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特表2023-510140シベンゾリンまたはその塩を含む薬学剤形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】シベンゾリンまたはその塩を含む薬学剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4174 20060101AFI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230306BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230306BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61P43/00 111
A61P9/06
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/42
A61P9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537868
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2020018526
(87)【国際公開番号】W WO2021125824
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170504
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515074983
【氏名又は名称】セルトリオン, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】チョ、キョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、グク ビン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ビョン クワン
(72)【発明者】
【氏名】ナムグン、フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ハ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ボン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ウ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ダ ウォ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ス ビン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC11
4C076DD26
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE07
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE38
4C076EE42
4C076FF06
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA36
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明に係る速放層と徐放層とから構成された薬学剤形は、2相(biphasic)溶出プロファイルを有することによって最初にシベンゾリンの有効血中濃度に素早く到達することができ、後期には有効血中濃度を持続的に維持させ、単一の剤形で1日1回服用するだけでもシベンゾリンの薬効を維持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を150~450mgを含み、速放層と徐放層とから構成された薬学剤形。
【請求項2】
前記薬学剤形は、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:4~約1:1である、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項3】
前記薬学剤形は、徐放化剤を徐放層の総重量の約5~約30%含むものである、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項4】
前記徐放化剤は、約1,500~約200,000センチポアズ(cps)の粘度であることを特徴とする、請求項3に記載の薬学剤形。
【請求項5】
前記徐放化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択されるものである、請求項3に記載の薬学剤形。
【請求項6】
前記薬学剤形は、崩壊剤を速放層の総重量の約1~約10%含むものである、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項7】
前記崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択されるものである、請求項6に記載の薬学剤形。
【請求項8】
速放層に
(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、
(a-2)崩壊剤を速放層の総重量に約1~約10%含み、
徐放層に
(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、
(b-2)徐放化剤を徐放層の総重量に約5~約30%含む、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項9】
速放層に、
(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量に約25~約40%および、
(a-2)カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmelose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択される崩壊剤を、速放層の総重量に約1~約10%含み、
徐放層に
(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量に約30~約40%および、
(b-2)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択される徐放化剤を、徐放層の総重量に約5~約30%含む、請求項8に記載の薬学剤形。
【請求項10】
前記速放層または徐放層は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状シリコンジオキシド、ラクトース、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、デンプン、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、またはそれらの混合物から選択される賦形剤を含む、請求項8に記載の薬学剤形。
【請求項11】
前記薬学剤形は、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:4~ 約1:1である、請求項8に記載の薬学剤形。
【請求項12】
前記薬学剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の血漿濃度[C]が、24時間期間のうち約6時間~約18時間の間、約150ng/mL以上である、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項13】
前記薬学剤形は、溶出試験で2相(biphasic)溶出プロファイルを満足する、請求項1に記載の薬学剤形。
【請求項14】
前記2相(biphasic)溶出プロファイルは、下記の溶出プロファイルを満足する、請求項13に記載の薬学剤形。
1)約30分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約30~約50%が放出され、
2)以後、約12時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約90%以上の放出が達成される。
【請求項15】
請求項1に記載の薬学剤形を含む肥大型心筋症を治療するための、薬学剤形。
【請求項16】
