IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特表2023-510373再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア
<>
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図1
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図2
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図3
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図4
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図5
  • 特表-再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのための熱暴走バリア
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20230306BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230306BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 50/222 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230306BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/625
H01M50/249
H01M50/233
H01M50/222
H01M50/227
H01M10/613
F16L59/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543032
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2021050304
(87)【国際公開番号】W WO2021144758
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/961,410
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ディエツ,ピーター ティー.
(72)【発明者】
【氏名】デ ロヴェレ,アン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】フェアバンクス,マーク エー.
(72)【発明者】
【氏名】ボダカヤラ,ブハスカラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】バトス,ダニエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ルオパ,シーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】バートリング,ブランドン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,ケスティン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ミッデンドルフ,クラウス エイチ.ジー.
(72)【発明者】
【氏名】クエスターズ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クラップ,ジャン トーマス
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AB25
3H036AE04
3H036AE13
5H031AA09
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、コア層上に配置された、又はコア層内に一体化された、補助層と、を含む熱バリア物品であって、当該熱バリア物品は、トーチ及びグリット試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している、熱バリア物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、
前記コア層上に配置された、又は前記コア層内に一体化された、補助層と、
を含む熱バリア物品であって、
前記熱バリア物品は、トーチ及びグリット試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している、熱バリア物品。
【請求項2】
前記複数の繊維が、多結晶セラミック繊維、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、又はケイ酸塩繊維を含む、請求項1に記載の熱バリア物品。
【請求項3】
前記難燃性発泡体が、メラミン又はポリウレタンを含む、請求項1又は2に記載の熱バリア物品。
【請求項4】
前記補助層が、無機粒子を含有する無機結合剤コーティングを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱バリア物品。
【請求項5】
前記熱バリア物品が、約0.5mm~約10.0mmの範囲の厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱バリア物品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱バリア物品によって少なくとも部分的に囲まれた少なくとも1つの電池セル又は電池アセンブリを含む、電動ビークルの電池コンパートメント。
【請求項7】
電動ビークルの電池アセンブリにおける熱暴走事象の発生を停止又は少なくとも減速させる方法であって、前記方法は、
電動ビークルの電池アセンブリの少なくとも1つの電池セルを、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱バリア物品で少なくとも部分的に囲むことを含む、方法。
【請求項8】
熱バリア物品が電動ビークルの電池アセンブリにおける熱暴走事象の発生を停止又は少なくとも減速することができるかどうかを評価する方法であって、前記方法は、
前記熱バリア物品の露出面を約600℃~約1800℃の範囲の高温に少なくとも5秒間供することと、
前記露出面が依然として高温に供されている間、前記露出面を、約60~約200グリットの範囲のサイズを有する金属酸化物粒子媒体のブラストに少なくとも10秒間供することと、
を含む少なくとも1サイクルを実施することを含み、前記粒子媒体は、約25~約50psiの範囲の圧力で放出される、方法。
【請求項9】
前記露出面が、温度源から、放出された粒子媒体の供給源から、又はその両方から約44.5mm(1.75インチ)に配置されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各サイクルが、前記ブラスト後に、前記熱バリア物品の露出面を約600℃~約1800℃の範囲の温度に少なくとも5秒間供することも含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、1~12サイクルの範囲で実施することを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各サイクルが、前記露出面にわたって複数の位置で実施される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1サイクルのみが、前記露出面にわたって複数の位置で実施される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
各サイクルが、前記露出面上の中央位置でのみ実施される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1サイクルのみが、前記露出面上の中央位置でのみ実施される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の単一の再充電可能な電池セル又は電池セルパックを含む再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとしての多層材料の使用に関する。
【0002】
本発明は、電動ビークル(electric vehicle)の電池モジュールに関し、具体的には、電池モジュールの熱暴走事象を管理するためのブラスト及び耐熱性バリア物品に関する。試験方法も説明する。提供される物品は、例えば、自動車及び電力貯蔵用途において特に有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
例えば、携帯電話及び携帯型コンピュータ又は電気自動車若しくはビークル若しくはハイブリッド車の電力供給を含む、例えば、リチウムイオンセルなどのいくつかの単一の電池セルを含む再充電可能若しくは再装填可能な電池又は再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムが知られており、いくつかの技術分野で使用されている。
【0004】
また、リチウムイオンセルなどの特に再充電可能な電池セルは、時に、セル内の短絡、不適切なセル使用、製造欠陥、又は極端な外部温度への曝露などの事象によって引き起こされる内部過熱を受けることが知られている。この内部過熱は、高温によって引き起こされるセル内の反応速度が、引き抜かれ得るよりも多くの熱がセル内で発生する点まで増加し、発生した熱が、反応速度の更なる増加をもたらし、発生した熱の変化につながる場合に、いわゆる「熱暴走」につながる可能性がある。例えば、リチウムイオン(Liイオン)電池では、例えば、そのような欠陥のあるセル内で発生する熱は、局所的ホットスポットにおいて500℃~1000℃に達し得る。
【0005】
特に、そのような場合では、欠陥のある電池セル又はセルパックで発生した熱が隣接するセルに広がり得、次いで過熱を引き起こし、次いで、熱暴走を受ける可能性があるため、欠陥のあるセル又はセルパックから、貯蔵システムの他の部分又は貯蔵システムの周りへの、熱伝達を遮断又は少なくとも低減することが不可欠である。また、上述の温度で処理されたときに破壊又は損害され得、電気的不足を引き起こし、それにより、更なるセルが熱暴走するので望ましくない影響をもたらす可能性がある、貯蔵システムの周りの部品への熱伝達を制限することが重要である。
【0006】
したがって、特にまだ影響を受けていない電池セル又はパックを含むが、電池セルを含むシステム又はデバイス又は装置の構築要素を囲む、発生した熱に対して、過熱された電池セル又は電池セルのパックの環境を保護するための安全上の注意事項を提供することは通常である。
【0007】
この目的のために、例えば、過熱した電池セル、又は電池セルのパックから、他の電池セル、若しくは電池のセルパック及び/又は貯蔵システムの環境への熱伝達を防止又は低減するために、貯蔵システムの内部に熱的に絶縁されたバリア要素を挿入することが提案されている。
【0008】
