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特表2023-510199PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブまたはその塩を使用する組合せ癌治療
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  • 特表-PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブまたはその塩を使用する組合せ癌治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブまたはその塩を使用する組合せ癌治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20230306BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230306BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P13/10
A61P15/00
A61P17/00
A61P11/00
A61P1/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61P35/04
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540702
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 US2020065799
(87)【国際公開番号】W WO2021138079
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/956,469
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーラ,レイチェル・エー
(72)【発明者】
【氏名】ブランディッシュ,フィリップ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ペリーニ,ロドルフォ・フルーリー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA23
4C084MA16
4C084MA66
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
癌(例えばRCC)を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、(a)PD-1アンタゴニストと、(b)ILT4アンタゴニストと、(c)式(I)によって表されるレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。そのような薬剤を含むキット、および癌の治療のためのそのような薬剤の治療用組合せの使用も提供される。
【化1】
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化1】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法。
【請求項2】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌および黒色腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌がRCCである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RCCが進行RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RCCが転移性RCCである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化2】
またはその薬学的に許容される塩と
を含むキット。
【請求項7】
前記PD-1アンタゴニストと、前記ILT4アンタゴニストと、式(I)によって表されるレンバチニブ
【化3】
またはその薬学的に許容される塩とをヒト患者に投与するための説明書をさらに含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
ヒト患者の癌を治療するための治療用組合せの使用であって、前記治療用組合せが、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化4】
またはその薬学的に許容される塩とを含む使用。
【請求項9】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌および黒色腫からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記癌がRCCである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記RCCが進行RCCである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記RCCが転移性RCCである、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記PD-1アンタゴニストが、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項14】
前記PD-1アンタゴニストが、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、前記抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体がアテゾリズマブではない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項15】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がヒト化抗体である、請求項13に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項16】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項13に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項17】
前記ILT4アンタゴニストが、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項18】
前記抗ヒトILT4モノクローナル抗体がヒト化抗体である、請求項17に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項19】
前記抗ヒトILT4モノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項17に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項20】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がペンブロリズマブである、請求項13に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項21】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がニボルマブである、請求項13に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項22】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体がセミプリマブである、請求項13に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項23】
前記抗ヒトILT4モノクローナル抗体が、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、請求項17に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項24】
前記抗ヒトILT4モノクローナル抗体が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV領域と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むV領域とを含む、請求項17に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項25】
前記抗ヒトILT4モノクローナル抗体が、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖とを含む、請求項17に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項26】
(a)前記PD-1アンタゴニストがペンブロリズマブであり、
(b)前記ILT4アンタゴニストが、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項27】
(a)前記PD-1アンタゴニストがニボルマブであり、
(b)前記ILT4アンタゴニストが、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項28】
(a)前記PD-1アンタゴニストがセミプリマブであり、
(b)前記ILT4アンタゴニストが、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【請求項29】
前記ヒト患者に、200mg、240mg、または2mg/kgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブが3週間に1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト患者に、400mgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブが6週間に1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト患者に、240mg、もしくは3mg/kgのニボルマブが2週間に1回、または480mgのニボルマブが4週間に1回投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者に、350mgのセミプリマブが投与され、セミプリマブが3週間に1回投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒト患者に、約100mg~約1600mgの前記抗ヒトILT4抗体が投与され、前記抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト患者に、100、200、300、400、800、1000または1600mgの前記抗ヒトILT4抗体が投与され、前記抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト患者に、800mgの前記抗ヒトILT4抗体が投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者に、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブが投与され、レンバチニブが1日1回投与される、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)200mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとを投与することを含む方法。
【請求項38】
(a)および(b)の各々が、3週間に1回投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
(c)が1日1回投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(a)および(b)が同じ日に投与され、(a)および(b)が連続的または同時に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記その薬学的に許容される塩がレンバチニブメシル酸塩である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法、キットまたは使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月2日に出願された米国仮出願第62/956,469号の優先権の利益を主張し、この開示全体を参照により組み込む。
【0002】
(a)プログラム死1タンパク質(PD-1)アンタゴニスト、(b)免疫グロブリン様転写物4(ILT4)アンタゴニストおよび(c)式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化1】
またはその薬学的に許容される塩の組合せを使用して癌(例えば腎細胞癌(RCC))を治療する方法が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
PD-1は、免疫調節、および末梢性寛容の維持では重要な因子として認識されている。PD-1またはそのリガンド(例えばPD-L1)を標的とする免疫チェックポイント療法は、複数のヒト癌型に対して臨床応答の革新的な改善をもたらした(Brahmer et al.,N Engl J Med,366:2455-2465(2012);Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028(2015);Hamid et al.,N Engl J Med,369:134-144(2013);Robert et al.,Lancet,384:1109-1117(2014);Robert et al.,N Engl J Med,372:2521-2532(2015);Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330(2015);Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443-2454(2012);Topalian et al.,J Clin Oncol,32:1020-1030(2014);Wolchok et al.,N Engl J Med,369:122-133(2013))。PD-1軸を標的とする免疫療法には、PD-1受容体に対するモノクローナル抗体(例えば、KEYTRUDA(登録商標)(ペンブロリズマブ)、Merck and Co.,Inc.、Kenilworth,NJ;OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)、Bristol-Myers Squibb Company、Princeton,NJ)、およびPD-L1リガンドに結合するモノクローナル抗体(例えば、TECENTRIQ(登録商標)(アテゾリズマブ)、Genentech、San Francisco,CA)が含まれる。
【0004】
自然免疫応答および適応免疫応答を回避するために腫瘍細胞によって使用される別の一般的な戦略は、ヒト白血球抗原(HLA)-Gの異常発現に関連する(Curigliano et al.Clin Cancer Res.2013およびGonzalez et al.Crit Rev Clin Lab Sci.2012)。HLA-Gは、受容体結合を介して、ならびに/またはトロゴサイトーシスおよび走化性障害を介して、免疫細胞機能を直接阻害することができる(Morandi et al.Cytokine Growth Factor Review.2014およびLin et al.Mol Med.2015)。トランスジェニックマウスモデルでは、HLA-G機能の抗体媒介遮断は、腫瘍発生を阻害し、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の増殖を遮断することが示されている(Loumange et al.Int J Cancer.2014.、Lin et al.Hum Immunol.2013.およびAgaugue et al.Blood.2011)。ILT4へのHLA-G結合は、単球、樹状細胞および好中球の機能を直接阻害するため、自然免疫抗腫瘍応答を損ない得る。したがって、ILT4遮断は、腫瘍微小環境内の寛容原性骨髄細胞の抑制を軽減すると予測され、これは、実験的証拠によって裏付けられている(Chen et al.,J.Clin.Invest.2018,128(12):5647-5662)。
【0005】
チロシンキナーゼは増殖因子シグナル伝達の調節に関与しており、したがって、癌治療の重要な標的である。レンバチニブは、腫瘍増殖に関与する他の血管新生促進性および発癌性の経路関連RTK(血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα;KIT;およびRET癌原遺伝子(RET)を含む)に加えて、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)およびVEGFR3(FLT4))ならびに線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3および4のキナーゼ活性を選択的に阻害する多重RTK(multiple RTK)(多重RTK(multi-RTK))阻害剤である。特に、レンバチニブは、X線結晶構造解析によって確認されるように、VEGFR2に対する新しい結合様式(Type V)を有し、動態解析によれば、キナーゼ活性の迅速かつ強力な阻害を示す。
【0006】
抗PD-1アンタゴニスト抗体または抗PD-L1アンタゴニスト抗体の効果は、他の承認された癌療法または実験的な癌療法、例えば、放射線、手術、化学療法剤、標的療法、腫瘍内で調節不全である他のシグナル伝達経路を阻害する薬剤、および他の免疫増強剤と組み合わせて投与された場合に増強される可能性があることが提案されている。しかし、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体と組み合わせたどの薬剤が効果的であり得るか、またはその組合せがどの患者に対して治療の効果を増強し得るかに関する明確な指針はない。したがって、当技術分野では、癌に対する堅牢な免疫応答を生じ得る、効果が高い治療用組合せに対する必要性が満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Brahmer et al.,N Engl J Med,366:2455-2465(2012)
【非特許文献2】Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028(2015)
【非特許文献3】Hamid et al.,N Engl J Med,369:134-144(2013)
【非特許文献4】Robert et al.,Lancet,384:1109-1117(2014)
【非特許文献5】Robert et al.,N Engl J Med,372:2521-2532(2015)
【非特許文献6】Robert et al.,N Engl J Med,372:320-330(2015)
【非特許文献7】Topalian et al.,N Engl J Med,366:2443-2454(2012)
【非特許文献8】Topalian et al.,J Clin Oncol,32:1020-1030(2014)
【非特許文献9】Wolchok et al.,N Engl J Med,369:122-133(2013)
【非特許文献10】Curigliano et al.Clin Cancer Res.2013
【非特許文献11】Gonzalez et al.Crit Rev Clin Lab Sci.2012
【非特許文献12】Morandi et al.Cytokine Growth Factor Review.2014
【非特許文献13】Lin et al.Mol Med.2015
【非特許文献14】Loumange et al.Int J Cancer.2014.
