(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】電気溶融炉に連続供給される金属装入物を予熱するための改良されたプロセス及びプラント
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
F27D17/00 101G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543025
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 IB2020061879
(87)【国際公開番号】W WO2021144637
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】102020000000793
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517278059
【氏名又は名称】テノヴァ エッセ. ピ. ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ チェーザレ
(72)【発明者】
【氏名】レアーリ シルビオ マリア
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA05
4K056BB08
4K056DA33
(57)【要約】
側壁とヴォールトと水平コンベア(13)とが設けられた予熱トンネル(16)を通って電気溶融炉(12)に連続供給される金属装入物(11)を予熱するためのプロセス及びプラントであって、金属装入物(11)は電気溶融炉(12)から流出したヒュームまたは排出ガス(17)に向流状態で覆われている。当該プロセス及びプラントによれば、ヒュームまたは排出ガス(17)の燃焼を完全に行うための空気の吸入は、周囲環境から、予熱トンネルに沿った開口部、好ましくは予熱トンネルと電気溶融炉との境界面に存在している開口部を通って行われ、吸入は、トンネル(16)の端部にある、または端部の下流側にある出ガスの温度センサ(21)及び/または組成によって明らかになった測定値に基づいて、吸引ファン及び/または開口部に作用することによって調節されており、
金属装入物は、トンネル(16)のヴォールト上に配置されている複数のノズル(15)を通って射出されたガス噴射で覆われていて、
ノズル(15)によって注入されたガス噴射は、予熱トンネル(16)のヴォールト上で横方向に、トンネル(16)のヴォールトの頂部の方において濃度が高くなる状態で不均等に分散されているとともに、ガス噴射は予熱トンネル(16)に沿って長手方向に不均等に分散されており、ノズル(15)が分配配置されている横断区域が設けられていて、干渉現象を回避するように、トンネル(16)においてノズル(15)がない長手方向区域が散在している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁とヴォールトと水平コンベア(13)とが設けられた予熱トンネル(16)を通って電気溶融炉(12)に連続供給される金属装入物(11)を予熱するためのプロセスであって、前記金属装入物(11)は前記電気溶融炉(12)から流出したヒュームまたは排出ガス(17)に向流状態で覆われているプロセスであり、
前記ヒュームまたは排出ガス(17)の燃焼を完全に行うための空気の吸入は、周囲環境から、前記予熱トンネルに沿った開口部、好ましくは前記予熱トンネルと前記電気溶融炉との境界面に存在している開口部を通って行われ、前記吸入は、前記トンネル(16)の端部にある、または前記端部の下流側にある出ガスの温度センサ(21)及び/または組成によって明らかになった測定値に基づいて、吸引ファン及び/または前記開口部に作用することによって調節されており、
前記金属装入物は、前記トンネル(16)の前記ヴォールト上に配置されている複数のノズル(15)を通って射出されたガス噴射で覆われていて、前記ノズル(15)によって注入された前記ガス噴射は、前記予熱トンネル(16)の前記ヴォールト上で横方向に、前記トンネル(16)の前記ヴォールトの頂部の方において濃度が高くなる状態で不均等に分散されているとともに、前記ガス噴射は前記予熱トンネル(16)に沿って長手方向に不均等に分散されており、前記ノズル(15)が分配配置されている横断区域が設けられていて、干渉現象を回避するように、前記トンネル(16)において前記ノズル(15)がない長手方向区域が散在している、
ことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記ノズル(15)から放出された前記ガス噴射は前記予熱トンネル(16)の横断面の約2/3上に分散され、前記トンネル(16)の前記ヴォールトの側壁の少なくとも一部を空いたままにしておくことを特徴とする、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
ガス噴射の第1の群は、前記電気溶融炉(12)の近辺であって、炉からの距離が7~10メートルの範囲内に設けられていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項またはそれ以上に記載のプロセス。
