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特表2023-510436負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
H02J3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572356
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2021081716
(87)【国際公開番号】W WO2022193268
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202110289887.0
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
【住所又は居所原語表記】No.66 Xin Mofan Road, Gulou Nanjing, Jiangsu 210003 China
(71)【出願人】
【識別番号】521530532
【氏名又は名称】国网電力科学研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】STATE GRID ELECTRIC POWER RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.19,Chengxin Avenue,Jiangning District,Nanjing,Jiangsu 211106,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岳 東
(72)【発明者】
【氏名】▲ドウ▼ 春霞
(72)【発明者】
【氏名】張 智俊
(72)【発明者】
【氏名】薛 禹勝
(72)【発明者】
【氏名】李 延満
(72)【発明者】
【氏名】丁 孝華
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA01
5G066DA02
5G066JA01
5G066JB00
(57)【要約】
本発明は負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法及びシステムを開示し、方法は、まず配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得することと、次に前記感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整し、安全ではない場合に前記感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現し、依然として解決できない場合に前記感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うことと、を含む。本発明は母線電圧調整の二段階最適化制御を実現し、母線電圧調整の信頼性及び経済性を確保する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法であって、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得するステップ(1)と、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整するステップ(2)と、を含むことを特徴とする負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項2】
該方法は更に、
ステップ(2)により依然として配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現するステップ(3)を含むことを特徴とする請求項1に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項3】
該方法は更に、
ステップ(3)により依然として配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うステップ(4)を含むことを特徴とする請求項2に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)は、
1番目の参照ノードが知られている以外に、他のノードがいずれもPQノードとして見なされ、配電網の各ノードの注入電流及び電圧の方程式を構築し、
【数23】
各ノード電圧の出力に対する有効の感度を計算し、
【数24】
各ノード電圧の出力に対する無効の感度を計算し、
【数25】
このうち、
【数26】
を含むことを特徴とする請求項1に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)は、
前記配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて、それぞれM本の支線の感度の総和を計算し、
【数27】
感度の降順でM本の支線をソートし、1本目の支線の感度の総和が最も高く、M本目の支線の感度の総和が最も低いこと(21)と、
ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、各支線の母線接続状態をプレースとして構築し、各支線の負荷トランス条件を変遷として構築すること(22)と、
M本の支線の接続状態を初期化し、即ち初期状態がいずれも主母線に接続されることであり、主母線には電圧が安全範囲を超える問題が生じるか否かをモニタリングし、電圧が安全範囲を超える問題が生じる場合、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、直接にステップ(3)に入り、NOであれば、1本目の支線の変遷をトリガーして、1本目の支線の負荷トランスを行うこと(23)と、
