(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】人員輸送設備の部品のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのための方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230306BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543461
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2021050020
(87)【国際公開番号】W WO2021144157
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルトーナ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フランキー
【テーマコード(参考)】
3F304
3F305
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304BA27
3F305DA21
(57)【要約】
本発明は、検出装置201を用いた乗客輸送設備11のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのための方法151に関する。接続部品VEは、検出装置201の工具WZを使用して取り付けられ、検出装置201は、取り付け中に前記部品の位置POS及び取り付けパラメータEPを測定し、それらのデータは、位置が定義される手法で、取り付けデータレコードDSとして、物理的乗客輸送設備11をマッピングするデジタルツインデータレコード111に入力される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置(201)を用いた乗客輸送設備(11)のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのための方法(151)であって、前記検出装置(201)は、
- 中央位置分析デバイス(PAG)、
- 少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)、
- 少なくとも1つの携帯用工具(WZ)であり、取り付け中に携帯用工具(WZ)によって測定された接続部品(VE)の位置(POS)及び取り付けパラメータ(EP)とともに、この工具(WZ)を用いて取り付けられた接続部品(VE)からのデータを記録する技術的手段を有する、少なくとも1つの携帯用工具(WZ)、
- 乗客輸送設備(11)のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのパラメータが記憶された中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)を備え、
- 通信接続(K1A、K1B、K2、K3)は、工具(WZ)、少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)、中央位置分析デバイス(PAG)、及び中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)の間でセットアップされ、
- 工具(WZ)から少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)及び中央位置分析デバイス(PAG)を介して中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)へ送信された取り付けられた接続部品(VE)のデータを使用して、取り付けデータレコード(DS)が生成され、
- 取り付けデータレコード(DS)は、割り当てられた取り付けられた接続部品VEのための少なくとも1つの識別子(ID)と、その測定された位置(POS)と、工具(WZ)によって測定された取り付けパラメータ(EP)とを含み、
- これらの取り付けデータレコード(DS)は、物理的乗客輸送設備(11)をマッピングするデジタルツインデータレコード(111)に、位置が定義される手法で入力される、方法(151)。
【請求項2】
検出装置(201)を使用して、
中央位置分析デバイス(PAG)と中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)との間に第1の通信接続(K1A、K1B)をセットアップするステップS1、
中央位置分析デバイス(PAG)と少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)との間に第2の通信接続(K2)をセットアップするステップS2であり、各ローカル位置検出デバイス(PEG)が、中央位置分析デバイス(PAG)に一意に割り当てられる、ステップS2、
ローカル位置分析デバイス(PEG)と少なくとも1つの工具(WZ)との間に第3の通信接続(K3)をセットアップするステップS3、
この目的のために設けられた、建物(3)における乗客輸送設備(11)の少なくとも1つの部品(33、55)を、工具(WZ)を使用して接続部品(VE)を用いて組み立てるステップS4、
工具(WZ)を用いて取り付けられた接続部品(VE)のための識別子(ID)を決定し、工具(WZ)を用いて取り付けパラメータ(EP)を測定し、取り付け中にローカル位置検出デバイス(PEG)を用いて接続部品(VE)の取り付け位置(POS)を測定するステップS5、
工具(WZ)を用いた取り付けプロセスのドキュメンテーション(DK)を行うステップS6、
携帯用工具(TM)と関連した少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)において、取り付けられた接続部品(VE)のための識別された識別子(ID)、その測定された位置(POS)、測定された取り付けパラメータ(EP)、及びドキュメンテーション(DK)を含む取り付けデータレコード(DS)を編集するステップS7、
少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)から第2の通信接続(K2)を介して中央位置分析デバイス(PAG)へ取り付けデータレコード(DS)を送信するステップS8、
中央位置分析デバイス(PAG)から第1の通信接続(K1A、K1B)を介して中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)へ取り付けデータレコード(DS)を送信するステップS9、
中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)上でこの目的のために設けられた、乗客輸送設備(11)のデジタルツインデータレコード(111)に設けられたフィールドへの取り付けデータレコード(DS)及び関連メタデータ、特にログデータの位置定義された入力を行うステップS10
が実行される、請求項1に記載の方法(151)。
【請求項3】
第1の通信接続(K1A)が、乗客輸送設備(11)の通信部品(43)を介してセットアップされる、請求項2に記載の方法(151)。
【請求項4】
検出装置(201)が、整備工を支援するため、及び方法ステップS4を補助するための少なくとも1つの取り外し可能な携帯用ディスプレイデバイス(DG)を備え、検出装置(201)を使用して、
携帯用ディスプレイデバイス(DG)上に、整備工によって実行されるアクティビティを表示するステップS4Aが実行され、このアクティビティが、組立て仕様(MS)に基づいて、携帯用工具(WZ)及び接続部品(VE)を使用して行われ、組立て仕様(MS)が、乗客輸送設備(11)のデジタルツインデータレコード(111)の一部として、中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)に記憶される、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の方法(151)。
【請求項5】
検出装置(201)が、接続部品(VE)のため、及び方法ステップS4を補助するための提供システム(BSS)を備え、検出装置(201)を使用して、
組立て仕様(MS)に基づいて、提供システム(BSS)を用いて接続部品(VE)を自動的に提供するステップS4Bと、
乗客輸送設備(11)の部品(39、55)上に、又は乗客輸送設備(11)が設置される建物(3)において、表示された接続部品(VE)を、この接続部品(VE)のために提供される接続部品レセプタクル(35)に整備工によって携帯用工具(TM)を使用して取り付けるステップS4Cと
が実行される、請求項4に記載の方法(151)。
【請求項6】
デジタルツインデータレコード(111)のデータを使用して、
事前に定義された許容差範囲外である材料変化及び材料応力を決定するために、乗客輸送設備(11)の他の部品(39、55)と相互作用する取り付けられた接続部品(VE)の挙動、力及びモーメントのシミュレーション(141)を行い、シミュレーション(141)が、データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)上で行われるステップS11、
決定された材料変化及び材料応力に基づいて修正作業を決定するステップS12
が実行される、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法(151)。
【請求項7】
取り付けデータレコード(DS)が少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)及び/又は中央位置分析デバイス(PAG)で集約される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(151)。
【請求項8】
中央位置分析デバイス(PAG)の位置を基準として工具(WZ)の位置を決定することによって、及び/又は組立てプロセス中に工具(WZ)の現在のGPSデータを決定することによって、取り付け位置(POS)及び取り付けパラメータ(EP)の測定が、取り付け中に携帯用ローカル位置検出デバイス(PEG)を用いて技術的に実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(151)。
【請求項9】
行われた取り付けのドキュメンテーション(DK)が、カメラベースである、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法(151)。
【請求項10】
乗客輸送設備(11)のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのデータ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)が、設計仕様、そのパラメータ化、組立て仕様(MS)、並びに、接続部品(VE)毎に、識別子(ID)のデータフィールド、取り付け位置(POS)のデータフィールド、測定された取り付けパラメータ(EP)のデータフィールド、及びドキュメンテーション(DK)のデータフィールドを含み、それら全てがデジタルツインデータレコード(111)において結合される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(151)。