これは、例えば、米国特許出願公開第2006/0164795号(Jonesら)又は米国特許第8,541,126号(Hermannら)に記載されている。これらの先行技術文献によれば、熱バリア要素は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、カルシウムケイ酸マグネシウム、又はアルミナシリケートなどのセラミック材料からなることができ、この材料は、50W/mK未満の熱伝導率などの比較的低い熱伝導率(25℃で測定)と組み合わさって、約500℃~約1500℃以上の高い融解温度、すなわち、電池における熱暴走事象中の短時間でも通常達する温度をはるかに上回る融解温度を示す。そのようなセラミック要素は、例えば、好適な耐熱性の樹脂を含浸させた当該セラミック材料のいくつかのラミネート(laminates)を圧縮することによって生成されるプレートからなり得る。
【0009】
欧州特許第3142166(A1)号では、特に、実質的に剛性のプレート及び圧縮性層がそれらの大きな表面に垂直方向に交互に配置された層状アセンブリである電池用の熱的に絶縁されたバリア要素として有用な圧縮性複合材料が開示されている。
【0010】
2018年3月14日にグローバルレジストリで確立された米国の「Technical Regulation on the Electric Vehicle Safety(EVS)」であるグローバル技術規制No.20によれば、以下は、将来のビークルに必要とされる。
【0011】
可燃性電解質を含む再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)を備えたビークルの全体的な安全性を確保するために、ビークル乗員は、熱伝播(内部短絡による単一のセル熱暴走によってトリガされる)から生じる危険な環境に曝されるべきではない。第1の目標は、熱伝播を完全に抑制することである。熱伝播を完全に抑制することができない場合、熱事象の警告後5分以内に、外部からの火災又は爆発が発生せず、客室に煙が入らないようにする必要がある。
【0012】
再充電可能なエネルギー貯蔵システム用のハウジングは、例えば、アルミニウム又は有機ポリマーシート成形化合物から作製され得る。両方とも600℃以上の温度に達すると直ちに損傷する可能性がある。スチールケーシングでさえ、例えば、電気絶縁材料の事故又は機能不全に起因するケーシングの変形などの特定の状況ではリスクがあり得る。600℃より高い温度に達するハウジング内での熱暴走事象が存在するとすぐに、熱、及びガスがハウジングから出るリスクがある。
【0013】
試験可能であるために、製品が上記の要件を満たす場合、いくつかの試験方法が開発されてきたが、それらのうちの1つはいわゆる釘刺し試験である。
【0014】
更なる傾向は、特に自動車産業において、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムがより大きくなり、より多くのエネルギーを運ぶためにエネルギー密度がより高くなり、ビークルが貯蔵システムを再充電することなく完全に充電された貯蔵システムで駆動することができる範囲を拡大するのに役立つことがある。そのようなより大きな貯蔵システムに欠陥がある場合、それらのシステムに蓄積されたエネルギーがより高いため、以下の反応もより強く得る可能性がある。これは、より高い温度につながる可能性がある。
【0015】
ニッケル金属水素化物又はリチウムイオン(Liイオン)を含む再充電可能な電池は、エネルギーを貯蔵し、電力を供給するために電動ビークルで使用される。再充電中の電池への、又は電池からビークル及びその付属品内への、いずれかの電流の流れは、熱を発生し、これは、電池セル及び相互接続されたシステムの内部抵抗を乗じた電流の平方に比例して、管理/消散される必要がある。より多い電流の流れは、より強力な加熱効果を意味する。
【0016】
リチウムイオン電池は、特定の動作温度範囲内で最適に機能する。特定の範囲の境界外で動作が生じる場合、電池内のセルの損傷又は劣化の加速が生じる。したがって、電池はまた、環境条件に応じて冷却又は加熱する必要もあり得る。これにより、今度は、使用及び再充電の前及び間に、電池の熱的態様を効果的に管理する必要性が生じる。
【0017】
電動ビークル電池モジュールは、様々な電気接続部(すなわち、バスバー)を通してパック内で互いに接続されたパウチに格納され得る数百のセルを含む。熱暴走伝播と呼ばれる壊滅的な現象は、電池モジュール内の1つのセルがその動作においてパンク、損傷、又は不良のため発火したときに生じる。得られた火災は、連鎖反応中の電池全体を通して、隣接するセルからセルに拡散する。このような火災は、特に、数十、数百、又は更には数千個の個々のセルを含有する電池パックが一般的に見られる高電力デバイス、例えば電動ビークルにおいて、潜在的に大規模になる可能性がある。このような火災は電池に限定されず、周囲の構造体に広がり、ビークル乗員又はこれら電池が配置されている他の構造体を危険にさらし得る。
【0018】
セル内で熱暴走が発生すると、セルが突然に爆発する場合、熱管理システムが、排出された破片を遮断及び/又は封じ込めることも望ましい。電動ビークル用途では、火災によって発生する熱から乗員を保護し、それにより、ビークルを停止させて逃げるのに十分な時間をかせぐことも重要である。
【0019】
熱暴走伝播によってもたらされる重度のリスクは、そのような熱暴走の影響を軽減し、火災の場合にビークル乗員が安全に空隙を与えるための時間をもたらすために、ブラスト及び熱的に絶縁されたバリアを備えた電池モジュールの設計を必要とする。
【発明の概要】
【0020】
上記を考慮して、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内の熱伝播を防止又は遅延させるのに役立つ好適な材料及び好適な配置を提供すること、並びに上述の条件及び温度で処理されたときに破壊又は損傷し得る、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムの周り又は外側の部品への熱伝達を提供することが依然として必要である。また、組み立てプロセスで使用することが容易であり、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを設計する柔軟性を提供する、そのような好適な材料が必要とされている。
【0021】
本発明は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとしての多層材料の使用を提供し、多層材料は、少なくとも1つの無機布地、並びに無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの電池セル及び多層材料を有する再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを提供し、多層材料は、断熱バリアとして使用される。多層材料は、少なくとも1つの無機布地、並びに無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む。
【0023】
電動ビークル電池における突然の熱暴走事象に関連する危険からの保護は、重要な技術的課題である。普遍的な解決策を考案する際の問題の1つは、熱暴走の1つの側面に対する保護において良好に作用する材料が、他の場合では不十分なことである。例えば、ポリマー繊維及び発泡体の不織ウェブは、優れた断熱特性を表示することができるが、一般的なポリマーは、可燃性である傾向があるか、又は繊維及び発泡体は、可燃性である封止材材料でコーティングされる。織られた不燃性繊維(例えば、無機繊維)から作製された熱シールド材料は、火災の侵入を防止するには有効であり得るが、火災の強烈な熱に対して適切に絶縁する、又はセルが爆発したときに飛び散る破片を吸収/そらすには薄すぎる傾向がある。熱シールド材料のより厚い層を使用することは、一般に費用効率が高くない。これらの材料の組み合わせが作用する可能性はあるが、特に接合材料の選択が可燃性の問題によって制約され得る場合には、これらの材料を互いに接合させることは困難な可能性がある。
【0024】
従来の熱管理システムで使用される繊維及び発泡体を使用する場合、別の技術的困難が生じる。耐火性繊維及び発泡体でさえ、十分な高温では溶融する傾向がある。例えば、600℃(1112°F)を超える。そのような熱暴走事象(例えば、酸化ポリアクリロニトリル)中に溶融しない繊維及び発泡体は、比較的脆くなる傾向があり、製品製造、中間での取り扱い、及び使用中の繊維脱落又は材料の緩みに関連する新しい問題を引き起こす可能性がある。このような繊維は、繊維ウェブ内で互いに束縛されていないので、非溶解性繊維が外に出て他の電池構成要素及び電池を取り囲む空間を汚染することがないように、これらの繊維を固定するための代替方法を考案しなければならない。
【0025】
現在の試験方法は、材料を単独で、又は他の材料と組み合わせて、電動ビークルコンパートメントの障壁として効果的に使用して、ブラスト及び耐熱保護を提供する方法を十分に測定することができない。また、現在の試験方法は、セル及びモジュールを含む実際の電池構成要素を使用し、これは高価で時間がかかる。
【0026】
本発明は、複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、当該コア層上に配置された、又はコア層内に一体化された、補助層と、を組み合わせているブラスト及び耐熱性バリア物品を提供することによって、これらの問題に対処する。コア層及び補助層は、ブラストを作出し、熱バリア物品は、トーチ及びグリット(Torch and Grit)試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している。電動ビークルの電池用途では、指定したコアと補助層とを組み合わせることにより、火災への曝露時に、ブラスト保護、構造的一体性、及び高度の断熱性を提供することができる。
【0027】
本発明の一態様では、複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、当該コア層上に配置された、又はコア層内に一体化された、補助層と、を含む熱バリア物品が提供され、当該熱バリア物品は、トーチ及びグリット試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している。
【0028】
本発明の別の態様では、複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、当該コア層上に配置された、又はコア層内に一体化された、補助層と、を含む熱バリア物品を含むリチウムイオン電池コンパートメントが提供され、当該熱バリア物品は、トーチ及びグリット試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本発明の特定の実施形態を例示する以下の図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図1】本発明による多層材料の断面図である。
図2】再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)の概略図である。
図3】本発明の一実施形態によるブラスト及び耐熱性バリア物品の側面断面図である。
図4】本発明の一実施形態による、保護されることを意図した表面に取り付けられたブラスト及び耐熱性バリア物品の側面断面図である。
図5】本発明のブラスト及び耐熱性バリア物品を試験する方法のためのセットアップの図である。
図6】サンプルマウンティング鋼(例えば、亜鉛メッキ又はステンレス鋼)シートプレートの裏側上の例示的な熱電対(TC)位置の図である。
【0030】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【0031】
定義
本明細書で使用するとき、
