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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】プラズマ水処理
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/30 20230101AFI20230306BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20230306BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20230306BHJP
   C12M 1/12 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 7/04 20060101ALN20230306BHJP
   C12N 1/06 20060101ALN20230306BHJP
【FI】
C02F1/30
C02F1/48 B
H05H1/24
C12M1/12
C12N1/00 J
C12N7/04
C12N1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022535957
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 AU2020051323
(87)【国際公開番号】W WO2021113901
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】2019904694
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232101
【氏名又は名称】プラズマリープ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジョセフ カレン
【テーマコード(参考)】
2G084
4B029
4B065
4D037
4D061
【Fターム(参考)】
2G084AA19
2G084AA25
2G084CC02
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC32
2G084CC35
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD63
2G084FF23
4B029AA27
4B029BB01
4B029BB13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA95X
4B065BD50
4D037AA11
4D037AB03
4D037AB14
4D037BA16
4D061DA08
4D061DB01
4D061DB19
4D061DC09
4D061EA13
4D061EB01
4D061EB34
(57)【要約】
液体をプラズマで処理する装置が本明細書で記載されている。本装置は、1つまたは2つの誘電バリアを備え、上記誘電バリアおよび高電圧電極は、これらの間に放電域を画定する。高電圧電極は、内部誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁されてもよい。この装置では、外部誘電バリアはガス透過性であり、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をプラズマで処理する装置であって、
間に放電域を画定するように設けられた第1の誘電バリアおよび第2の誘電バリアと、
前記第1の誘電バリアによって前記放電域から電気的に絶縁された高電圧電極と、を備え、
前記第2の誘電バリアはガス透過性であり、
前記放電域は、該放電域を通るガス流を受け入れるように構成されている、装置。
【請求項2】
接地電極をさらに備え、前記接地電極は、前記第2の誘電バリアによって前記放電域から分離されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体を収容するための容器をさらに備え、使用時、前記容器内の液体は、前記第2の誘電バリアと接触し、前記第2の誘電バリアによって前記放電域から分離されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記容器は誘電材料を備え、前記装置は、前記誘電材料と接触している接地電極を備え、前記接地電極は、使用時に、前記誘電材料が前記液体を前記接地電極から分離するように配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
接地電極を備え、前記接地電極は、使用時に、前記接地電極が前記容器内の液体と電気的に接触するように配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記高電圧電極は、前記第1の誘電バリア内に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記高電圧電極、前記第1の誘電バリア、前記放電域、および、前記第2の誘電バリアが同心状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の誘電バリアはガス不透過性である、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の誘電バリアは多孔質である、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の誘電バリアは疎水性である、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ガスを前記放電域内へ導入するガス入口と、前記ガスを前記放電域に通過させるガス推進装置と、を備える請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記放電域内のガスにプラズマを発生させるのに十分な電圧を前記高電圧電極へ印加することができる電圧発生器を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記電圧は、約1kV RMSから約150kV RMSの間である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
液体をプラズマで処理する方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の装置を提供し、
ガスを前記放電域に通過させ、
前記放電域から離れた前記第2の誘電バリアの側面を前記液体へさらし、
前記放電域内の前記ガス中にプラズマを発生させるのに十分な電圧を前記高電圧電極へ印加すること、を含む方法。
【請求項15】