【非特許文献15】Lin et al.Hum Immunol.2013.
【非特許文献16】Agaugue et al.Blood.2011
【非特許文献17】Chen et al.,J.Clin.Invest.2018,128(12):5647-5662
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよび式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化2】
またはその薬学的に許容される塩の組合せを使用して癌(例えばRCC)を治療する方法を提供する。
【0009】
本開示は、PD-1アンタゴニストと、ILT4アンタゴニストと、式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化3】
またはその薬学的に許容される塩とを含むキットをさらに提供する。
【0010】
癌(例えばRCC)を治療するための治療用組合せの使用も本明細書に提供され、治療用組合せは、PD-1アンタゴニストと、ILT4アンタゴニストと、式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化4】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0011】
一態様では、癌を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化5】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0013】
ある特定の実施形態では、癌は転移性である。いくつかの実施形態では、癌は再発している。他の実施形態では、癌は難治性である。さらに他の実施形態では、癌は、再発しており、難治性である。
【0014】
一実施形態では、癌は膀胱癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。さらに別の実施形態では、癌はNSCLCである。なお別の実施形態では、癌はCRCである。一実施形態では、癌はRCCである。別の実施形態では、癌はHCCである。さらに別の実施形態では、癌は黒色腫である。
【0015】
一実施形態では、癌は進行RCCである。別の実施形態では、癌は転移性RCCである。さらに別の実施形態では、癌は再発RCCである。なお別の実施形態では、癌は難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、癌は、再発および難治性RCCである。
【0016】
別の態様では、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化6】
またはその薬学的に許容される塩とを含むキットが本明細書に提供される。
【0017】
ある特定の実施形態では、キットは、PD-1アンタゴニストと、ILT4アンタゴニストと、式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化7】
またはその薬学的に許容される塩とをヒト患者に投与するための説明書をさらに含む。
【0018】
なお別の態様では、ヒト患者の癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表される4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミド(レンバチニブ)
【化8】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0020】
ある特定の実施形態では、癌は転移性である。いくつかの実施形態では、癌は再発している。他の実施形態では、癌は難治性である。さらに他の実施形態では、癌は、再発しており、難治性である。
【0021】
一実施形態では、癌は膀胱癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。さらに別の実施形態では、癌はNSCLCである。なお別の実施形態では、癌はCRCである。一実施形態では、癌はRCCである。別の実施形態では、癌はHCCである。さらに別の実施形態では、癌は黒色腫である。
【0022】
一実施形態では、癌は進行RCCである。別の実施形態では、癌は転移性RCCである。さらに別の実施形態では、癌は再発RCCである。なお別の実施形態では、癌は難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、癌は、再発および難治性RCCである。
【0023】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のある特定の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0024】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の他の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0025】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0026】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。
【0027】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のある特定の実施形態では、ILT4アンタゴニストは、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0028】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0029】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト抗体である。
【0030】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はペンブロリズマブである。
【0031】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はニボルマブである。
【0032】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はセミプリマブである。
【0033】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のある特定の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む。
【0034】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV領域と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むV領域とを含む。
【0035】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖とを含む。
【0036】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のさらになお別の実施形態では、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩はレンバチニブメシル酸塩である。
【0037】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の具体的な一実施形態では、PD-1アンタゴニストはペンブロリズマブであり、ILT4アンタゴニストは、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0038】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の具体的な一実施形態では、PD-1アンタゴニストはニボルマブであり、ILT4アンタゴニストは、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0039】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の具体的な一実施形態では、PD-1アンタゴニストはセミプリマブであり、ILT4アンタゴニストは、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0040】
本明細書に記載される様々な方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者に、200mg、240mg、または2mg/kgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブは、3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、200mgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、240mgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、2mg/kgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。
【0041】
本明細書に記載される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、400mgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブは、6週間に1回投与される。
【0042】
本明細書に記載される様々な方法の他の実施形態では、ヒト患者に、240mg、もしくは3mg/kgのニボルマブが2週間に1回、または480mgのニボルマブが4週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、240mgのニボルマブが2週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、3mg/kgのニボルマブが2週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、480mgのニボルマブが4週間に1回投与される。
【0043】
本明細書に記載される様々な方法のさらに他の実施形態では、ヒト患者に、350mgのセミプリマブが投与され、セミプリマブは、3週間に1回投与される。
【0044】
本明細書に記載される様々な方法のなお他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含み、ヒト患者に、約100mg~約1600mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、ヒト患者に、100、200、300、400、800、1000または1600mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、100mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、200mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、300mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、400mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、800mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、1000mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、1600mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。
【0045】
本明細書に記載される様々な方法のさらになお他の実施形態では、ヒト患者に、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブが1日1回投与される。
【0046】
したがって、いくつかの実施形態では、ヒト患者に、
(a)3週間に1回、200mg、240mg、または2mg/kgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、100、200、300、400、800、1000または1600mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブとが投与される。
【0047】
ある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)3週間に1回、200mgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、20mgのレンバチニブとが投与される。
【0048】
ある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)3週間に1回、240mgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、20mgのレンバチニブとが投与される。
【0049】
ある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)3週間に1回、2mg/kgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、20mgのレンバチニブとが投与される。
【0050】
ある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)6週間に1回、400mgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、20mgのレンバチニブとが投与される。
【0051】
具体的な実施形態では、RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)3週間に1回、200mgのペンブロリズマブと、
(b)3週間に1回、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)1日1回、20mgのレンバチニブとを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0052】
そのような方法のある特定の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と抗ヒトILT4モノクローナル抗体とは、同じ日に投与される。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と抗ヒトILT4モノクローナル抗体とは、連続的に投与される。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と抗ヒトILT4モノクローナル抗体とは、同時に投与される。
【0053】
本明細書に記載される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの実施形態では、レンバチニブの薬学的に許容される塩(レンバチニブメシル酸塩)が使用され得る。レンバチニブメシル酸塩が使用される場合、レンバチニブメシル酸塩の投与量は、レンバチニブが8、10、12、14、18、20または24mgを提供するのと等しいモルのレンバチニブを提供するように適切に調整される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】RCC患者におけるペンブロリズマブおよびレンバチニブと組み合わせたMK-4830のためのアームHを含む、MK-4830の第I相非盲検マルチアーム多施設試験の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
1.定義
特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0056】
数値的に定義されたパラメータ(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、抗ILT4抗体もしくはその抗原結合断片、もしくはレンバチニブの用量、または本明細書に記載される併用療法による治療時間の長さ)を修飾するために使用される場合の「約」は、パラメータが、そのパラメータについて記載された数値または範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内またはそれ以下であることを意味し、適切な場合、記載されたパラメータは、最も近い整数に丸められてもよい。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。
【0057】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、単語の単数形、例えば、「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0058】
用語「投与」または「投与する」は、例えば、経口送達、粘膜送達、皮内送達、静脈内送達、皮下送達、筋肉内送達、および/または本明細書に記載されているかもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法によって、体外に存在する物質(例えば、本明細書に記載の抗PD-1抗体、抗ILT4抗体およびレンバチニブ)を患者に注射または他の方法で物理的に送達する行為を指す。
【0059】
「PD-1アンタゴニスト」は、免疫細胞(T細胞、B細胞またはNKT細胞)上に発現されたPD-1への癌細胞上に発現されたPD-L1の結合を遮断し、好ましくは、免疫細胞によって発現されたPD-1への癌細胞上に発現されたPD-L2の結合も遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を意味する。PD-1およびそのリガンドの代替名または同義語には、PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279およびSLEB2;PD-L1についてはPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274およびB7-H;ならびにPD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、BtdcおよびCD273が含まれる。ヒト個体が治療されている治療方法、医薬品および開示される使用のいずれかでは、PD-1アンタゴニストは、ヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合を遮断し、好ましくは、ヒトPD-1へのヒトPD-L1およびヒトPD-L2の両方の結合を遮断する。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP_005009に見出すことができる。ヒトPD-L1アミノ酸配列およびヒトPD-L2アミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.:NP_054862およびNP_079515に見出すことができる。PD-1アンタゴニストは、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブではない。
【0060】