「厚さ」は、単層物品又は多層バリア物品の両面の間の距離を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で使用される場合、「作用可能に適合された」という用語は、識別された作用又は性能を実施するように設計、構成、及び/又は寸法決めされた構造を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及は、当業者に公知である当該構成要素のうちの1つ以上及びその等価物を含み得る。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0035】
「含む」という用語及びそのバリエーションは、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、及び垂直などの相対語が、本明細書で使用される場合があり、その場合、特定の図において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0036】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。
【0037】
本発明による多層材料は、例えば、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えたビークルの全体的な安全性を確保するために使用することができる。多層材料は、用途に応じて2つの層を含み得るが、それはまた、上述の材料の3つ以上の層を含み得る。
【0038】
プリズム状Liイオンセルの熱暴走は、基本的に、3つの相に分離され得る。
1.バーストプレートが開いたときの爆発性通気(120Ahプリズムセルで6~8バール)、即時温度は約700℃まで増加する。
2.高圧ジェットガス通気及び高温(典型的には600~700℃で約30~50秒)での粒子ブローアウト(particle blow out)。
3.静かなガス通気/発光炎。
【0039】
したがって、熱伝播を防止するための断熱バリアとして使用される好適な材料は、ガス通気及び粒子ブローを伴う高温及び高圧に、損傷を与えすぎずに耐える必要がある。加えて、材料は、高温、圧力、及びガス、並びに/又は粒子衝撃の間及び後でさえ、熱及び電気絶縁特性を提供する必要がある。
【0040】
本発明による多層材料は、可撓性であり得る。多層材料の可撓性は、可撓性が、材料の屈曲を可能にし、したがって、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内の一方又は他の方法でそれを適用するより多くの選択肢を可能にするため、材料のより広い使用及び材料のより効果的な適用を可能にする。本発明による多層材料はまた、圧縮可能であり得る。圧縮性は、より広い使用及びより効果的な用途を可能にし得る。
【0041】
例えば、材料は、非圧縮状態と比較して、多層材料の総厚が圧縮状態で1/3未満であるように圧縮可能であり得る。多層材料が、例えば、非圧縮状態で6mmの厚さである場合、圧縮状態では、4mmまで圧縮可能であるべきである。
【0042】
本発明による多層材料は、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、Cガラス繊維、ARガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、ケイ酸塩繊維、スチールフィラメント、又はこれらの組み合わせを含む無機布地を含み得る。繊維は化学処理されてもよい。無機布地は、例えば、布、編布、ステッチボンド布、クロッシェ編布、交絡布、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0043】
本発明による多層材料は、無機粒子又は無機繊維又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層も含み得る。無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層の無機繊維は、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、Cガラス繊維、ARガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、多結晶繊維、非バイオ永続繊維(non-bio-persistent fibers)、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ケイ酸ホウ素繊維、又はこれらの組み合わせの群から選択され得る。非バイオ永続繊維は、例えば、アルカリ土類ケイ酸塩繊維であり得る。より具体的には、繊維状材料は、アニールされたガラス繊維又は非バイオ永続繊維を含む、アニールされた溶融形成セラミック繊維、ゾルゲル形成セラミック繊維、多結晶セラミック繊維、アルミナ-シリカ繊維、ガラス繊維を含み得る。Liイオン電池の熱事象において生成された高温に耐える場合、他の繊維も可能である。
【0044】
いくつかの実施形態では、無機粒子としては、限定するものではないが、グラスバブルズ、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ベントナイト、イライト、クロライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハロイサイト、ラポナイト、レクトライト、パーライト、及びこれらの組み合わせを挙げることができ、好ましくは、微粒子充填剤混合物は、グラスバブルズ、カオリン粘土、タルク、マイカ、及び炭酸カルシウムのうちの少なくとも2種を含む。好適なカオリン粘土の種類としては、湿式カオリン粘土、デラミカオリン粘土、焼成カオリン粘土、及び表面処理カオリン粘土が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、無機微粒子充填剤は、グラスバブルズ、カオリン粘土、マイカ、及びこれらの混合物を含む。任意選択的に、アルミナ三水和物などの、吸熱性充填剤を添加することができる。無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、無機紙又は無機基板を含み得る。層は、例えば、3M Company(St.Paul,Minn.,USA)から市販されている、3M CEQUINなどのガラス繊維及びマイクロファイバーを含む無機絶縁紙を含み得る。
【0045】
無機布地は、例えば、0.4~3mm、例えば、0.4~1.5mmの範囲の厚さであり得る。無機布地はまた、400g/m(gsm)を超える坪量であり得る。
【0046】
無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、膨張性材料を更に含み得る。本発明による多層材料において用いられる有用な膨張性材料としては、これらに限定されるものではないが、未膨張バーミキュライト鉱石、処理済未膨張バーミキュライト鉱石、部分的に脱水されたバーミキュライト鉱石、膨張性グラファイト、膨張性グラファイトと処理済又は未処理未膨張バーミキュライト鉱石との混合物、加工された膨張性ケイ酸ナトリウム、例えば、3M Company(St.Paul,Minn,USA)より市販のEXPANTROL不溶性ケイ酸ナトリウム、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、0.1~20mmの範囲の厚さを含み得る。より薄い材料が使用されるいくつかの用途では、無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、0.2~4.0mm、好ましくは0.2~2.0mmの範囲の厚さを含み得る。無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層は、100~2500g/m、例えば100~2000g/mの範囲の重量であり得る。
【0048】
本発明による多層材料は、少なくとも1つのスクリム層を含み得る。スクリム層は、繊維及び/又は粒子が多層材料から脱落するのを防ぐことによって、多層材料の取り扱いを改善するために使用され得る。スクリム層は、PET、PE、メラミン、例えば、Eガラスなどの無機材料を含み得る。それはまた、又は代替として、無機又は有機コーティングを含み得る。スクリム層はまた、任意の他の好適な材料を含み得る。それは、無機粒子又は繊維を含む少なくとも1つの層の隣に配置され得る。それは、本発明による多層材料全体をカプセル化することもできる。
【0049】
多層材料の総厚は、0.5~23mmであり得る。より薄い材料が使用されるいくつかの用途では、多層材料の総厚は、0.7~5mmであり得る。材料が使用される用途に応じて、材料の厚さを調整することが可能である。既に述べたように、材料は、組み立てプロセスでの材料の適用の容易さを改善するために可撓性であり得る。材料はまた、組み立てプロセスにおける材料の適用の容易さを改善するために圧縮可能であり得る。
【0050】
多層材料は、少なくとも1つの無機布地と、無機粒子又は無機繊維を含む少なくとも1つの層との間に有機又は無機接着剤の層を含み得る。接着剤は、有機であっても無機であってもよい。接着剤は、無機布地、又は無機粒子若しくは無機繊維を含む層のいずれかに既に含まれていてもよい。スクリムが多層材料に使用される場合、多層材料はまた、多層材料とスクリムとの間に接着剤を含み得る。接着剤は、有機であっても無機であってもよい。それは、スクリム自体又は多層材料に使用される材料のいずれかに既に含まれてもよい。
【0051】
例示的な有機接着剤は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、又はシリコーン系接着剤であり得る。有機接着剤は、絶縁接着剤、熱伝導性接着剤、難燃性接着剤、導電性接着剤、又は導電性及び難燃特性の組み合わせを有する接着剤であり得る。ラミネートに使用される例示的な有機接着剤は、接触接着剤、感圧性(PSA)接着剤、Bステージ処理可能な接着剤、又は構造用接着剤であり得る。例示的な態様では、アクリルPSAを使用して、熱バリア複合材料の機能層を一緒に結合することができる。
【0052】
例示的な無機接着剤は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0053】
有機又は有機接着剤は、機能層のうちの1つに直接コーティングすることができ、任意選択的に乾燥させることができ、又は次の機能層に接触する前に、機能層のうちの1つの表面に適用され得る自立型ラミネートフィルム接着剤に予め形成され得る。代替的な態様では、機能層のうちの1つ以上は、機能性材料上に既に配置された接着剤層(例えば、感圧接着剤層)を有するテープの形態であり得る。
【0054】
本発明は、少なくとも1つの電池セル及び多層材料を有する再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムも提供し、当該多層材料は、断熱バリアとして使用され、
少なくとも1つの無機布地、並びに
無機粒子若しくは無機繊維、又はこれらの組み合わせを含む。
【0055】
本発明による多層材料は、例えば、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えたビークルの全体的な安全性を確保するために使用することができる。
【0056】
多層材料は、無機布地が少なくとも1つの電池セル又は電池セルパックに面するように、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内に配置され得る。無機布地は、熱暴走事象中に発生する可能性があるため、温度及び他の衝撃に対する高い耐性を有するように選択される。高砂ブラスト耐性及び/又は高い引張強度は、そのような高い全体抵抗の指標であり得る。無機布地が少なくとも1つの電池セル又は電池セルパックに面する場合、布地は、熱暴走事象の主な段階に耐えることができ、それは、以下のように説明される:
1.バーストプレートが開いたときの爆発性通気(120Ahプリズムセルで6~8バール)、即時温度は約700℃まで増加する。
2.高圧ジェットガス通気及び高温(典型的には600~700℃で約30~50秒)での粒子ブローアウト。
3.静かなガス通気/発光炎。
【0057】
そのようなシナリオにおける無機布地の主な機能は、それらの段階の熱的及び機械的衝撃から他の層を保護することである。そのようなシナリオにおける他の層の主な機能は、高温が、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内、好ましくは欠陥のあるセル内に留まり、欠陥のあるセルの周囲の部品又は当該システムの周囲においても部品に到達しないように、断熱バリアを提供することにある。再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムがビークルにおいて使用される場合、本発明による多層材料の主な目的は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムを備えた車両の全体的な安全性を確保することである。
【0058】
本発明による再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムは、少なくとも1つの電池セルと貯蔵システムの蓋との間に配置された多層材料を提供し得る。多層材料は、例えば、蓋に固定され得る。又は、多層材料は、電池セルと蓋との間に配置することができる。多層材料は、そのような位置で、蓋のための断熱バリアとして、又は蓋及び蓋に隣接して配置されている蓋及び任意のシステム、構成要素を保護するために、使用され得る。多層材料は、隣接する電池セル又は電池パックのための断熱バリアとしても使用され得る。それはまた、例えばケーブル又はバスバーなどの電池セル又は電池パックの周りの任意の電気部品の断熱バリアとしても使用され得る。多層材料が追加の電気絶縁特性を提供する場合、例えば、変形又は他のハームによる短絡、例えば、異なる電池システムの周りの加熱された電気絶縁も防止することができる。別の可能性は、少なくとも1つの電池セルのバーストプレートを覆うように多層材料を配置することである。当然のことながら、材料は、上述の要件の全てを満たす再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムのように配置することもできる。既に上述したように、無機布地が少なくとも1つの電池セルに向かって面するように、本発明による多層材料を配置することが有利であり得る。
【0059】
また、本発明による多層材料の使用は、特定の種類の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける使用に限定されない。例えば、プリズム電池セル、パウチセル、又は円筒形セルを含む再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおいて使用され得る。
【0060】
驚くべきことに、上記の多層材料の使用は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム内で外部火災が発生しないように、並びに再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムの周囲又は外部の部品への熱伝達が発生しないように、効果的に使用できることが見出された。以下の実施例のセクションで説明されるように、試験は、本発明による多層材料が、GTR 20で言及された要件に耐えることを示している。
【0061】
本明細書では、以下に、本発明の様々な実施形態を記載し、また図面に示すが、図中では、同様の要素には同じ参照番号が付けられる。
【0062】
図1は、本発明による多層材料1の断面図を示す。図1の多層材料は、スクリム層4に取り付けられている繊維マット3に取り付けられている無機布地層2を含む。スクリム層4及び布地層2は、繊維マット3の両側に配置されている。層2、3、4は、例えば、接着剤によって互いに取り付けられ得る。
【0063】
図2は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム(REESS)5の概略図である。システムは、プリズム電池セル6を含む。プリズム電池セル6は、例えば、熱暴走事象の場合、通気穴を通して潜在的に生成された過剰な圧力を解放するためのバーストプレート7を各々備える。セル6は、ハウジング8(実際には閉じている2つの開放壁、1つの前壁及び1つの側壁、が示されている)に配置されている。ハウジングは、蓋9を提供する。
【0064】
既に上述したように、規制は、再充電可能なエネルギー貯蔵システムが外部火災を発生しないように構築されることを要求している。保護される必要がある1つの領域は、バーストプレート7の上方の領域である。バーストプレートの上に配置されたシステムの部分は、電池の溶け落ち、及びシステムの外側における裸火を回避するために、熱バリアを必要とする。本発明によれば、図1に示される多層材料1は、無機布地層2が電池セル(図示せず)に面するように、蓋9の下のそれらのバーストプレート7の上、電池セル6の上に配置されている。
【0065】
多層材料1はまた、セル6(図示せず)の間に配置され得る。又は、セル6とハウジング8の側壁又は底壁(図示せず)との間に配置され得る。
【0066】
本明細書に記載されるブラスト及び耐熱性バリア物品は、いくつかの実施形態において、Liイオン電池における熱暴走伝播の影響を緩和するのに有効であり得る。これらの物品はまた、飛び散る破片又は熱変動の影響から人々又は周囲の構造体を保護する必要がある、自動車、住宅、産業、及び航空宇宙用途などの他の商業及び産業用途において潜在的な用途を有し得る。例えば、提供されるブラスト及び耐熱性バリア物品は、輸送機関又は建築コンパートメント構造に沿って又はその周りに延びる主要構造部分に組み込まれてユーザ及び乗員を保護することができる。このような用途としては、電池モジュール、燃料タンク、及び任意の他のエンクロージャ又はコンパートメントの周りの保護を含み得る。
【0067】
提供されるバリア物品は、一般に、複数の繊維又は補助層に結合された若しくは補助層と結合された難燃性発泡体を含むコア層を含む。任意選択的に、バリア物品は、難燃性接着剤を含み得る。これらの層は、好適な結合剤を使用して、コンパートメント壁に又は互いに接合されてもよい。構成要素、その構成、及び試験方法は、以下のサブセクションに記載されている。
【0068】
一実施形態によるブラスト及び耐熱性バリア物品を図3に示し、以降では数字100で示す。バリア物品100は、複数の繊維又は難燃性発泡体を有するコア層102を含む。コア層102は、一般に、熱暴走事象に供されたときに熱伝達を低減するために低い熱伝導率を有する層を生成する1つ以上の材料から作製される。好適なコア層は、例えば、多結晶セラミック繊維、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、NEXTEL 312繊維、玄武岩繊維、ケイ酸塩繊維、メラミン発泡体、又はポリウレタン発泡体から作製することができる。複数の繊維は、典型的には、絡み合っていて又は点結合していて、インターレイされる個々の繊維又はフィラメントの構造を呈するシート又はマットを形成する。コア層102として使用される例示的な繊維マットは、Mitsubishi Chemical Company(Tokyo,Japan)から入手可能なMAFTECブランケットMLS-2を含む。コア層102を使用した他の例示的な繊維マットとしては、3M Company(St.Paul,MN,USA)から全て市販されているBONDO 488及びBONDO 499ガラス繊維マット、CEQUIN断熱紙、又はDynatron 699、及び共通して所有されている米国特許出願公開第2020/0002861号(de Rovereら)及び米国特許第7744807号(Berriganら)に記載の不織布マットが挙げられる。コア層として使用される例示的な発泡体は、BASF Corporation(Ludwigshafen,Germany)から市販されているBASOTECT Wである。
【0069】
本出願に特に有用なセラミック繊維としては、耐火性マットに加工することができるセラミック酸化物繊維が挙げられる。これらの材料は、少量のシリカ、酸化ホウ素、又は酸化ジルコニウムをアルミナ中に混合して、大きな結晶粒の形成を回避し、それによって剛性を低減し、周囲温度で強度を高めることによって、織物に好適に作製することができる。これらの繊維の市販の例としては、商品名NEXTELで提供されるフィラメント製品が挙げられる。これらの繊維は、防火バリア特性及び高強度の両方を示す織繊維の層又はウェブに変換することができる。
【0070】
熱バリア物品に使用することができる他の有用な材料としては、アルカリ土類シリケート(AES)低生体内耐久性繊維(biopersistent fibers)、アルミノシリケートセラミック繊維(RCF)、及び/又はアルミナシリカ繊維並びにバーミキュライトを、アクリルラテックス及び他の耐火材料と組み合わせて、耐熱性不織繊維ウェブ、又はマットを得るセラミック繊維材料が挙げられる。これらの例は、例えば、PCT国際公開第2018/093624号(De Rovereら)及び米国特許第6,051,103号(Lagerら)に記載されている。場合によっては、これらの繊維材料は、アルミニウム三水和物などの吸熱性難燃性添加剤とブレンドすることができる。他の添加剤は、例えば、EXPANTROL(3M Company)であり得る。これらの材料は、任意に膨張性であり、これにより、材料は、加熱されると膨れ上がって、火災の場合に開口部を封止する。これらのセラミック繊維材料の例としては、Unifrax I LLC,Tonawanda,NYによって商品名FYREWRAPで提供される製品が挙げられる。
【0071】
更に、コア層102は、有機繊維及び無機繊維の両方を組み合わせて耐火性繊維フェルトを形成することによって作製することができる。例えば、シリカ、ポリフェニレンスルフィド、及びポリパラフェニレンテレフタルアミドの繊維を、コーティングされた布地に形成することができる。これらの布地のいくつかは、TexTech Industries(Portland,ME)から入手可能であり、航空宇宙用途における溶け落ち(burn through)防止断熱材として使用されてきた。
【0072】
有用な無機繊維は、火災に曝された場合に、防火バリアの保全性を維持するために非常に高い溶解温度を有することができる。高い溶解温度はまた、稼働条件下での防火バリア材料の軟化又はクリープを回避するのに役立つ。例えば、多結晶アルミナ系繊維は、1400℃を十分に超える溶融温度を有することができる。無機繊維は、600℃~2000℃、800℃~2000℃、1100℃~1700℃の範囲の溶融温度を有することができ、又はいくつかの実施形態では、600℃、650℃、700℃、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、又は2000℃未満、に等しい、又は、を超える溶融温度を有することができる。
【0073】
ブラスト及び耐熱性バリアの任意選択の層を有するコア層102は、電動ビークルの電池の蓋又はコンパートメント壁などの図4に示した表面200に直接接触している。
【0074】