【請求項11】
データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)が、プログラマブル装置(101)で実施され、好ましくはリモートシステム、特にクラウドシステムで実施される、請求項1に記載の方法(151)。
【請求項12】
請求項2の少なくとも方法ステップS1からS10を実施するように設計された、検出装置(201)を実施するためのコンピュータ実行可能命令(107)を含む、コンピュータプログラム製品(109)。
【請求項13】
請求項12に記載の、持続的に記憶されたコンピュータプログラム製品(109)を有する、コンピュータ可読媒体(105)。
【請求項14】
請求項2から11のいずれか一項に記載の方法(151)を実行するための検出装置(201)であって、
- 方法(151)のステップS2からS8を実施するように設計された技術的手段を有する少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)と、
- 方法(151)のステップS1、S8及びS9を実施するように設計された技術的手段を有する中央位置分析デバイス(PAG)と、
- 整備工を支援するための少なくとも1つのディスプレイデバイス(DG)と、
- 少なくとも1つの携帯用工具(WZ)であり、接続部品(VE)の取り付け中に携帯用工具(WZ)によって測定された取り付けられた部品(VE)の位置(POS)及び取り付けパラメータ(EP)とともに、取り付けられた部品(VE)の識別子(ID)を記録する技術的手段を有する、少なくとも1つの携帯用工具(WZ)と、
- ステップS10からS12を実施するように設計された技術的手段を有し、乗客輸送設備(111)のドキュメンテーショ及びシミュレーション(141)のための取り付けパラメータ(EP)が記憶された中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)とを備え、
通信接続(K1A、K1B、K2、K3)は、工具(WZ)、少なくとも1つのローカル位置検出デバイス(PEG)、中央位置分析デバイス(PAG)、及び中央データ記憶及びデータ処理ユニット(ZD)の間でセットアップされることが可能であり、
- 設計仕様、そのパラメータ化、組立て仕様(MS)、並びに、接続部品(VE)毎に、識別子(ID)のデータフィールド、取り付け位置(POS)のデータフィールド、測定された取り付けパラメータ(EP)のデータフィールド、及びドキュメンテーション(DK)のデータフィールドを含むデジタルツインデータレコード(111)を備える、
検出装置(201)。
【請求項15】
接続部品(VE)のための提供システム(BSS)であり、方法(151)のステップS4B及びS4Cを実施するように設計された技術的手段を有する、提供システム(BSS)を更に備える、請求項14に記載の検出装置(201)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客輸送設備に取り付けられた部品のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本文書の意義の範囲内の乗客輸送設備は、エスカレーター、動く歩道、又はエレベーターとして構成される。これらは、一般的に、建物内で人又は物体を輸送可能とするために使用される。エレベーターは、通常、建物のいくつかの階を接続する。エスカレーター及び傾斜した動く歩道は、通常、建物の2つの階を接続し、水平な動く歩道は同一の階に配置される。
【0003】
エレベーターの場合、エレベーターのシャフト又は設置空間は建物内又は建物の外側に設けられ、そのシャフト又は空間内で、1つ又は複数のエレベーターのかご、釣り合い重りなどのエレベーターの移動性部品が移動可能である。可動部品は、通常、ケーブル又はベルトなどの懸架手段によって移動され、その後、モーターによって駆動される駆動綱車によって移動される。更に、油圧操作されるエレベーターも存在する。
【0004】
上述した可動部品に加えて、エレベーターの多数の静的部品が、エレベーターシャフトに通常配置される。例えば、ガイドレールがエレベーターシャフトに固着され、それに沿って可動部品が案内されて移動可能である。例えばエレベーター設備における動作不良又は欠陥が発生した時にエレベーターのかごが地面に強く打ち付けられるのを防止するために、緩衝材が、エレベーターシャフトの底部に通常設けられる。駆動ユニットは、エレベーターシャフトの天井近く、又は建物の分離した機械室に設けられ、例えば、その駆動ユニットが懸架手段を駆動し、それによりエレベーターシャフト内のそれらの懸架手段に取り付けられた移動性部品を移動させる。建物の異なる階において、自動的に動作可能なドアが、エレベーターシャフトに通常設けられ、そのドアは、特定の階に停止したエレベーターのかごにアクセスできるように開放し、エレベーターのかごがその階から離れると即座に、アクセスを遮断することができる。センサ、スイッチ、検出器、非常ブレーキデバイス、避難デバイスなどの追加の安全性関連のエレベーター部品も、エレベーターシャフトに配置され得る。それらのサイズと、建物の構造に対する密接な接続のため、エレベーターは、通常、部品に分解されてから建物に持ち込まれ、そこに設置される。換言すれば、エレベーターを設置する時には、エレベーターは、この目的のために設けられた設置空間に全体として設置されるのではなく、その部品が、エレベーターシャフトの指定位置で組み立てられ、したがって、エレベーター設備はエレベーターシャフトで連続して組み上げられる。
【0005】
エスカレーターはステップバンドを有し、動く歩道はパレットバンドを有し、そこに第1のアクセス領域を介して入ることができ、そこから第2のアクセス領域を介して出ることができる。循環する欄干ベルトを有する手摺が、ステップベルト又はパレットベルトの側部に配置される。更に、駆動ユニット、コントローラ、並びに、センサ、スイッチ、検出器、及び非常ブレーキデバイスなどの任意選択での追加の安全性関連部品が存在する。それらの部品の全ては、支持構造内、およびその上に配置され、支持構造は、建物の少なくとも2つの軸受点で支持される。製造工場でエスカレーター又は動く歩道を完全に組み立てて梱包し、それを意図される使用場所に輸送して、その建物に設置することが、一般的な方法である。エスカレーター又は動く歩道は、全体的に建物内に設置されることが可能であるが、この乗客輸送設備は、通常、非常に長いため、機能テスト後に製造工場で部分に分割され、その後、それらの部分は、梱包されて発送される。ただし、建物並びにエスカレーター又は動く歩道の設計に応じて、それらの部品は分解され、配送されて、建物で連続的に組み立てられる場合も更にあり得る。これは、特に、以前使用された乗客輸送設備の支持構造が依然として使用されている現代的なエスカレーター及び動く歩道の場合である。
【0006】
アンカー、ねじ、締め付け要素、及びテンション要素などの機械的接続部品、並びに接着点又は溶接部などの材料接続部品は、乗客輸送設備の部品を組み立てるために使用され、その正しい適用は、その適用を行う整備工に大幅に依存する。ただし、正確には、その円滑な動作、耐摩耗性、エネルギー消費、騒音放射などに関する、設置された乗客輸送設備の品質に対する強力な影響を有し得るのは、接続部品の適用の品質である。
【0007】
したがって、最初に乗客輸送設備を設置した際、更に任意選択で、既存の乗客輸送設備のその後の保守又は改修の際に、多くの製造業者又は操作者が、建物に設置された乗客輸送設備の部品の点検又は検収完了をその後で実行し、その結果をログとして記録することが一般的な方法である。そのような点検は、通常、少なくとも、含まれる部品のシリアル番号及び型の記録と、それらの正しい設置のドキュメンテーションを含む。乗客輸送設備の安全性関連部品の場合、証明書番号も通常記録され、機能テストが実行される。
【0008】
この点検又はロギングプロセスは、従来、適切な資格を有する認定整備工などの人によって手作業でほぼ実行されてきており、この人が建物に収容された乗客輸送設備の膨大な数の部品を点検し、それらを目標とする仕様と比較し、対応するログを作成していた。これは、乗客輸送設備の設置及び/又は保守のドキュメンテーションにおいて安全性に関係するエラーにつながり得る。設置のドキュメンテーションにおけるエラーは、更に、結果として、後に保守が実行される時に、大量の追加作業、関連のダウンタイム期間の増加、コストの増加が発生し得る。
【0009】
特許EP3377436B1は、エレベーターシャフトにおけるエレベーター部品の動作状態をログして、目標とする仕様と比較できるようにするために、その動作状態が自動的に読み取られ得る方法を記載する。ただし、この種類のロギングは、目標とする仕様との基本的な比較のみを可能とし、組立てエラーの場合に実行しなければならない事項など、更なる考慮がなされない。加えて、取り付け対象の各部品は、接続部品として使用されるねじ、ピン、ボルト、ナットなどの大量の資材であっても、明確なマーカーを予め有する必要がある。そのような接続部品に印付けを行うことは、製造及び流通において膨大な作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本目的は、更なる考慮を可能とし、より安価な、乗客輸送設備の取り付けられた部品のデジタルドキュメンテーションのための方法及び検出装置を明細に示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、乗客輸送設備のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのために、以下で説明される検出装置、及び、その検出装置を使用して実行される方法によって達成される。検出装置は、少なくとも以下の要素を備える:
- 中央位置分析デバイスと、
- 少なくとも1つのローカル位置検出デバイスと、
- 少なくとも1つの携帯用工具であり、取り付け中に携帯用工具によって測定された接続部品の位置及びパラメータとともに、この工具を用いて取り付けられた接続部品からのデータを記録する技術的手段を有する、少なくとも1つの携帯用工具と、
- 乗客輸送設備のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのパラメータが記憶された中央データ記憶及びデータ処理ユニット。
【0013】
