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特表2023-510429抗ガレクチン-9抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(54)【発明の名称】抗ガレクチン-9抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230306BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230306BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/18
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566507
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2021070473
(87)【国際公開番号】W WO2021139682
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/957,910
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522271568
【氏名又は名称】ハイファイバイオ (エイチケー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マルガル デュコス, ジャーメイン
(72)【発明者】
【氏名】パチェリー, レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラミネリ, ニコラ アルトゥーロ アルド
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン, フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイツァー, リアン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド, ミュリエル
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ユン-ユエ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、Gal9に対するヒト化モノクローナル抗体、およびPD-1/PD-L1免疫チェックポイントのアンタゴニストとの併用療法を含む、癌を処置するために抗体を用いる方法を提供する。発明の一態様は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、本発明の抗体は、血液癌、例えばAMLおよびDLBCL、ならびに固形癌、例えば、乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌を処置するために広く用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ガレクチン-9に特異的であり、前記モノクローナル抗体は:
(1a)配列番号2のHCVR CDR1配列、配列番号4のHCVR CDR2配列、および配列番号6のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(1b)配列番号10のLCVR CDR1配列、配列番号12のLCVR CDR2配列、および配列番号14のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(2a)配列番号18のHCVR CDR1配列、配列番号20のHCVR CDR2配列、および配列番号22のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(2b)配列番号26のLCVR CDR1配列、配列番号28のLCVR CDR2配列、および配列番号30のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(3a)配列番号34のHCVR CDR1配列、配列番号36のHCVR CDR2配列、および配列番号38のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(3b)配列番号42のLCVR CDR1配列、配列番号44のLCVR CDR2配列、および配列番号46のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(4a)配列番号50のHCVR CDR1配列、配列番号52のHCVR CDR2配列、および配列番号54のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(4b)配列番号58のLCVR CDR1配列、配列番号60のLCVR CDR2配列、および配列番号62のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(5a)配列番号66のHCVR CDR1配列、配列番号68のHCVR CDR2配列、および配列番号70のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(5b)配列番号74のLCVR CDR1配列、配列番号76のLCVR CDR2配列、および配列番号78のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(6a)配列番号82のHCVR CDR1配列、配列番号84のHCVR CDR2配列、および配列番号86のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(6b)配列番号90のLCVR CDR1配列、配列番号92のLCVR CDR2配列、および配列番号94のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(7a)配列番号98のHCVR CDR1配列、配列番号100のHCVR CDR2配列、および配列番号102のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(7b)配列番号106のLCVR CDR1配列、配列番号108のLCVR CDR2配列、および配列番号110のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(8a)配列番号114のHCVR CDR1配列、配列番号116のHCVR CDR2配列、および配列番号118のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(8b)配列番号122のLCVR CDR1配列、配列番号124のLCVR CDR2配列、および配列番号128のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(1c)(1a)および(1b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号5のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号1のHFR1配列をさらに含み;または
(2c)(2a)および(2b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号21のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号17のHFR1配列をさらに含み;または
(3c)(3a)および(3b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号37のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号33のHFR1配列をさらに含み;または
(4c)(4a)および(4b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号53のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号49のHFR1配列をさらに含み;または
(5c)(5a)および(5b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号69のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号65のHFR1配列をさらに含み;または
(6c)(6a)および(6b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号85のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号81のHFR1配列をさらに含み;または
(7c)(7a)および(7b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号101のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号97のHFR1配列をさらに含み;または
(8c)(8a)および(8b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号117のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号113のHFR1配列をさらに含む、
請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
(1A)前記HCVR配列が配列番号8であり;かつ/もしくは
(1B)前記LCVR配列が配列番号16であるか、または
(2A)前記HCVR配列が配列番号24であり;かつ/もしくは
(2B)前記LCVR配列が配列番号32であるか、または
(3A)前記HCVR配列が配列番号40であり;かつ/もしくは
(3B)前記LCVR配列が配列番号48であるか、または
(4A)前記HCVR配列が配列番号56であり;かつ/もしくは
(4B)前記LCVR配列が配列番号64であるか、または
(5A)前記HCVR配列が配列番号72であり;かつ/もしくは
(5B)前記LCVR配列が配列番号80であるか、または
(6A)前記HCVR配列が配列番号88であり;かつ/もしくは
(6B)前記LCVR配列は配列番号96であるか、または
(7A)前記HCVR配列が配列番号104であり;かつ/もしくは
(7B)前記LCVR配列が配列番号112であるか、または
(8A)前記HCVR配列が配列番号120であり;かつ/もしくは
(8B)前記LCVR配列が配列番号128である、
請求項1または2に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
ヒト化抗体であり、かつ:
(1)配列番号8の前記HCVR配列および配列番号16の前記LCVR配列;または、
(2)配列番号72の前記HCVR配列および配列番号80の前記LCVR配列
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記その抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド結合F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、またはscFv-Fcである、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がマウスGal9と交差反応する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約0.1~0.2nMのEC50で結合し、かつ/またはマウスGal9に約0.5~1.0nMのEC50で結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、2nM、または1nM未満のKで結合する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
Gal9に結合して、Gal9受容体(例えば、TIM3またはCD44)へのGal9の結合を阻害する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
T細胞(CD4T細胞等)のGal-9誘導性Th1アポトーシスを中和する、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
Gal9誘導性Treg増殖を抑制する、請求項1~10のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
異種移植腫瘍を有するマウスにおいて、免疫チェックポイントのアンタゴニストと相乗的に、腫瘍成長をインビボ阻害し、かつ/または生存を延長する、請求項1~11のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
癌の処置を必要とする患者において癌を処置する方法であって、有効量の、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、および免疫チェックポイントのアンタゴニストを前記患者に投与することを含む方法。
【請求項15】
前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントであり、必要に応じて、前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1のペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、請求項14~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
化学療法剤、抗血管形成剤、成長阻害剤、免疫腫瘍治療剤、および/または抗新生物組成物を前記患者に投与することをさらに含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に規定の重鎖もしくは軽鎖、またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
ヒト細胞内での発現のためにコドン最適化されている、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター(例えば、哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)等のベクター。
【請求項21】
癌を発症するか、または癌が再発するリスクがある、癌と診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいは癌を有する患者を識別かつ処置する方法であって、前記患者由来のサンプル中のガレクチン-9のレベルが、健康な個体または対照個体におけるガレクチン-9の基準レベルよりも高いと前記患者を識別すると、有効量の、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項22】
前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルを前記基準レベルと比較することによって、前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルが前記基準レベルよりも高いと前記患者を識別することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
免疫チェックポイントのアンタゴニストを前記患者に投与することをさらに含み、必要に応じて、前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1の(非抗体)ペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者であるか、または前記患者が、Fab M2もしくはM3のAML患者ではない、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルが、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
AMLを発症するか、またはAMLを再発するリスクがある、AMLと診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいはAMLを有する患者を識別かつ処置する方法であって、前記患者由来の骨髄(BM)由来単核細胞(MNC)サンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルが、健康な個体または対照個体におけるBM由来MNCまたはCD34細胞における基準レベルよりも統計的に有意に高いか、または低いと前記患者を識別すると、有効量の、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項29】
(1)前記患者がFab M0、M1、M2、M4、もしくはM5のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に高く、または(2)前記患者がFab M3のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に低い、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
癌の処置に用いられる、ガレクチン-9に対して向けられるか、またはガレクチン-9に特異的な抗体またはその抗原結合部分であって、前記抗体またはその抗原結合部分は、エフェクタT細胞増殖を救済し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強し、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、抗体またはその抗原結合部分。
【請求項31】
エフェクタT細胞増殖を救済または促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法であって、前記エフェクタT細胞を、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含み、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、方法。
【請求項32】
対象において免疫記憶を誘導または促進する方法であって、有効量の、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記免疫記憶が、前記対象における腫瘍の進行もしくは再発、または癌細胞の増殖を阻害するか、または低減するのに有効である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年1月7日に出願された米国仮特許出願第62/957,910号に基づく優先権を主張し、その全内容は、全ての配列および図面を含んで、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ガレクチン-9(またはGal9)は、脊椎動物において少なくとも15種のメンバーを有するガレクチン(またはS型レクチン)タンパク質ファミリーのメンバーであり、ヒトでは10種を含む。ガレクチン-9は、リーダーペプチドを有していない可溶性の34~39kDaのタンパク質ではあるものの、非古典的機構を介して分泌される。ガレクチン-9は、糖タンパク質および糖脂質のベータ-ガラクトシド残基と優先的に相互作用する。ヒトにおいて、ガレクチン-9は、長型、中型、および短型の3つのアイソフォームが存在する。
【0003】
ガレクチン-9は、HAVCR2(TIM-3)について最も研究されているリガンドの1つであり、CLL、MDS、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、AML等の種々の血液学的悪性腫瘍、ならびに肺癌、乳癌、および肝細胞癌等の固形腫瘍において発現される。
【0004】
HAVCR2/ガレクチン-9相互作用は、腫瘍微環境および慢性感染においてT細胞増殖およびエフェクタ機能を減弱させることが見出されている。さらに、ガレクチン-9は、腫瘍細胞形質転換、細胞周期調節、血管形成、および細胞接着による腫瘍形成に寄与している。
【0005】
また、ガレクチン-9は、制御性Tリンパ球(またはTreg)によって直接発現され、その発現は、Treg活性化の間に増大する。一方、ガレクチン-9は、エフェクタTリンパ球(CD8CTL等)によって非常に弱く発現され、この発現は、エフェクタTリンパ球活性化の間に消失する。抗Gal9抗体によるガレクチン-9の阻害が、Tregの抑制活性を阻害することが見出されている。
【0006】
Wuら(Immunity 41(2):270-282,2014)は、Gal-9が免疫応答の調節に重要であることを報告した。Gal-9は、誘導性制御性T細胞(iTreg)によって高度に発現される。Gal-9は、天然の制御性T(nTreg)細胞ではなくiTreg細胞の生成および機能にとって重要であった。iTreg細胞内でのGal-9発現が、転写因子Smad3によって駆動されて、フィードフォワードループを形成し、これがFoxp3発現をさらに促進した。Gal-9は、iTreg細胞の受容体CD44に直接結合することによって、その安定性および機能を増大させて、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)受容体I(TGF-βRI)および活性化されたSmad3との複合体を形成した。Gal-9シグナル伝達が、Foxp3遺伝子座のCNS1領域を介して支配的に作動することによって、iTreg細胞誘導を調節することがさらに見出された。外因性Gal-9は、Treg細胞のエフェクタ分子であることに加えて、TGF-βと相乗的に作用して、iTreg細胞の分化および維持を強化する。
【0007】
種々のTリンパ球型が、通常、例えば「エフェクタ」細胞またはエフェクタTリンパ球に発達し、これが宿主生物を防御するための特殊な免疫機能を果たすこととなる。ゆえに、CD4Tリンパ球または補助Tリンパ球は、体液性機能(特異的抗体の産生)において、特にBリンパ球を、そして細胞傷害活性において、CD8Tリンパ球を補助する主要なサイトカインを分泌する。
【0008】
CD4Tリンパ球の別の集団が、天然の制御性Tリンパ球、または「制御性Tリンパ球(Treg)」からなる。制御性Tリンパ球は、CD25分子(それ故に、「CD4CD25」とも呼ばれる)およびFoxp3転写因子を構成的に過剰発現する。少しのパーセンテージのCD4CD25Tリンパ球が、そのTCRによって種々の自己抗原を認識することとなる免疫応答の作用因子を負に調節するという特殊性を有する。また、調節因子Tリンパ球は、特に自己免疫疾患の出現から生物を保護するのに、免疫系の生理学において主要な役割を果たす。換言すれば、Tregは、CD25、CTLA-4、およびGITRを構成する発現を、そして転写因子Foxp3の特異的発現を特徴とする、天然の制御性Tリンパ球(または「nTreg」)の亜集団である。
【0009】
Tregは、エフェクタTリンパ球に対して免疫抑制活性を発揮する。そのような活性は、腫瘍等の病理学的状況において活性化されると、腫瘍増殖を促進する。ゆえに、Tregの抑制活性は、エフェクタTリンパ球の機能を阻害することによって、抗腫瘍免疫応答を低下させる活性として理解することができる。
【0010】
ガレクチン-9は、主に、異なる免疫受容体との相互作用に起因する腫瘍免疫抑制と関連する。例えば、Gal9は、Gal9ブロック時のTh1アポトーシスの低下、CIA(コラーゲン誘導性関節炎)に対するGal9ノックアウトマウスの感受性の増大、ならびにGal9投与時の長期移植片生存およびAID抑制によって証明されるように、Th1応答を阻害し、かつ末梢寛容を誘導する。また、Gal9は、末梢NK細胞機能を調節して、母体-胎児寛容を促進し、MDSCの増殖を促進し、かつTGF-βと相乗作用して、Treg増殖を促進する。
【0011】
Gal9の循環レベルは、健康な対照と比較して、特定の癌患者において有意に高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】WUら(Immunity 41(2):270-282,2014)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本明細書中に記載される発明は、ガレクチン-9に対して向けられるヒト化抗体、およびその、制御性Tリンパ球(Treg)の抑制因子活性に関連する疾患の処置のための使用に関する。
【0014】
詳細には、本明細書中に記載される発明は、TME(腫瘍微環境)において免疫抑制を解放して、癌患者において抗腫瘍活性および臨床応答をもたらす抗Gal9中和抗体を提供する。
【0015】
本発明の抗Gal9中和抗体は、米国特許出願公開第2017/0283499A1号(2015年6月5日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている2つの抗Gal9中和抗体(それぞれAb1およびAb2)に基づく派生抗体(derivative antibody)であり、これらは双方とも、組換えヒトGal9にサブnM EC50値で結合して、CD4T細胞のヒトGal9誘導性アポトーシス、または健康なドナーの末梢血由来のTregの増殖をブロックする。しかしながら、これらの2つの抗体は、Ab2が、2つの免疫受容体(R1およびR2)との組換えヒトGal9相互作用をブロックする一方、Ab1がブロックしないという点で、異なる。
【0016】
本明細書中に記載される発明は、Ab1およびAb2に基づく複数のヒト化モノクローナル抗体を提供する。これらのヒト化モノクローナル抗体は、組換えヒトおよび/またはマウスGal9に結合し、Gal9誘導性Th1アポトーシスをブロックし、かつGal9誘導性Treg増殖をブロックする。より重要なことには、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、PD-1/PD-L1免疫チェックポイントを標的とする抗体と相乗的に作用することで、免疫療法において遭遇する耐性(例えば、PD-1およびPD-L1アンタゴニストを用いての、非有効な耐性)を克服するための治療上の利点を提供する。
【0017】
