化速度は低い可能性がある。100ppm超の白金族金属の使用は、不経済的であるか、シリコーンエラストマー組成物Xの保存安定性を低下させる。
【0047】
補強充填剤Fは、BET表面積が少なくとも50m/gの焼成疎水性シリカ又は沈降疎水性シリカから、及びファーネスブラック及びアセチレンブラックなどのカーボンブラック及び活性炭、シリコーン樹脂から好ましくは選択することができ、好ましくは、補強充填剤Fとして、少なくとも50m/gのDIN66131及びDIN66132(窒素で決定)BET比表面積を有するシリコーン樹脂F及び焼成疎水性シリカ及び沈降疎水性シリカ、又はそれらの混合物が好ましい。
【0048】
シリコーン樹脂Fの例は、MQ、MT、MDQ、MDT、MTQ及びMDTQシリコーン樹脂であり、MはRSiO1/2及びHRSiO1/2及びRSiO1/2から選択され、DはRRSiO1/2及びRSiO1/2及びHRSiO1/2から選択され、TはRSiO3/2及びRSiO3/2及びHSiO3/2から選択され、QはSiO4/2単位を含み、ここでRはRの上記定義を有し、RはRの定義を有する。
【0049】
好ましい焼成疎水性シリカ及び沈降疎水性シリカは、50~800m/gの間、より好ましくは100~500m/gの間、特に好ましくは150~400m/gの間のDIN66131及びDIN66132 BET比表面積を有する。150~400m/gの間のBET比表面積を有する焼成疎水性シリカを固体Fとして用いることが特に好ましい。
【0050】
補強固体Fは表面処理され、結果的に疎水性であることが好ましい。表面処理のおかげで好ましい固体Fは、少なくとも1.5~20wt%以下、好ましくは1.8~10wt%の間、より好ましくは2~8wt%の間の炭素含有率を有する。特に好ましいのは、3~6wt%のSi結合した脂肪族基を含む表面処理シリカである。これらの基は、例えば、Si結合したメチル基又はビニル基である。固体Fとして適切な疎水性シリカは、水で実質的に湿らせることができないことを特徴とする。これは、本発明において、固体Fのメタノール価が40を超え、好ましくは50を超えることを意味する。
【0051】
疎水化シリカは当業者に長い間知られている。固体Fは、別の操作工程で疎水化されるか、又はシリコーンエラストマー組成物Xに適切な疎水化剤を加えることにより、その場の疎水化の形態で疎水化されてもよい。シリカの表面処理及び疎水化の技術は当業者に知られている。疎水化は、例えば、EP1433749A1に記載されているように、好ましくは、ハロゲンを含まないシランによって行われる。
【0052】
市販の疎水性シリカの例は、部位-[Si(CH-O]を含むHDK(R) H18及びHDK(R) H20、部位-O-Si(CHを含むHDK(R) H2000(ミュンヘンのWacker Chemie AGから市販)及びAEROSIL(R) 972及びAEROSIL(R) 805(フランクフルトアムマイン、Evonik Degussa GmbHから市販)である。
【0053】
1つの好ましい実施形態において、固体Fは、シリコーン樹脂F、より具体的にはMDT又はMQ樹脂、好ましくはMQ樹脂を含む。好ましいMQ樹脂は、10mol%未満、好ましくは2mol%未満、特に好ましくは0.5mol%未満のD単位又はT単位を含む。特に好ましいMQ樹脂は、D単位又はT単位を実質的に含まない。
【0054】
シリコーン樹脂Fは、周囲の雰囲気の圧力下、すなわち1013hPaで、25℃で固体であることが好ましい。
【0055】
シリコーン樹脂Fは、好ましくは、少なくとも500、好ましくは少なくとも900、より好ましくは少なくとも1200、及び多くとも15000、好ましくは多くとも10000、より好ましくは多くとも8000の分子量Mwを有する樹脂であり、多分散性は多くとも20、好ましくは多くとも18、より好ましくは多くとも16、より具体的には多くとも15である。
【0056】
分子量分布:
分子量分布は、ポリスチレン標準及び屈折率検出器(RI検出器)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))の技術を用いて、重量平均Mw及び数平均Mnとして決定される。別に規定するもののほか、THFを溶離液とし、DIN55672-1を用いる。多分散性は比Mw/Mnである。
【0057】
好ましいシリコーン樹脂Fは、少なくとも1mol%、好ましくは少なくとも2mol%の、RSiO1/2単位、R1RSiO1/2単位及びRSiO3/2単位から選択される単位、好ましくはRSiO1/2単位を含む。
【0058】
シリコーン樹脂Fは、基Rとして、好ましくは0.1~10wt%、より好ましくは0.5~8wt%、非常に好ましくは1~6wt%のアルコキシ基を含有する。メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基及びtert-ブトキシ基が特に好適であり、したがって好ましい。
【0059】
好ましい基Rは飽和脂肪族基であり、好ましくはメチル、エチル及びイソオクチル基であり、より好ましくはメチルである。
【0060】
好ましい基Rは不飽和脂肪族基、好ましくはビニル基である。
【0061】
充填剤Fとして特に好ましいのは、ビニル基を含み、45~65mol%、好ましくは50~60mol%のQ単位、30~50mol%、好ましくは35~45mol%のRSiO1/2という形式のM単位、2~10mol%、好ましくは3~8mol%のRSiO1/2という形式のM単位を含むMQ樹脂であり、ここで、Rは好ましくはメチルであり、Rは好ましくはビニルである。
