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特表2023-510403指示可能なパラメトリック音響測深機、及び水中環境の海底下の一部を特徴付けるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】指示可能なパラメトリック音響測深機、及び水中環境の海底下の一部を特徴付けるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/42 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01S15/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543458
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2021050850
(87)【国際公開番号】W WO2021144444
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000464
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508013962
【氏名又は名称】イクスブルー
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】モスカ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】マット ギヨーム
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB07
5J083AC30
5J083AD06
5J083AD15
5J083AE06
5J083AF16
5J083AF18
5J083BA16
5J083BB12
5J083BC01
5J083BD05
5J083CA02
5J083CA12
5J083CB01
5J083DC05
(57)【要約】
本発明は、a)その放射アンテナ(10)のトランスデューサを駆動して、第1及び第2の周波数を有する第1及び第2の音響波を放射し、これらの波は、水中環境(3)の海底(4)のポイント(P1)に向けられた重ね合わせ軸(z)に沿って互いに重ね合わされており、b)その周波数が第1の周波数と第2の周波数の差に等しいエコー信号を取得する、ように構成された音響測深機に関し、音響測深機は、重ね合わせ軸の方向を変更しながら、ステップa)及びb)を複数回実行し、取得されたエコー信号に基づいて、前記ポイントの各々の下の水中環境の海底下(40)の内容物を表す画像を判定する、ように構成されている。本発明はまた、水中環境の海底下の一部を特徴付けるための関連方法に関する。


【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメトリック音響測深機(1;1’)であって、
-複数のトランスデューサ(11、12)を含む送信アンテナ(10;10’)と、
-少なくとも1つの受信機(20)と、
-以下のステップ、すなわち、
a)水中環境(3)で、第1の周波数(f1)を有する第1の音響波及び第2の周波数(f2)を有する第2の音響波を送信するように前記トランスデューサ(11、12)を駆動することであって、前記第1の波及び前記第2の波が、前記水中環境(3)の海底(4)のポイント(P1、P2、P3)に向けられた重ね合わせ軸(z)に沿って互いに重ね合わされ、各トランスデューサ(11、12)が送信信号(s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3)によって駆動され、前記異なるトランスデューサ(11、12)の前記異なる送信信号が、互いに対して所定の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を有する、ことと、
b)ステップa)において行われた前記送信に応じて、前記受信機(20)によってピックアップされた、前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との間の差に等しい周波数のエコー信号(s)を取得することと、を実行するように構成され、
更に、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記重ね合わせ軸(z)の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行し、
c)ステップb)の異なる実行中に取得された前記エコー信号(s)に基づいて、前記海底の前記ポイント(P1、P2、P3)の各々の下方の前記水中環境(3)の海底下(40)の内容物を表す2次元画像又は3次元画像(IM)を判定する、ように構成された、駆動及び取得システム(30;30’)と、を備え、
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、ステップa)において、
-前記トランスデューサ(11、12)の第1のグループ(13;13’)の各トランスデューサ(11)を、前記第1の周波数(f1)で経時的に変化する第1の送信信号(s1,1、s1,2、s1,3)によって駆動し、この第1のグループの前記トランスデューサ(11)が前記第1の音響波を送信し、前記異なる第1の送信信号(s1,1、s1,2、s1,3)が互いに対して所定の第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)を有し、
-前記トランスデューサ(11、12)の第2のグループ(14;14’)の各トランスデューサ(12)を、前記第2の周波数(f2)で経時的に変化する第2の送信信号(s2,1、s2,2、s2,3)によって駆動し、この第2のグループの前記トランスデューサ(12)が前記第2の音響波を送信し、前記異なる第2の送信信号(s2,1、s2,2、s2,3)が、互いに対して所定の第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を有し、
-ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記重ね合わせ軸(z)の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)及び/又は前記第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を変化させる、ように構成されており、
前記トランスデューサ(11、12)が、いくつかの行及びいくつかの列の行列を形成するように配置され、前記トランスデューサ(11、12)が、それぞれ、前記行列の行と列との間の異なる交点に配置され、
前記第1及び第2の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)が、前記第1及び第2の音響波がそれぞれ、第1のコリメートビーム(W1’)及び第2のコリメートビーム(W2’)として送信され、各々が前記重ね合わせ軸(z)を中心とするものであり、
前記第の1グループ(13’)の前記トランスデューサ(11)が、前記行列のいくつかの別個の領域を占有し、前記第2のグループ(14’)の前記トランスデューサ(12)の1つ以上が、前記領域の任意の2つの間に挿入されており、
前記第1のグループ(13’)の各トランスデューサ(11)が、最も近く隣接するものに対して、前記第2のグループ(14’)のトランスデューサ(12)を有する、パラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項2】
前記トランスデューサ(11、12)のいくつかが各々、圧電材料で作成された要素、並びに前記圧電材料要素に圧縮応力を印加する機械デバイスを含み、前記圧縮応力が7バールよりも高い、請求項1に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項3】
-各トランスデューサ(11、12)が、前記水中環境(3)で50キロヘルツ超の周波数で音響波を送信するように適合されており、
-前記受信機(20)が、その周波数が0~30キロヘルツの受信帯域幅で構成された音響波をピックアップして電気形態に変換するように適合されており、
-前記駆動及び取得システム(30;30’)が、前記第1及び第2の周波数(f1、f2)が各々50キロヘルツ超になるように構成され、且つ前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との差が前記受信帯域幅に含まれ、30キロヘルツ未満になるように構成されている、請求項1又は2に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項4】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が、ステップa)の1回の実行から次の実行までの、前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との間の差を変化させるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項5】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、
ステップa)の各実行後、ステップa)において行われた前記送信に応じて、前記トランスデューサ(11、12)の少なくとも1つによってピックアップされた、前記第1の周波数(f1)又は前記第2の周波数(f2)に等しい周波数の追加のエコー信号を取得し、
-前記追加のエコー信号に基づいて、前記水中環境(3)の一部を表す画像(IM’)を判定する、ように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項6】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、ステップa)において、前記重ね合わせ軸(z)と前記水中環境の海底(4)に対して垂直な軸(z4)との間に形成される入射角が限界入射角よりも大きくなるように、前記トランスデューサ(11、12)を駆動するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項7】
パラメトリック音響測深機(1;1’)であって、
-複数のトランスデューサ(11、12)を含む送信アンテナ(10;10’)であって、前記送信アンテナ(10)が2つのアームのクロス形状を有し、前記トランスデューサ(11)のいくつかが前記アンテナ(10)の第1のアーム(13)に沿って次々に一列に配置されており、前記アンテナの他のトランスデューサ(12)が、前記アンテナ(10)の第2のアーム(14)に沿って次々に一列に配置されている、送信アンテナ(10;10’)と、
-少なくとも1つの受信機(20)と、
-以下のステップ、すなわち、
a)水中環境(3)で、第1の周波数(f1)を有する第1の音響波及び第2の周波数(f2)を有する第2の音響波を送信するように前記トランスデューサ(11、12)を駆動することであって、前記第1の波及び前記第2の波が、前記水中環境(3)の海底(4)のポイント(P1、P2、P3)に向けられた重ね合わせ軸(z)に沿って互いに重ね合わされ、各トランスデューサ(11、12)が送信信号(s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3)によって駆動され、前記異なるトランスデューサ(11、12)の前記異なる送信信号が、互いに対して所定の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を有する、ことと、
b)ステップa)において行われた前記送信に応じて、前記受信機(20)によってピックアップされた、前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との間の差に等しい周波数のエコー信号(s)を取得することと、を実行するように構成され、
更に、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記重ね合わせ軸(z)の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行し、
