(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】再生可能な原料からなる生分解性ポリマー繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20230306BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230306BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
D01F8/14 B
C08L101/00
C08L67/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022541777
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2021050119
(87)【国際公開番号】W WO2021140115
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506307201
【氏名又は名称】トレヴィラ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダーリンガー イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クラネルト ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルト ペーター
【テーマコード(参考)】
4J002
4L041
【Fターム(参考)】
4J002CF03X
4J002CF18W
4J002FA04W
4J002FA04X
4J002GK01
4L041BA02
4L041BA05
4L041BC20
4L041CA05
4L041CA08
4L041CA15
(57)【要約】
本発明は、再生可能な原料からなり、良好な物理特性を有する生分解性ポリマー繊維、その製造方法、及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分ポリマー繊維であって、前記繊維は成分A(コア)及び成分B(シェル)を含み、
(i)成分Aにおける熱可塑性ポリマーの融点は、成分Bにおける熱可塑性ポリマーの融点より少なくとも5℃高く、
(ii)成分Aを含む繊維材料はバイオポリマーAを含み、成分Bを含む繊維材料はバイオポリマーBを含み、
(iii)前記バイオポリマーAは脂肪族ポリエステル、好ましくは乳酸の繰り返し単位を含むバイオポリマーであり、前記バイオポリマーBは脂肪族ポリエステルであり、前記バイオポリマーB及び前記バイオポリマーAはその化学構造に関して異なっている、
二成分ポリマー繊維において、
前記二成分ポリマー繊維は、110℃で測定される熱風熱収縮率が0%~10%の範囲であることを特徴とする、二成分ポリマー繊維。
【請求項2】
前記バイオポリマーA及び前記バイオポリマーBは、各々、ASTM D5338-15による、生物学的に分解可能な合成バイオポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項3】
前記バイオポリマーAは、乳酸の繰り返し単位、ヒドロキシ酪酸の繰り返し単位及び/又はグリコール酸の繰り返し単位、好ましくは乳酸の繰り返し単位及び/又はグリコール酸の繰り返し単位、特に乳酸の繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー繊維。
【請求項4】
前記バイオポリマーAは、最小500g/mol、好ましくは最小1000g/mol、より好ましくは最小5000g/mol、最も好ましくは最小10000g/mol、特に最小25000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のポリマー繊維。
【請求項5】
前記バイオポリマーAは、最大1000000g/mol、好ましくは最大500000g/mol、特に最大100000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1~4の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項6】
前記バイオポリマーAは、750g/mol~5000000g/molの範囲、好ましくは5000g/mol~1000000g/molの範囲、より好ましくは10000g/mol~500000g/molの範囲、最も好ましくは30000g/mol~500000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸であり、これらのポリマーの多分散性は1.5~5の範囲であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のポリマー繊維。
【請求項7】
前記バイオポリマーAは、0.5dl/g~8.0dl/gの範囲、好ましくは0.8dl/g~7.0dl/gの範囲、より好ましくは1.5dl/g~3.2dl/gの範囲の、0.1%ポリマー濃度のクロロホルム中25℃で測定される固有粘度を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1~6の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項8】
前記バイオポリマーAは、20℃より高い、好ましくは25℃より高い、特に30℃より高い、より好ましくは35℃より高い、特に40℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~7の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項9】
前記バイオポリマーBは、少なくとも10000ダルトン、特に少なくとも12000ダルトン、より好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で120000ダルトンまで、特に100000ダルトンまで、最も好ましくは80000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項1~8の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項10】
前記バイオポリマーBは、少なくとも50000ダルトン、かつ、最大で240000ダルトンまで、特に190000ダルトンまで、最も好ましくは100000ダルトンまでの重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1~8の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項11】
前記バイオポリマーBは、ASTM試験法D1238-13によって測定されるメルトフローインデックスが、10分当たり5グラム~200グラム、特に10分当たり15グラム~160グラム、より好ましくは10分当たり20グラム~120グラムであることを特徴とする、請求項1~10の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項12】
前記バイオポリマーBは、前記バイオポリマーAのガラス転移温度より少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも15℃低いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~11の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項13】
