(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ホログラフィックセンサー
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20230306BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01N21/47 A
G01N21/45 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543012
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2021050068
(87)【国際公開番号】W WO2021144563
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリリ モガダム,ジータ
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,クリストファー ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ブライス,ジェフリー
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA06
2G059BB12
2G059BB13
2G059BB14
2G059CC02
2G059CC03
2G059CC12
2G059CC16
2G059CC20
2G059EE02
2G059FF05
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ05
2G059MM01
2G059MM04
2G059MM17
2G059NN01
(57)【要約】
本発明は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び(iii)標的検体認識剤を含み、この第1の相及びこの第2の相は、光学格子を形成するよう配置される、センサーに関する。第1の架橋ポリマーは、低量の架橋剤を含む。本発明はまた、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、前記センサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
前記第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
前記第1の架橋ポリマーは、前記第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり1mol%以下の架橋性薬剤を含む、
センサー。
【請求項2】
標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、前記センサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
前記第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
前記第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含む前記プレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサー。
【請求項3】
標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、前記センサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
前記第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
前記第1の架橋ポリマーは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサー。
【請求項4】
前記第1の架橋ポリマーは、前記第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を含み、好ましくは前記第1の架橋ポリマーは、前記第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項5】
前記モノマーは、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有する前記モノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有する前記モノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
前記モノマーは、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくは前記モノマーは、アクリルアミドとN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項7】
前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、及び
第1の架橋ポリマーは、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びN,N′-メチレンビス
(アクリルアミド)の架橋コポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項8】
前記第1の架橋ポリマーは前記標的検体認識剤を含有する、又は
前記第2の架橋ポリマーは前記標的検体認識剤を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項9】
前記標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができ、好ましくは前記標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzoboroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項10】
前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくは前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項11】
前記第2の架橋ポリマーは、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を重合することにより得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のセンサーを含む基板。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも2個のセンサーを含むアレイ。
【請求項14】
検体の存在又は濃度を監視するための、請求項1~11のいずれか一項に記載のセンサーの使用。
【請求項15】
標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法であって、前記方法は、
(i)前記第1のプレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含有する第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含む第1の相を形成すること、
(ii)前記第1の相に第2のプレポリマー組成物を導入すること、及び
(iii)前記第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子が前記第1の相及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含む第2の相を形成することを含み、
前記第1及び第2の架橋ポリマーの1つは標的検体認識剤を含む、
方法。
【請求項16】
標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するためのセンサーの製造方法であって、前記方法は、
(i)モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含有する第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含有する第1の相を形成すること、
(ii)第2のプレポリマー組成物を前記第1の相に導入すること、及び
(iii)前記第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子が前記第1及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含む前記第2の相を形成することを含み、
前記第1及び第2の架橋ポリマーの1つは、標的検体認識剤を含む、
方法。
【請求項17】
前記第1のプレポリマー組成物は、前記第1のプレポリマー組成物のモルあたり0.3mol%以下の架橋剤を含有し、好ましくは前記第1のプレポリマー組成物は、前記第1のプレポリマー組成物のモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のプレポリマー組成物を重合することは、体積型ホログラムを記録することを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のプレポリマー組成物は、切断可能な架橋剤をさらに含み、前記方法は、
(iv)前記第2のプレポリマー組成物を重合することに続けて、前記切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断することを含み、好ましくは切断することは、前記切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断剤と反応させて前記切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断することを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記切断可能な架橋剤は、前記第1のプレポリマー組成物中に前記第1のプレポリマー組成物のモルあたり2mol%以上の量で含まれ、好ましくは前記切断可能な架橋剤は、前記第1のプレポリマー組成物中に前記第1のプレポリマー組成物のモルあたり3mol%以下の量で含まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記切断可能な架橋剤は、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドであり、好ましくは前記切断剤は、過ヨウ素酸ナトリウムである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の架橋ポリマーは前記標的検体認識剤を含む、又は
前記第2の架橋ポリマーは前記標的検体認識剤を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができ、好ましくは前記標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくは前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、最も好ましくは前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、前記第1のプレポリマー組成物はさらにアクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のプレポリマー組成物は、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を含む、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサー及び標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア(POC)診断法は、例えば、職場、路傍、ベッドサイド又は家などの治療が起こる場所で実施される。これらの生体外検査は、容易に利用できるヒト液体サンプル(血液、尿、唾液、汗)並びに皮下液体中のタンパク質、DNA、代謝物質、薬物及び細胞などの分析標的を定性的又は定量的に分析するために使用される。理想的なPOCプラットフォームは、対費用効果が高く、標的検体の存在及び/又は濃度に対するリアルタイムで容易に解釈される反応を提供するべきである。これらの要件に潜在的に合う分析技術のうち、比色POC診断法は、簡単で色に基づく読出しのため、特に有利である。