【0062】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xにおいて、補強充填剤Fは、好ましくは個々の充填剤Fとして、又は同様に好ましくは2種以上の充填剤Fの混合物として使用される。
【0063】
シリコーンエラストマー組成物Xは、補強充填剤Fとともに混合物Bを形成する。
【0064】
混合物Bは、架橋性シリコーンエラストマー組成X100重量部当たり、5~200重量部、より好ましくは10~100重量部、特に好ましくは15~50重量部の補強充填剤Fを含む。
【0065】
補強充填剤Fと同様に、混合物Bはまた、非補強充填剤を含んでもよい。非補強充填剤の例は、BET比表面積が50m/gまでの充填剤、例えば、石英、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えばアルミニウム酸化物、チタン酸化物、鉄酸化物又は亜鉛酸化物及び/又はそれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末及びプラスチック粉末である。
【0066】
少なくとも1種のシロキサン又はシランに加えて、液滴は、触媒、充填剤、抑制剤、熱安定剤、溶媒、可塑剤、着色顔料、増感剤、光開始剤、接着促進剤などから選択されるさらなる構成成分Bを含み得る。
【0067】
シリカSは、好ましくは、30~500m/g、より好ましくは100~300m/gのBET比表面積を有する、部分的に水湿潤性の焼成シリカ及び沈降シリカ又はそれらの混合物を含み、焼成シリカが特に好ましい。BET比表面積は、知られた方法、好ましくは、ドイツ工業規格DIN66131及びDIN66132に従って測定される。
【0068】
シリカSは適切な疎水化剤で表面処理することが好ましく、結果として疎水性である。疎水化は、シリカSがまだ部分的に水湿潤性であるように行うべきである。これは、本発明において、シリカSのメタノール価が40未満、好ましくは30未満であることを意味する。表面処理のために、好ましいシリカSは、少なくとも0.2~1.5wt%以下、好ましくは0.4~1.4wt%の間、より好ましくは0.6~1.3wt%の間の炭素含有率を有する。疎水性基は、例えば、Si結合したメチル基又はビニル基である。シリカの疎水化技術は当業者に知られている。
【0069】
シリカSとして好ましいのは、メタノール価が30未満のシラン処理された焼成シリカである。
【0070】
特に好ましいものは、EP1433749A1号及びDE10349082A1号に記載されているような部分的に水湿潤性のシリカである。
【0071】
粒状固体F、又は適切ならば、粒子の凝集体の平均粒径は、微細に分割された粒子を含まない液滴の平均直径d50より小さいことが好ましい。
【0072】
粒状固体Fの平均粒径は、いずれの場合もMalver製のナノサイザーZSを用いた173°後方散乱における光子相関分光法による平均流体力学的等価直径として測定される、1000nm未満、好ましくは10nm~800nmの間、より好ましくは50nm~500nmの間、非常に好ましくは75nm~300nmの間である。
【0073】
メタノール価の決定のために、水とメタノールとの規定された混合物を調製し、次いで、これらの混合物の表面張力を、既知の技術を使用して決定する。別の実験において、これらの水-メタノール混合物に規定量の粒子を重ね、規定条件下で振り混ぜる(例えば、手で穏やかに、又はタンブルミキサーで約1分間振り混ぜる)。粒子がまだ沈降しない水-アルコール混合物と、粒子がまさに沈降するアルコール含有率のより高い水-アルコール混合物で測定する。後者のアルコール-水混合物の表面張力は、粒子の表面エネルギーγの尺度として臨界表面エネルギーγcritを与える。水中のメタノール含有率からメタノール価を求める。
【0074】
補強充填剤Fは、シリカSよりも疎水性であることが好ましい。
【0075】
粒子Pは、1~100μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは特に3~20μm、より具体的には3~8μmの大きさx50を有することが好ましい。
【0076】
粒子Pは両親媒性であり、これはそれらが親水性(すなわち、水を好む)及び親油性(すなわち、脂肪を好む)の両方であることを意味する。これは、粒子Pが、例えば、水又はアルコールなどの極性溶媒のみならず、例えば、有機乳化剤又は他の界面活性物質などのさらなる分散助剤又は添加剤を添加することなく、例えば、脂肪族炭化水素などの無極性溶媒、又はポリジメチルシロキサンオイル中にも容易に分散可能であることを意味する。これは、非常に疎水性であり、例えば、有機乳化剤などの望まれない助剤を使用しない場合には水又はアルコールなどの極性溶媒中に分散可能でない、被覆されていないシリコーンエラストマー粒子と比較して、粒子Pの大きな利点である。粒子Pの場合、シリカSは表面で強固に結合し、その結果、両親媒性は溶媒中の分散時に保持される。これは、硬化後にシリカで後処理される先行技術によるシリコーンエラストマー粒子と比較して大きな利点である。なぜなら、本発明によらないこのような粒子の場合、吸収されたシリカは、永久的には結合されないからである。先行技術によるこれらの粒子の欠点は、非永久的に結合したシリカが、溶媒中での粒子の分散時に完全に又は部分的に剥がれ、それが粒子を高度に疎水性にし、例えば、水のような極性溶媒中ではもはや分散可能でないようにすることである。