1本目の支線の負荷がトランスした後、主母線の電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、予備母線の電圧状況をモニタリングし続け、NOであれば、2本目の支線の変遷をトリガーして、2本目の支線の負荷トランスを実行すること(24)と、
このことから類推し、M本の支線負荷の順次トランスにより主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うことと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)は、
配電網システム制御量を定義し、
【数28】

システム予測制御モデルを構築し、
【数29】
を含むことを特徴とする請求項2に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項7】
前記制御量の上下限制約は具体的に、
【数30】
式中、P max、P min、Q max、Q minがそれぞれi番目の分散型電力貯蔵の有効出力の上下限、無効出力の上下限を示し、Nが分散型電力貯蔵の数であることを特徴とする請求項6に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項8】
前記制御量のランプ制約は具体的に、
【数31】
式中、ΔP min、ΔP max、ΔQ min、ΔQ maxがそれぞれi番目の分散型電力貯蔵の充放電電力制限を示し、Nが分散型電力貯蔵の数であることを特徴とする請求項6に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項9】
前記ステップ(4)は、
前記配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて感度行列を取得し、各支線の捨て水量を計算して水力発電遮断を実行し、各支線の捨て水量を計算し、
【数32】
式中、ΔPが支線上のk番目のノードの削減した有効電力であり、ΔVがk番目のノードの電圧変化量であること(41)と、
1本目の支線が水力発電遮断を実行した後、主母線電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、ステップ(43)に入り、NOであれば、2本目の支線の捨て水量を順次計算して水力発電遮断を実行し、このことから類推し、M本の支線の順次式水捨て計画により主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うこと(42)と、
水力発電遮断を実行した後に主母線電圧が安全範囲内にある場合、直ちに計画水力発電起動段階に入って、水捨て部分の水力発電を改めて併合すること(43)と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法。
【請求項10】
負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御システムであって、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得することに用いられる計算モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、電力貯蔵調整モジュールを呼び出すように要求し、NOであれば、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整することに用いられる負荷トランスモジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現し、依然として主母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、水捨て制御モジュールを呼び出すように要求することに用いられる電力貯蔵調整モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うことに用いられる水捨て制御モジュールと、を備えることを特徴とする負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大規模な水力発電を含む配電網電圧制御方法及びシステムに関し、特に負荷トランスと電力貯蔵調整を組み合わせる配電網電圧制御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電は再生可能エネルギーとして、発電コストが小さく、発電開始が速く、省エネ・排出削減で、柔軟に操作できるだけでなく、洪水氾濫を制御し、灌漑用水を提供し、河道を改善することもできる。我が国は既に徐々に多くの、流域を跨いで領域を跨ぐ大規模な水力発電所群を構築した。
【0003】
しかしながら、水力発電所の有効出力は河川の流量によって決定され、極めて高い不確定性を有する。豊水期に、水力発電群の多くは全負荷で動作し、網棚が比較的脆弱であるため、過電圧現象が生じる場合が多く、渇水期に、水力発電所の出力が小さすぎるため、不足電圧現象が生じやすい。水力発電機の電力がかなり大きく、まず水力タービンにより水量調整を行い、次に直流励磁システムにより電界の強度を変更する必要がある。モータが高速で動作するとき、フルブリッジインバータの電力管が故障すると、インバータのダイオードは徐々に三相制御不能整流になり、これにより、水力タービンユニットは制御不能性を有し、対応の電圧制御措置を取らないと、装置の損耗が加速し、装置の故障リスクが高くなり、ひいてはシステムが崩壊・解列する深刻な結果をもたらしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は電圧が安全範囲を超える問題を効果的に解決する配電網電圧制御方法を提供する。本発明の別の目的は該方法に基づく配電網電圧制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法は、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得するステップ(1)と、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整するステップ(2)と、を含む。
