(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】正確なラマン分光法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G01N21/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543478
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 IB2020061066
(87)【国際公開番号】W WO2021144634
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515037896
【氏名又は名称】ノヴァ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVA LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】シュライファー・エラッド
(72)【発明者】
【氏名】オレン・ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】シャヤリ・アミル
(72)【発明者】
【氏名】ホーランダー・エヤル
(72)【発明者】
【氏名】デイチ・ヴァレリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロフ・シモン
(72)【発明者】
【氏名】バラク・ギラッド
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043CA05
2G043EA03
2G043GA01
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA07
2G043HA09
2G043JA02
2G043LA01
2G043NA01
(57)【要約】
正確なラマン分光法のためのシステム,方法および非一時的コンピュータ可読媒体である。前記方法が,(i)光学計測システムが,(a)空間フィルタによって規定される関心領域と試料の照射領域から放射される放射線の入射ビームとの間の位置ずれを見つけ,入射ビームが空間フィルタに入射することと,(b)位置ずれを補償する入射ビームの伝播の補償経路を決定することとを含む較正プロセスを実行するステップと,(ii)光学計測システムが入射ビームの伝播の補償経路を提供するように構成されているとき測定プロセスを実行して一または複数のラマンスペクトルを提供するステップとの少なくとも1つの反復を実行することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確なラマン分光法のための方法であって,
光学計測システムが,(a)空間フィルタによって規定される関心領域と試料の照射領域から放射される放射線の入射ビームとの間の位置ずれを見つけ,入射ビームが空間フィルタに入射することと,(b)前記位置ずれを補償する前記入射ビームの伝播の補償経路を決定することとを含む較正プロセスを実行すること,および
前記光学計測システムが前記入射ビームの伝播の前記補償経路を提供するように構成されている間に測定プロセスを実行して一または複数のラマンスペクトルを提供すること
の少なくとも1つの反復を実行することを含む,
方法。
【請求項2】
前記較正プロセスの実行が,少なくとも1つのラマンスペクトルを分析することによって前記位置ずれを見つけることを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記較正プロセスの実行が,ラマンスペクトルの周波数とは異なる周波数の放射線を分析することによって前記位置ずれを見つけることを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記較正プロセスの実行が,前記空間フィルタ上の異なる位置に前記入射ビームを導く異なる光学計測システム構成を使用して対象物を照射することと,前記関心領域を通過した放射線を感知して異なる試験結果を提供することとを含み,前記入射ビームの伝播の補償経路の決定が前記試験結果に基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記補償経路の決定が,前記試験結果のうちの1つを選択して選択試験結果を提供することを含み,前記入射ビームの伝播の前記補償経路の決定が前記選択試験結果に基づく,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試験結果のうち強度が最も高い試験結果を選択して前記選択試験結果を提供することを含む,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記関心領域が,前記照射領域からの散乱放射線が前記検出器に到達するのを阻止するような形状を備えかつサイズを持つ,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学計測システムのウェッジプリズムを回転させて,適用されることで前記入射ビームの伝播の前記補償経路を通るように前記入射ビームを導くことになる前記ウェッジプリズムの向きを見つけることを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光学計測システムの複数のウェッジプリズムを回転させて,適用されることで入射ビームの伝播の補償経路を通るように入射ビームを導くことになる複数のウェッジプリズムの向きの組み合わせを見つけることを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
光学計測システムであって,
試料を照射するように構成された照射経路と,
調整可能な光学系を含む集光経路と,
検出器と,
検出器の上流に配置された空間フィルタと,
(i)較正プロセスと(b)測定プロセスの少なくとも1つの反復中に少なくとも前記調整可能な光学系を制御するように構成されたコントローラとを含み,
前記較正プロセスのとき,前記光学計測システムが,(a)空間フィルタによって規定される関心領域と前記サンプルの照射領域から放射される放射線の入射ビームとの間の位置ずれを見つけ,前記入射ビームが前記空間フィルタに入射し,(b)前記位置ずれを補償する前記入射ビームの伝播の補償経路を決定するように構成され,