【0003】
たいていの比色POC診断法の開発における色生成の機構は、遷移金属に基づく。この技術の例は、遷移金属化合物に基づくペプチド用の蛍光センサーアレイである。コストの低さと利便性のため、遷移金属に基づく比色技術は成功してきた。しかしながら、遷移金属に基づく比色技術は、色の生成に特定の検体との相互作用を必要とするので適用性に制限があり、他の検体を標的にするよう変更するのが難しいことになる。したがって、標的検体に依存しない色生成プラットフォームが望ましい。この必要性に取り組むために、構造的比色分析が提案されている。
【0004】
構造的比色分析では、検体特異的機構が構造的彩色により一般的な色変化機構を引き起こす2個の補完的な機構が関与する。回折格子がPOC診断法における使用のために特に適した構造色生産者として提案されてきた理由は、回折格子は柔軟に製造することができるからであり、したがって、医療業界などの業界に経済的にそして技術的により好ましい。
【0005】
回折格子は、入射平面光波を異なる方向に伝わる多くの平面波に回折する散乱中心又は格子の規則正しい配列を備える。回折格子は、特定波長の入射光波を選択的に回折することができ、これにより可視光を生成することができる。入射光が伝わる媒質によって回折される特定波長の光は、媒質の屈折率に依存する。結果的に、各々の相が異なる屈折率を有する、区画又は相の規則的に交替する配列を材料中に形成することにより、回折格子を材料中に形成することができる。これらの相の屈折率を、回折される光の波長を例えば、電磁スペクトルの可視部に調整できるように、変化させてよい。さらに、回折される光の特定波長は、格子間の間隔に依存し、格子間隔に対する変化は、回折される光の波長を変化させることとなり、格子間隔が変化すると観察可能な色の変化が生じる。回折された波長の変化は、一般に波長シフト(Δλ)と呼ばれる。
【0006】
前述の背景に基づいて、特定の標的検体の存在及び量の視覚表示を提供することができる回折格子を備えるセンサーが提案されてきた。この視覚表示は、例えば、標的検体がセンサーと相互作用することによって誘導される格子間隔の変化などの、標的検体との相互作用時のセンサーの物理的変化から生じる回折格子の光学特性の変化によってもたらされる。
【0007】
POC診断法における使用のために提案されてきた具体的な種類の回折格子は、ホログラフィックセンサーに使用される、ホログラフィック格子である。非特許文献1に開示される初期のホログラフィックセンサーには、ホログラフィック格子を生成するために銀ナ
ノ粒子を使用した。しかしながら、銀ナノ粒子は、アメリカ食品医薬品局により認可されるためには複雑な規制プロセスを必要とし、ホログラフィックセンサーに濃い色を加える点で審美的に魅力がない。
【0008】
銀ナノ粒子の前述の欠点を克服するために、金属を含まない、透明な、グルコース感受性ホログラフィックセンサーが、非特許文献2に開示されている。このホログラフィックセンサーは、いわゆる二重重合法を使用して作製された。この手法において、ホログラフィック格子は、材料内部の屈折率の規則的調整により形成される。これは、第1の、少し架橋されたポリマー(P1)内に第2のより高度に架橋されたポリマー(P2)を規則的に重合することにより達成される。P2の重合は、明るい領域において、曝露が重合を強く促進するが、暗い領域において、重合はほとんど促進されない又は促進されない、定常波の関数である。結果的に、ポリマー材料の誘電率を調整し、格子構造を生成するP2の正弦波状濃縮プロフィールが形成される。センサー用途については、ポリマーP1は、グルコース応答性「スマート」ヒドロゲルを開発するために3-アクリルアミドフェニルボロン酸(3-APB)で官能基を持たせる。グルコース存在下、官能基化ポリマーP1は膨張及び収縮し、格子間隔を変化させる。この二重重合手法は、ロバストと言われ、日常的に装着するコンタクトレンズにおいて使用するよう構成されることができる透明な最終製品を作製すると言われる。
【0009】
センサーが満たすべき1つの基準は、センサーのダイナミックレンジは、広い範囲にわたる検体濃度同士を区別できるよう充分大きい必要があるということである。言い換えれば、センサーは、様々な標的検体濃度を検出し、区別できる必要がある。回折格子を使用するセンサーにおいて、この範囲は、波長シフトを区別することができ、一定量の標的検体に応答してのセンサーの波長シフトを比較することによりセンサー同士を比較することができる標的検体濃度の範囲によって決定される。その上、例えば、標的検体のmMあたりの波長シフトによって測定されるセンサーの感度は、最適化されるべきである。
【0010】
異なる標的検体を検出できるよう容易に変化することができるセンサーに対する必要性があるだけでなく、特に生体液中の標的検体の濃度範囲について、この標的検体を調整できるセンサーに対する必要性がある。
【0011】
したがって、標的検体に対する改善された感度を有するセンサーを提供することが、本発明の目的である。改善されたダイナミックレンジを有するセンサーを提供することも、本発明の目的である。異なる標的検体で使用されるよう調整できるセンサーを提供することも、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0320834号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Domschke, A.et al.“Initial clinical testing of a holographic non-invasive contact lens glucose sensor”, Diabetes Technol. Ther., vol. 8, (2006), pp 89-93
【非特許文献2】Moghaddam, G. K.et al.“A transparent glucose-sensitive double polymerised holographic sensor”, Sensors and Actuators B, vol. 267, (2018), pp 1-4
【非特許文献3】Shao et al. (2012) Ther Deliv 3, 1409-1427
【非特許文献4】Elladiou, M. & Patrickios, C.S. (2016) Chem Commun 52, 3135-3138
【非特許文献5】Debeci, G. & Kahveci, M.U. (2019) Polymer Bull 76, 1471-1487
【非特許文献6】Kloxin et al. (2009) Science 324, 59-63; doi:10.1126/science.1169494
【非特許文献7】McBath, R.A. & Shipp, D.A. (2010) Polymer Chem 1, 860-865
【非特許文献8】Miniaturised pH Holographic Sensors for the Monitoring of Lactobacillus casei Shirota Growth in a Microfluidic Chip, ACS Sens. 2019, 4, 456-463
【発明の概要】
【0014】
本発明の態様は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及びこの第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、この第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり1mol%以下の架橋剤を含む、
センサーに関する。
【0015】
本発明の別の態様は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及びこの第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含むこのプレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサーに関する。
【0016】
本発明の別の態様は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及びこの第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサーに関する。
【0017】
本発明の別の態様は、本発明によるセンサーを備える基板に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、本発明による少なくとも2個のセンサーを備えるアレイに関する。
【0019】
本発明の別の態様は、検体の存在又は濃度を監視するための、本発明によるセンサーの使用に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法であって、この方法は、
(i)第1のプレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含む第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含む第1の相を形成すること、
(ii)この第1の相に第2のプレポリマー組成物を導入すること、及び
(iii)この第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子がこの第1の相及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含む第2の相を形成することを含み、
この第1及び第2の架橋ポリマーの1つは、標的検体認識剤を含む、
方法に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法であって、この方法は、
(i)モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含む第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含む第1の相を形成すること、
(ii)この第1の相に第2のプレポリマー組成物を導入すること、及び
(iii)この第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子がこの第1及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含むこの第2の相を形成することを含み、
この第1及び第2の架橋ポリマーの1つは、標的検体認識剤を含む、
方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明を、添付の図面を参照して説明し、
【
図1】
図1は、比較例1及び実施例1~2において調製したセンサーの各々についてグルコース濃度の関数としての、ピーク回折波長の測定した差異、いわゆる波長シフト(Δλ)を示すグラフである。
【
図2】
図2は、装置が本発明によるセンサーによって回折された光の波長を測定することができるプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のセンサーは、標的検体に対する改善された感度及び幅広いダイナミックレンジを提供する。具体的には、この幅広いダイナミックレンジは、標的検体に対して調整可能である。銀ナノ粒子を組み込んでホログラムを形成する以前のセンサーと異なり、本発明のセンサーは、異なる屈折率を有する相を形成して光学格子を形成するためにポリマーの混合物を使用する。これにより銀ナノ粒子を組み込むセンサーに関連する欠点が対処される。本発明のセンサーを、異なる標的検体を検出できるよう容易に変更することができる。本発明のある態様において、各々が異なる標的検体に対する標的検体認識剤を含む、本発明による複数のセンサーを、複数の異なる標的検体を同時に検出できるアレイを形成するよう組み合わせることができる。標的検体の検出時、光学格子の光学特性が変化するように、センサーの、収縮又は膨張などの、物理的変化が生じる。光学格子の縞間隔又は平均屈折率を変化させるセンサーのいかなる物理的変化も、これらの光学特性を変化させ、回折波長(色)及び/又は強度(明度)に観察可能な変化を生成する。