この検出装置を使用して実行される方法は、工具と、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスと、中央位置分析デバイスと、中央データ記憶及びデータ処理ユニットとの間で通信接続がセットアップされるステップを少なくとも含む。通信接続がセットアップされるとすぐに、工具から少なくとも1つのローカル位置検出デバイス及び中央位置分析デバイスを介して中央データ記憶及びデータ処理ユニットへ送信された取り付けられた接続部品のデータを使用して、取り付けデータレコードが生成される。この場合、取り付けデータレコードは、割り当てられた取り付けられた接続部品のための少なくとも1つの識別子と、その測定された位置と、この接続部品の取り付け中に工具によって測定された取り付けパラメータとを含む。これらの取り付けデータレコードは、物理的乗客輸送設備をマッピングするデジタルツインデータレコードに位置が定義される手法で入力される。これは、取り付けパラメータと、その影響を受ける部品との間に直接リンクを形成し、取り付けが進むにつれて継続的に大きくなる設備の十分な精度のドキュメンテーション、したがってエラーのないドキュメンテーション、及び有効なシミュレーションを可能とする唯一のやり方である。
【0014】
当然ながら、この接続部品によって互いに接続される部品及び/又は建物に形成される固定点に接続される部品が、ここで同様に検出され得る。多くの場合、これらの部品は、工具又は個別のデバイスによっても検出され得る、バーコード、マトリクスコード、シリアル番号、RFIDタグなどの一意の電子的に記録可能な識別子を既に有する。必要に応じて、接続部品に物理的に記録されずに、工具を使用して部品に対して識別子を割り当てることも可能である。
【0015】
接続部品の位置が工具によって検出されるため、空間において接続された部品の正確な位置も同時に定義され、それによってデジタルツインデータレコードに入力されることができ、又は適宜調整されることができる。
【0016】
上述したように、デジタルツインデータレコードは、ドキュメンテーション及びシミュレーションのために提供される。デジタルツインデータレコードの生成は、好ましくは、必ずしも厳密でないが、所与の順序で、少なくとも以下のステップを含む:
(i)目標構成において乗客輸送設備の部品の特徴的な特性を再現する目標データを用いて、顧客固有の構成データ及び部品モデルデータレコードからコミッショニングデジタルツインデータレコードを作成するステップと、
(ii)作製の直後に物理的乗客輸送設備の部品の特徴的な特性を再現する実際のデータを測定し、コミッショニングデジタルツインデータレコードにおける目標データを、対応する実際のデータと置き換えることによって、コミッショニングデジタルツインデータレコードに基づいて作製デジタルツインデータレコードを作成するステップと、
(iii)少なくとも取り付けられた接続部品の決定された識別子、それらの測定された位置、及びそれらの測定された取り付けパラメータを再現する、検出装置によって記録されたデータを考慮に入れて、物理的乗客輸送設備の組み立て中に作製デジタルツインデータレコードを修正することによって、作製デジタルツインデータレコードに基づいてデジタルツインデータレコードを作成し、継続的に更新するステップ。
【0017】
デジタルツインデータレコードは、特に、デジタルツインデータレコードに送信されるそれらの取り付けデータレコードと、適宜更新されるその送信されたデータによって影響される部品モデルデータレコードの特徴的な特性とによって、作成され、継続的に更新される。なお、この時点で、提供された接続部品も、デジタルツインデータレコード中の部品モデルデータレコードとしてマッピングされる。
【0018】
換言すれば、デジタルツインデータレコードは、いくつかのサブステップで作成及び更新され得る。したがって、データレコードに含まれるデータが連続して改善及び洗練されることができ、それによって物理的乗客輸送設備に取り付けられた部品の特徴的な特性が、継続的に作成される、デジタルツインデータレコードにおける実際の現在の構成に関してますます精密に再現され、物理的乗客輸送設備の継続的な組立てにともなって、デジタルツインデータレコードは、ドキュメンテーションと、シミュレーションのための使用可能なデータとに関して完成される。
【0019】
これは、組み立て中に記録されデジタルツインデータレコードに入力された取り付けデータレコードも、少なくとも1つの部品モデルデータレコードの少なくとも1つの特徴的な特性に影響を与える場合があり、又は部品モデルデータレコードのこの特徴的な特性は適宜更新される必要があることを意味する。図面に関連して以下で詳述するように、取り付けデータレコードは、通常、いくつかの部品モデルデータレコードの複数の特徴的な特性に関係する。シミュレーションを用いて、デジタルツインデータレコードにおいて利用可能な幾何学的関係、部品モデルデータレコードに記憶された物理的特性、及び物理学、機械工学、及び材料力学の分野の知られている計算方法を使用して、工具の記録済みデータからそれぞれの影響を受けた部品モデルデータレコードに対して、それらの特徴的な特性のそれぞれの変化が計算され得る。検出された変化に基づいて決定された、影響を受けた部品モデルデータレコードの変更された特徴的な特性は、その組立てがその時点で正しく実行されたか否かを決定するためにこの時点で評価され得る。具体的には、例えば、ねじが過度に締め付けられた場合、それによって同様に加圧されたプラスチックダンピング要素は、破損する場合がある。対応するシミュレーションは、工具によって測定されて、取り付けデータレコードとしてデジタルツインデータレコードへ転送されるデータを用いて実行され得る。
【0020】
前述の例に関して、説明した位置検出によって、物理的乗客輸送設備が動作に入る前にいずれのダンピング要素が組立ての不具合によって交換される必要があるかも非常に明らかである。このようにして、起動時に発生し得る他の部品に対する重大な破損は回避できる。加えて、組立ての不具合によって破損した部品も、起動前又は起動中の乗客輸送設備に対してなされる調整に影響を及ぼす場合があり、例えば、後続の動作中における高エネルギー消費及び高消耗につながり得る。
【0021】
それらの部品が取り付け固有の手法で検出されるが、部品のドキュメンテーショ及びシミュレーションは、全ての乗客輸送設備に対して同一の手法で実行される。エスカレーターと、動く歩道と、エレベーターとの間の違いは、データフィールドの選択と、技術的プロセスのシミュレーションである。
【0022】
換言すれば、デジタルツインデータレコードの適応は、専用で割り当てられた乗客輸送設備の技術的パラメータ、取り付けられた接続部品の識別子、その測定された取り付け位置、接続部品を取り付ける時の始動トルクなどの測定された取り付けパラメータ、その寸法又は寸法の変更などを再現する取り付けデータレコードのデータフィールドの適切な選択、並びに、例えばカメラ録画を使用した取り付けのドキュメンテーションにあり、それらの全てのパラメータは、通常、携帯用工具によって収集又は測定される。顧客仕様からのデータ、そのデータ及び作製から編集される部品モデルデータレコードとともに、入力データが、乗客輸送設備を一貫して記述するデジタルツインデータレコードを形成する。
【0023】
換言すれば、ドキュメンテーションは、取り付け固有の手法で、それぞれの意図された部品又は設計及び作製中に発生する各部品の全データを可能な限り含むデジタルツインデータレコードを含む。したがって、それらのデータフィールド間の空間的及び物理的関係は、乗客輸送設備を形成する部品の空間的構成を記述及び定義するデジタルツインデータレコード、又は互いに関するそれらの部品モデルデータレコードによって作成され、対応するデータフィールドは、関係する部品モデルデータレコード及びそれらのインターフェースに割り当てられる。
【0024】
データ記憶及びデータ処理ユニット上のシミュレーションの適応は、取り付けられた接続部品の挙動、力及びモーメントをシミュレーションすることにあり、特に、乗客輸送設備の他の物理的部品の部品モデルデータレコードとの相互作用にある。これによって、事前に定義された許容差範囲外にある材料変化及び材料応力が決定でき、それによってセーフティクリティカルな状態が事前に、すなわち、部品又はユニットが故障する前に回避され得る。
【0025】
より詳細に説明すると、以下の方法ステップが、検出装置を有する乗客輸送設備の物理的部品の取り付け又は組み立て中に実行され得る:
中央位置分析デバイスと中央データ記憶及びデータ処理ユニットとの間に第1の通信接続をセットアップするステップS1、
中央位置分析デバイスと、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスとの間に第2の通信接続をセットアップするステップS2であって、各ローカル位置検出デバイスは、中央位置分析デバイスに一意に割り当てられる、ステップS2、
ローカル位置分析デバイスと、少なくとも1つの工具との間に第3の通信接続をセットアップするステップS3、
この目的のために設けられた、建物における乗客輸送設備の少なくとも1つの部品を工具を使用して接続部品を用いて組み立てるステップS4、
自動的に割り当てることによって、又は、工具を用いて取り付けられた接続部品のための接続部品のマーカーを存在する場合に検出することによって識別子を決定し、更に、工具を用いて取り付けパラメータを測定し、取り付け中にローカル位置検出デバイスを用いて接続部品の取り付け位置を測定するステップS5、
工具を用いた取り付けのプロセスのドキュメンテーションを行うステップS6、
携帯用工具と関連した少なくとも1つのローカル位置検出デバイスにおいて、取り付けられた接続部品のための識別された識別子、その測定された位置、測定された取り付けパラメータ、及び取り付けプロセスのドキュメンテーションを含む取り付けデータレコードを編集するステップS7、
少なくとも1つのローカル位置検出デバイスから第2の通信接続を介して中央位置分析デバイスへ取り付けデータレコードを送信するステップS8、
中央位置分析デバイスから第1の通信接続を介して中央データ記憶及びデータ処理ユニットへ取り付けデータレコードを送信するステップS9、及び
中央データ記憶及びデータ処理ユニット上でこの目的のために設けられた、乗客輸送設備のデジタルツインデータレコードに設けられたフィールドへの取り付けデータレコード及び関連メタデータ、特にログデータの位置定義された入力を行うステップS10。
【0026】
第1、第2、及び第3の通信接続の構造は、無線及び有線の両方で技術的に実施され得る。各ローカル位置検出デバイスが中央位置分析デバイスに一意に割り当てられさえすればよい。第1の通信接続と第2の通信接続との分離によって、一方の通信接続が無線、他方が有線とすることを可能とする。この分離によって、更に、エレベーターの設置シャフトにおける幾何学的及び電気的な条件並びに規制、又はエスカレーター及び動く歩道における室内条件に応じて、Bluetooth、NfC、赤外線、RFID、Wi-Fi、ワイヤレスHART、ワイヤレスUSB、又はZigBeeなどの無線通信技術間の切換を可能とする。通信接続間の分離は、更なるデータ送信前にローカル位置検出デバイスにおいて取り付けデータレコードも集約可能とする。第1の通信接続は、乗客輸送設備の通信部品を介してもセットアップ可能である。これは、検出装置によって記録されたデータも乗客輸送設備のデータ記憶ユニットに記憶可能とするという利点を有する。その結果、これらのデータは、物理的乗客輸送設備に間違いなくリンクされ、何度もそこから取り出すことができる。これは、それらのデータがデータ記憶ユニットの持続性メモリ(読出し専用メモリ)に記憶されている場合に、有益である。
【0027】