前記バイオポリマーBは、炭素数が少なくとも5の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルであり、好ましいバイオポリマーBは、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレートコポリマー及びポリカプロラクトン及びサクシネートベースの脂肪族ポリマー、特にポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンサクシネート、並びにポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート及びその混合物及びこれらの化合物のコポリマーであることを特徴とする、請求項1~12の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項14】
前記バイオポリマーBは、ポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンサクシネートコポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載のポリマー繊維。
【請求項15】
前記ポリマー繊維は、トウの形態における紡糸後に延伸され、前記トウの前記延伸中の温度は30℃~80℃であり、したがって前記バイオポリマーA及びBのガラス転移温度を上回り、前記延伸は、蒸気への曝露において、好ましくは1.2~6.0の延伸率で行われることを特徴とする、請求項1~14の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項16】
紡糸された前記トウは、延伸前に240ktex~360ktexの番手を有することを特徴とする、請求項15に記載のポリマー繊維。
【請求項17】
前記バイオポリマーBは、少なくとも10000ダルトン、特に少なくとも12000ダルトン、より好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で30000ダルトンまで、特に28000ダルトンまで、最も好ましくは25000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載のポリマー繊維。
【請求項18】
前記バイオポリマーBは、200s
-1(剪断)で250Pa・s~400Pa・s及び1200s
-1(剪断)で125Pa・s~190Pa・sの範囲、好ましくは、200s
-1(剪断)で260Pa・s~380Pa・s及び1200s
-1(剪断)で130Pa・s~180Pa・sの範囲、より好ましくは、200s
-1(剪断)で275Pa・s~375Pa・s及び1200s
-1(剪断)で135Pa・s~175Pa・sの範囲の、190℃の温度で決定される溶融粘度を有することを特徴とする、請求項17に記載のポリマー繊維。
【請求項19】
請求項1~18に記載のポリマー繊維を含む、特に湿式手順から得られる、織物ウェブ。
【請求項20】
水性懸濁液の製造のための、請求項1~18に記載のポリマー繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な物理的特性を有する再生可能な原料で作製された生物学的に分解可能なポリマー繊維、並びにその製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー繊維、即ち合成ポリマーをベースとする繊維は、工業的に大量生産される。そのために、下地の合成ポリマーが融解紡糸工程で加工される。この工程では、熱可塑性のポリマー材料が溶融され、押出機によって液体状態で紡糸ビームに導かれる。溶融された材料は、次いでこの紡糸ビームから所謂紡糸ノズルに導かれる。紡糸ノズルは、通常、複数の穿孔を有する紡糸ノズルを有し、該穿孔から繊維の個々のキャピラリー(フィラメント)が延伸される。融解紡糸手順の他に、湿式又は溶媒紡糸法も紡績繊維の製造に使用される。このために、溶融物の代わりに、合成ポリマーの高粘性溶液が、微細な穿孔を有するノズルを通して延伸される。当業者は、両方法を、所謂多段紡糸手順と呼んでいる。
【0003】
このようにして製造されたポリマー繊維は、織物及び/又は技術的用途に使用される。ここで、ポリマー繊維が水系において良好な分散特性を有することが、例えば、湿式フリースの製造において有利である。さらに、織物用途においては、ポリマー繊維が良好な機械的硬さを有することが、例えば、繊維の後加工、例えば、コンベアライン上での延伸のために良好に機能し得るため、有利である。織物用途については、特にフリースの形態のポリマー繊維の熱収縮の程度が小さいことも有利である。
【0004】
各々の最終用途又は必要な中間処理工程、例えば延伸及び/又は捲縮のために、ポリマー繊維は、通常、仕上げされた又は処理されるべきポリマー繊維の表面に適用される、適切な仕上げ又は層の適用によって、修飾され又は整えられる。
【0005】
別の可能性として、例えば、ポリマーの主鎖及び/又は側鎖に難燃効果を有する化合物を組み込むことによって、化学的修飾をポリマーベース構造自体に実施することができる。
【0006】
この他に、帯電防止剤又は着色顔料等の添加剤を、多段紡糸工程中に、溶融した熱可塑性ポリマー又はポリマー繊維に導入することができる。
【0007】
ポリマー繊維の分散挙動は、とりわけ、合成ポリマーの性質によって影響される。したがって、特に、熱可塑性ポリマーの繊維について、水系における分散特性は、表面に適用される仕上げ又は層によって影響される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年来、再生可能な原料から製造される他に、上記の要件を満たすだけでなく、可能な限り後の用途において全く又はほんのわずかな調整しか必要とせず、これにより、既存の工程及び機械を継続して使用することができるという繊維系に対する更なる要望があった。
【0009】
したがって、解決すべき課題は、良好な物理特性を有することとなり、これにより、例えばコンベアライン上での延伸において、良好な繊維の後加工が可能であり、更に、生分解性でありながらも熱収縮の程度が小さいこととなる、再生可能な原料からなるポリマー繊維を提供することである。再生可能な原料からなるポリマー繊維が良好な分散特性、特に長期的な分散性を有し、より長期間の保存後でも利用可能となれば更に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに記載した課題は本発明による二成分ポリマー繊維であって、該繊維が成分A(コア)及び成分B(シェル)を含み、成分A中の熱可塑性ポリマーの融点が成分B中の熱可塑性ポリマーの融点より少なくとも5℃高く、成分Aを含む繊維材料がバイオポリマーAを含み、成分Bを含む繊維材料がバイオポリマーBを含む、二成分ポリマー繊維によって解決される。
【0011】
二成分ポリマー繊維は、通常、紡糸工程後にトウとして保存され、その後、特定の工程によってコンベヤライン上で延伸され、後加工される。トウは直接更に加工することも可能であり、所謂キャニスター内へのトウの投入は一部又は完全に省略可能である。
【0012】
或る特定のバイオポリマー、即ち成分A(コア)及び成分B(シェル)の組合せと、特定の延伸との組合せにより、本発明による二成分ポリマー繊維が得られ、これはまた、より低い熱収縮を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリマー
本発明によって使用されるポリマーは、所謂バイオポリマーをベースとする熱可塑性重縮合物である。
【0014】
本発明による「熱可塑性ポリマー」は、或る特定の温度範囲、好ましくは25℃~350℃の範囲で(熱可塑的に)成形可能なプラスチックを意味する。この工程は可逆的であり、即ち、これは、任意選択で、過熱から材料の所謂熱分解が生じない限り、冷却しかつ融解状態まで再加熱することによって多数回繰り返すことができる。ここが、熱可塑性ポリマーが熱硬化性プラスチック及びエラストマーと異なるところである。
【0015】
所謂バイオポリマーをベースとした熱可塑性重縮合物の中でも、合成バイオポリマー、特に融解紡糸に好適な合成バイオポリマーが好ましい。
【0016】
本発明に関して「合成バイオポリマー」という用語は、生物由来原料(再生可能な原料)を含む材料を指す。このようにして、これらは、従来の原油ベースの材料又はプラスチック、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリ塩化ビニル(PVC)と区別される。
【0017】
二成分繊維は、分解可能な合成バイオポリマーから製造され、ここで、生物学的に分解可能という用語は、例えば、ASTM D5338-15(Standard Test Method for Determining Aerobic Biodegradation of Plastic Materials Under Controlled Composting Conditions, Incorporating Thermophilic Temperatures, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2015, www.astm.org)によって定義される。
【0018】
バイオポリマーA(コア)
成分Aを含む合成バイオポリマーAは、脂肪族ポリエステル、特に、乳酸、ヒドロキシ酪酸、及び/又はグリコール酸、好ましくは乳酸及び/又はグリコール酸、特に乳酸の繰り返し単位を含むバイオポリマーである。ポリ乳酸がこれに特に好ましい。
【0019】
脂肪族ポリエステルは、典型的には少なくとも約50mol%、幾つかの好ましい実施形態においては少なくとも約60mol%、より好ましい実施形態においては少なくとも約70mol%の脂肪族モノマーを有するようなポリエステルであると理解される。
【0020】
「ポリ乳酸」は、乳酸単位を含むポリマーを意味すると理解される。このようなポリ乳酸は、通常、乳酸の縮合によって生成されるが、好適な条件下でのラクチドの開環重合によっても生成される。
【0021】
本発明によれば、特に好適なポリ乳酸は、ポリ(グリコリド-co-L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co―ε―カプロラクトン)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)及びポリ(ジオキサノン)を含む。このようなポリマーは、例えば、Boehringer Ingelheim Pharma KG社(独国)から、Resomer(商標)GL903、Resomer(商標)L206S、Resomer(商標)L207S、Resomer(商標)L209S、Resomer(商標)L210、Resomer(商標)L210S、Resomer(商標)LC703S、Resomer(商標)LG824S、Resomer(商標)LG855S、Resomer(商標)LG857S、Resomer(商標)LR704S、Resomer(商標)LR706S、Resomer(商標)LR708、Resomer(商標)LR927S、Resomer(商標)RG509S及びResomer(商標)X206Sの商品名で小売りされている。
【0022】
本発明の目的のために、特に有利なポリ乳酸、特にポリ-D、ポリ-L又はポリ-D,L-乳酸。
【0023】
「ポリ乳酸」という用語は、一般に、乳酸のホモポリマー、例えば、y(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(DL-乳酸)、これらの混合物、及び主成分としての乳酸と、低割合、好ましくは10mol%未満の共重合可能なコモノマーとを含むコポリマーを指す。
【0024】
バイオポリマーAに好適な他の材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアルキレンカーボネート(ポリエチレンカーボネート等)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、及びポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレートコポリマー(PHBV)をベースとしたコポリマー又はターポリマーを含む。
【0025】
最も好ましい実施形態において、バイオポリマーAは、乳酸をベースとする熱可塑性ポリマーのみである。
【0026】
本発明によって使用されるポリ乳酸は、好ましくは、狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィ又は末端基滴定によって測定される数平均分子量(Mn)が、少なくとも500g/mol、好ましくは最小1000g/mol、最も好ましくは最小5000g/mol、より好ましくは最小10000g/mol、特に最小25000g/molである。一方、数平均分子量は、好ましくは最大1000000g/mol、より好ましくは最大500000g/mol、最も好ましくは最大100000g/mol、特に最大50000g/molである。最小10000g/molから500000g/molまでの範囲の数平均分子量もまた、本発明の範囲で極めて有利であることが証明されている。
【0027】
好ましい乳酸ポリマー、特にポリ-D、ポリ-L又はポリ-D,L-乳酸の周辺の好ましくは、狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィ又は末端基滴定によって測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは750g/mol~5000000g/molの範囲、より好ましくは5000g/mol~1000000g/mol、最も好ましくは10000g/mol~500000g/mol、特に30000g/mol~500000g/molの範囲であり、これらのポリマーの多分散性は、好ましくは1.5~5の範囲である。
【0028】
特に適した乳酸ポリマー、特にポリ-D、ポリ-L又はポリ-D,L-乳酸の周辺の、好ましくは0.1%ポリマー濃度のクロロホルム中25℃で測定される固有粘度は、0.5dl/g~8.0dl/gの範囲、好ましくは0.8dl/g~7.0dl/gの範囲、特に1.5dl/g~3.2dl/gの範囲にある。
【0029】
本発明の範囲で、バイオポリマー、特に熱可塑性合成バイオポリマーは、更に、20℃より高い、好ましくは25℃より高い、より好ましくは30℃より高い、最も好ましくは35℃、特に40℃より高いガラス転移温度を有することが極めて有利である。本発明の最も好ましい実施形態の範囲において、ポリマーのガラス転移温度は、35℃~55℃の範囲、特に40℃~50℃の範囲にある。
【0030】
また、ポリマーは、120℃より高い、有利には少なくとも130℃、好ましくは150℃より高い、かつ、最大250℃、より好ましくは最大210℃、最も好ましくは120℃~250℃の範囲、特に150℃~210℃の範囲の融解温度を有するものが、特に好適である。
【0031】