【請求項4】
ガス噴射は、「ガス注入区域」と称される、連続している前記ノズル(15)が設けられている区域同士の間で速度及び/または流量が増していくように設けられていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項またはそれ以上に記載のプロセス。
【請求項5】
ノズル(15)の1つの噴射の大きさは、噴射の群が、前記予熱トンネル(16)を通過するヒュームの主流の衝撃と同等の衝撃を有するように、大きさを決める条件式
【数1】
ここで
W
gas=所定の注入区域における前記トンネル(16)内の前記ヒュームの質量流量[kg/s]
W
jet=同一の注入区域における1つの噴射の質量流量[kg/s]
V
gas=同一の注入区域に対応する前記トンネル(16)内の前記ヒュームの速度[m/s]
V
jet=1つの噴射の速度[m/s]
N
jets=前記所定の注入区域上にある噴射の数[#]
に従って決められる、ことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項またはそれ以上に記載のプロセス。
【請求項6】
側壁とヴォールトと水平コンベア(13)とが設けられた予熱トンネル(16)を通って電気溶融炉(12)に連続供給される金属装入物(11)を予熱するためのプロセスを実行するプラントであって、前記金属装入物(11)は前記電気溶融炉(12)から流出したヒュームまたは排出ガスに、及び前記トンネル(16)の前記ヴォールト上に配置された複数のノズル(15)が射出するガス噴射に、向流状態で覆われており、前記プラントは、吸引ファンと、前記予熱トンネルに沿った開口部、好ましくは前記予熱トンネルと前記電気溶融炉との境界面に存在している開口部とを備えていて、前記ファン及び/または前記開口部は、周囲環境から空気を吸引して前記ヒュームまたは排出ガス(17)の完全燃焼状態を得るために調整可能であり、前記状況は、前記トンネルの端部にある、または前記端部の下流側にある出ガスの温度センサ(21)及び/または組成によって明らかになった測定値に基づいて検証される、プラントであり、
前記予熱トンネル(16)の前記ヴォールト上に、前記トンネルに対して長手方向に間隔をあけて、少なくとも2つのノズル(15)の群が設けられており、
前記ノズル(15)は、前記予熱トンネル(16)の前記ヴォールト上で横方向に、前記トンネル(16)の前記ヴォールトの頂部の方において濃度が高くなる状態で不均等に分配配置されているとともに、前記ノズル(15)は前記予熱トンネル(16)に沿って長手方向に不均等に分配配置されており、前記ノズル(15)が分配配置されている横断区域が設けられていて、干渉現象を回避するように、前記トンネル(16)において前記ノズル(15)がない長手方向区域が散在している、
ことを特徴とする、プラント。
【請求項7】
前記ノズル(15)は前記予熱トンネル(16)の横断面の約2/3上に分配配置されており、前記トンネル(16)の前記ヴォールトの側壁の少なくとも一部を空いたままにしておくことを特徴とする、請求項6に記載のプラント。
【請求項8】
前記プラントは、前記ノズル(15)または「ガス注入区域」が設けられている2~4区画を、トンネルに対して長手方向に約4~6メートルの間隔を互いにあけて配置して提供している、ことを特徴とする、請求項に6記載のプラント。
【請求項9】
最初の「ガス注入区域」は、前記電気溶融炉(12)の近辺、炉からの距離が7~10メートルの範囲内に設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のプラント。
【請求項10】
前記予熱トンネル(16)に沿って3つの「ガス注入区域」が設けられており、各区画は4つのノズル(15)を有していることを特徴とする、請求項6から9のいずれか1項またはそれ以上に記載のプラント。
【請求項11】
ノズル(15)が、連続する「ガス注入区域」同士の間で速度及び/または流量が増していくように設けられていることを特徴とする、請求項6から9のいずれか1項またはそれ以上に記載のプラント。
【請求項12】
前記ノズル(15)は全て同一であり、全て前記予熱トンネル(16)の頂部に、前記予熱トンネル(16)自体の幅によって決まる個数で、各噴射の間は中心距離が約450~500mmである状態で配置されていることを特徴とする、請求項6から11のいずれか1項またはそれ以上に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、溶融金属の製造を行う電気炉に連続供給される金属装入物材料を予熱するための改良されたプロセスに関する。
本発明はまた、上記のプロセスを実施するプラントに関する。
【0002】
金属装入物(通例ではスクラップ)を予熱するためのプロセス及びプラントは当業者には周知であり、この装入物は、水平コンベアを用いて電気溶融炉に連続供給されている。したがって、予熱プロセスは次の溶融プロセスに有利に作用する。
【0003】