前記ガスは、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、およびこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ガスは空気である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記液体は水性液体である、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体は水である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の誘電バリアを挟んだ圧力差は、前記ガスを、前記放電域から前記第2の誘電バリアを通って前記液体内へ通過させるのに十分である、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電圧は、約1kV RMSから約150kV RMSの間である、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体は、汚染物質を含み、前記方法は、前記汚染物質を少なくとも部分的に除去および/または破壊する、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記汚染物質は、微生物および化学的汚染物質からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記汚染物質は、医薬品、内分泌かく乱物質およびPFASのうちの1つまたは複数を含む、請求項22に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水をプラズマで処理する装置および方法、プラズマで処理された水、ならびにプラズマ処理水を使用する方法に関する。
【0002】
本発明は、主として、水処理に使用するために開発されたものであり、以下、本願を参照して説明する。しかしながら、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことを理解されたい。
【背景技術】
【0003】
プラズマによって生産される反応種は、水中に存在する可能性のある特定の生物学的かつ化学物質の分解に有効であることが知られている。プラズマ由来の反応種にさらされた水は、ある範囲の反応性準安定種を水内へ導入することによって「活性化」され得る。このプラズマ活性水(PAW)は、水にさらされた物質を処理するために使用され、微生物、真菌、ウイルスおよび化学物質を含む製品の汚染除去を行う。PAWは、肥料として、または燃料として使用されてもよい。
【0004】
プラズマは、水の表面への直接放電、水中放電、水中気泡内の放電を介して、または水バルクへの気泡としての反応ガス種の導入を介して、水と接触(interfaced)され得る。気相で生成されたプラズマが、既存の気泡中、液面上などで、または水が水しぶきや水滴の形態である場合など、どのように水と接触されるかは、気相および溶液のそれぞれにおける異なる分解強度のために、生産される種の化学的構成に大きく影響する。
【0005】
今日まで、大気プラズマ技術のスケーリングは、ガスプラズマから水へ短寿命反応種を効果的に導入する必要があるため、困難であることが証明されている。本発明は、従来技術の欠陥の少なくとも一部を克服または実質的に改善する装置を提供すること、または少なくとも代替を提供することを目的とする。
【0006】
何らかの先行技術情報が本明細書で参照される場合、そのような参照は、その情報が、オーストラリアまたはいずれかの他の国において当技術における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものを構成しないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様によれば、液体をプラズマで処理する装置が提供され、上記装置は、それらの間に放電域を画定する第1の誘電バリアおよび第2の誘電バリアを備え、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁された高電圧電極とを備える。この態様では、第2の誘電バリアはガス透過性であり、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成されている。
【0008】
以下の選択肢は、個別に、または任意の好適な組み合わせで、第1の態様と組み合わせて使用されてもよい。
【0009】
本装置は、接地電極をさらに備えてもよい。接地電極は、少なくとも第2の誘電バリアによって放電域から分離されてもよい。接地電極および放電域は、第2の誘電バリアに対向する側にあってもよい。
【0010】
本装置は、液体を収容するための容器をさらに備えてもよい。使用中、容器内の液体は、第2の誘電バリアと接触してもよい。液体は、第2の誘電バリアによって放電域から分離されてもよい。本明細書では、用語「によって…から分離され」、例えば、「AはCによってBから分離される」は、Cの少なくとも一部分が、AがBに接触しないようにAとBとの間に配置されていることを示す。これは、CがAとBとの間の唯一の完全体であることを意味するものではないが、場合によってはそうである可能性もある。
【0011】
1つの選択肢では、容器は誘電材料を備え、本装置は、誘電材料と接触している接地電極を備える。接地電極は、使用時に、上記誘電材料が容器内の液体を接地電極から分離するように配置されてもよい。このように、接地電極は、容器の外側に配置されてもよい。この実例では、使用時に、液体は容器の内側に収容されるであろう。
【0012】
別の選択肢では、本装置は、接地電極を備え、これは、使用時に、上記接地電極が容器内の液体と電気的に接触するように配置される。一形態では、容器は、電気的に導通し、接地電極を備えるか、または、設置電極を形成する。さらに別の選択肢では、別個の金属製接地電極が容器内の液体内に配置され、任意選択で容器の内面に配置される。
【0013】
高電圧電極は、第1の誘電バリア内に配置されてもよい。この電極は、第1の誘電バリアに囲まれ、同封され、または入れられてもよい。一構成では、高電圧電極、第1の誘電バリア、放電域および第2の誘電バリアは同心状である。高電圧電極は、第1の誘電バリアによって囲まれてもよく、これは放電域によって囲まれ、次いで第2の誘電バリアによって囲まれる。
【0014】
第1の誘電バリアは、ガス不透過性であってもよい。放電域で使用されるガスに対して不透過性であってもよい。液体に対して不透過性であってもよい。
【0015】
第2の誘電バリアは、多孔質であってもよい。微多孔質であってもよい。放電域内のガス、プラズマ種および放電自体のいずれか1つまたは複数に対して透過性であってもよい。疎水性であってもよい。あるいは親水性であってもよい。領域の少なくとも一部が多孔質および/またはガス透過性である場合、このバリアは、非多孔質および/またはガス不透過性領域を有してもよい。
【0016】
本装置は、ガス入口を備えてもよい。これにより、ガスまたはガス混合物は放電域に入ることができる。いくつかの実例では、放電域はガス出口を有するが、他の実例では、第2の(ガス透過性の)誘電バリアが唯一のガス出口として機能する。本装置は、ガスをガス入口から放電域内へ通過させるガス推進装置、例えば、ポンプを備えてもよい。いくつかの実例では、放電域に入るガスのすべては、外部誘電バリアを通って放電域を出る。
【0017】