このために、ポリマーのガラス温度及び融解温度は、好ましくは動的走査熱量測定(略して「DSC」)によって決定される。極めて特に、以下の手順がこの文脈で有利であることが証明されている。
【0032】
バイオポリマーB(シェル)
成分Bを含む合成バイオポリマーBは、好ましくは、成分Aを含む合成バイオポリマーAの融点より少なくとも5℃低い融点を有するバイオポリマーである。好ましくは、バイオポリマーAの融点は、合成バイオポリマーBの融点より少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃、最も好ましくは少なくとも30℃、特に少なくとも40℃高い。
【0033】
バイオポリマーBは、脂肪族ポリエステル、特に、その化学構造に関してバイオポリマーAの繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルである。
【0034】
脂肪族ポリエステルは、典型的には少なくとも約50mol%、幾つかの好ましい実施形態においては少なくとも約60mol%、より好ましい実施形態においては少なくとも約70mol%の脂肪族モノマーを有するようなポリエステルであると理解される。
【0035】
バイオポリマーBは、一般に、少なくとも10000ダルトン、特に少なくとも12000ダルトン、より好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で120000ダルトンまで、特に100000ダルトンまで、最も好ましくは80000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有する。
【0036】
数平均分子量(Mn)は、一般に、狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィによって決定される。
【0037】
バイオポリマーBは、一般に、少なくとも50000ダルトン、かつ、最大で240000ダルトンまで、特に190000ダルトンまで、最も好ましくは100000ダルトンまでの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0038】
数平均分子量(Mn)は、一般に、狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィによって決定される。
【0039】
バイオポリマーBは、一般に、ASTM試験手順D1238-13(ASTM D1238-13、Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2013, www.astm.org)に従って測定されるメルトフローインデックスが、10分当たり5グラム~200グラム、特に10分当たり15グラム~160グラム、特に好ましくは10分当たり20グラム~120グラムである。メルトフローインデックスは、190℃で10分間に2160グラムの力に曝された場合に、押出レオメータの開口(直径0.0825インチ)を通して押し出すことができるポリマーの重量(グラム)である。
【0040】
バイオポリマーBは、好ましくは、160℃の温度及び1000s-1(s=秒)の剪断で測定される見かけ粘度が、50Pa・s(パスカル秒)~215Pa・s、より好ましくは70Pa・s~200Pa・sである]。
【0041】
脂肪族ポリエステルをベースとするバイオポリマーBは、一般に高い見かけ粘度を有すると加工が難しいだけでなく、一見して低すぎる粘度では、引張強度がなく、十分な結合能力(熱結合)がない非伸縮繊維が一般に得られるということをここで考慮する必要がある。
【0042】
50℃より高い、有利には少なくとも100℃、好ましくは120℃より高い、かつ、最大180℃、より好ましくは最大160℃、最も好ましくは50℃~160℃の範囲、特に120℃~160℃の範囲の融解温度を有するバイオポリマーBも特に好適である。
【0043】
バイオポリマーBのガラス転移温度は、バイオポリマーAのガラス転移温度より、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくはプラスチック少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも15℃低い。ガラス転移温度は、DSCによって測定される。
【0044】
低い融点及び低いガラス転移温度を有することができるバイオポリマーBの例は、炭素数が少なくとも5の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステル(例えば、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレートコポリマー及びポリカプロラクトン)及びコハク酸ベースの脂肪族ポリマー(例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンサクシネート)である。より具体的な例は、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート、並びにこれらの化合物の混合物及びコポリマーを含み得る。このような脂肪族ポリエステルは、従来技術(国際公開第2007/070064号)から知られており、典型的には、ポリオールと脂肪族ジカルボン酸又は無水物との縮合重合によって合成される。
【0045】
本発明に関するものとして、ポリブチレンサクシネート及びブチレンサクシネートコポリマーが特に好ましい。
【0046】
特にバイオポリマーBは、高い融解度及び結晶化エンタルピーを有する、熱結合に好適なものである。一般に、バイオポリマーBは、約25ジュール/グラム(「J/g」)超、より好ましくは35J/g超、最も好ましくは50J/g超の結晶化度又は融解潜熱(ΔHf)を有するように選択される。融解潜熱(ΔHf)、結晶化潜熱(ΔHC)及び結晶化温度は、ASTM D-3418(ASTM D3418-15、Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2015, www.astm.org)に従って示差走査熱量測定(「DSC」)を用いて測定される。
【0047】
本発明によって定義されるパラメータセットによる特定の延伸の実行によって、バイオポリマーBの他に、より手頃なバイオポリマーB変種の使用も可能となり、ここで、このように得られる二成分ポリマー繊維は、より低い熱収縮を有する。このようにして、これらの特定の延伸パラメータによって、広く入手可能なバイオポリマーBの使用が可能となる。本発明による実施形態において使用される特定のバイオポリマーBは、少なくとも10000ダルトン、より好ましくは少なくとも12000ダルトン、最も好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で30000ダルトンまで、好ましくは28000まで、より好ましくは25000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有する。
【0048】
数平均分子量(Mn)は、一般に、狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィによって決定される。
【0049】
特定のバイオポリマーBは、50℃より高い、有利には少なくとも100℃、好ましくは120℃より高く、かつ、最大180℃、より好ましくは最大160℃、最も好ましくは50℃~160℃の範囲、特に120℃~160℃の範囲にある融解温度を有する。
【0050】