装入物の予熱はトンネル内部の流路で行われ、トンネル内では、溶融プロセス自体の排出ガスの顕熱や燃焼熱(この予熱を与えるのに適切な補助バーナーを使用できた特殊な事例もある)を利用している。排出されたヒュームはその後、予熱トンネルから排気されて、ヒュームに適した処理システムに送られる。予熱プロセスで利用されている燃焼熱は、基本的には、溶融炉内で行われているプロセスで放出されたCO(一酸化炭素)とH2(水素)とが完全に燃焼することによって得られたものであり、一方、必要な酸素は通例は周囲空気の供給で得られる。
【0004】
上記に簡潔に説明したようなプロセス及びプラントは、例えば米国特許第5400358号明細書の対象であり、この特許には予熱トンネルに沿った均一な燃焼に必要な空気の注入について記載されている。この解決法は、炉とトンネルとの間の封止が実際にほぼ完璧であると仮定して、未燃焼ガスを確実に完全燃焼させるために、酸素を予熱トンネルに沿って分布するように、3~5%程度の酸素過多を保証できるような量で注入することを教示している。プラントエンジニアリングでは、この状況は得られないことが分かっていて、常に発生している外部空気の侵入(特に炉とトンネルとの境界面)はかなりの量であり、炉から入っているプロセスガスを確実に完全燃焼させるのに十分な量を既に超えている量であることも多い。また、この空気の侵入は十分な乱流状態を実現することができず、この空気は実際には加熱トンネルの内壁に沿って流れる傾向にあり、プロセスガスとの混合や燃焼は緩やかに行われることが観察されている。予熱トンネル内部に周囲空気を過剰供給することは、ガス温度を下げ過ぎるので絶対に避けなければならない。また、この温度がCO着火限界に非常に近づく、あるいはCO着火限界よりも低い値に達すると、完全燃焼ができなくて周囲環境に有毒ガスを放出してしまい、さらに装入物の予熱システムの効率を大幅に低下させてしまう結果になるリスクが生じる可能性がある。
【0005】
上述の技術的解決法の状況の中では、ヴォールトから注入可能な空気は、結果としてゼロでなくても極端に少なく、乱流の少なさに起因する問題を悪化させてしまう。このため、予熱トンネル内部で利用可能なエネルギーの最適活用を事実上妨げてしまう。
【0006】
本発明の目的は広くは公知技術の難点を克服することであり、この目的に鑑みて、本発明に従い、ヒュームに存在するエネルギーの装入物加熱への活用を改良することである。
より詳細には、本発明の目的は、高温プロセスヒュームと金属装入物との間での熱交換を向上させることである。
【0007】
上記の目的は、独立請求項及び従属請求項に従って製造されたプロセス及びプラントによって達成される。
本発明によって、予熱トンネル内部で乱流を増大させてガス流を混合することにより、高温プロセスヒュームと金属装入物との間での熱交換が向上し、結果的に燃焼プロセスが加速して、燃焼ガスと装入物材料との間での対流熱交換率が高まる。
【0008】
この効果は高速ガス噴射を用いることで得られる。使用されるガスは通常は空気であるが、予熱トンネル内部の雰囲気の化学組成を管理するために必要であれば、他のガスを使用する可能性も排除されない。したがって、このガスも効果的に予熱することができる。
【0009】
特に、本発明は、水平コンベアを備えた予熱トンネルを通って電気溶融炉に連続供給される金属装入物を予熱するためのプロセス及びプラントに関するものであり、金属装入物は、電気溶融炉から、及び、側壁とヴォールトとが設けられているトンネルにおけるヴォールト上に配置された複数のノズルを通って射出されたガス噴射から流出したヒュームまたは排出ガス(爆発の危険性を回避するためにヒュームシステムで処理されて雰囲気中に放出される前に完全に酸化される必要がある、一酸化炭素及び他の可燃性ガスを豊富に含んでいる)に、向流状態で覆われている。
【0010】
このノズルは、トンネルに対して長手方向に間隔をあけた群で配置されていて、小規模の乱流を発生させている、つまり、ガス流に貫入できる少量高速ガス噴射を注入する。また、このノズルは同時に、中央の下降ガス流(「吹き下ろし」)と予熱トンネルの側壁近辺の上昇流(「吹き上げ」)とからなる「馬蹄渦」構造を発生させており、これにより必要なガス循環が可能になっている。
【0011】
より具体的には、本発明は、側壁とヴォールトと水平コンベアとが設けられた予熱トンネルを通って電気溶融炉に連続供給される金属装入物を予熱するためのプロセスに関するものであり、金属装入物は電気溶融炉から流出したヒュームまたは排出ガスに向流状態で覆われており、
本プロセスは、ヒュームまたは排出ガス(17)の燃焼を完全に行うための空気の吸入は、周囲環境から、予熱トンネルに沿った開口部、好ましくは予熱トンネルと電気溶融炉との境界面に存在している開口部を通って行われ、吸入は、トンネル(16)の端部にある、または端部の下流側にある出ガスの温度及び/または組成センサ(21)によって検出された測定値に基づいて、吸引ファン及び/または開口部に作用することによって調節されており、