「ILT4アンタゴニスト」は、HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-Fまたはアンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL、例えば、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7)へのILT4の結合を遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を意味する。ILT4およびそのリガンドの代替名または同義語には、限定するものではないが、ILT4についてはILT-4、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、MIR10、MIR-10、LIR2、LIR-2、CD85D;HLA-GについてはMHC-Gまたは主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、G;HLA-Aについては主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、A;HLA-BについてはAS、B-4901、主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、B;HLA-FについてはCDA12、HLA-CDA12または主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、F;ANGPTL1についてはアンジオポエチン-3、ANG3、ANGPT3、ARP1、UNQ162、アンジオポエチン様1;ANGPTL4についてはARP4、HFARP、PGAR、UNQ171、アンジオポエチン様4;およびANGPTL7についてはCDT6、アンジオポエチン様7が含まれる。ヒト個体が治療されている治療方法、医薬品および開示される使用のいずれかでは、ILT4アンタゴニストは、ヒトHLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7へのヒトILT4の結合を遮断する。ヒトILT4前駆体のアミノ酸配列は、NCBI Locus No.:AAB88119.1に見出すことができる。ヒトHLA-G、HLA-A、HLA-BおよびHLA-F前駆体のアミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.:P17693.1、P04439.2、P01889.3、P30511.3に見出すことができる。ヒトANGPTL1、ANGPTL4およびANGPTL7前駆体のアミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.:NP_001363692、Q9BY76.2およびO43827.1に見出すことができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、所望の生物学的活性または結合活性を示す免疫グロブリン分子の任意の形態を指す。したがって、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、限定するものではないが、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ヒト化、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を具体的に包含する。「親抗体」は、意図する用途のための抗体の改変、例えば、ヒト治療薬として使用するための抗体のヒト化の前に、免疫系を抗原に曝露することによって得られる抗体である。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、特に明記しない限り、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も包含する。
【0062】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)と、1つの「重」鎖(約50~70kDa)とを有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を規定し得る。典型的には、ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい。
【0063】
本明細書で使用される「可変領域」または「V領域」または「V鎖」は、異なる抗体間で配列が可変である、IgG鎖のセグメントを意味する。抗体の「可変領域」は、単独でまたは組み合わせて、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖の可変領域は、「V」と呼ばれ得る。軽鎖の可変領域は、「V」と呼ばれ得る。典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端に向かって、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方が、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883の定義に従う。
【0064】
「CDR」は、抗体Vシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体Vシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は、当業者に周知であり、抗体可変ドメイン内の最も超可変性の領域として、例えばKabatによって定義されている。CDR領域配列はまた、保存されたbシートフレームワークの一部ではなく、したがって異なる立体配座に適合することができる残基として、Chothiaによって構造的に定義されている。両用語は、当技術分野ではよく認識されている。CDR領域配列はまた、AbM、ContactおよびIMGTによって定義されている。カノニカル抗体可変領域内のCDRの位置は、多数の構造の比較によって決定されている(Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.273:927-48;Morea et al.,2000,Methods 20:267-79)。超可変領域内の残基の数は様々な抗体で異なるため、カノニカル位置に対する追加の残基は、従来、カノニカル可変領域ナンバリングスキームにおける残基番号の隣にa、b、cなどによってナンバリングされている(Al-Lazikani et al.、上記)。そのような命名法も同様に当業者に周知である。例えば、KabatナンバリングおよびIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知であり、以下の表1に示される。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabatナンバリングシステムによって定義される通りである。他の実施形態では、CDRは、IMGTナンバリングシステムによって定義される通りである。さらに他の実施形態では、CDRは、AbMナンバリングシステムによって定義される通りである。なお他の実施形態では、CDRは、Chothiaナンバリングシステムによって定義される通りである。さらに他の実施形態では、CDRは、Contactナンバリングシステムによって定義される通りである。
【0065】
【表1】
【0066】
「キメラ抗体」は、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖および/もしくは軽鎖の一部が特定の種(例えばヒト)に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する配列を含み、(1または複数の)鎖の残りが別の種(例えばマウス)に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片を指す。
【0067】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列またはその誘導体を含む抗体を指す。ヒト抗体は、マウス内で、マウス細胞内で、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマ内で産生される場合、マウス炭水化物鎖を含み得る。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれマウスもしくはラットの免疫グロブリン配列またはその誘導体のみを含む抗体を指す。
【0068】
「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えばマウス)抗体およびヒト抗体由来の配列を含む抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、超可変ループの全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでいてもよい。ヒト化抗体を親齧歯類抗体と区別するために必要な場合、接頭辞「hum」、「hu」または「h」を抗体クローンの名称に付加してもよい。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯類抗体の同じCDR配列を含むが、親和性を高めるため、ヒト化抗体の安定性を高めるため、または他の理由のために、ある特定のアミノ酸置換が含まれてもよい。
【0069】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「mAb」もしくは「Mab」は、実質的に均一な抗体の集団を指し、すなわち、その集団を含む抗体分子は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いてアミノ酸配列が同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、それらの可変ドメイン、特にそれらのCDRに異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含み、これらは、様々なエピトープに特異的であることが多い。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624-628およびMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581-597に記載されている技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離され得る。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照されたい。
【0070】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の断片、例えば、1つ以上のCDR領域を保持する断片を指す。PD-1またはILT4に「特異的に結合する」抗体は、他のタンパク質と比較して(必要に応じて)PD-1またはILT4への優先的な結合を示す抗体であるが、この特異性は絶対的な結合特異性を必要としない。抗体は、例えば、偽陽性などの望ましくない結果を生じることなく、その結合が試料中の標的タンパク質の存在を決定するものである場合、その意図された標的に「特異的」であると考えられる。抗体またはその結合断片は、非標的タンパク質との親和性の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも20倍、最も好ましくは少なくとも100倍の親和性で標的タンパク質に結合する。
【0071】
抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、CDRを含む断片、および一本鎖可変断片抗体(scFv)、ならびに抗原(例えば、PD-1またはILT4)に対する特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが含まれる。抗体には、IgG、IgAまたはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、抗体は特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを様々なクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられ得る。様々なクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は周知である。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「少なくとも1つの」項目または「1つ以上の」項目はそれぞれ、一覧から選択された単一の項目、および一覧から選択された2つ以上の項目の混合を含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「免疫応答」は、以下のうちのいずれか1つ以上、すなわち、特異的免疫応答、非特異的免疫応答、特異的応答および非特異的応答の両方、自然応答、一次免疫応答、適応免疫、二次免疫応答、記憶免疫応答、免疫細胞活性化、免疫細胞増殖、免疫細胞分化ならびにサイトカイン発現に関する。
【0074】
本明細書で使用される用語「対象」(あるいは「患者」)は、治療、観察または実験の対象であった哺乳動物を指す。哺乳動物は、雄または雌であり得る。哺乳動物は、ヒト、ウシ(例えば雌牛)、ブタ(porcine)(例えばブタ(pig))、ヒツジ(ovine)(例えばヒツジ(sheep))、ヤギ(capra)(例えばヤギ(goat))、ウマ(equine)(例えばウマ(horse))、イヌ(例えば飼犬)、ネコ(例えば家猫)、ウサギ(lagomorph)(例えばウサギ(rabbit))、齧歯類(例えば、ラットまたはマウス)、アライグマ(Procyon lotor)(例えばアライグマ(raccoon))からなる群から選択される1つ以上であり得る。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0075】
本明細書で使用される用語「それを必要とする対象」は、本明細書で定義される癌または感染性疾患と診断されたかまたはそれを有すると疑われる対象を指す。
【0076】
本開示によって提供される治療剤および組成物は、任意の好適な経腸投与経路または非経口投与経路を介して投与され得る。用語「経腸」投与「経路」は、消化管の任意の部分を介した投与を指す。経腸経路の例には、経口経路、粘膜経路、頬側経路および直腸経路、または胃内経路が挙げられる。「非経口」投与「経路」は、経腸経路以外の投与経路を指す。非経口投与経路の例には、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、膀胱内投与、動脈内投与、髄腔内投与、嚢内投与、眼窩内投与、心臓内投与、経気管投与、関節内投与、嚢下投与、くも膜下投与、脊髄内投与、硬膜外投与および胸骨内投与、皮下投与または局所投与が挙げられる。本開示の治療剤および組成物は、任意の好適な方法を使用して、例えば、経口摂取、経鼻胃管、胃瘻管、注射、注入、埋め込み型注入ポンプおよび浸透圧ポンプによって投与され得る。好適な投与経路および投与方法は、いくつかの要因、例えば、使用されている具体的な治療剤、所望の吸収速度、使用されている具体的な製剤または剤形、治療されている障害のタイプまたは重症度、具体的な作用部位、および患者の状態に応じて異なり得、当業者によって容易に選択され得る。
【0077】
抗体(例えば、抗PD-1抗体または抗ILT4抗体)、または抗体内のアミノ酸領域に関して使用される場合、用語「変異体」は、天然のまたは未改変の配列と比較して、1つ以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)のアミノ酸配列の置換、欠失および/または付加を含むペプチドまたはポリペプチドを指し得る。例えば、抗PD-1抗体の変異体は、天然のまたは以前に改変されていない抗PD-1抗体のアミノ酸配列に対する1つ以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)の変化から生じ得る。変異体は、天然に存在してもよいか、または人工的に構築されてもよい。ポリペプチド変異体は、該変異体をコードする対応する核酸分子から調製され得る。具体的な実施形態では、抗体変異体(例えば、抗PD-1抗体変異体または抗ILT4抗体変異体)は、抗体機能活性を少なくとも保持する。具体的な実施形態では、抗PD-1抗体変異体は、PD-1に結合し、および/またはPD-1活性に拮抗する。いくつかの実施形態では、抗ILT4抗体変異体は、ILT4に結合し、および/またはILT4活性に拮抗する。
【0078】
「保存的に改変された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質の生物学的活性または他の所望の特性、例えば、抗原親和性および/または特異性を変化させることなく変化を頻繁に加えることができるような、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖立体配座および剛性など)を有する他のアミノ酸によるタンパク質内のアミノ酸の置換を指す。
【0079】
当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域内の単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換を以下の表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
「相同性」は、2つのポリペプチド配列が最適にアライメントされた際のそれらの間の配列類似性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が同じアミノ酸モノマーサブユニットによって占められる場合、例えば、2つの異なるAbの軽鎖CDR内の位置がアラニンによって占められる場合、2つのAbはその位置で相同である。相同性のパーセントは、比較した位置の総数×100で割った、2つの配列が共有する相同位置の数である。例えば、配列が最適にアライメントされた際に、2つの配列内の位置10個のうちの8個が一致する場合、2つの配列は80%相同である。一般に、比較は、2つの配列が最大パーセントの相同性をもたらすようにアライメントされた際に行われる。例えば、比較はBLASTアルゴリズムによって実施することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致を与えるように選択される。
【0082】
以下の参考文献は、配列分析に使用されることが多いBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,’’A model of evolutionary change in proteins.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,’’Matrices for detecting distant relationships.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.’’M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.’’Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.’’in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York.
