(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】アミン、チオールおよび不飽和分子を含む速硬化熱硬化性樹脂用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/887 20200101AFI20230306BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K6/887
A61K6/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537863
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 SE2020051218
(87)【国際公開番号】W WO2021126059
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242214
【氏名又は名称】バイオメディカル ボンディング アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコーフ、ミーケル
(72)【発明者】
【氏名】グランスコーグ、ヴィクトル
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA20
4C089BC06
4C089BC07
4C089BC12
4C089BD05
4C089BE01
4C089BE06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのチオール基および少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含むトリアジン-トリオン(TATO)ベースの2つの化合物を含む組成物に関し、組成物が、アミン基またはアミン化合物およびI型光開始剤をさらに含む。組成物は、歯および骨を処置するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1化合物、第2化合物、および任意に第3化合物を含む組成物であって、前記第1化合物が、(1)による一般構造:
【化1】
(式中、各R1は、個別にC1~C10アルキル基であり、R1の少なくとも1つは少なくとも1つのチオール基を含む)を有し;前記第2化合物が、(2)による一般構造:
【化2】
(式中、各R2は、個別にC1~C10アルキル基であり、R2の少なくとも1つは少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を含む)を有し;
前記第1化合物、前記第2化合物、または前記任意の第3化合物のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのアミン基を含み;
前記任意の第3化合物がアミン含有化合物であり;および
前記組成物が、I型光開始剤および任意に安定剤をさらに含む、組成物。
【請求項2】
前記第3化合物が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合、または少なくとも1つのチオールを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記第1化合物が、TMTATO、1,3,5-トリス(2,3-ジメルカプトプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TDMTATO)または1,3,5-トリス(3-メルカプト-2-メチルプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TMMTATO)から選択され、好ましくはTMTATOである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記第2化合物が、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TATATO)、1,3,5-トリ(プロプ-2-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TPYTATO)、または1,3,5-トリ(ヘキサ-5-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(THYTATO)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、以下の構造:
【化3】
(式中、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合またはチオールを含む)
を有する第3化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMA)または3-(アリルオキシ)-2-((アリルオキシ)メチル)-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-2-メチルプロパンアミド(BADMAPA)から選択される第3化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1化合物の量が、前記第1化合物、前記第2化合物および前記第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2化合物の量が、前記第1化合物、前記第2化合物および前記第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記任意の第3化合物の量が、前記第1化合物、前記第2化合物および前記第3化合物の総量の0.1~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、またはより好ましくは0.1~10重量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記任意の第3化合物が、3を超える、好ましくは6を超える、より好ましくは8および13の間のpKaを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が安定剤を含み、前記安定剤が、好ましくはフェノール化合物、キノン化合物またはリン化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