特定のバイオポリマーBのガラス転移温度は、バイオポリマーAのガラス転移温度より、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくはプラスチック少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも15℃低い。ガラス転移温度は、DSCによって測定される。
【0051】
低い融点及び低いガラス転移温度を有し得る特定のバイオポリマーBの例は、炭素数が少なくとも5の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステル(例えば、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレートコポリマー及びポリカプロラクトン)及びサクシネートベースの脂肪族ポリマー(例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンサクシネート)である。より具体的な例は、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート、並びにこれらの化合物の混合物及びコポリマーを含み得る。
【0052】
本発明に関するものとして、特定のバイオポリマーBとして、ポリブチレンサクシネート及びブチレンサクシネートコポリマーが特に好ましい。
【0053】
特に、高い融解度及び結晶化エンタルピーを有する特定のバイオポリマーBが熱結合に好適である。一般に、バイオポリマーBは、約25ジュール/グラム(「J/g」)超、より好ましくは35J/g超、最も好ましくは50J/g超の結晶化度又は融解潜熱(ΔHf)を有するように選択される。融解潜熱(ΔHf)、結晶化潜熱(ΔHC)及び結晶化温度は、ASTM D-3418(ASTM D3418-15、Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2015, www.astm.org)に従って示差走査熱量測定(「DSC」)を用いて測定される。
【0054】
特定のバイオポリマーBは、190℃の温度で決定される(GoettfertのRheo-Tester 1000)溶融粘度が、200s-1(剪断)で250Pa・s~400Pa・s及び1200s-1(剪断)で125Pa・s~190Pa・sの範囲、好ましくは、200s-1(剪断)で260Pa・s~380Pa・s及び1200s-1(剪断)で130Pa・s~180Pa・sの範囲、より好ましくは、200s-1(剪断)で275Pa・s~375Pa・s及び1200s-1(剪断)で135Pa・s~175Pa・sの範囲である。
【0055】
ポリマーA及びB中の添加剤
上記したバイオポリマーA及びBは、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含む。これに関して、上記のバイオポリマーA及びBは酸化分解を受けやすいため、繊維の製造及び後加工には酸化防止剤群の添加物が不可避であることが証明されている。
【0056】
その他の一般的な添加剤は、熱可塑性組成物の加工性を向上させるために添加される、顔料、安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、固体溶媒、可塑剤及び他の材料、例えば核剤である。
【0057】
上記したバイオポリマーB、特に、その記載された特性に基づく特定のバイオポリマーBは、既に添加剤、特に核剤の量を減らすことが可能である。通常添加されるこのような核剤は、繊維の冷却中の結晶化を容易にし、これがその加工を容易にする。このような核剤の一種は、複数の炭素酸、例えば、米国特許第6177193号に記載されているような、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらの酸の混合物である。核剤は、典型的には、約0.5重量%未満、幾つかの実施形態においては約0.25重量%未満、幾つかの実施形態においては約0.1重量%未満の濃度でバイオポリマーB中に存在する。
【0058】
本発明による二成分繊維の少なくとも90重量%は、上記の脂肪族ポリエステルバイオポリマーA及びBを含み、シェルを形成するバイオポリマーB中に典型的には約10重量%未満、好ましくは約8重量%未満、より好ましくは約5重量%未満の添加剤を含む。
【0059】
上記したように、上記したバイオポリマーは、特にバイオポリマーB(シェル)が酸化分解を受けやすいため、酸化防止剤の添加を必要とする。
【0060】
選択された原料及び後加工の組合せに基づいて、酸化防止剤の量を著しく低減することができ、即ち、バイオポリマーB(シェル)中の酸化防止剤の濃度は、0.025%~0.2重量%である。
【0061】
本発明による二成分繊維は、紡糸後にトウに組み合わされ、従来技術から知られる方法を用いてコンベヤライン上で後加工され、特に、これらは延伸され、必要に応じて、更に捲縮又はテクスチャリングされる。延伸における特定のコンベアラインパラメータの選択によって、特に、上記した特定のバイオポリマーBを使用することができる。
【0062】
ポリマー繊維
本発明による二成分繊維は、有限繊維、例えば所謂ステープル繊維、又は無限繊維(フィラメント)として提供することができる。
【0063】
より良い分散性のために、繊維は好ましくはステープル繊維として存在する。上記のステープル繊維の長さは、基本的に制限を受けないが、一般に2mm~200mm、好ましくは3mm~120mm、より好ましくは4mm~60mmである。
【0064】
本発明による二成分繊維、好ましくはステープル繊維の単糸番手は、0.5dtex~30dtex、好ましくは0.7dtex~13dtexである。幾つかの用途では、0.5dtex~3dtexの番手、及び10mm未満、好ましくは8mm未満、より好ましくは6mm未満、最も好ましくは5mm未満の繊維長が特に良く適している。
【0065】
本発明による二成分繊維は、各々110℃で測定される、0%~10%、好ましくは0%超~8%の範囲の低い熱風熱収縮を示す。
【0066】
或る特定のバイオポリマー、即ち成分A(コア)及び成分B(シェル)としての特定のバイオポリマーBの組合せを、特定の延伸と組み合わせることで、延伸力のコア材料への伝達をも可能にし、これにより、延伸で誘起される結晶化が達成される。本発明による二成分ポリマー繊維では、これにより、上記したような低い熱収縮がもたらされる。
【0067】
本発明によるポリマー繊維は、一般に、一般的な手順で製造される。まず、ポリマーは、必要に応じて乾燥され、押出機に供給される。次に、溶融された材料は、対応するノズルを有する一般的な装置によって紡糸される。ノズル出口面での出口速度は、繊維が所望の番手で作られるような紡糸速度に調整される。紡糸速度は、硬いフィラメントが引き出される速度を意味すると理解される。
【0068】
形成される繊維は、円形、楕円形、又は更なる適切な断面及び形状を有することができる。
【0069】
このようにして製造された繊維フィラメントは、糸に組み込まれ、これが今度はトウに組み込まれる。トウは、最初に更なる加工のためにキャニスター内に置かれる。キャニスター内に断続的に保存されたトウは、ピックアップされ、大きな紡績繊維トウが作られる。
【0070】
本発明の別の目的は、一般に10ktex~600ktexを有し、特定の延伸を伴う、従来のコンベヤラインを使用した、開示される方法によって製造される紡績繊維トウの後処理である。紡績繊維トウの延伸又はドローフレームへの供給速度は、好ましくは10m/分~110m/分(供給速度)である。この時点であれば、延伸を促進するが、以下の特性に悪影響を及ぼさない調製物を未だ適用することができる。
【0071】