【0083】
本明細書で使用される「RECIST 1.1応答基準」は、必要に応じて、応答が測定されている状況に基づいて、標的病変または非標的病変について、Eisenhauer,E.A.et al.,Eur.J.Cancer 45:228-247(2009)に記載されている定義を意味する。
【0084】
「持続応答」は、本明細書に記載の治療を停止した後の持続した治療効果を意味する。いくつかの実施形態では、持続応答は、治療期間と少なくとも同じであるか、または治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍もしくは3倍の期間を有する。
【0085】
本明細書で使用される癌を「治療する」または「治療すること」は、癌を有するかまたは癌と診断された対象に、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片およびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療用組合せを投与して、少なくとも1つの肯定的な治療効果、例えば、癌細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官への癌細胞浸潤の速度の低下、または腫瘍転移もしくは腫瘍増殖の速度の低下などを達成することを意味する。そのような「治療」は、本明細書に記載されるように癌の進行の減速、中断、停止、制御または休止をもたらし得るが、必ずしも癌、または癌の症状の完全な排除を示すものではない。癌に対する肯定的な治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照)。例えば、腫瘍増殖阻害に関して、NCI基準によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=治療された腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。いくつかの実施形態では、本開示の併用療法によって達成される治療は、PR、CR、OR、PFS、DFSおよびOSのいずれかである。PFSは、「腫瘍無増悪期間」とも呼ばれ、治療中および治療後に癌が増殖しない時間の長さを示し、患者がCRまたはPRを経験した時間の量、および患者がSDを経験した時間の量を含む。DFSは、治療中および治療後に患者が疾患を有しないままである時間の長さを指す。OSは、未処置または未治療の個体または患者と比較した、平均余命の延長を指す。いくつかの実施形態では、本開示の併用療法に対する応答は、RECIST 1.1応答基準を使用して評価されるPR、CR、PFS、DFSまたはORのいずれかである。癌患者を治療するのに効果的な、本開示の併用療法のための治療レジメンは、患者の病状、年齢および体重、ならびに対象に対して抗癌応答を誘発する療法の能力などの因子に応じて変動し得る。本開示の態様のいずれかの実施形態は、あらゆる対象に対して肯定的な治療効果を達成するのに効果的ではない可能性があるが、当技術分野で公知の任意の統計学的検定、例えば、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ワリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タープストラ検定およびウィルコクソン検定によって決定されるように、統計的に有意な数の対象に対してそうすべきである。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「組合せ」、「併用療法」および「治療用組合せ」は、少なくとも1つの抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、少なくとも1つの抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩、ならびに場合により追加の治療剤がそれぞれ、重複期間にわたって協調的に患者に投与される治療を指す。少なくとも1つの抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による治療(「抗PD-1治療」)の期間は、患者が抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による治療を受ける期間、すなわち、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)の初回投薬から治療サイクルの最終日までの期間である。同様に、少なくとも1つの抗ヒトILT4モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による治療(「抗ILT4治療」)の期間は、患者が抗ヒトILT4モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)による治療を受ける期間、すなわち、抗ヒトILT4モノクローナル抗体(またはその抗原結合断片)の初回投薬から治療サイクルの最終日までの期間である。レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療(「レンバチニブ治療」)の期間は、患者がレンバチニブによる治療を受ける期間、すなわち、レンバチニブの初回投薬から治療サイクルの最終日までの期間である。本明細書に記載される方法および治療用組合せでは、抗PD-1治療は、抗ILT4治療と少なくとも1日重複し、レンバチニブ治療と少なくとも1日重複する。ある特定の実施形態では、抗PD-1治療、抗ILT4治療およびレンバチニブ治療は、同じ期間である。いくつかの実施形態では、抗PD-1治療は、抗ILT4および/またはレンバチニブ治療の前に開始される。他の実施形態では、抗PD-1治療は、抗ILT4および/またはレンバチニブ治療の後に開始される。さらに他の実施形態では、抗ILT4治療は、抗PD-1および/またはレンバチニブ治療の前に開始される。なお他の実施形態では、抗ILT4治療は、抗PD-1および/またはレンバチニブ治療の後に開始される。いくつかの実施形態では、レンバチニブ治療は、抗ILT4および/または抗PD-1治療の前に開始される。他の実施形態では、レンバチニブ治療は、抗ILT4および/または抗PD-1治療の後に開始される。ある特定の実施形態では、抗PD-1治療は、抗ILT4および/またはレンバチニブ治療の終了前に終了する。他の実施形態では、抗PD-1治療は、抗ILT4および/またはレンバチニブ治療の終了後に終了する。さらに他の実施形態では、抗ILT4治療は、抗PD-1および/またはレンバチニブ治療の終了前に終了する。なお他の実施形態では、抗ILT4治療は、抗PD-1および/またはレンバチニブ治療の終了後に終了する。ある特定の実施形態では、レンバチニブ治療は、抗ILT4および/または抗PD-1治療の終了前に終了する。他の実施形態では、レンバチニブ治療は、抗ILT4および/または抗PD-1治療の終了後に終了する。
【0087】
用語「治療レジメン」、「投薬プロトコル」および「投薬レジメン」は、本開示の併用療法における各治療剤の投与の用量およびタイミングを指すために区別なく使用される。
【0088】
「腫瘍」は、癌と診断された、または癌を有すると疑われる対象に適用される場合、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発性腫瘍および続発性新生物を含む。腫瘍の非限定的な例には、固形腫瘍(例えば、肉腫(軟骨肉腫など)、癌腫(結腸癌など)、芽細胞腫(肝芽細胞腫など)など)および血液腫瘍(例えば、白血病(急性骨髄性白血病(AML)など)、リンパ腫(DLBCLなど)、多発性骨髄腫(MM)など)が挙げられる。
【0089】
用語「腫瘍体積」または「腫瘍サイズ」は、腫瘍の長さおよび幅として測定され得る、腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の様々な方法によって、例えば、対象から除去した際の(1または複数の)腫瘍の寸法を、例えば、ノギスを使用して、または体内にある間に撮像技術、例えば、骨スキャン、超音波、CTもしくはMRIスキャンを使用して測定することなどによって決定され得る。
【0090】
そうではないと明示的に述べられていない限り、本明細書に引用されるすべての範囲は包括的である。すなわち、範囲は、範囲の上限および下限の値、ならびにその間のすべての値を含む。一例として、本明細書に記載の温度範囲、割合、等価物の範囲などは、範囲の上限および下限、ならびにそれらの間の連続体における任意の値を含む。本明細書に提供される数値、および用語「約」の使用は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±10%、±15%および±20%の変動ならびにそれらの数値等価物を含み得る。すべての範囲はまた、含まれるすべての部分範囲を含むことが意図されているが、必ずしも明示的に記載されているわけではない。例えば、3~7日の範囲は、3、4、5、6および7日を含むことが意図される。さらに、本明細書で使用される用語「または」は、適切な場合には組み合わせることができる代替物を示す。すなわち、用語「または」は、別個に列挙された各代替物、およびそれらの組合せを含む。
【0091】
本開示の態様または実施形態がマーカッシュグループ、または代替物の他のグループ分けに関して記載される場合、本開示は、全体として列挙されたグループ全体だけでなく、グループの各メンバーを個別に、およびメイングループのすべての可能なサブグループを包含するだけでなく、グループメンバーのうちの1つ以上が存在しないメイングループも包含する。本開示はまた、特許請求の範囲におけるグループメンバーのいずれかのうちの1つ以上の明示的な除外を想定する。
【0092】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形例は、記載された整数または整数群を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを意味すると理解される。文脈上他に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。用語「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」に続く任意の(1または複数の)例は、網羅的または限定的であることを意味しない。
【0093】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料も、本開示の実施または試験に使用することができる。材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0094】
2.PD-1アンタゴニスト
PD-1へのPD-L1の結合を遮断し、好ましくはPD-1へのPD-L2の結合も遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を含む、本明細書に開示される様々な方法、キットおよび使用に使用され得るPD-1アンタゴニストが本明細書に提供される。
【0095】
PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とそのリガンドPD-L1またはPD-L2との間の相互作用を遮断する任意のモノクローナル抗体を使用することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断する。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L2との間の相互作用を遮断する。さらに他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、PD-1ポリペプチド、PD-1ポリペプチド断片、PD-1ペプチドまたはPD-1エピトープに結合し、PD-1とPD-L1との間の相互作用およびPD-1とPD-L2との間の相互作用を遮断する。
【0096】
PD-L1ポリペプチド、PD-L1ポリペプチド断片、PD-L1ペプチドまたはPD-L1エピトープに結合し、PD-L1とPD-1との間の相互作用を遮断する任意のモノクローナル抗体も使用することができる。
【0097】
ある特定の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ(米国特許第7,332,582号)、AMP-514(MedImmune LLC、Gaithersburg,MD)、PDR001(米国特許第9,683,048号)、BGB-A317(米国特許第8,735,553号)およびMGA012(MacroGenics、Rockville,MD)からなる群から選択される。一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はペンブロリズマブである。別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はニボルマブである。別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はセミプリマブである。さらに別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はピディリズマブである。一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はAMP-514である。別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はPDR001である。さらに別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はBGB-A317である。なお別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はMGA012である。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7488802号、米国特許第7521051号、米国特許第8008449号、米国特許第8354509号、米国特許第8168757号、国際公開第2004/004771号、国際公開第2004/072286号、国際公開第2004/056875号、米国特許第2011/0271358号および国際公開第2008/156712号に開示されている任意の抗体、その抗原結合断片またはその変異体であり得る。
【0099】
本明細書に記載される様々な方法、キットおよび使用に使用され得る、ヒトPD-L1に結合するモノクローナル抗体の例は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8383796号に開示されている。記載される様々な方法、キットおよび使用では、PD-1アンタゴニストとして有用な具体的な抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体には、デュルバルマブ、アベルマブおよびBMS-936559が含まれる。
【0100】