請求項1に記載の薬学剤形および患者に1日1回投与することを指示する指針を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シベンゾリンまたはその塩を含む薬学組成物に関するもので、シベンゾリンまたはその塩を含み、速放層と徐放層とから構成された薬学剤形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シベンゾリン(Cibenzoline;Cifenline;2-(2,2-diphenylcyclopropyl)-4,5-dihydro-1H-imidazole;53267-01-9(CAS number))は、下記化学式1の構造を有する化合物であり、1群ナトリウムチャネル遮断剤(Group 1 sodium channel blocker)であって、抗不整脈薬として使用される薬物である。さらに、カルシウムチャネル遮断剤およびカリウムチャネル遮断剤の効果も共に知られている。
【0003】
【化1】
[化学式1]
【0004】
シベンゾリンは半減期が短いため、薬物が体内に吸収された後に素早く消失され、薬効持続時間が短いため、一日に数回服用しなければならない問題点を有している。現在、不整脈治療剤用錠剤の形態で開発され市販されており、1日3回投与するようになっている。
【0005】
したがって、服用回数を減少させることで患者の服薬順応度を高め、薬物の血中濃度を持続的に維持させ、薬効を持続的に維持させる徐放錠剤を開発する必要性がある。
【0006】
ただし、既存の開発された単一錠の徐放錠剤の場合、初期に有効血中濃度への到達に長い時間がかかる欠点があり、経口投与後に迅速な薬理活性を発現させながら24時間の間有効な薬理活性を持続させることが難しい。
【0007】
したがって、薬物の血中濃度の維持という徐放錠剤の利点を有しながら、短時間内で初期に有効血中濃度に達して、徐放錠剤の欠点を補完した剤形を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含み、速放層と徐放層とから構成された薬学剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を約150~約450mg含み、速放層と徐放層とから構成された薬学剤形である。前記薬学剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg含んでもよい。
【0010】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:4~約1:1であってもよい。前記重量比は、約1:3~約1:1、約3:7~約1:1、約1:2~約1:1、約7:13~約1:1、約2:3~約1:1、約9:11~約1:1、約1:4~9:11、約1:3~約9:11、約3:7~約9:11、約7:13~約9:11、約2:3~約9:11、約1:4~2:3、約1:3~約2:3、約3:7~約2:3、約7:13~約2:3、約1:4~7:13、約1:3~約7:13、約3:7~約7:13、約1:4~3:7、約1:3~約3:7または約1:4~約1:3であってもよい。
【0011】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放化剤を徐放層の総重量の5~30%含んでもよい。前記薬学剤形は、徐放化剤を徐放層の総重量の6~30%、または7~30%含んでもよい。
【0012】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形の徐放化剤は、約1,500~約200,000センチポアズ(cps)の粘度であってもよい。前記徐放化剤は、約1,550~約200,000、約1,600~約200,000センチポアズ(cps)、約1,500~約180,000センチポアズ(cps)、約1,550~約180,000、約1,600~約180,000センチポアズ(cps)、約1,500~約10,000センチポアズ(cps)、約1,550~約150,000または約1,600~約150,000センチポアズ(cps)の粘度であってもよい。USPが勧奨する試験法によって測定された値である。
【0013】
本発明の一具現例において、前記徐放化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択されるものであってもよい。
【0014】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に崩壊剤を含んでもよい。
【0015】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、崩壊剤を速放層の総重量の約1~約10%含んでもよい。前記薬学剤形は、崩壊剤を徐放層の総重量の約1~約5%含んでもよい。
【0016】
本発明の一具現例において、前記崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択されるものであってもよい。
【0017】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、(a-2)カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcelulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択される崩壊剤を、速放層全体に含むものであってもよい。
【0018】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、(b-2)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択される徐放化剤を含むものであってもよい。
【0019】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量に約25~約40%および(a-2)カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択される崩壊剤を、速放層の総重量に約1~約10%含むものであってもよい。
【0020】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量に約30~約40%および、(b-2)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択される徐放化剤を、徐放層の総重量に約5~約30%含むものであってもよい。
【0021】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、(a-2)カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcelulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択される崩壊剤を、速放層全体に含み、
【0022】
徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩および、(b-2)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択される徐放化剤を含むものであってもよい。
【0023】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量に約25~約40%および、(a-2)カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)、またはそれらの混合物から選択される崩壊剤を、速放層の総重量に約1~約10%含み、
【0024】
徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量に約30~約40%および、(b-2)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートまたはそれらの混合物から選択される徐放化剤を、徐放層の総重量に約5~約30% 含むものであってもよい。
【0025】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層または徐放層に、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状シリコンジオキシド、ラクトース、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、デンプン、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、またはそれらの混合物から選択される賦形剤を含むものであってもよい。
【0026】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、溶出試験で2相(biphasic)溶出プロファイルを満足するものであってもよい。