本装置は、高電圧発生器を備えてもよい。これは、放電域内のガスにプラズマを発生させるのに十分な電圧を高電圧電極に印加することができる。電圧は、約1kV RMS(二乗平均平方根)から約150kV RMSの間であり得る。高電圧発生器は、高電圧電極へ電気的に結合され得、および/または高電圧電極に電気的に接触し得る。
【0018】
実施形態では、液体をプラズマで処理する装置が提供され、上記装置は、これらの間に放電域を画定し、ガス不透過性である第1の誘電バリアおよび多孔質である第2の誘電バリアと、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁された高電圧電極と、を備える。本実施形態では、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成されている。
【0019】
別の実施形態では、液体をプラズマで処理する装置が提供され、上記装置は、これらの間に放電域を画定し、ガス不透過性である第1の誘電バリアおよび多孔質である第2の誘電バリアと、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁され、この中に入れられた高電圧電極と、放電域内のガス中にプラズマを発生させるのに十分な高電圧電極へ電圧を印加することができる高電圧発生器と、を備え、上記電圧は一般に約1kV RMSから約150kV RMSの間である。
【0020】
本実施形態では、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成されている。
【0021】
第2の態様では、液体をプラズマで処理する方法が提供される。この方法は、第1の態様による装置を提供し、ガスを放電域に通過させ、放電域から離れた第2の誘電バリアの側面を液体へさらし、放電域内のガス中にプラズマを発生させるのに十分な電圧を高電圧電極へ印加することを含む。
【0022】
以下の選択肢は、第2の態様と関連して、個別に、または任意の好適な組み合わせのいずれかで使用されてもよい。
【0023】
ガスは、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンのうちのいずれか1つであってもよく、または、これらのうちのいずれか2つ以上の混合物であってもよい。例えば、ガスは空気であってもよい。
【0024】
液体は水性液体であってもよい。水であってもよい。
【0025】
第2の誘電バリアを挟んだ圧力差は、ガスを放電域から液体内へ通過させるのに十分であり得る。
【0026】
電圧は、約1kV RMSから約150kV RMSの間であってもよい。
【0027】
液体は、1つまたは複数の汚染物質を含んでもよい。この場合、本方法は、汚染物質を少なくとも部分的に除去および/または破壊し得る。汚染物質は、微生物であってもよく、ウイルスであってもよく、または化学的汚染物質であってもよく、水は、ウイルス、微生物および化学的汚染物質のうちのいずれか2つ以上を有してもよい。特定の例では、汚染物質はPFAS(パーフルオロアルキルおよび/またはポリフルオロアルキル化合物)を含む。別の例では、医薬品、内分泌かく乱物質およびPFASのうちの1つまたは複数を含む。
【0028】
一実施形態では、本方法は、液体をプラズマで処理する装置を提供し、上記装置は、それらの間に放電域を画定する第1の誘電バリアおよび第2の誘電バリアと、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁された高電圧電極と、を備え、第2の誘電バリアはガス透過性であり、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成され、ガスを放電域に通過させ、放電域から離れた第2の誘電バリアの側面を液体へさらし、放電域内のガス中にプラズマを発生させるのに十分な電圧を高電圧電極へ印加することを含む。
【0029】
別の実施形態では、本方法は、微生物および/または化学的汚染物質を含む水を処理し、上記方法は、水をプラズマで処理するための装置を提供し、上記装置は、それらの間に放電域を画定する、ガス不透過性である第1の誘電バリアおよび多孔質である第2の誘電バリアと、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁された高電圧電極と、を備え、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成され、ガスを放電域および第2の誘電バリアに通過させ、放電域から離れた第2の誘電バリアの側面を水へさらし、約1から約150kV RMSの間の電圧を高電圧電極へ印加することを含む。
【0030】
別の実施形態では、本方法は、液体をプラズマで処理する装置を提供し、上記装置は、それらの間に放電域を画定する第1の誘電バリアおよび第2の誘電バリアと、第1の誘電バリアによって放電域から電気的に絶縁された高電圧電極と、を備え、第2の誘電バリアはガス透過性であり、放電域は、これを通るガス流を受け入れるように構成され、ガスを放電域に通過させ、放電域から離れた第2の誘電バリアの側面を液体へさらし、放電域内のガス中にプラズマを発生させるのに十分な電圧を高電圧電極へ印加することを含み、第2の誘電バリアを挟んだ圧力差は、ガスを放電域から液体内へ通過させるのに十分である。
【0031】
本発明の第3の態様では、第1の態様の装置を使用して処理され、または第2の態様の方法を使用して、人間が消費するために処理された水の使用を提供する。
【0032】
本発明の第4の態様では、第2の態様の方法を汚染水へ適用することを含む、飲料水を作製するプロセスが提供される。
【0033】
本発明の第5の態様では、第1の態様の装置を使用して処理された、または第2の態様の方法を使用して処理された水の、種子、作物もしくは他の植物を灌漑するための、または燃料として使用される化学物質を作成するための使用が提供される。
【0034】
本発明の第6の態様では、第1の態様の装置を使用して水を処理し、または第2の態様の方法を使用して水を処理し、そのように処理された水を種子、作物もしくは他の植物へ、または種子、作物もしくは他の植物が置かれている、または成長している土壌へ付与することを含む、種子、作物もしくは他の植物に灌注する方法が提供される。
【0035】
本発明の第5および第6の態様では、ガスは、窒素含有ガスであってもよく、または窒素自体であってもよく、これにより、第2の態様の方法は、水中に植物の成長に有益な窒素種を生成する。これらの態様では、植物成長栄養素および/またはホルモンおよび/または必須ミネラルが、水の有益な特性をさらに高めるように、第2の態様の方法を適用した後、処理水へ添加されてもよい。
【0036】
本発明はまた、本出願の明細書で言及または示された部分、要素および特徴を、個別にまたは集合的に、および上記部分、要素または特徴のうちのいずれか2つ以上の任意の、またはすべての組み合わせからなることが広く言われており、ここで、本発明が関係する当技術で既知の等価物を有する特定の完全体が本明細書で言及され、そのような既知の等価物は、個々に述べられているかのように本明細書に組み込まれているとみなされる。
【0037】
本発明の他の態様も開示される。
【0038】