【0077】
本発明によりさらに提供されるのは、架橋シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含むコアKと、シリカSのシェルHとから構成される粒子Pを製造する方法であって、第1の工程では、シリカS及び水を含む分散液Aを、架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む混合物Bと混合して、水を含む連続相及び架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む不連続相を与え、第2の工程では不連続相を架橋して粒子Pを得る方法である。
【0078】
第2の工程の架橋の過程で連続相の変化はない。
【0079】
連続相は、好ましくは少なくとも80wt%、より具体的には少なくとも90wt%の水を含む。
【0080】
水に溶けにくい及び水不混和性シリコーンエラストマー組成物Xのエマルションを含み、部分的に疎水化されたシリカを用いて水相で安定化された、3相混合物(ピッカリングエマルション)が好ましくは形成される。シリコーンエラストマー組成物Xは、粒子Pの製造に適した方法において、乳化後に架橋される。縮合性シリコーンエラストマー組成物Xは、例えば、アルコキシ-又はアセトキシ-置換シラン又はシロキサンを含む場合、加水分解することが必要である場合がある。シリコーン組成物Xが十分に反応性であれば、存在する水は、任意に加水分解をもたらし、続いて縮合をもたらすのに十分である。反応性のより低いシリコーンエラストマー組成物Xの場合、触媒が必要となり、これにより任意にシロキサン及びシランの加水分解及び縮合がもたらされる。これらの触媒は酸であってもよく、塩基であってもよく、又は加水分解、縮合反応又はエステル交換反応を促進するために典型的に使用される種類の、IV族遷移金属触媒、スズ触媒などの金属触媒であってもよい。適切な酸又は塩基は、既知の鉱酸及び金属塩の他に、酸性又は塩基性シラン又はシロキサンを含む。
【0081】
好ましい塩基性触媒はNaOH、KOH、アンモニア及びNEtである。
【0082】
好ましい酸性触媒はp-トルエンスルホン酸、水性又はガス状のHCl、硫酸である。
【0083】
方法が重合反応を含む場合、その反応は、例えば、オレフィン性不飽和シロキサン又はシランのラジカル重合反応であり得る。
【0084】
1つの特定の実施形態において、遷移金属触媒、例えば、白金触媒は、例えば、特にヒドロシリル化反応において互いに反応することができるシロキサンを含む場合、混合物Bに添加される。
【0085】
この方法は、不連続相を安定化させるシリカSがコアを形成する混合物Bの表面と、架橋の間に反応するか、又は少なくとも水素結合、ファンデルワールス相互作用若しくは他の直接的相互作用、又は他のそのような直接的相互作用の組み合わせのような前記表面との安定な相互作用に参入し、シリカSが混合物Bから形成されたコア上に永久的に固定されるように、第2の工程で実施されるべきである。
【0086】
粒子Pの大きさは、例えば、乳化技術、すなわち、例えば、導入される剪断エネルギー、混合物Bの体積分率、シリカSの量、連続水相のpH及びそのイオン強度、粘度、計量順序、計量速度のような変数を通じて、又は反応方式、すなわち、例えば、反応温度、反応時間、使用される原料の濃度を通じて制御され得る。用いたあらゆる加水分解及び縮合触媒の選択と量は同様に粒径に影響を与える。
【0087】
比較的小さな液滴の製造を可能にする乳化技術を用いる場合、この方法は、小さな、表面構造化粒子Pを生じる。この目的のために、例えば、異なる剪断エネルギー又は水中で混合物Bを安定化させるための異なるシリカSの選択を使用することが可能である。
【0088】
補強充填剤F及び任意の非補強充填剤又は任意のさらなる構成成分を、第1の工程でシリコーンエラストマー組成物Xと均一に混合し、その後、さらなる工程において、混合物Bを分散液Aで乳化し、続いて架橋して粒子Pを形成する。これにより、充填剤及び任意のさらなる構成成分の全てが、乳化後、液滴の内部で混合物Bの一部として存在し、架橋後粒子PのコアKの内部に存在することを確実にする。
【0089】
混合物BのピッカリングエマルションEは、非イオン性、カチオン性及びアニオン性乳化剤(「有機乳化剤」)などの、室温で周囲の雰囲気の圧力下で非粒状である通常の液体及び固体の有機界面活性物質を実質的に含まないことが好ましい。
【0090】
本明細書における有機乳化剤とは、Dispersionen und Emulsionen [Dispersions and Emulsions]、G. Lagaly、O.Schulz、R.Zindel、Steinkopff、Darmstadt 1997、ISBN3-7985-1087-3、pp.1~4に記載された分子、ポリマー、コロイド及び粒子の定義に沿って、粒子及びコロイドを指すのではなく、分子及びポリマーを指す。
【0091】
一般に、これらの有機乳化剤は、1nm未満の大きさ、10000g/mol未満のモル質量、元素分析で決定可能なように、50wt%超の炭素含有率、1未満のモース硬度を有する。