【0006】
更に、前記配電網電圧制御方法は、
ステップ(2)により依然として配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現するステップ(3)を更に含む。
【0007】
更に、前記配電網電圧制御方法は、
ステップ(3)により依然として配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うステップ(4)を更に含む。
【0008】
更に、前記ステップ(1)は、
1番目の参照ノードが知られている以外に、他のノードがいずれもPQノードとして見なされ、配電網の各ノードの注入電流及び電圧の方程式を構築し、
【数1】
(11)と、
各ノード電圧の出力に対する有効の感度を計算し、
【数2】
各ノード電圧の出力に対する無効の感度を計算し、
【数3】
このうち、
【数4】
と、を含む。
【0009】
更に、前記ステップ(2)は、
前記配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて、それぞれM本の支線の感度の総和を計算し、
【数5】
感度の降順でM本の支線をソートし、1本目の支線の感度の総和が最も高く、M本目の支線の感度の総和が最も低いこと(21)と、
ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、各支線の母線接続状態をプレースとして構築し、各支線の負荷トランス条件を変遷として構築すること(22)と、
M本の支線の接続状態を初期化し、即ち初期状態がいずれも主母線に接続されることであり、主母線には電圧が安全範囲を超える問題が生じるか否かをモニタリングし、電圧が安全範囲を超える問題が生じる場合、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、直接にステップ(3)に入り、NOであれば、1本目の支線の変遷をトリガーして、1本目の支線の負荷トランスを行うこと(23)と、
1本目の支線の負荷がトランスした後、主母線の電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、予備母線の電圧状況をモニタリングし続け、NOであれば、2本目の支線の変遷をトリガーして、2本目の支線の負荷トランスを実行すること(24)と、
このことから類推し、M本の支線負荷の順次トランスにより主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うことと、を含む。
【0010】
更に、前記ステップ(3)は、
配電網システム制御量を定義し、
【数6】
システム予測制御モデルを構築し、
【数7】
と、を含む。
【0011】
更に、前記制御量の上下限制約は具体的に、
【数8】
【0012】
更に、前記制御量のランプ制約は具体的に、
【数9】
【0013】
更に、前記ステップ(4)は、
前記配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて感度行列を取得し、各支線の捨て水量を計算して水力発電遮断を実行し、各支線の捨て水量を計算し、
【数10】
式中、ΔPが支線上のk番目のノードの削減した有効電力であり、ΔVがk番目のノードの電圧変化量であること(41)と、
1本目の支線が水力発電遮断を実行した後、主母線電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、ステップ(43)に入り、NOであれば、2本目の支線の捨て水量を順次計算して水力発電遮断を実行し、このことから類推し、M本の支線の順次式水捨て計画により主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うこと(42)と、
水力発電遮断を実行した後に主母線電圧が安全範囲内にある場合、直ちに計画水力発電起動段階に入って、水捨て部分の水力発電を改めて併合すること(43)と、を含む。
【0014】
本発明に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御システムは、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得することに用いられる計算モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、電力貯蔵調整モジュールを呼び出すように要求し、NOであれば、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整することに用いられる負荷トランスモジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現し、依然として主母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、水捨て制御モジュールを呼び出すように要求することに用いられる電力貯蔵調整モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うことに用いられる水捨て制御モジュールと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明は水力発電所の出力の不確定性による配電網母線電圧が安全範囲を超える問題に対して、ハイブリッドPetriネットワークに基づく負荷トランスポリシー及び分散型電力貯蔵に基づく電圧調整方法を提供し、母線電圧調整の二段階最適化制御を実現し、水力発電の最大限収集投棄を確保するとともに、電力貯蔵の充放電回数及び構成容量も減少させ、電力供給の信頼性及び経済性を大幅に向上させる。電力貯蔵が最大調整能力に達しても母線が過電圧になる問題を解決できない場合、システム電圧の安全を確保する上で、捨て水量を最小化するとともに、重要な負荷の電力供給の信頼性及び水力発電のタイムリーな収集投棄を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施フローチャートである。