【0027】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、下記2相(biphasic)溶出プロファイルを満足するものであってもよい。
【0028】
1)約30分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約30~約50%が放出され、
【0029】
2)以後、約12時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約90%以上の放出が達成される。
【0030】
前記溶出プロファイルは、さらに下記の溶出プロファイルを満たすものであってもよい。
【0031】
1)約15分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約30~約50%が放出され、
【0032】
2)以後、約12時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約80%以上の放出が達成される。
【0033】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、下記の溶出プロファイルを満足するものであってもよい。
【0034】
1)約30分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約30~約50%が放出され、
【0035】
2)以後、約3時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約60%以上約75%以下の放出が達成される。
【0036】
3)以後、約12時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約90%以上の放出が達成される。
【0037】
前記溶出プロファイルは、さらに下記の溶出プロファイルを満たすものであってもよい。
【0038】
1)約15分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約30~約50%が放出され、
【0039】
2)以後、約3時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約55%以上約75%以下の放出が達成される。
【0040】
3)以後、約12時間内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約80%以上の放出が達成される。
【0041】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の血漿濃度[C]が、24時間のうち約6時間~約18時間の間、約150ng/mL以上であってもよい。さらに、S(-)-シベンゾリン血漿濃度[C]は、24時間の間、約100ng/mL以上であってもよい。本発明の一具現例において、前記時間範囲内の最低血漿濃度は、1日1回投与時にも現れる。
【0042】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、200mgの1日1回の剤形の単回投与時、Cmaxが約280~約420ng/mLであってもよい。
【0043】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、300mgの1日1回の剤形の単回投与時、Cmaxが約430~約570ng/mLであってもよい。
【0044】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、200mgの1日1回の剤形の単回投与時、24時間にかけてAUCが約1,890~約2,830ng・hr/mLであってもよい。
【0045】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、300mgの1日1回の剤形の単回投与時、24時間にかけてAUCが約3,390~約4,330ng・hr/mLであってもよい。
【0046】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量の約20~約50%;(a-2)崩壊剤を含まず、または含む場合、速放層の総重量の約1~約10%;(a-3)結合剤を速放層の総重量の約0.5~約5%;(a-4)潤滑剤を速放層の総重量の約0.1~約3%;(a-5)賦形剤を速放層の総重量の約40~約60%含むものであってもよい。
【0047】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量の約20~約50%;(b-2)徐放化剤を徐放層の総重量の約5~約30%;(b-3)結合剤を徐放層の総重量の約1~約10%;(b-4)潤滑剤を徐放層の総重量の約0.1~約3%;および(b-5)賦形剤を徐放層の総重量の約40~約60%含むものであってもよい。
【0048】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量の約30~約50%;(a-2)崩壊剤を速放層の総重量の約1~約5%;(a-3)結合剤を速放層の総重量の約0.5~約2%;(a-4)潤滑剤を速放層の総重量の約0.1~約3%;および(a-5)賦形剤を速放層の総重量の約40~約60%含むものであってもよい。
【0049】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量の約20~約40%;(b-2)徐放化剤を徐放層の総重量の約10~約20%;(b-3)結合剤を徐放層の総重量の約1~約10%;(b-4)潤滑剤を徐放層の総重量の約0.1~約3%;および(b-5)賦形剤を徐放層の総重量の約40~約60%含むものであってもよい。
【0050】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量の約23~約29%;(a-2)崩壊剤を含まず;および(a-3)結合剤、(a-4)潤滑剤、(a-5)賦形剤を速放層の総重量の約69~約71%含むものであってもよい。
【0051】
本発明の一具現例において、前記徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量の約33~約39%;(b-2)徐放化剤を徐放層の総重量の約9~約10%;および(a-3)結合剤、(a-4)潤滑剤、(a-5)賦形剤を徐放層の総重量の約49~約51%含むものであってもよい。
【0052】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に(a-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を速放層の総重量の約38~約42%;(a-2)崩壊剤を速放層の総重量の約1.2~約5%;および、(a-3)結合剤、(a-4)潤滑剤、(a-5)賦形剤を速放層の総重量の約41~約53%含むものであってもよい。
【0053】
本発明の一具現例において、前記徐放層に(b-1)S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を徐放層の総重量の約28~約32%;(b-2)徐放化剤を徐放層の総重量の約13~約17%;および、(a-3)結合剤、(a-4)潤滑剤、(a-5)賦形剤を徐放層の総重量の約47~約51%含むものであってもよい。
【0054】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に含まれた崩壊剤に対する結合剤の重量比が、約1:2~約10:1であってもよい。前記重量比は、約1:1~10:1、1:2~5:1または1:1~5:1であってもよい。
【0055】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に含まれた徐放化剤に対する結合剤の重量比が、約1:60~約10:8であってもよい。前記重量比は、約1:30~10:8、1:60~5:8または1:30~5:8であってもよい。
【0056】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に含まれた(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する崩壊剤の重量比が、約6:1~約50:1であってもよい。前記重量比は、約12:1~50:1、6:1~25:1または12:1~25:1であってもよい。
【0057】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に含まれた(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放化剤の重量比が、約1:1~約4:1であってもよい。前記重量比は、約2:1~4:1、1:1~2:1または2:1~1:2であってもよい。