安定剤の量が、0.05~5重量%、好ましくは0.5~3重量%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が充填剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
充填剤の量が、20~90重量%、好ましくは25~80重量%、またはより好ましくは40~75重量%である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、溶媒を本質的に含まない、または完全に含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物中のチオール基と二重結合または三重結合などの不飽和基との間の官能性の比率が、1.10:1~1:1.10の間、好ましくは1.05:1~1:1.05の間、より好ましくは1.01:1~1:1.01の間である、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中のチオール基に対するアミン基のモル量が、0.1~100モル%の間、好ましくは0.1~50モル%の間、または0.1~20モル%の間、またはより好ましくは0.1~5モル%の間である、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記任意の第3化合物が、ホスホン酸基などの三価のリン含有基を含まない、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記I型光開始剤が、過酸化物、ニトリル、ホスフィンオキシド、またはゲルマニウム系光開始剤から選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも2つの適切な容器を含むキットであって、キットの第1容器が、以下の一般構造:
【化4】
(式中、R1は、少なくとも1つのチオール基を有するC1~C10アルキル基である)を有する第1化合物を含み、およびキットの第2容器が以下の構造:
【化5】
(式中、R2は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を有するC1~C10アルキル基である)を有する第2化合物を含み、および任意に、前記第1容器、前記第2容器または任意の第3容器の少なくとも1つが、第3化合物をさらに含み、および前記第1化合物、前記第2化合物および/または前記任意の第3化合物が、少なくとも1つのアミン基を含み;
前記任意の第3化合物がアミン含有化合物であり;および
前記第1容器、前記第2容器、または前記任意の第3容器の少なくとも1つが、I型光開始剤、および任意に安定剤、および任意に充填剤を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折の固定または歯の修復のための光硬化性樹脂として使用され得る組成物に関する。当該組成物は、速硬化特性および良好な機械的特性を提供する。本発明は、様々な用途で使用され得、キットとして提供され得る。
【背景技術】
【0002】
速硬化性の樹脂ベースの材料は、その耐久性および自然な形状に形成されて数秒で硬化されるという汎用性により、歯科医業で普及してきた。歴史的に、メタクリレートモノマーがこれらのタイプの樹脂に使用されてきたが、官能基の不十分な変換および未反応のモノマーの浸出につながるガラス化などのいくつかの欠点が伴う。段階的なラジカル重合を介して重合されたチオール-エンおよびチオール-イン樹脂が、メタクリレート系樹脂の代替物として提示されてきたが、これは、それらの段階的な反応がモノマーのより高い変換につながるためである。高度に架橋されたチオール-エンおよびチオール-イン材料は、歯科用または骨用の接着剤や複合材料などの光硬化性樹脂ベースの材料に使用される大きな可能性が証明されてきた。概して、使用されるチオール化合物は、3-メルカプトプロピオン酸またはチオグリコール酸に基づくものであるが、これは、これらのチオールがその近傍にエステルを有することにより、S-H結合の安定性が低下され、ラジカルが容易に形成されるためであり、これは、炭素-炭素二重または三重結合のラジカル反応での高い反応性につながる。しかし、これらのエステルはまた、吸水を誘発することによってその材料を感水性にし、加水分解を可能にするが、これは、歯科用充填または骨固定のための特性を低下させる。また、これらのエステルによる吸水は、高度に架橋された材料を、そのガラス転移温度を37℃の生理学的温度より上から下に低下させるのに十分に潤滑させることができ、したがって、体内構造の充填および固定には使用できなくなる。より耐久性のある材料を作るために、エステルを含まない化合物が使用されてきた。しかし、アルキルチオール(近くにエステルがない)は、ラジカル反応での反応性が低く、反応速度を低下させ、ラジカルチオール-エンおよびチオール-インの重合の両方に対する架橋の減少および材料の軟化につながりかねず、これは、チイルラジカルの形成が重合の開始と成長の両方にとって重要であるためである。