図2】母線電圧制御ポリシーのアーキテクチャ図である。
図3】ハイブリッドPetriネットワークに基づく負荷トランスポリシーのトポロジー論理図である。
図4】感度分析に基づく順次式水捨てポリシーの模式的なブロック図である。
図5】2019年の工事における配電網の各支線及び所外負荷の月平均発電・電力消費の電力曲線図である。
図6】通常状況における負荷トランス前後の母線I、IIの電圧の比較図である。
図7】通常状況における各支線の負荷トランス状態を示す図である。
図8】豊水状況における負荷トランス前後の母線I、IIの電圧の比較図である。
図9】豊水状況における各支線の負荷トランス状態を示す図である。
図10】渇水状況における負荷トランス前後の母線I、IIの電圧の比較図である。
図11】渇水状況における各支線の負荷トランス状態を示す図である。
図12】連続時間帯内の母線Iの調圧効果を示す図である。
図13】連続時間帯内の各支線の負荷トランス状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら実施例によって本発明の技術案を更に説明する。
【0018】
本発明に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法は、図1に示すように、具体的に、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、各ノードの電圧/有効電力及び電圧/無効電力の感度を取得するステップ1と、
ステップ1における感度に基づいて計算して各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて配電網負荷トランスの適応型オンライン組み合わせモデルを構築し、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を調整するステップ2と、
ステップ2により依然として配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、ステップ1における感度に基づいて計算し、モデル予測制御に基づく分散型電力貯蔵電圧調整方法を提案し、各分散型電力貯蔵を協調することで母線電圧の最適制御を実現するステップ3と、
ステップ2及びステップ3によりいずれも配電網母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、ステップ1における感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うステップ4と、を含む。
【0019】
更に、ステップ1において、まず各電圧ノード間の線路パラメータに基づいて配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を決定し、それは具体的に、
ノードがN個あり、1番目の参照ノードが知られている以外に、他のノードがいずれもPQノードとして見なされると仮定し、配電網のネットワークトポロジー及び伝送線路パラメータに基づいてノードインピーダンス行列を決定し、更に各ノードの注入電流及び電圧の方程式を与え、
【数11】
km+jXkmがk番目のノードとm番目のノードとの間のラインインピーダンスであるステップ1-1と、
k番目のノード以外に、他のノードの注入電流がいずれもゼロであると仮定し、式(1)により各ノード電圧の出力に対する有効及び無効の感度を取得することができ、
【数12】
このうち、
【数13】
ステップ1-2と、を含むことを特徴とする。
【0020】
更に、ステップ2において、ステップ1における電圧/有効及び電圧/無効の感度行列に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線のトランスポリシーモデルを構築し、負荷トランスポリシーを決定し、それは具体的に、
ステップ1における電圧/有効及び電圧/無効の感度に基づいてそれぞれM本の支線の感度の総和を計算し、
【数14】
式(8)の計算結果に基づいて感度の降順でM本の支線をソートし、1本目の支線の感度の総和が最も高く、M本目の支線の感度の総和が最も低いステップ2-1と、
ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、各支線の母線接続状態をプレースとして構築し、各支線の負荷トランス条件を変遷として構築するステップ2-2と、
M本の支線の接続状態を初期化し、即ち初期状態がいずれも主母線に接続されることであり、主母線には電圧が安全範囲を超える問題が生じるか否かをモニタリングし、電圧が安全範囲を超える問題が生じる場合、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、直接にステップ3に入り、NOであれば、1本目の支線の変遷をトリガーして、1本目の支線の負荷トランスを行うステップ2-3と、
1本目の支線の負荷がトランスした後、主母線の電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、予備母線の電圧状況をモニタリングし続け、NOであれば、2本目の支線の変遷をトリガーして、2本目の支線の負荷トランスを実行するステップ2-4と、
このことから類推し、M本の支線負荷の順次トランスにより主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うステップ2-5と、を含むことを特徴とする。
【0021】
更に、ステップ3において、モデル予測制御方法を用いて母線電圧の制御を実現し、前記モデル予測制御はモデル予測、スクロール最適化及びフィードバック校正の3つの態様を含み、スクロールにより将来のある時間帯内の制御量を最適化し、トラッキングシステムの参照値を絶えずフィードバックすることにより、システムモデルの最適制御を実現し、それは具体的に、