前記測定プロセスのとき,前記調整可能な光学系が,前記入射ビームの伝播の前記補償経路を提供する構成で維持され,前記光学計測システムが,一または複数のラマンスペクトルを提供するように構成される,
光学計測システム。
【請求項11】
少なくとも1つのラマンスペクトルを分析することによって前記位置ずれを見つけるように構成されている,請求項10に記載の光学計測システム。
【請求項12】
ラマンスペクトルの周波数とは異なる周波数の放射線を分析することによって前記位置ずれを見つけるように構成されている,請求項10に記載の光学計測システム。
【請求項13】
前記較正プロセスの異なる時点において,前記調整可能な光学系に前記入射ビームを前記空間フィルタ上の異なる位置に導かせるように,前記調整可能な光学系が異なって構成されており,前記検出器が,前記関心領域を通過した放射線を感知して異なる試験結果を提供するように構成されており,前記コントローラが,前記試験結果に基づいて前記入射ビームの伝播の前記補償経路を決定するように構成されている,請求項10に記載の光学計測システム。
【請求項14】
前記コントローラが,前記試験結果のうちの1つを選択して選択試験結果を提供し,前記選択試験結果に基づいて,前記入射ビームの伝播の前記補償経路を決定するように構成されている,請求項13に記載の光学計測システム。
【請求項15】
前記コントローラが,前記試験結果の中で強度が最も高い試験結果を選択して,前記選択試験結果を提供するように構成されている,請求項14に記載の光学計測システム。
【請求項16】
前記関心領域が,前記照射領域からの散乱放射線が前記検出器に到達するのを阻止するような形状を備えかつサイズを持つ,請求項10に光学計測システム。
【請求項17】
前記調整可能な光学系がウェッジプリズムを含み,前記コントローラが前記ウェッジプリズムの回転を制御して,適用されることで前記入射ビームの伝播の前記補償経路を通るように前記入射ビームを導くことになる前記ウェッジプリズムの向きを見つけるように構成されている,請求項10に記載の光学計測システム。
【請求項18】
前記調整可能な光学系が複数のウェッジプリズムを含み,前記コントローラが前記複数のウェッジプリズムの回転を制御して,適用されることで前記入射ビームの伝播の前記補償経路を通るように前記入射ビームを導くことになる前記複数のウェッジプリズムの向きの組み合わせを見つけるように構成されている,請求項10に記載の光学計測システム。
【請求項19】
非一時的コンピュータ可読媒体であって,
光学計測システムが,(a)空間フィルタによって規定される関心領域と試料の照射領域から放射される放射線の入射ビームとの間の位置ずれを見つけ,入射ビームが空間フィルタに入射することと,(b)前記位置ずれを補償する前記入射ビームの伝播の補償経路を決定することとを含む較正プロセスを実行すること,および
前記光学計測システムが前記入射ビームの伝播の前記補償経路を提供するように構成されているときに,測定プロセスを実行して一または複数のラマンスペクトルを提供すること
の少なくとも1つの反復を実行するための命令を記憶する,
非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記較正の実行が,前記空間フィルタ上の異なる位置に前記入射ビームを導く異なる光学計測システム構成を使用して対象物を照射することと,前記関心領域を通過した放射線を感知して異なる試験結果を提供することと,前記入射ビームの伝播の前記補償経路を試験結果に基づいて決定することとを含む,請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
選択的ラマン分光法のための方法であって,
試料の不規則領域の位置に関する不規則領域情報を受信または生成し,
前記不規則領域情報に基づいて,ラマン検出器の前に適用される空間フィルタリングプロセスの少なくとも1つのフィルタリングパラメータを決定し,
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用しながら,前記試料の複数の部位のラマンスペクトルを取得する,
方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータの決定が,前記ラマン検出器に先行するフィルタの空間的構成を含む,請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータの決定が,前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータの少なくとも1つが互いに異なる複数のフィルタから,前記ラマン検出器に先行するフィルタを選択することを含む,請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータが前記ラマン検出器に到達する光の量を含み,不規則領域を照射するときに前記ラマン検出器に到達する光の量が,規則的領域を照射するときに前記ラマン検出器に到達する光の量よりも少ない,請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータが,前記ラマン検出器に先行するフィルタに形成された開口部の面積を含み,不規則領域を照射するときに前記フィルタに形成される前記開口部の面積が,規則的領域を照射するときに前記フィルタに形成される開口部の面積よりも小さい,請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータが,前記ラマン検出器に先行するフィルタに形成された開口部の形状を含み,不規則領域に照射するときに前記フィルタに形成される前記開口部が,規則的領域に照射するときに前記フィルタに形成される開口部よりも狭い,請求項21に記載の方法。
【請求項27】
(a)前記ラマン検出器に先行するフィルタ上に形成される規則的領域の規則的な要素の像が,(b)前記フィルタ上に形成される不規則領域の不規則な要素の像よりも狭い場合,前記フィルタに形成される開口部の幅が,前記不規則な要素の前記像の幅よりも薄く設定される,請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記不規則な要素の前記像の前記幅を超えるように前記開口部の前記幅を設定する,請求項27に記載の方法。
【請求項29】