本発明の範囲内に収まり得る任意の他の形態にもかかわらず、本発明の実施形態は、次に、以下の添付の図面を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態による装置である。
図2】本発明の他の実施形態による装置である。
図3】本発明の方法を使用して生成された反応性酸素種(OH・、H、O)の生成を示すグラフである。データ曲線は、過酸化水素(H)[○]、オゾン(O)[◆]、ヒドロキシルラジカル(OH・)[■]の経時的な生成[mg/L]を示す。使用されたガスは大気である。液体は水である。
図4】(a)直接、20℃の水中で接地された(すなわち、接地電極[IN])図1の設計を採用するガス流量(SLM:1分当たりの標準リットル)の関数としての亜硝酸塩生成および(b)0.5SLMのガス流量で(a)の条件下での亜硝酸塩生成に対する水温の影響のグラフを示す。
図5】リアクタ内の空気に対するプラズマガス励起スペクトルの一例を示し、励起された窒素種および酸素種の存在を示す。放電は、励起された窒素分子、およびOやN分子とエネルギー電子との衝突によって誘導される第1の負のN 遷移によって支配される。ヒドロキシルおよび原子状酸素ラジカルも明らかである。
図6】供給ガスとしてCOを使用する動作時の装置を示す写真であり、リアクタから出て形成された気泡内にプラズマ放電が見られる。セットアップは、直径200μmの12のマイクロホールを有する2つのリアクタからなる。
図7】多孔質リアクタから出る形成気泡内のプラズマ放電を示す写真である。この場合、ガスはアルゴンである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
水中で非平衡大気プラズマを生産する装置および方法が記載されている。一範囲のガスおよびガス混合物は、空気、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素およびこれらのうちのいずれか2つ以上の任意の組み合わせの混合物を含むアプローチで使用することができる。これらの異なるガスに由来するプラズマから生成される種は異なるため、異なる用途に使われる可能性があることを理解されたい。一般的な知識と日常的な試行錯誤とを使用することにより、当業者であれば、特定の用途に好適なガスまたはガスの組み合わせを容易に決定することができる。例えば、ウイルスを破壊するのに好適なガスまたは混合物は、PFASまたは他の化学的汚染物質を破壊するために好適なものとは異なっていてもよい。同様に、異なる動作パラメータが装置で使用される異なるガスに対して適切であり得、これらはまた、一般的な知識および/または日常的な試行錯誤ならびに本明細書に提供されるガイダンスを参照して、当業者によって容易に決定され得ることが同様に理解される。調節する必要があり得る動作パラメータには、ガス流量、第2の誘電バリアを挟んだ圧力、高電圧電極に供給される電圧、および接地電極が液体と電気的に接触しているか、または液体から電気的に絶縁されているかなどが含まれる。これらのパラメータのうちのいくつかまたはすべては、装置の異なるスケールに対応するように調節することもできる。例えば、1L/分の水を処理するように設計された本発明による装置は、1m/分の水を処理するように設計された装置とは異なる動作パラメータ(電圧、ガス流量など)を必要とし得る。また、よく理解されるように、これら2つの装置の寸法は異なる。適切なサイズ設定は、本発明の入力なしで容易に決定することができる。
【0041】
本発明の文脈では、「誘電バリア」という用語は、2つの領域を電気的に分離するエンティティ、すなわち、ある領域を別の領域から分割し、高い電気抵抗率を有するエンティティを指す。物理的に透過性であってもよく、物理的に不透過性であってもよく、または物理的に選択的透過性であってもよい。
【0042】
本方法は、水を処理する、または材料の汚染除去、殺菌、および植物成長促進のためのプラズマ活性水(PAW)を作成するために採用されてもよい。リアクタ(すなわち、第1および第2の誘電バリア、これらの間の放電域、および、高電圧電極からなる装置の部分)は、処理される液体に少なくとも部分的に浸漬されるように設計されている。この液体は、アースとして作用してもよく、または別のアース電極が設けられてもよい。別のアース電極は、存在する場合、液体と電気的に接触している離散電極の形態、または液体が収容されている接地容器の形態のいずれかで、液体と電気的に接触しているか、または誘電材料によって液体から電気的に絶縁されていてもよい。本発明では、「誘電」という用語は、0.01から1015Ω.mの間の電気抵抗率を有する物質を指すと考えられてもよい。第1の誘電バリア、第2の誘電バリアおよび誘電材料(存在する場合)のいずれかまたはすべてに好適な誘電体には、セラミックス、ガラスおよびポリマー材料、例えば、ガラス、石英、シリカ、アルミノシリケート、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミドなどが含まれる。本発明で使用される誘電体のいずれも、独立して、約0.01~約1015Ω.m、または約1~1015、10~1015、10~1015、1010~1015、0.01~1010、0.01~10、0.01~10、0.01~1、1~1010、10~1010、または100~10Ω.m、例えば、約0.01、0.1、1、10、100、1000、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014または1015Ω.mの抵抗率を有してもよい。
【0043】
第2の誘電バリアは、ガスおよび/またはプラズマ放電に対して透過性である。多孔質であってもよい。プラズマ放電およびプラズマ残光の両方と液体との接触および相互作用を促進するために、制御された多孔質を有してもよい。第2の誘電バリアは、水性液体がこれを通って放電域へ貫通することを防止もしくは抑制し、および/または放電域から第2の誘電バリアを通るガスの通過を促進するように、疎水性であってもよい。あるいは、親水性であってもよい。第2の誘電バリアが多孔質である場合、細孔径は、放電域内への液体の漏れを防止または抑制するようなものであってもよい。放電域内の好適なガス圧力は、このような漏れを抑制する役割も果たし得る。好適な細孔径は、約0.1~約2000ミクロン、または約0.1~1000、0.1~500、0.1~100、0.1~50、0.1~10、1~2000、10~2000、100~2000、500~2000、500~1000、1~1000、1~100、10~1000、10~100、または10~500ミクロンであり、例えば、約0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000ミクロンである。これらは、独立して、最大または平均細孔径であり得る。第2の誘電バリアを挟んだ、好適な圧力差は、少なくとも約10kPa、または少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100kPa、または約10~約100kPa、または約10~50、10~20、20~100、50~100または20~50kPa、例えば、約10、15、20、25、30、34、40、45、50、60、70、80、90または100kPaである。