金属装入物に対して、トンネル(16)のヴォールト上に配置されている複数のノズル(15)を通って射出されたガス噴射が当たり、ノズル(15)によって導入されたガス噴射は、予熱トンネル(16)のヴォールト上で横方向に、トンネル(16)のヴォールトの屋根の方において濃度が高くなる状態で不均等に分散されているとともに、ガス噴射は予熱トンネル(16)に沿って長手方向に不均等に分散されており、ノズル(15)が分配配置されている横断区域が設けられていて、干渉現象を回避するように、トンネル(16)においてノズル(15)がない長手方向区域が散在している、ことを特徴とするプロセスである。
【0012】
本発明によれば、ノズルは群で配置されており、各群においてノズルは、トンネルの屋根の横断区域に対応するように、適宜間隔をあけて配列されている。このことが、小規模の乱流と、同時に大規模の渦構造が発生することを可能にしている。すなわち、小規模の乱流は、少量高速ガス噴射はトンネルを通過する主ガス流に貫入可能であり、これによりガスの混合と燃焼を大幅に加速するという点に相当する。一方、ヒュームと装入物との間での熱交換を向上させる大規模の渦構造は、一般には「馬蹄渦」と定義されていて、予熱トンネルの中央部での熱交換を向上させる中央の下降流(「吹き下ろし」)と、必要なガス循環を可能にするとともに、下降段階において熱エネルギーの一部を金属装入物に与えた後には、トンネルの側壁及び水平コンベアとの熱交換を制限するトンネルの側壁近辺の上昇流(「吹き上げ」)とを特徴としている。
【0013】
公知技術に存在しているものとは異なり、上述のガス噴射は、予熱トンネルに沿って均等には配置されておらず、むしろ、適宜間隔をあけた少なくとも2組の群で配置されている。これは、流体力学的性質の干渉を回避するため、そして、まず、(小規模乱流の作用によって)ガスの良好な混合と燃焼の急速な進行を可能にし、その後、得られたものを(「馬蹄渦」効果によって)金属装入物に向かわせることを可能にするためである。
【0014】
公知技術に存在しているものとは逆に、ノズルは、全ての燃焼用空気を均一に分散された状態になるように供給するような寸法にはなっておらず、一方で、主機能が上述の内容にしたがって運動エネルギーを供給して運動領域を調整することである、少量高速ガス噴射を供給可能な寸法になっている。このため、上述の噴射はより正確には「流体力学的乱流発生器」あるいはさらに簡素に「流体力学的撹拌器」と規定することができる。
【0015】
より具体的には、炉から発せられたガスの完全酸化に必要な燃焼用空気は、周囲環境から開口部を通って、予熱トンネル、例えば炉内における予熱トンネルの接続領域、トンネルと炉との間の境界面、またはコンベアの側端部等に沿って吸引される。すなわち、ヒューム抽出プラントは、周囲環境から開口部を通って予熱トンネルに入ってくる空気が、電気炉を出ていくガス、特に一酸化炭素(CO)を確実に完全燃焼するのに十分な量であるように調節される。この状況は、予熱トンネルの端部領域内にあるヒュームの様々なパラメータ、例えば700℃といったある閾値を超えていなければならない温度や、COが完全に存在しないことを保証するために、酸素含有率が例えば容積で5%といったある閾値を超えていなければならないガスの組成を測定することにより検証される。吸引プラントの調節は、例えばヒュームの吸引ファン及び/または周囲環境からの燃焼用空気が吸引される開口部に作用することによって行うことができる。開口部は、例えば予熱トンネルの可動端部(「接続車」と呼ばれる)に存在していて、スクラップを電気溶融炉EAF内に導入する開口部であるが、その開口部は炉自体にはめ込まれている、すなわち、予熱トンネルと電気溶融炉との間にある境界面ではめ込まれている。実際に、この開口部は、炉に対する接続車の位置を調整することによって簡単に変化可能である。
【0016】
一方、注入された、またはノズルを通って入った空気/ガスは、電気炉からのガス燃焼反応の化学的な均衡においてほとんど(または全く)重要ではなく、一方で、装入物材料との熱交換を高めて改善するために、乱流を増大させて予熱トンネルを通過する流体の流れを混合する流体力学的な働きを行う。この観点から、注入プラントのノズルからの寸法は、化学的な均衡の評価基準を用いて決めるのではなく、純粋に、予熱トンネル内での流体の流れの衝撃に対する空気噴射の衝撃に基づいた流体力学的な評価基準を用いて決める。このことは以降で説明する。
【0017】
「流体力学的撹拌器」を用いることは、パネル状の反らせ板、つまりいわゆる「静的撹拌器」を挿入することで予熱トンネル内部の乱流を増大することを提供する代替解決法と比較して、大幅に簡素で使い勝手がいい。この反らせ板は、高温のガス流と粉塵の多い環境の中で動作しなければならず、よって通常は、水冷式金属パネルとして作られており、これは温度的な観点から効率的な解決法ではない。このような反らせ板の使用により提供するいかなる解決法も、板が急速に摩耗したり頻繁に破損したりするために、その使用は実際には断念されてきた。
【0018】
公知技術では、実用されている現実において、不可避である開口部を通ってかなりの量の環境大気が装入物予熱トンネル内に常に侵入していること、及び、燃焼用空気量はプロセス中で変動するが、一方で良好に混合するにはほぼ一定である必要があることが考慮されていない。
【0019】