試料の不規則領域の位置に関する不規則領域情報を受信または生成するステップと,
前記不規則領域情報に基づいて,ラマン検出器の前に適用される空間フィルタリングプロセスのフィルタリングパラメータを決定するステップと,
前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用しながら,前記試料の複数の部位のラマンスペクトルを取得するステップと,
を実行するための命令を記憶する,非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
照射経路および集光経路を含む光学系と,
ラマン検出器と,
前記ラマン検出器の上流に配置された少なくとも1つの空間フィルタと,
ラマン検出器の前に適用される空間フィルタリングプロセスの少なくとも1つのフィルタリングパラメータを生成または受信するように構成されたコントローラと備え,
前記光学系が,前記少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用しながら,前記試料の複数の部位のラマンスペクトルを取得するように構成されている,
光学計測システム。
【請求項31】
前記光学系が,不規則領域を照射するときに不規則領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用し,規則的領域に照射するときに規則的領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用するように構成されている,請求項30に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は,2020年1月16日に出願された米国仮特許第62/961,721号明細書の優先権を主張するもので,その全体がこの明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光法は確立された技術であり,様々な材料特性の特性評価におけるその使用法が広範な文献に記載されている。
【0003】
ラマンスペクトルは試料の様々な特性に関する情報を伝える(伝達する)。特に,スペクトルの異なるピークが異なる材料に対応する。計測対象物が材料化合物(たとえば,SiGe)で構成されている場合,ラマンスペクトルの特定のピークが異なる原子対(たとえばSi-Si,Si-GeおよびGe-Ge)に対応する。
【0004】
これらのピークの位置から濃度および応力の情報を抽出する方法は,文献で周知のものである。たとえば,SiGeの3つのピーク位置をゲルマニウム組成および層応力と関連付ける式が,以下の刊行物に提示されている。T.S.Perovらによる「Composition and strain in thin Sii-xGex virtual substrates measured by micro-Raman spectroscopy and x-ray diffraction」,J.App.Phys.109,033502(2011)。
【0005】
ラマンスペクトルに影響を及ぼす別の特性としてドーピングがある。ドーパント分布から生じるキャリア濃度がラマン信号に影響を及ぼし,ラマンピークのさらなるシフトを引き起こす。したがって,ドーピングのレベルをフィッティング手順に組み込むことができ,ピーク位置を監視することによって応力や組成とともにドーピングレベルを評価することができる(たとえば,A.Perez-Rodriguezらによる「Effect of stress and composition on Raman spectra of etch-stop SiGeB layers」,J.Appl.Phys.80,15(1996)。
【0006】
ラマンスペクトルを生成する最先端のシステムの例は,BarakらのPCT特許出願公開番号WO2017/103934およびBarakらのWO2017/103935において提供されており,両出願は参照によってこの明細書中に組み込まれる。
【0007】
ラマンスペクトルは非常に微弱であり,この微弱さのために放射線を運ぶ多くのラマンスペクトルを収集する必要があった。
【発明の概要】
【0008】
正確なラマン分光法のためのシステム,方法,および命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0009】
この発明を理解し,実際上それがどのように実行されるかを把握するために,添付の図面を参照して,非限定的な例としてのみの好ましい実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】照射スポット,位置合わせされた入射ビームの強度分布,位置合わせされていない入射ビームの強度分布,および関心領域の例を示す。
【
図2】センサ,空間フィルタ,関心領域,および入射スポットを示す。
【
図8】一または複数の回転ウェッジプリズムおよびウェッジプリズム回転体の例を示す。
【
図14】規則的領域および不規則領域への照射の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では,この発明の完全な理解のために,多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら,これらの具体的な詳細がなくてもこの発明が実施され得ることは当業者に理解されよう。その他,この発明を不明瞭にしないように,周知の方法,手順および構成要素は詳細には記載していない。
【0012】
この発明とみなされる主題は,この明細書の最終部分において特に指摘され,明確にクレームされる。しかしながら,この発明は,その目的,特徴および利点と共に,構成および動作方法の両方に関して,添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明を参照することによって,最もよく理解され得る。
【0013】
説明を簡単かつ明確にするために,図面に示す要素は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。たとえば,いくつかの要素の寸法は,明確にするために他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに,適切であると考えられるときには,対応する要素または類似の要素を示すために,図面間で参照番号を繰り返す場合がある。