【0058】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層に含まれた(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する結合剤の重量比が、約15:1~約100:1であってもよい。前記重量比が、約30:1~100:1、15:1~50:1、または30:1~50:1であってもよい。
【0059】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、徐放層に含まれた(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する結合剤の重量比が、約2:1~約40:1であってもよい。前記重量比が、約4:1~40:1、2:1~20:1または4:1~20:1であってもよい。
【0060】
本発明は、前記薬学製剤を含む肥大型心筋症を治療するための薬学剤形を提供する。
【0061】
本発明は、前記薬学剤形および患者に1日1回投与することを指示する指針を含むキットを提供する。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る速放層と徐放層とから構成された薬学剤形は、2相(biphasic)溶出プロファイルを有することによって、初期にS(-)-シベンゾリンの有効血中濃度に素早く到達することができ、後期には有効血中濃度を持続的に維持させ、単一剤形で1日1回服用するだけでも、S(-)-シベンゾリンの薬効を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の実施例1の徐放剤形のpH6.8、pH1.2およびpH4.5におけるそれぞれの溶出率を示すグラフである。
図2】本発明の実施例2の徐放剤形のpH6.8、pH1.2およびpH4.5におけるそれぞれの溶出率を示すグラフである。
図3】本発明の実施例3の徐放剤形のpH6.8、pH1.2およびpH4.5におけるそれぞれの溶出率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明をより容易に理解するために、本発明で使用される用語を以下に定義する。
【0065】
本発明において、「約」とは、本発明の目的および効果を奏する範囲までを意味する。例えば、徐放化剤を徐放層の総重量に約5~約30%を含む場合、5~30%の範囲だけでなく、この分野における通常の技術者が公知の技術によって本発明の目的および効果を奏する範囲まで拡張できる範囲まで解釈することができる。
【0066】
シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩
【0067】
【化2】
[化学式1]
【0068】
シベンゾリン(Cibenzoline;Cifenline;2-(2,2-diphenylcyclopropyl)-4,5-dihydro-1H-imidazole;53267-01-9(CAS number))は、前記化学式(1)の構造を有する化合物であり、1群ナトリウムチャンネル遮断剤(Group 1 sodium channel blocker)であって、抗不整脈薬として使用される薬物である。さらに、カルシウムチャネル遮断剤およびカリウムチャネル遮断剤の効果も共に知られている。
【0069】
前記シベンゾリンは、二つの鏡像異性体であるS(-)-シベンゾリンとR(+)-シベンゾリンが存在し、現在、市販中のシベンゾリンは、S(-)-シベンゾリンとR(+)-シベンゾリンが1:1で混合された組成物(ラセミ混合物(Racemic):鏡像異性体の50:50混合物)である。本発明において、シベンゾリンはS(-)-シベンゾリンを使用した。
【0070】
本発明のS(-)-シベンゾリンは、シベンゾリン遊離塩だけでなく、その塩化物を含んでもよく、シベンゾリンは、薬学的に許容される塩だけでなく、すべての水和物並びに溶媒和物であってもよい。一具現例において、前記水和物または溶媒和物は、シベンゾリンをメタノール、エタノール、アセトン、1,4-ジオキサンのような水と混ぜることができる溶媒に溶かした後に、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化または再結晶化した溶媒和物(特に、水和物)であってもよい。また、凍結乾燥のような方法で製造可能な様々な量の含水水和物を含め、化学量論的溶媒和物も含んでもよい。
【0071】
前記シベンゾリンの塩化物は、無機酸塩および有機酸塩をいずれも含み、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記シベンゾリンは、患者へ投与するために剤形化することができ、一つ以上の生理学的に許容される担体または賦形剤を含む。担体は、製剤の他の成分と両立することができ、受容者に有害ではないことを意味し、薬剤は、経口用、静脈内または直腸投与用などに剤形化することができる。剤形化の例としては、錠剤、カプセル、シロップのような通常の形で剤形化することができ、これに限定されるものではない。
【0073】
投与用量
本発明の薬学剤形の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感受性のような要因によって様々に選択することができる。
【0074】
本発明の一具現例において、本発明の薬学剤形の1日1回投与量は、約150mg~約450mg、約150mg~約400mg、または約200mg~約400mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0075】
さらに、本発明の一具現例において、本発明の薬学剤形の1日1回投与量は、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0076】
薬学剤形
本発明の薬学剤形は、速放層(IR layer;Immediate Release layer)と徐放層(ER layer;Extended Release layer)とから構成される。前記速放層は徐放層と対比すると、相対的に生体に先にS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩が放出される剤形を意味し、その構成に限定されない。
【0077】
本発明の一具現例において、前記速放層および徐放層剤形は、マルチ微粒子(multiparticulate)剤形、マトリックス(matrix)剤形、球体(sphere)(等)剤形、または二層(bi-layer)錠剤であってもよいが、これに限定されない。
【0078】
本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含むペレット(pellet)、シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む薬物-コーティング球体、またはシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む層を少なくとも2つのグループとして含んでもよい。前記薬学剤形の第1グループは、上部胃腸管で薬物を直ちに放出させ、前記第2グループは、胃腸管の下部部分に薬物を放出させる。発明の一具現例において、前記第2グループは、胃腸管の所望の位置への薬物の第2の放出が遅れるように、pH依存的コーティングまたは時間依存的コーティングでコーティングされてもよい。
【0079】
発明の一具現例において、前記剤形は、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:4~約1:1、約1:3~約1:1、約3:7~約1:1、約1:2~約1:1、約7:13~約1:1、約2:3~約1:1、約9:11~約1:1、約1:4~9:11、約1:3~約9:11、約3:7~約9:11、約7:13~約9:11、約2:3~約9:11、約1:4~2:3、約1:3~約2:3、約3:7~約2:3、約7:13~約2:3、約1:4~7:13、約1:3~約7:13、約3:7~約7:13、約1:4~3:7、約1:3~約3:7、または約1:4~約1:3であってもよい。
【0080】
速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:4未満の場合、薬物投与後、直ちに有効な効果を得にくく、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩に対する徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が、約1:1を超過する場合、徐放層の量が少なくなり、適切な徐放効果を得にくい。