本明細書に記載される様々な方法、キットおよび使用に有用な他のPD-1アンタゴニストには、PD-1またはPD-L1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1またはヒトPD-L1に特異的に結合する免疫接着分子、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合された、PD-L1またはPD-L2の細胞外結合部分またはPD-1結合部分を含む融合タンパク質が含まれる。PD-1に特異的に結合する免疫接着分子の例は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号に記載されている。本明細書に記載される様々な方法、キットおよび使用では、PD-1アンタゴニストとして有用な具体的な融合タンパク質には、PD-L2-Fc融合タンパク質であり、ヒトPD-1に結合するAMP-224(B7-DCIgとしても知られる)が含まれる。
【0101】
様々な実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のアミノ酸配列の変異体を含む。変異体アミノ酸配列は、1、2、3、4または5個のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有することを除いて、参照配列と同一である。いくつかの実施形態では、置換、欠失および/または付加は、CDR内にある。いくつかの実施形態では、置換、欠失および/または付加は、フレームワーク領域内にある。ある特定の実施形態では、アミノ酸置換のうちの1、2、3、4または5個は、保存的置換である。
【0102】
一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。さらに別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインと、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインとを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。
【0103】
一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。さらに別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインと、本明細書に記載される抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインとを有し、PD-1またはPD-L1に対する特異的結合を示す。
【0104】
様々な実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくは抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンから選択される。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG、IgG、IgGおよびIgGを含む、IgGの任意のアイソタイプを使用することができる。様々な定常ドメインが、本明細書に提供されるV領域およびV領域に付加されてもよい。例えば、本発明の抗体(または断片)の特定の意図された使用が、変更されたエフェクター機能を必要とする場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインを使用してもよい。IgG1抗体は長い半減期を提供し、補体活性化および抗体依存性細胞傷害性などのエフェクター機能を提供するが、そのような活性は、抗体のあらゆる使用にとって望ましくない可能性がある。そのような場合、例えば、IgG4定常ドメインを使用してもよい。様々な実施形態では、重鎖定常ドメインは、抗体の所望の特徴を生じさせるための1つ以上のアミノ酸変異(例えば、S228P変異を有するIgG4)を含む。これらの所望の特徴には、限定するものではないが、改変されたエフェクター機能、物理的安定性または化学的安定性、抗体の半減期などが含まれる。
【0105】
通常、本明細書に開示される抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体およびその抗原結合断片のアミノ酸配列変異体は、参照抗体または抗原結合断片(例えば、重鎖、軽鎖、V、Vまたはヒト化配列)のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。配列に対する同一性または相同性は、本明細書では、最大パーセント配列同一性を達成するために配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、参照配列と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義される。N末端、C末端、または抗体配列への内部伸長、欠失もしくは挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。
【0106】
配列同一性とは、2つの配列が最適にアライメントされた際に、2つのポリペプチドのアミノ酸が同等の位置で同じである程度を指す。配列同一性は、BLASTアルゴリズムを使用して決定することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致をもたらすように選択される。以下の参考文献は、配列分析に使用されることが多いBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,’’A model of evolutionary change in proteins.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,’’Matrices for detecting distant relationships.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.’’Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.’’in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York.
【0107】
いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の軽鎖は、ヒトカッパ骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の軽鎖は、ヒトラムダ骨格を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG1骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG2骨格を有する。さらに他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG3骨格を有する。なお他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG4骨格を有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG1変異体骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG2変異体骨格を有する。さらに他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG3変異体骨格を有する。なお他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体または抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG4変異体(例えば、S228P変異を有するIgG4)骨格を有する。
【0111】
3.ILT4アンタゴニスト
HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7へのILT4の結合を遮断する任意の化学化合物または生物学的分子を含む、本明細書に開示される様々な方法、キットおよび使用に使用され得るILT4アンタゴニストも本明細書に提供される。
【0112】
ILT4ポリペプチド、ILT4ポリペプチド断片、ILT4ペプチドまたはILT4エピトープに結合し、ILT4とHLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7との間の相互作用を遮断する任意のモノクローナル抗体を使用することができる。
【0113】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のある特定の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む。
【0114】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用のいくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV領域と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むV領域とを含む。
【0115】
本明細書に提供される様々な方法、キットまたは使用の他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖とを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/187518号および国際公開第2019/126514号に開示されている任意の抗体、その抗原結合断片またはその変異体であり得る。
【0117】
様々な実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に開示される抗ILT4抗体のアミノ酸配列の変異体を含む。変異体アミノ酸配列は、1、2、3、4または5個のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有することを除いて、参照配列と同一である。いくつかの実施形態では、置換、欠失および/または付加は、CDR内にある。いくつかの実施形態では、置換、欠失および/または付加は、フレームワーク領域内にある。ある特定の実施形態では、アミノ酸置換のうちの1、2、3、4または5個は、保存的置換である。
【0118】
一実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、ILT4に対する特異的結合を示す。別の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインを有し、ILT4に対する特異的結合を示す。さらに別の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインと、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVドメインとを有し、ILT4に対する特異的結合を示す。
【0119】
一実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインを有し、ILT4への特異的結合を示す。別の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインを有し、ILT4に対する特異的結合を示す。さらに別の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインと、本明細書に記載される抗ILT4抗体のVドメインのうちの1つに最大1、2、3、4、5個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を有するVドメインとを有し、ILT4に対する特異的結合を示す。
【0120】
様々な実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンから選択される。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG、IgG、IgGおよびIgGを含む、IgGの任意のアイソタイプを使用することができる。様々な定常ドメインが、本明細書に提供されるV領域およびV領域に付加されてもよい。例えば、本発明の抗体(または断片)の特定の意図された使用が、変更されたエフェクター機能を必要とする場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインを使用してもよい。IgG1抗体は長い半減期を提供し、補体活性化および抗体依存性細胞傷害性などのエフェクター機能を提供するが、そのような活性は、抗体のあらゆる使用にとって望ましくない可能性がある。そのような場合、例えば、IgG4定常ドメインを使用してもよい。様々な実施形態では、重鎖定常ドメインは、抗体の所望の特徴を生じさせるための1つ以上のアミノ酸変異(例えば、S228P変異を有するIgG4)を含む。これらの所望の特徴には、限定するものではないが、改変されたエフェクター機能、物理的安定性または化学的安定性、抗体の半減期などが含まれる。
【0121】
通常、本明細書に開示される抗ILT4モノクローナル抗体およびその抗原結合断片のアミノ酸配列変異体は、参照抗体または抗原結合断片(例えば、重鎖、軽鎖、V、Vまたはヒト化配列)のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。配列に対する同一性または相同性は、本明細書では、最大パーセント配列同一性を達成するために配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、参照配列と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義される。N末端、C末端、または抗体配列への内部伸長、欠失もしくは挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。
【0122】
配列同一性とは、2つの配列が最適にアライメントされた際に、2つのポリペプチドのアミノ酸が同等の位置で同じである程度を指す。配列同一性は、BLASTアルゴリズムを使用して決定することができ、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致をもたらすように選択される。以下の参考文献は、配列分析に使用されることが多いBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,’’A model of evolutionary change in proteins.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,’’Matrices for detecting distant relationships.’’in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.’’Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.’’in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York.