【0092】
同時に、本発明のエマルションが実質的に含まない有機乳化剤は、通常、20℃及び周囲の雰囲気の圧力、すなわち、900~1100hPa下で均質又はミセルの形態で、水に1wt%を超える溶解度を有する。
【0093】
混合物BのピッカリングエマルションEは、水相におけるこれらの有機乳化剤の臨界ミセル濃度の0.1倍未満、好ましくは0.01倍未満、より好ましくは0.001倍未満、より具体的には0.0001倍未満の最大濃度までこのような有機乳化剤を含み得る。これは、本発明の分散液の総重量に基づいて、10wt%未満、好ましくは2wt%未満、より好ましくは1wt%未満、より具体的には0wt%のこれらの有機乳化剤の濃度に相当する。
【0094】
第1の工程で粒子安定化ピッカリングエマルションEを製造するためには、当業者が知っている全ての技術をエマルションの製造に使用することが可能である。しかし、粒子Pを生成するのに特に適したエマルションは、以下の方法に従って得られることが明らかになった。
【0095】
方法1:
- 高濃度分散液Aの最初の導入、最初に導入される体積は、それが必要なシリカSの全量、及び水の部分量のみを含むようにされる。
- 例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化しながら、混合物Bの全体積をゆっくり計量的に添加。
- その後、任意に、例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化しながら、所望の残留体積の水をゆっくり計量的に添加。
【0096】
方法2:
- 分散液Aの最初の導入、最初に導入される体積は、それが必要なシリカS及び水の全量を含むようにされる。
- 例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて、又は毛細管乳化器などを用いて連続的に均質化しながら、混合物Bの全体積をゆっくり計量的に添加。
【0097】
方法3:
- 混合物Bの全体積の最初の導入。
- 例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化しながら、高濃度分散液Aをゆっくり定量的に添加、計量される体積は、それが必要なシリカSの全量及び水の部分量のみを含むようにされる。
- その後、任意に、例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化しながら、所望の残留体積の水をゆっくり計量的に添加。
【0098】
方法4:
- 混合物Bの全体積の最初の導入。
- 例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムなどを用いて連続的に均質化しながら、分散液Aをゆっくり定量的に添加、計量される体積は、それが必要なシリカS及び水の全量を含むようにされる。
【0099】
方法5:
- 混合物B及び分散液Aの全体積の最初の導入、最初に導入される体積は、それが必要なシリカS及び水の全量を含むようにされる。
- 例えば、高速撹拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いてジョイント均質化。
【0100】
方法6:
- 混合物B及び高濃度分散液Aの全体積の最初の導入、最初に導入される体積は、それが必要なシリカSの全量及び水の部分量を含むようにされる。
- 例えば、高速撹拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いてジョイント均質化。
- その後、任意に、例えば、高速攪拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化しながら、所望の残留体積の水をゆっくり計量的に添加。
【0101】
方法1、2、5及び6が好ましく、方法2及び5が特に好ましく、方法5が特に好ましい。
【0102】
均質化は、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも1分間、少なくとも1つの方法の工程で行われる。
【0103】
本発明のエマルション中で均質相を形成する水中のシリカSの分散液Aの調製は、高速撹拌機、高速溶解機、ローター-ステーターシステム、超音波分散器、又はボールミル又はビーズミルのような高剪断作用を有する撹拌要素を用いた組み込みのような、粒子分散液を生成するための既知の方法に従って、原則的に行われ得る。
【0104】
ここでの分散液A中のシリカSの濃度は1~80wt%の間、好ましくは10~60wt%の間、より好ましくは10~40wt%の間、非常に好ましくは12~30wt%の間である。
【0105】
任意の方法の工程において、ピッカリングエマルションEを水で希釈し、任意に、高速撹拌機、高速溶解機又はローター-ステーターシステムを用いて連続的に均質化を行う。
【0106】
記載された方法は、連続的な形態で実施されても、又は非連続的な形態で実施されてもよい。連続的な形態が好ましい。
【0107】
第1の工程の温度は、0℃~80℃の間、好ましくは10℃~50℃の間、より好ましくは20℃~40℃の間である。
【0108】
乳化操作は、大気圧、換言すれば、900~1100hPaで、高圧又は減圧下で行うことができる。大気圧下での操作が好ましい。
【0109】