【0014】
システム,方法および非一時的コンピュータ可読媒体のいずれか1つに対するこの明細書中の言及は,他のシステム,方法および非一時的コンピュータ可読媒体のいずれかに必要な変更を加えて適用されるべきである。たとえば,システムに対するいずれの言及も,システムによって実行可能な方法およびシステムによって実行可能な命令を格納し得る非一時的コンピュータ可読媒体に必要な変更を加えて適用されるべきである。
【0015】
説明されるこの発明の実施形態の少なくとも1つは,その大部分が,当業者に知られている電子構成要素および回路を使用して実施され得るので,この発明の基礎となる概念の理解および認識のために,ならびにこの発明の教示を難読化したりこの発明の教示から逸脱したりしないようにするために,詳細は,上述のとおり必要と考えられる範囲を超えては説明されない。
【0016】
以下に示される数または値は,非限定的な例とみなされるべきである。
【0017】
試料が構造要素を含む場合,いくつかの構造要素(特に非周期的,エッジ状などの不規則な構造要素)への放射線の照射により,構造要素が放射線を回折させ,回折した放射線が「寄生」(parasitic)ラマン散乱放射線を生成し,(ラマン分光計の検出器によって感知されると)ラマンスペクトルを「歪ませる」可能性があることが分かっている。「寄生」ラマン散乱放射は,たとえば,一または複数のラマンスペクトルピークの位置や形状などを変化させる場合がある。
【0018】
歪んだラマンスペクトルの分析は,試料の材料や試料の歪みに関する不正確な結論,および試料の他の特性に関連する不正確さをもたらす場合がある。
【0019】
ラマン分光法の精度を向上させる必要性,特に半導体製造プロセス制御の目的のために,ラマンスペクトルの歪みを低減する必要性が高まっている。
【0020】
ラマン分光法は,半導体ウェハ製造APC,ウェハのパターン化構造の測定,ダイ内側測定(in-die measurement)などに使用することができる。
【0021】
正確なラマン分光法のためのシステム,方法,および命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。
【0022】
入射ビームが試料の照射領域から放射され,空間フィルタに入射する。照射領域は,放射線の照射ビーム(以下「照射ビーム」)によって照射される。
【0023】
ラマン分光法の精度は,試料からの望ましくない散乱放射線が検出器に到達するのを防ぐことによって向上する。これは,放射線の入射ビーム(以下,「入射ビーム」)のうち,関心領域(上記関心領域は空間フィルタによって規定される)の外側にある一または複数の部分をブロックする空間フィルタを設けることによって行うことができ,これによって入射ビームの上述の一または複数の部分が検出器への到達が防止される。
【0024】
空間フィルタリングは,照射スポットがイレギュラー(不規則)領域(irregular area)を「覆っている」ときに必要とされる。不規則領域は照射スポットを歪ませることがあり,および/またはラマンスペクトルの新たな散乱源を生み出す場合があり,および/または要素の非周期的配置(non-periodic arrangement)を含むことがあり,および/または要素の不均一配置(non-homogeneous arrangement)を含む場合がある。不規則領域の非限定的な例には,(a)導体の縁部領域および上記縁部領域の近傍を覆うスポットであって,縁部領域が上記スポットの領域と同程度(たとえば,0.1から0.9の間)であるスポット,(b)単一の導体の縁部領域を覆い,かつその近傍にスリットを含む縁部領域も覆うスポットが含まれる。
【0025】
空間フィルタは,シリコン貫通電極(through silicon vias:TSV),シャロー・トレンチ・アイソレーション(shallow trench isolatiion:STI)(たとえば,充填物,または/およびゲート酸化物),3次元NANDメモリ(3D-NAND)などの要素を含む構造に対する測定(たとえば,歪みプロファイリング,結晶性および寸法プロファイリング)中に適用してもよい。
【0026】
空間フィルタは,異なる関心領域を規定(画定)し得る調整可能な空間フィルタを含んでもよい。追加的または代替的に,空間フィルタは制御可能な透明性を示してもよく,および/または不透明領域によって囲まれた透明な関心領域を規定してもよい。調整可能なフィルタは,空間フィルタリング特性が互いに異なる複数の空間フィルタのセット(a set of spatial filters)によって代替可能である。
【0027】
空間フィルタは,固定された関心領域を規定する固定要素を含んでもよい。
【0028】
空間フィルタは,システムのいくつかの動作モードにおいて利用されてもよく,システムの他の動作モードにおいては除去または使用停止されてもよい。
【0029】
関心領域は,入射ビームの関連断面(a relevant cross section)よりも小さくても(またははるかに小さくても)よい。入射ビームの関連断面は空間フィルタの平面に(at the plane of the spatial filter)形成される断面である。
【0030】
たとえば,関心領域は,入射ビームの関連断面の一部であってもよい。たとえば,関心領域は,入射ビームの関連断面の1%,2%,5%,10%,15%,20%または30%未満であってもよい。
【0031】
照射領域および入射ビームの関連断面は同じサイズであってもよく,同じ形状であってもよく,サイズによって互いに異なっていてもよく,かつ/または形状が互いに異なっていてもよい。
【0032】
これらの形状の非限定的な例は,矩形スポット,楕円スポット,円形スポット,照射線(a line of illumination)などである。
【0033】
関心領域は,散乱放射線が検出器に到達するのを防ぐように規定することができる。関心領域の規定はシミュレーション,実測などを用いて行うことができる。
【0034】
関心領域を小さくすることによって正確かつ高感度の光学計測システムが提供され,このシステムが,限定はされないが,構造要素の高密度アレイ,潜在的に歪んだ要素を示す領域,急勾配および/または実質的な高さ変化を示す領域,周辺領域,測定用のシリコン貫通電極,ダイナミックメモリのゲート酸化物,3次元NANDメモリ・ユニット,ダイナミックメモリのCMP後の領域などを含む様々な試料を評価するために,かつ/またはそのような試料の様々な領域を評価するために使用される。