したがって、本発明によって提供される効果は明らかであり、これにより、予熱トンネル内部の乱流を制御する噴射の操作が、使用可能な任意の燃焼用空気の供給の制御からほぼ切り離される。
【0020】
本発明の構造的特徴や機能的特徴、及び公知技術に対するその効果は、連続装入される金属スクラップを溶融するための電気アーク炉(EAF)に適用されている本発明自体の非限定的な実施例を図示した添付図面を参照した、以下に続く記載からより明らかに現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は公知技術に係るプラントを図示したものである。
【
図2】
図2は、予熱トンネルに沿って均等に分散する燃焼用空気注入器が設けられた公知技術に係るプラントを図示したものである。
【
図3】
図3は、ヒュームの吸引/排出区域によって接続された、バーナーを有する予熱区域とオフガスを用いる加熱区域とが設けられている、公知技術に係るプラントを図示したものである。
【
図4】
図4a,4b,4cは、側面図(4a)と上方から見た図(4b及び4c)により、公知技術に従って製造された高速空気噴射を持たないプラントの予熱トンネル内でのガスの流れを示したものであり、特に
図4cにおいて上方から見た図は、公知技術に従って製造・配置された空気注入器に対応する乱流がない状態を示している。
【
図5】
図5a,5bは本発明に係るプラントを図示したものである。
【
図6】
図6は、公知技術に係るプラントの予熱トンネル内にある空気注入器の配置を図示したものである。
【
図7】
図7は、本発明に係るプラントの予熱トンネル内にあるノズルの配置を図示したものである。
【
図8】
図8は、本発明に係るプラントの予熱トンネル内にあるノズルの配置を図示したものである。
【
図9】
図9a,9bは、本発明に従って製造したプラント内における、高速噴射が形成されている「流体力学的撹拌器」の使用による様々なガスの流れを図示したものである。
【
図10】
図10は、本発明に係る各区域にノズルが設けられている予熱トンネルの側面図を図示したものである。
【
図11】
図11は、本発明に従ってノズルが設けられた予熱トンネルの一部を断面で図示したものである。
【
図12】
図12は、予熱トンネルの区域に配置できる、本発明に係る一群のノズルを図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の詳細な説明]
各図に関し、
図1~3は、公知技術に従って製造した3つのプラントを図示したものである。特に、
図1はガス注入器を持たない予熱トンネルを有する従来のプラントを、
図2は公知技術に従って予熱トンネル内に空気注入器が製造・配置されたプラントを、
図3はヒュームの吸引/排出区域によって接続された、加熱区域とバーナーを有する予熱区域とを有しているプラントを、それぞれ図示したものである。
【0023】
各図において、1は、溶融金属槽が液相状態で存在している電気アーク炉(Electric Arc Furnace:EAF)12に、スクラップ11からなる金属装入物を連続供給するプラント全体を表している。
【0024】
炉12から来たヒュームの流れ17は、予熱トンネルの壁面側に寄る傾向がある略直線の経路を追従し、そのため金属装入物11から遠ざかっていく。同様に、
図2の構成では、燃焼用空気注入器19を用いることで、流れ17は大きくは偏向せず、炉12とトンネルとの間の境界面で行われる冷気18の侵入が炉12から来るヒューム17を完全燃焼させるのに十分足りているので、従来技術の教示に従って注入器10を通って導入される追加の燃焼用空気は極めて少なく、大きな乱流を発生させることはできない。
【0025】
従来技術のプラントに設けられたノズルまたは注入器には特別な空間的配置は全くなく、よって、本発明に従って記載されている予熱トンネル内での特別な空間的配置によって特徴付けられるものでもない。
【0026】
この種のプラント1は例えば米国特許第5183143号に記載されている。
プラント1は、スクラップ11からなる金属装入物を電気溶融炉EAF12に向かって前方へ連続移動させるのに適した少なくとも1つの水平コンベア13を備えていて、水平コンベア13は、炉12そのものである装入区域IVへと向かう装入物11の連続供給水平ラインを規定している。
【0027】
各図面から明らかに分かるように、水平コンベア13は、スクラップ11からなる金属装入物の予熱トンネル16の基部を構成している。
具体的には、プラント1は、ヒューム排出区域IIから、及び区域Iから、スクラップ11からなる金属装入物を電気溶融炉EAF12に導入する予熱区域IIIで構成されている。ヒューム排出区域IIは、プラント1内に存在し、スクラップ11の移動方向を考慮して、予熱区域IIIの上流側に設けられている。区域Iは、従来のスクラップ11受け取りシステムを用いて、スクラップ11からなる金属装入物を受け取る。
【0028】
水平コンベア13は、スクラップ11からなる金属装入物を振動によって搬送し、予熱区域IIIから「接続車」20と称される可動端部へと移送し、接続車がスクラップ11を電気溶融炉EAF12内に導入する。
【0029】
本発明によれば、ノズルは、予熱区域III(予熱トンネル16)のトンネルのヴォールトに存在しており、ガス15の注入を行う。