ここでの第1の工程からの分散液A及び混合物Bを含む3相混合物中のシリカSの濃度は、1~80wt%の間、好ましくは2~50wt%の間、より好ましくは3~30wt%の間、特に好ましくは4~20wt%の間である。
【0110】
ここでの第1の工程からの分散液A及び混合物Bを含む3相混合物中のシリコーンエラストマー組成物Xの濃度は、1~80wt%の間、好ましくは20~76wt%の間、より好ましくは40~72wt%の間、特に好ましくは50~70wt%の間である。
【0111】
ここでの第1の工程からの分散液A及び混合物Bを含む3相混合物中の水の濃度は5~8wt%の間、好ましくは10~70wt%の間、より好ましくは15~60wt%の間、特に好ましくは20~40wt%の間である。
【0112】
上記の3相混合物から出発して、粒子Pは以下の方法によって第2の工程で得ることができる。
【0113】
3相混合物は、好ましくは、50wt%~90wt%、より好ましくは40wt%~80wt%の水の質量分率まで水を添加することによって希釈される。
【0114】
第2の工程では、粒子Pの内部架橋が完了するまで、3相ミキサーを、例えば、低速溶解機、ローター-ステーター又はビーム撹拌機を用いて、低い剪断作用で好ましくは撹拌するか、又は適切なアセンブリを用いて振り混ぜる。
【0115】
方法の第2の工程の持続時間は、好ましくは120時間よりも短く、より好ましくは0時間~48時間の間、非常に好ましくは0.1時間~24時間、1つの特定の実施形態では0.25時間~12時間である。
【0116】
第1の工程からの分散液Aおよび混合物Bの3相混合物は、任意に、架橋を加速し、完了させる上記の触媒と混合することができる。この添加は、3相混合物の調製前に、非連続相又は連続相に直接なされ得、乳化の間又はその後、完成した3相混合物になされ得る。
【0117】
添加される任意の触媒の使用量は、触媒に典型的な定量範囲内である。
【0118】
架橋相の間の反応温度は0~100℃の間、好ましくは10~80℃の間、より好ましくは15~60℃の間である。
【0119】
反応は任意に窒素、アルゴン又は二酸化炭素のような不活性ガス雰囲気下で行うことができる。その場合の酸素分率は15vol%未満、好ましくは10vol%未満、より好ましくは5vol%未満である。
【0120】
反応混合物のpHは、pH10~1の間、好ましくはpH9~3の間、より好ましくはpH8~4の間であり、1つの特定の実施形態においてはpH7~5の間である。
【0121】
3相混合物は、任意に、メタノール、エタノール又はイソプロパノールのようなアルコール又はアセトン又はMEKのようなケトン又はTHFなどのようなエーテルのような水溶性有機溶媒と混合することができる。これらは、第1の工程で添加されても、第2の工程の前又は最中に添加されてもよい。
【0122】
3相混合物は、任意に分散助剤、保護コロイド及び/又は界面活性剤と混合することができる。これらは、第1の工程で添加されても、第2の工程の前又は最中に添加されてもよい。
【0123】
3相混合物は、好ましくは5wt%未満、より好ましくは1wt%未満、より具体的には0.1wt%未満の分散助剤、保護コロイド及び界面活性剤を含む。1つの特定の実施形態において、3相混合物は、分散助剤、保護コロイド及び界面活性剤を含まない。
【0124】
3相混合物は、任意に無機又は有機電解質を含む。これらは、第1の工程の後、第2の工程の間、又は第2の工程の終了後のいずれかに加えることができる。
【0125】
この場合の3相混合物のイオン強度は、0.01mmol/l~1mol/lの間、好ましくは0.1mmol/l~500mmol/lの間、より好ましくは0.5mmol/l~100mmol/lの間である。
【0126】
粒子Pの表面は、任意に、反応性シラン又はシロキサンによる処理によって改質され得る。これらは、第1の工程のピッカリングエマルションの調製終了直後、反応段階中、又は第2の工程の反応段階終了後、粒子Pの単離前、又は粒子の単離後、液相又は固相中のいずれかに添加することができる。この処理は、シラン又はシロキサンが粒子に共有化学結合するように行うべきである。当業者には対応する技術及び方法が知られている。
【0127】
使用される固体の全体、及び重付加、重縮合又は連鎖重合が可能な材料の重合生成物からなる3相混合物中の粒子Pの固体分率は、5wt%~70wt%の間、好ましくは10wt%~50wt%の間、より好ましくは20wt%~40wt%の間である。
【0128】
第2の工程後、3相混合物をいまだ撹拌しながら任意に保存することもできる。これは、例えば、ビーム撹拌機又はアンカー撹拌機によって達成することができる。
【0129】
1つの好ましい実施形態において、粒子Pは、好ましくは沈降、濾過又は遠心分離により、より好ましくは濾過又は遠心分離により、非常に好ましくは遠心分離により、単離される。
【0130】
それらが単離された後、粒子Pは、好ましくは、完全に脱塩した水、メタノール、エタノール及びそれらの混合物から好ましく選択される洗浄液で洗浄される。
【0131】
1つの好ましい実施形態において、粒子Pは、水相から粉末形態で単離される。これは、例えば、濾過、沈降、遠心分離によって、又はオーブン若しくはドライヤー中で乾燥することによって揮発性成分を除去することによって、又は噴霧乾燥によって、又は適切な減圧を加えることによって達成され得る。
【0132】