【0024】
発明者らは驚いたことに、センサーを形成するために使用される第1の架橋ポリマー中の架橋剤の量を減少させることにより、センサーの感度及びダイナミックレンジを著しく改善することができることが分かった。したがって、本発明のある態様において、第1の架橋ポリマーは、この第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり1mol%以下の架橋
剤を含む。本発明の別の態様において、第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含むこのプレポリマー組成物を重合することにより得られる。本発明の別の態様において、第1の架橋ポリマーは、モルあたり100部のモノマーに関してモルあたり1部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態において、切断可能な架橋剤は、第1の架橋ポリマーの最終架橋密度を低下させる一方、製造中のセンサーの物理的強度を維持することを可能にする目的で第1の架橋ポリマーを調製するために使用される。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の相と第2の相の屈折率の差は、明るいホログラムを作製し、関心のある標的検体の濃度を正確に測定するよう制御され最適化される。
【0027】
具体的には、本発明のセンサーを、糖尿病の管理用にグルコースレベルを確実に正確に測定するために利用してよい。
【0028】
さらに有利なことに、本発明によるセンサーを、以下にさらに詳述する複数の異なる用途に利用してよいことが分かった。本発明によるセンサーは、血清、唾液、尿、涙液及び汗などの、様々な体液中の標的検体レベルを監視することができる。センサーを、紙、織物及びフィルムなどの様々な基板と組み合わせてよい。特定の実施形態において、眼液中のグルコースなどの標的検体レベルを監視するために、センサーをコンタクトレンズ内に組み込んでよい。別の実施形態においては有利なことに、本発明によるセンサーを刺青のように、皮膚に植え込むことができ、グルコースなどの標的検体レベルを測定するために使用することができることが分かった。別の実施形態において、センサーを単回使用細片などの、細片内部に組み込み、標的検体レベルを測定するために使用してよい。
【0029】
光学格子
本発明によるセンサーは、光学格子を備える。「光学格子」によって光の入射ビームを回折する周期構造が表される。当業者によって、本発明の光学格子は、屈折率の周期的変調により形成され、これは第1の屈折率を有する第1の相及び第2の、異なる屈折率を有する相を備えるセンサーにより達成されることが理解されるだろう。異なる屈折率を有する第1及び第2の相を周期的に及び適切な間隔で配列することにより、第1及び第2の相は光学格子を形成する。当業者によって、光学格子は第1及び第2の相の厚さを通じて形成されるので、光学格子は代わりに体積型格子、又は体積型ブラッグ格子と呼ばれてよいことが理解されるだろう。光学格子はブラッグ条件を満たす狭い波長範囲の光を選択的に回折できる一方、ブラッグ条件を満たさない光の波長はわずかに回折されるか、又は回折されないことが理解されるべきである。したがって、光学格子により選択的に回折される光を監視することができる。当業者は、異なる波長の光を回折するよう光学格子を調整する方法を認識している。好ましい実施形態において、光学格子によって回折される光が、例えば380~760nm又は近赤外線領域などの、電磁スペクトルの可視又は赤外線領域内に波長を有するように、光学格子は調整される。これにより、光学格子によって回折された光を分光計などの専門的設備なしに監視することが可能となる。
【0030】
第1の屈折率を有する第1の相及び第2の、異なる屈折率を有する相を備えるセンサーにより光学格子を形成するためには、センサーはいわゆる二重重合(double polymerisation)を使用して作製される。第1の相は、任意の既知の重合方法を使用して作製されてよい第1の架橋ポリマーを含む。第2の相は、第2の架橋ポリマーを含み、第1の架橋ポリマーを含んでもよい。第2のプレポリマー組成物の重合は、第2の架橋ポリマーを提供するための重合が第2のプレポリマー組成物を照射する定常正弦波の関数であるような光励起によって開始される。第2の架橋ポリマーを作製するのに適し
た重合方法としてはしたがって、限定されないが、光開始剤によって開始されるフリーラジカル重合などの、光によって開始される重合が挙げられる。
【0031】
光学格子は、代わりに体積型格子又は体積型ブラッグ格子と呼ばれてよい。光学格子は、透過格子又は反射格子であってよい。「透過格子」によって、格子がブラッグ条件を満たす入射光を、回折させるだけでなく、透過させることを表す。「反射格子」によって、格子がブラッグ条件を満たす入射光を、回折させるだけでなく、反射させることを表す。好ましい実施形態において、センサーはコンタクトレンズ中に組み込まれる。この実施形態においては、光学格子は、コンタクトレンズを目に装着しながら回折光を監視できるように、反射格子であるべきと理解されるだろう。別の実施形態において、センサーは細片中に組み込まれる。この実施形態においては、透過格子か反射格子のいずれかを使用してよいことが理解されるだろう。
【0032】
当業者は、屈折率を測定するために使用されてよい標準的な屈折率測定法を認識している。
【0033】
本発明の実施形態において、光学格子は、体積型ホログラムである。本発明の方法の実施形態において、光学格子は、第2の架橋ポリマーを作製するための重合中に、光学格子を体積型ホログラムとして記録することにより作製される。当業者は、体積型ホログラムを記録する適切な方法を認識しており、例示的な方法を以下に提供する。
【0034】
第1の架橋ポリマーを含む第1の相を調製する。第2のプレポリマー組成物をついでこの第1の相に導入する。第2のプレポリマー組成物を適切な放射により照射する。照射した波のピーク振幅領域、すなわち強烈な曝露の「明るい領域」の領域において、重合は低い振幅の「暗い領域」より強く最大化される。ピーク振幅領域におけるモノマーの消費は、過剰なモノマーの暗い領域から明るい領域への拡散を開始する濃度勾配を引き起こす。その結果として、第2の架橋ポリマーの正弦波状濃縮、すなわち周期的分布が第1の架橋ポリマーのネットワーク中に形成され、これにより材料の屈折率が調整され、光学格子構造が生成される。したがって、第2の相は、第2の架橋ポリマーに加えて第1の架橋ポリマーを含んでよい。
【0035】
この方法を用いてホログラムを記録する目的で、第2のプレポリマー組成物中に定常波干渉パターンを構築するために、第2のプレポリマー組成物を互いに干渉する少なくとも2個のコヒーレント光ビームで照射する。2個のコヒーレント光ビームは、第2のプレポリマー組成物を第2のプレポリマー組成物の同じ側から照明してよく、この場合体積型透過ホログラムが形成される。あるいは、2個のコヒーレント光ビームは、第2のプレポリマー組成物を第2のプレポリマー組成物の異なる側から照明してよく、この場合体積型反射ホログラムが形成される。後者の場合に適した方法は、鏡を第2のプレポリマー組成物の片側に配置し、この鏡を1つのコヒーレント光ビームで第2のプレポリマー組成物を通して照射することを含み、鏡によって反射した光ビームは、第2のプレポリマー組成物を通じて逆戻りして反射し、入射光ビームと干渉する。鏡は平坦な、凸状、凹状、楕円体又はコーナーキューブ系であってよい。
【0036】
標的検体
本発明によるセンサーを、任意の適した標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するために利用してよい。適した標的検体には、センサー内に組み込まれた標的検体認識剤と相互作用するものが含まれる。
【0037】
適した標的検体としては、限定されないが、気体、PO4
3-、Cl-、H+、Na+、K+、NH4
+、Ca2+、Mg2+などのイオン、Cu2+、Cd2+、Hg2+な
どの重金属、pH、アルカン、アルケン、アルキン、アルデヒド及びケトン、特にアセトンなどの揮発性有機物、グルコース、乳酸、尿素及び溶解性又は酸化還元酵素により働かされる他の代謝物などの代謝物、ペニシリンなどの抗生物質を含む薬物、治療薬、違法薬物及びデートレイプドラッグ、プロテアーゼ、カルボヒドラーゼ及びリパーゼなどの溶解性酵素を含む酵素、コリンエステラーゼ阻害剤などの酵素阻害剤、及びオキシダーゼの基質が挙げられる。好ましくは、標的検体は、グルコース、乳酸、尿素及びオキシダーゼ又は溶解性酵素により働かされる他の代謝物、並びにpHから選択される。より好ましくは、標的検体は、グルコース、乳酸、尿素及びオキシダーゼ又は溶解性酵素により働かされる他の代謝物から選択される。最も好ましくは、標的検体は、グルコースである。したがって、センサーは好ましくは、ヒトの糖尿病の管理用にグルコースレベルを監視するために利用される。
【0038】
標的検体認識剤
センサーは、標的検体認識剤を含む。「標的検体認識剤」によって、標的検体である又は標的検体の一部である特定の化学基、イオン、分子又は高分子と相互作用する又は結合する化学的又は生物学的構造を表す。例えば、標的検体認識剤は、標的検体に高い親和性を有してよい。標的検体認識剤は、標的検体と分子間引力を形成してよく、又は、標的検体認識剤は、検体と反応して標的検体と分子間結合を形成してよい。
【0039】
標的検体認識剤を、第1の架橋ポリマー中に組み込んでよい。標的検体認識剤を、第2の架橋ポリマー中に組み込んでよい。標的検体認識剤は、第1及び/又は第2の架橋ポリマーと化学的に結合されなくてよいが、第1及び/又は第2の架橋ポリマーのポリマーネットワーク内に分散されてよい。あるいは、標的検体認識剤を、重合後にポリマーに官能基を持たせることにより又は標的検体認識剤を含有するモノマーとして第1及び/又は第2の架橋ポリマー中に組み込んでよい。
【0040】
標的検体と認識剤との間の相互作用は通常可逆的であるが、技術の用途には検体が存在する証拠として働くために不可逆的相互作用を必要とするものがあってよい。しかしながら好ましくは、標的検体認識剤は、可逆的な標的検体認識剤である。「可逆的な標的検体認識剤」によって、標的検体認識剤が標的検体と相互作用を形成して「結合状態」を形成することができ、この相互作用を、標的検体認識剤及び標的検体を「非結合状態」に戻るよう逆転することができる、すなわち、標的検体は認識剤と可逆的に結合する、ことが表される。
【0041】
センサーを標的検体に曝露する時、当業者によって、標的検体認識剤と標的検体との(可逆的)相互作用によりセンサーに物理的変化が生じることが理解されるだろう。物理的変化の大きさは、標的検体の濃度に依存することも理解されるだろう。したがって、センサーが曝露される標的検体の存在及びレベルに応じて、センサーの膨張及び収縮が生じてよく、光学格子の周期構造の間隔に変化を引き起こし、したがって光学格子によって回折される光の波長を変化させる。センサーの光学格子の光学特性はしたがって変化し、標的検体の存在又は濃度の視覚表示が提供される。
【0042】
適した標的検体認識剤としては、限定されないが、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ポルフィリン、DNAアプタマー、ククルビットウリル、環状ペプチド、抗体又はそれに由来する断片、tweezerリガンド(tweezer ligands)、立体的に適合された分子三脚(sterically-geared
tripods)及びいくつかの種類の糖と金属の錯体などの天然及び合成受容体が挙げられる。
【0043】
好ましくは、標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzo
boroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸(benzoboroxole)から選択される。
【0044】
標的検体認識剤を含有するモノマー