【0003】
触媒または促進剤を使用して反応速度を上げ、それにより開始剤濃度の低減を可能にすることができる。光開始剤の濃度を下げることで、潜在的な硬化深さが向上するだけでなく、材料から浸出して毒性を引き起こしかねない開始剤残留物の量が減少する。アミンは塩基触媒によるチオール-エン反応に頻繁に使用されており、その反応はマイケル付加を介して進行する。しかし、チオール-エンまたはチオール-イン反応のI型ラジカル光開始剤バージョンを使用する場合、アミンは、硬質材料への高速樹脂反応のための触媒としては好ましくないことがわかっている。光開始のチオール-エンおよびチオール-イン反応におけるアミンの使用は、その反応を著しく遅らせることが開示されており、樹脂ベースの材料の速硬化に対する何の利点の兆候も示されていない。さらに、アミンは、II型光開始剤系に対する共開始剤としても一般的に使用されており、ここで、アミンは励起されたII型光開始剤と電子/プロトン移動を介して作用する。しかし、本分野では、チオール-エン系において、チオールがそれ自体で共開始剤として作用することができるため、アミンが必要とされないことは周知である。実際、アミンの添加は、ラジカルチオール-エン反応における反応速度および最終変換を低下させることが示されている。この効果は特に、アミンなどの共開始剤が光誘起ラジカル形成に関与していないI型光開始剤に関して開示されている。
【0004】
PCT/EP2017/077350およびPCT/EP2018/079289は、TATATO、TMTATO、1,3,5-トリ(プロプ-2-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン(TPYTATO)および1,3,5-トリ(ヘキサ-5-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン(THYTATO)を含む、チオール-エンおよびチオール-イン水溶液のアミン含有光開始組成物を開示しており、ここで、アミン含有化合物にはホスホン酸本体も含まれており、このような化合物は、良好な重合に高度に関連する接着特性を妨げないように最小限の量でしか使用することができなかった。ホスホン酸化合物がアミンを含むか含まないかで接着干渉は変化しなかったため、アミンの存在は何の効果も示さなかった。
【0005】
機械的耐久性が高く、感水性が低い、チオール-エンおよびチオール-イン材料の速硬化性樹脂に基づく材料は、そのエリアを歯科用および骨折修復用の機能的な市販製品へと発展させることを可能にするために必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することである。本発明の樹脂組成物は、モノマー漏れの問題がなく、骨の修復および歯の修復などの湿潤環境において高い強度を有する速硬化性材料を可能にする。新規の樹脂は、骨および歯の修復における光硬化チオール-エンまたはチオール-イン樹脂の導入に不可欠であり、かつメタクリレート樹脂の使用および潜在的に有害であることが知られているビスフェノールA誘導体の使用からそれ自体を遠ざけもする。
【0007】
本発明は、光開始剤およびアミン触媒の添加時にのみ即時硬化に達する、光開始チオール-エンまたはチオール-インカップリング重合を使用する。本発明は、チオール-エンおよびチオール-インの重合の高い変換を活用する他に、数秒で硬化されるという利点も有し、湿潤状態での強力な材料として、これまでに示されておらず、かつ臨床環境での使用を可能にする、特徴を維持することができる。
【0008】
第1の態様では、本発明は請求項1記載の組成物に関する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、少なくとも2つの適切な容器を含むキットに関し、キットの第1容器は、以下の一般構造:
【化1】
(式中、R1は、少なくとも1つのチオール基を有するC1~C10アルキル基である)を有する第1化合物を含み、キットの第2容器は以下の構造:
【化2】
(式中、R2は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を有するC1~C10アルキル基である)を有する第2化合物を含み、任意に、第1容器または第2容器の少なくとも1つは第3化合物をさらに含み、第1化合物、第2化合物および/または任意の第3化合物は、少なくとも1つのアミン基を含み、
任意の第3化合物は以下の構造:
【化3】
(式中、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合またはチオールを含む)を有し、
第1容器、第2容器、または任意の第3容器の少なくとも1つは、光開始剤、および任意に安定剤、および任意に充填剤を含む。
【0010】
本明細書に記載されるすべての実施形態は、別段の記載がない限り、すべての態様に関し、別段の記載がない限り、すべての実施形態が組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】樹脂組成物における第1化合物として適した分子の構造を図示する:a)1,3,5-トリス(3-メルカプトプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TMTATO);b)1,3,5-トリス(2,3-ジメルカプトプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TDMTATO);c)1,3,5-トリス(3-メルカプト-2-メチルプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TMMTATO)。