第2の主面106上のコア層102の全て又は少なくとも機能的に有意な部分を被覆し、かつ、第2の主面106上のコア層102と直接接触又は一体化するのは、補助層108である。補助層108は、コア層102と同様に、熱伝達を低減するために低い熱伝導率を有する層を生成する1つ以上の材料から一般に作製され、熱暴走事象に曝されたときにブラストに耐える高い衝撃強度を有し、無機充填剤粒子を含有する無機結合剤の水性混合物であり得る。補助層108の特定の特性は、熱的強度特性及び衝撃強度特性又はコア層102を増強又は補助することができる。好適な補助層108は、例えば、無機絶縁紙、セラミック繊維、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、ケイ酸塩繊維、無機結合剤と無機粒子との水性混合物、又はこれらの任意の組み合わせから作製することができる。
【0075】
補助層108は、連続的であり途切れのない層として適用することができ、又は、横方向に、長手方向に、又は織り合わされ適用されて、コア層102上に正方形、ダイヤモンド、又は他のパターンを生成する別個のストライプで適用することができる。
【0076】
無機結合剤は、水と無機結合剤粒子との混合物を含むことができ、粒子は、懸濁状態であり、溶解されている、又は粒子の一部は懸濁状態であり、一部は溶解しているのいずれかである。無機結合剤は、好ましくは、無機コロイド粒子(例えば、シリカ又はアルミナ粒子のコロイド溶液)の溶液である。無機結合剤は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、又はケイ酸リチウム溶液でもあることができ、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムは、ほとんど又は完全に溶解されている。ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムは粉末形態であることができ、これは水中に溶解されて溶液を形成することができ、それらは予め水溶液中に溶解することができる。
【0077】
無機充填剤粒子は、好ましくは、例えば、カオリン粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、又はこれらの任意の組み合わせなどの粘土の粒子である。粘土充填剤粒子は、焼成粘土、層間剥離粘土、水洗浄粘土、表面処理粘土、又はこれらの任意の組み合わせの形態でもあり得る。無機充填剤粒子は、代替的に又は追加的に、元素金属、金属合金、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、粉砕シリカ、ヒュームドアルミナ、アルミナ粉末、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、グラスバブルズ、炭化ケイ素、ガラスフリット、ケイ酸カルシウム、又はこれらの任意の組み合わせの粒子でもあり得る。無機充填剤粒子は、水の存在下において無機結合剤(特に無機コロイド結合剤粒子)と混合されたときに、混合物にゲルを形成させたり、又は凝固させたりせずに、布地中に無機結合剤を、完全に、ほとんど又は少なくとも実質的に保持する任意の他の微粒子であってもよく、その結果、混合物は、無機繊維布地中に飽和/含浸することができない固体塊になる。無機充填剤粒子は、最大約100マイクロメートル、90マイクロメートル、80マイクロメートル、70マイクロメートル、60マイクロメートル、又は好ましくは最大約50マイクロメートルの最大サイズ(すなわち、主寸法)を有することが望ましい場合がある。
【0078】
熱バリア物品を形成するための布地としては、織物に織られ、かつ/又は編まれるのに好適な無機繊維(例えば、連続ガラス繊維、シリカ繊維、玄武岩繊維、多結晶繊維、熱処理耐熱セラミック繊維、又はこれらの任意の組み合わせ)が挙げられる。本明細書で使用される場合、布地とは、織布、編布、チョップドストランドマット、連続ストランドマット、ニードルフェルト、又は任意のタイプの布地の組み合わせを指す。本発明による布地は、同じ又は異なるタイプの繊維から作製することができる。本明細書で論じられるように、断熱性ブラスト耐性複合材料の布地は、その厚さの全て、ほとんど、又は少なくとも実質的な部分にわたって、水性混合物で飽和、浸漬、コーティング、噴霧、又は他の方法で含浸され、次いで乾燥される。無機布地の許容可能な坪量は、約200~約2000グラム/平方メートル(gsm)の範囲である。驚くべきことに、使用時に、Eガラス布地は、1200℃以上の温度に生き残ることができる。これは、Eガラスの推奨使用温度が、ほんの620℃であるという事実からすると驚くべきことである。
【0079】
いくつかの実施形態では、水性混合物が、染料、顔料粒子、IR反射顔料粒子、殺生物剤、増粘剤、pH調整剤、PH緩衝剤、及び界面活性剤などを更に含むことが望ましい場合がある。
【0080】
布地に含浸させるために使用される水性混合物は、典型的には、水、無機結合剤及び無機充填剤粒子を含むスラリーである。スラリー内の各構成成分の重量パーセントは変化し得るが、典型的には、所与のスラリーは、当該スラリーの総重量に基づいて、約20.0~約54.0重量パーセント(pbw)の水、約1.0~約36.0pbwの1つ以上の無機結合剤、及び約10.0~約70.0pbwの無機充填剤粒子を含む。より典型的には、所与のスラリーは、スラリーの総重量に基づいて、約22.0~約45.0pbwの水、約5.0~約30.0pbwの1つ以上の無機結合剤、及び約20.0~約60.0pbwの無機充填剤粒子を含む。
無機結合剤材料の粒径は、限定されないが、典型的には、無機結合剤は、約200nmの最大粒径、好ましくは約100nmの最大粒径を有する無機結合剤粒子を含む。より典型的には、無機結合剤は、約1.0~約100nmの範囲の粒径を有する無機結合剤粒子を含む。更により典型的には、無機結合剤は、約4.0~約60nmの範囲の粒径を有する無機結合剤粒子を含む。
【0081】
更に、無機充填剤粒子の粒径は、限定されないが、典型的には、無機充填剤粒子は、約100マイクロメートル(μm)の最大粒径を有する。より典型的には、無機充填剤粒子は、約0.1μm~約100μmの範囲の粒径を有する。更により典型的には、無機充填剤粒子は、約0.2μm~約50μmの範囲の粒径を有する。
【0082】
追加の層、例えば、絶縁体は、熱及びブラスト性能を改善するために、コア層102と外面との間に配置することができる。本発明における使用に好適な絶縁体は、不織繊維のウェブ、マット、スクリム、又はストリップの形態であることができる。絶縁体は、1つ以上の層を含むことができ、任意の好適な市販のセラミック繊維絶縁体を含むことができる。そのように限定されることを意図するものではないが、そのような絶縁体は、必要に応じて、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、玄武岩繊維、耐熱セラミック繊維、熱処理耐火セラミック繊維、多結晶繊維、高温生体溶解性無機繊維、又はエアロゲル系絶縁体など、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。高温接着剤は、コロイダルシリカと粘土との混合物、又はケイ酸ナトリウム若しくはケイ酸カリウムと粘土との混合物を含む耐熱性で乾燥可能な接着剤を含み得る。接着剤は、層間剥離バーミキュライト、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、二酸化チタン、タルク、又は他の微粉化金属酸化物粉末も含有し得る。接着剤は、1つ以上の有機結合剤を更に含み得る。好適な有機結合剤としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル、ウレタン、シリコーンエラストマー、及び/又はシリコーン樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の有機結合剤を添加して、グリーン強度を改善することができ、又は接着剤の耐水性を高めることができる。乾燥可能な接着剤は、IR反射顔料、グラスバブルズ若しくはセラミックバブルズ、又はマイクロ多孔質材料、例えば、エアロゲルも含有し得る。
【0083】
無機結合剤と粒子との例示的な水性混合物は、共通して所有されているPCT国際公開第2013/044012号(Dietz)に更に記載されている。他の例示的な補助層としては、CEQUIN絶縁紙、BONDO 499、Dynatron 699、又はNextel 312ガラス繊維布(全て3M Companyから市販されている)が挙げられる。
【0084】
補助層108は、コア層102上に置かれ、コア層102に接着することができ、又は補助層108が混合物である場合にスプレーコーティングすることができる。コア層102が組み立てられると、補助層108もコア層102と一体化又は混合されて、単一の層を作出し得る。
【0085】
1つ以上の任意選択の層が、コア層102の第1の表面104内に含まれ得るか、又はその上に配置され得る。そのような追加の層は、バリア物品100及び/又はバリア層を横切る結合及び熱伝導率を高める難燃性接着促進コーティング又はシーラントを含むことができる。難燃性コーティング又はシーラントは、水性シリコーンエラストマーであることができる。例としては、FIREDAM 200、防火バリア水密シーラント3000WT、及び防火バリアシリコーンシーラント2000+が挙げられ、それぞれ3M Companyから入手可能である。コーティングは、1000マイクロメートル~2000マイクロメートルの厚さで、噴霧又は塗装などによって適用することができる。任意選択的に、難燃性接着剤は、コア層102の第1の主面104及び/又は第2の主面106に適用されて、バリア物品が固定される補助層108又は表面200(図4)への付着を改善することができる。例示的な難燃性接着剤としては、9372W及びシリコーン3000WT(3M Companyから入手可能)、並びに/又は防火及び遮水テープが挙げられる。
【0086】
ブラスト及び耐熱性バリア物品100は、任意の好適な厚さを有することができる。バリア中のコア層102及び/又は他の構成要素の性質に応じて、好ましい厚さは、多くの場合、コスト、ウェブ強度、及び耐火性のファクター間のバランスを反映している。バリア物品は、100マイクロメートル~25000マイクロメートル、500マイクロメートル~12500マイクロメートル、2000マイクロメートル~5000マイクロメートルの範囲内の全厚を有することができ、あるいは、いくつかの実施形態では、100マイクロメートル、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1500、1700、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12500、15000、17000、20000、又は25000マイクロメートルより小さい、それに等しい、又はそれより大きい全厚を有することができる。
【0087】
これらの層、及び連続層は、互いに平坦に接触しているように示されている。しかしながら、バリア物品100の層は可撓性であり、層間の接触領域は平面でなくても、又は更には連続的でなくてもよいことを理解されたい。
【0088】
図3のバリア物品100は、電動ビークルの電池モジュール内の1つ以上の位置に配置することができる。典型的には、複数の電池セルは、電池コンパートメント内に構造的に位置合わせされ、固定される。電池セルは、任意の形状(例えば、円筒形又は長方形)又は大きさであり得る。ギャップは、一般に、電池セルの各々の間、及び/又は電池セルと電池コンパートメントの壁との間に存在する。バリア物品は、コンパートメントの蓋に固定するか、又は電池コンパートメントの壁上に配置することができる。