c)ステップb)の異なる実行中に取得された前記エコー信号(s)に基づいて、前記海底の前記ポイント(P1、P2、P3)の各々の下方の前記水中環境(3)の海底下(40)の内容物を表す2次元画像又は3次元画像(IM)を判定する、ように構成された、駆動及び取得システム(30;30’)と、を備える、パラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項8】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が、ステップa)において、
-前記トランスデューサ(11、12)の第1のグループ(13;13’)の各トランスデューサ(11)を、前記第1の周波数(f1)で経時的に変化する第1の送信信号(s1,1、s1,2、s1,3)によって駆動し、この第1のグループの前記トランスデューサ(11)が前記第1の音響波を送信し、前記異なる第1の送信信号(s1,1、s1,2、s1,3)が互いに対して所定の第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)を有し、
-前記トランスデューサ(11、12)の第2のグループ(14;14’)の各トランスデューサ(12)を、前記第2の周波数(f2)で経時的に変化する第2の送信信号(s2,1、s2,2、s2,3)によって駆動し、この第2のグループの前記トランスデューサ(12)が前記第2の音響波を送信し、前記異なる第2の送信信号(s2,1、s2,2、s2,3)が、互いに対して所定の第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を有し、
ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記重ね合わせ軸(z)の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)及び/又は前記第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を変化させる、ように構成されている、請求項7に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項9】
-前記第1のグループの前記トランスデューサ(11)が前記アンテナ(10)の前記第1のアーム(13)を形成し、前記第2のグループの前記トランスデューサ(12)が前記アンテナ(10)の前記第2のアーム(14)を形成し、
-前記第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)が、第1のビーム(W1)が第1の送信面(Pl1)に対して垂直な方向に狭い断面を有し、前記第1の送信面(Pl1)に対して平行に延びるときに、前記第1の音響波が前記第1の送信面(Pl1)に対して平行に伝播するものであり、
-前記第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)が、第2のビーム(W2)が第2の送信面(Pl2)に対して垂直な方向に沿って狭い断面を有し、前記第2の送信面(Pl2)に対して平行に延びるときに、前記第2の音響波が前記第2の送信面(Pl2)に対して平行に伝播するものであり、
前記重ね合わせ軸(z)が、前記第1の送信面(Pl1)と前記第2の送信面(Pl2)との間の交点に配置され、
前記駆動システム(30)が、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、
-前記アンテナ(10)の前記第1のアーム(13)に対して垂直な第1のスキャン軸(y)を中心に前記第1の送信面(Pl1)を旋回させるために、前記第1の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3)を変化させ、及び/又は
-前記アンテナ(10)の前記第2のアーム(14)に対して垂直な第2のスキャン軸(x)を中心に前記第2の送信面(Pl2)を旋回させるために、前記第2の遅延(Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を変化させる、ように構成されている、請求項8に記載のパラメトリック音響測深機(1)。
【請求項10】
前記トランスデューサ(11、12)のいくつかが各々、圧電材料で作成された要素、並びに前記圧電材料要素に圧縮応力を印加する機械デバイスを含み、前記圧縮応力が7バールよりも高い、請求項7~9のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項11】
-各トランスデューサ(11、12)が、前記水中環境(3)で50キロヘルツ超の周波数で音響波を送信するように適合されており、
-前記受信機(20)が、その周波数が0~30キロヘルツの受信帯域幅で構成された音響波をピックアップして電気形態に変換するように適合されており、
-前記駆動及び取得システム(30;30’)が、前記第1及び第2の周波数(f1、f2)が各々50キロヘルツ超になるように構成され、且つ前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との差が前記受信帯域幅に含まれ、30キロヘルツ未満になるように構成されている、請求項7~10のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項12】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が、ステップa)の1回の実行から次の実行までの、前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との間の差を変化させるように構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項13】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、
ステップa)の各実行後、ステップa)において行われた前記送信に応じて、前記トランスデューサ(11、12)の少なくとも1つによってピックアップされた、前記第1の周波数(f1)又は前記第2の周波数(f2)に等しい周波数の追加のエコー信号を取得し、
-前記追加のエコー信号に基づいて、前記水中環境(3)の一部を表す画像(IM’)を判定する、ように構成されている、請求項7~12のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項14】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、ステップa)において、前記重ね合わせ軸(z)と前記水中環境の海底(4)に対して垂直な軸(z4)との間に形成される入射角が限界入射角よりも大きくなるように、前記トランスデューサ(11、12)を駆動するように構成されている、請求項7~13のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項15】
前記駆動及び取得システム(30;30’)が更に、
-前記送信信号が各々、前記第1の周波数(f1)及び前記第2の周波数(f2)でそれぞれ経時的に変化する第1の成分及び第2の成分を含むように、
-前記アンテナ(10;10’)の前記トランスデューサが、ステップa)において、前記第1の音響波及び前記第2の音響波で構成された、前記重ね合わせ軸(z)に沿って伝播する変調された音響波を送信するように、構成されている、請求項7に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のパラメトリック音響測深機(1;1’)によって実施される、水中環境(3)の海底下(40)の一部を特徴付けるための方法であって、
前記駆動及び取得システム(30;30’)によって実行される以下のステップ、すなわち、
a)水中環境(3)で、第1の周波数(f1)を有する第1の音響波及び第2の周波数(f2)を有する第2の音響波を送信するように前記トランスデューサ(11、12)を駆動することであって、前記第1の波及び前記第2の波が、前記水中環境の海底(4)のポイント(P1、P2、P3)に向けられた重ね合わせ軸(z)に沿って互いに重ね合わされ、各トランスデューサ(11、12)が送信信号(s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3)によって駆動され、前記異なるトランスデューサ(11、12)の前記異なる送信信号が、互いに対して所定の遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)を有する、ことと、
b)ステップa)において行われた前記送信に応じて、前記受信機(20)によってピックアップされた、前記第1の周波数(f1)と前記第2の周波数(f2)との間の差に等しい周波数のエコー信号(s)を取得することであって、
ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記重ね合わせ軸(z)の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの前記遅延(Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3)の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行する、ことと、
を含み、更に、以下のステップ、すなわち、
c)ステップb)の異なる実行中に取得された前記エコー信号(s)に基づいて、前記海底の前記ポイント(P1、P2、P3)の各々の下方の前記水中環境(3)の前記海底下(40)の内容物を表す2次元画像又は3次元画像(IM)を判定することと、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、音響波反射を使用する、音響測深機、すなわちソナーなどの深さ測定装置の分野に関する。
【0002】
特に、水中環境の海底下の内容物を探査するための音響測深機に関する。
【0003】
特に、
-水中環境において、
-第1の周波数で変化する第1の音響波及び第2の周波数で変化する第2の音響波、又は
-第1の周波数及び第2の周波数でそれぞれ変化する第1の成分及び第2の成分を含む変調された音響波を、送信し、
-送信に応じて、第1の周波数と第2の周波数との間の差に等しい周波数のエコー信号をピックアップする、ように構成された、パラメトリック音響測深機に関する。
【0004】
また、水中環境の海底下の一部を特徴付けるための関連方法に関する。
【背景技術】
【0005】
水中環境の海底下の内容物の探査は、特に海事分野で重要な問題である。
【0006】
実際、電気通信又は送電用のパイプライン及びケーブルなどの設備を海底上に直接配置することが一般的な方法である。しかしながら、これらの設備はその後、堆積物又は砂の層に埋もれてしまう場合があり、それによって、場所を特定して特徴付けることが困難になる。
【0007】
そのような堆積物層の内容物を測深するための特定の音響測深機は、J.Marchal及びP.Cervenkaによる記事「Feasibility of B-Scan Imaging in Sediment by Means of Parametric Transmission Technique」(Acta Acustica united with Acustica,volume 90(2004)62~69頁)に記載されている。
【0008】
この記事に記載されている音響測深機は、第1の周波数で変化する第1の音響波、並びに第2の周波数で変化する第2の音響波を送信するように駆動される、ピストンタイプの大口径送信機を備える。これらの2つの波の各々は、送信機の下方に垂直に送信される。したがって、2つの波は送信機の真下に位置する水柱に沿って互いに重ね合わせられる。
【0009】
密度の変化に対する水の応答はわずかに非線形であるため、第1及び第2の音響波との重ね合わせにより、第1の周波数と第2の周波数との間の差に等しい周波数の追加の音響波を、水中で直接生成する。この非線形混合効果は、一般に、「パラメトリック効果」と呼ばれる。これは、ある意味で、第1及び第2の音響波の重ね合わせによって構成される変調された波の水中での非線形自己復調に直接対応する。
【0010】