工具、少なくとも1つの位置検出デバイス、及び位置分析デバイスの存在によって、三次元空間において少なくとも3点が存在し、その間の距離及び角度は、高精度で測定可能であり、組み立て済み接続部品の座標又は取り付け位置は、したがって、精度よく決定されることができる。ここで、例えば、位置分析デバイスは、一時的基準零点の役割を果たし、そこから開始して、全ての取り付けられた接続部品、したがって、乗客輸送設備の全ての取り付けられた部品の取り付け位置が、決定され、デジタルツインデータレコードに入力され得る。距離と位置角を測定するために、無線信号の伝搬時刻が評価可能であり、又はレーザー測定デバイス、TOF画像取得システムなどが使用可能である。原理的に、全ての知られている測定システムが使用可能であり、それを用いて、乗客輸送設備の設置空間における事前に定義された基準点を基準として、接続部品の所定の点の位置が十分に高精度で測定可能であり、例えば三次元空間において検出される方向ベクトルの10分の1ミリメートルまで測定可能である。
【0028】
更に、検出装置は、組立て作業員を支援するための少なくとも1つの取り外し可能な携帯用ディスプレイデバイスを備え得る。携帯用ディスプレイデバイスは、例えば、タブレット、ラップトップ、スマートフォン、又はVR(仮想現実)眼鏡などでもよい。上述した検出装置の要素とともに、以下の方法ステップが実行可能であり、方法ステップS4を補助する:
携帯用ディスプレイデバイス上に、整備工によって実行されるアクティビティを表示するステップS4A。このアクティビティは、組立て仕様に基づいて、携帯用工具及び接続部品を使用して行われ、この組立て仕様は、乗客輸送設備のデジタルツインデータレコードの一部として、中央データ記憶及びデータ処理ユニットに記憶される。
【0029】
よく知られているように、互いに非常に類似した異なる接続部品が、乗客輸送設備の組立てのために必要であることはほぼ避けられない。ねじが取り付けられる場合、この違いは、例えばねじ山の長さのみであり得る。異なる接続部品を使用する際の混乱を避けるために、検出装置は、接続部品のための提供システムを備え得る。そのような提供システムは、組立て仕様にも基づいて、取り付け対象の関連接続部品のみをリリース又は出力する、出力コントローラを有する出力装置を備え得る。上述した検出装置の要素とともに、以下の方法ステップが実行可能であり、方法ステップS4を補助する:
組立て仕様に基づいて、提供システムを用いて接続部品を自動的に提供するステップS4Bと;
乗客輸送設備の部品上に、又は乗客輸送設備が設置される建物において、表示された接続部品を、この接続部品のために提供される接続部品レセプタクルに整備工によって携帯用工具を使用して取り付けるステップS4C。
【0030】
この提供システムは、カンバン製造プロセス制御アプローチを使用して管理され得る。出力コントローラは、接続部品の供給を自動で監視し、組立て仕様にしたがって、接続部品が提供システムにおいて所定数未満の場合に、供給業者からの依然として取り付け対象である接続部品を注文する。
【0031】
更に、以下の方法ステップは、デジタルツインデータレコードのデータを使用して実行され得る:
事前に定義された許容差範囲外である材料変化及び材料応力を決定するために、乗客輸送設備の他の部品と相互作用する取り付けられた接続部品の挙動、力及びモーメントのシミュレーションを行い、シミュレーションは、データ記憶及びデータ処理ユニット上で行われるステップS11、及び;
決定された材料変化及び材料応力に基づいて修正作業を決定するステップS12。
【0032】
これによって、本発明による方法は、組み立てられた直後に、取り付けられた部品に対する接続部品の影響をシミュレーションできるようにする。換言すれば、部品の接続部品レセプタクルの領域において接続部品によって引き起こされた内部応力が計算可能であり、そこから、それらの接続部品レセプタクルの領域における形状変化が判断され得る。それらが許容範囲(例えば許容材料応力)を超過しない場合、その組立ては正しい。これを超過した場合、誤って組み立てられた接続部品、又はそれによって破損された部品が即座に認識されて即座に交換され得る。進行中のロギングの結果として、組立てが進んだ時に、組立て後に実行される最終点検が省略可能となり、又は所定の機能チェックなど少なくとも最小限に削減可能となる。その結果、乗客輸送設備全体の組立て品質が決定的に高められ、乗客輸送設備の完成とその引き渡しとの間の起動試験及び受入検査に必要な時間が決定的に削減され得る。
【0033】
組み立て中に発生する大量のデータを構造化するため、更に一貫してわかりやすい形態にするために、組立てデータレコードが、少なくとも1つのローカル位置検出デバイス上、及び/又は中央位置分析デバイス上に集約され得る。集約されたデータレコードは、その後、デジタルツインデータレコードの指定されたデータフィールドに周期的に入力される。この集約は、シミュレーション動作のために、より多くのデータ伝送リソース及びデータ処理リソースが一時的に利用可能となる利点も有する。
【0034】
好ましくは、中央位置分析デバイスの位置を基準として工具の位置を決定することによって、及び/又は組立てプロセス中に工具の現在のGPSデータを決定することによって、取り付け位置及び取り付けパラメータの測定は、取り付け中に携帯用ローカル位置検出デバイスを用いて技術的に実施される。複数の位置検出デバイスも伴われてもよく、それによって互いに対する距離及び角度を測定し、それらのデータに基づいて、位置分析デバイスにおいて、取り付けられた接続部品の位置が取り付け工具の高精度の位置特定によって高精度に計算され得る。
【0035】
既に上述したように、接続部品の取り付けはドキュメンテーションされ得る。このドキュメンテーションにおいて、取り付け状態が記録され得るだけでなく、取り付けプロセスの好ましくは全体又は少なくとも実質的なシーケンスも記録され得る。完了した取り付けのドキュメンテーションは、カメラベースであることが好ましい。
【0036】
本発明の可能な一実施形態では、乗客輸送設備のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのデータ記憶及びデータ処理ユニットは、設計仕様、そのパラメータ化、組立て仕様、並びに、接続部品毎に、識別子のデータフィールド、位置のデータフィールド、測定された取り付けパラメータのデータフィールド、及びドキュメンテーショのデータフィールドを含み得る。少なくとも設計仕様、そのパラメータ化、及び接続部品毎のデータフィールドは、デジタルツインデータレコードにまとめられる。設計仕様及びそのパラメータ化は、乗客輸送設備の部品がどのように、更にどの部品が、互いと建物を基準としたどの空間位置で、それらの部品から、顧客固有の構成データにしたがって定義された乗客輸送設備を構築するために互いに接続されるか、又は建物の部品に接続されるかを示す。
【0037】
取り付け仕様は、建物において乗客輸送設備を組み立てるために必要な全情報を含む。これは、組立てプロセス、組立て命令、光学ポインタ、トルク、潤滑剤、及びその適用量などのデータを含み得る。光学ポインタは、ローカル位置検出デバイス又は携帯用工具に一体化されることが可能であり、更に、例えば、取り付け対象の接続部品がデジタルツインデータレコードから入手可能な目標とする仕様に基づいて組み立てられる正確な点をマークするために、レーザー光線を使用できる。デジタルツインデータレコードから入手可能なデータによって、接続部品を用いて組み立てられる部品を、正しい場所で、正しい位置に、例えば、建物のエレベーターシャフトのシャフト壁に、投射することも可能である。
【0038】
データ記憶及びデータ処理ユニットは、必ずしも組立て現場に存在する必要はない。これは、リモートシステム、特にクラウドシステムによっても実施され得る。
【0039】
本発明による方法は、少なくとも方法ステップS1からS10を実施するように設計された、検出装置を実施するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラム製品において実践に移され得る。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体上に持続的に記憶され得る。
【0040】
本方法を実行するために必要な検出装置は、以下の要素を備え得る:
・本方法の更に上述したステップS2からS8を実施するように設計された技術的手段を有する少なくとも1つのローカル位置検出デバイス。これは、携帯可能及び取り外し可能なように設計されることが好ましく、それによって組み立て中にのみ組み立て現場に存在し、組立て作業が完了した後には新規の組立て現場で使用され得る。
【0041】
・本方法の更に上述したステップS1、S8及びS9を実施するように設計された技術的手段を有する中央位置分析デバイス。これも、携帯可能及び取り外し可能なように構成されることが好ましい。
【0042】
・整備工を支援するための、少なくとも1つの取り外し可能な携帯用ディスプレイデバイス。現在実行対象の組立てステップに関する命令は、このディスプレイデバイスに送信される。更に、このディスプレイデバイスは、実行された組立てステップが確定可能である入力オプションを有し得る。
【0043】
・取り付け中に携帯用工具WZによって測定された取り付けられた部品VEの位置及びパラメータとともに、取り付けられた部品VEの識別子を記録する技術的手段を有する少なくとも1つの取り外し可能な携帯用工具WZ。
【0044】
・上述したステップS10からS12を実施するように設計された技術的手段を有する中央データ記憶及びデータ処理ユニット。乗客輸送設備のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのパラメータが、中央データ記憶及びデータ処理ユニットにも記憶され得る。この検出装置を動作させるために、工具と、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスと、中央位置分析デバイスと、中央データ記憶及びデータ処理ユニットとの間で通信接続がセットアップされ得る。
【0045】
・設計仕様、そのパラメータ化、接続部品毎の組立て仕様、並びに、識別子のデータフィールド、位置のデータフィールド、測定された取り付けパラメータのデータフィールド、及び各接続部品のドキュメンテーションのデータフィールドを含むデジタルツインデータレコード。
【0046】
加えて、検出装置は、接続部品のための提供システムを備え得る。この提供システムは、方法ステップS4B及びS4Cを実施するように設計された技術的手段を有する。換言すれば、提供システムは、それぞれの場合に必要とされる接続部品のリリースのみを行うことができ、リリースされた接続部品は、次の組立てステップのために提供される。その結果、類似接続部品間の混乱が排除され、組立てステップが精度よく構造化され、組立て作業の品質の、組立て作業員の技能への依存度を大幅に低くする。その結果、乗客輸送設備の完成後の準拠の点検に伴う作業量が、いくつかの機能検査のみに減らされ得る。
【0047】