【0089】
例示的な実施形態
使用実施形態
1.再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムにおける断熱バリアとしての多層材料の使用であって、当該多層材料が、
少なくとも1つの無機布地、並びに
無機粒子若しくは無機繊維、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む、使用。
2.当該無機布地が、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、浸出及びイオン交換繊維、セラミック繊維、ケイ酸塩繊維、スチールフィラメント、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1に記載の多層材料の使用。
3.無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層が、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、セラミック繊維、多結晶繊維、非バイオ永続繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1又は2に記載の多層材料の使用。
4.無機粒子又は繊維を含む当該少なくとも1つの層が、無機紙又は無機基板を含む、実施形態1又は2に記載の多層材料の使用。
5.当該無機布地が、約0.4mm~最大約3mmの範囲の厚さを有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
6.当該無機布地が、約0.4mm~最大約1.5mmの範囲の厚さを有する、実施形態5に記載の多層材料の使用。
7.当該無機布地が、約400gsmを超える重量を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
8.無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層が、膨張性材料を更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
9.無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層が、約0.1mm~最大約20mmの範囲の厚さを有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
10.無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層が、約100gsm~最大約2500gsmの範囲の重量を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
11.無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層が、約100gsm~最大約2000gsmの範囲の重量を有する、実施形態10に記載の多層材料の使用。
12.当該多層材料が、少なくとも1つのスクリム層を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
13.当該多層材料が、約0.5mm~最大約23mmの範囲の総厚を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
14.当該多層材料が、当該少なくとも1つの無機布地と、無機粒子又は無機繊維を含む当該少なくとも1つの層との間に、有機又は無機接着剤の層を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の多層材料の使用。
15.少なくとも1つの電池セル及び多層材料を有する再充電可能な電気エネルギー貯蔵システムであって、当該多層材料が、断熱バリアとして使用され、
少なくとも1つの無機布地、並びに
無機粒子若しくは無機繊維、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの層を含む、システム。
16.無機布地が少なくとも1つの電池セルに面するように多層材料が当該システム中に配置されている、実施形態15に記載の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
17.当該多層材料が、当該少なくとも1つの電池セルと当該貯蔵システムの蓋との間に配置されている、実施形態15又は16に記載の再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム。
18.複数の繊維又は難燃性発泡体を含有するコア層と、
当該コア層上に配置された、又は当該コア層内に一体化された、補助層と、を含む、熱バリア物品であって、
当該熱バリア物品が、当該トーチ及びグリット試験の少なくとも1サイクルを生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している、熱バリア物品。
19.当該トーチ及びグリット試験が、
当該熱バリア物品の露出面を約600℃~最大約1800℃、又は約800℃~最大約1400℃の範囲の高温に少なくとも5秒間供することと、
当該露出面が依然として当該高温に供されている間、当該露出面を、約60~約200グリット(例えば、80又は120グリット)の範囲のサイズを有する金属酸化物粒子媒体のブラストに少なくとも10秒間供することと、を含む少なくとも1サイクルを実施することを含み、当該粒子媒体が、約25~約50psiの範囲の圧力で放出される、実施形態18に記載の熱バリア物品。
20.当該露出面が、温度源から約44.5mm(1.75インチ)に配置されている、実施形態19に記載の熱バリア物品。
21.当該露出面が、当該放出された粒子媒体の供給源から約44.5mm(1.75インチ)に配置されている、実施形態19又は20に記載の熱バリア物品。
22.各サイクルが、当該ブラスト後、当該熱バリア物品の露出面を、約600℃~最大約1800℃、又は約800℃~最大約1400℃の範囲の温度に、少なくとも5秒間供することも含む、実施形態19~21のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
23.当該熱バリア物品が、トーチ及びグリット試験の1~12(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)サイクルの範囲を生き残るか又は耐えるよう、作用可能に適合している、実施形態19~22のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
24.トーチ及びグリット試験の各サイクルが、露出面にわたって複数の位置で実施される、実施形態19~22のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
25.トーチ及びグリット試験の1サイクルのみが、露出面にわたって複数の位置で実施される、実施形態19~22のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
26.トーチ及びグリット試験の各サイクルが、露出面上の中心位置でのみ実施される、実施形態19~22のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
27.トーチ及びグリット試験の1サイクルのみが、露出面上の中心位置でのみ実施される、実施形態19~22のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
28.当該複数の繊維が、多結晶セラミック繊維、Eガラス繊維、Rガラス繊維、ECRガラス繊維、玄武岩繊維、又はケイ酸塩繊維を含む、実施形態19~27のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
29.当該難燃性発泡体が、メラミン又はポリウレタンを含む、実施形態18~28のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
30.当該補助層が、無機粒子を含有する無機結合剤コーティングを含む、実施形態18~29のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
31.当該熱バリア物品が、約0.5mm~約10.0mmの範囲の厚さを有する、実施形態18~30のいずれか1つに記載の熱バリア物品。
32.実施形態18~31のいずれか1つに記載の熱バリア物品によって少なくとも部分的に囲まれた少なくとも1つの電池セル又は電池アセンブリを含む、電動ビークルの電池コンパートメント。
33.当該電池セル又は電池アセンブリが、電動ビークルに電力を供給するためのものである、実施形態32に記載の電池コンパートメント。
34.電動ビークルの電池アセンブリにおける熱暴走事象の発生を停止又は少なくとも減速させる方法であって、当該方法が、
電動ビークルの電池アセンブリの少なくとも1つの電池セルを、実施形態18~31のいずれか1つに記載の熱バリア物品で少なくとも部分的に囲むことを含む、方法。
35.熱バリア物品が、電動ビークルの電池アセンブリにおける熱暴走事象の発生を停止又は少なくとも減速することができるかどうかを評価する方法であって、当該方法が、
当該熱バリア物品の露出面を約600℃~最大約1800℃、又は約800℃~最大約1400℃の範囲の高温に少なくとも5秒間供することと、
当該露出面が依然として当該高温に供されている間、当該露出面を、約60~約200グリット(例えば、80又は120グリット)の範囲のサイズを有する金属酸化物粒子媒体のブラストに少なくとも10秒間供することと、を含む少なくとも1サイクルを実施することを含み、当該粒子媒体は、約25~約50psiの範囲の圧力で放出される、方法。
36.当該露出面が、当該温度源から約44.5mm(1.75)インチに配置されている、実施形態35に記載の方法。
37.当該露出面が、当該放出された粒子媒体の供給源から約44.5mm(1.75インチ)に配置されている、実施形態35又は36に記載の方法。
38.各サイクルが、当該ブラスト後、当該熱バリア物品の露出面を、約600℃~最大約1800℃、又は約800℃~最大約1400℃の範囲の温度に、少なくとも5秒間供することも含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
39.当該方法が、1~12(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12)サイクルの範囲で実施することを含む、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
40.各サイクルが、当該露出面にわたって複数の位置で実施される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
41.1つのサイクルのみが、当該露出面にわたって複数の位置で実施される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
42.各サイクルが、当該露出面上の中央位置でのみ実施される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
43.1サイクルのみが、当該露出面上の中央位置でのみ実施される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1~6(EX1~EX6)及び比較例1(CE1)