好ましくは、標的検体認識剤は、標的検体認識剤を含有するモノマーとして第1及び/又は第2の架橋ポリマー中に組み込まれる。「標的検体認識剤を含有するモノマー」によって、標的検体認識剤は、モノマーの部分である、すなわち、標的検体認識剤は、モノマーと化学的に結合されることを表す。したがって、標的検体認識剤を含有するモノマーは、第1及び/又は第2の架橋ポリマーを形成するために使用されるプレポリマー組成物の重合中に第1及び/又は第2の架橋ポリマー中に組み込まれる。したがって、その標的検体用のセンサーを調製するために、標的検体認識剤を含有するモノマーは、標的検体に応じて選択されることができる。
【0045】
標的検体認識剤を含有する適したモノマーとしては、限定されないが、メタクリル酸、1-ビニルイミダゾール、メタクリル酸2-(ジメチルアミノエチル)、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及び4-ビニルフェニルボロン酸が挙げられる。
【0046】
標的検体がグルコースである場合、標的検体認識剤を含有するモノマーは、限定されないが、ボロン酸(R-B(OH)2)、ボリン酸(R2B-OH)、ビスボロナート(キラルビナフトール及びビスボロナートビピリジニウム塩)、グアニジノーボロナート及びベンゾボロキソール(benzoboroxole)を含むホウ酸の有機ホウ素群の様々なアクリル酸又はメタクリル酸誘導体から選択されてよい。
【0047】
好ましくは、標的検体認識剤を含有するモノマーは、3-アクリルアミドフェニルボロン酸(3-APB)、2-アクリルアミドフェニルボロン酸(2-APB)又はN-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミドである。
【0048】
好ましくは、標的検体認識剤を含有するモノマーは、3-アクリルアミドフェニルボロン酸である。
【0049】
標的検体認識剤を含有するモノマーは、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミドであってよい。
【0050】
第1の架橋ポリマー
当業者によって、第1の架橋ポリマーは、任意の公知の重合法により得られてよいことが理解されるだろう。適した重合法としては、限定されないが、フリーラジカル、イオン、配位、グラフト又は光開始重合を使用する乳濁液、溶液、懸濁液及び沈殿中の連鎖(又は付加)反応及び逐次(又は縮合)反応が挙げられる。
【0051】
当業者によって、架橋ポリマーは、隣接するポリマー鎖間に形成された架橋のため、溶媒に溶解しないことが理解されるだろう。むしろ、架橋ポリマーは、適切な溶媒中で膨張し、ヒドロゲル又はオルガノゲルなどの、ゲルを形成する。典型的には、標的検体は水中に存在する。しかしながら、標的検体は有機溶媒などの他の溶媒中に存在してよい。したがって、標的検体と相互作用するとき、センサーの架橋ポリマーは、膨張する及び/又は収縮することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、第1の架橋ポリマーは、架橋剤を含むプレポリ
マー組成物を重合することにより得られる。当業者によって、プレポリマー組成物はさらに、第1の架橋ポリマーを作製するのに適したモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを含むことが理解されるだろう。
【0053】
当業者によって、第1の架橋ポリマーは、本明細書の他の場所に開示されるモノマーを含むポリマーを架橋剤で架橋することにより得られてよいことが理解されるだろう。あるいは、当業者によって、第1の架橋ポリマーは、架橋剤及び適したモノマーを含む混合物を重合することにより得られてよいことが理解されるだろう。
【0054】
当業者によって、第1の架橋ポリマーを形成するために使用されるモノマーの少なくとも一部は、第1の架橋ポリマーを形成するために架橋を形成することができる必要があると理解されるだろう。「架橋」によって、1つのポリマー鎖を別のものと連結する共有結合が表される。
【0055】
第1の架橋ポリマーは、ポリマーであってもコポリマーであってもよい。第1の架橋ポリマーは、任意の適したモノマーから形成されてよい。
【0056】
第1の架橋ポリマーは、本明細書の他の場所に開示される標的検体認識剤を含有するモノマーから形成されてよい。ある実施形態において、第1の架橋ポリマーを形成するよう重合されるプレポリマー組成物は、本明細書の他の場所に開示される標的検体認識剤を含有するモノマーを含む。
【0057】
第1の架橋ポリマーは、限定されないが、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルモノマー、ビニルモノマー及びこれらの組み合わせを含むさらなるモノマーから形成されてよい。ある実施形態において、さらなるモノマーは、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択される。
【0058】
好ましくはさらなるモノマーは、アクリルアミド及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドである。
【0059】
非常に好ましい実施形態において、第1の架橋ポリマーは、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を架橋剤として、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸を標的検体認識剤を含有するモノマーとして、並びにアクリルアミド及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドをさらなるモノマーとして含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。
【0060】
非常に好ましい実施形態において、架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、第1の架橋ポリマーは、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、アクリルアミド及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドのコポリマーである。
【0061】
ある実施形態において、第1の架橋ポリマーは、1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーを架橋剤で重合することにより得られる。ある実施形態において、1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、本明細書に定義される、標的検体認識剤を含有するモノマーを含む。ある実施形態において、1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、1つのエチレン性不飽和基を有するさらなるモノマーを含む。1つのエチレン性不飽和基を有する適したモノマーとしては、限定されないが、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましい実施形態において、架橋剤は、N,N′-メチ
レンビス(アクリルアミド)であり、1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む。
【0062】
第2の架橋ポリマー
当業者によって、第2の架橋ポリマーは、第1及び第2の架橋ポリマーに対する光開始重合によりセンサーの光学格子を形成することにより作製する必要があることが理解されるだろう。第2の架橋ポリマーは、これらがもし光開始重合に適しているならば、第1の架橋ポリマーと同一のモノマー単位を含んでよい。第1及び第2の架橋ポリマーは、同一のポリマーであってもコポリマーであってもよいが、架橋密度が異なってよい。あるいは、第2の架橋ポリマーは、第1の架橋ポリマーと異なるモノマー単位を含んでよい。第2の架橋ポリマーは、ポリマー又はコポリマーであってよい。第2の架橋ポリマーは、光開始重合に適している任意のモノマーから形成されてよい。
【0063】
第2の相は、第1の相と異なる屈折率を有する。当業者は、これは、第1の架橋ポリマーと異なる架橋密度を有する第2の架橋ポリマーによって達成されてよいことを理解するだろう。当業者は、例えば、架橋ポリマーを作製するために使用される架橋剤の量を調節することにより、架橋密度を制御することができる。例えば、ある実施形態において、第2の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり35mol%以上の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。ある実施形態において、第2の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり91mol%以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。第2の架橋ポリマーは、第2の架橋剤中にモノマーのモルあたり35mol%以上の架橋剤を含んでよい。第2の架橋ポリマーは、第2の架橋剤中にモノマーのモルあたり91mol%以下の架橋剤を含んでよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態において、第2の架橋ポリマーは、架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。当業者によって、プレポリマー組成物はさらに、光開始重合により第2の架橋ポリマーを作製するのに適したモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを含むと理解されるだろう。
【0065】
当業者は、光開始重合に適したモノマーを認識している。光開始重合に適したモノマーとしては、限定されないが、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
当業者によって、第2の架橋ポリマーを形成するために使用されるモノマーの少なくとも一部は、第2の架橋ポリマーを形成するために架橋を形成できる必要があると理解されるだろう。
【0067】
第2の架橋ポリマーは、標的検体認識剤を含有するモノマーがもし光開始重合に適しているならば、本明細書の他の場所に開示される標的検体認識剤を含有するモノマーから形成されてよい。ある実施形態において、第2の架橋ポリマーを形成するよう重合されるプレポリマー組成物は、標的検体認識剤を含有するモノマーがもし光開始重合に適しているならば、本明細書の他の場所に開示される標的検体認識剤を含有するモノマーを含む。
【0068】
非常に好ましい実施形態において、第2の架橋ポリマーは、架橋剤としてのN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)及びアクリルアミドを含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。
【0069】
非常に好ましい実施形態において、架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミ
ド)であり、第2の架橋ポリマーは、アクリルアミドとN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)とのコポリマーである。
【0070】
架橋剤
当業者は、架橋剤を認識している。「架橋剤」によって、2個以上のポリマー鎖間に共有結合(架橋)を形成することができる分子が表され、架橋剤によって形成される架橋は、特定の条件下安定である。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、切断可能な架橋剤が、架橋剤によって形成される架橋と同一の特定の条件に曝露される場合不安定な架橋を形成するという点で「切断可能な架橋剤」と区別される。この意味で、「架橋剤」は代わりに、「非切断可能な架橋剤」と呼ばれてよい。例えば、特定の条件は、切断可能な架橋剤によって形成された架橋と反応し、これにより切断可能な架橋剤によって形成された隣接するポリマー鎖間の共有結合を分解する切断剤への曝露であってよいが、この試薬は(非切断可能な)架橋剤によって形成された架橋と反応しない。