したがって、送信機の下方に位置する水柱に沿って生成されるこの追加の音響波は、垂直方向に伝播し、送信機の真下に位置する海底のポイントに到達する。それゆえ、対象のポイントの下方で、水中環境の海底下を測深することが可能になる。
【0011】
「低周波」の追加の音響波の周波数は、第1及び第2の音響波の周波数よりも低いため、測深される堆積物層内の追加の音響波の吸収係数は、第1及び第2の音響波の吸収係数よりも低くなる。一方、非線形混合によって、この追加の音響波を水中で直接生成することにより、追加の音響波が送信機によって直接送信される場合よりも高い指向性からの利益を受けることが可能になる。
【0012】
今説明した音響測深機は、海底の異なるポイントで堆積物層を測深するために、水面での様々な位置において連続して配置され得る。これにより、この層の内容物を表す2次元画像又は3次元画像を生成することが可能になる。
【0013】
しかしながら、そのような測深は、時間がかかり、不便である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この文脈において、本発明は、パラメトリック効果によって、音響波を水中で直接生成することを可能にする新しいタイプのパラメトリック音響測深機を提案し、ここで、この波の伝播軸は、音響測深機のトランスデューサの電子駆動によって、音響測深機を移動させたり旋回させたりすることなく、変更され得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明によれば、パラメトリック音響測深機が提案され、パラメトリック音響測深機は、
-複数のトランスデューサを含む送信アンテナと、
-少なくとも1つの受信機と、
-以下のステップ、すなわち、
a)水中環境で、第1の周波数を有する第1の音響波及び第2の周波数を有する第2の音響波を送信するようにトランスデューサを駆動することであって、第1の波及び第2の波が、水中環境の海底のポイントに向けられた重ね合わせ軸に沿って互いに重ね合わされ、各トランスデューサが送信信号によって駆動され、異なるトランスデューサの異なる送信信号が、互いに対して所定の遅延を有する、ことと、
b)ステップa)において行われた送信に応じて、受信機によってピックアップされた、第1の周波数と第2の周波数との間の差に等しい周波数のエコー信号を取得することと、を実行するように構成され、
更に、
-ステップa)の1回の実行から次の実行までの重ね合わせ軸の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの遅延の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行し、
c)ステップb)の異なる実行中に取得されたエコー信号に基づいて、海底のポイントの各々の下方の水中環境の海底下の内容物を表す2次元画像又は3次元画像を判定する、ように構成された、駆動及び取得システムと、を備える。
【0016】
ステップa)の各実行後、その周波数が第1の周波数と第2の周波数との差の絶対値に等しい追加の音響波は、第1の音響波と第2の音響波との非線形混合によって、重ね合わせ軸に沿って水中で直接生成される。次いで、この「低周波数」の追加の音響波は、重ね合わせ軸に平行に伝播する。したがって、この軸の続きに位置する、それが到達する海底のポイントは、送信信号間の遅延を適切に選ぶことによって選択することができる。
【0017】
したがって、本発明によるパラメトリック音響測深機により、アンテナトランスデューサの適切な電子駆動のおかげで、「低周波」音響波がこの海底下内に良好に浸透し、且つその目的のために音響測深機を移動させる必要なく、海底の異なるポイントの下方の水中環境の海底下の内容物を測深することが可能になる。
【0018】
しかしながら、高音響パワーを送信することは、海底の異なるポイントに向けることができるように旋回可能取り付けられた、(上記のJ.Marchal及びP.Cervenkaの記事などの)単一の大型トランスデューサを含む音響測深機よりも、本発明によるパラメトリック音響測深機ではるかに困難であることが判明した。
【0019】
実際、アンテナ面全体を占有する単一の送信機で構成された送信アンテナの場合、アンテナ面の各ポイントは、生成される音響波の送信に寄与する。
【0020】
一方、ここでのように、アンテナ面の異なるポイントに分散された、いくつかの別個のトランスデューサで構成された送信アンテナの場合、これらのトランスデューサの全てのそれぞれの送信面によって構成されるアンテナ面の一部のみが、生成される音響波の送信に寄与する。
【0021】
ここで、水中での非線形混合のパラメトリックプロセスの効率は一般に低く、せいぜい数パーセントのオーダであり、混合される音響波のパワーが減少するにつれて大幅に低下する。したがって、パラメトリック音響測深機が非常に高い音響パワーPを放出することが重要であり、例えば、トランスデューサから1メートルの距離で230デシベルのオーダ(デシベル単位のパワー値Pは10log(P/PAref))であり、ここで、基準音響パワーPArefは、1マイクロパスカル振幅の圧力波の音響パワーである。
【0022】
したがって、送信アンテナを用いてパラメトリック音響測深機を作成することは、技術的に特に困難である。使用されるトランスデューサは、実際、表面単位あたり非常に高い(通常は、1平方センチメートルあたり10ワットより高い)パワー密度を送信できなければならない。そして何よりも、これらのトランスデューサは、高パワーを有する送信信号によって駆動されなければならず、これには通常は面倒な1つ以上のパワーアンプが必要であり、これらのトランスデューサを駆動するための電子機器を複雑する。
【0023】
これらの技術的困難にもかかわらず、複数のトランスデューサを備えたそのような送信アンテナを含むパラメトリック音響測深機は、特に興味深い。実際、パラメトリック効果によって生成された、音響波の伝播方向を純粋に電子的な方法で駆動することにより、この方向を非常に迅速に変更することが可能になる。
【0024】
これにより、特に、単一の大型トランスデューサを機械的に旋回させるよりも、堆積物層の内容物を表す2次元画像又は3次元画像をより迅速に撮影することが可能になる。
【0025】
また、これにより、送信された音響波が、これらの寄生動作とは無関係に、明確に判定された方向を指すように、音響測深機の寄生ロール又はピッチの動作を、送信時に、「リアルタイムで」(通常は0.1秒未満の非常に短い遅延時間で)補正することが可能になる。
【0026】
更に、複数のトランスデューサを備えた送信アンテナは、送信シーケンスの選択に大きな柔軟性を提供するため、したがって、多くの異なる測深構成が可能になり、水中環境の海底の周波数を混合することなく、パラメトリック測深と測深とを混合できる可能性がある。
【0027】
本発明による音響測深機は、上記の受信機を含む受信アンテナ、並びに同じタイプの他の受信機を備え得る。複数の受信機を備えたそのような受信アンテナは、角度のある視点からの選択的な受信を可能にし、これにより、駆動及び取得システムが所与の受信方向を選択することを可能にする。次いで、ステップb)において取得されたエコー信号は、(このエコー信号が、その伝播方向に関係なく、受信された任意の音響波を表す代わりに)駆動及び取得システムによって選択された、対象の受信方向である、明確に判定された伝播方向を有する低周波音響波を表す。
【0028】
個別に考えて、又は技術的に可能な全ての組み合わせに従って、本発明による音響測深機の他の非限定的且つ有利な特徴は、以下のとおりであり、すなわち、
-駆動及び取得システムは、ステップa)において、
-トランスデューサの第1のグループの各トランスデューサを、第1の周波数で経時的に変化する第1の送信信号によって駆動し、この第1のグループのトランスデューサが第1の音響波を送信し、異なる第1の送信信号が互いに対して所定の第1の遅延を有し、
-トランスデューサの第2のグループの各トランスデューサを、第2の周波数で経時的に変化する第2の送信信号によって駆動し、この第2のグループのトランスデューサが第2の音響波を送信し、異なる第2の送信信号が、互いに対して所定の第2の遅延を有し、
ステップa)の1回の実行から次の実行までの重ね合わせ軸の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの第1の遅延及び/又は第2の遅延を変化させる、ように構成されており、
-駆動及び取得システムは、
-送信信号が各々、第1の周波数及び第2の周波数でそれぞれ経時的に変化する第1の成分及び第2の成分を含むように、
-アンテナのトランスデューサが、ステップa)において、第1の音響波と第2の音響波で構成された、重ね合わせ軸に沿って伝播する変調された音響波を送信するように、構成されており、
-送信アンテナが2つのアームのクロス形状を有し、トランスデューサのいくつかがアンテナの第1のアームに沿って次々に一列に配置され、アンテナの他のトランスデューサが、アンテナの第2のアームに沿って次々に一列に配置されており、
-第1のグループのトランスデューサがアンテナの第1のアームを形成し、第2のグループのトランスデューサがアンテナの第2のアームを形成し、第1の遅延は、第1のビームが第1の送信面に対して垂直な方向に狭い断面を有し、第1の送信面に対して平行に延びるときに、第1の音響波が第1の送信面に対して平行に伝播するものであり、第2の遅延は、第2のビームが第2の送信面に対して垂直な方向に沿って狭い断面を有し、第2の送信面に対して平行に延びるときに、第2の音響波が第2の送信面に対して平行に伝播するものであり、重ね合わせ軸は、第1の送信面と第2の送信面との間の交点に配置され、駆動システムは、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、
-アンテナの第1のアームに対して垂直な第1のスキャン軸を中心に第1の送信面を旋回させるために、第1の遅延を変化させ、
-アンテナの第2のアームに対して垂直な第2のスキャン軸を中心に第2の送信面を旋回させるために、第2の遅延を変化させる、ように構成されており、
-トランスデューサは、いくつかの行及びいくつかの列の行列を形成するように配置され、トランスデューサは、それぞれ、行列の行と列との間の異なる交点に配置され、
-第1及び第2の遅延は、第1及び第2の音響波がそれぞれ、第1のコリメートビーム及び第2のコリメートビームとして送信され、各々が重ね合わせ軸を中心とするものであり、
-第の1グループのトランスデューサは、行列のいくつかの別個の領域を占有し、第2のグループのトランスデューサの1つ以上は、領域の任意の2つの間に挿入されており、
-第1のグループの各トランスデューサは、最も近く隣接するものに対して、第2のグループのトランスデューサを有し、
-トランスデューサのいくつかは各々、圧電材料で作成された要素、並びに圧電材料要素に圧縮応力を印加する機械デバイスを含み、
-この圧縮応力は7バールよりも高く、更に15バールよりも高く、
-各トランスデューサは、水中環境で50キロヘルツ超の周波数で音響波を送信するように適合されており、
-受信機は、周波数が0~30キロヘルツの受信帯域幅で構成された音響波をピックアップして電気形態に変換するように適合されており、
-駆動及び取得システムは、第1の周波数及び第2の周波数が各々50キロヘルツ超になるように構成されており、
-駆動及び取得システムは、第1の周波数と第2の周波数との差が受信帯域幅に含まれるように構成されており、
-駆動及び取得システムは、第1の周波数と第2の周波数との差が30キロヘルツ未満になるように構成されており、
-駆動及び取得システムは、ステップa)の1回の実行から次の実行までの、第1の周波数と第2の周波数との間の差を変化させるように構成されており、
-更に、駆動及び取得システムは、ステップa)の各実行後、ステップa)において行われた送信に応じて、少なくとも1つのトランスデューサによってピックアップされた、第1の周波数又は第2の周波数に等しい周波数の追加のエコー信号を取得するように構成されており、
-駆動及び取得システムは、追加のエコー信号に基づいて、水中環境の一部を表す画像を判定するように構成されており、
-駆動及び取得システムは、追加のエコー信号に基づいて、海底のポイントの深さを判定するように構成されており、
-駆動及び取得システムは更に、ステップa)において、重ね合わせ軸と水中環境の海底に対して垂直な軸との間に形成される入射角が限界入射角よりも大きくなるように、トランスデューサを駆動するように構成されており、