この圧力は、放電域を通るガスの流量を調節することによって、および/または放電域からの出口(存在する場合)を狭くすることによって生成され得る。いくつかの例では、多孔質の第2の誘電バリア以外の放電域からの出口がない。この場合、放電域を通過するすべてのガスは、第2の誘電バリアを通って出て、プラズマおよび/またはプラズマからの副産物を取り込む。したがって、本発明の一形態では、第2の誘電バリアを挟んだ圧力差は、ガスおよび/またはプラズマを放電域から液体内へ通過させるのに十分である。これにより、気泡が液体中に形成される。プラズマおよび/またはプラズマ副産物は、次いで、液体を処理するように、気液バリアを越えて液体内へ通過することができる。一般に、第2の誘電バリアの細孔径が細かいほど、液体中に形成される気泡は小さくなり、したがって気液界面面積は大きくなる。界面面積を大きくすると、移動(transfer)速度が増加し、したがって処理がより効率的になる。しかしながら、細孔径が低減されると、第2の誘電バリアを通る流量も、第2の誘電バリアを挟んだ特定の圧力に対して低減する。したがって、細孔径と圧力との好適な組み合わせを使用して、所望のレベルの処理効率を達成する必要がある。この組み合わせは、日常的な実験によって容易に決定され得る。気泡が第2の誘電バリアを取り囲む液体の内部に形成される場合、液体が、液体中の圧力の蓄積を防止するように、外部大気と接触または接続されることが好ましい。
【0044】
放電ギャップ(すなわち、放電域の厚さ)、放電量(すなわち、放電域の体積)、電圧および周波数を含む一範囲のプラズマ制御パラメータが装置内で制御されて、水中に制御されたプラズマ反応種を生産してもよい。好適な放電ギャップは、約1~約50mm、または約1~40、1~30、1~20、1~10、10~50、20~50、30~50、40~50、10~30または20~40mm、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45または50mmである。放電量は、放電ギャップ、および放電域の長さに依存する。一般に、放電域のサイズは、処理される液体の所望のスループットに依存する。適切な放電量は、約10-2~約10cm、または約10-2~10、10-2~1、1~10、10~10、10-2~2*10、1~10または10-1~10cm、例えば、約10-2、5*10-2、0.1、0.5、1、5、10、50、100、500、1000、5000、10、2*10、5*10または10cmである。好適な放電電圧は、約1~約150kV、または約1~100、1~50、1~10、10~150、50~150、100~150または50~100kV、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150kVである。放電ギャップが小さいほど、プラズマを生成するために必要な電圧は、低くなる。印加電圧は、AC、DCまたは整流ACであり得る。約1から約1012Hzの間、または約1~1010、1~10、1~10、1~10、1~10、10~1012、10~1012、10~1012、10~1012、1010~1012、10~10、10~1010または10~10、例えば、約1、10または100Hz、1、10または100kHz、1、10または100MHz、1、10または100GHzまたは1THzの周波数を有してもよい。本発明の方法は、水、廃水、食品、医療デバイス、または反応性水または液体での処理が有効である他の物体に対する微生物または化学的汚染除去のために使用され得る。
【0045】
本発明の装置および/または方法は、約10から約90℃の間、または約20から90の間、30から90の間、40から90の間、50から90の間、60から90の間、70から90の間、80から90の間、10から80の間、10から70の間、10から60の間、10から50の間、10から40の間、10から30の間、10から20の間、20から50の間、50から80の間、または20から40℃の間、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85または90℃の温度で動作し得る。
【0046】
プラズマ中に作成される反応種は、過酸化水素(H)、オゾン(O)、硝酸塩(NO3-)ならびに亜硝酸塩(NO2-)のような長寿命種、および、ヒドロキシルラジカル(OH・)、一酸化窒素(NO・)、原子状酸素(O)、ペルオキシ硝酸塩(OONO2-)ならびにペルオキシ亜硝酸塩(ONOO/ONOOH)のような(比較的)短寿命の種を通常含む活性酸素窒素種(RONS)を含んでもよい。本発明の方法を使用して生成された活性酸素種(OH・、H、O)に関するデータの一例を図3に示す。ガス流量および水温の関数としてのNO2-生成の一例を図4に示す。図5は、空気に対するガス励起スペクトルの一例を示し、リアクタ放電ギャップ内でその場で励起された窒素酸素種を示す。これらの種は、液体のpHの低下をもたらすことができる。PAWは、細菌、バイオフィルム、真菌、アメーバおよびウイルスに対する抗菌剤として使用することができる。同様に、農薬、抗生物質、医薬品、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)などの化学的汚染物質を分解することができる。また、硝酸塩などを生産した後、植物または細胞へ施用した窒素種を利用することによって、植物肥料として使用することもできる。pHの低減により、処理後および使用前に液体のpHを調整することが必要となり得る。液体を中和することが必要となり得る。
【0047】
大気中の非熱プラズマリアクタは、水を処理する、および/またはPAWを生成するための手段として本明細書に提示される。リアクタおよび関連装置は容易に拡張可能であるので、装置は、大量の液体を処理するように、および/または高い液体スループットを有するようにサイズ設定することができる。したがって、装置は、約1から約10,000L/時間以上の間、または約1~1000、1~100、1~10、10~10,000、100~10,000、1000~10,000または500~5000L/時間、例えば、約1、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000または10,000L/時間または10,000L/時間より大きい量のうちいずれかを処理するように、すぐに調整されてもよい。スループットを調節するために調整されるパラメータには、放電域の直径、放電ギャップ、放電域の長さ、ガス流量、液体を含む容器の体積などが含まれる。いくつかの実例では、1つのリアクタより多い、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、または10を超えるリアクタ(リアクタは、先に論じたように、高電圧電極と、第1および第2の誘電バリアと、これらのバリア間の放電域とのアセンブリである)は、液体の処理速度を増加させるように同じ液体本体に浸漬されてもよい。これらは、同じ寸法を有してもよく、同じ電圧で動作してもよく、または異なる寸法であってもよくおよび/または異なる電圧で動作してもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、液体はバッチ単位で処理される。他の実施形態では、液体は連続的に処理される。このような実施形態では、装置を通る液体の流量は、効果的な処理を行うように制御され得る。流量が高すぎると、効果的な処理を行うには不十分なプラズマ/プラズマ副産物が水と接触する。