サンプル構成を表2に示す。実施例1~3の多層ラミネートは、3M Display Mount spray接着剤を布地に噴霧することによって調製した。繊維マットを布地の上に置き、次いで4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延した。比較例1を、1.8mmサイズの噴霧ヘッドを備えた3M Accuspray ONE Spray Gunシステムを使用して、Micashield D338Sでコーティングした。サンプルを80℃で30分間乾燥した。マイカ層は、約30gsmの乾燥重量を有した。
【0092】
実施例4~6の多層ラミネートは、#30メイヤーロッドを使用して、ドローダウンし、ケイ酸ナトリウム接着剤をCEQUIN紙材料上に適用することによって調製した。次いで、無機布地層を上に置き、次いで、4.54kg(10ポンド)のローラーで圧延した。次いで、多層ラミネートを82℃(180°F)で5分間乾燥させた。実施例5は、約0.95mmの総ラミネート厚さ及び1103gsmの総ラミネート坪量を有した。実施例6は、約0.94mmの総ラミネート厚さ及び1057gsmの総ラミネート坪量を有した。比較例1は、約1.23mmの総ラミネート厚さ及び1391gsmの総ラミネート坪量を有した。サンプルを表3で特定した試験に供し、結果も表3に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
プリズム状Liイオンセルの熱暴走は、基本的に、3つの相に分離され得る。
1.バーストプレートが開いたときの爆発性通気(120Ahプリズム状セルで6~8バール)、即時温度は約700℃まで増加する。
2.高圧ジェットガス通気及び高温(典型的には600~700℃で約30~50秒)での粒子ブローアウト。
3.静かなガス通気/発光炎。
【0095】
釘刺し試験:
本発明による多層材料を試験するために使用された釘刺し試験は、以下のように実施された。釘刺し試験は、高容量(120Ah)プリズムLiイオン電池セルで行った。セル内の熱を保つために、1つの単一Liイオンセルの両側を断熱ハードプラスターFERMACEL(市販のプレート)で覆った。このサンドイッチ構造(FERMACELLプレート-電池セル-FERMACELLプレート)は、2枚の強力な鋼板の間に、巨大なワークベンチに固定された。鋼釘(直径5mmのX15CrNiSi25-21釘)は、25mm/分の速度で、鋼板の穴から100%帯電したセルに貫通する。
【0096】
調査されるバリア材料を、寸法200×200×1.5mmのアルミニウムプレートに固定した。このプレートは、画定された距離(12mm及び20mm)でセルの上部の上に配置した。バリア材料の効率は、バリア材料を有するアルミニウムプレートの下方及び上方のタイプK温度センサで温度を測定することによって定量化された。プレートの上面の上に、裏側からの放射を減少させ、炎が向きを変えることによる加熱を避けるために、PERTINAXフェノールシートで作製された熱シールドが配置された。
【0097】
釘が電池セルの内側のセパレータを貫通するとき、内部ショートカットは、熱暴走、続いて、電解質の温度上昇及び分解を開始する。セル内の圧力がいくつかのバーの限界を超えた後、バーストプレートブレーキ及び約600~750℃の高温ガス及び粒子が、高圧下で約45~60秒間吹き出される。更に4~5分間、高温ガスが減圧下で放出される。
【0098】
サンドブラスト試験
サンドブラスト試験について、市販のサンドブラストキャビネットを使用した。サンプル材料を寸法100x50mmの金属シートにマウントした。寸法80×45mmのサンプルを、金属シートに対して、全ての側面上にマスキングテープで固定した。キャビネット内の固定具は、ノズルの前の画定された位置にサンプルを保持した。圧縮空気を使用して、試験片が直径4±1mmの面積で損傷するまで、サンドブラスト媒体を標的に加速させた。研磨時間(秒(s))は、粒子充填空気に対するサンプルの耐性の尺度であった。サンプル材料は、試験前に700℃で5分間、実験室キルン(Nabertherm GmBH(Lilienthal,Germany)のL24/11/P330)において、熱処理された又は熱処理されなかったかのいずれかであった。サンドブラスト試験条件は、以下の通りであった。ノズルまでのサンプル距離65mm、ノズル直径4mm、粒径70~110マイクロメートルを有するタイプ211ガラスビーズを媒体として使用し、衝撃角は90°~100°であった。
【0099】
引張試験
ISO4606及びASTM D-828の引張試験方法を使用した。
【0100】
火炎試験:
UL94 HB燃焼性試験の方法に従った。材料がパンクしていない場合、サンプルは試験に合格した。
【0101】
実施例3及び5では、2054℃/3730°Fの空気中の火炎温度を提供するMAP Pro燃料シリンダーを備えているBernzomaticトーチTS-4000トリガを用いて、トーチ火炎試験Aを行った。試験サンプルは、試験中にサンプルを安定化させるのに役立つサンプルの底部に取り付けた金属クリップを用いて、火炎から2.75インチ(7cm)の固定距離でマウントし、10分の連続時間、火炎に曝した。火炎から2.75インチ(7cm)の固定距離で測定された温度は、約1000℃であった。
【0102】
2054℃/3730°Fの火炎から1インチ(2.54cm)の固定距離でサンプルを試験することによって、実施例5、6、及び7について、追加のより高い温度でトーチ火炎試験Bを行った。
【0103】
コンスタントギャップ熱バリア試験(CGTBT)
サンプルの片側を600℃の温度に曝した。測定プローブ(タイプKニッケル-合金熱電対)をサンプルの他方の側に接続して温度を測定した。各サンプルを1.6mmの一定のギャップに圧縮し、試験を10分間行った。セラミックマット(メーカー/モデル)を試験し、対照として使用した。
【0104】
トーチ及びグリット試験(Torch and Grit Test、T&GT)
各サンプルを、VHBテープ(3M Company)によって厚さ0.7mmの亜鉛メッキ鋼又はステンレス鋼シートのいずれかにマウントした。サンプルは、Bethlehem Apparatus Company Inc(Hellertown,PA,USA)から入手したChampion Bench水素トーチバーナーのノズルから、図5に示したように44.5mm(1.75インチ)に配置した。熱電対(TC0)は、バーナのノズルから31.8mm(1.25インチ)に配置し、別の熱電対は当該鋼シートの裏側の中心に置いた。ブラスターガンには、120グリットの酸化アルミニウムの非成形媒体を装填し、サンプルから同じ距離(44.5mm)でトーチのノズルと整列させた。Champion Bench Burnerのトーチを1200℃に調整した。次いで、媒体ブラスターガンを172.4kPa(25psi)又は344.7kPa(50psi)で起爆させた。サンプルは、1)標的位置において、10秒の活性ブラスト時間及び5秒の不活性ブラスト時間で各々15秒間続く12のブラストサイクルに曝し、又は2)38.1mm(1.5インチ)の間隔を開けた3つの標的位置において、5秒の不活性ブラスト時間、続いて10秒の活性ブラスト時間、次いで5秒の非活性ブラスト時間の20秒続く1つのブラストサイクルのいずれかに曝した。バリア物品の層にバーンスルー又は媒体ブラストのいずれかによって引き起こされたホールが視認された場合、サンプル試験を停止した。
【0105】
トーチ&グリッド試験手順の追加の説明
1.定義/目的
この試験手順は、それらを高温火炎及び加圧グリットブラストに一定時間にわたって曝すことによって、材料の性能を評価する方法を説明する。
【0106】
2.安全
2.1 3Mラボのための適切なPPEを常に使用すること。安全ガラス、ダストマスク、熱い材料を取り扱うための適切な手袋、及び難燃性ラボコート。
【0107】
3.定義及び用語
3.1 T&GT-トーチ&グリッド試験
【0108】
4.サンプル情報及び調製
4.1 102mm×102mm(4インチ×4インチ)~203mm×254mm(8インチ×10インチ)の範囲の最小サンプルサイズ
4.2 識別のために試験側のサンプルの上部にラベルを付ける。
4.3 サンプルをマウントねじ(mounting screws)上にレストさせ、上で保持させるように、例えば、3M VHBテープ又はクランプシステムを使用して、鋼(例えば、ステンレス鋼)シートバックプレート(例えば、厚さ0.7mm)にマウントする。
4.4 マウント前に又はマウントされ試験される準備が整ったら、サンプルの写真を撮る。
4.5 試験ログでサンプルの記録をとる。
【0109】
5.試験装置/必要な材料
5.1 Bethlehem Champion Torch(「Special 3M」として列挙されている)。
5.2 レギュレータ、120グリット酸化アルミニウムの非成形媒体を有するハンドヘルド式研磨媒体ブラストガン。
5.3 電気タイマー/ソレノイドアセンブリユニット。
5.4 水素ガスボトル、レギュレータ、逆火防止器(flashback arrestor)、ホース。
5.5 酸素ガスボトル、レギュレータ、逆火防止器、ホース。
5.6 B型及びK型熱電対(1350℃以下の温度の測定に好適なK型ニッケル合金熱電対又は1800℃以下の温度の測定に好適なB型白金/ロジウム合金熱電対を使用することができる)。
5.7 0.7mm厚のサンプルを、鋼(例えば、亜鉛メッキ鋼又はステンレス鋼)シートプレートにマウントする。
5.8 水平スライドサンプルアセンブリを有するT&GT 8020支持固定具。
5.9 最低2Hzで温度を記録するためのデータ取得システム。
【0110】
6.機器の設定
6.1 T&GT固定具(トーチ、レギュレータを有するハンドヘルド式媒体ブラストガンを含む)、酸素及び水素ガスボトルを火災試験室に移動させる。
6.2 適切なレギュレータ、逆火防止器、及びホースを各予期されるガスボンベに設置する。適切なガスホースをトーチに接続する。
6.3 次のように熱電対(TC)の位置を確認する(例えば、図5及び6を参照されたい)。
6.3.1 B型、直接に火炎リング中にあってトーチ面から1インチ。
6.3.2 K型、トーチ火炎リングの外側にオフセットされたトーチ面から1インチ。
6.3.3 K型、トーチ火炎の中心に可能な限り近く、鋼シートプレート上に配置した。
6.3.4 あるいは、熱電対の全てがK型であることができる。
6.4 熱電対をデジタル取得(DAQ)システムに接続する。システムは、取得されたデータを収集及び格納するためのプログラミングロジック及びメモリ(すなわち、コントローラ及びユーザーインターフェースを有するコンピュータ)からなっている。
6.5 試験方法1)のトーチ面までのサンプル距離が約1.75インチであることを確認する。図5を参照されたい。あるいは、試験方法2)の場合、トーチ面に対する鋼シートプレートの距離が約2.5インチであることを確認する。これにより、サンプルの平均厚さはトーチ面に対しておよそ約2.375インチとなろう。
6.6 研磨レベルをチェックし、必要に応じて媒体ブラストガンを満たす。
6.7 電気タイマー/ソレノイドアセンブリユニットを位置に移動させる。
6.8 圧縮空気源から電気タイマーソレノイドの入口に空気ラインを接続する。
6.9 電気タイマーソレノイドの出口からハンドヘルド媒体ブラストガンのレギュレータに空気ラインを接続する。
6.10 媒体ブラストレギュレータを所望の圧力(すなわち、172.4kPa(25psi))であることを確認及び/又は設定する。
【0111】
7.試験手順
7.1 T&GT試験ログを開き、必要なサンプル情報を記録する。