噴霧乾燥を通じて、さらなる後処理なしで非常に微細な粒子を得ることが可能である。静的乾燥によって乾燥した粒子Pは緩い凝集体を形成する傾向があり、例えば、ボールミル又はエアジェットミルによって、適切なミリング法によって脱凝集することができる。
【0133】
<測定方法>
- 固形分:10gの水性分散液を磁器皿中で同量のエタノールと混合し、150℃のNでパージした乾燥キャビネット中で恒量になるまで蒸発させる。乾燥残留物の質量mは、固形分/%=m×100/10gに従って固形分を与える。
【0134】
- 平均粒径(x50):
50はRetsch Technology社製Camsizer X2を用いて測定した(測定原理:ISO13322-2に従う動的画像解析、測定範囲:0.8μm~30mm、分析の種類:粉末及び顆粒の乾燥測定、分散圧=2bar)。
【0135】
- 炭素の元素分析により決定した炭素含有率%C;O流中での1000℃超での試料の燃焼、IRによる得られたCOの検出及び定量、機器:LECO 244
【0136】
- メタノール価:メタノール価の測定のために、水及びメタノールの規定の混合物を用意する。別の実験では、これらの水-メタノール混合物を同量の乾燥粒子とともに重ねて、規定条件(例えば、手で穏やかに、又はタンブルミキサーで約1分間振り混ぜる)で振盪する。
【0137】
粒子がまだ沈降していない水-アルコール混合物と、粒子がまさに沈降したアルコール含有率のより多い水-アルコール混合物で決定する。後者の水中のメタノール含有率からメタノール価を求める。
【0138】
- 動粘性率は25℃でDIN53019で測定する。
【0139】
以下の実施例では、各場合において特に断りのない限り、量及び百分率は全て重量により、全ての圧力は0.10MPa(abs)であり、全ての温度は20℃である。
【実施例
【0140】
[実施例1:水性シリカ分散液Aの調製]
200m/gのBET比表面積を有する親水性出発シリカ(Wacker-Chemie GmbH、ミュンヒェンから入手可能)をEP1433749A1号に従ってジメチルジクロロシランと反応させることによって得られた、71%の残留シラノール含有率及び0.95%の炭素含有率を有する部分的に疎水性の焼成シリカ1300gを、PC Laborsystem,CHのLabo-Top遊星溶解機中で5200gの完全脱塩(FD)水中に、撹拌しながら、650rpmで少しずつ組み込む。シリカを完全に添加した後、分散をさらに60分間650rpmで続ける。これにより固形分20%、pH4.2の高粘度分散液が得られる。
【0141】
[実施例2:シリカS及び水を含む分散液Aと混合物Bとを溶解機を用いて混合する一般的な手順]
工程1:実施例1に記載のシリカ分散液を適切な攪拌容器に秤量し、PC Laborsystem,CHのLabo-Top遊星溶解機を用いて6000rpmで10分間攪拌する。分散液の粘度が低下する。任意にFD水を添加し、均質に混合する。実施例5、6又は7の1つに従って調製した混合シリコーンオイル成分を攪拌したシリカ分散液に加え、水冷却剤とともに6000rpmで溶解機中で10分間均質化する。この間、混合物の温度は35℃を超えないようにする。その結果、粘度の高い白色の塊となる。
【0142】
工程2:方法の工程1からの高粘度の塊を、同量のFD水を3回加えて、1000rpmで30%のシリコーンオイル含有率まで希釈する。FD水の各ポーションの後、1000rpmで3分間撹拌する。これにより、流動性が高く、白色のO/Wエマルションが得られる。
【0143】
[実施例3:シリカS及び水を含む分散液Aと混合物BとをUltra-Turraxを用いて混合する一般的な手順]
工程1:実施例1に記載のシリカ分散液を適切な1000m/lステンレス鋼容器に秤量し、10000rpmで10分間Ultra-Turrax T50を用いて撹拌する。分散液の粘度が低下する。任意にFD水を添加し、均質に混合する。実施例5、6又は7の1つに従って調製した混合シリコーンオイル成分を撹拌したシリカ分散液に加え、氷冷しながらUltra Turraxを用いて10分間10000rpmで均質化する。この間、混合物の温度は35℃を超えないようにする。その結果、粘度の高い白色の塊となる。
【0144】
工程2:工程1からの高粘度の塊を、同量のFD水を3回加えて、30%シリコーンオイル含有率まで希釈する。FD水の各ポーションの後、6000rpmで3分間撹拌する。これにより、流動性が高く、白色のO/Wエマルションが得られる。
【0145】
[実施例4:混合物Bのピッカリングエマルションから本発明のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー微粒子Pを製造する一般的な手順]
実施例2又は実施例3に従って調製した重付加を受けやすいピッカリングエマルション250gを、両鎖末端をジメチルビニルシリル基で封鎖した粘度1000mm/秒(25℃)のビニル基を含むポリジメチルシロキサン中の1wt%溶液の形態で、200rpmでパドル撹拌機を用いてKarstedt触媒20ppm(白金の量に基づく)と混合し、その混合物を80℃で24時間撹拌する。その結果、白色の流動性の高い分散液となる。単離のために、粒子Pを濾過によって除去し、乾燥キャビネット中で80℃で24時間乾燥させる。これにより微細な白色の粉末が得られる。
【0146】
[実施例5:重付加を受けやすいシリコーン樹脂補強混合物B]