-限界入射角は15度に等しい。
【0029】
本発明はまた、水中環境の海底下の一部を特徴付けるための方法に関し、方法は、上記のようにパラメトリック音響測深機によって実施され、その間、駆動及び取得システムは、以下のステップ、すなわち、
a)水中環境で第1の周波数を有する第1の音響波及び第2の周波数を有する第2の音響波を送信するようにトランスデューサを駆動することであって、第1の波及び第2の波は、水中環境の海底のポイントに向けられた重ね合わせ軸に沿って互いに重ね合わされ、各トランスデューサは送信信号によって駆動され、異なるトランスデューサの異なる送信信号は互いに対して所定の遅延を有する、ことと、
b)ステップa)において行われた送信に応じて、受信機によってピックアップされた、第1の周波数と第2の周波数との間の差に等しい周波数のエコー信号を取得することであって、ステップa)の1回の実行から次の実行までの重ね合わせ軸の方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの遅延の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行することと、
c)ステップb)の異なる実行中に取得されたエコー信号に基づいて、海底の各ポイントの下方の水中環境の内容物を表す2次元画像又は3次元画像を判定することと、を実行する。
【0030】
デバイスに関連して上記で提示された任意選択の機能はまた、今説明した方法にも適用され得る。
【0031】
非限定的な例として与えられた添付の図面に関連する以下の説明により、本発明が何からなるか、及びそれがどのように実施され得るかについての十分な理解を可能にするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】側面から見た、第1の実施形態による音響測深機を備えた船舶を概略的に示す図である。
図2】下方から見た、第1の実施形態による音響測深機を備えた船舶を概略的に示す図である。
図3図1及び図2の音響測深機の異なる要素を概略的に示す図である。
図4図1及び図2の音響測深機のトランスデューサを駆動する方法を概略的に示す図である。
図5図1及び図2の音響測深機によって第1の瞬間に送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図6図1及び図2の音響測深機によって第2の瞬間に送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図7図1及び図2の音響測深機によって第3の瞬間に送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図8図1及び図2の音響測深機によって実施される、水中環境の海底下の一部を特徴付けるための方法のステップを概略的に示す図である。
図9】正面から見た、所与の瞬間に、図1及び図2の音響測深機により送信された第1の音響波によって占有される領域を概略的に示す図である。
図10】側面から見た、所与の瞬間に、図1及び図2の音響測深機により送信された第1の音響波によって占有される領域を概略的に示す図である。
図11】側面から見た、図9及び図10と同じ瞬間に、音響測深機により送信された第2の音響波によって占有される領域を概略的に示す図であり、また同時に、音響測深機により送信された追加の第2の音響波によって占有される領域も示している。
図12】正面から見た、図9及び図10と同じ瞬間に、音響測深機により送信された第2の音響波によって占有される領域を概略的に示す図である。
図13】正面から見た、図9及び図11と同じ瞬間に、同時に、これらの第1及び第2の音響波によってそれぞれ占有される領域を概略的に示す図である。
図14図9図13の音響波の周波数スペクトルを示す図である。
図15】下方から見た、第2の実施形態による音響測深機を備えた船舶を概略的に示す図である。
図16】第4の瞬間に図15の音響測深機によって送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図17】第5の瞬間に図15の音響測深機によって送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図18】第6の瞬間に図15の音響測深機によって送信された音響波ビームを概略的に示す図である。
図19】上方から見た、図1の船舶に対する、この船舶に適合された音響測深機によって測深される海底の異なるポイントの位置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び図2、一方で図15は、水中環境3の海底下40(特に図5及び図16を参照)の内容物の2次元画像又は3次元画像を、高速で、正確且つ便利な方法で撮影することを可能にする、特定のパラメトリック音響測深機1;1’の第1の実施形態及び第2の実施形態をそれぞれ概略的に示している。
【0034】
対象の水中環境3は、水面下、音響測深機1;1’の下方、場合によってはその周囲に広がっている。その海底下40は、本質的に固体であり、例えば、砂又は岩などの堆積物からなる。水中環境3の海底4は、水とこの海底下40との間のフロンティアに位置している。
【0035】
このパラメトリック音響測深機1;1’は、潜水艇又は水上型の船舶2に適合され得、これは、人が乗船していなくても操作できるように配置又は構成されている。これは、送信アンテナ10;10’を備えて、それを取り巻く水中環境3において音響波を送信する。このアンテナ10;10’は、例えば、図面に示されるように、船舶2の船体内にこの目的のために設けられたハウジング内に設置され得る。
【0036】
実施形態が何であれ、送信アンテナ10;10’は、複数の電気音響トランスデューサ11、12を含む。これらのトランスデューサは、互いに独立して駆動され得る。それらの各々は、水中環境3において、50キロヘルツより高い、又は100キロヘルツより高い、又は更に150キロヘルツよりも高い周波数で、音響波を送信するように適合されている。それらは、例えば、20キロヘルツ~1メガヘルツである送信帯域幅(-3dB帯域幅)で音響波を送信するように適合された超音響波トランスデューサ11、12であり得る。
【0037】
アンテナ10;10’のトランスデューサ11、12の少なくとも3つは、互いに整列していない。言い換えれば、アンテナ10;10’のトランスデューサ11、12は、同じラインにわたって分散されているだけではない。それらが占有する位置は、例えば、(図2の第1の実施形態のように)クロスの、又は(図15の第2の実施形態のように)長方形の行列を一緒に形成するために、所与の表面全体にわたって2次元的に分散されている。
【0038】
図2及び図15にそれぞれ示される音響測深機1;1’の第1の実施形態と第2の実施形態との間の差は、主に、これらのトランスデューサ11、12がアンテナ10;10’の表面において互いに対して分散される方法、及びアンテナ10;10’に含まれるトランスデューサの数に関連している。したがって、これらの差はまた、図5及び図16に示された、アンテナによって送信されたビームW1、W2;W1’、W2’の形状に関連する。また、これらのトランスデューサ11、12の駆動の詳細にも関連する。
【0039】
それにもかかわらず、これらの2つの実施形態は、多くの共通の特徴を有する。したがって、ある実施形態から別の実施形態へ、共通の要素は可能な限り同じ参照記号でマークされており、必ずしもそれぞれの場合に説明されているわけではない。
【0040】
これらの2つの実施形態では、実際に考慮されるいずれの実施形態においても、音響測深機1;1’は、低周波音響波をピックアップするための少なくとも1つの受信機20を更に備える。受信機20は、ハイドロホンタイプの電気音響トランスデューサである。受信機20は、その周波数が特に30キロヘルツ未満に及ぶ受信帯域幅に含まれる音響波をピックアップして電気形態に変換することができる。この受信帯域幅は、例えば受信機20の-3dB帯域幅に対応し、例えば、0~20キロヘルツ、0~30キロヘルツ、また、10~30キロヘルツであり得る。この受信機20は、必ずしも指向性であるわけではない。
【0041】
図面に示されるように、音響測深機1;1’は、このタイプの単一の受信機20を備える。しかしながら、代替として、音響測深機は、受信アンテナを一緒に形成する複数のそのような受信機を備え得る。したがって、音響測深機の異なる位置にいくつかの別個の受信機を配置することにより、角度のある視点からの選択的な受信が可能になる。実際、これにより、これらの受信機によってピックアップされた全ての信号の電子処理によって、音響測深機によって受信される前に、対象の電子処理によって選択された、所与の伝播方向で水中環境を伝播していた音響波をそれぞれ表す1つ以上のエコー信号を取得することを可能にする。
【0042】
例として、図2の第1の実施形態の変形例では、対象の受信アンテナは、上記のように4つの受信機を含むことができ、ミルズクロス形状送信アンテナの2つのアームで区切られた4つの象限は、各々が、長方形又は正方形の構成で配置されたこれらの受信機の1つによってそれぞれ占有される。
【0043】
他の変形例では、受信アンテナの異なる受信機を、例えば、同じラインに沿って配置して、線形受信アンテナを形成することができる。
【0044】
音響測深機1;1’はまた、駆動及び取得システム30;30’を備えて、アンテナ10:10’のトランスデューサ11、12を駆動し、受信機20によってピックアップされた低周波エコー信号sを取得し、これらのエコー信号から、上記の水中環境3の海底下40の内容物の2次元画像又は3次元画像IMを判定する。
【0045】
駆動及び取得システム30;30’は、水中環境3の海底下40の一部を特徴付けるための方法(図8に示される方法)の以下のステップ、すなわち、
a)水中環境3において、第1の周波数f1を有する第1の音響波及び第2の周波数f2を有する第2の音響波を送信するように、送信アンテナ10;10’のトランスデューサ11、12を駆動することであって、第1の波及び第2の波は、水中環境の海底4の所与のポイントP1、P2、P3に向けられた重ね合わせ軸zに沿って互いに重ね合わされ(図5図7)、各トランスデューサ11、12は、それに関連付けられた送信信号s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3…によって駆動され、異なるトランスデューサ11、12の送信信号は、互いに対して所定の遅延を有する(図4)、ことと、
b)ステップa)において行われた送信に応じて受信機20によってピックアップされ、その周波数fLFが第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の差の絶対値に等しい、エコー信号sを取得することであって、
ステップa)の1回の実行から次の実行までの重ね合わせ軸zの方向を変更するように、ステップa)の1回の実行から次の実行までの遅延の少なくとも一部を変化させることによって、ステップa)及びb)の全てのステップを数回実行することと、
c)ステップb)の異なる実行中に取得されたエコー信号sに基づいて、海底4の各ポイントP1、P2、P3の下方の水中環境3の海底下40の内容物を表す2次元画像又は3次元画像を判定することと、を実行するように、より正確に構成されている。
【0046】
駆動及び取得システム30;30’は、第1の周波数f1及び第2の周波数f2が50キロヘルツより高く、又は100より高く、又は更にここでは150キロヘルツより高くなるように構成されている。更に、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差とが上記の受信帯域幅に含まれるように構成されている。ここで、駆動及び取得システム30;30’は、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差が15~30キロヘルツになるように、より正確に構成されている。トランスデューサ11、12を駆動する送信信号s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3…は、駆動及び取得システム30;30’によって生成される。
【0047】