延伸は、1段階の手順として、又は任意選択で、2段階の延伸工程の適用において、実施することができる(これに関しては、例えば、米国特許第3816486号を参照)。延伸の前及びその間に、従来の方法の適用において、1つ以上の仕上げを適用することができる。
【0072】
本発明による延伸は、特に特定のバイオポリマーBを使用する場合、1.2~6.0、好ましくは2.0~4.0の延伸比で行われ、ここで、紡績トウの延伸中の温度は30℃~80℃である。したがって、延伸は、延伸されるべき紡績トウのガラス転移温度の範囲内で行われる。本発明による延伸は、蒸気下、即ち所謂蒸気室内で行われ、これにより、繊維の延伸点は蒸気室内で到達される。蒸気室は、通常、3バールの圧力で作動される。
【0073】
上記の温度範囲における蒸気下での延伸により、繊維の熱収縮を計画的に、制御して低減及び調整することができる。
【0074】
好ましいコンベアラインの設定は以下の通りである:
延伸は、ドローフレームS2とドローフレームS1との間、蒸気室内で、1段階の手順で行われ、即ち、繊維の延伸点は蒸気室内で到達される。S1の全てのゴデット(通常7個)は30℃~80℃の温度を有する。全体の延伸は蒸気室内で行われる。蒸気室は、好ましくは3バールの蒸気圧で作動される。
【0075】
次のドローフレームS2の全てのゴデット(通常7個)は低温であり、ここで、低温とは室温(約20℃~35℃)を意味する。
【0076】
この所謂「冷延伸」モードは、延伸が、張力がかかった状態でS2上に高温で固定されないという効果を有する。低温のS2は、個々の繊維がS2の高温のゴデットにくっつく危険性がないという利点を有する。
【0077】
「冷延伸」にもかかわらず、繊維は、それでもなお、オーブン内での張力なしの固定を伴う高温に強く、くっつくことなく最大100℃の温度に耐えることができる。
【0078】
上記の「冷延伸」はポリブチレンサクシネート(FZ71)に特に適しており、190℃の温度で決定される(GoettfertのRheo-Tester 1000)溶融粘度は、200s-1(剪断)で250Pa・s~325Pa・s及び1200s-1(剪断)で125Pa・s~150Pa・sの範囲、好ましくは、200s-1(剪断)で260Pa・s~300Pa・s及び1200s-1(剪断)で130Pa・s~150Pa・sの範囲、より好ましくは、200s-1(剪断)で270Pa・s~290Pa・s及び1200s-1(剪断)で135Pa・s~145Pa・sの範囲である。
【0079】
ポリブチレンサクシネート(FZ91)が、190℃の温度で測定される(GoettfertのRheo-Tester 1000)溶融粘度が、200s-1(剪断)で340Pa・s~400Pa・s及び1200s-1(剪断)で150Pa・s~190Pa・sの範囲、好ましくは、200s-1(剪断)で350Pa・s~390Pa・s及び1200s-1(剪断)で160Pa・s~185Pa・sの範囲、より好ましくは200s-1(剪断)で360Pa・s~385Pa・s及び1200s-1(剪断)で165Pa・s~180Pa・sの範囲である限りにおいて、ドローフレームS2は60℃~100℃の範囲の温度で作動され、即ち、全てのゴデット(通常7個)は上記の温度を有する。
【0080】
紡績トウは、好ましくは、延伸前に240ktex~360ktexを有する。
【0081】
延伸された繊維の捲縮/テクスチャリングについても同様に、必要に応じて、一般に知られている捲縮機を用いて従来の機械捲縮法を適用することができる。繊維捲縮用の機械装置は、蒸気によって作動する、例えば押込み室が好ましい。しかし、他の方法を用いて捲縮された繊維、例えば三次元的に捲縮された繊維も使用することができる。捲縮を行うために、トウは、最初に、通常50℃~100℃、好ましくは70℃~85℃の範囲、より好ましくは約78℃の温度にされ、1.0バール~6.0バール、より好ましくは約2.0バールのトウインフィードローラの圧力、0.5バール~6.0バール、より好ましくは1.5バール~3.0バールの捲縮室内の圧力、1.0kg/分~2.0kg/分、より好ましくは1.5kg/分の蒸気で処理される。
【0082】
滑らかな、又は場合により捲縮された繊維がオーブン又は熱風流中で弛緩及び/又は固定される限りにおいて、これはまた、高くとも130℃の温度で行われる。
【0083】
ステープル繊維を製造するために、滑らかな、又は場合により捲縮された繊維が取り込まれ、次いで切断され、場合により硬化され、フレークとしてプレスロールに投入される。本発明のステープル繊維は、好ましくは、下流の機械切断ユニットの弛緩において切断される。トウタイプを製造するためには、切断が省略可能である。これらのトウタイプは、切断されないままロールに投入され、プレスされる。
【0084】
本発明による繊維が捲縮された実施形態において示される限り、捲縮度は、好ましくは1cm当たり少なくとも2の捲縮(繊維カール)、好ましくは1cm当たり少なくとも3の捲縮、より好ましくは1cm当たり3カール~1cm当たり9.8カール、最も好ましくは1cm当たり3.9カール~1cm当たり8.9カールである。織物ウェブを製造する用途では、捲縮度について1cm当たり5カール~5.5カールの値が最も好ましい。湿式法による織物ウェブの製造には、捲縮度は個々のケースで調整される必要があり得る。
【0085】
織物ウェブは、本発明の課題でもある、本発明による繊維から製造することができる。本発明による繊維の良好な分散性に基づいて、そのような織物ウェブは、好ましくは湿式法によって作成される。
【0086】
したがって、「織物ウェブ」という用語は、本明細書の文脈において最も広い意味で理解されるべきである。織物ウェブは、本発明による繊維を含む、ウェブ形成技術に従って製造された全ての形態であり得る。そのような織物ウェブの例は、熱結合によって作製される、好ましくはステープル繊維をベースとした、フリース、特に湿式フリースである。
【0087】
本発明による繊維は、また、良好な分散性能を有し、即ち、繊維は、ロール又は同等の形態で、例えば数週間又は数ヶ月のより長い保存期間後でさえ、非常に良好な分散品質を有し続けるであろう。さらに、本発明による繊維は、良好な長期分散品質を有し、即ち、繊維が液体媒体中、例えば水中に分散される場合、繊維はより長く分散されたままであり、より長い期間の後にのみ沈降し始める。
【0088】
試験方法:
上記の説明において既に示されていない限り、以下の測定又は試験方法が使用される。
【0089】
番手:
番手は、DIN EN ISO 1973に従って決定された。
【0090】
分散性:
分散性の評価のために、本発明によって以下の試験方法を開発し、適用した。
【0091】
本発明による繊維が、2mm~12mmの長さに切断される。切断された繊維は、室温(25℃)で、DI水(DI=脱イオン)で満たされたガラス容器(寸法:150mm長、200mm幅、200mm高)中に入れられる。繊維の量は、DI水1リットル当たり0.25gである。より良い評価のため、通常は1gの繊維と4リットルのDI水が使用される。
【0092】
次に、繊維/DI水混合物を、通常の実験室用磁気ミキサ(例えばIKAMAG RCT)及び[sic magnetic fish](80mm)を用いて少なくとも3分撹拌し(回転速度約750rpm~1500rpm)、その後、ミキサのスイッチをオフにする。その後、全ての繊維が分散したか決定する。
【0093】
繊維のこの分散挙動は、ここでは以下のように評価される:
分散していない(-)
部分的に分散(o)
完全に分散(+)
上記評価は、定められた時間間隔に基づいて行われる。
【0094】
生物学的分解性