本発明の抗体は、血液癌、例えばAMLおよびDLBCL、ならびに固形癌、例えば、乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌を処置するのに広く用いられる。
【0018】
ゆえに、本発明の一態様は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ガレクチン-9に特異的であり、前記モノクローナル抗体は:(1a)配列番号2のHCVR CDR1配列、配列番号4のHCVR CDR2配列、および配列番号6のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(1b)配列番号10のLCVR CDR1配列、配列番号12のLCVR CDR2配列、および配列番号14のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(2a)配列番号18のHCVR CDR1配列、配列番号20のHCVR CDR2配列、および配列番号22のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(2b)配列番号26のLCVR CDR1配列、配列番号28のLCVR CDR2配列、および配列番号30のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(3a)配列番号34のHCVR CDR1配列、配列番号36のHCVR CDR2配列、および配列番号38のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(3b)配列番号42のLCVR CDR1配列、配列番号44のLCVR CDR2配列、および配列番号46のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(4a)配列番号50のHCVR CDR1配列、配列番号52のHCVR CDR2配列、および配列番号54のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(4b)配列番号58のLCVR CDR1配列、配列番号60のLCVR CDR2配列、および配列番号62のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(5a)配列番号66のHCVR CDR1配列、配列番号68のHCVR CDR2配列、および配列番号70のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(5b)配列番号74のLCVR CDR1配列、配列番号76のLCVR CDR2配列、および配列番号78のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(6a)配列番号82のHCVR CDR1配列、配列番号84のHCVR CDR2配列、および配列番号86のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(6b)配列番号90のLCVR CDR1配列、配列番号92のLCVR CDR2配列、および配列番号94のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(7a)配列番号98のHCVR CDR1配列、配列番号100のHCVR CDR2配列、および配列番号102のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(7b)配列番号106のLCVR CDR1配列、配列番号108のLCVR CDR2配列、および配列番号110のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または(8a)配列番号114のHCVR CDR1配列、配列番号116のHCVR CDR2配列、および配列番号118のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに(8b)配列番号122のLCVR CDR1配列、配列番号124のLCVR CDR2配列、および配列番号128のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0019】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片では、(1c)(1a)および(1b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号5のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号1のHFR1配列をさらに含み;または(2c)(2a)および(2b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号21のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号17のHFR1配列をさらに含み;または(3c)(3a)および(3b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号37のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号33のHFR1配列をさらに含み;または(4c)(4a)および(4b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号53のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号49のHFR1配列をさらに含み;または(5c)(5a)および(5b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号69のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号65のHFR1配列をさらに含み;または(6c)(6a)および(6b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号85のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号81のHFR1配列をさらに含み;または(7c)(7a)および(7b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号101のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号97のHFR1配列をさらに含み;または(8c)(8a)および(8b)の抗体もしくはその抗原結合断片は、配列番号117のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号113のHFR1配列をさらに含む。
【0020】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片では、(1A)HCVR配列は配列番号8であり;かつ/もしくは(1B)LCVR配列は配列番号16であるか、または(2A)HCVR配列は配列番号24であり;かつ/もしくは(2B)LCVR配列は配列番号32であるか、または(3A)HCVR配列は配列番号40であり;かつ/もしくは(3B)LCVR配列は配列番号48であるか、または(4A)HCVR配列は配列番号56であり;かつ/もしくは(4B)LCVR配列は配列番号64であるか、または(5A)HCVR配列は配列番号72であり;かつ/もしくは(5B)LCVR配列は配列番号80であるか、または(6A)HCVR配列は配列番号88であり;かつ/もしくは(6B)LCVR配列は配列番号96であるか、または(7A)HCVR配列は配列番号104であり;かつ/もしくは(7B)LCVR配列は配列番号112であるか、または(8A)HCVR配列は配列番号120であり;かつ/もしくは(8B)LCVR配列は配列番号128である。
【0021】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体であり、かつ:(1)配列番号8のHCVR配列および配列番号16のLCVR配列;または(2)配列番号72のHCVR配列および配列番号80のLCVR配列を含む。
【0022】
特定の実施形態において、その抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、一本鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、Ignar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcである。
【0023】
一部の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、免疫エフェクタ機能を無効にする操作されたFc領域を有する。例えば、主題の抗体の操作されたFc領域は、「LALA」二重変異(Leu235Alaと共にLeu234Ala)を有するので、エフェクタ機能が低下し得る。そのような抗体は、IgG1上にLALA二重変異を有することについて、G1AAの名称を有し得る。
【0024】
Fcγ受容体(FcγR)および補体タンパク質C1qへの結合を部分的または完全に欠くことで免疫エフェクタ機能が無効にされている他の組換えヒトIgG抗体(hIgG)が、当該技術において知られており、FcγR活性化およびFc媒介性毒性を低減するための種々の治療用途に有用である。そのような特定のFc操作抗体/断片は、この目標を部分的に達成する一方、他のものはFcγR活性化およびFc媒介性毒性を完全に無効にする。特定の実施形態において、本発明の抗体/断片は、hIgG1-P329G LALAまたはhIgG4-P329G SPLE(IgG4のヒトIgG4 S228P/L235E変異体)変異を含む操作されたhIgG Fcドメインを有し、FcγRおよびC1q相互作用が完全に無効にされ、かつFcRn相互作用およびFc安定性の影響を受けない。P329G Fc変異は、FcγRとのプロリンサンドイッチモチーフの形成を破壊する。このモチーフは、全てのIgG Fc/FcγR複合体の界面に存在するので、その破壊を、全てのヒト、および他の大部分の哺乳動物のIgGサブクラスにもたらして、エフェクタサイレントIgG分子を作り出すことができる。ゆえに、特定の実施形態において、主題の抗体/断片は、そのようなエフェクタサイレントFc変異を有するいずれか1つのIgGサブクラスを有する。
【0025】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、マウスGal9と交差反応する。
【0026】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトGal9に約0.1~0.2nMのEC50で結合し、かつ/またはマウスGal9に約0.5~1.0nMのEC50で結合する
【0027】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトGal9に約25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、2nM、または1nM未満のKDで結合する。
【0028】
特定の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、抗体の開発可能性を向上させるように設計された、そのアミノ酸配列の1つまたはそれを超える点変異を含む。例えば、特定の実施形態において、1つまたはそれを超える点変異は、抗体を、その、宿主細胞内での発現中に、その、製造および/もしくは製剤化プロセス中の精製中に、かつ/またはその、対象患者への投与中に、より安定にする。特定の実施形態において、1つまたはそれを超える点変異により、製造および/または製剤化プロセス中に抗体が凝集しにくくなる。
【0029】
特定の実施形態において、本発明は、配列中(例えば、1つまたはそれを超えるCDR中)の1つまたはそれを超えるアミノ酸を置換することによって、疎水性が除去されたか、もしくは低減された、かつ/または電荷が最適化された等の、開発可能性の問題が最小限に抑えられたか、または低減された治療用抗体を提供する。
【0030】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、Gal9に結合して、Gal9受容体(例えば、TIM3またはCD44)へのGal9の結合を阻害する。
【0031】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、T細胞(CD4+T細胞等)のGal9誘導性Th1アポトーシスを中和する。
【0032】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、Gal9誘導性Treg増殖を抑制する。
【0033】
特定の実施形態において、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、異種移植(XENOGRAPH)腫瘍を有するマウスにおいて、免疫チェックポイントのアンタゴニストと相乗的に、腫瘍成長をインビボ阻害し、かつ/または生存を延長する。
【0034】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントのアンタゴニストは、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である。
【0035】
本発明の別の態様は、癌の処置を必要とする患者において癌を処置する方法であって、有効量の本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、および免疫チェックポイントのアンタゴニストを患者に投与することを含む方法を提供する。
【0036】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントは、PD-1/PD-L1免疫チェックポイントである。
【0037】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントのアンタゴニストは、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である。
【0038】
特定の実施形態において、抗体は、抗PD-1抗体、例えば、セミプリマブ、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである。
【0039】
特定の実施形態において、抗体は、抗PD-L1抗体、例えば、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、KN035、またはCK-301である。
【0040】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントのアンタゴニストは、AUNP12等のPD-1/PD-L1;CA-170等のPD-L1の小分子阻害剤、またはBMS-986189等の大環状ペプチドの(非抗体)ペプチド阻害剤である。
【0041】
特定の実施形態において、癌は、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である。
【0042】
特定の実施形態において、方法は、化学療法剤、抗血管形成剤、成長阻害剤、免疫腫瘍治療剤、および/または抗新生物組成物を患者に投与することをさらに含む。
【0043】
本発明の別の態様は、本発明の重鎖もしくは軽鎖、またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0044】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、ヒト細胞内での発現のためにコドン最適化されている。
【0045】
本発明の別の態様は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0046】
特定の実施形態において、ベクターは、発現ベクター(例えば、哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)である。
【0047】
本発明の別の態様は、癌を発症するか、または癌が再発するリスクがある、癌と診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を促進し、強化し、回復させ、もしくは救済し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいは癌を有する患者を識別かつ処置する方法であって、患者由来のサンプル中のガレクチン-9のレベルが、健康な個体または対照個体におけるガレクチン-9の基準レベルよりも高いと患者を識別すると、有効量の本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0048】
特定の実施形態において、本方法は、サンプル中のガレクチン-9のレベルを基準レベルと比較することによって、サンプル中のガレクチン-9のレベルが基準レベルよりも高いと患者を識別することをさらに含む。
【0049】
特定の実施形態において、本方法は、免疫チェックポイントのアンタゴニストを患者に投与することをさらに含む。
【0050】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントは、PD-1/PD-L1免疫チェックポイントである。
【0051】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントのアンタゴニストは、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である。
【0052】
特定の実施形態において、抗体は、抗PD-1抗体、例えば、セミプリマブ、ニボルマブ、またはペンブロリズマブである。
【0053】
特定の実施形態において、抗体は、抗PD-L1抗体、例えば、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、KN035、またはCK-301である。
【0054】
特定の実施形態において、免疫チェックポイントのアンタゴニストは、AUNP12等のPD-1/PD-L1;CA-170等のPD-L1の小分子阻害剤、またはBMS-986189等の大環状ペプチドの(非抗体)ペプチド阻害剤である。
【0055】
特定の実施形態において、癌は、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である。
【0056】
特定の実施形態において、患者は、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者であるか、または患者は、Fab M2もしくはM3のAML患者ではない。
【0057】
特定の実施形態において、サンプルは、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである。
【0058】
本発明の別の態様は、AMLを発症するか、またはAMLを再発するリスクがある、AMLと診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいはAMLを有する患者を識別かつ処置する方法であって、患者由来の骨髄(BM)由来単核細胞(MNC)サンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルが、健康な個体または対照個体におけるBM由来MNCまたはCD34細胞における基準レベルよりも統計的に有意に高いか、または低いと患者を識別すると、有効量の本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0059】
特定の実施形態において、患者由来のBM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルは、患者がFab M0、M1、M2、M4、またはM5のAML患者である場合、基準レベルよりも有意に高い。
【0060】
特定の実施形態において、患者由来のBM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルは、患者がFab M3のAML患者である場合、基準レベルよりも有意に低い。
【0061】
本発明の別の態様は、癌の処置に用いられるガレクチン-9に対して向けられるか、またはガレクチン-9に特異的な抗体またはその抗原結合部分であって、エフェクタT細胞増殖を救済し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0062】
特定の実施形態において、エフェクタT細胞はTh1細胞である。
【0063】
本発明の別の態様は、エフェクタT細胞増殖を救済または促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法であって、エフェクタT細胞を、本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含む方法を提供する。
【0064】
特定の実施形態において、エフェクタT細胞はTh1細胞である。
【0065】
本発明の別の態様は、抗腫瘍(抗癌)活性をもたらす免疫記憶を誘導または促進するための方法および関連する組成物を提供する。特定の実施形態において、方法は、対象における腫瘍または癌の開始、進行、または再発を効果的に低減するか、または阻害する免疫記憶を誘導、刺激、または促進するのに有効な量の組成物(本発明の抗体を含む医薬組成物等)を対象に投与することを含む。
【0066】
実施例または特許請求の範囲にのみ記載されるものを含む、本明細書中に記載される本発明の任意の1つの実施形態は、明示的に否定されない限り、またはそれ以外では不適切でない限り、本発明の任意の1つまたはそれを超える更なる実施形態と組み合わせることができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体の配列アラインメントを示す。
図2図2は、種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体の配列アラインメントを示す。
図3図3は、組換えヒトGal9に対する種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体の結合親和性(nMでのEC50として測定)を示す。異なる抗原に対するアイソタイプマッチ抗体を陰性対照として用いる。ある場合には、元のヒト-マウスキメラ抗体もまた、比較のために含めている。
図4図4は、組換えマウスGal9に対する種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体の結合親和性(nMでのEC50として測定)を示す。異なる抗原に対するアイソタイプマッチ抗体を陰性対照として用いる。ある場合には、元のヒト-マウスキメラ抗体もまた、比較のために含めている。
図5図5は、本発明の種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体が、TIM3およびCDC44への結合をブロックすることができることを示す。
図6図6は、本発明の種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体が、Gal9誘導性Th1細胞アポトーシスを中和する能力を示す。
図7図7は、本発明の種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体が、Gal9誘導性Treg増殖を中和する能力を示す。
図8図8は、本発明の種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体が、抗PD1抗体と組み合わせて用いた場合に長期生存を促進する能力を示す。データは、抗PD1抗体との併用療法が、腫瘍容積増大の阻害によって測定される、有意に良好な/相乗的な治療有効性をもたらしたことを実証する。
図9図9は、本発明の種々の抗ヒトガレクチン-9ヒト化抗体が、抗PD1抗体と組み合わせて用いた場合に長期生存を促進する能力を示す。データは、抗PD1抗体との併用療法が、経時的な生存によって測定される、有意に良好な/相乗的な治療有効性をもたらしたことを実証する。
図10図10は、AML患者および健康な個体由来の血清または血漿中のガレクチン-9のレベルを示す。データは、診断時または再発/難治性(R/R)段階でのAML患者由来の血漿中のガレクチン-9レベルが、化学療法処置後の完全寛解時の健康な患者およびAML患者由来の血漿中よりも有意に高かったことを実証する。
図11図11は、French-American-British(Fab)分類に従って層別化したAML患者由来の血漿または血清中のガレクチン-9のレベルを示す。データは、診断時のFab M2またはFab M3のAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルが、Fab M0、M1、M4、またはM5のAML患者由来の血漿中で観察されたものよりも有意に低かったことを示す。診断時のFab M3のAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルは、正常な生理学的範囲内にあった。
図12図12は、French-American-British(Fab)分類に従って層別化したAML患者由来、または健康な個体由来の骨髄(BM)由来単核細胞(MNC)中のガレクチン(GALACTIN)-9コードmRNA(LGALS9)のレベルを示す。データは、診断時のAML患者由来のBM由来MNC(全てFabと考えられる)におけるガレクチン-9コードmRNAレベルが、健康な個体由来のBM由来MNCまたはCD34細胞において観察されるmRNAレベルよりも高かったことを示す。診断時のFab M3のAML患者由来のBM由来MNCにおけるガレクチン-9コードmRNAレベルは、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者由来のBM由来MNC、または健康な個体由来のBM由来MNCもしくはCD34細胞において観察されるものよりも有意に低かった。