しかしながら、別の方法として、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を小さくすることができ、この差は、例えば10キロヘルツ未満である。第1の周波数f1及び第2の周波数f2の値はまた、上記に示されるものよりも低くすることができ、これらの周波数の各々は、例えば、場合によっては20~50キロヘルツである。
【0048】
いずれにせよ、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差|f1-f2|は、好ましくは、第1の周波数f1及び第2の周波数f2の算術平均(f1+f2)/2の4分の1よりも低い。ここで、例えば、この差|f1-f2|は、第1の周波数f1及び第2の周波数f2の算術平均(f1+f2)/2の4分の1~6分の1である。そのような比率は、第1の音響波と第2の音響波との非線形混合の効率を最適化することを可能にする。
【0049】
ステップa)の各実行後、その周波数fLFが第1の周波数f1と第2の周波数f2との差の絶対値に等しい追加の音響波は、第1の音響波と第2の音響波との非線形混合によって、重ね合わせ軸zSに沿って水中で直接生成される。この追加の音響波は、以降、「低周波数波」と呼ばれる。専門文献では、水中環境で非線形混合によって直接生成されるそのような音響波は、「パラメトリック波」、又は「2次波」とも呼ばれることがある(したがって、第1及び第2の音響波は「1次波」と呼ばれる)。それは重ね合わせ軸zに対して平行に伝播し、したがって、(音響屈折の潜在的な影響とは別に)重ね合わせ軸zが向けられる海底4のポイントP1、P2、P3、…に到達する。
【0050】
この低周波数波は、一般に、水中環境3の海底下40において、周波数f1及びf2がより高い第1及び第2の音響波よりも良好に浸透する。したがって、対象のポイントP1、P2、P3の下方で、この海底下の内容物をより深く測深することが可能になる。この海底下40では、低周波音響波が、堆積物に埋もれたパイプラインの一部などの、海底下の残りの部分とは剛性又は密度が異なる要素と出会うと、低周波数波の一部が、エコーのようにこの要素によって反射される。次いで、音響測深機によるこの音響波の受信時間は、音響測深機とそのように検出された反射要素との間の距離に関する情報を提供する。
【0051】
より一般的には、第1及び第2の音響波の送信に応じて水中環境の海底下40によって反射される周波数fLFの音響波は、重ね合わせ軸zが向けられる海底4のポイントP1、P2、P3の下方に延びるこの海底下40の列41、42、43における多かれ少なかれ反射要素の存在に関する、及びこの列内でのこれらの要素の各々が位置する深さに関する情報を含む。言い換えれば、この反射された音響波は、この列41、42、43に沿って、海底下40の一種の内容物の1次元画像を判定することを可能にする(図5図7)。この反射された音響波は、その周波数が第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の差の絶対値に等しく、これにより、ステップb)において受信機20によってピックアップされ、電気形態に変換されて、エコー信号sを与える。
【0052】
ステップa)において送信される第1及び第2の音響波の伝播方向は、送信信号間の遅延値に直接依存するため、それに沿ってこれらの第1の波と第2の波が互いに重なり合う重ね合わせ軸zの方向は、ステップa)の1回の実行から次の実行までの重ね合わせ軸zの方向を変化させるために、これらの遅延を調整することによって純粋に電子的な方法で制御することができる。
【0053】
次いで、海底4の異なるポイントP1、P2、P3の下方に延びるいくつかの基本的な内容物41、42、43のそれぞれの内容物が、ステップa)及びb)の異なる実行中に、ここで連続して測深される。ステップc)において、駆動及び取得システム30:30’によって判定された2次元画像又は3次元画像IMは、例えば、これらの異なる列41、42、43の内容物を表す1次元ソナー画像を列ごとに並べて配置することによって取得することができる。
【0054】
例として、重ね合わせ軸zの方向が、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、同じラインに沿って、この軸が水中環境3の海底4上に分散する異なるポイントP1、P2、P3を連続的に指すように変化する場合、音響測深機1;1’は次いで、このラインを通る断面に従って(及び音響測深機のアンテナ10;10’によって)、水中環境3の海底下40の断面図に対応する2次元画像IMを撮影する。
【0055】
したがって、本発明によるパラメトリック音響測深機1;1’は、アンテナ10:10’のトランスデューサ11、12の適切な駆動のおかげで、純粋に電子的な方法で、水中環境の海底下40の内容物を表す2次元画像又は3次元画像IMを撮影することを可能にする。有利なことに、この画像は、単一の大型トランスデューサを機械的に旋回させるよりも迅速に取得される。また、これにより、送信された音響波が、これらの寄生動作とは無関係に、明確に判定された方向を指すように、音響測深機1;1’の寄生ロール又はピッチの動作を、送信時に、「リアルタイムで」(通常は0.1秒未満の非常に短い遅延時間で)補正することが可能になる。
【0056】
音響測深機1;1’の主な特徴のこのプレゼンテーションの後に、ここで、その構造及び動作をより詳細に説明する。
【0057】
使用される電気モジュール及びトランスデューサ11;12のいくつかの特徴を、第1に提示する。
【0058】
「ミルズクロス」構造を有する第1の実施形態の送信アンテナ10の構造、及びその駆動モードを、図2及び図5図7を参照して、第2に説明する。
【0059】
次いで、第2の実施形態の送信アンテナ10’の構造、及びその駆動モードを、図15図18を参照して説明する。
【0060】
以降、一種の多重化により、水中環境の海底下40の2次元画像又は3次元画像の取得速度を増大することを可能にする送信及び取得技術について説明する。周波数多重化に対応するこの技術のバージョンを、図9図14を参照して説明する。これらの技術は、第1の実施形態と第2の実施形態の両方に適用することができる。
【0061】
トランスデューサ及び駆動電子機器
上記で説明したように、いくつかの別々のトランスデューサ11;12で形成されたそのアンテナ10;10’のおかげで、本発明によるパラメトリック音響測深機1;1’は、非パラメトリックマルチビーム音響測深機のように、純粋に電子的な方法で指示することができ、これは特に興味深い。
【0062】
しかし、それはパラメトリック音響測深機であるため、送信された音響波が非常に高い音響パワーを有することが重要である。実際、水中での非線形混合のパラメトリックプロセスの効率は一般に低く、せいぜい数パーセントのオーダであり、混合される音響波のパワーが減少するにつれて大幅に低下する。
【0063】
所望の音響パワーに到達するため、このアンテナ10;10’の表面の一部のみが音響波の送信に寄与するが、アンテナ10;10’の各トランスデューサ11、12はここで、圧電材料で作成された1つ以上の要素から作成され、例えば、ねじボルトタイプの機械デバイスによって強い圧縮応力を受ける。したがって、電気的励起がない場合、この圧電素子は、この強いプレストレスにさらされる。これによりその後、圧電素子に非常に高い電源電圧(数百ボルト以上)を印加することが可能であり、したがって、これらの素子が拡張して機能することを回避しながら、非常に強い音響波を生成して、破損のリスクを制限することが可能になる。実際には、対象の機械デバイスによって圧電素子に印加される圧縮応力は、(電気的励起がない場合)少なくとも7バールよりも高く、又は更に15バールよりも高くなる。そして、アンテナ10;10’の各トランスデューサ11、12は、トランスデューサのすぐ近隣において、1平方センチメートルあたり20ワット以上の表面単位あたりのパワー密度を有する音響波を送信することができる。
【0064】
第1及び第2の周波数がこれよりも低くなる音響測深機の変形例では、例えば、150キロヘルツより高くなる代わりに10キロヘルツのオーダになり、上記の圧電素子に印加される圧縮応力は更に高く、例えば100バールよりも高くなる。
【0065】
ここで、音響測深機1;1’の駆動及び取得システム30;30’は、
-少なくともプロセッサ及びメモリを含む論理ユニット31と、
-トランスデューサ11、12を駆動するのに適した形態で送信信号s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3…を供給する調整モジュール32と、
-論理ユニット31に送信する前に、受信機20によってピックアップされたエコー信号sを増幅してデジタル形式に変換する、取得モジュール33と、を備える。
【0066】
調整モジュール32は、論理ユニット31から受信された信号に基づいて、送信信号s1,1、s1,2、s1,3、s2,1、s2,2、s2,3…を生成する。それは、1つ以上のデジタルアナログコンバータ、並びに送信信号を適合させ、又はトランスデューサ11、12とのインピーダンスマッチングを実行するためのフィルタを備えている場合がある。とにかく、調整モジュール32は、対応するトランスデューサを駆動するために、各々が少なくとも約100ボルトの出力電圧を供給することができるアンプを、ここではトランスデューサ11、12ごとに1つを備える。これらのアンプは、ここでは「パルス幅変調」(PWM)タイプであり、それらの振幅が、表面単位あたりのパワー密度が10ワットより高く、更には1平方センチメートルあたり20ワットより高い音響波を生成するのに十分に高いように、送信信号の増幅を可能にする。ここで、各トランスデューサによって生成された音響波は、単独で考えると、アンテナ10;10’のすぐ近隣において(例えば、アンテナから10~50cmの距離において)、表面単位あたり、より正確には1平方センチメートルあたり10~40ワットである、パワー密度を有する。
【0067】
アンテナ10によって送信される第1又は第2の超音響波の総パワーは、ここでは218dBのオーダである。この送信パワーは、通常のパラメトリックソナーで使用されるものに比べてかなり減少している。それでも、環境海底下40の内容物を表す、取得された画像は高品質であるため、良好な信号対雑音比を示している。(送信パワーの低下にもかかわらず)この良好な信号対雑音比は、例えば、(ここでスキャンされた)埋没物が通常の場合のように数十メートルではなく、数メートルの深さの下方に埋められているという事実によって説明される。更に、ここでは、測定を妨げ得る雑音は、これらの堆積物層の波の残響からのみ発生する。パラメトリックビームは非常に薄いため、この残響は非常に低減され、したがって信号は利用可能である。
【0068】
図2の第1の実施形態では、送信シーケンス中に駆動電子機器によって消費される総パワーは、ここでは2~5キロワットである。したがって、共振時に、圧電素子で構成されているアンテナ10;10’の各トランスデューサ11、12に対して、印加されるエネルギーの90%が音響パワーに変換される。
【0069】
更に、ここで説明される実施形態では、アンテナ10;10’のトランスデューサは、トランスデューサ11の第1のグループ13;13’及びトランスデューサ12の第2のグループ14;14’に分散され(図2及び図15)、駆動及び取得システム30;30’は、
-第1の周波数f1で経時的に変化する、第1の送信信号s1,1、s1,2、s1,3…によって第1のグループの各トランスデューサ11を駆動し(上記の第1の音響波は次いで、この第1のグループのトランスデューサによって送信される)、
-第2の周波数f2で経時的に変化する、第2の送信信号s2,1、s2,2、s2,3…によって第2のグループの各トランスデューサ12を駆動する(上記の第1の音響波は次いで、この第2のグループのトランスデューサによって送信される)、ように構成されている。
【0070】
第1の送信信号s1,1、s1,2、s1,3…は、互いに対して所定の遅延を有する。より正確には、これらの第1の信号の各々は、図4に概略的に示されるように、(周波数f1で変化する)第1の基準信号sに対して第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を有する。また、異なる第1の送信信号s1,1、s1,2、s1,3…がそれぞれ、この同じ基準信号s1に基づいて、時間シフトによって取得され得る。これらの第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…の1つを変更することは、もちろん、他の送信信号に対して、対応する第1の送信信号の遅延を変更することに等しい。