【0123】
いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の軽鎖は、ヒトカッパ骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の軽鎖は、ヒトラムダ骨格を有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG1骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG2骨格を有する。さらに他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG3骨格を有する。なお他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG4骨格を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG1変異体骨格を有する。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG2変異体骨格を有する。さらに他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG3変異体骨格を有する。なお他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体の重鎖は、ヒトIgG4変異体(例えば、S228P変異を有するIgG4)骨格を有する。
【0127】
ある特定の実施形態では、ILT4アンタゴニストは、HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7に結合し、HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7へのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、HLA-Gに結合し、HLA-GへのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、HLA-Aに結合し、HLA-AへのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、HLA-Bに結合し、HLA-BへのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、HLA-Fに結合し、HLA-FへのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、ANGPTL1に結合し、ANGPTL1へのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、ANGPTL4に結合し、ANGPTL4へのILT4の結合を遮断する分子である。一実施形態では、ILT4アンタゴニストは、ANGPTL7に結合し、ANGPTL7へのILT4の結合を遮断する分子である。いくつかの実施形態では、HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7に結合する分子は、HLA-G、HLA-A、HLA-B、HLA-F、ANGPTL1、ANGPTL4またはANGPTL7に特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0128】
4.PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の組合せを使用して癌を治療する方法
別の態様では、記載されるPD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩の組合せを使用して癌(例えばRCC)を治療する方法が本明細書に提供される。
【0129】
いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。ある特定の実施形態では、ILT4アンタゴニストは、抗ILT4抗体またはその抗原結合断片である。
【0130】
ある特定の実施形態では、癌を治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化9】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0132】
ある特定の実施形態では、癌は転移性である。いくつかの実施形態では、癌は再発している。他の実施形態では、癌は難治性である。さらに他の実施形態では、癌は、再発しており、難治性である。
【0133】
一実施形態では、癌は膀胱癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。さらに別の実施形態では、癌はNSCLCである。なお別の実施形態では、癌はCRCである。一実施形態では、癌はRCCである。別の実施形態では、癌はHCCである。さらに別の実施形態では、癌は黒色腫である。
【0134】
一実施形態では、癌は進行RCCである。別の実施形態では、癌は転移性RCCである。さらに別の実施形態では、癌は再発RCCである。なお別の実施形態では、癌は難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、癌は、再発および難治性RCCである。
【0135】
ある特定の実施形態では、RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化10】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0136】
いくつかの実施形態では、進行RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化11】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0137】
他の実施形態では、転移性RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化12】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0138】
さらに他の実施形態では、再発RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化13】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0139】
さらになお他の実施形態では、難治性RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化14】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0140】
他の実施形態では、再発および難治性RCCを治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化15】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0141】
ある特定の実施形態では、癌を治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)セクションV.2に開示されるPD-1アンタゴニストと、
(b)セクションV.3に開示されるILT4アンタゴニストと、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0142】
ある特定の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0143】
ある特定の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0144】
ある特定の実施形態では、ILT4アンタゴニストは、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0145】
したがって、ある特定の実施形態では、癌を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくはヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト抗ヒトILT4モノクローナル抗体もしくはヒト化抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化16】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0146】
いくつかの実施形態では、癌を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化17】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0147】
他の実施形態では、癌を治療する方法であって、それを必要とするヒト患者に、
(a)ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト化抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化18】
またはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0148】
本明細書に提供される様々な方法の一実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペンブロリズマブである。
【0149】
本明細書に提供される様々な方法の別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。
【0150】
本明細書に提供される様々な方法の別の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0151】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む。
【0152】
本明細書に提供される様々な方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV領域と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むV領域とを含む。
【0153】
本明細書に提供される様々な方法の他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖とを含む。
【0154】
したがって、本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、癌を治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)ペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0155】
本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、癌を治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)ニボルマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0156】
本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、癌を治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)セミプリマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0157】
本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、RCCを治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)ペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0158】
本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、RCCを治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)ニボルマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0159】
本明細書に提供される様々な方法の具体的な一実施形態では、RCCを治療する方法は、それを必要とするヒト患者に、
(a)セミプリマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを投与することを含む。
【0160】
一実施形態では、RCCは進行RCCである。別の実施形態では、RCCは転移性RCCである。さらに別の実施形態では、RCCは再発RCCである。なお別の実施形態では、RCCは難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、RCCは、再発および難治性RCCである。
【0161】
5.投薬および投与
PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片)、ILT4アンタゴニスト(例えば、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片)および多重RTK阻害剤(例えば、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩)の組合せを使用して癌(例えばRCC)を治療するための投薬レジメンおよび投与経路が本明細書にさらに提供される。
【0162】
本明細書に開示される抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容される塩は、例えば、連日、1週間に1~7回、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月、四半期ごと、半年ごと、毎年などに投与される用量によって投与され得る。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内投与され得るか、または吸入によって投与され得る。ある特定の実施形態では、用量は静脈内投与される。ある特定の実施形態では、用量は皮下投与される。ある特定の実施形態では、用量は経口投与される。ある治療間隔にわたる総用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、さらに一般に少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上である。対象の血清中の抗体(例えば抗PD-1抗体)またはその抗原結合断片の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mLまたはそれ以上を達成するための用量も提供され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、10、20、50、80、100、200、300、400、500、1000または2500mg/対象で、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに皮下または静脈内投与される。いくつかの具体的な方法では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約25mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.2mg/kg~約9mg/kg、約0.3mg/kg~約8mg/kg、約0.4mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.7mg/kg~約4mg/kg、約0.8mg/kg~約3mg/kg、約0.9mg/kg~約2mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、または約2.0mg/kg~約4.0mg/kgである。いくつかの具体的な方法では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約10mg~約500mg、約25mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約200mg~約500mg、約150mg~約250mg、約175mg~約250mg、約200mg~約250mg、約150mg~約240mg、約175mg~約240mg、または約200mg~約240mgである。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、240mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgである。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、10、20、50、80、100、200、300、400、500、800、1000、1600、2000または2500mg/対象で、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに皮下または静脈内投与される。いくつかの具体的な方法では、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約25mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.2mg/kg~約9mg/kg、約0.3mg/kg~約8mg/kg、約0.4mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.7mg/kg~約4mg/kg、約0.8mg/kg~約3mg/kg、約0.9mg/kg~約2mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、または約2.0mg/kg~約4.0mg/kgである。いくつかの具体的な方法では、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、約10mg~約2500mg、約25mg~約2500mg、約50mg~約2500mg、約100mg~約2500mg、約200mg~約2500mg、約300mg~約2000mg、約100mg~約1600mg、約200mg~約1000mg、約300mg~約1600mg、約300mg~約800mg、または約400mg~約800mgである。いくつかの実施形態では、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の用量は、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、1000mg、1600mgまたは2000mgである。