粘度1000mm/秒(25℃)を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン375gと粘度20000mm/秒(25℃)を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン264gをパドル撹拌機を用いて均質に混合した。次いで組成[MeSiO1/226.65[ViMeSiO1/23.72[SiO4/242.78[HO1/21.02[EtO1/25.93(SEC(溶離剤、トルエン)による分子量:Mw=5300g/mol、Mn=2560g/mol)のビニル基を含むシリコーン樹脂274gを加え、溶解が完了するまで混合物を撹拌した。このようにして得られたベースの塊を、25℃で粘度40mm/秒、SiH含有率0.40%の、ジメチルシロキシ単位、メチルハイドロジェンシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成されたコポリマー114gと均質に混合した。
【0147】
[実施例6:シリカで被覆され、シリコーン樹脂で補強されたシリコーンエラストマー粒子Pの製造]
実施例5からの本発明の混合物B320g及び実施例1からの水性シリカ分散液A240gを実施例2と同様に乳化した。続いて、実施例4と同様に、粉砕シリコーンエラストマー粒子Pを製造し、平均粒径はd50=3.4μmであった。
【0148】
[実施例7:重付加を受けやすい、シリカで補強された混合物B]
最初に市販の実験質用混練機に導入したのは、粘度1000mm/秒(25℃)のビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン917gで、これを150℃まで加熱し、比表面積125m/g(BET法で測定)、炭素含有率1.6~2.0wt%の疎水性焼成シリカ621gと混合した。これにより高粘度の塊が得られ、続いて前述のポリジメチルシロキサン618gで希釈した。150℃の減圧(10mbar)下で混練したところ、得られた塊を、水分及び負荷剤の過剰の残渣、特に揮発性成分から1時間以内に解き放した。次に25℃で粘度100mm/秒の、SiH含有率0.47%の、ジメチルシロキシ単位、メチルハイドロジェンシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成されたコポリマー123gを加え、均質に混合する。
【0149】
[実施例8:シリカで被覆され、シリカで補強されたシリコーンエラストマー粒子Pの製造]
実施例7からの本発明の混合物B156g及び実施例1からの水性シリカ分散液A149gを、実施例3と同様に乳化した。続いて、実施例4と同様に、粉砕シリコーンエラストマー粒子Pを製造し、平均粒径はd50=12μmであった。
【0150】
[比較例C1:補強充填剤を含まない、重付加を受けやすいシリコーンエラストマー組成物]
両鎖末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度1000mm/秒(25℃)のビニル基を含むポリジメチルシロキサン1535gを、補強添加剤を添加せずに、25℃で100mm/秒の粘度及び0.47%のSiH含有率を有する、ジメチルシロキシ単位、メチルハイドロジェンシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成されたコポリマー123gと、パドル撹拌機を用いて均質に混合した。
【0151】
[比較例C2:補強充填剤を含まない、シリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子の製造]
比較例C1からの、本発明に従わないシリコーンエラストマー組成物320g、及び実施例1からの水性シリカ分散液240gを実施例2に従って乳化した。続いて、実施例4に従って、粉砕シリコーンエラストマー粒子を製造し、その平均粒径はd50=18μmであった。
【0152】
[比較例C3:補強充填剤を含まない、重付加を受けやすいシリコーンエラストマー組成物]
両鎖末端をジメチルビニルシリル基で封鎖した粘度200mm/秒(25℃)のビニル基を含むポリジメチルシロキサン479g、及び補強添加剤を添加せずに、粘度65mm/秒(25℃)のSi結合した水素を0.73wt%含むトリメチルシリル末端メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー21wt%を、パドル撹拌機を用いて均質に混合した。
【0153】
[比較例C4:補強充填剤を含まないシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子の製造]
比較例C3の、本発明に従わないシリコーンエラストマー組成物320g、及び実施例1の水性シリカ分散液240gを実施例2に従って乳化した。続いて、実施例4に従って、粉砕シリコーンエラストマー粒子を製造し、その平均粒径はd50=9μmであった。
【0154】
[実施例9:粒子Pの官能評価]
実施例6及び8からの本発明のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子P、及び本発明に従わない比較例C2及びC4からの粒子の官能評価を、5人の試験者から構成された訓練されたチームによって実施した。
【0155】