【0071】
同様に、第2の送信信号s2,1、s2,2、s2,3…は、互いに対して所定の遅延を有する。ここで、これらの第2の信号の各々は、周波数f2において変化する第2の基準信号sに対して第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を有する。ここで再び、第2の送信信号s2,1、s2,2、s2,3…は、例えば、この同じ第2の基準信号s2に基づいて、時間シフトによって取得され得る。
【0072】
ミルズクロス送信アンテナ
すでに示したように、第1の実施形態では、音響測深機1の送信アンテナ10は、通常ミルズクロスと呼ばれる2つのアームのクロス形状を有する(図2)。
【0073】
本明細書では、第1の周波数f1で駆動される、上記の第1のグループのトランスデューサのトランスデューサ11は、アンテナの第1のアーム13を形成する。それらは、この第1のアーム13に沿って、次々に一列に配置されている。
【0074】
そして、第2の周波数f2で駆動される、第2のグループのトランスデューサのトランスデューサ12は、アンテナの第2のアーム14を形成する。それらはまた、この第2のアーム14に沿って、次々に一列に配置されている。
【0075】
したがって、この第1の実施形態では、ステップa)において、第1の音響波はここで、アンテナの第1のアーム13のトランスデューサ11によって送信されるが、第2の音響波は、アンテナの第2のアーム14のトランスデューサ12によって送信される。
【0076】
第1のアーム13及び第2のアーム14は、例えば60度~120度で構成された角度を互いに形成する。ここで、これらの2つのアームは、互いに対してより正確に垂直である。
【0077】
クロス構成のそのようなトランスデューサの配置は、従来の非パラメトリック音響測深機として知られており、トランスデューサアームの一方は送信に使用され、他方は受信に使用される。しかし、音響測深機1の動作は、そのような従来の音響測深機とは大きく異なる。実際、ここではクロスの2つのアームが送信に使用されているが、受信は、送信の周波数とは異なる周波数で、アンテナ10とは異なる受信機20によって又は代替として、上記の受信アンテナによって行われる。
【0078】
ここで、アンテナ10は、第1のアーム13のx軸が、船尾から船首まで延びる船舶2の長手方向軸に対して平行に延びるように取り付けられている。そして、ここでのアンテナの第2のアーム14のy軸は、船舶2に対して横方向に延びる。したがって、y軸は船舶の長手方向軸に対して垂直であり、船舶の甲板に対して平行である。船舶に対するアンテナ10のこの配置により、船舶の寄生ピッチ及びロール動作の電子的補償を実施するのを便利にする。参照として図面に示されているz軸は、アンテナ10に垂直であり、すなわち、その2つのアーム13及び14に対して垂直である。
【0079】
アンテナ10の各アームに沿って、トランスデューサ11、12は、ここでは20センチメートルより長く、更に50センチメートルより長い長さにわたって分散されている。その長さのために、これらのアームの各々は、このアームに対して平行に、減少した角度開口を有する音響波を送信することができる。
【0080】
この第1の実施形態では、音響測深機1の駆動及び取得システム30は、ステップa)において、第1の送信面Pl1に対して垂直な方向に狭い断面を有し、この面に平行に対して非常に細長い断面を有する第1のビームW1として、第1の音響波が第1の送信面Pl1に対して平行に伝播するような値である、異なる第1の送信信号s1,1、s1,2、s1,3…に適用される第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を与えように構成される(図5)。この送信面では、第1のビームW1は、例えば、数十度の大きな角度開口を有するが、この送信面に対して垂直な、例えば5度未満の減少した角度開口を有する(この角度開口は、例えば、ピークの最大値の半分において、第1のビームW1の断面での第1の波の音響強度を表す角度幅として定義される)。したがって、この第1のビームW1は、多くの場合「スキャンスワス」と呼ばれる、扇形状の浅い層のようなものである。この第1のビームW1は、その伝播中に第1の音響波によってスキャンされる水中環境3の領域を表す。
【0081】
第1の音響波がこの第1のビームW1として伝播するために、駆動及び取得システム30は、例えば、第1のアーム13に沿って、対応するトランスデューサ11(トランスデューサn°1、n°2、n°3など)によって占有された位置に比例する値である、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…の各々を与える(例として、これらの第1の遅延が全て同じ値を有する場合、すなわち、第1の送信信号間に時間シフトがない場合、第1の音響波が伝播する平行な第1の送信面Pl1は、アンテナの第1のアーム13のx軸に対して垂直に延びている)。第1の送信面Pl1は、ここではy軸によって第1のアーム13に対して垂直であり、第1の遅延に与えられた値の関数として(ここでは、これらの遅延の値とアンテナの第1のアーム13に沿ったトランスデューサ11の位置との間の比例係数の関数として)、この軸を中心に旋回する軸を含む。
【0082】
同様に、ステップa)において、駆動及び取得システム30は、第2の送信面P2に対して垂直な方向に狭い断面を有し、この面に対して平行に非常に細長い第2のビームW2として、第2の音響波が第2の送信面Pl2に対して平行に伝播するような値である、第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を与える(図5)。第2のビームW2は、第1のビームW1と同様の形状を有する。特に、第2のビームW2は、第2の送信面Pl2に対して垂直な、例えば5度(最大の半分の幅)よりも小さい角度開口を有する。第2のビームW2の中心にある第2の送信面Pl2は、アンテナの第2のアーム14に対して垂直な軸を含み、ここではx軸によって、第2の遅延に与えられた値の関数として、その周りを旋回することができる。
【0083】
重ね合わせ軸zは、第1の送信面Pl1と第2の送信面Pl2の交点に位置する(図5図7)。
【0084】
そして、第1及び第2の波は主に、第1のビームW1と第2のビームW2との交点によって形成され、重ね合わせ軸zを中心とする共通のビームWo内で互いに重ね合わされる。言い換えれば、第1の波と第2の波が実質的な音響強度を有するのは、この共通のビームWo内だけである。すなわち、したがって、低周波音響波が効率的に生成されるのは、この共通のビームWoの範囲内である。
【0085】
ほぼ円錐形の共通ビームWoは、第1及び第2のビームW1、W2の各々が上記で説明した浅い層を形成するため、例えば2度未満の減少した角度開口を有する。したがって、水中での非線形混合によって生成された低周波音響波の断面は、(特に、この非線形波の生成モードはまた、その横断方向の拡張を減少させる傾向があるため)あまり拡張されない。これにより、水中環境の海底下40を良好な横方向の解像度で測深することが可能になる。
【0086】
海底4の異なるポイントP1、P2、P3の下方のこの海底下40の内容物を測深するために、x軸を中心に第2の送信面PI2を旋回させるように、駆動及び取得システム30はここで、ステップa)の1回の実行から次の実行までの第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を変化させる。したがって、z軸と第2の送信面Pl2との間に形成される傾斜角は、ステップa)の1回の実行から次の実行までに変化する(図5図7)。第2の送信面Pl2のこの旋回は、重ね合わせ軸zの方向を変化させることを可能にする(これらの連続実行中に次いで、第1のビームW1によって形成されたファン全体をスキャンすることができる)。
【0087】
海底4の異なるポイントP1、P2、P3をスキャンするこの方法は、送信ステップa)の3回の連続実行に対して、第1及び第2の音響波によって形成された第1及び第2のビームW1及びW2を概略的に示す、図5図7の全てによって示されている。
【0088】
更に、このスキャン中、送信ステップa)において、駆動及び取得システム30は、重ね合わせ軸zと水中環境の海底に対して垂直な軸z4との間に形成される入射角が限界入射角よりも大きくなるように、アンテナ10のトランスデューサ11、12を駆動する。この限界入射角は、ここでは15度に等しくなる。
【0089】
したがって、重ね合わせ軸zに沿って生成された低周波音響波が、垂直入射(すなわち、ゼロ入射角)で海底4に到達し、且つ海底の全スキャン中に到達することが回避される。
【0090】
垂直入射を除いてそのように移動すると、海底4、又は2つの異なる堆積層間の界面によって鏡面反射又はほぼ鏡面反射された低周波音響波が、音響測深機1に向かって送り返されるのを回避することが可能になる。そのように鏡面反射されるそのような波の強度は、一般に、主に拡散方法で反射されるパイプラインなどの埋没物によって反射される音響波の強度よりもはるかに高くなるため、これは興味深いことである。垂直入射では、海底で鏡面反射された音響波ははるかに強いため、検出される埋没物から来る音響波をマスクし、したがって、そのような物体の検出をこれよりも困難にする。
【0091】
本明細書に記載のスキャンモードでは、限界入射角よりも大きい入射角で海底下40を測深するために、駆動及び取得システム30は、第1の送信面Pl1が、海底z4に垂直な軸に対してある角度αだけ傾斜するように(角度αは、面Pl1と軸z4との間に形成される角度である)、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を調整する。この角度αは、上記の限界入射角よりも大きい。角度α及び軸z4は図10に示され、これはまた、高速取得の態様を示している。角度αは、例えば、15~30度である。
【0092】
第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…に関しては、上記のように、第2の送信面Pl2をx軸を中心に旋回させるために、ステップa)の1回の実行から次の実行まで変化させる。
【0093】
したがって、このスキャンに沿って、重ね合わせ軸zと海底z4に対して垂直な軸との間に形成される入射角は、角度αよりも大きいままであり、したがって、上記の限界入射角よりも大きいままである。
【0094】
図19は、アンテナ10と同様に海底4が水平である状況で、音響測深機によって音響測深される海底のポイントP1、P2、P3の位置を概略的に示している。この状況では、(通常の入射測深を回避するために)このように垂直に対して傾斜している第1の送信面Pl1は、この場合、船舶2の前方に向けられている。次いで、音響測深機によって測深された海底のポイントP1、P2、P3は、水中環境の海底、船舶2の前面、及びこの船舶の長手方向軸に対して垂直に延びるラインLに沿って分散される。
【0095】
今説明したスキャンモードに関しては、別の方法として、第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を変化させる代わりに、y軸を中心に第1の送信面Pl1を旋回させるように、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を変化させることができる。
【0096】
また、ステップa)の一連のいくつかの連続実行中に、例えば、全てが互いに対して整列されていない、その全体が水中環境の海底の表面全体を覆う、海底のいくつかのポイントの下方の海底下40の内容物を表す3次元画像を撮影するために、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…及び第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…の両方を変化させることができる。
【0097】