図13図13は、単剤療法としての本発明の抗体の抗腫瘍活性を示す。この実験は、本発明の抗Gal9モノクローナル抗体が、異種移植(xenograph)マウスモデルにおいて腫瘍成長をインビボ阻害するのに有効であることを実証する。詳細には、約50万個の癌細胞を実験マウスに接種して、腫瘍塊を所定のサイズまで成長させた。次いで、マウスを無作為化して、2つの抗体の1つを腹膜内に(i.p.)注射した:(1)10mg/kgの用量でのIgGアイソタイプ対照、(2)10mg/kgの用量での抗Gal9抗体HFB9-2。種々の群用の抗体の最初の用量を1日目に投与して、その後の用量を3日毎に、抗HFB9-2抗体および対照抗体によるあらゆる群に対して合計8回用量投与した。データを平均±s.e.mとして示す(N=10頭/群)。主題の抗Gal9抗体は、インビボでの腫瘍成長に及ぶ阻害効果を示したことが明らかである。
図14図14はさらに、生存に関する単剤療法としての本発明の抗体の抗腫瘍活性を示す:対照群内の全てのマウスが死亡し、HFB9-2処置群内のマウスの40%(10頭中4頭)が、6週目の終わりに腫瘍なしで生存した。
図15図15は、本発明の抗体の抗腫瘍活性の免疫記憶を示す。第1の腫瘍接種/チャレンジ後、無感作動物は腫瘍を生じ、4頭の動物のうち2頭が31日以内に3000mmのヒトエンドポイントの腫瘍容積に達した。本発明の抗体であるHFB9-2によって以前に処置され、かつ治癒された、腫瘍退縮が完了した4頭の動物は、第1の腫瘍チャレンジの63日後に接種した第2のWehi-164腫瘍チャレンジを完全に拒絶した。これらのデータは、HFB9-2処置によって誘導される長期免疫記憶を示唆する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
1.概要
免疫チェックポイントを標的とするモノクローナル抗体が、広範な腫瘍型における臨床的成功を実証してきたが、持続的応答は、処置に対する一次耐性または二次耐性に起因して、一部の患者においてしか観察されない。
【0069】
出願人は、ガレクチン9(Gal-9)が、腫瘍を現在の免疫療法に対して耐性にする、腫瘍微環境内に存在する重要な因子であると考えている。幾つかある証拠の中で特に、AMLおよびALL等の血液悪性腫瘍、および複数の固形腫瘍を含む様々な癌型において高いGal-9発現が報告されている。
【0070】
本明細書中に記載される本発明は、癌患者の少なくともサブセットにおいて耐性を克服し、かつ臨床応答を向上させる、Gal-9を標的とする抗体を提供する。本発明のモノクローナル抗体は、サブナノモル濃度の親和性でヒトGal9に特異的に結合し、ヒト腫瘍細胞によって産生される組換えGal9およびGal9を認識し、かつマウスおよびサルのGal9オルソログと交差反応性である。また、本発明のモノクローナル抗体は、Gal9の、その受容体TIM3およびCD44との相互作用を、用量依存的にブロックする。これらの2つの受容体は、エフェクタT細胞および制御性T細胞内でGal9免疫抑制シグナルを媒介することが説明されてきた。健康なドナー由来のヒトPBMCの、本発明の抗体による処置により、Gal9誘導性Th1細胞アポトーシスが防止されて、制御性T細胞の増殖が抑制される。
【0071】
本発明の抗体の特定のヒト化バージョンが、安定性および薬物動態(PK)プロファイルに関して、さらに好適な特徴を示すので、治療用抗体としての更なる開発に比類なく適している。具体的には、そのようなヒト化抗体は、40℃にて少なくとも14日間、低PHにて数時間、そして数回の凍結融解サイクルの後に、安定性を示した。一方、C57BL/6マウスへの10mg/kgの単回用量投与後の高い血漿曝露が、ヒト化抗体について観察された。
【0072】
本発明の抗体は、AML等のいくつかの癌を処置するのに用いることができる。Gal9は、白血病幹細胞の自己再生因子、および抗癌免疫の抑制因子の双方として、AMLにおいて二重の役割を果たすことが報告されている。ゆえに、本発明のGal9中和抗体を用いることによってGal9機能をアンタゴナイズすることは、AMLを処置するための魅力的な治療アプローチを表す。
【0073】
まとめると、本明細書中に提示されるデータは、本発明の抗体によるGal9の中和が、現在の免疫療法の効力を制限することが知られている重要な免疫抑制機構をブロックすることを実証する。
【0074】
本発明の詳細な態様が、以下の種々のセクションにおいてさらに個別に説明される。しかしながら、実施例または図面にのみ記載される実施形態、および以下の1つのセクションにのみ記載される実施形態を含む本発明の任意の1つの実施形態は、本発明の任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0075】
2.定義
用語「抗体」は、最も広い意味で、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を含むがこれらに限定されない種々の抗体構造を包含する。また、用語「抗体」は、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、およびCDR3、ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む分子であって、抗原に結合することができる分子を広く指し得る。また、用語「抗体」は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびマウス、ヒト、カニクイザルその他の種々の種の抗体を含むが、これらに限定されない。
【0076】
しかしながら、より狭義には、「抗体」は、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、およびヒトモノクローナル抗体、特に本発明のヒト化モノクローナル抗体を含む種々のモノクローナル抗体を指す。
【0077】
一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む。一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域、および重鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1つの重鎖(HC)、ならびに軽鎖可変領域、および軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1つの軽鎖(LC)を含む。一部の実施形態において、抗体は、2つの重鎖(各重鎖が、重鎖可変領域、および重鎖定常領域の少なくとも一部を含む)および2つの軽鎖(各軽鎖が、軽鎖可変領域、および軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む)を含む。
【0078】
本明細書中で用いられる、例えば6つ全てのCDR(3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDR)を含む単一のポリペプチド鎖を含む単鎖Fv(scFv)または任意の他の抗体が、重鎖および軽鎖を有すると考えられる。そのような一部の実施形態において、重鎖は、3つの重鎖CDRを含む抗体の領域であり、軽鎖は、3つの軽鎖CDRを含む抗体の領域である。
【0079】
本明細書中で用いられる用語「重鎖可変領域(HCVR)」は、少なくとも、重鎖CDR1(CDR-H1)、フレームワーク2(HFR2)、CDR2(CDR-H2)、FR3(HFR3)、およびCDR3(CDR-H3)を含む領域を指す。一部の実施形態において、重鎖可変領域はまた、CDR-H1のN末端側にあるFR1(HFR1)の少なくとも一部(例えば全体)、および/またはCDR-H3のC末端側にあるFR4(HFR4)の少なくとも一部(例えば全体)を含む。
【0080】
本明細書中で用いられる用語「重鎖定常領域」は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む領域を指す。非限定的な例示的な重鎖定常領域として、γ、δ、およびαを含む。また、非限定的な例示的な重鎖定常領域として、εおよびμを含む。各重定常領域は、抗体アイソタイプに該当する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体であり、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体である。
【0081】
特定のアイソタイプがさらに、サブクラスに細分され得る。例えば、IgG抗体として、IgG1抗体(γ1定常領域を含む)、IgG2抗体(γ2定常領域を含む)、IgG3抗体(γ3定常領域を含む)、およびIgG4抗体(γ4定常領域を含む)を含むが、これらに限定されない。IgA抗体として、IgAl抗体(α1定常領域を含む)およびIgA2抗体(α2定常領域を含む)を含むが、これらに限定されない。IgM抗体として、IgM1(μ1定常領域を含む)およびIgM2(μ2定常領域を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本明細書中で用いられる用語「重鎖」は、リーダー配列のある、またはない、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態において、重鎖は、重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。本明細書中で用いられる用語「完全長重鎖」は、リーダー配列のある、またはない、そしてC末端リジンのある、またはない、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0083】
本明細書中で用いられる用語「軽鎖可変領域(LCVR)」は、軽鎖CDR1(CDR-L1)、フレームワーク(FR)2(LFR2)、CDR2(CDR-L2)、FR3(LFR3)、およびCDR3(CDR-L3)を含む領域を指す。一部の実施形態において、軽鎖可変領域はまた、FR1(LFR1)の少なくとも一部(例えば全体)、および/またはFR4(LFR4)の少なくとも一部(例えば全体)を含む。
【0084】
本明細書中で用いられる用語「軽鎖定常領域」は、軽鎖定常ドメインCを含む領域を指す。非限定的な例示的な軽鎖定常領域として、λおよびκを含む。
【0085】
本明細書中で用いられる用語「軽鎖」は、リーダー配列のある、またはない、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態において、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。本明細書中で用いられる用語「完全長軽鎖」は、リーダー配列のある、またはない、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0086】
用語(抗体の)「抗体断片」または「抗原結合部分」として、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、および(Fab’)等の抗原に結合することができる断片を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、抗体断片として、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド結合F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mab、(scFv)、またはscFv-Fcを含む。
【0087】
用語「Fab」は、分子量が約50,000ダルトンの抗体断片を指し、抗原に結合する活性を有する。Fabは、ジスルフィド架橋によって連結された、重鎖のN末端側の約半分、および軽鎖全体を含む。Fabは、特にプロテアーゼであるパパインによる免疫グロブリンの処理によって得ることができる。
【0088】
用語「F(ab’)」は、約100,000ダルトンの断片、および抗原への結合活性を示す。当該断片は、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋を介して連結された2つのFab断片よりも僅かに大きい。これらの断片は、免疫グロブリンを、プロテアーゼであるペプシンで処理することによって得られる。Fab断片は、F(ab’)2断片から、ヒンジ領域のジスルフィド架橋の切断によって得ることができる。
【0089】
単一のFv鎖「scFv」は、VLドメインおよびVHドメインをコードする遺伝子、ならびにこれらのドメインに結合することが意図されるペプチドをコードする配列を用いて合成されるVH:VLポリペプチドに該当する。本発明に従うscFvは、例えば遺伝子組換え技術を用いて、適切な高次構造で維持されるCDRを含む。
【0090】
「scFv」の二量体は、ペプチド結合によって互いに連結された2つのscFv分子に該当する。このFv鎖は、ペプチドをコードするリンカー配列によって連結されるVHおよびVLをコードする遺伝子を含む融合遺伝子の発現の結果であることが多い。ヒトscFv断片は、好ましくは遺伝子組換え技術の使用によって、適切な高次構造で維持されるCDR領域を含み得る。
【0091】
「dsFv」断片は、ジスルフィド架橋によって安定化されるVH-VLヘテロ二量体である;「dsFv」断片は、二価(dsFv)であり得る。二価Sc(Fv)または多価抗体の断片は、一価scFvの会合によって自発的に形成されてもよいし、ペプチド結合配列によってscFv断片を連結することによって生成されてもよい。
【0092】
Fc断片は、抗体の生物学的特性、特に免疫エフェクタによって認識される能力または補体を活性化する能力の支持体である。Fc断片は、ヒンジ領域を越えた重鎖の定常断片からなる。
【0093】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原固定部位を有する小さな抗体断片を意味する。当該断片は、同じVH-VLポリペプチド鎖内に、可変軽鎖ドメインVLに連結された可変重鎖ドメインVHを含む。同じ鎖の2つのドメインのマッチングを可能にするには短過ぎる結合配列を用いると、別の鎖の2つの相補的ドメインとのマッチングが必ず起こるので、2つの抗原固定部位が作り出される。
【0094】
基準抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、抗体競合アッセイによって判定することができる。同じエピトープに結合する抗体は、競合アッセイにおいて、抗原に対する基準抗体の結合を50%またはそれを超えて阻害する抗体を、そして逆に、競合アッセイにおいて、抗原に対する抗体の結合を50%またはそれを超えて阻害する基準抗体を指す。用語「競合する」は、同じエピトープについて競合する抗体の文脈において用いられる場合、試験されることとなる抗体が、基準抗体の、共通の抗原への特異的結合を防止または阻害するアッセイによって、抗体間の競合が判定されることを意味する。
【0095】
数多くのタイプの競合結合アッセイを用いることができる:例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahliら、1983,Methods in Enzymology,9:242~253参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirklandら、1986,J.Immunol.137:3614-3619参照);固相直接標識アッセイ;固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、HarlowおよびLane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press参照);I125標識を用いる固相直接標識RIA(例えば、Morelら、1988,Molec.Immunol.25:7-15);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546-552参照);および直接標識RIA(Moldenhauerら、1990,Scand.J.Immunol.)。
【0096】
典型的には、そのようなアッセイは、非標識試験抗原結合タンパク質および標識基準抗体のいずれかを有する固体表面または細胞に結合する精製抗原の使用を含む。競合的阻害は、試験抗体の存在下で、固体表面または細胞に結合した標識の量を求めることによって測定される。通常、試験抗体は、過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)として、基準抗体と同じエピトープに結合する抗体、および立体障害が生じるほど、基準抗体によって結合されるエピトープに十分に近位の隣接エピトープに結合する抗体を含む。一部の実施形態において、競合抗体は、過剰に存在する場合、共通の抗原への基準抗体の特異的結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%阻害することとなる。一部の例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは97%、またはそれを超えて阻害される。
【0097】
用語「抗原」は、抗体またはその免疫学的に機能的な断片等の選択的結合剤が結合することができ、かつ加えて、当該抗原に結合することができる抗体を産生するのに哺乳動物において用いることができる分子または分子の一部を指す。抗原は、抗体と相互作用することができる1つまたはそれを超えるエピトープを有し得る。
【0098】
用語「エピトープ」は、抗体またはその断片等の選択的結合剤によって結合される抗原分子の部分である。当該用語は、抗体に特異的に結合することができるあらゆる決定因子を含む。エピトープは、連続的であることも非連続的であることもできる(例えば、ポリペプチドにおける、ポリペプチド配列内で互いに連続していないが、分子の文脈において、抗原結合タンパク質によって結合されるアミノ酸残基)。一部の実施形態において、エピトープは、抗体を作製するのに用いられるエピトープと類似の三次元構造を含むが、抗体を作製するのに用いられるエピトープ内に見出されるアミノ酸残基を含まないか、またはその一部しか含まないという点で、模倣であってもよい。エピトープ決定因子として、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基等の分子の化学的に活性な表面基が挙げられ得、かつ特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有し得る。
【0099】
一部の実施形態において、「エピトープ」は、エピトープを決定するのに用いられる方法によって定義される。例えば、一部の実施形態において、抗体は、水素-重水素交換(HDX)によって判定されるように、抗原の同じ領域に結合するならば、基準抗体と同じエピトープに結合する。
【0100】
例えば、親抗体HFB9-1およびHFB9-2のエピトープ配列が、米国特許出願公開第2017/0283499A1号(参照により本明細書に組み込まれる)において配列番号9として開示されている。この配列は、P4ペプチドに対応しており、結合ペプチドの終端およびガレクチン-9のC末端部分の開始端をカバーしている。これは、ガレクチン-9の3つのアイソフォーム(例えば、Sアイソフォームのアミノ酸166~178、Mアイソフォームのアミノ酸178~190、Lアイソフォームのアミノ酸210~222)に存在する。本発明のヒト化抗体は、ガレクチン-9の少なくとも1つの、好ましくは全てのアイソフォームに結合することができる。
【0101】
特定の実施形態において、抗体は、X線結晶学によって判定されるように、抗原の同じ領域に結合するならば、基準抗体と同じエピトープに結合する。
【0102】
本明細書中で用いられる「キメラ抗体」は、第1の種(例えば、マウス、ラット、カニクイザルその他)由来の少なくとも1つの可変領域、および第2の種(例えば、ヒト、カニクイザル、ニワトリその他)由来の少なくとも1つの定常領域を含む抗体を指す。一部の実施形態において、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域および少なくとも1つのヒト定常領域を含む。一部の実施形態において、キメラ抗体の全ての可変領域が、第1の種に由来し、キメラ抗体の全ての定常領域が、第2の種に由来する。
【0103】
本明細書中で用いられる「ヒト化抗体」は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、カニクイザル、ニワトリその他)のフレームワーク領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、ヒト可変領域由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体を指す。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つのヒト定常領域またはその断片を含む。一部の実施形態において、ヒト化抗体断片は、Fab、scFv、(Fab’)その他である。
【0104】
本明細書中で用いられる「CDRグラフト抗体」は、第1(非ヒト)の種の1つまたはそれを超える相補性決定領域(CDR)が、第2(ヒト)の種のフレームワーク領域(FR)上にグラフトされているヒト化抗体を指す。
【0105】
本明細書中で用いられる「ヒト抗体」は、ヒトにおいて産生される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物において産生される抗体、例えばXENOMOUSE(登録商標)、およびインビトロ法、例えばファージディスプレイを用いて選択される抗体を指し、抗体レパートリーはヒト免疫グロブリン配列に基づく。
【0106】
「宿主細胞」は、ベクターまたは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか、またはレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。例示的な真核細胞として、哺乳動物細胞、例えば霊長類または非霊長類動物細胞;真菌細胞、例えば酵母;植物細胞;および昆虫細胞を含む。非限定的な例示的な哺乳動物細胞として、NSO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、ならびに293細胞およびCHO細胞、ならびにそれらの誘導体、例えばそれぞれ293-6E細胞およびDG44細胞を含むが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書中で用いられる用語「単離された」は、典型的には自然界において見出される成分の少なくとも一部から分離された、または典型的には生成される成分の少なくとも一部から分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、これが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離されている場合には、「単離された」と称される。ポリペプチドが、発現後に細胞によって分泌される場合、ポリペプチドを含有する上清を、ポリペプチドを産生した細胞から物理的に分離することが、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、これが典型的には自然界で見出されるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNA等)の一部ではない場合には、または例えばRNAポリヌクレオチドの場合に、ポリヌクレオチドが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離されている場合には、「単離された」と称される。ゆえに、宿主細胞内部のベクター内に含有されるDNAポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドが自然界で当該ベクター内に見出されない限り、「単離された」と称される場合がある。
【0108】
用語「対象」および「患者」は、本明細書中で、ヒト等の哺乳動物を指すのに互換的に用いられる。一部の実施形態において、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラボ哺乳動物、家畜哺乳動物、スポーツ哺乳動物、およびペット哺乳動物を含むがこれらに限定されない他の非ヒト哺乳動物を処置する方法もまた提供される。一部の例において、「対象」または「患者」は、疾患または障害の処置を必要とする(ヒト)対象または患者を指す。
【0109】
本明細書中で用いられる用語「サンプル」または「患者サンプル」は、例えば、物理的特性、生化学的特性、化学的特性、および/または生理学的特性に基づいて、特徴付けされ、かつ/または同定されることとなる細胞の実体および/または他の分子実体を含有する、注目する対象から得られるか、またはこれに由来する物質を指す。例えば、フレーズ「疾患サンプル」およびその変形は、特徴付けられることとなる細胞の実体および/または分子実体を含有すると予想されるか、または知られている、注目する対象から得られるあらゆるサンプルを指す。
【0110】
「組織サンプルまたは細胞サンプル」とは、対象または患者の組織から得られた類似の細胞の集まりを意味する。組織サンプルまたは細胞サンプルの供給源は、新鮮な、凍結された、かつ/または保存された器官サンプルもしくは組織サンプルまたは生検または吸引物由来の固体組織;血液またはあらゆる血液成分;痰、脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液等の体液;対象の妊娠または発達における任意の時点からの細胞であり得る。また、組織サンプルは、初代細胞もしくは細胞株、または培養細胞もしくは細胞株であり得る。必要に応じて、組織サンプルまたは細胞サンプルは、疾患組織/器官から得られる。組織サンプルは、保存剤、抗凝固剤、バッファ、固定剤、栄養素、抗生物質等の、自然界で組織と本来混在しない化合物を含有し得る。
【0111】
本明細書中で用いられる「基準サンプル」、「基準細胞」、または「基準組織」は、本発明の方法または組成物が、識別するのに用いられることとなる、疾患または症状に罹患していないことが知られているか、または考えられている供給源から得られたサンプル、細胞、または組織を指す。一実施形態において、基準サンプル、基準細胞、または基準組織は、本発明の組成物または方法を用いて疾患または症状が同定されることとなる同じ対象または患者の身体の健康な部分から得られる。一実施形態において、基準サンプル、基準細胞、または基準組織は、本発明の組成物または方法を用いて疾患または症状が同定されることとなる対象でも患者でもない少なくとも1つの個体の身体の健康な部分から得られる。一部の実施形態において、基準サンプル、基準細胞、または基準組織は、疾患もしくは症状を発症する前に、または疾患もしくは症状の初期段階にて、患者から予め得られたものである。
【0112】