決定は、ASTM D5338-15(Standard Test Method for Determining Aerobic Biodegradation of Plastic Materials Under Controlled Composting Conditions, Incorporating Thermophilic Temperatures, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2015, www.astm.org)に従って為される。
【0095】
数平均分子量(Mn)
狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィ又は末端基滴定による決定。
【0096】
重量平均分子量(Mw)
狭い分布のポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィ又は末端基滴定による決定。
【0097】
固有粘度
GPCにより0.1%ポリマー濃度、クロロホルム中25℃で測定される決定。
【0098】
ガラス転移温度及び融解温度
以下の手順に従う動的示差走査熱量測定(略して「DSC」)による決定:
窒素下でのDSC測定の実行、インジウムに対する較正。
窒素フローは50ml/分;繊維の開始重量は2mg~3mgの範囲。
【0099】
10K/分での-50℃~210℃の温度範囲、その後の5分間等温、最後に再び10K/分で-50℃まで。
最終温度は、一般に、予想される最高融点より常に約50℃高い。
DSC測定は、TA/WatersのModell Q100によって行われる。
【0100】
溶融粘度
溶融粘度は、GoettfertのRheo Tester 1000によって、190℃の温度、200s-1(剪断)及び1200s-1(剪断)で決定される。
【0101】
見かけ粘度
決定は、国際公開第2007/070064号に説明されるように為される。
【0102】
メルトフローインデックス
決定は、ASTM試験法D1238-13(ASTM D1238-13、Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2013, www.astm.org)に従って為される。メルトフローインデックスは、190℃で10分間に2160グラムの力に曝された場合の、押出レオメータの開口(0.0825インチ径)を通して押し出し可能なポリマーの重量(グラム)である。
【0103】
融解潜熱
融解潜熱(ΔHf)、結晶化潜熱(ΔHC)及び結晶化温度は、ASTM D-3418(ASTM D3418-15、Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry, ASTM International, West Conshohocken, PA, 2015, www.astm.org)に従って、示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定される。
【0104】
熱収縮
トウ試料から、12個の繊維(測定試料)が抜き取られる。ピンセットにより、これらは一端がマルチクランプにクランプされ、捲縮除去重り(decrimping weight)が他端に固定される。測定は、2.2dtexの番手を有するタイプPLA/PBS(コア/シェル)の2成分繊維から得られ、捲縮除去重りは190mgである。
【0105】
測定試料が装着されたマルチクランプはスタンドに固定され、これにより、測定試料はスタンドに予荷重力がかかった状態で自由にぶら下がる。選択された開始長さ(通常150mm)が各繊維にマーキングされる。これは、スタンドにおけるマーキングラインと、測定試料に付されたマーキングポイントとによって行われる。マーキングの後、装着されたマルチクランプが降ろされ、ベルベットシート上に置かれる。そこで捲縮除去重りが外され、繊維の自由端は第2のマルチクランプにクランプされる。2つのマルチクランプの間に挟まれた測定試料は、張力がかからない状態でワイヤラックに掛けられる。このワイヤラックが、正しい処理温度(規格温度は200℃、110℃、80℃)に予熱された収縮オーブンの中央に入れられる。5分の処理時間後、ワイヤラックはオーブンから取り出される。2つのマルチクランプが冷却された後、これらは測定試料と共に取り出され、ベルベットシート上に置かれる。30分の順応時間の後、戻し測定(back measurement)が行われ得る。このために、測定試料に再び捲縮除去重りが装着され、スタンドに掛けられる。戻し測定のため、各マーキングポイントの上端がマーキングラインで覆われ得るように、スタンドの調整可能なマーキングラインが位置決めされる。ここで、スタンドのカウンタ上のマーキング間の長さが、各繊維について1/10mmの精度で個別に読み取られる。
【0106】
長さ変化の計算:長さの変化[%]=(開始長さ[mm]-測定長さ[mm])/開始長さ[mm]×100%
【0107】
全12個の測定試料の平均値がカウントされる。
【0108】
以下、本発明が実施例により説明されるが、その範囲はこれに限定されない。
【実施例】
【0109】
NatureWorksの原料PLA 6202D及びBioPBS Fz71PMが、二成分紡糸技術によって対応する繊維に紡糸された。コア材料としてのPLA濃度は70重量%であり、シェルの割合は30重量%であった。
【0110】
827孔ノズル及び1000m/分の引き出し速度での全体で331g/分のセット搬送によって、4.0dtexの紡糸番手を得た。さらに、240℃の紡糸温度で、対応する良好な紡糸挙動に到るために、0.05%の活性物質濃度の酸化防止剤がPBSに添加された。通常通り、更なる加工を可能にするために、紡糸材料に仕上げが施された。
【0111】
次に、紡糸製品を、従来のステープル繊維ライン上で約42ktexの未延伸トウ長で加工した。
【0112】
2.2dtexの蒸気媒体中で延伸され、空気循環式オーブン中での90℃で固定され、捲縮された変種の以下の織物技術に重要な値が、空気式手順での更なる加工のために、得られた。
線密度:2.3dtex
硬さ:28cN/tec
延伸:41%
収縮(110℃):1.5%
捲縮:5Bg/cm
【0113】
BioPBS Fz71PMは、200s-1(剪断)で279Pa・s及び1200s-1(剪断)で139Pa・sの融解粘度(190℃)を有するポリブチレンサクシネートである。
【0114】
PLA6202Dは、1.24g/cm3の相対密度(ASTM D792による)、及び15~30の範囲のメルトフローインデックス(210℃でのg/10分)を有するポリ乳酸である。ガラス転移温度は55℃~60℃(ASTM D3417による)、結晶融解温度は160℃~170℃(ASTM D3418による)である。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分ポリマー繊維であって、前記繊維は成分A(コア)及び成分B(シェル)を含み、
(i)成分Aにおける熱可塑性ポリマーの融点は、成分Bにおける熱可塑性ポリマーの融点より少なくとも5℃以上高く、
(ii)成分Aを含む繊維材料はバイオポリマーAを含み、成分Bを含む繊維材料はバイオポリマーBを含み、
(iii)前記バイオポリマーAは脂肪族ポリエステル、好ましくは乳酸の繰り返し単位を含むバイオポリマーであり、前記バイオポリマーBは脂肪族ポリエステルであり、前記バイオポリマーB及び前記バイオポリマーAはその化学構造に関して異なっている、
二成分ポリマー繊維において、
前記二成分ポリマー繊維は、110℃で測定される熱風熱収縮率が0%~10%の範囲であり、かつ、前記バイオポリマーA及び前記バイオポリマーBは、各々、ASTM D5338-15による、生物学的に分解可能な合成バイオポリマーであることを特徴とする、二成分ポリマー繊維。