7.2 図6に示すように、サンプルは、鋼シートプレートに事前にマウントすることができ、例えば、2本のマウントねじはサンプルの中心に位置し、サンプルの上部に保持される。
7.3 マウント前又はマウントされている間に、サンプルの写真を撮る。写真に表示される面上には書き込まれたID情報を有しているべきである。
7.4 サンプルとバッキングシートプレートを水平スライド式サンプルアセンブリに配置し、DAQに接続する。
7.5 DAQを起動し、熱電対を接続し、正しく機能していることを確保する。
7.6 研磨レベルをチェックし、必要に応じて媒体ブラストガンを満たす。
7.7 圧力がレギュレータバルブゲージに記録されるまで、水素及び酸素ボトルレギュレータバルブをゆっくりと開ける。バルブは、完全な1回転を超えて開けるべきではない。
7.8 水素(最大5psi)及び酸素(最大10psi)ガスの両方のためのライン圧力値をチェックする。必要に応じて調整し、上に示した最大値を超えない。
7.9 トーチ1/2回転で水素フローバルブを開け、トーチ火炎を発火させる。
7.10 酸素フローバルブを1/2回転開き、水素フローバルブを1/4回転未満迅速に戻す。
7.11 それらのそれぞれのライン圧力計で、水素圧が3psiに設定され、酸素圧が5psiに設定されていることを確保するためにチェックする。
【0112】
代替的なトーチ及びグリットプロセスA(試験方法2)
7.12 トーチの水素フローバルブを使用して、トーチ面の真正面にあるK型熱電対によって測定される火炎温度を1200℃+/-15~20℃に調整する。
7.13 必要な温度が得られ、安定したら、サンプルを最初のトーチ&グリット媒体ブラスト位置にスライドさせ、5秒間保持する。
7.14 5秒間保持した後、電気タイマーアセンブリの開始ボタンを押すことによって、媒体ブラストサイクルを開始させる。
7.14.1 媒体ブラストサイクルの標的回数は3である。
7.14.2 サイクルは、5秒のトーチ火炎曝露、続いて10秒の媒体ブラスト、次いで更に5秒のトーチのみによる曝露からなり、総サイクル時間は20秒である。
7.14.3 各20秒のサイクル後に、サンプルは、図6に示したパターンに従って水平方向に38.1mm(1.5インチ)移動させる。
【0113】
代替的なトーチ及びグリットプロセスB(試験方法1)
7.15 B型熱電対によって測定されるおおよその1150℃の温度に火炎を調整する。
7.16 サンプルを挿入し、1300℃を超える場合はB型熱電対又は1300℃未満の場合はK型熱電対を使用して温度を監視する。目標温度は1200℃±15~50℃であり、水素フローバルブ(トーチ上のバルブ)を再調整して、必要な温度を得る。サンプルの過熱が発生しないように注意する。
7.17 必要な温度が得られて安定したら、B型熱電対を使用して温度を測定する場合、固定具中でB型熱電対を上に移動させて、媒体ブラストに曝されないようにする。k型熱電対で測定する場合、それは、媒体ブラスト中の位置に残すことができる。
7.18 電気タイマーアセンブリの開始ボタンを押すことによって、媒体ブラストサイクルを開始する。
7.18.1 媒体ブラストサイクルの標的回数は12である。
7.18.2 1サイクルは、10秒の媒体ブラスト時間と5秒の非媒体ブラスト時間でからなり、総サイクル時間は15秒である。
媒体ブラスト中、水素トーチを冷却する空気圧体積により、温度は、約200℃~400℃の範囲で低下する可能性がある。より高い温度低下は、より高い圧力媒体ブラストによって見られ得る。
【0114】
代替的なトーチ及びグリットプロセスA(試験方法2)
7.19 3回のトーチ&グリッド媒体ブラストサイクルが完了した後、最後の媒体ブラスト位置で、ランプ温度は約650℃まで低下させ、10分間保持する。
7.20 試験の完了
【0115】
代替的なトーチ及びグリットプロセスB(試験方法1)
7.21 試験の完了は、以下のようにして決定する。
7.21.1 初期の火炎曝露後に、材料は、燃焼及び/又は劣化する。
7.21.2 穴が、サンプルから鋼シートバックプレートまでバーンスルーされている。
7.21.3 サンプル材料を穴がバーンスルーすることなく12の媒体ブラストサイクルの完了。
7.21.4 試験方法2の場合、3回の媒体ブラストに続いて、最後の媒体ブラスト位置で650℃の温度を10分間保持する。
【0116】
7.22 試験完了時に、サンプルが冷却する時間をとる
7.23 冷却されたら、シートプレートからサンプルを取り出し、サンプルの前及び後ろの写真を撮り、適切に記録したビニール袋(サンプルID、日付、及びテストデータファイルのタイムスタンプ)に入れる。
7.24 試験ログに試験に関する必要な注記を作成する。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例5は、より低い温度のトーチ火炎試験Aには耐えたが、より高い温度のトーチ火炎試験Bには生き残らなかった。しかしながら、布地層が無機ベースの紙層(CEQUIN)の両側にあるように追加の布地層を加えると、実施例6のラミネートがはるかに高い温度のトーチ火炎B試験を合格できることは予想外であった。
【0119】
多種多様な電池セル、電池モジュール、及び電池セルパック設計により、様々な性能特性を有する材料は、それらが設計にどのように組み込まれるかに応じて適用可能であり得る。
【0120】
【表4】
【0121】
実施例7
共通して所有されている米国特許公開第2020/0002861号(de Rovereら)の実施例1に従って組み立てられた薄い多結晶セラミック不織布ニードルドマットのコア層(137mm×152mm)は、共通して所有されているPCT国際公開第2013/044012号(Dietz)の実施例1に従って組み立てられた46重量%の2327及び54重量%のPOLYPLATE Pから作製された無機ペーストの補助層でコーティングされた。コーティングを有するマットを、バッチ式オーブンにおいて110℃で乾燥させた。コーティングを一方の表面に適用した。マットの全厚を貫通しなかった。マットの坪量は442gsmであり、無機コーティングの乾燥坪量は2651gsmであり、最終の複合材の総坪量は3093gsmであった。複合材の厚さは4.2mmであった。複合材の密度は、0.736g/cc(密度=坪量/厚さ)と計算された。サンプルは、344.7kPa(50psi)でT&GTを受け、120秒後(12サイクル×10秒のブラスト)に破損は認められなかった。
【0122】
実施例8
BONDO 499マット(3M Company)のコア層(152mm x 152mm)を、600℃で5分間熱洗浄し、共通して所有されているPCT国際公開第2013/044012号(Dietz)の実施例1に従って組み立てられた46重量%の2327及び54重量%のPOLYPLATE Pで作製された無機ペーストの補助層でコーティングした。コーティングを有するマットを、バッチ式オーブンにおいて115℃で乾燥させた。そのコーティングをマットの厚さ全体に押し込み、できるだけ多くの繊維をコーティングした。底部側は、上側よりも無機ペースト含有量が少なかった。乾燥前に、シリカ繊維布(300gsm)の層をコーティングの表面に適用して、乾燥中のコーティングの表面上の亀裂線(cracking lines)の形成を制限した。乾燥後にシリカ布を除去した。チョップドガラス繊維ストランドマットの坪量は268gsmであり、無機ペーストの乾燥坪量は2606gsmであり、複合材の坪量は2874gsmであった。複合材の厚さは1.97mmであった。複合材の密度は1.458g/ccであると計算された。次いで、サンプルは、344.7kPa(50psi)でT&GTを受け、120秒後(12サイクル×10秒のブラスト)に破損は認められなかった。
【0123】
実施例9~30(EX9~EX30)
別段の記載がない限り、組み立てたサンプルは203mm×203mm(8インチ×8インチ)であった。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
スラリーは、共通して所有されているPCT国際公開第2013/044012号(Dietz)に記載されている手順によって表5、6、及び7に示した配合成分を使用して調製した。各スラリーにおいて、高剪断ミキサーを使用して、無機材料を液体成分に添加して、以下の表8に示した所与のスラリーを形成した。
【0128】
【表8】
【0129】
次いで、各布地サンプルを所与のスラリーで含浸し、続いて、以下の表9に示した乾燥/熱処理手順によって乾燥させた。乾燥後、サンプルをラテックスコーティング[Wacker Chemie AG(Munich,Germany)から入手したVINNAPAS EAF 68又はHYCAR 26172の商品名でLubrizol(Wickliffe,OH,USA)から入手した26172]で特定の温度で熱処理して、熱バリア物品の強度を増加させた。いくつかの実施例では、サンプルは、ラテックスコーティングで処理しなかった(すなわち、コーティングなし)。各サンプルについて、T&GTを行い、その結果を表9に示す。表9において、(x#)は、層がそれ自体に堆積されたことを示し、xは2又は3である。
【0130】
【表9】
【0131】
実施例31
BASOTECT W(BASF)のコア層に、0.51mmの補助層、540gsmのCEQUIN(3M Company)及び0.44mm,430gsmのTG430布地[HKO Isolier-und Textiltechnik GmBH(Oberhausen,Germany)から入手した]をラミネートした。バリア物品の厚さは約5.8mm~6.0mmであった。サンプルはCGTBTを受け、低温側に記録された温度はXX℃であった。サンプルサイズは203mm×254mm(8インチ×10インチ)であった。次いで、サンプルは、172.4kPa(25psi)でT&GTを受け、10秒の活性ブラスト時間後に3つの標的位置の各々に破損を認めた。
【0132】
実施例32
BASOTECT W(BASF)のコア層に、44重量%2327及び26重量%のPOLYPLATE P、15重量%のHG90粘土、及び15重量%のR900で作製された無機ペーストでコーティングされたe-ガラス1の補助層をラミネートし、共通して所有されているPCT国際公開第2013/044012号(Dietz)の実施例1に従って組み立てた。複合材の厚さは、約5.8~6.3mmであった。サンプルサイズは203mm×254mm(8インチ×10インチ)であった。次いで、サンプルは、172.4kPa(25psi)でT&GTを受け、10秒の活性ブラスト時間後に3つの標的位置の各々に破損を認めた。
【0133】
比較例2
Cogebi(Dover,NH,USA)から入手した厚さ2.0mmで4000gsmのメイク/モデル雲母板サンプル(CGTBTにかけ、その密度は2.0g/ccと計算され、低温側で記録された温度は421℃であった。次いで、サンプルは、172.4kPa(25psi)でT&GT手順を受け、7回目のブラストで板に穴があいた。
【0134】
比較例3
Cogebiから入手した厚さ0.8mmのメイク/モデル雲母板サンプル(172.4kPa(25psi)でT&GT手順にかけ、密度は2.0g/ccであると計算された)、穴は、第2のブラスト中に板を通して穿孔された。
【0135】
比較例4
Cogebiから入手した厚さ0.8mmのメイク/モデル雲母板サンプル(344.7kPa(25psi)でT&GT手順にかけ、密度は2.0g/ccであると計算され、穴は、第1のブラスト中に板を通して穿孔された。
【0136】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】