「障害」または「疾患」は、本発明の1つまたはそれを超えるGal-9アンタゴニストによる処置から利益を得るあらゆる症状である。これには、哺乳動物の、問題となっている障害の素因となる病的状態を含む、慢性の障害または疾患および急性の障害または疾患が含まれる。本明細書中で処置されることとなる障害の非限定的な例として、癌を含む。
【0113】
「制御性Tリンパ球の抑制活性と関連する疾患」とは、特に疾患の発症または持続を促進することによって、制御性Tリンパ球の抑制活性が役割を果たすあらゆる疾患(自己免疫性ではない)を意味する。特に、制御性Tリンパ球の抑制活性が腫瘍の発達を促進することが実証されている。したがって、本発明は、より具体的には、Tリンパ球の抑制活性が役割を果たす癌を対象とする。
【0114】
用語「癌」は、本明細書中で、異常に高いレベルの増殖および成長を示す細胞の群を指すのに用いられる。癌は、良性(良性腫瘍とも称される)であっても、前悪性であっても、悪性であってもよい。癌細胞は、固形癌細胞(すなわち、固形腫瘍を形成)であっても白血病癌細胞であってもよい。用語「癌成長」は、本明細書中で、癌のサイズまたは範囲の対応する増大をもたらす癌を含む1つまたはそれを超える細胞による増殖または成長を指すのに用いられる。
【0115】
癌の例として、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病を含むが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な非限定的な例として、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟組織肉腫、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌(liver cancer)、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌(kidney cancer,renal cancer)、肝癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、および種々の型の頭頸部癌を含む。
【0116】
急性骨髄性白血病(ALM)のFrench-American-British(Fab)分類は、ALMを、疾患の様々な段階に分類する。Fabサブタイプを表1に示す。
【表1】
【0117】
特定の実施形態において、本明細書中で用いられる癌は、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)を含む。
【0118】
「化学療法剤」は、癌の処置に有用であり得る化合物である。化学療法剤の例として、以下に限定されないが、アルキル化剤、例えばチオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパ、およびウレドパ;エチレンイミンおよびメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチロメラミンを含む);アセトゲニン(とりわけブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189、およびCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、とりわけカリケアマイシンガムオールおよびカリケアマイシンオメガオール(例えば、Agnew,Chem lntl.Ed.Engl,33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(ダイネマイシンAを含む);ビスホスホナート、例えばクロドロナート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトレビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクォン;エルホミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、およびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)クレモフォールフリー、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、ならびにTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼロダ;イバンドロナート;イリノテカン(カンプトサー、CPT-11)(5-FUおよびロイコボリンによるイリノテカンの処置レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン(オキサリプラチン処置レジメン(FOLFOX)を含む);細胞増殖を低減するPKC-アルファ、Raf、H-Ras、EGFR(例えばエルロチニブ(TARCEVA(登録商標)))およびVEGF-Aの阻害剤、ならびに薬学的に許容され得る塩、上記のいずれかの酸または誘導体を含む。
【0119】
更なる非限定的な例示的な化学療法剤として、癌に及ぶホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)が挙げられ、例として、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェン;酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤(副腎におけるエストロゲン産生を調節する)、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常細胞(abherant cell)増殖に関わるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、PKC-アルファ、Ralf、およびH-Ras;リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現阻害剤;ワクチン、例えば遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸、または誘導体を含む。
【0120】
「抗血管形成剤」または「血管形成阻害剤」は、直接的または間接的に、血管形成、脈管形成、または不所望の血管透過性を阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(例えば、阻害性RNA(RNAiまたはsiRNA)を含む)、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはそれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管形成剤として、血管形成因子またはその受容体に結合してその血管形成活性をブロックする剤を含むと理解されるべきである。例えば、抗血管形成剤は、血管形成剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-A(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)))に対する、またはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt-1受容体)に対する抗体、抗PDGFR阻害剤、例えばGLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、VEGF受容体シグナル伝達をブロックする小分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SUl 1248(リンゴ酸スニチニブ)、AMG706、または、例えば国際公開第2004/113304号に記載されるもの)である。また、抗血管形成剤として、天然の血管形成阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンその他を含む。例えば、KlagsbrunおよびD’Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217-39;StreitおよびDetmar(2003)Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性黒色腫における抗血管形成療法を列挙する表3);Ferrara&Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359-1364;Toniniら(2003)Oncogene 22:6549-6556(例えば、知られている抗血管形成因子を列挙する表2);およびSato(2003)Int.J.Clin.Oncol.8:200-206(例えば、治験に用いられる抗血管形成剤を列挙する表1)参照。
【0121】
本明細書中で用いられる「成長阻害剤」は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞(VEGFを発現する細胞等)の成長を阻害する化合物または組成物を指す。ゆえに、成長阻害剤は、S期の細胞(VEGFを発現する細胞等)の割合を有意に減少させるものであり得る。成長阻害剤の例として、(S期以外の場所にて)細胞周期進行をブロックする剤、例えばG1停止およびM期停止を誘導する剤を含むが、これらに限定されない。古典的なM期ブロッカーとして、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンを含む。また、G1を停止させる剤、例えばDNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-Cが、S期停止にまで波及する。更なる情報を、MendelsohnおよびIsrael編、The Molecular Basis of Cancer、第1章(表題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」)(Murakamiら(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えばp.13)において見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は双方とも、イチイに由来する抗癌薬物である。ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、ヨーロッパイチイに由来し、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管のアセンブリを促進し、そして、解重合を防止することによって微小管を安定化させて、細胞における有糸分裂の阻害をもたらす。
【0122】
用語「抗新生物組成物」は、少なくとも1つの活性治療剤を含む、癌を処置するのに有用な組成物を指す。治療剤の例として、以下に限定されないが、例えば、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害剤、放射線療法に用いられる剤、抗血管形成剤、癌免疫療法剤(免疫腫瘍治療剤とも称される)、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、および癌を処置するための他の剤、例えば、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えばエルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、血小板由来成長因子阻害剤(例えばGLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、CTLA4阻害剤(例えば抗CTLA抗体イピリムマブ(YERVOY(登録商標)))、PD-1阻害剤(例えば、抗PDl抗体、BMS-936558)、PDL1阻害剤(例えば、抗PDL1抗体、MPDL3280A)、PDL2阻害剤(例えば抗PDL2抗体)、VISTA阻害剤(例えば抗VISTA抗体)、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-ベータ、BlyS、APRIL、BCMA、PD-1、PDL1、PDL2、CTLA4、VISTA、またはVEGF受容体の1つまたは複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2、ならびに他の生物活性剤および有機化学剤その他を含む。それらの組み合わせもまた本発明に含まれる。
【0123】
「処置」は、例えば、対象が、標的とされる病的状態または障害を減速(軽減)することであり、そして例えば、対象が、症状または障害の再発を阻害することである治療的処置を指す。「処置」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患(本明細書中で「障害」または「症状」とも称される)のための治療薬のあらゆる投与もしくは施用を包含し、疾患もしくは疾患の進行の阻害、疾患もしくはその進行の阻害もしくは遅延、その発症の停止、疾患の部分的もしくは完全な軽減、疾患の1つもしくはそれを超える病徴の部分的もしくは完全な軽減、または失われた、欠損した、もしくは欠陥のある機能の回復もしくは修復;あるいは非効率的なプロセスの刺激を含む。また、用語「処置」は、あらゆる表現型の特徴の重症度の引下げ、および/または当該特徴の発生率、程度、もしくは見込みの引下げを含む。処置を必要とする者として、既に障害を有する者、および障害の再発のリスクがある者、または障害の再発が予防もしくは減速されるべき者を含む。
【0124】
用語「有効量」または「治療有効量」は、対象において疾患または障害を処置するのに有効な薬物の量を指す。一部の実施形態において、有効量は、所望の治療結果または予防結果を達成するための、必要な投薬量および期間での有効量を指す。治療有効量の本発明のGal9アンタゴニストは、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発するアンタゴニストの能力等の因子に従って異なり得る。治療有効量は、Gal9アンタゴニストのあらゆる毒性または有害作用を、治療的に有益な作用が上回る量を包含する。
【0125】
「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するための、必要な投薬量および期間での有効量を指す。典型的には、必ずしもそうとは限らないが、疾患の前または疾患の初期段階にて予防用量が対象に用いられるので、予防有効量は治療有効量よりも少ないであろう。
【0126】
「薬学的に許容され得る担体」は、対象への投与用の「医薬組成物」を一緒に含む治療剤に用いられる、当該技術において慣用的な非毒性の固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、または担体を指す。薬学的に許容され得る担体は、使用される投薬量および濃度にてレシピエントに非毒性であり、かつ製剤の他の成分と適合性である。薬学的に許容され得る担体は、使用される製剤に適している。例えば、治療剤が経口投与されることとなるならば、担体はゲルカプセルであり得る。治療剤が皮下投与されることとなるならば、担体は理想的には、皮膚に対して刺激性でなく、かつ注射部位反応を引き起こさない。
【0127】
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害の処置用の医薬品、または本明細書中に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含むあらゆる製品(例えば、パッケージまたはコンテナ)またはキットである。一部の実施形態において、製品またはキットは、本明細書中に記載される方法を実行するためのユニットとして販売促進、配布、または販売される。
【0128】
3.癌を処置する方法
本明細書中に記載される発明は、ヒトおよび他の非ヒト哺乳動物を処置する方法に用いられるGal9アンタゴニスト(抗Gal9抗体等)を提供する。
【0129】
病理学的状況では、Tregは、不適切な免疫抑制を引き起こす虞があり、これが例えば腫瘍成長を促進する虞がある。Tregは、特にエフェクタTリンパ球の活性を不適切に阻害することによって、抗腫瘍免疫応答を低減することで、多数の癌型の発生を促進することに関連している。
【0130】
活性化中、ガレクチン-9は、Tregによって直接発現される一方、エフェクタTリンパ球によって非常に弱くしか発現されないか、または全く発現されない。ゆえに、例えばGal-9特異的抗体を用いて、ガレクチン-9を標的とすることにより、エフェクタTリンパ球の枯渇を引き起こすリスクなしに、制御性Tリンパ球の抑制活性を特異的に阻害することができる。したがって、ガレクチン-9に対して向けられて、制御性Tリンパ球の抑制活性を阻害する、本発明に従う抗体は、制御性Tリンパ球の抑制活性に関連する疾患または症状の処置、特に癌の処置に用いることができる。
【0131】
一部の実施形態において、有効量のGal9アンタゴニストを、癌の処置を必要とする対象に投与することを含む、癌を処置または予防する方法が提供される。
【0132】
一部の実施形態において、癌を処置する方法であって、癌を有する対象にGal9アンタゴニストを投与することを含む方法が提供される。
【0133】
一部の実施形態において、癌を処置するためのGal9アンタゴニストの使用が提供される。
【0134】
本発明の方法/使用によって処置可能な癌として、制御性Tリンパ球がその抑制活性を発揮する癌、例えば、比較的大量の制御性Tリンパ球が腫瘍組織内または循環系内に存在する癌を含む。制御性Tリンパ球の増殖(Tregの頻度によって測定することができる)は、一般に、Treg活性化の増大と相関する。制御性Tリンパ球の頻度は、当該技術において知られているあらゆる方法によって、例えば腫瘍内リンパ球もしくは循環リンパ球のフローサイトメトリー(FACS)分析によって、または腫瘍組織の免疫組織学的染色によって評価することができる。
【0135】
Gal9アンタゴニストで処置され得る非限定的な例示的な癌が本明細書中に記載されており、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病を含む。そのような癌のより具体的な非限定的な例として、黒色腫、子宮頸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟組織肉腫、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵癌、神経膠芽腫、卵巣癌、肝癌(liver cancer)、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌(kidney cancer,renal cancer)、肝癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、および種々の型の頭頸部癌を含む。
【0136】
特定の実施形態において、本発明の方法/使用は、高レベルの制御性Tリンパ球が知られている癌を処置するのに用いることができ、かつ/または当該癌/腫瘍は、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸癌、黒色腫、子宮の癌、乳癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、中枢神経系の原発性リンパ腫、多発性骨髄腫、前立腺癌、ホジキンリンパ腫、もしくは肝細胞癌を含む予後不良に明確に関連する。
【0137】
特定の実施形態において、本発明の方法/使用を用いて、免疫抑制因子の役割を果たすガレクチン-9を担持する大量のエキソソームを産生する癌を処置することができる。そのような癌の非限定的な例として、ウイルス誘導癌、例えばEBV(エプスタイン・バーウイルス)に関連する上咽頭癌、またはHCV(C型肝炎ウイルス)もしくはHBV(B型肝炎ウイルス)に関連する肝細胞癌(CHC)を含む。
【0138】
一部の実施形態において、癌は、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である。
【0139】
特定の実施形態において、本発明の方法/使用は、C型肝炎に起因する線維症の再発を処置するのに用いることができる。というのも、制御性Tリンパ球の頻度の増大が、そのような線維症の再発を予測する因子であることも実証されているからである。
【0140】
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、抗Gal9抗体、または単に「Gal9抗体」である。
【0141】
一部の実施形態において、癌を処置するためのGal9アンタゴニストは、Gal9とそのリガンドとの相互作用を阻害するGal9タンパク質またはその一部(例えばECD)の可溶性バージョン等の非抗体タンパク質であり得、必要に応じて、融合パートナーをさらに含んで、融合分子の形態である。種々の例示的なGal9アンタゴニストが、以下のセクションにおいてより詳細に記載されている。
【0142】
一部の実施形態において、本発明のGal9アンタゴニストは、単独で用いることもできるし、疾患または徴候を処置することができることが知られている他の適切なあらゆる化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0143】
ゆえに、本発明の特定の実施形態に従えば、先に定義したようにガレクチン-9に対して向けられ、かつ制御性Tリンパ球の抑制活性を阻害する抗体は、制御性Tリンパ球の抑制活性に関連する疾患を処置するための第2の治療剤、例えば抗癌剤と組み合わせて用いられる。
【0144】
すなわち、使用が癌の処置である場合、抗体は、癌に対する知られている処置、例えば、外科手術、放射線療法、化学療法、またはそれらの組合せと組み合わせて用いることができる。例えば、抗体は、腫瘍抗原、特にEBV抗原に対するエフェクタリンパ球の1回またはそれを超える注射からなる養子免疫療法と組み合わせて用いることができる。一部の態様に従えば、癌治療のための本発明に従うガレクチン-9に対して向けられる抗体と組み合わせて用いられる他の抗癌剤は、抗血管形成剤を含む。特定の態様に従えば、抗体は、サイトカイン、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激するサイトカインと同時投与することができる。
【0145】
そのような併用療法において、本発明の抗体は、第2の治療剤の前に、この後に、またはこれと同時に用いることができる。併用療法に関する以下の更なるセクション参照。
【0146】
4.投与経路および担体
種々の実施形態において、Gal9アンタゴニスト(例えばGal9 Ab)は、皮下投与または静脈内投与され得る。簡潔にするために、本明細書での「Gal9アンタゴニスト」は、狭義には、本発明のGal1抗体、例えば本発明のヒト化Gal9抗体を指す。
【0147】
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、経口、動脈内、非経口、鼻腔内、筋肉内、心臓内、脳室内、気管内、頬側、直腸、腹腔内、吸入、皮内、局所、経皮、および髄腔内を含むがこれらに限定されない種々の経路によって、または他の方法で、例えば植込みによって、インビボ投与され得る。
【0148】
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、抗Gal9抗体またはその抗原結合断片であり、静脈内(i.v.)投与または皮下(s.c.)投与される。
【0149】
主題の組成物は、固体、半固体、液体、または気体の形態の調製物に製剤化され得、以下に限定されないが、タブレット、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐薬、浣腸剤、注射、吸入剤、およびエアロゾルを含む。
【0150】
種々の実施形態において、Gal9アンタゴニストを含む組成物は、多種多様な薬学的に許容され得る担体(例えば、Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plus、第20版(2003);Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippencott Williams and Wilkins(2004);Kibbeら、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、Pharmaceutical Press(2000)参照)を有する製剤で提供される。ビヒクル、アジュバント、および希釈剤を含む、薬学的に許容され得る種々の担体が利用可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張性調整剤、安定化剤、ならびに湿潤剤等の、薬学的に許容され得る種々の補助剤も利用可能である。非限定的な例示的な担体として、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合せを含む。
【0151】
種々の実施形態において、Gal9アンタゴニストを含む組成物は、植物油もしくは他の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコール等の水性溶媒もしくは非水性溶媒中に(所望される場合、従来の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、および保存剤と共に)溶解、懸濁、または乳化されることによって、皮下投与を含む注射用に製剤化され得る。
【0152】
種々の実施形態において、組成物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素等の加圧された許容され得る推進剤を用いて、吸入用に製剤化され得る。
【0153】
また、組成物は、種々の実施形態において、例えば生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーと共に、持続放出マイクロカプセルに製剤化され得る。非限定的な例示的な生分解性製剤は、ポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)ポリマーを含む。非限定的な例示的な非生分解性製剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。そのような製剤を製造する特定の方法が、例えば欧州特許出願公開第1125584A1号に記載されている。