【0165】
本明細書に記載される様々な方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペンブロリズマブであり、ヒト患者に、200mg、240mg、または2mg/kgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブは3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、200mgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、240mgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。一実施形態では、ヒト患者に、2mg/kgのペンブロリズマブが3週間に1回投与される。
【0166】
本明細書に記載される様々な方法のある特定の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペンブロリズマブであり、ヒト患者に、400mgのペンブロリズマブが投与され、ペンブロリズマブは6週間に1回投与される。
【0167】
本明細書に記載される様々な方法の他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブであり、ヒト患者に、240mg、または3mg/kgのニボルマブが投与され、ニボルマブは2週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、240mgのニボルマブが2週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、3mg/kgのニボルマブが2週間に1回投与される。本明細書に記載される様々な方法の他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブであり、ヒト患者に、480mgのニボルマブが投与され、ニボルマブは4週間に1回投与される。
【0168】
本明細書に記載される様々な方法のさらに他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブであり、ヒト患者に、350mgのセミプリマブが投与され、セミプリマブは3週間に1回投与される。
【0169】
本明細書に記載される様々な方法のなお他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含み、ヒト患者に、約100~約1600mgの抗ヒトILT4抗体が投与され、抗ヒトILT4抗体は3週間に1回投与される。本明細書に記載される様々な方法のなお他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含み、ヒト患者に、100、200、300、400、800または1600mgの抗ヒトILT4抗体が投与され、抗ヒトILT4抗体は3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、100mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、200mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、300mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、400mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、800mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。具体的な一実施形態では、ヒト患者に、1600mgの抗ヒトILT4抗体が3週間に1回投与される。
【0170】
ある特定の実施形態では、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態では、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩は、それぞれがレンバチニブとして、8、10、12、14、18、20または24mgの1日用量で投与される。
【0171】
したがって、本明細書に提供される様々な方法のいくつかの実施形態では、ヒト患者に、
(a)200mg、240mg、または2mg/kgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、100、200、300、400、800、1000または1600mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)8、10、12、14、18、20または24mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0172】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)200mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、300mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0173】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)240mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、300mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0174】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)2mg/kgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、300mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0175】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)400mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、300mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)は6週間に1回投与され、(b)は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0176】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)200mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0177】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)240mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0178】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)2mg/kgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)および(b)の各々は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0179】
本明細書に提供される様々な方法のある特定の実施形態では、ヒト患者に、
(a)400mgのペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む、800mgの抗ヒトILT4抗体またはその抗原結合断片と、
(c)20mgのレンバチニブとが投与され、
(a)は6週間に1回投与され、(b)は3週間に1回投与され、(c)は連日投与される。
【0180】
いくつかの実施形態では、併用療法における治療剤(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体もしくはその結合断片、またはレンバチニブ)のうちの少なくとも1つは、該薬剤が同じ状態を治療するための単剤療法として使用される際に典型的に使用される同じ投与レジメン(治療の用量、頻度および期間)を使用して投与される。他の実施形態では、患者には、併用療法において、治療剤(例えば、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体もしくはその結合断片、またはレンバチニブ)のうちの少なくとも1つが、該薬剤が単剤療法として使用される場合よりも少ない総量、例えば、少ない用量、少ない頻度の用量、および/または短い治療期間投与される。
【0181】
本明細書に開示される併用療法は、腫瘍を除去するための手術の前または後に使用され得、放射線治療の前、最中または後に使用され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される併用療法は、バイオ療法剤または化学療法剤によって以前に治療されたことがない、すなわち、治療未経験である患者に投与される。他の実施形態では、併用療法は、バイオ療法剤または化学療法剤による以前の治療後に持続応答を達成することができなかった患者、すなわち、治療経験のある患者に投与される。
【0183】
本明細書に開示される治療用組合せは、限定するものではないが、特定の疾患または状態(例えば癌)の予防、治療、制御、改善、またはリスクの低減に使用される他の抗癌剤を含む1つ以上の他の活性剤と組み合わせて使用され得る。そのような他の活性剤は、本明細書に開示される組合せの治療剤のうちの1つ以上と同時または連続的に、そのために一般的に使用される経路によって、および量で投与され得る。
【0184】
1つ以上の追加の活性剤は、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容される塩と同時投与され得る。追加の(1または複数の)活性剤は、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、およびレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の同時投与薬剤とともに単一剤形で投与され得る。追加の(1または複数の)活性剤はまた、抗PD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、抗ILT4モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容される塩を含有する剤形とは別個の(1または複数の)剤形で投与され得る。
【0185】
6.キット
なお別の態様では、好適な包装材料に包装された、本明細書に開示される治療剤(例えば、PD-1アンタゴニスト、ILT4アンタゴニストおよびレンバチニブ)またはその医薬組成物を含むキットが本明細書に提供される。キットは、その中の構成要素の説明またはその中の構成要素のインビトロ、インビボもしくはエクスビボでの使用のための説明書を含むラベルまたは包装挿入物を含んでいてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、キットは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0187】
ある特定の実施形態では、キットは、PD-1アンタゴニストと、ILT4アンタゴニストと、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とをヒト患者に投与するための説明書をさらに含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗PD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、ILT4アンタゴニストは、抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0189】
一実施形態では、キットは、(a)1つ以上の投与量の抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、(b)1つ以上の投与量の抗ILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、(c)1つ以上の投与量のレンバチニブまたはその薬学的に許容される塩、および(d)抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とをヒト患者に投与するための説明書を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペンブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0191】
本明細書中の様々なキットでは、セクションV.6に記載される抗PD-1モノクローナル抗体、抗ILT4モノクローナル抗体またはレンバチニブもしくはその薬学的に許容される塩の投与量が使用され得る。いくつかの実施形態では、キットは、一定期間の治療(例えば、3、6、12または24週間など)に十分な各成分の投与量を含む。例えば、キットは、200mgのペンブロリズマブの投与量と、800mgの抗ILT4抗体の1回の投与量と、20mgのレンバチニブの21回の投与量(またはレンバチニブの同等量の薬学的に許容される塩)とを含むことができ、これらは3週間の治療に十分である。または、キットはまた、400mgのペンブロリズマブの投与量と、800mgの抗ILT4抗体の2回の投与量と、20mgのレンバチニブの42回の投与量(またはレンバチニブの同等量の薬学的に許容される塩)とを含むことができ、これらは6週間の治療に十分である。
【0192】
いくつかの実施形態では、キットは、構成要素を別個に保持するための手段、例えば、容器、分割ボトルまたは分割ホイルパケットを含む。本開示のキットは、異なる剤形、例えば、経口および非経口の投与のため、異なる投与間隔での別個の組成物の投与のため、または別個の組成物の互いに対する滴定のために使用され得る。
【0193】
7.癌を治療するための治療用組合せの使用
なお別の態様では、ヒト患者の癌(例えばRCC)を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化19】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)および黒色腫からなる群から選択される。
【0195】
ある特定の実施形態では、癌は転移性である。いくつかの実施形態では、癌は再発している。他の実施形態では、癌は難治性である。さらに他の実施形態では、癌は、再発しており、難治性である。
【0196】
一実施形態では、癌は膀胱癌である。別の実施形態では、癌は乳癌である。さらに別の実施形態では、癌はNSCLCである。なお別の実施形態では、癌はCRCである。一実施形態では、癌はRCCである。別の実施形態では、癌はHCCである。さらに別の実施形態では、癌は黒色腫である。
【0197】
一実施形態では、癌は進行RCCである。別の実施形態では、癌は転移性RCCである。さらに別の実施形態では、癌は再発RCCである。なお別の実施形態では、癌は難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、癌は、再発および難治性RCCである。
【0198】
一実施形態では、ヒト患者のRCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化20】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、ヒト患者の進行RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化21】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0200】
他の実施形態では、ヒト患者の転移性RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化22】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0201】
さらに他の実施形態では、ヒト患者の再発RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化23】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0202】
さらになお他の実施形態では、ヒト患者の難治性RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化24】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0203】
他の実施形態では、ヒト患者の再発および難治性RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)PD-1アンタゴニストと、