【請求項2】
前記バイオポリマーAは、乳酸の繰り返し単位、ヒドロキシ酪酸の繰り返し単位及び/又はグリコール酸の繰り返し単位、好ましくは乳酸の繰り返し単位及び/又はグリコール酸の繰り返し単位、特に乳酸の繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー繊維。
【請求項3】
前記バイオポリマーAは、最小500g/mol、好ましくは最小1000g/mol、より好ましくは最小5000g/mol、最も好ましくは最小10000g/mol、特に最小25000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー繊維。
【請求項4】
前記バイオポリマーAは、最大1000000g/mol、好ましくは最大500000g/mol、特に最大100000g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1~3の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項5】
前記バイオポリマーAは、750g/mol~5000000g/molの範囲、好ましくは5000g/mol~1000000g/molの範囲、より好ましくは10000g/mol~500000g/molの範囲、最も好ましくは30000g/mol~500000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有するポリ乳酸であり、これらのポリマーの多分散性は1.5~5の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー繊維。
【請求項6】
前記バイオポリマーAは、0.5dl/g~8.0dl/gの範囲、好ましくは0.8dl/g~7.0dl/gの範囲、より好ましくは1.5dl/g~3.2dl/gの範囲の、0.1%ポリマー濃度のクロロホルム中25℃で測定される固有粘度を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1~5の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項7】
前記バイオポリマーAは、20℃より高い、好ましくは25℃より高い、特に30℃より高い、より好ましくは35℃より高い、特に40℃より高いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~6の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項8】
前記バイオポリマーBは、少なくとも10000ダルトン、特に少なくとも12000ダルトン、より好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で120000ダルトンまで、特に100000ダルトンまで、最も好ましくは80000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項1~7の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項9】
前記バイオポリマーBは、少なくとも50000ダルトン、かつ、最大で240000ダルトンまで、特に190000ダルトンまで、最も好ましくは100000ダルトンまでの重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1~7の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項10】
前記バイオポリマーBは、ASTM試験法D1238-13によって測定されるメルトフローインデックスが、10分当たり5グラム~200グラム、特に10分当たり15グラム~160グラム、より好ましくは10分当たり20グラム~120グラムであることを特徴とする、請求項1~9の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項11】
前記バイオポリマーBは、前記バイオポリマーAのガラス転移温度より少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも15℃低いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~10の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項12】
前記バイオポリマーBは、炭素数が少なくとも5の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステルであり、好ましいバイオポリマーBは、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレートコポリマー及びポリカプロラクトン及びサクシネートベースの脂肪族ポリマー、特にポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンサクシネート、並びにポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンサクシネート及びその混合物及びこれらの化合物のコポリマーであることを特徴とする、請求項1~11の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項13】
前記バイオポリマーBは、ポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンサクシネートコポリマーであることを特徴とする、請求項12に記載のポリマー繊維。
【請求項14】
前記ポリマー繊維は、トウの形態における紡糸後に延伸され、前記トウの前記延伸中の温度は30℃~80℃であり、したがって前記バイオポリマーA及びBのガラス転移温度を上回り、前記延伸は、蒸気への曝露において、好ましくは1.2~6.0の延伸率で行われることを特徴とする、請求項1~13の一項以上に記載のポリマー繊維。
【請求項15】
紡糸された前記トウは、延伸前に240ktex~360ktexの番手を有することを特徴とする、請求項14に記載のポリマー繊維。
【請求項16】
前記バイオポリマーBは、少なくとも10000ダルトン、特に少なくとも12000ダルトン、より好ましくは少なくとも12500ダルトン、かつ、最大で30000ダルトンまで、特に28000ダルトンまで、最も好ましくは25000ダルトンまでの数平均分子量(Mn)を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載のポリマー繊維。
【請求項17】
前記バイオポリマーBは、200s
-1(剪断)で250Pa・s~400Pa・s及び1200s
-1(剪断)で125Pa・s~190Pa・sの範囲、好ましくは、200s
-1(剪断)で260Pa・s~380Pa・s及び1200s
-1(剪断)で130Pa・s~180Pa・sの範囲、より好ましくは、200s
-1(剪断)で275Pa・s~375Pa・s及び1200s
-1(剪断)で135Pa・s~175Pa・sPa・sの範囲の、190℃の温度で決定される溶融粘度を有することを特徴とする、請求項16に記載のポリマー繊維。
【請求項18】
請求項1~17に記載のポリマー繊維を含む、特に湿式手順から得られる、織物ウェブ。
【請求項19】
水性懸濁液の製造のための、請求項1~17に記載のポリマー繊維の使用。
【国際調査報告】