【
図2】樹脂組成物における第2化合物として適した分子の構造を図示する:a)1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TATATO);b)1,3,5-トリ(プロプ-2-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TPYTATO);c)1,3,5-トリ(ヘキサ-5-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(THYTATO)。
【
図3】樹脂における第3化合物として適した分子の構造を図示する:a)N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMA);b)2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA);c)3-(アリルオキシ)-2-((アリルオキシ)メチル)-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-2-メチルプロパンアミド(BADMPAPA);d)2-(ジメチルアミノ)エチル3-(アリルオキシ)-2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパノエート(BADMEAPA);e)2-(2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブトキシ)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン;f)3-ジメチルアミノ-1-プロピン;g)1-ジメチルアミノ-2-ペンチン;h)トリエチルアミン;i)1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン。
【
図4】適切な光開始剤の構造を図示する:a)ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO);b)エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート;c)(ジエチルゲルマネジイル)ビス((4-メトキシフェニル)メタノン)(Ivocerin(登録商標))。
【
図6b】機械的特性:異なる照射時間および硬化時間を使用した樹脂の曲げ強度を示す。
【
図6c】機械的特性:5秒間の照射後の樹脂の曲げ弾性率を示す。
【
図6d】機械的特性:変性樹脂のその参照に対する5秒間の照射後の曲げ弾性率および曲げ強度(%単位の値)を示す。
【
図7】動的機械分析からの温度上昇に伴う貯蔵弾性率に対する吸水の効果を示す。
【
図8b】2-プロパノールまたはUV光のいずれかで滅菌された硬化樹脂2.2の細胞毒性を示す。
【
図9】3点曲げ試験からの異なる硬化樹脂の曲げ弾性率および曲げ強度を示す。
【
図11】骨折固定モデルの周期的荷重データの典型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、アミン触媒が、I型光開始剤を使用して光開始ラジカルを介してチオール-エンおよびチオール-インの組成物のための硬化速度を向上させることができることを示した。これらのタイプの樹脂ベースの材料について臨床使用に到達するには、速硬化が必要とされる。本発明は、繊維強化接着パッチ(FRAP)の開発に関連しており、これは、様々な用途で骨折および骨欠損を処置する新しい革新的な方法を提供し得る、骨折の接着固定のための新規の概念である。FRAPは国際公開第2011/048077号にさらに記載されており、本発明はFRAP方法論で使用され得る。本発明はまた、チオール-エンおよびチオール-インの歯修復材料に関連しており、PCT/EP2017/077350およびPCT/EP2018/079289に記載される接着増強プライマーと一緒に使用することができる。
【0013】
I型光開始剤は、元の光開始剤の2つのラジカルフラグメントへの切断反応によって作用する。UV光の照射は、均等結合開裂(homolytic bondage cleavage)および高い反応性を有する2つのラジカル種の生成につながる。その後、これらのラジカルは重合を開始する。
【0014】
これまで、チオール-エンおよびチオール-インの樹脂ベースの材料の硬化および耐久性に関する問題は、骨および歯の修復に関する臨床状況での使用へのこれらの材料の拡張を妨げてきた。しかし、本発明者らは、これらの重大な問題を解決することができる新しい速硬化性光開始樹脂組成物を開発した。この樹脂ベースの材料には、歯の充填および歯の修復などのいくつかの用途分野があり、これは、現在のメタクリレート系歯科材料が毒物学の観点から適していない、FRAPなどの骨折手術への樹脂ベースの材料の新しい技術移転も可能にする。
【0015】
このコンセプトは、材料の利用および性能に関する長年の研究に基づいている。硬化直後および硬化の24時間後の機械的試験は、文献に記載される一般的な組成物と比較して、本発明の硬化の有意な改善を示している。当該組成物は、骨折のエクスビボでの固定およびラットの大腿骨骨折に関する動物治験において有用であることが証明されている。当該組成物は、有望な結果が伴って初めてのエクスビボでの歯修復にも使用された。
【0016】
本発明の組成物の利点は、それが速く硬化し、モノマーの漏出が無視できることを示し、より高い強度および再現性(低い標準偏差)を提供することである。