【0035】
関心領域がコンパクトであるため,関心領域と入射ビームとの間のわずかな位置ずれさえも,システムが,衝突ビームの一部,ほとんど,さらにはすべてをブロックする原因となる可能性がある。
【0036】
入射ビームの中心が関心領域内にあるとき,特に入射ビームの中心が関心領域の中央に位置するとき,入射ビームは関心領域と位置合わせされているとみなすことができる。
【0037】
位置ずれは,システムの不正確さ,温度変化,振動などに起因する。
【0038】
ラマンスペクトルが比較的微弱な信号から形成されるという事実を考慮すると,位置ずれの影響は非常に重大になり得る。
【0039】
したがって,そのような位置ずれを補償する(compensate)ように,システム,方法,および非一時的コンピュータ可読媒体は構成される。
【0040】
上記補償は,関心領域と入射ビームとを光学的に位置合わせする(または実質的に光学的に位置合わせする)ことを含んでもよい。これは,空間フィルタ上の入射ビームの入射位置を制御することによって行うことができる。
【0041】
この制御は,入射ビームの伝播方向を変更するなどの集光経路の変更を導入することを含んでもよい。
【0042】
上記補償は,検出器によって検出された放射線に関するフィードバックに基づくものであってもよい。上記フィードバックは較正プロセス中または任意の他の時点に供給することができる。
【0043】
較正プロセスの実行は,連続的,非連続的,その場限り,反復的などであってもよい。
【0044】
較正プロセスは,(空間フィルタを通過した後に)検出器によって検出された放射線の強度に基づいてもよい。
【0045】
較正プロセスは,センサによって検出された放射線の強度以外の(またはそれに追加された)情報に基づいてもよい。
【0046】
較正プロセスは,検出器によって感知されるラマンスペクトルに基づいてもよい。
【0047】
説明を簡単にするために,以下の例のいくつかは,較正プロセスの後に測定プロセスが行われる反復プロセスを示す。試料は測定プロセス中に測定される。
【0048】
較正プロセス中,対象物は異なる照明経路構成を使用して照射され,この構成が空間フィルタ上の異なる位置に集光放射線を導くことで様々な試験結果が提供される。
【0049】
試験結果のうちの一つ(たとえば,最も高い全体強度を有する試験結果)が選択され,選択された試験結果を提供した照射経路構成を,較正プロセス後の一または複数の測定プロセスにおいて使用することができる。これに代えて複数の試験結果が選択されてもよく,複数の試験結果の関数(たとえば,重み付き平均)となる照射経路構成が選択されてもよい。
【0050】
較正プロセスの複数回の反復を実行するとき,連続する較正プロセスの間にはタイミングギャップがある。連続する較正プロセス間のタイミングギャップは,固定されてもよく,または経時的に変化してもよい。
【0051】
較正プロセスは,計測の失敗,一または複数のラマンスペクトルにおけるエラーの検出,特定の温度変化の検出,特定の温度の検出,特定の振動の検出,一または複数の測定されたラマンスペクトルの予想されるラマンスペクトルからの逸脱の発生などの事象に基づいてトリガされてもよい。
【0052】
システムの照射経路が異なる放射線源を含む場合,較正プロセスは,放射線源ごとに,または放射線源のいくつかごとに実行してもよい。そのような較正プロセスは,異なる放射源に関連する機械的および/または光学的位置ずれを補償し,より正確でない照射および/または集光経路を使用し得るため,システムを単純化し,さらにはシステムのコストを低減する可能性もある。
【0053】
図1は,照射スポット20,位置合わせされた入射ビームの強度分布21,位置合わせされていない入射ビームの強度分布22,および関心領域225の一例を示している。
【0054】
図1では照射スポット20の像が空間フィルタ上に結像されているものとする。
【0055】
図1は,関心領域225と入射ビームとの間の位置ずれに起因する強度差(29)を示している。
【0056】
図1はまた,試料300の一部,および試料上における関心領域の像225’を示す。
【0057】
図2は,センサ224,空間フィルタ223,関心領域225,および入射ビームによって空間フィルタ上に形成された入射スポット26を示している。
【0058】
関心領域225は,サイズ可変であり,入射スポットよりもはるかに小さくすることができる。
【0059】
図3は,光学計測システムの9つの異なる構成における関心領域227と入射スポット26との間の9つの空間的関係291~299を示している。第6の構成が最良のオーバーラップを示しているため,この構成を光学計測システムの所望の構成として選択し,次の測定プロセス中に適用することができる。
【0060】
補償プロセス中,空間フィルタは,測定プロセス中に使用される関心領域よりも大きい試験用関心領域に放射線を通過させ得ることに留意されたい。
【0061】
【0062】
光学計測ユニット200は,照射経路と,集光経路と,制御ユニットと,試料300を支持し,集光経路および照射経路に対して試料300を移動させる機械的移動ユニット303とを含む。照射および/または集光経路が移動する間,試料300は静止していてもよいことに留意されたい。試料300と,集光経路および/または照射経路の少なくとも一方の経路の両方が,互いに対して移動し得ることにも留意されたい。
【0063】
図4において,集光経路および照射経路は,対物レンズ213および半波長板(HWP)109を共有している。照射経路および集光経路は,より多くの構成要素を共有してもよく,他の構成要素を共有してもよく,またはいかなる構成要素も共有しなくてもよいことに留意されたい。
【0064】
図4では,照射角度および集光角度が試料に対して垂直である。任意の他の照射角度および/または集光角度としてもよいことに留意されたい。
【0065】
照射経路は,限定はされないが,偏光,周波数スペクトル,形状,サイズ,コヒーレンシ,経路,強度などを含む,照射ビームの各種パラメータを制御するように構成される。図示される各種の要素は,前記パラメータの制御を支援する。偏光を制御する要素は偏光制御素子と呼ばれる。ビームの他のパラメータを制御する要素は追加制御素子と呼ばれる。単一の要素がビームの一または複数のパラメータを制御してもよいことに留意されたい。要素の非限定的な例には,偏光子,半波長板,1/4波長板,分析器,レンズ,グリッド,開口部などが含まれる。