特にこれらのノズルは、ガスの高速注入を行うノズル15である。
【0030】
ノズル15は、予熱トンネル16内部で乱流が渦巻く動きを得られるように分配配置されており、これによりオフガス17とスクラップ11からなる金属装入物との間での熱交換が改善される。
【0031】
図9a及び9bに図示されているように、予熱区域IIIのトンネル16のヴォールトに設けられているノズル15は、オフガス17の乱流を増大させ、これにより以下のことを得ることができる。
【0032】
・反応性ガスとその燃焼を混合する速度の増加
・CO、H
2、及び他のガス、並びに電気溶融炉EAF12から来る炭素質粉塵の完全な燃焼のための条件の改善
・予熱トンネル16内部における温度分布の向上と均一化
・予熱トンネル16内部の水平コンベア13上における燃焼ガスと金属装入物11との間での熱交換の向上
ノズルまたは「流体力学的撹拌器」15が設けられていない公知技術のプラントでは、接続部を通ってプラントに入ってくる空気は制御されておらず、乱流と渦度が限られている状態では、ガスの混合を十分に行うことができず(
図4a,4b及び4c)、したがって予熱トンネル16内では完全燃焼までの時間がかかり、時には不完全燃焼が生じることもある。
【0033】
一方、予熱トンネル16内部に「流体力学的撹拌器」15が存在するおかげで、もたらされるガスの混合がより増大し、同時に炎の強度が高くなるので、特に予熱トンネル16内においてプラント外部からの、特に空気の侵入による冷却を制限する働きもある。
【0034】
図7及び
図9a,9bに図示されているように、ノズルまたは「流体力学的撹拌器」15を配置することで、運動領域のいわゆる吹き下ろし部分を水平コンベア13の中央部に集中させることが可能になり、したがってこの領域で、予熱トンネル16内に存在する金属装入物11とガス/ヒューム17との間で最大の熱交換が得られる。
【0035】
上述の渦巻き運動を起こす構造を得るために、ノズル15、ひいては入射してくる噴射は、予熱トンネル16のヴォールト上で横方向に、トンネル16のヴォールトの頂部により多く集中している不均等な状態で分配配置されている。
【0036】
好適な実施形態では、横方向において、ノズルがトンネルのヴォールトの中央部に配置されていて、ヴォールトの側部はノズルがない状態である。
よって、このガス噴射の配置構成は、例えば予熱トンネル16内部で明確な渦巻き運動構造(
図9a,9b)を得るためのものであり、以下の領域で特徴付けられている。
【0037】
・領域内でのスクラップ11からなる金属装入物との熱交換を向上させるために、中央領域内においてノズル15が存在する区域の下流側真下にある下降流領域。
・予熱トンネル16の壁部及び水平コンベア13との熱交換を制限するために、側部にある上昇流領域。
【0038】
こういった予熱トンネル16内でのガスの渦巻き運動構造は通例「馬蹄渦」と称されており、本発明の実施形態に従って、ノズル15、ひいては噴射を予熱トンネル16の断面の約2/3上に配置し、トンネル16のヴォールトの側壁付近の2つの側壁を空いたままにしておくことにより得られる。
【0039】
予熱トンネル16のヴォールト上でのノズルの配置は特定のプラントエンジニアリング問題(例えば
図8に示されている実施形態の解決法を参照)に対応して変形可能であるが、比較的高速な噴射が常にオフガス17の流れの中央部分を遮るという要求は不変であり、側部分を空いたままにしておくことによって、ガスの上向きの循環の確立や巻き込み流内での馬蹄渦巻き運動の形成に好都合である。
【0040】
「流体力学的撹拌器」としての機能を果たす高速噴射は、予熱トンネル16のヴォールト上で横方向に分配配置されているが均等ではなく、互いに適切に間隔をあけて配置されている「注入区域」に従って、流体力学的干渉現象を避ける目的で、隣接する2つの注入区域の距離は、予熱トンネルを通過するガスの速度によって4~6mにすべきである。隣接する2つの注入区域の間の空間は、上流側の区画により発生した高強度の炎が、下流側真下にある注入区域によって装入物へと押し出される前に発達する時間を与えることを可能にするためにある。
【0041】
トンネル内のプロセスガス中に存在するCO、H2、及びあらゆる汚染物質を完全に燃焼することと、熱回収を改善することとにおいて、予熱トンネル16の長さを可能な限り活用するために、最初の注入区域は電気溶融炉EAF12の可能な限り近辺に配置される。
【0042】
高速ガス噴射からなる最初の組は、電気溶融炉12の近辺、炉からの距離が7~10メートルの範囲内に設けられている。
ガス噴射は、次の「ガス注入区域」との間で速度及び/または流量が増していくように設けられている。注入区域数は、想定されている溶融プロセスによって生成される可燃性ガスの量によって、2つから4つまでの間で変わる。
【0043】
図11に図示されているように、電気溶融炉EAF12から始まって、ヒューム吸引プラントへと向かうガスの流れ(金属装入物11の移動方向と反対方向のガスの流れ)に沿って、最初の注入区域を構成する複数のノズル15を接続車20(最初の水冷式フード)の上方に設けることができる。一方、もう一方の注入区域を構成するノズル15は、予熱トンネル16の耐熱区域(耐熱性ライニングフード)の各セグメントの始まりの位置に配置できる。