【0017】
組成物
本発明による組成物は、第1化合物、第2化合物、および任意に第3化合物を含む。第1化合物は、以下の一般構造:
【化4】
(式中、R1は、少なくとも1つのチオール基を有するC1~C10アルキル基である)を有し、第2化合物は、以下の構造:
【化5】
(式中、R2は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を有するC1~C10アルキル基である)を有し、任意に第3化合物を有する。第1化合物、第2化合物、または任意の第3化合物のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのアミン基を含む。第1化合物および第2化合物の構造は、トリアジン-トリオン(TATO)ベースであるように記述され得る。組成物は、好ましくは、過酸化物、ニトリル、ホスフィンオキシドおよびゲルマニウム系光開始剤から選択されるI型光開始剤、および任意に安定剤をさらに含む。好ましい実施形態では、組成物は、光開始剤の早すぎる活性化を回避するために、光保護または遮蔽された容器に入れられる。
【0018】
さらに、一実施形態では、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物のうちの1つは、少なくとも1つのアミン基を含む。一実施形態では、好ましくは、第3化合物は少なくとも1つのアミン基を含み、より好ましくは、第3化合物は少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合または三重結合またはチオールを含む。組成物は、光開始剤および任意に安定剤をさらに含む。
【0019】
第1化合物および第2化合物を含むチオール-エンまたはチオール-インの組成物へのアミン含有分子の添加は、光開始重合を使用して組成物の硬化速度を数時間から数秒に増加させるための主要な要因であることが発見された。硬化速度の増加は、ラジカルチオール-エンおよびチオール-インの反応におけるアミンの現在の見解ではアミンが反応速度を遅らせるというものであるため、驚くべきことであった。別の驚くべき効果は、アミン基が開始剤として主要な程度まで作用せず、そのため、早過ぎる硬化や使用不能な混合物につながるマイケル付加反応による予備重合がほとんど生じないことである。したがって、予想外に速硬化性であるが安定した組成物が本明細書に示され、これは、有意な予備重合を誘発することなく光開始樹脂として混合後に数時間使用することができ、臨床場面でのその使用を可能にする。
【0020】
第1化合物は、構造(1)による任意の適切なチオール化合物であり得る。第1化合物は、1つ、2つ、または3つのチオール基を含み得る。一実施形態では、第1化合物は、少なくとも2つ、または好ましくは少なくとも3つのチオール基を含む。1つの好ましい実施形態では、第1化合物は、TMTATO、1,3,5-トリス(2,3-ジメルカプトプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TDMTATO)または1,3,5-トリス(3-メルカプト-2-メチルプロピル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TMMTATO)から選択される。別の実施形態では、第1化合物は、好ましくはTMTATOである。一実施形態では、第1化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%である。理論に縛られることなく、これらの量は、特性が改善された熱硬化性樹脂をもたらすと考えられる。
【0021】
第2化合物は、任意の適切な不飽和化合物であり得る。第2化合物は、少なくとも3つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を含み得る。一実施形態では、第2化合物は、アリル基、または末端もしくは非末端の二重結合または末端もしくは非末端の三重結合を含む。
図2には、適切な第2化合物の非限定的な例が開示されている。一実施形態では、第2化合物は、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TATATO)、1,3,5-トリ(プロプ-2-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TPYTATO)または1,3,5-トリ(ヘキサ-5-イン-1-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(THYTATO)から選択される。別の実施形態では、第2化合物はTATATOである。一実施形態では、第2化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%である。
【0022】
さらに別の実施形態では、第1化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%であり、第2化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%である。
【0023】
任意の第3化合物は、任意の適切なアミン含有化合物であり得る。一実施形態では、任意の第3化合物は以下の一般構造:
【化6】