【0071】
本発明の態様において、第1の架橋ポリマーは、第1の架橋ポリマー中モノマーのモルあたり1mol%以下の架橋剤を含む。本発明の別の態様において、第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。本発明の別の態様において、第1の架橋ポリマーは、モルあたり100部のモノマーに関してモルあたり1部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。発明者らは驚いたことに、センサーを形成するために使用される第1の架橋ポリマー中の架橋剤の量を減少させることにより、センサーの感度及びダイナミックレンジを著しく改善することができることが分かった。
【0072】
「第1/第2の架橋ポリマー中モノマーのモルあたり」によって、この量は、架橋ポリマー中のモノマーの合計モルあたりであることが表される。したがって、溶媒及び光開始剤などの、最終架橋ポリマー中に組み込まれない成分は、mol%の計算に含まれない。
【0073】
「プレポリマー組成物のモルあたり」によって、この量は、最終架橋ポリマー中に組み込まれる成分のモルあたりであることが表される。したがって、溶媒及び光開始剤などの、最終架橋ポリマー中に組み込まれないプレポリマー組成物中の成分は、mol%の計算に含まれない。
【0074】
「モノマーのモルあたり」によって、この量は、架橋ポリマーを作製するために使用されるプレポリマー組成物中のモノマーのモルあたりであることが表される。したがって、溶媒及び光開始剤などの、最終架橋ポリマー中に組み込まれない成分は、mol%の計算に含まれない。
【0075】
好ましくは、第1の架橋ポリマーは、第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.1mol%以上の架橋剤を含む。第1の架橋ポリマーの機械的強度を維持し、センサーの安定性を強化するために、第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を第1の架橋ポリマー中に組み込むことが好ましい。ある実施形態において、第1の架橋ポリマーは、第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含む。
【0076】
第1の架橋ポリマーは好ましくは、プレポリマー組成物のモルあたり0.1mol%以上の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。第1の架橋ポリマーの機械的強度を維持し、センサーの安定性を強化するために、第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られることが好ましい。ある実施形態において、第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含むプレポリマ
ー組成物を重合することにより得られる。
【0077】
第1の架橋ポリマーは好ましくは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.1部以上の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。第1の架橋ポリマーの機械的強度を維持し、センサーの安定性を強化するために、第1の架橋ポリマーは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.3部以上の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られることが好ましい。ある実施形態において、第1の架橋ポリマーは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.6部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる。
【0078】
本明細書に開示されるとおり、第1の架橋ポリマー中の(非切断可能な)架橋剤の量を減少させることは有利である。しかしながら、(非切断可能な)架橋剤の量を減少させることは、ポリマーの機械的強度に悪影響を及ぼす。したがって、いくつかの実施形態において、センサーの製造において切断可能な架橋剤は、架橋剤と共に使用される。このように、第1の架橋ポリマーの機械的強度を、センサーの組み立て中維持することができる。センサーを形成した後、切断可能な架橋剤を切断し、第1の架橋ポリマー中に(非切断可能な)架橋剤によって形成された架橋のみを残す。したがって、少量の(非切断可能な)架橋剤を最終的なセンサー中に組み込むことができ、上昇した感度及びダイナミックレンジという関連する利点をもたらしながら、センサーの組み立て中第1の架橋ポリマーの機械的強度が維持される。したがって、第1の架橋ポリマーの組み立て中(非切断可能な)架橋剤の一部を切断可能な架橋剤と置き換える又は逆もまた同様に置き換えることにより、センサーを調整することができる。
【0079】
適した(非切断可能な)架橋剤としては、限定されないが、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン、グリセロール1,3-ジグリセロラートジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0080】
最も好ましくは、(非切断可能な)架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である。
【0081】
いくつかの実施形態において、(非切断可能な)架橋剤はまた、第2の架橋ポリマーを形成するためにも使用される。適した(非切断可能な)架橋剤としては、限定されないが、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。好ましくは、第2の架橋ポリマーを形成するために利用される(非切断可能な)架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、切断可能な架橋剤は、第1の架橋ポリマーの製造に使用される。
【0083】
ある態様において、本発明は、標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及びこの第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、第1のプレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤及び切断可能な架橋剤を含む第1のプレポリマー組成物を重合し、その後、切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断して第1の架橋ポリマーを提供することにより得られる、
センサーを提供する。
【0084】
適した切断可能な架橋剤及び対応する切断剤としては、限定されないが、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドなどの、過ヨウ素酸塩で切断可能な架橋剤であり、この架橋は、過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩により切断されることができる。非特許文献3に開示されるケタール、アセタール、オルトエステル、イミン、アシルヒドラゾン(acylhydrozone)、シスアコニチル及びボロナートなどの、酸に不安定な架橋剤。非特許文献4に開示されるジメタクリル酸2,6-ピリジンジエタノールなどの、アルカリに不安定な架橋剤及び熱に不安定な架橋剤。チオケタールなどの、活性酸素種(ROS)に不安定な架橋剤。ジスルフィドなどの、酸化還元に不安定な架橋剤。ペプチド(-DEVD-,カスパーゼ-3;-PLQLX-,MMP-2;GPLGIAGQX-,MMP-9)、コラゲナーゼ及び他のプロテアーゼ特異的ペプチドなどの酵素に不安定な架橋剤。非特許文献5及び非特許文献6に開示されるものなどの感光性架橋剤。非特許文献7に開示されるものなどの、ポリ(β-アミノエステル)架橋剤。特許文献1に開示されるものなどのクリック可能なトリアザブタジエン(Clickable triazabutadienes)、が挙げられる。
【0085】
好ましくは、切断可能な架橋剤は、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドである。この実施形態において、切断剤は、過ヨウ素酸塩であり、好ましくは過ヨウ素酸ナトリウムである。
【0086】
したがって好ましくは、第1の架橋ポリマーは、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)及びN,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドの組み合わせを使用して架橋される。
【0087】
ある実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、第1のプレポリマー組成物のモルあたり2mol%以上の切断可能な架橋剤を含む。ある実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、第1のプレポリマー組成物のモルあたり3mol%以下の切断可能な架橋剤を含む。非常に好ましい実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、第1のプレポリマー組成物のモルあたり2.3~2.6mol%の切断可能な架橋剤を含む。
【0088】
ある実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり2部以上の切断可能な架橋剤を含む。ある実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり3部以下の切断可能な架橋剤を含む。非常に好ましい実施形態において、第1のプレポリマー組成物は、モルあたり100部のモノマーに関してモルあたり2.3~2.6部の切断可能な架橋剤を含む。
【0089】
プレポリマー組成物
「プレポリマー組成物」によって、重合及び架橋により又は架橋により本明細書に言及される架橋ポリマーを形成することができる分子を含む組成物が表される。例えば、重合及び架橋の場合、この分子は例えば、モノマー、オリゴマー又は低分子量ポリマー、又はこれらの組み合わせ、並びに架橋剤であってよい。架橋の場合、この分子は例えば、ポリマー、並びに架橋剤であってよい。プレポリマー組成物はまた、適切な場合、光開始剤などの、重合に必要な成分を含んでよい。
【0090】
光開始剤
適した光開始剤としては、限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMP)、過酸化ベンゾイル(BP)及びカンファーキノン(CQ)が挙げられる。
【0091】
好ましくは光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンである。
【0092】
基板
本発明は、本発明によるセンサーを備える基板を提供する。
【0093】
適した基板としては、限定されないが、ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレンフィルム又はシートが挙げられる。
【0094】
好ましくは基板は、フィルム又はコンタクトレンズである。最も好ましくは基板は、コンタクトレンズである。
【0095】
別の実施形態において、有利なことに、センサーを支持基板無しで使用することができることが分かった。例えば、本発明によるセンサーを刺青のように、皮膚に植え込むことができ、グルコースなどの標的検体レベルを測定するために使用することができる。
【0096】
アレイ
本発明による複数のセンサーを、アレイを形成するよう組み合わせてよい。「アレイ」によって、本発明による少なくとも2個の異なるセンサーのグループが表される。このアレイにおいて、センサーは、本明細書に規定される基板上に支持されてよい。このセンサーは、異なる標的検体用の異なる標的検体認識剤を含むことによって異なってよい。このように、このアレイは、複数の標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するために使用されてよい。したがって、本発明は、本発明による第1のセンサーであって、この第1のセンサーは、第1の標的検体用の第1の受容体を含む、第1のセンサー、及び本発明による第2のセンサーであって、この第2のセンサーは、第2の標的検体用の第2の受容体を含む、第2のセンサーを含むアレイを提供する。