【0066】
集光経路は,限定はされないが,偏光,周波数スペクトル,形状,サイズ,コヒーレンシ,経路,強度などを含む入射ビームの各種パラメータを制御するように構成される。図示される各種の要素が前記パラメータの制御を支援する。
【0067】
照射経路は,(a)レーザ102と,(b)照射用偏光制御素子103(1)および追加の照射用制御素子103(2)を含む照射光学系103と,(c)ダイクロイックビームスプリッタ210などのビームスプリッタと,(d)HWP209と,(e)対物レンズ213を含むものとして示されている。追加照射制御要素は,たとえば,形状,サイズ,伝播角など,偏光と異なるものについての一または複数のパラメータを制御してもよい。
【0068】
集光経路は,(a)ダイクロイックビームスプリッタ210などのビームスプリッタ,(b)HWP209,(c)対物レンズ213,(d)集光経路を変更し,それによって位置ずれを補償する調整可能光学系105(1)と,追加の集光用制御素子105(2)と,集光用偏光制御素子105(3)とを含む集光光学系105と,(e)空間フィルタ223と,(f)グリッド231と,関心領域を通過した放射線をグリッド231上に導く第1のレンズ232と,グリッド231からの光を検出器224に導く第2のレンズを含む光学ユニット235,を含むものとして示されている。
【0069】
光学ユニット235は,グリッド231と少なくとも第2のレンズ233との間の空間的関係を,グリッド231から第2のレンズ233に向かって異なる放射ローブを導くように変更することができるという意味において構成可能である(configurable)。
図4は,第1および第2のレンズに対してグリッド231を回転させることができる回転ユニット238を示している。光学ユニット235の要素間の空間的関係を変更するために回転以外の動きを用いてもよい。
【0070】
検出器224は,ラマンスペクトルを生成するように構成されている。検出器224は,光学計測システムの各種の構成要素/ユニット/要素を制御するように構成され,かつ較正プロセスを制御するように構成される制御ユニット225に結合される。
【0071】
【0072】
計測システム200’は,(a)HWP209を含まない点,(b)複数のレーザ102’を含む点,および(c)検出信号を処理する処理ユニット234を含む点において計測ユニット200と異なる。照射光学系103は,複数のレーザからの放射を結合または選択するように構成することができる。場合によっては,一度に1つのレーザのみを作動させてもよい。
【0073】
【0074】
計測システム200’’は,(a)HWP209を含まない点,および(b)複数のレーザ102’を含む点において計測ユニット200と異なる。照射光学系103は,複数のレーザからの放射を結合または選択するように構成することができる。場合によっては,一度に1つのレーザのみを作動させてもよい。
【0075】
【0076】
システム201は照射経路を含み,照射経路は,レーザ201と,入射開口絞り(entrance aperture stop)203と,ミラー204と,第1の照射レンズ206と,照射視野絞り(illumination field stop)207と,第2の照射レンズ208と,照射偏光子209と,ビームスプリッタ210と,回転HWP211などのHWPと,対物開口絞り/後焦点面212と,対物レンズ213とを含む。
【0077】
集光経路は,対物レンズ213と,対物開口絞り/後焦点面212と,試料300と,回転集光偏光子215と,回転HWP211などのHWPと,第1の集光レンズ216と,集光開口絞り217と,第2の集光レンズ218と,ノッチフィルタ219と,集光視野絞り220と,回転ウェッジプリズム221と,ウェッジプリズム回転子225と,スリットレンズ222と,空間フィルタ223(開閉可能なスリットであってもよく,開いたスリットのサイズおよび/または形状が固定または調整可能なものとしてもよい)と,光学ユニット235と,検出器234を含む。
【0078】
検出器234は分光器であってもよい。
【0079】
図8は,回転ウェッジプリズム221と,回転ウェッジプリズム221を取り囲むウェッジプリズム回転子225と,回転ウェッジプリズム221に入射する入力ビーム281と,回転ウェッジプリズム221から出射される出力ビーム282とを示す。
【0080】
図8はまた,回転ウェッジプリズム221の異なる回転位置によって与えられる出力ビームの複数の経路を示している。
【0081】
図8はまた,出力ビームを導くより多くのオプションを提供する一対の回転ウェッジプリズム221および221’をシステムが含んでもよいことを示している。出力ビームは,両方の回転プリズムを通過する。
【0082】
図9は,照射光学系のいくつかの要素の例を示す。3つのレーザがあり,照射経路の3つの区間がそれに続き,3つのレーザからの放射を加算する光加算器で終端している。
【0083】
3つのレーザ(たとえば,赤色,青色および緑色レーザ)102(1)1~102(3)の後に,照射経路の3つの区間が続いている。照射経路の3つの区間は,3つのコリメータ109(1,1)~109(1,3)と,3つのアイソレータ109(2,1)~109(2,3)と,3つのクリーンアップフィルタ109(3,1)~109(3,3)と,3つのシャッタ109(4,1)~109(4,3)とを含む。
【0084】
3つの区間の後に,ダイクロイックビームスプリッタ109(5,1)~109(5,3)などの3つのビームスプリッタを含むコンバイナが続き,コンバイナの後に,イニシャルミラー109(5),シリンドリカルレンズ109(6),および二次ミラー204が続いている。
【0085】
【0086】
方法400は,ステップ402によって開始することができ,ステップ402は,光学計測システムによって,(a)空間フィルタによって規定される関心領域と試料の照射領域から放射される放射線の入射ビームとの間の位置ずれを見つけ,入射ビームが空間フィルタに入射することと,(b)位置ずれを補償(補正)する入射ビームの伝播の補償経路を決定することとを含む較正プロセスを実行する。
【0087】
関心領域は,照射領域からの散乱放射線が検出器に到達するのを阻止するような形状を備えかつサイズを持つ。
【0088】