【0081】
徐放層
本発明の一具現例において、徐放層は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の徐放効果を有するための徐放化剤を含む。
【0082】
本発明の一具現例において、徐放化剤は、一般剤形の薬物よりも長時間にわたって徐々に放出され、薬物が治療血中濃度に達した後に一定時間の間持続させるために使用される。
【0083】
本発明の一具現例において、徐放化剤は、約1,500~約200,000センチポアズ(cps)、約1,550~約200,000、約1,600~約200,000センチポアズ(cps)、約1,500~約180,000センチポアズ(cps)、約1,550~約180,000、約1,600~約180,000センチポアズ(cps)、約1,500~約10,000センチポアズ(cps)、約1,550~約150,000または約1,600~約150,000センチポアズ(cps)の粘度を有してもよい。粘度が約1,500センチポアズよりも低いか、または約200,000センチポアズよりも高いと、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の薬物動態学的挙動により、好ましい溶出パターンが達成されにくいこともある。
【0084】
本発明の一具現例において、徐放化剤は、イオン性基剤、膨潤性基剤および疎水性基剤から単独または選択された2つ以上の混合徐放化剤を組み合わせて使用する。
【0085】
本発明の一具現例において、イオン性基剤は、薬物とイオン結合を通じて薬物の放出を制御する薬学的に許容可能な基剤を言い、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマーおよびアルギン酸ナトリウムから選択される1つ以上を含む。
【0086】
本発明の一具現例において、膨潤性基剤は、水溶液中で瞬間的に膨潤して空隙を減少させることで薬物の放出を制御する薬学的に許容される基剤を言い、ヒドロキシエチルセルロースおよびその塩または誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、並びにカラギーナンから選択される1つ以上を含む。
【0087】
本発明の一具現例において、疎水性基剤は水溶液に溶解されず、空隙を遮断させることで薬物の放出を制御する薬学的に許容可能な基剤を言い、ポリビニルアセテート、グリセリルベヘネート、硬化ヒマシ油、硬化植物油およびステアリン酸から選択される1つ以上を含む。
【0088】
本発明の一具現例において、徐放化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートから選択される1つ以上を含む。
【0089】
本発明の一具現例において、徐放化剤は、徐放層の100重量部に対して約5~約30重量部、約6~約30重量部、または約7~約30重量部である。前記徐放化剤が約5~約30重量部である場合、優れた薬物放出の調節、および適切なシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の放出速度で最適な血中濃度に達する効果が生じ得る。前記徐放化剤が約30重量部超過の場合、初期の薬物放出が遅く、約12時間内に薬物が100%溶出されないという問題、および薬物の大きさが大きくなるという問題があり、前記徐放化剤が約5重量部未満の場合、初期の薬物放出が速く、約12時間前に薬物が既に放出されるという問題が生じる。
【0090】
速放層
本発明の一具現例において、速放層は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の速放効果を有するため、崩壊剤を含む剤形または徐放化剤を含まない剤形である。
【0091】
本発明の一具現例において、崩壊剤は水分を吸収して製剤の崩壊を促進して溶出を向上させるために使用される。
【0092】
本発明の一具現例において、崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム(Carboxymethylcellulose calcium)、アルファー化デンプン(Pregelatinized starch)、ナトリウムデンプングリコレート(Sodium starch glycolate)、クロスポビドン(Crospovidone、cross-linked povidone)、(Polyplasdone)、クロスカルメロースナトリウム(Croscarmellose Sodium)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose、low substituted)、アルギン酸(alginic acid)、粉末セルロース、デンプン(starch)、ナトリウムアルギネート(sodium alginate)から選択される1つ以上を含む。
【0093】
本発明の一具現例において、崩壊剤は、速放層100重量部に対して約1~約10重量部、約1~約5重量部である。崩壊剤含有量が低すぎると、溶出が改善されないという問題があり、また多すぎると、最終製剤の硬度に悪影響を及ぼし、割れやすくなるという問題が生じる。
【0094】
賦形剤
本発明の一具現例において、長期保管安定性の確保と、持続的な徐放化効果を有するために賦形剤をさらに含んでもよい。本発明において、賦形剤は、希釈剤、結合剤、潤滑剤などを意味する。
【0095】
本発明の一具現例において、希釈剤は、例えば、ラクトース、ラクトース一水和物デキストリン、マンニトール、ソルビトール、デンプン、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類およびそれらの混合物からなる群から選択されるものを使用してもよい。
【0096】
本発明の一具現例において、結合剤は、製剤の結合力を高める役割を果たす。結合剤として、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものを使用してもよい。
【0097】
本発明の一具現例において、潤滑剤は、粉粒体の流動性を向上させ、打錠機の下部であるダイ(die)への充填性を増加させ、粉粒体相互間および粉粒体と打錠機の上部であるパンチ(punch)-ダイ(die)との間の摩擦を減少させ、錠剤の圧縮および放出を容易にする。潤滑剤は、例えば、軽質無水ケイ酸、コロイド状シリコンジオキシド、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはそれらの混合物であってもよい。
【0098】
溶出試験
溶出試験は、米国薬局方(または、韓国薬局方)に従う溶出第2法(パドル法)による実験である。
【0099】
2相のプロファイル(biphasic profile)
本発明の一具現例において、前記剤形は、前記2相(biphasic)溶出プロファイルは、第1相である速放形(または、即放形、即時放出形)相と、第2相である徐放形(または、遅延放出形)相とから構成することができる。
【0100】
前記第1相は、試験管内の溶出試験において、0~約30分内に得られる溶出プロファイル部分であり、前記第1相から、約30分内に、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の30~50%が放出される。前記「約30分内」とは、投薬後に一定時間が経った時点を指定するもので、約10分内、約15分内または約20分内も含む。
【0101】
前記第2相は、試験管内の溶出試験で測定された約30分後の溶出プロファイル部分である。前記「約30分後」とは、投薬後に一定時間が経った時点を指定するもので、約10分後、約15分後または約20分後も含む。
【0102】
本発明に係る剤形の一具現例において、第2相から、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の総重量の約50~約90%または約50~約80%が放出される。
【0103】
「Cmax」、「Cmin」、「Tmax」、「Tmin」、「AUC」
本発明の「Cmax」、「Cmin」、「Tmax」および「Tmin」とは、時間に対する薬物濃度の薬物動態学的分析に使用される用語である。Cmaxは、薬物が投与された後および第2の用量の投与前に薬物が身体の特定の区画または試験領域で達成する最大(または、ピーク)血漿濃度を示す用語である。Cmaxは、投薬後に薬物が達成する最小(または、低点(trough))濃度であるCminの反対の用語である。Tmaxは、Cmaxが観察される時間を記述するために薬物動態学で使用される用語であり、Tminは、薬物が投与された後および第2の用量の投与前にCminが観察される時間を記述するために薬物動態学で使用される用語である。
【0104】