【0049】
一形態では、リアクタは、高電圧電極と、放電域へのガス入口を有する誘電バリア放電(DBD)の形態のプラズマ放電域とを含む。したがってDBDは、第1および第2の誘電バリアと、これらの間の放電域とを備える(またはこれらからなる)。DBDのために高電圧電極を覆う、または囲む第1の、一般に内部の誘電バリアは、石英、ガラス、セラミックまたはポリマー材料でできていてもよい。第2の、一般に外部の誘電バリアは、第1の誘電バリアを囲み、第1の誘電バリアと第2の誘電バリアとの間に放電域を画定する。使用時のDBDの一例では、リアクタは水に投入され、水は接地電極として作用し、投入型電極または導電性の水容器で直接接地されるか、または非導電性の水容器の外側で間接的に接地されるかのいずれかである。地金を水へ直接挿入すると、リアクタの結果として生じる化学的性質が変化し、電気化学電極として作用する。第2の、一般に外部の誘電バリアは、流れる誘導ガスに対して多孔質であり、これはガス出口およびプラズマ種を水へ導入する機構として作用する。
【0050】
本発明の一態様によれば、水は装置の一部であり、DBDのための接地電極として作用する。この回路が完成される手段は、結果として生じる化学的性質にとって重要である。少なくとも2つの選択肢が考えられる。第1の選択肢は、電気回路を完成させるために水に投入された、DBDに対する、リモート電極を使用することである。第2は、非金属製水容器の壁を接地することによって回路を完成することである。第1のアプローチでは、電気化学反応は電極で起こることができ、電極はその構成材料および表面積によって制御される。
【0051】
DBDの外部バリアは、ガスギャップと、安定したプラズマ放電を促進する誘電層とを維持する放電域の外壁として作用するだけではなく、プラズマを水と接触させる手段としても作用し得る。第2の誘電バリアの制御された気孔率は、ガスプラズマ種がDBDリアクタから出ることができることを意味する。細孔径は、放電ギャップへの水の流入を防止するために十分に小さく設計されている。細孔径は、形成される気泡のサイズ分布を制御する際にも重要である。多孔質DBD設計は、液体中に形成された反応種を導入するのにかかる時間を最小限に抑える。しかしながら、この設計により、単に放電域に形成される反応性ガス種(プラズマ残光)を導入するより多くのものが可能となる。誘導ガスが細孔を通過すると、プラズマ自体が出て周囲の水と接触することができる。このアプローチは、短寿命種を水へ導入する可能性を高めるだけではなく、溶媒和電子を水中へ導入する可能性もある。UV光は、石英などのUV透過性材料から構成されている場合、放電域から外部誘電バリアを通過することもできる。UV光は、プラズマによって生成されてもよい。これは、水中の汚染物質、特に微生物およびウイルスを破壊する際、役立ち得る。
【0052】
DBD設計は、放電域の環状ギャップがガスおよび放電電圧ガス入力によって決まる同心管の使用によって調整することができる。しかしながら、単位長さあたりの放電量は、DBDのためのより大きな直径の内部および外部誘電バリア間に同ギャップを維持しながら、これらのバリアを採用することによって増加させることができる。したがって、放電ギャップは、内部管と外部管との両方の半径が同様に増加するにつれて一定に保つことができる。この設計により、放電ギャップ、すなわち、2つの誘電バリア間の距離を増加させることなく、大量のガス分解を促進する。
【0053】
DBDリアクタを水中に投入することによって、装置は、自然強制対流を使用して熱エネルギーの蓄積の可能性を除去するための効果的なヒートシンクを有する。このことは、装置が連続モードで使用される場合、すなわち、水が第2の誘電バリアを通り過ぎて流れ、それによってシステム全体から熱を除去する場合、向上され得る。混合器要素の使用は、対流熱伝達を増加させるために使用することができるが、種とバルク流体との混合を通じて、バルク溶液中のプラズマからの準安定および/または不安定種の量も制御する。好適な混合器要素は、液体中に存在してもよく、動力付き混合器ブレードなどの能動的要素およびバッフルなどの受動的要素を含む。いくつかの実例では、熱除去を促進するために液体と接触している冷却器が存在し得る。これは、単純な熱交換器、ジャケット付き容器、または冷却器の任意の他の好適な形態であってもよい。
【0054】
本装置は、放電域へ導入されるガスの量、放電域内のガスの滞留時間、放電域内の分圧、および液体中に形成する気泡のサイズを制御するガス流量制御器を備えてもよい。ガスの混合物が放電域へ供給される場合、ガスを所望の割合で混合するためのガス混合器があってもよい。これは、ガスが放電域に入る前に混合されるように、ガス入口の前に位置してもよい。あるいは、好適に混合されたガスの供給を使用してもよい。
【0055】
本装置は、パルス状AC電圧、正もしくは負のDC電圧、またはパルス状無線周波数電圧によって作動してもよい。
【0056】
第2の誘電バリアは、ガスと液体とを接触するが、超音波を介して積極的に振動させてもよく、例えば、約20kHz~約1MHz(または約20~500、20~100、20~50、50~1000、100~1000、500~1000、100~500または200~700kHz、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900または1000kHz)で、ナノメートルまたはマイクロメートルの範囲で制御された気泡を生産する。小径の気泡は、より大きな気泡よりも安定しており、より大きな界面表面積を提供することが知られている。したがって、これは、液体内へのプラズマおよび/またはプラズマ副産物の移動を促進し得る。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、第1の誘電バリアは存在しない。このような実施形態では、放電域は、高電圧電極と第2の誘電バリアとの間に画定される。したがって、高電圧電極は、放電域内のガスと接触し、および/または放電域を通過する。
【0058】
特定の実施形態では、第2の誘電バリアは、非多孔質であり、および/または放電域内のガスおよび/または放電域を通過するガスに対して不透過性である。このような実施形態では、放電域からの出口は、一般的に第2の誘電バリアと接触しているが、第2の誘電バリアから区別される。出口は、ガスおよび/または放電生成物が放電域から液体内へ通過することを可能にするように配置かつ設計されている。したがって、これは、ガスおよび/または放電生成物による液体の処理をもたらし得る。
【0059】
上述した実施形態(第1の誘電バリアおよび非多孔質の第2の誘電バリアの不在)は、別々に使用されてもよく、組み合わされてもよい。
【0060】