ステップ402は,少なくとも1つのラマンスペクトルを分析することを含んでもよい。追加的または代替的に,ステップ402は,ラマンスペクトルの周波数とは異なる周波数の放射線を分析することを含んでもよい。ステップ402の2つの例の間の違いは,集光経路内に位置するグリッドを回転させることを含んでもよい。
【0089】
ステップ402の後,ステップ404が続くことができ,ここでは光学計測システムが入射ビームの伝播の補償経路を提供するように構成されている間に測定プロセスを実行して一または複数のラマンスペクトルを提供する。
【0090】
ステップ404の後,ステップ406が続き,ステップ402および404の次の反復を開始するかどうかが判定され,開始する場合にステップ402にジャンプする。
【0091】
【0092】
方法401は,ステップ403によって開始することができ,ステップ403では,入射ビームを空間フィルタ上の様々な位置に導く,異なる(様々な)光学計測システム構成を使用して対象物を照射し,関心領域を通過した放射線を感知して異なる(様々な)試験結果(複数)を提供し,試験結果に基づいて入射ビームの伝播の補償経路を決定することによって,較正プロセスを実行する。
【0093】
関心領域は,照射領域からの散乱放射線が検出器に到達するのを阻止するような形状およびサイズとすることができる。
【0094】
ステップ403は,試験結果のうちの1つを選択して選択試験結果を提供して選択された試験結果に基づいて入射ビームの伝播の補償経路を決定することを含んでもよい。
【0095】
ステップ403は,試験結果のうち強度が最も高い試験結果を選択して選択された試験結果を提供することを含んでもよい。
【0096】
補償経路の決定は,複数の選択試験結果を選択し,複数の選択試験結果に基づいて,たとえば補間(interpolation),外挿(extrapolation),または任意の他の方法を用いて経路を規定することによって補償経路を決定することを含んでもよいことに留意されたい。
【0097】
ステップ403は,光学計測システムのウェッジプリズムを回転させて,適用されることで入射ビームの伝播の補償経路を通るように入射ビームを導くことになるウェッジプリズムの向きを見つけることを含んでもよい。
【0098】
ステップ403は,光学計測システムの複数のウェッジプリズムを回転させて,適用されることで入射ビームの伝播の補償経路を通るように入射ビームを導くことになる複数のウェッジプリズムの向きの組み合わせを見つけることを含んでもよい。
【0099】
ステップ403は,少なくとも1つのラマンスペクトルを分析することを含んでもよい。追加的または代替的に,ステップ403は,ラマンスペクトルの周波数とは異なる周波数の放射線を分析することを含んでもよい。ステップ404の2つの例の間の違いは,集光経路内に位置するグリッドを回転させることを含んでもよい。
【0100】
ステップ403の後,ステップ404が続き,ステップ404で光学計測システムが入射ビームの伝播の補償経路を提供するように構成されている間に測定プロセスを実行して一または複数のラマンスペクトルを提供してもよい。
【0101】
ステップ404の後,ステップ406が続き,ステップ402および404の次の反復を開始するかを判定してもよく,開始する場合ステップ402にジャンプする。
【0102】
【0103】
方法500は,試料の不規則領域の位置に関する不規則領域情報を受信または生成するステップ510を含んでもよい。
【0104】
ステップ510の後,ステップ520が続き,不規則領域情報に基づいて,ラマン検出器に適用される空間フィルタリングプロセスの少なくとも1つのフィルタリングパラメータを決定してもよい。
【0105】
ステップ520は,ラマン検出器に先行するフィルタ(a filter that precedes the Raman detector)の空間的構成を決定することを含んでもよい。
【0106】
ステップ520は,少なくとも1つのフィルタリングパラメータの少なくとも1つが互いに異なる複数のフィルタの中からラマン検出器に先行するフィルタを選択すること(またはスリット開口/幅を調整すること)を含んでもよい。
【0107】
少なくとも1つのフィルタリングパラメータは,ラマン検出器に到達する光の量を含んでもよく,ここで不規則領域を照射するときにラマン検出器に到達する光の量は,規則的(レギュラー)領域を照射するときにラマン検出器に到達する光の量よりも少ない。
【0108】
少なくとも1つのフィルタリングパラメータは,ラマン検出器に先行するフィルタに形成される開口部の面積を含んでもよく,不規則領域を照射するときにフィルタに形成される開口部の面積は,規則的領域を照射するときにフィルタに形成される開口部の面積よりも小さい。
【0109】
少なくとも1つのフィルタリングパラメータは,ラマン検出器に先行するフィルタに形成される開口部の形状を含んでもよく,ここで不規則領域を照射するときにフィルタに形成される開口部は,規則的領域を照射するときにフィルタに形成される開口部よりも狭い。
【0110】
ラマン検出器に先行するフィルタ上に形成される規則的領域の規則的な要素の像(a)がフィルタ上に形成される不規則領域の不規則な要素の像(b)よりも狭い場合,フィルタに形成される開口部の幅は,不規則な要素の像の幅よりも薄く設定されるべきである。
【0111】
ステップ520は,不規則な要素の像の幅を超えるように開口部の幅を設定することを含んでもよい。
【0112】
ステップ520の後,ステップ530が続き,ステップ530においてフィルタリングパラメータを適用しながら試料の複数の部位のラマンスペクトルを取得してもよい。
【0113】
ステップ530は,不規則領域を照射するときに不規則領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用し,規則領域を照射するときに規則領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用することを含んでもよい。
【0114】
フィルタリングパラメータを受信または決定し,不規則領域を照射するときに不規則領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用し,規則領域を照射するときに規則領域に適合する少なくとも1つのフィルタリングパラメータを適用することを含む方法が提供される。