添付図面を参照して本発明の実施形態が以下に説明されるが、図面又は説明のいずれも、本発明を限定すると解釈されることが意図されない。図面は概略的であるに過ぎず、実際の縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による方法を適用するために本発明による検出装置を有するエレベーター設備として設計された乗客輸送設備とともに、示されたエレベーター設備をマッピングする、データクラウドに記憶されたデジタルツインデータレコードを示す図である。
【
図2】検出装置の要素と、
図1に示す検出装置内のその通信接続及び通信ネットワーク並びにステップS1からS12に分割されるそれらの相互作用とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、エレベーター設備として設計された乗客輸送設備11を示し、乗客輸送設備11において、エレベーターのかご5及び釣り合い重り7の形態を有する2つの可動エレベーター要素5、7がエレベーターシャフト25で垂直に移動可能である。ここで、エレベーターシャフト25は、建物3における乗客輸送設備11の設置エリアである。エレベーターのかご5及び釣り合い重り7は、1つ又は複数のベルト又はケーブルの形態を有する懸架手段9によって保持される。支持手段9は、その上に懸架されたエレベーターのかご5と釣り合い重り7とをエレベーターシャフト25内で逆方向に移動させるために、モーターとともに設けられた駆動器15の駆動綱車13を介して変位され得る。懸架手段9の端部は、それぞれエレベーターシャフト25の天井23の締め付け装置17に固定される。
【0050】
上述した可動エレベーター部品と永久的に設置されたエレベーター部品とに加えて、多数の他のエレベーター部品がエレベーターシャフト25に収容される。例えば、緩衝材21は、エレベーターシャフト25の床19に設けられる。ガイドレール27は、固定クリップ29(「ブラケット」)を用いてエレベーターシャフト25の壁に固定され得る。ガイドレール27は、例えば、垂直移動時にエレベーターのかご5又は釣り合い重り7を案内するために使用可能である。建物3の床37(破線で示す)と隣り合って、シャフトドア31が設けられることも可能であり、床37上に停止しているエレベーターのかご5にアクセスできる。更に、センサシステムのセンサ33又は他の部品がエレベーターシャフト25に設けられることが可能であり、例えば、エレベーターシャフト25内のエレベーターのかご5の正確な位置を決定できるようにするために、例えばエレベーターのかご5上の対応する対応部品と相互作用可能である。したがって、センサ33及び対応部品は、エレベーターのかご5の位置のための位置測定ユニットを形成する。一例として上述されたエレベーター部品に加えて、更なるエレベーター部品もエレベーターシャフト25に配置され得る。
【0051】
本発明によれば、デジタルツインデータレコード111が、乗客輸送設備11の物理的部品が製造されて建物3において正確な位置及び向きで組み立てられる前に、乗客輸送設備11をマッピングする。それによって、デジタルツインデータレコード111は、計画立案から組立て及び動作後の廃棄まで、乗客輸送設備11の全体的な製品ライフサイクルに付随する。デジタルツインデータレコード111のためのデータは、特に、特徴的な特性として、幾何学的寸法及び/又は乗客輸送設備11を形成する部品の他の特徴的な特性を再現する、例えばCADデータレコード112として存在し得る。
【0052】
この場合、計画立案に必要な顧客固有の構成データ178が使用され、顧客固有の構成データ178は、顧客によって作成されたものであるか、又は顧客と協働して作成されたものである。そのような顧客固有の構成データ178は、例えば、所望の輸送能力、床37の数及び床面高、計画された、又は利用可能なエレベーターシャフト25の寸法、及びそこから導出可能なエレベーターのかご5の幅v、深さu、及び高さwを含む。したがって、顧客固有の構成データ178は、例えば乗客輸送設備11の作製を注文する場合など、ケースバイケースの原則で顧客によって指定される仕様を意味すると理解され得る。顧客固有の構成データ178は、通常、作製される単一の乗客輸送設備11に関係する。例えば、顧客固有の構成データ178は、設置場所における一般的な空間条件、建物3の支持構造への取り付けのため境界面情報などを含み得る。顧客固有の構成データ178は、機能性に関する顧客の希望、輸送量、光学系などを更に含み得る。
【0053】
加えて、計画された乗客輸送設備11の部品は、特定の乗客輸送設備11のために指定された要件及び/又は規則を満たすことができるように、その設計段階において特別に選択される。この目的のため、各部品は、例えば、その型及び動作モードに関して精度よく指定され、例えば、特定の用途のために、固定クリップ29などの特定の設計タイプの部品が選択される。
【0054】
乗客輸送設備11のデジタルツインデータレコード111は、コンピュータプログラム189を使用して部品モデルデータレコード112から構築され、記憶媒体115に記憶されることが可能で、部品モデルデータレコード112は、異なる構成を有することができ、特徴的な特性によって定義され得る。部品モデルデータレコード112の各特徴的な特性は、デフォルト値、目標値、又は実測値によって事前に定義される。部品モデルデータレコード112は、通常、物理的部品を全体として表し、すなわち、特徴的な特性を提供する情報は、可能な限り精密に仮想形態で物理的部品を再現する。換言すれば、特徴的な特性は、より大きく、より複雑な部品グループが構成される個別の部品に関係し得る。
【0055】
部品モデルデータレコード112の明確な選択が顧客固有の構成データ178に基づいて可能である限り、デジタルツインデータレコード111の作成は、自動で行われ得る。前記部品をマッピングする、異なる類似の部品間、又は部品モデルデータレコード112間の選択が可能になるとすぐに、乗客輸送設備11の部品の利用可能な部品モデルデータレコード112が、例えば、図示されるラップトップなどの入力インターフェース/出力インターフェース103のグラフィカルユーザーインターフェース173を介して、1つ又は複数のデータベース115、175から選択されて、事前に定義されたインターフェース135を介してデジタルツインデータレコード111に入力されることが可能である。様々な釣り合い重り部品モデルデータレコード177、ガイドレール部品モデルデータレコード179、シャフトドア部品モデルデータレコード161、かごドア部品モデルデータレコード163、駆動部品モデルデータレコード181、及び様々な懸架手段案内変形における懸架手段部品モデルデータレコード183などの部品モデルデータレコード112としてデータベース175に図示されたエレベーター設備11の標準的な部品は、選択の対象として利用可能であり得る。論理的に、デジタルツインデータレコード111の仮想画像171は、入力インターフェース/出力インターフェース103にも表示され得る。
【0056】
事前に定義されたインターフェース135は、三次元仮想空間における部品モデルデータレコード112上の座標を定義する特徴的な特性であり、その空間における位置で、接続部品VEの記録データ又は取り付けデータレコードDSを使用して他の部品モデルデータレコード112に接続可能である(
図2も参照)。デジタルツインデータレコード111のために生成されたそれらの事前に定義されたインターフェース135の目標データは、特にデジタルツインデータレコード111が作成された時に機械可読命令191によって生成及び処理され、それによって機械可読命令191において実施された顧客固有の構成データ178及び構成可能な基本組立計画(製品固有の生成的組立計画及び部品リスト)を考慮に入れて、それぞれの選択された部品モデルデータレコード112と、したがってデジタルツインデータレコード111を形成するために必要な全部品モデルデータレコードが、対象構成における三次元仮想空間に互いに関して正しく配置されることができる。
【0057】
本発明の意義の範囲内における部品モデルデータレコード112の特徴的な特性は、かご部品モデルデータレコード153の例において示されるように、それによってマッピングされた部品の幾何学的寸法q、r、s、表面特性、物理的特性、動的特性などであり得る。幾何学的寸法は、例えば、部品の長さ、幅、高さ、断面積、半径、フィレットなどでもよい。部品の表面の品質は、例えば、粗さ、テクスチャ、コーティング、色、反射度などを含み得る。物理的特性は、重量密度又は物質密度、弾性率、伝導率、慣性モーメント、曲げ強さ値などでもよい。動的な特性は、部品モデルデータレコードと関連する運動の自由度、速度プロファイルなどであり得る。
【0058】
ただし、特徴的な特性は、個別の部品に関係するだけでなく、独立したサブシステム内の部品グループに関係することが可能である。換言すれば、特徴的な特性は、駆動モーター、ギヤーユニット、懸架手段9などの複数の部品から構成されるより複雑な機器も指し得る。乗客輸送設備11の製品ライフサイクルの間に、そのデジタルツインデータレコード111の特徴的な特性は、デフォルト値から、実測値の目標値へ変化し得る。
【0059】
本発明の意義の範囲内におけるデフォルト値は、部品モデルデータレコード112の特徴的な特性を事前に定義する値である。これは、例えば、ガイドレール27をマッピングするガイドレール部品モデルデータレコード179として構成される部品モデルデータレコード112のデフォルト値がプレースホルダーという意味の標準的な長さを定義することを意味する。このガイドレール部品モデルデータレコード179の断面形状も、デフォルト値によって事前に定義され得る。ここで、断面形状はデフォルト値によって既に十分に定義されているが、ガイドレール27の長さを表すガイドレール部品モデルデータレコード179の特徴的な特性は、デジタルツインデータレコード111が作成された時に適応される必要があることが明らかである。製造業者の仕様書から取得された情報も、その弾性率、衝撃強さなど、部品の材料固有の特性を再現する特徴的な特性のデフォルト値として十分な場合が多い。
【0060】
本発明の意義の範囲内における目標値は、目標構成における部品モデルデータレコード112の特徴的な特性を定義する値である。そのような目標値は、通常、計画された乗客輸送設備11のための顧客固有の構成データ178によって定義され、又はそれに基づいて計算され得る。例えば、かごの部品モデルデータレコード153の場合、エレベーターのかごの幅s、深さr及び高さqは、顧客固有の構成データ178に記録されている乗客輸送設備11の所望の輸送能力から計算される。
【0061】
ガイドレール部品モデルデータレコード179として構成された上述した部品モデルデータレコード112の場合、プレースホルダーという意味の標準的な長さとして定義される、長さのデフォルト値は、ここで、顧客固有の構成データ178によって指定される目標値に置き換えられる。必要に応じて、この目標値は、公差仕様も与えられる。
【0062】
本発明の意義の範囲内における実測値は、測定、チェッキング及び試験によって、部品モデルデータレコード112によって仮想的にマッピングされ、それにしたがって作製された物理的部品に関して決定された値である。かご部品モデルデータレコード153の場合、その特徴的な特性、幅s、深さr及び高さqを定義する所望の値は、ここで、測定幅P、測定深さO及び測定高さNによって修正される。