システムの制御変数を決定し、各支線に分散型電力貯蔵を取り付けることでシステム電力の調整を実現することにより、システム母線電圧に対して安全制御を行い、システムの制御変数は、
【数15】
ステップ3-1と、
システムの制御目標関数を決定し、システムの制御目標は電圧が通常動作範囲にあるように確保するとともに、コストを最小に制御することを実現し、
【数16】
ステップ3-2と、を含むことを特徴とする。
【0022】
式(11)は制御量の上下限制約を示し、具体的に、
【数17】
式中、P max、P min、Q max、Q minがそれぞれi番目の分散型電力貯蔵の有効出力及び無効出力の上下限を示し、Nが分散型電力貯蔵の数である。
【0023】
式(12)は制御量のランプ制約を示し、具体的に、
【数18】
式中ΔP min、ΔP max、ΔQ min、ΔQ maxがそれぞれi番目の分散型電力貯蔵の充放電電力制限を示し、Nが分散型電力貯蔵の数である。
【0024】
式(13)はシステム母線電圧制約を示す。式(13)において、制御変数が有効電力である場合、
【数19】
i=1,2,・・・,N、j=1,2,・・・,Nである。
【0025】
制御変数が無効電力である場合、
【数20】
i=1,2,・・・,N、j=1,2,・・・,Nである。
【0026】
式(15)は分散型電力貯蔵のSOC制約を示し、具体的に、
【数21】
式中、SOC maxとSOC minがそれぞれi番目の分散型電力貯蔵の最大及び最小充電状態を示し、Nが分散型電力貯蔵の数である。
【0027】
ステップ2及びステップ3により依然として主母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、ステップ4により各支線の順次式水捨てを行い、主母線電圧が通常動作範囲内にあるように確保する。水捨て計画を実行した後、主母線電圧が正常範囲に回復する場合、計画水力発電起動段階に入り、水力発電の最大限収集投棄を確保し、それは具体的に、
ステップ1における感度行列に基づいて各支線の捨て水量を計算して水力発電遮断を実行し、各支線の捨て水量が式(22)に基づいて計算し、
【数22】
式中、ΔPが支線上のk番目のノードの削減した有効電力であり、ΔVがk個のノードの電圧変化量であるステップ4-1と、
1本目の支線が水力発電遮断を実行した後、主母線電圧が安全範囲内にあるか否かを判断し、YESであれば、ステップ4-4に入り、NOであれば、2本目の支線の捨て水量を順次計算して水力発電遮断を実行するステップ4-2と、
このことから類推し、M本の支線の順次式水捨て計画により主母線の電圧を安全範囲内に調整するまで行うステップ4-3と、
水力発電遮断を実行した後に主母線電圧が安全範囲内にある場合、直ちに計画水力発電起動段階に入って、水捨て部分の水力発電を改めて併合し、水力発電の最大限収集投棄を確保するステップ4-4と、を含むことを特徴とする。
【0028】
図2は本発明の実施例に係る中国南方電網有限責任公司のある配電網工事のアーキテクチャ図である。前記中国南方電網有限責任公司のある配電網工事において、水力発電負荷が10kV母線I、I支線、II支線、III支線に集中している。母線I及び母線IIを分散型電力貯蔵の構成ノードとして選択し、即ち801、802にそれぞれ2組の電力貯蔵を配置する。前記配置された電力貯蔵の総容量は2MWhであり、2つの母線の電力貯蔵容量が均等に割り当てられ、即ち母線I及び母線IIに設定された電力貯蔵容量はいずれも1MWhである。
【0029】
ハイブリッドPetriネットワークに基づく負荷トランスポリシーは図3、表1及び表2に示され、母線Iの電圧が1.0p.u.~1.07p.u.であるように確保する。負荷又は水力発電が母線IIにトランスして、母線IIが過電圧になる場合、分散型電力貯蔵を開始して電圧調整を行い、ステップ3に入る。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
図5に示すように、ステップ2及びステップ3を実施することにより依然として母線Iが過電圧になる問題を解決できない場合、ステップ4における順次式水捨てを実行する。水捨て計画を実行した後、母線Iの電圧が正常範囲に回復する場合、計画水力発電起動段階に入り、水力発電の最大限収集投棄を確保する。
【0033】
図6は2019年の該工事における配電網の各支線及び所外負荷の月平均発電・電力消費の電力曲線である。図5から分かるように、2019年に豊水期が8月であり、渇水期が1月である。
【0034】
本実施例は4つの異なる動作シーンに対して対応のシミュレーション環境を設計し、本発明に係る負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御方法の有効性が検証された。
【0035】
前記シミュレーションシーンは2019年の豊水期、渇水期及び正常期(発電・電力消費の平均値を取る)を含み、対応シーンにおける境界条件を分析して方法全体の調整効果が検証され、これを基に、連続時間帯内の複雑な動作状況に対して1つのシミュレーションシーンを設計し、方法全体の調整効果を分析して検証した。
【0036】
前記シーン1は通常状況における境界条件を分析し、2019年の水力発電量及び負荷の消費電力平均値を例として、過電圧になるか否か及び方法全体の調整効果をテストした。
【0037】
図6における計算から分かるように、2019年のI支線、II支線、III支線の平均発電電力はそれぞれ0.6476MW、0.5507MW、0.3527MWであり、平均消費電力はそれぞれ0.0101MW、0.4282MW、0.2122MWであり、所外負荷の平均消費電力は0.1675MWである。2019年の各支線及び所外負荷の発電・電力消費の電力平均値を通常状況におけるシミュレーション実例のデータサポートとし、本方法のシミュレーション結果は図7に示される。
【0038】