(b)ILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化25】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0204】
なお他の実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)セクションV.2に開示されるPD-1アンタゴニストと、
(b)セクションV.3に開示されるILT4アンタゴニストと、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化26】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0205】
ある特定の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0206】
ある特定の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0207】
ある特定の実施形態では、ILT4アンタゴニストは、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト抗体である。他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0208】
したがって、ある特定の実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体もしくはヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト抗ヒトILT4モノクローナル抗体もしくはヒト化抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化27】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ヒト抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化28】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0210】
他の実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(b)ヒト化抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)式(I)によって表されるレンバチニブ
【化29】
またはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0211】
本明細書に提供される様々な使用のいくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はペンブロリズマブである。本明細書に提供される様々な使用のいくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はニボルマブである。本明細書に提供される様々な使用のいくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はセミプリマブである。
【0212】
本明細書に提供される様々な使用のある特定の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む。
【0213】
本明細書に提供される様々な使用のいくつかの実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV領域と、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むV領域とを含む。
【0214】
本明細書に提供される様々な使用の他の実施形態では、抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖とを含む。
【0215】
したがって、具体的な一実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0216】
具体的な一実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ニボルマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0217】
具体的な一実施形態では、癌を治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)セミプリマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0218】
具体的な一実施形態では、RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ペンブロリズマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0219】
具体的な一実施形態では、RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)ニボルマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0220】
具体的な一実施形態では、RCCを治療するための治療用組合せの使用が本明細書に提供され、治療用組合せは、
(a)セミプリマブと、
(b)それぞれ配列番号1、2および3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3と、それぞれ配列番号6、7および8に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1、V CDR2およびV CDR3とを含む抗ヒトILT4モノクローナル抗体またはその抗原結合断片と、
(c)レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩とを含む。
【0221】
一実施形態では、RCCは進行RCCである。別の実施形態では、RCCは転移性RCCである。さらに別の実施形態では、RCCは再発RCCである。なお別の実施形態では、RCCは難治性RCCである。さらになお別の実施形態では、RCCは、再発および難治性RCCである。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。各実施形態は、そのような組合せが実施形態の説明と一致する限り、1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができることがさらに理解されるであろう。
【0223】
[実施例]
このセクション(セクションVI)の実施例は、限定ではなく例示として提供されている。
【0224】
[実施例1]
RCC患者に対して、抗ILT4抗体およびレンバチニブと組み合わせて抗PD-1抗体を投与する臨床試験
進行固形腫瘍を有する参加者に対する単剤療法としての、またはペンブロリズマブと組み合わせた抗ILT4抗体(「MK-4830」)の第1相非盲検マルチアーム多施設試験が進行中である(NCT03564691)。
【0225】
2019年5月10日のデータカットオフの時点で、合計51例の参加者に、少なくとも1用量のMK-4830を投与している。進行中のMK-4830単剤療法フェーズでは、MK-4830単剤療法は、1600mgの最大計画用量レベルに達した。進行中のMK-4830+ペンブロリズマブの併用フェーズでは、MK-4830用量レベルは、800mgの最大用量に達した。
【0226】
目標用量制限毒性(DLT)率はコホートのいずれでも達成されず、最大耐用量(MTD)は定義されなかった。
【0227】
治療した合計51例の参加者のうち、予備データから、26例(51%)が1つ以上の薬物関連AEを有し、その大部分がグレード1であったことが示された。全参加者中で最も一般的な試験薬物関連AEは、関節痛(9.8%)、疲労(9.8%)、食欲不振(7.8%)、下痢(7.8%)および掻痒(7.8%)であった。MK-4830単剤療法コホートでは、1600mg用量レベルで一過性のグレード3の血圧上昇のエピソードが1回認められた。グレード4または5の薬物関連AEまたはSAEはなかった。
【0228】
予備データに基づいて、本試験を支援するために、特定の適応症(例えばRCC)に対する追加の検討を組み込む。図1は、RCC試験デザインの概要を示す。アームHは、疾患の事前の全身治療を受けていない進行RCC患者を対象に、800mgのMK-4830、200mgのペンブロリズマブおよび20mgのレンバチニブの組合せを試験するためのものである。
【0229】
主な目的は、ペンブロリズマブ+レンバチニブと組み合わせたMK-4830の安全性および忍容性を決定することである(アームH)。
【0230】
第2の目的は、ペンブロリズマブ+レンバチニブと組み合わせて投与したMK-4830の薬物動態(PK)を評価することである(アームH)。
【0231】
拡大フェーズの第3の/探索的目的には、ペンブロリズマブ+レンバチニブと組み合わせてMK-4830を投与した後の循環抗MK-4830抗体および抗ペンブロリズマブ抗体の発現を評価すること(アームH)、ペンブロリズマブ+レンバチニブと組み合わせて投与したペンブロリズマブのPKを評価すること(アームH)が含まれる。
【0232】
主要転帰尺度には、以下が含まれる:
1.用量制限毒性(DLT)[時間枠:サイクル1(最大21日間)]
試験責任医師によって、試験治療投与に関連する可能性がある、おそらく関連する、または確実に関連すると評価された場合、以下の毒性の発生:
・グレード4の非血液学的毒性(非臨床検査)
・血小板減少症を除いて、7日以上持続するグレード4の血液学的毒性:
・重症度がグレード3以上の非血液学的AE(例外あり)
・グレード3またはグレード4のアラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよび/またはビリルビン臨床検査値
・他の非血液学的臨床検査値(以下の場合):
参加者を治療するために臨床的に重大な医学的介入が必要である、または異常が入院につながる、または異常が1週間を超えて持続する、または異常が薬物誘発性肝損傷をもたらす
・発熱性好中球減少症グレード3またはグレード4
・治療関連毒性によるサイクル2の開始の長期遅延(2週間超)。
・サイクル1中に、参加者に治療を中断させる治療関連毒性。
・グレード5毒性
2.有害事象(AE)[時間枠:最大約27ヶ月]
AEを経験した参加者の数。AEは、医学的治療または手技の使用に関連する異常な臨床検査所見、症状または疾患を含め、医学的治療または手技に関連すると考えられるかどうかにかかわらず、試験の経過中に発生する何らかの好ましくない意図しない徴候として定義される。
3.AEによる試験治療の中断[時間枠:最大約24ヶ月]
AEのために治療を中止した参加者の数。
【0233】
二次転帰尺度には、以下が含まれる:
1.血漿MK-4830の曲線下面積(AUC)[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
2.血漿MK-4830の最小薬物濃度(Cmin)[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
3.血漿MK-4830の最大薬物濃度(Cmax)[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
【0234】
三次/探索的転帰尺度には、以下が含まれる:
1.循環抗MK-4830抗体レベル
2.循環抗ペンブロリズマブ抗体レベル
3.血漿ペンブロリズマブのAUC[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
4.血漿ペンブロリズマブのCmin[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
5.血漿ペンブロリズマブのCmax[時間枠:サイクル1~4、6および8、およびその後4サイクルごとの1日目の注入前および注入終了24時間、ならびにサイクル1~4、6および8の1日目、およびサイクル1~3の8日目および15日目の注入後2時間(最大約24ヶ月)]
治療期間中に画像評価を行う。
【0235】
進行RCCを有する少なくとも18歳の男性および女性参加者をこの試験に登録する。
【0236】
採用基準:
・現地の試験責任医師/放射線科によって評価される、RECIST 1.1による測定可能な疾患を有すること。
・評価可能なベースライン腫瘍試料を分析のために提出すること(最新の腫瘍試料または保存腫瘍試料のいずれか)。
・生検に適した1つ以上の別個の悪性病変を有すること。
・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Scaleに従ってパフォーマンスステータスが0または1であること。
・十分な臓器機能を示すこと。
・男性参加者は、治療期間中、および試験治療の最後の投与後少なくとも180日間にわたり承認された(1または複数の)避妊法を使用することに同意し、この期間中は精子の提供を控えなければならない。
・女性参加者は、妊娠しておらず、授乳しておらず、妊娠可能な女性(WOCBP)でもない場合、またはWOCBPであれば治療期間中および試験治療の最後の投与後少なくとも120日間にわたり試験避妊ガイダンスに従うことに同意している場合、参加資格がある。
【0237】
アームHに特有の採用基準:
・肉腫様特徴の有無にかかわらず、明細胞成分を伴うRCCの組織学的に確認された診断を有すること。
・局所進行性/転移性疾患または再発性疾患を有すること。
・進行RCCのための事前の全身療法を受けていないこと。
【0238】
除外基準:
・試験治療の初回投与前4週間(緩和放射線のための2週間)以内に化学療法、根治的放射線もしくは生物学的癌治療を受けたことがあるか、または4週間超前に投与された癌治療薬に起因するAEから回復していないこと。
・あらゆる放射線関連毒性からグレード1以下に回復しておらず、コルチコステロイドを必要とし、放射線肺炎を有したこと。
・潜在的に治癒的な治療が完了しており、2年間にわたり悪性腫瘍の証拠が認められない場合を除き、第2の悪性腫瘍の病歴を有すること。
・未治療の中枢神経系転移が確認されているか、または脳軟膜転移癌が確認されていること。
・何らかの事前の免疫療法を受けており、グレード3以上の残存免疫関連AEのためにその治療を中止したこと
・以前にモノクローナル抗体による治療に対して重度の過敏反応を示したか、またはペンブロリズマブの何らかの成分に対して既知の感受性を有すること。
・治療を必要とする活動性感染を有すること。
・間質性肺疾患の病歴を有すること。
・ステロイドを必要とする非感染性肺炎の病歴を有すること、または現在肺炎を有すること。
・白斑または回復した小児喘息/アトピーを除き、過去2年間に全身治療を必要とした活動性自己免疫疾患を有すること。
・不安定狭心症、試験薬投与の1日目から6ヶ月以内の急性心筋梗塞、またはNew York Heart Association Class IIIもしくはIVの鬱血性心不全を含む、臨床的に重大な心疾患を有すること。
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の既知の病歴。
・既知の活動性B型肝炎またはC型肝炎。
・試験治療の初回投与前7日以内に、連日>10mgの用量のプレドニゾンまたは同等物の全身ステロイドを慢性的に服用していること。
・重大な検出可能な感染を伴うことなく、大手術の影響から完全に回復していないこと。全身麻酔を必要とする手術は、初回の試験治療投与の少なくとも2週間前に完了しなければならない。領域/硬膜外麻酔を必要とする手術は、初回の試験治療投与の少なくとも72時間前に完了しなければならず、参加者は回復しなければならない。
・計画された治療開始から30日以内に生ウイルスワクチンを投与されたこと。
・治験薬の試験に現在参加し、試験治療を受けているか、または治験薬の試験に参加し、試験治療を受けたことがあるか、またはMK-4830の投与から28日以内に治験装置を使用したことがあること。
【0239】
アームHに特有の除外基準:
・何らかの抗PD-1剤、抗PD-L1剤もしくは抗PD-L2剤、または何らかの他の免疫調節受容体もしくは機構を標的とする抗体による事前の治療を受けていること。
・無作為化前の12ヶ月以内に完了した、RCCのための事前の全身抗癌療法を受けていること。
・臨床的に重大な消化管(GI)異常を有すること。
・スクリーニング前6ヶ月以内に深部静脈血栓症または肺塞栓症の病歴を有すること。
・高血圧の制御が不良である。
・活動性GI出血を有する。
・創傷治癒が不十分という証拠を有する。
・無作為化前の30日以内に活動性出血障害、または重大な出血エピソードの他の病歴を有すること。
・無作為化前6週間以内に喀血を有すること。
【0240】
試験治療を以下のエラー!参照元が見つかりませんに概説する。
【0241】
【表3】
【0242】
3週間ごと(Q3W)にIV注入として、指定された用量でMK-4830を投与する。ペンブロリズマブ注入の完了後にMK-4830を投与する。
【0243】
指定された用量でレンバチニブを連日経口投与する。血圧をモニタリングする。
【0244】
良好な安全性転帰を伴ってアームHが完了した時点で、コホートの拡大を行って、進行RCCの治療におけるペンブロリズマブおよびレンバチニブと組み合わせたMK-4830の効果をさらに検討する。
【0245】
[配列表]
本明細書は、配列表のコンピュータ可読形式(CRF)コピーとともに提出される。2020年11月19日に作成され、サイズが9.60KBである、24948-WO-PCT-SEQLIST.txtと題されるCRFは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
以下の表4は、本明細書に開示される全配列を要約する。
【0247】
【表4】
図1
【配列表】
2023510199000001.app
【国際調査報告】