【0154】
また、各々が1回またはそれを超える用量のGal9アンタゴニストを含有する1つまたはそれを超えるコンテナを含む医薬投薬パックが提供される。一部の実施形態において、1つまたはそれを超える更なる剤を伴うか、または伴わない、Gal9アンタゴニストを含む所定量の組成物を含有する単位投薬量が提供される。一部の実施形態において、そのような単位投薬量は、注射用の単回使用プレフィルドシリンジにより供給される。種々の実施形態において、単位投薬量内に含有される組成物は、生理食塩水もしくはスクロース等;リン酸バッファ等のバッファを含み得;かつ/または安定かつ有効なpH範囲内で製剤化され得る。これ以外にも、一部の実施形態において、組成物は、適切な液体、例えば滅菌水の添加により再構成され得る凍結乾燥粉末として提供され得る。一部の実施形態において、組成物は、スクロースおよびアルギニンを含むがこれらに限定されない、タンパク質凝集を阻害する1つまたはそれを超える物質を含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、ヘパリンおよび/またはプロテオグリカンを含む。
【0155】
医薬組成物は、特定の徴候の処置または予防に有効な量が投与される。治療有効量は、典型的には、処置されることとなる対象の体重、対象の身体状態もしくは健康状態、処置されることとなる症状の広がり、または処置されることとなる対象の年齢によって決まる。
【0156】
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約50μg/体重kg~約50mg/体重kgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約100μg/体重kg~約50mg/体重kgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約100μg/体重kg~約20mg/体重kgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約0.5mg/体重kg~約20mg/体重kgの範囲内の量が投与され得る。
【0157】
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約10mg~約1,000mgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約20mg~約500mgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約20mg~約300mgの範囲内の量が投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、用量あたり約20mg~約200mgの範囲内の量が投与され得る。
【0158】
Gal9アンタゴニスト組成物は、必要がある場合に、対象に投与され得る。一部の実施形態において、有効量のGal9アンタゴニストが、対象に、1回またはそれを超える回数投与される。種々の実施形態において、有効量のGal9アンタゴニストが、対象に、1ヶ月に1回、1ヶ月に1回未満、例えば、2ヶ月毎、3ヶ月毎または6ヶ月毎に1回投与される。他の実施形態において、有効量のGal9アンタゴニストが、月に1回を超えて、例えば、2週毎、毎週、週に2回、週に3回、毎日、または1日に複数回投与される。有効量のGal9アンタゴニストが、対象に、少なくとも1回投与される。一部の実施形態において、有効量のGal9アンタゴニストが、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、または少なくとも1年間の期間を含めて、複数回投与され得る。一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、症状の1つまたはそれを超える病徴を緩和する必要がある場合に、対象に投与される。
【0159】
5.併用療法
本発明のGal9アンタゴニスト(あらゆる抗体およびその機能的断片を含む)は、他の生物学的に活性な物質、または疾患を処置するための他の処置手順と組み合わせて、本発明のGal9アンタゴニストを必要とする対象に投与され得る。例えば、Gal9アンタゴニストは、単独で、または他の処置様式と共に投与され得る。Gal9アンタゴニストは、放射線療法等の他の処置様式の前に、これと実質的に同時期に、またはこの後に提供され得る。
【0160】
癌の処置のために、Gal9アンタゴニストは、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、成長阻害剤、抗血管形成剤、または抗新生物組成物等の抗癌剤の1つまたは複数と併せて投与されてもよい。
【0161】
特定の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、Gal9に特異的に結合する(「Gal9結合アンタゴニスト」)。例えば、Gal9アンタゴニスト抗体またはその抗原(antigern)結合断片は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1またはPD-L1経路の阻害剤)等の第2のアンタゴニストと共に、免疫系の刺激が有益であろう疾患、例えば、癌または感染症を有する対象に投与される。2つのアンタゴニストは、例えば、Gal9アンタゴニストの、免疫腫瘍治療剤との組合せについて以下に記載されるように、同時に、または連続的に投与され得る。1つまたはそれを超える更なる治療薬、例えばチェックポイント調節剤が、癌または感染症を処置するためのGal9結合アンタゴニストによる処置に加えられてもよい。
【0162】
特定の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、対象、例えば癌を有する対象に、別の処置と同時に、または連続して投与される。例えば、Gal9アンタゴニストは、放射線療法、外科手術、または化学療法、例えば標的化化学療法、または免疫療法の1つまたは複数と共に投与され得る。
【0163】
免疫療法、例えば癌免疫療法として、癌ワクチンおよび免疫腫瘍治療剤を含む。Gal9アンタゴニストとして、例えば、Gal9に結合するタンパク質、抗体、抗体断片、または小分子があり得る。Gal9アンタゴニストとして、Gal9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片があり得る。
【0164】
特定の実施形態において、癌を有する対象の処置方法は、癌を有する対象に、Gal9アンタゴニスト、例えばGal9抗体、および免疫チェックポイント阻害剤等の1つまたはそれを超える免疫腫瘍治療剤を投与することを含む。
【0165】
免疫療法、例えば免疫腫瘍治療剤による治療は、対象における免疫応答を増強、刺激、かつ/または上方調節するのに有効である。一態様において、免疫腫瘍治療剤(PD-1阻害剤等)とのGal9アンタゴニストの投与は、癌の処置において、例えば腫瘍成長の阻害において、相乗効果を有する。
【0166】
一態様において、Gal9アンタゴニストは、免疫腫瘍治療剤の投与前に、逐次投与される。一態様において、Gal9アンタゴニストは、免疫腫瘍治療剤(PD-1阻害剤等)と同時に投与される。更なる一態様において、Gal9アンタゴニストは、免疫腫瘍治療剤(PD-1阻害剤等)の投与後に、逐次投与される。2つの剤の投与は、例えば、30分、60分、90分、120分、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、5日、7日、または1週もしくはそれを超える週離れた時点にて開始してもよいし、第2の剤の投与は、例えば、第1の剤が投与されてから30分、60分、90分、120分、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、5日、7日、または1週もしくはそれを超える週の後に開始してもよい。
【0167】
特定の態様において、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤(例えばPD-1阻害剤)は、同時に投与される、例えば、同時に、例えば30または60分間にわたって、患者に注入される。Gal9アンタゴニストは、免疫腫瘍治療剤(PD-1阻害剤等)と同時製剤化され得る。
【0168】
免疫腫瘍治療剤の例として、小分子薬物、抗体もしくはその断片、または他の生体分子もしくは小分子を含む。生物学的免疫腫瘍治療剤の例として、抗体、抗体断片、ワクチン、およびサイトカインを含むが、これらに限定されない。一態様において、抗体はモノクローナル抗体である。特定の態様において、モノクローナル抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0169】
一態様において、免疫腫瘍治療剤は、免疫細胞、例えばT細胞上の(i)刺激性(共刺激性を含む)分子(例えば、受容体またはリガンド)のアゴニスト、または(ii)阻害性(共阻害性を含む)分子(例えば、受容体またはリガンド)のアンタゴニストであり、これらは双方とも、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす。特定の態様において、免疫腫瘍治療剤は、自然免疫に関与する細胞、例えばNK細胞上の(i)刺激性(共刺激性を含む)分子(例えば、受容体またはリガンド)のアゴニスト、または(ii)阻害性(共阻害性を含む)分子(例えば、受容体またはリガンド)のアンタゴニストであり、免疫腫瘍治療剤は、自然免疫を増強する。そのような免疫腫瘍治療剤は、多くの場合、免疫チェックポイント調節剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤または免疫チェックポイント刺激剤と称される。
【0170】
特定の実施形態において、免疫腫瘍治療剤は、B7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5、およびB7-H6を含む、膜結合リガンドのB7ファミリーのメンバー、またはB7ファミリーのメンバーに特異的に結合する共刺激性受容体もしくは共阻害性受容体を標的とする(またはこれに特異的に結合する)剤であり得る。免疫腫瘍治療剤は、膜結合リガンドのTNFファミリーのメンバー、またはこれに特異的に結合する共刺激受容体もしくは共阻害受容体、例えばTNF受容体ファミリーのメンバーを標的とする剤であり得る。免疫腫瘍治療剤によって標的とされ得る例示的なTNFおよびTNFRファミリーメンバーとして、CD40およびCD40L、OX-40、OX-40L、GITR、GITRL、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-1BBL、CD137(4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fnl4、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTfiR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TΝΡβ、TNFR2、TNFa、LTfiR、リンホトキシンα1β2(Lymphotoxin a 1β2)、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、ならびにNGFRを含む。癌を処置するためにGal9アンタゴニスト剤と組み合わせて用いられ得る免疫腫瘍治療剤として、B7ファミリーメンバー、B7受容体ファミリーメンバー、TNFファミリーメンバー、またはTNFRファミリーメンバー、例えば上記のものを標的とする剤、例えば抗体があり得る。
【0171】
一態様において、Gal9アンタゴニストは、(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、B7-H3、B7-H4、2B4、CD48、GARP、PDIH、LAIR1、TIM-1、TIM-4、およびPSGL-1等のT細胞活性化を阻害するタンパク質(例えば免疫チェックポイント阻害剤)のアンタゴニスト、ならびに(ii)B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、CD40L、DR3、およびCD28H等のT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニストの1つまたは複数と共に投与される。
【0172】
一態様において、免疫腫瘍治療剤は、T細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-β、VEGF、および他の免疫抑制性サイトカイン)を阻害する剤(すなわち、当該サイトカインのアンタゴニスト)、またはT細胞活性化を刺激し、かつ免疫応答を刺激する、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、およびIFNα等のサイトカイン(例えば、サイトカインそれ自体)のアゴニストである剤である。
【0173】
免疫系を刺激するために、例えば、癌および感染症の処置のためにGal9アンタゴニストと組み合わせることができる他の剤として、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニスト、またはNK細胞上の受容体を活性化するアゴニストを含む。例えば、抗Gal9アンタゴニストは、KIRのアンタゴニストと組み合わせることができる。
【0174】
併用療法のためのさらに他の薬剤として、以下に限定されないが、RG7155(国際公開第11/70024号、国際公開第11/107553号、国際公開第11/131407号、国際公開第13/87699号、国際公開第13/119716号、国際公開第13/132044号)またはFPA008(国際公開第11/140249号;国際公開第13/169264;国際公開第14/036357号)を含むCSF-IRアンタゴニスト抗体等のCSF-IRアンタゴニストを含む、マクロファージまたは単球を阻害するか、または枯渇させる剤を含む。
【0175】
また、免疫腫瘍治療剤として、TGF-βシグナル伝達を阻害する剤を含む。
【0176】
Gal9アンタゴニストと組み合わせることができる更なる剤として、腫瘍抗原提示を増強する剤、例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、およびイミキモド、または腫瘍細胞の免疫原性を増強する療法(例えばアントラサイクリン)を含む。
【0177】
Gal9アンタゴニストと組み合わせることができるさらに他の療法として、Treg細胞を枯渇させるか、またはブロックする療法、例えばCD25に特異的に結合する剤を含む。
【0178】
Gal9アンタゴニストと組み合わせることができる別の療法として、インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素合成酵素等の代謝酵素を阻害する療法がある。
【0179】
用いることができる別のクラスの剤として、アデノシンの形成を阻害する剤またはアデノシンA2A受容体を阻害する剤を含む。
【0180】
癌を処置するためにGal9アンタゴニストと組み合わせることができる他の療法として、T細胞アネルギーまたは疲弊を逆転/予防する療法、ならびに腫瘍部位にて自然免疫活性化および/または炎症をトリガーする療法を含む。
【0181】
Gal9アンタゴニストは、複数の免疫腫瘍治療剤(免疫チェックポイント阻害剤等)と組み合わせることができ、例えば、以下の1つまたは複数等の、免疫経路の複数の要素を標的とするコンビナトリアルアプローチと組み合わせることができる:腫瘍抗原提示を増強する療法(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド);負の免疫調節を、例えば、CTLA-4および/もしくはPD1/PD-L1/PD-L2経路を阻害することによって、かつ/またはTregもしくは他の免疫抑制細胞を枯渇させるか、もしくはブロックすることによって、阻害する療法;正の免疫調節を、例えば、CD-137、OX-40、および/もしくはGITR経路を刺激し、かつ/またはT細胞エフェクタ機能を刺激するアゴニストにより刺激する療法;抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増大させる療法;例えば、CD25のアンタゴニスト(例えばダクリズマブ)を用いて、またはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇によって、Treg、例えば腫瘍中のTregを枯渇させるか、または阻害する療法;腫瘍において抑制骨髄細胞の機能に影響を及ぼす療法;腫瘍細胞の免疫原性を増強する療法(例えばアントラサイクリン);遺伝子修飾された細胞、例えばキメラ抗原受容体によって修飾された細胞を含む養子T細胞移入またはNK細胞移入(CAR-T療法);インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素合成酵素等の代謝酵素を阻害する療法;T細胞アネルギーまたは疲弊を逆転/予防する療法;腫瘍部位にて自然免疫活性化および/または炎症をトリガーする療法;免疫刺激性サイトカインの投与または免疫抑制性サイトカインのブロッキング。
【0182】
例えば、Gal9アンタゴニストは、陽性共刺激受容体をライゲートする1つまたはそれを超えるアゴニスト剤;腫瘍微環境内の異なる免疫抑制経路を克服する(例えば、PD-L1/PD-1/PD-L2相互作用をブロックする)アンタゴニスト等の、阻害性受容体を介したシグナル伝達を減弱させる1つまたはそれを超えるアンタゴニスト(ブロッキング剤);T細胞等の抗腫瘍免疫細胞の頻度を全身的に増大させ、かつTregを枯渇させるかまたは阻害する(例えば、CD25を阻害することによる)、1つまたはそれを超える剤;IDO等の代謝酵素を阻害する、1つまたはそれを超える剤;T細胞アネルギーまたは疲弊を逆転/防止する、1つまたはそれを超える剤;ならびに腫瘍部位にて自然免疫活性化および/または炎症をトリガーする、1つまたはそれを超える剤と共に用いることができる。
【0183】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アンタゴニスト性CTLA-4抗体等のCTLA-4アンタゴニストである。適切なCTLA-4抗体の例として、YERVOY(イピリムマブ)またはトレメリムマブを含む。
【0184】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アンタゴニスト性PD-1抗体等のPD-1アンタゴニストである。適切なPD-1抗体の例として、OPDIVO(ニボルマブ)、KEYTRUDA(ペンブロリズマブ)、またはMEDI-0680(AMP-514;国際公開第2012/145493号)を含む。また、免疫腫瘍治療剤として、ピジリズマブ(CT-011)が挙げられ得る。PD-1受容体を標的とする別のアプローチとして、AMP-224と呼ばれる、IgG1のFc部分に融合したPD-L2(B7-DC)の細胞外ドメインで構成される組換えタンパク質がある。
【0185】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アンタゴニスト性PD-L1抗体等のPD-L1アンタゴニストである。適切なPD-L1抗体の例として、MPDL3280A(RG7446;国際公開第2010/077634号)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS-936559(国際公開第2007/005874号)、MSB0010718C(国際公開第2013/79174号)、またはrHigM12B7を含む。
【0186】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アンタゴニスト性LAG-3抗体等のLAG-3アンタゴニストである。適切なLAG3抗体の例として、BMS-986016(国際公開第10/19570号、国際公開第14/08218号)、またはIMP-731もしくはIMP-321(国際公開第08/132601号、国際公開第09/44273号)を含む。
【0187】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アゴニスト性CD137抗体等のCD137(4-1BB)アゴニストである。適切なCD137抗体の例として、ウレルマブまたはPF-05082566(国際公開第12/32433号)を含む。
【0188】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アゴニスト性GITR抗体等のGITRアゴニストである。適切なGITR抗体の例として、TRX-518(国際公開第06/105021号、国際公開第09/009116号)、MK-4166(国際公開第11/028683号)、または国際公開第2015/031667号に開示されているGITR抗体を含む。
【0189】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アゴニスト性OX40抗体等のOX40アゴニストである。適切なOX40抗体の例として、MEDI-6383、MEDI-6469、またはMOXR0916(RG7888;国際公開第06/029879号)を含む。
【0190】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アゴニスト性CD40抗体等のCD40アゴニストである。特定の実施形態において、免疫腫瘍治療剤は、アンタゴニスト性CD40抗体等のCD40アンタゴニストである。適切なCD40抗体の例として、ルカツムマブ(HCD122)、ダセツズマブ(SGN-40)、CP-870,893、またはChi Lob 7/4を含む。
【0191】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、アゴニスト性CD27抗体等のCD27アゴニストである。適切なCD27抗体の例として、バリルマブ(CDX-1127)を含む。
【0192】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、MGA271(B7H3に対する)(国際公開第11/109400号)である。
【0193】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、リリルマブ等のKIRアンタゴニストである。
【0194】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、IDOアンタゴニストである。適切なIDOアンタゴニストの例として、INCB-024360(国際公開第2006/122150号、国際公開第07/75598号、国際公開第08/36653号、国際公開第08/36642号)、インドキシモド、NLG-919(国際公開第09/73620号、国際公開第09/1156652号、国際公開第11/56652号、国際公開第12/142237号)、またはF001287を含む。
【0195】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、Toll様受容体アゴニスト、例えば、TLR2/4アゴニスト(例えばBacillus Calmette-Guerin);TLR7アゴニスト(例えば、ヒルトノールまたはイミキモド);TLR7/8アゴニスト(例えばレシキモド);またはTLR9アゴニスト(例えばCpG7909)である。
【0196】
一実施形態において、免疫系の刺激から利益を得ることができる疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象が、Gal9アンタゴニストおよび免疫腫瘍治療剤の、対象への投与によって処置され、免疫腫瘍治療剤は、TGF-β阻害剤、例えば、GC1008、LY2157299、TEW7197、またはIMC-TR1である。
【0197】
6.例示的なGal9アンタゴニスト
一部の実施形態において、Gal9アンタゴニストは、Gal9抗体である。一部の実施形態において、癌を処置するためのGal9アンタゴニストは、Gal9とそのリガンドとの相互作用を阻害する可溶性Gal9またはその一部(例えばECD)等の非抗体タンパク質であり得、必要に応じて、融合パートナーをさらに含んで、融合分子の形態である。アンタゴニストは、他の実施形態において、小分子であっても小ペプチドであってもよい。
【0198】
Gal9抗体
一部の実施形態において、Gal9およびそのリガンドの結合をブロックする抗体が提供される。一部の実施形態において、Gal9媒介性シグナル伝達を阻害する抗体が提供される。そのような一部の実施形態において、抗体はGal9抗体である。一部の実施形態において、Gal9抗体は、Gal9の、そのリガンドへの結合を阻害する。一部の実施形態において、Gal9抗体は、Gal9媒介性シグナル伝達を阻害する。
【0199】
一部の実施形態において、本発明のGal9抗体は、Gal9について、例えばヒトGal9について、解離定数(K)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8Mまたはそれ未満、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)である。特定の実施形態において、Gal9抗体は、Gal9について、例えばヒトGal9について、解離定数(K)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8Mまたはそれ未満、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)である。
【0200】
一部の実施形態において、本明細書中で提供されるあらゆる特徴を有するGal9抗体は、Gal9のシグナル伝達の少なくとも25%、50%、75%、80%、90%、または100%を阻害する。
【0201】
一部の実施形態において、抗体は、複数の種由来のGal9に結合する。例えば、一部の実施形態において、抗体は、ヒトGal9に結合し、そしてまた、マウス、ラット、イヌ、モルモット、およびカニクイザルから選択される少なくとも1つの非ヒト哺乳動物由来のGal9にも結合する。
【0202】
一部の実施形態において、多重特異性抗体が提供される。一部の実施形態において、二重特異性抗体が提供される。非限定的な例示的な二重特異性抗体として、第1の抗原に結合する重鎖/軽鎖の組合せを含む第1のアーム、および第2の抗原に結合する重鎖/軽鎖の組合せを含む第2のアームを含む抗体を含む。非限定的な例示的な更なる多重特異性抗体は、二重可変ドメイン抗体である。一部の実施形態において、二重特異性抗体は、Gal9の結合を阻害する第1のアーム、および、例えばCD3に結合することによって、T細胞を刺激する第2のアームを含む。一部の実施形態において、第1のアームはGal9に結合する。