本発明の一具現例において、前記剤形の前記Cmaxは、200mgの1日1回の剤形の単回投与時、約280~約420ng/mLである。さらに、300mgの1日1回の剤形の単回投与時、約430~約570ng/mLである。Cmax値は、投与用量および投与回数が増加するにつれて、薬力学的分析上の効果を奏する適切な数値は増加し得る。本発明の一具現例において、前記剤形の前記Cmaxは、前記剤形投与後、約1~約3時間(すなわち、Tmax)で満足する。
【0105】
本発明の「AUC」とは、時間に対する薬物濃度の薬物動態的プロットにおける曲線下面積(数学的には、定積分として公知されている)である。
【0106】
本発明の一具現例において、前記剤形は、200mgの1日1回の剤形の単回投与時、24時間にかけて約1,890~約2,830ng・hr/mLの標的曲線下面積(本願で、以下、AUC:area under the curve)を満足する。また、300mgの1日1回剤形の単回投与時、約3,390~約4,330ng・hr/mLである。AUC値は、投与用量および服用回数が増加するにつれて、薬力学的分析上の効果を奏する適切な数値は増加し得る。
【0107】
本発明の一具現例において、前記剤形のS(-)-シベンゾリン血漿濃度[C]は、24時間のうち約6時間~約18時間の間約150ng/mL以上である。また、S(-)-シベンゾリン血漿濃度[C]は、24時間の間約100ng/mL以上である。本発明の一具現例において、前記時間範囲内の最低血漿濃度は、1日1回投与時にも現れる。
【0108】
薬学的組成物
本発明の薬学剤形は、患者への投与後、約0.25~約1時間内に最低有効血中濃度を達成する。本発明の一具現例において、前記薬学剤形は、速放層が約150~約800ng/mLの有効最低有効血中濃度を達成する。
【0109】
肥大型心筋症(HCM、HypertrophicCardioMyopathy)
肥大型心筋症は、高度発現性を有し、単一遺伝子、常染色体優性心筋疾患群を含み、心筋の機能的単位である筋節に寄与する構造タンパク質遺伝子のいずれかにおける1,000個を超える公知の点突然変異のうち1つ以上によって引き起こされる。初期には非常に珍しい疾患であると思われていたが、現在は、500人に1人という比率で頻度が高く、特に若い年齢で急死を起こす最も一般的な疾患で、常染色体優性遺伝をすることが明らかになった。主に若年成人では、健康診断のために心電図および心臓超音波を施行して偶然発見し、その後追跡調査をする場合が多い。
【0110】
血行力学的または症状学的に、肥大型心筋症は、閉鎖型(obstructive)と非閉鎖型(non-obstructive)に分けることができる。閉鎖型は、弁膜下部閉鎖と心室中部閉鎖に分けることができ、遅延性閉鎖型は、安定時は圧力差がないが、誘発時には30mmHg以上の圧力差が生じる場合をいう。
【0111】
肥大型心筋症を患っている患者の臨床症状は、運動性呼吸困難であり、卒中を含めた全身性動脈血栓塞栓性疾患、急性肺浮腫、心房細動、循環血液量または循環血液量増加の不耐性、および失神を含む。最近では、心臓突然死(Sudden cardiac Death、SCD)も肥大型心筋症の主な症状として確認されている。
【0112】
キット
キットとは、肥大型心筋症の治療のための本発明のS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を投与するための成分を含む包装製品をいう。当該キットは、キットの成分を保持する容器またはボックスを含む。ボックスまたは容器は、食品薬学品局が承認したプロトコルまたは標識が添付される。ボックスまたは容器には、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンまたはプロピレン容器内に含有された本発明の成分を保持する。当該容器は、蓋付きチューブまたはボトルであってもよい。キットは、さらに本発明のS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を投与するための指針書を含む。
【0113】
以下、本発明を下記実施例に基づいて詳細に説明することにする。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0114】
実施例1~3:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩含有量による薬学剤形の製造
下記表1の成分および含有量のように、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩の含有量による二層錠剤を製造した。実施例1の場合、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩の総含有量が200mgとなるようにし、実施例2は300mg、実施例3は400mgとなるようにした。具体的な製造過程は、次のとおりである。
【0115】
[実施例1および2の製造過程]
<ステップ1>速放層の製造
室温でヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶かして結合液を製造する。30メッシュ篩で篩過したS(-)-シベンゾリンコハク酸塩、微結晶セルロースおよびラクトース一水和物を高速混合機(High Speed mixer(HSM)、Pilotmix 150T、Huttlin)で約5分間混合する。前記製造した結合液を前記混合物に投入し、高速混合機で約5分間顆粒を製造する。製造した湿式顆粒物は、湿式破砕(milling)後、流動床乾燥機(Fluid Bed Granulator(FBG)、Pilotlab L、Huttlin)に移して乾燥する。前記乾燥した顆粒物は、円錐破砕機(Cone mill)に通して整粒する。30メッシュ篩で篩過したカルボキシメチルセルロースカルシウムと微結晶セルロースを整粒した顆粒物と約22分間混合する。製造した混合物に40メッシュ篩で篩過したステアリン酸マグネシウムを約5分間潤滑にして速放層を製造する。
【0116】
<ステップ2>徐放層の製造
室温でヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶かして結合液を製造する。30メッシュ篩で篩過したS(-)-シベンゾリンコハク酸塩、微結晶セルロースおよびラクトース一水和物を高速混合機(High Speed mixer(HSM)、Pilotmix 150T、Huttlin)で約5分間混合する。前記製造した結合液を前記混合物に投入し、高速混合機で約5分間顆粒を製造する。製造した湿式顆粒物は、湿式破砕(milling)後、流動床乾燥機(Fluid Bed Granulator(FBG)、Pilotlab L、Hutlin)に移して乾燥する。前記乾燥した顆粒物は、円錐破砕機(Cone mill)に通して整粒する。30メッシュ篩で篩過したヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースと微結晶セルロースとを整粒した顆粒物と約17分間混合する。製造した混合物に40メッシュ篩で篩過したステアリン酸マグネシウムを約5分間潤滑にして徐放層を製造する。
【0117】
<ステップ3>二層錠剤の製造
前記製造した速放層および徐放層の顆粒は、二層錠打錠機(Double layer Tablet compression machine、Kilian)を使用して、それぞれの層で構成された二層錠剤を製造した。製造したオパードライを用いてフィルムコーティングした。
【0118】
[実施例3の製造過程]
<ステップ1>速放層の製造
室温で30メッシュ篩で篩過したS(-)-シベンゾリンコハク酸塩、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびラクトース一水和物を高速混合機(High Speed mixer(HSM)、Pilotmix 150T、Huttlin)で約10分間混合する。精製水を前記混合物に投入し、高速混合機で約5分間混合して顆粒を製造する。製造した湿式顆粒物は、湿式破砕(milling)後、流動層乾燥機(Fluid Bed Granulator(FBG)、Pilotlab L、Huttlin)に移して乾燥する。前記乾燥した顆粒物は、円錐破砕機(Cone mill)に通して整粒する。30メッシュ篩で篩過したコロイダルシリコンジオキシドを整粒した顆粒物と約17分間混合する。製造した混合物に40メッシュ篩で篩過したステアリン酸マグネシウムを約5分間潤滑にして速放層を製造する。
【0119】
<ステップ2>徐放層の製造