評価のために、試験者は石けん及び水で手及び下腕を洗った。下腕に、各試料につき直径4cmの円形試験領域を描き、各回それぞれの粒子を0.04g塗布し、噴霧した。
【0156】
試験者が評価したパラメータは、塗っている間の絹のような感覚及び粉末の塗り終わった後の皮膚感触で、0(不良)から4(非常に良好)の尺度に基づいた。結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
[実施例10:粒子Pの機械的完全性]
実施例9とは対照的に、試験者は強い圧力下で粒子を皮膚に塗った。実施例6及び8からの本発明のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子Pについての結果は変化しなかったが、本発明に従わない比較例C2及びC4からの粒子は、塗る間に塊を形成し、これは美容用途では望ましくない。
【0159】
【表2】
【0160】
[実施例11:機械的強度の評価]
実施例6及び8からの本発明のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子P、並びに本発明に従わない比較例C2及びC4からの粒子を、それぞれ、撹拌しながら、100重量%の粘度2mm/秒(25℃)のポリジメチルシロキサンと混合した。粒子は膨潤し、シリコーンオイルを完全に吸収する。
【0161】
次に、実施例9と類似して、膨潤した粒子を皮膚上で試験した。驚いたことに、実施例6及び8からの本発明のシリカで被覆されたシリコーンエラストマー粒子は、塗った後に非常に良好なビロード状から絹のような滑らかな皮膚感触を示すが、本発明に従わない比較例C2及びC4からの粒子の皮膚感触は、塗った後にはるかに蝋様であり、より広がりが遅いことが分かった。
【0162】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2020-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋シリコーンエラストマー組成物Xを含むコアKとシリカSのシェルHとから構成され、
コアKが、DIN66131のBET比表面積が少なくとも50m2/gの焼成疎水性シリカ又は沈降疎水性シリカから、並びにカーボンブラック及び活性炭及びシリコーン樹脂から選択される補強充填剤Fを含むことを特徴とする、粒子P。
【請求項2】
前記シリコーンエラストマー組成物Xが付加架橋であり、
(A) 脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を含む、少なくとも1種の直鎖状化合物、
(B) Si結合した水素原子を有する、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、
又は(A)及び(B)の代わりに、
(C) 脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合した水素原子を有するSiC結合基を含む、少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン化合物、及び
(D) 少なくとも1種のヒドロシリル化触媒
を含む、請求項1に記載の粒子P。
【請求項3】
表面処理のために前記補強充填剤Fが、40を超えるメタノール価を有する、請求項1又は2に記載の粒子P。
【請求項4】
前記コアKが、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xの100重量部当たり、5~200重量部の補強充填剤Fを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のP粒子。
【請求項5】
前記シリカSが、少なくとも50m2/gのBET比表面積を有する焼成疎水性シリカ又は沈降疎水性シリカから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子P。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子Pの製造方法であって、
第1の工程において、シリカS及び水を含む分散液Aを、架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む混合物Bと混合して、水を含む連続相と架橋性シリコーンエラストマー組成物X及び補強充填剤Fを含む不連続相とを得て、
第2の工程において、該不連続相を架橋して粒子Pを得て、
混合物B及び不連続相が補強充填剤Fを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記連続相が少なくとも80wt%の水を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の工程において、混合物B及び分散液Aの全体積を最初に導入し、最初に導入される体積が、必要なシリカS及び水の全量を含むようにされる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
第1の工程において、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xを架橋するために触媒が添加される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】