【0097】
使用
好ましくは標的検体はグルコースであり、本発明によるセンサーは、グルコースレベルを監視するために、特にヒトの糖尿病の管理用に使用される。
【0098】
本発明によるセンサーはまた、非特許文献8に記載されるような、小型のバイオリアクター及びマイクロ流体デバイスなどの、他の方法に使用されてよい。
【0099】
方法
当業者によって、本発明によるセンサーの製造方法において、光学格子はいわゆる二重重合(double polymerisation)によって形成される、すなわち、第2のプレポリマー組成物は第1の架橋ポリマーのネットワーク中に導入され、その後光開始重合により重合されて互いに浸透するポリマーネットワークを形成することが理解されるだろう。本実施形態において第1の架橋ポリマーはしたがって、第2の架橋ポリマーのプレポリマー組成物及び架橋剤をそのネットワークに吸収できる必要がある。第2の架橋ポリマーは、光開始重合により形成されることができる必要がある。
【0100】
プレポリマー組成物の特徴、並びに第1及び第2の架橋ポリマーを作製するためのモノマー及び架橋剤の量及び種類は、本明細書に規定されるとおりである。
【0101】
第2の架橋ポリマーを形成するための第2のプレポリマー組成物の重合は、第2の架橋ポリマーの正弦波状の濃度プロフィールが第1の架橋ポリマーネットワーク内に形成され、互いに浸透するポリマーネットワークの屈折率を全体として調整して光学格子の周期構
造を生成するような、重合を開始するために使用される放射の定常波の関数である。当業者によって、第1及び第2の相の屈折率は、第1及び第2の架橋ポリマーの架橋密度を制御することにより調整されてよいことが理解されるだろう。したがって、第1及び第2の架橋ポリマーの相対的架橋密度を制御することにより、互いに浸透するポリマーネットワークを介して屈折率の周期的変動を有する構造、すなわち、光学格子が形成される。
【0102】
第2のプレポリマー組成物の第1の架橋ポリマーのネットワークへの導入は、第1の架橋ポリマーの膨張により達成されてよく、このことは第1の架橋ポリマーの比較的低い架橋密度のため達成することができる。したがって、この方法の好ましい実施形態において、第2のプレポリマー組成物を第1の架橋ポリマーに導入する前に、方法は、好ましくは第1の架橋ポリマーネットワークを水などの溶媒に浸漬することにより第1の架橋ポリマーネットワークを膨張させるステップを含む。
【0103】
当業者によって、第2の架橋ポリマーの重合条件は、光学格子が第1の架橋ポリマー中に記録されるよう制御されると理解されるだろう。好ましい実施形態において、第2のプレポリマー組成物は、L-アスコルビン酸又はヒドロキノンなどのフリーラジカル阻害剤を含む。別の好ましい実施形態において、第2のプレポリマー組成物を第1の架橋ポリマーに導入する前に、この方法は、第2のプレポリマー組成物を通気するステップを含む。酸素分子はフリーラジカルを抑制する。理論によって拘束されることを望むものではないが、フリーラジカル重合中にフリーラジカルを抑制することは、光学格子を開発するために必要とされる屈折率の差を維持するためのレーザー曝露時に、第2の架橋ポリマーの重合を制御するのに役立つと考えられる。
【0104】
非常に好ましい実施形態において、切断可能な架橋剤は、第1の架橋ポリマーを作製するために使用される。言い換えれば、プレポリマー組成物は、切断可能な架橋剤を含んでよい。これにより、センサー組み立て中に第1の架橋ポリマーの機械的強度が維持される。このように、切断可能な架橋剤は、ポリマー鎖間に架橋を形成し、続いてセンサーが組み立てられた後に切断されてよい。言い換えれば、第2のプレポリマー組成物を重合した後、この方法は、切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断することを含む。
【0105】
装置
本発明によるセンサーによって回折された光の波長を定性的に又は定量的に測定するために、任意の適した装置を使用してよい。それから標的検体の対応する量を決定する目的で測定した波長を使用するために任意の適した方法を使用してよい。本発明のセンサーを、光学格子によって回折された光が電磁スペクトルの可視領域内に波長を有するように調整することができる。これにより、光学格子によって回折された光を分光計などの専門的設備なしに監視することが可能となる。例えば、カメラを備えたスマートフォンは、本発明によるセンサーによって回折された光の波長を測定することができてよい。
【0106】
ある態様において、本発明は、本発明によるセンサーによって回折された光の波長を測定するようプログラムされた装置であって、この装置は、センサーによって回折された光の波長を測定し、センサー上/中の標的検体の存在及び/又は濃度を決定する、装置を提供する。
【0107】
装置は、
図2に示される、以下のプロセスを使用してセンサーによって回折された光の波長を測定する。最初のタスクは、デジタルカメラを使用して適切なセンサーのカラー画像を取得することである。カラーデジタル画像は、空間的及び分光的の両方でサンプリングされた点(画素)のアレイとして定義されることができ、その各々において量子化された色が赤、緑、及び青の原色成分(RGB)によって記述される。取得されたデジタル画像から取り出された基本的なRGB原色は、それぞれ長波長、中波長及び短波長に感度を
有するカラー画像センサーに由来する。このことは、RGB値は、装置依存的であることを意味する。したがって、分光的及び比色的の両方のカメラの特徴づけを適用することにより装置依存的なRGB値を装置非依存的な色座標に変換することが必要である。そのあとで、装置非依存的な座標の2次元アレイが画像処理モジュールに向けられる。
【0108】
画像は、色恒常性、画像分割、記述子選択及び物体認識の4個の処理プロセスを成就する。色恒常性においては、光源の効果を補償するためにコンピュータアルゴリズムにかける。一旦色補正済画像が得られれば、これを選択された特徴に関して均質な領域に分割するために数理的画像分割アルゴリズムにかける。各領域は記述子選択で表され、記述され、最終的には、物体認識技術を用いて異なる領域に分類され、各関心領域(ROI)がセンサーアレイ内の1つの成分に対応してよい、ROIを決定する。
【0109】
次に、画像プロセッサの出力と標的検体の公知の濃度との関係を構築することを指す、回帰分析にかける。一旦この関係が数理モデルとして表されると、未知のサンプル中の検体濃度を予測するためにこれを使用することができる。当業者によって、前述のモジュールの各々を様々な方法で実装することができると理解されるだろう。
【0110】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【実施例】
【0111】
1.センサーの調製
1.1.基準ポリマー合成(P1)
センサーを含有するフィルムを調製するために、表1に示す成分によりP1プレポリマー組成物を調製した。P1プレポリマー組成物をジメチルスルホキシド(DMSO)中2%(w/v)2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)と混合し、アルミニウム処理したポリマーフィルムサポートのポリエステル表面に適用し、シラン化ガラススライド上に表を下にして配置した。25分の曝露時間でUV光を使用して(UV
LQ400/E -波長365nmのOpsytec Dr. Groebel)重合を開始した。室温で脱イオン水浴に浸すことにより重合したフィルムをサポートから分離し、ブレードを使用して縁上の過剰なポリマーフィルムを除去した。P1ポリマーフィルムを脱イオン水で短時間すすぎ、穏やかに攪拌しながら3時間脱イオン水浴(スライドあたり1L)中で洗浄した。二重重合(double polymerisation)法の後センサーの開発前に、P1ポリマーフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に保存した。
【0112】
センサーを含有するコンタクトレンズを調製するために、型成型法を使用した。P1プレポリマー組成物を内側の型に適用し、後の型で覆った。P1プレポリマー組成物を重合するために、組み立てた型を10秒間、型の両側から2個のライトガイドを通じてUV光源に曝露した。その後、組立体を脱イオン水浴に浸して完成したコンタクトレンズを分離した。二重重合(double polymerisation)法の後ホログラフィック格子センサーの開発の前にコンタクトレンズをPBS中に保存した。
【0113】
【0114】
1.2.センサーの調製
P2プレポリマー組成物を63.4mol%アクリルアミド及び36.6mol%N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を使用して調製した。溶媒は、64(v/v%)DMSO、10.7(v/v%)エチレングリコール(EG)、21.2%脱イオン水、2(w/v%)サフラニンO色素を有する3.2(v/v%)メタノール(MeOH)、及び0.9(v/v%)トリエタノールアミン(TEOL)を含んだ。P1ポリマーを脱イオン水浴に3分間浸漬して膨張相を刺激し、P2プレポリマー組成物のP1ポリマーネットワーク中への浸透を促進するために、P2プレポリマー組成物を適用する前に1分間冷風乾燥した。P1ポリマーフィルム又はコンタクトレンズに適用する前にP2プレポリマー組成物(450μl)を通気したのは、酸素分子はフリーラジカルを抑制し、格子を開発するために必要とされる明るい(P1+P2)及び暗い(P1)縞の屈折率の差を維持するためのレーザー曝露時に、P2重合を制御するのを支援するからである。適用後、P2プレポリマー組成物を含むP1ポリマーフィルム又はコンタクトレンズを5分間放置し、その後過剰な溶媒をふき取った。
【0115】
P2の重合を開始するために周波数を倍加させたNd:YAGレーザー(20w,2J,10Hz,532nm,Brilliant B, Quantel, France)を使用した。レーザー条件は、10秒間曝露について、532nm,10Hz,400μsに調整された。体積型反射ホログラムを、P2プレポリマー組成物をレーザーに曝露してP2を重合することによりP1ポリマー中に記録した。体積型反射ホログラムの記録には、P1のネットワーク中に感光性P2プレポリマー組成物を重合させることによる干渉パターンの形成及びそのP1への組込みが含まれる。レーザービームは、P2プレポリ
マー組成物を直接照明し(参照ビーム)、P2プレポリマー組成物を通過し、反対側の平面鏡によりP2プレポリマー組成物に戻って反射し、それにより物体光を形成する平行ビームを生成するよう増幅され、コリメートされた。これらのビームは、放射照度分布の正弦波状の干渉パターンを形成するよう重ね合わされる。P2プレポリマー組成物の重合は、干渉パターンを模倣して異なる屈折率の交互の縞を形成する。
【0116】
レーザー曝露後、二重重合されたセンサーを5分間、色素及び未反応のP2モノマーを除去するために1:1(v/v)エタノール:5(w/v%)硫酸水素ナトリウム中で洗浄した。
【0117】
実施例1及び2において、センサーが形成された後、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドによって形成された架橋を切断するために過ヨウ素酸ナトリウムを使用した。ボロン酸基を保護するためにこのセンサーを1Mソルビトール浴に浸し、ついでセンサーに過ヨウ素酸ナトリウムを加えた。その後、センサーを1:1(v/v)エタノール:5%NaHSO4に15分間浸漬した。
【0118】
比較例1の二重重合されたセンサー中のP1中の架橋剤の最終含有量は、2.9mol%だった。実施例1の二重重合されたセンサー中のP1中の架橋剤の最終含有量は、0.6mol%だった。実施例2の二重重合されたセンサー中のP1中の架橋剤の最終含有量は、0.3mol%だった。
【0119】
2.生体外グルコース濃度の測定
2.1.グルコース緩衝液の調製