室温で30メッシュ篩で篩過したS(-)-シベンゾリンコハク酸塩、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびラクトース一水和物を高速混合機(High Speed mixer(HSM)、Pilotmix 150T、Huttlin)で約10分間混合する。精製水を前記混合物に投入し、高速混合機で約5分間混合して顆粒を製造する。製造した湿式顆粒物は、湿式破砕(milling)後、流動床乾燥機(Fluid Bed Granulator(FBG)、Pilotlab L、Huttlin)に移して乾燥する。前記乾燥した顆粒物は、円錐破砕機(Cone mill)に通して整粒する。30メッシュ篩で篩過したヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびコロイダルシリコンジオキシドを整粒した顆粒物と約17分間混合する。製造した混合物に40メッシュ篩で篩過したステアリン酸マグネシウムを約5分間潤滑にして徐放層を製造する。
【0120】
<ステップ3>二層錠剤の製造
前記製造した速放層および徐放層の顆粒は、二層錠打錠機(Double layer Tablet compression machine、Kilian)を使用して、それぞれの層で構成された二層錠剤を製造した。製造したオパードライを用いてフィルムコーティングした。
【0121】
【表1】
【0122】
前記表の含有量は、重量部(w%)である。
【0123】
実施例4~7:徐放層内の徐放化剤含有量(w%)による剤形の製造
前記表1において、実施例1の徐放層の構成において、徐放化剤含量による効果を確認するために、徐放化剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量を調節した実施例4~6を製造した。実施例3の徐放層の構成において、徐放化剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量を調整した実施例6~9を製造した。調節した徐放化剤の重量および徐放層内の徐放化剤含有量(w%)は、下記の表2のとおりである。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例10~15および比較例1~4:速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩と徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩との重量比による剤形の製造
前記表1において、実施例1の構成を中心に、速放層および徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩比率による効果を確認するため、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩と徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩との重量比を変更して実施例10~15および比較例1~4を製造した。変更された比率は、下記表3のとおりである。
【0126】
【表3】
【0127】
実施例16および17:ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度による剤形の製造
前記表1において、実施例1の構成を中心に、徐放層の徐放化剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度が、既存の2,700~5,040cpsから変更された実施例16および17を製造した。変更された粘度は、下記表4のとおりである。
【0128】
【表4】
【0129】
試験例1:生体外(In-vitro)溶出試験
[溶出試験]
溶出試験は、溶出機(EVO6300、DISTEK)を用いて、米国薬局方(USP)試験法(参照、<711>dissolution、apparatus 2)に従って、下記のように行った。
【0130】
<溶出試験条件>
溶出溶液は、下記の4つの溶液のうち1つ以上を使用する。
-1)Phosphate緩衝液 900mL(pH6.8)
-2)0.1N HCl水溶液 900mL(pH1.2)
-3)Acetate緩衝液 900mL(pH4.5)
-4)蒸留水900mL
溶出温度:37℃
パドルの回転速度:50rpm
【0131】
<高性能液体クロマトグラフ(high performance liquid chromatography、HPLC)分析条件>
カラム:Inertsil ODS-3V(4.6×150mm、5μm)
移動相:Phosphate緩衝液 (Sodium 1-octanesulfonateを含む):アセトニトリル=650:350(v/v)
検出器:紫外線(UV)検出器
流速:1.5ml/min
注入量:5μl
【0132】
前記溶出試験条件で、15分、30分、60分、120分、180分、300分、360分、480分、600分、720分に溶出液を取り、ろ過して検液とした。
【0133】
別途に、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩55.5mgを精密に秤量して50mL容量のフラスコに入れ、溶出液で溶かした後、標線をつけた。この液を検液濃度に合わせて適宜希釈して標準液とした。そして、検液と標準液をもって前記HPLC分析条件で分析した。
【0134】
試験例1-A:徐放層内の徐放化剤含有量(w%)による実施例1~9溶出試験
前記表2の徐放層内徐放化剤含有量(w%)による溶出試験を行った結果、実施例1~9はいずれも累積溶出量が約30分内に約30~約50%、約3時間内に約60%以上約75%以下、約12時間内に約90%以上溶出された。また、累積溶出量が約15分内に約30~約50%、約3時間内に約55%以上約75%以下、約12時間内に約80%以上溶出された。
【0135】
試験例1-B:速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩と徐放層に含まれたS(-)-シベンゾリンコハク酸塩との重量比による実施例11~17および比較例1~4溶出試験
前記表3および表4実施例11~17の累積溶出量は、下記表5のように、約30分内に約30~約50%、約3時間内に約60%以上約75%以下、約12時間内に約90%以上溶出され、また、累積溶出量が約15分内に約30~約50%、約3時間内に約55%以上約75%以下、約12時間内に約80%以上溶出された。これに対し、比較例1は、単一徐放剤形であり、比較例2は、錠剤全体のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の含有量のうち、徐放層に約90%(比率1/9)のみが含まれた剤形であり、累積溶出量が約30分内に約30%未満で、初期投与後に薬効を発揮しにくく、比較例3は、錠剤全体のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の含有量のうち、徐放層に約45%(比率9/20)のみが含まれた剤形であり、比較例4は、単一速放剤形であり、累積溶出量が約6時間内に約80%超過し、徐放効果が期待しにくい。
【0136】
【表5】
【0137】
試験例1-C:pH変化によるS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の徐放剤形の累積溶出量(%)
下記表6および図1~3のように、実施例1~3において、生体消化器官のpH環境によっても約30分内に約30~約50%、約3時間内に約60%以上約75%以下、約12時間内に約90%以上溶出されることを確認し、累積溶出量が約15分内に約30~約50%、約3時間内に約55%以上約75%以下、約12時間内に約80%以上溶出されることを確認した。また、図1~3のように、初期1時間前後で溶出プロファイルの傾きが変化する2相(biphasic)溶出プロファイルを満足することを確認した。
【0138】
【表6】
【0139】
『-』は、測定エラーで値が確認されないことを示す。
【0140】
試験例2:生体内(In-vivo)前臨床試験(Pre-clinical test)
前記試験例1の生体外(In-vitro)溶出試験において、様々なpH条件で溶出様相を確認した実施例1の徐放錠剤形をもって生体内(In-vivo)薬物動態を、次のような前臨床試験(Pre-clinical test)で確認した。
【0141】
試験方法は、ビーグル犬(beagle dog、オス、n=6)に、実施例1と、実施例1から徐放化剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを除いた剤形である比較例5を、それぞれ1錠ずつ経口で投与して定められた時間に採血した後、血漿を分離し、ビーグル犬の血漿内のS(-)-シベンゾリンコハク酸の濃度を測定した。投与後、0.33、0.66、1、1.5、2,2.5、3、4、6、8、10、12、16および24時間後に1.5mLずつ採血した。血中のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の量は、LC-MS/MS分析法により分析し、薬物動態変数(pharmacokinetic parameters)をPhoenix WinNonlin(登録商標) Ent-Version8.1プログラムを使用して分析した。