【0203】
特定の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片(ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む)は、抗体の開発可能性を向上させるように設計された、そのアミノ酸配列の1つまたはそれを超える点変異を含む。例えば、Raybouldら(Five computational developability guidelines for therapeutic antibody profiling,PNAS 116(10):4025-4030,2019)は、可変ドメイン配列のダウンロード可能な相同性モデルを構築して、これらを5つの開発可能性ガイドラインに対して試験して、潜在的な配列障害(sequence liabilities)およびカノニカル形態を報告する計算ツールである、Therapeutic Antibody Profiler(TAP)を記載した。この著者らはさらに、opig.stats.ox.ac.uk/webapps/sabdab-sabpred/TAP.phpにて自由に入手可能なTAPを提供している。
【0204】
抗原に対する所望の親和性を達成すること以外に、治療的mAbの開発には多くの障壁がある。障壁として、固有の免疫原性、化学的不安定性および高次構造的不安定性、自己会合、高粘度、多特異性、および発現不良を含む。例えば、特に高度に可変的な相補性決定領域(CDR)における、高レベルの疎水性は、凝集、粘度、および多特異性に繰り返し関係している。重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの正味電荷の非対称性もまた、高濃度にて、自己会合および粘度と相関する。CDRにおける正電荷および負電荷のパッチは、高いクリアランス率および低い発現レベルに関連している。生成物の不均一性(例えば、酸化、異性化、またはグリコシル化による)は、多くの場合、翻訳後修飾または同時翻訳修飾を起こし易い特定の配列モチーフに起因する。配列障害の特定を容易にするための計算ツールが利用可能である。また、Warszawskiら(Optimizing antibody affinity and stability by the automated design of the variable light-heavy chain interfaces.PLoS Comput Biol 15(8):e1007207.https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1007207)は、可変軽鎖-可変重鎖界面の自動設計によって抗体の親和性および安定性を最適化する方法を記載した。候補抗体の潜在的な開発可能性の問題を特定するための更なる方法が利用可能であり、本発明の好ましい実施形態において、従来の方法を介して候補抗体に1つまたはそれを超える点変異を導入することで、そのような問題に対処して、本発明の最適化された治療用抗体をもたらすことができる。
【0205】
特定の代表的な抗体(軽鎖(LC)可変領域および重鎖(HC)可変領域、CDR領域、ならびにフレームワーク領域(FR)を含む)の配列を、以下に列挙する。
【化1】
【0206】
全ての抗体重鎖配列について、フレームワーク領域配列HFR1~HFR4は、VH-CDR配列によって定義される。例えば、HFR1は、VH-CDR1のN末端側にあるHCVRの配列である。HFR2は、VH-CDR1とVH-CDR2との間にあるHCVRの配列である。HFR3は、VH-CDR2とVH-CDR3との間にあるHCVRの配列である。HFR4は、HCVRの最もC末端側の配列である。
【0207】
同様に、全ての抗体軽鎖配列について、フレームワーク領域配列LFR1~LFR4は、VL-CDR配列によって定義される。例えば、LFR1は、VL-CDR1のN末端側にあるLCVRの配列である。LFR2は、VL-CDR1とVL-CDR2との間にあるLCVRの配列である。LFR3は、VL-CDR2とVL-CDR3との間にあるLCVRの配列である。LFR4は、LCVRの最もC末端側の配列である。
【0208】
HFB9-1hz1-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号1、3、5、および7である。HFB9-1hz1-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号9、11、13、および15である。
【化2】
【0209】
HFB9-1hz2-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号17、19、21、および23である。HFB9-1hz2-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号25、27、29、および31である。
【化3-1】
【化3-2】
【0210】
HFB9-1hz3-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号33、35、37、および39である。HFB9-1hz3-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号41、43、45、および47である。
【化4】
【0211】
HFB9-1hz4-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号49、51、53、および55である。HFB9-1hz4-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号57、59、61、および63である。
【化5-1】
【化5-2】
【0212】
HFB9-2hz11-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号65、67、69、および71である。HFB9-2hz11-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号73、75、77、および79である。
【化6】
【0213】
HFB9-2hz12-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号81、83、85、および87である。HFB9-2hz12-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号89、91、93、および95である。
【化7-1】
【化7-2】
【0214】
HFB9-2hz13-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号97、99、101、および103である。HFB9-2hz13-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号105、107、109、および111である。
【化8】
【0215】
HFB9-2hz14-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号113、115、117、および119である。HFB9-2hz14-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号121、123、125、および127である。
【0216】
7.ヒト化抗体
一部の実施形態において、Gal9抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は治療分子として有用である。なぜなら、ヒト化抗体は、抗体治療薬に対する免疫応答、および治療薬の有効性の低下をもたらし得る非ヒト抗体に対するヒト免疫応答(ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答等)を低減するか、または排除するからである。
【0217】
抗体は、標準的なあらゆる方法によってヒト化され得る。ヒト化の非限定的な例示的な方法として、例えば、米国特許第5,530,101号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第6,180,370号;Jonesら、Nature 321:522-525(1986);Riechmannら、Nature 332:323-27(1988);Verhoeyenら、Science 239:1534-36(1988);および米国特許出願公開第2009/0136500号に記載される方法を含む。全て参照により組み込まれる。
【0218】
ヒト化抗体は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、ヒトフレームワーク領域内の対応する位置由来のアミノ酸で置換されている抗体である。一部の実施形態において、非ヒト可変領域のフレームワーク領域内の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも15個、または少なくとも20個のアミノ酸が、1つまたはそれを超えるヒトフレームワーク領域内の1つまたはそれを超える、対応する位置由来のアミノ酸で置換されている。
【0219】
一部の実施形態において、置換に用いられる対応する一部のヒトアミノ酸は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子のフレームワーク領域に由来する。すなわち、そのような一部の実施形態において、非ヒトアミノ酸の1つまたは複数が、第1のヒト抗体のヒトフレームワーク領域由来の対応するアミノ酸で置換され得るか、または第1のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされ得、非ヒトアミノ酸の1つまたは複数が、第2のヒト抗体のヒトフレームワーク領域由来の対応するアミノ酸で置換され得るか、または第2のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされ得、非ヒトアミノ酸の1つまたは複数が、第3のヒト抗体のヒトフレームワーク領域由来の対応するアミノ酸で置換され得るか、または第3のヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされ得る等々である。さらに、一部の実施形態において、単一のフレームワーク領域、例えばFR2内の置換に用いられることとなる対応するヒトアミノ酸の全てが、同じヒトフレームワークに由来する必要はない。しかしながら、一部の実施形態において、置換に用いられることとなる対応するヒトアミノ酸の全てが、同じヒト抗体に由来するか、または同じヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされている。
【0220】
一部の態様において、抗体は、1つまたはそれを超えるフレームワーク領域全体を、対応するヒトフレームワーク領域で置換することによってヒト化される。一部の実施形態において、置換されることとなる非ヒトフレームワーク領域に対して最も高いレベルの相同性を有するヒトフレームワーク領域が選択される。一部の実施形態において、そのようなヒト化抗体はCDRグラフト化抗体である。
【0221】
一部の態様において、CDRグラフティング後、1つまたはそれを超えるフレームワークアミノ酸が、マウスフレームワーク領域内の対応するアミノ酸に戻される。そのような「復帰変異」は、一部の実施形態において、1つもしくはそれを超えるCDRの構造に寄与すると思われ、かつ/または抗原接触に関与し得、かつ/または抗体の構造的完全性の全体に関与すると思われる1つまたはそれを超えるマウスフレームワークアミノ酸を保持するためになされる。一部の実施形態において、CDRグラフティング後の抗体のフレームワーク領域に対して、10個もしくはそれ未満、9つもしくはそれ未満、8つもしくはそれ未満、7つもしくはそれ未満、6つもしくはそれ未満、5つもしくはそれ未満、4つもしくはそれ未満、3つもしくはそれ未満、2つもしくはそれ未満、1つ、または0個の復帰変異がなされる。
【0222】
一部の実施形態において、ヒト化抗体はまた、ヒト重鎖定常領域および/またはヒト軽鎖定常領域を含む。
【0223】
8.ヒト抗体
一部の実施形態において、Gal9抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、適切なあらゆる方法によって作製することができる。非限定的な例示的な方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を作製することを含む。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-55(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255-8(1993);onbergら、Nature 368:856-9(1994);ならびに米国特許第5,545,807号;米国特許第6,713,610号;米国特許第6,673,986号;米国特許第6,162,963号;米国特許第5,545,807号;米国特許第6,300,129号;米国特許第6,255,458号;米国特許第5,877,397号;米国特許第5,874,299号;および米国特許第5,545,806号参照。
【0224】
また、非限定的な例示的な方法は、ファージディスプレイライブラリを用いてヒト抗体を作製することを含む。例えば、Hoogenboomら、J.Mol.Biol.227:381-8(1992);Marksら、J.Mol.Biol.222:581-97(1991);および国際公開第99/10494号参照。
【0225】
ヒト抗体定常領域
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体は、1つまたはそれを超えるヒト定常領域を含む。一部の実施形態において、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、およびIgDから選択されるアイソタイプのものである。一部の実施形態において、ヒト軽鎖定常領域は、Kおよびλから選択されるアイソタイプのものである。一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、ヒトIgG定常領域、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含む。一部の実施形態において、抗体またはFc融合パートナーは、例えば、IgG1定常領域内にC237S変異を含む。一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、ヒトIgG2重鎖定常領域を含む。そのような一部の実施形態において、IgG2定常領域は、米国特許第6,900,292号に記載されるP331S変異を含む。一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。そのような一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、ヒトIgG4定常領域内にS241P変異を含む。例えば、Angalら、Mol.Immunol.30(1):105-108(1993)参照。一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、ヒトIgG4定常領域およびヒトκ軽鎖を含む。
【0226】
重鎖定常領域の選択により、抗体がエフェクタ機能をインビボで有することとなるか否かを決定することができる。そのようなエフェクタ機能は、一部の実施形態において、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を含み、抗体が結合する細胞の死滅をもたらし得る。典型的には、ヒトIgG1またはIgG3重鎖を含む抗体が、エフェクタ機能を有する。
【0227】
一部の実施形態において、エフェクタ機能は所望されない。例えば、一部の実施形態において、エフェクタ機能は、炎症症状および/または自己免疫障害の処置において所望されない場合がある。そのような一部の実施形態において、ヒトIgG4またはIgG2重鎖定常領域が選択または操作される。一部の実施形態において、IgG4定常領域がS241P変異を含む。
【0228】
本明細書中に記載される抗体のいずれも、好適なあらゆる方法によって精製され得る。そのような方法として、アフィニティマトリックスまたは疎水性相互作用クロマトグラフィの使用を含むが、これらに限定されない。適切なアフィニティリガンドとして、抗体が結合する抗原および/またはエピトープ、ならびに抗体定常領域に結合するリガンドを含む。例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、または抗体アフィニティカラムを用いて、定常領域に結合して抗体を精製することができる。
【0229】
一部の実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、例えばブチルまたはフェニルカラムもまた、一部のポリペプチドを精製するのに用いられる。ポリペプチドを精製する多くの方法が、当該技術において知られている。
【0230】
これ以外にも、一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体は、無細胞系において生成される。非限定的な例示的な無細胞系が、例えば、Sitaramanら、Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endoら、Biotechnol.Adv.21:695-713(2003)に記載されている。
【0231】
9.Gal9アンタゴニストをコードする核酸分子
また、本発明は、Gal9抗体等の本明細書中に記載される抗体の1つまたはそれを超える鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。一部の実施形態において、核酸分子は、本明細書中に記載される抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、核酸分子は、本明細書中に記載される抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドおよび軽鎖をコードするポリヌクレオチドの双方を含む。一部の実施形態において、第1の核酸分子が、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2の核酸分子が、軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。
【0232】
そのような一部の実施形態において、重鎖および軽鎖は、1つの核酸分子から、または2つの別個の核酸分子から、2つの別個のポリペプチドとして発現される。一部の実施形態において、例えば抗体がscFvである場合、単一のポリヌクレオチドが、一緒に連結された重鎖および軽鎖の双方を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0233】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含み、これは、翻訳される場合、重鎖または軽鎖のN末端に位置する。上述のように、リーダー配列は、天然の重鎖リーダー配列であっても軽鎖リーダー配列であってもよいし、別の異種リーダー配列であってもよい。
【0234】
核酸分子は、当該技術において従来の組換えDNA技術を用いて構築され得る。一部の実施形態において、核酸分子は、哺乳動物細胞等の選択された宿主細胞内での発現に適した発現ベクターである。
【0235】
10.ベクター
本明細書中に記載される抗体の重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。そのようなベクターとして、以下に限定されないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターその他を含む。一部の実施形態において、ベクターは、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチド配列および軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、重鎖および軽鎖は、ベクターから2つの別個のポリペプチドとして発現される。一部の実施形態において、重鎖および軽鎖は、例えば抗体がscFvである場合、単一のポリペプチドの一部として発現される。
【0236】
一部の実施形態において、第1のベクターが、重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターが、軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、第1のベクターおよび第2のベクターは、類似の量(類似のモル量または類似の質量等)で宿主細胞中に形質移入される。一部の実施形態において、5:1~1:5のモル比または質量比の第1のベクターおよび第2のベクターが宿主細胞中に形質移入される。一部の実施形態において、重鎖をコードするベクターおよび軽鎖をコードするベクターについて、1:1~1:5の質量比が用いられる。一部の実施形態において、重鎖をコードするベクターおよび軽鎖をコードするベクターについて、1:2の質量比が用いられる。
【0237】
一部の実施形態において、CHOもしくはCHO由来細胞における、またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現用に最適化されたベクターが選択される。そのような例示的なベクターは、例えば、Running Deerら、Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)に記載されている。一部の実施形態において、ヒトを含む動物におけるGal9アンタゴニストのインビボ発現用のベクターが選択される。そのような一部の実施形態において、ポリペプチド(複数可)の発現が、組織特異的に機能するプロモーター(複数可)の制御下にある。例えば、肝臓特異的プロモーターが、例えば、国際公開第2006/076288号に記載されている。
【0238】
11.宿主細胞
種々の実施形態において、本明細書中に記載される抗体の重鎖および/または軽鎖は、原核細胞、例えば細菌細胞;または真核細胞、例えば真菌細胞(酵母等)、植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞において発現され得る。そのような発現は、例えば、当該技術において知られている手順に従って実行され得る。ポリペプチドを発現させるのに用いられ得る例示的な真核細胞として、COS細胞(COS7細胞を含む);293細胞(293-6E細胞を含む);CHO細胞(CHO-SおよびDG44細胞を含む);PER.C6(登録商標)細胞(Crucell);およびNSO細胞を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本明細書中に記載される抗体の重鎖および/または軽鎖は、酵母内で発現され得る。例えば、米国特許出願公開第2006/0270045A1号参照。一部の実施形態において、Gal9抗体の重鎖および/または軽鎖に、所望される翻訳後修飾を行う能力に基づいて、特定の真核宿主細胞が選択される。例えば、一部の実施形態において、CHO細胞は、293細胞内で産生される同じポリペプチドよりも高いレベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。
【0239】
所望の宿主細胞中への1つまたはそれを超える核酸の導入を、リン酸カルシウム形質移入、DEAE-デキストラン媒介性形質移入、カチオン性脂質媒介性形質移入、エレクトロポレーション、形質導入、感染その他を含むがこれらに限定されないあらゆる方法によって達成することができ、非限定的な例示的な方法が、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に記載されている。核酸は、適切なあらゆる方法に従って、所望の宿主細胞内に一時的に形質移入されても、安定して形質移入されてもよい。
【0240】
一部の実施形態において、1つまたはそれを超えるポリペプチドが、適切なあらゆる方法に従って、ポリペプチドをコードする1つまたはそれを超える核酸分子により操作または形質移入された動物においてインビボ産生され得る。
【実施例
【0241】
実施例1 ヒト化抗Gal9抗体は、ヒトおよびマウスガレクチン-9に対して高い結合親和性を有する
この実施例は、本発明の種々の抗ヒトGal9ヒト化抗体が、ヒトGal9およびマウスGal9の双方に対して高い結合親和性を有することを実証する。
【0242】
抗体結合親和性を、Fortebio(Creative Biolabs)から市販されているOctetシステムを用いて測定した。Creative Biolabsの説明に従えば、Octetプラットフォームは、96ウェルマイクロプレートまたは384ウェルマイクロプレートにおける生体分子相互作用の評価を支援するための機器、バイオセンサ、試薬、およびアッセイキットを含む系全体を利用するバイオレイヤー干渉法(BLI)技術に基づく。Octetシステムは、DIP-AND-READアッセイモードを用いて、マイクロ流体の必要性を回避して、親和性および速度論のリアルタイムの、標識フリーの分析を可能にする。抗体相互作用を調べるのに用いることができる3つのバイオセンサベースのアッセイ配向:タンデムブロッキング、プレミックスブロッキング、および古典的サンドイッチがある。Biacoreと比較して、Octetのディップアンドリードアッセイは、より長い分析物結合工程を可能とし、そしてリガンドコーティングしたセンサへの分析物の再結合を促進する。一方、会合時間が速いほど、消費されるサンプルは少なくなり、貴重なタンパク質が節約される。
【0243】