この第1の実施形態の音響測深機1は、送信される音響強度に関して重大な実施上の困難をもたらすことに留意されたい。実際、このミルズクロスアンテナ10の総送信面は、「ピストン」タイプの単一の送信機の場合よりも、又は更には第2の実施形態の送信機行列を備えたアンテナ10’の場合よりもはるかに小さい。更に、第1の音響波の一部のみが第2の音響波に重なり合う(図5)。したがって、第1の波の一部及び第2の波の一部のみが水中での低周波音響波の発生に関与し、この低周波の発生効率を更に低下させる。
【0098】
しかし、(その2つのアームがそれぞれ、第1の周波数f1及び第2の周波数f2での送信で駆動される)そのようなミルズクロスアンテナを使用することにより、その見返りとして、アンテナがトランスデューサの行列で構成されている音響測深機に対して、(特に、調整モジュール32内の)トランスデューサの制御電子機器の特定の態様を大幅に簡素化することが可能になる。
【0099】
実際、アンテナの所与の延長に対して、及びアンテナの表面におけるトランスデューサの所与の密度に対して、第2の実施形態のアンテナ10’は、第1の実施形態のものよりはるかに多くのトランスデューサを含む。例として、第1の実施形態のアンテナ10が6×2のトランスデューサ(アームあたり6つのトランスデューサ)を含む場合、第2の実施形態のアンテナ10’は、それらの6×6を含む。そして、トランスデューサの数を低減することにより、それに応じてそれらの制御電子機器を簡素化することが可能になり、それによって、各トランスデューサに対して、かなり複雑な方法で経時的に変化する、少なくとも約100ボルトの出力電圧を供給することができるアンプを備え得ることを思い起こさせる。この制御電子機器を更にコンパクトにすることにより、アンテナ10の近くの音響測深機1のヘッド内に収容することが可能になり、それによって、音響測深機のヘッドを駆動及び取得システムの残りの部分に接続するケーブルのシステムが大幅に簡素化される。
【0100】
更に、ミルズクロスアンテナ10を備えたこのパラメトリック音響測深機1により、上記の一連のステップa)の連続実行中に、この一連のステップa)の実行中に第2のビームW2によってスキャンされた観測量の内容物を表す、(音響波間の周波数混合なしで取得された)水中環境3の「従来の」非パラメトリック3次元ソナー画像を撮影することを可能にする。
【0101】
トランスデューサの行列を備えた送信アンテナ
図15に示されるように、第2の実施形態では、送信アンテナ10’のトランスデューサ11、12は、いくつかの行及びいくつかの列の行列を形成するように配置され、トランスデューサ11、12は、それぞれ、行列の行と列との間の異なる交点に配置されている。
【0102】
ここでは、それは長方形の行列であり、その列は、行に対して垂直である。したがって、トランスデューサ11、12は、長方形ネットワークのノードに配置されている。この行列の行に対して平行な軸はxで表され、列に平行な軸はyで表されている。x軸は、船舶2の長手方向軸に対して平行である。
【0103】
各行に沿って、及びこの行列の各列に沿って、トランスデューサ11、12は、ここでは20センチメートルより長く、更には50センチメートルより長い長さにわたって分散されている。
【0104】
(第2の周波数f2で駆動される)第2のグループ14’のトランスデューサ12に対して、(第1の周波数f1で駆動される)第1のグループ13’のトランスデューサ11が配置される方法について、以下に説明する。
【0105】
駆動の観点から、この第2の実施形態では、音響測深機1’の駆動及び取得システム30’は、ステップa)において、
-第1の音響波がコリメートされた第1のビームW1’として伝播するような値である、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を与え(図16)、
-第2の音響波がまたコリメートされた第2のビームW2’として伝播するような値である、第2の遅延Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を与える、ように構成されている。
【0106】
これらの第1及び第2のビームW1’、W2’は両方とも、重ね合わせ軸zを構成する同じ軸を中心とする。
【0107】
この第1のコリメートされたビームとして第1の音響波を送信するために、駆動及び取得システム30’は、例えば、第1のグループ13’の各トランスデューサ11に対して、このトランスデューサ11に供給する第1の送信信号s1,1、s1,2、s1,3…が、基準信号s1に関して、アンテナ10’の表面において対象のトランスデューサ11の位置を示すベクトルrによる方向付けベクトルuZSのスカラ積に比例する値を有する、第1の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3…を有するように、第1の送信信号を生成する。方向付けベクトルuZSは、例えばユニタリのベクトルであり、その方向は重ね合わせ軸zの方向である。
【0108】
第2の送信信号は、第1の送信信号と同じ方法で生成されるが、もちろん、第2の周波数f2に等しい周波数で生成される。
【0109】
この第2の実施形態では、第1及び第2のビームW1’、W2’は、ほぼ完全に互いに重なっている(それらは互いにほぼ一致している)。その中で低周波数波が生成される共通ビームWo’は、次いで、これら2つのビームW1’及びW2’の一方に直接対応するか、他方に同等に対応する。これらの異なるビームW1’、W2’、及びWo’は、ほぼ円錐形である。第1及び第2のビームW1’及びW2’の各々は、例えば、重ね合わせ軸z及びx軸を含む第1の平面、並びに重ね合わせ軸z及びy軸を含む第2の平面の両方において、2度未満の、減少した角度開口を有する(この角度開口は、第1又は第2のビームの断面において第1及び第2の音響波の音響強度を表すピークの最大値の半分の角度幅である)。
【0110】
この海底下40の内容物を、海底4の異なるポイントP1、P2、P3の下方で測深するために、第1のビームW1’及び第2のビームW2’の方向を一緒に変更するように、駆動及び取得システム30’はここで、ステップa)の1回の実行から次の実行までの、第1及び第2の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を変化させ、それによって、それらが互いに重なり合ったままであるが、海底4の別のポイントを指すことができる。
【0111】
図16図18は全て、送信ステップa)の3回の連続実行に対して、第1及び第2の音響波によって形成された第1及び第2のビームW1及びW2’を概略的に示している。これらの図に参照として表され、固定されているz軸は、アンテナ10’に対して垂直である。
【0112】
第1の実施形態と同様に、駆動及び取得システム30’は、ステップa)において、重ね合わせ軸zと水中環境の海底4に対して垂直な軸との間に形成される入射角が上記の限界入射角よりも大きくなるように、アンテナ10’のトランスデューサ11、12を駆動する、ように構成されている。上記で説明したように、これにより、埋没物の検出が容易になる。その目的のために、駆動及び取得システム30’は、重ね合わせ軸zが海底に対して垂直な軸に対して傾斜するように、第1及び第2の遅延Δt1,1、Δt1,2、Δt1,3、Δt2,1、Δt2,2、Δt2,3…を調整する。
【0113】
第1及び第2の音響波が可能な限り重なり合うように、且つそれらの伝播の始まりとして、アンテナ10’の表面において、それらを2つの別個の領域に分散するのではなく、第1のグループ13’のトランスデューサ11を第2のグループ14’のトランスデューサ12と混合することができる(そのうちの一方は第1のグループのトランスデューサ11を排他的に収集し、他方は第2のグループのトランスデューサ12を排他的に収集する)。
【0114】
アンテナ10’上で、第1のグループのトランスデューサ11及び第2のグループのトランスデューサ12は、交互に、より正確に分散される。第1のグループ13’の各トランスデューサ11は、最も近く隣接するものに対して、第2のグループ14’のトランスデューサ12を有する。ここで、トランスデューサ11、12はしたがって、チェッカーボードとして分散され、その各白い正方形は、第1のグループのトランスデューサ11の1つによって占有され、その各黒い正方形は、第2のグループのトランスデューサ12の1つによって占有される。
【0115】
第1のグループのトランスデューサ11が、アンテナ10’の表面において、第2のグループのトランスデューサ12と混合される他の構成を企図することができる。この点で、トランスデューサはチェッカーボードとして分散され得、その各白い正方形は(1つのみではなく)第1のグループの2つのトランスデューサによって占有され、各黒い正方形は(1つのみではなく)第2のグループの2つのトランスデューサによって占有される。したがって、より一般的には、第1のグループ13’のトランスデューサ11は、全てのトランスデューサによって形成される行列のいくつかの別個の領域を占有し、第2のグループ14’のトランスデューサ12の1つ以上は、領域の任意の2つの間に挿入される。
【0116】
高速取得
水中環境3の海底4が音響測深機1;1’に対してかなりの深さに位置する場合、この環境の海底下40の内容物を表す画像IMのポイントごとの取得は、それを加速することを意図する特定の設備が実装されていない場合、特に長くなる場合がある。
【0117】
実際、そのような機器がない場合、音響測深機1;1’と海底4と間、海底4の第1のポイントP1の下方の海底下の測深と海底4の第2のポイントP2の下方の海底下の測深の間の往復(水中の音速での往復)時間よりも長い時間を待って、これらを区別できなくする、これらの2つのポイントP1、P2から来るエコー信号Sの時間の重ね合わせを回避する必要がある。
【0118】
この困難を克服し、水中環境3の海底下40の内容物を表す画像IMの迅速な取得を可能にするために、たとえこの環境が深い場合でも、駆動及び取得システム30;30’はここで、第1及び第2の実施形態の両方において、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の差を変化させるように構成されている。
【0119】
ステップa)の1回の実行から次の実行まで、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を変化させることにより、(ステップa)の1回の実行から次の実行まで変化する)重ね合わせ軸zの方向を周波数エンコードする方法を可能にする。実際、音響測深機によって測深された海底4の異なるポイントP1、P2、P3は、次いで、互いに異なる値fLF1、fLF2、fLF3、…fLFnを有する低周波数波によって測深される。したがって、これらの異なるポイントから来る個別のエコー信号sは、たとえ時間的観点から互いに重ね合わされている場合でも、互いに区別することができる。
【0120】
言い換えれば、たとえ送信ステップa)の異なる実行の後に受信された個別のエコー信号sのセットが、異なる個別のエコー信号が時間的に互いに重ね合わされる(このエコー信号全体は次いで、各瞬間において、重ね合わせ、すなわち個別のエコー信号sの合計に等しくなる)、同じ全体のエコー信号の形態をとる(例えば、受信機20及び取得モジュール33によって連続的に取得される)場合でも、これらの個別のエコー信号sの各々は、ここでは頻繁なフィルタリングによって、エコー信号全体から抽出することができる。
【0121】
次いで、送信ステップa)の異なる実行は、互いに短い間隔で、更に同時に、水中環境の深さに関係なく、海底の異なるポイントから来る個別のエコー間の混乱のリスクなしに行うことができる。これにより、この環境の海底下40の内容物を表す画像IMを取得するために必要な持続時間が大幅に低減される。
【0122】
このように、海底を測深することを意図した一連の送信の合計持続期間を低減することにより、音響測深機1の潜在的な寄生動作又は水中環境3の特性の潜在的な変動による画像IMに対する寄生の影響を低減することが可能になる。
【0123】
図9図14は、ステップa)の数回の連続実行中にそのように送信された第1及び第2の音響波のいくつかの特徴を示し、その間に、第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の差が変化する。これらの図面は、音響測深機1(ミルズクロスアンテナ)の第1の実施形態の場合に対応する。この技術は、他の実施形態、特に上記の第2の実施形態と同様に使用され得る。
【0124】