【0142】
前記実験の分析結果は、下記表7のとおりであり、最高血中濃度到達時間(tmax)、最高血中濃度(Cmax)、定量時間24時間までの血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-24h)、投薬時間から無限時間までの血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-inf)、および血中消失半減期(t1/2)を算出した。
【0143】
【表7】
【0144】
前記表7に示しているように、実施例1が比較例5よりも、約1.5倍減少したCmax値および約3倍増加したTmax値を有することを確認し、徐放化効果が存在することを確認した。本実験を通じて、最高血中濃度到達時間(tmax)が遅れて、生体外(in-vitro)溶出様相と同一の様相を生体内(In-vivo)で有することを確認することができた。本実験に基づいて、本発明の最終目標である臨床試験で最適な効果を確認した。
【0145】
試験例3:実施例1および2の健康な患者を対象にして確認した薬力学的分析(単回投与)
この研究は、健康な対象者において、一日の間実施例1および2の組成を有するS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の徐放錠製剤200mgまたは300mgを1日1回経口投与し、または比較例5の組成を有するラセミ混合物(Racemic mixture;S-isomer:R-isomer=50:50)シベンゾリンコハク酸塩150mgを1日3回経口投与して安全性および耐薬性を評価する臨床である。より具体的には、下記のように投与して臨床実験を行った。
【0146】
-コホート1:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mg、1日1回経口、単回投与
-コホート2:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩300mg、1日1回経口、単回投与
-コホート3:ラセミ混合物(Racemic mixture;S-isomer:R-isomer=50:50)シベンゾリンコハク酸塩150mg、1日3回経口、単回投与
【0147】
この研究は、合計24名の試験対象者を3つのコホートに1:1:1でランダムに割り当てて、スクリーニング、治療期間1、休薬期間、治療期間2の総4つのステップで行う。投薬群と非投薬群(プラシボ、Placebo)との比率は6:2に割り当てた。
【0148】
主な評価変数は、健康な対象者において、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩の用量増加に対する血液薬物動態学的分析のために、血中濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、血中最高薬物濃度(Cmax)、最高血中濃度到達時間(tmax)、最高血中濃度半減期(t1/2)を測定した。
【0149】
コホート1と2に参加する場合の薬物動態的採血は、48時間(試験薬の服用前60分以内、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、30時間、36時間、48時間時点ごと)行い、コホート3に参加する場合の薬物動態的採血は、午前8時の投薬を基準に、CT-G11(シーティー-ジー11)の服用前と服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間(2回目の服用時点である午後4時の投薬前に実施される)時点ごとに、2回目の試験薬投与後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間(3回目の試験薬投与前に実施される)時点ごとに行った。3回目の試験薬投与後には、30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間後にそれぞれ採血を行った。
【0150】
血液内のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の濃度は、LC-MSを用いて血液を前処理したサンプルから、血漿内のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の濃度を測定した。下記表8に示しているように、3つの製剤は、薬力学的に同等の薬効を発現することが示され、先行的に行われたビーグル犬(beagle dog)非臨床(In-vivo)実験を通じて確認した最低有効血中濃度である約100~150ng/mL以上を維持しており、24時間の間薬物の効果が患者に維持できることを確認した。
【0151】
【表8】
【0152】
試験例4:実施例1および2の健康な患者を対象にして確認した薬力学的分析(多回投与)
この研究は、健康な対象者において、実施例1および2の組成を有するS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の徐放錠製剤200mgまたは300mgを1日1回経口投与し、または比較例5の組成を有するラセミ混合物(Racemic mixture;S-isomer:R-isomer=50:50)シベンゾリンコハク酸塩150mgを1日3回経口投与して安全性および耐薬性を評価する臨床である。より具体的には、下記のように投与して臨床実験を行った。
【0153】
-コホート4:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mg、1日1回経口、5日間多回投与
-コホート5:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩300mg、1日1回経口、14日間多回投与
-コホート6:ラセミ混合物(Racemic mixture;S-isomer:R-isomer=50:50)シベンゾリンコハク酸塩150mg、1日3回経口、14日間多回投与
【0154】
この研究は、合計24名の試験対象者を3つのコホートに1:1:1でランダムに割り当てて、スクリーニング、治療期間1、休薬期間、治療期間2の総4つのステップで行う。投薬群と非投薬群(プラシボ、Placebo)との比率は6:2に割り当てた。
【0155】
主な評価変数は、健康な対象者において、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩の用量増加に対する血液薬物動態学的分析のために、血中濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、血中最高薬物濃度(Cmax)、最高血中濃度到達時間(tmax)、最高血中濃度半減期(t1/2)を測定した。
【0156】
コホート4に参加する場合の薬物動態的採血は、6日間(3、4日目の試験薬服用前60分以内、14日目の服用前60分以内、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間の時点ごとに、6日目の服用後24時間)行い、コホート5に参加する場合の薬物動態的採血は、15日間(3、4、5日目の試験薬服用前60分以内、14日目の服用前60分以内、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間時点ごとに、15日目の服用後24時間)行った。コホート6に参加する場合の薬物動態的採血は、14日間午前8時の投薬を基準に、3、4、5日目のCT-G11(シーティー-ジー11)の服用前60分以内に採血し、14日目には服用前60分以内、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間の時点ごとに行った。
【0157】
血液内のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の濃度は、LC-MSを用いて血液を前処理したサンプルから、血漿内のS(-)-シベンゾリンコハク酸塩の濃度を測定した。 下記表9に示しているように、3つの製剤は、薬力学的に同等の薬効を発現することが示され、先行的に行われたビーグル犬(beagle dog)非臨床(In-vivo)実験を通じて確認した最低有効血中濃度である約100~150ng/mL以上を維持しており、24時間薬物の効果が患者に維持できることを確認した。
【0158】
【表9】
図1
図2
図3
【国際調査報告】