100mlの脱イオン水に1つのPBSタブレットを溶解して25°CでpH7.3の10mmol/Lリン酸塩、2.7mmol/L塩化カリウム及び137mmol/L塩化ナトリウム溶液を提供することによりPBS緩衝液を調製した。グルコース感受性センサーの反応を調査するために、室温で0~10mmolの範囲のグルコース濃度を有するPBS緩衝液中のグルコース緩衝液を調製した。体液中の平衡状態を模倣するよう存在するグルコース異性体の相対比を確実にするために、調製後少なくとも12時間でグルコース緩衝液を使用した。
【0120】
2.2.光学測定
グルコース緩衝液を調べるために比較例1及び実施例1~2で調製したセンサーの反応を、室温で反射分光光度計(AvaSpec-2048, Avantes)及び白色光源(AvaLight DLC)を使用して測定した。各試験について、溶質がセンサーの表面を覆いグルコース分子がヒドロゲル中にさらに拡散する障壁として働く可能性を避けるために、センサーを5mlのグルコース緩衝液及び穏やかに攪拌する2×5mm磁石を備える黒い帯電防止秤量ボートに配置した。回折波長の変化を積分時間200msの分光光度計を使用して記録した。回折波長の安定性を監視することにより緩衝液の変化の間にセンサーを平衡状態に到達させた。
【0121】
3.結果及び考察
3.1.生体外グルコース濃度の測定
比較例1及び実施例1~2で調製したセンサーの各々のグルコース濃度の関数として、測定されたピーク回折波長の差、いわゆる波長シフト(Δλ)を
図1にプロットする。各データポイントは、0、2、4、6及び10mmol(mM)グルコース濃度のサンプルの5回の測定の平均である。センサーに対する各グルコース濃度での測定したピーク回折波長も以下の表2に表す。
【0122】
【0123】
グルコース濃度の一定の変化に対するΔλの上昇は、センサーの感度の上昇を示す。例えば、比較例1で作製されたセンサーの0~2mMグルコースのΔλは、約5nm(mMグルコースあたり~2.5nm)であるが、実施例1で作製されたセンサーの0~2mMグルコースのΔλは、約20nm(mMグルコースあたり~10nm)であり、約4倍の感度の上昇が示される。
【0124】
さらに、より広い範囲のグルコース濃度にわたる検出可能な波長シフトで反応するセンサーは、広いダイナミックレンジを持つと言われる。10mMグルコース緩衝液に曝露すると、比較例1で作製されたセンサーは、10nmのΔλで反応する。比較して、実施例1及び2で作製されたセンサーは、それぞれ34nm及び72nmのΔλで反応する。したがって、実施例1~2で作製された、すなわち本発明によるセンサーは、比較例1で作製されたセンサーと比較して7倍まで強化されたダイナミックレンジでグルコース濃度に応答して収縮する。この驚くべき知見から、ポリマーP1中に1mol%以下の架橋剤を組み込むと、2.9mol%などの、多い量の架橋剤を有するポリマーP1を用いて調製されたセンサーと比較して、センサーの作動範囲が劇的に強化されることが示される。
【0125】
図1は、センサーの開始時点に関する最大波長シフト(±標準偏差)は、グルコース濃度と指数関数的に相関することを示す。
【0126】
Δλ=74.4e-0.34c-74.4 R2=1
【0127】
CはmMのグルコース濃度であり、R2は決定係数であり、74.4nmは実施例2のセンサーで達成可能な最大波長シフトであり、0.34nm/minは試験した範囲内の平均応答速度である。
【0128】
1. 標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、この第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり1mol%以下の架橋性薬剤を含む、
センサー。
【0129】
2. この第1の架橋ポリマーは、この第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を含む、実施形態1に記載のセンサー。
【0130】
3. この第1の架橋ポリマーは、この第1の架橋ポリマーのモノマーのモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含む、実施形態1又は2に記載のセンサー。
【0131】
4. この第1の架橋ポリマーは、標的検体認識剤を含む、実施形態1~3のいずれかに記載のセンサー。
【0132】
5. この第2の架橋ポリマーは、標的検体認識剤を含む、実施形態1~3のいずれかに記載のセンサー。
【0133】
6. この標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができる、実施形態1~5のいずれかに記載のセンサー。
【0134】
7. この標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzoboroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、実施形態1~6のいずれかに記載のセンサー。
【0135】
8. この前記架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくはこの架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、実施形態1~7のいずれかに記載のセンサー。
【0136】
9. この第1の架橋ポリマーは、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、実施形態1~8のいずれかに記載のセンサー。
【0137】
10. この第1の架橋ポリマーは、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくはこのモノマーは、アクリルアミドとN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、実施形態1~9のいずれかに記載のセンサー。
【0138】
11. 架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、そして第1の架橋ポリマーは、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)の架橋コポリマーである、実施形態1~10のいずれかに記載のセンサー。
【0139】
12. この第2の架橋ポリマーは、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)の架橋コポリマーである、実施形態1~11のいずれかに記載のセンサー。
【0140】
13. 標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、プレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含むこのプレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサー。
【0141】
14. このプレポリマー組成物は、このプレポリマー組成物のモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を含む、実施形態13に記載のセンサー。
【0142】
15. このプレポリマー組成物は、このプレポリマー組成物のモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含む、実施形態13又は14に記載のセンサー。
【0143】
16. この第1の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態13~15のいずれかに記載のセンサー。
【0144】
17. この第2の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態13~15のいずれかに記載のセンサー。
【0145】
18. この標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができる、実施形態13~17のいずれかに記載のセンサー。
【0146】
19. この標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzoboroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、実施形態13~18のいずれかに記載のセンサー。
【0147】
20. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくはこの架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、実施形態13~19のいずれかに記載のセンサー。
【0148】
21. このプレポリマー組成物は、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、実施形態13~20のいずれかに記載のセンサー。
【0149】
22. このプレポリマー組成物は、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくはこのモノマーは、アクリルアミドとN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、実施形態13~21のいずれかに記載のセンサー。
【0150】
23. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、そしてプレポリマー組成物はさらに、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む、実施形態13~22のいずれかに記載のセンサー。
【0151】
24. この第2の架橋ポリマーは、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(ア
クリルアミド)を重合することにより得られる、実施形態13~23のいずれかに記載のセンサー。
【0152】
25. 標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーであって、このセンサーは、
(i)第1の架橋ポリマーを含む第1の相、
(ii)第2の架橋ポリマーを含む第2の相、及び
(iii)標的検体認識剤を含み、
この第1の相及び第2の相は、光学格子を形成するよう配置され、
この第1の架橋ポリマーは、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含むプレポリマー組成物を重合することにより得られる、
センサー。
【0153】
26. このプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.3部以上の架橋剤を含む、実施形態25に記載のセンサー。
【0154】
27. このプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.6部以下の架橋剤を含む、実施形態25又は26に記載のセンサー。
【0155】
28. この第1の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態25~27のいずれかに記載のセンサー。
【0156】
29. この第2の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態25~27のいずれかに記載のセンサー。
【0157】
30. この標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができる、実施形態25~29のいずれかに記載のセンサー。
【0158】
31. この標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzoboroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、実施形態25~30のいずれかに記載のセンサー。
【0159】
32. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくはこの架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、実施形態25~31のいずれかに記載のセンサー。
【0160】