また、Creative Biolabsの説明に従えば、BLI技術の原理は、2つの表面、すなわち固定化されたタンパク質の層および内部基準層から反射された白色光の光学干渉パターンに基づく。バイオセンサ先端部表面上に固定化されたリガンドと、溶液中の分析物との結合は、バイオセンサ先端部にて光学的厚さの増大をもたらし、これは、ナノメートル単位で測定される干渉パターンのシフトをもたらす。波長シフト(ΔΛ)は、生物層の光学的厚さの変化の直接的尺度である。このシフトを一定期間にわたって測定して、その大きさを時間の関数としてプロットすると、古典的な会合/解離曲線が得られる。この相互作用は、リアルタイムで測定されて、結合特異性、会合速度および解離速度、ならびに濃度を、非常に精密かつ正確に監視する能力が提供される。
【0244】
この系を用いて、組換えヒトおよびマウスGal9に対する抗体親和性を、本発明の選択されたヒト化抗体について測定した。結果を以下の表に要約する。データは、試験したヒト化抗体が、ヒトGal9タンパク質/抗原およびマウスGal9タンパク質/抗原の双方に対して、中程度のnM~低いnMの範囲の高親和性を有することを示す。
【表2】
【0245】
本発明の選択されたヒト化抗体の配列アラインメントを、標準的な配列アラインメントソフトウェアを用いて実行した。結果を図1および図2に示す。詳細には、図1において、4つのヒト化抗体のV領域およびV領域をアラインして、ヒト-マウスキメラ抗体HFB9-1の元のV領域およびV領域と比較したアミノ酸残基の変化を示した。ヒト化は主に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域(HCVRおよびLCVR)のフレームワーク領域内のアミノ酸配列を変えた。しかしながら、重鎖CDR2配列内でも広範囲にわたる変化が存在した(図1参照)。
【0246】
同様に、図2において、6つのヒト化抗体のV領域およびV領域をアラインして、ヒト-マウスキメラ抗体HFB9-2の元のV領域およびV領域と比較したアミノ酸残基の変化を示した。ヒト化は主に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域(HCVRおよびLCVR)のフレームワーク領域内のアミノ酸配列を変えた。しかしながら、重鎖CDR2配列内でも広範囲にわたる変化が、そして1つのヒト化抗体について重鎖(heacy chain)CDR1配列内で1残基の変化が存在した(図2参照)。
【0247】
実施例2 抗Gal9抗体は、Gal9に対してサブナノモル(nM)の親和性を示す
この実験は、本発明のヒト化抗体が組換えヒトGal9に対して非常に高い(サブナノモルの)親和性を示し、組換えマウスGal9およびサルGal9と交差反応することを実証する(データは示さず)。試験した各ヒト化抗体のEC50値を、各抗体の濃度を上げながら測定して、結果を、組換えヒトGal9への結合については図3の表に、組換えマウスGal9への結合については図4の表にまとめた。
【0248】
1hz4抗体以外、HFB9-1の3つのヒト化変異体は全て、ヒトGal-9およびマウスGal-9の双方に対してサブnMのレベルの親和性を示したことが明らかである(図3および図4参照)。一方、6つのヒト化HFB9-2抗体のうち5つ(2hz12を除く)が、ヒトGal9に対してサブnMレベルの親和性を示したが、5つのうち4つ(2h14を除く)しか、マウスGal9に対してサブnMレベルの親和性を維持しなかった。
【0249】
また、サルのオルソログGal9に対する強い交差反応性が観察された(データは示さず)。
【0250】
これらの代表的な抗体(軽鎖(LC)可変領域および重鎖(HC)可変領域、CDR領域、ならびにフレームワーク領域(FR)を含む)の配列を、以下に列挙する。
【化9】
【0251】
全ての抗体重鎖配列について、フレームワーク領域配列HFR1~HFR4は、VH-CDR配列によって定義される。例えば、HFR1は、VH-CDR1のN末端側にあるHCVRの配列である。HFR2は、VH-CDR1とVH-CDR2との間にあるHCVRの配列である。HFR3は、VH-CDR2とVH-CDR3との間にあるHCVRの配列である。HFR4は、HCVRの最もC末端側の配列である。
【0252】
同様に、全ての抗体軽鎖配列について、フレームワーク領域配列LFR1~LFR4は、VL-CDR配列によって定義される。例えば、LFR1は、VL-CDR1のN末端側にあるLCVRの配列である。LFR2は、VL-CDR1とVL-CDR2との間にあるLCVRの配列である。LFR3は、VL-CDR2とVL-CDR3との間にあるLCVRの配列である。LFR4は、LCVRの最もC末端側の配列である。
【0253】
HFB9-1hz1-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号1、3、5、および7である。HFB9-1hz1-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号9、11、13、および15である。
【化10】
【0254】
HFB9-1hz2-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号17、19、21、および23である。HFB9-1hz2-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号25、27、29、および31である。
【化11】
【0255】
HFB9-1hz3-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号33、35、37、および39である。HFB9-1hz3-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号41、43、45、および47である。
【化12】
【0256】
HFB9-1hz4-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号49、51、53、および55である。HFB9-1hz4-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号57、59、61、および63である。
【化13】
【0257】
HFB9-2hz11-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号65、67、69、および71である。HFB9-2hz11-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号73、75、77、および79である。
【化14】
【0258】
HFB9-2hz12-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号81、83、85、および87である。HFB9-2hz12-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号89、91、93、および95である。
【化15】
【0259】
HFB9-2hz13-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号97、99、101、および103である。HFB9-2hz13-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号105、107、109、および111である。
【化16】
【0260】
HFB9-2hz14-hG1AAのHFR1~HFR4配列は、配列番号113、115、117、および119である。HFB9-2hz14-hG1AAのLFR1~LFR4配列は、配列番号121、123、125、および127である。
【0261】
実施例3 抗Gal9抗体による結合は、受容体TIM3およびCD44へのGal9結合をブロックする
この実験は、本発明の抗Gal9抗体が、その受容体TIM3およびCD44へのGal9結合をブロックするので、Gal9からの下流シグナル伝達をアンタゴナイズすることができることを実証する。
【0262】
図5のデータは、本発明のヒト化抗体が、TIM3受容体およびCD44受容体の双方へのGal9結合を用量依存的にブロックすることを明確に示した。
【0263】
実施例4 抗Gal9抗体は、Gal9誘導性Th1アポトーシスを中和する
YANGら(INFLAMMATION 40(3):1062-1071,2017)は、ガレクチン-9の上昇が、Th1エフェクタ機能を抑制して、変形性関節症において活性化CD4T細胞のアポトーシスを誘導することを報告した。この実験は、本発明の抗Gal9抗体が、Gal9誘導性Th1アポトーシスを中和することを実証する。
【0264】
具体的には、ヒトPBMCを、健康なドナーから単離して、本発明の抗体の不在下でT細胞アポトーシスを誘導する量のGal9の存在下で、本発明の抗体と共に、抗体濃度を上げながらインキュベートした。アポトーシスCD4+T細胞のパーセンテージを、抗体濃度範囲にわたって求めて、抗体のEC50値を求めた。結果を図6にまとめた。データは、健康なドナー由来のヒトPBMCを本発明の抗体で処理すると、Gal9誘導性Th1細胞アポトーシスが用量依存的に防止されることを明確に示した。
【0265】
実施例5 抗Gal9抗体は、Gal9誘導性Treg増殖を抑制する
上述のように、ガレクチン-9は、Tregによって直接発現され、この活性化は、Gal9の発現の増大に関連する。この実験は、本発明の抗Gal9抗体によるガレクチン-9の阻害が、Treg増殖を抑制することを実証する。
【0266】
具体的には、ヒトPBMCを、健康なドナーから単離して、本発明の抗体の不在下でTreg増殖を刺激する量のGal9の存在下で、本発明の抗体と共に、抗体濃度を上げながらインキュベートした。全ての生細胞中のFoxp3Ki67HIGHT細胞のパーセンテージを、抗体濃度範囲にわたって求めて、抗体のEC50値を求めた。結果を図7にまとめた。データは、健康なドナー由来のヒトPBMCを本発明の抗体で処理すると、Foxp3マーカー遺伝子およびKi67マーカー遺伝子の発現に基づいて、抗体濃度が高いほど、低いパーセンテージの増殖Tregに関連するという点で、Gal-9誘導性Treg増殖が用量依存的に抑制されることを明確に示した。
【0267】
実施例6 抗Gal9抗体および抗PD-1抗体による併用処置は、腫瘍成長のインビボ阻害および生存の延長の相乗効果を示した
この実験は、本発明の抗Gal9モノクローナル抗体および抗PD-1抗体が、異種移植(xenograph)マウスモデルにおいて腫瘍成長をインビボ阻害するのに相乗効果を有することを実証する。
【0268】
詳細には、約50万個の癌細胞を実験マウスに接種して、腫瘍塊を所定のサイズまで成長させた。次いで、マウスを無作為化して、4つの抗体または抗体組合せの1つを腹膜内に(i.p.)注射した:(1)10mg/kgの用量でのIgGアイソタイプ対照、(2)10mg/kgの用量での抗Gal9抗体HFB9-2(クローンRMP1-14)、(3)10mg/kgの用量での抗mPD-1抗体、または(4)10mg/kgでの抗mPD-1抗体および10mg/kgでの抗HFB9-2抗体の組合せ。
【0269】
種々の群用の抗体の最初の用量を1日目に投与して、その後の用量を3日毎に、抗mPD-1抗体によるあらゆる群に対して合計4回用量、抗HFB9-2抗体および対照抗体によるあらゆる群に対して合計7回用量投与した。データを平均±s.e.m.として示す(n=8頭/群)(図8)。
【0270】
主題の抗Gal9抗体および抗mPD-1抗体は、7週間の研究期間中に併用療法が腫瘍成長を500mm以下に本質的に完全に抑制するという点で、腫瘍成長のインビボ阻害において相乗効果を示したことが明らかである。一方、対照群および抗HFB9-2群における腫瘍成長は、このレベルを早くも2週で超え、そして抗mPD-1群は、このレベルを早くも4週で超えた。
【0271】
さらに、生存(図9)に関して、対照群のマウスは全て、第3週の終わり頃に死亡し、抗HFB9-2抗体群のマウスは全て、第5週の終わり頃に死亡し、抗mPD-1群のマウスの25%(8頭中2頭)のみが、第7週の終わりに腫瘍なしで生存した。しかしながら、同時に、併用療法群は、8頭のマウスのうち5頭が腫瘍を有さず、1頭が約100mmの腫瘍を有することを含めて、75%の生存率を有した。
【0272】
この驚くべき発見は、Gal-9機能およびPD-1/PD-L1免疫チェックポイントを同時に阻害することにより、相乗的に、腫瘍成長をインビボ阻害し、かつ生存を延長することができることを強く示唆している。
【0273】
実施例7 抗Gal9抗体は安定している
主題のヒト化抗Gal9抗体が貯蔵中に安定していることで、治療薬としての更なる開発に適していることを確認するために、選択されたヒト化抗体について種々の開発可能性アッセイを行った。
【0274】
第1の実験では、1~2.75mg/mLの対象ヒト化抗体、HFB9-1hz1-hG1AA、HFB9-1hz2-hG1AA、HFB9-1hz3-hG1AA、HFB9-2hz11-hG1AA、およびHFB9-2hz13-hG1AAを、PBS(pH7.4)中25または40℃にて貯蔵して、種々の抗体の安定性を、0、3、7、および14日目に判定した。結果(示さず)は、試験した全ての抗体が、試験した条件にて安定していることを実証した。
【0275】
第2の実験では、同じ抗体を、低pH条件下(100mM AcH、pH3.5、25℃)で0、3、および6時間、安定性について試験した。結果(示さず)はここでも、試験した全ての抗体が、試験した条件にて安定していることを実証した。
【0276】
第3の実験では、同じ抗体を、1、2、または3回の凍結解凍サイクルに供した。結果(示さず)はここでも、試験した全ての抗体が、試験した条件にて安定していることを実証した。
【0277】
実施例8 AML患者由来の血漿および血清中のガレクチン-9レベル
患者の血漿および血清中のGal-9のレベルを判定するために、AML患者由来の末梢血サンプルを、Institutional Review Boardが承認したプロトコルに従って、Gustave Roussy Institute(Villejuif,FRANCE)のClinical Hematology Departmentから得た。ヘルシンキ宣言に従って、全ての患者からインフォームドコンセントを得た。French-American-British(Fab)分類基準に従って、患者を層別化した。AML患者由来の末梢血由来の血漿または血清を、標準的な手順に従って調製した。健康なドナーについては、血漿サンプルまたは血清サンプルを商業的な供給源から得た。
【0278】
血漿または血清中のガレクチン-9タンパク質レベルを、R&D SYSTEMS(登録商標)の「Quantikine(登録商標)ELISA Human Galectin-9」を用いてELISAによって評価して、統計分析(対応のない両側t検定)を、Windowsソフトウェア用のPRISM(登録商標)5を用いて実行した。
【0279】
図10に示すように、疾患の診断時または再発/難治性段階(R/R)でのAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルは、健康な個体由来の血漿中で観察されたものよりも有意に高かった。化学療法後の完全寛解時のAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルは、正常な生理学的範囲に近かった。
【0280】
図11に示すように、診断時のFab M2またはFab M3のAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルは、Fab M0、M1、M4、またはM5のAML患者由来の血漿中で観察されたものよりも有意に低かった。診断時のFab M3のAML患者の血漿中のガレクチン-9タンパク質レベルは、正常な生理学的範囲内にあった。
【0281】
加えて、LGALS9 mRNA発現レベルを、AML患者および健康な個体において調査した。LGALS9 mRNA発現レベルを、Tynerらによって寄託された、公的に入手可能な「AML_Ohsu_Nature 2018」データセットから抽出した(研究の完全な説明についてはPMID 30333627参照)。データを、正規化したlog 2 RPKMとして図12に表す。点線はそれぞれ、健康な個体またはAML患者由来のBM由来MNCにおけるLGALS9レベルの中央値を表す。
【0282】
図12に示すように、診断時のAML患者由来のBM由来MNC(全てFabと考えられる)におけるガレクチン-9コードmRNAレベルは、健康な個体由来のBM由来MNCまたはCD34+細胞において観察されるmRNAレベルよりも高かった。加えて、診断時のFab M3のAML患者由来のBM由来MNCにおけるガレクチン-9コードmRNAレベルは、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者由来のBM由来MNC、または健康な個体由来のBM由来MNCもしくはCD34細胞において観察されるものよりも有意に低かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2023510429000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ガレクチン-9に特異的であり、前記モノクローナル抗体は:
(1a)配列番号2のHCVR CDR1配列、配列番号4のHCVR CDR2配列、および配列番号6のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(1b)配列番号10のLCVR CDR1配列、配列番号12のLCVR CDR2配列、および配列番号14のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(2a)配列番号18のHCVR CDR1配列、配列番号20のHCVR CDR2配列、および配列番号22のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(2b)配列番号26のLCVR CDR1配列、配列番号28のLCVR CDR2配列、および配列番号30のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(3a)配列番号34のHCVR CDR1配列、配列番号36のHCVR CDR2配列、および配列番号38のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(3b)配列番号42のLCVR CDR1配列、配列番号44のLCVR CDR2配列、および配列番号46のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(4a)配列番号50のHCVR CDR1配列、配列番号52のHCVR CDR2配列、および配列番号54のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(4b)配列番号58のLCVR CDR1配列、配列番号60のLCVR CDR2配列、および配列番号62のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(5a)配列番号66のHCVR CDR1配列、配列番号68のHCVR CDR2配列、および配列番号70のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(5b)配列番号74のLCVR CDR1配列、配列番号76のLCVR CDR2配列、および配列番号78のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(6a)配列番号82のHCVR CDR1配列、配列番号84のHCVR CDR2配列、および配列番号86のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(6b)配列番号90のLCVR CDR1配列、配列番号92のLCVR CDR2配列、および配列番号94のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(7a)配列番号98のHCVR CDR1配列、配列番号100のHCVR CDR2配列、および配列番号102のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(7b)配列番号106のLCVR CDR1配列、配列番号108のLCVR CDR2配列、および配列番号110のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(8a)配列番号114のHCVR CDR1配列、配列番号116のHCVR CDR2配列、および配列番号118のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(8b)配列番号122のLCVR CDR1配列、配列番号124のLCVR CDR2配列、および配列番号128のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(1c)(1a)および(1b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号5のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号1のHFR1配列をさらに含み;または
(2c)(2a)および(2b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号21のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号17のHFR1配列をさらに含み;または
(3c)(3a)および(3b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号37のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号33のHFR1配列をさらに含み;または
(4c)(4a)および(4b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号53のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号49のHFR1配列をさらに含み;または
(5c)(5a)および(5b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号69のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号65のHFR1配列をさらに含み;または
(6c)(6a)および(6b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号85のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号81のHFR1配列をさらに含み;または
(7c)(7a)および(7b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号101のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号97のHFR1配列をさらに含み;または
(8c)(8a)および(8b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号117のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号113のHFR1配列をさらに含む、
請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
(1A)前記HCVR配列が配列番号8であり;かつ/もしくは
(1B)前記LCVR配列が配列番号16であるか、または
(2A)前記HCVR配列が配列番号24であり;かつ/もしくは
(2B)前記LCVR配列が配列番号32であるか、または
(3A)前記HCVR配列が配列番号40であり;かつ/もしくは
(3B)前記LCVR配列が配列番号48であるか、または
(4A)前記HCVR配列が配列番号56であり;かつ/もしくは
(4B)前記LCVR配列が配列番号64であるか、または
(5A)前記HCVR配列が配列番号72であり;かつ/もしくは
(5B)前記LCVR配列が配列番号80であるか、または
(6A)前記HCVR配列が配列番号88であり;かつ/もしくは
(6B)前記LCVR配列は配列番号96であるか、または
(7A)前記HCVR配列が配列番号104であり;かつ/もしくは
(7B)前記LCVR配列が配列番号112であるか、または
(8A)前記HCVR配列が配列番号120であり;かつ/もしくは
(8B)前記LCVR配列が配列番号128である、
請求項1または2に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
ヒト化抗体であり、かつ:
(1)配列番号8の前記HCVR配列および配列番号16の前記LCVR配列;または、
(2)配列番号72の前記HCVR配列および配列番号80の前記LCVR配列
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記その抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、F、一本鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド結合F、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、またはscFv-Fcである、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がマウスGal9と交差反応する、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約0.1~0.2nMのEC50で結合し、かつ/またはマウスGal9に約0.5~1.0nMのEC50で結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、2nM、または1nM未満のKで結合する、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
Gal9に結合して、Gal9受容体(例えば、TIM3またはCD44)へのGal9の結合を阻害する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
T細胞(CD4T細胞等)のGal-9誘導性Th1アポトーシスを中和する、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