(式中、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合またはチオールを含む)を有する。各R3、R4およびR5は、任意の適切な置換基、好ましくは水素、またはアルキル、アルキレン、アルコキシ、アルキルエステル、アルキルエーテル、メタクリル基、アルキルアミド、メタクリルアミド、または対応する共役酸であり得る。好ましい実施形態では、R3は、ビニル基、アクリレート、メタクリレート基、またはメタクリルアミド基などの二重結合含有基、または三重結合またはチオールなどの、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重、三重結合またはチオールを含む基であり、R4およびR5は、任意の適切な置換基、好ましくは水素、またはアルキル、アルキレン、アルコキシ、アルキルエステル、アルキルエーテル、メタクリル基、アルキルアミド、メタクリルアミドであり得る。好ましい実施形態では、R3、R4およびR5基は、第3化合物、またはその共役酸のpKaが、3より高く、好ましくは6より高く、より好ましくは10より高く、より好ましくは8および13の間となるように選択される。別の実施形態では、R3、R4およびR5はいずれも、ホスホン酸基などの三価のリン含有基ではない。そのような基は化合物を酸性にし、これは特定の用途では不利であると考えられている。第3化合物は触媒として作用し、二重、三重結合、またはチオールを含む触媒を使用する利点は、それらが、形成されたポリマーまたは熱硬化性樹脂に組み込まれ得、それによって、触媒の漏出の可能性を低減することである。一実施形態では、任意の第3化合物は、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)メタクリルアミド(DMAPMA)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、3-(アリルオキシ)-2-((アリルオキシ)メチル)-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-2-メチルプロパンアミド(BADMPAPA)、2-(ジメチルアミノ)エチル3-(アリルオキシ)-2-((アリルオキシ)メチル)-2-メチルプロパノエート(BADMEAPA)、2-(2,2-ビス((アリルオキシ)メチル)ブトキシ)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、1-ジメチルアミノ-2-ペンチン、トリエチルアミン、および1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミンから選択される。別の実施形態では、第3化合物はDMAPMAである。別の実施形態では、第3化合物はBADMPAPAである。一実施形態では、任意の第3化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の0.1~50重量%、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは1~10重量%である。
【0024】
一実施形態では、組成物中のチオール基に対するアミン基のモル量は、0.1~50モル%または0.1~20モル%または0.1~5モル%などの、0.1~200モル%の間である。
【0025】
さらに別の実施形態では、第1化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%であり、第2化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%であり、ここで、組成物中のチオール基に対するアミン基のモル量は、0.1~50モル%または0.1~20モル%または0.1~5モル%などの、0.1~200モル%の間である。
【0026】
一実施形態では、組成物中のチオール基と二重結合または三重結合などの不飽和基との間の官能性の比率は、1.10:1~1:1.10の間、またはより好ましくは1.05:1~1:1.05の間、またはより好ましくは1.01:1~1:1.01の間であり、ここで、チオール基は1の官能基としてカウントされ、二重結合は1の官能基としてカウントされ、三重結合は2の官能基としてカウントされる。
【0027】
さらに別の実施形態では、第1化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%であり、第2化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%であり、ここで、組成物中のチオール基と二重結合または三重結合などの不飽和基との間の官能性の比率は、1.10:1~1:1.10の間、またはより好ましくは1.05:1~1:1.05の間、またはより好ましくは1.01:1~1:1.01の間である。
【0028】
任意の適切なI型光開始剤が使用され得る。開始剤は、好ましくは、反応種を生成するための放射線に感受性のある過酸化物、ニトリル、ホスフィンオキシド、またはゲルマニウムベースである。一実施形態では、光開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)、エチル(2,4,6、-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(TPO-L)、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチル-ゲルマニウム(Ivocerin)から選択される。光開始剤の量は、組成物の総量の0.05~5重量%、例えば0.1~2重量%などであり得る。
【0029】