図7から分かるように、通常状況における母線Iに過電圧現象が存在し、電圧値は1.09p.u.である。このとき、計算によりステップ2を実行し、I支線を母線IIにトランスする。図8は各支線の負荷トランス状態である(P1は負荷が母線Iに接続されることであり、P2は負荷が母線IIにトランスすることであり、P3は母線I、IIがいずれも過電圧になることであり、分散型電力貯蔵を開始して調圧する)。負荷がトランスした後、母線I、IIの電圧はそれぞれ1.0128p.u.及び1p.u.であり、いずれもシステムが動作する電圧の安全範囲を満足し、方法全体の電圧調整が有効である。
【0039】
前記シーン2は豊水状況における境界条件を分析し、2019年の水力発電量が最も高く、負荷の消費電力が最も低い場合を例として、過電圧現象が最も深刻であり、方法全体の調整効果をテストした。
【0040】
図6における計算から分かるように、2019年の豊水期(8月)Iの平均発電電力はそれぞれ1.0648MW、1.1386MW、0.5658MWであり、平均消費電力はそれぞれ0.0099MW、0.4338MW、0.2417MWであり、所外負荷の平均消費電力は0.1751MWである。2019年の豊水期(8月)の各支線及び所外負荷の発電・電力消費の電力平均値を豊水状況におけるシミュレーション実例のデータサポートとし、本方法のシミュレーション結果は図9に示される。
【0041】
図9から分かるように、豊水状況において母線Iに過電圧現象が存在し、電圧値は1.2p.u.である。このとき、計算によりステップ2を実行し、I支線及びIII支線を母線IIにトランスする。図10は各支線の負荷トランス状態である(P1は負荷が母線Iに接続されることであり、P2は負荷が母線IIにトランスすることであり、P3は母線I、IIがいずれも過電圧になることであり、分散型電力貯蔵を開始して調圧する)。負荷がトランスした後、母線I、IIの電圧はそれぞれ1.0659p.u.及び1p.u.であり、いずれもシステムが動作する電圧安全範囲を満足し、方法全体の電圧調整が有効である。
【0042】
前記シーン3は渇水状況における境界条件を分析し、2019年の水力発電量が最も低く、負荷の消費電力が最も高い場合を例として、不足電圧になるか否か及び方法全体の調整効果をテストした。
【0043】
図6における計算から分かるように、2019年の渇水期(1月)のI支線、II支線、III支線の平均発電電力はそれぞれ0.1004MW、0.1165MW、0.0967MWであり、平均消費電力はそれぞれ0.0098MW、0.4609MW、0.2480MWであり、所外負荷の平均消費電力は0.1594MWである。2019年の渇水期(1月)の各支線及び所外負荷の発電・電力消費の電力平均値を渇水状況におけるシミュレーション実例のデータサポートとし、本方法のシミュレーション結果は図11に示される。
【0044】
図11から分かるように、渇水状況において母線Iに不足電圧現象が存在し、電圧値は0.91p.u.である。このとき、計算によりステップ2を実行する。図12は各支線の負荷トランス状態である(P1は負荷が母線Iに接続されることであり、P2は負荷が母線IIにトランスすることであり、P3は母線I、IIがいずれも過電圧になることであり、ステップ3を実行する)。分散型電力貯蔵を調圧した後、母線I、IIの電圧はそれぞれ1p.u.及び1p.u.であり、いずれもシステムが動作する電圧安全範囲を満足し、方法全体の電圧調整が有効である。
【0045】
前記シーン4は連続時間帯内の様々な複雑な動作状況における方法全体の調整効果をテストした。
【0046】
図13は連続時間帯内の母線Iの電圧変化曲線である。図13から分かるように、初期母線Iの電圧t=2h、4h、8h、10h、11hの場合にはいずれも電圧が安全範囲を超える現象があり、ステップ2及びステップ3を実行することで母線Iの電圧を安全動作範囲内に調整することができる。図14に示すように、I支線及びIII支線はステップ2により母線Iの電圧を1p.u.~1.07p.u.に確保することができ、t=4h、10h及び11hの場合にのみ分散型電力貯蔵により調圧する必要があり、他の段階にいずれも負荷を母線I、IIの間にトランスすることで母線Iの電圧が安全動作範囲内にあるように確保することができる。従って、本発明は電力供給電圧の信頼性を確保することができるだけでなく、電力貯蔵の動作コストを大幅に削減し、電力供給の経済性を向上させることもできる。
【0047】
本発明に記載の負荷トランス及び電力貯蔵調整に基づく配電網電圧制御システムは、
配電網のトポロジーパラメータに基づいて潮流計算を行って、配電網の各ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度を取得することに用いられる計算モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線をソートし、ハイブリッドPetriネットワークに基づいて各支線の負荷トランスモデルを構築し、1本目の支線の負荷が予備母線にトランスすると予備母線が過電圧になるか否かを判断し、YESであれば、電力貯蔵調整モジュールを呼び出すように要求し、NOであれば、支線負荷のフレキシブルトランスにより主母線電圧を安全範囲内まで調整することに用いられる負荷トランスモジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいてシステム予測制御モデルを構築し、各分散型電力貯蔵を調整して母線電圧の最適制御を実現し、依然として主母線電圧が安全範囲を超える問題を解決できない場合、水捨て制御モジュールを呼び出すように要求することに用いられる電力貯蔵調整モジュールと、
前記ノード電圧のノード出力に対する有効及び無効の感度に基づいて各支線の捨て水量を算出し、前記捨て水量に基づいて各水力発電ユニットに対して順次式水捨てを行うことに用いられる水捨て制御モジュールと、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】