したがって、本発明は、任意選択で大量の水または液体を処理または活性化するシステムを提供し、水へ投入されながら大気プラズマを作成するように構成された装置を備え、本装置は、典型的に、高電圧電極と、高電圧電極を囲む内部誘電バリアと、ガスを流すための放電域と、ガス透過性であり、一般に多孔質の、プラズマおよび水を接触させる外部誘電バリアとを有する。バルク水は、接地電極として作用し得る。追加で、または代替で、ヒートシンクとして作用し得る。したがって、放電ギャップは、非多孔質誘電バリアと多孔質誘電バリアとの間に維持されてもよい。作動ガスは、空気であってもよく、空気、窒素、酸素、二酸化炭素および希ガスから選択される少なくとも2つのガスを含んでもよい。プラズマ放電は、多孔質外部誘電バリアを介して水と直接接触してもよい。プラズマ誘導反応ガス種は、多孔質の第2の誘電バリアを介して水と直接接触してもよい。高電圧電極へ印加される電圧は、少なくとも約1kV RMSおよび最大で約150kV RMSであってもよい。
【0061】
本発明はまた、本明細書で先に記載した装置を被処理水の体積に浸漬し、作動ガスまたはガスを装置の放電域内へ流し、高電圧電極と接地された水との間の高電圧差を使用して作動ガス中にプラズマを誘導することを含む、水中の汚染物質を殺菌または分解する方法を提供する。
【0062】
本発明はさらに、被処理水の量に装置を浸漬し、作動ガスまたはガスを装置の放電域内へ流し、高電圧電極と接地水との間の高電圧差動を使用して作動ガス中にプラズマを誘導することを含む、プラズマ活性水(PAW)を生産する方法を提供する。
【0063】
実施形態
図1および図2は、本発明の装置の図式的表現を示す。高電圧生成器(図示せず)は、高電圧金属製電極10へ接続されている。第1の誘電バリア20は、高電圧電極10を囲んで被覆電極を形成する。誘電バリア20の効果は、電極10とアースとの間に流れる電流を制限し、かつアークの形成を防止することである。誘電バリア20はまた、高電圧電極10を、誘電バリア20を囲む放電域30から物理的に分離し、高電圧電極10と、放電域30内の不十分な圧力のために放電域30に入る可能性のある水との接触を防止する。放電域30は、内部誘電バリア20の外面と外部誘電バリア40の内面との間に維持される。内部誘電バリア20と外部誘電バリア40との間のギャップの距離(すなわち、放電域30の厚さ)は、特定のガスに必要な降伏電圧を決める。外部誘電バリア40は、ガスおよび/またはプラズマが、プラズマが生成される放電域30から、外部誘電バリア40と接触している水へ通過することを可能にするために、多孔質である。図1では、外部誘電バリア40に接触している水は、金属製アース結線50によって接地されているが、図2では、アース結線50は、水を収容する非金属容器60へ結合されている。
【0064】
動作時、誘導ガスは、入口弁を通って放電域30に入り、多孔質外部誘電バリア40を通って出る。多孔質誘電バリア40は、放電域30のギャップを維持する手段、およびプラズマ放電とその反応種を周囲の水中に接触させる手段の両方として作用する。好適な高電圧が高電圧電極10へ印加されると、プラズマが放電域30を流れる誘導ガスに形成される。誘導ガスが外部誘電バリア40を囲む水中へ通過すると、これとともに、プラズマおよび/または水を処理するプラズマ副産物を取り込む。これらは、水中の微生物を死滅させ、および/または水中の有害化学物質を破壊もしくは分解することもできる。これらはまた、肥料および燃料などの化学物質としても使用され得る。図6は、COを供給ガスとして使用する動作時の装置を示し、リアクタのマイクロホールから出て形成された気泡内にプラズマ放電が見られる。図7は、多孔質リアクタから出て形成された気泡内のプラズマ放電を示す。
【0065】
解釈
マーカッシュ群
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者であれば、本発明がそれによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバまたはメンバのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0066】
時系列
本明細書の目的のために、方法ステップが順序通りに記載されている場合、順序は、ステップが、順序を解釈する他の論理的な様式がない限り、その順序で時系列に行われることを必ずしも意味していない。
【0067】
実施形態
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所で「一実施形態では」または「実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を参照しているわけではないが、あり得る。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示から当業者に明らかなように、1つまたは複数の実施形態で任意の好適な様式で組み合わされ得る。
【0068】
同様に、本発明の例示実施形態の上記の説明では、本発明の様々な特徴は、開示を合理化し、様々な発明の態様の1つまたは複数についての理解を助ける目的で、単一の実施形態、図、またはそれらの説明において、ともにグループ化されることもあることを理解されたいべきである。しかしながら、この開示方法は、請求された発明が各請求項において明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、単一の前述の開示実施形態のすべての特徴よりも少ない。したがって、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、本明細書によって、この発明を実施するための形態に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として自立している。
【0069】
さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴は含まず、異なる実施形態の特徴の組み合わせが本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲において、請求項に係る実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0070】
物体の異なる実例
本明細書で使用されるように、特に指定しない限り、順序形容詞「第1」、「第2」、「第3」などの使用は、共通の物体を記述するために、類似の物体の異なる実例が参照されていることを示すだけであり、そのように記述された物体が、時間的、空間的、ランク付け、または任意の他の様式のうちのいずれかで、所与の順序でなければならないことを暗示することを意図するものではない。
【0071】
具体的な詳細
本明細書に提供される説明において、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることを理解されたい。他の実例では、よく知られた方法、構造および技術は、この説明の理解を曖昧にしないために詳細に示されていない。
【0072】
用語
図面に例示される本発明の好ましい実施形態を説明する際、明確にするために、特定の用語が再分類される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の技術目的を達成するために同様の様式で動作するすべての技術的等価物を含むことを理解されたい。