【0063】
実測値によって部品モデルデータレコード112のより多くの特徴的な特性が定義されるにつれて、シミュレーション環境が全体としてより精密となり、組み立てられた乗客輸送設備11の部品に対する組立て作業の影響がシミュレーション環境においてより精密に決定され得る。上述した理由のため、シミュレーション環境の機能を果たすデジタルツインデータレコード111の部品モデルデータレコード112は、デフォルト値、目標値、及び実測値による混合で特徴付けられ得る。デジタルツインデータレコード111と物理的乗客輸送設備11との密接な1対1の関係は二重矢印113によって表される。
【0064】
デジタルツインレコード111は、プログラマブル装置101を用いて作成及び使用され得る。プログラマブル装置101は、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、携帯電話、タブレットなどの単一デバイスでもよい。ただし、プログラマブル装置101は、1つ又は複数のコンピュータも備え得る。特に、プログラマブル装置101は、クラウドの形態でデータを処理するコンピュータネットワークから形成され得る。この目的のため、プログラマブル装置101は、既に説明した記憶媒体115を有することが可能であり、記憶媒体115に、様々な構成のデジタルツインデータレコード111及びその作成のために必要な部品モデルデータレコード112のデータが、例えば電子形態又は磁気形態で記憶され得る。プログラマブル装置101は、データ処理オプションも有し得る。例えば、プログラマブル装置101は、プロセッサ117を有することが可能であり、それを用いて、コンピュータプログラム製品189の全てのそれらの部品モデルデータレコード112及び機械可読プログラム命令191、特に三次元デジタルツインデータレコード111を作成又は生成するためのプログラム命令からのデータが処理され得る。
【0065】
プログラマブル装置101は、二重矢印119によって記号的に表されたデバイスインターフェースも有することが可能であり、それを介して、インターフェースデータは、プログラマブル装置101に入力可能であり、及び/又はプログラマブル装置101から出力可能である。プログラマブル装置101は、例えばデータが複数のコンピュータ上に分散されたデータクラウドで処理される時、空間的に分散されても実施され得る。
【0066】
特に、プログラマブル装置101は、プログラマブルであることが可能であり、すなわち、コンピュータ処理可能なステップと、
図2に関連して説明された本発明による方法151のデータとを実行又は制御するように適切にプログラムされたコンピュータプログラム製品109によって促され得る。
【0067】
コンピュータプログラム製品109は、例えば、プログラマブル装置101のプロセッサ117に、検出装置201によって生成されたデータを記憶、読み出し、処理、及び修正させ、三次元デジタルツインデータレコード111に基づいてシミュレーション141(
図2参照)を実行するためのシミュレーション環境をセットアップさせ、最適化ルーチンを実行させるなどの命令又はコードを含み得る。特に、コンピュータプログラム製品109は、任意のコンピュータ言語によって記述されることが可能であり、デジタルツインデータレコード111に基づいてシミュレーション141で処理可能なプログラム命令107を含み得る。コンピュータプログラム製品109は、任意のコンピュータ可読媒体105、例えばフラッシュメモリ、CD、DVD、RAM、ROM、PROM、EPROMなどに記憶され得る。コンピュータプログラム製品109、及び/又はそれによって処理されるデータは、例えばデータクラウドなどのサーバ又はいくつかのサーバ上に記憶可能であり、そこから例えばインターネットなどのネットワークを介してダウンロードされ得る。
【0068】
乗客輸送設備11のデジタルドキュメンテーション及びシミュレーションのための、
図2に示す本発明による方法151を実行可能にするために、
図1に記号を使って示すように、検出装置201が組立て作業時に使用され、検出装置201は、少なくとも1つの中央位置分析デバイスPAGと、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスPEGと、取り付け中に携帯用工具WZによって測定される接続部品VEの位置及びパラメータとともに、工具WZを用いて取り付けられた接続部品VEからのデータを記録する技術的手段を有する少なくとも1つの携帯用工具WZと、乗客輸送設備11のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのパラメータが記憶される中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとを備える。検出装置は、任意選択で、乗客輸送設備11の部品の組立てのための組立てプロセスに基づいて接続部品VEを出力する提供システムBSSを更に有する。
【0069】
それによって、
図2は、
図1に示す検出装置201の要素、その通信接続、通信ネットワーク、及びそれらの相互作用とともに、ステップS1からS12に分割される、それらの要素を用いて実行され得る方法151を説明する。
【0070】
検出装置201は、以下の要素を特に備える:
・検出装置201の工具WZ1、WZ2、・・・、WZnによって決定されたデータが、分析され、取り付けデータレコードDSを形成するために編集され、正しいインターフェース135に割り当てられる中央位置分析デバイスPAG、
・中央位置分析デバイスPAGに一意に割り当てられる、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスPEG1、・・・、PEGn、
・工具WZ1、WZ2、・・・、WZnを用いて取り付けられる接続部品VE、VE1からのデータを記録する技術的手段を有する、少なくとも1つの携帯用工具WZ1、WZ2、・・・、WZn、
・乗客輸送設備11のドキュメンテーション及びシミュレーションのためのパラメータが記憶される中央データ記憶及びデータ処理ユニットZD、
・任意選択で、接続部品VE、VE1を提供する提供システムBSS、
・任意選択で、整備工を支援するための少なくとも1つの携帯用ディスプレイデバイスDG。
【0071】
以下の文において、複数回出現する検出装置201の要素及び接続部品VE、VE1は、それらが接続部品VE1の例示的な組立てプロセスと関連する場合に限り、明確性を理由として、それらの参照符号に関して特に区別される。全般的に、工具は参照符号WZを有し、ローカル位置検出デバイスは参照符号PEGを有し、接続部品は参照符号VEを有する。
【0072】
建物3に配置される検出装置201の要素が乗客輸送設備11の組立て時にのみ必要とされるため、中央位置分析デバイスPAG及び少なくとも1つの位置検出デバイスPEG、並びに工具WZ及び任意選択の部品は、携帯可能で、建物3から取り外し可能であるように設計されることが好ましい。中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDは、
図2に示すように、プログラマブル装置101に設けられ得る。
【0073】
通信接続は、検出装置201の上述した要素間にセットアップされ、その接続を介して、工具WZを用いて取り付けられた接続部品VEの工具WZによって記録及び生成されるデータが、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスPEG及び中央位置分析デバイスPAGを介して中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDへ送信される。中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDは、取り付けデータレコードDSとして処理されることが好ましいこのデータを、位置が定義される手法でデジタルツインデータレコード111に入力する。
【0074】
工具WZと、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間の通信接続は、以下のアーキテクチャを有し得る:
- 方法ステップS1にしたがって、乗客輸送設備11のコントローラ41の通信モジュール43を介して、又は直接インターネット接続を介してのいずれかで確立される、中央位置分析デバイスPAGと中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間の第1の無線又は有線通信接続K1A、K1B、
- 図示された方法ステップS2にしたがって、中央位置分析デバイスPAGと少なくとも1つのローカル位置検出デバイスPEGとの間に確立される第2の通信接続K2、及び
- 図示された方法ステップS3にしたがって、ローカル位置検出デバイスPEGと、それに接続される携帯用工具WZとの間に確立され、各携帯用工具WZが位置検出デバイスPEGに一意に割り当てられる第3の無線又は有線通信接続K3。
【0075】
検出装置201は、乗客輸送設備11の実際の設置前に建物3にセットアップされることが好ましい。ここで、
図1に示すように、検出装置201の少なくとも中央位置検出デバイスPEGは、建物3で作製される乗客輸送設備11の領域における適切な位置に配置される。位置検出デバイスPEGが工具WZに固定的に接続されていない場合、位置検出デバイスPEGは、作製される乗客輸送設備11の領域において、位置分析デバイスPAGから離れた距離の位置に配置され得る。
【0076】
無線信号が送信されることができない、又は低品質でしか送信されない補強コンクリート部品など、建物3における幾何学的条件及び電気的条件、並びに規制のため、例えばGPSシステムを使用した建物3の外側からの取り付けられた接続部品VEの位置特定はほぼ不可能である。加えて、シミュレーションのために求められる精度で取り付けられた接続部品VE1の取り付け位置POSを決定することはほぼ不可能である。したがって、既に説明して
図2で図示したような工具WZと中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間の通信接続を複数の個別通信接続K1A、K1B、K2、K3に分割し、建物3でローカルなGPSシステムとしてある程度まで一時的に設置された検出装置201の要素を使用することは有益である。
【0077】
第1の無線又は有線通信接続K1Aを確立するために、中央位置分析デバイスPAGは、適切なケーブルを使用して乗客輸送設備11のコントローラ41のバス又はインターフェースに接続され得る。適切なケーブルを用いた乗客輸送設備11のバス又はインターフェースへの中央位置分析デバイスPAGの接続は、その有線接続が設置の操作に対する保護を高めるという利点を有する。一方、中央位置分析デバイスPAGと乗客輸送設備11のコントローラ41との間で長距離が有効とされる必要があり、ケーブル接続が職業上の安全性及び動作上の安全性に危険を及ぼす場合、無線で実施された通信路又は部分的通信路が必要な場合がある。
【0078】