さらに別の実施形態では、第1化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の20~90重量%、好ましくは30~80重量%、またはより好ましくは40~60重量%であり、第2化合物の量は、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物の総量の10~80重量%、好ましくは10~60重量%、またはより好ましくは10~50重量%であり、ここで、光開始剤の量は、組成物の総量の0.05~5重量%、例えば0.1~2重量%などであり得る。
【0030】
任意の適切な安定剤が使用され得る。安定剤は、好ましくは、限定されないが、フェノール類、キノン類、またはリン化合物から選択される。一実施形態では、安定剤は、カテコールまたはカテコール誘導体である。一実施形態では、安定剤の量は、組成物の総量の0.05~5重量%、好ましくは0.5~3重量%である。
【0031】
樹脂組成物のレオロジー特性および硬化材料の機械的特性を改善するために、特に骨の固定または歯の修復に使用される場合に、充填剤を樹脂混合物に添加することができる。充填剤は、任意の適切な充填剤であり得る。充填剤は、限定されないが、リン酸金属塩、硫酸金属塩、酸化物形態などのセラミック、またはポリマー、または金属を含み得る。好ましい実施形態では、添加剤は、ガラスまたはヒドロキシアパタイト粒子であるか、または好ましくはヒドロキシアパタイト粒子である。充填剤は、限定されないが、結晶、球、棒、薄片、繊維、または不均一な粒子の形態であり得る。一実施形態では、充填剤は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合または三重結合および/または1つまたは複数のチオール基を含むように官能化される。
【0032】
組成物は、任意の適切な溶媒を含み得るが、好ましくは、組成物は、本質的に溶媒を含まないか、または完全に含まない。一実施形態では、組成物は、5重量%未満、好ましくは1重量%未満の溶媒を含む。一実施形態では、組成物は、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満の水を含む。
【0033】
用途
本発明は、たとえば、骨および歯などの硬組織を処置する場合の樹脂ベースの材料として使用され得る。当該組成物は、骨折の固定または歯の修復のためにプライマーまたは接着剤または繊維シートまたはネジまたはプレートと組み合わせて使用することができる。当該組成物は、その部位に適用し、所望の形状に形成し、その後、光源を使用して硬くて強い材料に硬化させることができる。
【0034】
キット
本発明はさらに、樹脂組成物を提供および適用するためのキットに関する。キットは、少なくとも2つの適切な容器である、第1および第2容器、および任意に第3容器を含み、ここで、1つの第1容器は、(トリアジン-トリオン(TATO))の一般構造:
【化7】
(式中、R1は、少なくとも1つのチオール基を有するC1~C10アルキル基である)を有する第1化合物を含む。第2容器は、構造:
【化8】
(式中、R2は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合を有するC1~C10アルキル基である)を有する第2化合物を含む。第1容器、第2容器、または任意の第3容器の少なくとも1つは、任意の第3化合物をさらに含み得、第1化合物、第2化合物、および/または任意の第3化合物の少なくとも1つは、少なくとも1つのアミン基を含む。任意の第3化合物は構造:
【化9】
(式中、R3、R4およびR5の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合または三重結合またはチオールを含む)を有する。
【0035】
容器の少なくとも1つは光開始剤を含み、任意にキットの容器の少なくとも1つは、安定剤および任意に充填剤を含む。一実施形態では、第1容器は、任意の第3化合物をさらに含む。別の実施形態では、第2容器は、任意の第3化合物をさらに含む。一実施形態では、充填剤は第3容器内にあり、第3容器は、好ましくは、第1化合物、第2化合物、および任意の第3化合物を含まない。
【実施例】
【0036】
実施例1
図5は、特に他に明記のない限り、等モル量のチオールならびに不飽和官能基、75μmol/gのアミンならびに16μmol/gの開始剤、および56重量%の充填剤含有量を用いる樹脂混合物中の化合物の例を示す。成分をバイアルに加え、室温および通常の空気条件でスパチュラを用いて混合した。開始剤を暗条件で加え、バイアルをアルミホイルで光から常に保護した。
【0037】
実施例2
曲げ撓み試験:35×5×1mmの矩形ビームを、本発明による異なる樹脂組成物をシリコーン型に広げることによって調製し、単位面積に385~500nmの波長および2000mW/cm2の光強度を有する光を使用して、5、10または20秒間、Bluephase 20i(イボクラール ビバデント(Ivoclar Vivadent)製)ランプで硬化させた。ビームを、硬化直後または硬化の24時間後に、万能引張試験機上の3点曲げセットアップに取り付けた。30mmの支持スパンおよび5mm/分のクロスヘッド速度を使用した。
図6に結果。
【0038】
重要な結論:アミン触媒を添加することで、重合後すぐに高性能の材料が可能になるが、アミン触媒がないと、より長い硬化時間が必要になる。I型光開始剤を用いた試験では、触媒としてアミンを添加することで機械的耐久性が向上することが示された。アミンをIrgacure 819と組み合わせて添加することで、開始剤の量を2倍にするのと同等の改善がもたらされた。II型開始剤のカンファーキノンを用いた試験では、最適な光波長にもかかわらず、使用される条件で開始剤がうまく機能できず、これらのタイプの材料に適した開始剤ではないことが示された。また、この試験で使用されたアミンの量は、カンファーキノンとともに機械的性能を大幅に低下させた。
【0039】