【0115】
図13は,パッド602およびパッドの近傍604への照射の例を示す。
【0116】
パッド602およびその近傍604は,楕円形のスポットを形成する放射線の走査ビームによって照射される。スポット614は近傍のみを照射し,スポット610はパッドのみを照射する。スポット610およびスポット614は規則領域を照射し,規則領域に関連する少なくとも1つのフィルタリングパラメータが集光のときに適用される。
【0117】
スポット612はパッドの縁部を照射し,パッドおよびその近傍の両方にあたっている。スポットは不規則領域を照射し,不規則領域に関連する少なくとも1つのフィルタリングパラメータが集光のときに適用される。
【0118】
図13はまた,大きな開口部632(規則的領域に関連する少なくとも1つのフィルタリングパラメータ)を有するフィルタ上のスポット610の像622を示している。
【0119】
図13はさらに,狭い開口部630(不規則領域に関連する少なくとも1つのフィルタリングパラメータ)を有するフィルタ上のスポット612の像620を示している。
【0120】
狭い開口部630は,像620より狭くてもよいが,像622より広くてもよい(またはほぼ等しくてもよい)。
【0121】
図14は,規則的領域および不規則領域への照射の例を示している。
【0122】
規則的領域730を照射するとき,スポット730は歪まない。
【0123】
ビア(via)732の縁部領域およびその近傍733といった不規則領域に照射するとき,またはスリット734を含むビアの近傍を照射するとき,スポット731は歪む。
【0124】
対象物の特徴を決定するための検出器の検出信号からの放射線の分析および/またはラマンスペクトルの生成,ならびに/またはラマンスペクトルの分析は,光学計測システムに属さない,および/または照射および/または集光経路から離れて配置される,コントローラおよび/または処理回路によって,少なくとも部分的に実行されてもよい。
【0125】
同じ機能を達成するための構成要素の配置は,所望の機能が達成されるように効果的に「関連付け」される。したがって,特定の機能を達成するために組み合わされるこの明細書中の任意の2つの構成要素は,アーキテクチャまたは中間構成要素に関係なく,所望の機能が達成されるように互いに「関連付けされる」とみなしてもよい。同様に,そのように関連付けられた任意の2つの構成要素は,所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続」(operably connected)または「動作可能に結合」(operably coupled)されているとみなすこともできる。
【0126】
さらに,当業者は,上記の動作間の境界(boundaries between the above described operations)が単なる例示であることを認識するであろう。複数の動作を単一の動作に組み合わせたり(結合したり),単一の動作を追加動作中に分散させたり,動作を少なくとも部分的に時間的にオーバーラップさせて実行したりしてもよい。さらに,代替的な実施形態が1つの動作の複数の例(multiple instances of an operation)を含んでもよく,動作の順序は他の様々な実施形態において変更されてもよい。
【0127】
また,たとえば,一実施形態において,示された例は,単一の集積回路上または同じデバイス内に配置された回路として実装されてもよい。あるいは,これらの例は,適切な方法で互いに相互接続された任意の数の別個の集積回路または別個のデバイスとして実装されてもよい。
【0128】
また,たとえば,実施例またはその一部は,物理回路または物理回路に変換可能な論理表現のソフト表現またはコード表現,たとえば任意の適切なタイプのハードウェア記述言語などで実装されてもよい。
【0129】
しかしながら,他の修正,変形および代替も可能である。したがって,明細書および図面は,限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。
【0130】
特許請求の範囲において,括弧の間に置かれたいかなる参照符号も,特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備える(comprising)」という語は,特許請求の範囲に列挙される以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに,この明細書で使用される「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語は,一または複数として定義される。また,特許請求の範囲において「少なくとも1つ」および「一または複数」などの導入句が使用された場合,1つの請求項が「一または複数」または「少なくとも1つ」の導入句および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても,不定冠詞「a」または「an」による別の請求項要素の導入によって,そのように導入された請求項要素を含むいずれかの特定の請求項を,そのような要素を1つだけ含む発明に限定することを意味すると解釈されるべきではない。定冠詞の使用についても同様である。特に明記しない限り,「第1」および「第2」などの用語は,そのような用語が説明する要素間を任意に区別するために使用される。したがって,これらの用語は,そのような要素の時間的または他の優先順位を示すことを必ずしも意図しない。特定の手段が相互に異なる請求項に記載されているというだけでは,これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意図しない。
【0131】
この発明の特定の特徴をこの明細書で例示および説明してきたが,当業者であれば多くの修正,置換,変更,および等価物を思いつくであろう。したがって,添付の特許請求の範囲は,この発明の真の趣旨の範囲内に入るすべてのそのような修正および変更を網羅することを意図していることを理解されたい。
【0132】
「含む」,「備える」,「有する」,「からなる」および「から本質的になる」という用語は,交換可能に使用される。たとえば,任意の方法は,図および/またはこの明細書に含まれるステップを少なくとも含んでもよいし,図および/またはこの明細書に含まれるステップのみを含んでもよい。
【国際調査報告】