33. このモノマーは、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、実施形態25~32のいずれかに記載のセンサー。
【0161】
34. このモノマーは、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくはこのモノマーは、アクリルアミドとN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、実施形態25~33のいずれかに記載のセンサー。
【0162】
35. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、そしてこのモノマーは、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む、実施形態25~34のいずれかに記載のセンサー。
【0163】
36. この第2の架橋ポリマーは、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を重合することにより得られる、実施形態25~35のいずれかに記載のセンサー。
【0164】
37. 実施形態1~36のいずれかに記載のセンサーを含む基板。
【0165】
38. この基板は、コンタクトレンズである、実施形態37に記載の基板。
【0166】
39. 実施形態1~36のいずれかに記載の少なくとも2個のセンサーを含むアレイ。
【0167】
40. 検体の存在又は濃度を監視するための、実施形態1~36のいずれかに記載のセンサーの使用。
【0168】
41. 標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法であって、この方法は、
(i)第1のプレポリマー組成物のモルあたり1mol%以下の架橋剤を含有するこの第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含む第1の相を形成すること、
(ii)この第1の相に第2のプレポリマー組成物を導入すること、及び
(iii)この第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子がこの第1及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含む第2の相を形成することを含み、
この第1及び第2の架橋ポリマーの1つは、標的検体認識剤を含む、
方法。
【0169】
42. この第2のプレポリマー組成物を重合することは、体積型ホログラムを記録することを含む、実施形態41に記載の方法。
【0170】
43. この第1のプレポリマー組成物は、切断可能な架橋剤をさらに含み、この方法は、
(iv)この第2のプレポリマー組成物を重合することに続けて、この切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断することをさらに含む、実施形態41又は42に記載の方法。
【0171】
44. 切断することは、この切断可能な架橋剤によって形成されたこの架橋を切断剤と反応させてこの切断可能な架橋剤によって形成されたこの架橋を切断することを含む、実施形態43に記載の方法。
【0172】
45. この切断可能な架橋剤は、この第1のプレポリマー組成物中にこの第1のプレポリマー組成物のモルあたり2mol%以上の量で含まれる、実施形態43又は44に記載の方法。
【0173】
46. この切断可能な架橋剤は、この第1のプレポリマー組成物中にこの第1のプレポリマー組成物のモルあたり3mol%以下の量で含まれる、実施形態43~45のいずれかに記載の方法。
【0174】
47. この切断可能な架橋剤は、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドである、実施形態43~46のいずれかに記載の方法。
【0175】
48. この切断剤は、過ヨウ素酸ナトリウムである、実施形態44~47のいずれかに記載の方法。
【0176】
49.この第1のプレポリマー組成物は、この第1のプレポリマー組成物のモルあたり0.3mol%以上の架橋剤を含む、実施形態41~48のいずれかに記載の方法。
【0177】
50. この第1のプレポリマー組成物は、この第1のプレポリマー組成物のモルあたり0.6mol%以下の架橋剤を含む、実施形態41~49のいずれかに記載の方法。
【0178】
51.この第1の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態41~50のいずれかに記載の方法。
【0179】
52.この第2の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態41~50のいずれかに記載の方法。
【0180】
53. この標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができる、実施形態41~52のいずれかに記載の方法。
【0181】
54. この標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール(benzoboroxole)及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、実施形態41~53のいずれかに記載の方法。
【0182】
55. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくはこの架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、実施形態41~54のいずれかに記載の方法。
【0183】
56. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、そしてこの第1のプレポリマー組成物はさらに、アクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む、実施形態41~55のいずれかに記載の方法。
【0184】
57. この第2のプレポリマー組成物は、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を含む、実施形態41~56のいずれかに記載の方法。
【0185】
58. この第1のプレポリマー組成物は、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、実施形態41~47のいずれかに記載の方法。
【0186】
59. 第1のプレポリマー組成物は、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくはこのモノマーは、アクリルアミドとN-
[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、実施形態41~58のいずれかに記載の方法。
【0187】
60. 標的検体の存在を検出する又は濃度を測定するセンサーの製造方法であって、この方法は、
(i)モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり1部以下の架橋剤を含む第1のプレポリマー組成物を重合して第1の架橋ポリマーを含む第1の相を形成すること、
(ii)この第1の相に第2のプレポリマー組成物を導入すること、及び
(iii)この第2のプレポリマー組成物を重合して光学格子がこの第1及び第2の相により形成されるように第2の架橋ポリマーを含む第2の相を形成することを含み、
この第1及び第2の架橋ポリマーの1つは、標的検体認識剤を含む、
方法。
【0188】
61. この第2のプレポリマー組成物を重合することは、体積型ホログラムを記録することを含む、実施形態60に記載の方法。
【0189】
62. この第1のプレポリマー組成物は、切断可能な架橋剤をさらに含み、この方法は、
(iv)この第2のプレポリマー組成物を重合することに続けて、この切断可能な架橋剤によって形成された架橋を切断することをさらに含む、実施形態60又は61に記載の方法。
【0190】
63. 切断することは、この切断可能な架橋剤によって形成されたこの架橋を切断剤と反応させてこの切断可能な架橋剤によって形成されたこの架橋を切断することを含む、実施形態62に記載の方法。
【0191】
64. この切断可能な架橋剤は、この第1のプレポリマー組成物中にモノマーのモルあたり100部に関してモルあたり2部以上の量で含まれる、実施形態62又は63に記載の方法。
【0192】
65. この切断可能な架橋剤は、この第1のプレポリマー組成物中にモノマーのモルあたり100部に関してモルあたり3部以下の量で含まれる、実施形態62~64のいずれかに記載の方法。
【0193】
66. この切断可能な架橋剤は、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドである、実施形態62~65のいずれかに記載の方法。
【0194】
67. この切断剤は、過ヨウ素酸ナトリウムである、実施形態63~66のいずれかに記載の方法。
【0195】
68. この第1のプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.3部以下の架橋剤を含む、実施形態60~67のいずれかに記載の方法。
【0196】
69. この第1のプレポリマー組成物は、モノマーのモルあたり100部に関してモルあたり0.6部以下の架橋剤を含む、実施形態60~68のいずれかに記載の方法。
【0197】
70. この第1の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態60~69のいずれかに記載の方法。
【0198】
71. この第2の架橋ポリマーは、この標的検体認識剤を含む、実施形態60~70
のいずれかに記載の方法。
【0199】
72. この標的検体認識剤は、グルコースと結合する又は相互作用することができる、実施形態60~71のいずれかに記載の方法。
【0200】
73. この標的検体認識剤は、フェニルボロン酸、ベンゾボロキソール及び5-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェニルボロン酸から選択される、実施形態60~72のいずれかに記載の方法。
【0201】
74. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)、1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン及びエチレングリコールジメタクリレートから選択され、好ましくはこの架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)である、実施形態60~73のいずれかに記載の方法。
【0202】
75. この架橋剤は、N,N′-メチレンビス(アクリルアミド)であり、この第1のプレポリマー組成物はさらにアクリルアミド、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドを含む、実施形態60~74のいずれかに記載の方法。
【0203】
76. この第2のプレポリマー組成物は、アクリルアミド及びN,N′-メチレンビス(アクリルアミド)を含む、実施形態60~75のいずれかに記載の方法。
【0204】
77. この第1のプレポリマー組成物は、標的検体認識剤を含有するモノマーを含み、好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、2-(アクリルアミド)フェニルボロン酸、N-(1-ヒドロキシ-1,3-ジヒドロ-ベンゾ[c][1,2]オキサボロール-6-イル)-アクリルアミド及びメタクリル酸から選択され、最も好ましくは標的検体認識剤を含有するこのモノマーは、3-(アクリルアミド)フェニルボロン酸である、実施形態60~76に記載のセンサー。
【0205】
78. 第1のプレポリマー組成物は、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーを含み、好ましくはこのモノマーは、アクリルアミドとN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドの組み合わせを含む、実施形態60~77のいずれかに記載のセンサー。
【国際調査報告】