実施例3
ガラス転移分析:動的機械分析を、1.5×6.5×2.5mmの材料形状を用いて、引張モードで、ティー エー インスツルメンツ(TA instruments)製(ニューカッスル、デラウェア州、米国)のDMA Q800で本発明による異なる樹脂組成物に対して実施した。温度が、10℃/分の加熱速度で、ゴム板に達する材料要件に応じて、20℃から最大110℃または140℃まで徐々に上昇した。0.1%の歪みが1Hzの周波数で誘導された。
図7に結果。
【0040】
重要な結論:アミン触媒を含むエステルを含まないTATO材料は、50℃をはるかに超えたままの高いガラス転移温度(Tg)を示し、機械的特性は、実施された試験の実験室環境と比較して生理学的環境において大きな違いはないであろう。エステルベースのTATO材料は、吸水時に約30℃の開始Tgを示し、実施された試験の実験室環境と比較して生理学的環境においてより柔らかくなるであろう。
【0041】
実施例4
化合物の細胞毒性を、インビトロ細胞生存率試験によって評価した。RAW 264.7細胞を、10%のFBSおよび100Uのペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含むDMEM培地中で維持した。細胞を洗浄し、トリプシンによって収集し、5000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに移し、使用前に24時間インキュベートした。成分をDMSO中に溶解し、DMEM中で希釈して、成分の最終濃度が1μM、10μM、100μMの作業培地を調製した。古いDMEMを細胞から取り除き、上記の新鮮な作業培地と交換し、さらに24時間インキュベートした。その後、一般的な指示に従ってAlamarBlue試験を実施した。560/590nmの蛍光モデルex/em波長を有するプレートリーダInfinite(登録商標)M200(テカン(Tecan)製、スイス)を用いて、データを取得した。データをi-control(商標)ソフトウェアを使用して取得した。すべてのケースにおいて、サンプルごとに6つの複製ウェルを設定し、PBSで処理した細胞を陰性対照として使用した。各試験を3回繰り返した。また、溶出試験を実施して、架橋された材料2.2のインビトロ毒性を評価した。その材料を2-プロパノールまたはUV光で3時間滅菌した。その後、サンプルを、10mg/mlの濃度の完全DMEM培地において24時間インキュベートし、潜在的な化合物を浸出させた。その後、試験培地を96ウェルプレート(Raw 264.7 5000細胞/ウェル)に100μl/ウェルで移し、さらに72時間インキュベートした。生存率評価にMTT試験を適用し、570nmでプレートリーダInfinite(登録商標)M200(テカン製、スイス)を用いてデータを取得した。サンプルごとに、3つの平行な断片を調製して、各細胞株に対して浸出された培地を得た。材料の断片ごとに、6つの平行なウェルをMTTアッセイで用いた。
図8に結果。
【0042】
重要な結論:RAW 264.7細胞は、試験した化合物に対して高い耐性を示し、架橋された材料2.2は、Raw 264.7細胞に対する毒性効果を引き起こす化合物を浸出させなかった。
【0043】
実施例5
曲げ撓み試験:35×5×1mmの矩形ビームを、本発明による樹脂組成物をシリコーン型に広げることによって調製し、単位面積に385~500nmの波長および2000mW/cm2の光強度を有する光を使用して、20秒間、Bluephase 20i(イボクラール ビバデント製)ランプで硬化させた。ビームを、硬化の24時間後に、万能引張試験機上の3点曲げセットアップに取り付けた。30mmの支持スパンおよび5mm/分のクロスヘッド速度を使用した。
図9に結果。
【0044】
重要な結論:試験した樹脂から剛性かつ強い材料を作ることができる。
【0045】
実施例6
精肉店から入手した豚の足から第2および第5中手骨を切り出した。中手骨を軟組織からきれいに取り出し、横骨折を骨片に切り込んだ。骨折の各側面に2本のネジを配置した。ネジを半分までねじ込み、樹脂2.2をネジの周りと骨折全体に適用した。その後、ネジを完全にねじ込み、光硬化歯科材料向けの、470nmおよび400nmの主波長を有する385~515nmの波長および2000~2200mW/cm2の強度の発光ダイオード(LED)重合ランプ(Bluephase(登録商標)20i)を使用して、接着剤を硬化させた。照射の合計時間は1cm
2あたり10秒であった。その後、ネジを、樹脂2.2および繊維メッシュで覆い、その後、光を照射して硬化させた。最後に、接着剤の薄層を適用し、その後、硬化させた。インストロン コリア エルエルシー(Instron Korea LLC)製のInstron 5566機器を使用して、3点曲げ試験を行った。荷重を、10kNのロードセルを用いて測定し、5mm/分の連続変位を使用した。1Nの予荷重および3cmの下部支持部間のスパン長さを使用した。疲労試験のために、500Nのロードセルを使用し、25mm/分のクロスヘッド速度で、10Nから70Nの周期的な力を加えた。10Nの予荷重および5mm/分の予荷重速度を使用した。キルシュナー鋼線(Kirschner wire(K-ワイヤ))およびLCP Compact Hand Lockingの突っ張り板1.5を参照固定具として使用した。測定を、23℃および50%の相対湿度で実施した。試験片を、機械に配置するまで可能な限り湿らせたままにした。Bluehillソフトウェアを使用してデータを収集した。
図10および
図11に結果。
【0046】
重要な結論:樹脂2.2は、指骨折モデルの固定具として使用すると高い強度を示す。
【国際調査報告】