通信モジュール43は、コントローラ41と一体化され、又は接続され、それを介して、モジュールデータが、中央位置分析デバイスPAGと中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間で交換され得る。通信モジュール43と中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間の通信は、無線でも可能であるが、大規模な設置又はセキュリティ上の理由で有線であることも可能である。安全性の理由のため、取り付けデータレコードDSは、代替的に、整備工に属するポータブルコンピュータに最初にアップロードされることも可能であり、その後、整備工が、そのデータを、通信モジュール43を介して中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDへ送信する。更に、通信接続間の分離は、更なるデータ送信及び通信技術の変更前に中央位置分析デバイスPAGにおいて取り付けデータレコードDSを集約可能とする。
【0079】
更なる有益な実施形態では、中央位置分析デバイスPAGとデータ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間の第1の通信接続K1Bは完全な無線通信路又は部分的な通信路を有することが可能であり、この目的のため、中央位置分析デバイスPAGは通信手段(詳細には図示されない)を有し、それを用いて、中央位置分析デバイスPAGは、例えばセルラネットワークなどの伝送ネットワークに直接接続され得る。データは、中央位置分析デバイスPAGとデータ記憶及びデータ処理ユニットZDとの間で、この通信接続K1Bを介してほぼ無線で送信され得る。
【0080】
既に上述した理由のため、第2の通信接続K2は、無線又は有線で技術的に実施され得る。それぞれのローカル位置検出デバイスPEGが一意に中央位置分析デバイスPAGに割り当てられさえすればよい。第1と第2の通信接続K1A、K2又はK1B、K2の分離は、通信接続の一方が無線で、他方が有線であることを可能とする。この分離によって、更に、乗客輸送設備11を囲む建物3における幾何学的及び電気的な条件並びに規制に応じて、Bluetooth、NfC、赤外線、RFID、Wi-Fi、ワイヤレスHART、ワイヤレスUSB、又はZigBeeなどの無線通信技術間の切換を可能とする。通信接続間の分離は、当然ながら、ローカル位置検出デバイスPEGにおける更なるデータ送信前に取り付けデータレコードDSを集約する可能性を更に提供する。
【0081】
第3の無線又は有線通信接続K3は、ローカル位置検出デバイスPEGと、それぞれに接続された携帯用工具WZとの間に確立され、それぞれの携帯用工具WZは、位置検出デバイスPEGに一意に割り当てられる。既に上記で詳細に説明した理由及び利点のために、この第3の通信接続も、無線又は有線で技術的に実施され得る。若しくは、ローカル位置検出デバイスPEGは、関連する携帯用工具WZと一体化され得る。上述したように、複数の工具WZ1、WZ2、・・・、WZn及び複数のローカル位置検出デバイスPEG1、PEG2、・・・、PEGnは、当然ながら組立てのために建築現場で使用され得る。
【0082】
上記で説明したように、通信接続K1A、K1B、K2、K3が確立されるとすぐに、乗客輸送設備11の部品29、39の組立てが開始し得る。これらの部品39、55はデジタルツインデータレコード111に付随して作製されたものであるため、これも論理的に既に存在する。取り付けデータレコードDSの生成と、デジタルツインデータレコード111への位置定義された入力とは、以下で説明され
図2にも示される方法ステップS4からS12にしたがって中央データ記憶及びデータ処理ユニットZD上で行われる。ステップS4は、サブステップS4AからS4Cに更に分割される。
【0083】
乗客輸送設備11の少なくともいくつかの接続部品VEを例示して、本発明による可能な一連の方法151が、
図2に示す接続部品VE1を参照してより詳細に以下で説明される。
【0084】
図1及び
図2に示すように、取り付けデータレコードDS1は、乗客輸送設備11の2つの部品39、55を互いに接続し、更に接続部品レセプタクル35を介して建物3に接続する割り当てられた接続部品VE1の取り付けデータを含むため、この取り付けデータレコードDS1は、デジタルツインデータレコード111における対応インターフェース135に割り当てられ得る。それによって、接続部品レセプタクル35は、部品39、55のためのインターフェースの役割を果たす。
【0085】
関連取り付けデータレコードDSの位置を定義する空間的座標又は取り付け位置POSは、デジタルツインデータレコード111の基準点RPに関係することができ(
図1参照)、緩衝材部品モデルデータレコード165に対するその基準座標x’、y’は、例えば、位置分析デバイスPAGへの緩衝材21の測定座標x、yに対応する。当然ながら、物理的乗客輸送設備11とデジタルツインデータレコード111の三次元仮想モデルとの間の位置定義された関係を作成するために、ここで更なるオプションも使用され得る。
【0086】
携帯用ディスプレイデバイスDGが存在する場合、サブステップS4Aで、整備工によって実行されるアクティビティがこの携帯用ディスプレイデバイスDG上に表示され得る。表示される情報は、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDのデジタルツインデータレコード111に記憶されることが好ましい組立て又は取り付けの仕様の一部である。
【0087】
関連する保留中の組立てステップのための組立て仕様MS又は取り付け仕様にしたがって定義される、それぞれの場合において実行されるアクティビティは、携帯用ディスプレイデバイスDG上で整備工に対して表示される。そのような命令は、例えば以下のように記載され得る:「接続部品VE1を使用して、第2の部品39とともに部品55を、建物3の設置空間の特定の取り付け位置POS、x、y、zにおいて建物3に対して固定し、この接続を所定トルクMで締め付ける。」
【0088】
提供システムBSSが存在する場合、次のサブステップS4Bにおいて、上述したアクティビティに必要な接続部品VE1が、組立て仕様MSに基づいて提供システムBSSによって自動的に提供され得る。このサブステップS4Bにおいて、対応する制御信号は、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDから提供システムBSSへ送信される。
【0089】
次のステップS4Cで、表示された接続部品VE1が、建物3において、乗客輸送設備11の部品39、55とともに、携帯用工具WZ2を使用して、整備工によって指定の場所に取り付けられる。工具WZ2及び/又はローカル位置検出デバイスPEG及び/又は中央位置分析デバイスPAGは、例えばレーザー光線を使用して建物3の設置空間における指定取り付け位置をマークするポインタPTを有し得る。このために必要なデータは、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDから、確立された通信接続K1A、K1B、K2、K3を介して、ポインタPTへ送信され得る。図示するように、ローカル位置検出デバイスPEG2は工具WZ2と一体化し得るため、通信接続K3はここでは非常に短距離で行われる。
【0090】
図示する例において、整備工は、接続部品VE1を使用して、所定トルクMで、その接続部品レセプタクル35を介して建物3に2つの部品39、55を固定する。仕様で指定されるトルクMは、工具WZ2のトリガ機構をトリガするために、工具WZ2に対して自動的に送信され得る。これは、取り付け中の更なるエラー原因を回避する。
【0091】
次のステップS5で、取り付けられた接続部品VE1の識別子IDが工具WZ2によって決定され、取り付け位置POS及び取り付けパラメータEPが、取り付け中に携帯用工具WZ2によって測定される。
【0092】
識別子IDは、例えば、接続部品VE1の一意のマーカーを記録できる適切な読取デバイスを用いて決定され得る。大部分の場合にそうであるように、接続部品VE1が1対1のマーカーを有していない場合、識別子IDは、工具WZによって継続的に割り当てられることもできる。乗客輸送設備の組立て対象の部品39、55は、任意選択で、工具WZによっても検出可能なマーカーMK1、MK2を有する。マーカーMK1、MK2の検出は、正しい部品39、55が対応する取り付け位置に実際に取り付けられていることに関して、デジタルツインデータレコード111に基づいた継続的なチェックを可能とする。
【0093】
取り付け位置POSは、例えば、工具WZ2に、及び/又はローカル位置検出デバイスPEGに、及び/又は中央位置分析デバイスPAGに配置されるGPSベースのセンサなどの位置決定センサを使用して測定され得る。ここで、GPSベースの三角測量法又はディファレンシャルGPSが使用されることが好ましい。若しくは、取り付け位置は、レーザーベースの位置決定法を使用して、好ましくは互いに通信するレーザーベースの位置決定センサを使用して測定され得る。当然ながら、位置決定センサ(詳細には不図示)は、検出装置201の独立要素であることも可能であり、それら自体の通信接続を介して、工具WZ及び/又はローカル位置検出デバイスPEG及び/又は中央位置分析デバイスPAGに接続され得る。
【0094】
図示された例では、整備工は、工具WZ2を使用して取り付けられた接続部品VE1の識別子IDを決定し、例えば、ねじとして設計された接続部品VE1の指定トルクM又は始動トルクに達した時の中央位置分析デバイスPAGを基準とした工具WZ2の位置を介して、建物3における接続部品VE1の取り付け位置POSを検出する。加えて、前記整備工は、工具WZを使用して、ねじ留めプロセスの終了時に印加されるトルクMなどの取り付けパラメータEPを測定する。
【0095】
ねじ留めプロセス後又はそのプロセス中に行われる次のステップS6で、取り付けのドキュメンテーションDKは、工具WZ2によって作成され得る。ドキュメンテーションDKは、例えば、カメラ57を用いて、更に、任意選択で、カメラ画像から特徴を抽出することによって行われることが可能である。取り付けられた部品に関してカメラ画像から読み取られた実際の情報と、該当する場合は、一方でそれらの取り付け、他方でデジタルツインデータレコード111からの目標とする仕様との間の一致及び/又は不一致が決定可能であり、これらは、ドキュメンテーションDSとして取り付けデータレコードDSに追加され得る。
【0096】
次のステップS7において、取り付けデータレコードDS1は、ローカル位置検出デバイスPEG2で編集されることが好ましく、対応する接続部品VE1を取り付けるのに用いた携帯用工具WZ2に割り当てられる。取り付けデータレコードDS1は、取り付けられた接続部品VE1の決定済み識別子ID、その測定された位置POS、その測定された取り付けパラメータEP、及び、任意選択でドキュメンテーションDKを少なくとも含む。必要に応じて、更なるデータ送信の前に、複数の取り付けデータレコードDSがローカル位置検出デバイスPEG2上で集約される。
【0097】