【0073】
本明細書の目的で、「プラスチック」という用語は、広範囲の合成または半合成重合生成物の総称を意味し、一般に炭化水素ベースのポリマーからなるものと解釈される。
【0074】
本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、「および」、もしくは「または」、または、これらの両方を意味する。
【0075】
本明細書で使用されるように、名詞に続く「(s)」は、名詞の複数形および/または単数形を意味する。本明細書における単数名詞の使用は、文脈がそのような制限を示していない限り、指定された整数の複数の存在を排除することを意図するものではない。
【0076】
「備える」および「含む」
本発明の先行する説明に続く特許請求の範囲、および先行する説明では、文脈上、明確な言語または必要な含意のために別段の必要がない限り、「備える」(comprise)という語または「備え」(comprises)もしくは「備えている」(comprising)などの変形は、包括的な意味で、すなわち、記載された特徴の存在を指定するために使用されるが、本発明の様々な実施形態でのさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。これらの用語は、記載された完全体のいかなる最小比率も意味するものと解釈されるべきではない。
【0077】
本明細書で使用されるように、含んでいる(including)、含む、または含み(includes)という用語のいずれか1つは、用語に続く少なくとも要素/特徴を含むことを意味するが、他のものを排除するものではない開いた用語でもある。したがって、含むは、備えることと同義であり、備えることを意味する。
【0078】
発明の範囲
したがって、本発明の好ましい実施形態であると考えられるものが記載されているが、当業者は、発明の精神から逸脱することなく、それに対して他のさらなる修正がなされ得ることを認識し、そのような変更および修正のすべてが本発明の範囲内に入ることを主張することが意図される。ステップは、本発明の範囲内で記載される方法に対して追加または削除され得る。
【0079】
本発明を具体的な実施例を参照して説明したが、当業者であれば、本発明が多くの他の形態で具現化され得ることを理解する。
【0080】
産業上の利用可能性
上記から、記載された配置が浄水および農業産業に適用可能であることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をプラズマで処理する装置であって、
間に放電域を画定するように設けられた高電圧電極および誘電バリアを備え、
記誘電バリアはガス透過性であり、
前記放電域は、該放電域を通るガス流を受け入れるように構成され、
前記高電圧電極は、前記放電域内のガスおよび/または前記放電域を通過するガスと接触している、装置。
【請求項2】
接地電極をさらに備え、前記接地電極は、前記誘電バリアによって前記放電域から分離されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体を収容するための容器をさらに備え、使用時、前記容器内の液体は、前記誘電バリアと接触し、前記誘電バリアによって前記放電域から分離されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記容器は誘電材料を備え、前記装置は、前記誘電材料と接触している接地電極を備え、前記接地電極は、使用時に、前記誘電材料が前記液体を前記接地電極から分離するように配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
接地電極を備え、前記接地電極は、使用時に、前記接地電極が前記容器内の液体と電気的に接触するように配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記高電圧電極、前記放電域、および、前記誘電バリアが同心状である、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
記誘電バリアは多孔質である、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
記誘電バリアは疎水性である、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
ガスを前記放電域内へ導入するガス入口と、前記ガスを前記放電域に通過させるガス推進装置と、を備える請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記放電域内のガスにプラズマを発生させるのに十分な電圧を前記高電圧電極へ印加することができる電圧発生器を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記電圧は、約1kV RMSから約150kV RMSの間である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
液体をプラズマで処理する方法であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置を提供し、
ガスを前記放電域に通過させ、
前記放電域から離れた前記誘電バリアの側面を前記液体へさらし、
前記放電域内の前記ガス中にプラズマを発生させるのに十分な電圧を前記高電圧電極へ印加すること、を含む方法。
【請求項13】
前記ガスは、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、およびこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガスは空気である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体は水性液体である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体は水である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
記誘電バリアを挟んだ圧力差は、前記ガスを、前記放電域から前記誘電バリアを通って前記液体内へ通過させるのに十分である、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧は、約1kV RMSから約150kV RMSの間である、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体は、汚染物質を含み、前記方法は、前記汚染物質を少なくとも部分的に除去および/または破壊する、請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記汚染物質は、微生物および化学的汚染物質からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記汚染物質は、医薬品、内分泌かく乱物質およびPFASのうちの1つまたは複数を含む、請求項20に記載の方法。
【国際調査報告】