【0044】
図示されている例で用いられているのは3つの注入区域であり、それぞれは4つのノズル15で構成されている。
注入されるガスは通例では室温の空気であるが、別のガスやガスの混合物もまた可能であり、使用するガスを予熱することもできる。
【0045】
各区域に、ノズル15の動作条件の制御手段を設けることができる。
ノズル15から放出された噴射は少量かつ高速である。なぜなら、予熱トンネル16を通過するガスの流れを混合する作用と反らせる作用の両方を提供できる必要があるからである。この噴射が、高温ガス17が金属装入物11へと向かう「吹き下ろし」運動を作動させ、材料の隙間に貫入するのに十分な速度を有して到達することで(
図5で分かるように、高温ガス17の流れが下方に押されて金属装入物11へと向かう、いわゆる「衝突」効果)、対流熱交換が改善する。
【0046】
この効果は、当該プロセスに関与する流量状況とガスの流れの速度を評価することによって得られる。つまり、流体の流れの衝撃を質量流量と流れ自体の速度との積として定義して、噴射の群が、トンネル16に沿って炉12から吸引プラントへと通過するヒュームの主流の衝撃と同等の衝撃を有するように、1つの噴射の大きさを決めなければならない。
【0047】
したがって、この大きさを決める条件は以下のとおりである。
【数1】
ここで、
W
gas=所定の注入区域におけるトンネル内のヒュームの質量流量[kg/s]
W
jet=同一の注入区域における1つの噴射の質量流量[kg/s]
V
gas=同一の注入区域に対応するトンネル内のヒュームの速度[m/s]
V
jet=1つの噴射の速度[m/s]
N
jets=所定の注入区域上にある噴射の数[#]
純粋に説明のために、記載されている用途において、室温での空気の注入を考慮すると、この条件は通常、約1,000Nm
3/hの流量と85~105m/sの範囲の放出速度を持つ噴射で得られる。
【0048】
提案された技術的解決法の範囲内では、注入されるガスのせいで、予熱トンネル16を通過するガスの流量の増え方は累進的となるが、このために、炉12からより離れた位置にある注入区域に対して、衝撃がより大きい噴射を検討する必要がある場合がある。
【0049】
溶融炉12を出て予熱トンネル16に入るガスの流れの後に、予熱トンネルを通過するガスの流量が全体として増大するために、最初の注入区域はその次の注入区域よりも使用する流量と速度が低いという条件が存在する。
【0050】
各注入区域は、プロセスの進行状況と、予熱トンネル16内に存在する装入物11と炉から出ていくガス17の特性とに応じて、他の領域から独立して管理・制御・調節可能である。
最も単純な実施形態では、ノズル15は全て同一であり、全て予熱トンネル16の頂部に配置されており、その数は基本的には予熱トンネル16自体の幅によって、利用可能な部分は中央部の約2/3(「吹き下ろし」領域が設けられる領域)で各噴射の間の距離は約450~500mmであることを考慮して決まる。効果的な衝突効果を得るために、予熱トンネル16の頂部は、コンベアに存在する装入物からの距離が約800~1200mmの位置に配置されなければならない(本発明を既存のプラントに適用する場合、このために予熱トンネルの再設計が必要となる場合がある)。予熱トンネル16が特別な構成である場合、例えば、ノズル15が互いに等距離で存在することができないというプラントの制約がある場合、同等の流体力学的効果を得るためには、噴射に対して異なる配置と寸法を用いることができる。
【0051】
空気注入が化学量論的観点から燃焼プロセスの制御につながる既知のプラント及びプロセスとは反対に、本発明では、空気または他のガスの噴射は、排他的ではないとしても、予熱トンネル16内部においてある特定の乱流状態を得るために一般的に使用される。
【0052】
空気噴射を使用する最も一般的な場合であっても、記載されているシステムの第一の目的が乱流を安定化させることであるので、記載されているシステムの全体的な注入容積は、炉12から来たプロセスガス17を完全燃焼するために必要な空気の流量よりも常に小さい。予熱トンネル16内部のプロセスガスの燃焼用空気の供給の制御は基本的に、吸引減圧や予熱トンネルの端部と炉の間の隙間(プラントエンジニアリングの観点から完全に排除することは決してできない)の幅を調整することに委ねられている。このようにして、乱流発生器としての空気の注入は、プロセスガスの完全燃焼のための周囲環境の空気の供給とは明確にと切り離される。
【0053】
具体的には、切り離しは次のように実行される。第1ステップ、例えばプラントの始動では、ノズル15は離しておき、プラントを操業させて、EAF炉内で溶融プロセスを開始する。ヒュームを排出区域IIを通って予熱トンネルIIIに沿って引き出して、炉で発生したヒュームの温度を1つ以上のセンサ21(ヒューム排出区域II内、またはヒュームシステムの他の適切な領域内にある)を用いて測定し、必要であれば、それらの化学組成, 特に酸素及び/または一酸化炭素の含有量を分析する。通常、COの完全燃焼に達したとみなされるのは、測定された温度が700℃以上で保たれているとき、かつ、化学組成も測定している場合には酸素含有率が容積で5%以上であるときである。