次のステップS8で、取り付けデータレコードDSは、少なくとも1つのローカル位置検出デバイスPEG1、PEG2、・・・、PEGnから第2の通信接続K2を介して中央位置分析デバイスPAGへ送信される。
【0098】
この第2の通信接続K2を介した送信により、建物3における乗客輸送設備11の設置空間における幾何学的及び電気的な条件並びに規制に応じて、Bluetooth、NfC、赤外線、RFID、Wi-Fi、ワイヤレスHART、ワイヤレスUSB、又はZigBeeなどの無線通信技術間の切換が行われることができる。
【0099】
次のステップS9で、取り付けデータレコードDSは、中央位置分析デバイスPAGから直接第1の通信接続K1Bを介して中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDへ送信され得る。必要に応じて、複数の取り付けデータレコードDSが、送信前に、中央位置分析デバイスPAG上で更に集約される。上述した無線通信技術間の変更も、第1の通信接続K1Bを用いて行われ得る。若しくは、
図2にも図示されるように、第1の通信接続K1Aは、乗客輸送設備11のコントローラ41の通信モジュール43を介してデータ記憶及びデータ処理ユニットZDへも構築され得る。この場合、取り付けデータレコードDSも、デジタルアセンブリドキュメンテーションとしてそれらを乗客輸送設備11に持続的にリンクするために、コントローラ41のローカルデータストアLSに記憶され得る。
【0100】
次のステップS10で、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZD上でこの目的のために設けられた、デジタルツインデータレコード111に設けられたフィールドへの取り付けデータレコードDS及び関連メタデータ、特にログデータの位置定義された入力がある。
【0101】
この場合、取り付けデータレコードDS及び関連メタデータは、デジタルツインデータレコード111のデータを使用して更に処理される。取り付けデータレコードDSは、関連インターフェース135に割り当てられて、デジタルツインデータレコード111に記憶され得る。加えて、測定された位置POSに基づいて、関連インターフェース135の実際の空間位置と、このインターフェース135で互いに接続された部品モデルデータレコード112とが、元の定義された目標位置に関して仮想三次元空間で追跡可能であり、それによってデジタルツインデータレコード111と、それによってマッピングされた乗客輸送設備11とのより精密な一致が実現される。部品モデルデータレコード112の特徴的な特性は、取り付けデータレコードDSにおけるデータの結果として変化させられる場合もあり、それによってそれらの特徴的な特性はシミュレーションによって再決定され(下記のステップS11及びS12参照)、対応する部品モデルデータレコード112における計算結果及び前の特徴的な特性が更新され得る。
【0102】
デジタルツインデータレコード111は、適切なデータ構造を有するデータベースDBによって、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZDにおいて表され得る。若しくは、デジタルツインデータレコード111及び/又は取り付けデータレコードDS、及び関連メタデータは、例えばXSDで適切な文法を有するXMLドキュメントによって表され得る。
【0103】
それによって、データ記憶及びデータ処理ユニットZDは、設置対象の乗客輸送設備11の少なくとも1つの設計仕様、そのパラメータ化、取り付け又は組立て仕様MS、及び、接続部品VE毎に、関連取り付けデータレコードDSのデータのためのデータフィールドを有するデジタルツインデータレコード111を含む。
【0104】
既に述べたように、データ記憶及びデータ処理ユニットZDは、リモートシステム又はプログラマブル装置101によって、特に、データ記憶ユニットのためのクラウドメモリ、及びデータ処理ユニットのためのクラウドコンピューティングシステム又はホストサーバによって技術的に実施され得る。ステップS9で説明したように、乗客輸送設備11のコントローラ41に接続されたローカル持続性データストアLSに取り付けデータレコードDSをローカルに記憶することが可能である。この場合、このローカルデータストアLSは、プログラマブル装置101におけるデータストアと規則的に同期がとられる。そのようなローカルデータストレージとリモートデータストレージとの間のデータ同期は、10分毎、1時間又は1日に1回など、データの変化率に応じてユーザが定義した時間にクラウドソリューションで共通である。
【0105】
次のステップS11で、デジタルツインデータレコード111と取り付けデータレコードDSのデータを用いて、乗客輸送設備11の他の物理的部品と相互作用する各取り付けられた接続部品VEの挙動、力及びモーメントのシミュレーション141は、事前に定義された許容差範囲外の材料変化及び材料応力を決定するために実行されることが可能であり、シミュレーションは、データ記憶及びデータ処理ユニットZD上で行われる。
【0106】
挙動、力及びモーメントのシミュレーション141は、有限要素を計算するためプログラムの支援で、MATLAB、SIMULINK又はMAPLEなどの一般的なソフトウェアソリューションを使用して実行され得る。上記で既に説明したように、シミュレーション141は、クラウドコンピューティングシステム又はホストサーバ上でも行われ得る。コンピューティング能力がシミュレーション141の時に提供されて支払われるのみであるため、そのようなソリューションは、ローカルコンピューティング能力よりも良好にスケーリングする。
図2は、組み立てられた接続部品VE1のシミュレーション141を記号を使って示し、接続部品レセプタクル35が過度に高いトルクMが印加されたことによって圧砕されることが誇張されて図示される。
【0107】
これは、組み立て中に記録されデジタルツインデータレコード111に入力された取り付けデータレコードDSも、少なくとも1つの部品モデルデータレコード112の少なくとも1つの特徴的な特性にも影響を与える場合があり、又は部品モデルデータレコード112のこの特徴的な特性は適宜更新される必要があることを意味する。具体的には、これは、取り付けデータレコードDSが、通常、複数の部品モデルデータレコード112からの複数の特徴的な特性に関係することを意味する。シミュレーション141によって、デジタルツインデータレコード111において利用可能な幾何学的関係、部品モデルデータレコード112に記憶された物理的特性、及び物理学、機械工学、及び材料力学の分野からの知られている計算方法を使用して、工具WZの記録済み取り付けパラメータEPからそれぞれの影響を受けた部品モデルデータレコード112に対して、それらの特徴的な特性のそれぞれの変化が計算され得る。記録済み取り付けデータレコードDSに基づいて決定された、影響を受けた部品モデルデータレコード112の変更された特徴的な特性は、その組立てがその時点で正しく実行されたか否かを決定するためにここで評価され得る。具体的には、例えば、ねじが過度に締め付けられた場合、それによって同様に加圧されたプラスチックダンピング要素は、破損する場合がある。対応するシミュレーション141は、したがって、取り付けデータレコードEPとしてデジタルツインデータレコード111へ位置に関連して送信される、工具WZによって測定されるデータを用いて実行され得る。
【0108】
次のステップS12で、シミュレーション141によって決定される材料変化及び材料応力に基づいて、修正作業が決定され得る。
【0109】
乗客輸送設備11の他の物理的部品39、55と相互作用する取り付けられた接続部品VEの挙動、力及びモーメントのシミュレーション141の結果として、材料変化及び材料応力が事前に定義された許容差範囲外となる場合、対応する部品39、55を分析して、必要に応じて交換する修正作業が、不良の組立て直後に開始され得る。これらの未然防止策は、乗客輸送設備11の長時間にわたる予定外のダウンタイムを回避できるようにし、それらの組立てエラーを修正するために、予備の部品が早い段階で届けられ得る。
【0110】
説明した位置検出によって、物理的乗客輸送設備11が動作に入る前にどのダンピング要素が依然として交換される必要があるかも明確に明らかである。このようにして、起動時に発生し得る他の部品に対する重大な破損は回避できる。加えて、組立ての不具合によって破損された部品も、起動前又は起動中の乗客輸送設備11に対してなされる調整に影響を及ぼす場合があり、例えば、後続の動作中における高エネルギー消費及び高消耗につながり得る。
【0111】
乗客輸送設備11の部品が、組立て前、又は組み立て中でも調整される必要がある可能性もある。そのような調整は、例えば、エレベーターの安全制動機の場合のブレーキトルク、又は速度モニタリングの場合の最大許容速度であり得る。これらの調整も、デジタルツインデータレコード111にデータとして記憶され、後で読み出されてシミュレーション141で使用されることもできる。
【0112】
更に、読み出された部品固有情報と、該当する場合は、乗客輸送設備11の全部品又は選択された部品、特に、機能上不可欠な部品のための取り付け固有情報とを指定するログ261は、出力され得る。換言すれば、建物3に設置された乗客輸送設備11の部品に関する、方法151の一部として決定された情報は、中央データ記憶及びデータ処理ユニットZD上のデジタルツインデータレコード111においてこの目的のために設けられたフィールドに、取り付けデータレコードDS又はその一部として入力され、ログ261に記録されることが可能である。
【0113】
そのようなログ261は、人間可読な形態で出力され得る。例えば、ログ261は、リストとして印刷可能である。そのようなリストでは、例えば、建物3に収容された部品39、55、VE、VE1の全てが、それらの取り付け固有情報又は取り付けデータレコードDSとともに列挙され得る。
【0114】
若しくは、ログ261は、例えば電子ログとしてなど、機械可読の手法で作成されてもよい。加えて、読み出された取り付けデータレコードDSは、目標とする仕様と比較され得る。この場合、例えば、取り付けデータレコードDSと目標とする仕様との間の一致及び/又は不一致を列挙するログ261が、また出力され得る。取り付けデータレコードDSに関する一致及び/又は不一致は、部品固有情報に関してはログ261に含まれることが可能であり、又は取り付けデータレコードDSに関する個別のログ261は作成され得る。
【0115】
なお、本発明の可能な特徴及び利点のうちのいくつかが、異なる実施形態を参照して本明細書で説明されたことに留意されたい。当業者は、本発明の更なる実施形態に想到するために、特徴が、適宜、適切に結合、適応、又は交換され得ることを理解するであろう。
【0116】
最後に、「備える」、「有する」などの用語が他の要素又はステップを排除せず、「1つの(a)」、又は「1つの(an)」などの語は、複数性を排除するものではないことに留意されたい。更に、上記の実施形態のうちの1つを参照して説明された特徴又はステップは、上述された他の実施形態の他の特徴又はステップと組み合わせて使用され得ることに留意されたい。特許請求の範囲の参照符号は、限定していると考えられるべきではない。
【国際調査報告】