Gal9誘導性Treg増殖を抑制する、請求項1~10のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
異種移植腫瘍を有するマウスにおいて、免疫チェックポイントのアンタゴニストと相乗的に、腫瘍成長をインビボ阻害し、かつ/または生存を延長する、請求項1~11のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
癌の処置を必要とする患者において癌を処置するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、および免疫チェックポイントのアンタゴニストを含組合せ物
【請求項15】
前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントであり、必要に応じて、前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1のペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、請求項14に記載の組合せ物
【請求項16】
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、請求項14~15のいずれか1項に記載の組合せ物
【請求項17】
化学療法剤、抗血管形成剤、成長阻害剤、免疫腫瘍治療剤、および/または抗新生物組成物と組み合わせて前記患者に投与されることを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載の組合せ物
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に規定の重鎖もしくは軽鎖、またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
ヒト細胞内での発現のためにコドン最適化されている、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター(例えば、哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)等のベクター。
【請求項21】
癌を発症するか、または癌が再発するリスクがある、癌と診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法において使用するため、あるいは癌を有する患者を識別かつ処置する方法において使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、前記方法は、前記患者由来のサンプル中のガレクチン-9のレベルが、健康な個体または対照個体におけるガレクチン-9の基準レベルよりも高いと前記患者を識別すると、前記組成物を前記患者に投与することを含む、組成物
【請求項22】
前記方法が、前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルを前記基準レベルと比較することによって、前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルが前記基準レベルよりも高いと前記患者を識別することをさらに含む、請求項21に記載の組成物
【請求項23】
前記方法が、免疫チェックポイントのアンタゴニストを前記患者に投与することをさらに含み、必要に応じて、前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントである、請求項21または22に記載の組成物
【請求項24】
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1の(非抗体)ペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、請求項23に記載の組成物
【請求項25】
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、請求項21~24のいずれか1項に記載の組成物
【請求項26】
前記患者が、FAB M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者であるか、または前記患者が、FAB M2もしくはM3のAML患者ではない、請求項25に記載の組成物
【請求項27】
前記サンプルが、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである、請求項21~26のいずれか1項に記載の組成物
【請求項28】
AMLを発症するか、またはAMLを再発するリスクがある、AMLと診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法において使用するため、あるいはAMLを有する患者を識別かつ処置する方法において使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、前記方法は、前記患者由来の骨髄(BM)由来単核細胞(MNC)サンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルが、健康な個体または対照個体におけるBM由来MNCまたはCD34細胞における基準レベルよりも統計的に有意に高いか、または低いと前記患者を識別すると、前記組成物を前記患者に投与することを含む、組成物
【請求項29】
(1)前記患者がFAB M0、M1、M2、M4、もしくはM5のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に高く、または(2)前記患者がFAB M3のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に低い、請求項28に記載の組成物
【請求項30】
癌の処置に用いられる、ガレクチン-9に対して向けられるか、またはガレクチン-9に特異的な抗体またはその抗原結合部分を含む組成物であって、前記抗体またはその抗原結合部分は、エフェクタT細胞増殖を救済し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強し、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、組成物
【請求項31】
エフェクタT細胞増殖を救済または促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法において使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、前記方法は、前記エフェクタT細胞を、前記単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含み、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、組成物
【請求項32】
対象において免疫記憶を誘導または促進するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、前記免疫記憶が、前記対象における腫瘍の進行もしくは再発、または癌細胞の増殖を阻害するか、または低減するのに有効である、組成物
【請求項33】
癌の処置を必要とする患者において癌を処置するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、免疫チェックポイントのアンタゴニストと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項34】
癌の処置を必要とする患者において癌を処置するための、免疫チェックポイントのアンタゴニストを含む組成物であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0282
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0282】
図12に示すように、診断時のAML患者由来のBM由来MNC(全てFabと考えられる)におけるガレクチン-9コードmRNAレベルは、健康な個体由来のBM由来MNCまたはCD34+細胞において観察されるmRNAレベルよりも高かった。加えて、診断時のFab M3のAML患者由来のBM由来MNCにおけるガレクチン-9コードmRNAレベルは、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者由来のBM由来MNC、または健康な個体由来のBM由来MNCもしくはCD34細胞において観察されるものよりも有意に低かった。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ガレクチン-9に特異的であり、前記モノクローナル抗体は:
(1a)配列番号2のHCVR CDR1配列、配列番号4のHCVR CDR2配列、および配列番号6のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(1b)配列番号10のLCVR CDR1配列、配列番号12のLCVR CDR2配列、および配列番号14のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(2a)配列番号18のHCVR CDR1配列、配列番号20のHCVR CDR2配列、および配列番号22のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(2b)配列番号26のLCVR CDR1配列、配列番号28のLCVR CDR2配列、および配列番号30のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(3a)配列番号34のHCVR CDR1配列、配列番号36のHCVR CDR2配列、および配列番号38のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(3b)配列番号42のLCVR CDR1配列、配列番号44のLCVR CDR2配列、および配列番号46のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(4a)配列番号50のHCVR CDR1配列、配列番号52のHCVR CDR2配列、および配列番号54のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(4b)配列番号58のLCVR CDR1配列、配列番号60のLCVR CDR2配列、および配列番号62のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(5a)配列番号66のHCVR CDR1配列、配列番号68のHCVR CDR2配列、および配列番号70のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(5b)配列番号74のLCVR CDR1配列、配列番号76のLCVR CDR2配列、および配列番号78のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(6a)配列番号82のHCVR CDR1配列、配列番号84のHCVR CDR2配列、および配列番号86のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(6b)配列番号90のLCVR CDR1配列、配列番号92のLCVR CDR2配列、および配列番号94のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(7a)配列番号98のHCVR CDR1配列、配列番号100のHCVR CDR2配列、および配列番号102のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(7b)配列番号106のLCVR CDR1配列、配列番号108のLCVR CDR2配列、および配列番号110のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR);または
(8a)配列番号114のHCVR CDR1配列、配列番号116のHCVR CDR2配列、および配列番号118のHCVR CDR3配列を含む重鎖可変領域(HCVR);ならびに
(8b)配列番号122のLCVR CDR1配列、配列番号124のLCVR CDR2配列、および配列番号128のLCVR CDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目2)
(1c)(1a)および(1b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号5のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号1のHFR1配列をさらに含み;または
(2c)(2a)および(2b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号21のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号17のHFR1配列をさらに含み;または
(3c)(3a)および(3b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号37のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号33のHFR1配列をさらに含み;または
(4c)(4a)および(4b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号53のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号49のHFR1配列をさらに含み;または
(5c)(5a)および(5b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号69のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号65のHFR1配列をさらに含み;または
(6c)(6a)および(6b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号85のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号81のHFR1配列をさらに含み;または
(7c)(7a)および(7b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号101のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号97のHFR1配列をさらに含み;または
(8c)(8a)および(8b)の前記抗体もしくはその抗原結合断片が、配列番号117のHFR3配列をさらに含み、必要に応じて、配列番号113のHFR1配列をさらに含む、
項目1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目3)
(1A)前記HCVR配列が配列番号8であり;かつ/もしくは
(1B)前記LCVR配列が配列番号16であるか、または
(2A)前記HCVR配列が配列番号24であり;かつ/もしくは
(2B)前記LCVR配列が配列番号32であるか、または
(3A)前記HCVR配列が配列番号40であり;かつ/もしくは
(3B)前記LCVR配列が配列番号48であるか、または
(4A)前記HCVR配列が配列番号56であり;かつ/もしくは
(4B)前記LCVR配列が配列番号64であるか、または
(5A)前記HCVR配列が配列番号72であり;かつ/もしくは
(5B)前記LCVR配列が配列番号80であるか、または
(6A)前記HCVR配列が配列番号88であり;かつ/もしくは
(6B)前記LCVR配列は配列番号96であるか、または
(7A)前記HCVR配列が配列番号104であり;かつ/もしくは
(7B)前記LCVR配列が配列番号112であるか、または
(8A)前記HCVR配列が配列番号120であり;かつ/もしくは
(8B)前記LCVR配列が配列番号128である、
項目1または2に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目4)
ヒト化抗体であり、かつ:
(1)配列番号8の前記HCVR配列および配列番号16の前記LCVR配列;または、
(2)配列番号72の前記HCVR配列および配列番号80の前記LCVR配列
を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目5)
前記その抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’) 、F 、一本鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド結合F 、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH 、ミニボディ、F(ab’) 、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb 、(scFv) 、またはscFv-Fcである、項目1~4のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目6)
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がマウスGal9と交差反応する、項目1~5のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目7)
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約0.1~0.2nMのEC50で結合し、かつ/またはマウスGal9に約0.5~1.0nMのEC50で結合する、項目1~6のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目8)
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、ヒトGal9に約25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、2nM、または1nM未満のK で結合する、項目1~7のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目9)
Gal9に結合して、Gal9受容体(例えば、TIM3またはCD44)へのGal9の結合を阻害する、項目1~8のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目10)
T細胞(CD4 T細胞等)のGal-9誘導性Th1アポトーシスを中和する、項目1~9のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目11)
Gal9誘導性Treg増殖を抑制する、項目1~10のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目12)
異種移植腫瘍を有するマウスにおいて、免疫チェックポイントのアンタゴニストと相乗的に、腫瘍成長をインビボ阻害し、かつ/または生存を延長する、項目1~11のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目13)
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片である、項目1~12のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目14)
癌の処置を必要とする患者において癌を処置する方法であって、有効量の、項目1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、および免疫チェックポイントのアンタゴニストを前記患者に投与することを含む方法。
(項目15)
前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントであり、必要に応じて、前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1のペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、項目14~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
化学療法剤、抗血管形成剤、成長阻害剤、免疫腫瘍治療剤、および/または抗新生物組成物を前記患者に投与することをさらに含む、項目14~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
項目1~13のいずれか1項に規定の重鎖もしくは軽鎖、またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチド。
(項目19)
ヒト細胞内での発現のためにコドン最適化されている、項目18に記載のポリヌクレオチド。
(項目20)
項目18または19に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター(例えば、哺乳動物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または細菌発現ベクター)等のベクター。
(項目21)
癌を発症するか、または癌が再発するリスクがある、癌と診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいは癌を有する患者を識別かつ処置する方法であって、前記患者由来のサンプル中のガレクチン-9のレベルが、健康な個体または対照個体におけるガレクチン-9の基準レベルよりも高いと前記患者を識別すると、有効量の、項目1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を前記患者に投与することを含む方法。
(項目22)
前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルを前記基準レベルと比較することによって、前記サンプル中のガレクチン-9の前記レベルが前記基準レベルよりも高いと前記患者を識別することをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
免疫チェックポイントのアンタゴニストを前記患者に投与することをさらに含み、必要に応じて、前記免疫チェックポイントがPD-1/PD-L1免疫チェックポイントである、項目21または22に記載の方法。
(項目24)
前記免疫チェックポイントの前記アンタゴニストが、PD-1またはPD-L1に特異的な抗体またはその抗原結合断片;PD-1/PD-L1の(非抗体)ペプチド阻害剤;PD-L1の小分子阻害剤;大環状ペプチド;またはそれらの任意の組合せである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記癌が、血液癌(AMLおよびDLBCL等)または固形腫瘍(乳癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、結腸癌、腎癌、卵巣癌、肝癌、および前立腺癌等)である、項目21~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記患者が、Fab M0、M1、M4、もしくはM5のAML患者であるか、または前記患者が、Fab M2もしくはM3のAML患者ではない、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記サンプルが、血液サンプル、血漿サンプル、または血清サンプルである、項目21~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
AMLを発症するか、またはAMLを再発するリスクがある、AMLと診断された患者において、エフェクタT細胞増殖を救済もしくは促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法、あるいはAMLを有する患者を識別かつ処置する方法であって、前記患者由来の骨髄(BM)由来単核細胞(MNC)サンプル中のガレクチン-9コードmRNAのレベルが、健康な個体または対照個体におけるBM由来MNCまたはCD34 細胞における基準レベルよりも統計的に有意に高いか、または低いと前記患者を識別すると、有効量の、項目1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を前記患者に投与することを含む方法。
(項目29)
(1)前記患者がFab M0、M1、M2、M4、もしくはM5のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に高く、または(2)前記患者がFab M3のAML患者である場合、前記患者由来の前記BM由来MNCサンプル中のガレクチン-9コードmRNAの前記レベルが前記基準レベルよりも有意に低い、項目28に記載の方法。
(項目30)
癌の処置に用いられる、ガレクチン-9に対して向けられるか、またはガレクチン-9に特異的な抗体またはその抗原結合部分であって、前記抗体またはその抗原結合部分は、エフェクタT細胞増殖を救済し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強し、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、抗体またはその抗原結合部分。
(項目31)
エフェクタT細胞増殖を救済または促進し、かつ/またはエフェクタT細胞活性を増強する方法であって、前記エフェクタT細胞を、項目1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と接触させることを含み、必要に応じて、前記エフェクタT細胞はTh1細胞である、方法。
(項目32)
対象において免疫記憶を誘導または促進する方法であって、有効量の、項目1~13のいずれか1項に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記免疫記憶が、前記対象における腫瘍の進行もしくは再発、または癌細胞の増殖を阻害するか、または低減するのに有効である、方法。
【国際調査報告】