【0054】
これらの状態は、吸引プラントを調整することにより、特に吸引ファンの速度を調節することにより実現される。さらに、接続車20の位置を調節することで、接続車20と炉の間の境界面にある開口部を広げる、または狭めることができ、これにより、内部の減圧により上述の開口部を介して吸引される周囲空気の流れ18を(吸引システムと同じ調節によって)増加、もしくは減少させることができる。
【0055】
接続車20の位置の調節に加えて、または調節の代替として、接続車20と炉の間の境界面にある開口部の変動や調整を可能にする調整可能要素22を存在させることができる(
図5bに示されているように)。例えば、この調整可能要素22は調整可能な開口部を有する接続フランジであってもよい。前述のとおり、所望の温度条件及び場合によってはヒュームの化学組成に達した後は、プラントはヒュームの燃焼に関して安全な状況である。
【0056】
この時点で、ノズル15が作動し、示されているように、炉で発生したヒュームの燃焼とスクラップ11との熱交換の両方を増やす乱流状態を発生させる。ノズル15を通って注入される空気(または他のガスやガスの混合体)は、化学的な均衡の観点からすると明らかに重要な役割は果たしてはいない。記載されている一連の手順を踏まえると、全ての燃焼用空気は予熱トンネルの開口部を通って引き込まれているからである。ノズル15を通って注入される空気(または他のガスやガスの混合体)の役割は、反対に、実質的に流体力学的なタイプである。なぜなら、流体の流れの混合に有利に働くことにより、ヒュームの燃焼をより良好にする助けとなるからである。
【0057】
反応の化学的な均衡にはつながらない役割の証拠として、ノズル15を通って導入される空気の量は、通常では流れ18の空気、すなわち予熱トンネルの開口部を通って引き入れられる空気の量の約5~15%である。
【0058】
したがって、ノズル15が導入する空気の速度は、電気溶融炉から発せられるヒュームの燃焼に関連する基準にかかわらず容易に調節でき、明記されているように、この燃焼は予熱トンネルの開口部を通って引き入れられる空気に委ねられている。その結果、他のパラメータ、例えばプロセスの種類や装入物材料、またはプラント内のあらゆる過渡現象等に基づいて、ノズル15の動作を調整することが可能である。例えばコンベアの一時停止が発生した場合、装入物材料の局所的な溶融を避けるために、ノズル15が導入する空気は完全に閉じられるが、同時に、既に示されているとおり、予熱トンネルの開口部を通って引き入れられる空気によって達成される、炉が発するヒュームの正常燃焼は確保されている。
【0059】
したがって、本発明の最終目的は、炉から入ってくるプロセスガスの燃焼強度と、これらと装入物との間での熱交換とを増大させて、溶融プロセスの全体のエネルギー効率を高めることである。
【0060】
本発明の用途によって実現される炉から放出されたプロセスガスの混合及び燃焼の改良により、その中に存在する汚染物質(及び関連前駆物質)の良好な熱破壊を得ることができる。
これら複数の効果は、プロセスにおいて、約5~10kWh/トンに相当する電気エネルギーの節約や、例えばVOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)、PAH(polycyclic aromatic hydrocarbons:多環式芳香族炭化水素)、PCB(polychlorinated biphenyls:ポリ塩化ビフェニール)等の他の不要要素の全体的な削減に加えて、最大30%の残留CO含有量の低減を示す、実験で得られた結果によって実証されている。
【0061】
本発明はまた、例えば、スクラップからなる金属装入物のために予熱トンネルと加熱トンネルとが設けられている国際公開第2012/007105号に記載されているようなプラントに適用可能である。
【0062】
本発明のおかげで、スクラップからなる装入物の加熱は、予熱トンネル16内で引き起こされた乱流によって行われる。このことは、空気の導入が行われるのは化学的燃焼プロセスにおける必要条件に関連してのみであり、予熱トンネル内部の運動領域の管理ロジックが全くない、既知のプラント内で行われる方法とは異なっている。
【0063】
本発明のおかげで、予熱トンネル16内部で反らせ板を使用することも回避できる。この反らせ板には、ヒューム吸引において著しい圧力低下を招くこと、非常に高温で粉塵の多いガスの流れの中で動作しているために冷却作業と頻回の保守作業を必要とすること(これはプラントの複雑化を意味するだけではなく、漏れのリスク源でもあり、ガスによる熱エネルギーの無駄な損失を招いてしまう)、入射角を変えることが簡単ではないので実用上の観点から調節や管理を行うのが難しい、そして、処理される速度、つまり流量が低い時にその効果が限られている、という欠点がある。
【0064】
したがって、本明細書の前文に記載された本発明の目的が達成されている。
本発明の保護範囲は、各請求項の記載に基づいて定められる。
【国際調査報告】