ここで、この一連の送信中、第1の周波数f1は一定値f1を維持するが、第2の周波数は変化する。ステップa)の連続実行中、第2の周波数f2は連続して異なる値f2、f2、f2、…f2をとり(図11及び図14)、各々がこれらの実行の1つに関連付けられている(すなわち、それぞれ、実行n°1、実行n°2などに関連付けられている)。これらの値は互いに異なる。それらは、例えば、ステップa)のこれらの連続実行にわたって線形に増加する。
【0125】
したがって、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、水中で生成される低周波音響波の周波数fLもまた変化し、これらの異なる実行中に、互いに異なる値fLF1、fLF2、fLF3、…fLFnを連続してとる(図14)。これらの異なる値fLF1、fLF2、fLF3、…fLFnは、例えば、2つずつ、0.5キロヘルツで分離され、15~25キロヘルツに分散され得る。もちろん、この結果は、第2の周波数f2を固定して維持しながら、第1の周波数f1を変化させることによっても取得することができる。
【0126】
これらの異なる送信に応じて受信された個別のエコー信号sを抽出するために、駆動及び取得システム30は、エコー信号全体の頻繁なフィルタリングを実行し、ここで、海底下40を特徴付ける方法の間に受信機20によって連続的に取得される。このエコー信号全体は、例えば互いに並列に動作する異なるバンドパスフィルタによってフィルタ処理され、(ステップa)の連続実行中に、第1の周波数と第2の周波数の差によって取得された異なる値に等しい)それぞれ異なる周波数値fLF1、fLF2、fLF3、…fLFn(の連続実行中に取得された様々な値に等しい)を中心化される。次いで、これらの異なるフィルタによって提供されたフィルタリングされた信号は、上記の異なる個別のエコー信号に対応し、個別のエコー信号の各々は、例えば、ステップa)の対応する実行中に狙われる海底のポイントP1、P2、P3の下方の海底下40の内容物を表す1次元画像を判定することを可能にする。
【0127】
ここで、図9図13を参照して、ステップa)のこの一連の実行中に送信された第1及び第2の音響波の空間特性を提示する。
【0128】
第1の音響波はここで、ステップa)の1回の実行から次の実行まで、シームレスに連続的に送信される。したがって、それは同じ全音響波を形成し、その持続時間は、ステップa)の異なる実行中にアンテナ10の第2のアーム14によって送信される第2の波の持続時間よりも長い。
【0129】
図9及び図10は、所与の瞬間において、この第1の波によって占有された水中環境3の領域Z1を、それぞれ正面図(すなわち、アンテナ10の第1のアーム13に対して垂直な平面内)、及び側面図(この第1のアーム13に対して平行な平面内)で示している。
【0130】
図11は、図9と同じ瞬間において、上記のステップa)の異なる実行中に送信された第2の音響波によって占有される領域Z2、Z2、…、Z2を正面図で示している。これらの異なる領域はまた、図12の側面図に示されている。
【0131】
図13は、図9図11との重ね合わせに対応している。それは、図9及び図11と同じ瞬間において、対象の第1の音響波及び第2の音響波によってそれぞれ占有される領域Z1及びZ2、Z2、…、Z2を示している(正面図)。したがって、図13は、空間的観点から、混合によって生成される「低周波数」音響波の周波数の変化を、重ね合わせ軸の方向の関数として示している(この図の参照記号zS1、zS2、…、zSnによって識別されている)。図9図13は、対象の音響波によって占有された領域の瞬間的な図であり、この意味で、それらは、第1及び第2の音響波に対して、その伝播中にこの波によってスキャンされた領域全体を示している(このスキャンされた領域はビームW1又はW2に対応する)、図5図7の図とは全く異なることに留意されたい。
【0132】
非パラメトリックソナー画像
ステップa)において行われた第1及び第2の音響波の送信により、上記で説明した水中環境3の海底下40の低周波測深に加えて、少なくとも水中環境3の一部を表す「従来の」ソナー画像を撮影することを可能にする。この追加の画像IM’は、画像IMとは異なり、水中で周波数を混合することなく取得されるという意味で、従来のソナー画像である。
【0133】
ここで説明される実施形態では、駆動及び取得システム30;30’は、この可能性を利用している。実際、ここでは、
-ステップa)の各実行後、ステップa)において行われた送信に応じて、アンテナのトランスデューサ11、12の少なくとも1つによってピックアップされた、第1の周波数f1又は第2の周波数f2に等しい周波数の追加のエコー信号を取得するステップb’)を実行し、
c’)追加のエコー信号に基づいて、上記の追加の画像IM’を判定する、ように構成されている(図8)。
【0134】
この設備により、単一の一連の送信を行うことによって、すなわち、ステップa)の単一の一連の実行を行うことによって、「パラメトリック」画像IM及び追加の画像IM’の両方を取得し、したがってそれらの利点、すなわち、
-海底下40への良好な浸透を可能にするが、信号対雑音比は一般に従来のソナー画像化よりも低くなる(したがって、水中環境3の残りの部分を測深するために後者よりも適合されていない)、低周波パラメトリックソナー画像化の利点、
-信号対雑音比が一般に高く、水中環境3の残りの部分を測深するために、特にその深さを測深するのに適合されている、従来のソナー画像化の利点、を組み合わせることを可能にする。
【0135】
駆動及び取得システム30;30’はここで、これらの追加のエコー信号に基づいて、海底下40が低周波数波によって測深される、水中環境3内の、海底4の異なるポイントP1、P2、P3の深さを判定するように構成されている。
【0136】
これにより、従来のソナー画像化による、水中環境3の海底4の一部の地形の高精度調査と、パラメトリック画像化による、海底4のこの部分の下に位置する海底下40の内容物の調査とを組み合わせることが可能になる。
【0137】
更に、駆動及び取得システム30;30’は、パラメトリックエコー信号sの処理によって生成されたデータを、上記の追加のエコー信号の処理によって生成されたデータとマージするように構成され得る。このマージには、例えば、従来の追加のエコー信号からより正確に推定された海底のポイントP1、P2、P3の深さに基づいて、パラメトリックエコー信号sから推定された深さの調整を含み得る。
【0138】
例として、第1の実施形態の場合、重ね合わせ軸zの方向が第2の送信面Pl2の方向を変化させることによって変更されると、一方で、ステップb’)において、音響測深機1は、(潜在的なドップラーシフトとは別に)第2の周波数f2に等しい周波数のいくつかの追加のエコー信号を取得する。これらの追加のエコー信号は、アンテナの第1のアーム13の異なるトランスデューサ11によってピックアップされ、これらのトランスデューサ11は次いで、受信に使用される。既知のように、ステップb’)のこの実行中に取得された全ての追加のエコー信号は、その伝播中にステップa)において送信された第2の音響波によってスキャンされた、スキャンスワスW2の内容物を表す2次元画像を判定することを可能にする。ステップa)及びb’)が第2の送信面Pl2のいくつかの異なる方向に対して繰り返されるため、最終的に取得される追加の画像IM’は、ステップa)のこの一連の実行中に第2のビームW2によってスキャンされた観測量における水中環境3の内容物を表す3次元ソナー画像である。
【0139】
最後に、駆動及び取得システム30;30’は、追加のエコー信号(従来の「非パラメトリック」エコー信号)に基づいて、音響測深機によって測深された海底のポイントP1、P2、P3の下方に位置する水中環境の海底下40の表面層の構成を表すデータを判定するように構成され得る。海底下のこの表面層は、海底下の上部であり、水と接触する。対象のデータは、特に、この海底下の表面層が砂、小石、断片化した岩石、又は緩い堆積物で構成されているかどうか、又はそれが、全体として一体の岩盤若しくは固化した堆積層の代わりに構成されているかどうかを示している。特に、駆動及び取得システム30:30’は、例えば、出願人によって開発された製品Seapixに含まれるような海底分類モジュールを備え得る。横断方向のスキャンスワスを使用することにより、かすめ角の関数として海底の後方散乱指数を測定することが可能である。これらのパラメータは、海底の性質に直接関連している。詳細については、2018年のTrung-Kien Nguyenによる文書「Seafloor classification with a Multi-swath Multi-beam Echo Sounder」を参照することができる。この場合に使用される方法は、長手方向のスキャンスワスによって超音響波処理された、海底上の一連の固定領域を観察することである。船舶が直線的に進むと、これらの領域は、測深機の各画像化フェーズにおいて異なる視野角で観察される。観測角度の関数として各領域の明るさをメモリに保持することによって、観測された海底のタイプ(岩、砂のタイプ、泥、海藻…)の特徴である、海底の後方散乱プロファイルがそれらの各々に対して保持される。
【0140】
駆動及び取得システム30;30’は次いで、データの関数として、船舶2の移動用の設定点速度を判定するように構成され得る。対象のデータが海底下40の表面層が埋没物を含みやすいことを示している、すなわち、このデータが、海底の表面層が砂、小石、断片化した岩石、又は緩い堆積物で構成されていることを示している場合、この設定点速度は、このデータが、海底下40の表面層が埋没物を含みにくいことを示し、すなわち、それが全体として一体の岩盤又は固化した堆積層で構成されている場合よりも遅くなる。次いで、この設定点速度は、船舶の移動のシードをこの設定点値に調整する船舶2の駆動システムに送信される。これらの設備により、埋没物を含みにくい海底の部分を詳細に測深することを回避することにより、水中環境の海底の所与の表面を探索するために必要な時間を短縮することが可能になる。
【0141】
音響測深機、及び上記で説明した水中環境の海底下の一部の特徴付けの方法には、様々な変形例を適用することができる。
【0142】
第1に、第1のグループのトランスデューサによる第1の音響波の送信の代わりに、第2の音響波は、第1のグループとは異なる第2のグループのトランスデューサによって送信されるが、各トランスデューサがこれらの2つの波の送信に寄与することができる。そのような変形例のフレームワーク内で、駆動及び取得システムは、トランスデューサ11、12を駆動する送信信号が各々、第1の周波数f1及び第2の周波数f2で経時的に変化する第1の成分及び第2の成分をそれぞれ含むように構成されている。次いで、アンテナのトランスデューサ11、12は、ステップa)において、ここでは振幅で変調され、第1の音響波及び第2の音響波から構成される重ね合わせ軸zに沿って伝播する変調された音響波を送信する。言い換えれば、この変調された音響波は、第1の音響波及び第2の音響波に分解される。更に、送信信号はまた、振幅変調信号である。トランスデューサ11、12の駆動電子機器の観点から、トランスデューサはより複雑な形態の高電圧振動信号を供給されなければならないため、この変形例は、別個のトランスデューサによる第1及び第2の音響波の送信よりも実施が難しい。
【0143】
更に、上記で説明さしたものとは異なるアンテナ面上のトランスデューサの配置を使用することができる。この点で、トランスデューサは、クロス又は行列の代わりにスパイラルを一緒に形成するように分散され得る。
【0144】
しかし、いずれにせよ、アンテナのトランスデューサは、全て同じラインに沿って分散されているわけではない。すでに示されたように、それらの位置は、表面全体にわたって2次元に分散している。より正確には、送信アンテナの異なるトランスデューサを含む全体が、2つの直交する方向に沿って、それぞれが20センチメートルより長い、又は更に50センチメートルより長い2つの次元を有する表面にわたって延びる。これにより、第1及び第2の音響波を良好な指向性で送信することが可能になり、表面単位あたりのそれらのパワーが増大するため、低周波数音響波の生成の非線形プロセスの効率が向上する。これにより、水中環境の海底下40の内容物を良好な横方向解像度で測深することが可能になる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】